JP6622484B2 - 発光材料、有機発光素子および化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた有機発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。
しかしながら、ジカルボン酸イミド化合物を発光材料として利用した有機発光素子に関する研究は、これまでにほとんどなされていない。ジカルボン酸イミド化合物に関する論文として非特許文献1および非特許文献2があるが、これらの文献にはペリレンジイミドやナフタレンジイミドといったジカルボン酸イミド化合物が有機電界効果トランジスタにおける電子輸送性半導体や有機太陽電池における光捕集色素として有用であることが記載されているに過ぎない。
X. Guo, A. Facchetti, T. J. Marks, Chem. Rev. 2014, 114, 8943. Z. Liu, G. Zhang, Z. Cai, X. Chen, H. Luo, Y. Li, J. Wang, D. Zhang, Adv. Mater. 2014, 26, 6965
非特許文献1および非特許文献2では、ペリレンジイミドやナフタレンジイミドが発光材料として機能しうるものであるか否かについては検討がなされていない。発光材料は、電子輸送材料とは要求される性質や機能が異なるため、ペリレンジイミドやナフタレンジイミドの発光材料としての有用性は不明である。また、非特許文献1および非特許文献2には、ペリレンジイミドやナフタレンジイミド以外の基本骨格を有する化合物の特性については特に触れられていない。このため、ペリレンジイミドやナフタレンジイミド以外のジカルボン酸イミド化合物の構造と発光材料としての有用性の関係については、従来の技術から予測することは不可能である。
このような状況下で本発明者らは、ジカルボン酸イミド化合物からなる有用な発光材料を提供することを目的として鋭意検討を進めた。特に有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子の発光材料として有用なジカルボン酸イミド化合物を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、ジカルボン酸イミド化合物の中でも特定の構造を有するフタルイミド誘導体の化合物群に発光材料として優れた性質があることを初めて見いだした。また、そのような化合物群の中に、遅延蛍光材料として有用なものがあることを見出し、発光効率が高い有機発光素子を安価に提供しうることを明らかにした。本発明者らは、これらの知見に基づいて、以下の本発明を提供するに至った。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
Figure 0006622484
[一般式(1)において、R1は、電子供与基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
[2] R1が、電子供与性を示す置換アリール基であり、R2が、水素原子、または置換もしくは無置換のアリール基である[1]に記載の発光材料。
[3] R1が下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される[1]または[2]に記載の発光材料。
Figure 0006622484
[一般式(2)において、R11〜R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L12は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
Figure 0006622484
[一般式(3)において、R71〜R79は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74とR75、R76とR77、R77とR78、R78とR79は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L17は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
[4] R1が前記一般式(2)で表される基であり、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成している[3]に記載の発光材料。
[5] R1が、下記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される基である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の発光材料。
Figure 0006622484
Figure 0006622484
[一般式(4)〜(8)において、R21〜R24、R27〜R38、R41〜R48、R51〜R58、R61〜R65、R81〜R90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R54とR61、R55とR65、R81とR82、R82とR83、R83とR84、R85とR86、R86とR87、R87とR88、R89とR90は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L13〜L16、L18は、各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
[6] R1が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である[5]に記載の発光材料。
[7] R2が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である[5]または[6]に記載の発光材料。
[8] R1とR2が同一である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の発光材料。
[9] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の発光材料を含む遅延蛍光体。
[10] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の発光材料を含む有機発光素子。
[11] 遅延蛍光を放射する[10]に記載の有機発光素子。
[12] 有機エレクトロルミネッセンス素子である[10]または[11]に記載の有機発光素子。
[13] 上記一般式(1)で表される化合物。
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には遅延蛍光を放射するものが含まれている。本発明の化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、高い発光効率を実現しうる。
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。 実施例1の化合物1のトルエン溶液の吸収発光スペクトルである。 実施例1の化合物1とmCBPの薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の吸収発光スペクトルである。 実施例1の化合物1の薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の吸収発光スペクトルである。 実施例1の化合物1とmCBPの薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の過渡減衰曲線である。 実施例2の化合物1の有機エレクトロミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例2の化合物1の有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を示すグラフである。 実施例2の化合物1の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。 実施例3の化合物1の有機エレクトロミネッセンス素子の発光スペクトルである。 実施例3の化合物1の有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を示すグラフである。 実施例3の化合物1の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべて1Hであってもよいし、一部または全部が2H(デューテリウムD)であってもよい。
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の発光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
Figure 0006622484
一般式(1)において、R1は、電子供与基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。
1がとりうる電子供与基は、R1が結合しているフタルイミド環に対して電子を供与する性質を有する原子または原子団である。好ましくは、ハメットのσp値が0未満の置換基である。ハメットのσpara値は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
Figure 0006622484
における置換基に特有な定数(σpara)である。上式において、kは置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、k0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、Kは置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、K0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。ハメットのσpara値に関する説明と各置換基の数値については、J.A.Dean編 "Lange's Handbook of Chemistry 第13版"、1985年、3-132〜3-137頁、McGrow-Hill を参照することができる。
1がとりうる電子供与基として、例えばσp値が0未満の置換基であってヘテロ原子を含む置換基を挙げることができる。ここでいうヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、リン原子などを例示することができる。特に、これらのヘテロ原子で結合する置換基や、これらのヘテロ原子の少なくとも1つがsp2炭素原子に結合していて当該sp2炭素原子を含むπ共役が一般式(1)のフタルイミド環まで広がる構造を有する置換基を好ましく採用することができる。
ヘテロ原子で結合する置換基としては、ジアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、環状アミノ基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、トリアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアルキルシリル基、環状シリル基、ジアリールホスフィノ基、ジアルキルホスフィノ基、環状ホスフィノ基を挙げることができる。これらの置換基を構成するアリール基やアルキル基は、置換基を有していてもよい。
ヘテロ原子の少なくとも1つがsp2炭素原子に結合していて当該sp2炭素原子を含むπ共役が一般式(1)のフタルイミド環まで広がる構造を有する置換基の例としては、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたアリール基や、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたヘテロアリール基を挙げることができる。また、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基や、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したヘテロアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がヘテロアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基や、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアルケニル基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアルケニル基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基や、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアルキニル基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアルキニル基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基も挙げることができる。
これらの中で好ましいのは、ヘテロ原子で結合する置換基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたアリール基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたヘテロアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したヘテロアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がヘテロアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基である。これらの中でさらに好ましいのは、ヘテロ原子で結合する置換基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基である。
上記のアリール基やヘテロアリール基を構成する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよく、縮合環である場合は芳香環のみからなる縮合環であってもよいし、芳香環と脂肪環(非芳香環)からなる縮合環であってもよい。アリール基を構成する芳香環の具体例としてベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環を挙げることができる。縮合環で構成されるアリール基のフタルイミド環に対する結合位置は特に制限されない。アリール基の炭素数は6〜40であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基を構成する複素芳香環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環を挙げることができる。ヘテロアリール基の炭素数は4〜40であることが好ましく、4〜20であることがより好ましく、4〜14であることがさらに好ましい。
上記のアルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、−(CH=CH)m−で表される構造を含むものであることが好ましい。例えば、H−(CH=CH)m−で表される基を挙げることができる。mは1以上の整数を表し、例えば1〜6の範囲内、1〜3の範囲内、1〜2の範囲内で選択したりすることが可能である。
上記のアルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、−(C≡C)n−で表される構造を含むものであることが好ましい。例えばH−(C≡C)n−で表される基を挙げることができる。nは1以上の整数を表し、例えば1〜6の範囲内、1〜3の範囲内、1〜2の範囲内で選択したりすることが可能である。
1がとりうる電子供与基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、およびリン原子からなる群より選択されるヘテロ原子で結合する電子供与性の置換基や、電子供与性を示すアリール基を採用することが好ましい。電子供与性を示すアリール基は、通常は置換アリール基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、およびリン原子からなる群より選択されるヘテロ原子で結合する電子供与性の置換基で置換されたアリール基であることが好ましい。
1がとりうる電子供与基として、例えば下記の一般式(2)で表される電子供与基を挙げることができる。
Figure 0006622484
一般式(2)において、R11〜R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R11〜R20のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。R11〜R20のうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
11〜R20がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数1〜20のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜20のアルキルアミド基、炭素数7〜21のアリールアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数1〜20のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基である。
11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
一般式(2)で表される化合物の中では、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成していることが好ましい。この場合、R15とR16が互いに結合した結果として形成される環状構造は6員環となる。R15とR16が互いに結合して形成される連結基の具体例として、−O−、−S−、−N(R91)−または−C(R92)(R93)−で表される連結基が挙げられる。ここにおいて、R91〜R93は各々独立に水素原子または置換基を表す。R91がとりうる置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基を例示することができる。R92およびR93がとりうる置換基としては、各々独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数1〜20のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜20のアルキルアミド基、炭素数7〜21のアリールアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基等を例示することができる。
一般式(2)において、L12は、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。L12は、単結合、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましい。
12が表すアリーレン基を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。L12が表すアリーレン基を構成する芳香環の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることがさらにより好ましい。アリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニレン基を挙げることができる。また、L12が表すヘテロアリーレン基を構成する複素環は、単環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が縮合した縮合環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が連結した連結環であってもよい。複素環の炭素数は5〜22であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜14であることがさらに好ましく、5〜10であることがさらにより好ましい。複素環を構成する複素原子は窒素原子であることが好ましい。複素環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。L1が表すより好ましい基はフェニレン基である。L12がフェニレン基であるとき、フェニレン基は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基のいずれであってもよいが、1,4−フェニレン基であることが好ましい。また、L12は置換基により置換されていてもよい。L12の置換基の数および置換位置は特に制限されない。L12に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11〜R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
一般式(2)で表される基は、下記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Figure 0006622484
Figure 0006622484
一般式(4)〜(8)において、R21〜R24、R27〜R38、R41〜R48、R51〜R58、R61〜R65、R71〜R79、R81〜R90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11〜R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、R21〜R24、R27〜R38、R41〜R48、R51〜R58、R61〜R65、R71〜R79、R81〜R90は、各々独立に上記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される基であることも好ましい。また、R89およびR90は置換もしくは無置換のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。一般式(4)〜(8)における置換基の数は特に制限されない。すべてが無置換(すなわち水素原子)である場合も好ましい。また、一般式(4)〜(8)のそれぞれにおいて置換基が2つ以上ある場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。一般式(4)〜(8)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(4)であればR22〜R24、R27〜R29のいずれかであることが好ましく、R23およびR28の少なくとも1つであることがより好ましく、一般式(5)であればR32〜R37のいずれかであることが好ましく、一般式(6)であればR42〜R47のいずれかであることが好ましく、一般式(7)であればR52、R53、R56、R57、R62〜R64のいずれかであることが好ましく、一般式(8)であればR82〜R87、R89、R90のいずれかであることが好ましい。
一般式(4)〜(8)において、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R54とR61、R55とR65、R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74とR75、R76とR77、R77とR78、R78とR79、R81とR82、R82とR83、R83とR84、R85とR86、R86とR87、R87とR88、R89とR90は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造の説明と好ましい例については、上記の一般式(2)において、R11とR12等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。
一般式(4)〜(8)において、L13〜L16、L18は、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。L13〜L16、L18が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、L12が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。L13〜L16、L18は、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましい。
1がとりうる電子供与基として、例えば下記の一般式(3)で表される電子供与基を挙げることもできる。
Figure 0006622484
一般式(3)において、R71〜R79は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74とR75、R76とR77、R77とR78、R78とR79は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L17は、単結合、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。
71〜R79がとりうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11〜R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。置換基が存在している場合は、その置換位置は、R72〜R74、R77、R78のいずれかであることが好ましい。
17が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、L12が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
次に、一般式(1)におけるR2について説明する。一般式(1)におけるR2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。
2がとりうる置換もしくは無置換のアリール基は、電子供与性を示すものであってもよいし、電子吸引性を示すものであってもよい。すなわち、置換もしくは無置換のアリール基として、ハメットのσp値が0未満の置換基のみならず、σp値が0以上の置換基も採用することができる。R2がとりうる置換もしくは無置換のアリール基のσp値は、−0.3以上であることが好ましく、−0.2以上であることがより好ましく、−0.1以上であることがさらに好ましい。σp値が負であるアリール基として無置換のフェニル基を例示することができる。
2は、置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基であってもよい。R2がとりうる電子供与基の説明と好ましい範囲については、R1がとりうる電子供与基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
一般式(1)におけるR1とR2の組み合わせとしては、R1が電子供与基であって、R2が水素原子である場合、R1が電子供与基であって、R2が電子吸引性を示す置換もしくは無置換のアリール基である場合、R1とR2がともに電子供与基である場合がある。
1とR2がともに電子供与基である場合は、R1が表す電子供与基とR2が表す電子供与基は、同一であっても異なっていてもよい。R1とR2が同一である化合物は、合成が容易であるという利点がある。R1とR2がともに電子供与基であるときは、R1とR2は、各々独立に一般式(2)または一般式(3)で表される基であることが好ましく、各々独立に一般式(2)で表される基であることがより好ましく、各々独立に一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基であることがさらに好ましい。例えば、R1とR2がともに一般式(5)で表される基である化合物や、R1とR2がともに一般式(8)で表される基である化合物を好ましく例示することができる。
1で表される基の分子量は特に制限されないが、160以上であることが好ましく、例えば240以上のものを採用することも可能である。R2で表される水素以外の基の分子量は、70以上が好ましい。R1で表される基とR2で表される基の分子量は、合計で1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
一般式(1)におけるR3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基である。
3がとりうるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。好ましい炭素数は1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。R3がとりうるアリール基とヘテロアリール基の具体例と好ましい範囲については、R1とR2がとりうる電子供与基の欄で説明したアリール基とヘテロアリール基の具体例と好ましい範囲を参照することができる。
3がとりうるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が有していてもよい置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
Figure 0006622484
Figure 0006622484
Figure 0006622484
Figure 0006622484
Figure 0006622484
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。例えば、320以上の範囲、490以上の範囲、640以上の範囲から選択することも可能である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR1〜R3のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしを反応させることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(9)または(10)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
Figure 0006622484
一般式(9)または(10)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X11−L11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(9)または(10)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR1〜R3のいずれか、一般式(2)のR11〜R20のいずれか、一般式(3)の構造のR71〜R78のいずれか、一般式(4)の構造のR21〜R24、R27〜R30のいずれか、一般式(5)の構造のR31〜R38のいずれか、一般式(6)の構造のR41〜R48のいずれか、一般式(7)の構造のR51〜R58、R61〜R65のいずれか、一般式(8)の構造のR81〜R90のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(11)〜(14)で表される構造を挙げることができる。
Figure 0006622484
これらの式(11)〜(14)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR1〜R3のいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
Figure 0006622484
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、鈴木・宮浦カップリングを利用してフタルイミドにR1とR2を導入することにより一般式(1)で表される化合物を合成することが可能である。R1とR2が同じであるときには、下記の反応式にしたがって一般式(1)で表される化合物を合成することができる。
Figure 0006622484
上記の反応式におけるR1およびR3の定義については、一般式(1)におけるR1およびR3の記載を参照することができる。X1およびX2は、各々独立にハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。YはOHを表すが、BY2は例えば4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランのようなジオキサイボロラン構造であってもよい。触媒としては例えばPd触媒を用いることができ、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどを採用することができる。
上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。このとき、本発明の一般式(1)で表される化合物は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含まれる他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、発光層に含まれる本発明の一般式(1)で表される化合物は、発光層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と発光層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R2〜R7は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
Figure 0006622484
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次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
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次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
Figure 0006622484
Figure 0006622484
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006622484
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
Figure 0006622484
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[化合物の合成]
(合成例1) 化合物1の合成
Figure 0006622484
発煙硫酸(30%)を用いてN−メチルフタルイミドにヨウ素を反応させることにより、既知化合物である化合物(a)を黄白色粉末として得た。得られた化合物(a)(0.5g,1.2mmol)と化合物(b)(1.1g,2.7mmol)を窒素雰囲気下で乾燥トルエン(30ml)に溶解した。得られた溶液に、炭酸カリウム水溶液(2M,8ml)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.08g,0.07mmol)を添加して、48時間還流した。反応混合物を水に注いで生成物を塩化メチレンで抽出した。有機層を水で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した後に、濾過して蒸留した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製し、真空乾燥して黄緑色固体の化合物1を0.56g得た(収率64%)。得られた生成物をさらに真空下で温度勾配昇華法により精製した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.11 (s, 2H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.43 (d, J = 6.2 Hz, 4H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 6.86 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 6.79 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 6.24 (d, J = 7.0 Hz, 4H) 3.28 (s, 3H), 1.68 (s, 12H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 168.16, 146.10, 141.03, 140.67, 139.60, 132.26, 131.63, 131.35, 130.18, 126.53, 125.12, 125.03, 120.74, 113. 82, 35.99, 30.79, 24.21.
[素子の作製と評価]
以下において、有機フォトルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
(実施例1) 化合物1を用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価
Ar雰囲気のグローブボックス中で化合物1のトルエン溶液(濃度10-4mol/L)を調製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度10-4Pa以下の条件にて化合物1とmCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。また、化合物1が100%の薄膜を石英基板上に形成した有機フォトルミネッセンス素子も作製した。
化合物1のトルエン溶液について320nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図2に、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について310nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図3に、化合物1のみからなる薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について310nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。
フォトルミネッセンス量子効率は、窒素バブリングしたトルエン溶液で28.3%、窒素バブリングしないトルエン溶液で13.9%、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で50%、化合物1のみからなる薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で23.2%であった。
また、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子の5K、50K、100K、150K、200K、250K、300Kにおける過渡減衰曲線を図5に示す。この過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。図5に示す化合物1の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物1は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された(τprompt=53ナノ秒、τdelayed=21マイクロ秒)。また、温度によって遅延成分の寿命が変化することから化合物1は熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることが確認された。
(実施例2) 化合物1を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した後、mCBPを5nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図6に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を図7に示し、電流密度−外部量子効率特性を図8に示す。図6の発光スペクトルは、1mA/cm2、10mA/cm2、100mA/cm2の各スペクトルが重なっていることを示している。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は11.5%の高い外部量子効率を達成した。仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。したがって、化合物1を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している点で極めて優れている。
(実施例3) 化合物1を用いた他の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図9に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を図10に示し、電流密度−外部量子効率特性を図11に示す。図9の発光スペクトルは、1mA/cm2、10mA/cm2、100mA/cm2の各スペクトルが重なっていることを示している。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は8.0%の高い外部量子効率を達成した。
(比較例1) 比較化合物1を用いた対比試験
実施例1で用いた化合物1の代わりに比較化合物1を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により比較化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製した。300Kにおいて遅延蛍光は観測されなかった(τprompt=15ナノ秒)。
実施例2で用いた化合物1の代わりに比較化合物1を用いた点を変更して、実施例2と同じ方法により比較化合物1とmCBPの発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。外部量子効率は1.4%で、遅延蛍光の放射は観測されなかった。
Figure 0006622484
本発明の化合物は発光材料として有用である。このため本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子用の発光材料として効果的に用いられる。本発明の化合物の中には、遅延蛍光が放射するものも含まれているため、発光効率が高い有機発光素子を提供することも可能である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1は、電子供与性を示す置換アリール基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
  2. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1は、電子供与性を示す置換アリール基を表し、R2は、水素原子、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
  3. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1は下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される電子供与基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
    Figure 0006622484
    [一般式(2)において、R11〜R20は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L12は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
    Figure 0006622484
    [一般式(3)において、R71〜R79は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72、R72とR73、R73とR74、R74とR75、R76とR77、R77とR78、R78とR79は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L17は、置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
  4. 1が前記一般式(2)で表される基であり、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成している請求項3に記載の発光材料。
  5. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1は、下記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される電子供与基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
    Figure 0006622484
    Figure 0006622484
    [一般式(4)〜(8)において、R21〜R24、R27〜R38、R41〜R48、R51〜R58、R61〜R65、R81〜R90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23、R23とR24、R27とR28、R28とR29、R29とR30、R31とR32、R32とR33、R33とR34、R35とR36、R36とR37、R37とR38、R41とR42、R42とR43、R43とR44、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R64とR65、R54とR61、R55とR65、R81とR82、R82とR83、R83とR84、R85とR86、R86とR87、R87とR88、R89とR90は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L13〜L16、L18は、各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
  6. 1が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である請求項5に記載の発光材料。
  7. 2が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である請求項5または6に記載の発光材料。
  8. 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1とR2が同一の電子供与基を表す。ただし、R 1 とR 2 は置換基を有していてもよいジアリールアミノ基ではない。3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光材料を含む遅延蛍光体。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光材料を含む有機発光素子。
  11. 遅延蛍光を放射する請求項10に記載の有機発光素子。
  12. 有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項10または11に記載の有機発光素子。
  13. 下記一般式(1)で表される化合物。
    Figure 0006622484
    [一般式(1)において、R1は、窒素原子で結合する電子供与性の置換基で置換されたアリール基を表す。R2は、水素原子、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基を表す。R3は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基を表す。]
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