JP6622484B2 - 発光材料、有機発光素子および化合物 - Google Patents
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Description
このような状況下で本発明者らは、ジカルボン酸イミド化合物からなる有用な発光材料を提供することを目的として鋭意検討を進めた。特に有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子の発光材料として有用なジカルボン酸イミド化合物を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
[2] R1が、電子供与性を示す置換アリール基であり、R2が、水素原子、または置換もしくは無置換のアリール基である[1]に記載の発光材料。
[3] R1が下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される[1]または[2]に記載の発光材料。
[4] R1が前記一般式(2)で表される基であり、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成している[3]に記載の発光材料。
[5] R1が、下記一般式(4)〜(8)のいずれかで表される基である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の発光材料。
[6] R1が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である[5]に記載の発光材料。
[7] R2が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である[5]または[6]に記載の発光材料。
[8] R1とR2が同一である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の発光材料。
[9] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の発光材料を含む遅延蛍光体。
[10] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の発光材料を含む有機発光素子。
[11] 遅延蛍光を放射する[10]に記載の有機発光素子。
[12] 有機エレクトロルミネッセンス素子である[10]または[11]に記載の有機発光素子。
[13] 上記一般式(1)で表される化合物。
ヘテロ原子で結合する置換基としては、ジアリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、環状アミノ基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基、トリアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアルキルシリル基、環状シリル基、ジアリールホスフィノ基、ジアルキルホスフィノ基、環状ホスフィノ基を挙げることができる。これらの置換基を構成するアリール基やアルキル基は、置換基を有していてもよい。
これらの中で好ましいのは、ヘテロ原子で結合する置換基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたアリール基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたヘテロアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したヘテロアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がヘテロアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基である。これらの中でさらに好ましいのは、ヘテロ原子で結合する置換基、ヘテロ原子で結合する置換基により置換されたアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を含む置換基が結合したアリール基であって当該sp2炭素原子を含むπ共役がアリール基を介して一般式(1)のフタルイミド環まで広がる基である。
上記のアルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、−(CH=CH)m−で表される構造を含むものであることが好ましい。例えば、H−(CH=CH)m−で表される基を挙げることができる。mは1以上の整数を表し、例えば1〜6の範囲内、1〜3の範囲内、1〜2の範囲内で選択したりすることが可能である。
上記のアルケニル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、−(C≡C)n−で表される構造を含むものであることが好ましい。例えばH−(C≡C)n−で表される基を挙げることができる。nは1以上の整数を表し、例えば1〜6の範囲内、1〜3の範囲内、1〜2の範囲内で選択したりすることが可能である。
R11〜R20がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数1〜20のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜20のアルキルアミド基、炭素数7〜21のアリールアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数1〜20のアリール置換アミノ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基である。
L12が表すアリーレン基を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。L12が表すアリーレン基を構成する芳香環の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることがさらにより好ましい。アリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニレン基を挙げることができる。また、L12が表すヘテロアリーレン基を構成する複素環は、単環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が縮合した縮合環であっても、1以上の複素環と芳香環または複素環が連結した連結環であってもよい。複素環の炭素数は5〜22であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜14であることがさらに好ましく、5〜10であることがさらにより好ましい。複素環を構成する複素原子は窒素原子であることが好ましい。複素環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。L1が表すより好ましい基はフェニレン基である。L12がフェニレン基であるとき、フェニレン基は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基のいずれであってもよいが、1,4−フェニレン基であることが好ましい。また、L12は置換基により置換されていてもよい。L12の置換基の数および置換位置は特に制限されない。L12に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR11〜R20がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
L17が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲については、L12が表すアリーレン基またはヘテロアリーレン基、これらの基に導入しうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
R2がとりうる置換もしくは無置換のアリール基は、電子供与性を示すものであってもよいし、電子吸引性を示すものであってもよい。すなわち、置換もしくは無置換のアリール基として、ハメットのσp値が0未満の置換基のみならず、σp値が0以上の置換基も採用することができる。R2がとりうる置換もしくは無置換のアリール基のσp値は、−0.3以上であることが好ましく、−0.2以上であることがより好ましく、−0.1以上であることがさらに好ましい。σp値が負であるアリール基として無置換のフェニル基を例示することができる。
R2は、置換もしくは無置換のアリール基以外の電子供与基であってもよい。R2がとりうる電子供与基の説明と好ましい範囲については、R1がとりうる電子供与基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
R1とR2がともに電子供与基である場合は、R1が表す電子供与基とR2が表す電子供与基は、同一であっても異なっていてもよい。R1とR2が同一である化合物は、合成が容易であるという利点がある。R1とR2がともに電子供与基であるときは、R1とR2は、各々独立に一般式(2)または一般式(3)で表される基であることが好ましく、各々独立に一般式(2)で表される基であることがより好ましく、各々独立に一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基であることがさらに好ましい。例えば、R1とR2がともに一般式(5)で表される基である化合物や、R1とR2がともに一般式(8)で表される基である化合物を好ましく例示することができる。
R3がとりうるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。好ましい炭素数は1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などを例示することができる。R3がとりうるアリール基とヘテロアリール基の具体例と好ましい範囲については、R1とR2がとりうる電子供与基の欄で説明したアリール基とヘテロアリール基の具体例と好ましい範囲を参照することができる。
R3がとりうるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基が有していてもよい置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(9)または(10)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
一般式(9)または(10)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
L1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR1〜R3のいずれか、一般式(2)のR11〜R20のいずれか、一般式(3)の構造のR71〜R78のいずれか、一般式(4)の構造のR21〜R24、R27〜R30のいずれか、一般式(5)の構造のR31〜R38のいずれか、一般式(6)の構造のR41〜R48のいずれか、一般式(7)の構造のR51〜R58、R61〜R65のいずれか、一般式(8)の構造のR81〜R90のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、鈴木・宮浦カップリングを利用してフタルイミドにR1とR2を導入することにより一般式(1)で表される化合物を合成することが可能である。R1とR2が同じであるときには、下記の反応式にしたがって一般式(1)で表される化合物を合成することができる。
上記の反応は、公知の反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 8.11 (s, 2H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 7.43 (d, J = 6.2 Hz, 4H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 4H), 6.86 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 6.79 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 6.24 (d, J = 7.0 Hz, 4H) 3.28 (s, 3H), 1.68 (s, 12H).
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ = 168.16, 146.10, 141.03, 140.67, 139.60, 132.26, 131.63, 131.35, 130.18, 126.53, 125.12, 125.03, 120.74, 113. 82, 35.99, 30.79, 24.21.
以下において、有機フォトルミネッセンス素子と有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
Ar雰囲気のグローブボックス中で化合物1のトルエン溶液(濃度10-4mol/L)を調製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度10-4Pa以下の条件にて化合物1とmCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。また、化合物1が100%の薄膜を石英基板上に形成した有機フォトルミネッセンス素子も作製した。
化合物1のトルエン溶液について320nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図2に、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について310nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図3に、化合物1のみからなる薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子について310nm励起光による発光スペクトルと吸収スペクトルを測定した結果を図4に示す。
フォトルミネッセンス量子効率は、窒素バブリングしたトルエン溶液で28.3%、窒素バブリングしないトルエン溶液で13.9%、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で50%、化合物1のみからなる薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子で23.2%であった。
また、化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子の5K、50K、100K、150K、200K、250K、300Kにおける過渡減衰曲線を図5に示す。この過渡減衰曲線は、化合物に励起光を当てて発光強度が失活してゆく過程を測定した発光寿命測定結果を示すものである。通常の一成分の発光(蛍光もしくはリン光)では発光強度は単一指数関数的に減衰する。これは、グラフの縦軸がセミlog である場合には、直線的に減衰することを意味している。図5に示す化合物1の過渡減衰曲線では、観測初期にこのような直線的成分(蛍光)が観測されているが、数μ秒以降には直線性から外れる成分が現れている。これは遅延成分の発光であり、初期の成分と加算される信号は、長時間側に裾をひくゆるい曲線になる。このように発光寿命を測定することによって、化合物1は蛍光成分のほかに遅延成分を含む発光体であることが確認された(τprompt=53ナノ秒、τdelayed=21マイクロ秒)。また、温度によって遅延成分の寿命が変化することから化合物1は熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることが確認された。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した後、mCBPを5nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図6に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を図7に示し、電流密度−外部量子効率特性を図8に示す。図6の発光スペクトルは、1mA/cm2、10mA/cm2、100mA/cm2の各スペクトルが重なっていることを示している。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は11.5%の高い外部量子効率を達成した。仮に発光量子効率が100%の蛍光材料を用いてバランスの取れた理想的な有機エレクトロルミネッセンス素子を試作したとすると、光取り出し効率が20〜30%であれば、蛍光発光の外部量子効率は5〜7.5%となる。この値が一般に、蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値とされている。したがって、化合物1を用いた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している点で極めて優れている。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を80nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを図9に示し、電圧−電流密度−発光強度特性を図10に示し、電流密度−外部量子効率特性を図11に示す。図9の発光スペクトルは、1mA/cm2、10mA/cm2、100mA/cm2の各スペクトルが重なっていることを示している。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は8.0%の高い外部量子効率を達成した。
実施例1で用いた化合物1の代わりに比較化合物1を用いた点を変更して、実施例1と同じ方法により比較化合物1とmCBPの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子を作製した。300Kにおいて遅延蛍光は観測されなかった(τprompt=15ナノ秒)。
実施例2で用いた化合物1の代わりに比較化合物1を用いた点を変更して、実施例2と同じ方法により比較化合物1とmCBPの発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。外部量子効率は1.4%で、遅延蛍光の放射は観測されなかった。
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
Claims (13)
- 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
- R1が前記一般式(2)で表される基であり、R15とR16が互いに結合して連結鎖長が1原子の連結基を形成している請求項3に記載の発光材料。
- 下記一般式(1)で表される化合物からなる発光材料。
- R1が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である請求項5に記載の発光材料。
- R2が、前記一般式(5)〜(8)のいずれかで表される基である請求項5または6に記載の発光材料。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光材料を含む遅延蛍光体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光材料を含む有機発光素子。
- 遅延蛍光を放射する請求項10に記載の有機発光素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項10または11に記載の有機発光素子。
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