以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明の内視鏡システムが、工業用の内視鏡装置である場合について説明する。図1は、本発明の実施形態による内視鏡システムである工業用の内視鏡装置(以下、単に「内視鏡装置」という)の基本構成の概略を示した図である。図1に示した内視鏡装置1は、被検物の内部の観察や、通常の観察装置がアクセス困難な位置にある被検物の観察などに使用される。
内視鏡装置1は、長尺で軟性の挿入部3と、挿入部3の基端が接続された本体部2とを備えている。また、本体部2と接続された基端と反対側の挿入部3の先端に位置する先端部4には、被検物を撮影するための撮像部5と、撮像部が撮影する範囲に光を照射するための照明部6と、予め定めた周期で明暗に構造化した複数(種類)のパターンの光を被検物に投影するためのパターン投影部7との一部の構成要素が配置されている。先端部4の端面40には、撮像部5に外部からの光を入射させるための開口部45と、照明部6からの光を前面に照射するための照明窓46と、パターン投影部7が構造化したパターンの光を前面に照射するための投影窓47とが設けられている。
挿入部3は、図1に示したように、管状に形成されており、被検物の内部または被検物までのアクセス経路に挿入されて、先端部4を撮影する被検物の近傍に導く。なお、以下の説明においては、パターン投影部7が被検物に投影する光を構造化するパターンが、光の明暗、つまり、光の強度が水平方向の正弦波状に変化する縞状のパターン(縦縞のパターン)であるものとして説明する。
撮像部5は、本体部2内に配置された撮像制御部51と、先端部4内に配置された撮像素子52および対物光学系53とを含んで構成される。対物光学系53は、先端部4の端面40に設けられた開口部45に正対する所定の画角をもった光学レンズ群である。なお、図1に示した内視鏡装置1の構成では、対物光学系53が1つの光学レンズで構成されている場合を示しているが、対物光学系53は、複数の光学レンズで構成されてもよい。対物光学系53は、開口部45から入射された所定の画角によって規定される観察範囲内の被検物からの反射光を撮像素子52に入射させ、被検物の像を撮像素子52の撮像面に結像させる。なお、図1に示した内視鏡装置1の構成では、対物光学系53に、開口部45の開口を塞ぐための光の透過性を有するカバー部材54を備えている場合を示している。
撮像素子52は、2次元の行列状に画素が複数配置され、対物光学系53によって結像された被検物の映像を撮影し、撮影した映像に応じた画素信号を出力する、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサに代表されるイメージセンサである。撮像素子52は、挿入部3内に備えた信号線55を介して伝送された、本体部2内の撮像制御部51から出力された駆動信号によって駆動される。また、撮像素子52は、撮影した映像に応じたそれぞれの画素信号を映像信号として、信号線55を介して撮像制御部51に出力する。なお、撮像素子52は、イメージセンサを含む公知の技術を適宜選択して構成することができる。
撮像制御部51は、メイン制御部81からの制御に応じて、撮像素子52の駆動および映像信号を取得する際の設定など、種々の制御を行う。より具体的には、撮像制御部51は、挿入部3内の信号線55を介して先端部4内に配置された撮像素子52を駆動する。また、撮像制御部51は、撮像素子52が撮影した映像に応じた映像信号の信号線55への出力、つまり、映像信号の信号線55を介した伝送を制御する。また、撮像制御部51は、信号線55を介して撮像素子52から取得した映像信号を、本体部2内に配置された映像処理部86に出力する。
照明部6は、本体部2内に配置された照明光源61およびカップリングレンズ62と、挿入部3内を通るファイババンドル63と、先端部4内に配置された照明光学系64とを含んで構成される。照明光源61は、一般的な白色の光源である。照明光源61は、光源として、白色LEDやレーザーなどの発光素子、ハロゲンランプなどの電灯を用いることができる。
カップリングレンズ62は、照明光源61から発せられた光を、ファイババンドル63の径と同程度まで収束させる光学レンズである。カップリングレンズ62は、収束させた光をファイババンドル63に導入する。ファイババンドル63は、カップリングレンズ62から導入された光を、挿入部3を通して照明光学系64まで導く光ファイバである。なお、本発明においては、ファイババンドル63の構成や種類には、特に制限はなく、例えば、一般的なライトガイドなどをファイババンドル63として用いることもできる。
照明光学系64は、先端部4の端面40に設けられた照明窓46に正対する光学レンズ群である。なお、図1に示した内視鏡装置1の構成では、照明光学系64が1つの光学レンズで構成されている場合を示しているが、照明光学系64は、複数の光学レンズで構成されてもよい。照明光学系64は、照明光源61から発せられてファイババンドル63によって導かれた光を、対物光学系53における所定の画角によって規定される観察範囲にまで広げて照明窓46から出射させる。これにより、照明光源61から発せられた光が、先端部4の前面、つまり、内視鏡装置1における被検物の観察範囲にまんべんなく照射される。なお、照明光学系64には、照明窓46の開口を塞ぐため、光の透過性を有するカバー部材(不図示)を有していてもよい。
パターン投影部7は、本体部2内に配置されたパターン投影光源701、カップリングレンズ702、およびパターン制御部706と、挿入部3内を通る光ファイバ703と、先端部4内に配置された縞生成部704および投影光学系705とを含んで構成される。パターン投影光源701は、予め定めた特定の波長帯域の光源である。パターン投影光源701は、光源として、レーザーや予め定めた色のLEDなどの発光素子を用いることができる。なお、パターン投影光源701が発光する光の波長帯域は、可視光の波長帯域であっても赤外光の波長帯域であってもよい。
カップリングレンズ702は、パターン投影光源701から発せられた特定の波長帯域のレーザー光を、光ファイバ703の径と同程度まで収束させる光学レンズである。カップリングレンズ702は、収束させたレーザー光を光ファイバ703に導入する。光ファイバ703は、カップリングレンズ702から導入されたレーザー光を、挿入部3を通して縞生成部704まで導く光ファイバである。なお、本発明においては、光ファイバ703の構成や種類も、ファイババンドル63と同様に、特に制限はない。
縞生成部704は、挿入部3内に備えた信号線707を介して伝送された、本体部2内のパターン制御部706から出力された制御信号に応じて、パターン投影部7から発せられて光ファイバ703によって導かれたレーザー光から、被検物に投影するために予め定めた周期で構造化したパターンに変換した光(以下、「パターン光」という)を生成する。また、縞生成部704は、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて、生成したパターン光に予め定めた位相差をもたせる。そして、縞生成部704は、位相差をもたせた、つまり、位相シフトを行ったパターン光を投影光学系705に出射する。なお、内視鏡装置1では、パターン投影部7が被検物に投影するために変換する構造化のパターンが、縦縞のパターンである。従って、縞生成部704は、レーザー光を縦縞のパターン光に変換し、かつ予め定めた位相シフトを行ったパターン光を投影光学系705に出射する。
パターン制御部706は、メイン制御部81からの制御に応じて、縞生成部704が投影光学系705に出射するパターン光の構造化パターンと位相差とを制御する。より具体的には、パターン制御部706は、信号線707を介して縞生成部704に出力する制御信号によって、縞生成部704が生成する縦縞のパターンにおける縞の強度、つまり、レーザー光の強度を水平方向の正弦波状に変化させる際の位相を制御する。また、パターン制御部706は、信号線707を介して縞生成部704に出力する制御信号によって、縞生成部704が生成したパターン光にもたせる位相差、つまり、被検物に投影するパターン光の位相シフト量を制御する。
投影光学系705は、先端部4の端面40に設けられた投影窓47に正対する光学レンズ群である。なお、図1に示した内視鏡装置1の構成では、投影光学系705が1つの光学レンズで構成されている場合を示しているが、投影光学系705は、複数の光学レンズで構成されてもよい。投影光学系705は、縞生成部704がレーザー光を変換して位相シフトした後に出射したパターン光を、対物光学系53における所定の画角によって規定される観察範囲にまで広げて投影窓47から出射させる。これにより、位相シフトしたパターン光が、先端部4の前面の内視鏡装置1における被検物の観察範囲にまんべんなく照射される。なお、投影光学系705にも、照明光学系64と同様に、投影窓47の開口を塞ぐために、光の透過性を有するカバー部材(不図示)を有していてもよい。
その他、内視鏡装置1では、本体部2内に、光源制御部80と、映像処理部86と、操作部82と、モニタ87と、メイン制御部81と、主記憶装置(RAM)83と、補助記憶部84と、ROM85と、を備えている。
光源制御部80は、メイン制御部81からの制御に応じて、照明光源61およびパターン投影光源701のオン、オフを制御することによって光の発光、つまり、被検物への光の照射を制御する。なお、光源制御部80における照明光源61およびパターン投影光源701の発光制御の方法に関する詳細な説明は、後述する。
映像処理部86は、メイン制御部81からの制御に応じて、撮像制御部51から出力された映像信号に対して種々の処理を行い、映像信号に基づいた映像(画像)、すなわち、撮像部5に備えた撮像素子52が撮影した被検物の画像を生成する。そして、映像処理部86は、生成した被検物の画像をメイン制御部81に出力する。
操作部82は、内視鏡装置1の動作を制御するために使用者(ユーザ)によって操作されるユーザーインターフェースやコントローラである。ユーザは、操作部82を操作することによって、内視鏡装置1に所望の動作や処理を実行させる。例えば、操作部82の操作によって、ユーザは、挿入部3を被検物内に挿入する際に先端部4が向かう方向の変更や、被検物の撮影を指示する。また、操作部82の操作によって、ユーザは、3次元の計測を行う際の測定点の位置を、所望の位置に設定する。操作部82は、ユーザによって操作された内容を表す情報を、メイン制御部81に出力する。
モニタ87は、内視鏡装置1の動作や操作内容、撮影した被検物の画像を表示する表示部である。モニタ87は、メイン制御部81から入力された画像を表示する。ユーザは、モニタ87に表示された画像を確認しながら、操作部82を操作することによって、内視鏡装置1を使用した被検物の観察を行う。
メイン制御部81は、内視鏡装置1の構成要素、すなわち、内視鏡装置1全体を制御する。例えば、内視鏡装置1が被検物を観察する際の撮像部5による撮影動作や、被検物の画像のモニタ87への表示動作などに応じて、内視鏡装置1内の各構成要素の動作を制御する。メイン制御部81には、RAM83、補助記憶部84、およびROM85などの外部記憶部が接続されている。メイン制御部81は、接続されたRAM83、補助記憶部84、またはROM85に記憶されたデータに基づいて、種々の処理を行う。
RAM83は、例えば、DRAMなどの書き換え可能な揮発性メモリであり、メイン制御部81が処理を実行するために用いるデータや、処理の途中で生成したデータなどが、一時的に格納される。RAM83には、映像処理部86が生成してメイン制御部81に出力した被検物の画像が一時的に格納される。また、RAM83に格納された被検物の画像は、メイン制御部81によって読み出されて、モニタ87に出力される。
補助記憶部84は、例えば、書き換え可能な不揮発メモリを有する記憶装置や磁気記憶装置などの記憶装置であり、メイン制御部81が処理を実行した最終的な結果のデータなどを格納する。ROM85は、例えば、EPROMやEEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリであり、内視鏡装置1(メイン制御部81)を起動するためのファームウェアなどのプログラムや、メイン制御部81が実行する処理のプログラムなどが格納されている。
また、メイン制御部81は、映像処理部86が生成した被検物の画像に基づいて、内視鏡装置1における3次元の計測の処理を行う。このとき、メイン制御部81は、3次元の計測を行う際の測定点を設定するための被検物の画像をモニタ87に表示させる。そして、メイン制御部81は、操作部82から入力された操作の内容を表す情報に含まれる、ユーザによって指定された測定点の位置の情報に基づいて、ユーザが所望する3次元の計測を行い、計測結果をモニタ87に表示させる。なお、メイン制御部81における3次元の計測の処理手順に関する詳細な説明は、後述する。
このような構成によって、内視鏡装置1では、パターン光を位相シフトして被検物に複数回照射し、それぞれの位相で撮影した複数の画像から3次元画像を生成して3次元の計測を行う。なお、内視鏡装置1には、内視鏡装置1のユーザがモニタ87に表示された画像を確認しながら操作部82を操作することによって先端部4を観察する被検物の近傍に導く観察モードと、モニタ87に表示された画像を確認しながら操作部82を操作して所望の測定点を設定して3次元の計測を行う計測モードとの2つの動作モードがある。この動作モードの切り替えは、例えば、ユーザが操作部82を操作することによって行う。
なお、図1に示した内視鏡装置1の構成では、挿入部3の先端に位置する先端部4内に撮像部5と、照明部6と、パターン投影部7との一部の構成要素が配置されている構成を示した。しかし、内視鏡装置1は、先端部4内に備えた構成要素を交換可能な構成にすることもできる。例えば、撮像部5を構成する対物光学系53の一部と、照明部6を構成する照明光学系64の一部と、パターン投影部7を構成する縞生成部704および投影光学系705の一部とを、光学アダプタとして形成する。このとき、先端部4には、撮像部5を構成する撮像素子52および対物光学系53の他の一部と、照明部6を構成する照明光学系64の他の一部と、パターン投影部7を構成する投影光学系705の他の一部とを配置した構成にする。そして、先端部4と光学アダプタとを着脱可能な構成にする。このような構成にすることによって、観測する被検物に応じた適切な光学アダプタに交換することができる。
次に、内視鏡装置1の動作について説明する。まず、内視鏡装置1のそれぞれの動作モードにおいて被検物に照射する光の制御方法、つまり、光源制御部80における照明光源61およびパターン投影光源701の発光制御の方法について説明する。上述したように、光源制御部80は、メイン制御部81からの制御に応じて、照明光源61およびパターン投影光源701のオン、オフを制御することによって被検物への光の照射を制御する。
より具体的には、内視鏡装置1が観察モードの動作をしているとき、光源制御部80は、照明光源61のみオン状態に制御することによって、照明部6が白色の照明光(以下、「観察光」という)を被検物に照射するように制御する。これにより、撮像部5は、観察光が被検物に照射されたそれぞれのタイミングで撮影を行ったそれぞれの映像信号を映像処理部86に順次出力し、映像処理部86が、撮像部5から順次出力された映像信号に基づいた被検物の映像(画像)(以下、「観察モード画像」という)を順次生成する。そして、メイン制御部81が、映像処理部86から出力された観察モード画像を一旦RAM83に格納した後、再度読み出してモニタ87に表示させる。これにより、内視鏡装置1のユーザは、観察モードにおいてモニタ87に表示された観察モード画像を確認しながら操作部82を操作して、先端部4を観察する被検物の近傍に導くことができる。
一方、内視鏡装置1の動作モードが計測モードのとき、光源制御部80は、パターン投影光源701をオン状態に制御することによって、パターン投影部7がパターン光(以下、「計測光」という)を被検物に照射するように制御する。これにより、撮像部5は、計測光が被検物に照射されたそれぞれのタイミングで撮影を行ったそれぞれの映像信号を映像処理部86に順次出力し、映像処理部86が、撮像部5から順次出力された映像信号に基づいた被検物の映像(画像)を順次生成する。そして、メイン制御部81が、映像処理部86から出力された画像に基づいて、3次元の計測の処理を行う。これにより、内視鏡装置1のユーザは、設定した所望の測定点の位置での3次元の計測結果を確認することができる。
なお、内視鏡装置1では、内視鏡装置1の動作モードが計測モードのとき、被検物における実際の寸法(絶対的な寸法,以下、「絶対寸法」という)を計測する処理に必要な画像を取得するために、パターン投影部7は、縦縞のパターンの周期が異なる2つ(2種類)以上の計測光を投影する。このため、光源制御部80は、それぞれの計測光を、パターン投影部7の構成に応じて、順番または同時に被検物に照射するように制御する。これにより、被検物には、縦縞のパターンの周期が異なる計測光のそれぞれが、位相シフトされて複数回照射される。そして、内視鏡装置1では、以下の処理によって3次元の計測の処理を行う。
(処理1):撮像部5は、計測光が被検物に照射されたそれぞれのタイミングで撮影を行ったそれぞれの映像信号を映像処理部86に順次出力し、映像処理部86が、撮像部5から順次出力された映像信号に基づいて、異なる周期および位相の計測光の照射による被検物の映像(画像)(以下、「パターン画像」という)を順次生成する。そして、メイン制御部81は、映像処理部86から出力されたパターン画像を一旦RAM83に格納する。
(処理2):続いて、メイン制御部81は、RAM83に格納したパターン画像を読み出し、同じ位相シフトがなされ、つまり、同じ位相シフト量であり、異なる周期の縦縞のパターンであるパターン画像に基づいて、被検物の画像(以下、「計測モード画像」という)を生成して、再度RAM83に格納する。なお、メイン制御部81は、計測光にもたせたそれぞれの位相差、つまり、それぞれの位相シフト量ごとに1つの計測モード画像を順次生成して、再度RAM83に格納する。
(処理3):続いて、メイン制御部81は、RAM83に格納したそれぞれの位相差ごとの複数の計測モード画像を読み出して、3次元の計測の処理を行う。
(処理4)その後、メイン制御部81は、実行した3次元の計測結果を表す画像、例えば、現在モニタ87に表示させている画像に、計測結果を示すためのOSD(On−Screen Display)用のデータを重畳する処理などを行った画像を、モニタ87に出力して表示させる。
次に、内視鏡装置1においてパターン画像から計測モード画像を生成する処理(処理2)について説明する。この処理2は、既存の技術を利用してパターン画像に含まれる位相の折り返しを解消する、つまり、位相の不連続点をつなぎ合わせる位相接続の処理に相当する。位相接続の処理では、例えば、レンズの表面の状態を計測する場合、レンズの表面は滑らかであるという前提の基で、画像に含まれる計測光の位相の不連続点が、位相接続を行う位相の折り返し位置であると仮定し、この位置の位相差を加算、減算することによって不連続な位相をつなぎ合わせることができる。しかし、内視鏡装置1では、形状が滑らかでない被検物も計測対象とする。従って、パターン画像に含まれる位相の不連続な変化が、位相の接続位置を表しているのか、被検物の大きな段差に起因する位相の大きなずれを表しているのかを容易に判別することができない。このため、内視鏡装置1では、パターン画像に含まれる構造化したパターンの周期が表す被検物上の相対的な距離の情報を、内視鏡装置1と被検物との間の絶対的な距離の情報に変換する処理2を行う。
より具体的には、パターン投影部7が、同じ位相で縦縞のパターンの周期が異なる複数の計測光を投影し、メイン制御部81が、パターン画像に含まれる縦縞のパターンの周期の相対的な位相(以下、「相対位相」という)を、被検物の絶対寸法の計測を行うための絶対的な位相(以下、「絶対位相」という)に変換する処理2(以下、「位相変換処理」という)を行う。つまり、位相変換処理では、計測により得られた折り返された位相を位相接続の処理により折り返しのない位相へと変換する。その上で、折り返しのない位相と基準面での折り返しのない位相の差を算出する。これにより、被検物の絶対寸法の計測が可能になる。基準面での折り返しのない位相は生産時に実行されるキャリブレーション時に物体距離が既知である基準面を使って算出される。
同じ位相で縦縞のパターンの周期が異なる複数(種類)の計測光に基づいて位相を変換する位相変換処理の方法には、例えば、以下のような方法がある。なお、以下の説明においては、パターン投影部7が、2つ(2種類)の異なる周期の縦縞のパターンの計測光を投影する場合について説明する。
第1の位相変換処理の方法は、予め定めた短い周期の縦縞のパターンに構造化した計測光(以下、「短周期パターン光」という)と、短周期パターン光の周期よりも十分に長い予め定めた長い周期の縦縞のパターンに構造化した計測光(以下、「長周期パターン光」という)とを被検物に照射することによって、縦縞のパターンの周期の相対位相を絶対位相に変換する方法(以下、「第1の位相変換方法」という)である。第1の位相変換方法では、長周期パターン光の周期を、撮像部5が撮影する所定の画角の範囲、つまり、観察範囲内で位相が0〜2π以下となる周期にする。これにより、第1の位相変換方法では、パターン画像に含まれる同じ行の画素が表す長周期パターン光の位相を、パターン画像内で一意(ユニーク)に定めることになる。そして、第1の位相変換方法では、長周期パターン光の位相を基準として、パターン画像に含まれる短周期パターン光の相対位相を、被検物の絶対寸法の計測を行うための絶対位相に変換する。
より具体的には、長周期パターン光の波長を波長λ1とし、短周期パターン光の波長を波長λ2とした場合、パターン画像に含まれるそれぞれの画素の短周期パターン光における絶対位相Φ2を、下式(1)に基づいて算出する。
Φ2 = (λ1/λ2)Δφ1 ・・・(1)
上式(1)において、Δφ1は長周期パターン光が被検物に照射されたときの相対位相と、長周期パターン光が基準の位置(基準面)に照射されたときの相対位相との位相差であり、下式(2)によって算出することができる。
Δφ1 = φ1−φ10 = k1h = 2πh/λ1 ・・・(2)
上式(2)において、φ1は長周期パターン光が被検物に照射されたときの相対位相、φ10は長周期パターン光が基準の位置(基準面)に照射されたときの相対位相を表す。また、上式(2)において、k1は長周期パターン光における縞の波数、hは基準の位置からの高さを表す。
第1の位相変換方法では、このような演算をパターン画像に含まれるそれぞれの画素に対して行うことによって、計測光としてパターン画像に含まれた短周期パターン光の相対位相を、短周期パターン光の絶対位相に変換した計測モード画像を生成することができる。
また、第2の位相変換処理の方法は、予め定めた短い周期の縦縞のパターンに構造化した2つの計測光を被検物に照射し、2つの計測光による差周波の信号(ビート信号)を、上述した長周期パターン光と同様に考えることで、縦縞のパターンの周期の相対位相を絶対位相に変換する方法(以下、「第2の位相変換方法」という)である。つまり、第2の位相変換方法では、予め定めた短い周期の縦縞のパターンに構造化した計測光(以下、「第1の短周期パターン光」という)と、第1の短周期パターン光の周期に近い予め定めた短い周期の縦縞のパターンに構造化した計測光(以下、「第2の短周期パターン光」という)とを被検物に照射することによって、縦縞のパターンの周期の相対位相を絶対位相に変換する。このとき、第2の位相変換方法では、第1の短周期パターン光と第2の短周期パターン光とによって発生するビート信号の周期が、撮像部5における観察範囲内で位相が0〜2π以下となるように、第1の短周期パターン光と第2の短周期パターン光とのそれぞれの周期を決定する。これにより、第2の位相変換方法でも、第1の位相変換方法と同様に、パターン画像に含まれる同じ行の画素が表すビート信号の位相を、パターン画像内で一意(ユニーク)に定めることになる。そして、第2の位相変換方法では、ビート信号の位相を基準として、パターン画像に含まれる第1の短周期パターン光または第2の短周期パターン光の相対位相を、被検物の絶対寸法の計測を行うための絶対位相に変換する。
より具体的には、第1の短周期パターン光の波長を波長λ3とし、第2の短周期パターン光の波長を波長λ4とした場合、パターン画像に含まれるそれぞれの画素の第1の短周期パターン光または第2の短周期パターン光における絶対位相は、第1の位相変換方法と同様に、下式(3)また下式(4)に基づいて算出する。
Φ3 = (Λ34/λ3)Δφ4 ・・・(3)
Φ4 = (Λ34/λ4)Δφ3 ・・・(4)
上式(3)において、Φ3は、パターン画像に含まれるそれぞれの画素の第1の短周期パターン光における絶対位相を表し、Δφ4は第2の短周期パターン光が被検物に照射されたときの相対位相と、第2の短周期パターン光が基準の位置(基準面)に照射されたときの相対位相との位相差であり、上式(2)と同様に算出することができる。また、上式(4)において、Φ4は、パターン画像に含まれるそれぞれの画素の第2の短周期パターン光における絶対位相を表し、Δφ3は第1の短周期パターン光が被検物に照射されたときの相対位相と、第1の短周期パターン光が基準の位置(基準面)に照射されたときの相対位相との位相差であり、上式(2)と同様に算出することができる。また、上式(3)および上式(4)において、Λ34は、ビート信号の周期を表し、下式(5)によって算出することができる。
Λ34 = λ3λ4/(λ4−λ3) ・・・(5)
第2の位相変換方法では、このような演算をパターン画像に含まれるそれぞれの画素に対して行うことによって、パターン画像に含まれる計測光の相対位相を絶対位相に変換した計測モード画像を生成することができる。なお、第2の位相変換方法では、上式(3)および上式(4)に示したように、第1の短周期パターン光と第2の短周期パターン光とのいずれからでも、被検物の絶対寸法の計測を行うための絶対位相に変換することができる。つまり、第2の位相変換方法では、上式(3)によって、計測光としてパターン画像に含まれた第1の短周期パターン光の相対位相を、第1の短周期パターン光の絶対位相に変換した計測モード画像を生成することができる。また、第2の位相変換方法では、上式(4)によって、計測光としてパターン画像に含まれた第2の短周期パターン光の相対位相を、第2の短周期パターン光の絶対位相に変換した計測モード画像を生成することができる。
このようにして、メイン制御部81は、周期が異なる2つ以上の計測光を照射して得たパターン画像に基づいて位相変換処理を行い、それぞれの位相シフト量に対応する計測モード画像を生成する。そして、メイン制御部81は、生成したパターン画像に基づいて、3次元の計測の処理を行う。
なお、第1の位相変換方法は、計測モード画像を生成する際にビート信号の演算を行わないため、演算負荷が少ない方法である。一方、第2の位相変換方法は、構造化したそれぞれのパターンの周期が近い周期であるため、構造化した複数のパターンを形成するための構成要素、つまり、パターン投影部7を容易に実現することができる方法である。しかし、位相変換処理は、上述した2つの方法に限定されるものではなく、被検物に複数の計測光を照射することによってパターン画像に含まれる計測光の相対位相を絶対位相に変換する方法であればよい。従って、内視鏡装置1において行う位相変換処理の方法は、特に規定しない。
次に、内視鏡装置1において計測モード画像に基づいて行う3次元計測の処理(処理3)について説明する。この処理3は、既存の技術を利用して被検物の3次元形状を復元する処理(以下、「3次元形状復元処理」という)である。なお、以下の説明においては、パターン投影光源701が予め定めた特定の波長帯域のレーザー光源であり、メイン制御部81が、4つの計測モード画像に基づいて3次元形状復元処理を行う場合について説明する。
内視鏡装置1は、計測モードにおいて、位相を90°(π/2)ずつシフトした計測光を被検物に4回照射し、メイン制御部81が、それぞれの計測光の照射において被検物を撮影したパターン画像から、4つの計測モード画像を生成する。そして、メイン制御部81は、生成した4つの計測モード画像に基づいて、3次元形状復元処理を行う。計測モード画像は、予め定めた特定の波長帯域の光を反射した被検物の画像であり、計測光として照射された予め定めた周期の構造化パターン(縦縞のパターン)における絶対位相が含まれている画像である。メイン制御部81は、4つの計測モード画像に対して、例えば、下式(6)のような既存の3次元画像の演算を行って、計測モード画像に含まれるそれぞれの画素の絶対位相φを高速に算出する。
φ(x,y) = tan−1((I3−I1)/(I0−I2)) ・・・(6)
上式(6)において、φ(x,y)は、撮像素子52に2次元の行列状に配置された画素の水平方向(列が並ぶ方向:列方向)x、垂直方向(行が並ぶ方向:行方向)yの座標位置に位置する画素(x,y)の絶対位相を表す。また、上式(6)において、I0は1枚目の計測モード画像に含まれる画素(x,y)の輝度を表し、I1は2枚目の計測モード画像に含まれる画素(x,y)の輝度を表し、I2は3枚目の計測モード画像に含まれる画素(x,y)の輝度を表し、I3は4枚目の計測モード画像に含まれる画素(x,y)の輝度を表す。
そして、メイン制御部81は、算出した絶対位相φと相対関係がある高さを、計測モード画像に含まれるそれぞれの画素ごとに求める。これにより、メイン制御部81は、計測モード画像に含まれる全ての画素が、水平方向、垂直方向、および高さの座標で表された画素群のデータ(以下、「3次元点群データ」という)を生成することができる。
このようにして、メイン制御部81は、生成した4つの計測モード画像に基づいて3次元形状復元処理を行う。そして、メイン制御部81は、3次元形状復元処理によって生成した3次元点群データに基づいて、3次元の計測の処理を行う。なお、上述した例では、4つの計測モード画像に基づいて3次元形状復元処理を行う場合を示したが、一般的に、3次元形状復元処理を行うために必要な計測モード画像の数は、3つ以上であればよい。従って、内視鏡装置1において3次元形状復元処理を行う、つまり、3次元点群データを生成するために用いる計測モード画像の数は、特に規定しない。
本実施形態によれば、被検物を3次元で計測するために構造化したパターンの予め定めた波長帯域の計測光(縦縞のパターンのパターン光)を被検物に照射するパターン投影部(パターン投影部7)と、計測光を照射して得た映像に応じた被検物の計測画像(計測モード画像)に基づいて、指定された測定点に応じた被検物に対する3次元の計測を行う3次元計測部(メイン制御部81)と、を備えた内視鏡システム(内視鏡装置1)であって、パターン投影部7は、構造化したパターンが異なる複数の光の基線長が同じで、構造化したパターンが異なる複数の光の位相をシフトして、計測光として被検物に複数回照射し、メイン制御部81は、それぞれの計測光の照射によって得たそれぞれの計測モード画像に基づいて、3次元の計測を行う内視鏡システム(内視鏡装置1)が構成される。
また、本実施形態によれば、パターン投影部7は、予め定めた波長帯域の光を発光する投影光源(パターン投影光源701)と、入射した光を、構造化したパターンの周期が異なる複数の構造化パターンの光に変換して出射するパターン変換部(縞生成部704)と、入射した光の位相を、予め定めたシフト量だけ位相シフトして出射する位相シフト部(縞生成部704)と、を備え、パターン投影光源701が発光した光を、構造化パターンの光(パターン光)に変換し、かつ位相シフトして、それぞれの計測光とする内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、縞生成部704は、出射する光の強度が(水平方向の)正弦波状に変化する縞状の構造化パターン(縦縞のパターン)に変換する内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、パターン投影光源701は、可視光の波長帯域の光を発光する光源である内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、メイン制御部81は、同じシフト量で構造化パターンの周期が異なる少なくとも2つの計測光の照射によって得たそれぞれの計測画像(パターン画像)に基づいて、パターン画像に含まれる縦縞のパターンの周期が表す被検物との相対的な距離の情報(相対位相)を絶対的な距離の情報(絶対位相)に変換した変換画像(計測モード画像)を、それぞれのシフト量ごとに生成し、それぞれのシフト量ごとの計測モード画像に含まれる絶対的な距離の情報(絶対位相)に基づいて、3次元の計測を行う内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、メイン制御部81は、同じシフト量で縦縞のパターンの周期が異なる少なくとも2つのパターン画像に含まれるそれぞれの構造化パターンの差に基づいた差周波(ビート信号)を求め、ビート信号の周期が表す被検物との絶対的な距離(絶対位相)を基準とした計測モード画像を、それぞれのシフト量ごとに生成する内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、パターン投影部7は、パターン投影光源701が発光した光を、少なくとも2つの縦縞のパターンに変換し、かつ位相シフトした計測光を、被検物に順次照射する内視鏡装置1が構成される。
また、本実施形態によれば、パターン投影光源701は、この内視鏡装置1の本体部(本体部2)に配置される内視鏡装置1が構成される。
このような構成と処理によって、内視鏡装置1では、パターン投影部7が、周期が異なる2つ以上の計測光を位相シフトして被検物に複数回照射し、それぞれの計測光で撮影した複数の画像に基づいて、例えば、ユーザによって設定された2つの測定点の間の距離(2点間の距離)など、被検物における実際の寸法(絶対寸法)を3次元で計測する。
<第1の構成>
次に、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影するパターン投影部の構成について説明する。図2は、本実施形態の内視鏡システムに備えた第1の構成のパターン投影部の概略構成の一例を示した図である。図2には、第1の構成のパターン投影部(以下、「パターン投影部71」という)を備えた内視鏡システムの構成を示している。図2に示した内視鏡システムの構成は、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7が、パターン投影部71に代わった構成である。以下の説明においては、パターン投影部71を備えた内視鏡装置1を、「内視鏡装置11」という。なお、内視鏡装置11も、工業用の内視鏡装置である。
なお、内視鏡装置11に備えた他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えた構成要素と同様である。また、パターン投影部71の構成要素にも、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7の構成要素と同様の構成要素を含んでいる。従って、以下の説明においては、内視鏡装置11の構成要素において、図1に示した内視鏡装置1の構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
パターン投影部71は、被検物の絶対寸法を計測する処理に必要な画像を取得するために投影する計測光における異なる周期を、パターン投影光源が発光する光の波長帯域を異ならせることによって実現する構成のパターン投影部である。パターン投影部71は、本体部2内に配置されたパターン投影光源711a、パターン投影光源711b、カップリングレンズ712a、カップリングレンズ712b、ミラー718、ハーフミラー719、およびパターン制御部706と、挿入部3内を通る光ファイバ703と、先端部4内に配置された縞生成部714および投影光学系705とを含んで構成される。
パターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bのそれぞれは、予め定めた特定の波長帯域の光源である。なお、パターン投影光源711aとパターン投影光源711bとのそれぞれが発光する光の波長帯域は、異なる波長帯域である。例えば、パターン投影光源711aは赤色の波長帯域のレーザー光源であり、パターン投影光源711bは緑色の波長帯域のレーザー光源である。以下の説明においては、パターン投影光源711aが発光した特定の波長帯域のレーザー光を「第1のレーザー光」といい、パターン投影光源711bが発光した特定の波長帯域のレーザー光を「第2のレーザー光」という。
カップリングレンズ712aおよびカップリングレンズ712bのそれぞれは、対応するパターン投影光源711aまたはパターン投影光源711bから発せられた特定の波長帯域のレーザー光を、光ファイバ703の径と同程度まで収束させる光学レンズである。カップリングレンズ712aは、収束させた第1のレーザー光をハーフミラー719に出射する。また、カップリングレンズ712bは、収束させた第2のレーザー光を、ミラー718に出射する。
ミラー718は、カップリングレンズ712bから出射された第2のレーザー光を反射してハーフミラー719に導く。ハーフミラー719は、カップリングレンズ712aから出射された第1のレーザー光と、ミラー718から導かれた第2のレーザー光とを混合して光ファイバ703に導入する。これにより、光ファイバ703は、ハーフミラー719から導入されたレーザー光を、挿入部3を通して縞生成部714まで導く。
縞生成部714は、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて、光ファイバ703によって導かれたレーザー光を予め定めた周期で構造化したパターン光に変換し、かつ予め定めた位相シフトを行って投影光学系705に出射する縞生成デバイスである。これにより、それぞれの計測光が被検物に照射される。
ここで、縞生成部714の構成について説明する。図3は、本実施形態の内視鏡システム(内視鏡装置11)に備えた第1の構成のパターン投影部71に含まれる縞生成部714の概略構成の一例を示した図である。縞生成部714は、光の入射端Inに光ファイバ703によって導かれた第1のレーザー光と第2のレーザー光とが混合したレーザー光(以下、「混合レーザー光」という)を、2つの光路に分離してそれぞれの出射端Out1および出射端Out2に導いて放射させる。ここで、縞生成部714では、出射端Out1と出射端Out2とが、出射端Out1と出射端Out2との間の距離によって規定される分離幅dだけ離れて配置されている。縞生成部714では、出射端Out1と出射端Out2とのそれぞれから放射されたそれぞれのレーザー光が、互いに干渉することによって1つの縞状のパターンを形成するため、近似的に1つの光源から出射されたレーザー光であると見なすことができる。
なお、レーザー光の干渉によって形成される縞状のパターンの周期は、ヤングの干渉縞の原理に基づいて、入射端Inに導かれた混合レーザー光の波長帯域(混合レーザー光の波長)と、出射端Out1と出射端Out2との分離幅dに応じた周期になる。例えば、分離幅dが変わらない場合、入射端Inに導かれた混合レーザー光の波長帯域が低い帯域になる、つまり、混合レーザー光の波長が短くなると縞状のパターンの周期が短くなり、入射端Inに導かれた混合レーザー光の波長帯域が高い帯域になる、つまり、混合レーザー光の波長が長くなると縞状のパターンの周期が長くなる。また、例えば、入射端Inに導かれた混合レーザー光の波長帯域が変わらない場合、分離幅dが広くなる、つまり、出射端Out1と出射端Out2とが離れた位置になると縞状のパターンの周期が短くなり、分離幅dが狭くなる、つまり、出射端Out1と出射端Out2とが近い位置になると縞状のパターンの周期が長くなる。
また、縞生成部714は、入射端Inに導かれた混合レーザー光を分離して放射させる出射端Out2側の光路に設けられた位相シフタ7141によって、出射端Out2から放射するレーザー光の位相を変更(シフト)する。位相シフタ7141は、例えば、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて熱を発することによって、出射端Out2側の光路に導かれた混合レーザー光の位相を、温度の変化に応じてシフトさせる。これにより、位相がシフトされずに導かれて出射端Out1から放射されるレーザー光と、位相がシフトされて出射端Out2から放射されるレーザー光とが互いに干渉することによって形成される縞の位相も変更(シフト)される、つまり、計測光が位相シフトされる。なお、位相シフタ7141が混合レーザー光の位相をシフトする方法は、温度の変化を用いた方法に限定されるものではない。
このような構成によって、縞生成部714は、光ファイバ703によって導かれた混合レーザー光を予め定めた周期の縞状のパターンに変換し、かつ予め定めた位相シフトを行って出射する。
本第1の構成によれば、パターン変換部(縞生成部714)は、入射した光(混合レーザー光)を2つの光に分け(光路に分離し)、分けた(分離した)それぞれの光(出射端Out1と出射端Out2とのそれぞれから放射されたそれぞれのレーザー光)の干渉を利用して入射した光(混合レーザー光)を縞状の構造化パターン(縞状のパターン)に変換する内視鏡システム(内視鏡装置11)が構成される。
また、本第1の構成によれば、縞生成部714および位相シフト部(縞生成部714内の位相シフタ7141)は、入射した光を2つの光路に分離し、それぞれの光路に対応する2つの出射端(出射端Out1および出射端Out2)から放射する光(レーザー光)の干渉を利用して入射した混合レーザー光を縞状のパターンに変換し、一方の光路(出射端Out2側の光路)のレーザー光の位相を変更(シフト)することによって変換した縞状のパターンのレーザー光を位相シフトする縞生成デバイス(縞生成部714)で構成される内視鏡装置11が構成される。
また、本第1の構成によれば、投影光源(パターン投影光源711aおよびパターン投影光源711b)は、レーザー光を発光する光源である内視鏡装置11が構成される。
また、本第1の構成によれば、パターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bは、異なる2つの波長帯域の光をそれぞれ発光する光源であり、縞生成部714は、パターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bが発光したそれぞれのレーザー光に対応した2つの縞状のパターンに変換し、位相シフタ7141は、パターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bが発光したそれぞれのレーザー光ごとに位相シフトする内視鏡装置11が構成される。
上記に述べたように、第1の構成のパターン投影部71では、パターン投影部71を構成するパターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bのそれぞれが発光する光の波長帯域を異なる波長帯域にすることによって、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の計測光を、位相シフトして被検物に投影する。このとき、第1の構成のパターン投影部71では、縞生成部714の出射端Out1および出射端Out2から放射されるレーザー光の干渉によって構造化された縞状のパターンが形成される。このとき、パターン投影光源711aとパターン投影光源711bそれぞれから発光するレーザー光は同じ光路を通るため、異なる波長帯域を有する計測光の基線長は同じである。これにより、第1の構成のパターン投影部71を備えた内視鏡装置11では、上式(6)のような一般的な位相シフト法の計算を行うだけで、3次元の計測を行うことができる。また、上式(6)のような一般的な位相シフトの計算は、特許文献2でのリップルを用いた計算方法よりも計算負荷が小さく、低消費電力や小型化が要求される内視鏡装置に適している。
なお、第1の構成のパターン投影部71では、ミラー718とハーフミラー719とによって第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合して光ファイバ703に導入する構成について説明した。しかし、第1の構成のパターン投影部71において第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合する構成は、ミラー718とハーフミラー719とを用いた構成に限定されるものではない。例えば、光スイッチング素子によって第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合する構成であってもよい。
また、第1の構成のパターン投影部71では、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合した混合レーザー光を光ファイバ703に導入する構成について説明した。しかし、光ファイバ703に導入して縞生成部714に導くレーザー光は、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合した混合レーザー光に限定されるものではない。例えば、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを光ファイバ703に順次導入(交互に導入)して縞生成部714に導く構成にすることもできる。より具体的には、例えば、光スイッチング素子によって、光ファイバ703に導入するレーザー光を、第1のレーザー光または第2のレーザー光に切り替える構成にすることもできる。この場合、被検物には、第1のレーザー光に基づいた計測光と第2のレーザー光に基づいた計測光とが交互に照射されることになるが、内視鏡装置11と同様の効果を得ることができる。
<第2の構成>
次に、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影するパターン投影部7の別の構成について説明する。第2の構成のパターン投影部(以下、「パターン投影部72」という)を備えた内視鏡システムの構成は、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7が、パターン投影部72に代わった構成である。以下の説明においては、パターン投影部72を備えた内視鏡装置1を、「内視鏡装置12」という。なお、内視鏡装置12も、工業用の内視鏡装置である。なお、内視鏡装置12に備える他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えた構成要素と同様であるため、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
図4は、本実施形態の内視鏡システム(内視鏡装置12)に備えた第2の構成のパターン投影部72の概略構成の一例を示した図である。なお、図4には、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7に代わって内視鏡装置12に備えられるパターン投影部72のみの構成を示している。また、パターン投影部72の構成要素にも、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7の構成要素と同様の構成要素を含んでいる。従って、以下の説明においては、パターン投影部72の構成要素において、図1に示した内視鏡装置1に備えたパターン投影部7の構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
パターン投影部72は、被検物の絶対寸法を計測する処理に必要な画像を取得するために投影する計測光における異なる周期を、パターン投影光源が発光する光を偏光することによって波長を異ならせる構成のパターン投影部である。パターン投影部72は、本体部2内に配置されたパターン投影光源721a、パターン投影光源721b、ダイクロックミラー723、コリメートレンズ724、1/2波長板725、モータM、1/4波長板726、カップリングレンズ702、およびパターン制御部706(不図示)と、挿入部3内を通る光ファイバ703と、先端部4内に配置された複屈折結晶727、偏光板728、および拡大光学系729とを含んで構成される。
パターン投影光源721aおよびパターン投影光源721bのそれぞれは、予め定めた特定の波長帯域の光源である。なお、パターン投影光源721aとパターン投影光源721bとのそれぞれが発光する光の波長帯域は、第1の構成のパターン投影部71に備えたパターン投影光源711aおよびパターン投影光源711bと同様に、異なる波長帯域である。以下の説明においては、パターン投影光源721aが発光した特定の波長帯域のレーザー光を「第1のレーザー光」といい、パターン投影光源721bが発光した特定の波長帯域のレーザー光を「第2のレーザー光」という。
ダイクロックミラー723は、パターン投影光源721aから発せられた第1のレーザー光を透過し、パターン投影光源721bから発せられた第2のレーザー光を反射することによって、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合してコリメートレンズ724に導く。コリメートレンズ724は、ダイクロックミラー723によって導かれた第1のレーザー光と第2のレーザー光とが混合したレーザー光(混合レーザー光)の光束を並行光束にする、つまり、直線偏光する光学レンズである。コリメートレンズ724は、直線偏光した混合レーザー光を、1/2波長板725に出射する。
1/2波長板725は、入射した光に位相差を発生させることによって、光の偏光軸を回転させて出射する波長板である。1/2波長板725は、コリメートレンズ724から出射された直線偏光の混合レーザー光の偏光軸を90°(π/2)回転させて、つまり、90°(π/2)の位相差をもたせて1/4波長板726に出射する。モータMは、パターン制御部706(不図示)から出力された制御信号に応じた角度に1/2波長板725を回転させる。1/4波長板726は、入射した光に位相差を発生させることによって、光の偏光軸を回転させて出射する波長板である。1/4波長板726は、入射した混合レーザー光の偏光軸を45°(π/4)回転させて、つまり、45°(π/4)の位相差をもたせてカップリングレンズ702に出射する。つまり、1/4波長板726は、1/2波長板725によって90°(π/2)の位相差がもたされた混合レーザー光に、さらに45°(π/4)の位相差をもたせてカップリングレンズ702に出射する。
パターン投影部72では、1/2波長板725、モータM、1/4波長板726の構成によって、コリメートレンズ724から出射された直線偏光の混合レーザー光の位相をシフトする。より具体的には、パターン投影部72では、1/4波長板726はレーザー光から入射する光の偏光軸に対して45°傾斜した角度に固定して配置さており、モータMが1/2波長板725を回転させることによって、直線偏光の混合レーザー光に予め定めた位相差をもたせて位相シフトする。さらに具体的には、直線偏光の混合レーザー光の偏光軸の角度をθ、1/2波長板725の偏光軸の角度をΦとしたとき、偏光軸の角度θと偏光軸の角度Φとが同じ角度(θ=Φ)であれば、1/2波長板725は、偏光軸を90°(π/2)回転させた直線偏光の混合レーザー光を出射する。一方、偏光軸の角度θと偏光軸の角度Φとが異なる角度(θ≠Φ)であれば、1/2波長板725は、偏光軸を偏光軸の角度θと偏光軸の角度Φとに応じた2(Φ−θ)の角度だけ回転させた直線偏光の混合レーザー光を出射する。そして、1/4波長板726は、1/2波長板725から1/4波長板726の偏光軸の角度と同じ角度、つまり、1/4波長板726が固定されている45°(π/4)の角度に回転された直線偏光の混合レーザー光が入射された場合には、混合レーザー光を円偏光に変換して出射する。一方、1/4波長板726は、1/2波長板725から1/4波長板726の偏光軸の角度と平行な角度に回転された直線偏光の混合レーザー光が入射された場合には、混合レーザー光の直線偏光を維持して出射する。
1/2波長板725、モータM、1/4波長板726の構成によって、位相シフトされた混合レーザー光は、カップリングレンズ702によって径が収束されて光ファイバ703に導入され、光ファイバ703によって複屈折結晶727に導かれる。
複屈折結晶727は、入射した光を、互いに直交する直線偏光の常光と異常光との2つの光に分光して出射する結晶板である。複屈折結晶727は、光ファイバ703によって導かれた位相シフトされた混合レーザー光を分光し、分光したそれぞれの混合レーザー光を偏光板728に出射する。偏光板728は、入射した光を特定の方向に偏光して出射する、つまり、特定の偏光軸方向の光のみを透過する偏光板である。偏光板728は、複屈折結晶727から出射されたそれぞれの混合レーザー光における特定の軸方向のみを透過して拡大光学系729に出射する。
パターン投影部72では、複屈折結晶727と偏光板728との構成によって、光ファイバ703によって導かれた混合レーザー光によるパターン光を生成する。より具体的には、複屈折結晶727が、入射した混合レーザー光を、常光の混合レーザー光と異常光の混合レーザー光との2つの混合レーザー光に分光して偏光板728に出射する。偏光板728は、偏光軸を45°傾斜させた角度に固定して配置さており、複屈折結晶727から出射された常光の混合レーザー光と異常光の混合レーザー光とにおける同じ軸方向の混合レーザー光を透過する。偏光板728を透過したそれぞれの混合レーザー光は、同じ偏光軸方向、つまり、45°の方向の混合レーザー光であるため、それぞれの混合レーザー光が互いに干渉して縞状のパターンを形成する。
拡大光学系729は、偏光板728から出射された縞状のパターンの混合レーザー光を拡大して(観察範囲にまで広げて)被検物に照射する光学レンズ群である。なお、図4に示したパターン投影部72の構成では、拡大光学系729が1つの光学レンズで構成されている場合を示しているが、拡大光学系729は、複数の光学レンズで構成されてもよい。
このような構成によって、パターン投影部72は、被検物の絶対寸法を計測する処理に必要な画像を取得するために投影する計測光(縞状のパターンの混合レーザー光)を位相シフトして被検物に照射する。
本第2の構成によれば、パターン変換部(複屈折結晶727と偏光板728との構成)は、入射した光を2つ(常光と異常光)に分光し、分光したそれぞれの光を偏光した光の干渉を利用して入射した光を縞状の構造化パターン(縞状のパターン)に変換し、位相シフト部(1/2波長板725、モータM、1/4波長板726の構成)は、入射した光の偏光軸を回転することによって光を位相シフトする内視鏡システム(内視鏡装置12)が構成される。
上記に述べたように、第2の構成のパターン投影部72では、パターン投影部72を構成する1/2波長板725、モータM、および1/4波長板726によって混合レーザー光の位相シフトを行い、複屈折結晶727と偏光板728とによって位相シフトされた混合レーザー光から縞状のパターンを形成して、計測光として被検物に投影する。このとき、第2の構成のパターン投影部72では、複屈折結晶727と偏光板728とによって構造化された縞状のパターンを形成するため、それぞれの計測光の基線長は同じである。これにより、第2の構成のパターン投影部72を備えた内視鏡装置12でも、第1の構成のパターン投影部71を備えた内視鏡装置11と同様に、計測精度が劣化することなく、3次元の計測を行うことができる。
なお、第2の構成のパターン投影部72では、ダイクロックミラー723によって第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合してコリメートレンズ724に導入する構成について説明した。しかし、第2の構成のパターン投影部72において第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合する構成は、第1の構成のパターン投影部71と同様に、ダイクロックミラー723を用いた構成に限定されるものではなく、光スイッチング素子によって第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合する構成であってもよい。
また、第2の構成のパターン投影部72では、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを混合した混合レーザー光をコリメートレンズ724に導く構成について説明したが、コリメートレンズ724に導くレーザー光は、第1の構成のパターン投影部71と同様に、混合レーザー光に限定されるものではない。つまり、第2の構成のパターン投影部72でも、第1の構成のパターン投影部71と同様に、パターン投影光源721aとパターン投影光源721bを順次(交互に)発光させることによって、第1のレーザー光と第2のレーザー光とを交互にダイクロックミラー723に導入する構成にした場合でも、内視鏡装置12と同様の効果を得ることができる。
<第3の構成>
次に、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影するパターン投影部7のさらに別の構成について説明する。第3の構成のパターン投影部(以下、「パターン投影部73」という)を備えた内視鏡システムの構成は、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7が、パターン投影部73に代わった構成である。以下の説明においては、パターン投影部73を備えた内視鏡装置1を、「内視鏡装置13」という。なお、内視鏡装置13も、工業用の内視鏡装置である。なお、内視鏡装置13に備える他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えた構成要素と同様であるため、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
パターン投影部73は、1つまたは複数のパターン投影光源が発光した特定の波長帯域のレーザー光を、縞生成部によって異なる周期にし、かつ位相シフトを行って、被検物の絶対寸法を計測する処理に必要な画像を取得するための計測光として投影する構成のパターン投影部である。なお、パターン投影部73の構成要素には、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7の構成要素と同様の構成要素を含んでいる。従って、以下の説明においては、パターン投影部73の構成要素において、図1に示した内視鏡装置1に備えたパターン投影部7の構成要素と同様の構成要素に関する詳細な説明は省略する。
1つまたは複数のパターン投影光源701は、特定の波長帯域のレーザー光を有する。ただし、それぞれのレーザー光の波長は同じであってもよいし、異なっていてもよい。それぞれのレーザー光は、光ファイバによって縞生成部に導入される。図5は、本実施形態の内視鏡システム(内視鏡装置13)に備えた第3の構成のパターン投影部73に含まれる縞生成部の概略構成の一例を示した図である。図5に示した縞生成部734は、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて、それぞれのレーザー光を予め定めた周期でそれぞれ構造化した2つのパターン光に変換し、かつ変換したそれぞれのパターン光に対して予め定めた位相シフトを行って投影光学系705に出射する縞生成デバイスである。なお、縞生成部734は、図3に示した第1の構成のパターン投影部71を構成する縞生成部714を2つ備えたのと同様の構成である。
より具体的には、縞生成部734は、第1の入射端InAに導かれたレーザー光を2つの光路に分離してそれぞれの第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2に導いて放射させる。また、縞生成部734は、第2の入射端InBに導かれたレーザー光を2つの光路に分離してそれぞれの第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2に導いて放射させる。これにより、縞生成部734は、第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2から放射されるそれぞれのレーザー光が互いに干渉した縞状のパターンと、第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2から放射されたそれぞれのレーザー光が互いに干渉した縞状のパターンとのそれぞれを形成する。
縞生成部734では、図5に示したように、第1の出射端OutA1と第1の出射端OutA2とが分離幅dAの距離だけ離れて配置され、第2の出射端OutB1と第2の出射端OutB2とが分離幅dBの距離だけ離れて配置されている。このため、入射端InAに入射するレーザー光の波長帯域と、入射端InBに入射するレーザー光の波長帯域が同じであるならば、縞生成部734では、狭い分離幅dAの距離だけ離れて配置された第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2から放射されたそれぞれのレーザー光によって長い周期の縞状のパターンを形成し、広い分離幅dBの距離だけ離れて配置された第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2から放射されたそれぞれのレーザー光によって短い周期の縞状のパターンを形成する。つまり、縞生成部734は、第1の入射端InAおよび第2の入射端InBに導かれたそれぞれのレーザー光の波長帯域が変わらないが、それぞれの分離幅に応じて周期が異なる2つの計測光を生成する。また、入射端InAに入射するレーザー光の波長帯域と、入射端InBに入射するレーザー光の波長帯域が異なるのであれば、それぞれのレーザー光の波長帯域と分離幅に応じて周期を決定する。
なお、第1の出射端OutA1と第1の出射端OutA2とのそれぞれから放射されたそれぞれのレーザー光は互いに干渉することによって1つの縞状のパターンを形成し、第2の出射端OutB1と、第2の出射端OutB2とのそれぞれから放射されたそれぞれのレーザー光は互いに干渉することによって1つの縞状のパターンを形成する。このため、第1の出射端と第2の出射端から放射されるそれぞれの縞状のパターンのレーザー光は、図3に示した第1の構成のパターン投影部71を構成する縞生成部714と同様に、近似的に同じ1つの光源から出射されたレーザー光であると見なすことができる。
また、縞生成部734は、第1の入射端InAに導かれたレーザー光を分離して放射させる第1の出射端OutA2側の光路に設けられた位相シフタ7341によって、第1の出射端OutA2から放射するレーザー光の位相を変更(シフト)する。また、縞生成部734は、第2の入射端InBに導かれたレーザー光を分離して放射させる第2の出射端OutB側の光路に設けられた位相シフタ7342によって、第2の出射端OutB2から放射するレーザー光の位相をシフトする。これにより、縞生成部734では、第1の出射端OutA1と第1の出射端OutA2とから放射されるレーザー光によって形成する縞状のパターンの計測光を位相シフトし、第2の出射端OutB1と第2の出射端OutB2とから放射されるレーザー光によって形成する縞状のパターンの計測光を位相シフトする。
このような構成によって、パターン投影部73は、1つまたは複数のパターン投影光源701が発光したレーザー光を、予め定めた異なる周期の2つの縞状のパターンに変換し、かつ予め定めた位相シフトを行って被検物に照射する。
なお、パターン投影部73では、1つまたは複数のパターン投影光源701が発光したレーザー光を縞生成部734に導入する場合について説明した。しかし、パターン投影部73においては、パターン投影光源701が発光したレーザー光を2つに分割する構成については、特に規定しない。従って、上述したように、レーザー光を2つに分割する構成要素を、縞生成部734の前段に配置してもよいし、縞生成部734内に備えてもよい。
また、パターン投影部73では、パターン投影光源701が1つである場合、縞生成部734の第1の入射端InAと第2の入射端InBとのそれぞれに導くそれぞれのレーザー光の波長帯域は、同じ波長帯域である。このため、パターン投影部73では、第1の入射端InAおよび第2の入射端InBへのレーザー光の導入を同時に行わない構成にする必要がある。例えば、レーザー光を2つに分割する構成要素が、第1の入射端InAへのレーザー光の導入と、第2の入射端InBへのレーザー光の導入とを交互に行う構成にしてもよい。この場合、縞生成部734は、第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2からのレーザー光の放射による長い周期の縞状のパターンを形成と、第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2からのレーザー光の放射による短い周期の縞状のパターンを形成とを交互に行うことになる。これにより、縞生成部734において異なる組み合わせの出射端から放射されるレーザー光同士による干渉がなくなる。
本第3の構成によれば、縞生成デバイス(縞生成部734)は、分離した光(レーザー光)を放射する出射端の組を2組(第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2の組と、第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2の組)有し、それぞれの組に属する2つの出射端の間の距離(第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2の間の分離幅dAと、第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2の間の分離幅dB)は異なる内視鏡システム(内視鏡装置13)が構成される。
上記に述べたように、第3の構成のパターン投影部73では、パターン投影部73を構成する1つまたは複数のパターン投影光源701が発光したそれぞれの光を縞生成部734に導入する。そして、第3の構成のパターン投影部73では、縞生成部734が、それぞれの光を予め定めた周期で構造化したパターンの2つの計測光を、それぞれ位相シフトして被検物に投影する。このとき、第3の構成のパターン投影部73でも、縞生成部734によって形成される2つの計測光の基線長は同じである。これにより、第3の構成のパターン投影部73を備えた内視鏡装置13でも、第1の構成のパターン投影部71を備えた内視鏡装置11および第2の構成のパターン投影部72を備えた内視鏡装置12と同様に、計測精度が劣化することなく、3次元の計測を行うことができる。しかも、第3の構成のパターン投影部73では、パターン投影部73を構成する光源が1つのパターン投影光源701のみである。このため、第3の構成のパターン投影部73を備えた内視鏡装置13では、本体部2を小型化することもできる。
なお、第3の構成のパターン投影部73では、縞生成部734における分離幅dAと分離幅dBとに大きな差がある場合について説明した。この場合、第3の構成のパターン投影部73を備えた内視鏡装置13に備えたメイン制御部81は、第1の位相変換処理の方法によって、パターン画像から計測モード画像を生成する処理(処理2)を行うことができる。一方、メイン制御部81が、第2の位相変換処理の方法によって、パターン画像から計測モード画像を生成する処理(処理2)を行う場合には、第1の出射端OutA1および第1の出射端OutA2からのレーザー光の放射によって形成する縞状のパターンの周期と、第2の出射端OutB1および第2の出射端OutB2からのレーザー光の放射によって形成する縞状のパターン周期とは、近い周期である必要がある。この場合には、分離幅dAと分離幅dBとの差を少なくすることによって、縞生成部734が、近い周期の縞状のパターンを形成することができる。このように、第3の構成のパターン投影部73では、縞生成部734におけるそれぞれの分離幅を変更することによって、メイン制御部81が行う処理2に適したパターン画像を得ることができる。
なお、第3の構成のパターン投影部73では、予め定めた周期で構造化した2つのパターン光に変換する縞生成部734の構成、つまり、2組の出射端を備えた構成について説明した。より具体的には、図3に示した第1の構成のパターン投影部71を構成する縞生成部714を2つ備えたのと同様の構成である場合について説明した。しかし、縞生成部734に備える出射端の組の数は、2組に限定されるものではなく、変換するパターン光の数に応じてさらに多くの出射端の組を備えた構成にすることができる。つまり、図3に示した第1の構成のパターン投影部71を構成する縞生成部714を複数備えたのと同様の構成にすることができる。
<第4の構成>
次に、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影するパターン投影部7のさらに別の構成について説明する。図6は、本実施形態の内視鏡システムに備えた第4の構成のパターン投影部の概略構成の一例を示した図である。図6には、第4の構成のパターン投影部(以下、「パターン投影部74」という)を備えた内視鏡システムの構成を示している。図6に示した内視鏡システムの構成は、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7が、パターン投影部74に代わった構成である。以下の説明においては、パターン投影部74を備えた内視鏡装置1を、「内視鏡装置14」という。なお、内視鏡装置14も、工業用の内視鏡装置である。なお、内視鏡装置14に備える他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えた構成要素と同様であるため、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
パターン投影部74は、1つのパターン投影光源(以下、「パターン投影光源741」という)が、予め定めた特定の波長帯域のレーザー光を複数発光し、このパターン投影光源741が発光したそれぞれの波長帯域のレーザー光から計測光を生成して被検物に投影する構成のパターン投影部である。つまり、パターン投影部74は、投影する計測光における異なる周期を、パターン投影光源741が発光する光の波長帯域を変更することによって実現する構成のパターン投影部である。なお、複数の波長帯域のレーザー光を発光するパターン投影光源741は、例えば、波長変調回路を内蔵した構成、色素レーザーを適用した構成、非線形光学素子(結晶)を利用した構成にすることによって実現することができる。
パターン投影部74の構成は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7を構成するパターン投影光源701が、パターン投影光源741に代わった構成である。なお、パターン投影部74を構成する他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7構成要素と同様であるため、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
また、パターン投影部74において、パターン投影光源741が発光したレーザー光を構造化したパターン光に変換する構成、および予め定めた位相シフトを行う構成は、図2に示した第1の構成のパターン投影部71、または図4に示した第2の構成のパターン投影部72の構成において、パターン投影光源を1つ備える構成にした場合と同様に考えることができる。つまり、パターン投影部74では、第1の構成のパターン投影部71に含まれるパターン投影光源711aとパターン投影光源711bによる異なる波長帯域のレーザー光の発光を、1つのパターン投影光源741が行う構成として考えるこができる。また、パターン投影部74では、第2の構成のパターン投影部72に含まれるパターン投影光源721aとパターン投影光源721bによる異なる波長帯域のレーザー光の発光を、1つのパターン投影光源741が行う構成として考えるこができる。従って、パターン投影部74の動作や制御方法は、パターン投影部71やパターン投影部72と同様に考えることができるため、パターン投影部74の構成要素に関する詳細な説明も省略する。なお、図6には、パターン投影部74においてパターン投影光源741が発光したレーザー光を構造化したパターン光に変換する構成、および予め定めた位相シフトを行う構成として、図2に示した第1の構成のパターン投影部71と同様の構成を示している。つまり、パターン投影部74に、縞生成部714を備えた構成を示している。
このような構成によって、パターン投影部74は、第1の構成のパターン投影部71、または第2の構成のパターン投影部72と同様に、パターン投影光源741が発光したレーザー光を、予め定めた異なる周期の縞状のパターンに変換し、かつ予め定めた位相シフトを行って出射する。なお、パターン投影部74では、パターン投影光源741がそれぞれの波長帯域のレーザー光を順次発光することによって、それぞれの波長帯域に応じた計測光を、被検物に順次照射する。例えば、パターン投影光源741が2つの異なる波長帯域のレーザー光を交互に発光する場合には、それぞれの波長帯域のレーザー光に基づいた2つの異なる計測光を、交互に被検物に照射する。
上記に述べたように、第4の構成のパターン投影部74では、パターン投影部74を構成するパターン投影光源741が複数の波長帯域のレーザー光を発光することによって、レーザー光の波長帯域に応じた周期で構造化したパターンの複数の計測光を形成し、かつ位相シフトして被検物に投影する。つまり、第4の構成のパターン投影部74では、レーザー光を構造化したパターン光に変換する構成、および予め定めた位相シフトを行う構成が基本的な構成であっても、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影することができる。このとき、第4の構成のパターン投影部74でも、パターン投影部74によって形成される複数の計測光の基線長は同じである。これにより、第4の構成のパターン投影部74を備えた内視鏡装置14でも、第1の構成〜第3の構成のパターン投影部を備えた内視鏡装置11〜内視鏡装置13と同様に、計測精度が劣化することなく、3次元の計測を行うことができる。しかも、第4の構成のパターン投影部74でも、パターン投影部74を構成する光源が、パターン投影光源741の1つのみである。このため、第4の構成のパターン投影部74を備えた内視鏡装置14でも、本体部2を小型化することができる。
<第5の構成>
次に、予め定めた周期で構造化したパターンの複数の光を被検物に投影するパターン投影部7のさらに別の構成について説明する。第1の構成〜第4の構成のパターン投影部による計測光の生成方法は、出射するレーザー光の干渉によって構造化したパターンへの変換と位相シフトとを行う方法であった。しかし、構造化したパターンに変換して、かつ位相シフトを行う方法は、第1〜第4の構成による方法に限定されるものではない。図7は、本実施形態の内視鏡システムに備えた第5の構成のパターン投影部の概略構成の一例を示した図である。図7には、第5の構成のパターン投影部(以下、「パターン投影部75」という)を備えた内視鏡システムの構成を示している。図7に示した内視鏡システムの構成は、図1に示した内視鏡装置1の基本構成におけるパターン投影部7が、パターン投影部75に代わった構成である。以下の説明においては、パターン投影部75を備えた内視鏡装置1を、「内視鏡装置15」という。なお、内視鏡装置15も、工業用の内視鏡装置である。なお、内視鏡装置15に備える他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えた構成要素と同様であるため、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
パターン投影部75は、パターン投影光源701が発光した予め定めた特定の波長帯域のレーザー光を透過して被検物に投影するときに、構造化したパターン光に変換し、かつ予め定めた位相シフトを行う構成のパターン投影部である。パターン投影部75は、本体部2内に配置されたパターン投影光源701、カップリングレンズ702、およびパターン制御部706と、挿入部3内を通る光ファイバ703と、先端部4内に配置された空間変調部754および投影光学系705とを含んで構成される。
パターン投影部75の構成は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7を構成する縞生成部734が、空間変調部754に代わった構成である。なお、パターン投影部75を構成する他の構成要素は、図1に示した基本構成の内視鏡装置1に備えたパターン投影部7構成要素と同様であるため、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明は省略する。
空間変調部754は、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて、光ファイバ703によって導かれたレーザー光を予め定めた周期で構造化したパターン光に変換し、かつ予め定めた位相シフトを行った計測光を投影光学系705に出射する空間変調素子である。空間変調部754は、例えば、光を透過する際に構造化したパターンに変換するスリットに相当するが、パターン制御部706から出力された制御信号に応じて構造化パターンを変更することができる構成である。空間変調部754は、例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)など利用した構成にすることによって実現することができる。また、空間変調部754は、例えば、反射型液晶パネル、透過型液晶パネル、液晶シャッターなど利用した構成にすることによっても実現することができる。なお、空間変調部754を、位相変調型液晶パネルや強度変調型液晶パネルで実現してもよい。
ここで、空間変調部754による構造化したパターン光への変換方法と、位相シフトの方法との具体的な一例について説明する。以下の説明においては、空間変調部754が、入射したレーザー光を形成したパターンを透過して出射する液晶シャッターであり、縦縞のパターンに構造化した計測光を出射する場合について説明する。図8は、本実施形態の内視鏡システム(内視鏡装置15)に備えた第5の構成のパターン投影部75に含まれる空間変調部754による縞状のパターンの生成方法の一例を示した図である。図8(a)には、液晶シャッターに形成するパターンによって計測光の周期と位相とを変更する場合の一例を示し、図8(b)には、液晶シャッターに形成するパターンと角度とによって計測光の周期と位相とを変更する場合の一例を示している。
内視鏡装置15が、2つの異なる周期の縦縞のパターンの計測光を3回照射して被検物を計測する場合を考える。
まず、図8(a)を参照して、形成するパターンによって計測光の周期と位相とを変更する場合の一例を説明する。形成するパターンによって計測光の周期を変更する場合、パターン投影部75は、液晶シャッターによって、レーザー光を透過する領域(透過領域)とレーザー光を透過しない(非透過領域)とが水平方向に周期的に繰り返す2つの異なる透過パターン(縦縞のパターン)を形成する。これにより、例えば、図8(a)に示した周期Aと周期Bとのように構造化したそれぞれのパターンの計測光が、被検物に照射される。また、形成するパターンによって計測光の位相を変更する場合、パターン投影部75は、液晶シャッターによって形成した透過パターンを、透過領域と非透過領域とのそれぞれの状態(間隔)を維持したまま、つまり、形成した構造化したパターンの周期を維持したまま水平方向に移動させる。これにより、例えば、図8(a)に示した位相X、位相Y、および位相Zのように、同じ周期に構造化したパターンのそれぞれに対応する計測光が位相シフトされて、被検物に照射される。図8(a)に示した位相X、位相Y、および位相Zは、周期Aと周期Bとのそれぞれの縦縞のパターンを120°(2π/3)ずつ位相シフトする場合を示している。
続いて、図8(b)を参照して、形成するパターンと角度とによって計測光の周期と位相とを変更する場合の一例を説明する。形成するパターンによって計測光の周期を変更する場合は、図8(a)と同様に、液晶シャッターに形成した透過領域と非透過領域とによる透過パターンを切り替える。また、角度によって計測光の位相を変更する場合、パターン投影部75は、例えば、液晶シャッターが配置されている角度を変更することによって、透過するレーザー光の進む方向を変える。なお、液晶シャッターが配置されている角度は、例えば、液晶シャッターを保持している保持治具自体を回転させることによって、液晶シャッター自体を回転させて実現することができる。これにより、例えば、図8(b)に示した異なる周期の2つの縦縞のパターン(周期Aおよび周期B)のそれぞれに対応する計測光が位相シフトされて、被検物に照射される。
このような構成によって、パターン投影部75は、パターン投影光源701が発光したレーザー光を透過して被検物に投影するときに、空間変調部754によって予め定めた異なる周期の縞状のパターンに変換し、かつ予め定めた位相シフトを行う。これにより、パターン投影部75は、第1の構成〜第4の構成のパターン投影部と同様に、パターン投影光源701が発光したレーザー光を、予め定めた異なる周期の縞状のパターンに変換し、かつ予め定めた位相シフトを行って被検物に照射する。
なお、図8では、空間変調部754が液晶シャッターである場合について説明したが、空間変調部754がDMDなどの他の構成である場合には、その構成に適した構造化した変換方法(パターン光への変換方法および位相シフトの方法)を適用する。従って、空間変調部754によるパターン光への変換方法および位相シフトの方法は、図8に示した方法に限定しない。
本第5の構成によれば、パターン変換部(空間変調部754)および位相シフト部(空間変調部754)は、光を透過する透過領域と光を透過しない非透過領域とが周期的に繰り返す透過パターンを形成することによって入射した光を縞状の構造化パターン(縞状のパターン)に変換し、透過パターンにおける透過領域と非透過領域とのそれぞれの状態を維持したまま移動させることによって変換した縞状のパターンの光を位相シフトする空間変調素子(空間変調部754)で構成される内視鏡システム(内視鏡装置15)が構成される。
本第5の構成によれば、空間変調部754は、2つの異なる透過パターンを形成して2つの縞状のパターンに変換し、それぞれの透過パターンごとに位相シフトする内視鏡装置15が構成される。
上記に述べたように、第5の構成のパターン投影部75では、パターン投影部75を構成する空間変調部754が、パターン投影光源701が発光したレーザー光を透過するときに、予め定めた周期に構造化したパターンの複数の計測光を形成し、かつ位相シフトを行う。このとき、第5の構成のパターン投影部75でも、空間変調部754によって形成される複数の計測光の基線長は同じである。これにより、第5の構成のパターン投影部75を備えた内視鏡装置15でも、第1の構成〜第4の構成のパターン投影部を備えた内視鏡装置11〜内視鏡装置14と同様に、計測精度が劣化することなく、3次元の計測を行うことができる。
なお、第5の構成のパターン投影部75では、パターン投影光源701を、内視鏡装置15の本体部2内に配置する構成を示した。しかし、第5の構成のパターン投影部75ではパターン投影光源701を、内視鏡装置15の先端部4内に配置する構成にしてもよい。
上記に述べたように、本発明を実施するための形態によれば、パターン投影部は、予め定めた異なる周期で構造化した、基線長が同じである2つ以上の計測光を位相シフトして被検物に複数回投影する。そして、本発明を実施するための形態では、それぞれの計測光が照射されたときに撮影した複数のパターン画像に基づいて、例えば、ユーザによって設定された測定点に応じた被検物における実際の寸法(絶対寸法)を3次元で計測するための計測モード画像を生成する。これにより、本発明を実施するための形態では、パターン投影部を備えた内視鏡装置における3次元の計測を、被検物の形状に影響されることなく、かつ、計測精度が劣化することなく行うことができる。
なお、本実施形態においては、内視鏡装置に備えたパターン投影部を構成するパターン投影光源が、予め定めた特定の波長帯域のレーザー光源である、つまり、パターン光(計測光)がレーザー光である場合について説明した。しかし、光源の種類やパターン光の色(波長帯域)は、本発明を実施するための形態で示したものに限定されるものではなく、上述したように、予め定めた色(波長帯域)のLEDや赤外光であってもよい。
また、本実施形態においては、予め定めた異なる周期で構造化した2つ以上の計測光を被検物に照射することによって得たパターン画像から、第1の位相変換方法または第2の位相変換方法によって、3次元の計測を行うための計測モード画像を生成する場合について説明した。しかし、予め定めた異なる周期で構造化するパターンの数は、本発明を実施するための形態で示した数、つまり、2つに限定されるものではなく、2つ以上の構造化したパターンの計測光を被検物に照射することによって得たパターン画像から計測モード画像を生成する方法であれば同様に、本発明の考え方を適用することができる。
また、本実施形態においては、それぞれのパターン画像から生成した計測モード画像に基づいて3次元の計測を行うための3次元点群データを生成する場合について説明した。しかし、3次元の計測を行うためのデータを生成する方法は、本発明を実施するための形態で示したパターン光を位相シフトする方法に限定されるものではなく、何らかの構造化したパターンの光を被写体に照射することによって3次元の計測を行うためのデータを生成する方法であれば同様に、本発明の考え方を適用することができる。
また、本実施形態においては、パターン光における構造化のパターンが、光の強度が水平方向の正弦波状に変化する縦縞のパターンである場合について説明した。しかし、パターン光における構造化のパターンは、本発明を実施するための形態で示した構造化のパターンに限定されるものではない。例えば、パターン光の構造化のパターンが、光の強度が垂直方向の正弦波状に変化する横縞のパターンである場合や、光の強度が水平方向および垂直方向のそれぞれに正弦波状に変化する格子状のパターンである場合であっても同様に、本発明の考え方を適用することができる。
また、本実施形態においては、メイン制御部81が、パターン画像に基づいて計測モード画像を生成する処理(処理2)、および計測モード画像に基づいて3次元の計測を行う処理(処理3)を実行する場合について説明した。しかし、それぞれの処理を実行する構成要素は、本発明を実施するための形態で示した構成要素に限定されるものではない。例えば、映像処理部86や、計測モード画像の生成および3次元の計測を行うために専用に備えた不図示の構成要素が、メイン制御部81からの制御に応じて、それぞれの処理を実行する構成であってもよい。この場合、それぞれの処理を実行するために用いるデータを一時的に格納する記憶部は、本発明を実施するための形態で示したRAM83ではなく、映像処理部86や不図示の構成要素に内蔵または接続された他の記憶部であってもよい。
また、本実施形態においては、本発明の内視鏡装置(内視鏡装置)が、工業用の内視鏡装置である場合について説明した。しかし、本発明の考え方は、工業用の内視鏡装置への適用に限定されるものではなく、例えば、医療用の内視鏡装置にも適用することもできる。
また、本実施形態においては、本体部2内に操作部82とモニタ87とを備えた構成について説明した。しかし、操作部82やモニタ87は、本体部2内に備える構成に限定されるものではなく、例えば、本体部2の外部に配置され、本体部2と接続される構成であってもよい。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。