JP6617135B2 - 磁気共鳴イメージング装置、静磁場均一度調整方法、プログラム及び計算機 - Google Patents

磁気共鳴イメージング装置、静磁場均一度調整方法、プログラム及び計算機 Download PDF

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Description

本発明は、磁気共鳴イメージング装置、静磁場均一度調整方法、プログラム及び計算機に関する。
磁気共鳴イメージング(MRI)装置に搭載される磁場発生装置には、磁場中心近傍の撮像空間(FOV:Field of View)において、高い磁場均一度(例えば、磁場の最大値と最小値の差が数ppm以下)が要求される。しかし、実際には、MRI装置の製造段階における製作寸法誤差の影響やMRI装置を設置した周囲の磁性体の影響により、この高い磁場均一度は乱される。
そこで、MRI装置では、FOVにおける磁場強度の均一度を微細に調整する(以下、シミングと称する。)。シミングの一つには、補正用の磁性体のシム片(以下、磁性体片という。)をFOVの周辺に配置して、静磁場分布を微調整するパッシブシミングがある。パッシブシミングは、最適化計算により適切な位置に適切な量の磁性体片を配置することで、FOVの静磁場分布を所望の均一度に調整する手法である(例えば、特許文献1及び2参照)。すなわち、磁場中に配置された磁性体片の磁気モーメントが生成する磁場分布によって、FOVの静磁場分布の均一度を調整する。
特開2014-4169号公報 特開2011-115480号公報
しかしながら、特許文献1、2では、磁性体片の配置位置に応じてFOVに生成される磁気モーメントの磁場分布、特に極性が変化することを配慮していない。その結果、複数回行うシミングにおいて、初回のシミングに用いた磁性体片の総鉄量よりも十分に少なくなった場合(例えば、10分の1以下)に行う微調整シミングにおいて、却って磁性体片の配置量が多くなる場合があるという問題がある。
例えば、円筒形の電磁石において、FOVから遠いボア開口部付近に配置される磁性体片は、FOVの静磁場に対して正方向の磁場を発生するが、FOVからの距離が遠いために、静磁場の調整能力が低い。一方、FOVに近い領域の磁性体片はFOVの静磁場に対して負方向の磁場を発生するが、FOVまでの距離が近いために、静磁場の調整能力が高い。したがって、FOVから遠いボア開口部付近からFOVに近い領域にわたって複数の磁性体片を配置すると、それらの磁性体片による静磁場調整能力が相殺されて、磁性体片の配置量が多くなる場合がある。
このように、磁性体片の配置量が多くなると、離散化誤差が大きくなって、シミングの精度が低くなって所望の磁場均一度を達成できない場合がある。また、磁性体片の配置量が多くなると、配置位置の誤りなどが起こりやすく、微調整シミングの作業性が低下する場合がある。
本発明が解決しようとする課題は、磁場均一度調整において磁性体片の配置量を低減でき、高精度に所望の磁場均一度を達成することができる磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明は、磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、該シミング計算により得られた位置に前記複数の磁性体片を配置して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整する方法であって、前記シミング計算の際に、前記位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方とする制約を課し、前記静磁場均一度を調整する調整ステップを含んでなることを特徴とする。
本発明によれば、磁場均一度調整において配置する磁性体片の総量低減が可能であり、高精度に所望の磁場均一度を達成することできる。例えば、磁性体片の総使用量は、従来比で約65%減とすることができた。また、磁性体片の総量低減により、離散化誤差の影響を低減やシミングにおける微調整工程における作業時間の低減効果が期待できる。
本発明によれば、磁場均一度調整において磁性体片の配置量を低減でき、高精度に所望の磁場均一度を達成することができる磁気共鳴撮像装置の静磁場均一度調整方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のシミング機構を備えた円筒型超電導磁石の概略構成図 第1実施形態の円筒型超電導磁石のシムトレイの構成図 第1実施形態に係るシミングのフローチャート 第1実施形態に係る磁性体片の磁気モーメントが生成する正負の磁場分布図 第1実施形態に係る磁性体片の磁気モーメントがFOVに生成する正負の磁場分布図 第1実施形態に係る粗調整シミングにおける磁性体片の配置図 第1実施形態に係る微調整シミングにおける磁性体片の配置図 第1実施形態に係る微調整シミングにおける調整領域を示した図 第1実施形態に係る微調整シミングの前後のFOV表面上の磁場強度を示した図 第1実施形態に係る微調整シミングに用いるシムトレイの変形例を示した図 本発明の第2実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のシミング機構を備えた開放型の超電導磁石の概略構成図 第2実施形態に係るシミングのフローチャート 第2実施形態に係る粗調整シミングにおける磁性体片の配置図 第2実施形態に係る微調整シミングにおける磁性体片の配置図 第2実施形態に係る磁性体片の磁気モーメントがFOVに生成する正負の磁場分布図 第2実施形態に係る微調整シミングの調整領域を示した図 第2実施形態に係る微調整シミングの前後のFOV表面上の磁場強度を示した図
以下、本発明の磁気共鳴イメージング装置およびその静磁場均一度調整方法を実施形態に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に、第1実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の円筒型の超電導磁石2の外観斜視図の概略図を示す。超電導磁石2は、高磁場を発生させることができるが、常電導電磁石に本発明を適用してもよい。
図において、超電導磁石2は、真空容器3の内部に、図示していないメインコイルである超電導コイルとともに冷媒を収容して形成されている。超電導磁石2は、水平方向に平行な軸方向(Z軸)4を中心軸とする円筒ボア5の内部空間に、被検体を撮像する撮像空間(FOV)6を有している。超電導磁石2は、FOV6において、ほぼ球形状で、磁場強度が均一で磁場方向も一定な静磁場を生成する。
円筒ボア5のFOV6側の内面には、傾斜磁場コイル7が収容され、傾斜磁場コイル7内部には周方向に等角度間隔に複数個の穴7aが設けられ、この穴7aにシムトレイ1が着脱可能に挿入されている。シムトレイ1は、パッシブシミングに用いるものであり、各シムトレイ1には任意の番号#が付されており、その番号に基づいてそれぞれを個別に選択してシミングを行うことができる。シムトレイ1は、図2に示しように、円筒ボア5の軸方向長さに対応する長さを有し、長さ方向の所定の位置に分散して複数個のシムポケット8が形成されている。シムポケット8内には、複数枚の磁性体片9を積層して配置可能に形成されている。
磁性体片9を収納するシムトレイ1は、樹脂などの非磁性材から形成される。磁性体片9を収納したシムトレイ1は、超電導磁石2の所定の位置に固定される。シムトレイ1の所定箇所に収納する磁性体片9の厚さ及び数量等を適切に調整することで、FOV6の磁場の乱れを調整する。通常のシミングでは、シムトレイ1に配置する磁性体片9の磁化のばらつきや磁性体片9の最小寸法等による磁性体片9の形状の誤差(以下、離散化誤差という。)の影響により、精度が低く所望の磁場均一度を達成しない場合がある。所望の磁場均一度を得るには、複数回のシミングが必要となる。
ここで、パッシブシミングの作用について説明する。一般に、磁性体片9は、高透磁率の磁性体材料で形成される。磁性体材料には、薄板状の磁性体、例えば鉄板好ましくは珪素鋼板を用いることができる。図5に示すように、磁性体片9の磁性体片の磁化の向き(磁気モーメントの向き)12が位置r離れた点に作る磁場B(r)は、下式の式1のように表されるが、パッシブシミングで扱う軸方向磁場Bz成分は、式2のように表される。
Figure 0006617135
B(r)は、磁気モーメントが位置r離れた点に作る磁場[T]
Mは、磁気モーメント[Am2]
rは、磁気モーメントの位置ベクトル(r=(X,Y,Z))
αは、係数
Figure 0006617135
Bzは、磁気モーメントが位置r離れた点に作るZ軸方向の磁場[T]
Mxは、X軸方向の磁気モーメント[Am2]
Myは、Y軸方向の磁気モーメント[Am2]
Mzは、Z軸方向の磁気モーメント[Am2]
さらに、磁性体片9を磁化させる磁場は、主にZ軸方向を向いているのでMzのみに着目して式3となる。つまり、下式の式3に示されるBzがシミングにより調整することができる量である。
Figure 0006617135

Zは、Z軸方向の位置
図4に、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布図を示す。
磁性体片9の磁気モーメントがつくるBz成分は、下式の式4を境界として、正の領域10と、負の領域11がある。
Figure 0006617135
Zは、Z軸方向の位置
図5に、シミングで用いる磁性体片9の磁気モーメントがつくるBz成分の磁化の領域と、軸方向(Z軸)4と、FOV6の関係を示す。磁気モーメントの矢印は磁性体片9の磁化の向きを示しており、二点鎖線は磁性体片9の配置方向を示している。本実施形態では、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布のうち、負の磁場分布のみ生成する負の領域11を磁性体片の配置領域として選択する。
微調整シミングにおいて、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布を考慮し、どちらか一方の極性の磁場分布のみ生成する領域を磁性体片9の配置領域として選択する(本実施形態では、負極性を選択)。例えば、式4を境界として、Bzが負の領域とFOVの領域が重なる領域に限定する。これにより、配置する磁性体片9の総量低減が可能であり、かつ高精度に所望の磁場均一度を達成することできる。また、磁性体片の総量低減により、離散化誤差の影響を低減やシミングにおける微調整工程における磁性体片9の配置の誤り、作業時間の低減効果が期待できる。
第1実施形態の円筒型の超電導磁石2のシミングの手順を、図3に示したフローチャートを参照して説明する。図において、ステップS301〜ステップS311は、粗調整シミングを示し、ステップS312〜ステップS315は微調整シミングを示す。本発明のシミング方法は、微調整シミングに特徴を有する。
微調整シミングは、シミングに用いる磁性体片9の総量が、初回のシミングに用いる磁性体片9の総量より十分少なくなった場合(例えば、10分の1以下)に行うシミングである。すなわち、所望の磁場均一度を得るために、FOV6の磁場分布の低周波成分の不均一性(例えば、球面調和関数で級数展開したときに、主として低次項の磁場成分に対応する磁場の不均一性)を調整するシミングである。
まず、ステップS301で、超電導磁石2を励磁し、FOV6に静磁場を発生させる。ステップS302で、図示していないが磁場測定器によりFOV6における磁場強度を計測する。
ステップS303で、ステップS302で計測した磁場強度を用いて公知の最適化計算を行い、磁場の不均一性を打ち消すような一部のシムトレイ1(例えば、奇数番目のシムトレイ1)のシムポケット8(例えば、P-1〜P-24)に収納する磁性体片9の磁性体片量(A)を決定する。決定した磁性体片9の配置図(例えば、図6に示す。)を出力表示する。
ステップS304で、超電導磁石2を消磁する。
ステップS305で、最適化計算により求めた結果に従って、シムトレイ1のシムポケット8に磁性体片9を収納する。ステップS306で、超電導磁石2を励磁し、再びFOV6に静磁場を発生させる。ステップS307で、磁場測定器によりFOV6における磁場強度を計測する。ステップS308で、ステップS307で計測した磁場強度から、最適化計算を行い、磁場の不均一性を打ち消すようなシムトレイ1のシムポケット8に収納する磁性体片9の磁性体片量(B)を決定する。
ここで、本実施形態の磁性体片9は、正方形の鉄板の厚みを変えた2種類A、B(例えば、BはAよりも薄い鉄板)を用意し、1つのシムポケット8に収容する種類と枚数を変えて、最適化計算により求めた磁性体片量に調整するようにしている。しかし、これに限定されるものではなく、必要に応じて大きさおよび厚みを選択できることは言うまでもない。
図6において、シム鉄使用量は磁性体片量を意味し、単位は体積[cm3]で表しているが、これに限られるものではない。図示例では、シム鉄Aの大きさは20[mm]×20[mm]の正方形の鉄板で、厚みは0.1[mm]であり、シム鉄Bの大きさは20[mm]×20[mm]の正方形の鉄板で、厚みは0.02[mm]の例である。これらの具体的な値は、任意に設定できることは言うまでもない。また、配置図中において、各シムポケットに示したA、Bの数値は、それぞれ枚数である。
ステップS309で、磁性体片量(A)よりも磁性体片量(B)が十分少ない場合(例えば、10分の1以下)はステップS312に進んで微調整シミングに移行する。そうでない場合は、ステップS310に進んで、超電導磁石2を消磁し、ステップS311にて、ステップS308の最適化計算により求めた磁性体片量(B)の磁性体片9をシムポケット8内に収納する。そしてステップS306へ戻り、処理を繰り返す。
ステップS312以降のステップは、本発明の特徴にかかる微調整シミングに対応する。
すなわち、ステップS312で、磁性体片9を配置するシムトレイ1を、後述するように選択し、選択された位置配置内でどのように配置すれば高い均一度が生成されるかを、シミング計算により求め、磁性体片量(B-2)として決定する。決定した磁性体片9の配置図を出力表示する。この配置図の一例を図7に示す。図7において、網掛けにより塗りつぶされたシムポケット(P-1)〜(P-5)、(P-20)〜(P-24)の領域は、磁性体片9を配置しない制約領域として、選択されている。つまり、これらの領域に配置される磁性体片9の磁気モーメントが、FOV6に生成する磁気分布の極性が正であるから(図4参照)、磁性体片9を配置しないシムポケットとして制約を加えた領域である。
次いで、ステップS313で、一部のシムトレイ1(例えば、偶数番#のシムトレイ)のシムポケット8に、計算結果(B-2)の磁性体片9を配置する。そして、ステップS314で、磁場測定器によりFOV6における磁場強度を計測する。そして、ステップS314で計測した磁場強度が、FOV6における磁場均一度が所望値を満たしていれば、シミングを終了する。そうでなければ、ステップS312へ戻り、微調整シミングを繰り返す。
なお、本実施形態のように、粗調整シミングに用いるシムトレイ1を奇数番#に限定し、微調整シミングに用いるシムトレイ1を偶数番#に限定することが好ましい。これによれば、微調整シミングにおける各シムポケット8の磁性体片量の調整の自由度を大きくすることができる。
ここで、本実施形態の作用および効果について図8、図9を参照して説明する。図8は、超電導磁石2を、軸方向(Z軸)4を通る平面で切断した断面図である。図8に示すように、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布のうち、負の磁場分布のみ生成する領域(負の領域11)を磁性体片9の配置領域として選択する。つまり、図8に示すように、微調整シミングにおいて、FOV6に負の磁場分布を発生する磁性体片9のシムトレイ1上の位置の範囲を調整領域13とし、調整領域13内のシムポケット8のみを選択して、微調整シミングの磁性体片9を配置する。つまり、前述したように、シムポケット(P-6)〜(P-19)のみを選択する。
本実施形態の微調整シミングによれば、図9に示しように、均一度の高い静磁場を生成することができる。すなわち、同図は、微調整シミングの前後におけるFOV6の表面上の磁場強度を対比して示し、縦軸は静磁場強度、横軸は軸方向(Z軸)である。また、実線は微調整シミング前の磁場強度、破線はシミング後の磁場強度を示している。図からわかるように、微調整シミングにおいて磁性体片9をFOV6領域に負の磁場分布を生成する配置を選択したことから、FOV6の磁場強度は低くなる方向に調整され、かつ磁場均一度が改善されている。なお、磁場均一度は、実線または破線の最大値と最小値の差が小さいほど均一度が高い。なお、本実施形態によれば、磁性体片9の総使用量は、従来比で約65%減にすることができた。
本実施形態では、超電導磁石2の磁場発生装置により発生されたFOV(撮像空間)6における静磁場に対して、複数の磁性体片のFOV6から離れた位置をシミング計算により計算して、該シミング計算により得られた位置に前記複数の磁性体片を配置して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整する方法であって、前記シミング計算の際に、前記位置に配置された前記磁性体片が前記FOV6に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方とする制約を課し、前記静磁場均一度を調整する調整ステップを含んでなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法である。
また、本実施形態では、磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整するプログラムであって、前記シミング計算をする際に、該位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方であるものであるという制約を課する機能を備えていることを特徴とするプログラムを用いても良い。
また、本実施形態では、磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整する計算機であって、前記シミング計算をする際に、該位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方であるものであるという制約を課する機能を備えていることを特徴とする計算機を用いても良い。
また磁性体片9の磁気モーメントの方向12がFOV6の静磁場の方向に平行な場合に相当する。この場合は、磁性体片9がFOV6に負の磁場分布を生成する磁性体片9の位置を選択することを特徴とする。
また、選択する磁性体片9の位置の境界は、磁性体片9がFOV6に生成する負の磁場分布が式4を満たす境界である。なお、負の領域11は、式4を解いて求める以外にも、微調整シミングにおいて、超電導磁石2のボア開口部から1箇所ずつシムポケット8に磁性体片9を配置しないように選択し、予想されるシミング完了後の磁場均一度とシミングに用いる磁性体片量(B-2)の増減を評価することで負の領域11を推定してもよい。
本実施形態の微調整シミングに用いるシムポケット8は、FOV6に近い領域のみである。例えば、FOV6の中心位置から片側で、シムトレイ1の全長の約35%までの領域である。そこで、本実施形態の微調整シミングに用いるシムトレイ1を予め定めておき、図10に示すように形成することができる。同図(a)に示すシムトレイ1-aのように、シムトレイ1の全長に対してFOV6の中心を基準に、約80%の領域にシムポケット8を配置すれば足りる。さらに、シムトレイ1-bのように、シムトレイ1-aのいずれか一方の軸方向の端部を削除して短くしてもよい。
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置において、磁場発生装置である超電導磁石2は、円筒状の電磁石により円筒の内部空間にFOV6(撮像空間)を形成し、電磁石の内周面に分散させて軸方向に沿って磁性体片9を保持する直状の磁性体保持部材であるシムトレイ1が複数配置され、シムトレイ1の長手方向に磁性体片9を収容する複数の凹所であるシムポケット8が配列されている。したがって、図10のシムトレイを用いる場合は、粗調整シミングと微調整シミングとでシムトレイを使い分けることが必要である。その場合は、例えば、粗調整は奇数番#のシムトレイを用い、微調整は偶数番#のシムトレイを用いてシム調整を行うことになる。
この場合、円筒状の電磁石により円筒の内部空間に撮像空間を形成する磁場発生装置と、電磁石の内周面に分散させて軸方向に沿って配置され、磁場調整用の磁性体片を保持する直状の複数の磁性体保持部材と、磁性体保持部材の長手方向に磁性体片を収容する複数の凹所が配列されてなる磁気共鳴イメージング装置において、複数の磁性体保持部材のうち、磁性体保持部材の端部から設定長さにわたって、磁性体片を収容する凹所が配列されていない磁性体保持部材が一部に含まれることになる。
本実施形態の説明においては、図8に示したように、FOV6に負の磁場分布を発生する磁性体片9のシムトレイ1上の位置の範囲を調整領域13と称し、調整領域13内のシムポケット8に、微調整シミングの磁性体片9を配置するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではない。調整領域13から外れる負の領域11のシムポケット8に磁性体片9を配置してもよい。この場合、調整領域13から外れた負の領域11と、調整領域13に配置する磁性体片9の重み付けを変える。例えば、調整領域13から外れた負の領域11には少量の磁性体片9を配置する。
(第2実施形態)
図11に、第2実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の開放型の超電導磁石2の外観斜視図の概略図を示す。第1実施形態と異なる点は、円筒型に代えて、開放型の超電導磁石2に本発明の微調整シミングを適用する例である。開放型の超電導磁石2の場合は、生成されるFOV6の磁場の向きが垂直方向になる。以下、異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。その開放型の超電導磁石2の静磁場均一度調整方法を図12〜図17に基づき説明する。
図11に示すように、磁場空間が開放型の超電導磁石2は、垂直方向の上下に設けられた一対の真空容器3内に超電導コイルを収容して形成されている。開放型の超電導磁石2は、垂直方向に平行な軸方向(Z軸)4を中心軸として、FOV6が形成される。上下の超電導磁石2の対向する面に、Z軸4を中心軸とする円盤状の一対のシムトレイ21が設けられる。一対のシムトレイ21のそれぞれのFOV6側の面に、図示していないが、格子状に等間隔に複数個の矩形穴のシムポケット22が設けられている。
図12に、本実施形態に係る静磁場調整方法であるシミングの処理手順のフローチャートを示す。開放型の超電導磁石2のシミングは1度の励磁のみで、消磁をすることなくシミングを連続して行うことから、第1実施形態の図3のステップS304、S306、S310の工程は省略できる。つまり、円筒型の超電導磁石2の場合は、シムトレイ21に超電導磁石2の強い磁力が作用しているので、消磁しないと磁性体片9を収容するためにシムトレイ21を抜き出すことができないからである。これに対し、開放型の超電導磁石2の場合は、シムポケット8に収容する個々の磁性体片9に作用する磁力は相対的に小さいから、消磁しなくても磁性体片9の収容操作の妨げにならない。
図13および図14に、第2実施形態に係るシミングで用いる磁性体片9の配置図を示す。図示のように、円盤状のシムトレイ21は、複数行のシムトレイ番号(#1〜#12)を有し、各シムトレイ番号(#1〜#12)はシムポケット番号(A〜L)に対応する格子位置に複数のシムポケット22を有して形成されている。各シムポケット22は、第1の実施形態と同様、磁性体片9を収容可能な矩形穴に形成されている。微調整シミングにおいては、図14に示すように、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布のうち、正の領域10を生成する領域のみのシムポケット22を使用する。つまり、塗りつぶしのシムポケット22は負の領域11に対応することから、使用しない領域である。
図15に、本実施形態の磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に生成する正負の磁場分布図を示す。超電導磁石2がFOV6の領域に発生させる主な磁場は垂直上向きである。ただし、FOV6に発生させる主な磁場の向きが垂直下向きであっても、本発明の微調整シミングを適用できることは言うまでもない。
図16に、微調整シミングにおける調整領域13を示す。微調整シミングにおいて、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に正の磁場を生成するシムポケット22の領域を選択して、磁性体片9を配置する領域を配置領域14として選択する。
図17に、微調整シミングの前後のFOV6の表面上の磁場強度を示す。縦軸を静磁場強度、横軸を軸方向(Z軸)4とし、実線は微調整シミング前の磁場強度、破線は微調整シミング後の磁場強度を示している。本実施形態の微調整シミングでは、FOV6領域の正の領域10に磁場分布を生成する磁性体片9を使って均一度の調整を行うので、磁場強度は高くなる方向に推移し、均一度の調整がされる。
また、第2実施形態は、磁性体片9の磁気モーメントの方向12がFOV6の静磁場の方向に直交する場合に相当する。この場合は、磁性体片9がFOV6に正の磁場分布を生成する磁性体片9の位置を選択することを特徴とする。
第2実施形態の説明においては、図16に示したように、磁性体片9の磁気モーメントがFOV6に正の磁場を生成するシムポケット22の領域を選択して、言い換えれば、正の領域10とFOV6の領域とが重なる調整領域14に、微調整シミングの磁性体片9を配置する例を示した。しかし、本発明はこれに限られるものではない。調整領域14から外れる正の領域10に磁性体片9を配置してもよい。この場合、調整領域14から外れた正の領域10と、調整領域14のシムポケット22に配置する磁性体片9の重み付けを変える。例えば、調整領域14から外れた正の領域10に少量の磁性体片9を配置してもよい。
第1実施形態または第2実施形態の静磁場均一度調整方法を適用してなる磁気共鳴イメージング装置、撮像空間に静磁場を形成する電磁石を備えた磁場発生装置と、電磁石の撮像空間側の面部に磁場調整用の磁性体片を収容する複数の凹所が配列された磁性体保持部材とを備えてなり、磁性体保持部材の撮像空間に近い部分に収容された磁性体片量の密度が、前記撮像空間から遠い部分の前記磁性体片量の密度よりも高いことを特徴とする。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲で変形又は変更された形態で実施することが可能であることは、当業者にあっては明白なことであり、そのような変形又は変更された形態が本願の特許請求の範囲に属することは当然のことである。
1、1-B、21 シムトレイ、2 超電導磁石、3 真空容器、4 軸方向(Z軸)、5 円筒ボア、6 FOV、7 傾斜磁場コイル、8、22 シムポケット、9 磁性体片、10 正の領域、11 負の領域、12 磁性体片の磁化の向き、13 調整領域、14 調整領域

Claims (9)

  1. 磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、該シミング計算により得られた位置に前記複数の磁性体片を配置して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整する方法であって、
    前記シミング計算の際に、前記位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方とする制約を課し、前記静磁場均一度を調整する調整ステップを含んでなることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法。
  2. 前記磁性体片の磁気モーメントの方向が前記静磁場の方向に平行な場合は、前記磁性体片が前記撮像空間に負の磁場分布を生成する前記磁性体片の位置を選択することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法。
  3. 前記磁性体片の磁気モーメントの方向が前記静磁場の方向に直交する場合は、前記磁性体片が前記撮像空間に正の磁場分布を生成する前記磁性体片の位置を選択することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法。
  4. 選択する前記磁性体片の位置の境界は、前記磁性体片が前記撮像空間に生成する正負の磁場分布が下式を満たす境界であることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法。
    Figure 0006617135
    Zは、静磁場の方向(Z軸方向)の位置
    rは、磁気モーメントからの距離
    Mzは、静磁場の方向(Z軸方向)の磁気モーメント[Am2]
  5. 前記磁性体片を配置する調整ステップにおいて、磁場発生装置のボア開口部から1箇所ずつ磁性体片を配置しないように選択し、前記調整ステップ完了後の予想される磁場均一度と前記調整ステップに用いる磁性体片量の増減を評価することで負の領域を推定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置の静磁場均一度調整方法。
  6. 撮像空間に静磁場を形成する電磁石を備えた磁場発生装置と、前記電磁石の前記撮像空間側の面部に磁場調整用の磁性体片を収容する複数の凹所が配列された磁性体保持部材とを備えてなる磁気共鳴イメージング装置において、
    前記磁性体保持部材の前記撮像空間に近い部分の凹所に収容された磁性体片量の密度が、前記撮像空間から遠い部分の凹所に収容された前記磁性体片量の密度よりも高く、
    前記磁場発生装置は、円筒の内部空間に前記撮像空間を形成する円筒状の電磁石を備え、
    前記磁性体保持部材は、前記電磁石の内周面に分散させて、かつ軸方向に沿って複数配置され、長手方向に前記磁性体片を収容する複数の凹所が配列されてなり、
    一部の前記磁性体保持部材は、前記凹所が両端部から設定長さにわたって形成されていないことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
  7. 前記一部の前記磁性体保持部材は、少なくとも前記凹所が形成されていない一端側の長さが他端側よりも短く形成されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
  8. 磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整するプログラムであって、前記シミング計算をする際に、該位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方であるものであるという制約を課する機能を備えていることを特徴とするプログラム。
  9. 磁場発生装置により発生された撮像空間における静磁場に対して、複数の磁性体片の前記撮像空間から離れた位置をシミング計算により計算して、前記撮像空間における静磁場均一度を調整する計算機であって、前記シミング計算をする際に、該位置に配置された前記磁性体片が前記撮像空間に生成する磁場分布の極性が正負のいずれか一方であるという制約を課する機能を備えていることを特徴とする計算機。
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