JP6617065B2 - 鋳造用アルミニウム合金およびアルミニウム合金鋳物 - Google Patents

鋳造用アルミニウム合金およびアルミニウム合金鋳物 Download PDF

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Description

本発明は、機械的特性に優れたアルミニウム合金鋳物と、その製造に適した鋳造用アルミニウム合金に関する。
自動車等のさらなる軽量化を図るため、鍛造されたアルミニウム合金部材のみならず、アルミニウム合金鋳物(「Al合金鋳物」という。)にも、高い機械的特性が要求されるようになってきている。このようなAl合金鋳物に適した合金として、例えば、AC4CH合金(JIS)がある。AC4CH合金(Si:6.5〜7.5%、Mg:0.25〜0.45%、Ti:0.20%以下、残部:Al)からなる鋳物は、耐食性や靭性に優れるため、車両用のホイールや懸架部材等に利用されている。
もっとも、AC4CH合金鋳物は、強度(耐力)が不十分なため、肉厚にせざるを得ず、その軽量化には限界があった。このため、例えば軽量ホイールの主流は、未だ鍛造品(例えばA6061合金製)である。しかし、鍛造品は、製造コストが高く、形状自由度も小さい。このような状況下、Al合金鋳物の機械的特性のさらなる向上を図る提案がなされており、例えば下記の特許文献に関連する記載がある。
特開平5−263174号公報 特開平6−65666号公報 特開2002−309330号公報 特開2003−170263号公報 特開2011−162883号公報
各特許文献に記載された従来のAl合金(鋳物)は、強度と延性または靱性とを未だ高次元で両立させ得るものではなかったり、鋳造性や形状自由度(意匠性)等に劣るものであった。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、鋳造性を確保しつつも、強度と延性(靱性)に優れたアルミニウム合金鋳物と、その製造に適した鋳造用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来のAl−Si−Mg系合金に対して、Mg量を見直し、さらにTiとZrを複合添加することにより、強度と延性または靱性(両者を併せて単に「延性」という。)とを高次元で両立させたAl合金鋳物を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《鋳造用アルミニウム合金》
(1)本発明の鋳造用アルミニウム合金(単に「Al合金」ともいう。)は、全体を100質量%(単に「%」という。)として、下記の組成を満たすことを特徴とする。
Si:5〜8.5%、 Mg:0.35〜0.7%、Ti:0.05〜0.3%、Zr:0.05〜0.4%、TiとZrの合計:0.2%以上、次の範囲を満たすSr、NaまたはSbの一種以上、Sr:0.003〜0.05%、Na:0.001〜0.03%、Sb:0.001〜0.2%、Al:残部
(2)本発明のAl合金を用いれば、冷却速度の大きなダイカスト鋳造等に依るまでもなく、重力鋳造や低圧鋳造であっても、機械的特性(強度と延性・靱性)に優れたAl合金鋳物(単に「鋳物」ともいう。)を得ることができる。また本発明のAl合金は、適量なSiを含む亜共晶Al合金であるため鋳造性にも優れ、高い機械的特性と共に高い形状自由度(意匠自由度、設計自由度)も発揮し得る。このため本発明のAl合金は、例えば、意匠面に複雑な形状が要求される車両用タイヤホイール等にも好適である。さらに本発明のAl合金は、腐食原因元素であるCu等を実質的に含まないため、耐食性にも優れる。
(3)本発明のAl合金により、機械的特性に優れた鋳物が得られる具体的な理由は、次のように考えられる。先ず、本発明のAl合金に含まれる適量なSiは、鋳造時の湯流れ性の向上や凝固収縮の緩和等により鋳造性を高め、さらに、熱処理された際にMgSi化合物となってAl基地中に析出し得る。これによりAl合金鋳物の引張強さまたは耐力をも向上させ得る。
次に本発明のAl合金に含まれる適量なMgは、上述したSiと化合物を形成する他、複合添加されたTiとZrと協働して、初晶Alの結晶粒を微細化させる。結晶粒微細化は、鋳造組織中に作用する応力集中を緩和し、鋳物の延性(伸び)の向上に寄与する。また、Mg、TiおよびZrによる初晶Alの結晶粒微細化は、初晶Alの周囲を取り巻く共晶Siの分散をも均質化する。さらに、Ti、Zr系化合物が初晶Alの核生成サイトとなることにより、初晶Alは花弁状に成長し易くなり、共晶Siはその初晶Alの隙間に入り組んだ状態で晶出するようになる。
ここでAl−Si系合金は、一般的に、Si粒子(共晶Si)を選択的に亀裂伝播した破壊形態を示し得る。しかし、本発明のAl合金は、上述したような微細で特異な鋳造組織となり得るため、一般的にいわれているような亀裂伝播が生じ難く(つまり亀裂伝播抵抗が大きく)、高強度と併せて、高延性または高靱性をも発現するようになったと推察される。
ところで、Ti、Zrの複合添加と適量のMgとの相乗作用により、初晶Alの結晶粒微細化が生じる理由は、必ずしも定かではないが、現状では次のように推察される。一般的に、TiまたはZrは鋳造組織を微細化させる元素といわれている。しかし、それらの一方のみではなく、両方を複合添加することにより、初めて上述したような鋳造組織が形成され、機械的特性に優れた鋳物が得られることがわかった。このことから、複合添加されたTiとZrは、Alとの化合物(AlTiまたはAlZr)の総量を単に増加させただけではなく、核生成サイトとなるTiZr系化合物を形成して、そのTiZr系化合物が、初晶Alの結晶粒微細化に大きく寄与したと推察される。また、適量なMgが、複合添加されたTiとZrの包晶点を低濃度側に下げ、結晶核となる生成物を安定的に増加させたと考えられる。このような理由により、本発明のAl合金を用いると、微細で特有な鋳造組織からなり、強度と延性・靱性が高次元で両立した鋳物が得られるようになったと考えられる。
本発明のAl合金は、さらに、Sr、Na、Sbから選ばれた1種類以上の改質元素を含む。Srなら0.003〜0.05%、Naなら0.001〜0.03%、Sbなら0.001〜0.2%含まれると好ましい。これにより共晶Siは、上述した均質分散化に加えて、より微細に晶出するようになり、Al合金鋳物の延性のさらなる向上が図られる。この理由は次のように考えられる。
Al-Si系合金は、鋳造性に優れるが、第1相である初晶Al以外に、第2相として脆弱な共晶Si粒子(単に「共晶Si」または「Si粒子」ともいう。)が針状に晶出し易い。特にAl基地の強度が高まると、破壊伝播源となるSi粒子の感受性も高まる。このため従来のAl-Si系合金では、鋳物の強度向上に背反して、その延性や靱性は低いものとなっていた。
これに対して本発明のAl合金では、上述したように初晶Alの結晶粒が微細に晶出する結果、その影響を受けて凝固後期に晶出するSi粒子は均質分散化したものとなる。そしてSr、NaまたはSbは、その共晶Siをさらに微細化して晶出させる。従って本発明のAl合金は、適量のSr、NaまたはSbを含むことにより、Si粒子を介した亀裂伝播を大幅に抑制し、鋳物の強度と延性・靱性とを、より高次元で両立させ得る。
《アルミニウム合金鋳物》
本発明は、上述したAl合金を用いたアルミニウム合金鋳物(単に「Al合金鋳物」または「鋳物」ともいう。)としても把握できる。この鋳物は、上述したAl合金組成を有すると共に、次のような鋳造組織からなると好適である。
初晶Alの結晶粒径:250μm以下、
共晶Siの粒径:3.5μm以下
さらに、この鋳造組織は、二次デンドライトアーム間隔(DAS):10μm以上であってもよい。DASがこのような範囲内となる鋳物は、ダイカスト鋳造のように大きな冷却速度で鋳造されたものではなく、低圧鋳造または重力鋳造のようにさほど大きくない冷却速度で鋳造されたものであることを指標している。
《その他》
(1)本発明のAl合金は、少量の改質元素または不可避不純物を一種以上含み得る。不純物元素は、例えば、Fe、Cu等であり、各元素の含有量はそれぞれ0.2%以下であると好ましい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料1の熱処理前の鋳造組織を示す顕微鏡写真である。 その一部を拡大したものである。 試料1を陽極酸化処理して偏光顕微鏡により観察した結晶粒組織を示す顕微鏡写真である。 その一部を拡大したものである。 試料1のT6熱処理後の組織を示す顕微鏡写真である。 その一部を拡大したものである。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明のAl合金のみならず鋳物にも適宜該当する。製造方法に関する構成要素は、一定の場合(構造または特性により「物」を直接特定することが不可能であるかまたは非実際的である事情(不可能・非実際的事情)等がある場合)、プロダクトバイプロセスとして「物」に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《合金組成》
本発明のAl合金は、Si、Mg、TiおよびZrを主元素とし、さらにSr、NaまたはSbからなる改質元素を含む。これら合金元素およびその含有量について、以下に詳述する。なお、本明細書でいう合金組成は、特に断らない限り、Al合金全体を100質量%(単に「%」という。)としたときの各元素の質量割合である。
(1)Si
Al合金は、Siを5〜8.5%、6〜8%さらには6.5〜7.5%含むと好ましい。Siが過少では鋳造性が低下して、引け量が大きくなり、鋳物内部に鋳造欠陥が発生し易くなる。また、鋳造割れ等の欠陥も発生し易くなる。Siが過多になると、脆弱なSi粒子の晶出量が増加し、機械的特性(特に伸びや強度)が低下し易くなる。
(2)Mg
Al合金は、Mgを0.35〜0.7%、0.4〜0.65%さらには0.43〜0.6%含むと好ましい。Mgは、Al基地を強化すると共に、熱処理により共存するSiと化合物(MgSi)を生成して析出し、鋳物の機械的強度(引張強さ、耐力等)を向上させる。また、複合添加されたTi、Zrと協働して微細な鋳造組織の形成に寄与する。Mgが過少では、これらの効果が十分に得られず、特にAl基地が柔らかくなって十分な強度が得られなくなる。Mgが過多になると、未固溶のMgSi晶出相が残留するようになり、延性や靭性が低下し得る。
(3)TiとZr
Al合金は、Tiを0.05〜0.3%、0.1〜0.25%さらには0.15〜0.2%含むと好ましい。またAl合金は、Zrを0.05〜0.4%、0.1〜0.35%さらには0.15〜0.3%含むと好ましい。
TiとZrは、結晶粒を微細化させるとともに、Al基地を固溶強化あるいは析出強化させる。またTiとZrは、結晶粒を十分に微細化されることにより、晶出物が等方的に分布した(偏析の少ない)鋳造組織の形成に寄与する。TiまたはZrが過少では、それらの効果が乏しく、特に鋳型からの指向性が強い場合に、柱状晶が発達した鋳造組織となり易く、鋳物の機械的特性が低下し得る。TiまたはZrが過多では、鋳造組織中に粗大なTi化合物またはZr化合物が晶出するようになり、却って、鋳物の機械的特性が低下し得る。
ところで本発明のAl合金では、TiとZrが個別に作用するのみならず、共存するTiとZrが適量のMgと協働することにより、微細で特有な鋳造組織を形成し得る。この観点から、TiとZrは、上述した組成範囲内にあると共に、合計で0.2%以上、0.3%以上さらには0.4%以上含まれていると好ましい。敢えていうと、その合計は0.7%以下、0.6%以下さらには0.5%以下であると好ましい。
(4)Sr、NaまたはSb
本発明のAl合金に含まれるSr、NaまたはSbは、共晶Siを微細化させて、鋳物の機械的特性(特に延性または靱性)を向上させ得る。Srは、0.003〜0.05%さらには0.01〜0.04%含まれると好適である。Srが過多であると粗い共晶Siが混在するようになり、Sr化合物の晶出も生じる。また、ガス吸収も著しくなり、鋳巣の発生を助長して延性の低下を招くおそれがある。
Naは、0.001〜0.03%さらには0.05〜0.01%含まれると好適である。Naが過多であると粗い共晶Siが混在するようになり、延性が低下するおそれがある。
Sbは、0.001〜0.2%さらには0.05〜0.12%であると好適である。Sbが過多であると粗い共晶Siが混在するようになり、Sb化合物が晶出して延性を低下させるおそれがある。なお、Sr、NaまたはSbが過少では、上述した有意義な効果が得られない。Sr、NaまたはSbは、一種だけでも十分であるが、2種以上が複合添加されてもよい。
《鋳造組織》
(1)本発明の鋳物は、微細に晶出した共晶Siやその他化合物が、初晶Alと基地Al(相)の周囲をネットワーク状に取り巻く微細な鋳造組織を有する。
具体的にいうと、初晶Alは花弁状に晶出しており、その周囲に共晶Siが微細に晶出している。また、Al基地相は、Si、Mg、TiまたはZrが固溶したり、化合物粒子(Mg化合物、Ti化合物、Zr化合物等)が析出したものとなっている。
このような鋳造組織は、例えば、初晶Alの結晶粒径が250μm以下、225μm以下さらには200μm以下であり、晶出相中における共晶Siの粒径が3.5μm以下さらには3μm以下であると好適である。
共晶Siの粒径は、熱処理した鋳物から切り出した試料を研磨し、光学顕微鏡を用いて撮影した組織画像を画像処理して算出する。具体的には、光学顕微鏡で撮影した×200倍あるいは×400倍の組織画像を画像処理装置(LUZEX)を用いて解析を行う。より具体的にいうと、その画像処理装置に搭載されている画像処理ソフトを用いて、組織画像に対して測定領域を決定し、領域内の共晶Si部と基地Al部を2値化処理して分離する。その後、個々の共晶Si粒子の最大長さを測定して、それらの相加平均値を算出して、共晶Siの粒径とする。
初晶Alの結晶粒径は次のような手順によって測定する。熱処理した鋳物から切り出した試料を、鏡面まで研磨し、その研磨面に対して電解エッチングを行う。電解エッチングは、電解液としてバカー液を用いて、陰極にステンレス板、陽極に試料を結線して、直流電源で20Vを印加して、60〜120秒の通電(電解)を行う。この電解エッチング後、偏光顕微鏡により観察した組織を、倍率50〜100倍で撮影して、組織画像を得る。この組織画像を用いて、切片法により初晶Alの結晶粒径を測定する。
(2)鋳造組織は、二次デンドライトアーム間隔(DAS):10μm以上、20μm以上さらには30μm以上でもよい。このような鋳造組織は、上述したように、ダイカスト鋳造(例えば、冷却速度100℃/s以上)等よりも冷却速度が小さい低圧鋳造または重力鋳造(例えば、冷却速度10℃/s以下)された場合に得られる。本発明は、ダイカスト鋳造用のAl合金またはダイカスト鋳物を必ずしも除くものではない。しかし、本発明のAl合金を用いることにより、低圧鋳造や重力鋳造を行う場合でも、上述したように微細な鋳造組織からなり、強度および延性・靱性に優れた鋳物が得られる。
なお、DASも、光学顕微鏡で観察した試料の鋳造組織の画像から得られる。組織画像を用いたDASの測定方法については、 軽金属学会誌(デンドライトアームスペーシング測定手順:軽金属,38(1988),54)に記載されたデンドライトアームスペーシング測定手順の中の二次枝法に準じて行う。
《製造方法》
本発明の鋳物は、Al合金を鋳造して得られるが、強度と延性・靱性の両立を図るために、熱処理されると好ましい。鋳造自体は、重力鋳造、加圧鋳造、砂型鋳造若しくは金型鋳造等のいずれかによりなされる。熱処理は、通常、Al基地中に合金元素を十分にかつ均一的に固溶させるためになされる溶体化処理を行った後に、急冷(いわゆる焼入れ)してなされる。これにより鋳物の鋳造組織は、合金元素が過飽和に固溶した状態となる。急冷工程は、Al合金組成、鋳物の形態(肉厚等)等を考慮して、冷却媒体(水、温水、油等)や冷却方法(噴霧、浸漬等)が適宜選択される。溶体化工程後の鋳物を温水または油に浸漬して急冷すると、鋳物の割れ等を抑止できて好ましい。
急冷工程後の鋳物は、時効により、微細な化合物が析出して高強度化する。時効処理には自然時効もあるが、人工時効を行うことにより、効率的に安定した品質の鋳物が得られる。人工時効は、急冷工程後の鋳物を、例えば、150〜220℃で0.5〜5時間保持することにより行うとよい。このような一連の熱処理として、T6処理(JIS)が代表的である。このように本発明のAl合金または鋳物は、非熱処理型(ダイカスト鋳物等)よりも、熱処理型として適している。
《Al合金鋳物》
本発明の鋳物は、様々な用途や形態をとり得るが、代表的な用途は車両用タイヤホイールである。この他、本発明の鋳物は、機械的特性や耐食性に優れることから、例えば、サスペンション等の足回り部材、ホイール部材、シャーシ部材、サブフレーム部材、継手部材、アクチュエーター部材、ブレーキ部材、エンジン部材等の自動車用部材に利用されてもよい。
合金組成の異なる様々な試料(Al合金鋳物)を製作し、各試料について機械的特性の測定と鋳造組織の観察とを行った。これにより、合金組成、鋳造組織、機械的特性の相関を検討した。このような具体例を挙げつつ、以下に本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)鋳造
表1に示す各合金組成に配合された原料を750℃で溶解して、脱酸処理、共晶Siの改良処理(Srの添加/一部試料では省略)、脱ガス処理を順に行い、種々の溶湯を調製した。これらの溶湯を、710℃の大気雰囲気中で、350℃に予熱した舟型状の金型(JIS4号)に注湯した後、大気中で自然冷却させて凝固させた(鋳造工程)。
(2)熱処理
こうして得られた各鋳物に対してT6熱処理(JIS)を行った。具体的には、535℃×100分間の溶体化処理をした後、50℃の温水中に焼き入れをした。この後、185℃×60分間の時効処理を行った。なお、溶体化処理および時効処理は、大気雰囲気中で行った。
《測定・観察》
熱処理後の各試料(鋳物)から、DASが約35μm相当の部位を切り出して、以下の引張試験と組織観察に供した。
(1)引張試験
引張試験は、オートグラフ(株式会社島津製作所製)により、クロスヘッド速度0.5mm/minとして行った。これにより、引張強さと伸びを求めた。また、0.2%耐力は、印加した荷重と歪ゲージにより得られた歪とから算出した応力−歪み曲線から求めた。さらに、各試料の上述した部位から製作したUノッチ型試験片を用いて、JISZ2242に基づき衝撃試験を行った。こうして得られた各試料に係る機械的特性を表1に併せて示した。
(2)組織観察
各試料の上記部位から切り出した観察片を用いて、既述した方法により、その鋳造組織を観察した。なお、組織画像の解析処理には、株式会社ニレコ製LUZEXを用いた。こうして得られた各試料に係る初晶Alの結晶粒径と共晶Siの粒径とを表1に併せて示した。
表1に示した試料1を光学顕微鏡で観察して得られた鋳造組織写真を図1A〜図3Bに示した。図1Aは鋳造後(熱処理前)の鋳造組織であり、図1Bはそれを拡大したものである。図2Aは、同じ試料1の鋳造組織を、電解エッチングした後に偏光顕微鏡で観察して、より初晶Alの粒形を鮮明にしたものである。図2Bはそれを拡大したものである。図3Aは、同じ試料1の鋳物をT6熱処理した後の組織であり、図3Bはそれを拡大したものである。なお、図1Aおよび図1Bを併せて単に「図1」、図2Aおよび図2Bを併せて単に「図2」、図3Aおよび図3Bを併せて単に「図3」という。
《評価》
(1)表1から明らかなように、本発明に係る合金組成からなる鋳物はいずれも、引張強さ:330MPa以上、0.2%耐力:260MPa以上、伸び:6%以上、衝撃値:3.5J/cm以上であり、強度と延性または靱性とが高次元で両立していることがわかる。
一方、本発明とは異なる合金組成からなる鋳物は、強度と延性または靱性とが両立していない。例えば、試料C1は引張強さ・耐力が高いが、伸び・衝撃値が低くなっている。逆に、試料C2〜C6は伸び・衝撃値が高いが、引張強さ・耐力が低くなっている。試料C7は引張強さ・耐力・伸びは高いが、衝撃値が低くなっている。試料C8は、共晶Siの粒径が大きく、伸びおよび衝撃値が低くなっている。このように、本発明とは異なる合金組成からなる鋳物では、強度と延性・靱性との両立は困難である。なお、試料C4は、既述したAC4CH合金(JIS)と同組成の試料である。
(2)図2および図3から明らかなように、強度と延性または靱性とが両立された本発明に係る鋳物は、微細に分散した初晶Alの周囲が微細な共晶Si等により囲まれており、花弁状の鋳造組織となっていることがわかった。

Claims (4)

  1. 全体を100質量%(単に「%」という。)として、下記の組成を満たすことを特徴とする鋳造用アルミニウム合金。
    Si:5〜8.5%、
    Mg:0.35〜0.7%、
    Ti:0.05〜0.3%、
    Zr:0.05〜0.4%、
    TiとZrの合計:0.2%以上、
    次の範囲を満たすSr、NaまたはSbの一種以上、
    Sr:0.003〜0.05%、
    Na:0.001〜0.03%、
    Sb:0.001〜0.2%
    Al:残部
  2. 請求項1に記載の鋳造用アルミニウム合金からなり、下記の鋳造組織を有することを特徴とするアルミニウム合金鋳物。
    初晶Alの結晶粒径:250μm以下、
    共晶Siの粒径 :3.5μm以下
  3. 前記鋳造組織は、二次デンドライトアーム間隔(DAS)が10μm以上である請求項2に記載のアルミニウム合金鋳物。
  4. 車両用ホイールである請求項2または3に記載のアルミニウム合金鋳物。
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