JP6615459B2 - 金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法及び高周波誘導加熱のモニタリング方法と加熱温度把握方法 - Google Patents
金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法及び高周波誘導加熱のモニタリング方法と加熱温度把握方法 Download PDFInfo
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Description
[1]本発明は、高周波誘導加熱を利用して金属材部品がインサート成型された樹脂成型品を製造する方法であって、前記金属材部品には、前記高周波誘導加熱によって局部的な加熱を行うための突起部分が、前記金属材部品の直径若しくは長径よりも大きい直径若しくは長さで、少なくとも外周部分が切れ間のないループ形状を描くように形成されており、前記金属材部品からなる金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、前記金属材部品に形成された前記突起部分に高周波誘導装置の高周波誘導コイルを近づけて誘導加熱を行う工程、及び冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法を提供する。
[2]本発明は、前記金属インサート部品において、前記突起部分が、円形、楕円形又は多角形の断面を有する環形状、算盤球形状、及びひし形、多角形、円形又は楕円形の平面形状の何れかの形状で形成されることを特徴とする前記[1]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[3]本発明は、前記金属インサート部品において、前記突起部分の中心及びその近傍部が前記金属材部品を構成する金属材料で内実されているか、若しくは開孔されていることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[4]本発明は、前記金属インサート部品において、前記金属材部品の表面に樹脂材との接合を促すための表面処理が施されていることを特徴とする前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[5]本発明は、前記金属インサート部品において、前記樹脂材との接合を促すための表面処理が前記金属材部品に形成された前記突起部分だけに施されたことを特徴とする前記[4]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[6]本発明は、前記樹脂成型品が配線カプラ形態のコネクタ形状を有し、前記金属インサート部品をリード端子として使用することを特徴とする前記[1]〜[5]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[7]本発明は、前記樹脂成型品が電気・電子部品の冷却用ヒートシンクとして使用される樹脂成型品であり、前記金属インサート部品を前記ヒートシンクの金属材部品として使用することを特徴とする前記[1]〜[5]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[8]本発明は、前記金属材部品がインサート成型された樹脂成型品において、前記金属インサート部品が有する前記突起部分の周囲に存在する成型樹脂の外面に、前記高周波誘導加熱用の高周波誘導コイルを配置するための凹みを設けることを特徴とする前記[1]〜[7]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[9]本発明は、前記金属インサート材部品が有する前記突起部分の最短距離表面と前記成型樹脂の外面に設けられた前記凹みの底部との距離が 6mm以下であることを特徴とする前記[8]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[10]本発明は、前記[1]〜[9]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法において高周波誘導加熱のモニタリングを行う方法であって、前記樹脂成型品の外部で、前記金属インサート部品の高周波誘導加熱効果が最も大きく得られる前記突起部分の部位の近い位置に配置する高周波誘導コイルから発生する磁力線による磁束を感知し、該磁束のプローブ信号を高周波発振器に帰還させて前記高周波発信器の出力値を制御することを特徴とする高周波誘導加熱のモニタリング方法を提供する。
[11]本発明は、前記[1]〜[9]の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法において前記高周波誘導加熱によって前記金属材部品に形成した前記突起部分を加熱させるときの温度範囲を最適化するための温度把握方法であって、前記金属材部品の一部が露出するように前記金属材部品の両側側面を樹脂でインサート成型した試料を用いて、前記試料の長手方向の一端から局部的に加熱し、該加熱した熱が前記試料の長手方向の他端に向けて熱伝導するときに観測される温度勾配を計測する工程と、前記加熱後の試料を分解し、前記試料の長手方向において樹脂の溶融状態を観測することによって良好な接合状態が得られた点を確認する工程と、前記試料の長手方向で計測された温度勾配と前記良好な接合状態が得られた点とを対比することによって、前記良好な接合状態が得られた点の加熱温度範囲を推定する工程とを有し、前記推定した加熱温度範囲に基づいて、前記突起部分を加熱させるときの前記高周波誘導加熱条件を調整することを特徴とする高周波誘導加熱の温度把握方法を提供する。
[発明の効果]
図1は簡単な構成のインサートモールド部品外観の例を示している。図1に示すインサートモールド部品は金属材部品1と樹脂部品2からなっていて、金属材部品1が樹脂部品2を貫通しており、図1の(a)及び(b)は、金属材部品1としてそれぞれ棒材及びパイプ材を有するインサートモールド部品の外観を示す図である。
金属材部品1には環状突起部分4が設けられていて、樹脂部品2の外部に高周波誘導コイル3が配置されている。本実施形態において、環状突起部分4は、高周波誘導加熱によって局所的な加熱を行うための突起部分として設けるものであり、金属材部品1の直径若しくは長径よりも大きい直径若しくは長さで形成される。ここで、金属材部品1の長径とは、例えば、金属材部品1の断面形状が多角形である場合、前記多角形の最も長い辺又は対角線のそれぞれの長さを意味する。前記コイル3に図示されない高周波発振器の出力電流が印加されると前記環状部と前記コイル3の最短距離表面5が加熱される。この原理を図3から図5を用いて説明する。
また、通常コイル3は中空になっていて該コイル3自身の冷却のために、冷却水を流通させる。
図7は図6の別の例を示す。前記金属材部品1が四角柱形状であり、前記環状突起部分4が円筒形状の例である。本実施の形態においては、図7に示す四角柱等の多角形の断面を有する角柱形状の他にも、円形状であっても良い。
図8は図6の別の例を示す。前記金属材部品1が円筒状であり前記環状突起部分4が算盤球形状の例である。
本実施の形態においては、金属材部品1が棒材に代えてパイプ材からなるものであっても、図6、図7及び図8に示すものと同じ形状を有することができる。
図9に、図1で説明した例と異なり、コイル3の別の配置例を示すためにインサートモールド部品の外観形状の例を示す。図9の(a)及び(b)は、金属材部品1としてそれぞれ棒材及びパイプ材を有するインサートモールド部品の外観形状を示す図である。
本実施の形態では、図1の場合と同様に金属材部品1が樹脂部品2を貫通しているが、前記樹脂部品2の外周の一部に凹み部8が設けられている。
図10の(a)に示すタイプのインサートモールド部品は、例えば、筐体外部から筐体内部に金属材部品1を通して通電を行う場合で、筐体内部へ水や油の侵入を防止するための用途に適用することができる。
他方、図10の(b)に示すタイプのインサートモールド部品は、筐体(タンク)内部に水や油等の液体(又は流体)が存在し、パイプ材からなる金属材部品1の内部を前記液体(又は流体)が通過するときに金属材部品1と樹脂部品2との密着性を向上させ、筐体(タンク)内部の気密性を確保する必要がある用途に適用が可能である。この用途としては、例えば、図11に示すように電磁ポンプのブランジャーケース(パイプ)が挙げられる。図11に示す電磁ポンプのブランジャーケース(パイプ)は、駆動コイルによってプランジャーを往復駆動させることによって、逆止弁が備えられたパイプの内部に液体を通過させ、前記液体を筐体(タンク)外部へ吐出させる機能を有する。
上限値は、前記加熱効率と高周波発振器の出力能力により決まり、6mm程度が限度となる。当然のことながら大出力の発信器を持ってすればこれより長い距離でも加熱することが出来るが、加熱を必要としない部分の温度上昇を避けるだけでなく、エネルギーの効率化の視点からも推奨されない。
下限値については、本提案が樹脂材内部の金属材を高周波誘導加熱し、樹脂材と金属材接触面で樹脂材を加熱し軟化・溶融させることを目的としているので、前記樹脂材の肉厚は該樹脂材が溶出しない範囲となり、樹脂材の種類と加熱熱量(加熱時間)との組み合わせ条件によるが1mm程度が限度となる。これ以上前記距離が短くなると溶出しないまでも樹脂外面の膨らみ等の不具合が発生することになる。
図13は、図9で説明した例とは異なり、金属材部品1と樹脂部品2との間に溝部9を設けた構成である。
図14は、図13の断面D−Dを示す。
図14は、図10で説明したものと同様に、金属材部品1が樹脂部品2の内部にインサートモールドされている。本例では環状突起部分4の近傍に溝部9を設けている。該溝部9の作用について、図15を用いて説明する。
図17は、図16のE−E断面を示す。この例では、図16に示す凹み部8に相当する部分の円筒状形状が、円弧状の凹み801で構成された例である。
図18に請求項4項及び5項についての形態例を示す。
前記環状部4にハッチングで示す塗布部4aに表面処理が施されたものである。
一般に樹脂と金属との接合では環境温度変化に伴う線膨張係数差による接合部分の破壊が問題になるが、本塗布形態とすることにより樹脂と金属との接続部分が前記塗布部4aのほぼ1点に限られるので前記線膨張係数差による接合部分の破壊に関わる応力が低減できるという効果がある。この接合部分の幅は概略1mm以上あれば実用となる。
この場合塗布範囲は4bの範囲となる。この例が成立するためには前記樹脂と金属との線膨張係数差が少ない場合である。本発明において表面処置を施す部分は、図18及び図19に示す部分に限定されず、金属材部品の他の部分、必要に応じて金属材部品の全体であっても良い。
図20は、これまで述べてきた、樹脂部品2にインサートモールドされている内部の金属部品1が複数本で構成されている例である。
図21は、前記樹脂部品2の外周形状が略四角形をしている例である。
図20及び図21には具体的に図示されていないが、図14と同じように、2本の金属部品1は途中に環状突起部分4が形成されている。
図22は、本発明の金属インサート部品を配線カプラ形態のコネクタ形状へ適用した樹脂成型品を示す図であり、(a)及び(b)には、それぞれ樹脂成型品の外観図及び矢視Fより見た図を示す。図22の(b)には、金属材部品101の一例として、突起部分402が円形で、且つ、その中心及びその近傍部が開孔されているものを点線で示している。
金属材部品101が樹脂部品2にインサートモールドされており、前記樹脂部2の外面には凹み部802が設けられている。
図24の例は突起部分402がひし形の平面形状の例で、図25の例は突起部分402が四角形の平面形状の例であり、中心及びその近傍部が開孔されている。また、図26では突起部分402が円形でかつ中心部分が開孔されておらず、金属材料で内実されている平面形状の例である。本実施の形態では、高周波誘導による前記渦電流が突起部分402の外周で途切れることなく流れるために、突起部分に相当する突起部分402の外周部分が切れ間のないループ形状を描くように形成されることを要件としているので、これら図24、図25及び図26で示した突起部分402の各形状が何れの組合せであっても成立する。
図27は、本発明の金属インサート部品を冷却用ヒートシンクの金属材部品として適用した樹脂成型品を示す図であり、(a)及び(b)に、それぞれ樹脂成型品の外観概略図及びH−H断面図を示す。図27の(a)及び(b)に示すように、冷却用ヒートシンク樹脂成型品11は、内部表面に冷却ピンフィン12の群を3箇所備え、周辺部分の途中に環状突起部分402を有する金属材部品101と、樹脂部品2とからなり、金属材部品101が樹脂部品2の内部にインサートモールドされている。
次に、本実施の形態で、本発明による高周波誘導加熱のモニタリング方法及び該モニタリング方法を実施するときの好適な構成を図28を用いて説明する。
前記の実施の形態8では、精度の高い加熱を行うためのモニタリング方法について述べたが、各種樹脂に対する加熱温度を幾らにすればよいかという問題が残る。そこで、図29〜図32を用いて前記加熱温度の把握方法を説明する。
P点を局部的に加熱すると金属板403の熱伝導特性により図30の右方向に熱が伝わる。図中のコンターは熱の伝わりについての概念を示している。
金属板403のP部を局所的に加熱すると図中下段のグラフに示されるように前記P部から離れるのに従い金属板403の温度は低下する特性を示す、この現象は熱力学でよく知られている温度勾配現象である。
このようにして、金属板403中に加熱点Pの温度から金属板403の右端温度までの温度範囲で各種温度条件を作り出すことができる。
前記のようにして加熱点P部を加熱した後、前記樹脂材201と金属板403を分解観察することで接合状態が良い点Qを確認することができる。図中下段のグラフで接合状態が良い点Qに対応する該グラフ縦軸の温度範囲を特定することができる。この温度範囲が前記加熱温度を幾らにすればよいかという問題に対する答えとなる。
金属板403を俯瞰する位置にサーモカメラ15を設置し、露出部403aの温度を測定する。このとき測定値のうち加熱点Pの値を発振器6にフィードバックすることで発振器6から加熱コイル16へ出力を制御し前記加熱点Pの温度を調整する。また、前記サーモカメラ15で得られた信号はコンピューター17により処理され、表示・記録される。
2 樹脂部品
3 高周波誘導コイル
4 環状突起部分
5 環状部とコイルの最短距離表面
6 高周波発振器
7 磁束
8 凹み部
9 溝部
10 溶融痕
11 冷却用ヒートシンク樹脂成型品
12 冷却用ピンフィン
13 ピックアップコイル
14 検出器
15 サーモカメラ
16 加熱コイル
17 コンピューター
101 金属材部品
201 樹脂材
401 金属材
402 突起部分
403 金属板
403a 露出部
801 円弧状の凹み
802 凹み部
Claims (11)
- 高周波誘導加熱を利用して金属材部品がインサート成型された樹脂成型品を製造する方法であって、前記金属材部品には、前記高周波誘導加熱によって局部的な加熱を行うための突起部分が、前記金属材部品の直径若しくは長径よりも大きい直径若しくは長さで、少なくとも外周部分が切れ間のないループ形状を描くように形成されており、前記金属材部品からなる金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、前記金属材部品に形成された前記突起部分に高周波誘導装置の高周波誘導コイルを近づけて誘導加熱を行う工程、及び冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属インサート部品は、前記金属材部品に形成される突起部分が、円形、楕円形又は多角形の断面を有する環形状、算盤球形状、及びひし形、多角形、円形又は楕円形の平面形状の何れかの形状で形成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属インサート部品は、前記金属材部品に形成される突起部分の中心及びその近傍部が前記金属材部品を構成する金属材料で内実されているか、若しくは開孔されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属インサート部品は、前記金属材部品の表面に樹脂材との接合を促すための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属インサート部品は、前記樹脂材との接合を促すための表面処理が前記金属材部品に形成された前記突起部分だけに施されたことを特徴とする請求項4に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記樹脂成型品が配線カプラ形態のコネクタ形状を有し、前記金属インサート部品をリード端子として使用することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記樹脂成型品が電気・電子部品の冷却用ヒートシンクとして使用される樹脂成型品であり、前記金属インサート部品を前記ヒートシンクの金属材部品として使用することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属材部品がインサート成型された樹脂成型品は、前記金属インサート部品が有する前記突起部分の周囲に存在する成型樹脂の外面に、前記高周波誘導加熱用の高周波誘導コイルを配置するための凹みを設けることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 前記金属インサート材部品が有する前記突起部分の最外周表面と前記成型樹脂の外面に設けられた前記凹みの底部との距離が6mm以下であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂成型品の製造方法。
- 請求項1〜9の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法において高周波誘導加熱のモニタリングを行う方法であって、
前記樹脂成型品の外部で、前記金属インサート部品の高周波誘導加熱効果が最も大きく得られる前記突起部分の部位に近い位置に配置する高周波誘導コイルから発生する磁力線による磁束を感知し、該磁束のプローブ信号を高周波発振器に帰還させて前記高周波発信器の出力値を制御することを特徴とする高周波誘導加熱のモニタリング方法。 - 請求項1〜9の何れか一項に記載の樹脂成型品の製造方法において、前記高周波誘導加熱によって前記金属材部品に形成した前記突起部分を加熱させるときの温度範囲を最適化するための温度把握方法であって、
前記金属材部品の一部が露出するように前記金属材部品の両側側面を樹脂でインサート成型した試料を用いて、前記試料の長手方向の一端から局部的に加熱し、該加熱した熱が前記試料の長手方向の他端に向けて熱伝導するときに観測される温度勾配を計測する工程と、
前記加熱後の試料を分解し、前記試料の長手方向において樹脂の溶融状態を観測することによって良好な接合状態が得られた点を確認する工程と、
前記試料の長手方向で計測された温度勾配と前記良好な接合状態が得られた点とを対比することによって、前記良好な接合状態が得られた点の加熱温度範囲を推定する工程とを有し、
前記推定した加熱温度範囲に基づいて、前記突起部分を加熱させるときの前記高周波誘導加熱条件を調整することを特徴とする高周波誘導加熱の温度把握方法。
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