以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
以下説明する実施形態においては、触感呈示装置の一例として、パネルにおいて触感を呈示することで、ユーザに操作感を提供する装置について説明する。この装置は、例えばパネルに対して行われたユーザによる操作に応じて、当該パネルに触れているユーザの指先など(またはスタイラスなどのようなデバイス)に触感を呈示することができる。ユーザは、指先などに触感による操作感が得られることで、当該操作による入力が装置に認識されたことを知ることができる。
このような触感呈示装置を含む電子機器としては、例として、携帯電話端末、スマートフォン、ファブレット、またはタブレットPCなどを想定することができる。また、触感呈示装置を含む電子機器は、前述のものに限定されず、例えば、PDA、リモコン端末、携帯音楽プレイヤー、ゲーム機など、触感を呈示する部位であるパネルを有する任意の電子機器などに適用できる。また、触感呈示装置を含む電子機器は、前述のような携帯型の電子機器に限定されるものでもなく、例えばデスクトップPC、銀行のATM、駅の券売機など、パネルを有する任意の機器にも適用することができる。
また、パネルを備えた電子機器は、自動車のステアリング、カーナビゲーション、およびダッシュボードに内装された車載コントロールパネルなど、その他、自動車に限らない各種の乗り物にも採用することができる。さらに、パネルを備えた電子機器は、乗り物に限らず、家電製品など、多種多様な電子機器とすることもできる。
本発明に係る触感呈示装置は、タッチセンサを備えた電子機器に適用することができるが、タッチセンサを有する機器に限定されるものでもない。以下、触感の呈示について重点的に説明するため、本実施形態に係る触感呈示装置は、パネルを備える装置として説明し、タッチセンサのような接触位置を検出する機能については説明を省略する。
まず、本発明の実施形態の原理について説明する。本発明の実施形態の原理を説明するため、以下、従来想定される触感呈示装置について説明する。図1〜図4は、本発明の実施形態の原理を説明するための触感呈示装置を説明する図である。
図1は、本発明の実施形態の原理を説明するための触感呈示装置の外観を示す斜視図である。図1に示すように、触感呈示装置100は、パネル10と、筐体20と、を備えている。触感呈示装置100は、パネル10を振動させることにより、パネル10に触れている(またはパネル10を押圧している)ユーザの指などに触感を呈示する。パネル10上においては、ユーザは必ずしも自らの指を接触または押圧させる必要はなく、例えばスタイラスペンのようなデバイスを使用してパネル10を接触または押圧してもよい。以下、ユーザが指でパネル10を接触または押圧することを想定して説明する。
パネル10は、タッチセンサを用いて構成すれば、パネル10上でユーザが接触した位置を検出することができる。また、パネル10を透光性のタッチセンサを用いて構成し、さらにパネル10の背面側にLCD等のディスプレイを配置してもよい。このように構成すれば、ディスプレイにアイコン等の画像を表示することにより、ユーザが接触すべき位置を示唆することもできる。一方、パネル10は、接触位置を検出する機能を持たない、例えば金属、ガラス、プラスチック等で構成される単なる板状部材としてもよい。以下、触感の呈示について重点的に説明するため、位置検出および画像表示の機能については、説明を省略する。
筐体20は、触感呈示装置100の全体を保護する機能を有する。このため、筐体20は、金属またはプラスチック等のような、適度な強度を有する素材で構成するのが好適である。また、筐体20は、触感呈示装置100を他の電子機器に取り付けるための部材として構成してもよい。さらに、筐体20は、パネル10の周辺部分を覆うベゼルのような役割を持たせて、パネル10が筐体20から外れてしまうことを防止するようにしてもよい。筐体20は、図1に示す形状に限定されず、触感呈示装置100の仕様および各種の要求などに応じて、種々の構成とすることができる。
図1に示すように、触感呈示装置100において、パネル10は矩形状である。パネル10の表面は、XY平面とほぼ平行になっている。触感呈示装置100を操作するユーザは、パネル10の表面に対し、Z軸の負方向に向かって指を接触または押圧させる動作を行う。
図2は、図1に示した触感呈示装置100において、パネル10を振動させるアクチュエータを4つ設置した例(触感呈示装置110)を示す図である。
図2(A)は、触感呈示装置110の上面図である。すなわち、図2(A)は、触感呈示装置110を、Z軸負方向を向いて見た図である。図2(A)に示すように、触感呈示装置110においては、パネル10の四隅に、それぞれパネル10を振動させるアクチュエータ30a,30b,30c,30dの4つを設置してある。アクチュエータ30a,30b,30c,30dは、触感呈示装置110の美観を損ねないように、パネル10の裏面(背面すなわちパネル10のZ軸負方向側の面)に配置するのが好適である。このため、図2(A)においては、アクチュエータ30a,30b,30c,30dは、破線により示してある。
アクチュエータ30a,30b,30c,30dは、パネル10に力を作用させることにより、パネル10を振動させる任意の部材とすることができる。以下、アクチュエータ30a,30b,30c,30dの例として、圧電素子を用いたアクチュエータについて説明する。
圧電素子は、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する。圧電素子は、例えばセラミック製または水晶から構成されるものを用いることができる。アクチュエータとして用いる圧電素子には、例えば、ユニモルフ型またはバイモルフ型等のタイプがあるが、多数の圧電素子を重ねて棒状にした積層型を用いることもできる。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型圧電素子は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成される。積層型圧電素子は、電気信号を印加すると厚さ方向に変位するため、印加する電気信号の極性および大きさを適宜調整することにより、厚さ方向に伸び縮みするように構成することができる。この厚さ方向の伸び縮みを利用することにより、圧電素子を用いたアクチュエータ30a,30b,30c,30dは、パネル10を振動させることができる。
図2(B)は、図2(A)に示した触感呈示装置110のA−A’における断面図である。図2(B)に示すように、パネル10の裏面には、アクチュエータ30a,30bが配置される。アクチュエータ30a,30bをパネル10に配置する際には、例えば適当な接着剤または両面テープなどを用いて接着することにより固定するのが好適である。筐体20がパネル10の周辺部分を覆うベゼルのような役割を有する場合は、アクチュエータ30a,30bとパネル10とを接着することは必須ではない。
アクチュエータ30a,30bは、筐体20にも固定させるのが好適である。この場合、アクチュエータ30a,30bは、筐体20の内壁に直接取り付けても良い。一方、アクチュエータ30a,30bを筐体20の内壁に直接取り付けるとパネル10のZ軸方向の高さが不足する場合も想定される。このような場合には、図2(B)に示すように、筐体20の内壁に支持部22a,22bを設け、支持部22a,22bそれぞれの上にアクチュエータ30a,30bを配置してもよい。アクチュエータ30a,30bを筐体20または支持部22a,22bに固定する際には、例えば適当な接着剤または両面テープなどを用いて接着することができる。
図2(B)において、アクチュエータ30a,30bに付した矢印は、アクチュエータ30a,30bそれぞれが振動する方向を表す。すなわち、触感呈示装置110において、アクチュエータ30a,30bは、Z軸方向に伸縮することにより、パネル10を振動させる。
図2に示すように、触感呈示装置110においては、パネル10を振動させるアクチュエータ30a,30b,30c,30dの4つを、パネル10の四隅に設置してある。このため、触感呈示装置110は、ユーザがパネル10上のどの位置を接触または押圧したとしても、アクチュエータ30a,30b,30c,30dはパネル10を良好に振動させることができる。したがって、触感呈示装置110は、ユーザの指などに対して良好な触感を呈示することができる。
ところで、触感呈示装置の構成によっては、図2に示した触感呈示装置110のように、パネル10の四隅にそれぞれアクチュエータを設置することが困難な状況も想定される。また、パネル10の四隅にそれぞれアクチュエータを設置することが可能な状態であっても、消費電力の低減または生産コストの低減などの観点から、より少数のアクチュエータが望まれる事情も想定される。そこで、次に、アクチュエータの個数を低減させた触感呈示装置について検討する。
図3は、図1に示した触感呈示装置100において、パネル10を振動させるアクチュエータを2つ設置した例(触感呈示装置120)を示す図である。
図3(A)は、触感呈示装置120の上面図である。すなわち、図3(A)は、触感呈示装置120を、Z軸負方向を向いて見た図である。図3(A)に示すように、触感呈示装置120においては、パネル10の2つの短辺のそれぞれの中央付近に、パネル10を振動させるアクチュエータ30a,30bの2つを設置してある。アクチュエータ30a,30bは、触感呈示装置120の美観を損ねないように、パネル10の裏面(背面すなわちパネル10のZ軸負方向側の面)に配置するのが好適である。このため、図3(A)においては、アクチュエータ30a,30bは、破線により示してある。アクチュエータ30a,30bは、図2において説明した触感呈示装置110に使用したアクチュエータと同様のものを採用することができる。
図3(B)は、図3(A)に示した触感呈示装置120のA−A’における断面図である。図3(B)に示すように、パネル10の裏面には、アクチュエータ30aが配置される。アクチュエータ30aをパネル10に配置する際の措置は、図2において説明した触感呈示装置110の場合と同様とすることができる。
アクチュエータ30aを筐体20に固定させる際の措置も、図2において説明した触感呈示装置110の場合と同様とすることができる。アクチュエータ30aを筐体20の内壁に直接取り付けるとパネル10のZ軸方向の高さが不足する場合、図3(B)に示すように、筐体20の内壁に支持部22aを設け、支持部22aの上にアクチュエータ30aを配置してもよい。
図3(B)においても、アクチュエータ30aに付した矢印は、アクチュエータ30aが振動する方向を表す。すなわち、触感呈示装置120において、アクチュエータ30aは、Z軸方向に伸縮することにより、パネル10を振動させる。
図3に示すように、触感呈示装置120においては、パネル10を振動させるアクチュエータ30a,30bの2つを、パネル10の2つの短辺のそれぞれの中央付近に設置してある。このため、触感呈示装置120は、パネル10上でアクチュエータ30a,30bを結んだ線上のどの位置をユーザが接触または押圧したとしても、アクチュエータ30a,30bはパネル10を比較的良好に振動させることができる。したがって、触感呈示装置120は、例えば、図3(B)に示す位置P1においてユーザの接触または押圧が行われると、ユーザの指などに対して良好な触感を呈示することができる。
ところが、触感呈示装置120においては、ユーザがパネル10上で接触または押圧する位置によっては、アクチュエータ30a,30bは、パネル10を良好に振動させることができない。例えば、パネル10上でアクチュエータ30a,30bを結んだ線上以外の位置をユーザが接触または押圧すると、アクチュエータ30a,30bは、ユーザが接触または押圧する位置を直接振動させることができない。例えば、図3(C)に示す位置P2においてユーザの接触または押圧が行われると、位置P2においては、アクチュエータ30aの振動が阻害されてしまう。この場合、ユーザの指などに対して良好な触感が呈示されない。これは、パネル10が凹みすぎないように、筐体20において支持部を設けたり、パネル10が筐体20から飛び出さないようにベゼルを設けたりしても、根本的な解決にはならない。
以上説明したように、触感呈示装置120のようにアクチュエータの設置数を低減させると、ユーザがパネル10上で接触または押圧する位置によっては、ユーザの指などに対して良好な触感を呈示することができない場合が生じ得る。次に、アクチュエータの個数をさらに低減させた触感呈示装置について検討する。
図4は、図1に示した触感呈示装置100において、パネル10を振動させるアクチュエータを1つのみ設置した例(触感呈示装置130)を示す図である。
図4(A)は、触感呈示装置130の上面図である。すなわち、図4(A)は、触感呈示装置130を、Z軸負方向を向いて見た図である。図4(A)に示すように、触感呈示装置130においては、パネル10の長辺の1つ(左の長辺)の中央付近に、パネル10を振動させるアクチュエータ30を1つのみ設置してある。アクチュエータ30は、触感呈示装置130の美観を損ねないように、筐体20の内側(内壁)に配置するのが好適である。このため、図4(A)においては、アクチュエータ30は、破線により示してある。
アクチュエータ30は、図2において説明した触感呈示装置110に使用したアクチュエータと同様のものを採用することができるが、今までの例とは、配置する方向が異なる。図4(A)において、アクチュエータ30に付した矢印は、アクチュエータ30が振動する方向を表す。すなわち、触感呈示装置130において、アクチュエータ30は、X軸方向に伸縮することにより、パネル10をX軸方向に振動させる。このため、アクチュエータ30は、例えばパネル10を正面視した側方から、パネル10に固定するのが好適である。図4(A)においては、アクチュエータ30の右側(X軸正方向)の端部と、パネル10の左側(X軸負方向)の長辺の中央部とを接着した例を示している。アクチュエータ30a,30bをパネル10に配置する際には、例えば適当な接着剤または両面テープなどを用いて接着することにより固定するのが好適である。
また、アクチュエータ30は、筐体20にも固定させるのが好適である。この場合、アクチュエータ30は、筐体20の内壁に直接取り付けても良いし、筐体20の内壁に設けた支持部に配置してもよい。図4(A)においては、アクチュエータ30の左側(X軸負方向)の端部と、筐体20の内壁とを接着した例を示している。
図2および図3において説明した触感呈示装置110および触感呈示装置120は、アクチュエータ30がZ軸方向に伸縮することに起因して、パネル10をZ軸方向に振動させた。このように、パネル10のZ軸方向の振動を、以下、適宜「縦振動」と称する。一方、図4において説明した触感呈示装置130は、アクチュエータ30がZ軸方向に直交する方向に伸縮することに起因して、パネル10をZ軸方向に直交する方向に振動させる。このように、パネル10のZ軸方向に直交する方向の振動を、以下、適宜「横振動」と称する。
このように、図4に示す触感呈示装置130は、ユーザの指などがパネル10を接触または押圧していない状態においては、1つのアクチュエータ30によりパネル10の全体を横振動させることができる。
ここで、ユーザがパネル10の表面に指などを接触または押圧させる動作は、パネル10の表面に対して縦方向(Z軸方向)の成分を含む動きになる。一方、アクチュエータ30が伸縮することによりパネル10を振動させる動作は、パネル10を表面に対して横方向(X軸方向)に移動させる動きになる。すなわち、触感呈示装置130においては、ユーザが接触または押圧の操作を行う方向と、パネル10が振動する方向とは異なっている。
しかしながら、パネル10の表面に対して横方向(X軸方向)に振動を発生させて触感を呈示しても、ほとんどの人は操作を行う方向(Z軸方向)に呈示される触感であると錯覚することを、出願人は実験を行うことにより確かめた。すなわち、ユーザが押圧する方向(Z軸方向)と垂直な方向(X軸方向)にパネル10を振動させて触感を呈示しても、ユーザが押圧した方向(Z軸方向)にパネル10がクリック感を伴って沈むように感じさせることができる。また、ユーザが押圧を弱める際も、同様である。すなわち、ユーザが押圧する方向(Z軸方向)と垂直な方向(X軸方向)にパネル10を振動させて触感を呈示しても、ユーザが押圧を解除する方向(Z軸方向)にパネル10がリリースされる感覚を伴って復元するように感じさせることができる。
このように、触感呈示装置130は、アクチュエータ30を駆動する電圧、変位量(湾曲の振幅)、および周波数などを適宜調整することにより、パネル10の表面においてユーザが押圧する方向に感じられる操作感を提供することができる。本明細書においては、アクチュエータを駆動するための電源の供給、およびアクチュエータの駆動を制御するための制御部などの詳細な説明は省略する。アクチュエータを駆動するための電源の供給は、例えばバッテリを内蔵したり、外部電源を用意したりするなどして行うことができる。また、駆動を制御するための制御部は、例えばCPUなどの各種のプロセッサを用いて構成することができる。
ところが、触感呈示装置130においても、ユーザがパネル10上で接触または押圧する位置によっては、アクチュエータ30は、パネル10を良好に振動させることができない。以下、触感呈示装置130において、ユーザがパネル10上で接触または押圧している場合に、呈示される触感について説明する。
図4に示すように、触感呈示装置130においては、パネル10を振動させるアクチュエータ30を1つのみ、パネル10の長辺の1つの中央付近に設置してある。このため、触感呈示装置130は、パネル10上でアクチュエータ30による力の作用点から当該力の作用方向の延長線上のどの位置をユーザが接触または押圧したとしても、アクチュエータ30はパネル10を比較的良好に横振動させることができる。したがって、触感呈示装置130は、例えば、図4(A)に示す位置P1においてユーザの接触または押圧が行われると、ユーザの指などに対して良好な触感を呈示することができる。図4(A)においては、アクチュエータ30による力の作用点を含む当該力の作用方向の延長線を、一点鎖線により示してある。
しかしながら、例えば、パネル10上でアクチュエータ30による力の作用点から当該力の作用方向の延長線上以外の位置をユーザが接触または押圧すると、アクチュエータ30は、ユーザが接触または押圧する位置に振動を直接伝達させることができない。すなわち、図4(A)において、パネル10上で一点鎖線を付した位置以外の位置が接触または押圧されると、アクチュエータ30は、良好な触感を呈示できない場合がある。
例えば、図4(A)に示す位置P2においてユーザの接触または押圧が行われると、図4(B)に示すように、ユーザの接触または押圧に起因してパネル10が回転運動の成分を含んで動くようになる。このため、位置P2においては、パネル10が回転運動の成分によって、アクチュエータ30の横振動が阻害されてしまう。この場合、ユーザの指などに対して良好な触感が呈示されない。図4(B)においては、パネル10が回転運動の成分を含んで動いたため、パネル10の一部が筐体20の内部に隠れている様子を示してある。図4(B)においては、パネル10の筐体20内部に隠れている部分を、破線により示してある。
以上説明した検討を踏まえ、本発明の各実施形態においては、パネル10が押圧される位置における振動の阻害を抑制する弾性部材を設けることにより、良好な触感を効率的に呈示する。以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図5は、本発明の第1実施形態に係る触感呈示装置の動作を説明する図である。
図5(A)は、触感呈示装置1の上面図である。すなわち、図5(A)は、触感呈示装置1を、Z軸負方向を向いて見た図である。図5(A)に示すように、本発明の第1実施形態に係る触感呈示装置1は、パネル10と、パネル10を振動させるアクチュエータ30とを備えるのは、図4で説明した触感呈示装置130と同様である。また、筐体20も、図4で説明した触感呈示装置130の筐体20とほぼ同様に構成することができる。以下、図4で説明した触感呈示装置130と同様になる説明は適宜簡略化または省略し、第1実施形態に係る触感呈示装置1に顕著な部分を重点的に説明する。
図5(A)に示すように、本発明の第1実施形態に係る触感呈示装置1は、図4に示した触感呈示装置130において、さらに弾性部材40を設けるものである。図5(A)に示すように、弾性部材40は、その一端をパネル10に接続する。弾性部材40は、例えば小型のバネなどを用いて構成することができるが、適度な弾性力を有する部材であれば、任意の素材を用いて構成することができる。例えば、弾性部材40は、シリコンゴム等のゴムまたはウレタン等の素材で構成してもよい。また、弾性部材40は、図5(A)に示すようなスプリング形状のものには限定されず、板バネなど、適度な弾性力を有する部材であれば、任意の形状とすることができる。ここで、弾性部材40は、伸ばすと縮もうとする力を生じ、縮ませると伸びようとする力を生じるものとする。また、弾性部材40は、弾性変形する方向すなわち伸縮可能な方向に力を加えて伸縮させると復元力を生じるが、弾性変形する方向と直交する方向に力を加えると、この力に応じて容易に変位するように構成するのが好適である。
弾性部材40とパネル10との接続は、パネル10の一部またはパネル10の延長部に孔を開けることで、その孔に弾性部材40のスプリングの一端を通して接続するなど、パネル10および弾性部材40の形状により、種々の構成とすることができる。他の構成としては、例えば弾性部材40とパネル10とを接着することで接続してもよい。また、図5(A)に示すように、弾性部材40は、その他端を筐体20に接続する。アクチュエータ30を筐体20の内側(内側)に配置したのと同様に、弾性部材40も、筐体20の内側(内側)に接続するのが好適である。弾性部材40と筐体20との接続も、弾性部材40とパネル10との接続と同様に、種々の構成とすることができる。
本実施形態において、弾性部材40は、アクチュエータ30がパネル10を振動させる際に、パネル10が押圧される位置における振動の阻害を抑制する。前述したように、触感呈示装置1において、パネル10がユーザの指などで押圧されていない時は、実質的に、パネル10の振動を阻害する要素がない。このため、触感呈示装置1において、パネル10が押圧されていない時、アクチュエータ30は、パネル10を並進運動させることにより振動させることができる。ここで、パネル10の並進運動とは、パネル10の全体が、方向を変更することなく、X軸に平行に変位することを意味する。一方、パネル10がユーザによって接触または押圧されると、パネル10が回転運動の成分を含んで動こうとするため、パネル10が押圧される位置における振動が阻害されることがある。そこで、本実施形態に係る触感呈示装置1においては、弾性部材40を配置して、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制する。特に、触感呈示装置1のように、パネル10が横振動する構成においては、弾性部材40は、パネル10の法線を軸とする回転運動の成分を低減させることにより振動の阻害を抑制する。
図5(A)に示すように、触感呈示装置1においては、図4において説明した触感呈示装置130と同様に、パネル10の長辺の1つ(左の長辺)の中央付近に、パネル10を振動させるアクチュエータ30を1つのみ設置してある。このような構成においては、ユーザが図5(A)に示す位置P2を押圧すると、図5(B)に示すように、パネル10は、X軸方向の並進運動のみならず、パネル10の法線すなわちZ軸を軸とする回転運動の成分を含んで動こうとする。図5(B)は、図5(A)においてパネル10が回転運動の成分を含んで動いた様子を示す図である。図5(B)は、説明のために、パネル10の動きをやや誇張して示すものであり、パネル10の動きの度合いは実際の動きの大きさを反映したものではない。
図5(B)に示すように、アクチュエータ30が駆動されてX軸正方向に伸張すると、パネル10に対して力Fを与える。この力Fの作用により、パネル10はX軸正方向に並進運動する。また、パネル10が位置P2において押圧された状態でアクチュエータ30がX軸正方向に伸張すると、図5(B)に示すように、パネル10は、時計回りの回転運動の成分を含んで動こうとする。この時計回りの回転運動の成分により、弾性部材40の位置においては、パネル10が弾性部材40をY軸負方向に押圧しようとする力が作用する。そこで、本実施形態では、弾性部材40の弾性力により、パネル10をY軸正方向に押圧する力を作用させる。このように、本実施形態において、弾性部材40は、パネル10の並進運動の阻害を抑制することにより振動の阻害を抑制する。このため、弾性部材40を設置する位置は、パネル10の回転運動の成分を低減させることが可能な位置とし、典型的には図5に示す弾性部材40のような位置とするのが好適である。
次に、本実施形態において、アクチュエータ30および弾性部材40を配置する好適な位置について、さらに説明する。
図5(A)に示すように、パネル10においてアクチュエータ30を設置する位置と、パネル10において押圧される位置P2との間の距離をaとする。また、図5(A)に示すように、パネル10において弾性部材40が接続される位置と、パネル10において押圧される位置P2との間の距離をbとする。また、図5(B)に示すように、アクチュエータ30がパネル10に加えるX軸正方向の力の大きさをFとし、この力Fの作用によりパネル10が弾性部材40に加えるY軸負方向の力の大きさをF’とする。すると、これらの関係は、力のモーメントとして、次の式(1)のように表すことができる。
また、図5(B)に示すように、アクチュエータ30がパネル10に加える力Fによって、パネル10が回転変位するとした場合の角度をθとすると、この回転によってパネル10が弾性部材40の位置からY軸方向に変位する量はb・sinθとなる。パネル10によって弾性部材40がY軸方向にb・sinθ変位するとした場合、弾性部材40の弾性力による反作用の力F’の大きさは、弾性部材40のバネ定数をKとすると、フックの法則から、次の式(2)のように表すことができる。
さらに、図5(B)に示すように、アクチュエータ30が駆動されてX軸正方向に伸張する変位量をUとする。上述したように、アクチュエータ30が駆動されてX軸正方向に伸張すると、パネル10は、X軸正方向の並進運動と、Z軸を軸とする回転運動の成分を含んで動こうとする。そこで、図5(B)に示すように、アクチュエータ30の伸張により、パネル10上の位置P2がX軸正方向に変位する変位量をUfとする。また、図5(B)に示すように、パネル10が回転変位するとした場合の角度をθとすると、この回転によってパネル10がアクチュエータ30の位置からX軸方向に変位する量はa・sinθとなる。したがって、UfとUとの関係は、次の式(3)のように表すことができる。
ここで、上記式(1)および式(2)を用いて、上記式(3)からθおよびF’を消去すると、次の式(4)が得られる。
上記式において、Uはアクチュエータ30が伸張する変位量であり、Ufはパネル10上の位置P2が変位する量である。したがって、Ufの値がUに近くなるにつれて、X軸正方向の変位が減衰せずに、効率良く触感が呈示できることになる。
上記式(4)から、UfをUに近づけるためには、Uから差し引く値が少なくなれば良い。したがって、UfをUに近づけるためには、a/bがゼロに近い値になるようにすればよいことが分かる。図5(A)に示すように、aとは、アクチュエータ30による力の作用点と、パネル10の回転運動の中心との間の距離である。また、bとは、弾性部材40がパネル10に接続される位置と、パネル10の回転運動の中心との間の距離である。a/bがゼロに近い値になるためには、図5(A)において、aの長さに対してbの長さが大きくなるようにするか、または、bの長さに対してaの長さが小さくなるようにすればよい。例えば、bの長さがaの長さの2倍以上となるように構成すれば、パネル10が振動した際に、位置P2においてX軸方向の振動が減衰する量を1/4以下にすることができる。このように、本実施形態に係る触感呈示装置1は、距離bに対して距離aが小さくなるように、または、距離aに対して距離bが大きくなるように構成するのが好適である。このように、本実施形態に係る触感呈示装置1は、少ない個数のアクチュエータを用いた場合でも、良好な触感を効率的に呈示することができる。
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る触感呈示装置の動作を説明する図である。図6は、第2実施形態に係る触感呈示装置の断面を示す図である(図3(B)および(C)参照)。
上述した第1実施形態に係る触感呈示装置1は、パネル10を横振動させる形態として説明した。第2実施形態に係る触感呈示装置2は、パネル10を縦振動させるものである。第2実施形態に係る触感呈示装置2のように、パネル10を縦振動させる場合であっても、第1実施形態において説明したパネル10を横振動させる形態と同様の原理が成り立つ。
仮に、図6に示す弾性部材40が設置されていないとした場合、図3(C)で説明したように、パネル10上でユーザの接触または押圧が行われる位置によっては、アクチュエータ30の振動が阻害されてしまう。この場合、ユーザの指などに対して良好な触感が呈示されない。例えば、図6に示す位置P3においてユーザの接触または押圧が行われれば、アクチュエータ30は、ユーザが接触または押圧する位置を直接振動させることができるため、良好な触感を呈示することができる。一方、図6に示す位置P4においてユーザの接触または押圧が行われると、アクチュエータ30は、ユーザが接触または押圧する位置を直接振動させることができず、良好な触感を呈示することができなくなる。
図6に示すような構成においては、位置P4が押圧されている状態で、アクチュエータ30がZ軸正方向に伸張すると、パネル10は、Z軸正方向に並進運動するだけでなく、Y軸を軸とする回転運動の成分を含んで動こうとする。そこで、本実施形態に係る触感呈示装置2においては、図6に示すように、弾性部材40を配置して、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制する。
触感呈示装置2においては、アクチュエータ30が駆動されてZ軸正方向に伸張すると、パネル10に対して力Fを与える。この力Fの作用により、パネル10はZ軸正方向に並進運動する。また、パネル10が位置P4において押圧された状態でアクチュエータ30がZ軸正方向に伸張すると、パネル10は、Y軸を中心とした時計回りの回転運動の成分を含んで動こうとする。この時計回りの回転運動の成分により、弾性部材40の位置においては、パネル10が弾性部材40をX軸正方向に押圧しようとする力が作用する。そこで、本実施形態では、弾性部材40の弾性力により、パネル10をX軸負方向に押圧する力F’を作用させる。このように、本実施形態においても、弾性部材40は、パネル10の並進運動の阻害を抑制することにより振動の阻害を抑制する。このため、弾性部材40を設置する位置は、パネル10の回転運動の成分を低減させることが可能な位置とし、典型的には図6に示す弾性部材40のような位置とするのが好適である。このように、本実施形態において、弾性部材40は、パネル10の法線に直交する線(例えばY軸)を軸とする回転運動の成分を低減させることにより振動の阻害を抑制する。
上述したように、触感呈示装置2において、位置P4が押圧されている状態で、アクチュエータ30がZ軸正方向に伸張すると、パネル10は、Y軸を軸とする時計回りの回転運動の成分を含んで動こうとする。この時計回りの回転運動の成分により、弾性部材40の位置においては、パネル10が弾性部材40をX軸正方向に押圧しようとする力が作用する。したがって、弾性部材40は、パネル10をX軸負方向に押圧する力F’を作用させて、パネル10の回転運動の成分を低減させた。一方、触感呈示装置2において、位置P4’が押圧されている状態で、アクチュエータ30がZ軸正方向に伸張すると、パネル10は、Y軸を軸とする反時計回りの回転運動の成分を含んで動こうとする。この反時計回りの回転運動の成分により、弾性部材40の位置においては、パネル10が弾性部材40をX軸負方向に引っ張ろうとする力が作用する。したがって、弾性部材40は、パネル10をX軸正方向に復元する力を作用させて、パネル10の回転運動の成分を低減させることができる。
また、触感呈示装置2においても、図6に示すように、距離bに対して距離aが小さくなるように、または、距離aに対して距離bが大きくなるように構成するのが好適である。このように、本実施形態に係る触感呈示装置2は、少ない個数のアクチュエータを用いた場合でも、良好な触感を効率的に呈示することができる。
(他の実施形態)
図7は、本発明の第3〜第5実施形態に係る触感呈示装置の動作を説明する図である。図7(A)は第3実施形態に係る触感呈示装置3を示し、図7(B)は第4実施形態に係る触感呈示装置4を示し、図7(C)は第5実施形態に係る触感呈示装置5を示す。
図7に示す第3〜第5実施形態に係る触感呈示装置3〜5においても、図6において説明した第2実施形態に係る触感呈示装置2と同様の原理が成り立つ。以下、図6で説明した触感呈示装置2と同様になる説明は適宜簡略化または省略する。まず、図7に示す触感呈示装置3〜5において、パネル10が縦振動すると想定した場合について説明する。
図7に示すような構成においては、位置P6が押圧されている状態で、アクチュエータ30が伸張すると、パネル10は、アクチュエータ30の伸張方向に並進運動するだけでなく、回転運動の成分を含んで動こうとする。そこで、触感呈示装置3〜5においては、図7に示すように、弾性部材40を配置して、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制する。
また、図6に示した触感呈示装置2と同様に、図7に示す触感呈示装置3〜5において、位置P6’が押圧されている状態でも、弾性部材40は、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制する。図7に示す触感呈示装置3〜5においては、パネル10に対して2つの弾性部材40Aおよび40Bを接続している。しかしながら、触感呈示装置3〜5は、図6に示した触感呈示装置2のように、2つの弾性部材40Aおよび40Bのいずれか一方のみを接続しても、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制することができる。
以上、触感呈示装置3〜5について、パネル10が縦振動する場合を想定して説明した。しかしながら、触感呈示装置3〜5は、第1実施形態に係る触感呈示装置1と同様に、パネル10が横振動する場合も、同様に動作させることができる。例えば、図7に示すような構成において、位置P5が押圧されている状態で、アクチュエータ30が伸張すると、パネル10は、アクチュエータ30の伸張方向に並進運動するだけでなく、回転運動の成分を含んで動こうとする。したがって、触感呈示装置3〜5においては、弾性部材40を配置して、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制することができる。また、図7に示す位置P5’が押圧されている状態でも、弾性部材40は、パネル10の回転運動の成分を低減させることにより、パネル10の振動の阻害を抑制することができる。
また、触感呈示装置3〜5においても、距離bに対して距離aが小さくなるように、または、距離aに対して距離bが大きくなるように構成するのが好適である。このように、本実施形態に係る触感呈示装置3〜5は、少ない個数のアクチュエータを用いた場合でも、良好な触感を効率的に呈示することができる。
本発明を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の機能部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本発明の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。