[本願発明の実施形態の説明]
本発明の実施の形態に係る電源装置は、スイッチングデバイス及び発熱部品を有する出力部を備え、該出力部から所要の電力を出力する電源装置であって、前記発熱部品の温度が所定温度になる場合の前記スイッチングデバイスの温度に基づいて所定の目標温度を設定する設定部と、前記スイッチングデバイスの温度を検出する温度検出部と、該温度検出部で検出した温度が前記目標温度以上である場合、前記出力部が出力する電力を制限する制限部とを備える。
設定部は、発熱部品の温度が所定温度になる場合のスイッチングデバイスの温度に基づいて所定の目標温度を設定する。発熱部品は、例えば、インダクタ、変圧器又は抵抗などの比較的高温になる部品を含む。所定温度は、例えば、定格温度、上限温度などとすることができる。所定温度は、発熱部品が過熱により故障しないための温度であり、発熱部品の温度が所定温度以下であれば、加熱による故障の発生を防止することができる温度とすることができる。目標温度は、例えば、スイッチングデバイスの温度が目標温度まで上昇した場合、出力電力を制限(ディレーティング)する温度とすることができる。例えば、ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、発熱部品の温度がTbであり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。発熱部品の温度がTbからΔT上昇すると所定温度となる場合は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度TsにΔTを加算した、Ts+ΔTに設定する。これにより、発熱部品の温度が所定温度まで上昇した場合、スイッチングデバイスの温度は目標温度となる。また、発熱部品の温度Tbが所定温度よりΔTだけ超えている場合は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度TsからΔTを減算した、Ts−ΔTに設定する。これにより、発熱部品の温度が所定温度の場合、スイッチングデバイスの温度は目標温度となる。
温度検出部は、スイッチングデバイスの温度を検出する。制限部は、温度検出部で検出した温度が目標温度以上である場合、出力部が出力する電力を制限する。設定部の設定により、スイッチングデバイスの温度が目標温度である場合、発熱部品の温度は所定温度となる。これにより、スイッチングデバイスの温度を検出するだけで発熱部品の温度が所定温度以上であるか否かが分かる。また、スイッチングデバイスの温度が目標温度以上である場合、すなわち、発熱部品の温度が所定温度以上である場合、制限部が出力電力を制限するので、発熱部品の温度が高くなった場合に出力電力を制限することができ、発熱部品の過熱を防止して発熱部品を保護することができる。
本発明の実施の形態に係る電源装置は、前記発熱部品の温度及び前記スイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報を記憶する記憶部を備え、前記設定部は、前記発熱部品の所定温度と前記記憶部に記憶した前記発熱部品の温度との温度差及び前記記憶部に記憶した前記スイッチングデバイスの温度に基づいて前記目標温度を設定する。
記憶部は、発熱部品の温度及びスイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報を記憶する。例えば、所定の雰囲気温度、出力電力が定格(100%)の場合における、発熱部品の温度とスイッチングデバイスの温度とを関連付けた温度情報を記憶部に記憶する。ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、発熱部品P1の温度がT1であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。
設定部は、発熱部品の所定温度と記憶部に記憶した当該発熱部品の温度との温度差及び記憶部に記憶したスイッチングデバイスの温度に基づいて目標温度を設定する。例えば、発熱部品P1の所定温度をTp1とする。発熱部品の所定温度Tp1と当該発熱部品の温度T1との温度差ΔTは、ΔT=Tp1−T1となる。この場合、設定部は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度Tsに温度差ΔTを加算した、Ts+ΔTに設定する。これにより、発熱部品の温度がT1からΔTだけ上昇して所定温度Tp1になった場合、温度検出部で検出するスイッチングデバイスの温度はTsからTs+ΔT(すなわち目標温度)に上昇するので、制限部は出力電力を制限する。すなわち、発熱部品の温度が所定温度になった場合に出力電力を制限することができる。
本発明の実施の形態に係る電源装置は、前記記憶部は、前記所定温度が異なる複数の発熱部品それぞれの温度及び前記スイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報を記憶し、前記設定部は、前記複数の発熱部品それぞれの所定温度と、前記記憶部に記憶した前記複数の発熱部品それぞれの温度との各温度差のうち最小値に基づいて前記目標温度を設定する。
記憶部は、所定温度が異なる複数の発熱部品それぞれの温度及びスイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報を記憶する。例えば、ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、所定温度がTp1の発熱部品P1の温度がT1であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。また、所定温度がTp2の発熱部品P2の温度がT2であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。
設定部は、複数の発熱部品それぞれの所定温度と、記憶部に記憶した当該複数の発熱部品それぞれの温度との各温度差のうち最小値に基づいて目標温度を設定する。例えば、発熱部品P1の所定温度Tp1と温度T1との温度差をΔT1(=Tp1−T1)とし、発熱部品P2の所定温度Tp2と温度T2との温度差をΔT2(=Tp2−T2)とする。温度差ΔT1とΔT2との関係が、ΔT1>ΔT2である場合、設定部は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度Tsに、最小値である温度差ΔT2を加算した、Ts+ΔT2に設定する。なお、各温度差ΔT1、ΔT2は、いずれも正、0又は負の値をとり得るものとする。これにより、複数の発熱部品のうち、所定温度に対する余裕が最も少ない発熱部品の温度が所定温度になった場合に、出力電力が制限されるので、複数の発熱部品の温度が所定温度を超えることを防止することができる。
本発明の実施の形態に係る電源装置は、前記出力部の動作条件を特定する特定部を備え、前記設定部は、前記特定部で特定した動作条件に基づいて前記目標温度を設定する。
特定部は、出力部の動作条件を特定する。動作条件は、例えば、入力電圧、出力電圧などを含む。また、充放電機能を有する場合には、充電時又は放電時の別などを含む。
設定部は、特定部で特定した動作条件に基づいて目標温度を設定する。例えば、出力電圧が高い場合、同等の電力を出力するための出力電流は少なくなり、出力電流が少なくなると当該出力電流が流れる発熱部品の温度上昇は低くなる。このように動作条件が変わったために発熱部品の温度が所定温度に対して余裕ができたときでも、目標温度が元のままでは出力電力が制限される場合がある。そこで、目標温度を変更することにより、不要な出力電力の制限が発生しないようにすることができる。
本発明の実施の形態に係る電源装置は、前記設定部は、前記特定部で特定した動作条件での前記発熱部品の前記所定温度に対する該発熱部品の温度の低下に応じて、前記目標温度を高く設定する。
設定部は、特定部で特定した動作条件での発熱部品の所定温度に対する当該発熱部品の温度の低下に応じて、目標温度を高く設定する。発熱部品の所定温度に対する温度が低下すると、発熱部品の温度が所定温度に対して余裕ができる。このような場合、目標温度を高く設定することにより、出力電力の制限が行われる温度を高くすることができ、発熱部品の温度が所定温度に対して余裕があるのに出力電力の制限が行われることを防止することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の電源装置としての電力変換装置1の回路構成の一例を示す説明図である。なお、本実施の形態では、電源装置の一例として、プラグインハイブリッド車又は電気自動車等に搭載され、交流電圧及び直流電圧を双方向に交直変換することができる電力変換装置1について説明するが、電源装置は、電力変換装置1に限定されるものではない。例えば、電源装置は、スイッチングデバイス及び所定の発熱部品を有する電力出力部を備え、該電力出力部から所要の電力を出力する装置であれば、本実施の形態を適用することができる。
電力変換装置1は、ノイズフィルタ4、PFC(Power Factor Correction)機能を有する双方向変換回路5、双方向DC−DC変換回路(例えば、絶縁型DC/DCコンバータ)を構成する双方向変換回路6、変圧器7及び双方向変換回路8、各変換回路を構成する後述のスイッチング素子のオン/オフの制御を行う制御部9などを備える。制御部9は、設定部91、温度検出部92、制限部93、特定部94、記憶部95などを備える。
双方向変換回路5は、トランジスタ51、52を直列に接続した直列回路及びトランジスタ53、54を直列に接続した直列回路それぞれを並列に接続した回路を有する。スイッチングデバイスとしてのトランジスタ51、52、53、54は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、IGBTに代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることもできる。また、トランジスタ51、52、53、54それぞれのコレクタ・エミッタ間には、ダイオード55、56、57、58が逆並列に接続(コレクタにカソードを、エミッタにアノードを接続)してある。
トランジスタ51のエミッタとトランジスタ52のコレクタとの接続点には、コイルL1の一端を接続してあり、トランジスタ53のエミッタとトランジスタ54のコレクタとの接続点には、コイルL2の一端を接続してあり、コイルL1、L2の他端は、ノイズフィルタ4を介して、交流入力端子T1、T2に接続してある。また、コイルL1、L2の他端間には、キャパシタC1を接続してある。コイルL1、L2及びキャパシタC1は、フィルタを構成する。交流入力端子T1、T2には、交流電源2が接続される。
制御部9は、各トランジスタ51、52、53、54のスイッチング動作を制御する。
双方向変換回路8は、トランジスタ81及びトランジスタ82を直列に接続した直列回路、トランジスタ83及びトランジスタ84を直列に接続した直列回路を備え、各直列回路を並列に接続してある。具体的には、トランジスタ81のエミッタとトランジスタ82のコレクタとを接続し、トランジスタ83のエミッタとトランジスタ84のコレクタとを接続してある。また、トランジスタ81、83のコレクタ同士を接続してあり、トランジスタ82、84のエミッタ同士を接続してある。トランジスタ82、84のエミッタは、直流出力端子T4に接続してある。すなわち、スイッチングデバイスとしてのトランジスタ81、82、83、84により、ブリッジ回路を構成してある。
トランジスタ81、83のコレクタには、インダクタL3の一端を接続してあり、インダクダL3の他端は直流出力端子T3に接続してある。直流出力端子T3、T4間にはキャパシタC3を接続してある。直流出力端子T3、T4間には、バッテイル3が接続される。
トランジスタ81のエミッタとトランジスタ82のコレクタとの接続点、及びトランジスタ83のエミッタとトランジスタ84のコレクタとの接続点には、変圧器7の一方側を接続してある。また、各トランジスタ81、82、83、84のコレクタ・エミッタ間には、それぞれダイオード85、86、87、88を逆並列に接続してある。
制御部9は、各トランジスタ81、82、83、84を所定周波数(例えば、50kHzであるが、これに限定されない)でオン/オフすべく制御する。トランジスタ81、82、83、84は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、IGBTに代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることもできる。
双方向変換回路6は、トランジスタ61及びトランジスタ62を直列に接続した直列回路、トランジスタ63及びトランジスタ64を直列に接続した直列回路を備え、各直列回路を並列に接続してある。具体的には、トランジスタ61のエミッタとトランジスタ62のコレクタとを接続し、トランジスタ63のエミッタとトランジスタ64のコレクタとを接続してある。また、トランジスタ61、63のコレクタ同士を接続してあり、トランジスタ62、64のエミッタ同士を接続してある。トランジスタ62、64のエミッタは、双方向変換回路5のトランジスタ52、54のエミッタに接続してあり、トランジスタ61、63のコレクタは、双方向変換回路5のトランジスタ51、53のコレクタに接続してある。すなわち、スイッチングデバイスとしてのトランジスタ61、62、63、64により、ブリッジ回路を構成してある。
トランジスタ61のエミッタとトランジスタ62のコレクタとの接続点、及びトランジスタ63のエミッタとトランジスタ64のコレクタとの接続点には、変圧器7の他方側を接続してある。また、各トランジスタ61、62、63、64のコレクタ・エミッタ間には、それぞれダイオード65、66、67、68を逆並列に接続してある。
双方向変換回路6の双方向変換回路5側には、キャパシタC2を接続してある。すなわち、トランジスタ61のコレクタとトランジスタ62のエミッタ間に、キャパシタC2を接続してある。
制御部9は、各トランジスタ61、62、63、64を所定周波数(例えば、50kHzであるが、これに限定されない)でオン/オフすべく制御する。トランジスタ61、62、63、64は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、IGBTに代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることもできる。
充電時には、交流入力端子T1、T2間に印加された交流電源2(系統の電源)からの交流が双方向変換回路5により力率改善されるとともに直流に変換され、変換された直流は双方向変換回路6により一旦交流に変換され、さらに双方向変換回路8により整流されてバッテリ3を充電する。双方向変換回路5、6、8は、電力を変換して出力する出力部としての機能を有する。
放電時には、バッテリ3からの直流(バッテリ3の電圧)が双方向変換回路8により一旦交流に変換され、さらに双方向変換回路6により整流されて直流に変換され、変換された直流は、双方向変換回路5により交流に変換されて、交流を出力する。双方向変換回路5、6、8は、電力を変換して出力する出力部としての機能を有する。
スイッチングデバイス(半導体デバイスとも称する)としてのトランジスタ51〜54、61〜64、81〜84の付近には、温度センサ(不図示)を配置してあり、当該温度センサに基づいて、温度検出部92は、トランジスタ51〜54、61〜64、81〜84の温度を検出する。なお、トランジスタ51〜54、61〜64、81〜84の配置に応じて温度センサの数は適宜設定することができる。例えば、トランジスタ51〜54、61〜64、81〜84の温度を、1個又は複数個(例えば、2個程度)で計測することができる。
また、図1において、スイッチングデバイス以外の発熱部品としては、例えば、インダクタL3、変圧器7、不図示の抵抗又はサージ吸収用部品などの比較的高温となる部品が含まれる。なお、当該発熱部品の温度を直接計測する温度センサは設けられていない。以下の説明では、便宜上、トランジスタ51〜54、61〜64、81〜84を纏めてスイッチングデバイスと称し、インダクタL3、変圧器7、不図示の抵抗又はサージ吸収用部品などの部品を纏めて発熱部品と称する。
設定部91は、発熱部品の温度が所定温度になる場合のスイッチングデバイスの温度に基づいて所定の目標温度を設定する。所定温度は、例えば、定格温度、上限温度などとすることができる。所定温度は、発熱部品が過熱により故障しないための温度であり、発熱部品の温度が所定温度以下であれば、加熱による故障の発生を防止することができる温度とすることができる。目標温度は、例えば、スイッチングデバイスの温度が目標温度まで上昇した場合、制限部93により出力電力を制限(ディレーティング)する温度とすることができる。
例えば、ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、発熱部品の温度がTbであり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。発熱部品の温度がTbからΔT上昇すると所定温度になる場合は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度TsにΔTを加算した、Ts+ΔTに設定する。
これにより、発熱部品の温度が所定温度まで上昇した場合、スイッチングデバイスの温度は目標温度となる。また、発熱部品の温度Tbが所定温度よりΔTだけ超えている場合は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度TsからΔTを減算した、Ts−ΔTに設定する。これにより、発熱部品の温度が所定温度の場合、スイッチングデバイスの温度は目標温度となる。
制限部93は、温度検出部92で検出したスイッチングデバイスの温度が目標温度以上である場合、双方向変換回路5、6、8が出力する電力を制限する。設定部91の設定により、スイッチングデバイスの温度が目標温度である場合、発熱部品の温度は所定温度となる。これにより、スイッチングデバイスの温度を検出するだけで発熱部品の温度が所定温度以上であるか否かが分かる。また、スイッチングデバイスの温度が目標温度以上である場合、すなわち、発熱部品の温度が所定温度以上である場合、制限部93が出力電力を制限するので、発熱部品の温度が高くなった場合に出力電力を制限することができ、発熱部品の過熱を防止して発熱部品を保護することができる。
次に、本実施の形態の電力変換装置1の動作について説明する。まず、本実施の形態の設定部91を具備しない場合の動作について説明する。図2は設定部91を具備しない場合のスイッチングデバイスの温度検出に基づく出力電力の制限の一例を示すタイムチャートである。図2において、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。図2中のチャートは、発熱部品としての部品A、Bの温度、スイッチングデバイスの温度、及び雰囲気温度を示す。また、スイッチングデバイスの温度は温度センサで計測されるが、部品A、Bの温度は計測されないとする。なお、図2に示すチャートは、便宜上、模式的に示すものである。
図2に示すように、時刻t1以前では、雰囲気温度が一定であり、スイッチングデバイスの温度は、目標温度Fより若干低い。また、部品Aの温度は、部品Aの定格温度に対して比較的余裕があるものの、部品Bの温度は、部品Bの定格温度に対してあまり余裕がない状態であるとする。
時刻t1で雰囲気温度が上昇すると、スイッチングデバイス、部品A、Bの温度が上昇する。スイッチングデバイスの温度が上昇し、時刻t2において、温度センサで計測したスイッチングデバイスの温度が目標温度Fになると、制限部93は双方向変換回路5、6、8が出力する電力を制限する。これにより、スイッチングデバイスの温度は略目標温度Fとなるよう維持される。
一方、定格温度に対して比較的余裕がある部品Aの温度は、時刻t1以降、上昇するが、時刻t2において、部品Aの定格温度を下回り、過熱等の問題は生じない。しかし、定格温度に対してあまり余裕がない部品Bの温度は、時刻t1とt2の間で部品Bの定格温度を超え、時刻t2では、定格温度よりもΔTだけ高くなる。
図3は本実施の形態の電力変換装置1のスイッチングデバイスの温度検出に基づく出力電力の制限の一例を示すタイムチャートである。図3において、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示す。図3中のチャートは、発熱部品としての部品A、Bの温度、スイッチングデバイスの温度、及び雰囲気温度を示す。また、スイッチングデバイスの温度は温度センサで計測されるが、部品A、Bの温度は計測されないとする。なお、図3に示すチャートは、便宜上、模式的に示すものである。
図3の例は、設定部91を具備する場合の動作を示す。すなわち、設定部91は、発熱部品の温度が所定温度になる場合のスイッチングデバイスの温度に基づいて所定の目標温度を設定する。図2、図3の例では、部品Bの温度が定格温度になるため(すなわち、定格温度を超えないようにするため)には、スイッチングデバイスの目標温度FをΔTだけ低くして目標温度Gとすればよい。
図3に示すように、時刻t1で雰囲気温度が上昇すると、スイッチングデバイス、部品A、Bの温度が上昇する。スイッチングデバイスの温度が上昇し、時刻t3において、温度センサで計測したスイッチングデバイスの温度が目標温度Gになると、制限部93は双方向変換回路5、6、8が出力する電力を制限する。これにより、スイッチングデバイスの温度は略目標温度Gとなるよう維持される。
一方、部品Bの温度は、時刻t3では、定格温度になり、制限部93は双方向変換回路5、6、8が出力する電力を制限するので、部品Bの温度は定格温度となるよう維持される。すなわち、スイッチングデバイスの温度を検出するだけで発熱部品の温度が所定温度以上であるか否かが分かる。また、スイッチングデバイスの温度が目標温度以上である場合、すなわち、発熱部品の温度が所定温度以上である場合、制限部93が出力電力を制限するので、発熱部品の温度が高くなった場合に出力電力を制限することができ、発熱部品の過熱を防止して発熱部品を保護することができる。
次に、具体的な方法としての温度マップについて説明する。記憶部95は、発熱部品の温度及びスイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報としての温度マップを記憶する。温度マップは、例えば、所定の雰囲気温度、出力電力が定格(100%)の場合における、発熱部品の温度とスイッチングデバイスの温度とを関連付けた情報である。
例えば、ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、発熱部品P1の温度がT1であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。
設定部91は、発熱部品の所定温度と記憶部95に記憶した当該発熱部品の温度との温度差及び記憶部95に記憶したスイッチングデバイスの温度に基づいて目標温度を設定する。例えば、発熱部品P1の所定温度をTp1とする。発熱部品の所定温度Tp1と当該発熱部品の温度T1との温度差ΔTは、ΔT=Tp1−T1となる。この場合、設定部91は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度Tsに温度差ΔTを加算した、Ts+ΔTに設定する。これにより、発熱部品の温度がT1からΔTだけ上昇して所定温度Tp1になった場合、温度検出部92で検出するスイッチングデバイスの温度はTsからTs+ΔT(すなわち目標温度)に上昇するので、制限部93は出力電力を制限する。すなわち、発熱部品の温度が所定温度になった場合に出力電力を制限することができる。
図4は目標温度を固定値とした場合の発熱部品の温度上昇の数値例を示す説明図である。図4の例は、スイッチングデバイスの目標温度を固定した場合であり、設定部91による設定を行わない場合を示す。図4において、ユニットNo.1〜5は、5台の設定部91を具備しない電力変換装置を示す。図4に示す温度マップは、雰囲気温度が60℃、DC250V出力で定格出力指示(100%出力)の場合の、部品A、部品B及びスイッチングデバイスの温度(実測温度)を関連付けたものである。部品Aの定格温度は130℃であり、部品Bの定格温度は155℃であるとする。
図4に示すように、ユニットNo.1では、部品Aの実測温度は118℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は12℃である。また、部品Bの実測温度は153℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。スイッチングデバイスの実測温度は108℃である。スイッチングデバイスの目標温度を110℃とする。雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、部品Aの実測温度は120℃となり、部品Bの実測温度は155℃となる。ユニットNo.1では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えていない。
ユニットNo.2では、部品Aの実測温度は120℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は10℃である。また、部品Bの実測温度は156℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は−1℃である。スイッチングデバイスの実測温度は109℃である。スイッチングデバイスの目標温度を110℃とする。雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、部品Aの実測温度は121℃となり、部品Bの実測温度は157℃となる。ユニットNo.2では、部品Bの実測温度が定格温度を超えている。
ユニットNo.3では、部品Aの実測温度は129℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は1℃である。また、部品Bの実測温度は153℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。スイッチングデバイスの実測温度は108℃である。スイッチングデバイスの目標温度を110℃とする。雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、部品Aの実測温度は131℃となり、部品Bの実測温度は155℃となる。ユニットNo.3では、部品Aの実測温度が定格温度を超えている。
ユニットNo.4では、部品Aの実測温度は128℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。また、部品Bの実測温度は152℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は3℃である。スイッチングデバイスの実測温度は109℃である。スイッチングデバイスの目標温度を110℃とする。雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、部品Aの実測温度は129℃となり、部品Bの実測温度は153℃となる。ユニットNo.4では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えていない。
ユニットNo.5では、部品Aの実測温度は124℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は6℃である。また、部品Bの実測温度は156℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は−1℃である。スイッチングデバイスの実測温度は107℃である。スイッチングデバイスの目標温度を110℃とする。雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、部品Aの実測温度は127℃となり、部品Bの実測温度は159℃となる。ユニットNo.5では、部品Bの実測温度が定格温度を超えている。
図4に示すように、設定部91を具備せず、スイッチングデバイスの目標温度を、すべての電力変換装置で固定値(例えば、110℃)とすると、ある電力変換装置では(図4の例では、ユニットNo.2、3、5)部品A又はBの温度が定格温度を超えてしまう。次に、本実施の形態の電力変換装置1のように設定部91を具備する場合について説明する。
図5は本実施の形態の電力変換装置1の設定部91で目標温度を設定した場合の発熱部品の温度上昇の数値例を示す説明図である。図5の例は、スイッチングデバイスの目標温度を設定部91で設定する場合を示す。図5において、ユニットNo.1〜5は、5台の設定部91を具備する電力変換装置1を示す。図5に示す温度マップは、雰囲気温度が60℃、DC250V出力で定格出力指示(100%出力)の場合の、部品A、部品B及びスイッチングデバイスの温度(実測温度)を関連付けたものである。部品Aの定格温度は130℃であり、部品Bの定格温度は155℃であるとする。
図5に示すように、ユニットNo.1では、部品Aの実測温度は118℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は12℃である。また、部品Bの実測温度は153℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。スイッチングデバイスの実測温度は108℃である。定格温度に対する部品A及び部品Bの実測温度の余裕度合は、部品Bの方が部品Aより厳しく、定格余裕は2℃である。そこで、部品Bの温度が定格温度に達したときに出力電力の制限が行われるように、スイッチングデバイスの実測温度108℃に部品Bの定格余裕2℃を加算した110℃をスイッチングデバイスの目標温度に設定する。そして、雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度110℃のとき、出力電力の制限が行われ、部品Aの実測温度は120℃となり、部品Bの実測温度は155℃となる。ユニットNo.1では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えない。
ユニットNo.2では、部品Aの実測温度は120℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は10℃である。また、部品Bの実測温度は156℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は−1℃である。スイッチングデバイスの実測温度は109℃である。定格温度に対する部品A、部品Bの実測温度の余裕度合は、部品Bの方が部品Aより厳しく、定格余裕は−1℃である。そこで、部品Bの温度が定格温度に達するときに出力電力の制限が行われるように、スイッチングデバイスの実測温度109℃に部品Bの定格余裕−1℃を加算(1℃を減算)した108℃を目標温度に設定する。そして、雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度108℃のとき、出力電力の制限が行われ、部品Aの実測温度は119℃となり、部品Bの実測温度は155℃となる。ユニットNo.2では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えない。
ユニットNo.3では、部品Aの実測温度は129℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は1℃である。また、部品Bの実測温度は153℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。スイッチングデバイスの実測温度は108℃である。定格温度に対する部品A及び部品Bの実測温度の余裕度合は、部品Aの方が部品Bより厳しく、定格余裕は1℃である。そこで、部品Aの温度が定格温度に達したときに出力電力の制限が行われるように、スイッチングデバイスの実測温度108℃に部品Aの定格余裕1℃を加算した109℃をスイッチングデバイスの目標温度に設定する。そして、雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度109℃のとき、出力電力の制限が行われ、部品Aの実測温度は130℃となり、部品Bの実測温度は154℃となる。ユニットNo.3では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えない。
ユニットNo.4では、部品Aの実測温度は128℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は2℃である。また、部品Bの実測温度は152℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は3℃である。スイッチングデバイスの実測温度は109℃である。定格温度に対する部品A及び部品Bの実測温度の余裕度合は、部品Aの方が部品Bより厳しく、定格余裕は2℃である。そこで、部品Aの温度が定格温度に達したときに出力電力の制限が行われるように、スイッチングデバイスの実測温度109℃に部品Bの定格余裕2℃を加算した111℃をスイッチングデバイスの目標温度に設定する。そして、雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度111℃のとき、出力電力の制限が行われ、部品Aの実測温度は130℃となり、部品Bの実測温度は154℃となる。ユニットNo.4では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えない。
ユニットNo.5では、部品Aの実測温度は124℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は6℃である。また、部品Bの実測温度は156℃であり、定格余裕(定格温度−実測温度)は−1℃である。スイッチングデバイスの実測温度は107℃である。定格温度に対する部品A、部品Bの実測温度の余裕度合は、部品Bの方が部品Aより厳しく、定格余裕は−1℃である。そこで、部品Bの温度が定格温度に達するときに出力電力の制限が行われるように、スイッチングデバイスの実測温度107℃に部品Bの定格余裕−1℃を加算(1℃を減算)した106℃を目標温度に設定する。そして、雰囲気温度が70℃において、スイッチングデバイスの実測温度が目標温度106℃のとき、出力電力の制限が行われ、部品Aの実測温度は123℃となり、部品Bの実測温度は155℃となる。ユニットNo.5では、部品A、Bの実測温度は定格温度を超えない。
なお、図5に示す数値は、一例であって、実測温度、定格温度、目標温度が図5に示す数値に限定されるものではない。また、図5では、簡便のため部品A、部品Bの2つの発熱部品を示しているが、発熱部品は2つに限定されるものではない。また、図5では、簡便のためスイッチングデバイスを1つ示しているが、温度マップにおけるスイッチングデバイスの数は1つに限定されるものではない。
上述のように、記憶部95は、定格温度(所定温度)が異なる複数の発熱部品(図5の例では、部品A、部品B)それぞれの温度及びスイッチングデバイスの温度を関連付けた温度情報(温度マップ)を記憶する。例えば、ある雰囲気温度Taにおいて、出力電力を定格(100%)とした場合に、所定温度がTp1の発熱部品P1の温度がT1であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。また、所定温度がTp2の発熱部品P2の温度がT2であり、スイッチングデバイスの温度がTsであるとする。
設定部91は、複数の発熱部品それぞれの定格温度と、記憶部95に記憶した当該複数の発熱部品それぞれの温度との各温度差(定格余裕)のうち最小値に基づいて目標温度を設定する。例えば、発熱部品P1の所定温度Tp1と温度T1との温度差をΔT1(=Tp1−T1)とし、発熱部品P2の所定温度Tp2と温度T2との温度差をΔT2(=Tp2−T2)とする。温度差ΔT1とΔT2との関係が、ΔT1>ΔT2である場合、設定部91は、目標温度を、スイッチングデバイスの温度Tsに、最小値である温度差ΔT2を加算した、Ts+ΔT2に設定する。なお、各温度差ΔT1、ΔT2は、いずれも正、0又は負の値をとり得るものとする。
これにより、複数の発熱部品のうち、所定温度に対する余裕が最も少ない発熱部品の温度が所定温度になった場合に、出力電力が制限されるので、複数の発熱部品の温度が所定温度を超えることを防止することができる。
図6は本実施の形態の電力変換装置1による出力電力の制限の一例を示すタイムチャートである。図6において、上段のチャートは、雰囲気温度の変化の様子を模式的に表したものである。中段のチャートは、スイッチングデバイスの温度変化及び出力電力の制限(ディレーティング)の様子を模式的に表したものである。下段のチャートは、部品A及び部品Bの温度変化の様子を模式的に表したものである。図6において、縦軸は温度、電力変換装置1による出力電力を示し、横軸は時間を示す。また、図6においてスイッチングデバイスの目標温度を103℃、部品Aの定格温度を130℃、部品Bの定格温度を155℃とする。
図6に示すように、雰囲気温度が60℃において、スイッチングデバイスの温度は目標温度(103℃)より低い100℃となっており、出力電力の制限は行われず、100%の出力で動作している。また、部品Aの温度は略115℃であり、部品Bの温度は略150℃であり、いずれも定格温度より低い。
雰囲気温度が60℃から70℃に上昇すると、スイッチングデバイス、部品A、部品Bの温度が上昇する。スイッチングデバイスの温度が目標温度に達すると、出力電力の制限が行われ、温度の上昇に応じて出力電力が100%から小さくなる。出力電力の制限が行われると、部品A、部品Bの温度上昇が抑制され、部品Aの温度は略120℃に維持され、部品Bの温度は定格温度の155℃に維持される。
さらに、雰囲気温度が70℃から80℃に上昇した場合、温度の上昇に応じて出力電力がさらに小さくなり、スイッチングデバイスの温度が目標温度に維持される。これにより、部品Aの温度は略120℃に維持され、部品Bの温度は定格温度の155℃に維持される。
なお、出力電力が制限された動作状態で、電力変換装置1を再起動した場合には、過渡的な温度上昇がみられるが、2〜3分程度の短い時間でスイッチングデバイスの温度が目標温度に維持され、部品Aの温度は略120℃に維持され、部品Bの温度は定格温度の155℃に維持される。
また、特定部94は、双方向変換回路5、6、8の動作条件を特定する。動作条件は、例えば、入力電圧、出力電圧、充電時又は放電時の別などを含む。
設定部91は、特定部94で特定した動作条件に基づいて目標温度を設定する。例えば、出力電圧が高い場合、同等の電力を出力するための出力電流は少なくなり、出力電流が少なくなると当該出力電流が流れる発熱部品の温度上昇は低くなる。このように動作条件が変わったために発熱部品の温度が所定温度に対して余裕ができたときでも、目標温度が元のままでは出力電力が制限される場合がある。そこで、目標温度を変更することにより、不要な出力電力の制限が発生しないようにすることができる。
例えば、バッテリ電圧を、251V〜275V、276V〜300V、301V〜325Vの如く3つの電圧範囲に区分しておき、バッテリ電圧の区分毎に温度マップを複数記憶しておく。そして、特定部94が特定したバッテリ電圧に応じて、温度マップを切り替える(選択する)ようにすれば、動作条件が変化した場合でも、発熱部品の温度が定格温度に近い領域で電力変換装置1を動作させることができ、不要な出力電力の制限が発生しないようにすることができる。また、不要な出力電力の制限を防止することができるので、電力変換装置1を効率的動作させることができる。
より具体的には、設定部91は、特定部94で特定した動作条件での発熱部品の所定温度に対する当該発熱部品の温度の低下に応じて、目標温度を高く設定する。発熱部品の所定温度に対する温度が低下すると、発熱部品の温度が所定温度に対して余裕ができる。このような場合、目標温度を高く設定することにより、出力電力の制限が行われる温度を高くすることができ、発熱部品の温度が所定温度に対して余裕があるのに出力電力の制限が行われることを防止することができる。
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。