JP6609730B2 - 体内輸送担体、これを用いた複合体、及び体内輸送方法 - Google Patents

体内輸送担体、これを用いた複合体、及び体内輸送方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本国際出願は、2017年5月8日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2017−92447号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2017−92447号の全内容を本国際出願に参照することにより援用する。
本開示は、体内輸送担体、これを用いた複合体、及び体内輸送方法に関する。
ペプチドは、様々な生理活性を有するため、医薬品、機能性食品用途に用いられている。口から摂取したペプチドが機能を発揮するには、強酸性環境である胃を通り、機能を維持した状態で中性環境の腸に到達される必要がある。しかし、胃液には、プロテアーゼであるペプシンが含まれている。ペプチドは胃を通る間にペプシンで容易に分解されてしまうため、生理活性を保った状態で腸に到達することは難しい。特にペプチドを医薬品として用いる場合、ペプチドは、その機能活性を維持した状態で、腸まで輸送する技術が求められていた。
従来、腸までペプチド類の医薬品を輸送するためには、特許文献1に記載されているように、腸溶性の高分子などを用いてペプチド類を被覆して錠剤及び顆粒を形成することが行われていた(特許文献1)。
特開2013−256518号公報
しかしながら、上記の特許文献1の方法では、ペプチド類の高分子被覆体を調製するのに様々な作業が必要である。腸溶性材料自体を調製する際や腸溶性材料でペプチド類を被覆する際に溶剤を用いる場合がある。溶剤を用いて腸溶性材料を被覆したペプチド類については、食品分野への応用が認められない場合がある。
腸溶性材料を用いた腸への輸送技術は、上記の特許文献1に記載されているような、医薬品に適用された例しか確認できなかった。
本開示は係る事情に鑑みてなされたものであり、物質を腸へ輸送することができる新規な体内輸送担体、これを用いた複合体、及び体内輸送方法を提供することを課題とする。
本開示の体内輸送担体は、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する体内輸送担体であって、前記体内輸送担体はシリカゲルを有する。
本開示の複合体は、負電荷をもつ両性物質と、前記両性物質を吸脱着し得る体内輸送担体とを有する複合体であって、前記体内輸送担体はシリカゲルを有する。
本開示の体内輸送方法は、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する両性物質の体内輸送方法であって、前記両性物質とシリカゲルとを有する複合体を形成し、前記複合体を体内に投与する。
実験例1におけるシリカゲル(試料3,試料6)を、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)で測定したIRスペクトルを示す図である。 実験例2で用いた3残基の各ペプチドについて、等電点及び疎水度を示す図である。 実験例2におけるpH2溶液において、個々の3残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例2におけるpH2溶液において、個々の3残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例2におけるpH7溶液において、個々の3残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例2における、pH7溶液において、個々の3残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例2における、個々の3残基ペプチドについて、pH2溶液とpH7溶液に対する吸着割合の差であるスコア割合を示す図である。 実験例2における、個々の3残基のペプチドについて、スコア割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例3におけるpH2溶液において、個々の5残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例3におけるpH2溶液において、個々の5残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例3におけるpH7溶液において、個々の5残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例3における、pH7溶液において、個々の5残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例3における、個々の5残基ペプチドについて、pH2溶液とpH7溶液に対する吸着割合の差であるスコア割合を示す図である。 実験例3における、個々の5残基のペプチドについて、スコア割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例4におけるpH2溶液において、個々の7残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例4におけるpH2溶液において、個々の7残基のペプチドについて、シリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例4におけるpH7溶液において、個々の7残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合を示す図である。 実験例4における、pH7溶液において、個々の7残基のペプチドをシリカゲル(試料7)に吸着させたときの吸着割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例4における、個々の7残基ペプチドについて、pH2溶液とpH7溶液に対する吸着割合の差であるスコア割合を示す図である。 実験例4における、個々の7残基のペプチドについて、スコア割合と、ペプチドの等電点及び疎水度との関係を示す図である。 実験例5において、シリカゲル(試料3)へ吸着されたペプチドがペプシンで分解されずに残る事を示す図である。
本開示の実施形態に係る体内輸送担体、複合体、及び体内輸送方法について詳細に説明する。
本実施形態の体内輸送担体は、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する担体である。体内輸送担体は、シリカゲルを有する。上記両性物質をシリカゲルに吸着させた状態で経口投与すると、両性物質はシリカゲルに吸着された状態を維持して強酸性環境の胃を通過し、腸に到達する。中性環境の腸においては、両性物質がシリカゲルから脱離する。腸では、負電荷をもつ両性物質が脱離しやすい。
本実施形態において、「両性物質」とは、酸及び塩基のいずれに対しても反応し得る物質をいう。
「負電荷をもつ両性物質」とは、中性(pH7)の水中において負電荷をもつ両性物質をいう。負電荷をもつ両性物質は、中性域でシリカゲルに吸着されにくい。このため、中性環境の腸内で負電荷をもつ両性物質はシリカゲルから脱離しやすい。
両性物質の等電点は8以下であることがよく、更に、7以下であることがよく、更に5以下であることが好ましい。等電点が7以下のペプチドは、負電荷をもつ傾向がある。この場合には、シリカゲルは両性物質を効果的に腸に到達させることができる。等電点は、The Characterization of Amino Acid Sequences in Proteins by Statistical Methods,J.Theoret.Biol.(1968)21,170−201に記載の方法で求められる。
「疎水性」とは、両性物質が所定の疎水度を有することをいう。所定の疎水度を有する両性物質は、酸性域において、シリカゲルに吸着する。両性物質はシリカゲルに吸着した状態で強酸性環境の胃を通り抜ける。
疎水度は、A Simple Method for Displaying the Hydropathic Character of a Protein,J.Mol.Biol.(1982)157,105−132に記載の方法で求められる。両性物質の疎水度は、−4.5〜4.5であることがよく、更に−3.0〜3.0であることが好ましい。疎水度が小さい両性物質の場合には、酸性域で両性物質がシリカゲルから脱離しやすくなるおそれがある。疎水度が大きい両性物質の場合には、酸性域で両性物質がシリカゲルから脱離しないおそれがある。
両性物質がペプチド類である場合、ペプチド類のアミノ酸残基(以下、残基という)数が多くなるにしたがって、ペプチド類の好ましい疎水度の範囲も変わる。ペプチド類の残基の数が大きくなるほど、ペプチド類の好ましい疎水度の範囲が広くなる傾向にある。例えば、ペプチド類の残基数が5であるとき、ペプチド類の疎水度は−2以上がよく、さらに−1以上が好ましい。ペプチド類の残基数が7であるとき、ペプチド類の疎水度は−3以上がよく、さらにー2以上が好ましい。これらの場合には、ペプチド類はシリカゲルに吸着した状態を維持して胃を通過し、腸においてシリカゲルから離脱しやすくなる。
両性物質は、機能性食品、食品、医薬品などに用いられている。両性物質は、経口投与される物質であるとよく、例えば、アミノ酸、ペプチド類、たんぱく質、核酸類、糖類、脂質類、それらの複合体、高分子化合物、有機化合物の中から選ばれる1種以上である。
両性物質がペプチド類である場合、たとえば、ペプチド類の中でも、構成アミノ酸に側鎖としてカルボキシル基を含むもの(例えばD(アスパラギン酸))や、側鎖として炭化水素基や芳香族基を含むもの(例えばI(イソロイシン)やF(フェニルアラニン))は、腸への到達性がよい傾向がある。
両性物質が、ペプチド類、たんぱく質である場合には、両性物質をシリカゲルに吸着させることなく経口投与したとき、胃液中のペプシンにより両性物質が分解される。しかしながら、本実施形態のように、両性物質をシリカゲルに吸着させた状態であれば、胃液中のペプシンによる両性物質の分解を防止できる。
ペプチド類の残基数は、多くなるほど、腸への到達効率が向上する。たとえば、ペプチド類の残基数が3よりも5、5よりも7の方が、腸への到達効率が向上する。
両性物質がペプチド類である場合、ペプチドであってもよく、ペプチド誘導体、ペプチドの塩であってもよい。「ペプチド誘導体」は、ペプチドをアセチル化、アミド化、リン酸化、環化などしたものをいう。「塩」とは、ペプチド又はその誘導体の薬理学的に許容される任意の塩(無機塩及び有機塩を含む)をいう。ペプチドの塩は、溶媒和物又は無溶媒和物であってもよい。
腸に到達し得る3残基のペプチドは、たとえば、DII、FFE、ELD、DDD、QFL、III、LVY、YDQ、FFI、NGS、NNN、IYD、KEN、SAYがあるが、これに限定されない。特に、DII、FFE、ELD、DDD、QFLの腸への到達効率がよい。
腸に到達し得る5残基のペプチドは、たとえば、DDIII、VDVVL,IIIII、DLVEE、YPFVV、YPFPG、LISIL、SILYQ、DDSEL、GYYPT、IDEVS、DDDDD、LENEQ、ENESD、NNNNN、QREQN、EEAASがあるが、これに限定されない。特に、DDIII、VDVVL,IIIII、DLVEE、YPFVV、YPFPG、LISIL、SILYQの腸への到達効率がよい。
腸に到達し得る7残基のペプチドは、たとえば、IIDIIDD、DFELEDD、DLIDENN、GLVDLGE、ADILSDD、DVLELVI、NEGNPGD、VLDTDYK、DQTPRVF、NNNNNNN、IIIIIII、KENTSAN、FAGLFAL、MPIQAFAL、DDDDDDD、YPFPGPI、DNNDGDD、RIRILLRがあるが、これに限定されない。特に、IIDIIDD、DFELEDD、DLIDENN、GLVDLGE、ADILSDD、DVLELVI、NEGNPGDがよく、IIDIIDD、DFELEDD、DLIDENN、GLVDLGE、ADILSDD、DVLELVIの腸への到達効率がよい。
本実施形態において、シリカゲルはアルカリ性であることが好ましい。シリカゲルの「アルカリ性」とは、シリカゲルを水に混ぜたときに示す液性をいう。アルカリ性のシリカゲルは、酸性溶液において両性物質の吸着性能を高くする。
シリカゲルのpHは、7以上10以下であることが好ましい。シリカゲルのpHは、シリカゲルと水とを質量比でシリカゲル:水=5:100の割合で混合して得たスラリーのpHをいう。シリカゲルのpHが7未満の場合には、腸への両性物質の到達効率が低下するおそれがある。シリカゲルのpHが10を超える場合には、シリカゲルが溶解し、シリカゲルの構造を保てなくなるおそれがある。
更に、シリカゲルのpHは7.5〜10であることが好ましく、さらに7.8〜9.3であることが望ましい。この場合には、両性物質を効果的に腸に運ぶことができる。
一般のシリカゲルは、酸性ないし中性(たとえば3〜7.5)である。これらのシリカゲルはアルカリ性に調整するとよい。酸性ないし中性のシリカゲルをアルカリ性に調整するためには、シリカゲルをアルカリに接触させるとよい。例えば、シリカゲルをアルカリ溶液に接触させるとよい。アルカリ溶液は、例えば、NaOH、KOH、アンモニアなどのアルカリ成分を水に溶解したアルカリ溶液である。アルカリ溶液のpHは、8〜10がよい。アルカリ溶液のpHが10を超えると、シリカゲルが溶解するおそれがある。アルカリ溶液のpHが8未満の場合には、シリカゲルをアルカリ性に調整しにくい。
シリカゲル表面のシラノール基(Si−OH)は、等電点より低いpHではSiOH 、等電点より高いpHではSi−Oと変化する。このように、シラノール基は、溶液のpHにより表面状態が変化する。
シリカゲルにおける表面積当たりのシラノール基数は、シリカゲルの親水度に影響を与える。シラノール基の数が少なれば、シリカゲルの親水度は小さくなり、シラノール基の数が多ければ、シリカゲルの親水度は大きくなる傾向がある。
シリカゲルの表面積1nm当たりのシラノール基の数は、1〜6個/nmであるとよい。この場合には、シリカゲルの両性物質への吸着性能がよい。更に、シリカゲルの表面積1nm当たりのシラノール基の数は、1〜5個/nmが好ましく、1.5〜4個/nmであることが望ましい。この場合、酸性溶液中でシリカゲルは両性物質を吸着しやすく、かつ中性溶液中でシリカゲルは両性物質を脱離させやすくなる。このため、表面積1nm当たりのシラノール基の数が1〜5個/nmのシリカゲルを用いた場合には、腸への両性物質の到達効率が更に高くなる。
シリカゲルの表面積1nm当たりのシラノール基の数を上記の範囲にするためには、シリカゲルを焼成するとよい。
焼成温度は、250〜900℃が良く、更には400〜800℃であることが好ましく、550〜750℃であることがより好ましい。焼成温度が低すぎる場合には、シラノール基を減少できない。焼成温度が高すぎる場合には、シリカゲルが溶融するおそれがある。
シリカゲルは、例えば、粒子状である。粒子状のシリカゲルとしては、例えば、球状または破砕状のものがある。
シリカゲルの平均粒子径は問わないが、2〜2000μmであることが好ましい。平均粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置又は篩い分け重量法により測定した値である。
両性物質がアミノ酸を構成単位とするもの、例えば、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、アミノ酸を含む医薬品又は食品である場合、両性物質の大きさにもよるが、シリカゲルの平均細孔径は、2〜40nmがよく、更には2〜20nmが好ましく、2〜15nmが望ましい。この場合には、シリカゲルの細孔に、両性物質は進入させつつ、且つ胃液中のペプシンの進入を抑制できる。シリカゲルにより、ペプシンからペプチドを保護できる。シリカゲルの平均細孔径が40nmを超える場合には、シリカゲルの細孔にペプシンが進入し、細孔内の両性物質を分解するおそれがある。
シリカゲルの比表面積は、50〜1000m/gであることが好ましく、更には50〜800m/gであることが望ましい。比表面積は、JIS K1150“シリカゲル試験方法”に準拠する方法により測定した値である。
本実施形態の複合体は、体内輸送担体と両性物質とを有する。複合体は、体内輸送担体に両性物質が吸着している状態をいう。
複合体を製造するためには、体内輸送担体と両性物質とを液体中で混合する。液体のpHは、1〜10であるとよい。液体のpHが1未満の場合には、両性物質が吸着しなくなるおそれがある。液体のpHが10を超える場合には、シリカゲルが溶解するおそれがある。
また、液体の温度は、両性物質の温度耐性にもよるが、4〜40℃であることがよい。この場合には、シリカゲルと両性物質とが効率よく吸着する。
体内輸送担体と両性物質とを混合する液体は、例えば、水を含むとよい。両性物質がペプチド、アミノ酸、タンパク質の場合には、液体はリン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」という。)、生理食塩水などが好ましい。
本実施形態の複合体は、医薬品、機能性食品などに適用できる。
(その他)
本開示の別の実施形態は、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する両性物質の体内輸送方法であって、前記両性物質とシリカゲルとを有する複合体を形成し、前記複合体を体内に投与する、両性物質の体内輸送方法であってもよい。
本開示の別の実施形態は、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する体内輸送担体に使用するためのシリカゲルであってもよい。
本開示の別の実施形態は、負電荷をもつ両性物質を有する医薬品の体内への輸送に使用するためのシリカゲルであってもよい。
本開示の別の実施形態は、負電荷をもつ両性物質を有する医薬品を体内に輸送する体内輸送担体製造のためのシリカゲルであってもよく、負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する体内輸送担体製造のためのシリカゲルであってもよい。
(実験例1)
以下のように、種々のシリカゲル及び種々のペプチドを調製し、強酸性溶液、及び中性溶液において、それぞれ、ペプチドがシリカゲルに吸着する割合及び量を測定した。
<シリカゲルの調製>
以下の6種類のシリカゲル(試料1〜6)を調製した。
<試料1>
試料1として、富士シリシア化学株式会社製のクロマトレックス SMB100−5を準備した。このシリカゲルは、平均細孔径10nm、平均粒子径5μm、比表面積310m/g、細孔容積0.8mL/gであった。
シリカゲル5質量部および水100質量部を混合したもののpHを測定し、シリカゲルのpHとした。試料1のpHは5.1であった。
シリカゲルのシラノール基数(個/nm)は、180℃で2時間乾燥後のシリカゲルW(g)を950℃で2時間焼成し、焼成後のシリカゲルの質量W(g)と、シリカゲルの比表面積M(m/g)から、以下の算出式により求めた。
C(個/nm)=(2×(W−W)/(W×18))
×((6.02×1023 )/(M×1018))
試料1のシラノール基数は、6個/nmであった。
<試料2>
試料1を、水に加えてスラリーとした後、少量のNaOH水溶液を加えてpH6.6とし、24時間静置した。スラリーを脱液後、160℃で乾燥させ、得られたシリカゲルを試料2とした。試料2は、pHが6.6であり、シラノール基数が6個/nmであった。
<試料3>
試料1を、水に加えてスラリーとした後、少量のNaOH水溶液を加えてpH8.8とし、24時間静置した。スラリーを脱液後、160℃で乾燥させ、得られたシリカゲルを試料3とした。試料3は、pHが8.8であり、シラノール基数が6個/nmであった。
<試料4>
試料1を、600℃で2時間焼成し、得られたシリカゲルを試料4とした。試料4は、pHが5.1であり、シラノール基数が4個/nmであった。
<試料5>
試料2を、600℃で2時間焼成し、得られたシリカゲルを試料5とした。試料5は、pHが6.6であり、シラノール基数が4個/nmであった。
<試料6>
試料3を、600℃で2時間焼成し、得られたシリカゲルを試料6とした。試料6は、pHが8.8であり、シラノール基数が4個/nmであった。
FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、試料3及び試料6のシリカゲルの赤外線吸収スペクトルについて測定し、その結果を図1に示した。図1の波数3000〜3600cm−1の領域に存在する幅広い吸収は、水素結合性シラノール基に由来し、波数3600〜3750cm−1の領域に存在する鋭い吸収は、孤立シラノール基に由来する。試料3,6のシリカゲルについて、孤立シラノール基に由来する赤外線吸収に有意差はなかった。しかし、焼成した試料6のシリカゲルは、未焼成の試料3のシリカゲルに比べて、水素結合性シラノール基由来の赤外線透過率が増加(赤外線吸収が減少)しており、焼成による減量が水素結合性シラノール基の減少によるものであることを示唆した。
<ペプチドの合成>
残基数7のペプチドであるDFELEDD(配列番号34)、VLDTDYK(配列番号38)、HNRNNRR(配列番号42)を合成した。VLDTDYKは、機能性ペプチド(J Dairy Research(2000)67,53−64)である。
それぞれの合成は、樹脂上の付加用官能基に配列順のアミノ酸を1つずつ付加させる手順で行う為、1つのアミノ酸付加について例示した。
(手順1)N−α−(9−Fluorenylmethoxycarbonyl)amino acid p−methoxybenzyl alcohol resin(Fmoc AA−Alko Resin)樹脂(渡辺化学工業株式会社)をポリプロピレン(PP)製カラム(国産化学株式会社)に入れた。
(手順2)樹脂に、20%ピペリジン溶液を加えて1時間撹拌して、樹脂についていた保護基を取り去り、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄した。
(手順3)3等量のFmoc amino acid、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスファート(HBTU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えて2時間撹拌後、DMFとメタノール(MeOH)で樹脂を洗浄した。
Keizer反応を行うことで反応の進行度を確認し、反応率が99%未満の場合は、手順3の操作を繰り返した。反応率が99%以上の場合は、アミノ酸が付加できたものとし、手順2の保護基除去と手順3の付加反応を7残基のアミノ酸が付加されるまで繰り返した。
次いで、手順2の方法で保護基を取り去った。
樹脂を遠沈管へ移し、トリフルオロ酢酸(TFA)16ml、チオアニソール2.4ml、1,2−Ethanedithiol(EDT)1.2ml、m−クレゾール0.4mlを加えて3時間撹拌し、樹脂からペプチドを溶出させた。フィルターを用いて樹脂を除き、ジエチルエーテルを加え激しく振り、ペプチドを析出させた。得られた懸濁液を遠心分離機(3000×g、10分間)にかけて、沈降させたペプチドを回収し、自然乾燥させた。
試料1〜6のシリカゲルについて、それぞれ、水に懸濁させて、100mg/mLのシリカゲル懸濁液を調製した。
各ペプチドを秤り取り、計算量のpH2.1リン酸緩衝液を加えて溶かし、濃度0.25mMに調整した。これをpH2ペプチド溶液とした。
各ペプチドを秤り取り、計算量のpH7.4のPBSを加えて溶かし、濃度0.25mMに調整した。これをpH7ペプチド溶液とした。
上記のシリカゲル懸濁液と、上記のpH2ペプチド溶液及びpH7ペプチド溶液とを用いて、以下の吸着試験1,2及び対照試験1,2を行った。
<吸着試験1>
1.5mLマイクロチューブに、pH7ペプチド溶液150μLとシリカゲル懸濁液50μLとを加えて攪拌し、室温で1分静置後、10000rpm、1分、固形分を遠心沈降させ、上澄みを蛍光量測定用溶液とした。
<吸着試験2>
吸着試験2は、マイクロチューブ中の混合液がpH2ペプチド溶液150μLとシリカゲル懸濁液50μLとからなる点を除いて、吸着試験1と同様に行った。また、得られた酸性蛍光量測定溶液150μLに0.1NのNaOHを200μL加えて中性にしたものを蛍光量測定用溶液とした。
<対照試験1>
対照試験1は、マイクロチューブ中の混合液がpH7ペプチド溶液150μLと水50μLとからなる点を除いて、吸着試験1と同様に行った。
<対照試験2>
対照試験2は、マイクロチューブ中の混合液がpH2ペプチド溶液150μLと水50μLとからなる点を除いて、吸着試験2と同様に行った。
<蛍光量測定方法>
96ウェルプレート(Corning社製)の各穴にそれぞれの蛍光量測定用溶液150μLを加えた。各穴に、5mg/mLに調整したフルオレスカミン(蛍光物質)10μLを追加して1分間混合した。蛍光測定装置により各穴から発する蛍光量を測定した。照射する励起光の波長は355nmであり、発せられた蛍光量は、波長460nmで測定した。
<吸着割合の求め方>
吸着試験1及び対照試験1で測定した各蛍光量に基づいて、pH7ペプチド溶液中の各ペプチドがシリカゲルに吸着している吸着割合(%)は、以下の式により求めた。
各ペプチドの吸着割合(%)=100×((対照試験1で測定した蛍光量)−(吸着試験1で測定した蛍光量))/(対照試験1で測定した蛍光量)
求めた吸着割合は、pH7ペプチド吸着割合と称する。
吸着試験2及び対照試験2で測定した各蛍光量に基づいて、pH2ペプチド溶液中のペプチドがシリカゲルに吸着している吸着割合(%)は、以下の算出式により求めた。
ペプチドの吸着割合(%)=100×((対照試験2で測定した蛍光量)−(吸着試験2で測定した蛍光量))/(対照試験2で測定した蛍光量)
求めた吸着割合は、pH2ペプチド吸着割合と称する。
さらに、pH2ペプチド吸着割合からpH7ペプチド吸着割合を差し引いて、スコア割合を求めた。
<吸着量の求め方>
濃度0.25mM、pH7の各ペプチド溶液を適宜希釈したものについて、蛍光量測定方法により蛍光量を測定し、蛍光量とペプチド濃度との検量線を作成した。この検量線によりpH7溶液の蛍光量をpH7ペプチド溶液濃度に換算した。また、シリカゲル添加量からpH7ペプチド吸着量を次の式により算出した。
pH7ペプチドの吸着量(mg/g)
=((対照試験1から算出したペプチド濃度)−(吸着試験1から算出したペプチド濃度))/(混合液中のシリカゲル濃度)
濃度0.25mM、pH2の各ペプチド溶液を適宜希釈したものについては、蛍光量測定溶液を中性に調整するため、上澄み150μLに0.1NのNaOHを200μL加えたものを蛍光量測定溶液とし、蛍光量測定方法により蛍光量を測定し、蛍光量とペプチド濃度との検量線を作成した。この検量線によりpH2溶液の蛍光量をペプチド溶液濃度に換算した。また、シリカゲル添加量からpH2ペプチド吸着量を次の式により算出した。
pH2ペプチドの吸着量(mg/g)
=((対照試験2から算出したペプチド濃度)−(吸着試験2から算出したペプチド濃度))/(混合液中のシリカゲル濃度)
さらに、pH2ペプチド吸着量からpH7ペプチド吸着量を差し引いて、スコア量を求めた。
pH7ペプチド吸着割合、pH2ペプチド吸着割合、及びスコア割合を表1に、各ペプチドのpH7ペプチド吸着量、pH2ペプチド吸着量、スコア量を表2に示した。以後、スコア割合について説明する。
DFELEDD及びVLDTDYKを用いたときには、シリカゲルを焼成した場合のスコア割合が飛躍的に向上し、また、焼成後のシリカゲルのpHをアルカリ性にすることで、スコア割合が上昇した。とくに、スコア割合が中程度のペプチドVLDTDYKは、焼成後のシリカゲルのpHをアルカリ性にしたときのスコア割合が高かった。
ペプチドの中でHNRNNRRは、疎水度が小さく、また等電点がアルカリ側に位置しており、焼成、未焼成のどのタイプのシリカゲルを用いても、スコア割合がマイナスであった。このことは、疎水度が小さく、等電点がアルカリ側に位置するペプチドは、腸への到達が困難であることを示している。
DFELEDD、VLDTDYK及びHNRNNRRのいずれのペプチドを用いても、シリカゲルのpHが酸性よりも中性、中性よりもアルカリ性である方が、スコア割合が高くなる。
以上より、シリカゲルがアルカリ性であることにより、ペプチドの腸への運搬効率が向上する。アルカリ性のシリカゲルは焼成してシラノール基の数を減少させることで、さらに、ペプチドの腸への運搬効率が向上する。
(実験例2)
以下のように、シリカゲル及び3残基のペプチドを調製し、強酸性溶液及び中性溶液において、それぞれ、シリカゲルに吸着するペプチドの吸着割合を測定した。
<シリカゲル懸濁液の調製>
本実験例2で用いるシリカゲル試料7は、pHを8.9とした点を除いて、試料6のシリカゲルと同様である。すなわち、本実験例2で用いるシリカゲルは、焼成したシリカゲルであって、pHが8.9であり、シラノール基の数が4個/nmである。
試料7を水に懸濁させて、100mg/mLのシリカゲル懸濁液を調製した。
<ペプチドの合成>
以下に示した3残基のペプチド32種類を合成した。
QFL、RIS、IRR、LVY、III、DII、ELD、FFI、HVI、SAY、KVL、GGG、DQQ、HHP、FDN、IYD、HMP、NNN、YDQ、DDD、VDN、FYR、NNR、FFE、NGS、RRR、KKK、KEN、RKY、HAR、HTS、VPP
上記ペプチドは、(Ochiai et al., Biosci Biotechnol Biochem, 2012;76(4):819−24.,Matsumoto et al., Scientific Reports, 5:12884(2015))記載の方法にしたがって、フォトリンカーペプチドアレイで同一残基を2グループ(各2個ずつ)合成した。
<ペプチド溶液の調製>
アレイ上のスポット毎のペプチドに紫外線を3時間照射して、ペプチドをアレイから切り離した。ペプチドが付着した状態のアレイを、1スポット毎に直径6mmのbiopsy punchで打ち抜いた。アレイの打ち抜き片を、96ウェルフィルタープレート(メルク社製)の複数の穴に1スポットずつ入れた。複数の穴のうちの1グループ目のものにpH2.1リン酸緩衝液180μLを加え、2グループ目のものにpH7.4PBS溶液180μLを加えた。これらを1時間静置して、アレイの打ち抜き片から溶液にペプチドを溶出させた。96ウェルフィルタープレートの下部から真空吸引を行って打ち抜き片をフィルター上部に残し、溶液をフィルター下部の受液部に落とすことで、pH2ペプチド溶液及びpH7ペプチド溶液を調製した。
3残基のペプチドで可能な組み合わせは数千種類ある。図2に示すように、選択した32種類のペプチドの等電点及び疎水度は、可能な組み合わせの3残基のペプチドの等電点及び疎水度の分布範囲に一様に分布している。
各ペプチドの等電点及び疎水度を表3に示した。
上記のpH2ペプチド溶液及びpH7ペプチド溶液に、上記のシリカゲル懸濁液を加えて、実験例1と同様に吸着試験1、2及び対照試験1,2を行い、pH2ペプチド吸着割合及びpH7ペプチド吸着割合ならびにスコア割合を算出した。
pH2ペプチド吸着割合は図3に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH2ペプチド吸着割合との関係を図4に示した。各ペプチドのpH7ペプチド吸着割合は図5に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH7ペプチド吸着割合との関係を図6に示した。各ペプチドのスコア割合を図7に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、各ペプチドのスコア割合との関係を図8に示した。
pH2ペプチド吸着割合は、胃においてペプチドがシリカゲルへの吸着を維持できる量の指標である。pH7ペプチド吸着割合は、腸においてペプチドがシリカゲルへの吸着を維持できる量の指標である。スコア割合は、ペプチドがシリカゲルへの吸着を維持した状態で胃を通過して腸に到達したときにシリカゲルから脱離する量の指標で、腸到達率を示す。
測定結果より、強酸性であるpH2ペプチド溶液での吸着割合が60%以上と高いペプチドは、疎水度が2以上であった。
中性であるpH7ペプチド溶液での吸着割合が60%以上と高いペプチドは、等電点が5以上のものであった。
図2には、スコア割合が高いペプチドについて、スコア割合の順位とともに、記号◇で表示した。図8及び図2に示すように、スコア割合が高いペプチドの多くは、等電点が7以下であった。
また、ペプチドの残基数が3のとき、ペプチドの疎水度が−1以上の場合には、スコア割合が高くなる傾向があった。
等電点が7以下のペプチドは、負電荷をもつ傾向がある。試料7のシリカゲルは、負電荷をもつペプチドを吸着させた状態で胃を通過して腸に到達し、腸においてペプチドを脱離しやすい。
(実験例3)
実験例2の試料7シリカゲルの懸濁液と、実験例2にける3残基32種類のペプチドに代えて、5残基ペプチドとを準備し、強酸性溶液及び中性溶液において、それぞれ、シリカゲルに吸着するペプチドの吸着割合を測定した。測定にあたっては、以下に示した21種類の5残基ペプチドを用いた。
LISIL(配列番号1)、YPFVV(配列番号2)、YPFPG(配列番号3)、IIIII(配列番号4)、RPKVP(配列番号5)、RIRII(配列番号6)、VDVVL(配列番号7)、DDIII(配列番号8)、SILYQ(配列番号9)、GYYPT(配列番号10)、DLVEE(配列番号11)、NNNNN(配列番号12)、IDEVS(配列番号13)、NNSSQ(配列番号14)、LENEQ(配列番号15)、DDSEL(配列番号16)、QREQN(配列番号17)、DDDDD(配列番号18)、ENESD(配列番号19)、EEAAS(配列番号20)、KKKKK(配列番号21)
各ペプチドの等電点及び疎水度を表4に示した。
pH2ペプチド吸着割合は図9に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH2ペプチド吸着割合との関係を図10に示した。測定結果より、pH2ペプチド吸着割合が60%以上のペプチドは、疎水度が−2以上のものであった。
各ペプチドのpH7ペプチド吸着割合は図11に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH7ペプチド吸着割合との関係を図12に示した。測定結果より、pH7ペプチド吸着割合が30%以上のペプチドは、等電点が5以上のものであった。
さらに、pH2ペプチド吸着割合からpH7ペプチド吸着割合を差し引いて、スコア割合を求めた。スコア割合を図13に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH7ペプチド吸着割合との関係を図14に示した。これらの結果より、ペプチドの等電点が7以下の場合に、スコア割合が0(%)以上であった。また、ペプチドの疎水度が−1以上の場合には、スコア割合が高い傾向を示した。
ペプチドの残基数が5のときにも、ペプチドの残基数が3のときと同様、ペプチドの疎水度が−1以上と高い場合には、シリカゲルに吸着した状態で胃を通過して腸に到達し腸において脱離しやすい。
(実験例4)
実験例2において32種類3残基のペプチドに代えて、以下に示した23種類の7残基ペプチドを用い、強酸性溶液及び中性溶液において、それぞれ、シリカゲルに吸着するペプチドの吸着割合を測定した。
YPFPGPI(配列番号22)、RIRILLR(配列番号23)、MPIQAFL(配列番号24)、FAGLFAL(配列番号25)、DVLELVI(配列番号26)、MKARIFF(配列番号27)、IIDIIDD(配列番号28)、LRIILKL(配列番号29)、DQTPRVF(配列番号30)、GLVDLGE(配列番号31)、MAIPPKK(配列番号32)、IIIIIII(配列番号33)、DFELEDD(配列番号34)、IIIDIII(配列番号35)、DLIDENN(配列番号36)、ADILSDD(配列番号37)、VLDTDYK(配列番号38)、NEGNPGD(配列番号39)、NNNNNNN(配列番号40)、KENTSAN(配列番号41)、HNRNNRR(配列番号42)、DDDDDDD(配列番号43)、DNNDGDD(配列番号44)
各ペプチドの等電点及び疎水度を表5に示した。
pH2ペプチド吸着割合は図15に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH2ペプチド吸着割合との関係を図16に示した。測定結果より、pH2ペプチド吸着割合が60%以上のペプチドは、疎水度が−2以上のものであった。
各ペプチドのpH7ペプチド吸着割合は図17に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH7ペプチド吸着割合との関係を図18に示した。測定結果より、中性(pH7.4)溶液では、pH7ペプチド吸着割合が30%以上のペプチドは、等電点が5以上であった。
さらに、pH2ペプチド吸着割合からpH7ペプチド吸着割合を差し引いて、スコア割合を求めた。スコア割合を図19に示した。各ペプチドの等電点及び疎水度と、pH7ペプチド吸着割合との関係を図20に示した。これらの結果より、ペプチドの等電点が7以下の場合にスコア割合が0%以上であり、等電点が6以上の場合にスコア割合は20%であった。等電点が7以下のペプチドは、負電荷をもつ傾向がある。また、ペプチドの疎水度が−2以上の場合には、スコア割合が高い傾向を示した。
ペプチドの残基数が7のときには、ペプチドの疎水度が−2以上の場合には、処理後のシリカゲルに吸着した状態で胃を通過して腸に到達し腸において脱離しやすい。
図3、図9、図15を比べると、pH2ペプチド吸着割合については、ペプチドの残基数が3よりも5、5よりも7の方が高くなった。ペプチドの残基数が多くなると、強酸性の胃内における、ペプチドのシリカゲルへの吸着性が高まる。
図7、図13、図19を比較すると、ペプチドの残基数が3よりも5、5よりも7の方が、スコア割合が高くなった。ペプチドの残基数が多くなると、シリカゲルに吸着して腸に到達し腸で脱離する割合が増える。
(実験例5)
本実験例5では、シリカゲルに吸着させたペプチドに対する酵素からの保護効果を確認した。
<ペプチド保護確認試験A>
実験例1で用いた未焼成のシリカゲル、試料3を準備した。試料3は、pHが8.8であり、シラノール基の数が6個/nmである。(実験例1)の<シリカゲル懸濁液の調製>と同様の方法で、40mg/mLのシリカゲルを有するシリカゲル懸濁液を調製した。
ペプチドは、7残基のペプチドMPIQAFL(配列番号24)を選択し、(実験例1)の<ペプチドの合成><ペプチド溶液の調製>と同様の方法により、pH2ペプチド溶液を調製した。
マイクロチューブ(1.5mL)に、シリカゲル懸濁液150μL、pH2ペプチド溶液150μLを加えて撹拌後、更にpH2.1リン酸緩衝液100μLを加え、37℃で30分間インキュベートした。次にpH7.4PBSを300μL加えて攪拌後、10000rpm、1分、固形分を遠心沈降させ、得られた上澄みを試検液Aとした。
<ペプチド保護確認試験B>
マイクロチューブに加えたpH2.1リン酸緩衝液100μLに代えて、ペプシン溶液100μLを加えた点を除いて、試検液Aと同様にして試検液Bを得た。ペプシン溶液は、約2unit/μLのペプシン(プロテアーゼ)を含むpH2の疑似胃液である。
<ペプチド保護確認試験C>
マイクロチューブに加えたシリカゲル懸濁液150μLに代えて、pH2.1リン酸緩衝液150μL、pH2.1リン酸緩衝液100μLに代えて、ペプシン溶液100μLを加えた点を除いて、試検液Aと同様にして、試検液Cを得た。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー、日本分光製)を用いて、試検液A,B、C中のペプチド量を比較した。試検液Aのペプチド量を100%としたときの百分率で示した結果を図21に示した。
結果より、シリカゲルに吸着させたペプチドは、ペプシンを共存させたにも関わらず60%以上残存した。このことから、ペプチドは、シリカゲルに吸着させることで、ペプシンから保護され分解を抑えられる。

Claims (8)

  1. 負電荷をもつ両性物質を体内に輸送する体内輸送担体であって、
    前記体内輸送担体はシリカゲルを有し、
    前記シリカゲルはアルカリ性である、体内輸送担体。
  2. 前記シリカゲルは、1〜6個/nmのシラノール基を有する、請求項1に記載の体内輸送担体。
  3. 前記シリカゲルのpHは、7.5〜10である、請求項1又は2に記載の体内輸送担体。
  4. 前記両性物質の等電点は、2以上8以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の体内輸送担体。
  5. 前記両性物質は、アミノ酸、ペプチド類、たんぱく質、核酸類、糖類、脂質類、それらの複合体、高分子化合物、有機化合物の中から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の体内輸送担体。
  6. 前記ペプチド類の疎水度が−4.5〜4.5である、請求項5に記載の体内輸送担体。
  7. 前記体内輸送担体は、前記両性物質を吸脱着可能である、請求項1〜6のいずれかに記載の体内輸送担体。
  8. 負電荷をもつ両性物質と、前記両性物質を吸脱着し得る体内輸送担体とを有する複合体であって、
    前記体内輸送担体は、アルカリ性のシリカゲルを有する、複合体。
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