JP6601959B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents

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本発明は、メラニン生成抑制作用に優れた新規な皮膚外用剤に関する。
一般に、シミ、ソバカス、日焼け等に見られる皮膚の色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線の刺激により、皮膚内に存在するメラニン色素生成細胞がメラニン色素を過剰に生成し、これが皮膚内に沈着することが原因と考えられている。このような色素沈着を防ぐ方法の一つに、メラニンの過剰な生成を抑制する方法が知られている。従来、色素沈着の治療には、内用や外用等において、アスコルビン酸(ビタミンC)等が用いられてきた(特許文献1)。
すでに、クロウメモドキ科ナツメ属ナツメにはメラニン生成抑制効果が知られている(特許文献2)。しかしながら、本発明で用いる哈密大棗(ハミタイソウ)はナツメよりもメラニン生成抑制効果が高い素材であることは知られていなかった。
特開平05−229931号公報 特開平7−126149号公報
安全で安定性に優れ、メラニン生成抑制作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、哈密大棗の抽出物が一般に生薬として売られているナツメよりも優れたメラニン生成抑制作用を持ち、安定性、効率性においても優れていることを見出した。さらに、その抽出物を含有する皮膚外用剤が、安全で安定であり、高い美白効果を有する素材と成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明で用いる哈密大棗(ハミタイソウ)とは、クロウメモドキ科ナツメ属に属し、学名はZiziphus jujuba、Zizyphus jujuba、Zizyphus zizyphusである。一般的に生薬として流通しているナツメは、日本や中国全土で広く栽培されている。一方、哈密大棗は前記ナツメよりも乾燥し寒暖差が大きい場所で栽培されている。哈密大棗の果実の大きさは、長径が3〜6cmのものが多い。中でも、長径が3.5〜5.5cmのものを用いることが好ましい。また、水分量25〜35%のときの果実重量が5〜25gのものが多い。中でも、10〜20gのものを用いることが好ましい。一方、一般に流通しているナツメの果実の大きさは、長径が2〜3cmであり、水分量15〜25%のときの果実重量が1.5〜4gであり、哈密大棗よりもかなり小さい。哈密大棗とナツメをそれぞれ、前記水分量の果実を果実重量の10倍量の熱水にて抽出した抽出液の糖度は、ナツメは1〜4%であるのに対し、哈密大棗は3〜10%であることが多く、4〜7%のものを用いることが好ましい。哈密大棗とナツメを熱水にて抽出した抽出物の抽出率は、前記水分量の果実1g当たり1.5倍〜2倍異なり、哈密大棗の方が抽出率は多く経済的である。
哈密大棗の抽出物とは、哈密大棗の果実、果皮、果肉、種子等の植物体の一部及び/又は全てより抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出や冷蔵抽出したものであっても良い。さらに、植物をそのまま抽出してもよいし、乾燥してから抽出してもよい。
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、1〜50%のエタノール水溶液が良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
本発明の外用剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分を含有することもできる。
本発明の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、マッサージクリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤等を含む)等が挙げられる。
本発明に用いる上記抽出物の含有量は、外用剤全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001〜10重量%がより好ましい。さらに、0.01〜5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えて含有した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す含有量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。
製造例1 哈密大棗の熱水抽出物
哈密大棗の果実(水分量30%)30gに精製水300mLを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して哈密大棗の熱水抽出物を13.3g得た。
比較製造例1 ナツメの熱水抽出物
製造例1において、哈密大棗をナツメに置き換えたものをナツメ熱水抽出物とした。
製造例2 哈密大棗の50%エタノール抽出物
哈密大棗の果実(水分量30%)30gに50%エタノール水溶液300mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、哈密大棗の50%エタノール抽出物を15.5g得た。
比較製造例2 ナツメの50%エタノール抽出物
製造例1において、哈密大棗をナツメに置き換えたものをナツメの50%エタノール抽出物とした。
製造例3 哈密大棗のエタノール抽出物
哈密大棗の果実(水分量30%)30gにエタノール300mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、哈密大棗のエタノール抽出物を2.1g得た。
製造例4 哈密大棗の50%1,3−ブチレングリコール抽出物
哈密大棗の果実(水分量30%)20gに50%1,3−ブチレングリコール水溶液200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、哈密大棗の50%1,3−ブチレングリコール抽出物を170g得た。
処方例1 化粧水
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
処方例2 クリーム
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の50%エタノール抽出物(製造例2) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
処方例3 乳液
処方 含有量(部)
1.哈密大棗のエタノール抽出物(製造例3) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
処方例4 ゲル剤
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例4) 1.0
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5と、成分6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
処方例5 パック
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の50%エタノール抽出物(製造例2) 1.0
2.哈密大棗の50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例4) 5.0
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3−ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
処方例6 ファンデーション
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10〜13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14〜17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この油相に水相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
処方例7 浴用剤
処方 含有量(部)
1.哈密大棗のエタノール抽出物(製造例3) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
処方例8 軟膏
処方 含有量(部)
1.哈密大棗の熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.哈密大棗の50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例4) 5.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
実験例1 メラニン生成抑制試験
対数増殖期にあるB16マウスメラノーマを60mm dishに3×10個播種し、各試料(最終濃度10μg/mL)を含むEagle’s MEM(10%牛胎児血清含有)培地にて、37℃、5%CO条件下で5日間培養した。次に、細胞をdishから剥離し、超音波破砕した後、4N NaOHを加え60℃で2時間の処理を行い、分光光度計でO.D.475nmを測定した。尚、超音波処理後の細胞破砕液についてLowryの方法(J.Biol.Chem.,193,265−275,1951)にてタンパク定量し、タンパク量当りのメラニン量を算出、試料未添加のメラニン生成量をコントロールとし、コントロールに対する試料添加時のメラニン生成量の値からメラニン生成抑制率を算出した。
これらの実験結果を表1に示した。その結果、本発明の哈密大棗は優れたメラニン生成抑制作用を示した。また、いずれもナツメから得られた抽出物と比較して、顕著に高い作用を示した。特に哈密大棗の熱水抽出物が最も優れたメラニン生成抑制作用を示した。
以上のことから、本発明の哈密大棗の抽出物は、優れたメラニン生成抑制作用を有し、安定性にも優れていた。よって、本発明の哈密大棗の抽出物は、皮膚の美白といった美容分野だけでなく、医療分野にも利用でき、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。

Claims (2)

  1. 哈密大棗の果実の抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
  2. 哈密大棗の果実の抽出物を含有することを特徴とする美白剤。
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