以下、本開示の一態様に係る実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[通信システムの概要]
本実施の形態に係る通信システムは、端末100及び基地局200を有する。
図1に示す通信システムの構成例では、端末100(UE1、UE2)と、基地局200(NW1、NW2)とを有する。UE1、UE2、NW1、NW2は、異なるシステム又は異なるセルに属してもよい。例えば、本実施の形態に係る通信システムは、複数の事業者のシステム、異なるRATに対応するシステム、又は、マクロセル、スモールセル、ピコセルなどの多層構成のセルを含むものとする。
各端末100は、基地局200を介して通信を行う基地局間通信、及び、他の端末とデータの通信を直接行う端末間通信の双方の通信方式を使用可能な端末である。
基地局間通信時には、各端末100は、基地局200との間において制御情報及びユーザデータのやりとりを行う。この際、端末100が自局の通信設定を制御してもよく(端末主導制御)、基地局200が端末100の通信設定を制御してもよい(ネットワーク主導制御)。
また、基地局間通信時には、複数の基地局200が協調して制御情報及びユーザデータのやりとりを行うこともある(ネットワーク協調制御)。
端末間通信時には、各端末100は、基地局200を介さずに、端末100間においてユーザデータのやりとりを直接行う(端末協調制御)。端末間通信は、基地局間通信と比較して、通信距離が短いため、低遅延化及び低送信電力化を図ることが可能となる。
なお、以下の説明では、図1に示すように、制御情報を点線により表し、ユーザデータを実線により表すことがある。
[端末100の構成]
図2は、本実施の形態に係る端末100の構成を示すブロック図である。図2に示す端末100は、基地局200又は他の端末等の他の通信装置と通信を行う通信装置である。
図2において、端末100は、他局通信状態管理部101、他局通信方針管理部102、自局通信状態管理部103、自局通信方針管理部104、通信制御部105、ユーザデータ処理部106、ベースバンド信号処理部107及び無線部108を有する。
他局通信状態管理部101は、端末100以外の他の装置(基地局及び端末)の通信状態を装置毎に管理する。また、他局通信状態管理部101は、ベースバンド信号処理部107から入力される制御情報に基づいて、保持する他の装置の通信状態を更新する。また、他局通信状態管理部101は、保持する他の装置の通信状態を示す情報(他局通信状態情報)を、通信制御部105へ出力する。
通信状態には、例えば、装置の位置、装置が使用している無線リソース、無線品質、装置の周辺環境、及び、装置の識別子などが含まれる。
他局通信方針管理部102は、端末100以外の他の装置(基地局及び端末)の通信方針の設定値を装置毎に管理する。通信方針は、各装置の利用目的(例えば、音声通話、ビデオ視聴、機器間通信、歩路車間通信などのサービス)によって決定される。また、他局通信方針管理部102は、ベースバンド信号処理部107から入力される制御情報に基づいて、保持する他の装置の通信方針を更新する。また、他局通信方針管理部102は、保持する他の装置の通信方針を示す情報(他局通信方針情報)を、通信制御部105へ出力する。
また、他局通信方針管理部102は、端末100以外の他の装置を利用するユーザのユーザ満足度に対応するパラメータを管理する。そして、他局通信方針管理部102は、ユーザ満足度に応じて、管理している通信方針を変更する。
通信方針の設定値には、例えば、装置での通信における消費電力、通信において許容できる遅延時間、通信に要する通信速度、通信に要する通信量、通信停止時間、通信に要する通信費用などが含まれる。
自局通信状態管理部103は、端末100の通信状態を管理する。また、自局通信状態管理部103は、図示しない処理部から入力される、端末100の通信状態に基づいて、保持する端末100の通信状態を更新する。また、自局通信状態管理部103は、保持する端末100の通信状態を示す情報(自局通信状態情報)を、通信制御部105へ出力する。
自局通信方針管理部104は、端末100の通信方針の設定値を管理する。また、自局通信方針管理部104は、図示しない処理部から入力される端末100の通信方針に基づいて、保持する端末100の通信方針を更新する。また、自局通信方針管理部104は、保持する端末100の通信方針を示す情報(自局通信方針情報)を、通信制御部105へ出力する。
また、自局通信方針管理部104は、端末100を利用するユーザのユーザ満足度に対応するパラメータを管理する。そして、自局通信方針管理部104は、ユーザ満足度に応じて、管理している通信方針を変更する。
つまり、他局通信状態管理部101は、端末100以外の他の通信装置の通信状態を一元的に管理する通信状態管理部として機能し、自局通信状態管理部103は、端末100の通信状態を一元的に管理する通信状態管理部として機能する。また、他局通信方針管理部102は、端末100以外の他の通信装置の通信方針を一元的に管理する通信方針管理部として機能し、自局通信方針管理部104は、端末100の通信方針を一元的に管理する通信方針管理部として機能する。なお、自局通信状態情報及び自局通信方針情報は、他の装置(基地局200又は他の端末100)へ送信される。
通信制御部105は、他局通信状態管理部101から入力される他局通信状態情報、他局通信方針管理部102から入力される他局通信方針情報、自局通信状態管理部103から入力される自局通信状態情報、及び、自局通信方針管理部104から入力される自局通信方針情報に基づいて、端末100の通信設定を制御する。通信制御部105は、設定された通信設定を含む制御情報を、ベースバンド信号処理部107及び無線部108(後述する変調部109、無線送信部110、無線受信部111、及び、復調部112)に出力する。
通信設定には、例えば、通信方式、ビームフォーミングにおける通信方向(チルト角など)、無線リソース(変調方式、周波数リソース、送信電力、送信タイミングなど)等の設定が含まれる。
ユーザデータ処理部106は、ベースバンド信号処理部107から受け取ったユーザデータを、対応するアプリケーション処理部(図示せず)に出力する。また、ユーザデータ処理部106は、アプリケーション処理部から受け取るユーザデータをベースバンド信号処理部107に出力する。
ベースバンド信号処理部107は、通信制御部105から受け取る制御情報、及び、ユーザデータ処理部106から受け取るユーザデータに対して、ベースバンド処理(結合、符号化など)を施し、得られたベースバンド信号を変調部109へ出力する。また、ベースバンド信号処理部107は、復調部112から受け取る信号に対してベースバンド処理(分離、復号など)を施し、得られた制御情報を他局通信状態管理部101及び他局通信方針管理部102へ出力し、得られたユーザデータをユーザデータ処理部106へ出力する。
無線部108は、変調部109、無線送信部110、無線受信部111、復調部112、分離部113、アンテナ部114を有する。
変調部109は、通信制御部105から受け取る制御情報(変調方式)に従って、ベースバンド信号処理部107から受け取るベースバンド信号を変調して、無線信号を生成する。変調部109は、生成した無線信号を無線送信部110へ出力する。
無線送信部110は、通信制御部105から受け取る無線リソース情報(周波数リソース、送信電力、送信タイミングなど)に従って、変調部109から受け取る無線信号に対して、無線送信処理(増幅など)を行い、無線送信処理後の信号を分離部113に出力する。
無線受信部111は、通信制御部105から受け取る無線リソース情報(周波数リソース、送信電力、送信タイミングなど)に従って、分離部113から受け取る無線信号に対して、無線受信処理(増幅など)を行い、無線受信処理後の信号を復調部112に出力する。
復調部112は、通信制御部105から受け取る無線リソース情報(変調方式)に従って、無線受信部111から受け取る無線信号を復調して、ベースバンド信号を生成する。復調部112は、生成したベースバンド信号をベースバンド信号処理部107へ出力する。
分離部113は、異なるリソースを用いて同時に通信される送信データと受信データとを分離して、各データを対応する処理部へ出力する。具体的には、分離部113は、無線送信部110から受け取る無線信号(送信信号)をアンテナ部114へ出力する。また、分離部113は、アンテナ部114から受け取る無線信号(受信信号)から、端末100宛ての信号を抽出して、抽出した無線信号を無線受信部111へ出力する。
アンテナ部114は、分離部113から受け取る無線信号を送信する。また、アンテナ部114は、他の装置から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を分離部113へ出力する。
[他局通信状態管理部101の内部構成]
図3は、他局通信状態管理部101の内部構成の一例を示すブロック図である。他局通信状態管理部101は、位置管理部131、移動状態管理部132、無線リソース管理部133、無線品質管理部134、周辺環境管理部135、識別子管理部136、通信状態予測部137、通信状態群管理部138、通信状態階層管理部139を含む。
図4は、装置の通信状態の一例を示す図である。他局通信状態管理部101は、図4に示すように、装置識別子、位置、移動状態、周辺環境、無線リソース、無線品質の各々について、詳細な情報を有している。
位置管理部131は、端末100以外の他の装置の位置を管理する。「位置」は、例えば、緯度、経度、高度又は階数等によって表されてもよい。
また、装置の位置は、GPS(Global Positioning System)、IMES(Indoor MEssaging System。屋内測位)、又は自律航法などによって取得されてもよい。又は、装置の位置は、位置情報が既知である周辺装置のIDを用いて特定してもよく、周辺装置からの信号の無線受信レベル又は無線受信タイミングを用いて推定してもよい。周辺装置のIDを用いて当該装置の位置を推定する場合、セル半径が小さいほど、位置の推定精度は高くなる。また、無線受信レベルを用いて当該装置の位置を推定する場合、無線受信レベルが高いほど、位置の推定精度は高くなる。
移動状態管理部132は、他の装置の移動状態を管理する。「移動状態」は、例えば、装置の移動速度、加速度、又は、移動方向によって表されてもよい。
無線リソース管理部133は、他の装置が使用する無線リソースを管理する。例えば、「無線リソース」としては、通信方式、周波数、変調方式、送信電力、最大送信電力、通信周期、通信タイミング、又は、ビームフォーミングにおける通信方向等が挙げられる。
無線品質管理部134は、他の装置における無線品質を管理する。「無線品質」としては、受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信レベル(RSRP:Reference Signal Received Power)、パスロス(伝搬損失)等が挙げられる。
周辺環境管理部135は、他の装置の周辺環境を管理する。「周辺環境」としては、例えば、温度、湿度、気圧、降水量等が挙げられる。
識別子管理部136は、他の装置に設定された識別子を管理する。「識別子」としては、例えば、当該装置が属するセルのセルID、電話番号、製造番号等が挙げられる。
上述した位置管理部131〜識別子管理部136は、装置毎に通信状態(例えば、図4を参照)を管理する。また、1つの装置が複数の通信方式に対応する場合には、無線リソース管理部133及び無線品質管理部134は、図4に示す無線リソース、及び、無線品質を通信方式毎に管理してもよい。
通信状態予測部137は、各装置の現在の通信状態を当該装置の過去の通信状態から予測する。通信状態予測部137は、例えば、移動平均又は回帰予測を用いて、現在の通信状態を予測してもよい。また、通信状態予測部137は、協調フィルタリングを用いて、他の装置の通信状態から予測対象の装置の現在の通信状態を予測してもよい。
また、通信状態予測部137は、後述する通信状態群管理部138又は通信状態階層管理部139が管理するグループのうち、予測対象の装置を含むグループ内の他の装置の通信状態を用いて、予測対象の装置の通信状態を予測してもよい。
このように、通信状態予測部137は、或る装置の現在の通信状態が取得できない場合には、当該装置の過去の通信状態又は他の装置の通信状態から、当該装置の現在の通信状態を予測する。
通信状態群管理部138は、端末100が管理する他の装置のうち、通信状態の相関が高い装置をグループ化する。例えば、通信状態群管理部138は、回帰分散分析に従って、複数の他の装置を複数のグループにグループ化してもよい。通信状態予測部137は、予測対象の装置と同一グループに含まれる装置の通信状態を用いて、予測対象の装置の通信状態を予測する。
通信状態階層管理部139は、通信状態群管理部138が管理する複数のグループを、複数のグループ間の相関に基づいて階層的に管理する。
例えば、通信状態群管理部138において、ピコセル内の装置の通信状態が含まれるグループ(ピコセルグループ)、スモールセル内の装置の通信状態が含まれるグループ(スモールセルグループ)、及び、マクロセル内の装置の通信状態が含まれるグループ(マクロセルグループ)にグループ化されているとする。この場合、通信状態階層管理部139は、これらの複数のグループを、セルの階層構成に基づいて管理する。具体的には、通信状態階層管理部139は、或るマクロセルのマクロセルグループと、当該マクロセルに含まれるスモールセルのスモールセルグループと、当該スモールセルにそれぞれ含まれるピコセルのピコセルグループと、を対応付けて管理する。
通信状態予測部137は、予測対象の装置が属するグループ、又は、当該グループと対応付けられた異なる階層のグループに含まれる他の装置の通信状態を用いて、通信状態を予測してもよい。これにより、通信状態の予測の際に利用する他の装置を限定し、予測に要する処理量を低減することができる。
なお、他局通信状態管理部101において管理される通信状態は、位置、移動状態、周辺環境、無線リソース、無線品質及び装置識別子に限定されるものではなく、これらのうちの一部のパラメータでもよく、これら以外の他のパラメータであってもよい。
また、位置管理部131〜識別子管理部136は、通信状態群管理部138又は通信状態階層管理部139において管理されたグループのうち、端末100が接続されたセルに対応するグループ及び当該グループと階層的に対応付けられたグループに含まれる他の装置の通信状態のみを管理してもよい。こうすることで、他局通信状態管理部101において管理する情報の情報量を削減することができる。
以上、他局通信状態管理部101の内部構成の一例について説明した。
[他局通信方針管理部102の内部構成]
図5は、他局通信方針管理部102の内部構成の一例を示すブロック図である。他局通信方針管理部102は、消費電力管理部141、遅延時間管理部142、通信速度管理部143、通信量管理部144、通信停止時間管理部145、通信費用管理部146、ユーザ満足度管理部147、通信方針予測部151、通信方針群管理部152、通信方針階層管理部153を含む。
図6は、装置の通信方針の一例を示す図である。他局通信方針管理部102は、図6に示すように、消費電力、遅延時間、通信速度、通信量、通信停止時間、通信費用、ユーザ満足度、生体情報、表情、操作の各々について、詳細な情報を有している。
消費電力管理部141は、端末100以外の他の装置の通信に要する消費電力を管理する。通信方針として設定された消費電力は、例えば、送信電力制御(消費電力の最小化)における目標値として使用される。
遅延時間管理部142は、他の装置の通信において許容できる遅延時間を管理する。通信方針として設定された遅延時間は、例えば、QoS(Quality of Service)などの制御(遅延時間の最小化)における目標値として使用される。
通信速度管理部143は、他の装置の通信速度を管理する。通信方針として設定された通信速度は、例えば、QoSなどの制御(通信速度の最大化)における目標値として使用される。
通信量管理部144は、他の装置の通信量を管理する。通信方針として設定された通信量は、例えば、スケジューリングなどの制御(ピーク通信量、総通信量の最小化)における目標値として使用される。
通信停止時間管理部145は、他の装置における通信停止時間を管理する。通信方針として設定された通信停止時間は、例えば、QoSなどの制御(通信停止時間の最大化)における目標値として使用される。
通信費用管理部146は、他の装置において許容できる通信費用を管理する。通信方針として設定された通信費用は、例えば、通信量などの制御(通信費用の最小化)における目標値として使用される。
上述した消費電力管理部141〜通信費用管理部146は、装置毎に通信方針(例えば、図6を参照)を管理する。また、1つの装置が複数の通信方式に対応する場合には、消費電力管理部141〜通信費用管理部146は、図6に示す通信方針を通信方式毎に管理してもよい。
ユーザ満足度管理部147は、他の装置を使用するユーザの満足度(QoE:Quality of Experience)を管理する。ユーザ満足度は、例えば、MOS(Mean Opinion Score)値で表されてもよい。ユーザ満足度は、例えば、上述した通信方針の管理(ユーザ満足度の最大化)における目標値として使用される。すなわち、ユーザ満足度管理部147は、ユーザ満足度が上昇するように、他の装置の通信方針を変更する。例えば、ユーザ満足度管理部147は、ユーザ満足度と通信方針のパラメータとが対応付けられたテーブルを参照して、ユーザ満足度に応じた通信方針を設定してもよい。
図5に示すユーザ満足度管理部147は、ユーザ満足度を特定するための構成部として、生体情報管理部148、表情管理部149、操作管理部150を備える。
生体情報管理部148は、他の装置を使用するユーザの生体情報を管理する。生体情報としては、例えば、ユーザの体温、呼吸数、心拍数、血圧、発汗が挙げられる。生体情報管理部148は、ユーザの生体情報に基づいてユーザ満足度を判定する。例えば、生体情報管理部148は、体温、呼吸数、心拍数、血圧、発汗の値が大きいほど、ユーザはストレスを感じていると推定し、ユーザ満足度が低いと判定する。なお、生体情報は、装置に設けた温度センサ、脈波センサ、湿度センサ等により、装置を使用するユーザから取得することができる。
表情管理部149は、他の装置を使用するユーザの表情を管理する。表情管理部149は、例えばmad(怒り)、glad(喜び)、平穏(calm)、悲しみ(sad)等に分類された表情に基づいて、ユーザ満足度を判定する。また、表情は、例えば、各装置のカメラにおいてユーザの顔画像が取得され、画像認識によって喜怒哀楽が判定されてもよい。例えば、生体情報管理部148は、表情がmad,sadの場合にはユーザ満足度が低いと判定し、表情がcalm,gladの場合にはユーザ満足度が高いと判定する。
操作管理部150は、他の装置を使用するユーザの操作情報を管理する。操作情報として、例えば、ユーザによる特定期間(例えば1分)における同一操作の繰り返し回数(リトライ数)、又は、取り消し回数が挙げられる。操作管理部150は、例えばリトライ数又は取り消し回数が多いほど、ユーザ満足度が低いと判定する。
以上、ユーザ満足度管理部147における各構成部について説明した。なお、ユーザ満足度管理部147は、これらの構成部のうち一部のみを備えてもよく、生体情報、表情又は操作以外のユーザ満足度の指標となる他のパラメータを管理する構成部を備えてもよい。
通信方針予測部151は、各装置の現在の通信方針を当該装置の過去の通信方針から予測する。通信方針予測部151は、例えば、移動平均又は回帰予測を用いて、現在の通信状態を予測してもよい。また、通信状態予測部151は、協調フィルタリングを用いて、他の装置の通信方針から予測対象の装置の現在の通信方針を予測してもよい。
また、通信方針予測部151は、後述する通信方針群管理部152又は通信方針階層管理部153が管理するグループのうち、予測対象の装置を含むグループ内の他の装置の通信方針を用いて、予測対象の装置の通信方針を予測してもよい。
このように、通信方針予測部151は、或る装置の現在の通信方針が取得できない場合には、当該装置の過去の通信方針又は他の装置の通信方針から、当該装置の現在の通信方針を予測する。
通信方針群管理部152は、端末100が管理する他の装置のうち、通信方針の相関が高い装置をグループ化する。例えば、通信方針群管理部152は、回帰分散分析に従って、複数の他の装置を複数のグループにグループ化してもよい。通信方針予測部151は、予測対象の装置と同一グループに含まれる装置の通信方針を用いて、予測対象の装置の通信方針を予測する。
通信方針階層管理部153は、通信方針群管理部152が管理する複数のグループを、複数のグループ間の相関に基づいて階層的に管理する。
例えば、通信方針群管理部152において、ピコセル内の装置の通信方針が含まれるグループ(ピコセルグループ)、スモールセル内の装置の通信方針が含まれるグループ(スモールセルグループ)、及び、マクロセル内の装置の通信方針が含まれるグループ(マクロセルグループ)にグループ化されているとする。この場合、通信方針階層管理部153は、これらの複数のグループを、セルの階層構成に基づいて管理する。具体的には、通信方針階層管理部153は、或るマクロセルのマクロセルグループと、当該マクロセルに含まれるスモールセルのスモールセルグループと、当該スモールセルにそれぞれ含まれるピコセルのピコセルグループと、を対応付けて管理する。
通信方針予測部151は、予測対象の装置が属するグループ、又は、当該グループと対応付けられた異なる階層のグループに含まれる他の装置の通信方針を用いて、通信方針を予測してもよい。これにより、通信方針の予測の際に利用する他の装置を限定し、予測に要する処理量を低減することができる。
なお、他局通信方針管理部102において管理される通信方針は、消費電力、遅延時間、通信速度、通信量、通信停止時間、通信費用に限定されるものではなく、これらのうちの一部のパラメータでもよく、これら以外の他のパラメータであってもよい。
また、消費電力管理部141〜通信費用管理部146は、通信方針群管理部152又は通信方針階層管理部153において管理されたグループのうち、端末100が接続されたセルに対応するグループ及び当該グループと階層的に対応付けられたグループに含まれる他の装置の通信方針のみを管理してもよい。こうすることで、他局通信状態管理部101において管理する情報の情報量を削減することができる。
以上、他局通信方針管理部102の内部構成の一例について説明した。
[自局通信状態管理部103及び自局通信方針管理部104の内部構成]
図7は、自局通信状態管理部103の内部構成の一例を示すブロック図である。自局通信状態管理部103は、位置管理部161、移動状態管理部162、無線リソース管理部163、無線品質管理部164、周辺環境管理部165、識別子管理部166、通信状態予測部167、通信状態群管理部168、通信状態階層管理部169を含む。
位置管理部161〜通信状態階層管理部169は、他局通信状態管理部101の位置管理部131〜通信状態階層管理部139(図3)が端末100以外の他局の通信状態を管理するのに対して、自局(端末100)の通信状態を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、自局通信状態管理部103は、自局(端末100)に対して、図4に示すような通信状態を管理する。
なお、通信状態群管理部168は、自局(ここでは端末100)の通信状態と相関が高い他局の通信状態とをグループ化してもよい。例えば、通信状態群管理部168は、GPSを有する端末(他局)の位置情報に基づいて、自局の周辺に位置する他局を自局とグループ化してもよい。これにより、通信状態予測部167は、グループ内の他局の通信状態を用いて、自局の通信状態を精度良く予測することが可能となる。
図8は、自局通信方針管理部104の内部構成の一例を示すブロック図である。自局通信方針管理部104は、消費電力管理部171、遅延時間管理部172、通信速度管理部173、通信量管理部174、通信停止時間管理部175、通信費用管理部176、ユーザ満足度管理部177(生体情報管理部178、表情管理部179、操作管理部180)、通信方針予測部181、通信方針群管理部182、通信方針階層管理部183を含む。
消費電力管理部171〜通信方針階層管理部183は、他局通信方針管理部102の消費電力管理部141〜通信方針階層管理部153(図5)が端末100以外の他局の通信方針を管理するのに対して、自局(端末100)の通信方針を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、自局通信方針管理部104は、自局(端末100)に対して、図6に示すような通信方針を管理する。
なお、通信方針群管理部182は、自局(ここでは端末100)の通信方針と相関が高い他局の通信方針とをグループ化してもよい。例えば、通信方針群管理部182は、GPSを有する端末(他局)の位置情報に基づいて、自局の周辺に位置する他局を自局とグループ化してもよい。これにより、通信方針予測部181は、グループ内の他局の通信方針を用いて、自局の通信方針を精度良く予測することが可能となる。
[通信制御部105の内部構成]
図9は、通信制御部105の内部構成の一例を示すブロック図である。
通信制御部105は、通信方式制御部191、通信方向制御部192、通信制御予測部193、通信制御群管理部194、通信制御階層管理部195、通信制御分離部196を備える。
通信方式制御部191は、自局通信状態情報、自局通信方針情報、他局通信状態情報、及び、他局通信方針情報に基づいて、端末100が使用する通信方式を設定する。端末100に設定される通信方式は、基地局間通信及び端末間通信に限定されず、例えば、GSM(Global System for Mobile communication)(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)などの他の通信方式であってもよい。
また、通信方式制御部191は、端末100が使用する無線リソースを設定する。無線リソースには、例えば、リソース(周波数/時間/空間など)、変調方式、送信電力、最大送信電力、又は、送信タイミングなどが含まれる。
通信方向制御部192は、自局通信状態情報、自局通信方針情報、他局通信状態情報、及び、他局通信方針情報に基づいて、端末100がビームフォーミングを行う場合の通信方向又はチルト角等を設定する。
通信制御予測部193は、端末100の現在の通信設定内容を端末100の過去の通信設定内容から予測する。通信制御予測部193は、例えば、移動平均又は回帰予測を用いて、現在の通信設定内容を予測してもよい。また、通信制御予測部193は、協調フィルタリングを用いて、他の装置の通信設定内容(例えば、他局通信状態情報に示される通信方式)から端末100の現在の通信設定内容を予測してもよい。
また、通信制御予測部193は、後述する通信制御群管理部194又は通信制御階層管理部195が管理するグループのうち、端末100を含むグループ内の他の装置の通信設定内容を用いて、端末100の通信状態を予測してもよい。
このように、通信制御予測部193は、端末100の現在の通信設定を、端末100の過去の通信設定又は他の装置の通信設定から予測する。
通信制御群管理部194は、端末100が管理する装置(自局及び他局)のうち、通信設定内容(例えば、通信状態のうちの通信方式等)の相関が高い装置をグループ化する。例えば、通信制御群管理部194は、回帰分散分析に従って、複数の他の装置を複数のグループにグループ化してもよい。通信制御予測部193は、端末100と同一グループに含まれる他の装置の通信設定内容を用いて、端末100の通信設定内容を予測する。
通信制御階層管理部195は、通信制御群管理部194が管理する複数のグループを、複数のグループ間の相関に基づいて階層的に管理する。
例えば、通信制御群管理部194において、ピコセル内の装置の通信設定内容が含まれるグループ(ピコセルグループ)、スモールセル内の装置の通信設定内容が含まれるグループ(スモールセルグループ)、及び、マクロセル内の装置の通信設定内容が含まれるグループ(マクロセルグループ)にグループ化されているとする。この場合、通信制御階層管理部195は、これらの複数のグループを、セルの階層構成に基づいて管理する。具体的には、通信制御階層管理部195は、或るマクロセルのマクロセルグループと、当該マクロセルに含まれるスモールセルのスモールセルグループと、当該スモールセルにそれぞれ含まれるピコセルのピコセルグループと、を対応付けて管理する。
通信制御予測部193は、端末100が属するグループ、又は、当該グループと対応付けられた異なる階層のグループに含まれる他の装置の通信設定内容を用いて、端末100の通信設定内容を予測してもよい。これにより、通信設定内容の予測の際に利用する他の装置を限定し、予測に要する処理量を低減することができる。
通信制御分離部196は、端末100に対して、制御データ(Control plane)とユーザデータ(User plane)とをそれぞれ送信するセルを分離する「C/U分離」を適用するか否かを決定する。例えば、通信制御分離部196は、自局(端末100)の位置、移動速度、移動方向等に基づいて、自局がマクロセル内の複数のピコセル間を移動することを推定した場合、自局に対する制御データの通信をマクロセルが行い、自局に対するユーザデータの通信を端末100の移動先であるピコセルが行うC/U分離を適用する。
以上、通信制御部105の内部構成の一例について説明した。
[基地局200の構成]
図10は、本実施の形態に係る基地局200の構成を示すブロック図である。図10において、基地局200は、無線部201、ベースバンド信号処理部208、ユーザデータ処理部209、他局通信状態管理部210、他局通信方針管理部211、自局通信状態管理部212、自局通信方針管理部213、通信制御部214を有する。
無線部201は、アンテナ部202、分離部203、無線受信部204、復調部205、変調部206、無線送信部207を有する。
アンテナ部202は、分離部203から受け取る無線信号を送信する。また、アンテナ部202は、他の装置から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を分離部203へ出力する。
分離部203は、異なるリソースを用いて同時に通信される送信データと受信データとを分離して、各データを対応する処理部へ出力する。具体的には、分離部203は、無線送信部207から受け取る無線信号(送信信号)をアンテナ部202へ出力する。また、分離部203は、アンテナ部202から受け取る無線信号(受信信号)を、送信元の装置毎の信号に分離して、分離した無線信号を無線受信部204へ出力する。
無線受信部204は、分離部203から受け取る無線信号に対して、無線受信処理を行い、無線受信処理後の信号を復調部205に出力する。
復調部205は、無線受信部204から受け取る無線信号を復調して、ベースバンド信号を生成する。復調部205は、生成したベースバンド信号をベースバンド信号処理部208へ出力する。
変調部206は、ベースバンド信号処理部208から受け取るベースバンド信号を変調して、無線信号を生成する。変調部206は、生成した無線信号を無線送信部207へ出力する。
無線送信部207は、変調部206から受け取る無線信号に対して、無線送信処理を行い、無線送信処理後の信号を分離部203に出力する。
ベースバンド信号処理部208は、通信制御部214から受け取る制御情報、及び、ユーザデータ処理部209から受け取るユーザデータに対して、ベースバンド処理(結合、符号化など)を施し、得られたベースバンド信号を変調部206へ出力する。また、ベースバンド信号処理部208は、復調部205から受け取る信号に対してベースバンド処理(分離、復号など)を施し、得られた制御情報を他局通信状態管理部210及び他局通信方針管理部211へ出力し、得られたユーザデータをユーザデータ処理部209へ出力する。
ユーザデータ処理部209は、ベースバンド信号処理部208から受け取ったユーザデータを、対応するアプリケーション処理部(図示せず)に出力する。また、ユーザデータ処理部209は、アプリケーション処理部から受け取るユーザデータをベースバンド信号処理部208に出力する。
他局通信状態管理部210は、基地局200以外の他の装置(端末100及び他の基地局)の通信状態を装置毎に管理する。また、他局通信状態管理部210は、ベースバンド信号処理部208から入力される制御情報に基づいて、保持する他の装置の通信状態を更新する。また、他局通信状態管理部210は、保持する他の装置の通信状態を示す情報(他局通信状態情報)を、通信制御部214へ出力する。
他局通信方針管理部211は、基地局200以外の他の装置(端末100及び他の基地局)の通信方針の設定値を装置毎に管理する。また、他局通信方針管理部211は、ベースバンド信号処理部208から入力される制御情報に基づいて、保持する他の装置の通信方針を更新する。また、他局通信方針管理部211は、保持する他の装置の通信方針を示す情報(他局通信方針情報)を、通信制御部214へ出力する。
また、他局通信方針管理部211は、基地局200以外の他の装置を利用するユーザのユーザ満足度に対応するパラメータを管理する。そして、他局通信方針管理部211は、ユーザ満足度に応じて、管理している通信方針を変更する。
自局通信状態管理部212は、基地局200の通信状態を管理する。また、自局通信状態管理部212は、図示しない処理部から入力される、基地局200の通信状態に基づいて、保持する基地局200の通信状態を更新する。また、自局通信状態管理部212は、保持する基地局200の通信状態を示す情報(自局通信状態情報)を、通信制御部214へ出力する。
自局通信方針管理部213は、基地局200の通信方針の設定値を管理する。また、自局通信方針管理部213は、図示しない処理部から入力される基地局200の通信方針に基づいて、保持する基地局200の通信方針を更新する。また、自局通信方針管理部213は、保持する基地局200の通信方針を示す情報(自局通信方針情報)を、通信制御部214へ出力する。
また、自局通信方針管理部213は、基地局200を利用するユーザのユーザ満足度を管理する。そして、自局通信方針管理部213は、ユーザ満足度に応じて、管理している通信方針を変更する。
なお、基地局200を利用するユーザとしては、例えば、通信事業者が管理するマクロセルのオペレータ、非通信事業者が管理するピコセルのオペレータ、及び、無線LANシステムのアクセスポイント等の複数の基地局200が混在する環境において、通信事業者又は非通信事業者のオペレータ、又は、個人事業主(アクセスポイントの管理者など)が想定される。
つまり、他局通信状態管理部210は、基地局200以外の他の通信装置の通信状態を一元的に管理する通信状態管理部として機能し、自局通信状態管理部212は、基地局200の通信状態を一元的に管理する通信状態管理部として機能する。また、他局通信方針管理部211は、基地局200以外の他の通信装置の通信方針を一元的に管理する通信方針管理部として機能し、自局通信方針管理部213は、基地局200の通信方針を一元的に管理する通信方針管理部として機能する。なお、自局通信状態情報及び自局通信方針情報は、他の装置(端末100又は他の基地局200)へ送信される。
通信制御部214は、他局通信状態管理部210から入力される他局通信状態情報、他局通信方針管理部211から入力される他局通信方針情報、自局通信状態管理部212から入力される自局通信状態情報、及び、自局通信方針管理部213から入力される自局通信方針情報に基づいて、自局(基地局200)又は他局(例えば、端末200)の通信設定を制御する。通信制御部214は、設定された通信設定を含む制御情報を、無線受信部204、復調部205、変調部206、無線送信部207及びベースバンド信号処理部208に出力する。
[他局通信状態管理部210〜通信制御部214の内部構成]
図11は、基地局200の他局通信状態管理部210の内部構成の一例を示すブロック図である。他局通信状態管理部210は、位置管理部231、移動状態管理部232、無線リソース管理部233、無線品質管理部234、周辺環境管理部235、識別子管理部236、通信状態予測部237、通信状態群管理部238、通信状態階層管理部239を含む。
位置管理部231〜通信状態階層管理部239は、端末100の他局通信状態管理部101の位置管理部131〜通信状態階層管理部139(図3)が端末100以外の装置の通信状態を管理するのに対して、基地局200以外の装置の通信状態を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、他局通信状態管理部210は、基地局200以外の装置に対して、図4に示すような通信状態を管理する。
図12は、基地局200の他局通信方針管理部211の内部構成の一例を示すブロック図である。他局通信方針管理部211は、消費電力管理部241、遅延時間管理部242、通信速度管理部243、通信量管理部244、通信停止時間管理部245、通信費用管理部246、ユーザ満足度管理部247(生体情報管理部248、表情管理部249、操作管理部250)、通信方針予測部251、通信方針群管理部252、通信方針階層管理部253を含む。
消費電力管理部241〜通信方針階層管理部253は、端末100の他局通信方針管理部102の消費電力管理部141〜通信方針階層管理部153(図5)が端末100以外の装置の通信方針を管理するのに対して、基地局200以外の装置の通信方針を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、他局通信方針管理部211は、基地局200以外の装置に対して、図6に示すような通信方針を管理する。
図13は、基地局200の自局通信状態管理部212の内部構成の一例を示すブロック図である。自局通信状態管理部212は、位置管理部261、移動状態管理部262、無線リソース管理部263、無線品質管理部264、周辺環境管理部265、識別子管理部266、通信状態予測部267、通信状態群管理部268、通信状態階層管理部269を含む。
位置管理部261〜通信状態階層管理部269は、他局通信状態管理部210の位置管理部231〜通信状態階層管理部239(図11)が基地局200以外の他の装置の通信状態を管理するのに対して、自局(基地局200)の通信状態を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、自局通信状態管理部212は、自局(基地局200)に対して、図4に示すような通信状態を管理する。
図14は、基地局200の自局通信方針管理部213の内部構成の一例を示すブロック図である。自局通信方針管理部213は、消費電力管理部271、遅延時間管理部272、通信速度管理部273、通信量管理部274、通信停止時間管理部275、通信費用管理部276、ユーザ満足度管理部277(生体情報管理部278、表情管理部279、操作管理部280)、通信方針予測部281、通信方針群管理部282、通信方針階層管理部283を含む。
消費電力管理部271〜通信方針階層管理部283は、他局通信方針管理部211の消費電力管理部241〜通信方針階層管理部253(図12)が基地局200以外の他の装置の通信方針を管理するのに対して、自局(基地局200)の通信方針を管理する点のみが異なり、同様の動作を行うので詳細な説明は省略する。すなわち、自局通信方針管理部213は、自局(基地局200)に対して、図6に示すような通信方針を管理する。
図15は、基地局200の通信制御部214の内部構成の一例を示すブロック図である。
通信制御部214は、通信方式制御部291、通信方向制御部292、通信制御予測部293、通信制御群管理部294、通信制御階層管理部295、通信制御分離部296を備える。通信方式制御部291〜通信制御分離部296は、端末100の通信方式制御部191〜通信制御分離部196と同様の動作を行うので、詳細な説明は省略する。
[端末100及び基地局200の動作]
以上の構成を有する端末100及び基地局200の動作について説明する。
まず、上述した端末100及び基地局200における通信制御の具体例について説明する。
なお、以下では、一例として、端末100の通信制御部105における動作について説明する。ただし、端末100の通信制御部105の代わりに、基地局200の通信制御部214が以下で説明する処理と同様の処理を行ってもよい。
以下では、通信状態及び通信方針の各パラメータに基づく通信制御の一例について説明する。
(1)位置情報利用
(1−1:端末間通信)
端末100は、自局の位置情報及び他局の位置情報を用いて、自局の位置と通信相手の端末の位置との距離が所定値未満である場合(距離が近い場合)、通信相手と直接通信を行う端末間通信に設定する。
これにより、端末100では、基地局間通信と比較して、低遅延化及び低送信電力化が可能となる。また、端末100は、保持している自局及び他局の位置情報に基づいて端末間通信の実施を決定する。これにより、例えば、基地局200へ受信品質を報告し、端末間通信の開始指示を受け取る場合と比較して、端末100は、端末間通信の決定に要する時間を短縮することができる。
(1−2:セル選択)
端末100は、自局の位置情報及び周辺セル(他局)の位置情報を用いて、周辺セルと端末100との間の距離を特定し、各セルと端末100との距離に基づいて、端末100の接続先セル(接続先基地局)の選択(切替)を行う。
これにより、端末100は、端末100の現在位置における最適なセルにハンドオーバすることができる。
端末100が位置情報に基づいてセル選択を行う具体例について説明する。
図16は、複数のセルが配置された通信システムの構成例を示す。図17は、セルリストの一例を示す図である。
図16において、NU1、NU2はUHF帯を利用するマクロセルを示し、NS1〜NS4はSHF帯を利用するスモールセルを示し、NE1〜NE11はEHF帯を利用するピコセルを示す。
また、図16に示すように、NU1の通信エリア(細い実線)には、NS1,NS2の通信エリア(破線)、及び、NE1〜NE6の通信エリア(太い実線)が含まれる。また、NU2の通信エリアには、NS3,NS4の通信エリア、及び、NE5〜NE11の通信エリアが含まれる。
同様に、NS1の通信エリアには、NE1、NE3、NE4の通信エリアが含まれ、NS2の通信エリアには、NE3〜NE5の通信エリアが含まれ、NS3の通信エリアには、NE7〜NE9の通信エリアが含まれ、NS4の通信エリアには、NE8、NE9、NE11の通信エリアが含まれる。
すなわち、NU(マクロセル)、NS(スモールセル)、NE(ピコセル)は、図17に示すように階層的に配置されている。つまり、図16に示す複数の基地局(NU、NS、NE)は、多層的に配置され、周波数帯の異なる無線信号を送信する基地局から構成される。
例えば、端末100の他局通信状態管理部101〜通信制御部105は、図17に示すセル毎に装置をグループ化してもよい。この場合、複数のグループは、図16に示す複数のセル毎のグループ間の位置関係(相関)に基づいて階層的に管理されてもよい。
また、図16は、セル内の位置(セル中心、中間、セルエッジ)に応じた無線品質(Low, Mid, High)、及び、スループットの大きさを示す。なお、スループットの大きさの単位は特に限定されるものではなく、例えば、「Mbps」、「Gbps」でもよい。
なお、図16では、マクロセル(NU)及びスモールセル(NS)では、各セル内における基地局からの距離に応じて、セル中心、セル中心とセルエッジとの中間、セルエッジの3パターンのスループットを想定する。一方、マクロセル及びスモールセルと比較してセルサイズが十分に小さいピコセル(NE)では、各セル内における通信環境が均一であると仮定し、1パターンのスループットのみを想定する。
具体的には、図16では、マクロセル(NU1,NU2)のスループットは、セル中心付近では「3」であり、セル中心とセルエッジの中間では「2」であり、セルエッジでは「1」である。また、スモールセル(NS1〜NS4)のスループットは、セル中心付近では「6」であり、セル中心とセルエッジの中間では「4」であり、セルエッジでは「2」である。また、ピコセルのうち、NE1、NE10のスループットは「6」であり、それ以外のNE2〜NE9、NE11のスループットは「9」である。
すなわち、無線品質が良いほど、スループットは大きくなるため、セルエッジに比べセル中心のスループットは大きくなる。また周波数が高いほど、広帯域の利用が可能でありスループットは大きくなるため、ピコセルのスループットはスモールセルより大きく、スモールセルのスループットはマクロセルより大きくなる。
ここでは、図16に示すように、UE1(端末100)がNU1のセルエッジからNU2のセルエッジまで移動する場合について説明する。
図18は、無線品質に基づくセル選択処理の一例を示す図である。まず、既存のセル選択処理の一例として、UE1の無線品質に基づいて接続先セルを選択する場合の様子を示す。
なお、図18では、UE1には、図17に示すようなセルの構成を示すセルリストのうち、UE1が接続しているセルの周辺セルのリストが通知されているものとする。
この場合、UE1は、UE1と周辺セルとの無線品質(例えば、RSRP、RSRQ、パスロス)を測定する。そして、UE1に対して、測定した無線品質(例えば、Low、Mid、High)のうち、より高い無線品質のセルが接続先セルとして選択される。
例えば、図18に示すタイミング(1)では、NU1の無線品質(Mid)よりもNS1の無線品質(High)の方が高いので、UE1は、NU1からNS1へセル接続を切り替える。次いで、図18に示すタイミング(2)では、NS1の無線品質(Mid)よりもNS2の無線品質(High)の方が高いので、UE1は、NS1からNS2へセル接続を切り替える。
同様にして、以降、UE1は、無線品質がより高いセルを検出した場合に、当該セルへの接続切替を行う。図18では、UE1がNU2のセルエッジへ移動するまでに、タイミング(1)〜(7)の7回のセル切替が行われている。
この場合、図18に示すUE1における各接続セルでのスループットの合計は140となる。また、UE1は、セル切替に関する制御データを7回基地局へ報告する。
図19は、位置情報に基づくセル選択処理の一例を示す図である。図19を用いて、UE1の位置情報に基づいて接続先セルを選択する場合の様子を示す。なお、図19では、UE1は、自局の位置を含む位置情報(第2位置情報)、及び、各基地局(NU、NE、NS)が形成するセルの通信エリアを含む位置情報(第1位置情報)を一元的に管理している。
また、図20は、UE1(端末100)がセル選択を行う場合の端末100及び基地局200の動作を示すシーケンス図である。
図20において、ST101では、基地局200は、各セルの位置及び無線リソース等を示すネットワーク情報を端末100へ通知する。端末100は、ネットワーク情報に示される情報を、他局通信状態情報又は他局通信方針情報として管理する。
ST102では、端末100は、自局の位置情報及び他局(各セル)の位置情報に基づいて、接続先セルを選択する。
ST103では、端末100は、ST102で選択した接続先セル、端末100の位置及び無線リソース等を示すUE情報を基地局200へ報告する。
ST104では、端末100及び基地局200はセル選択処理を完了する。
図19に戻り、UE1は、セル選択(図20のST102)において、UE1と周辺セルとの位置関係を特定し、UE1が接続可能なセルのうち、高スループットのセルを選択する。
例えば、図19に示すタイミング(1)では、UE1は、NU1、NE2に接続可能な位置に存在する(図16を参照)。この場合、UE1は、スループットが最も高いNE2(スループット:「9」)へセル接続を切り替える。
次いで、図19に示すタイミング(2)では、UE1は、NE2の通信エリア外に移動し、NU1、NS1に接続可能な位置に存在する(図16を参照)。この場合、UE1は、スループットが最も高いNS1(スループット:「4」)へセル接続を切り替える。
同様にして、以降、UE1は、UE1と各セルとの位置関係に基づいて、UE1が接続可能なセルのうち、最も高いスループットのセルへの接続切替を行う。図19では、UE1がNU2のセルエッジへ移動するまでに、22回のセル切替が行われている。
この場合、図19に示すように、UE1における各接続セルでのスループットの合計は249となる。すなわち、図19に示すように位置情報に基づいてセル選択を行うことにより、従来の無線品質のみに基づいてセル選択を行う場合(図18では、スループットの合計:140)と比較して、高スループットを実現することができる。
これは、無線品質のみに基づくセル選択の場合には、UE1は、セル選択の度に無線品質を測定する必要があり、無線品質の測定に時間がかかってしまい、例えば、無線品質測定中にセルサイズの小さいピコセルの通信エリアを通過する場合でも、UE1が最適なセル(ここでは高スループットのピコセル)を選択できない状況が発生するためである。又は、UE1の周辺セルのリストをUE1へ通知するネットワーク側において管理されているセルリストが適切ではない場合には、UE1は無線品質によって最適なセルを選択できなくなる場合もある。
これに対して、図19に示すように、UE1の位置情報に基づいてセルを選択することにより、ピコセルのようにセルサイズが小さいセルを通過する場合でも、UE1は、ピコセルの位置を予め把握しているので、適切なタイミングでピコセルへのセル切替を行うことが可能となる。
なお、図19では、UE1は、セル切替を22回行う。つまり、図19では、図18と比較して、セル切替回数が多くなる。これに対して、制御データ(Control plane)とユーザデータ(User plane)とをそれぞれ送信するセルを分離するC/U分離を適用する場合には、UE1は、制御データをマクロセルで送信することにより、制御データの送信回数を抑制することができる。
具体的には、図19において、C/U分離が適用されない場合、UE1は、セルの切替タイミング毎に制御データを送信する必要がある。一方、C/U分離が適用される場合、UE1は、マクロセル(NU)の切替タイミングのみで制御データを送信すればよい。すなわち、C/U分離が適用される場合、UE1は、図19に示すタイミング(1)〜(22)でユーザデータの通信を行う接続先セルを切り替えるのに対して、NU1からNU2への切り替わるタイミング(10)の1回のみで制御データを送信すればよい。
このように、C/U分離が適用される場合、端末100(UE1)は、ユーザデータの通信時には、端末100の位置を含む通信エリアに対応する基地局のうち、スループットが最も大きいセルを形成する基地局を選択し、制御データの通信時には、端末100の位置を含む通信エリアに対応する基地局のうち、セルサイズが最も大きいセルを形成する基地局を選択する。
よって、C/U分離が適用される場合には、ユーザデータは、スループットが比較的大きいスモールセル又はピコセルにおいて優先的に通信され、制御データは、セルサイズが比較的大きいマクロセルにおいて優先的に通信されるので、制御データの送信を抑えつつ、高スループットを維持することができる。
なお、ここでは、端末100がセル選択を行う場合について説明した。一方、既存の基地局(例えば、通信状態/通信方針を管理しない基地局)の場合は、既存の基地局が端末100に対して接続先セルを指定してくる。このような場合でも、端末100は適切なセル選択を行うことができる。すなわち、端末100は、既存の基地局がセル選択の基準とする無線品質にオフセットを加えた値を当該基地局へ報告すればよい。例えば、端末100は、上記同様、自局又は他局の通信状態/通信方針に基づいて、接続先セルを決定する。そして、端末100は、決定した接続先セルの無線品質にオフセットを加えて当該セルの優先度を高くする。
そして、既存の基地局は、報告された無線品質に基づいてセル選択を行う。例えば、端末100が決定した接続先セルの実際の無線品質(例えば−15dB)よりも他のセルの無線品質(例えば−10dB)が高い場合、基地局は、当該他のセルを選択する。これに対して、端末100が決定した接続先セルの無線品質(例えば−15dB)にオフセット(例えば、+10dB)を加えた値が他のセルの無線品質よりも高くなることで、基地局は、端末100が決定したセルを選択する。
こうすることで、セル選択を既存の基地局が行う場合でも、端末100は、自局及び他局の通信状態/通信方針に基づいて、適切なセルを選択することができる。
(2)移動状態利用
端末100は、端末100が移動している場合、上述した端末100の位置情報に加え、端末100の移動状態(移動速度、加速度、方向)に基づいて、端末100の移動先を推測し、移動先を通信エリアとするセルを選択する。
このように、端末100の移動状態を把握して移動先のセルを選択することにより、端末100は、ピコセルのようなセル半径が短いセルであっても、適切なタイミングで移動先のセルにハンドオーバすることができる。
(3)周辺環境利用
例えば、EHF帯などの高周波数帯の電波は降雨減衰の影響を受けやすい。そこで、端末100は、端末100の周辺環境(降水量等)に基づいて、屋外での降雨減衰を考慮して、無線方式及び周波数を選択する。具体的には、端末100は、降水量が多い場合には、低い周波数又は低い周波数を使用するシステムを優先的に選択する。
これにより、端末100の通信時に降雨減衰の影響を抑えることができる。
なお、降水量は、降水量情報そのものから特定されてもよく、温度、湿度、気圧などから予測されてもよい。
(4)無線リソース制御
端末100は、端末100の通信方針に基づいて、端末100の無線リソースを決定する。
例えば、消費電力を抑えたい(消費電力:小さい)という通信方針が設定された端末100は、送信電力を低く設定、又は、送信電力を抑圧可能なシステムを優先的に選択する。なお、消費電力を抑えたい(消費電力:小さい)という通信方針が設定された端末100の状況の一例としては、例えば、端末100が機器監視に使用されるケース、又は、端末100の電池残量が低減しているケースなどが挙げられる。
また、通信速度を向上させたいという通信方針が設定された端末100は、送信電力を高く設定、又は、送信電力が大きいシステムを優先的に選択する。送信電力を大きくするほど、高速通信が可能となる。なお、通信速度を向上させたいという通信方針が設定された端末100の状況の一例としては、例えば、端末100によって大容量のファイルをダウンロードするケース、又は、高画質動画を視聴するケースなどが挙げられる。
なお、ここでは、通信方針として消費電力又は通信速度を用いる場合を一例として説明したが、端末100は、他の通信方針に基づいて無線リソースを制御してもよい。
(5)無線品質利用
端末100は、端末100の無線品質(受信品質、受信レベル、パスロス)、及び、上述した位置情報を用いて、端末100の通信環境を推定し、推定された通信環境に応じた通信設定を行う。
図21は、無線品質及び位置情報に基づく通信制御内容の一例を示す図である。端末100は、図21の無線品質と位置情報とに基づいて通信設定を行う。
図21では、端末100は、端末100の無線品質として、受信品質(悪、良)、受信レベル(小、大)、パスロス(小、大)を管理する。また、端末100は、位置情報として、特定の基地局200からの距離(近、遠)を管理する。
例えば、図21に示すケースNo.1では、端末100は、基地局200からの距離が遠く、受信レベルが小さいので、端末100の通信環境が「遠距離」であると推定する。そこで、端末100は、当該基地局200に隣接する他のセルを選択する。これにより、端末100は、端末100との距離が近いセルとの間で通信することができる。
また、図21に示すケースNo.2では、端末100は、基地局200からの距離が近く、受信レベルが小さいので、端末100の通信環境が近距離であり、端末100と基地局200との間に障害物が有る状態と推定する。そこで、端末100(通信方向制御部192)は、当該基地局200に隣接する他のセルからのビームフォーミングを選択するとともに、ビームフォーミングにおけるチルト角を制御する。これにより、端末100は、他のセルとの間で障害物を回避して通信することができる。
また、図21に示すケースNo.9では、端末100は、基地局200からの距離が遠く、受信品質が良好であるので、端末100の通信環境が遠距離であり、基地局200から見通し内に位置する状態と推定する。そこで、端末100(通信方式制御部191)は、例えば、NOMA(Non Orthogonal Multiple Access)方式を選択する。
NOMA方式は、セル内の複数の端末の信号を同一の無線リソースに多重し、同時に通信する方法である。また、NOMA方式は、多重される端末のペアにおける電力配分に着目した方式であり、ペアとなる端末間のチャネル利得の差が大きいほど容量の改善効果が大きい。
例えば、端末100は、基地局200との距離が近い端末と、距離が遠い端末とをペアに設定し、このペアの端末に対してNOMA方式を適用する。具体的には、図21に示すケースNo.9,11,13,15(端末100が遠距離で受信品質が良好)の場合、端末100は、他局の無線品質及び位置情報に基づいて、近距離と推定される他の端末を特定し、自局と特定した他の端末とのペアに対してNOMAを適用する。
一方、図21に示すケースNo.10,12,14,16(端末100が近距離)の場合、端末100は、他局の無線品質及び位置情報に基づいて、遠距離であり基地局200の見通し内の他の端末を特定し、自局と特定した他の端末とのペアに対してNOMAを適用する。
端末100は、図21に示す他のケースについても同様にして、無線品質及び位置情報から推定される通信環境に適した通信方式を選択する。
このように、端末100は、端末100の位置と端末100無線品質とから、端末100と接続先基地局との位置関係、及び、端末100に対する干渉の大きさを推定し(図21に示す‘推定内容’)、推定された位置関係及び干渉の大きさに基づいて、通信装置の通信設定(図21に示す‘制御内容’)を制御する。
これにより、例えば、従来のシステムにおいて用いられていた無線品質のみに基づいて通信制御が行われる場合と比較して、端末100は、無線品質に加え、端末100の位置情報を考慮することにより、従来よりも精度の高い通信制御を行うことができる。
(6)通信方針利用
端末100は、端末100の通信方針に適した通信方式、無線リソースを設定する。
図22は、端末のユースケースにおける通信方針の一例を示す図である。ユーザが端末100を用いて設定する通信方針の一例を示す。
ビデオ視聴を行う場合には、高画質の映像伝送に向け、特に高速な通信が必要となるため、端末100の通信方針として、遅延時間:大、通信速度:高、通信停止時間:中が設定される。この場合、端末100は、例えば、通信速度を高くするために、高速通信方式又は高送信電力のパラメータ(又はシステム)を選択する。
また、機器間通信を行う場合には、機器の遠隔監視用途に向け、特に省電力な通信が必要となるため、端末100の通信方針として、遅延時間:大、通信速度:低、通信停止時間:大が設定される。この場合、端末100は、例えば、通信速度を低くし、消費電力を抑えるために、低速通信方式又は低送信電力のパラメータ(又はシステム)を選択する。
また、歩行者、路側機、車両間の通信(歩路車間通信)を行う場合には、歩行者及び車両の状況に基づいて危険な状態を瞬時に特定する必要があるためリアルタイム性が要求され、かつ、時々刻々変化する歩行者及び車両の状況を高頻度で特定する必要がある。また、歩路車間通信を行う場合には、画像認識処理等の利用が想定されるので、画像転送に十分な程度の通信容量が要求される。よって、歩路車間通信に利用される端末100の通信方針として、リアルタイム性及び高頻度の通信を確保するために遅延時間:小、通信停止時間:小が設定され、画像などの通信に必要な通信容量を確保するために通信速度:中が設定される。
また、拡張現実(周囲を取り巻く現実環境に情報を付加・削除・強調・減衰させ、文字通り人間から見た現実世界を拡張するもの)を用いたアプリケーションを利用する場合には、リアルタイムな映像伝送に向け、遅延、速度についてバランスが取れた通信が必要となるため、端末100の通信方針として、遅延時間:中、通信速度:中、通信停止時間:中が設定される。上記以外の場合でも、端末100は、各ユースケースにおいて設定された通信方針を満たすような通信方式を選択すればよい。
なお、図22に示すユースケースにおいて設定される通信方針は一例であって、端末100に対して設定される通信方針は、これらに限定されるものではない。
(7)ユーザ満足度利用
端末100は、ユーザの生体情報、ユーザの表情、又は、ユーザの操作に基づいてユーザ満足度に対応するパラメータ(例えば、MOS値)を算出する。そして、端末100は、ユーザ満足度が高くなるように(つまり、低くならないように)、端末100の通信方針(消費電力、遅延時間、通信速度、通信量、通信停止時間、通信費用等)を管理する。
例えば、端末100は、ユーザの満足度が低い場合には、端末100の通信方針として、通信速度をより高く設定する。これにより、端末100は、ユーザに対してより高速な通信を提供することができ、ユーザ満足度を向上させることができる。
同様に、消費電力を抑えた通信、遅延時間のない通信、通信するデータ量を低減した通信、通信時間を抑制して通信停止時間を長くした通信、通信費用が安価な通信などを通信方針とすることにより、ユーザ満足度を向上させることができる。
以上、上述した端末100及び基地局200における通信制御の一例について説明した。
このようにして、端末100は、複数のシステムにおける各装置の通信状態、及び、各装置の通信方針を一元的に管理する。これにより、マクロセル、スモールセル、ピコセルなどの複数のセルが多層的にかつ高密度で配置される場合(例えば図16参照)、又は、複数のシステムが混在する場合でも、端末100は、複数のシステム又はセル間の干渉の影響、移動に伴う端末の移動状況、ハンドオーバなどの制御データ及びユーザデータに起因する送信点の負荷状況などのシステム情報を共有することができる。
こうすることで、端末100は、端末100の通信状態(例えば、移動状態)、及び、端末100の通信方針(例えば、ユーザ満足度に応じた通信速度)に基づいて、複数のシステム間の無線リソースを効率的に割り当てることができる。
よって、本実施の形態によれば、複数のRAT及び複数のセルが混在する通信システムでも、無線リソースを効率良く割り当てることができる。これにより、ユーザ満足度(QoE)及びスループットを向上させることができる。
[バリエーション1]
上記では、端末100が、通信制御を行う場合(UE主導の通信制御)について説明した。これに対して、以下では、他の通信制御の形態について説明する。
(1)ネットワーク(基地局200)主導の通信制御
基地局200は、自局及び端末100の通信状態及び通信方針に基づいて、端末100に対して無線リソース等を設定する。なお、具体的な通信設定の制御方法については、上述した端末100での制御方法(UE主導の通信制御)と同様である。
以下では、一例として、端末100のセル選択処理について説明する。
基地局200は、自局の通信状態/通信方針、及び、他局(セル選択対象の端末100及び他の基地局)の通信状態/通信方針に基づいて、当該端末100の接続先セルを選択する。
例えば、基地局200は、図19を用いて説明したように、端末100の位置情報及び各セルの位置情報を用いて、端末100が通信エリアに属するセルのうち、スループットが高いセルを選択する。
図23は、基地局200が端末100に対してセル選択を行う場合の端末100及び基地局200の動作を示すシーケンス図である。なお、図23において図20と同一の動作には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図23において、ST201では、端末100は、端末100の位置及び無線リソース等を示すUE情報を基地局200へ報告する。基地局200は、UE情報に示される情報を、他局通信状態情報又は他局通信方針情報として管理する。
ST202では、基地局200は、管理している自局の位置情報及び管理している他局(各セル及び端末100)の位置情報に基づいて、端末100の接続先セルを選択し、選択したセルを端末100へ指示する。
これにより、基地局200は、管理している自局又は他局の通信状態情報及び通信方針情報を用いて、制御対象の端末100の通信設定を行うことにより、従来のように端末から報告された無線品質測定結果に基づいて通信設定を行う場合と比較して、測定時間を削減することができる。
つまり、基地局200は、通信設定(ここではセル選択)に要する時間を短縮することができる。よって、基地局200は、端末100の移動に伴い端末100の位置が頻繁かつ高速に変わる場合でも、当該端末100に対して適切なセルを選択することが可能となる。
このように、基地局200は、端末100の通信状態又は通信方針に応じて無線リソース等を設定することができるので、無線リソースを効率良く割り当てることが可能となる。これにより、ユーザ満足度(QoE)及びスループットを向上させることができる。
なお、ここでは、基地局200が端末100に対してセル選択を行う場合について説明した。一方、基地局200が既存の端末(無線品質を報告して、基地局からセル選択の指示を受ける端末。また、通信状態/通信方針を管理しない端末)に対してセル選択を行う際、基地局200は、無線品質報告の基準値にオフセットを加えた値を当該端末へ通知してもよい。
通常、既存の端末は、無線品質報告の基準値を超えるセルの無線品質を基地局へ報告する。これに対して、基地局200は、上記同様、自局又は他局の通信状態/通信方針に基づいて、当該端末の接続先セルを決定する。そして、基地局200は、決定した接続先セルの無線品質が報告されるように無線品質報告の基準値のオフセットを設定し、設定したオフセットを加えた基準値を端末へ通知する。
例えば、無線品質が−10dB以上の場合に該当のセルをハンドオーバ候補に追加し、無線品質が−18dB未満の場合に該当のセルをハンドオーバ候補から削除するという基準が設定されているとする。また、基地局200が接続先として決定したセル1の無線品質が−13dBであるとする。この場合、基地局200は、ハンドオーバ候補追加の基準値(−10dB)にオフセット(−5dB)を加える。これにより、端末は、新たな基準値−15dBを満たすセル1の無線品質を基地局200へ報告する。こうすることで、基地局200が接続先として決定したセル1は、ハンドオーバ候補として追加されることになる。
このようにして、既存の端末が使用する無線報告基準値を変更することにより、基地局200は、基地局200が決定したセルを選択することができる。こうすることで、既存の端末が報告する無線品質に基づいてセル選択を行う場合でも、基地局200は、自局及び他局の通信状態/通信方針に基づいて、適切なセルを選択することができる。
(2)端末協調制御
端末間通信を行う場合、端末100は、自局及び通信相手の端末の通信状態及び通信方針に基づいて、端末100又は通信相手の端末に対して無線リソース等を設定する。なお、具体的な通信設定の制御方法については、上述した端末100での制御方法(UE主導の通信制御)と同様である。
これにより、端末100は、管理している自局又は他局の通信状態情報及び通信方針情報を用いて、自局及び制御対象の通信相手の端末の通信設定を行うことにより、従来のように通信相手の端末から報告された無線品質測定結果に基づいて通信設定を行う場合と比較して、測定時間を削減することができる。つまり、端末100は、通信設定に要する時間を短縮することができる。
また、端末100は、端末間通信を行う際、通信相手の端末の通信状態又は通信方針に応じて無線リソース等を設定することができるので、無線リソースを効率良く割り当てることが可能となる。これにより、ユーザ満足度(QoE)及びスループットを向上させることができる。
(3)ネットワーク協調制御
ネットワーク協調制御を行う場合、基地局200は、自局及び通信相手の基地局の通信状態及び通信方針に基づいて、自局又は通信相手の基地局に対して無線リソース等を設定する。なお、具体的な通信設定の制御方法については、上述した端末100での制御方法(UE主導の通信制御)と同様である。
これにより、基地局200は、管理している自局又は他局の通信状態情報及び通信方針情報を用いて、自局及び制御対象の通信相手の基地局の通信設定を行うことにより、従来のように通信相手の基地局から報告された無線品質測定結果に基づいて通信設定を行う場合と比較して、測定時間を削減することができる。つまり、基地局200は、通信設定に要する時間を短縮することができる。
また、基地局200は、ネットワーク協調制御を行う際、通信相手の基地局の通信状態又は通信方針に応じて無線リソース等を設定することができるので、無線リソースを効率良く割り当てることが可能となる。これにより、ユーザ満足度(QoE)及びスループットを向上させることができる。
(通信制御を行う装置の切替)
上述した、UE主導の通信制御、ネットワーク主導の通信制御、端末協調制御、及び、ネットワーク協調制御は、例えば、端末100及び基地局200の通信状況に応じて切り替えられてもよい。具体的には、複数の端末100及び複数の基地局200の通信状況に応じて、複数の端末100及び複数の基地局200の何れかの装置が、当該装置が管理する通信状態及び通信方針に基づいて、端末100又は基地局200の通信設定を制御する。
UE主導の通信制御は、ネットワーク側において制御が困難である場合に行われてもよい。
例えば、UE主導の通信制御は、端末100がミリ波などを使用するセルサイズが比較的小さくなるセルにおいて移動する場合に行われてもよい。具体的には、端末100が所定値未満のセルサイズのセル(例えば、スモールセル、ピコセル)を形成する基地局200と接続される場合、端末100は、複数の基地局及び他の端末を含む他局、及び、当該端末100の各々の通信状態及び通信方針に基づいて、端末100の通信設定を制御する。これにより、端末100は、例えば、高速移動に応じて適切なセル及び無線リソースを選択できるので、ユーザ満足度(QoE)及びスループットを向上させることができる。
また、UE主導の通信制御は、ネットワーク側において基地局200が端末100の位置を特定できない環境において行われてもよい。ネットワーク側において基地局200が端末100の位置を特定できない環境とは、例えば、端末100がセルラシステムに接続されておらず、無線LANシステムに接続する場合などが挙げられる。この場合、端末100は、複数の基地局及び他の端末を含む他局、及び、当該端末100の各々の通信状態及び通信方針に基づいて、当該端末100の通信設定を制御する。
次に、ネットワーク主導の通信制御は、端末100がマイクロ波などを使用するセルサイズが比較的大きいセル(例えば、セルラシステム)において移動する場合に行われてもよい。具体的には、端末100が所定値以上のセルサイズのセル(例えばマクロセル)を形成する基地局200と接続される場合、基地局200は、複数の端末及び他の基地局を含む他局、及び、当該基地局200の各々の通信状態及び通信方針に基づいて、端末100の通信設定を制御する。これにより、基地局200は、例えば既存のセルラシステムにおいても端末100の通信状態及び通信方針に基づく通信制御を行うことができる。
次に、端末協調制御は、端末間通信が可能な状態、つまり、端末100と通信相手の端末との距離が十分に近い場合(例えば、所定値未満の場合)に行われてもよい。具体的には、端末100が通信相手である他の端末との間でデータの通信を直接行う端末間通信を実施する場合、端末100は、他の端末を含む他局及び当該端末100の各々の通信状態及び通信方針に基づいて、端末100及び他の端末の通信設定を制御する。
また、ネットワーク協調制御は、例えば、端末100と通信相手の端末とがそれぞれ異なるシステム(RAT)に接続されている場合に行われてもよい。具体的には、端末100が或る通信方式(第1の通信方式)に対応する基地局(第1の基地局)に接続され、端末100の通信相手である他の端末が他の通信方式(第2の通信方式)に対応する基地局(第2の基地局)に接続される場合、端末100が接続された第1の基地局は、第2の基地局を含む他局及び第1の基地局の各々の通信状態及び通信方針に基づいて、第1の基地局及び第2の基地局の通信設定を制御する。
又は、ネットワーク協調制御は、例えば、端末100の通信データのうち、音声データの通信を一方の基地局200(例えば、セルラシステムの基地局)が行い、映像データの通信を他方の基地局200(例えば、WLANシステムの基地局)が行う場合に実施されてもよい。
以上のように、端末100及び基地局200は、端末100の通信状況に応じて制御方法(制御を主導する装置)を切り替えることにより、当該通信状況に応じて無線リソースを効率良く割り当てることが可能となる。
[バリエーション2]
本バリエーションでは、上記実施の形態において端末100及び基地局200が管理していた自局及び他局の通信状態/通信方針を、基地局200の上位装置が管理する。上位装置としては、例えば、クラウドサーバなどが挙げられる。
すなわち、上位装置は、複数の端末100及び複数の基地局200の通信状態及び通信方針の設定値を一元的に管理する。そして、上位装置は、複数の端末100及び複数の基地局200の通信状況に応じて、複数の端末100及び複数の基地局200の何れかの装置に対して、管理している通信状態及び通信方針を送信する。つまり、端末100又は基地局200は、クラウドサーバから自局又は他局の通信状態/通信方針を取得し、上記同様、取得した通信状態/通信方針に基づいて端末100又は基地局200の通信制御を行えばよい。
また、端末100及び基地局200は、図2及び図10において、他局通信状態管理部101/210、他局通信方針管理部102/211、自局通信状態管理部103/212、自局通信方針管理部104/213が不要となる。これにより、端末100及び基地局200に搭載される機能が削減され、装置の低コスト化、小型化、省電力化を図ることができる。
また、上記実施の形態において端末100及び基地局200が行っていた通信制御を、基地局200の上位装置(例えば、クラウドサーバ)が行ってもよい。この場合、端末100又は基地局200は、クラウドサーバからの指示に従って通信設定を行えばよい。
また、端末100及び基地局200は、図2及び図10において、通信制御部105/214が不要となるので、端末100及び基地局200に搭載される機能が削減され、装置の低コスト化、小型化、省電力化を図ることができる。
なお、上述したクラウドサーバには、例えば、LTEなどの通信事業者が管理するセルラ系ネットワーク、公衆無線LAN又はそれ以外の無線LAN等の通信事業者が管理する非セルラ系ネットワーク等の様々なネットワークを利用する装置が接続可能とすればよい。
これにより、これらのネットワークに接続する装置は、クラウドサーバが管理する複数のネットワークから収集された情報を用いることで、ネットワーク間において無線リソースを効率良く割り当てることができる。また、複数のネットワークから収集された情報を利用できるので、通信状態、通信方針、又は通信設定の推定に利用できるデータ量が増えるので、推定精度を向上させることができる。
例えば、或る基地局の位置情報が不明である場合、クラウドサーバは、当該基地局と通信した複数の端末の通信履歴に基づいて、Triangulation方式、Proximity方式、Scene Analysis/Finger printing方式等によって当該基地局の位置情報を推定することができる。
なお、クラウドサーバは、位置情報などの推定を行う際には、推定に利用する情報のうち尤度がより高い情報を優先的に利用することにより、推定精度を向上させればよい。例えば、位置情報の推定時には、クラウドサーバは、GPS/IMES等の測位結果、又は、地図情報とマッチングされた測定結果(例えば、道路/線路上の移動)を優先的に利用してもよい。
以上、本開示の一態様に係る実施の形態について説明した。
なお、上記実施の形態では、本開示の一態様をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。