本発明の実施形態に係るX線診断装置及び医用画像処理装置について添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置及び医用画像処理装置の構成図である。
X線撮影装置1は、ネットワーク2を介して医用画像処理装置3と接続される。そして、X線撮影装置1において撮影されたX線医用画像データを、ネットワーク2を介して医用画像処理装置3に転送し、医用画像処理装置3においてX線医用画像データに対する所望の画像処理を施すことができるように構成されている。
X線撮影装置1は、撮影系4、制御系5及びデータ処理系6を備えている。撮影系4は、X線照射部7、X線検出器8、検出器駆動機構9、寝台10、寝台駆動機構11及び絞り12を有する。制御系5は、高電圧発生装置13、絞り制御装置14及び撮影位置制御装置15を有する。データ処理系6は、第1の入力装置16、第1の表示装置17、第1の表示画面回転部18、画像生成部19、第1の角度取得部20、第1の画像回転部21、制御情報出力部22、第1のマーク表示部23、第1の画像処理部24、第1の画像メモリ25及び第1の傾斜角度記憶部26を有する。第1の角度取得部20は、第1の自動検出部27及び第1の手動指示部28を有する。
一方、医用画像処理装置3は、第2の入力装置29、第2の表示装置30、第2の表示画面回転部31、第2の角度取得部32、第2の画像回転部33、第2のマーク表示部34、第2の画像処理部35、第2の画像メモリ36及び第2の傾斜角度記憶部37を有する。第2の角度取得部32は、第2の自動検出部38及び第2の手動指示部39を有する。
データ処理系6の画像生成部19、第1の角度取得部20、第1の画像回転部21、第1のマーク表示部23及び第1の画像処理部24等のデータ処理を行うための構成要素は、コンピュータの演算装置にプログラムを読み込ませることによって構築することができる。医用画像処理装置3についても、第2の角度取得部32、第2の画像回転部33、第2のマーク表示部34及び第2の画像処理部35等の画像処理を行うための構成要素を、コンピュータの演算装置にプログラムを読み込ませることによって構築することができる。医用画像処理装置3における画像処理はデータ処理量が大きいため、医用画像処理装置3はワークステーションによって構成される場合が多い。但し、データ処理系6及び医用画像処理装置3を構成するために回路を用いてもよい。
X線照射部7は、X線管を備え、寝台10にセットされた被検体Oを挟んでX線検出器8と対向配置される。X線照射部7及びX線検出器8は、検出器駆動機構9の駆動によって相対位置を維持しながら被検体Oに対する角度及び相対位置を変えることができる。具体的には、回転機能を備えたC型アームの両端にX線照射部7及びX線検出器8が固定される。
そして、X線照射部7は、X線管により被検体Oに向けて所定の角度からX線を照射し、被検体Oを透過したX線をX線検出器8で検出できるように構成される。また、X線管の出力先には、照射されるX線ビームの直径を調整するための絞り12が設けられる。
一方、寝台10には、寝台10の天板の傾斜及び位置を変える寝台駆動機構11が備えられる。このため、X線照射部7及びX線検出器8の被検体Oに対する角度を調整するのみならず、天板の角度を調整することによっても、被検体Oに対するX線の照射方向を変えることができる。また、寝台10にセットされた被検体Oの近傍には、被検体Oに造影剤を注入するための造影剤注入装置40が設けられる。
制御系5の高電圧発生装置13は、X線照射部7のX線管に高電圧を印加することによって、所望のエネルギを有するX線を被検体Oに向けて照射させる機能を有する。
撮影位置制御装置15は、検出器駆動機構9及び寝台駆動機構11に制御信号を出力して制御する装置である。すなわち、検出器駆動機構9の駆動によって調整されるX線照射部7及びX線検出器8の回転角度及び位置は、撮影位置制御装置15から検出器駆動機構9に出力される制御信号によって制御される。また、寝台駆動機構11の駆動によって調整される寝台10の天板の傾斜及び位置は、撮影位置制御装置15から寝台駆動機構11に出力される制御信号によって制御される。
絞り制御装置14は、絞り12に制御信号を出力して制御する装置である。すなわち、絞り12の開度は絞り制御装置14から絞り12に出力される制御信号によって制御される。
データ処理系6の第1の表示画面回転部18は、X線撮影装置1に備えられる第1の表示装置17の画面の角度を、画面と平行な面上において傾斜させる機能を有する。尚、第1の表示装置17に、画面の表示角度を傾斜させる機能が備えられている場合には、表示画面の傾斜機能を利用して画面を傾斜させることができる。逆に、第1の表示装置17に、画面の表示角度を傾斜させる機能が備えられていない場合には、第1の表示装置17自体を機械的に傾斜させるようにしてもよい。前者の場合には、第1の表示画面回転部18は、第1の表示装置17の表示パラメータを制御する制御装置となり、後者の場合には、第1の表示画面回転部18は、傾斜機構を備えた第1の表示装置17の設置台となる。
画像生成部19は、X線検出器8からX線検出データを取り込んで、データ処理を行うことによりX線画像データを生成する機能と、生成したX線画像データを第1の表示装置17に表示させる機能を有する。特に、画像生成部19では、大動脈弁の置換に必要又は有用なX線画像データを生成することができる。
具体例として、大動脈弁の留置位置を含むX線透視画像データ、DSA (digital subtraction angiography)画像データ、ロードマップ画像データ、血管造影画像データ及びデバイス画像データが挙げられる。DSA画像データは、造影剤注入前後におけるX線画像データの差分画像データである。ロードマップ画像データは、カテーテルを目的位置まで誘導するために血管の造影画像データと透視画像データとの合成画像データとして生成される血管画像データである。また、デバイス画像データは、バルーンやワイヤ等のデバイスが描出されたバルーン像データやワイヤ像データ等のX線画像データである。
図2は、図1に示す画像生成部19において大動脈弁の置換のための参照用に生成される大動脈が描出された心臓のX線画像データの一例を示す図である。
図2に示すように、心臓の左室(LV: left ventricle)から大動脈への血液の流出路には、大動脈弁が存在する。大動脈弁の置換術では、点線で示す本来の大動脈弁の位置に人工弁が留置される。そこで、図2に示すようなX線画像を事前に参照して人工弁の留置が行われる。しかしながら、心臓の左室付近における大動脈及び大動脈弁は、被検体Oの体軸方向に対して傾斜しているため、斜め方向に描出される。
第1の角度取得部20は、被検体Oの大動脈及び大動脈の位置を確認するためのデバイスの少なくとも一方が描出されたX線画像データを参照画像データとして、参照画像上における被検体Oの大動脈弁の近傍における大動脈の傾斜角度を取得する機能と、第1の入力装置16から入力された指示情報に従って大動脈の傾斜角度を調整する機能とを有する。第1の自動検出部27は、参照データに対する画像処理によって大動脈の角度を自動的に検出する機能を有する。第1の手動指示部28は、第1の表示装置17に参照画像として表示されるX線画像に大動脈の傾斜角度を指示するための図形を重畳表示させ、第1の入力装置16から入力された図形の回転角度に基づいて大動脈の傾斜角度を取得する機能を有する。
図3は、図1に示す第1の角度取得部20による大動脈の傾斜角度の自動検出対象となるバルーン像の一例を示す図である。
図3に示すように、参照画像の1つであるバルーン像では、カテーテルの先端に取り付けて大動脈に挿入されたバルーンが描出される。そこで、第1の自動検出部27は、バルーン像が収集されている場合には、バルーン像データに対するデータ処理によって大動脈の傾斜角度を自動的に検出することができる。
具体的例として、差分処理、閾値処理、二値化処理及びエッジ検出処理等の公知の輪郭抽出処理によってバルーンの輪郭を抽出し、抽出した輪郭の長手方向の傾斜角度を幾何学的に計算することによってバルーンの長手方向における傾斜角度を求めることができる。更に、バルーンは大動脈に挿入されていることから、バルーンの傾斜角度を大動脈の傾斜角度とみなすことができる。
同様に、任意の参照画像データから大動脈に対する傾斜角度が既知の物体の輪郭を抽出し、抽出した物体の傾斜角度を求めることによって、大動脈の傾斜角度を自動検出することが可能である。例えば、物体が描出されたX線画像データと物体が描出されていないX線画像データとの差分処理によって背景成分を除去すれば、物体部分の領域を抽出することができる。更に、抽出された領域における主成分分析によって物体が水平方向又は鉛直方向に対して概ね何度傾いているのかを計算することができる。或いは、物体の既知の形状情報とのフィッティング等のその他のデータ処理によっても物体の傾斜角度を求めることができる。
図4は、図1に示す第1の角度取得部20により、大動脈が描出されたX線画像に重畳表示される傾斜角度を指示するための図形の一例を示す図である。
図4に示すような大動脈が描出されたX線画像に、大動脈の傾斜角度を指示するための図形を重畳表示させることができる。図4には、傾斜する平行な2つの線分が傾斜角度を指示するための図形として表示されているが、1つの線分や矩形枠等の所望の形状の図形を傾斜角度の指示用に表示させることができる。また、図形のデフォルトの向きを鉛直方向又は水平方向としてもよい。
そして、ユーザはマウス等の第1の入力装置16の操作によって図形の傾斜角度が大動脈の傾斜角度と一致するように図形を回転させることができる。そうすると、第1の手動指示部28は、第1の入力装置16から入力された図形の回転角度に基づいて大動脈の傾斜角度を取得することができる。
大動脈の傾斜角度を特定するために参照されるX線画像としては、2次元(2D: two dimensional)血管造影画像、2Dバルーン像、2Dワイヤ像及び3次元透視画像の2D投影画像等の画像が挙げられる。
第1の角度取得部20において取得される大動脈の傾斜角度は、人工弁の留置位置となる大動脈弁の近傍における大動脈の走行方向が水平又は垂直となるように角度を回転させてX線画像を表示させるための基礎情報として用いられる。表示されるX線画像を回転させる方法としては、X線画像自体を画像処理によって回転させる方法の他、X線検出器8を回転させる方法、被検体Oを回転させる方法及びX線画像の表示画面を回転させる方法が挙げられる。
また、第1の角度取得部20において取得された大動脈の傾斜角度は、第1の傾斜角度記憶部26に保存することができる。このため、所望のタイミングで大動脈の傾斜角度を第1の傾斜角度記憶部26から読み出して、X線画像の回転表示のために用いることができる。
第1の画像回転部21は、第1の角度取得部20において取得された大動脈の傾斜角度に基づいて大動脈のX線撮影データに対して画像処理を施すことによって第1の表示装置17に表示されているX線画像を回転させる機能を有する。
すなわち、第1の画像回転部21は、第1の入力装置16からX線画像の画像処理による回転表示の指示情報が入力された場合に、画像生成部19から第1の表示装置17に出力されているX線画像データを取得する。そして、第1の画像回転部21は、大動脈の傾斜角度と水平方向又は鉛直方向との間の角度だけ各画素位置を回転させる回転処理を実行することによって、大動脈の走行方向が水平又は垂直となったX線画像データを生成する。次に、第1の画像回転部21は、生成したX線画像データを第1の表示装置17に出力する。これにより、第1の表示装置17に表示されているX線画像が回転したX線画像に更新される。
制御情報出力部22は、第1の入力装置16からの指示情報に従って、X線画像データを収集するために必要な制御情報を撮影位置制御装置15及び絞り制御装置14に出力して制御する機能を有する。特に、制御情報出力部22は、第1の角度取得部20において取得された大動脈の傾斜角度に基づいて大動脈が走行方向を水平方向又は垂直方向に向けたX線画像が第1の表示装置17に表示されるように撮影位置制御装置15又は第1の表示画面回転部18を制御する機能と、X線画像を回転表示させた場合に不要な領域が表示されないように大動脈の傾斜角度に基づいて絞り制御装置14を制御する機能とを備えている。制御情報出力部22の制御対象については、第1の入力装置16の操作によって指示することができる。
すなわち、第1の入力装置16からX線検出器8及び被検体Oの少なくとも一方を傾斜させる指示が制御情報出力部22に入力された場合には、制御情報出力部22は、第1の角度取得部20において取得された大動脈の傾斜角度に基づいてX線検出器8及び被検体Oの少なくとも一方を傾斜させることによって、大動脈が水平又は垂直となるように角度を回転させたX線画像を第1の表示装置17に表示させる。
具体的には、制御情報出力部22は、大動脈の傾斜角度と水平方向又は鉛直方向との間の角度だけX線検出器8又は寝台10の天板を回転させるように撮影位置制御装置15に制御情報を出力して制御する。この場合、撮影位置制御装置15による制御下において、X線検出器8及びX線照射部7が大動脈の傾斜角度に対応する角度だけ傾斜するか或いは寝台10の天板が大動脈の傾斜角度に対応する角度だけ傾斜することとなる。
一方、第1の入力装置16から表示画面を傾斜させる指示が制御情報出力部22に入力された場合には、制御情報出力部22は、第1の角度取得部20において取得された大動脈の傾斜角度に基づいてX線画像を表示させるための表示画面を傾斜させることによって、大動脈が水平又は垂直となるように角度を回転させたX線画像を第1の表示装置17に表示させる。
具体的には、制御情報出力部22は、大動脈の傾斜角度と水平方向又は鉛直方向との間の角度だけ第1の表示装置17の表示画面を回転させるように第1の表示画面回転部18に制御情報を出力して制御する。この場合、第1の表示画面回転部18による制御下において第1の表示装置17の表示画面又は第1の表示装置17自体が大動脈の傾斜角度に対応する角度だけ傾斜することとなる。
尚、表示されるX線画像をX線検出器8、被検体O又は第1の表示装置17自体を傾斜させることによって回転させる場合には、表示画面の四隅に画像が表示されない部分が現れないため表示画面を有効に利用することができる。
一方、表示されるX線画像を画像処理又は第1の表示装置17の表示画面の傾斜によって回転させる場合には、表示画面の四隅に画像が表示されない部分が現れる。従って、画像が表示されない部分が現れないように、X線画像の生成領域となる関心領域(ROI: region of interest)を縮小することが好適である。
そこで、制御情報出力部22は、表示画面に画像が表示されない部分が現れないようにROIを再設定し、再設定したROIに従って絞り制御装置14を制御するように構成される。
図5は、大動脈が鉛直方向となるように回転表示されたX線画像及び再設定されたROIの一例を示す図である。
図5に示すように、表示されるX線画像を画像処理又は第1の表示装置17の表示画面の傾斜によって回転させる場合には、表示画面の四隅に画像が表示されない部分が現れる。そこで、図5の点線枠で示すように不要な領域が表示されないようなROIを再設定することができる。
そして、制御情報出力部22による絞り制御装置14の制御によってROI内についてのみX線検出データを収集するようにすることができる。すなわち、回転表示されるX線画像に絞り12を連動させることによって、ROIを適切に更新することができる。これにより、被検体Oの不要な被曝を低減させることができる。この場合、再設定されたROI内のX線画像データが画像生成部19において生成され、ROI内のX線画像が第1の表示装置17に拡大表示されることとなる。
第1のマーク表示部23は、第1の入力装置16からの指示情報に従って第1の表示装置17に回転表示されるX線画像上の所望の位置に点、線、グリッド、十字記号等のマークを重畳表示させる機能を有する。
図6は、大動脈が鉛直方向となるように回転表示されたX線画像上に水平方向及び鉛直方向を視認するためのマークを表示させた例を示す図である。
図6に示すように回転表示されるX線画像上に点や十字記号等の所望のマークを所望の位置に表示させることができる。例えば、図6に示すように所定の間隔の格子点上に配置された点群を表示させることによって、ユーザは水平方向及び鉛直方向に加え、距離を目視により確認することができる。また、画面中央に十字記号等のマークを表示させれば、マークを基準として人工弁の位置決めを行うことができる。
例えば、十字記号を常に第1の表示装置17の画面中央に表示させれば、十字記号上に大動脈弁の中央部分又は左右の端部が配置するように回転表示後のX線画像の表示位置を移動させる指示を第1の入力装置16の操作によって行うことが可能となる。
大動脈弁の表示位置の調整のための基準として用いられるマークは、図6に示すような十字記号の他、大動脈弁の形状に合わせたL字型、逆L字型又は矩形等の線で示されるマークとすることができる。すなわち、回転後のX線画像が表示される第1の表示装置17の画面の固定位置に、被検体の大動脈弁の表示位置を調整するための大動脈弁の形状に合わせたマークを表示させることができる。
例えば、L字型のマークを表示させれば、大動脈弁の左端部をL字型のマークに合わせるためのX線画像の平行移動指示を行うことができる。
更に、第1のマーク表示部23は、第1の表示装置17の画面の固定位置に表示させるマークの形状及びサイズを、被検体Oの大動脈又はデバイスが描出された参照画像データに対する画像処理によって自動調整できるように構成される。例えば、参照画像データとして生成されたバルーン像データに対するデータ処理によってバルーンの形状を抽出し、抽出されたパルーンの形状に基づいてマークの形状を自動調整することができる。より具体的な例として、固定位置に表示させる矩形枠のマークの幅をバルーンの輪郭の幅としたり、平行線で示されるマークの線間の距離をバルーンの輪郭の幅とすることができる。
同様に、図6に示す点群やグリッド線のような目視により距離を把握するためのマークについても、ピッチをバルーンの輪郭又は画面の固定位置に表示させる自動調整後のマークの形状に合わせて自動調整することができる。
更に、第1の入力装置16から第1のマーク表示部23に指示情報を入力することによって、所望のマークの追加、移動及び削除を行うことができる。
第1の画像処理部24は、第1の入力装置16からの指示情報に従って、画像生成部19又は第1の画像回転部21において生成されたX線画像データに平行移動処理、回転移動処理、差分処理及び投影処理等の必要な画像処理を施す機能と、画像処理後のX線画像データを第1の表示装置17に表示させる機能とを有する。例えば、図5に示すようなROIが再設定された場合に、絞り12の調整ではなく、画像処理によってROI内のX線画像を第1の表示装置17に表示させるようにしてもよい。
また、第1のマーク表示部23により第1の表示装置17の画面に表示されるマークを参照して第1の入力装置16から第1の画像処理部24に入力される移動指示情報に従って、X線画像を移動させることができる。すなわち、回転後のX線画像に水平又は垂直に描出された大動脈弁の位置を、第1の入力装置16の操作によって、固定表示されるマークの位置に合わせることができる。この場合、X線画像の回転角度の調整がなければ、第1の入力装置16から入力される平行移動量に基づいて、第1の画像処理部24がX線画像データを平行移動処理することとなる。
一方、第1の入力装置16の操作によらず、第1の画像処理部24が被検体Oの大動脈又はデバイスの少なくとも一方が描出された参照画像データに対するデータ処理によってX線画像を自動的に移動させるように構成してもよい。例えば、バルーン像データに対するデータ処理によって抽出されるパルーンの位置と第1のマーク表示部23により表示されるマークの固定位置との位置関係に基づいてX線画像を自動的に移動させることができる。
すなわち、バルーンの輪郭を表す枠線等のマークが、画面の固定位置に表示されるマークと一致するように、或いはマーク間の中心位置が一致するように、X線画像データを移動させることができる。尚、バルーンの輪郭を表す枠線等のマークは、第1の画像処理部24又は第1の角度取得部20が画像処理の結果に基づいて第1の表示装置17に表示させることができる。
バルーン像データに対するデータ処理結果に基づいてX線画像が回転表示されている場合又は回転表示のための制御情報が得られている場合には、第1の画像処理部24によってX線画像データが平行移動処理されることとなる。この場合、第1の画像回転部21における回転処理と、第1の画像処理部24における平行移動処理とをX線画像データに対する単一の移動処理としてもよい。換言すれば、バルーン像データから抽出されたバルーンの輪郭と、画面の固定位置に表示されるマークが一致するように、第1の画像回転部21及び第1の画像処理部24により、X線画像データの回転表示及び平行移動表示を自動的に行うことができる。
また、画面の固定位置に表示されるマークの位置情報に基づいてX線画像データを平行移動させた場合には、第1の画像処理部24が平行移動量を記憶し、記憶した平行移動量に基づいて他のX線画像データも自動的に平行移動させることができる。すなわち、X線画像の移動距離に基づいて、X線画像の後に回転表示される他のX線画像を自動的に移動させることができる。
図7は、画面に固定表示されるマークを利用してX線画像を移動させる方法を説明する図である。
図7(A)に示すように参照画像データとしてバルーン像データが収集されている場合には、上述したように第1の角度取得部20によるバルーン像データに対するデータ処理によってバルーンの輪郭とともにバルーンの長手方向の傾斜角度として大動脈の傾斜角度を自動的に検出することができる。
次に、第1の画像回転部21による画像処理、X線検出器8の回転、被検体Oの回転、第1の表示装置17の回転又は第1の表示装置17の画面の回転表示によって、大動脈の傾斜角度に基づくバルーン像の回転表示を行うことができる。この結果、図7(B)に示すような大動脈の走行方向が鉛直方向又は水平方向となったバルーン像を表示させることができる。
更に、図7(B)に示すように、第1のマーク表示部23により、大動脈弁の表示位置の調整のためのマークを画面中央に表示に表示させることができる。加えて、目視による距離の把握用の点群等のマークを表示させることができる。図7(B)には、大動脈弁の形状に合わせた3本の平行な線分を要素とし、3本の線分の各一端を垂直な線分で互いに連結した表示位置調整用のマークを距離の把握用の点群とともに表示させた例を示している。
このとき、第1のマーク表示部23により表示される表示位置調整用のマーク及び距離確認用のマークは、それぞれバルーン像の幅に応じたマークとすることができる。図7(B)に示す例では、表示位置調整用の両端の線分間の距離がバルーンの幅に設定されている。また、距離確認用の点群のピッチは、バルーン像及び表示位置調整用の両端の線分間の距離の1/2に設定されている。従って、バルーン像データの平行移動により、バルーンの輪郭を、表示位置調整用のマークに合わせることが可能となる。
そこで、第1の画像処理部24によるバルーン像データに対する平行移動処理によって、バルーンの輪郭を表す枠線が、表示位置調整用のマークの両端の線分と重なるようにバルーン像を平行移動させることができる。この結果、図7(C)に示すように、バルーンが画面中央に固定表示されているマークに位置決めされたバルーン像が第1の表示装置17の画面に表示される。
これにより、バルーンの中心線の位置を、画面中央に表示された中央の線分の位置として目視により容易に確認することが可能となる。加えて、距離の把握用の点群を利用して、目視によりミリ単位での距離の計測が可能となる。具体的には、大動脈の直径、大動脈弁の長さ、冠状動脈と大動脈弁との間における距離等を目視により計測することが可能となる。
従来のように斜め方向に大動脈が表示される場合には、仮想定規を斜めに画面に表示させたり、画像上の2点を指定して距離を計測するといった作業が必要となる。これに対して、図7(C)に示すように水平方向又は鉛直方向に表示された距離測定用のマークを利用すれば、第1の入力装置16の操作によらず、目視により各種距離の把握が可能となる。
このようにしてバルーン像データを平行移動させた場合、移動距離を第1の画像処理部24が記憶し、記憶した移動距離を後に表示させるべき他のX線画像の平行移動処理に利用することができる。
人工弁の留置の際には、デバイスが描出されたX線透視画像がリアルタイム表示される。図7(D)はX線透視画像のイメージを示している。但し、X線透視画像の収集前には、一般的に造影剤が投与されない。従って、図7(D)には、血管が点線で示されているが、実際のX線透視画像では血管が描出されない。すなわち、ユーザは、X線透視画像においてデバイスを目視することはできるが、血管を目視することができない。
但し、第1の角度取得部20において大動脈の傾斜角度が検出されているため、第1の画像回転部21による画像処理、X線検出器8の回転、被検体Oの回転、第1の表示装置17の回転又は第1の表示装置17の画面の回転表示によって、図7(E)に示すようにX線透視画像を回転表示させることができる。
次に、第1の画像処理部24がバルーン像の平行移動量だけX線透視画像を平行移動させることによって、図7(F)に示すように画面の中央が大動脈弁の位置となったX線透視画像を表示させることができる。更に、第1のマーク表示部23は、平行移動後のX線透視画像が表示された画面の固定位置にバルーン像の幅に応じた表示位置調整用のマーク及び距離確認用の点群を表示させることができる。
そうすると、表示位置調整用のマークは、X線透視画像において目視することができない大動脈弁の位置を示すこととなる。また、距離確認用のマークは、目視できない部位の把握や距離の把握に利用することができる。
従って、ユーザは、表示位置調整用のマークを、人工弁等のデバイスの位置決め用のマークとして利用することができる。すなわち、マークに合わせて人工弁等のデバイスを移動させることによって、人工弁及びデバイスの正確な位置決めを行うことができる。つまり、従来は、X線透視画像の表示前に表示された参照画像上における大動脈弁の位置をユーザが記憶し、記憶に従ってX線透視画像上において大雑把なデバイスの位置決めを行っていたが、マークを利用して正確なデバイスの位置決めを行うことが可能となる。
尚、図7には、バルーン像を利用した画像処理によって自動的にバルーン像及びX線透視画像をマークに平行移動する例を示したが、バルーン像以外の参照画像を参照して参照画像及びX線透視画像を平行移動するようにしてもよい。この場合、参照画像をマークに合わせて移動させる移動量を第1の入力装置16から第1の画像処理部24に入力するようにしてもよい。
換言すれば、第1の入力装置16の操作によってマークを参照して参照画像を手動で移動させ、参照画像の移動量を第1の画像処理部24が取得して記憶するようにしてもよい。この場合には、第1の画像処理部24が第1の入力装置16から入力された情報に従って取得した参照画像の移動量に基づいて、他のX線画像データを自動的に平行移動させることとなる。つまり、参照画像上に領域を設定するのではなく、位置決め用のマークを参照した参照画像自体の移動によって、他のX線画像に対する移動処理条件を設定することができる。
また、上述の説明では、バルーン像等の参照画像及びX線透視画像の平行移動表示を第1の画像処理部24による画像処理によって行う例について説明したが、X線検出器8又は寝台10の移動によってX線画像の平行移動表示を行うこともできる。この場合には、
は、制御情報出力部22が、参照画像の移動量を取得して記憶し、記憶した参照画像の移動量に基づいて撮影位置制御装置15に制御情報を出力する。
すなわち、参照画像の移動量を自動的に算出する場合には、制御情報出力部22が、第1の角度取得部20から取得したバルーンの輪郭等の画像処理の結果情報と第1のマーク表示部23から取得した大動脈弁の表示位置の調整のためのマークの位置情報とに基づいて参照画像の移動量を算出することができる。一方、マークを利用して参照画像の移動量を手動で決定する場合には、制御情報出力部22が第1の入力装置16から参照画像の移動量を取得することができる。
そして、参照画像の移動量だけ移動した位置でX線撮影が実行されるように、制御情報出力部22が撮影位置制御装置15に制御情報を出力することができる。つまり、参照画像をX線撮影の位置決め用の画像として用い、かつ位置決め用の画像上への撮影領域の設定ではなく、位置決め用のマークを参照した位置決め用の画像自体の移動によって、他のX線画像の撮影領域を設定することができる。
第1の画像メモリ25は、画像生成部19、第1の画像回転部21及び第1の画像処理部24等によって生成されたX線画像データを保存するための記憶装置である。
一方、医用画像処理装置3が有する第2の表示画面回転部31、第2の角度取得部32、第2の画像回転部33、第2のマーク表示部34、第2の画像処理部35、第2の画像メモリ36及び第2の傾斜角度記憶部37は、それぞれX線撮影装置1に備えられる第1の表示画面回転部18、第1の角度取得部20、第1の画像回転部21、第1のマーク表示部23、第1の画像処理部24、第1の画像メモリ25及び第1の傾斜角度記憶部26と同等な機能を有する。医用画像処理装置3の第2の角度取得部32に備えられる第2の自動検出部38及び第2の手動指示部39についても、それぞれX線撮影装置1の第1の角度取得部20に備えられる第1の自動検出部27及び第1の手動指示部28と同等な機能を有する。従って、医用画像処理装置3においてもX線撮影装置1のデータ処理系6と同様なX線画像データを生成して第2の表示装置30に表示させることができる。
そして、X線撮影装置1に備えられる複数の構成要素が協働することによって、X線撮影装置1には、参照画像を参照して取得された被検体の大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が水平又は垂直となるように角度を回転させてX線画像を表示させる撮影手段としての機能が備えられる。同様に、医用画像処理装置3に備えられる複数の構成要素が協働することによって、医用画像処理装置3には、参照画像を参照して取得された被検体の大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が水平又は垂直となるように角度を回転させてX線画像を表示させる表示制御手段としての機能が備えられる。但し、同様な機能がX線撮影装置1及び医用画像処理装置3に備えられれば、図1に例示された構成要素以外の構成要素によってX線撮影装置1及び医用画像処理装置3を構成することができる。
次にX線撮影装置1及び医用画像処理装置3の動作および作用について説明する。
図8は、図1に示すX線撮影装置1により被検体Oの大動脈弁の置換のためのX線画像を表示させる際の流れを示すフローチャートである。
まずステップS1において、X線撮影装置1により参照用のX線画像が撮影される。すなわち、寝台10に被検体Oがセットされ、撮影位置制御装置15からの制御情報に従って検出器駆動機構9及び寝台駆動機構11が駆動する。そして、寝台10、X線照射部7及びX線検出器8が所定の回転角度及び空間位置に位置決めされる。また、絞り制御装置14の制御によって絞り12の開度が調整される。
そして、高電圧発生装置13からX線照射部7のX線管に高電圧が印加されると、X線管から被検体OにX線が曝射される。被検体Oを透過したX線は、X線検出器8によって検出される。
X線検出器8において取得されたX線検出データは、データ処理系6に出力される。そうすると、画像生成部19は、X線検出データに対するデータ処理によってX線画像データを生成する。生成されたX線画像データは、第1の表示装置17に表示される。これによりユーザは、X線画像を参照することができる。
また、被検体Oの血管内には、カテーテルが挿入される。このため、カテーテルが描出されたX線透視画像を第1の表示装置17にリアルタイムに表示させることができる。更に、必要に応じてバルーンやワイヤ等のデバイスがカテーテルを通じて心臓から分岐する大動脈に挿入される。これによりバルーン像やワイヤ像が第1の表示装置17にリアルタイムに表示される。
また、通常は、X線血管造影画像が撮影される。この場合には、撮影前に造影剤注入装置40から被検体Oに造影剤が注入される。但し、造影画像が撮影されない場合もある。
そして、このように収集されたX線画像データのうち、大動脈の傾斜角度の取得のために参照されるX線画像データは、第1の画像メモリ25に保存される。
次に、ステップS2において、第1の角度取得部20は、被検体Oの大動脈又はデバイスが描出されたX線画像データを参照画像データとして、参照画像上における被検体Oの大動脈の傾斜角度を取得する。例えば、バルーン像データ等の大動脈の傾斜角度を示すランドマークが描出されているX線画像データが参照画像データであれば、第1の自動検出部27が参照画像データに対する画像処理によって大動脈の角度を自動的に検出する。
一方、大動脈の傾斜角度を示すランドマークが描出されていないX線画像データが参照画像データであれば、第1の手動指示部28が、X線造影画像やX線透視画像等の参照画像に大動脈の傾斜角度を指示するための図形を重ね合わせて第1の表示装置17に表示させる。そして、ユーザが第1の入力装置16を操作して、大動脈の傾斜角度を指示するための図形が大動脈の向きと一致するように図形を回転させると、第1の入力装置16から第1の手動指示部28に図形の回転角度が入力される。これにより、第1の手動指示部28は、図形の回転角度に基づいて大動脈の傾斜角度を取得することができる。
また、必要に応じて、第1の自動検出部27は、自動検出された大動脈の傾斜角度を示す図形を参照画像上に表示させる。そして、ユーザは、第1の入力装置16から図形の回転情報を第1の手動指示部28に入力することによって、第1の自動検出部27により自動検出された大動脈の傾斜角度を補正することができる。
このようにして最終的に確定された大動脈の傾斜角度は、第1の傾斜角度記憶部26に保存される。このため、必要な時期に大動脈の傾斜角度を確認することができる。また、大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が水平方向又は鉛直方向となったX線画像が第1の表示装置17に表示されるように表示制御を行うことが可能となる。
次に、ステップS3において、第1の入力装置16の操作によって表示制御の方法が指定される。表示制御の方法としては、画像処理による方法、X線検出器8又は被検体Oを回転させる方法及び第1の表示装置17の表示画面を回転させる方法が選択可能である。すなわち、第1の入力装置16の操作によってデータ処理系6に上述の3つの方法から1つを選択する選択情報が入力される。
次に、ステップS4において、表示制御の方法がどの方法に指定されたのかがデータ処理系6において判定される。例えば、画像処理が表示制御の方法として選択されたか否かが判定される。尚、データ処理系6が判定処理を実際には行わず、第1の入力装置16から入力される情報に対してデータ処理系6の各構成要素が単に応答するようにしてもよい。
そして、画像処理が表示制御の方法として選択されていないと判定された場合には、ステップS5において、第1の入力装置16の操作によって指定された対象が回転される。
すなわち、第1の表示装置17の表示画面が回転対象として指定された場合には制御情報出力部22が、第1の表示装置17の画面に表示されるX線画像において大動脈の走行方向の角度が水平方向又は鉛直方向となるように、大動脈の傾斜角度に基づいて第1の表示画面回転部18を制御する。このため、第1の表示画面回転部18は、第1の表示装置17の画面に表示される大動脈の傾斜角度が水平方向又は鉛直方向となるように第1の表示装置17の画面の角度を傾斜させる。
一方、X線検出器8又は被検体Oが回転対象として指定された場合には、制御情報出力部22が、第1の表示装置17に表示されるX線画像において大動脈の走行方向の角度が水平方向又は鉛直方向となるように、大動脈の傾斜角度に基づいて撮影位置制御装置15を制御する。このため、撮影位置制御装置15は、検出器駆動機構9又は寝台駆動機構11を駆動させ、第1の表示装置17の画面に表示されるX線画像における大動脈の傾斜角度が水平方向又は鉛直方向となるようにX線照射部7及びX線検出器8の回転角度又は寝台10の天板の傾斜角度を調整する。
続いて、ステップS6において、X線照射部7及びX線検出器8の回転角度又は寝台10の天板の傾斜角度が調整された状態でX線画像がステップS1と同様な流れで収集される。また、ユーザは、カテーテルを通じて人工弁を大動脈弁の付近まで進めることができる。
次に、ステップS7において、画像生成部19は、収集したX線画像を第1の表示装置17にリアルタイムに表示させる。或いは、第1の画像処理部24は、画像生成部19から取得したX線画像データに差分処理や投影処理等の必要な画像処理を施して表示装置17にリアルタイムに表示させる。
このとき、X線照射部7及びX線検出器8の回転角度、寝台10の天板の傾斜角度又は第1の表示装置17の画面の傾斜角度が、X線画像における大動脈の走行方向が傾斜しないように調整されているため、大動脈の走行方向が水平方向又は鉛直方向となったX線画像が第1の表示装置17に表示される。
次に、ステップS8において、第1のマーク表示部23は、第1の表示装置17に回転表示されたX線画像上の所望の位置に図6に示すような点、線、グリッド、十字記号等のマークを重畳表示させる。これにより、ユーザは、水平方向及び鉛直方向並びに距離を確認しつつ、人工弁の角度調整を含む位置決めを行うことができる。
次に、ステップS9において、ユーザは、必要に応じて第1の入力装置16の操作によって、第1の表示装置17の画面に表示されているX線画像を平行移動又は回転移動させることができる。すなわち、第1の入力装置16からX線画像の回転指示又は平行移動指示が第1の画像処理部24に入力されると、第1の画像処理部24は画像生成部19から取得したX線画像データに回転処理又は平行移動処理を施して表示装置17にリアルタイムに表示させる。
人工弁の位置決めには、角度の調整に加え、目標位置への移動が必要である。そこで、X線画像に重畳表示されている十字記号等のマークが大動脈弁等の目標位置又は目標位置に応じた参照位置となるようにX線画像全体を平行移動させることができる。例えば、第1の入力装置16の画面中央に表示される十字マークが大動脈の左下に位置するように、X線画像全体を平行移動させることができる。
或いは、図7の(B)及び(C)に示すようにバルーン像データから検出されたバルーンの位置と、第1のマーク表示部23によって第1の入力装置16の画面中央等の固定位置に表示されるマークとが合わさるように自動的にX線画像全体を平行移動させることもできる。尚、X線画像全体の移動は、第1の画像処理部24による画像処理のみならず、制御情報出力部22から撮影位置制御装置15を通じたX線検出器8又は寝台10の移動によっても行うことができる。
このようなX線画像の移動を行うと、画面の固定位置に表示されるマークを目標に人工弁を移動させることによって、容易かつ高精度に人工弁の位置決めを行うことが可能となる。
そして、人工弁を留置する際に参照画像として用いられるX線透視画像、DSA画像又はロードマップ画像等のX線画像を収集し、リアルタイムに表示することができる。大動脈の傾斜角度の補正情報が回転移動指示として第1の入力装置16から第1の角度取得部20に入力された場合には、ステップS5において再びX線照射部7及びX線検出器8、寝台10の天板又は第1の表示装置17の画面の傾斜角度が調整される。そして、再びX線画像の収集及びリアルタイム表示が行われる。
人工弁の留置の際には、典型的には、造影剤を投与せずにX線透視画像が収集されてリアルタイム表示される。この場合、人工弁等のデバイスが描出されるが大動脈が明瞭に描出されない。そこで、図7(F)に示すように、大動脈の角度の取得のために参照画像として用いられたX線画像の平行移動量に基づいて、X線透視画像を自動的に移動表示させることができる。加えて、人工弁の位置決め用に画面の固定位置に大動脈弁の位置を把握するためのマーク及び距離確認用のマークを表示させることができる。
従って、一旦X線画像の回転角度及び平行移動量が定まった後は、ステップS5及びステップS9におけるX線検出器8又は寝台10の移動は省略することができる。但し、画像処理によってX線透視画像の平行移動を行う場合には、ステップS7のX線画像の表示前にX線透視画像データの平行移動処理が第1の画像処理部24において実行される。また、ステップS7及びステップS8の各表示を、同時又は逆の順序で行ってもよい。
一方、ステップS4において、画像処理が表示制御の方法として選択されたと判定された場合には、ステップS10において、人工弁を留置する際に参照画像として用いられるX線画像データがステップS6と同様な流れで収集される。
次に、ステップS11において、第1の画像回転部21は、第1の表示装置17の画面に表示されるX線画像における大動脈の走行方向の角度が水平方向又は鉛直方向となるように、大動脈の傾斜角度に基づいてX線画像データに回転処理を施す。すなわち、X線画像データの各画素位置を大動脈の傾斜角度だけ逆回転させる。これにより、大動脈の走行方向が水平方向又は鉛直方向となったX線画像データが生成される。
次に、ステップS12において、第1の画像回転部21は、回転処理後のX線画像データを第1の表示装置17に表示させる。その後、ステップS8及びステップS9と同様にステップS13及びステップS14においてマークの表示及びX線画像の平行移動又は回転移動を行うことができる。
更に、人工弁の位置決めのためにステップS10からステップS14までのX線画像の収集及び表示を含む作業がリアルタイムに繰返される。典型的には、非造影のX線透視画像がリアルタイム表示される。この場合においても、一旦X線画像の平行移動量が定まった後は、X線検出器8又は寝台10の移動を省略することができる。また、画像処理によってX線透視画像の平行移動を行う場合には、X線画像の表示前にX線透視画像データの平行移動処理が実行される。また、ステップS12及びステップS13におけるX線画像及びマークの各表示を、同時又は逆の順序で行うこともできる。
尚、X線画像の表示制御の結果、第1の表示装置17の画面の四隅に不要な領域が表示される場合には、ROIの再設定を行うことができる。そして、ROI内におけるX線画像の拡大表示を行うことができる。この場合、制御情報出力部22による絞り制御装置14の制御によってROI内についてのみX線検出データを収集するようにすることができる。
そして、人工弁の留置が完了すると、X線画像を本来の表示角度で第1の表示装置17に表示させることができる。すなわち、第1の入力装置16の操作によって、X線画像の回転表示モードの解除指示がデータ処理系6に入力された場合、制御情報出力部22は第1の表示画面回転部18又は撮影位置制御装置15に傾斜角度を元に戻す指示を制御信号として出力する。或いは、第1の画像回転部21が画像処理を停止させ、画像生成部19又は第1の画像処理部24から本来の傾斜角度でX線画像データが第1の表示装置17に出力される。これにより、大動脈が傾斜した本来の傾斜角度のX線画像が第1の表示装置17に表示される。
尚、医用画像処理装置3についても同様な流れでX線画像を回転表示及び平行移動表示させることができる。従って、医用画像処理装置3における流れについては説明を省略する。
つまり以上のようなX線撮影装置1及び医用画像処理装置3は、参照画像に基づいて大動脈の傾斜角度を取得し、取得した傾斜角度に基づいて大動脈が鉛直方向又は水平方向に表示されるようにX線画像を回転表示させるようにしたものである。
このため、X線撮影装置1及び医用画像処理装置3によれば、大動脈弁の置換術において、参照されるX線画像上で人工弁を水平方向又は鉛直方向に留置することが可能となる。すなわち、医師であるユーザは、認識が容易な水平又は垂直方向への物体の回転移動及び平行移動によって、人工弁を良好な精度で容易に位置決めすることができる。
特に、X線撮影装置1によれば、X線画像の回転表示処理のみならず、平行移動表示に対しても有用な表示処理を行うことができる。このため、ユーザは、少なくとも表示されているX線画像の平行移動を行えば、人工弁の留置のための手技に専念することができる。すなわち、X線画像を参照しながら入力装置を操作することによって線を引いたり、マーキングをするといった作業を不要にすることができる。
一方、X線画像の平行移動は、X線検出器8又は寝台10の移動によって行うことができるが、X線検出器8又は寝台10の移動操作は頻繁に行われる。従って、X線画像の平行移動は、ユーザにとって習熟した操作で行うことが可能である。このため、手技の妨げとなる作業を最小限に留めることができる。
更に、バルーン像等の参照画像に対する画像処理によって、表示されるX線画像の平行移動も自動的に行うようにすれば、ユーザの作業を一層低減させることが可能となる。このため、人工弁の留置作業を滞りなく進めることができる。
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置及び医用画像処理装置の機能を説明する図である。
第2の実施形態におけるX線撮影装置及び医用画像処理装置では、参照画像に基づいて取得された大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈が所定の角度で表示されるようにX線画像を回転表示させるようにした点が第1の実施形態におけるX線撮影装置1及び医用画像処理装置3と相違する。他の構成および作用については第1の実施形態におけるX線撮影装置1及び医用画像処理装置3と実質的に異ならないため大動脈の表示角度の決定方法についてのみ説明する。
図9は、TAVIの手技法ごとの被検体Oに対する医師の立ち位置を示している。TAVIでは、ユーザである医師が手技に応じた位置に立って人工弁やバルーン等のデバイスを被検体Oの血管内に挿入し、人工弁の留置位置に向けて進めることとなる。従って、ユーザから見た大動脈の走行方向は、手技ごとに異なり、手技に対応する方向となる。
TAVIとして採用される手技法としては、図9に示すように、被検体Oに鎖骨下動脈(subclavian artery)から人工弁を挿入するsubclavian法、大動脈(aorta) から人工弁を挿入するaortic法、心尖部から人工弁を挿入するapical法、大腿部(femur) から人工弁を挿入するfemoral法及び腸骨動脈(iliac) から人工弁を挿入するiliac法が知られている。
そこで、参照画像を参照して取得された大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が手技に対応する所定の方向となるように角度を回転させてX線画像を表示させることができる。すなわち、参照画像を参照して取得された大動脈の傾斜角度が、ユーザから見た人工弁の留置位置における大動脈の走行方向となるようにX線画像を回転表示させることができる。
具体的には、TAVIにおいて採用され得る単一又は複数の手技に対応する手技位置から見た大動脈の走行方向がX線撮影装置及び医用画像処理装置の少なくとも一方の記憶装置に保存される。すなわち、各手技に対応する大動脈の走行方向の角度が基準方向としてプリセットされる。そして、入力装置の操作によって手技を特定する情報がX線撮影装置又は医用画像処理装置に入力されると、X線撮影装置又は医用画像処理装置は、記憶装置を参照することによって手技の特定情報に対応する手技位置から見た大動脈の走行方向を取得する。取得された手技位置から見た大動脈の走行方向は、X線画像の回転角度を決定するための基準となる所定の方向に決定される。
そして、大動脈の走行方向が、特定された手技に対応する方向となるようにX線画像が回転表示される。X線画像の回転表示法としては、第1の実施形態と同様に、操作対象が医用画像処理装置であれば、画面の回転又は画像回転処理が可能である。一方、操作対象がX線撮影装置であれば、画面の回転、X線検出器の回転又は画像回転処理が可能である。
このように、X線撮影装置には、参照画像を参照して取得された被検体の大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が手技に対応する所定の方向となるように角度を回転させてX線画像を表示させる撮影手段としての機能が備えられる。同様に、医用画像処理装置には、参照画像を参照して取得された被検体の大動脈の傾斜角度に基づいて、大動脈の走行方向が手技に対応する所定の方向となるように角度を回転させてX線画像を表示させる表示制御手段としての機能が備えられる。これら撮影手段及び表示制御手段は、図1に例示されるような任意の構成要素によって構成することができる。
つまり、第2の実施形態におけるX線撮影装置及び医用画像処理装置は、大動脈の走行方向が水平又は鉛直となるようにX線画像を回転表示させる代わりに、大動脈の走行方向がユーザの被検体Oに対する相対位置及び手技法に応じた角度となるようにX線画像を回転表示させるようにしたものである。
このため、ユーザから見た人工弁の留置位置近傍における人工弁の送り方向となる大動脈の走行方向と、X線画像に描出された人工弁の進行方向とを互いに同等にすることができる。そして、ユーザは、実際の送り方向と同じ方向に向かって移動する人工弁等のデバイスが描出されたX線画像を観察しながら手技を行うことができる。
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
例えば、大動脈弁の置換に限らず、僧帽弁の置換、完全閉塞した弁の開通治療、穿刺、大動脈グラフト等の治療のためのX線画像の表示においても、斜めになっているランドマークが表示画面に対して水平、垂直又は所定の角度になるように表示画像を回転させることができる。穿刺等の治療の場合には、非造影の血管像が表示対象となる場合もある。また、血管以外が表示対象となる場合においても同様な画像の表示処理又は表示制御を行うことができる。
更に、X線CT装置、MRI装置及び超音波診断装置等の他の画像診断装置を用いてリアルタイム撮像を行う場合においても、同様な画像の表示処理又は表示制御を行うことができる。特に、特定のスライスに着目して撮像が行われる場合において上述した画像の表示処理又は表示制御の適用が期待できる。