以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。以下において、複数の実施形態または変形例などが含まれる場合、複数の実施形態または変形例における各構成要素の特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。以下では同様の要素には同一の符号を付して説明する。
以下では、移動体用モータユニットが組み込まれる作業機付移動体として、操作者が座る運転席が設けられず、操作者が遠隔操作装置を用いて車両の外部から走行及び作業機の駆動を遠隔操作する無線操作車両を説明する。一方、作業機付移動体は、運転席を有し操作者が運転席に座って運転することができる乗用型車両としてもよい。
図1から図5は、実施形態に係る移動体用モータユニット20が組み込まれる作業機付移動体である無線操作車両10を示している。図1は、無線操作車両10において、後部の作業機を省略して示している斜視図である。図2は、図1に取り付けられる作業機である芝刈り機14の断面図である。図3は、図1のA−A断面図である。図1から図3では、水平面上において、車両の進行方向に沿う前後方向が矢印Xで示され、これと直交する車両の左右方向が矢印Yで示されている。また、図1、図2では、矢印Xの方向及び矢印Yの方向と直交する方向である鉛直方向が矢印Zで示されている。なお、以下では、無線操作車両10は、「車両10」という。また、移動体用モータユニット20は、「モータユニット20」という。
図1に示すように、車両10は、操作者が外部から遠隔操作可能に構成されるものである。車両10の車体である後述する車体ケース22の後部には、芝刈り機14(図2)が取り付けられている。車両10は、モータユニット20と、モータユニット20の前端部の左右前側に支持された左前車輪16及び右前車輪17と、モータユニット20の後側に支持された左後車輪18及び右後車輪19とを含む。
モータユニット20は、略箱状の車体ケース22と、図3に示すように車体ケース22の内部に一体的に支持された左車輪モータ40、右車輪モータ44、及び作業機モータ50とを含んでいる。車体ケース22は、車両10の車体またはフレームとしての機能と、内部に部品を収容して固定する部品固定ケースとしての機能とを有する。車体ケース22は後で詳しく説明する。
左後車輪18は、左車輪モータ40により駆動される駆動輪であり、車体ケース22の左側部分において軸受D1,D2(図4)により回転可能に支持される。左車輪モータ40は第1電動モータに相当する。右後車輪19は、右車輪モータ44により駆動される駆動輪であり、車体ケース22の右側部分において軸受D1,D2(図4)により回転可能に支持される。右車輪モータ44は第2電動モータに相当する。
左右の前車輪16,17は、キャスタ輪または従動輪である。各前車輪16,17は、車体ケース22の前端部に固定された支持部材15により、車両10の前側において左右方向Yに離れた位置に鉛直方向Zの軸を中心として360度以上の自由操向を可能に支持される。
各車輪モータ40,44は、3相の永久磁石式同期モータである。なお、各車輪モータ40,44は、誘導モータ、リラクタンスモータなど他の形式のモータとしてもよい。実施形態では、車両10の駆動源として電動モータを用いることにより、駆動源にエンジンを用いる場合と異なり、回転及びトルクの制御を容易に行うことができる。各車輪モータ40,44の駆動は、後述する車両コントローラ62(図5)を介して車輪モータ40,44のそれぞれに対応するモータコントローラ64,65(図5)により制御される。なお、車輪モータ40,44の回転軸が電磁ブレーキにより制動されるように構成し、電磁ブレーキの作動を車両コントローラ62で制御する構成としてもよい。
各車輪モータ40,44の回転軸である車輪モータ軸41,45は、対応する後車輪18,19に後述の減速機軸ユニット90(図4)を介して連結される。これによって車輪モータ40,44の駆動により後車輪18,19が回転する。減速機軸ユニット90は、車輪モータ軸41,45と車輪18,19との間に設けられ、車輪モータ軸41,45の回転を減速して車輪18,19に伝達するための減速機である。
車体ケース22の内側には複数個、例えば5つのバッテリ13が一体的に固定されている。複数のバッテリ13は、電気的に直列または並列に接続されて用いられる。バッテリ13は、車輪モータ40,44及び作業機モータ50のそれぞれに電力を供給する蓄電部である。バッテリ13として、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウム電池などを用いることができる。蓄電部としてバッテリ以外にキャパシタを用いることもできる。
図2に示すように芝刈り機14(モア)は、モアデッキ14aと、モアデッキ14aの内側に支持された芝刈りブレード14bとを含んでいる。芝刈りブレード14bは、鉛直方向Zの軸を中心として回転可能に配置される。芝刈りブレード14bは、鉛直方向Zの軸の周りに配置された複数の切断ブレード要素を含んでもよい。芝刈りブレード14bが回転することにより、芝等を破断して刈取り可能とする。モアデッキ14aは、上部の板部14cと、板部14cの下側の周囲を囲むように連結される壁部14dとを有する。壁部14dの一部には、刈り取った芝を車両の側方に排出するための排出口(図示せず)が形成される。モアデッキ14aの上側には回転方向変換部14eが配置される。そして回転方向変換部14eから突出したモア側回転軸14fと、作業機側回転電機である後述する作業機モータ50(図3)の作業機モータ軸51とが、モア側動力伝達機構70により連結される。作業機モータ50は、作業機駆動軸である作業機モータ軸51を駆動する第3電動モータである。作業機モータ50も、車輪モータ40,44と同様に構成される。
モア側動力伝達機構70は、中間軸71の前側と後側とに入力側回転要素72及び出力側回転要素73が自在継手74を介して連結されることにより構成される。入力側回転要素72は、作業機モータ軸51(図3)の後端部に固定される。これにより作業機モータ軸51は、芝刈り機14が接続可能に構成される。出力側回転要素73は、モア側回転軸14fの前端部に固定される。これにより、車両10が移動する地面が不整地であっても芝刈り機14の姿勢を安定化させることができる。なお、車体ケース22の後端部において、左右方向Yに離れた2つの位置から後側に突出するガイド部を形成し、ガイド部の間に芝刈り機14を配置して芝刈り機14の左右方向Yへの横揺れを抑制してもよい。
また、車両10は、車両10から離れた操作者が遠隔操作装置80を持って外部からその遠隔操作装置80を用いて操作される。この構成については後で詳しく説明する。
図4は、図3において、車体ケース22及びその内部構造の前部及び後部を拡大して示している。車体ケース22は、ケース本体23と、左右両側の車輪支持板31,32と、作業機支持板33とを含む。ケース本体23は、複数のバッテリ13及び駆動制御ユニット60を収容するものである。駆動制御ユニット60は、後述する図5に示すように車両コントローラ62、複数のモータコントローラ64,65,66及びインバータ67,68,69を含んで構成される。
ケース本体23は、底板部24と、底板部24から上側に立設されて略枠状に形成される周壁部25と、周壁部25の左右両側の後端部に連結される後端壁部29a、29bと、上側カバー30(図1)とを有する。周壁部25は、複数のバッテリ13と駆動制御ユニット60とが配置される空間の周囲を全周にわたって覆う。後端壁部29a、29bは、周壁部25の後端部とともに、ケース本体23の後端部に、左車輪モータ40を配置するための左側の凹部23aと、右車輪モータ44を配置するための右側の凹部23bとを形成する。後端壁部29a、29bと周壁部25の後端部とは、ケース本体23の後端部に、作業機モータ50を配置するための後端の凹部23cも形成する。上側カバー30は、後述するように周壁部25、後端壁部29a、29b、及び複数の支持板31,32,33で囲まれた複数の空間の上部を覆う。
より具体的には、周壁部25は、左右両側の側壁部25a、25bと、左右の側壁部25a、25bの前端を連結する前端壁部25cと、左右の第1後側壁部26a、26bと、第2後側壁部27a、27bと、連結壁部28とから構成される。
各第1後側壁部26a、26bは、各側壁部25a、25bの後端から左右方向において車両10の内側に伸びるように連結される。各第2後側壁部27a、27bは、対応する第1後側壁部26a、26bの左右方向において車両10の内側端から後方に伸びる。連結壁部28は、左右の第2後側壁部27a、27bの前後方向において中間部に左右方向に伸びるように連結される。すなわち各第2後側壁部27a、27bの一部は、連結壁部28よりも後側に延出される。
各後端壁部29a、29bは、対応する第2後側壁部27a、27bの後端に連結されて、左右方向において車両10の外側に伸びる。後端壁部29a、29bの下端は、周壁部25の下端と同様に底板部24に連結される。
そして、左の車輪支持板31は、左側壁部25aの後端部と左の後端壁部29aの外端部(図3、図5の左端部)とに掛け渡すようにボルト(図示せず)などにより固定される。右の車輪支持板32は、右側壁部25bの後端部と右の後端壁部29bの外端部(図3、図5の右端部)とに掛け渡すようにボルト(図示せず)などにより固定される。さらに、左後端壁部29aの左右方向において車両10の内側の端部(図3、図5の右端部)と、右後端壁部29bの左右方向において車両10の内側の端部(図3、図5の左端部)とには、後側に突出する突部34a、34bが形成される。そして作業機支持板33が、左右両側の突部34a、34bに掛け渡すようにボルト36により固定される。これにより左の車輪支持板31は、左の第1後側壁部26a及び第2後側壁部27aと後端壁部29aとで囲まれた空間の車輪18側の開口端を塞ぐ。この空間は「左車輪モータ配置空間U1」という。右の車輪支持板32は、右の第1後側壁部26b及び第2後側壁部27bと後端壁部29bとで囲まれた空間の車輪19側の開口端を塞ぐ。この空間は「右車輪モータ配置空間U2」という。また、作業機支持板33は、左右の第2後側壁部27a、27bの後側部分と連結壁部28とで囲まれた空間の後側の開口端を塞いでいる。この空間は「作業機モータ配置空間U3」という。
左車輪モータ40は、左車輪モータ配置空間U1に配置される。右車輪モータ44は、右車輪モータ配置空間U2に配置される。作業機モータ50は、作業機モータ配置空間U3に配置される。
左車輪モータ40は、車輪モータ軸41、車輪モータ軸41に固定されたロータ42、及びステータ43を含む。車輪モータ軸41は、左の車輪支持板31と、左の第2後側壁部27aとに固定された軸受D1,D2により回転可能に支持される。車輪モータ軸41は左右方向に伸びている。車輪モータ軸41の外端部には後述する減速機軸ユニット90(図4)を介して左後車輪18(図1)が固定される。該減速機軸ユニット90は、遊星歯車機構であるが、平歯車、ヘリカル歯車などの減速機で構成されてもよい。
左車輪モータ40のロータ42は、車輪モータ軸41に嵌合固定される内側筒部42aと、内側筒部42aの外径側に配置される外側筒部42bと、2つの筒部42a、42bの外端を連結する円板部42cとを有する。外側筒部42bの内側には環状の永久磁石部42dが固定される。永久磁石部42dには、N極及びS極が周方向に交互に配置される。ロータ42の内径側にはステータ43が配置される。ステータ43は、ケース本体23の第2後側壁部27aに固定された筒部材37に固定されている。これによりステータ43のステータコイルに3相交流電流が流れた場合には、ステータ43から発生する回転磁界に同期してロータ42が回転する。右車輪モータ44の構成部材も、左右方向についての関係が逆になるだけで左車輪モータ40の構成部材と同様であり、その支持構造も左車輪モータ40の場合と同様である。
作業機モータ50は、作業機モータ軸51、作業機モータ軸51に固定されたロータ52、及びステータ53を含む。作業機支持板33に形成された孔33aには支持部材38が固定される。支持部材38は、前後方向に伸びる筒部38aと、筒部38aの後端部に連結された円板部38bとを有する。円板部38bの外周端部には筒部38cが形成されて、左右の後端壁部29a、29bの突部34a、34bと作業機支持板33とで挟まれている。ステータ53は、支持部材38の筒部38aの外側に固定される。作業機モータ軸51は、筒部38aと連結壁部28とに固定された軸受D3,D4により回転可能に支持される。作業機モータ軸51は前後方向Xに伸びている。
作業機モータ50のロータ52は、作業機モータ軸51に嵌合固定される内側筒部52aと、内側筒部52aの外径側に配置される外側筒部52bと、2つの筒部52a、52bの前端を連結する円板部52cとを有する。これによりロータ52は、作業機モータ軸51の周囲に作業機モータ軸51と一体に固定される。外側筒部52bの内側には環状の永久磁石部52dが固定される。永久磁石部52dには、N極及びS極が周方向に交互に配置される。ステータ53は、ロータ52の内径側に配置される。作業機モータ軸51の外端部である後端部にはモア側動力伝達機構70(図2)の入力側回転要素72(図2)が固定される。これによって、作業機モータ軸51は、芝刈り機14が接続可能に構成される。
上記のように車輪モータ40,44及び作業機モータ50が車体ケース22に配置されるので、左車輪モータ40、右車輪モータ44及び作業機モータ50は、車体ケース22のケース本体23を介して一体的に結合されている。また、各モータ40,44,50は、車体ケース22内に配置されて一体化されている。また、左車輪モータ40及び右車輪モータ44は左右方向Yに離れて配置される。作業機モータ50は左右方向Yにおいて左車輪モータ40及び右車輪モータ44の間に配置される。さらにモータユニット20を左右方向Yに見た場合に、各車輪モータ40,44と、作業機モータ50の一部、より具体的には作業機モータ50の前側部分とが重畳している。
また、車体ケース22内において、底板部24上には複数のバッテリ13と、駆動制御ユニット60とが固定される。複数のバッテリ13及び駆動制御ユニット60は、車体ケース22の周壁部25で囲まれたバッテリ配置空間U4内に配置される。このうち、複数のバッテリ13は、バッテリ配置空間U4の前側及び前後方向中間部に配置される。駆動制御ユニット60は、バッテリ配置空間U4において複数のバッテリ13の後側に配置され、その後側部分が左右の車輪モータ40,44の間に配置される。これによって車体ケース22の小型化を図れる。
図1に示す上側カバー30は、左右の車輪モータ配置空間U1,U2、作業機モータ配置空間U3、及びバッテリ配置空間U4の上部を覆うように、周壁部25及び後端壁部29a、29bの上部にボルト(図示せず)などにより着脱可能に結合される。車体ケース22に複数のバッテリ13、駆動制御ユニット60、車輪モータ40,44及び作業機モータ50を収容した状態で、車体ケース22を内部に水が侵入しない密閉構造としてもよい。
なお、上側カバー30は、単一の部材で形成されてもよいが、2つ以上の分離されたカバーで壁部の上端を覆うように構成してもよい。例えば図1の破線Pで示す位置でカバーが分離されるように構成し、バッテリ配置空間U4の上部と、複数のモータ配置空間U1,U2,U3の上部とを異なるカバーで覆ってもよい。
図4の右側に示すように、右側の車輪モータ軸45と後車輪19(図3)との間には、減速機軸ユニット90が連結される。減速機軸ユニット90は、車体ケース22に着脱可能に取り付けられる。減速機軸ユニット90は、車体ケース22にボルト(図示せず)などにより取り付けられる筒状の固定部材91と、固定部材91の内径側に回転可能に支持された車輪側軸部材92及びモータ側軸部材93とを含む。また、減速機軸ユニット90は、内部に2列の遊星歯車機構E1,E2が組み込まれている。各列の遊星歯車機構E1,E2は複数のピニオンギヤG1と共通のリングギヤG2及びサンギヤG3とを有する。リングギヤG2は固定部材91の内周面に形成される。サンギヤG3はモータ側軸部材93の外周面に形成される。2列のサンギヤG3は径方向に関して逆方向に偏心している。各ピニオンギヤG1にはカム孔G1aが形成され、カム孔G1aにはキャリアピンHが十分に大きい隙間を持って挿入される。キャリアピンHとカム孔G1aとの間にニードルが配置されてもよい。各キャリアピンHの一方側端部は車輪側軸部材92に結合され、他方側端部はキャリア部材94に結合される。キャリア部材94は、車輪側軸部材92と同期して回転する。
モータ側軸部材93は車輪モータ軸45とスプライン係合して結合される。車輪側軸部材92の外端部には右の後車輪19が固定される。これにより、車輪モータ軸45が回転した場合に大きい減速比でその回転が減速されて車輪モータ軸45に取り出される。また、2列の遊星歯車機構E1,E2で偏心方向が逆になっているので偏心により発生するトルクを相殺できる。なお、減速機軸ユニット90には遊星歯車機構を1つのみ組み込むこともできる。減速機軸ユニット90には遊星歯車機構以外の減速機構を組み込むこともできる。左側の車輪モータ軸41と後車輪18との間にも右側の減速機軸ユニット90と同様の減速機軸ユニットが連結される。
上記のモータユニット20によれば、左右の車輪モータ40,44と、作業機モータ50とが一体的に結合されているので、車両10を小型化できる。また、左右の車輪モータ40,44と、作業機モータ50とが分離された状態で車両10に組み付けられる構成の場合と異なり、車両10にモータユニット20を組み付ける作業を容易に行える。
なお、車体ケース22の構成部材は、例えば鉄、アルミニウム合金、ステンレス合金などの金属材料から形成できる。車体ケース22のケース本体23の周壁部25及び後端壁部29a、29bと底板部24とは単一の部材から一体的に構成してもよいが、2つ以上の部品をボルトなどにより結合して構成してもよい。
次に、図5を用いて車両10を外部から遠隔操作するための構成を説明する。図5は、車両10と、この車両10を操作するための遠隔操作装置80との概略構成を示している。車両10は、駆動制御ユニット60と、駆動制御ユニット60に接続される車両側アンテナ75とを含む。
駆動制御ユニット60は、車両10の走行と芝刈り機14(図2)の駆動とを行うために用いられる。駆動制御ユニット60は、第1インバータ67、第2インバータ68、及び第3インバータ69と、第1モータコントローラ64、第2モータコントローラ65及び第3モータコントローラ66とを有する。第1モータコントローラ64は第1インバータ67の動作を制御し、第2モータコントローラ65は第2インバータ68の動作を制御する。第3モータコントローラ66は第3インバータ69の動作を制御する。第1インバータ67は左車輪モータ40及びバッテリ13(図3、図5)の間に接続される。第2インバータ68は右車輪モータ44及びバッテリ13の間に接続される。第3インバータ69は作業機モータ50及びバッテリ13の間に接続される。車両コントローラ62は、各モータコントローラ64,65,66を制御する。
各インバータ67,68,69は複数のスイッチング素子を有し、スイッチング動作によって直流電力を交流電力に変換する。車両側アンテナ75は、車両コントローラ62に接続される。車両コントローラ62は、車両側アンテナ75から遠隔操作装置80からの指示を表す信号を受信し、その信号に応じて対応するモータコントローラ64,65,66を介して対応するモータ40,44,50の駆動を制御する。各コントローラ62,64,65,66は、CPU、メモリを有するマイクロコンピュータを含んで構成される。
遠隔操作装置80は、操作者が車両10を遠隔操作するために用いられる。遠隔操作装置80は、操作部81と、操作側コントローラ82とを有する。操作部81には、例えば左右の車輪モータ40,44の前進及び後進を指示する車輪駆動指示部と、作業機モータ50のオンオフ状態の切替を指示する作業機駆動指示部とが設けられる。操作部81は、例えばタッチパネル式のディスプレイを含み、ディスプレイにおける表示により上記の車輪駆動指示部と作業機駆動指示部とが構成されてもよい。車輪駆動指示部は、例えば前進と後進とを表す2つの部分を選択可能に表示する。そして、その部分が押し続けられた場合に、操作側コントローラ82が、対応する後車輪18,19を所望方向に駆動するように指示することを表す信号を生成する。
操作側コントローラ82は、CPU、メモリを有するマイクロコンピュータを含んで構成される。操作側コントローラ82は、操作部81の操作に応じた指示を表す信号を生成し、操作側コントローラ82に接続された操作側アンテナ83から、その信号に基づく無線信号を送信させる。車両側アンテナ75がその無線信号を受信する。
なお、遠隔操作装置80として、スマートフォン、またはタブレット端末などの無線通信機能を有する端末を用いることもできる。このような端末では予めアプリケーションソフトウェアを記憶部に記憶させておき、操作側コントローラ82がそのソフトウェアを実行することで、ディスプレイに所定の操作部を表示させることができる。
車両の走行を行う場合、遠隔操作装置80を持った操作者が操作部81を操作することにより操作側アンテナ83から無線信号が送信される。車両側アンテナ75はその無線信号を受信する。そして車両コントローラ62は、無線信号が表わす指示に応じて、車輪モータ40,44及び作業機モータ50のうち、対応するモータ40,44,50の駆動を制御する。これによって、車両10が所望方向に走行され、芝刈り機14が所望のタイミングで駆動される。
なお、無線信号は、操作側アンテナ83と車両側アンテナ75との間でBluetooth(登録商標)の通信方式を用いて送受信されてもよいし、Wi−Fi(登録商標)の通信方式を用いてインターネットを介して送受信されてもよい。なお、車両コントローラ62及び複数のモータコントローラ64,65,66を統合して1つのコントローラとして構成してもよい。
図6は、実施形態の別例において、車両10の後部に配置されるモータケース95及びその内部構造を示している断面図である。図6の構成では、車体ケース22とモータユニット20aとを分離可能とする。モータユニット20aは、車体ケース22の後端部にボルト(図示せず)などにより着脱可能に取り付けられる。例えば車体ケース22は、図3、図4の構造を構成する車体ケース22において、連結壁部28より後側に配置される部分を省略した構成とする。そして、モータユニット20aを車体ケース22の後端部に嵌め込んで車体ケース22に結合する。
具体的には、別例のモータユニット20aは、モータケース95に左右の車輪モータ40,44及び作業機モータ50を組み込んでいる。モータケース95のケース本体96は、左側の前端壁部97a、中間壁部98a、及び後端壁部99aと、右側の前端壁部97b、中間壁部98b、及び後端壁部99bと、連結壁部100とを含む。
前端壁部97a、97b、中間壁部98a、98b、後端壁部99a、99b、連結壁部100は、それぞれ上記の図4の構成の第1後側壁部26a、26b、第2後側壁部27a、27b、後端壁部29a、29b、連結壁部28と同様に構成される。
左右両側の車輪モータ配置空間U1,U2は、対応する前端壁部97a、97b、中間壁部98a、98b、及び後端壁部99a、99bで囲まれた部分により形成される。作業機モータ配置空間U3は、連結壁部100と、左右両側の中間壁部98a、98bの後側部分とで囲まれた部分により形成される。モータケース95は、上側カバー(図示せず)を含み、上側カバーは各壁部97a、97b、98a、98b、99a、99b、100の上端に連結されて、各モータ配置空間U1,U2,U3を覆っている。車輪支持板31,32は、対応する車輪モータ配置空間U1,U2の車輪側開口端を塞ぐように前端壁部97a、97b及び後端壁部99a、99bの開口側端部に固定される。作業機支持板33は、作業機モータ配置空間U3の後端開口を塞ぐように左右両側の中間壁部98a、98bの開口側端部である後端部に固定される。
図6の構成によれば、モータユニット20aをより小型化できるので、取り扱い性及び搬送作業性を向上できる。なお、車両10の車体を、板状または柱状の1つまたは複数の車体フレームの結合体により構成してもよい。このときに、図6のモータユニット20aを車体フレームの上側または下側に固定し、さらに、モータユニット20aに左右の車輪18,19及び芝刈り機14を結合することにより、車両10を構成してもよい。その他の構成及び作用は図1から図5の構成と同様である。
図7は、実施形態の別例において図6に対応する図である。別例のモータユニット20aでは、図6の構成において、モータユニット20aの連結壁部100の前側面(図7の上側面)に油ポンプ101を固定している。そして作業機モータ軸51と中心軸が一致するように油ポンプ101のポンプ軸102を一体的に結合している。
また、油ポンプ101の吐出口P1は油路S1により左側の車輪モータ配置空間U1に連通している。油ポンプ101の吸入口P2は油路S2により右側の車輪モータ配置空間U2に連通している。モータケース95内には油通路103が形成される。油通路103は、左側の車輪モータ配置空間U1と、左右両側の中間壁部98a、98bに形成された孔104a,104b,104c,104dと、作業機モータ配置空間U3と、右側の車輪モータ配置空間U2とが接続されることにより形成される。そして油通路103と油路S1,S2とにより油が循環する回路105が形成される。油ポンプ101はこの回路105に油を循環させる。このとき、作業機モータ配置空間U3は、左側の中間壁部98aに形成された孔104bを介して左側の車輪モータ配置空間U1と連通している。また、作業機モータ配置空間U3は、右側の中間壁部98bに形成された孔104cを介して右側の車輪モータ配置空間U2と連通している。これにより、各モータ配置空間U1,U2,U3には油ポンプ101から油通路103を通じて油が供給されて、対応するモータ40,44,50が油冷却される。
より具体的には、作業機モータ50の回転によって油ポンプ101が駆動される。そして図7に矢印αで示すように、吐出口P1、油路S1、左側の車輪モータ配置空間U1、作業機モータ配置空間U3、右側の車輪モータ配置空間U2、油路S2の順に冷媒としての油が流れて循環する。これによって、各モータ40,44,50を油冷却できるので温度上昇を抑制して効率低下を抑制できる。また、作業機モータ50が油ポンプ101の駆動源となるので、作業機モータ50とは別に油ポンプ101の駆動源を設ける必要がない。これにより部品点数の削減と小型化とを図れる。その他の構成及び作用は図1から図5、または図6の構成と同様である。なお、図7において油ポンプ101の吐出口P1及び吸入口P2を逆にして図7の矢印αとは逆方向に油を循環させてもよい。なお、各モータ配置空間U1,U2,U3のうち、1つまたは2つのみに油が供給されて対応するモータが油冷却される構成としてもよい。
図8は、実施形態の別例において図4に対応する図である。なお、図8では、図3に示した車体ケース22に対し前後方向の長さを左右方向長さに比べて短いか略同じとなるように示しているが、勿論、図3の車体ケース22と同様に左右方向の長さに対し全長を長くしてもよい。
図8の構成では、図1から図5の構成において、車体ケース22の底板部24において、バッテリ配置空間U4に位置する部分には内燃機関であるエンジン106と発電機107とが固定されている。エンジン106は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。発電機107は、エンジン106の出力軸に接続された回転軸107aを有する。これによりエンジン106が駆動された場合に、発電機107が駆動されて発電する。発電した電力はバッテリ13に充電される。車輪モータ40,44及び作業機モータ50の少なくとも1つを駆動する場合には、バッテリ13から対応するインバータを介して対応するモータ40,44,50に電力が供給される。
また、駆動制御ユニット60の第1インバータ67、第2インバータ68及び第3インバータ69(図5参照)は、発電機107と第1スイッチ108を介して電気的に接続される。また、各インバータ67,68,69は、バッテリ13と第2スイッチ109を介して電気的に接続される。第1スイッチ108及び第2スイッチ109のオンオフ状態の切替は、駆動制御ユニット60の車両コントローラ62(図5)によって制御される。これにより、バッテリ13を充電する場合には、第1スイッチ108及び第2スイッチ109をオン状態とする。このとき少なくとも1つのインバータ67,68,69の動作が制御されることにより、発電機107及びバッテリ13の両方から、対応するモータ40,44,50に電力が供給されてもよい。また、第1スイッチ108または第2スイッチ109をオン状態とすることにより、発電機107またはバッテリ13から少なくとも1つのインバータ67,68,69を介して、対応するモータ40,44,50が駆動されてもよい。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成と同様である。
図9は、実施形態の別例において図5に対応する図である。図9の構成でも、図8の構成と同様に車体ケース22の前後方向の長さを短くしているが、図3の構成と同様に長くしてもよい。図9の構成では、図1から図5の構成において、作業機モータの代わりに作業機回転電機として発電機110が設けられる。また、車体ケース22の底板部24において、バッテリ配置空間U4に位置する部分にはエンジン106が固定される。エンジン106は左右両側の車輪モータ40,44の間に配置される。エンジン106の出力軸106aは連結壁部28を前後方向Xに貫通し、発電機110の回転軸である作業機側回転軸111と一体に連結される。この出力軸106aは、連結壁部28に軸受D4により回転可能に支持される。これによりエンジン106には芝刈り機14(図2参照)が動力の伝達可能に連結される。このため、エンジン106の駆動によって芝刈り機14が駆動される。また、エンジン106の駆動によって発電機110も駆動する。発電機110は、駆動制御ユニット60が有する第3インバータ(図示せず)を介してバッテリ13に接続される。これにより発電機110で発電された交流電力は、第3インバータで直流電力に変換された後、バッテリ13に供給されバッテリ13を充電する。また、左右両側の車輪モータ40,44には、第1インバータ67(図5参照)または第2インバータ68(図5参照)を介してバッテリ13が接続される。
車輪モータ40,44の駆動時には、第1インバータ67及び第2インバータ68の一方または両方の動作が制御される。そしてバッテリ13から対応する車輪モータ40,44に電力が供給されて車輪モータ40,44が駆動する。図9の構成では、芝刈り機14の駆動源がエンジン106となるので芝刈り機14の出力を容易に高くでき、さらに車両10の長時間の連続運転を行いやすくなる。
また、図9の構成では、作業機側回転電機として発電機110を設けているが、発電機110は、電動モータの機能を有するモータジェネレータとしてもよい。そしてエンジン106の停止時にバッテリ13から第3インバータを介してモータジェネレータに電力を供給し、モータジェネレータを駆動させて芝刈り機14を駆動してもよい。その他の構成及び作用は、図1から図5の構成と同様である。
図10は、実施形態の別例において図6に対応する図である。図11は、図10のB−B断面図であり、図12は、図11のC部拡大図である。図10に示すモータユニット20bは、モータケース112と、左右の車輪モータ40,44と、作業機モータ50と、左右の車輪側結合体120a、120bと、作業機側結合体130とを含む。モータケース112は、油タンク113を有する前側ケース要素114と、前側ケース要素114の左右両側に固定された車輪モータケース要素115a、115bと、前側ケース要素114の後端部に固定された作業機モータケース要素116とを含んでいる。
図13は、図10に示しているモータケース112を構成する前側ケース要素114の斜視図である。前側ケース要素114は、左右両側に平行に配置される左壁部114a及び右壁部114bと、左壁部114a及び右壁部114bの後端に連結された連結壁部114cとを含んでいる。左壁部114a、右壁部114b、及び連結壁部114cで囲まれた内側部分は内側空間J1となっている。
また、図11に示すように内側空間J1には階段板部114dが配置される。階段板部114dは、左右方向Yに沿う軸に対し直交する平面で切断した断面形状が階段状となっている。階段板部114dは、複数の板部、すなわち第1板部K1、第2板部K2、第3板部K3、第4板部K4、及び第5板部K5が下側から上側に向かって階段状に連結される。各板部K1,K2,K3,K4,K5の左右方向の両端は、左壁部114a及び右壁部114bに連結される。複数の板部K1,K2,K3,K4,K5のうち、下端の第1板部K1の左右方向両端は、左壁部114a及び右壁部114bの前側(図11の左側)において下端部に連結される。複数の板部K1,K2,K3,K4,K5のうち、上端の第5板部K5の左右方向両端は、左壁部114a及び右壁部114bの後端部の上下方向中間部に連結される。第5板部K5の後端は、連結壁部114cの前側面に連結される。第1板部K1と各壁部114a、114b、114cとの下端には下側カバー114eが固定される。下側カバー114eは、階段板部114dの下側の空間である油タンク113の下端開口を塞いでいる。油タンク113は、後述する複数のモータ配置空間U1,U2,U3から供給された油140(図11)を貯留する。
図11、図13に示すように各壁部114a、114b、114cの下端部には油タンク113に通じる孔部141が形成される。各孔部141の端部にはフィルタ142が装着されている。フィルタ142は、金属等の網状である。このフィルタ142は、後述の各モータ配置空間U1,U2,U3と油タンク113との間での油の流通を可能とし、かつ、油中の異物が油タンク113に送られることを抑制する。油タンク113内には油ポンプ143が配置される。油ポンプ143については後で詳しく説明する。
各壁部114a、114b、114cには油タンク113の上部に通じるエア通路Lが形成されている。さらに油タンク113の上部である第5板部K5の上側にはエアブリーザ144が接続されている。エアブリーザ144は、内部のフィルタ(図示せず)を通して油タンク113内の空気を外部と吸排気可能とするために設けられる。これにより油タンク113の内圧の変化を抑制して、後述する油通路182に油を円滑に循環させることができる。
図10から図13に示すように作業機モータケース要素116は、一端が板部116aで塞がれ、他端が開口する略筒状である。作業機モータケース要素116を構成する筒部116bの内周面には作業機モータ50のステータ53が固定される。作業機モータケース要素116は、連結壁部114cの外側面である後側面に接触して固定される。また、連結壁部114cの後側面の複数位置、例えば4個所位置には後側に突出する円弧形の係止リブ145が形成される。複数の係止リブ145は、同一の円周上に配置される。作業機モータケース要素116を連結壁部114cに固定する際に、作業機モータケース要素116の筒部116bが複数の係止リブ145の外周側に嵌合される。これにより、連結壁部114cに対して作業機モータケース要素116の位置決めを容易に行える。この状態で、作業機モータケース要素116と連結壁部114cとで囲まれる空間が作業機モータ配置空間U3となる。
作業機モータケース要素116の板部116aには作業機側結合体130の前後方向中間部が貫通して、作業機側結合体130が作業機モータケース要素116に対して軸受D3より回転可能に支持されている。
作業機側結合体130は、ハブ部材131と、軸部材133と、固定筒部材137とを含む。固定筒部材137は、前端に外周側に伸びるフランジ137aを有する断面L字形である。固定筒部材137は、フランジ137aにおいて作業機モータケース要素116の板部116aの後側面に固定される。ハブ部材131は、固定筒部材137の内側に軸受138により回転可能に支持される。ハブ部材131の後端部にはフランジ132が形成され、このフランジ132にモア側動力伝達機構70(図2参照)の入力側回転要素72(図2参照)が固定される。
軸部材133は、雄スプライン部を有する軸部134と、キャリア部135とが一体形成されている。軸部134は、ハブ部材131の中心孔に挿通されて中心孔に形成された雌スプライン部と係合する。軸部134の先端部にはネジ部(図示せず)が形成されており、ネジ部に結合したナット139とキャリア部135とでハブ部材131を挟んでいる。これにより軸部134がハブ部材131に固定される。
キャリア部135は作業機モータ配置空間U3に配置されて、先端部に円板部136が形成される。この円板部136には複数のキャリアピンHの一端が結合される。各キャリアピンHの他端は、環状のキャリア部材163に結合される。キャリア部材163は、軸部材133と同期して回転する。
また、作業機モータ50は、ロータ150と、ステータ154とを有する。作業機モータ軸51の外周面には、ロータ150の内周側端部に形成された内側筒部150aが嵌合固定される。ロータ150は、内側筒部150aと、内側筒部150aの外径側に配置された外側筒部150bと、各筒部150a、150bの一端を連結する連結部150cとを有する。外側筒部150bの外周面にはロータ本体150dが固定される。ロータ本体150dは、複数の磁性鋼板の積層体において周方向に交互にN極及びS極の永久磁石(図示せず)が配置されることにより形成される。これにより作業機モータ軸51にロータ150が連結される。また、ロータ本体150dの径方向外側にはステータ154が対向する。
作業機モータケース要素116の板部116aの前側面には、リングギヤ160とフランジ部材161とが前後方向Xに隣接してボルト(図示せず)などにより固定される。フランジ部材161とキャリア部材163との間には軸受162が配置される。複数のピニオンギヤG1は、作業機モータ軸51の外周面に形成されたサンギヤG3とリングギヤ160とに噛合する。これによって減速機構である遊星歯車機構E1が形成される。遊星歯車機構E1は、作業機モータ軸51の動力を減速してハブ部材131に取り出し可能とする。また、遊星歯車機構E1は作業機モータ50の径方向内側に、作業機モータ50に対し中心軸を一致させるように配置されている。これにより作業機モータ50と減速機構とが配置される構成において、前後方向Xの長さを小さくできるので、小型化を図れる。
一方、図10に示すように車体ケース22の左壁部114aの外側面には左側の車輪モータケース要素115aが固定される。車輪モータケース要素115aの内側には車輪モータ40のステータ170が固定される。車輪モータケース要素115aには、車輪側結合体120aが回転可能に支持される。車輪側結合体120aは、ハブ部材121と、軸部材123と、固定筒部材127とを含む。また、車輪モータ40の径方向内側には遊星歯車機構E1が配置される。さらに軸部材123に形成された円板部124とキャリア部材125との径方向内側には、車輪モータ40の車輪モータ軸41が回転可能に支持される。車輪モータケース要素115aの構成は作業機モータケース要素116の構成と同様であり、車輪モータ40の構成は図11、図12に示す作業機モータ50の構成と同様である。車輪側結合体120aの構成は、作業機側結合体130の構成と同様である。
車体ケース22の右壁部114bの外側面には右側の車輪モータケース要素115bが固定される。車輪モータケース要素115bの内側には車輪モータ44のステータ172が固定される。車輪モータケース要素115bには、車輪側結合体120bが回転可能に支持される。また、車輪モータ44の径方向内側には遊星歯車機構E1が配置される。右側の車輪モータケース要素115b、車輪モータ44、及び車輪側結合体120bは、左側の車輪モータケース要素115a、車輪モータ40、及び車輪側結合体120aに対し左右方向の位置関係が逆になるだけで同様である。
次に、各モータ配置空間U1,U2,U3に油を供給して各モータ40,44,50を油冷却するための油循環構造180を説明する。油循環構造180は、油タンク113に配置されたポンプ軸181と、油ポンプ143と、油通路182とを含んでいる。ポンプ軸181は、油タンク113において上下方向に沿って配置される。ポンプ軸181の上端は、階段板部114dの第5板部K5の下面に軸受により回転可能に支持される。ポンプ軸181の下端は、下側カバー114eの上面に形成された孔部に回転可能に支持される。図11に示すように作業機モータ軸51の先端部において連結壁部114cの前側面から油タンク113内に突出した部分には第1ギヤ190が固定される。そしてポンプ軸181の上側に固定された第2ギヤ191と第1ギヤ190とが噛合する。これにより作業機モータ軸51の回転によりポンプ軸181が回転する。油ポンプ143は、ポンプ軸181の下端部に固定される。
図14Aは、図11のD部拡大図である。図14Bは、図14Aに示している油ポンプ143を下側から見た斜視図である。油ポンプ143は、遠心式ポンプであり、ポンプ軸181に固定される筒部143aと、筒部143aの外周面の上下方向中間部に結合される円板部143bと、円板部143bの下側面の周方向複数位置に放射状に結合されるフィン部143cとを有する。各フィン部143cの径方向内端は筒部143aの外周面に結合される。円板部143bの周方向複数位置で隣り合うフィン部143cの間に対応する位置には、上下方向に貫通する孔143dが形成される。
油通路182は、モータケース112の前側ケース要素114に形成された第1油路M1と、各モータ40,44,50を構成するモータ軸41,45,51に形成された第2油路M2と、各軸部材123,133に形成された第3油路M3と、モータケース要素115a、115b、116に形成された第4油路M4とを含んで構成される。
第1油路M1は、前側ケース要素114の連結壁部114cの左右方向Y中間部において略上下方向に形成された第1部分M1aと、連結壁部114cの上下方向中間部から作業機モータ軸51を挟んで左右両側に形成された第2部分M1bと、左壁部114a及び右壁部114bに形成された第3部分M1cとを含む。第1部分M1aの下端部は、下側カバー114eに形成されたカバー油路M5を通じて、油タンク113内において油ポンプ143の円板部143bより下側に通じている。第1部分M1aの上端は、連結壁部114cにおいて、作業機モータ軸51が貫通する孔部192の内周面に開口する。この孔部192には左右両側の第2部分M1bの一端も開口する。第3部分M1cは、左壁部114a及び右壁部114bの上下方向中間部の後側部分において前後方向Xに伸びる。第3部分M1cの一端は第2部分M1bの他端に接続される。第3部分M1cの他端は、対応する壁部114a、114bの車輪モータ軸41,45が貫通する孔部193の内周面に開口する。
第2油路M2は、軸方向部M2a(図12)と径方向部M2b(図12)とを有する。軸方向部M2aは、各モータ軸41,45,51の中心軸に沿う。径方向部M2bは、各モータ軸41,45,51が貫通する壁部114a、114b、114cのうち、孔部192,193内に配置されて直径方向に形成される。これにより例えば作業機モータ軸51の回転により、連結壁部114cに形成された第1部分M1aの上端が作業機モータ軸51の径方向部M2bと間欠的に連通するので、油ポンプ143の回転で吸い上げた油が作業機モータ軸51の軸方向部M2aに流れる。軸方向部M2aを軸方向に流れた油は、作業機モータ軸51の作業機側結合体130側の端から作業機側結合体130の軸部材133のキャリア部135に形成された油室194に流出する。
第3油路M3は、一端がこの油室194に通じるように各軸部材123、133の径方向に形成される。これにより第3油路M3に送られた油は、径方向外側に流れる。
第4油路M4は、各モータケース要素115a、115b、116において、第3油路M3と通じるように形成される。第4油路M4は、各モータケース要素115a、115b、116の内側面において、遊星歯車機構E1及びモータ40,44,50と対向する複数位置に開口する。これにより、第4油路M4に流れた油が、遊星歯車機構E1が配置される空間と、モータ40,44,50が配置される部分とに送られる。
一方、第2油路M2において、モータ軸41,45,51のうち、遊星歯車機構E1のピニオンギヤG1と対向する位置には第2径方向部M2cが形成される。これにより軸方向部M2aを流れた油の一部は第2径方向部M2cを通じてピニオンギヤG1とサンギヤG3との噛合部に供給される。
各モータ40,44,50に送られた油は対応するモータ40,44,50を冷却する。遊星歯車機構E1のピニオンギヤG1が配置される部分に送られた油は潤滑油として機能する。モータ40,44,50または遊星歯車機構E1の構成要素を冷却または潤滑して流れた油は、モータ配置空間U1、U2、U3の下部に流下する。そしてフィルタ142及び孔部141を通じて油タンク113に油が送られる。
上記の構成によれば作業機モータ50の回転により油ポンプ143を駆動でき、部品点数の削減を図れる。また、油ポンプ143は、各モータ配置空間U1、U2、U3に油を供給するので、各モータ40,44,50を油冷却できる。これにより各モータ40,44,50の効率低下を抑制できる。また、油により遊星歯車機構E1を潤滑して損失低減を図れる。その他の構成及び作用は、図1から図5、または図6、または図7の構成と同様である。
なお、本発明のモータユニット20を組み込む移動体は、図1から図3に示した車両10に限定するものではなく、種々の構造を有する移動体に組み込んで用いることができる。例えば、図15は、実施形態のモータユニット20,20aが組み込まれる移動体の別例である車両10を示す斜視図である。別例の車両10には、作業機として除雪機195が着脱可能に取り付けられる。除雪機195を用いる場合には、車両10は、除雪機195を前側に配置して走行する。すなわち、図1において車両10の前輪及び後輪が逆になる。また、車両10は、枠部と枠部の内側に固定された板部とを有する車体フレーム196を含み、キャスタ輪である後輪197と、駆動輪である前輪198とが車体フレーム196に支持される。車体フレーム196の下側には、上記の各例のモータユニット20(または20a)が固定される。また車体フレーム196の上側にはケース199が固定されており、このケース199内に各モータの電源であるバッテリが配置されてもよい。除雪作業を行う場合、出力側回転要素73に除雪機195の回転軸200が固定され、回転軸200に連結されたオーガ部201が、水平方向の軸を中心に回転する。これにより、オーガ部201が前方の雪を掻きとって、図示しないインペラの駆動によりダクト202の上部から遠方へ雪を吹き飛ばす。このとき、インペラの駆動軸をオーガ部201に動力伝達可能に連結してもよい。
図15の除雪機195は、図1から図3の車両10において、芝刈り機14の代わりに用いられてもよい。逆に図15に示す車両10において、作業機として芝刈り機14が用いられてもよい。また、本発明のモータユニットにおいて、作業機側回転電機を用いて作業機を駆動する場合に、作業機は芝刈り機14、除雪機195に限定するものではなく、農機具等としてもよい。
図16は、実施形態のモータユニット20(または20a)が組み込まれる移動体の別例であるクローラ装置203を示す斜視図である。クローラ装置203は、例えば図1から図3の構成のモータユニット20の車体ケース22において、左右方向両側にクローラ部204が支持される。各クローラ部204は駆動輪205と複数の従動輪206とを有し、駆動輪205及び複数の従動輪206の周囲にクローラベルト207が掛け渡される。そしてモータユニット20の左右両側の車輪モータ40,44(図3参照)により左右両側の駆動輪205を駆動する。また、作業機モータ50(図3参照)により芝刈り機14などの作業機を駆動する。
なお、本発明のモータユニットが組み込まれる移動体として、作業機であるプロペラを有する水陸両用車両を用いることもできる。水陸両用車両では、陸上移動時には左右両側の車輪モータで走行し、水上移動時には作業機モータでプロペラを駆動することができる。
また、上記では、移動体が無線操作車両である場合を説明した。一方、移動体は、乗用型車両としてもよい。乗用型車両では、運転席とアクセルペダルなどの加速指示部及びステアリングハンドルなどの旋回指示部を有する構成とする。乗用型車両に加速指示部及び旋回指示部の両方の機能を有する左右両側の操作レバーを設けることもできる。車両コントローラは、加速指示及び旋回指示を受け取って左右両側の車輪モータの回転方向及び回転速度を設定する。そして対応するモータコントローラがその設定に応じて車輪モータを駆動するように構成する。
また、移動体の走行経路を予め設定し、さらに作業機の駆動状態をその走行経路に関係づけて設定し、その設定内容を車両コントローラの記憶部に予め記憶させておいてもよい。そして、車両コントローラがその設定内容に基づいて移動体を自動的に走行させ、かつ作業機を駆動させるように構成してもよい。なお、上記では左車輪モータ、右車輪モータ、及び作業機側回転電機がケースを介して一体化される場合を説明したが、左車輪モータ、右車輪モータ、及び作業機側回転電機はフレームを介して一体化されてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上記では左車輪モータ、右車輪モータ、及び作業機側回転電機がモータユニットとして一体的に結合されている構成を説明した。一方、左車輪モータ及び右車輪モータがモータユニットとして一体的に結合され、このモータユニットと、作業機側回転電機とが異なる部品として車両に組み付けられる構成としてもよい。