以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るポジショナを含むバルブ制御システムの構成を示す図である。
図1に示されるバルブ制御システム200は、調節弁3、操作器2A、上位装置4、およびポジショナ1を有している。
調節弁(バルブ)3は、一方の流路から他方の流路への流体の流れを制御する装置であり、例えば空気圧式調節弁である。操作器2Aは、例えば空気式のバルブアクチュエータであり、後述するポジショナ1から供給される出力空気圧信号So1,So2に応じて調節弁3の弁軸を操作することにより、調節弁3の開閉動作を制御する。
本実施の形態では、操作器2Aが、入力された2つの空気信号の圧力差に応じて調節弁3の弁軸の操作量が決まる構造を有する複動式の操作器であるものとして説明する。
上位装置4は、ポジショナ1に対して調節弁3の開閉を指示する上位側の機器であり、調節弁3の弁開度の設定値SPをポジショナ1に対して与える。また、上位装置4は、ポジショナ1に対して、後述する圧力センサ診断処理を含む各種診断処理の実行を指示する。
ポジショナ1は、調節弁3の開閉を制御する装置である。具体的に、ポジショナ1は、上位装置4から与えられた調節弁3の弁開度の設定値SPと調節弁3の弁開度の実測値PVとの偏差を算出し、その偏差に応じた空気圧信号Scを生成して操作器2Aに与えることにより、調節弁3の弁開度を制御する。
また、ポジショナ1は、内蔵した圧力センサによってポジショナにおける各種の空気圧力を計測し、その計測結果に基づいて調節弁3や操作器2Aの異常の有無や劣化の進行状態等を診断する処理(以下、「調節弁等診断処理」とも称する。)を行う。
更に、ポジショナ1は、内蔵した圧力センサ自体の異常の有無を診断する処理(以下、「圧力センサ診断処理」とも称する。)を行う。詳細は後述するが、圧力センサ診断処理では、ポジショナ1は、内蔵した夫々の圧力センサによって検出された圧力の実測値と当該圧力の予測値とに基づいて、夫々の圧力センサの異常の有無を判定する。
ここで、ポジショナ1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、ポジショナ1は、弁開度検出部11、データ処理制御部10、電空変換部12、空気圧増幅部13、複数の圧力センサ14〜17、および表示部18等の機能部を備えている。これらの機能部は、例えば金属材料から成る筐体内部に収容される。
弁開度検出部11は、調節弁3の弁開度を調節弁3の弁軸の変位量として検出し、その変位量に応じた検出信号SENを生成する変位量検出器である。弁開度検出部11としては、角度センサや磁気センサ等を例示することができる。
データ処理制御部10は、調節弁3の弁開度の制御、調節弁等診断処理、および圧力センサ診断処理に関する各種データ処理を行う電子回路である。例えば、データ処理制御部10は、調節弁3の弁開度の制御に係るデータ処理として、弁開度検出部11から出力された検出信号SENに基づく調節弁3の弁開度の実測値PVと、上位装置4から与えられた調節弁3の弁開度の設定値SPとに基づいて、弁開度の制御するための制御信号CNTを生成する。
なお、データ処理制御部10の具体的な構成については後述する。
電空変換部12および空気圧増幅部13は、データ処理制御部10によって生成された電気信号である制御信号CNTを、空気信号に変換する空気回路を構成している。
具体的に、電空変換部12は、ポジショナ1の外部に設けられた減圧弁等の空気圧供給源(図示せず)からポジショナ1に供給された空気(エアー)5の圧力(以下、「供給空気圧」と称する。)Psを制御信号CNTに応じて変化させることにより、制御信号CNTに応じた圧力の空気圧信号Scを生成する。
例えば、電空変換部12は、一端に固定絞りを介して供給空気圧Psの空気5が供給され、他端から空気圧力信号Scを出力するノズルと、制御信号CNT(例えば電流信号)に応じて磁界を変化させるコイルと、前記コイルによる磁界の変化に応じて揺動することにより、上記ノズルから出力される空気圧信号Scの圧力を変化させるフラッパ(鉄片)とから構成されている。以下、空気圧信号Scの圧力Pnを「ノズル背圧Pn」と称する。
空気圧増幅部13は、電空変換部12によって生成された空気圧信号Scを増幅することにより、操作器2Aを駆動するための出力空気圧信号So1,So2を生成する機能部である。例えば、空気圧増幅部13は、よく知られた複動型のパイロットリレー、または単動型/複動型の切替機能を有するパイロットリレーであり、供給空気圧Psの空気5を、電空変換部12から出力された空気圧信号Scの圧力Pnに応じて調圧することにより、出力空気圧信号So1,So2を夫々生成する。
例えば、調節弁3を正動作させる場合には、出力空気圧信号So1の圧力Po1(以下「出力空気圧Po1」と称する。)を出力空気圧信号So2の圧力Po2(以下、「出力空気圧Po2」と称する。)よりも高くし、調節弁3を逆動作させる場合には、出力空気圧Po2を出力空気圧Po1よりも高くする。操作器2Aは、出力空気圧Po1と出力空気圧Po2との差“Po1−Po2”に応じて調節弁3の弁軸の移動方向および移動量を決定する。
なお、電空変換部12および空気圧増幅部13としては、上記の構成のみならず、その他の公知の技術を適用してもよい(例えば、特開2015−86917参照)。
圧力センサ14〜17は、ポジショナ1における各種の空気圧力を計測するための部品である。具体的に、圧力センサ14は供給空気圧Psを検出し、圧力センサ15はノズル背圧Pnを検出し、圧力センサ16は出力空気圧Po1を検出し、圧力センサ17は出力空気圧Po2を検出する。
表示部18は、データ処理制御部10によって制御され、各種の情報を表示するための機能部である。表示部18としては、例えば液晶ディスプレイ等を例示することができる。表示部18が、上述した調節弁診断機能による診断結果や圧力センサ診断機能による診断結果等を表示することにより、ユーザに対して必要な情報を提示することができる。
次に、データ処理制御部10の具体的な構成について説明する。
図2は、実施の形態1に係るポジショナのデータ処理制御部10の内部構成を示す図である。
データ処理制御部10は、CPUやRAMおよびROM等の各種メモリを搭載したマイクロコントローラ(MCU)等のプログラム処理装置と、外部に対する信号の入力および出力を実現するための各種インターフェース回路と、外部から入力される各種のアナログ信号をディジタル信号に変換して上記プログラム処理装置に入力するためのA/D変換回路等を含む電子回路によって実現されている。
具体的に、データ処理制御部10は、図2に示すように、弁開度実測値生成部101、偏差算出部102、制御信号生成部103、記憶部104、圧力予測部105、圧力実測値取得部106、安定度判定部107、および診断部108を備えている。
ここで、弁開度実測値生成部101、偏差算出部102、および制御信号生成部103は、主に制御信号CNTの生成するための機能部であり、記憶部104、圧力予測部105、圧力実測値取得部106、安定度判定部107、および診断部108は、主に圧力センサ診断処理を実現するための機能部である。なお、図2では、データ処理制御部10を構成する各種機能部のうち、上述した調節弁診断機能を実現するための機能部については図示を省略している。
これらの機能部は、例えば、上述したMCU等の電子回路(ハードウェア資源)が上記メモリに記憶されたプログラムによって制御されることにより、実現される。
弁開度実測値生成部101は、弁開度検出部11から出力された検出信号SENに基づいて調節弁3の弁開度の実測値PVを算出する機能部である。
例えば、弁開度検出部11が調節弁3の弁軸の変動を磁気抵抗素子から成るブリッジ回路の電圧の変化として検出する角度センサである場合、弁開度実測値生成部101は、上記ブリッジ回路の電圧の変化を検出する差動増幅回路と、上記差動増幅回路の出力信号をディジタル信号に変換して弁開度の実測値PVとして出力するA/D変換回路とから構成される。
偏差算出部102は、上位装置4から与えられた調節弁3の弁開度の設定値SPと弁開度実測値生成部101によって生成された弁開度の実測値PVとの偏差ERRを算出する機能部である。
制御信号生成部103は、偏差算出部102によって算出された偏差ERRに基づいて、弁開度の実測値PVが設定値SPと等しくなるように操作器2Aを操作するための操作量(MV)を算出し、その操作量に応じた電気信号を制御信号CNTとして出力する機能部である。
記憶部104は、制御信号CNTの生成や上述した調節弁診断機能および圧力センサ診断機能に係るデータ処理を実現するためのプログラムや各種パラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、後述する、圧力予測値テーブル111、圧力実測値112、安定度判定条件113、および診断開始条件114等の圧力センサ診断処理に必要な各種データが記憶される。また、制御信号CNTの生成するために必要な、弁開度の設定値SP、弁開度の実測値PV、および偏差ERR等の情報も記憶部104に記憶される。
圧力予測部105は、調節弁3の弁開度毎に、供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値を算出する。具体的に、圧力予測部105は、弁開度の設定値SP(または実測値PV)と、そのときの供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値とを対応させて記憶した圧力予測値テーブル111を生成し、記憶部104に記憶する。
ここで、圧力予測値テーブル111について詳細に説明する。
図3は、実施の形態1に係るポジショナにおける圧力予測値テーブルの一例を示す図である。
図3に示すように、圧力予測値テーブル111には、複数の弁開度毎の各圧力センサ14〜17の出力の予測値が記憶される。図3には、一例として、弁開度の実測値PVを、0%(全閉),25%,50%,75%,および100%(全開)とし、夫々の弁開度における各圧力センサ14〜17によって検出される供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値を記憶した圧力予測値テーブル111が示されている。
なお、圧力予測値テーブル111における項目としての弁開度の実測値(PV)およびその個数は、図3に示したものに限定されず、圧力センサの診断を行う条件に応じて適宜変更することができる。
また、供給空気圧Psは、理論上、外部の空気圧供給源の設定値によって決まり、弁開度(PV)に依らないため圧力予測値テーブル111上では固定値としてもよいが、実際には、弁開度(PV)、出力空気圧Po1,Po2、およびノズル背圧Pn等の値によって多少変化する。そこで、図3に示すように、弁開度(PV)、出力空気圧Po1,Po2、およびノズル背圧Pn等の条件に応じて使い分けができるように、圧力予測値テーブル111には、供給空気圧Psの予測値を複数用意しておいてもよい。
また、一般に、ポジショナにおける各種の空気信号の圧力特性はヒステリシスを有している。そこで、圧力センサ診断処理の診断精度を更に向上させるために、図4に示すようなヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブル111Aを用いてもよい。
図4は、実施の形態1に係るポジショナにおけるヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブルの一例を示す図である。
図4に示すように、弁開度の実測値PVを0%から100%まで変化させたときの供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値と、弁開度の実測値PVを100%から0%まで変化させたときの供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値とを区別して記憶した圧力予測値テーブル111Aを生成してもよい。
次に、圧力予測値テーブル111の生成方法について説明する。
圧力予測部105は、上述した圧力予測値テーブル111を、供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnに関する所定の関係式に基づいて作成する。
例えば、圧力予測部105は、先ず、実際にポジショナ1を動作させたときのノズル背圧Pnに対する出力空気圧Po1,Po2の特性(Po−Pn特性)と、弁開度の実測値PVに対する出力空気圧Po1,Po2の特性(Po−PV特性)を夫々取得する。このとき、供給空気圧Psの初期値Ps_asuも取得しておく。
上述したPo−Pn特性、Po−PV特性、および供給空気圧Psの初期値Ps_asuは、例えば、バルブ制御システム200にバルブポジショナ1を設置したときの初期設置時やバルブ制御システム200の運転の開始(再開)時に取得すればよい。具体的には、ポジショナ1が、公知のオートセットアップ機能を有している場合には、そのオートセットアップの実行時に、上述したPo−Pn特性、Po−PV特性、および供給空気圧Psの初期値を取得することができる。
ここで、オートセットアップ機能とは、ポジショナ自らが、例えばゼロ/スパン調整、制御パラメータ調整、および操作器作動等を行うことにより、接続された調節弁3に応じて、ポジショナの設定を最適化する機能である。本実施の形態では、ポジショナ1がオートセットアップ機能を有するものとして説明する。なお、データ処理制御部10を構成する各種メモリには、オートセットアップ機能を実現するためのプログラムや各種パラメータ等が記憶されており、MCU等のプログラム処理装置が上記プログラムに従って処理を実行することにより、オートセットアップ機能が実現されるものとする。
図5は、ポジショナ1においてオートセットアップの実行時に取得されたPo−Pn特性の一例を示す図である。図6は、ポジショナ1においてオートセットアップの実行時に取得されたPo−PV特性の一例を示す図である。
図5,6に示されるように、圧力予測部105は、ポジショナ1のオートセットアップの実行時に、複数のノズル背圧Pnにおける出力空気圧Po1,Po2の実測値を夫々取得するとともに、複数の弁開度の実測値PVにおける出力空気圧Po1,Po2の実測値を夫々取得する。
次に、圧力予測部105は、取得した複数の点から近似式を算出する。
例えば、図5に示すように、圧力予測部105は、最小二乗法により、Po1−Pn特性の直線近似式50と、Po2−Pn特性の直線近似式51とを夫々算出する。
また、図6に示されるように、弁開度の実測値PVに対する出力空気圧Po1,Po2の特性はヒステリシスを有するので、上述したように、ヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブル111(図4参照)を作成する場合には、圧力予測部105は、Po1−PV特性としてヒステリシスのある近似式53と、Po2−PV特性としてヒステリシスのある近似式54とを夫々算出する。
一方、ヒステリシスを考慮しない圧力予測値テーブル111(図3参照)を作成する場合には、圧力予測部105は、Po1−PV特性としてヒステリシスのない近似式55と、Po2−PV特性としてヒステリシスのない近似式56とを夫々算出すればよい。
圧力予測部105は、以上のようにして算出したPn−Po特性およびPo−PV特性に関する関係式(近似式)に基づいて、複数の弁開度における供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の予測値を算出し、圧力予測値テーブル111を作成する。
ここで、弁開度0%におけるPo2およびPsと、弁開度100%におけるPo1,Pn,およびPsについては、上述の方法で算出した予測値を圧力予測値テーブル111に記憶してもよいし、図3、4の斜体文字で示すように、他の圧力センサの実測値を参照するようにしてもよい。例えば、弁開度0%の場合には、理論上、出力空気圧Po2の値は供給空気圧Psの値と一致するので、圧力予測値テーブル111には、弁開度0%での出力空気圧Po2の値として、供給空気圧Psの実測値を参照することを指示する情報を記憶してもよい。
以上のように、圧力予測部105は、例えばオートセットアップの実行時に取得したPn−Po特性、Po−PV特性、および供給空気圧Psの初期値Ps_asuに基づいて、圧力予測テーブル111を作成する。また、ポジショナ1に供給される空気5の供給空気圧Psの設定が変更された場合も同様に、圧力予測部105は、変更された供給空気圧Psにおける圧力予測テーブル111を作成する。
圧力実測値取得部106は、各圧力センサ14〜17による夫々の検出結果を取得し、供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの夫々の実測値を、圧力実測値112として記憶部104に記憶する。圧力実測値112は、上述した圧力予測部105による圧力予測値テーブル111の生成や後述する圧力センサ診断処理等において利用される。
安定度判定部107は、弁開度の実測値PVが安定したか否かを判定するための機能部である。具体的に、安定度判定部107は、記憶部104に記憶された安定度判定条件113に従って、弁開度の実測値PVが安定したか否かを判定する。
例えば、弁開度の実測値PVの変化量ΔPV、および弁開度の設定値SPの変化量ΔSPの夫々に対して閾値を設定しておき、それらの閾値の情報を安定度判定条件113として記憶部104に記憶しておく。そして、安定度判定部107は、偏差ERR(=SP−PV)、弁開度の実測値PVの変化量ΔPV、および弁開度の設定値SPの変化量ΔSPを夫々算出し、算出した夫々の値が対応する閾値よりも大きいか否かを判定することによって、弁開度の実測値PVが安定したか否かを判定する。例えば、安定度判定部107は、ERR<1%,ΔPV<0.1%,およびΔSP=0%の各条件を全部満足した場合に、弁開度の実測値PVが安定したと判定する。あるいは、上記条件の何れか一つまたは二つの条件を満たした場合に弁開度の実測値PVが安定したと判定してもよい。
ここで、安定度判定部107による弁開度が安定した状態の判定タイミングについて、具体的に説明する。
図7は、ポジショナ1の弁開度の設定値SPを変化させたときの供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの特性を示す図である。
同図には、供給空気圧Psを400kPaに設定した場合において、ポジショナ1の弁開度の設定値SPを階段状に0%から100%まで変化させた後、再び100%から0%まで変化させたときの出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの各実測値の時間変化が示されている。
図7に示されるように、例えば時刻20sにおいて弁開度の設定値SPを0%から25%に変化させたとき、弁開度の実測値PVは、設定値SPの変化に追従して急峻に変化するが、オーバーシュートが発生するため、設定値SPとの間に誤差が生じる。その後、時刻30sを過ぎたあたりで、弁開度の実測値PVが設定値SPと略一致する。この場合に、安定度判定部107によれば、時刻30sから時刻40sまでの期間内の何れかの時刻TXにおいて、弁開度の実測値PVが安定したと判定することができる。
診断部108は、圧力予測部105によって算出された各圧力の予測値と、各圧力センサ14〜17によって検出された各圧力の実測値とに基づいて圧力センサ診断処理を行う機能部である。
診断部108は、例えば、上位装置4から圧力センサ診断処理の実行の指示を受け取った場合、または記憶部104に予め記憶された圧力センサ診断処理の開始条件(診断開始条件)114を満足した場合に、圧力センサ診断処理を実行する。
診断開始条件114としては、例えば、圧力センサ診断処理を実行すべき弁開度の情報(指定弁開度)や、圧力センサ診断処理を実行すべき時刻の情報(指定時刻)等が含まれる。
具体的には、診断部108は、ポジショナ1の動作中に上位装置4から指定された弁開度の設定値SPが診断開始条件114として記憶された指定弁開度と一致した場合に、圧力センサ診断処理を実行する。例えば、指定弁開度として“0%,50%,および100%”が記憶されている場合には、上位装置4から送信された設定値SPが“0%,50%,および100%”の何れかであったとき、診断部108は圧力センサ診断処理を開始する。
また、診断部108は、ポジショナ1の動作中にポジショナ内部の時計(例えばマイクロコントローラの内部タイマ)の時刻が診断開始条件114として記憶された指定時刻と一致した場合に、圧力センサ診断処理を開始する。
何れの場合においても、診断部108による圧力センサ診断処理の実行は、弁開度の実測値PVが安定した状態(PV安定状態)において行われる。例えば、診断部108は、上位装置4からの指示を受けた後、および診断開始条件114を満足した後に、安定度判定部107による判定結果を参照し、その判定結果がPV安定状態になるまで圧力センサ診断処理の実行を保留し、PV安定状態になったら圧力センサ診断処理を開始する。
圧力センサ診断処理では、診断部108は、その時の弁開度PVに対応する供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの予測値を圧力予測値テーブル111から読み出し、読み出した各圧力の予測値と、各圧力センサ14〜17によって検出された供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの実測値とに基づいて、各圧力センサ14〜17の異常の有無を判定する。
このとき、ヒステリシス特性を考慮した圧力予測値テーブル111Aを用いる場合には、診断部108は、弁開度が変化した方向を検出し、検出した方向に対応する予測値を圧力予測値テーブル111Aから読み出す。
ここで、弁開度が変化した方向の検出は、例えば、安定度判定部107による判定処理で用いた“ΔPV”や“ΔSP”の符号(正または負)を判定することによって実現することができる。例えば、診断部108は、圧力センサ診断処理を実行する直前の弁開度の実測値PV1と、圧力センサ診断処理を実行するときの弁開度の実測値PV2の値との差ΔPV=(PV2−PV1)が正(+)である場合には、弁開度が高くなる方向に変化したと判定し、ΔPVが負(−)である場合には、弁開度が低くなる方向に変化したと判定する。
例えば、弁開度が0%から25%に変化した後に圧力センサ診断処理を実行する場合には、弁開度が高くなる方向に変化しているので、図4の圧力予測値テーブル111Aにおける参照符号111_uで示される範囲を参照し、出力空気圧Po1の予測値“Po1a_1”を読み出す。反対に、弁開度が50%から25%に変化した後に圧力センサ診断処理を実行する場合には、弁開度が低くなる方向に変化しているので、図4の圧力予測値テーブル111Aにおける参照符号111_dで示される範囲を参照し、出力空気圧Po1の予測値“Po1a_2”を読み出す。
次に、実施の形態1に係るポジショナ1による圧力センサ診断処理の流れについて説明する。
図8は、実施の形態1に係るポジショナ1による圧力センサ診断処理の概要を示すフロー図である。図9は、実施の形態1に係るポジショナ1による圧力センサ診断処理の具体的な処理内容を示す図である。
図8において、例えばバルブ制御システム200の運転の開始時または再開時に、ポジショナ1のオートセットアップが実行されると、ポジショナ1は、ポジショナ1の各種設定を最適化するとともに、圧力予測値テーブル111を作成する(S1)。具体的には、上述したように、圧力予測部105が、オートセットアップ時に取得した各圧力間の諸特性から算出した関係式に基づいて、圧力予測値テーブル111を作成する。
その後、ポジショナ1は、ポジショナ1の動作状態が診断開始条件114を満足しているか否か、および上位装置4から圧力センサ診断処理の実行の指示があったか否かを判定する(S2)。具体的には、上述したように、診断部108が、弁開度(SVまたはPV)が診断開始条件114に設定された指定弁開度と一致したか否か等を判定する。
ステップS2において、診断部108によってポジショナ1の動作状態が診断開始条件114を満足していると判定した場合、または上位装置4から圧力センサ診断処理の実行の指示があった場合には、ポジショナ1は、弁開度の実測値PVが安定しているか否かを判定する(S3)。具体的には、上述したように、安定度判定部107が、弁開度の実測値PVや偏差ERR等を安定度判定条件113として設定された各種の閾値と比較することによって判定する。このとき、図4に示したようなヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブル111Aを用いる場合には、診断部108が、上述した手法により、弁開度の変化の方向を検出しておく。
ステップS3において、ポジショナ1は、安定度判定部107によって弁開度の実測値PVが安定していると判定した場合には、圧力センサ診断処理を開始する(S4)。具体的には、図9に示すように、診断部108が、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理(S41)、出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理(S42)、ノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理(S43)、および供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理(S44)を夫々実行する。
各圧力センサの異常判定処理を実行する順番は、図9に示される順番に限定されるものではなく、適宜順番を入れ替えてもよい。なお、各ステップS41〜S44の異常判定処理の詳細については後述する。
ステップS4において圧力センサ診断処理が完了したら、ポジショナ1は、その診断結果を出力する(S5)。例えば、診断部108が診断結果を表示部18に出力し、表示部18が、受け取った診断結果を画面に表示する。また、診断部108(ポジショナ1)が、有線または無線のネットワークを介して、上位装置4やバルブ制御システム200に接続された監視端末(図示せず)等に診断結果データを送信してもよい。
次に、圧力センサ診断処理における各ステップS41〜S44に示す異常判定処理について詳細に説明する。
ステップS41〜S44に示す各異常判定処理は、その異常判定処理を開始する時点での調節弁3の弁開度が全閉(PV=0%)、中間開度(0%<PV<100%)、および全開(PV=100%)の何れのモードであるかを判定した後に、それらのモード毎に定められた判定条件に従って、対応する圧力センサが異常であるか否かを判定する処理である。
最初に、ステップS41の出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理について説明する。ここでは、図3に示したヒステリシスを考慮していない圧力予測値テーブル111を用いて夫々の異常判定処理を行う場合を例にとり、説明する。
図10は、実施の形態1に係るポジショナ1による出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図10に示すように、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理では、先ず、診断部108が、弁開度の実測値PVが1%以下(全閉)であるか否かを判定する(S411)。
ステップS411において、PV≦1%である場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=0%の行500のデータに基づいて所定の判定処理を行う(S413)。具体的には、診断部108は、出力空気圧Po1の実測値が“Po1=0±x1”を満たすか否かを判定する。
ここで、“x1”は、出力空気圧Po1の実測値の圧力予測値テーブル111における予測値に対する許容誤差であり、x1の値は、圧力センサ診断処理に要求される診断精度やポジショナ1が適用されるバルブ制御システム200の構成等によって適宜設定することができる。なお、後述するその他の許容誤差“xn”(nは1以上の整数)についても同様である。
ステップS413において、出力空気圧Po1の実測値が“0±x1”である場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、出力空気圧Po1の実測値が“0±x1”でない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。
一方、ステップS411において、弁開度の実測値PVが1%以下(調節弁3が全閉)でない場合には、診断部108は、弁開度の実測値PVが99%以上であるか否かを判定する(S412)。
ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=100%の行501のデータに基づいて所定の判定処理を行う(S414)。具体的には、診断部108は、出力空気圧Po1の実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Po1=Ps±x2”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値とノズル背圧Pnの実測値とが“Ps=Pn±x3”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する。
ステップS414において、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14とノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上ではない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111における、そのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータ502に基づいて所定の判定処理を行う(S415)。具体的に、診断部108は、出力空気圧Po1の実測値が“Po1=Po1a±x4”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psa±x5”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する。
ステップS415において、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
なお、ヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブル111A(図4参照)を用いる場合には、ステップS3で検出した弁開度の変化の方向に対応する予測値を圧力予測値テーブル111Aから読み出して、上記の処理(S413,S414,およびS415)を行えばよい。なお、後述する他の圧力センサに関する異常判定処理についても同様である。
次に、ステップS42の出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理について説明する。
図11は、実施の形態1に係るポジショナ1による出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図11に示すように、出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理の基本的な流れは、図10に示した出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理と同様である。すなわち、図11において、圧力センサ診断処理を開始したときの調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)は図10と同様であり、その後の判定処理において用いる判定条件が図10と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=0%の行500のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po2の実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Po2=Ps±x2”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psb±x6”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S413A)。
ステップS413Aにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=100%の行501のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po2の実測値が“Po2=0±x7”を満たすか否かを判定する(S414A)。
ステップS414Aにおいて、上記条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記条件を満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111におけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータ502に基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po2の実測値が“Po2=Po2a±x8”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psa±x5”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415A)。
ステップS415Aにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
次に、図9におけるステップS43のノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理について説明する。
図12は、実施の形態1に係るポジショナ1によるノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図12に示すように、ノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理は、調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)が図10に示した出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理と同様であり、その後の判定処理における判定条件が図10と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=0%の行500のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値が“Pn=Pna±x9”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値と出力空気圧Po2とが“Ps=Po2±x10”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S413B)。
ステップS413Bにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶しておいてもよい。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=100%の行501のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Pn=Ps±x2”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値と出力空気圧Po1とが“Ps=Po1±x11”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S414B)。
ステップS414Bにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14と出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111におけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータ502に基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値が“Pn=Pnb±x12”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psc±x13”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psd±x14”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415B)。
ステップS415Bにおいて、上記4つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記4つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
最後に、図9におけるステップS44の供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理について説明する。
図13は、実施の形態1に係るポジショナ1による供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図13に示すように、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理は、調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)が図10に示した出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理と同様であり、その後の判定処理における判定条件が図10と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
図13において、先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=0%の行500のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値と出力空気圧Po2の実測値とが“Ps=Po2±x10”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psb±x15”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S413C)。
ステップS413Cにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、出力供給圧力Po2検出用の圧力センサ17およびノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111における弁開度=100%の行501のデータに基づいて,所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値と出力空気圧Po1とが“Ps=Po1±x2”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値とノズル背圧Pnとが“Ps=Pn±x3”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S414C)。
ステップS414Cにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、出力供給圧力Po1検出用の圧力センサ16およびノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶しておいてもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111におけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータ502に基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psa±x5”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psc±x13”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psd±x14”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415C)。
ステップS415Cにおいて、上記条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、出力供給圧力Po1,Po2検出用の圧力センサ16,17、およびノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
ここで、実施の形態1に係るポジショナ1によって生成した圧力予測値テーブルと、実際にポジショナ1を動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測結果を図14、図15に夫々示す。
図14は、実施の形態1に係るポジショナ1によって生成した圧力予測値テーブルの一例を示す図である。同図には、圧力予測値テーブルとして、複動式のポジショナ1において供給空気圧Ps=400kPaに設定したときの各圧力センサ14〜17の予測値が示されている。
図15は、ポジショナ1を実際に動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測結果を示す図である。同図には、複動式のポジショナ1において供給空気圧Ps=400kPaに設定して動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測値が示されている。
図14、15から理解されるように、ポジショナ1によれば、実際にポジショナ1を動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測値に対して、誤差の小さい圧力予測値テーブル111を作成することができるので、圧力センサ診断処理を高精度に行うことが可能となる。
以上、実施の形態1に係るポジショナ1によれば、圧力センサ14〜17によって検出される圧力の予測値と実測値とに基づいて圧力センサ14〜17の異常の有無を判定するので、圧力センサを冗長化する場合に比べて、追加の圧力センサを設置するためのスペースを確保する必要がなく、また、追加の圧力センサの検出信号を処理するためのハードウェアを追加する必要はない。
すなわち、実施の形態1に係るポジショナ1によれば、従来の圧力センサを備えたポジショナに対してハードウェア構成を変更する必要がないので、ポジショナ1の製品サイズ、製造コスト、および消費電力の増加を抑えつつ、内蔵した圧力センサ14〜17の異常を検出することができる。これにより、ポジショナ1による圧力センサを用いた調節弁等診断処理の精度を更に向上させることができる。
また、実施の形態1に係るポジショナ1において、複数の弁開度毎の供給圧力の予測値および空気信号の圧力の予測値を含む圧力予測値テーブルを記憶部104に記憶し、記憶した圧力予測値テーブル111を用いて圧力センサ診断処理を行うことにより、各圧力センサの異常判定処理の実行時に、その都度予測値を算出する必要がなく、圧力センサ診断処理に係るプログラム処理装置(CPU)の処理負担を軽減することができる。これにより、更なる消費電力の削減が期待できる。
また、実施の形態1に係るポジショナ1において、弁開度が変化する方向を検出し、検出した上記方向に対応する圧力センサ14〜17によって検出される圧力の予測値を用いて圧力センサ診断処理を行うことにより、ポジショナ1における各種の空気信号の圧力特性におけるヒステリシスを考慮した診断処理を行うことができ、圧力センサ診断処理の診断精度の更なる向上が期待できる。
また、実施の形態1に係るポジショナ1によれば、弁開度の実測値PVが安定しているか否かを判定し、安定している場合に圧力センサ診断処理を行うので、弁開度が安定していない過渡状態において圧力センサ診断処理を行う場合に比べて、より正確な診断が可能となる。
また、実施の形態1に係るポジショナ1によれば、記憶部104に記憶された診断開始条件114に従って圧力センサ診断処理を開始するので、バルブ制御システム200を利用するユーザが希望するタイミングにおいて圧力センサ診断処理を実行することが容易となり、ユーザの利便性の向上が期待できる。
また、実施の形態1に係るポジショナ1によれば、上述したステップS414、S415等のように、診断対象の圧力センサの異常判定処理を行う際に、その圧力センサの実測値のみならず、その他の圧力センサの実測値も考慮して異常の有無を判定するので、単に診断対象の圧力センサの実測値と予測値とを比較して判定する場合に比べて、診断精度を高めることができる。
≪実施の形態2≫
図16は、実施の形態2に係るポジショナを含むバルブ制御システムの構成を示す図である。
図16に示されるバルブ制御システム201は、実施の形態2に係るポジショナ6から供給される1つの空気信号の圧力に応じて調節弁3の弁軸の操作量が決まる単動式の操作器2Bを有し、ポジショナ6がその単動式の操作器2Bを駆動するための空気圧信号を生成する点において、実施の形態1に係るポジショナ1を有するバルブ制御システム200と相違する。
具体的には、バルブ制御システム201におけるポジショナ6は、単動式の操作器2Bを駆動するための1つの出力空気圧信号So1を生成する。より具体的には、ポジショナ6における空気圧増幅部13が、操作器2Bを駆動するための出力空気圧信号So1を生成し、出力空気圧信号So1の出力空気圧Po1によって操作器2Bを駆動する。このとき、空気圧増幅部13によって生成される出力空気圧信号So2の出力空気圧Po2は“0(ゼロ)”である。
また、ポジショナ6は、圧力センサ診断処理に係る圧力予測値テーブルと各圧力センサの異常判定処理に用いる判定条件が、実施の形態1に係るポジショナ1と相違する。
以下、実施の形態2に係るポジショナ6による圧力センサ診断処理について詳細に説明する。
図17は、実施の形態2に係るポジショナ6の圧力予測値テーブルの一例を示す図である。
同図に示す単動用の圧力予測値テーブル111Bにおいて、夫々の項目は実施の形態1に係る複動用の圧力予測値テーブル111と同様であり、夫々の項目における予測値が相違する。なお、上述したように、出力空気圧Po2は“0”であるので、圧力予測値テーブル111Bにおける“Po2a”を“0”としてもよい。
図18は、実施の形態2に係るポジショナ6においてオートセットアップの実行時に取得されたPo−Pn特性の一例を示す図である。図19は、実施の形態2に係るポジショナ6においてオートセットアップの実行時に取得されたPo−PV特性の一例を示す図である。
図18,19に示されるように、ポジショナ6は、ポジショナ1と同様に、ポジショナ6のオートセットアップの実行時に取得したPo−Pn特性およびPo−PV特性に基づいて近似式60,61を算出し、算出した近似式に基づいて単動用の圧力予測値テーブル111Bを生成する。このとき、ポジショナ1と同様に、ヒステリシスを考慮した圧力予測値テーブル111B作成してもよい。
図20は、実施の形態2に係るポジショナ6の弁開度の設定値SPを変化させたときの供給空気圧Ps、出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの特性を示す図である。
同図には、供給空気圧Psを270kPaに設定した場合において、ポジショナ6の弁開度の設定値SPを階段状に0%から100%まで変化させた後、再び100%から0%まで変化させたときの出力空気圧Po1、出力空気圧Po2、およびノズル背圧Pnの各実測値の時間変化が示されている。
図20に示されるように、実施の形態2に係るポジショナ6も、実施の形態1に係るポジショナ1と同様に、弁開度の設定値SPを変化させた後、弁開度の実測値が安定するまでに多少の時間を要する。したがって、単動用のポジショナ6も、ポジショナ1と同様に、安定度判定部107によって弁開度の実測値PVが安定したことを検出した後(例えば時刻TX)に、圧力センサ診断処理を実行する。
実施の形態2に係るポジショナ6による圧力診断処理の基本的な流れ(図8、9参照)は、実施の形態1に係る複動用のポジショナ1と同様である。一方で、上述したように、各圧力センサ14〜17の異常判定処理に用いる判定条件が相違する。以下、ポジショナ6における各圧力センサ14〜17の異常判定処理について詳細に説明する。
最初に、実施の形態2に係るポジショナ6における出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理について説明する。
図21は、実施の形態2に係るポジショナ6における出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図21に示すように、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理の基本的な流れは、実施の形態1に係るポジショナ1による出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理と同様である(図10参照)。すなわち、図21において、圧力センサ診断処理を開始したときの調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)は図10と同様であり、その後の判定処理において用いる判定条件が図10と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=0%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po1の実測値が“Po1=0±x31”を満たすか否かを判定する(S413E)。
ステップS413Eにおいて、上記の条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、上記条件を満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=100%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po1の実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Po1=Ps±x32”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Pn±x33”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S414E)。
ステップS414Eにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14とノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po1の実測値が“Po1=Po1a±x34”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415E)。
ステップS415Eにおいて、上記2つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常はないと判定する(S416)。一方、上記2つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ16に異常があると判定する(S417)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
次に、実施の形態2に係るポジショナ6における出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理について説明する。
上述したように、ポジショナ6では1つの出力空気圧Po1によって単動式の操作器2Bを駆動するため、もう一方の出力空気圧Po2はゼロとなる。したがって、単動用のポジショナ6では、出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理(図9のステップS42)を行わなくてもよいが、圧力センサ17の異常判定処理を行う必要がある場合には、下記図22の処理フローに従って行えばよい。
図22は、実施の形態2に係るポジショナ6における出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図22に示すように、出力空気圧Po2検出用の圧力センサ17の異常判定処理は、調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)が図11に示した実施の形態1に係るポジショナ1による異常判定処理と同様であり、その後の判定処理における判定条件が図11と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=0%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po2の実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Po2=Ps±x35”を満たすか否かを判定する(S413F)。
ステップS413Fにおいて、上記の条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記条件を満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=100%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、出力空気圧Po2の実測値が“Po2=0±x36”を満たすか否かを判定する(S414F)。
ステップS414Fにおいて、上記条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記条件も満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。
また、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、ステップS414Fと同様に、出力空気圧Po2の実測値が“Po2=0±x36”を満たすか否かを判定する(S415F)。
ステップS415Fにおいて、上記条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常はないと判定する(S426)。一方、上記条件を満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ17に異常があると判定する(S427)。
次に、ポジショナ6におけるノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理の流れについて説明する。
図23は、実施の形態2に係るポジショナ6におけるノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図23に示すように、ノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15の異常判定処理は、調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)が図12に示した実施の形態1に係るポジショナ1による異常判定処理と同様であり、その後の判定処理における判定条件が図12と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=0%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値が“Pn=Pna±x30”を満たすか否か、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psb±x37”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S413G)。
ステップS413Gにおいて、上記の条件を満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記条件を満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=100%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値と供給空気圧Psの実測値とが“Pn=Ps±x38”を満たすか否か、供給空気圧Psと出力空気圧Po1とが“Ps=Po1±x39”を満たすか否か、および供給空気圧Psが“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S414G)。
ステップS414Gにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14と出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、ノズル背圧Pnの実測値が“Pn=Pnb±x40”を満たすか否か、供給空気圧Psが“Ps=Psa±x41”を満たすか否か、および供給空気圧Psが“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415G)。
ステップS415Gにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常はないと判定する(S436)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ15に異常があると判定する(S437)。この場合、診断部108は、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
最後に、ポジショナ6における供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理の流れについて説明する。
図24は、実施の形態2に係るポジショナ6における供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理の流れを示すフロー図である。
図24に示すように、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14の異常判定処理は、調節弁3の弁開度を判定するまでの処理(ステップS411およびS412)が図13に示した実施の形態1に係るポジショナ1による異常判定処理と同様であり、その後の判定処理における判定条件が図13と相違する。以下、上記の相違点について詳細に説明する。
先ず、ステップS411においてPV≦1%であった場合には、調節弁3は全閉状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=0%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psb±x37”を満たすか否か、および供給空気圧Psの実測値が“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S413H)。
ステップS413Hにおいて、上記2つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記2つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、ノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
また、ステップS412において、PV≧99%である場合には、調節弁3が全開状態であるので、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおける弁開度=100%の行のデータに基づいて所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値と出力空気圧Po1の実測値とが“Ps=Po1±x39”を満たすか否か、供給空気圧Psとノズル背圧Pnとが“Ps=Pn±x33”を満たすか否か、および供給空気圧Psが“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S414H)。
ステップS414Hにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、ノズル背圧Pn検出用の圧力センサ15と出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
一方、ステップS412において、弁開度の実測値PVが99%以上でない場合には、調節弁3は中間の弁開度で動作していることから、診断部108は、圧力予測値テーブル111Bにおけるそのときの弁開度の実測値PVに対応する行のデータに基づいて、所定の判定処理を行う。具体的には、供給空気圧Psの実測値が“Ps=Psa±x41”を満たすか否か、出力空気圧Po1が“Po1=Po1a±x34”を満たすか否か、および供給空気圧Psが“Ps=Ps_asu”を満たすか否かを判定する(S415H)。
ステップS415Hにおいて、上記3つの条件を全て満たす場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常はないと判定する(S446)。一方、上記3つの条件の一つでも満足しない場合には、診断部108は、圧力センサ14に異常があると判定する(S447)。この場合、診断部108は、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16にも異常がある可能性があることを示すフラグ情報を記憶部104に記憶してもよい。
ここで、実施の形態2に係る単動用のポジショナ6によって生成した圧力予測値テーブルと、実際に単動用のポジショナ6を動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測結果を示す。
図25は、実施の形態2に係るポジショナ6によって生成した圧力予測値テーブルの一例を示す図である。同図には、圧力予測値テーブルとして、単動式のポジショナ6において供給空気圧Ps=270kPaに設定したときの各圧力センサ14〜17の予測値が示されている。
図26は、実際にポジショナ6を動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測結果を示す図である。同図には、単動式のポジショナ6において供給空気圧Ps=270kPaに設定して動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測値が示されている。
図25、26から理解されるように、単動用のポジショナ6においても、実際にポジショナ6を動作させたときの各圧力センサ14〜17の実測値に対して、誤差の小さい圧力予測値テーブルを作成することができるので、圧力センサ診断処理を高精度に行うことが可能となる。
以上、実施の形態2に係る単動用のポジショナ6によれば、実施の形態1に係る複動用のポジショナ1と同様に、ポジショナ6の製品サイズ、製造コスト、および消費電力の増加を抑えつつ、内蔵した圧力センサ14〜17の異常を検出することができる。これにより、ポジショナ6による圧力センサ14〜17を用いた調節弁や操作器の診断処理の精度を更に向上させることができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、実施の形態1、2において、圧力予測値テーブル111等の生成方法として、Po−Pn特性およびPo−PV特性から近似式を算出して弁開度毎の圧力の予測値を算出することで圧力予測値テーブル111を生成する方法を例示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、ポジショナ1の製造工程や出荷テスト時において予め取得した測定データ等から弁開度毎の各圧力の関係式を推定しておき、その推定した関係式を予め記憶部104に記憶しておく。そして、圧力予測部105が圧力予測値テーブル111を作成する際に、記憶部104に記憶された関係式を用いて各弁開度における各圧力センサの予測値を算出することによって、圧力予測値テーブル111を生成してもよい。
あるいは、例えばオートセットアップ時において、作成予定の圧力予測値テーブル111の項目に従って弁開度を変化させたときの各圧力センサの出力を測定し、それらの実測値を予測値として圧力予測値テーブル111に記憶させてもよい。
また、実施の形態1,2において、ポジショナ1,6が圧力予測値テーブル111,111A,111Bを作成する場合を例示したが、これに限られず、上位装置4等のポジショナ1,6以外の外部装置によって圧力予測値テーブル111,111A,111Bを作成しておき、作成した圧力予測値テーブル111,111A,111Bをポジショナ1,6の記憶部104に記憶しておいてもよい。この場合、ポジショナ1,6は、圧力予測部105を備えていなくてもよい。
また、実施の形態1,2において、ポジショナ1,6が、上位装置4から圧力センサ診断処理の実行の指示を受け取った後に、PV安定状態を判定してから圧力センサ診断処理を開始する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、ポジショナ1から安定度判定部107によるPV安定状態の検出結果を上位装置4に送信し、上位装置4がその判定結果を受け取った後に、圧力センサ診断処理の実行の指示をポジショナ1に対して送信するようにしてもよい。この場合、ポジショナ1は、上位装置4から圧力センサ診断処理の実行の指示を受け取った後に、PV安定状態の判定結果を参照することなく、圧力センサ診断処理を開始すればよい。
また、ポジショナ1,6は、例えばバルブ制御システム200の運転開始時(再開時)において、ポジショナ1のオートセットアップの実行に引き続き、診断部108が圧力センサ診断処理を開始してもよい。
この場合、ポジショナ1,6は、例えば、上位装置4からの指示に従って調節弁3を制御する通常動作モードと、通常の調節弁3に対する制御を停止した状態で圧力センサ診断処理を実行する圧力センサ診断モードの2つの動作モードを有し、圧力センサ診断モードでは、上述の図8に示した処理フローに従って圧力センサ診断処理を行えばよい。このとき、例えば、ポジショナ1,6自らが、弁開度の設定値SPを圧力予測値テーブル111に従って変化させ、夫々の弁開度において圧力センサの異常判定処理を行ってもよい。
また、実施の形態1、2において、圧力センサの異常判定処理において、何れか1つの弁開度において異常ありと判定された場合に当該圧力センサが異常であると判定する処理フローを例示したが、これに限られず、複数の弁開度において異常ありと判定された場合に、当該圧力センサが異常であると判定してもよい。例えば、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の異常判定処理において、弁開度0%において異常あり(S413において“NO”判定)と判定され、且つ弁開度100%において異常あり(S414において“NO”)と判定された場合に、出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16が異常であると診断してもよい。
また、実施の形態1、2において、ポジショナ1,6が4つの圧力センサ14〜17を有する場合を例示したが、ポジショナ1,6に内蔵される圧力センサの個数はこれに限定されない。例えば、ポジショナ1,6が、単動用のポジショナであって、供給空気圧Ps検出用の圧力センサ14と出力空気圧Po1検出用の圧力センサ16の2つの圧力センサしか備えていない場合には、これら2つの圧力センサについて上述の圧力センサ診断処理を行えばよい。この場合には、圧力センサ14の予測値と圧力センサ16の予測値とに基づく圧力予測値テーブルを作成し、上述と同様の手順で各圧力センサの異常判定処理を行えばよい。
また、実施の形態1、2において、ステップS2において診断開始条件を満足した場合に、圧力センサ診断処理として全ての圧力センサ14〜17の異常判定処理を実行する場合を例示したが、これに限られない。例えば、診断開始条件毎に異常判定処理を行う圧力センサを指定しておき、その診断開始条件を満たした場合にその指定された圧力センサに対する異常判定処理のみを行うようにしてもよい。また、診断開始条件114として“0%”および“100%”のみを指定弁開度として登録しておき、中間の弁開度においては診断処理を行わないようにしてもよい。
このように、記憶部104に記憶する診断開始条件114を種々変更することによって、診断対象の圧力センサや診断処理を開始するタイミング等をユーザの要求に合せることができる。
また、実施の形態1、2において、ポジショナ1,6が圧力センサ診断処理に関する全ての処理(図8のステップS1〜S5)を実行する場合を例示したが、これらの処理の一部または全部を、上位装置4またはバルブ制御システム200,201にネットワークを介して接続されるサーバ等の情報処理装置(例えば、監視端末)が実行してもよい。
例えば、図8に示した処理フローにおいて、ステップS1〜S4までの処理を上記情報処理装置が実行し、上記情報処理装置が圧力センサ診断処理結果を示すデータをポジショナ1,6に送信し、ポジショナ1,6の表示部18に表示させてもよい。
また、安定度判定部107が弁開度の実測値PVに基づいて弁開度が安定したか否かを判定する場合を例示したが、これに限られず、圧力の実測値も利用して判定を行ってもよい。例えば、安定度判定部107は、弁開度の実測値PVの変化量ΔPV、および弁開度の設定値SPの変化量ΔSPを夫々算出し、算出した夫々の値が対応する閾値よりも大きいか否かを判定する。更に、安定度判定部107は、圧力の実測値(例えば、出力空気圧Po1、Po2、およびノズル背圧Pnの実測値の少なくとも一つ)が所定の範囲内に収まっているか否かを判定する。そして、安定度判定部107は、ERR、ΔPV、およびΔSPが所定の条件を満足し、且つ圧力の実測値が所定の範囲内に収まっている場合に、弁開度の実測値PVが安定したと判定する。これによれば、より高精度に弁開度の安定度を判定することができる。