以下、本発明の分離方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明の分離方法について説明するのに先立って、本発明で用いられる吸着装置の一例について説明する。
なお、以下では、吸着装置を用いて分離する負帯電物質としては、酸性タンパク質を代表として挙げ、この酸性タンパク質を、酸性タンパク質と夾雑物とを含有する試料液中から、吸着装置を用いて単離(分離)する場合を代表に説明する。
<吸着装置>
図1は、本発明で用いる吸着装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「流入側」、下側を「流出側」と言う。
ここで、流入側とは、目的とする酸性タンパク質を分離(精製)する際に、例えば、試料液(試料を含む液体)、溶出液であるリン酸系緩衝液のような緩衝液等の液体を、吸着装置内に供給する側のことを言い、一方、流出側とは、前記流入側と反対側、すなわち、前記液体が吸着装置内から流出する側のことを言う。
酸性タンパク質を分離(精製)する、図1に示す吸着装置1は、カラム2と、粒状の吸着剤(充填剤)3と、2枚のフィルタ部材4、5とを有している。
カラム2は、カラム本体21と、このカラム本体21の流入側端部および流出側端部に、それぞれ装着されるキャップ(蓋体)22、23とで構成されている。
カラム本体21は、例えば円筒状の部材で構成されている。カラム本体21を含めカラム2を構成する各部(各部材)の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、各種樹脂材料、各種金属材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。
カラム本体21には、その流入側開口および流出側開口を、それぞれ塞ぐようにフィルタ部材4、5を配置した状態で、その流入側端部および流出側端部に、それぞれキャップ22、23が螺合により装着される。
このような構成のカラム2では、カラム本体21と各フィルタ部材4、5とにより、吸着剤充填空間20が画成されている。そして、この吸着剤充填空間20の少なくとも一部に(本実施形態では、ほぼ満量で)、吸着剤3が充填されている。
吸着剤充填空間20の容積は、試料液の容量に応じて適宜設定され、特に限定されないが、試料液1mLに対して、0.1〜100mL程度が好ましく、1〜50mL程度がより好ましい。
また、カラム本体21に各キャップ22、23を装着した状態で、これらの間の液密性が確保されるように構成されている。
各キャップ22、23のほぼ中央には、それぞれ、流入管24および流出管25が液密に固着(固定)されている。この流入管24およびフィルタ部材4を介して吸着剤3に、前記液体が供給される。また、吸着剤3に供給された液体は、吸着剤3同士の間(間隙)を通過して、フィルタ部材5および流出管25を介して、カラム2外へ流出する。このとき、試料液(試料)に含まれる酸性タンパク質と、酸性タンパク質以外の物質からなる混入物(夾雑物)とは、吸着剤3に対する吸着性の差異およびリン酸系緩衝液に対する親和性の差異に基づいて分離される。
各フィルタ部材4、5は、それぞれ、吸着剤充填空間20から吸着剤3が流出するのを防止する機能を有するものである。これらのフィルタ部材4、5は、それぞれ、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエーテルポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる不織布、発泡体(連通孔を有するスポンジ状多孔質体)、織布、メッシュ等で構成されている。
吸着剤3は、Ca10(PO4)6(OH)2−2xF2X[式中、xは0<x≦1である。]の化学式で表されるフッ素アパタイトで構成され、本実施形態では、フッ素アパタイトの焼結粒子で構成されている。
このフッ素アパタイトは、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたものであり、具体的には、そのフッ素原子による置換率が、0%超、100%以下となっているものである。
ここで、フッ素アパタイトは、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部がフッ素原子で置換されていることに起因して、ハイドロキシアパタイトと比較して、耐酸性に優れるものとなる。その結果、吸着剤3に吸着した酸性タンパク質を溶出液で溶出させる際に、用いる溶出液の選択の幅が広がる。すなわち、溶出液のpH値を広範囲に設定することができるため、高精度で酸性タンパク質が精製される条件に、溶出液をより確実に設定することができるようになる。
このように、水酸基をフッ素原子で置換することにより、フッ素アパタイトの耐酸性が向上するが、これに反して、水酸基がフッ素原子で置換されると、フッ素アパタイトで構成される吸着剤3への酸性タンパク質の吸着能(吸着率)が低下してくることが本発明者の検討により判ってきた。
ところで、酸性タンパク質は、一般的に、その構成アミノ酸として酸性アミノ酸を比較的多く含んでおり、これに起因して負に帯電するタンパク質(負電荷タンパク質)である。一方、フッ素アパタイトは、その結晶構造中に、多量のカルシウム原子(カルシウムイオン)とリン酸基とを含んでおり、正に帯電するCaサイトと、負に帯電するリン酸サイトとを形成している。
したがって、酸性タンパク質は、一般的に、フッ素アパタイトが有するCaサイトとの間でイオン結合を形成することで、フッ素アパタイトに結合(吸着)することとなるが、フッ素アパタイトにおいて水酸基がフッ素原子に置換されることで、Caサイトに近接する負帯電性を有するフッ素原子が正帯電性を有するCaサイトに対して何らかの影響をおよぼし、その結果、フッ素アパタイトで構成される吸着剤3への酸性タンパク質の吸着能が低下するものと推察される。なお、何らかの影響とは、フッ素原子がCaサイトに結合することであり、そのため、酸性タンパク質とCaサイトの吸着を阻害すると考えられる。
また、このような酸性タンパク質の吸着能の低下は、吸着剤3を構成するフッ素アパタイトの焼結粒子を生成する際の焼結温度が450℃以下、特に400℃以下のように低い場合に顕著に認められ、400℃超(さらに、450℃超、特に、650℃超)のように高い場合では顕著には認められないことが本発明者のさらなる検討により判ってきた。これは、焼結温度が高くなるほど、フッ素アパタイトを構成するフッ素原子が焼結粒子内部に取り込まれる傾向を示し、その結果、酸性アミノ酸の吸着に関与するCaサイトすなわち焼結粒子の表面に露出するCaサイトに対して影響をおよぼすフッ素原子の絶対量が減少することによると考えられる。すなわち、400℃以下の焼結温度で焼結された焼結粒子が吸着剤3として用いられる際に、吸着剤3への酸性タンパク質の吸着能が低下する傾向が顕著に認められる。なお、焼結温度が低すぎる場合は、焼結が不十分となり、焼結粒子の耐久性が劣る恐れがあるので、焼結温度は300℃以上であることが好ましい。
さらに、水酸基のフッ素原子による置換率は、0%超100%以下であるが、5%以上100%以下であることが好ましく、20%以上100%以下であることがより好ましく、25%以上75%以下であることがさらに好ましい。すなわち、前記化学式中、xは0<x≦1であるが、0.05≦x≦1.00であることが好ましく、0.20≦x≦1.00であることがより好ましく、0.25≦x≦0.75であることがさらに好ましい。かかる置換率でフッ素原子により置換されているフッ素アパタイトにおいて、焼結粒子が備えるCaサイトに対して影響をおよぼすフッ素原子の絶対量が多くなり、その結果、酸性タンパク質の吸着剤3に対する吸着能の低下が顕著に認められる。
なお、酸性タンパク質の分離方法に、上記のようなフッ素アパタイトを吸着剤3として用いる際に、本発明の分離方法を適用することで、吸着剤3に対して、多くの吸着量で酸性タンパク質を吸着させることができるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
また、フッ素アパタイトを製造する製造方法についても、後に詳述する。
吸着剤3の形態(形状)は、特に限定されず、例えば、粒状(顆粒状)、ペレット状(小塊状)、ブロック状(例えば、隣接する空孔同士が互いに連通する多孔質体、ハニカム形状)等とすることができるが、中でも、粒状(顆粒状)であるのが好ましい。これにより、その表面積を増大させることができ、酸性タンパク質の分離能の向上を図ることができる。
粒状の吸着剤3の平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜150μm程度であるのが好ましく、10〜80μm程度であるのがより好ましい。このような平均粒径の吸着剤3を用いることにより、前記フィルタ部材5の目詰まりを確実に防止しつつ、吸着剤3の表面積を十分に確保することができる。
さらに、粒状の吸着剤3の比表面積は、より広いほうが好ましいが、フッ素アパタイトを後述するような製造方法を用いて製造する場合、その比表面積は、30m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、42m2/g以上50m2/g以下であることがより好ましい。後述する製造方法において、水酸基のフッ素原子による置換率を、好ましくは20%以上100%以下に設定することにより、その比表面積を前記範囲内とすることができるため、酸性タンパク質の分離能の向上を図ることができる。
なお、吸着剤3は、その全体がフッ素アパタイトで構成されたものであってもよく、担体(基体)の表面をフッ素アパタイトで被覆したものであってもよいが、その全体がフッ素アパタイトで構成されたものであるのが好ましい。これにより、吸着剤3の強度をさらに向上させることができ、多量の酸性タンパク質を分離する際の使用に適した吸着剤3とすることができる。
また、本実施形態のように、吸着剤3を吸着剤充填空間20にほぼ満量充填する場合には、吸着剤3は、吸着剤充填空間20の各部において、ほぼ同一の組成をなしているのが好ましい。これにより、吸着装置1は、酸性タンパク質の分離(精製)能が特に優れたものとなる。
なお、吸着剤充填空間20の一部(例えば流入管24側の一部)に吸着剤3を充填し、その他の部分には他の吸着剤を充填するようにしてもよい。
<分離方法>
次に、このような吸着装置1を用いた酸性タンパク質の分離方法(本発明の分離方法)について説明する。
[1] 調製工程
まず、精製すべき(目的とする)酸性タンパク質(アルブミン、抗体等)と、酸性タンパク質以外の物質からなる混入物(夾雑物)と、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを含有する試料液を用意する。
酸性タンパク質が遺伝子組み換えタンパク質(モノクローナル抗体等)である場合、試料液としては、酸性タンパク質をコードする遺伝子を含む核酸を導入したヒツジ、ウサギ、ニワトリ等の哺乳動物、カイコ等の昆虫のような動物、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のCHO細胞のような動物細胞、大腸菌のような微生物等からの分泌物や、それらの細胞質成分等に、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを添加したものが挙げられる。
また、酸性タンパク質が天然のタンパク質である場合、試料液としては、例えば、各種動物由来の血液(血漿)、リンパ液、唾液、鼻汁のような体液等に、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを添加したものが挙げられる。
さらに、酸性タンパク質としては、BSA、HSA、フィブリノゲン、ペプシノーゲン、α−グロブリン、β−グロブリンおよびγ−グロブリン等が挙げられる。
なお、これらの酸性タンパク質は、そのアミノ酸配列の一部のアミノ酸が他のアミノ酸に置き換えられた改変体であっても良い。
また、前記微生物等からの分泌物や、動物由来の体液は、そのまま用いてもよいが、これらを、フィルタ等の濾過膜で濾過したものを用意し、その後、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを添加することで、試料液を調製することが好ましい。
さらに、夾雑物としては、塩基性タンパク質、アミノ酸、ペプチド、DNA、RNAのような核酸の他、目的とする酸性タンパク質とは異なる分子量または等電点を備える酸性タンパク質等が挙げられる。
また、リン酸を含まない緩衝液としては、リン酸を含まないものであれば特に限定されないが、例えば、ヘペス(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、メス(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液、トリス(Tris−hydroxymethylammonium)緩衝液、モプス(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)緩衝液、ピペス(ピペラジン−1,4−ジエタンスルホン酸)緩衝液、タプス(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)緩衝液およびテス(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)緩衝液等が挙げられ、これらのうち、好ましくは、ヘペス(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)緩衝液、メス(2−モルホリノエタンスルホン酸)緩衝液およびトリス(Tris−hydroxymethylammonium)緩衝液等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。これにより、フッ素アパタイトが備えるCaサイトに対して、緩衝液に由来するリン酸が吸着するようになるのを確実に防止することができる。
また、試料液におけるリン酸を含まない緩衝液の濃度は、好ましくは1.0mM以上100mM以下程度、より好ましくは5.0mM以上50mM以下程度に設定される。試料液における緩衝液の濃度をかかる範囲内に設定することにより、次工程[2]において、試料液を吸着剤3に接触させた際に、試料液におけるpHの変化を的確に抑制または防止することができるため、酸性タンパク質を高精度に単離(精製)することができる。
さらに、陽イオンとしては、1価または2価のものであれば特に限定されないが、好ましくは、Na+、K+、NH4 +、Li+、Mg2+、Zn2+、Fe2+およびSr2+等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。これにより、フッ素アパタイトが備えるリン酸サイトと、陽イオンとの間でイオン結合を確実に形成させることができる。
また、これらの陽イオンは、試料液を調製する際には、塩として添加され、これにより、試料液中において、陽イオンとして存在する。このような塩としては、特に限定されないが、例えば、NaCl、KCl、NH4Cl、MgCl2等が挙げられる。
試料液における1価または2価の陽イオンの濃度は、好ましくは0.01M以上1.0M以下程度、より好ましくは0.1M以上0.5M以下程度に設定される。試料液における緩衝液の濃度をかかる範囲内に設定することにより、次工程[2]において、試料液を吸着剤3に接触させた際に、フッ素アパタイトが備えるリン酸サイトと、陽イオンとの間でイオン結合をより確実に形成させることができる。
また、試料液のpHは、5.0以上9.0以下程度であるのが好ましく、5.0以上7.0以下程度であるのがより好ましく、6.0程度であるのがさらに好ましい。これにより、酸性タンパク質の変性を招くことなく、次工程[2]において、試料液を吸着剤3に接触させた際に、フッ素アパタイトが備えるCaサイトと、酸性タンパク質との間でイオン結合をより確実に形成させることができる。
[2] 供給工程
次に、得られた試料液を、流入管24およびフィルタ部材4を介して吸着剤3に供給して、カラム2(吸着装置1)内を通過させて、吸着剤3に接触させる。
これにより、吸着剤3に対して吸着能が高い酸性タンパク質や、酸性タンパク質以外の混入物(夾雑タンパク質等)の中でも吸着剤3に対して比較的吸着能の高いものは、カラム2内に保持される。そして、吸着剤3に対して吸着能の低い混入物は、フィルタ部材5および流出管25を介してカラム2内から流出する。
この際、本発明では、試料液(吸着液)として、単離すべき酸性タンパク質と混入物(夾雑物)との他に、さらに、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを含むものがフッ素アパタイトで構成される吸着剤3に供給される。
ここで、吸着剤3すなわち焼結粒子が、フッ素アパタイトで構成されると、前述の通り、焼結粒子が備えるCaサイトに対してフッ素原子が影響をおよぼしており、これに起因して、酸性タンパク質の吸着剤3に対する吸着能の低下が認められると言う問題があった。
かかる問題点に対して、まず、試料液中にリン酸を含まない緩衝液が含まれていると、以下に示すような利点が得られる。すなわち、試料液中に緩衝液に由来するリン酸が含まれていると、焼結粒子が備えるCaサイトに対して、このリン酸と酸性タンパク質とが競合する。フッ素アパタイトでは、Caサイトに対してフッ素原子が影響をおよぼしており、その上に、緩衝液に由来するリン酸が酸性タンパク質と競合するため、酸性タンパク質の吸着剤3に対する吸着能が低下する。これに対して、試料液中に含まれる緩衝液として、リン酸を含まないものを選択することで、緩衝液に由来するリン酸と酸性タンパク質との競合が防止されるため、これに起因する、酸性タンパク質の吸着剤3に対する吸着能の低下を抑制することができる。
しかしながら、緩衝液に由来するリン酸と酸性タンパク質との競合が防止されたとしても、未だ、焼結粒子が備えるCaサイトに対してフッ素原子が影響をおよぼしており、緩衝液としてリン酸を含まないものを用いるだけでは、この点は解消されない。
これに対して、本発明では、さらに、試料液中に1価または2価の陽イオンが含まれている。これにより、この陽イオンは、フッ素アパタイトが備える、負に帯電するリン酸サイトとの間でイオン結合を形成することから、負帯電性を有する酸性タンパク質との間で生じる反発力の大きさを低減させることができる。よって、焼結粒子が備えるCaサイトに対してフッ素原子が影響をおよぼしていたとしても、リン酸サイトと酸性タンパク質との間の反発力が低減しているため、Caサイトと酸性タンパク質との間でイオン結合を形成させることができる。そのため、酸性タンパク質の吸着剤3に対する吸着能の低下を確実に抑制または防止することができる。
以上のことから、試料液に、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とが含まれることで、吸着剤3に対して、多くの吸着量で酸性タンパク質を吸着させることができる。
なお、本工程に先立って、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とを含む平衡化液を調製し、この平衡化液を予め吸着剤3に供給するようにしてもよい。これにより、フッ素アパタイト(吸着剤3)が安定化(平衡化)され、本工程における、酸性タンパク質の吸着剤3による吸着がより円滑に行われることとなる。
[3] 分画工程
次に、流入管24からカラム2内に、酸性タンパク質を溶出させるための溶出液として例えば、リン酸系緩衝液を供給して、カラム2内から流出管25を介して流出する流出液を、所定量ずつ分画(採取)する。これにより、吸着剤3に吸着している酸性タンパク質および混入物は、それぞれ、それぞれが有する吸着剤3に対する吸着力の差に応じて、各分画内に溶出した状態で回収(分離)される。
すなわち、吸着剤3には、酸性タンパク質および混入物が、それぞれに固有の吸着(担持)力で特異的に吸着しているため、この吸着力の差に応じて、酸性タンパク質と混入物とが分離・精製(単離)される。
緩衝液には、リン酸系緩衝液が好ましく用いられ、このリン酸系緩衝液としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウムおよびリン酸アンモニウム等が挙げられる。また、緩衝液は、リン酸系緩衝液の他、上述した、MESやHEPESのようなリン酸を含まない緩衝液であってもよい。
リン酸系緩衝液を用いる場合、そのpHは、特に限定されないが、好ましくは5.5〜8.5程度、より好ましくは6.5〜7.5程度に設定される。これにより、酸性タンパク質を確実に溶出させることができ、その精製率の向上を図ることができる。
このリン酸系緩衝液の温度も、特に限定されないが、10〜50℃程度であるのが好ましく、20〜35℃程度であるのがより好ましい。これにより、分離する酸性タンパク質の変質(変成)を防止することができる。
また、リン酸系緩衝液の流速は、0.1〜10mL/分程度であるのが好ましく、1〜5mL/分程度であるのがより好ましい。このような流速で、酸性タンパク質の分離を行うことにより、分離操作に長時間を要することなく、目的とする酸性タンパク質を確実に分離すること、すなわち、高純度な酸性タンパク質を得ることができる。
以上のような操作により、所定の画分に、酸性タンパク質が回収される。
このような酸性タンパク質の回収の際に、前記工程[2]において、試料液として、1価または2価の陽イオンと、リン酸を含まない緩衝液とが含まれるものが用いられることにより、吸着剤(充填剤)3に対して、多くの吸着量で酸性タンパク質が吸着しているため、本工程において、効率よく酸性タンパク質を単離することができる。
なお、以上の説明では、酸性タンパク質を負帯電物質の一例としたが、負帯電物質としては、その他、酸性アミノ酸、DNA、RNA、および負電荷リポソーム等が挙げられ、本発明によれば、これらの負帯電物質も酸性タンパク質と同様に、容易かつ高純度で分離することが可能である。
<フッ素アパタイトの製造方法>
次に、前述したようなフッ素アパタイトは、いかなる製造方法を用いて製造してもよく、公知の湿式合成法、乾式合成法を用いることができるが、例えば、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーと、フッ化水素を含有するフッ化水素含有液とを混合した混合液中において、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素とを反応させることにより、水酸基の少なくとも一部を、フッ素原子で置換して得る方法により製造することができる。
この方法によれば、例えば、ハイドロキシアパタイトを含むスラリー中に、フッ素源としてフッ化水素アンモニウムを添加することにより合成した場合等に比較して、フッ素源としてフッ化水素を用いるので、不純物の残留がないか、または極めて少ないフッ素アパタイトを得ることができる。
このため、結晶性が高く、これに起因して耐酸性に優れたフッ素アパタイトとなる。したがって、かかるフッ素アパタイトを用いて構成される吸着剤3を用いれば、分離に比較的pHの低い溶出液を用いざるを得ない酸性タンパク質の分離も、吸着剤3の溶解を伴うことなく行うことができる。このため、かかる酸性タンパク質の分離をも確実に行うことができるようになる。
以下、この方法について詳述する。
A1:まず、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーを調製する。
以下、このスラリーとして、ハイドロキシアパタイト一次粒子およびその凝集体が分散されたスラリーを調製する方法について説明する。
ハイドロキシアパタイト一次粒子は、各種合成方法を用いて得ることができるが、カルシウム源とリン酸源との少なくとも一方を溶液として用いる湿式合成法によって合成するのが好ましい。
これにより得られるハイドロキシアパタイトは、微細な一次粒子となる。かかるハイドロキシアパタイト一次粒子は、その形状が小さいため、フッ化水素との反応性が極めて高い。
カルシウム源としては、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム等を用いることができる。一方、リン酸源としては、リン酸、リン酸アンモニウム等を用いることができる。これらの中でも、特に、カルシウム源として水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを主成分とするものが、また、リン酸源としてリン酸を主成分とするものが好ましい。
具体的には、例えば、容器内で、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)または酸化カルシウム(CaO)の懸濁液中に、リン酸(H3PO4)溶液を滴下し、撹拌混合することにより、ハイドロキシアパタイトが合成され、ハイドロキシアパタイト一次粒子が生成し、スラリーが得られる。
また、スラリー中におけるハイドロキシアパタイト一次粒子の含有量は、1〜20wt%程度であるのが好ましく、5〜12wt%程度であるのがより好ましい。
A2:一方、ハイドロキシアパタイトを含むスラリーとは別に、フッ化水素を含有するフッ化水素含有液を調製する。
フッ化水素を溶解する溶媒は、ハイドロキシアパタイトとフッ化水素との反応を阻害しないものであれば、いかなるものも使用が可能である。
かかる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられ、これらを混合して用いることもできるが、中でも、特に、水であるのが好ましい。
フッ化水素含有液中のフッ化水素の含有量は、1〜60wt%程度であるのが好ましく、2.5〜10wt%程度であるのがより好ましい。
A3:次に、調製されたスラリーと調製されたフッ化水素含有液とを混合することにより、フッ化水素含有液を含むスラリー(反応液)中において、ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素とを反応させて、フッ素アパタイト一次粒子を得る。
すなわち、ハイドロキシアパタイト一次粒子に、フッ化水素を接触させることで、次式に示すように、ハイドロキシアパタイトが有する水酸基の少なくとも一部をフッ素原子で置換して、フッ素アパタイトに変換して、フッ素アパタイト一次粒子を得る。
Ca10(PO4)6(OH)2 →
Ca10(PO4)6(OH)2−2xF2X
[ただし、式中、xは0<x≦1ある。]
このように、ハイドロキシアパタイト一次粒子を含むスラリー中で、ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素を反応させることにより、フッ素アパタイト一次粒子を簡便に製造することができる。
なお、フッ素アパタイト一次粒子における水酸基のフッ素原子による置換率の設定は、本工程A3における、調製されたスラリーと調製されたフッ化水素含有液との混合比(すなわち、フッ化水素含有液の添加量)を、適宜設定することにより容易に行うことができる。
また、フッ素源として、フッ化水素(HF)を用いるので、フッ化水素アンモニウム(NH4F)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化マグネシウム(MgF2)やフッ化カルシウム(CaF2)等を用いる場合に比較して副反応生成物の生成がないか、あるいは極めて少ない。
具体的には、フッ素アパタイト中の不純物濃度は、できる限り低いことが好ましく、300ppm以下であるのが好ましく、100ppm以下であるのがより好ましい。これにより、フッ素アパタイト一次粒子は、不純物濃度が低くなることに起因して、フッ素アパタイトからのフッ素原子の遊離が抑制され、より耐酸性の高いものとなる。
なお、ハイドロキシアパタイト(一次粒子)とフッ化水素との反応条件(例えば、pH、温度、時間等)を調整することにより、フッ素アパタイト一次粒子中の不純物濃度を前記範囲内に、ひいては前記上清液中で遊離するフッ素濃度を前記範囲内に確実に設定することが可能である。
特に、スラリーのpHを、フッ化水素含有液を混合することにより、好ましくは2.5〜5程度、より好ましくは2.7〜4程度の範囲内に調整し、この状態で、ハイドロキシアパタイト(一次粒子)とフッ化水素を反応させる。これにより、前記濃度をより確実に前記範囲内に設定することが可能である。なお、本明細書中において、スラリーのpHとは、フッ化水素含有液の全量をスラリーに混合した時点のpHとする。
ここで、スラリーのpHを2.5未満に調製すると、ハイドロキシアパタイト自体が溶解する傾向を示し、フッ素アパタイトに変換して、一次粒子を得ることが困難となる恐れがある。さらに、一次粒子にフッ化水素含有液を混合する際に用いる装置の構成成分が溶出し、得られる一次粒子の純度が低下するという問題も生じ得るおそれがある。さらに、フッ化水素含有液を使用してpH2.5未満である低いpHにスラリーを調整することは、技術的に極めて困難である。
一方、フッ化水素含有液を用いて、スラリーのpHを5超に調整するには、スラリー中に大量の水を添加せざるを得ない。このため、スラリーの全量が極めて多くなり、スラリー全量に対するフッ素アパタイト一次粒子の収率が低下するおそれがあるため、工業的にも不利である。
これらに対して、スラリーのpHを2.5〜5に調整することにより、反応により生成したフッ素アパタイト(一次粒子)が一旦溶解傾向を示した後に、再結晶することになる。このため、結晶性の高いフッ素アパタイト一次粒子を得ることができる。
また、スラリーとフッ化水素含有液とは、これらを一時(同時)に混合するようにしてもよいが、スラリー中にフッ化水素含有液を滴下することにより混合するのが好ましい。
フッ化水素含有液を滴下する速度は、1〜100L/時間程度であるのが好ましく、3〜100L/時間程度であるのがより好ましい。
また、ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素との反応は、スラリーを撹拌しつつ行うのが好ましい。撹拌によって、ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素とが均一に接触し、反応を効率よく進行させることができる。また、得られるフッ素アパタイト一次粒子間でのフッ素原子の置換率をより均一なものとすることができ、例えば、かかるフッ素アパタイト一次粒子を用いて、吸着剤(乾燥粒子または焼結粒子)3を製造した場合、その特性のバラツキが小さくなり、より信頼性の高いものを得ることができる。
この場合、スラリーを撹拌する撹拌力は、スラリー1Lに対して、0.1〜3W程度の出力であるのが好ましく、0.5〜1.8W程度の出力であるのがより好ましい。
また、フッ化水素の混合量は、フッ素量がハイドロキシアパタイトが有する水酸基の量に対して0.05〜0.55倍程度となるようにするのが好ましく、0.15〜0.35倍程度となるようにするのがより好ましい。
ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素とを反応させる際の温度は、特に限定されないが、5〜50℃程度であるのが好ましく、20〜40℃程度であるのがより好ましい。
この場合、ハイドロキシアパタイト一次粒子にフッ化水素を滴下する時間(加える時間)は、30分〜16時間程度かけて行うのが好ましく、1〜8時間程度かけて行うのがより好ましい。
以上のような方法で得られたフッ素アパタイト一次粒子を含むスラリーは、乾燥や造粒することにより、乾燥粒子(二次粒子)を得、さらに、この乾燥粒子を焼成して焼結粒子とすることができ、この焼結粒子が吸着剤3として用いられる。
また、一次粒子を含むスラリーを乾燥や造粒する方法としては、特に限定されないが、例えば、スラリーをスプレードライヤー等により噴霧乾燥する方法等が挙げられる。
さらに、乾燥粒子を焼成する際の焼成温度は、200〜800℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、一次粒子内や一次粒子同士間(凝集体)で形成される間隙(空孔)を残存させつつ、機械的強度にも優れる吸着剤3を得ることができる。
なお、本発明の分離方法は、上記の温度範囲で焼成することで得られる焼結粒子のうち、400℃以下の焼成温度で焼成されたものを吸着剤3として用いる場合に、前述の通り、酸性アミノ酸の吸着に関与するCaサイトに対して影響をおよぼすフッ素原子の絶対量が増加することから、より好適に適用される。
以上、本発明の分離方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の分離方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.フッ素アパタイトの製造
[焼結粒子(フッ素アパタイト)1]
[1A]まず、水酸化カルシウムを純水に懸濁させ、その中へ、リン酸水溶液を滴下していき、かつ十分に撹拌した。これにより、10wt%のハイドロキシアパタイト一次粒子を含むスラリー200Lを得た。
なお、得られた合成物がハイドロキシアパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。
一方、4.2wt%フッ化水素(森田化学工業社製、「HF−20」)をフッ化水素含有液として用意した。
[2A]次に、スラリーを1kWの撹拌力で撹拌した状態で、フッ化水素含有液を、速度5L/時間で滴下した。
なお、フッ化水素含有液の滴下を終了した時点において、スラリーのpHは、3.00であった。また、フッ化水素の混合量は、フッ素量がハイドロキシアパタイトが有する水酸基の量に対して約1.05倍であった。
引き続き、このスラリーを、温度30℃で48時間、1kWの撹拌力で撹拌を行った。これにより、ハイドロキシアパタイト一次粒子とフッ化水素とを反応させ、フッ素アパタイト一次粒子を含むスラリーを得た。
なお、スラリー中の反応生成物がフッ素アパタイトであることを粉末X線回折法により確認した。また、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイト一次粒子におけるフッ素原子の置換率は、100%であった。
また、粉末X線回折の結果、フッ素アパタイト乾燥粒子中、フッ素アパタイト以外の生成物は、確認できなかった。
[3A]次に、フッ素アパタイト一次粒子を含むスラリーを、噴霧乾燥機(大川原化工機社製、「OC−20」)を用いて、150℃で噴霧乾燥して、球状の乾燥粒子を製造した。
[4A]次に、乾燥粒子の一部を中心粒径約40μmで分級した後、650℃×4時間、電気炉で焼成して、フッ素原子の置換率が100%であり、焼結温度が650℃の焼結粒子(フッ素アパタイト)1を得た。
[焼結粒子(フッ素アパタイト)2]
前記工程[2A]におけるフッ化水素含有液の滴下量を変更し、かつ、前記工程[4A]における乾燥粒子の焼結条件を700℃×4時間とすることで、フッ素原子の置換率が25%であり、焼結温度が700℃の焼結粒子(フッ素アパタイト)2を得た。
[焼結粒子(フッ素アパタイト)3]
前記工程[2A]におけるフッ化水素含有液の滴下量を変更し、かつ、前記工程[4A]における乾燥粒子の焼結条件を400℃×4時間とすることで、フッ素原子の置換率が25%であり、焼結温度が400℃の焼結粒子(フッ素アパタイト)3を得た。
[焼結粒子(ハイドロキシアパタイト)4]
前記工程[2A]におけるフッ化水素含有液の滴下を省略することで、フッ素原子の置換率が0%の焼結粒子(ハイドロキシアパタイト)4を得た。
なお、各焼結粒子1〜4におけるフッ素原子の置換率は、イオン電極を用いて、フッ素アパタイト中のフッ素濃度を測定し、得られた測定値を置換率に換算することにより求めた。
2.酸性タンパク質吸着能の評価
[試料液(10mM NaP)1]
[1B]まず、各焼結粒子1〜4を、それぞれ、ステンレスカラム(内径6.0mm×長さ35mm)の充填空間にほぼ満量となるように充填して、焼結粒子1〜4が充填されたサンプルNo.1〜4のカラムを製造した。
なお、各カラムに充填した焼結粒子1〜4の比表面積を、予め全自動BET比表面積測定装置(マウンテック社製、「Macsorb model-1201」)を用いてそれぞれ測定しておいた。
[2B]次に、BSA(牛血清アルブミン)0.1mg/mLとなるように、Albumin, bovine serum, >96% Essentially Fatty Acid Free (SIGMA社製、「A6003」)を、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶解させた後、0.22μmのフィルタで濾過し、さらに30分間脱気することで試料液1を得た。
[3B]次に、各焼結粒子が充填された各サンプルNo.のカラムについて、それぞれ、試料液1を調製する際に用いた緩衝液(10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0、温度25℃))を、通液速度0.71mL/minで通液することで平衡化した。
[4B]次に、各サンプルNo.のカラムを、それぞれ、クロマト装置に装着し、クロマト装置での吸光度値(280nm)を測定しつつ、試料液1をクロマト装置のポンプから送液した。
そして、各サンプルNo.のカラムについて、それぞれ、クロマト装置での溶出ピークの吸光度値(280nm)が、試料液(原液)の吸光度値(280nm)の10%となる時点まで送液した試料液から、酸性タンパク質吸着量を求めた。
なお、吸光度計(島津製作所社製、「UV Spectrophotometer UV-1800」)を用いて、試料液の吸光度値(280nm、リファレンス:純水)およびモル吸光係数値を測定することで、試料液1中の実際のタンパク質吸着量を求めた。
[試料液(10mM MES)2]
前記工程[2B]において、リン酸ナトリウム緩衝液に代えて、10mM MES緩衝液(pH6.0)を用いて、試料液2を調製したこと、また、前記工程[3B]において、リン酸ナトリウム緩衝液に代えて、10mM MES緩衝液(pH6.0)を用いて、各サンプルNo.のカラムにおける平衡化を行ったこと以外は、試料液1を用いた場合と同様にして、各サンプルNo.のカラムにおける酸性タンパク質の吸着量を求めた。
[試料液(10mM MES+0.1M NaCl)3]
前記工程[2B]において、リン酸ナトリウム緩衝液に代えて、(10mM MES+0.1M NaCl)緩衝液(pH6.0)を用いて、試料液3を調製したこと、また、前記工程[3B]において、リン酸ナトリウム緩衝液に代えて、(10mM MES+0.1M NaCl)緩衝液(pH6.0)を用いて、各サンプルNo.のカラムにおける平衡化を行ったこと以外は、試料液1を用いた場合と同様にして、各サンプルNo.のカラムにおける酸性タンパク質の吸着量を求めた。
以上のようにして求めた各試料液を用いた場合における、各焼結粒子1〜4への酸性タンパク質吸着量を、図2では、焼結粒子3と焼結粒子4とを比較して、また、図3では、焼結粒子1と焼結粒子3とを比較して、さらに、図4では、焼結粒子2と焼結粒子3とを比較して示す。
図2〜図4(特に図2)に示す通り、試料液として、試料液3を用いること、すなわち、リン酸を含まないMES緩衝液と、陽イオンとしてNa+を含む試料液を用いることにより、焼結粒子として、フッ素アパタイトで構成される焼結粒子3を選択したとしても、ハイドロキシアパタイトで構成される焼結粒子4を選択した場合とほぼ同等の酸性タンパク質の吸着能を焼結粒子が示すことが明らかとなった。
また、このような試料液3を用いることにより得られる効果は、図3、図4に示す通り、フッ素アパタイトで構成される焼結粒子の焼結温度が400℃の場合、すなわち、焼結粒子が備えるCaサイトに対して影響をおよぼすフッ素原子の絶対量が多くなっている場合に、顕著に発揮されることが判った。