以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
(特徴1)第1隙間の素線に沿ったプロファイルと、第2隙間の素線に沿ったプロファイルとが相違していてもよい。このような構成によると、コイルばねが圧縮されたときの第1部分と第2部分の関係を調整する自由度を大きくすることができる。
(特徴2)コイルばねを軸線に沿って上から見た場合において、第1座巻部の反有効巻部側の端部である先端部の円周方向の第1位置に対して、第2座巻部の反有効巻部側の端部である先端部の円周方向の第2位置は、第1位置から素線の巻方向に90°〜270°離れた位置に設けられていてもよい。第2位置が第1位置から90°〜270°離れた位置に設けられている場合、第2位置が第1位置から0°〜90°又は270°〜360°離れた位置に設けられている場合よりも、コイルばねに発生する横力が大きくなる場合がある。一方、コイルばねに発生する横力が大きくなると、第1隙間及び第2隙間を調整したときの横力低減効果も大きくなる。このため、第1位置と第2位置が上記の位置関係となる場合、第1隙間及び第2隙間を適切に調整することで、コイルばねを基準高さに圧縮したときにコイルばねに発生する横力をより抑制することができる。
(特徴3)第2位置は、第1位置から素線の巻方向に135°〜225°離れた位置に設けられていてもよい。第2位置が第1位置から135°〜225°離れた位置に設けられている場合、コイルばねに発生する横力が大きくなる場合がある。このため、第1隙間及び第2隙間を適切に調整することで、コイルばねを基準高さに圧縮したときにコイルばねに発生する横力をさらに抑制することができる。
まず、図1を用いて、実施例1のコイルばね50が用いられる減圧弁10について説明する。なお、減圧弁10は「調圧弁」の一例である。減圧弁10は、ハウジング12と、カバー14と、ピストン16と、ばね18、弁体20、及び実施例1に係るコイルばね50を備えている。ハウジング12には、図面の下方側から上方側に向かって、ハウジング12の外部に連通する連通孔12aと、連通孔12aと連通する連通孔12bと、連通孔12bに連通する連通孔12cと、連通孔12cに連通する連通孔12dが形成されている。連通孔12aの内径は連通孔12bの内径よりも小さく、連通孔12bの内径は連通孔12cの内径よりも小さく、連通孔12cの内径は連通孔12dの内径よりも小さい。また、連通孔12cの径方向外側には、連通孔12dに連通する連通孔12eが形成されている。連通孔12eは、屈曲しており、ハウジング12の外部に連通している。
ばね18は、連通孔12bに収容されている。ばね18の径は、連通孔12bの内径より小さく、連通孔12aの内径より大きくされている。ばね18の一端は連通孔12aと連通孔12bの段差に当接しており、ばね18の他端は弁体20に接続されている。弁体20は、連通孔12b、12cに収容されている。弁体20は、ばね18によって連通孔12d側に付勢されており、ピストン16に接続している。このため、ピストン16には、ばね18の付勢力が弁体20を介して作用している。連通孔12bと連通孔12cの境界部には弁座22が配置されている。弁座22は、弁体20の径方向外側に配置されている。弁座22には、連通孔12c側の空間42と連通孔12b側の空間を連通する貫通孔22aが形成されている。弁体20は、図の上下方向に移動可能となっており、弁体20が弁座22に当接する状態と、弁座22から離間する状態とに切替えられる。弁体20が弁座22に当接すると、弁座22の貫通孔22aが閉じられ、連通孔12b側の空間と連通孔12c側の空間42とが遮断される。弁体20が弁座22から離間すると、弁座22の貫通孔22aが開き、連通孔12c側の空間42と連通孔12b側の空間とが連通する。
カバー14は、連通孔12dに収容されている。カバー14の上部14aには、凹部30が設けられている。凹部30の下部には、貫通孔32が設けられている。貫通孔32の内径は、凹部30の内径よりも小さい。貫通孔32には、キャップ34が取付けられている。カバー14の下部14bは、円筒形状を有している。下部14bには、ピストン16が収容されている。ピストン16の外径は、下部14bの内径よりもわずかに小さい。ピストン16の外周面には、複数の溝16a、16b、16cが設けられている。溝16a、16cには、ガイド材(図示省略)が配置されており、溝16bには、シール材38が配置されている。カバー14及びピストン16により空間40が画定される。空間40には、コイルばね50が配置されている。空間40の高さH1(以下、基準高さH1とする)は、コイルばね50の自由長H0よりも低い。このため、コイルばね50は、圧縮された状態で空間40に配置されている。すなわち、コイルばね50には、取付荷重が作用している。ピストン16は、コイルばね50の取付荷重の反力により下方に向かって押し付けられている。このため、弁体20には、ピストン16を介してコイルばね50の付勢力が作用している。ここで、コイルばね50の付勢力は、ばね18の付勢力よりも大きい。通常時は、弁体20が弁座22から離間しており、弁座22の貫通孔22aが解放されているように、コイルばね50の付勢力及びばね18の付勢力は調整されている。
減圧弁10の動作について説明する。通常時は弁座22の貫通孔22aは解放されているため、減圧弁10の外部から連通孔12a、12b、12cを介して空間42に高圧ガスが供給される。空間42に供給された高圧ガスは、連通孔12eを通過して、減圧弁10の外部に供給される。空間42に供給される高圧ガスにより、ピストン16には圧力が作用する。空間42に供給された高圧ガスは、連通孔12dを通過するピストン16に作用する圧力とばね18の付勢力が、コイルばね50の付勢力を超えると、ピストン16及び弁体20が上方に移動する。弁体20が上方に移動することで、弁体20が弁座22に当接する状態となり、弁座22の貫通孔22aが閉じられる。これにより、空間42への高圧ガスの供給が停止される。この結果、空間42の圧力上昇を停止することができ、減圧弁10に供給される高圧ガスの圧力を所定圧力まで減圧して出力することができる。
図2〜5を用いて、減圧弁10に取付けられるコイルばね50について説明する。図2は、荷重が加えられていない状態のコイルばね50を示す。即ち、コイルばね50の高さは、自由長H0である。自由長H0は、基準高さH1よりも大きい。
図2に示すように、コイルばね50は、素線52を複数回巻回して形成されている。コイルばね50は、有効巻部54と、第1座巻部56と、第2座巻部58と、を備えている。第1座巻部56は、コイルばね50の上端部に設けられている。第1座巻部56は、自由長H0の状態において、上側の受け座と当接する部分であって、ばねとして機能しない部分である。以下では、第1座巻部56の素線52を、第1素線部という。第1座巻部56の巻数が略0.6となるように、第1座巻部56(詳細には、56b〜56cの範囲)の上面56aが研削されている(図3)。すなわち、第1素線部の巻数が略0.6巻となるように、素線52の上端から略0.6巻分が研削されている。本実施例では、座面がコイルばね50の軸線Aに直交するため、上面56aもコイルばね50の軸線Aに直交(水平)している。コイルばね50が減圧弁10に取り付けられている状態において、上面56aはカバー14に当接している。第2座巻部58は、コイルばね50の下端部に設けられている。第2座巻部58は、自由長H0の状態において、下側の受け座と当接する部分であって、ばねとして機能しない部分である。以下では、第2座巻部58の素線52を、第2素線部という。第2座巻部58の巻数が略0.6巻となるように、第2座巻部58(詳細には、58b〜58cの範囲)の下面58aが研削されている(図4)。座面がコイルばね50の軸線Aに直交するため、下面58aもコイルばね50の軸線Aに直交(水平)している。コイルばね50が減圧弁10に取り付けられている状態において、下面58aはピストン16に当接している。図3、4に示すように、第2座巻部58の先端部58b(反有効巻部側の端部)の円周方向の位置(第2位置)は、第1座巻部56の先端部56b(反有効巻部側の端部)の円周方向の位置(第1位置)から素線52の巻方向(図3の時計回りの方向)に略180°離れた位置に設けられている。なお、図3はコイルばね50を上方から見た状態を示す一方、図4はコイルばね50を下方から見た状態を示している。このため、図3の第1座巻部56の端末56cと図4の第2座巻部58の端末58cの位置関係は、コイルばね50を上方から見た場合の位置関係とは異なる。端末56cと端末58cの位置関係を把握するためには、図4を紙面裏側から見て判断する必要がある(例えば、図6)。有効巻部54は、第1座巻部56と第2座巻部58の間に設けられている。有効巻部54は、自由長H0の状態において、ばねとして機能する巻部であり、その巻数は略3.3巻である。以下では、有効巻部54の素線52を第3素線部という。図5に示すように、コイルばね50は、自由長H0の状態において、第1素線部と第3素線部の間、及び、第2素線部と第3素線部の間には、軸線Aの方向に線間隙間が設けられている。第1座巻部56の先端部56b(反有効巻部側の端部)における線間隙間を第1隙間とすると、第1隙間60の大きさは隙間g1である。第2座巻部58の先端部58b(反有効巻部側の端部)における線間隙間を第2隙間とすると、第2隙間62の大きさは隙間g2である。図5に示すように、隙間g1と隙間g2の大きさは異なっている。実施例1では、隙間g1は、隙間g2よりも大きく設定されている。隙間g1及び隙間g2は、コイルばね50に軸線A方向の荷重が加わることで縮まる。なお、図3より明らかなように、第1隙間60は第1座巻部56より下方に形成され、第2隙間62は第2座巻部58より上方に形成されている。
図6、7を用いて、コイルばね50に発生する横力FVについて説明する。図6は、コイルばね50を軸線Aに沿って上から見た場合の図であり、見易くする為に、第1座巻部56及び第2座巻部58のみを表示している。また、図6では、第1座巻部56を実線で示し、第2座巻部58を破線で示している。図7は、第1座巻部56及び第2座巻部58のみを、簡略化して示している。以下では、コイルばね50の第1隙間60及び第2隙間62が0より大きい場合であり、コイルばね50に荷重Fが作用する場合について説明する。
上述のように、第1座巻部56の上面56a及び第2座巻部58の下面58aは、軸線Aに対して直交する水平面となっている。このため、荷重Fは、第1座巻部56の上面56a及び第2座巻部58の下面58aに作用する。第1座巻部56の上面56aの荷重分布は均一にはならない。第1隙間60の隙間g1が0より大きい場合、上面56aの荷重分布は、第1座巻部56の端末56cで最大となり、先端部56bに近づくにしたがって小さくなる。このため、第1座巻部56に作用する荷重の重心C1の位置pは、軸線Aから端末56c側にずれる。また、第2座巻部58の下面58aの荷重分布も均一にならない。第2隙間62の隙間g2が0より大きい場合、第2座巻部58の荷重分布は、第2座巻部58の端末58cで最大となり、先端部58bに近づくにしたがって小さくなる。このため、第2座巻部58に作用する荷重Fの重心C2の位置qは、軸線Aから端末58c側にずれる。図6に示すように、第1座巻部56の重心C1の位置pと第2座巻部58の重心C2の位置qは重ならず、離間距離Dだけ離れている。また、図7に示すように、重心C1と重心C2を結んだ直線Lは、軸線Aに対して傾きθ分だけ傾く。このため、コイルばね50には、軸線Aに垂直方向の横力FV(=F*tanθ)が発生する。
コイルばね50に発生する横力FVが大きいと、ピストン16の摺動性が悪化し、減圧弁10が正確に作動しない虞がある。このため、減圧弁10に取付けられるコイルばね50の横力を低減する技術が望まれている。従来技術では、コイルばね50の有効巻数を調整することで、コイルばね50に発生する横力Fvを制御している。しかしながら、減圧弁10に取付けられるコイルばね50には、基準高さH1及び取付荷重についての制約がある。このため、基準高さH1及び取付荷重を満足させるために、コイルばね50の有効巻き数を、適切な有効巻き数に調整できない場合がある。
上述の横力Fvの説明から、荷重Fが同じである場合、重心C1と重心C2の離間距離Dを調整することで、コイルばね50に発生する横力Fvを調整できることが分かる。コイルばね50が基準高さH1に圧縮されている状態において、コイルばね50に作用する荷重Fは設計的に決まっている。これは、所定値以上の圧力がコイルばね50(詳細にピストン16)に作用した場合にのみ、コイルばね50及びピストン16を上方に動作させるためである。本発明者は、第1隙間60の隙間g1及び第2隙間62の隙間g2を調整することで、基準高さH1に圧縮されている状態のコイルばね50に発生する横力FVを調整できることを発見した。これは、後述するように、隙間g1及び隙間g2を調整することで、重心C1と重心C2の離間距離Dを調整できるためである。
図8〜図10を用いて、実施例1のコイルばね50に作用する横力FVとコイルばね50の高さhの相関について説明する。図8、図9の横軸は、コイルばね50の高さhを示しており、図面右側の方が高さhは低くなっている。すなわち、図面右側の方が、コイルばね50に作用する荷重Fは大きくなっている。図8、図9の縦軸は、コイルばね50に発生する横力Fvを示している。また、図8、図9の高さh4は、基準高さH1と同じ高さである。図8のケース(a)は、実施例1のコイルばね50の横力FVと高さの相関を示し、第1隙間60の隙間g1であり、第2隙間62の隙間g2の場合である。図8のケース(b)は、第1比較例に係るコイルばね50(以下、第2コイルばねという)の横力FVと高さの相関を示し、第1隙間60の大きさが隙間g3であり、第2隙間62の大きさが隙間g2の場合である。なお、隙間g3と隙間g2は同じ大きさである(図5)。図9のケース(c)は、第2比較例に係るコイルばね50(以下、第3コイルばねという)の横力FVと高さの相関を示し、第1隙間60の大きさが隙間g4であり、第2隙間62の大きさが隙間g2の場合である。なお、隙間g4は、隙間g2より大きく、隙間g1より小さい(図5)。なお、図8のケース(a)のコイルばね50と図9のケース(a)のコイルばね50は同一である。
まず、図8のケース(a)のコイルばね50について説明する。なお、境界点R1(高さh1)において、コイルばね50の第2隙間62の隙間g2は0になり、境界点R2(高さh2)において、コイルばね50の第1隙間60の隙間g1は0になる。
コイルばね50の高さhが高さh1より高い(以下、第1領域とする)場合、コイルばね50の第1隙間60の隙間g1及び第2隙間62の隙間g2は0より大きい。この場合、第1座巻部56の荷重作用点の重心C1の位置p1と第2座巻部58の荷重作用点の重心C2の位置q1は異なる(図10参照)。また、この場合、コイルばね50の高さhが変化しても、重心C1の位置p1及び重心C2の位置q1は移動しない。すなわち、離間距離D及び傾きθは変化しない。このため、第1領域における横力Fvは、コイルばね50の高さhに反比例する。すなわち、コイルばね50の高さhが低くなる(コイルばね50に作用する荷重が大きくなる)にしたがって、横力Fvは大きくなる。
次に、コイルばね50の高さhが、高さh1以下で高さh2よりも高い場合(以下、第2領域とする)について説明する。コイルばね50の高さhが高さh1(境界点R1)で、第2座巻部58の先端部58bの素線52と有効巻部54の素線52が密着する。すなわち、コイルばね50の第2隙間62の隙間g2が0になる。コイルばね50の高さhが高さh1よりも低くなるにしたがって、第2座巻部58の素線52(第2素線部)と有効巻部54の素線52(第3素線部)の密着部分は大きくなる。以下では、第2素線部と第3素線部の密着部分を第2部分とする。コイルばね50の高さhが低くなるにしたがって、第2部分は、円周方向において先端部58bから端末58cに向かって徐々に広がっていく。第1部分が広がることで、第2座巻部58の下面58aの荷重分布は変化する。具体的には、下面58aの第2部分に対応する領域に作用する荷重が徐々に大きくなる。このため、第2部分が大きくなるにしたがって、重心C2は先端部58b側に移動する。すなわち、コイルばね50の高さhが高さh1より低くなるにしたがって、重心C2は先端部58b側(図10の矢印V2方向)に移動する。すなわち、重心C2は位置q1から位置q2まで移動する。一方、コイルばね50の高さhが高さh2(境界点R2)になるまで、第1座巻部56の先端部56bの素線52と有効巻部54の素線52は密着しない。これは、第1隙間60の隙間g1が第2隙間62の隙間g2よりも大きいためである。このため、コイルばね50の高さhが高さh2(境界点R2)になるまで、重心C1は移動しない。すなわち、重心C1の位置p1とp2の位置は同じである。以上より、第2領域において、重心C2は先端部58b側に移動し、重心C1は移動しない。重心C2が先端部58bの方向に移動することで、重心C1と重心C2の離間距離Dが短くなるとともに、傾きθが小さくなる。この結果、第2領域における横力Fvの傾きは、コイルばね50の高さh1よりも低い領域の横力Fvの傾きよりも小さくなる。
次に、コイルばね50の高さhが、高さh2以下で高さh3よりも高い場合(以下、第3領域とする)について説明する。コイルばね50の高さhが高さh2(境界点R2)で、第1座巻部56の先端部56bの素線52と有効巻部54の素線52が密着する。すなわち、コイルばね50の第1隙間60の隙間g1が0になる。コイルばね50の高さhが高さh2よりも低くなるにしたがって、第1座巻部56の素線52(第1素線部)と有効巻部54の素線52(第3素線部)の密着部分は大きくなる。以下では、第1素線部と第3素線部の密着部分を第1部分という。コイルばね50の高さhが低くなるにしたがって、第1部分は、円周方向において先端部56bから端末56cに向かって徐々に広がっていく。第1部分が広がることで、第1座巻部56の上面56aの荷重分布が変化する。具体的には、上面56aの第1部分に対応する領域に作用する荷重が徐々に大きくなる。このため、第1部分が大きくなるにしたがって、重心C1は先端部56b側(図10の矢印V1方向)に移動する。なお、第3領域の重心C2の挙動については、第2領域の場合と同様である。すなわち、コイルばね50の高さhが低くなるにしたがって、重心C2は、先端部58b側に移動する。重心C1と重心C2が同時に移動するため、離間距離Dはさらに短くなるとともに、傾きθがさらに小さくなる。この結果、コイルばね50に作用する荷重は徐々に大きくなるが、第3領域における横力Fvは、コイルばね50の高さh2でコイルばね50に発生する最大横力Fmaxから徐々に小さくなる。
コイルばね50の高さh3(境界点R3)で、コイルばね50に発生する横力Fvは最小になる。これは、重心C1の位置p3と重心C2の位置q3の間の離間距離Dが最短距離となり、傾きθが最小値となる場合である。コイルばね50の高さhが高さh3よりも低くなる場合、コイルばね50の重心C1は先端部56b側にさらに移動し、コイルばね50の重心C2は先端部58b側さらに移動する。このため、境界点R3を境に、離間距離Dは大きくなっていく。このため、コイルばね50の高さhが高さh3よりも低い場合(第4領域)、コイルばね50の高さhが低くなるにしたがって、横力Fvは、徐々に大きくなる。
次に図8のケース(b)の第1比較例に係る第2コイルばねについて説明する。第2コイルばねの高さh1までの横力Fvの遷移は、ケース(a)の場合と同様である。第2コイルばねの高さh1(境界点R1)で、第2コイルばねの第1座巻部56の先端部56bの素線52と有効巻部54の素線52が密着するとともに、第2コイルばねの第2座巻部58の先端部58bの素線52と有効巻部54の素線52が密着する。このため、ケース(a)の第3領域と同様に、ケース(b)の高さh1〜h3’の領域において、第2コイルばねに発生する横力Fvは、第2コイルばねの高さh1で第3コイルばねに発生する最大横力Fmax’から徐々に小さくなる。第2コイルばねの高さh3’(境界点R3’)で、第2コイルばねに発生する横力Fvは最小になる。ケース(a)の第4領域と同様に、ケース(b)の高さh3’よりも低い領域の横力Fvは、徐々に大きくなる。ケース(b)の第2コイルばねに発生する横力Fvが最小値になる高さh3’は、コイルばね50に発生する横力FVが最小値になる高さh3よりも高い。
図8から明らかなように、ケース(a)のコイルばね50において、基準高さH1時の横力F4は、最大横力Fmax及び許容横力Faよりも小さい。一方、ケース(b)の第2コイルばねにおいて、基準高さH1時の横力F4’は、最大横力Fmax’及び許容横力Faよりも大きい。これは、隙間g1と隙間g2が異なる大きさに設計されていることで、コイルばね50の基準高さH1における重心C1の位置p4と重心C2の位置q4の離間距離Dが、第2コイルばねの基準高さH1における重心C1と重心C2の離間距離Dより短くなっているためである。以上より、コイルばね50の第1隙間60の隙間g1と隙間g2を異なる大きさに調整することで、基準高さH1に圧縮された状態のときにコイルばね50に発生する横力Fvを小さくすることができる。
次に、図9のケース(c)の第2比較例に係る第3コイルばねについて説明する。第3コイルばねの高さh2’’までの横力Fvの遷移は、ケース(a)の場合と同様である。第3コイルばねの高さh2’’(境界点R2’’)で、第3コイルばねの第1座巻部56の先端部56bの素線52と有効巻部54の素線52が密着する。第3コイルばねの第1隙間60の隙間g4は、隙間g1よりも小さいため、高さh2’’は、高さh2よりも高い。ケース(a)の第3領域と同様に、ケース(c)の高さh2’’〜h3’’の領域において、横力FVは、第3コイルばねの高さh2’’で第3コイルばねに発生する最大横力Fmax’’から徐々に小さくなる。第3コイルばねの高さh3’’(境界点R3’’)で、第3コイルばねに発生する横力Fvは最小になる。ケース(a)の第4領域と同様に、ケース(c)の高さh3’’よりも低い領域の横力Fvは、徐々に大きくなる。ケース(c)の第3コイルばねに発生する横力Fvが最小値になる高さh3’’は、コイルばね50に発生する横力FVが最小値になる高さh3よりも高い。
図9から明らかなように、ケース(a)のコイルばね50において、基準高さH1時の横力F4は、最大横力Fmax及び許容横力Faよりも小さい。一方、ケース(c)の第2コイルばねにおいて、基準高さH1時の横力F4’’は、最大横力Fmax’’及び許容横力Faよりも大きい。これは、隙間g1が隙間g3より大きいことで、コイルばね50の基準高さH1における重心C1の位置p4と重心C2の位置q4の離間距離Dが、第2コイルばねの基準高さH1における重心C1と重心C2の離間距離Dより短くなっているためである。以上より、コイルばね50の第1隙間60の隙間g1を調整することで、基準高さH1に圧縮された状態のときにコイルばね50に発生する横力Fvを調整することができる。なお、図9では、隙間g1を調整した場合について説明したが、隙間g2の大きさを調整することで、横力Fvを調整することもできる。
上述の説明から明らかなように、実施例1のコイルばね50は、第1隙間60の隙間g1及び第2隙間62の隙間g2を調整することで、最大横力Fmaxよりも、基準高さH1に圧縮されたときにコイルばね50に発生する横力F4は小さくなっている。具体的には、第1隙間60の隙間g1及び第2隙間62の隙間g2を調整することで、基準高さH1に圧縮されたときのコイルばね50の重心C1の位置p(詳細には第1部分)と重心C2の位置q(詳細には第2部分)を適切に調整している。これにより、基準高さH1に圧縮されたときの離間距離Dを調整している。この結果、基準高さH1に圧縮されたときにコイルばね50に発生する横力F4が最大横力Fmaxよりも小さくなっている。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。