JP6586000B2 - 鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法及びそのための電極用ユニットパネル - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリートの中性化や塩害による劣化を修復する鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法及びそのための電極用ユニットパネルに関する。
従来より、道路、鉄道などの土木建設構造物、具体的には橋梁の下部工、橋梁の橋桁、トンネルなどの地下構造物又は半地下構造物、カルバートなどの構築には、一般的に鉄筋コンクリートが使用されている。この鉄筋コンクリートは、高い圧縮強度性能を持つコンクリートと、高い引張強度性能を持つ鉄筋とを組み合わせることにより、圧縮強度と引張強度とを併せ持つ複合構造体を作ることが可能であり、前記構造物の材料として多く使用されている。なお、この鉄筋コンクリートを用いた構造物には、所謂PC構造物と呼ばれ、更にPC鋼材(PC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線など)をコンクリート内に配置したコンクリート構造物も多く存在する。
前記コンクリートは、環境抵抗性が高く、コンクリート自体のアルカリ度はpH値で12〜12.5の強アルカリ性であるため、コンクリート内部に配設された鉄筋は表面に不動態被膜を形成し腐食から防止されるものと考えられてきた。
しかしながら、近年、コンクリートの中性化や塩害によって鉄筋コンクリート構造物に劣化現象が生じていることが社会問題となってきている。前記中性化とは、セメントの水和反応によって生成された水酸化カルシウムが大気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなる現象であり、この炭酸化によりコンクリートのアルカリ度が低下し、pH値が10以下になると鉄筋の不動態被膜が破壊され、鉄筋の腐食が始まるようになる劣化現象である。前記塩害とは、沿岸部にあるコンクリート構造物の場合、海水の飛沫がコンクリート表面に付着すると、その塩分がコンクリートの呼吸現象や濃度勾配によりコンクリート中に浸透して鉄筋まで到達すると、塩素イオンにより鉄筋の不動態皮膜が破壊され腐食が始まるようになる劣化現象である。さらに、過去のコンクリート構造物では、細骨材として海砂が使用されることもあり、その際、管理の不十分さから塩分除去が十分に行われないまま使用されたため、多量の塩化物がコンクリート中に存在することになり、その結果、鉄筋の不動態皮膜が破壊され腐食が始まるケースもあった。
このような鉄筋コンクリートの劣化現象が進行すると、複合構造物としての耐久性が大きく低下することになる。
劣化した鉄筋コンクリートの補修方法として、劣化部分をはつり取り、コンクリート又はモルタル等で埋め戻すなどの構造物の破壊を伴う補修方法の他に、破壊を伴うことなく電気化学的な方法により補修を行う方法が提案され、実施されてきた。
例えば、下記特許文献1には、炭酸化された部分中にある一の強化部材と、アルカリ性雰囲気を有する部分中にある電極との間に電荷を通すようにするコンクリート等の炭酸化領域を再アルカリ化する方法が提案されている。
また、下記特許文献2には、鉄筋コンクリートの外表面に電解質からなる付着性塗布剤を一時的に被覆し、この被覆塗布剤に分散電極手段を埋設して、前記コンクリートの内部鉄筋と前記分散電極手段との間に直流電圧を印加して、前記コンクリート内部から前記電極手段に向かって塩化物イオンを泳動せしめ、塩化物が充分に除去された後に電圧を中断し、しかる後前記分散電極手段と前記塗布剤を取り除くことからなる塩化物除去による内部鉄筋コンクリート修復方法であって、前記電解質材をセルロースパルプ繊維から形成し、前記パルプ繊維に電解質の液体を予め混合して、自己固着性材料を形成しめて、この自己固着性材料を前記コンクリート外表面上に吹き付けるようにした塩化物除去による内部鉄筋コンクリート修復方法が提案されている。
特開平1−176287号公報 特開平2−302384号公報
しかしながら、前述のコンクリート修復方法の場合は、セルロースパルプ繊維(セルロースファイバー)と電解質溶液とを対象のコンクリート表面に吹き付けることによりコンクリート表面に設置した電極(通常は金網)を被覆するようにするものであり、吹付け作業時にセルロースファイバーが周囲に飛散し周辺環境を悪化させる原因となっていた。また、前記電解質溶液としては、通常強アルカリ溶液が使用されるが、吹付け時に溶液の飛散が発生し、周辺環境を汚すとともに、作業員等が目や皮膚に触れると障害を引き起こす可能性もあった。
更に、前記セルロースファイバーは、作業終了後にコンクリート表面から除去した後、特殊産業廃棄物としての扱いとなるため処分に手間が掛かるとともに、多大な費用も掛かっていた。また、前記電解質溶液はファイバーがオープンな状態のために蒸散が激しく、例えば日に一度のサイクルで継続的に散水を行い、セルロースファイバーを湿潤状態にしなければならず、電解質溶液のロスが非常に大きいとともに、散水作業に多大な手間と費用が掛かっていた。
そこで本発明の主たる課題は、セルロースファーバー及び電解質溶液の吹付け作業を無くし作業環境を良好に保つとともに、作業員の安全性を確保することが可能であり、また特殊産業廃棄物の発生を極力抑え、更に電解質溶液の使用量を削減できるとともに、散水作業の省力化を図り得る等、種々の効果を奏し得るコンクリートの電気化学的処理方法及びそのための電極用ユニットパネルを提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、コンクリート表面に設置した電極を外部電極とし、コンクリート内部に埋設されている鉄筋を内部電極とし、前記外部電極と内部電極との間に直流電流を通電することによりコンクリート内部の塩化物イオンを外部電極側に泳動させて除去する鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法において、
板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆した電極用ユニットパネルを多数用意し、
前記処理対象のコンクリート面に対して、前記電極用ユニットパネルを並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とし、
任意箇所に電解質溶液供給口を設置するとともに、電解質溶液回収口を設置し、継続的又は断続的に、前記電解質溶液供給口から電解質溶液を前記電極用ユニットパネルとコンクリート表面との間に供給するとともに、前記電解質溶液回収口から電解質溶液を回収することを特徴とする鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法が提供される。
上記請求項1記載の発明では、予め板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆した電極用ユニットパネルを多数用意しておき、この電極用ユニットパネルを処理対象のコンクリート面に対して並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とする。また、任意箇所に電解質溶液供給口を設置するとともに、電解質溶液回収口を設置しておく。そして、継続的又は断続的に、前記電解質溶液供給口から電解質溶液を前記電極用ユニットパネルとコンクリート表面との間に供給するとともに、前記電解質溶液回収口から電解質溶液を回収する。
従って、セルロースファーバー及び電解質溶液の吹付け作業を全く無くすことが可能になり、作業環境を良好に保つことが可能となるとともに、作業員の安全性を確保することが可能となる。また、前記電極用ユニットパネルは繰り返して使用することが可能であるため、特殊産業廃棄物の発生を極力抑えることが可能になるとともに、電解質溶液の供給及び回収は、クローズな状態で電解質溶液タンクからのポンプ供給又は電解質溶液タンクへのポンプ回収によるため、電解質溶液の蒸散を抑え使用量の削減(概ね1/10程度まで低減可能)を図り得るとともに、給水作業の大幅な省力化を図ることが可能となる。更に、電解質溶液の供給及び回収は、クローズな状態で行われるため、溶液漏れ防止用の止水養生が不要になり、その分コスト削減が可能となる。
請求項2に係る本発明として、前記外部電極は、一方方向に間隔を空けて他方方向に沿って配設した多数の電極棒としてある請求項1記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法が提供される。
上記請求項2記載の発明では、外部電極として、一方方向に間隔を空けて他方方向に沿って配設した多数の電極棒を用いるようにしたものである。従来は、外部電極として金網(ワイヤメッシュ)を直接躯体側に取り付けて使用することが多かったが、この金網は解体時に変形し耐久性が無かった。そのため、繰り返しの使用を可能とするために板状体に整列配置した電極棒を用いるようにしたものである。
請求項3に係る本発明として、前記電解質溶液保持材として、親水性素材による不織布、親水処理された不織布又はフェルトが用いられている請求項1、2いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法が提供される。
上記請求項3記載の発明では、前記電解質溶液保持材として、親水性素材による不織布、親水処理された不織布又はフェルトを用いるようにしたものである。これらの材料は、電解質溶液が繊維間を流通することが可能であるとともに、繰り返し使用が可能となる。
請求項4に係る本発明として、前記隣接する電極用ユニットパネル間の目地部に、電極用ユニットパネル間に跨るように接続部材を配設することにより液密性が確保されているとともに、前記接続部材の任意箇所に前記電解質溶液供給口又は前記電解質溶液回収口が設けられ、かつ前記電解質溶液供給口又は前記電解質溶液回収口が設けられた接続部材は、部材長手方向に沿って電解質溶液の流通路が形成されているとともに、部材長手方向に間隔を空けて電解質溶液の吐出孔又は回収孔が多数形成されている請求項1〜3いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法が提供される。
上記請求項4記載の発明は、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部に、電極用ユニットパネル間に跨るように接続部材を配設することにより液密性を確保すると同時に、前記電解質溶液供給口又は前記電解質溶液回収口が設けられた接続部材に、部材長手方向に沿って電解質溶液の流通路が形成されているとともに、部材長手方向に間隔を空けて電解質溶液の吐出孔又は回収孔を多数形成するようにしてある。
従って、前記電解質溶液供給口から供給された電解質溶液は、接続部材の流通路により電極用ユニットパネルの辺方向に流れた後、前記多数の吐出孔から前記電極用ユニットパネルとコンクリート表面との間に供給することが可能となり、くまなく全面に亘って電解質溶液を供給することが可能になる。また、拡散した電解質溶液は、前記多数の回収孔から流通路に流入させて回収することが可能となる。
請求項5に係る本発明として、板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆したことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法のための電極用ユニットパネルが提供される。
以上詳説のとおり本発明によれば、セルロースファーバー及び電解質溶液の吹付け作業を無くし作業環境を良好に保つとともに、作業員の安全性を確保することが可能であり、また特殊産業廃棄物の発生を極力抑え、更に電解質溶液の使用量を削減できるとともに、給水作業の省力化を図り得る等、種々の効果を奏し得るコンクリートの電気化学的処理方法及びそのための電極用ユニットパネルを提供できる。
コンクリート天井面に設置した本発明に係るコンクリートの電気化学的処理システムの正面図である。 図1のII−II線矢視図である。 図1のIII−III線矢視図である。 電極用ユニットパネル1の平面図である。 図4のV−V線矢視図である。 図4のVI−VI線矢視図である。 図4のVII−VII線矢視図である。 電極用ユニットパネル1の固定部の拡大断面図である。 配管及びケーブル保持具24を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。 電極用ユニットパネル1を固定するパネル固定金具2の分解図である。 長辺方向接続部材3を構成する背面側接続部材30を示す、(A)は平面図、(B)はB-B断面図、(C)はC-C断面図、(D)はD-D断面図である。 長辺方向接続部材3を構成する正面側接続部材31を示す、(A)は平面図、(B)はB-B断面図である。 長辺方向接続部材3の設置状態を示す横断面図である。 長辺方向接続部材3に形成された電解質溶液供給口36又は電解質溶液回収口36部位の断面図である。 短辺方向接続部材4を構成する背面側接続部材40を示す、(A)は平面図、(B)はB-B断面図である。 短辺方向接続部材4の設置状態を示す横断面図である。 交点部接続部材5の設置状態を示す、(A)は平面図、(B)は断面図である。 電極用ユニットパネル1を並べて配設した外周部の止水要領例を示す断面図である。 コンクリートの壁面に本発明を適用した場合の断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
本発明は、コンクリート表面に設置した電極を外部電極とし、コンクリート内部に埋設されている鉄筋を内部電極とし、前記外部電極と内部電極との間に直流電流を通電することによりコンクリート内部の塩化物イオンを外部電極側に泳動させて除去する鉄筋コンクリート(PCコンクリートも含む。)の電気化学的処理方法において、
図4〜図7に示される、板状体10の一方面側の全体に亘って外部電極11,11…を配設するとともに、前記外部電極11、11…の配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材12で被覆した電極用ユニットパネル1を多数用意し、
図1〜図3に示されるように、前記処理対象のコンクリート面に対して、前記電極用ユニットパネル1,1…を並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とし、
任意箇所に電解質溶液供給口36を設置するとともに、電解質溶液回収口36を設置し、継続的又は断続的に、前記電解質溶液供給口36から電解質溶液を前記電極用ユニットパネル1とコンクリート表面との間に供給するとともに、前記電解質溶液回収口36から電解質溶液を回収するようにしたものである。
以下、具体的に詳述する。
〔電極用ユニットパネル1〕
電極用ユニットパネル1は、図4に示されるように、板状体10の一方面側の全体に亘って外部電極11,11…を配設するとともに、前記外部電極11、11…の配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材12で被覆したものである。
前記板状体10は、処理対象コンクリート面に対して、正格子状に並べやすいように、平面視で矩形状を成していることが望ましい。前記板状体10は樹脂又は絶縁体成形によって製造することが望ましく、外周部の四辺には電極用ユニットパネル1を並べて設置した際に、目地部に設置される接続部材3〜5に対して連結するための挿入継手部10a、10bが形成されている。これらの挿入継手部10a、10bの内、短辺側挿入継手部が符号10aであり、長辺側挿入継手部が符号10bである。
前記板状体10の一方面側には、図5(A)に示されるように、長辺方向に間隔を空けて短辺方向に沿って凹溝10c、10c…が多数形成されるとともに、この凹溝10c内に電極棒11が配設されている。前記電極棒11は、腐食性に優れ転用使用を可能とするために、チタン製の丸棒を用いることとし、表面をイリジウム焼付け処理を施すことが望ましい。サイズはφ2〜5mm程度のものを用いるのがよい。また、一般的な鋼棒に対してチタン、チタン合金又は白金などでメッキ処理したものを用いてもよい。
前記電極棒11の取付けは、図5(B)に示されるように、片方の端部を直角に曲げ加工するとともに、表面にねじ切り加工を施し、凹溝10cの端部に設けた通孔を通し、反対面側においてナット13により締結するのがよい。なお、前記ナット13によって挟持された部材14は、電線を連結するための端子である。
図6及び図7に示されるように、板状体10の他方面側であって短辺方向端部にはL字状の屈曲片10dが設けられており、この屈曲片10d内部に電線ケーブル15が配設されるようになっており、封止部材16により抜け出ないように保持されている。
前記板状体10の一方面側は、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材12で被覆してある。前記電解質溶液保持材12としては、親水性素材による不織布、親水処理された不織布又はフェルトが用いられている。親水性素材による不織布とは、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、綿などの天然繊維のように素材自在に親水性を有する原料により製造された不織布であり、前記親水処理された不織布とは、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を原料として製造された不織布であって、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた不織布である。前記フェルトは、羊毛または他の獣毛繊維を縮絨してシート状にしたものである。
不織布の製造方法は、特に限定はなく、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた各種の不織布を用いることができる。
前記電解質溶液保持材12の厚みは、2〜10mm、好ましくは2〜5mm程度とするのが望ましい。
前記電極用ユニットパネル1には、図4に示されるように、表裏面を貫通するように複数の、図示例では4つの取付け用孔17が設けられている。
前記電極用ユニットパネル1の取付けは、図8に示されるように、パネル固定金具2を用いて行われる。パネル固定金具2は、処理対象コンクリートCに対して接着剤により固定されるとともに、正面側(作業者から視て手前側)にネジ軸20aを備える接着板20と、この接着板20に螺合連結される第1挟持金具21と、この第1挟持金具21に螺合連結される第2挟持金具22と、前記第1挟持金具21に螺合連結される吊りボルト23と、この吊りボルト23によって支持される配管及びケーブル保持具24とからなる。
前記接着板20は、図10に示されるように、平面視で円形の部材であり、処理対象コンクリート面側は接着剤の強度確保のために細かな凹凸が形成され、中央には位置合わせのための鋲20bが設けられている。正面側にはネジ軸20aが設けられている。
前記第1挟持金具21は、同図に示されるように、上部側に前記接着板20のネジ軸20aが螺入される雌ネジ孔21aが形成されているとともに、その周囲に電極用ユニットパネル1に形成された取付け用孔17の縁を背面側(コンクリート面側)から挟持する背面側挟持部21bが形成され、下部側には外面側及び内面側にネジが形成された筒状部21cが形成されている。前記背面側挟持部21bの下面には、板状体10に当接するリング状の止水パッキン21dが2条設けられているとともに、その隣接位置に前記第2挟持金具22との間で止水性を確保するために板状の止水パッキン21eが設けられている。
前記第2挟持金具22は、円筒状の部材であり、内面側にネジが形成され、上部側の周囲には電極用ユニットパネル1に形成された取付け用孔17の縁を正面側から挟持する正面側挟持部22aが形成されている。前記正面側挟持部22aの上面には、板状体10に当接するリング状の止水パッキン22bが2条設けられているとともに、その隣接位置に前記第1挟持金具21との間で止水性を確保するために板状の止水パッキン22cが設けられている。
前記吊りボルト23は、前記第1挟持金具21の筒状部21cに螺合連結されるボルト状部材である。
前記配管及びケーブル保持具24は、図9に示されるように、中央に前記吊りボルト23が挿通される通孔24aが形成され、その両側に上面側に凹面を向けた半円弧状部24b、24cが形成された部材であり、この半円弧状部24b、24cに、電解質溶液を供給するための配管や前記電極用ユニットパネル1の電極棒11に電気を通電するための電線ケーブルなどが支持される。
図8に示されるように、先ず最初に前記接着板20を所定の位置に接着剤を用いてコンクリート面に固定したならば、前記第1挟持金具21を接着板20に連結する。この状態で前記電極用ユニットパネル1を設置し、取付け用孔17に前記第1挟持金具21を通したならば、第2挟持金具22を螺合連結して取付け用孔17の縁を挟持して固定を図る。その後、前記配管及びケーブル保持具24の通孔24aにネジ部を通した吊りボルト23の先端を前記第1挟持金具22に連結する。このパネル固定金具2の内、前記接着板20は使い捨て部材(消耗品)であり、他の部材は転用が可能となっている。ただし、前記接着板20に付着している接着剤を剥離可能な状態にすることが可能ならば(例えば、特殊な溶剤を用いるか或いは常温以上の所定温度範囲(70〜90℃)までの加温を行う等)、前記接着板20と前記第1挟持金物21とを一体成形し前記接着板20は不要とすることができる。
〔パネル目地部の接続部材3〜5〕
処理対象のコンクリート面に対して、前記電極用ユニットパネル1,1…を並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル1,1間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とする構造について詳述する。
前記電極用ユニットパネル1,1を正格子状に並べて配置する際には、隣接する電極用ユニットパネル1,1の間に所定の隙間を設けて配置し、この隙間(目地部)に接続部材3〜5を配置して液密性を確保するようにする。
前記電極用ユニットパネル1の長辺方向に配設される長辺方向接続部材3は、図11に示される背面側接続部材30と、図12に示される正面側接続部材31とからなる。
前記背面側接続部材30の標準断面形状は、図11(B)に示されるように、中央部に電解質溶液の流通路30aが形成されるとともに、その両側に夫々、背面側挟持部30b、30cが形成された帯板状部材である。前記流通路30aの流路方向には適宜の間隔で電化質溶液の吐出孔又は回収孔30dが形成されているとともに、前記流通路30aの両端部には、流通路30aを塞ぐ端部シール材33が配設されている。また、前記背面側挟持部30b、30cの下面側には線状シール材32が部材長手方向に沿って2条設けられている。
前記背面側接続部材30には、長手方向に間隔をおいて複数の、図示例では4箇所に正面側接続部材31との締結を図るために、図11(C)(D)に示されるように、ネジ部材34、35が設けられたネジ止め部が設けられているとともに、これらネジ止め部の内、少なくとも1箇所は、電解質溶液の供給口36又は回収口36となっている。具体的には、図11(D)に示されるように、前記流通路30aに連通する筒状管路37が設けられるとともに、この筒状管路37を外嵌するように管状ネジ部材35が設けられている。
一方、前記正面側接続部材31は、図12に示されるように、前記ネジ止め部に対応する位置にネジ通孔31a、31a…が形成された帯板状部材である。
前記背面側接続部材30と前記正面側接続部材31とによる目地部の接続は、図13に示されるように、電極用ユニットパネル1,1の長辺側目地部において、電極用ユニットパネル1の挿入継手部10b、10bよりもコンクリート面側に前記背面側接続部材30を配設し、手前側に前記正面側接続部材31を配設し、前記背面側接続部材30のネジ部材34,35を前記正面側接続部材31のネジ通孔31a、31a…から突出させたならば、ワッシャ38を配設し、ナット部材39により締結を図るようにする。前記電解質溶液の供給口36又は回収口36では、図14に示されるように、筒状管路37に対して電解質溶液の供給又は回収ホースHを接続するようにする。前記供給又は回収ホースHの他端は、電解質溶液を供給/回収するための配管7に対して接続される。なお、前記供給ホースHは配管7を介して電解質溶液の送給ポンプ(図示せず)に接続され、前記回収ホースHは配管7を介して電解質溶液タンク(図示せず)に接続されている。
前記電解質溶液の供給口36又は回収口36は、図1に示されるように、短辺方向に、電解質溶液の供給部と回収部とが交互に配置されるようにする。すなわち、長辺方向のある目地部を電解質溶液の供給機能部として設定したならば、これに隣接する長辺方向の目地部は電解質溶液の回収機能部として設定される。以下、便宜的に電解質溶液の供給口36又は回収口36は、構造的に同じであるが、供給口として機能させる部位は符号36で示し、回収口として機能させる部位は符号36で示す。
一方、前記電極用ユニットパネル1の短辺方向に配置される短辺方向接続部材4は、図15及び図16に示される第2背面側接続部材40と、第2正面側接続部材41とからなる。
前記第2背面側接続部材40は、その標準断面形状は、図15(B)に示されるように、中央板部40aの両側に夫々、背面側挟持部40b、40cが形成された帯板状部材である。前記背面側挟持部40b、40cの下面側には線状シール材42が部材長手方向に沿って2条設けられている。前記第2背面側接続部材40には、長手方向に間隔をおいて複数の、図示例では2箇所に第2正面側接続部材41との締結を図るために、図15(B)に示されるように、ネジ部材43が設けられたネジ止め部が設けられている。
一方、第2正面側接続部材41は、図12に示される正面側接続部材31と同様に、前記ネジ止め部に対応する位置にネジ通孔41a、41a…が形成された帯板状部材である。
前記第2背面側接続部材40と前記第2正面側接続部材41とによる目地部の接続は、図16に示されるように、電極用ユニットパネル1,1の短辺方向目地部において、電極用ユニットパネル1の挿入継手部10a、10aよりもコンクリート面側に前記第2背面側接続部材40を配設し、手前側に前記第2正面側接続部材41を配設し、前記第2背面側接続部材40のネジ部材43を前記第2正面側接続部材41のネジ通孔41aから突出させたならば、ワッシャ44を配設し、ナット部材45により締結を図るようにする。
次に、前記電極用ユニットパネル1,1…の交点部接続部材5について説明する。前記電極用ユニットパネル1の交点部は、4枚の電極用ユニットパネル1,1…の角部が対抗する部分である。この交点部に配置される交点部接続部材5は、図17に示されるように、第3背面側接続部材50と、第3正面側接続部材51とからなる。
前記第3背面側接続部材50は、中央板部50aの四隅に夫々、背面側挟持部50b〜50eが形成された平面視で正方形状の板状部材である。前記背面側挟持部50b〜50eの下面側には線状シール材52が円弧状に2条設けられている。前記第3背面側接続部材50には、中央部に第3正面側接続部材51との締結を図るために、ネジ部材53が設けられたネジ止め部が設けられている。
一方、第3正面側接続部材51は、図17に示されるように、前記ネジ止め部に対応する位置にネジ通孔51aが形成された正方形状の板状部材である。
前記第3背面側接続部材50と前記第3正面側接続部材51とによる目地部の接続は、図17(B)に示されるように、電極用ユニットパネル1,1の交点部目地部において、電極用ユニットパネル1の挿入継手部よりもコンクリート面側に前記第3背面側接続部材50を配設し、手前側に前記第3正面側接続部材51を配設し、前記第3背面側接続部材50のネジ部材53を前記第2正面側接続部材51のネジ通孔51aから突出させたならば、ワッシャ54を配設し、ナット部材55により締結を図るようにする。
他方、前記電極用ユニットパネル1、1が並べて配設された外周部における液密性保持は、図18に示されるように、最端部に配設される長辺方向接続部材3及び短辺方向接続部材4の背面側挟持部30b、30c、40b、40cとコンクリート表面との間にシール材6を配設することにより液密性を確保するようにする。
〔コンクリートの修復手順〕
先ず、修復対象のコンクリート面に対して、図1〜図3に示されるように、前記電極用ユニットパネル1,1…を正格子状に並べて配置する。コンクリート表面への固定は、前述した要領に従って行えばよい。また、隣接する電極用ユニットパネル1,1の間には所定の隙間(目地部)を設けて配置する。
次に、前記電極用ユニットパネル1,1の長辺方向目地部には、前記長辺方向接続部材3を設置し、短辺方向目地部には前記短辺側接続部材4を設置し、前記電極用ユニットパネル1,1…の交点部には、交点部接続部材5を設置して各目地部において液密性を確保する。また、前記電極用ユニットパネル1,1…の外周部においてもシール材6を設置して液密性を確保する。
前記配管及びケーブル保持具24に支持させるようにしながら、電解質溶液供給管又は回収管7を配設するとともに、電線ケーブルを配置する。前記長辺方向接続部材3の電解質溶液供給口又は回収口36と電解質溶液供給管又は回収管7とをホースHで接続するとともに、電極用ユニットパネル1の各電極棒11(外部電極)と電気線を接続し、コンクリート内部に埋設されている鉄筋を電極(内部電極)として、通電できるようにする。
前述したように、前記電解質溶液の供給口又は回収口36は、図1に示されるように、短辺方向に、電解質溶液の供給機能部と回収機能部とが交互に配置されるようにする。すなわち、電解質溶液の供給管として機能させる配管7(以下、供給管7)には電解質溶液タンク(図示せず)から電解質溶液がポンプ圧送されるようにし、電解質溶液の回収管として機能させる配管7(以下、回収管7)には電解質溶液分離タンク(空気と電解質溶液を分離するタンク)、エレメントを経て電解質溶液タンクへ電解質溶液がポンプ圧送されるようにする。前記電解質溶液は、コンクリート中に浸透することによりコンクリートの電気抵抗を低減し、電気を流れやすくするもので、溶液中にプラスイオンとマイナスイオンが存在するものであればよい。具体的には、溶媒である水に、溶質として各種のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を溶解した水溶液が好適に使用される。前記アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム、並びにマグネシウムやカルシウムなどの炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、さらに水酸化物や塩化物等が挙げられる。
以上の準備が完了したならば、コンクリート表面に設置した電極を外部電極とし、コンクリート内部に埋設されている鉄筋を内部電極とし、前記外部電極と内部電極との間に直流電流を通電(0.5A/m2以上、好ましくは0.7〜1.5A/m2)しながら、継続的又は断続的に、電解質溶液の供給管7に電解質溶液を送給する。
電解質溶液は、図1に示されるように、供給管7を通り、電解質溶液供給口36から長辺方向接続部材3に流入し、流通路30aを通って長辺方向に流れると同時に、吐出孔30d、30d…から前記電極用ユニットパネル1とコンクリート表面との間に供給される。そして、繊維質シートからなる電解質溶液保持材12の繊維間を流路しながら短辺方向に流れ、隣りの長辺方向目地部に設置された長辺方向接続部材3の回収孔30d、30d…から流通路30aに流入し、その後電解質溶液回収口36から回収管7から電解質溶液分離タンク、エレメントを通り電解質溶液タンクに送られる。
前記電解質溶液は、コンクリートの中性化処理が進行するに従って、pHが徐々に低下するようになる。pHの低下した電解質溶液を使用し続けると、コンクリート表面で酸性化した電解質溶液の影響を受け、ペースト分が溶解してコンクリートの酸荒れ現象が発生するようになるため、所定の管理値(通常pH8)までpHが低下したならば電解質溶液を交換するようにする。
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、長辺方向接続部材3に電解質溶液の供給口又は回収口36を設定し、電解質溶液が短辺方向に流れるようにしたが、短辺方向接続部材4に電解質溶液の供給口又は回収口36を設定し、電解質溶液が長辺方向に流れるようにしてもよい。
(2)上記形態例では、長辺方向接続部材3に電解質溶液供給口又は回収口36を設けるようにしたが、電極用ユニットパネル1に対して直接、電解質溶液の供給口又は回収口を設けるようにしてもよい。
(3)上記形態例では、天井面のコンクリートを処理対象とした例について述べたが、コンクリート壁面やコンクリート床面に対しても同様に適用が可能である。コンクリート壁面に適用する場合は、図19に示されるように、電極用ユニットパネル1,1…を並べて壁面に設置したならば、最も上辺の長辺方向継手部材3に設置した電解質溶液供給口36から電解質溶液を供給する。電解質溶液は、長辺方向接続部材3の流通路30aを通って長辺方向に流れると同時に、吐出孔30d、30d…から前記電極用ユニットパネル1とコンクリート表面との間に供給される。そして、繊維質シートからなる電解質溶液保持材12の繊維間を流路しながら重力方向、すなわち下方向に流れる。その後、最も下辺の長辺方向継手部材3に設置した電解質溶液回収口36から回収するようにする。なお、コンクリート床面に適用する場合は、前述した天井面のコンクリートの場合と全く同様である。
1…電極用ユニットパネル、2…パネル固定金具、3…長辺方向接続部材、4…短辺方向接続部材、5…交点部接続部材、6…シール材、7…電解質溶液供給管又は回収管、10…板状体、11…電極棒、12…電解質溶液保持材

Claims (5)

  1. コンクリート表面に設置した電極を外部電極とし、コンクリート内部に埋設されている鉄筋を内部電極とし、前記外部電極と内部電極との間に直流電流を通電することによりコンクリート内部の塩化物イオンを外部電極側に泳動させて除去する鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法において、
    板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆した電極用ユニットパネルを多数用意し、
    前記処理対象のコンクリート面に対して、前記電極用ユニットパネルを並べて配設するとともに、隣接する電極用ユニットパネル間の目地部及び外周部において液密性を確保した状態とし、
    任意箇所に電解質溶液供給口を設置するとともに、電解質溶液回収口を設置し、継続的又は断続的に、前記電解質溶液供給口から電解質溶液を前記電極用ユニットパネルとコンクリート表面との間に供給するとともに、前記電解質溶液回収口から電解質溶液を回収することを特徴とする鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法。
  2. 前記外部電極は、一方方向に間隔を空けて他方方向に沿って配設した多数の電極棒としてある請求項1記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法。
  3. 前記電解質溶液保持材として、親水性素材による不織布、親水処理された不織布又はフェルトが用いられている請求項1、2いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法。
  4. 前記隣接する電極用ユニットパネル間の目地部に、電極用ユニットパネル間に跨るように接続部材を配設することにより液密性が確保されているとともに、前記接続部材の任意箇所に前記電解質溶液供給口又は前記電解質溶液回収口が設けられ、かつ前記電解質溶液供給口又は前記電解質溶液回収口が設けられた接続部材は、部材長手方向に沿って電解質溶液の流通路が形成されているとともに、部材長手方向に間隔を空けて電解質溶液の吐出孔又は回収孔が多数形成されている請求項1〜3いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法。
  5. 板状体の一方面側に外部電極を配設するとともに、前記外部電極配設領域の全面を繊維質シートからなる電解質溶液保持材で被覆したことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の鉄筋コンクリートの電気化学的処理方法のための電極用ユニットパネル。
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