以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図9は、本発明の一実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置を示しており、図1にその装置を備えた内燃機関の排気浄化システムの概略構成を示している。
まず、その排気浄化システムの概略構成について説明する。
図1に示す本実施の形態の内燃機関の排気浄化システムは、エンジン10から排気マニホールドおよび排気管11を通して排出される排気すなわち排出ガスを、排気管11の途中に配置された排気浄化装置12によって浄化するものである。
エンジン10は、車両を走行駆動する内燃機関、例えば多気筒のディーゼルエンジンである。このエンジン10は、バイオ燃料等の他の燃料を併用するものであってもよいし、電動発電機と協働して車両を走行駆動するハイブリッド駆動式のパワーユニットを構成するものであってもよい。
排気管11は、その上流端側で排気ターボ過給機13の排気タービン部13tの出口に接続されており、排気タービン部13tに接続する排気マニホールドを介してエンジン10に接続されている。そして、排気管11内に形成される排気通路11aが、エンジン10の複数の排気ポートに連通している。
この排気管11の上流端側には、排気タービン部13tの出口の下流側に位置する排気ブレーキ14と、排気ブレーキ14より下流側に位置する第1の酸化触媒15と、が設けられている。排気ブレーキ14は、排気通路11a中を通る排気の流量を絞ることで排気温度を変化させることができ、第1の酸化触媒15は、排気タービン部13tの出口付近で排気中の未燃の燃料を酸化反応させ、その反応熱により排気を加熱することができる。
排気浄化装置12は、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)方式とDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集)方式と組み合わせた一体型の触媒装置であり、この排気浄化装置12は、第1の酸化触媒15より下流側の排気管11の途中に装着されている。排気浄化装置12よりさらに下流側の排気管11には、図外の排気消音装置が装着されている。
また、第1の酸化触媒15と排気浄化装置12間の排気管11には、燃料添加弁16が装着されている。この燃料添加弁16は、エンジン10により駆動される燃料ポンプ17に対し、添加燃料配管L1を介して配管接続されている。そして、燃料添加弁16は、エンジン10の運転中に燃料ポンプ17により加圧されて吐出される燃料を、添加燃料配管L1上のカットオフバルブ18の開閉状態に応じて排気浄化装置12の上流側の排気中に噴射するようになっている。燃料ポンプ17から添加燃料の供給圧力は、添加燃料圧力センサ19により検出される。
排気浄化装置12は、排気管11に接続されつつ第1の酸化触媒15より下流側の排気通路11aの一部を形成するケース21と、ケース21内に収納された第2の酸化触媒22、DPF23、SCR触媒24およびアンモニア低減触媒25と、を有している。
ケース21は、また、第1の酸化触媒15より下流側の排気通路11aの一部を、略S字形の2回の折返し形状をなすように形成しており、下流側の排気通路11aの折返し前の上流側ケース部分21a内に、第2の酸化触媒22およびDPF23が収納されている。
第2の酸化触媒22は、ケース21内に流入する排気中の未燃の燃料を酸化反応させ、その反応熱により排気をその排気中に浮遊する粒子状物質であるPMの自燃温度以上に加熱することができる。
DPF23は、格子状に区画された多数のセルが交互に目封じされることで高PM捕集率を有するウォールフロータイプのパティキュレートフィルタである。このDPF23は、コージェライト(Cordierite)等のセラミックからなる多孔質のハニカム構造体で、排気通路11aの方向に延びつつ互いに並列するセル内の流路がDPF23の上流端側で交互に目封じされ、DPF23の上流端側が目封じされていない流路についてはDPF23の下流端側が目封じされている。そして、DPF23の複数の流路のうちDPF23の上流端側で開口する上流側の流路とDPF23の下流端側で目封じされた下流側の流路とを区画する多孔質のセル壁を透過した排気のみが、上流側の流路から隣接する下流側の流路に流れ、そのときDPF23の多孔質のセル壁にPMが捕集されるようになっている。
下流側の排気通路11aの一部が2回の折返しをなすケース21内のうち、その2回の折返しをなした後の下流側ケース部分21b内には、SCR触媒24およびアンモニア低減触媒25が収納されている。
さらに、上流側ケース部分21aと下流側ケース部分21bとの間には、DEFインジェクタ26が装着されたミキシングパイプ21cが介装されており、DPF23を通過し集合した排気中にDEFインジェクタ26から尿素水であるディーゼル排気液DEF(Diesel exhaust fluid)が噴射されるようになっている。
このディーゼル排気液DEFは、DEF供給ポンプ27によってDEFタンク28から汲み上げられて加圧され、配管L2を介してDEFインジェクタ26に供給されるようになっている。DEFタンク28には、内部に貯留されたディーゼル排気液DEFの温度、液面レベルおよび化学的特性に係る品質をチェックするためのDEFセンサ29が設けられている。
ミキシングパイプ21c内で排気に混合されるディーゼル排気液DEFは、高温の排気中でアンモニアと炭酸ガスに分解され、下流側ケース部分21bに入る際に排気通路11aが拡張および折返しされることで排気中に分散されるようになっている。
SCR触媒24は、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒であり、アンモニア(NH3)と炭酸ガス(CO2)が分散された排気がSCR触媒24内に流入すると、排気中のNOx(窒素酸化物)がアンモニアにより還元されて窒素(N2)になるとともに水(H2O)が生成され、排気が浄化されるようになっている。
アンモニア低減触媒25は、余剰のアンモニアを酸化処理して窒素と水にして無害化させることができ、大気中へ排出される排気中にアンモニアが残留することを有効に防止できるものである。
排気浄化装置12の上流側の排気中への燃料添加とそれによるDPF23の再生は、エンジン制御用の電子制御ユニットであるエンジンECU31によって、センサ情報を基に燃料ポンプ17およびカットオフバルブ18を制御することにより制御される。また、排気浄化装置12内へのディーゼル排気液DEFの供給制御は、脱NOx制御用の電子制御ユニットであるDeNOxECU41によって、センサ情報を基にDEFインジェクタ26の開閉およびDEF供給ポンプ27の作動を制御することにより制御されるようになっている。
エンジンECU31は、図3に典型例で例示するように、CPU(Central Processing Unit;中央制御部)312、RAM(Random Access Memory)313、ROM(Read Only Memory)314および入出力インターフェース回路311を含むコンピュータ構成のものであり、ROM314に格納された制御プログラムに従って、入出力インターフェース回路311における入力インターフェース回路311aから各種センサ情報や通信情報を取り込み、設定情報や図示しないマップ等を参照しつつ、入出力インターフェース回路311における出力インターフェース回路311bからエンジン10の運転制御や排気浄化の制御に必要な指令信号を出力するようになっている。DeNOxECU41も、略同様なコンピュータ構成のもので、エンジンECU31と協働し、排気中の窒素酸化物を除去するための脱NOx制御を実行するようになっている。
前述の各種センサ情報を得るために、エンジンECU31には、添加燃料圧力センサ19と、排気浄化装置12の上流側ケース部分21aに配置された複数の排気温度センサ32、33、34と、DPF23の前後差圧を検出する差圧センサ35と、第1の酸化触媒15の上流側の排気温度を検出する排気温度センサ46とが接続されている。また、エンジンECU31は、CAN通信等により、DeNOxECU41と通信可能になっており、燃料添加によるDPF23の再生制御等に必要な他のセンサ情報に加え、後述するフィルタ故障判定等に必要な他のセンサ情報を取得可能となっている。
DeNOxECU41には、車両の周囲の外気温度、例えば排気浄化装置12の近傍の外気温度を検出する外気温度センサ42と、ミキシングパイプ21cの下流側に配置された排気温度センサ36とが接続されている。また、DeNOxECU41は、CAN通信等により、DEFセンサ29と、DPF23通過後の排気中のNOxガス濃度を検出する第1NOxセンサ37と、アンモニア低減触媒25通過後の排気中のNOxガス濃度を検出する第2NOxセンサ38と、排気浄化装置12の出口付近でアンモニア低減触媒25通過後の排気中のPMを検出するPMセンサ45(排気ガスセンサ)とから、それぞれの検出値を取り込み可能になっている。
また、DEFインジェクタ26およびDEFタンク28には、エンジン10の冷却水が循環供給され、DEFインジェクタ26の適度の冷却とDEFタンク28内のディーゼル排気液DEFの適度の加熱がなされるようになっている。そして、その冷却液の循環量は、DeNOxECU41によりDEFヒータバルブ43の開度を変化させることで、制御されるようになっている。
図2に示すように、PMセンサ45は、絶縁基板51の表面に例えばそれぞれ櫛歯状の一対の検出電極52、53を同図中の上下に交互に隣り合うように配置して検出部54を構成したものであり、一対の検出電極52、53は、両検出電極52、53の間に所定電圧を印加しつつ両検出電極52、53の間の電気抵抗を計測する抵抗計測部61に配線接続されている。
絶縁基板51は、絶縁部材56を介して雄ねじ付きのハウジング57に支持されており、ハウジング57は、ケース21の一部にねじ締結により固定されている。また、ハウジング57には、絶縁基板51上の検出部54を取り囲むカバー58が装着されており、カバー58には排気を通す複数の通気穴58aが形成されている。
また、図3に示すように、絶縁基板51中には、検出部54に捕捉されたPMをその自燃温度以上に加熱することができるヒータ59が設けられており、ヒータ59はヒータ加熱制御部62に配線接続されている。このヒータ59は、検出部54に捕捉され所定量堆積したPMを燃焼させ、検出部54上に堆積したPMを除去するようになっている。
抵抗計測部61は、エンジンECU31およびDeNOxECU41のうちいずれか一方、例えばエンジンECU31の入力インターフェース回路311aに接続されており、PMセンサ45の一対の検出電極52、53の間の電気抵抗値の対応する検出情報が、エンジンECU31に抵抗計測値として取り込まれるようになっている。
また、ヒータ加熱制御部62は、例えばエンジンECU31の出力インターフェース回路311bに接続されており、エンジンECU31からのヒータ加熱指令に応じてヒータ59に通電し、検出部54上に堆積したPMを燃焼させるようになっている。
さらに、エンジンECU31は、ヒータ59を作動させるたびにリセットされ、その後のPMセンサ45によるPM検出期間を計測する計測期間タイマ(後述する第1計時部3151:図5参照)を起動させるようになっており、一対の検出電極52、53の間の抵抗計測値が所定値を下回り、PMセンサ45の検出部54上に満杯量(所定量)のPMが堆積したと判定されたとき、計測期間タイマのカウント値を予め設定された故障判定閾値と比較することで、DPF23の故障判定を行うようになっている。
すなわち、DPF23の複数の流路の目封じ部に亀裂や溶損等による欠損が比較的広範に生じ、DPF23のPM捕集率が所要値に達しなくなる程に低下した場合、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値に達しない短時間のうちに検出部54上に満杯量のPMが堆積する。一方、DPF23の複数の流路の目封じ部にさほど欠損が生じておらず、DPF23の正常な状態が保持されている場合、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値を大きく超えてからでないと、検出部54上に満杯量のPMが堆積することはない。
そこで、エンジンECU31は、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値に達しないうちに検出部54上に満杯量のPMが堆積するか否かによって、DPF23が複数の流路の目封じ部に欠損が比較的広域に生じた故障状態にあるか正常であるかを判定する(図6参照)ようになっている。
本実施の形態においては、このように、DPF23とその下流側に配置されるとともにヒータ加熱によって検出特性が調整されるPMセンサ45とを備えた排気浄化システムが構成されている。
そして、本実施の形態においては、エンジン10の排気通路11a中のDPF23の複数の流路の目封じ部にさほど欠損が生じておらず、DPF23の正常な状態が保持されている状態で、目封じ部の欠損部により補修しきれなかった粒径の大きなPMがDPF23より下流側に配置されるPMセンサ45の検出部54に付着する等の要因によるDPF23の誤った故障判定を回避でき、正常運用へ迅速に復帰可能なパティキュレートフィルタの故障診断装置が、以下のように構成されている。
まず、ハード構成について説明する。本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100は、図4に示すように、PMセンサ45と、このPMセンサ45にCAN通信路を介して接続されるエンジンECU31とにより構成される。エンジンECU31は、前述したように(図3参照)、入力インターフェース回路311aおよび出力インターフェース回路311bを有する入出力インターフェース回路311、CPU312、RAM313およびROM314を備えて構成される。
入力インターフェース回路311aは、PMセンサ45から出力される信号(検出出力)をCAN通信路から受信し、エンジンECU31のCPU312に出力する。出力インターフェース回路311bは、エンジンECU31のCPU312からPMセンサ45向けの後述するヒータ加熱信号を受け取ってCAN通信路によりPMセンサ45へと送出する。
ROM314は、制御プログラムや制御情報等の各種情報を記憶する。本実施の形態において、ROM314は、後述するDPF故障診断プログラムとDPF23の故障判定および故障判定の可否判定に用いる各種設定情報(図5参照)を記憶している。RAM313は、CPU312の作業領域としての記憶領域を有し、CPU312によってROM314から読み出されたDPF故障診断プログラムおよび各種設定情報を記憶する。
CPU312は、ROM314からDPF故障診断プログラムおよび各種設定情報を読み出してRAM313の作業領域に記憶したうえで、DPF故障診断プログラムを起動する。このとき、CPU312は、起動したDPF故障診断プログラムに基づき、入力インターフェース回路311aを通じてPMセンサ45の検出出力(出力)を取込みつつ各種設定情報を参照して後述するDPF23の故障判定および該故障判定の可否判定の制御を行うようになっている。また、CPU312は、後述するPMセンサ45の検出特性調整制御を行う。この検出特性調整制御において、CPU312は、DPF23の故障判定や該故障判定の可否判定の制御の実行中、ヒータ加熱信号を生成して出力インターフェース回路311bによりPMセンサ45へと送出するようになっている。
図1にも示すように、エンジンECU31が接続されるCAN通信路にはDeNOxECU41も接続されている。これにより、本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100は、PMセンサ45とエンジンECU31とによる構成以外に、PMセンサ45とDeNOxECU41とによる構成としてもよい。
次に、パティキュレートフィルタの故障診断装置100の機能構成について図5を参照して説明する。図5において、PMセンサ45は、検出部54におけるPMの堆積量に応じた抵抗値を抵抗計測部61で計測し、その計測された抵抗計測値を示す信号を出力する。出力された抵抗計測値を示す信号は、PMセンサ45の出力としてCAN通信路に送出され、エンジンECU31側で入力インターフェース回路311aによりCPU312に取り込まれる。このように、PMセンサ45は、排気微粒子検出手段を構成する。
また、PMセンサ45は、エンジンECU31からCAN通信路を介して送られてくるヒータ加熱信号を受信し、そのヒータ加熱信号に基づいてヒータ加熱制御部62がヒータ59に通電し、該ヒータ59を加熱させることで検出部54に付着したPMを燃焼させて除去する。上記ヒータ加熱信号は、後述するように、エンジンECU31の検出特性調整制御部317により生成されてPMセンサ45に向けて送出される。このように、PMセンサ45のヒータ加熱制御部62は、PMセンサ45の検出部54に付着したPMを除去する除去手段を構成する。また、上記ヒータ加熱制御部62は、エンジンECU31の検出特性調整制御部317とともに、PMセンサ45の検出特性をリセットする検出特性調整制御手段を構成する。
エンジンECU31において、RAM313には、本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100におけるDPF23の故障判定処理および該故障判定の可否判定処理を実行するためのDPF故障診断プログラムと各種設定情報が記憶されている。前述したように、これらDPF故障診断プログラムおよび各種設定情報は、所定のタイミングでROM314から読み出されてRAM313内の作業領域に記憶されたものである。図5においては、各種の設定情報の例として、閾値推定量TDa、故障判定閾値時間T1、変化異常判定周期Tpおよび変化異常判定閾値TDvが記憶されている。
ここでまず、上述した各種設定情報について図6を参照して説明する。図6に実線で示す特性C1およびC2は、それぞれ、PMセンサ45においてヒータ59によりPMを除去してから、つまり検出特性調整後からPMセンサ45の検出部54におけるPMの堆積量が規定の量、つまり、DPF23が故障していると判定可能な閾値に当たる量(100%:上述した「満杯」に相当する量)に達するまでのPMセンサ45の検知出力の時間に対する変化特性を示している。ここで、特性C1およびC2は、それぞれ、DPF23が正常な時および異常な時の特性に相当する。
本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100では、図6に示す特性C1およびC2を有するPMセンサ45の出力についてDPF23が正常か異常かの判定を実現するために、RAM313には、上述した閾値に当たるPM堆積量として閾値堆積量TDaが設定されている。また、PMセンサ45の検出部54におけるPMの堆積量がこの閾値堆積量TDaに達するまでにかかる時間がどの程度であればDPF23の故障と判定し得るかの閾値時間については故障判定閾値時間T1が設定されている。
このため、本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100では、PMセンサ45の出力が図6における特性C1を示すDPF23の運転環境については、PMセンサ45の検出特性調整後からのPM堆積量が上記故障判定閾値時間T1を経過した後に閾値堆積量TDaに達することから、DPF23によるPM捕集能力が正常に維持されている、つまりDPF23が正常であるとの判定が行える。一方、PMセンサ45の出力が図6における特性C2を示すDPF23の運転環境については、PMセンサ45の検出特性調整後からのPM堆積量は上記故障判定閾値時間T1に達する前に上記閾値堆積量TDaに達することから、DPF23によるPM捕集能力が低下している、つまりDPF23が故障であるとの判定が行える。
また、RAM313には、変化異常判定周期Tp、および変化異常判定閾値TDvがさらに設定されている。変化異常判定周期Tpは、特性C1およびC2等を呈するPMセンサ45の出力を対象とするDPF23の故障判定処理と並行し、上述した故障判定閾値時間T1よりも短い周期Tpで繰り返し行われるPMセンサ45の出力の検出周期(繰り返し検出周期)である。変化異常判定周期Tpは連続している。CPU312は、各周期Tpにおいて、例えば、当該周期Tpの開始時に検出したPMセンサ45の出力を開始時検出値として保持するとともに、当該周期の終了時に検出したPMセンサ45の出力を終了時検出値として保持する。これにより、CPU312は、終了時検出値、つまり今回検出値から開始時検出値、つまり前回検出値を減算することにより、当該周期TpにおけるPMセンサ45の検出部54のPMの堆積量の変化量Dvが算出するようになっている。また、変化異常判定閾値TDvは、上記変化異常判定周期Tp中にDPF23が正常な状態でありながらPMセンサ45の出力が大幅に変化する状況を判定するためのPMの堆積量の変化量の閾値である。
本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100では、上述した変化異常判定周期Tpおよび変化異常判定閾値TDvが設定されているため、CPU312は、変化異常判定周期Tp毎に、PMセンサ45の出力から演算により求めた当該周期TpのPMの堆積量の変化量Dvが上記変化異常判定閾値TDv以上となったことを条件に、DPF23のPM捕集機能が正常ながらも例えばPMセンサ45の検出部54に粒径の大きなPMが付着するなどの状況が発生している疑いがあることを認識可能になる。このような状況において、DPF23が故障であるとの誤判定を回避するために、本実施の形態では、DPF23の故障判定を中止させる制御を行っている。
図6において、DPF23の故障判定を中止させる制御の対象となる特性の一例として特性C3を一点鎖線で示している。この特性C3は、変化異常判定周期Tpnにおいて当該区間のPMセンサ45の検出部54のPMの堆積量の変化量Dvnが変化異常判定閾値TDv以上となる変化を来すことを表わしている。ここで例えば、特性C3を示すDPF23の運用環境について、特性C1およびC2と同様に閾値堆積量TDaと故障判定閾値時間T1に基づき故障判定を行った場合を考えてみる。この場合、特性C3を示すDPF23の運用環境については、PMセンサ45の検出特性調整後からのPM堆積量は故障判定閾値時間T1に達する前に閾値堆積量TDaに達することから、DPF23が故障であると誤って判定されることになる。この点、本実施の形態では、特性C3を示すDPF23の運用環境については、変化異常判定周期TpnにおけるPMセンサ45の検出部54のPMの堆積量の変化量Dvnが求められ、該変化量DVnと予め設定されている変化異常判定閾値TDvと比較される。その結果、変化量DVnが変化異常判定閾値TDv以上であることから、当該変化異常判定周期Tpn内にDPF23のPM捕集機能が正常ながらも例えばPMセンサ45の検出部54に粒径の大きなPMが付着するなどの状況が発生している疑いがあることを認識可能になる。
図6を参照して述べたように、エンジンECU31は、閾値推定量TDa、故障判定閾値時間T1、変化異常判定周期Tpおよび変化異常判定閾値TDvを記憶するROM314とともに、本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100における制御情報設定手段を構成する。
ここで再び図5を参照した機能構成の説明に戻る。図5に示すように、エンジンECU31において、CPU312は、第1計時部3151を有する第1判定部315と、第2計時部3161を有する第2判定部316と、検出特性調整制御部317とを有する。第1判定部315は、PMセンサ45の出力を入力インターフェース回路311aから取り込み、この出力とRAM313に記憶されている閾値堆積量TDaおよび故障判定閾値時間T1に基づき、後で図7を参照して詳述するDPF23の故障判定の処理を行う。すなわち、第1判定部315は、取り込んだPMセンサ45の出力から現在のPM堆積量を求めてこのPM堆積量とRAM313に記憶されている閾値堆積量TDaと比較しつつ現在のPM堆積量が閾値堆積量TDaに達するまでの満杯堆積時間を第1計時部3151で計時していき、該第1計時部3151が計時した満杯堆積時間とRAM313に記憶されている故障判定閾値時間T1を比較してDPF23が故障か正常かの判定結果を出力する。
このように、エンジンECU31において、CPU312は、排気微粒子センサの検出部に堆積する粒子状物質の堆積量が予め設定された閾値堆積量に達したとき、ヒータにより粒子状物質を除去してから閾値堆積量に達するまでの堆積時間を予め設定した故障判定閾値時間と比較してパティキュレートフィルタが故障状態か否かの故障判定を実行する第1判定手段を構成する。
また、図5において、第2判定部316は、PMセンサ45の出力を取り込み、RAM313に記憶されている変化量異常判定周期Tp毎に、取り込んだPMセンサ45の出力と、RAM313に記憶されている変化異常判定閾値TDvを照合しつつ、後で図8を参照して詳述するDPF23の故障判定の可否を判定する処理を行う。すなわち、第2判定部316は、第2計時部3161が上記変化量異常判定周期Tpを計時しつつ、取り込んだPMセンサ45の出力からそれまでのPM堆積量を算出していき、第2計時部3161が計時している上記変化量異常判定周期Tpがタイムアップするまでの、つまり変化量異常判定周期Tpの期間のPM堆積量の変化量Dvを変化異常判定閾値TDvと比較して故障判定(つまり、診断)を許可するか中止するかを判定し、第1判定部315に対する故障判定許可(診断許可)または故障判定の中止(診断中止)の制御を行う。
このように、エンジンECU31において、CPU312は、排気微粒子センサの出力を所定の周期で繰り返し検出して各周期の開始時に検出した開始時検出値と終了時に検出した終了時検出値の間における粒子状物質の堆積量の変化量を予め設定した変化異常判定閾値と比較し、該比較の結果に応じて、第1判定手段による故障判定の可否を判定する第2判定手段を構成する。
また、検出特性調整制御部317は、第1判定部315においてDPF23が正常であると判定された場合や、第2判定部316においてDPF23の故障判定を許可するとの判定がなされた場合等に、例えば第1判定部315から出力される検出特性調整指令に基づいてヒータ加熱指令を生成し、出力インターフェース回路311bを介してPMセンサ45に送出する。PMセンサ45では、ヒータ加熱制御部62が上記ヒータ加熱指令に基づいてヒータ59に通電し、検出部54に付着したPMを燃焼させて除去する検出特性調整制御を実行する。
このように、エンジンECU31のCPU312は、PMセンサ45のヒータ加熱制御部62とともに、第2判定手段が第1判定手段による故障判定を中止させたことを条件にPMセンサ45のヒータ59に通電して作動させ、検出部54に堆積した粒子状物質を燃焼させて除去する排気微粒子センサの検出特性調整制御手段を構成している。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100においては、車両のスタートスイッチやイングニッションスイッチが操作され、エンジンECU31およびDeNOxECU41等に電源が供給されると、エンジンECU31により、図7に示すDPF23の故障判定処理、および図8に示すDPF23の故障判定の可否判定処理が実行される。
このうち、図7に示すDPF23の故障判定処理は、PMセンサ45の検出特性を調整する処理(ステップS11)から開始される。すなわち、ステップS11において、第1判定部315は、検出特性調整制御部317にリセット指令を送出し、該検出特性調整制御部317によりヒータ59に通電させて作動させ、PMセンサ45の検出部54に付着したPMを燃焼させて除去させる。
ステップS11におけるPMセンサ45の検出特性調整が行われると、次いで、第1判定部315は、第1計時部3151に指示して当該PMセンサ45の検出特性調整が行われてからの該PMセンサ45におけるPM堆積時間T0の計時を開始させる(ステップS12)。
第1計時部3151によるPM堆積時間T0の計時中、第1判定部315は、PMセンサ45の出力を入力インターフェース回路311aから取り込み(ステップS13)、このPMセンサ45の出力から演算によりPM堆積量Daを算出するとともに、該PM堆積量Daが予め設定されている閾値堆積量TDaに達しているか否かを判定する(ステップS14)。
ここで、PM堆積量Daが閾値堆積量TDaに達していないと判定された場合(ステップS14でNO)、第1判定部315は、ステップS13に戻ってPMセンサ45の出力を取り込み、次いで、ステップS14に進み、このPMセンサ45の出力から求めたPM堆積量Daが予め設定されている閾値堆積量TDaに達しているか否かを判定する。上記ステップS13およびS14の処理は、ステップS14でPM堆積量Daが閾値堆積量TDaに達していないと判定されている間、繰り返し実行される。
この間の処理中、PM堆積量Daが閾値堆積量TDaに達したと判定されると(ステップS14でYES)、第1判定部315は、ステップS12で開始した第1計時部3151におけるPM堆積時間T0の計時を終了させる(ステップS15)。
次いで、第1判定部315は、ステップS15で計時終了したPM堆積時間T0が予め設定されている故障判定閾値時間T1より大きいか否かを判定する(ステップS16)。ここで、PM堆積時間T0が故障判定閾値時間T1以下であると判定された場合(ステップS16でYES)、第1判定部315は、DPF23は正常であると判定する(ステップS17)。ステップS17でDPF23は正常であると判定されると、引き続き、第1判定部315は、ステップS11に戻ってPMセンサ45の検出特性調整処理を行い、その後、ステップS12以降の処理を実行する。
これに対し、ステップS16において、PM堆積時間T0が故障判定閾値時間T1より大きいと判定された場合(ステップS16でNO)、第1判定部315は、DPF23は故障であると判定し(ステップS18)、一連の故障診断処理を終了する。ステップS18でDPF23は故障であると判定された後、DPF23の故障判定処理(図7参照)を再開するには、例えば、エンジンECU31によって、排気浄化装置12の上流側の排気中への燃料添加しDPF23上に捕集されたPMを燃焼させる再生処理を実行すればよい。
一方、第2判定部316は、図7における第1判定部315でのDPF23の故障診断処理に合わせて、変化異常判定周期Tp毎にPMセンサ45の出力を繰り返し検出しながら図8に示すDPF23の故障判定の可否判定処理を実行する。このDPF23の故障判定の可否判定処理は、例えば、第1判定部315におけるDPF23の故障診断処理中のステップS11(図7参照)が実行されたことを契機に開始させることができる。
すなわち、第1判定部315によりPMセンサ45の検出特性調整処理が実行されると、第2判定部316は、図8に示すDPF23の故障判定の可否判定処理を開始し、まず、PMセンサ45の出力を取り込み、この出力から演算によりPM堆積量Daを算出するとともに、算出したPM堆積量Daを、当該変化異常判定周期Tpの開始時に検出した開始時検出値としてRAM313の所定領域に記憶させる(ステップS21)。
次いで、第2判定部316は、第2計時部3161により変化異常判定周期Tpに相当する時間の計時を開始させる(ステップS22)。引き続き、第2判定部316は、第2計時部3161による計時を続行させながらその計時時間が上記変化異常判定周期Tpに相当する時間に達したか否か、つまり、変化異常判定周期Tpがタイムアップしたか否かを判定する(ステップS23)。ここで、変化異常判定周期Tpがタイムアップしていないと判定されると(ステップS23でNO)、その後に当該変化異常判定周期Tpがタイムアップしていると判定される(ステップS23でYES)まで、変化異常判定周期Tpに相当する時間の計時を続行する(ステップS22)。
上記変化異常判定周期Tpに相当する時間の計時処理中、当該変化異常判定周期Tpがタイムアップしたと判定されると(ステップS23でYES)、第2判定部316は、その時のPMセンサ45の出力を取り込み、この出力からPM堆積量Daを算出するとともに、算出したPM堆積量Daを、当該変化異常判定周期Tpの終了時に検出した終了時検出値としてRAM313の上記所定領域に記憶させる(ステップS24)。
引き続き、第2判定部316は、上記ステップS24で記憶した終了時検出値、すなわち今回検出値から上記ステップS21で記憶した開始時検出値、すなわち前回検出値を減算して当該変化異常判定周期TpにおけるPM堆積量の変化量Dvを算出したうえで、該変化量Dvが予め設定されている変化異常判定閾値TDvより小さいか否かを判定する(ステップS25)。
ここで、変化異常判定周期TpにおけるPM堆積量の変化量Dvnが変化異常判定閾値TDvよりも小さいと判定された場合(ステップS25でYES)、第2判定部316は、DPF23の故障判定(診断)を許可すると判定する(ステップS26)。ステップS26で診断を許可すると判定すると、第2判定部316は、第1判定部315に対する診断許可制御(図5参照)として、例えば、第1判定部315にDPF23の診断許可を指示し、その後、ステップS21以降の処理を続行する。一方、第1判定部315は、第2判定部316からの上記指示に基づいて図7における一連の故障判定(診断)処理を続行する。ステップS26の診断許可制御については、第2判定部316が上記指示を発することなく単にステップS21以降の処理に移行し、第1判定部315もそのまま図7のDPF23の故障判定処理を続行するようにしてもよい。
これに対し、上記ステップS25において、変化異常判定周期TpにおけるPM堆積量の変化量Dvnが変化異常判定閾値TDv以上であると判定された場合(ステップS25でNO)、第2判定部316は、DPF23の故障判定(診断)を中止すると判定する(ステップS27)。第2判定部316は、ステップS27において診断を中止すると判定すると、第1判定部315に対する診断中止制御(図5参照)として、例えば、第1判定部315にDPF23の診断中止を指示する。その後、第2判定部316は、PMセンサ45の検出部54に付着したPMを除去する処理を実施し、この処理によりPMが除去された後、第1判定部315に対してDPF23の診断再開を指示する(ステップS28)。
上記ステップS28の診断再開の指示に先立つPMセンサ45のPM除去処理は、例えば、ステップS27で第2判定部316によりDPF23の故障判定(診断)を中止するとの判定がなされたことを条件に開始させることができる。この場合、第2判定部316は、ステップS27でのDPF23の故障判定(診断)を中止すると判定することにより、検出特性調整制御部317に検出特性調整指令を送出する。検出特性調整制御部317は、検出特性調整指令に基づきヒータ加熱指令を生成してPMセンサ45に送信する。一方、PMセンサ45では、ヒータ加熱制御部62が、上記ヒータ加熱指令に基づきヒータ59に通電し、その検出部54に付着しているPMを除去させる。上記ステップS28において、第2判定部316は、上述したPM除去処理により検出部54に付着しているPMが除去された後、第1判定部315にDPF23の診断再開を指示する。ここで、診断の再開を指示するための条件としては、上述したように、PMが除去された後に限らず、例えば、上述したPM除去処理中、通電によるヒータ59の作動後としてもよい。
第2判定部316における上記ステップS27、S28の処理に対し、第1判定部315は、上記ステップS27で第2判定部316から送出される診断中止の指示を受信すると、図7に示すステップS16での判定結果に基づくDPF23が正常か故障かの判定(ステップS17、S18)を行わないように制御する。また、第1判定部315は、その後、上記ステップS28で第2判定部316から送出される診断再開の指示を受信することにより、上記ステップS16〜S18の処理を再開する。
図8に示すDPF23の故障判定の可否判定処理においては、DPF23の故障判定を中止する判定が行われた後、自動でPMセンサ45の検出部54に付着したPMの除去処理を実行する(ステップS28)こととしたが、DPF23の故障判定を中止する判定が行われた場合に、排気浄化システムを作動停止させ、DPF23の流路の目封じ部の欠損や、PMセンサ45の検出部54のPM堆積状況等を目視などにより検証したうえで、上記PM除去処理以降の処理を実施するようにしてもよい。
このように、本実施の形態では、第1判定部315が、PMセンサ45の出力に基づき、PMセンサ45の検出部54に満杯量のPMが堆積したことが検出されたとき、ヒータ59を作動させることにより検出部54に堆積したPMを燃焼させて除去した後、つまりPMセンサ45の検出特性調整後からPMセンサ45におけるPM堆積量が上記満杯量に達するまでの時間を予め設定した故障判定閾値時間T1と比較してDPF23が故障状態か否かの故障判定を行う。
本実施の形態に係る排気浄化システムでは、PMセンサ45の検出特性調整後からのPMセンサ45の検出部54におけるPM堆積量については、例えば、DPF23の正常な状態が保持されているにもかかわらず、短期間に大きな値へと変わる状況が起こり得る。このようなPMセンサ45の出力の大幅な変化が発生する状況としては、DPF23の複数の目封じ部に多少の欠損があるものの、DPF23の正常な状態が保持されている状態で、上記欠損部で補修しきれなかった粒径の大きなPMがPMセンサ45の検出部54に付着する場合等が考えられる。
このように、PMセンサ45の検出部54への粒径の大きなPMの付着等によりPMの出力が大幅に変化する状況下では、第1判定部315において、閾値堆積量TDaに達するまでの堆積時間と故障判定閾値時間T1の比較結果でDPF23の故障判定を行うと、DPF23の正常な状態が保持されているにもかかわらず、DPF23が故障であると判定(誤判定)される結果となる。
この点、本実施の形態に係るパティキュレートフィルタの故障診断装置100では、上述した第1判定部315におけるDPF23の故障判定処理と合わせて、第2判定部316が、PMセンサ45の出力を所定の変化異常判定周期Tp毎に繰り返し検出して各周期の開始時に検出した開始時検出値と終了時に検出した終了時検出値の間におけるPMの堆積量の変化量Dvを求め、求めた各周期TpにおけるPMの堆積量の変化量Dvと予め設定した変化異常判定閾値TDvとの比較結果に応じてDPF23の故障判定の可否を判定する。
この構成により、各変化異常判定周期TpにおけるPMの堆積量の変化量と変化異常判定閾値TDvとの比較結果によっては第1判定部315におけるDPF23の故障判定を中止させ、DPF23の故障判定結果を出力しないようにすることができる。したがって、本実施の形態では、DPF23の複数の目封じ部に多少の欠損があるものの、DPF23の正常な状態が保持されている状況下において、PMセンサ45の検出部54に上記欠損部で補修しきれなかった粒径の大きなPMが付着する等、PMセンサ45の出力が大幅に変化した場合でも、DPF23を故障であると誤判定してしまうことを回避することができる。
上述したPMセンサ45の検出部54への付着により出力の大幅な変化を招来する粒径の大きなPMとしては、例えば、図9に示すPMの分布特性Cd中、領域a3に分布する粒径サイズのPMが想定される。領域a3に分布する粒径サイズの大きなPMは、領域a1に分布する粒径の小さいPMおよび領域a2に分布する中程度の粒径のPMの量を加算した量よりも少ない量ではあるが、DPF23の正常な状態が保持されているがDPF23の複数の目封じ部に多少の欠損がある状況下では上記欠損部で捕集されることなくPMセンサ45の検出部54に付着する状況を引き起こす可能性がある。
本実施の形態によれば、こうした状況下で、第2判定部316が、変化異常判定周期TpにおけるPMの堆積量の変化量が変化異常判定値TDv以上となったことを認識して第1判定部315におけるDPF23の故障判定を中止させることで、正常な状態が保持されているDPF23が故障であると断定されないようにすることができる。これにより、本実施の形態では、DPF23の複数の流路の目封じ部にさほど欠損が生じておらず、DPF23の正常な状態が保持されている状態で、目封じ部の欠損部により補修しきれなかった粒径の大きなPMがDPF23より下流側に配置されるPMセンサ45の検出部54に付着する等の要因によるDPF23の誤った故障判定を回避できる。
また、本実施の形態において、第2判定部316は、各変化異常判定周期Tp毎にPMセンサ45による終了時検出値と開始時検出値の間におけるPMの堆積量の変化量Dvと変化異常判定閾値TDvとを比較した結果、PMの堆積量の変化量Dvが変化異常判定閾値TDv未満であることを条件に、第1判定部315によるDPF23の故障判定を許可する一方、PMの堆積量の変化量TDvnが変化異常判定閾値TDv以上になったことを条件に、第1判定部315によるDPF23の故障判定を中止させるようにしている。
この構成により、本実施の形態では、PMの堆積量の変化量Dvが任意の変化異常判定周期Tpで変化異常判定閾値TDv以上となるようなPMセンサ45の出力の変化が生じた場合に第1判定部315によるDPF23の故障判定を中止させ、正常な状態が保持されているDPF23が故障であると断定されないようにすることができる。また、故障判定を中止する判定を行った後、PMセンサ45の検出特性をリセットする処理を行うだけで、簡単かつ迅速に排気浄化システムを通常運用へと復帰させることができる。
また、本実施の形態においては、第2判定部316が第1判定部315によるDPF23の故障判定を中止させたことを条件にPMセンサ45のヒータ59を作動させ、検出部54に堆積したPMを燃焼させて除去するヒータ加熱制御部62(除去手段)を有し、第2判定部316は、ヒータ加熱制御部62によるPM除去後に、第1判定部315によるDPF23の故障判定の再開を許可するようにしている。
この構成により、本実施の形態では、例えば、PMセンサ45の検出部54に粒径の大きなPMが付着することにより、当該周期TpnにおけるPMの堆積量の変化量TDvnが大幅に変化したことを認識した第2判定部316によって第1判定部315によるDPF23の故障判定が中止された場合、その付着した粒径の大きなPMを除去するだけで第1判定部315によるDPF23の故障判定処理を再開でき、通常運用へと迅速に復帰できるとともに、復帰後、PMが除去された状態のPMセンサ45の出力に基づき直ちにDPF23の正確な故障判定を実行することができる。
上述の一実施の形態では、DPF23の故障判定の可否を判定に際し、PM堆積量の変化量を閾値(変化異常判定閾値TDv)として設定し、PMセンサ45の出力(抵抗計測値)からPMセンサ45のPM堆積量の変化量を演算により求めて上記閾値であるPM堆積量の変化量と比較するようにしたが、抵抗計測値を閾値として設定し、PMセンサ45の出力(抵抗計測値)と比較してDPF23の故障判定の可否を判定するようにしてもよい。また、上記一実施の形態では、エンジンECU31が第1判定部315、第2判定部316を構成する例を挙げているが、これら第1判定部315、第2判定部316をDeNOxECU41で構成するようにしてもよい。
以上説明したように、本発明は、パティキュレートフィルタの誤った故障判定を回避できるとともに、正常運用へ迅速に復帰可能なパティキュレートフィルタの故障診断装置を提供できるものである。かかる本発明は、車両等に搭載される内燃機関の排気通路上に配置されるDPF23等のパティキュレートフィルタの故障診断装置全般に有用である。