JP6585602B2 - タンパク質発現の増大 - Google Patents

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Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年12月31日に出願され、その内容の全体が参照により本明細書に援用されている、米国仮特許出願第USSN 61/922,613号の優先権の特典を主張する。
(発明の分野)
本発明は、全般的に、目的のタンパク質の発現の増加をもたらす遺伝子改変を起こす細菌細胞と、かかる細胞の作製方法及び使用方法と、に関する。本発明の態様として、ykfオペロンによってコードされるタンパク質の活性を変化させ、かつ目的のタンパク質の発現の増大をもたらす遺伝子改変を起こすバチルス種(Bacillus species)などのグラム陽性微生物が挙げられる。
遺伝子工学により、工業用バイオリアクター及び細胞工場として、かつ食品発酵分野において用いられる微生物の改良が可能となった。いくつかのバチルス種を含むグラム陽性生物は、多数の有用タンパク質及び有用代謝産物を製造するために用いられる(例えば、Zukowski,「Production of commercially valuable products,」In:Doi and McGlouglin(eds.)Biology of Bacilli:Applications to Industry,Butterworth−Heinemann,Stoneham.Mass pp 311〜337[1992]を参照されたい)。産業で用いられる一般的なバチルス種として、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、及び枯草菌(B.subtilis)が挙げられる。これらのバチルス種の株は、GRAS(一般に安全と認識されている)ステータスを有することから、食品及び製薬産業において利用されるタンパク質の産生の自然的対象物である。グラム陽性生物において産生されるタンパク質の例として、例えば、α−アミラーゼ、中性プロテアーゼ、及びアルカリ(又はセリン)プロテアーゼなどの酵素が挙げられる。
細菌性宿主細胞におけるタンパク質の産生に関する理解が進んでいるにもかかわらず、目的のタンパク質のレベルの増加を表す新規な組換え株の開発が必要とされている。
本発明は、目的のタンパク質の増加したレベルを発現する組換えグラム陽性細胞と、その作製方法及び使用方法と、を提供する。詳細には、本発明は、遺伝子改変を起こさない細菌細胞と比較して、目的のタンパク質の発現の増大をもたらす遺伝子改変を起こす細菌細胞に関する。本発明の態様として、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させ、かつ目的のタンパク質の発現の増大をもたらす遺伝子改変を起こすバチルス種などのグラム陽性微生物が挙げられる。かかる組換え細菌細胞の作製方法及び使用方法についても提供する。
本発明の態様として、グラム陽性菌細胞からの目的のタンパク質の発現を増加させる方法であって、a)目的のタンパク質を産生可能な改変グラム陽性菌細胞を得る工程であって、前記改変グラム陽性菌細胞は、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる少なくとも1つの遺伝子改変を含む、工程と、b)前記改変グラム陽性菌細胞によって前記目的のタンパク質が発現するような条件下で前記改変グラム陽性菌細胞を培養する工程であって、前記改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の発現は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の発現と比較して増加する、工程と、を含む、方法が挙げられる。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種(Bacillus sp.)株である(例えば、バチルス種株は、B.リケニフォルミス、B.レンタス(B.lentus)、枯草菌、B.アミロリケファシエンス、B.ブレービス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィラス(B.alkalophilus)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.プミルス(B.pumilus)、B.ロータス(B.lautus)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.メガテリウム(B.megaterium)、及び卒倒病菌(B.thuringiensis)からなる群から選択される)。特定の実施形態では、バチルス種株は、枯草菌株である。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、degU、degQ、degS、scoC4、spoIIE、及びoppAからなる群から選択される遺伝子の変異を更に含む。特定の実施形態では、変異は、degU(Hy)32である。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の低減したYkfAタンパク質を有する。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の増加したYkfAタンパク質を有する。
特定の実施形態では、遺伝子改変は、前記ykfオペロンのykfA遺伝子において起こる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、ykfオペロンの内因性ykfA遺伝子において起こる。特定の実施形態では、ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも60%同一である。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。
特定の実施形態では、目的のタンパク質は、相同タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、異種タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、酵素である。特定の実施形態では、酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、プロテアーゼである。特定の実施形態では、プロテアーゼは、スブチリシンである。特定の実施形態では、スブチリシンは、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147、スブチリシン309、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
特定の実施形態では、本方法は、前記目的のタンパク質を回収する工程を更に含む。
本発明の態様として、改変グラム陽性菌細胞が挙げられ、前記改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞と比較して、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種株である。特定の実施形態では、バチルス種株は、B.リケニフォルミス、B.レンタス、枯草菌、B.アミロリケファシエンス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.コアグランス、B.サークランス、B.プミルス、B.ロータス、B.クラウシイ、B.メガテリウム、及び卒倒病菌からなる群から選択される。特定の実施形態では、バチルス種株は、枯草菌株である。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、degU、degQ、degS、scoC4、spoIIE、及びoppAからなる群から選択される遺伝子の変異を更に含む。特定の実施形態では、変異は、degU(Hy)32である。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の低減したYkfAタンパク質を有する。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の増加したYkfAタンパク質を有する。
特定の実施形態では、遺伝子改変は、前記ykfオペロンのykfA遺伝子において起こる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、ykfオペロンの内因性ykfA遺伝子において起こる。特定の実施形態では、ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも60%同一である。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、改変細胞は、目的のタンパク質を発現する。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、相同タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、異種タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、酵素である。
特定の実施形態では、酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、プロテアーゼである。特定の実施形態では、プロテアーゼは、スブチリシンである。特定の実施形態では、スブチリシンは、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147、スブチリシン309、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
本発明の態様として、少なくとも1つの遺伝子改変をykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる親グラム陽性菌細胞に導入する工程を含む、向上したタンパク質産生能力を用いて、改変グラム陽性菌細胞を得る方法を含む。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種株である。特定の実施形態では、バチルス種株は、B.リケニフォルミス、B.レンタス、枯草菌、B.アミロリケファシエンス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.コアグランス、B.サークランス、B.プミルス、B.ロータス、B.クラウシイ、B.メガテリウム、及び卒倒病菌からなる群から選択される。特定の実施形態では、バチルス種株は、枯草菌株である。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、degU、degQ、degS、scoC4、spoIIE、及びoppAからなる群から選択される遺伝子の変異を更に含む。特定の実施形態では、変異は、degU(Hy)32である。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の低減したYkfAタンパク質を有する。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の増加したYkfAタンパク質を有する。
特定の実施形態では、遺伝子改変は、前記ykfオペロンのykfA遺伝子において起こる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、ykfオペロンの内因性ykfA遺伝子において起こる。特定の実施形態では、ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも60%同一である。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。
特定の実施形態では、前記改変グラム陽性菌細胞は、目的のタンパク質を発現する。特定の実施形態では、本方法は、前記目的のタンパク質をコードする発現カセットを前記親グラム陽性菌細胞に導入する工程を更に含む。特定の実施形態では、本方法は、前記目的のタンパク質をコードする発現カセットを前記改変グラム陽性菌細胞に導入する工程を更に含む。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、相同タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、異種タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、酵素である。特定の実施形態では、酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、プロテアーゼである。特定の実施形態では、プロテアーゼは、スブチリシンである。特定の実施形態では、スブチリシンは、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147、スブチリシン309、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
特定の実施形態では、本方法は、前記改変グラム陽性菌細胞によって前記目的のタンパク質が発現するような条件下で前記改変グラム陽性菌細胞を培養する工程を更に含む。特定の実施形態では、本方法は、前記目的のタンパク質を回収する工程を更に含む。
本発明の態様として、上述の方法によって作製された、改変グラム陽性菌細胞が挙げられる。
本発明の態様として、ykfA遺伝子由来の変異体配列を含むポリヌクレオチドが挙げられ、
前記変異体配列は、
少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、
配列番号1の全て又は一部と少なくとも60%同一であり、
ykfA遺伝子内のヌクレオチド位置での少なくとも1つの遺伝子改変を含み、ここで、該遺伝子変化は、前記少なくとも1つの変異がグラム陽性菌細胞の内因性ykfA遺伝子内に存在する場合、YkfAタンパク質の活性の変化を引き起こす。
特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4アミノ酸)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、変異体配列は、配列番号3の全て又は一部と少なくとも90%同一である。特定の実施形態では、変異体配列は、配列番号3の全て又は一部と同一である。特定の実施形態では、変異体配列は、少なくとも20ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、変異体配列は、少なくとも50ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態では、変異体配列は、少なくとも200ヌクレオチドの長さである。
本発明の態様として、(配列番号2に示した)野生型YkfAポリペプチド配列由来の変異体配列を含む単離されたポリペプチドが挙げられ、
前記変異体配列は、
少なくとも5アミノ酸の長さであり、
配列番号2の全て又は一部と少なくとも60%同一であり、
YkfAポリペプチド配列遺伝子内のアミノ酸における少なくとも1つの改変を含み、ここで、該改変は、YkfAタンパク質の活性の変化を引き起こす。
特定の実施形態では、改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸において起こる。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸において起こる。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、変異体ポリペプチド配列は、配列番号4の全て又は一部と少なくとも90%同一である。特定の実施形態では、変異体ポリペプチド配列は、配列番号4の全て又は一部と同一である。特定の実施形態では、変異体ポリペプチド配列は、少なくとも5アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、変異体ポリペプチド配列は、少なくとも20アミノ酸の長さである。特定の実施形態では、変異体ポリペプチド配列は、少なくとも50アミノ酸の長さである。
本発明の態様として、上述のようなポリヌクレオチド配列を含むベクターが挙げられる。特定の実施形態では、ベクターは、前記グラム陽性菌細胞への形質転換の際、相同組換えによって、前記ポリヌクレオチド配列における少なくとも1つの変異をグラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する位置に導入するように設計された標的化ベクターである。
本発明の態様として、グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の発現を増大させる方法が挙げられ、
a)上記ベクターで親グラム陽性菌細胞を形質転換させる工程と、
b)改変グラム陽性菌細胞を作製するために、前記ベクターと、前記親グラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する領域とを相同組換えさせる工程と、
c)前記目的のタンパク質の発現に好適な条件下で前記改変グラム陽性菌細胞を増殖させる工程であって、該改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の産生は、前記形質転換工程前の前記グラム陽性菌細胞と比較して増加する、工程と、を含む。
特定の実施形態では、親グラム陽性菌細胞は、バチルス種株である。特定の実施形態では、バチルス種株は、B.リケニフォルミス、B.レンタス、枯草菌、B.アミロリケファシエンス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.コアグランス、B.サークランス、B.プミルス、B.ロータス、B.クラウシイ、B.メガテリウム、及び卒倒病菌からなる群から選択される。特定の実施形態では、バチルス種株は、枯草菌株である。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、degU、degQ、degS、scoC4、spoIIE、及びoppAからなる群から選択される遺伝子の変異を更に含む。特定の実施形態では、変異は、degU(Hy)32である。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の低減したYkfAタンパク質を有する。特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性の増加したYkfAタンパク質を有する。
特定の実施形態では、変異は、前記ykfオペロンのykfA遺伝子において起こる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変は、ykfオペロンの内因性ykfA遺伝子において起こる。特定の実施形態では、ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも60%同一である。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示した)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、相同タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、異種タンパク質である。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、酵素である。特定の実施形態では、酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、プロテアーゼである。特定の実施形態では、プロテアーゼは、スブチリシンである。特定の実施形態では、スブチリシンは、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147、スブチリシン309、及びそれらの変異体からなる群から選択される。
特定の実施形態では、本方法は、前記目的のタンパク質を回収する工程を更に含む。
枯草菌(Bacillus subtilis)からのykfオペロンの概略図である。実施例に記載されているサイレント変異の位置が提示されている。ykfA、ykfB、ykfC及びykfD遺伝子が示されている。P252L及びV253Lをもたらす遺伝子改変が示されている。 CB15−14誘導体(CB15−14 #1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)を発現するプロテアーゼの細胞密度のグラフである。 CB15−14誘導体(CB15−14 #1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)におけるFNA産生のグラフである。 CB15−14誘導体(CB15−14 #1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)を産生するGFPの細胞密度のグラフである。定常期(増殖の4時間目と6時間目との間)に突入する際、ykfA変異株の細胞増殖の低下は、ykfA変異により向上した細胞の生存性を示す制御株と比較して遅延する。 CB15−14誘導体(CB15−14#1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)におけるGFP産生のグラフである。グラフは、ykfA変異により、増殖の6時間目から増加したGFP産生を示す。 CB15−14誘導体(CB15−14#1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)を産生するBglCの細胞密度のグラフである。ykfA変異を持つ細胞は、より高い細胞増殖性を有しており、ykfA変異の存在により向上した細胞の生存性を示している。 CB15−14誘導体(CB15−14#1及び#2(制御株)と、CB15−14ykfA #1及び#2(ykfA変異を持つ株)と)におけるBglC産生のグラフである。グラフは、ykfA変異の存在により、全ての時点においてBglC産生が増加したことを示している。
本発明は、全般的に、目的のタンパク質の発現の増加をもたらす遺伝子改変を起こす細菌細胞と、かかる細胞の作製方法及び使用方法と、に関する。本発明の態様として、ykfオペロンによってコードされるタンパク質の活性を変化させ、それにより目的のタンパク質の発現の増大をもたらす遺伝子改変を起こすバチルス種細胞などのグラム陽性微生物が挙げられる。
本組成物及び方法につき、より詳細に記載する前に、本組成物及び方法は、記載されている特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって当然ながら、多様であり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記載するという目的でのみ使用されるものであり、制限を意図するものではなく、したがって、本発明の組成物及び方法の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることもまた理解されるであろう。
値の範囲が示される場合、間にある各値、文脈により別途明確に規定されない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間及びその規定の範囲内の任意の別の規定の値又は間にある値が、本発明の組成物及び方法の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してそれらのより小さい範囲に含まれてもよく、規定の範囲内の任意の明確に除外されている限界に従って、やはり本発明の組成物及び方法の範囲内に包含される。規定の範囲が上限若しくは下限のいずれか又は両方を含む場合、これらの含まれる上限若しくは下限のいずれか又は両方を除外する範囲もまた本発明の組成物及び方法に含まれる。
本明細書において、ある特定の範囲は、用語「約」が前に来る数値で示される。用語「約」は、本明細書において、その後に続く正確な数、並びにその用語の後に続く数に近い又は近似の数を文字で支持するために使用される。ある数が具体的に列挙されている数に近い又は近似の数であるかどうかを決定するとき、その近い又は近似する列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙されている数の実質的な同値を示す数であり得る。例えば、ある数値に関して、用語「約」は、その用語が文脈において別途明確に定義されていない限り、その数値の−10%〜+10%の範囲を指す。別の例では、語句「約6のpH値」は、そのpH値が別途明確に定義されていない限り、5.4〜6.6のpH値を指す。
本明細書において提供する項目は、明細書全体を参照することにより有することができる、本組成物及び方法の種々の態様又は実施形態を限定するものではない。したがって、すぐ下に定義される用語は、明細書全体を参照することにより、一層完全に定義される。
本文書は、読みやすさのために複数の節に編成されているが、読者は、1つの節で行われた記述が他の節に適用できることを理解するであろう。この方法では、開示の異なる節で使用される項目は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本組成物及び方法の属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同様の意味を持つ。本組成物及び方法を実施又は試験する上で、本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料もまた使用することができるが、代表的な例示の方法及び材料を以下に記載する。
本明細書において引用されている全ての出版物及び特許は、それぞれの個々の出版物又は特許が参照により援用されると具体的かつ個々に示された場合と同様に、本明細書に参照により援用され、関連の出版物が引用された方法及び/又は材料を開示及び記述するために、参照により本明細書に援用される。任意の出版物の引用は、出願日の前のその開示に関するものであり、本発明の組成物及び方法が先行発明のためにそのような出版物に先行する権利を有さないことを承認するものと解釈されるべきではない。更に、示されている出版日は、実際の出版日とは異なる場合があり、それぞれ別個に確認する必要があるであろう。
この発明を実施するための形態に従い、以下の略記及び定義を適用する。なお、単数形「a」、「an」、及び「the」には、内容によって明らかに指示がない限り、複数の指示対象が含まれることに留意されたい。よって、例えば、「酵素(an enzyme)」という場合には、複数のこうした酵素が含まれ、「投入量(the dosage)」という場合には、当業者には既知の1又は2以上の投入量及びその当量が含まれる。
特許請求の範囲は、任意選択的な要素を除外するように作成され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、請求項の構成要素の列挙、又は「消極的(negative)」限定の使用に関連して、「だけ(solely)」、「のみ(only)」などのような排他的な用語を使用するための先行する根拠として役立つことを意図する。
本明細書において使用される用語「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」は、その用語の後の成分が、前記成分の作用又は活性に寄与又は干渉しない、全組成物の30重量%未満の全量の他の既知の成分の存在下にある、組成物を指すことに更に留意されたい。
用語「含む(comprising)」は、本明細書において使用される場合、用語「含む」の後の成分を含むが、これらに限定されないことを意味することにもまた留意されたい。用語「含む」の後の成分は、必要又は必須であるが、その成分を含む組成物は、他の必須でない又は任意選択的な成分も更に含み得る。
用語「〜からなる(consisting of)」は、本明細書において使用される場合、用語「〜からなる」の後の成分を含み、これらに限定されることを意味することにもまた留意されたい。用語「〜からなる」の後の成分はしたがって、必要又は必須であり、他の成分は組成物中に存在しない。
本開示を読めば当業者には明らかとなるように、本明細書において記述及び例示されている個々の実施形態のそれぞれは、本明細書において記載されている本発明の組成物及び方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離し、又はそれと組み合わせることができる別個の成分及び特徴を有する。任意の列挙されている方法は、列挙されている事象の順序で又は論理的に可能な任意の他の順序で行うことができる。
定義
本明細書で使用されるとき、「宿主細胞」は、新たに導入されたDNA配列のための宿主又は発現ビヒクルとして作用する能力を有する細胞を指す。
本発明の特定の実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞、例えば、グラム陽性宿主細胞バチルス種である。
本明細書で使用されるとき、「バチルス属(genus Bacillus)」又は「バチルス種」として、当業者に既知の「バチルス」属の全ての種を包含し、限定するものではないが、枯草菌、B.リケニフォルミス、B.レンタス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.アミロリケファシエンス、B.クラウシイ、B.ハロデュランス(B.halodurans)、B.メガテリウム、B.コアグランス、B.サークランス、B.ロータス、及び卒倒病菌が挙げられる。バチルス属は、分類上の再編成を受け続けるものと認識される。よって、属には、これまでに再分類された種を包含するものと意図され、限定するものではないが、現在では「ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」と命名されているB.ステアロサーモフィルスなどの生物が挙げられる。酸素存在下での、耐久性の高い内生胞子の形成は、バチルス属を定義する特性であると考慮されるものの、この特性は、現在、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)、アンフィバチルス(Amphibacillus)、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)、アノキシバチルス(Anoxybacillus)、ブレビバチルス(Brevibacillus)、フィロバチルス(Filobacillus)、グラシリバチルス(Gracilibacillus)、ハロバチルス(Halobacillus)、パエニバチルス(Paenibacillus)、サリバチルス(Salibacillus)、サーモバチルス(Thermobacillus)、ウレイバチルス(Ureibacillus)、及びバルジバチルス(Virgibacillus)と命名されている属にも当てはまる。
本明細書で使用されるとき、「核酸」は、ヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列及びそれらの断片又は部分を指し、かつ二本鎖又は一本鎖のセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかを表すゲノム又は合成起源のDNA、cDNA、及びRNAを指す。遺伝コードの縮重の結果として、多数のヌクレオチド配列が所与のタンパク質をコードしてもよいことが理解されよう。
本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」は、細胞の中で複製することができ、かつ新しい遺伝子又はDNAセグメントを細胞の中へと運ぶことができる、任意の核酸を指す。よって、この用語は、異なる宿主細胞間を移動するように設計された核酸構築物を指す。「発現ベクター」は、異種DNA断片を組み込み、異なる細胞(foreign cell)中で発現することのできるベクターを指す。多くの原核細胞及び真核細胞発現ベクターが市販されている。「標的化ベクター」は、宿主細胞が形質転換する宿主細胞の染色体内の領域と相同であり、かつその領域において相同組換えを駆動することができる、ポリヌクレオチド配列を含むベクターである。標的化ベクターは、相同組換えを介した細胞の染色体への変異の導入における使用が見出される。いくつかの実施形態では、標的化ベクターは、例えば、末端に添加される他の非相同配列(すなわち、スタッファー配列又はフランキング配列)を含む。末端は、標的化ベクターが閉環を形成するように閉じることができる(例えば、ベクターへの挿入など)。適切なベクターの選択及び/又は構築は、当業者の知識の範囲内である。
本明細書で使用されるとき、用語「プラスミド」は、クローニングベクターとして使用される、環状二本鎖(ds)DNA構築物を指し、この構築物は、多くの細菌及び一部の真核生物中で、染色体外で自己複製により遺伝因子を形成する。いくつかの実施形態では、プラスミドは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれる。
「精製された」又は「単離された」又は「富化された(enriched)」は、生体分子(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)が、それが自然界において関連している自然発生成分の一部又は全てから分離されることによって、その天然の状態から改変されたことを意味する。かかる単離又は精製は、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性分離、透析、プロテアーゼ処理、硫安沈殿又は他のタンパク質塩析、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、濾過、精密濾過、ゲル電気泳動又は勾配分離などの当技術分野において承認されている分離技術によって達成されて、最終組成物において望ましくない細胞全体、細胞残屑、不純物、外来タンパク質、又は酵素を除去する。その後、例えば、活性化剤、抗阻害剤、望ましいイオン、pHを調節する化合物又は他の酵素若しくは化学物質など、追加の利益をもたらす成分を、精製された又は単離された生体分子組成物に加えることが更に可能である。
本明細書で使用されるとき、目的の生体分子(例えば、目的のタンパク質)の発現を指している場合、用語「増大(enhanced)」、「向上(improved)」及び「増加(increased)」は、本明細書において互換的に使用されて、生体分子の発現が、本明細書の教示に従って改変されていないが、本質的に同一の増殖条件下で増殖させてきた対応する宿主株(例えば、野生型株及び/又は親株における発現のレベルを超えていることを示す。
本明細書で使用されるとき、用語「発現」は、タンパク質に適用する場合、遺伝子の核酸配列に基づいてタンパク質が産生されるプロセスを指しており、よって、転写及び翻訳の両方を含む。
本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチドを細胞に導入する文脈において、用語「導入」は、ポリヌクレオチドを細胞に移入させるのに好適な任意の方法を指す。かかる導入の方法としては、限定するものではないが、原形質融合、遺伝子移入、形質転換、接合、及び形質導入が挙げられる(例えば、Ferrari et al,「Genetics,」in Hardwood et al,(eds.),Bacillus,Plenum Publishing Corp.,57〜72ページ,[1989]を参照されたい)。
本明細書で使用されるとき、用語「形質転換」及び「安定な形質転換」は、人間の介入によってポリヌクレオチド配列が導入された細胞を指す。ポリヌクレオチドは、細胞のゲノムの中に組み込まれてもよく、あるいは少なくとも2世代を通して保存されるエピソームプラスミドとして存在していてもよい。
本明細書で使用されるとき、用語「選択可能マーカー」又は「選択マーカー」は、宿主細胞において発現し、核酸を含む宿主の選択を容易にすることができる核酸(例えば、遺伝子)を指す。かかる選択可能マーカーの例として、限定するものではないが、抗菌剤が挙げられる。よって、用語「選択可能マーカー」は、宿主細胞が目的の入来DNAを取り込んだ、あるいは他の反応が生じたことを示す表示を提供する遺伝子を指す。典型的には、選択可能マーカーは、宿主細胞に抗菌耐性又は代謝における利益を付与し、それにより、外因性DNAを含む細胞と、形質転換の間に外因性配列を全く摂り込まなかった細胞とを区別することを可能にする遺伝子である。本発明に関連して有用な他のマーカーとして、限定するものではないが、トリプトファンなどの栄養要求性マーカーと、β−ガラクトシダーゼなどの検出マーカーとが挙げられる。
本明細書で使用されるとき、用語「プロモーター」は、下流の遺伝子を直接転写させるよう機能する核酸配列を指す。ある実施形態では、プロモーターは、その中で標的遺伝子が発現する宿主細胞に対して適切なものとされる。プロモーターは、他の転写及び翻訳制御核酸配列(「制御配列」とも称される)と共に、所与の遺伝子を発現するのに必要である。一般に、転写及び翻訳制御配列として、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終止配列、翻訳開始及び終止配列、並びにエンハンサー又はアクティベーター配列が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「機能的に結合」又は「作動可能に連結」は、既知の又は所望の活性を有する制御領域又は機能的ドメイン、例えば、プロモーター、ターミネーター、シグナル配列又はエンハンサー領域などが、制御領域又は機能的ドメインがその既知の又は所望の活性に応じてその標的の発現、分泌又は機能を調節することができるように、標的(例えば、遺伝子又はポリペプチド)に結合している又は連結されていることを意味する。
組換え細胞を記載するために用いられる場合、用語「遺伝子改変」又は「遺伝子変化」は、その細胞が親細胞と比べて少なくとも1つの遺伝子の差異を有することを意味する。1つ又は2つ以上の遺伝子の差異は、染色体変異(例えば、挿入、欠失、置換、逆位、染色体領域と別のものとの置き換え(例えば、染色体プロモーターと異種プロモーターとの置き換え)など)及び/又は染色体外のポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)の導入であってもよい。いくつかの実施形態では、染色体外のポリヌクレオチドは、宿主細胞の染色体に組み込まれて、安定発現株/形質転換体を産出させてもよい。本開示の実施形態として、ykfオペロン(ykfA、ykfB、ykfC、及びykfD)における遺伝子によってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる遺伝子改変が挙げられる。本明細書に詳しく示されるように、かかる改変により、目的のタンパク質の発現が向上する。
本明細書に記載されるように、タンパク質の活性の変化は、任意の簡便な方法で達成され得る。例えば、タンパク質活性は、タンパク質の活性を増加又は減少させることによって変化し得る。タンパク質活性はまた、例えば、タンパク質安定性、タンパク質間相互作用又は結合を改変することによって、あるいはタンパク質の基質特異性を改変することによって、変化し得る。活性の変化は、転写、mRNA安定性、翻訳のレベルにおいてであってもよく、あるいはその活性を低減させるykfオペロンから産生された1つ又は2つ以上のポリペプチドの変化の存在によるものであってもよい(すなわち、ポリペプチドの活性に基づいた、発現の「機能的な」減少である)。そのため、遺伝子改変のタイプ又はykfオペロンによってコードされる少なくとも1種類のタンパク質の発現若しくは活性を変化させる様式における制限はないことが意図される。例えば、いくつかの実施形態では、グラム陽性細胞における遺伝子改変とは、転写活性の低減をもたらす、1種類又は2種類以上のプロモーターを改変することである。特定の実施形態では、改変により、mRNA転写物のレベルが低減する。あるいは、グラム陽性細胞における遺伝子改変とは、細胞の安定性の低減を伴う転写をもたらす、ヌクレオチドの改変であり得る。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の遺伝子の発現を低減させる1を超える遺伝子改変が、遺伝子改変グラム陽性細胞中に存在してもよい。
遺伝子の「不活性化」とは、遺伝子の発現又は遺伝子のコードされた生体分子の活性が阻止されること、又はあるいは、その既知の機能を働かすことができないことを意味する。不活性化は、任意の好適な手段を介して、例えば、上述の遺伝子改変を介して、発生し得る。一実施形態では、不活性化された遺伝子の発現産物は、タンパク質の生物活性における当該変化を有する短縮されたタンパク質である。いくつかの実施形態では、改変グラム陽性菌株は、好ましくは安定した非復元(non-reverting)の不活性化をもたらす、1つ又は2つ以上の遺伝子の不活性化を含む。
いくつかの実施形態では、不活性化は、欠失によって達成される。いくつかの実施形態では、欠失の対象となる領域(例えば、遺伝子)は、相同組換えによって欠失される。例えば、欠失の対象となる領域に相同な配列が両側に隣接している選択マーカーを有する入来配列を含むDNA構築物が使用される(本配列は、本明細書において「相同ボックス」と称される場合もある)。DNA構築物は、宿主染色体の相同配列と整列し、ダブルクロスオーバーイベント(double crossover event)において、欠失の対象となる領域は、宿主染色体から除外される。
「挿入」又は「付加」は、自然発生配列又は親配列と比較して、それぞれ1つ又は2つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸残基の追加をもたらす、ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列における変化である。
本明細書で使用されるとき、「置換」は、1つ又は2つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸をそれぞれ異なるヌクレオチド又はアミノ酸によって置き換えることによってもたらされる。
遺伝子を変異させる方法は、当該技術分野において周知であり、部位指定変異、ランダム変異の発生、及びギャップ二本鎖法が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、米国特許第4,760,025号、Moring et al.,Biotech.2:646[1984]、及びKramer et al.,Nucleic Acids Res.,12:9441[1984]を参照されたい)。
本明細書で使用されるとき、「相同遺伝子」は、互いに対応し、かつ同一であるか又は互いに非常に類似している、異なるが通常は関連する種由来の遺伝子のペアを指す。本用語は、種分化(すなわち、新種の発生)により分離される遺伝子(例えば、オルソロガス遺伝子)、並びに遺伝子複製により分離された遺伝子(例えば、パラロガス遺伝子)を包含する。
本明細書で使用されるとき、「オルソログ」及び「オルソロガス遺伝子」は、共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)から種分化により進化した異なる種における遺伝子を指す。典型的には、オルソログは、進化の過程において、同一の機能を保持する。オルソログの同定は、新たに配列されたゲノムにおける遺伝子機能についての信頼性の高い予測における使用が見出される。
本明細書で使用されるとき、「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」は、ゲノム中の重複によって関連する遺伝子を指す。オルソログが進化の過程を通じて同一の機能を保持するのに対して、パラログは、新規な機能を発達させるが、いくつかの機能は、元来の機能と関連する場合が多い。パラロガス遺伝子の例として、限定するものではないが、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びトロンビンをコードする遺伝子が挙げられ、これらは全て、セリンタンパク質分解酵素であり、同一種内で発生したものである。
本明細書で使用されるとき、「相同性」は、配列の類似性又は同一性を指し、同一性を指す方が好ましい。当該相同性は、当該技術分野において既知の標準的な技術を用いて評価される(例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482[1981]、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443[1970]、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444[1988]、Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTAなどのプログラム(Genetics Computer Group(Madison,WI))、並びにDevereux et al.,Nucl.Acid Res.,12:387〜395[1984]を参照されたい)。
本明細書で使用されるとき、「類似配列」は、遺伝子の機能が、枯草菌(Bacillus subtilis)株168によって示された遺伝子と本質的に同一のものである。更に、類似遺伝子は、枯草菌株168遺伝子の配列と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する。あるいは、類似配列は、枯草菌168領域で発見された遺伝子の70〜100%のアラインメントを有し、かつ/又は枯草菌168染色体中の遺伝子と整列した領域で発見された少なくとも5個〜10個の遺伝子を有する。追加の実施形態では、1を超える上記特性が、配列に適用される。類似配列は、配列アラインメントの既知の方法によって決定される。一般的に使用されるアライメント方法は、BLASTであり、これについては、上述及び下述しているが、他の方法もまた、配列のアラインメントにおいて使用が見出される。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを用いて、関連する配列の一群から多重配列アラインメントを作成する。このアルゴリズムは、アライメントを作成するために使用されるクラスタの関係性を示す、樹形図をプロットすることもできる。PILEUPは、Feng及びDoolittleのプログレッシブアラインメント法の簡略化したものを使用する(Feng and Doolittle,J.Mol.Evol.,35:351〜360[1987])。この方法は、Higgins及びSharpにより記載されるものと類似のものである(Higgins and Sharp,CABIOS 5:151〜153[1989])。有用なPILEUPパラメータとしては、3.00のデフォルトギャップウェイト(default gap weight)、0.10のデフォルトギャップレングスウェイト(default gap length weight)及びウェイテッドエンドギャップ(weighted end gaps)が挙げられる。
有用なアルゴリズムの別の例として、Altschulらにより記載されているBLASTアルゴリズムがある(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403〜410,[1990]、及びKarlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873〜5787[1993])。特に有用なBLASTプログラムは、WU−BLAST−2プログラムである(Altschul et al.,Meth.Enzymol.,266:460〜480[1996]を参照されたい)。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメータを用いる。このパラメータのほとんどにデフォルト値を設定する。調節可能なパラメータは、以下の値に設定される:overlap span=1、overlap fraction=0.125、word threshold(T)=11。HSP S及びHSP S2パラメータは、動的な値であり、特定の配列の構成及び目的の配列を検索する特定のデータベースの構成に依存してプログラム自体により確立される。しかしながら、これらの値は、感受性を上昇させるように調整することができる。アミノ酸配列同一性(%)の値は、適合する同一残基の数を、整列領域(aligned region)における「より長い」配列の残基の総数で割ることによって決定される。当該「より長い」配列は、整列領域において最も実測的(actual)な残基を有するものである(アラインメントスコアを最大化するためにWU−Blast−2によって導入されたギャップは考慮していない)。
本明細書で使用されるとき、本明細書において同定されているアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、保存的置換を配列同一性の一部とみなさずに、最大の配列同一性パーセントを実現するために、配列をアラインメントし、必要であればギャップを挿入した後の、Mal3A配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同一である、候補配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドのパーセントと定義される。
「相同体」(又は「ホモログ」)は、対象アミノ酸配列及び対象ヌクレオチド配列と一定の同一性を有するものを意味する。相同配列は、従来の配列アラインメントツール(例えば、Clustal、BLASTなど)を用いて、対象配列に対し、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は更には99%同一であるアミノ酸配列を含み得る。典型的には、相同体は、別途記載のない限り、対象アミノ酸配列と同一の活性部位残基を含む。
配列アラインメントを実施し、配列同一性を決定する方法は、当業者には既知であり、過度の実験を行わずとも実施することができ、同一性の値の計算は明確に得ることができるであろう。例えば、Ausubel et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 19(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)、及びALIGNプログラム(Dayhoff(1978)in Atlas of Protein Sequence and Structure 5:Suppl.3(National Biomedical Research Foundation(Washington,D.C.))を参照されたい。多数のアルゴリズムが、配列をアラインメントし、配列同一性を決定するために利用可能であり、例えば、Needleman et al(1970)の相同アラインメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:443)、Smith et al(1981)の局所相同アルゴリズム(Adv.Appl.Math.2:482)、Pearson et al(1988)の類似性探索法(Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444)、スミス−ウォーターマンアルゴリズム(Meth.Mol.Biol.70:173〜187(1997))、並びにBLASTP、BLASTN、及びBLASTXアルゴリズム(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410を参照されたい)が挙げられる。
これらのアルゴリズムを使用したコンピュータ制御プログラムもまた利用可能であり、ALIGN若しくはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア、又はWU−BLAST−2(Altschul et al.,Meth.Enzym.,266:460〜480(1996))、又はGenetics Computing Group(GCG)パッケージ、バージョン8(Madison,Wisconsin,USA)において利用可能なGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、及びTFASTA、並びにIntelligenetics(Mountain View,California)によるPC/GeneプログラムにおけるCLUSTALが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、比較されている配列の長さにわたる最大のアラインメントを得るために必要とされるアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。好ましくは、配列同一性は、プログラムにより決定されるデフォルトパラメータを使用して決定される。具体的には、配列同一性は、以下のデフォルトパラメータを用いて、Clustal W(Thompson J.D.et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673〜4680)を使用して決定され得る。
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本明細書で使用されるとき、用語「ハイブリダイゼーション」は、当該技術分野では周知のように、核酸の鎖が塩基の対合を介して相補鎖と結合するプロセスのことを指す。
中程度〜高のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件下で2つの配列が互いに特異的にハイブリダイズする場合、核酸配列は、参照核酸配列に対し「選択的なハイブリダイズが可能」であるものと見なされる。ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合体又はプローブの融解温度(Tm)に基づく。例えば、典型的には、「最大のストリンジェンシー」は、約Tm−5℃(プローブのTmよりも5℃低い温度)で起こり、「高ストリンジェンシー」は、Tmよりも約5〜10℃低い温度で起こり、「中間ストリンジェンシー」は、プローブのTmよりも約10〜20℃低い温度で起こり、「低ストリンジェンシー」は、Tmよりも約20〜25℃低い温度で起こる。機能的には、最大のストリンジェンシー条件を使用して、ハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性又はほぼ厳密な同一性を有する配列を同定することができ、一方、中間又は低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを使用して、ポリヌクレオチド配列相同物を同定又は検出することができる。
中程度及び高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、当技術分野において既知である。高ストリンジェンシー条件の例として、50%ホルムアミド、SSC(5倍)、デンハルト溶液(5倍)、0.5% SDS及び100μg/mLの変性キャリアDNA内での、約42℃でのハイブリダイゼーションの後、室温にてSSC(2倍)及び0.5% SDSで二度、及び42℃にてSSC(0.1倍)及び0.5% SDSで更に二度、洗浄することが挙げられる。中程度ストリンジェンシー条件の例として、20%ホルムアミド、SSC(5倍)(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、デンハルト溶液(5倍)、10%硫酸デキストラン及び20mg/mLの変性され剪断されたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションした後、フィルターをSSC(1倍)中、約37〜50℃で洗浄することが挙げられる。当業者であれば、プローブ長などの因子に適応させる必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法をご存知であろう。
用語「組換え」は、生体成分又は組成物(例えば、細胞、核酸、ポリペプチド/酵素、ベクターなど)に関連して使用される場合、生体成分又は組成物が天然では見られない形態であることを示す。換言すれば、生体成分又は組成物は、人間の介入によって、天然の形態から変化させられている。例えば、組換え細胞は、天然の親(すなわち、非組換え)細胞には見られない1つ又は2つ以上の遺伝子を発現する細胞、天然の親細胞とは異なる量で1つ又は2つ以上の天然の遺伝子を発現する細胞、及び/又は天然の親細胞とは異なる条件下で1つ又は2つ以上の天然の遺伝子を発現する細胞を包含する。組換え核酸は、天然の配列とは1つ又は2つ以上のヌクレオチドが異なっていてもよく、異種配列(例えば、異種プロモーター、非天然又は変異体シグナル配列をコードする配列など)に連結されていてもよく、イントロン配列(intronic sequences)を欠いていてもよく、かつ/又は単離された形態であってもよい。組換えポリペプチド/酵素は、天然の配列とは1つ又は2つ以上のアミノ酸が異なっていてもよく、異種配列と融合されていてもよく、短縮されている若しくはアミノ酸の内部欠失を有していてもよく、天然の細胞には見られない様式で(例えば、ポリペプチドをコードする発現ベクターが細胞中に存在することによりポリペプチドを過剰発現する組換え細胞から)発現してもよく、かつ/又は単離された形態であってもよい。いくつかの実施形態では、組換えポリヌクレオチド又はポリペプチド/酵素は、対応する野生型と同一であるが、非天然形態(例えば、単離された又は富化された形態)である配列を有することが強調される。
本明細書で使用されるとき、用語「標的配列」は、入来配列を宿主細胞ゲノムに挿入することが望ましい配列をコードする宿主細胞におけるDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、標的配列は、機能性野生型遺伝子又はオペロンをコードし、一方、他の実施形態では、標的配列は、機能性変異遺伝子若しくはオペロン、又は非機能性遺伝子若しくはオペロンをコードする。
本明細書で使用されるとき、「フランキング配列」は、検討対象の配列の上流又は下流のいずれかの任意の配列を指す(例えば、遺伝子A−B−Cでは、遺伝子Bは、A及びCの遺伝子配列に隣接している)。ある実施形態では、入来配列は、その両側が相同ボックスに隣接する。別の実施形態では、入来配列及び相同ボックスは、両側がスタッファー配列に隣接するユニットを含む。いくつかの実施形態では、フランキング配列は、片側(3’又は5’)にのみ存在するが、ある実施形態では、配列の両側に隣接する。各相同ボックスの配列は、バチルス染色体における配列と相同である。これらの配列は、新規構築物がバチルス染色体のどこで合成されたか、かつバチルス染色体のどの部分が入来配列によって置き換えられるかについて指示する。ある実施形態では、選択マーカーの5’末端及び3末端’には、不活性化染色体部分のセクションを含むポリヌクレオチド配列が隣接している。いくつかの実施形態では、フランキング配列は、片側(3’又は5’)にのみ存在するが、一方、ある実施形態では、隣接する配列の両側に存在する。
本明細書で使用されるとき、用語「増幅可能マーカー」、「増幅可能遺伝子」及び「増幅ベクター」は、適切な増殖条件下における遺伝子の増幅を可能にする遺伝子をコードする遺伝子又はベクターを指す。
「鋳型特異性」は、酵素の選択によって、ほとんどの増幅技術で達成される。増幅酵素は、用いられる条件下で、核酸の異種混合物における特定の核酸配列のみを処理するような酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV−1 RNAが当該レプリカーゼの特異的鋳型である(例えば、Kacian et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 9:3038[1972]を参照されたい)。他の核酸は、この増幅酵素によって複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素は、自身のプロモーターに対して厳格な特異性を有する(Chamberlin et al.,Nature 228:227[1970]を参照されたい)。T4 DNAリガーゼの場合、酵素は、2つのオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを連結させることはなく、ライゲーション接合部において、当該オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質と鋳型との間にはミスマッチが存在する(Wu and Wallace,Genomics 4:560[1989]を参照されたい)。最後に、Taq及びPfuポリメラーゼは、高温でも機能することができるため、プライマーによって結合され、定義される配列に対して高い特異性を示すことが分かっている。高温では、プライマーと標的配列とのハイブリダイズには好ましいが、非標的配列とのハイブリッドには好ましくない熱力学的条件がもたらされる。
本明細書で使用されるとき、用語「増幅可能核酸」は、任意の増幅方法によって増幅することができる核酸を指す。「増幅可能核酸」は、通常、「サンプル鋳型」を含むことが想到される。
本明細書で使用されるとき、用語「サンプル鋳型」は、「標的」(以下で定義する)の存在について分析されるサンプルに由来する核酸を指す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、サンプル鋳型以外の核酸について用いられ、これはサンプル中に存在しても存在していなくてもよい。バックグラウンド鋳型は、ほとんどの場合偶発的なものである。繰り越し(carryover)の結果の場合もあるし、又は精製によりサンプルから除去される核酸不純物の存在に起因する場合もある。例えば、検出される以外の生物体からの核酸が、バックグラウンドとして試験サンプル中に存在する場合がある。
本明細書で使用されるとき、用語「プライマー」は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが合成的に産生されようが、酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼなどの誘導剤の存在下で、かつ好適な温度及びpH)下に置かれた場合に、合成の開始点としての機能を果たす能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、好ましくは、増幅効率を最大にするために一本鎖であるが、あるいは、二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーはまず、伸長産物を調製するために使用される前に、その鎖を分離するように処理される。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘導剤の存在下で伸長産物の合成を開始するのに十分な長さでなくてはならない。プライマーの的確な長さは、多くの因子、例えば、温度、プライマー源、及び用いる方法に依存する。
本明細書で使用されるとき、用語「プローブ」は、精製された制限酵素消化物の形として自然発生していようが、又は組換え的に若しくはPCR増幅により合成的に産生されていようが、オリゴヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指し、目的の他のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることができる。プローブは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。プローブは、特定の遺伝子配列の検出、同定、及び単離に有用である。本発明で使用される任意のプローブが、限定するものではないが酵素(例えば、ELISA、並びに酵素を用いる組織化学アッセイ)、蛍光、放射性、及び発光システムなどの任意の検出システムで検出され得るように、任意の「リポーター分子」により標識されることが想到される。本発明は、任意の特定の検出システム又は標識に制限されることを意図しない。
本明細書で使用されるとき、用語「標的」は、ポリメラーゼ連鎖反応に関し使用する場合、ポリメラーゼ連鎖反応に使用されるプライマーにより結合される核酸領域を指す。よって、「標的」は、他の核酸配列から探索され、選別される。「セグメント」は、標的配列中の核酸領域として定義される。
本明細書で使用されるとき、用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、参照により本明細書に援用されている米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、及び同第4,965,188号の方法を指し、クローニング又は精製せずにゲノムDNA混合物中の標的配列のセグメントの濃度を上昇させる方法を含む。標的配列を増幅する本プロセスは、所望の標的配列を含有するDNA混合物に大過剰量の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入する工程と、その後、DNAポリメラーゼの存在下において正確な順序で熱サイクルを行う工程とからなる。2つのプライマーは、二本鎖標的配列のそれぞれの鎖と相補的である。効果的な増幅のために、混合物を変性させ、次いで、標的分子内の相補的配列にプライマーをアニールする。アニーリングの後、新しい相補的鎖のペアを形成するために、プライマーは、ポリメラーゼによって伸長される。変性、プライマーのアニーリング、及びポリメラーゼ伸長の工程は、何回も繰り返される(すなわち、変性、アニーリング、及び伸長は、1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」が存在し得る)。これにより、所望の標的配列のセグメントが高濃度で増幅される。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、それぞれのプライマーの相対的な位置によって決定されるため、その長さは、調節可能なパラメータである。本プロセスが繰り返し実施されることから、本方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下、「PCR」)と称される。標的配列の所望の増幅セグメントは、混合物中における(濃度の点で)主要な配列になるため、「PCR増幅」と呼ばれている。
本明細書で使用されるとき、用語「増幅試薬」は、プライマー、核酸鋳型、及び増幅酵素を除く、増幅に必要とされる試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分と共に、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に配置され、収容される。
PCRを用いて、いくつかの異なる方法論(例えば、標識プローブとのハイブリダイゼーション、ビオチン化プライマーを取り込んだ後のアビジン−酵素結合の検出、又は32P−標識化デオキシヌクレオチド三リン酸(例えば、dCTP又はdATP)の増幅セグメントへの取り込み)により検出可能なレベルまで、ゲノムDNA中の特定の標的配列の単一コピーを増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチド配列又はポリヌクレオチド配列を適切な一式のプライマー分子によって増幅することができる。具体的には、PCRプロセス自体によって産出された増幅セグメントは、それら自体が、その後のPCR増幅のための有効な鋳型である。
本明細書で使用されるとき、用語「PCR産物」、「PCR断片」及び「増幅産物」は、変性、アニーリング、及び伸長からなるPCR工程の2つ以上のサイクルが完了した後に得られる化合物の混合物を指す。これらの用語は、1つ又は2つ以上の標的配列の1つ又は2つ以上のセグメントについて増幅が行われた場合も包含する。
本明細書で使用されるとき、用語「RT−PCR」は、RNA配列の複製及び増幅を指す。この方法では、参照により本明細書に援用されている米国特許第5,322,770号に記載されているように、PCRに逆転写が結合され、ほとんどの場合、熱安定性ポリメラーゼを用いる1つの酵素手順を用いる。RT−PCRでは、RNA鋳型は、ポリメラーゼの逆転写活性によってcDNAに転化され、次いで、ポリメラーゼの重合活性を用いて(すなわち、他のPCR法と同様に)増幅される。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子改変宿主株」(例えば、遺伝子改変バチルス株)は、遺伝子組換えされた宿主細胞を指し、組換え宿主細胞とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、本質的に同一の増殖条件下で増殖させた対応する非改変宿主株における同一の目的のタンパク質の発現及び/又は産生と比較して、目的のタンパク質の発現が増大(増加)する。いくつかの実施形態では、発現のレベルの増大は、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性の変化によりもたらされる。いくつかの実施形態では、改変株は、1つ又は2つ以上の欠失した固有の染色体領域又はそれらの断片を有する遺伝子組換えされたバチルス種であり、目的のタンパク質は、本質的に同一の増殖条件下で増殖させた対応する非改変バチルス宿主株と比較して、発現又は産生のレベルが増大する。
本明細書で使用されるとき、「対応する非改変バチルス株」などは、示された遺伝子改変を起こさない宿主株(例えば、起源(親)株及び/又は野生型株)である。
本明細書で使用されるとき、用語「染色体組み込み」は、入来配列が宿主細胞(例えば、バチルス)の染色体に導入されるプロセスを指す。形質転換DNAの相同領域は、染色体の相同領域と整列する。続いて、相同ボックス間の配列は、ダブルクロスオーバーにおける入来配列(すなわち、相同組換え)によって置き換えられる。本発明のいくつかの実施形態では、DNA構築物の不活性化染色体部分の相同セクションは、バチルス染色体の固有の染色体領域のフランキング相同領域(flanking homologous region)と整列する。続いて、その固有の染色体領域は、ダブルクロスオーバーにおけるDNA構築物(すなわち、相同組換え)によって欠失される。
「相同組換え」は、2つのDNA分子間、又は同一の若しくはほとんど同一のヌクレオチド配列の部位において対となった染色体間で生じる、DNA断片の交換を意味する。ある実施形態では、染色体の組み込みは、相同組換えである。
本明細書で使用する「相同配列」は、対比のために最適に整列させた場合に、別の核酸又はポリペプチド配列と100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、88%、85%、80%、75%、又は70%の配列同一性を有する核酸又はポリペプチド配列を意味する。いくつかの実施形態では、相同配列は、85%〜100%の配列同一性を有するが、他の実施形態では、90%〜100%の配列同一性であり、更なる実施形態では、95%〜100%の配列同一性である。
本明細書で使用されるとき、「アミノ酸」は、ペプチド配列若しくはタンパク質配列又はそれらの部分を指す。用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、互換可能に使用される。
本明細書で使用されるとき、「目的のタンパク質」及び「目的のポリペプチド」は、所望されるかつ/又は評価されるタンパク質/ポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、細胞内であるが、他の実施形態では、目的のタンパク質は、分泌ポリペプチドである。具体的には、ポリペプチドには、酵素が挙げられ、限定するものではないが、デンプン分解酵素、タンパク分解酵素、細胞分解酵素(cellulytic enzyme)、オキシドレダクターゼ酵素及び植物細胞壁分解酵素から選択されるものが含まれる。更に具体的には、これらの酵素には、アミラーゼ、プロテアーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、オキシダーゼ、クチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、エステラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、フィターゼ、ペクチナーゼ、グルコシダーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ及びキチナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態では、目的のポリペプチドは、プロテアーゼである。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は、シグナルペプチドに融合する分泌ポリペプチド(すなわち、分泌されるタンパク質のアミノ末端伸長)である。ほぼ全てのタンパク質は、膜を横切る前駆体タンパク質の標的化及び転座において重要な役割を担うアミノ末端タンパク質伸長を用いている。この伸長は、膜輸送中又はその直後に、シグナルペプチダーゼによりタンパク質分解されて、除去される。
本発明のいくつかの実施形態では、目的のポリペプチドは、ホルモン、抗体、増殖因子、レセプタなどから選択される。本発明に包含されるホルモンには、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、ソマトスタチン、ゴナドトロピンホルモン、バゾプレッシン、オキシトシン、エリスロポエチン、インスリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。増殖因子には、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、表皮増殖因子、神経増殖因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、インターロイキン(例えば、IL−1〜IL−13)などのサイトカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子等が挙げられるが、これらに限定されない。抗体には、抗体が産生されることが望まれる任意の種から直接得られる免疫グロブリンが挙げられるが、これに限定されない。加えて、本発明は、変化した抗体を包含する。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体もまた、本発明に包含される。特定の実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。
本明細書で使用されるとき、ポリペプチドの「誘導体」又は「変異体」は、C−末端及びN−末端のいずれか又は両方に1つ又は2つ以上のアミノ酸を付加することにより、アミノ酸配列中の1つ又は多数の異なる部位で1つ又は2つ以上のアミノ酸を置換することにより、ポリペプチドのいずれかの若しくは両方の末端で又はアミノ酸配列中の1つ又は2つ以上の部位で1つ又は2つ以上のアミノ酸を欠失させることにより、アミノ酸配列中の1つ又は2つ以上の部位で1又は2以上のアミノ酸を挿入することにより、あるいは、それらの組み合わせにより、前駆体ポリペプチド(例えば、天然のポリペプチド)から誘導されるポリペプチドを意味する。ポリペプチドの誘導体又は変異体の調製は、任意の簡便な方法で、例えば、天然のポリペプチドをコードするDNA配列を変化させ、そのDNA配列を好適な宿主に形質転換させ、変化したDNA配列を発現して誘導体/変異体ポリペプチドを形成することによって、達成することができる。誘導体又は変異体は、化学的に変化させたポリペプチドを更に含む。
本明細書で使用されるとき、用語「異種タンパク質」は、宿主細胞中に自然に発生しないタンパク質又はポリペプチドを指す。異種タンパク質の例として、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、及びリパーゼを含む加水分解酵素、ラセマーゼ、エピメラーゼ、トートメラーゼ、又はムターゼなどのイソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、並びにフォファターゼ(phophatases)などの酵素が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、治療において重要なタンパク質又はペプチドであり、増殖因子、サイトカイン、リガンド、レセプタ及び阻害剤、並びにワクチン及び抗体が挙げられるが、これらに限定されない。追加の実施形態では、タンパク質は、商業的に重要な工業用タンパク質/ペプチド(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ及びグルコアミラーゼなどのカルボヒドラーゼ、セルラーゼ、オキシダーゼ並びにリパーゼ)である。いくつかの実施形態では、タンパク質をコードする遺伝子は、自然発生遺伝子であるが、他の実施形態では、変異型遺伝子及び/又は合成遺伝子が使用される。
本明細書で使用されるとき、「相同タンパク質」は、天然の又は細胞中に自然発生したタンパク質又はポリペプチドを指す。ある実施形態では、細胞は、グラム陽性細胞であるが、特定の実施形態では、細胞は、バチルス宿主細胞である。代替の実施形態では、相同タンパク質は、他生物によって産生された天然のタンパク質であり、大腸菌(E.coli)を含むが、これに限定されない。本発明は、組換えDNA技術により相同タンパク質を産生する宿主細胞を包含する。
本明細書で使用されるとき、「オペロン」は、共通のプロモーターから単一の転写ユニットとして転写され、それにより共同制御(co-regulation)の対象となり得る、連続した遺伝子の一群を含む。いくつかの実施形態では、オペロンは、多数の異なるmRNAの転写を駆動する多数のプロモーターを含んでいてもよい。
本発明は、全般的に、目的のタンパク質の発現の増加をもたらす遺伝子改変を起こす細菌細胞と、かかる細胞の作製方法及び使用方法と、に関する。本発明の態様として、ykfオペロンによってコードされるタンパク質の活性を変化させ、かつ目的のタンパク質の発現の増大をもたらす遺伝子改変を起こすバチルス種などのグラム陽性微生物が挙げられる。
上に要約したように、本発明の態様は、グラム陽性菌細胞からの目的のタンパク質の発現を増加させる方法を含み、かつykfオペロン(例えば、ykfA)によってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が変化するように遺伝子改変されたグラム陽性細胞における目的のタンパク質の産生は、対応する遺伝子非改変グラム陽性細胞(例えば、野生型及び/又は親細胞)における同一の目的のタンパク質の発現レベルと比較して増加するという観測結果に基づいている。いくつかの実施形態では、グラム陽性細胞は、ykfオペロン(例えば、ykfA)によってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が低減するように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、グラム陽性細胞は、ykfオペロン(例えば、ykfA)によってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が増加するように遺伝子改変される。遺伝子改変は、例えば、エピソームの付加(episomal addition)及び/又は染色体の挿入、欠失、逆位、塩基の変化などによって、宿主細胞の遺伝子構造を変化させる宿主細胞におけるあらゆる改変を意味する。これに関して、制限は意図しない。
特定の実施形態では、本方法は、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる少なくとも1つの遺伝子改変を含み、かつ目的のタンパク質を産生でき、改変グラム陽性菌細胞によって目的のタンパク質が発現するような条件下で改変グラム陽性菌細胞を培養することができる、改変グラム陽性菌細胞を作製する工程又は得る工程を含む。そのため、改変グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の発現は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の発現と比較して増加する。
特定の実施形態によると、遺伝子改変グラム陽性菌細胞(又は遺伝子改変グラム陽性菌細胞を作製する親細胞)は、バチルス株であり得る。いくつかの実施形態では、目的のバチルス株は、好アルカリ性である。数多くの好アルカリ性バチルス株が既知である(例えば、米国特許第5,217,878号、及びAunstrup et al.,Proc IV IFS:Ferment.Technol.Today,299〜305[1972]を参照されたい)。いくつかの実施形態では、目的のバチルス株は、工業用のバチルス株である。工業用のバチルス株の例として、B.リケニフォルミス、B.レンタス、枯草菌、及びB.アミロリケファシエンスが挙げられるが、これらに限定されない。追加の実施形態では、バチルス宿主株は、上述のように、B.レンタス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.コアグランス、B.サークランス、B.プミルス、卒倒病菌、B.クラウシイ、及びB.メガテリウム、並びにバチルス属内の他の生物からなる群から選択される。特定の実施形態では、枯草菌が使用される。例えば、米国特許第5,264,366号及び同第4,760,025号(米国特許再交付第34,606号)は、本発明における使用が見出される様々なバチルス宿主株について記載しているが、他の好適な株についても、本発明での使用が想到される。
本明細書に記載の遺伝子改変細胞の親株(例えば、親バチルス株)は、工業用株であってもよく、これには、非組換え株、自然発生株の変異株、又は組換え株が含まれる。特定の実施形態では、親株は、組換え宿主株であり、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが宿主に導入されている。目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの導入は、親株において行われてもよいが、本工程は、本明細書に詳しく示されるように、ポリペプチドの産生を増加させるために既に遺伝子改変された株において実行されてもよい。いくつかの実施形態では、宿主株は、枯草菌宿主株、例えば、組換え枯草菌宿主株である。
数多くの枯草菌株が本発明の態様での使用が見出されることは既知であり、1A6(ATCC 39085)、168(1A01)、SB19、W23、Ts85、B637、PB1753〜PB1758、PB3360、JH642、1A243(ATCC 39,087)、ATCC 21332、ATCC 6051、MI113、DE100(ATCC39,094)、GX4931、PBT 110、及びPEP 211株を含むが、これに限定されない(例えば、Hoch et al.,Genetics,73:215〜228[1973]、米国特許第4,450,235、米国特許第4,302,544、及び欧州特許第0134048号を参照されたい)。発現宿主としての枯草菌の使用は、Palva et al.及び他により更に詳細に記載されている(Palva et al.,Gene 19:81〜87[1982]を参照されたく、また、Fahnestock and Fischer,J.Bacteriol.,165:796〜804[1986]、及びWang et al.,Gene 69:39〜47[1988]を参照されたい)。
特定の実施形態では、バチルス株を産生する工業用プロテアーゼは、親発現宿主として機能し得る。いくつかの実施形態では、本発明におけるこれらの株の使用は、効率及びプロテアーゼの産生における更なる向上をもたらす。プロテアーゼの2つの一般的な種類、すなわち中性(又は「メタロプロテアーゼ」)及びアルカリ(又は「セリン」)プロテアーゼは、典型的には、バチルス株によって分泌される。セリンプロテアーゼは、活性部位に必須セリン残基があるペプチド結合の加水分解に触媒作用を及ぼす酵素である。セリンプロテアーゼの分子量は、25,000〜30,000の範囲である(Priest,Bacteriol.Rev.,41:711〜753[1977]を参照されたい)。スブチリシンは、本発明において使用するためのセリンプロテアーゼである。多種多様なバチルススブチリシンは、例えば、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147及びスブチリシン309を同定かつ配列決定している(例えば、欧州特許第414279B号、国際公開第WO 89/06279号、及びStahl et al.,J.Bacteriol.,159:811〜818[1984]を参照されたい)。本発明のいくつかの実施形態では、バチルス宿主株は、変異(例えば、変異体)プロテアーゼを産生する。数多くの参考文献が、変異体プロテアーゼの例及び参考文献を提供している(例えば、国際公開第WO 99/20770号、同第WO 99/20726号、同第WO 99/20769号、同第WO 89/06279号、米国特許再交付第34,606号、米国特許第4,914,031号、米国特許第4,980,288号、米国特許第5,208,158号、米国特許第5,310,675号、米国特許第5,336,611号、米国特許第5,399,283号、米国特許第5,441,882号、米国特許第5,482,849号、米国特許第5,631,217号、米国特許第5,665,587号、米国特許第5,700,676号、米国特許第5,741,694号、米国特許第5,858,757号、米国特許第5,880,080号、米国特許第6,197,567号、及び米国特許第6,218,165号を参照されたい)。
なお、ここで、本発明は、目的のタンパク質としてのプロテアーゼに限られない。実際に、本開示は、グラム陽性細胞における発現の増加が望まれる(以下で説明する)多種多様な目的のタンパク質を包含する。
他の実施形態では、本発明の態様において使用するための株は、有益な表現型を提供する他の遺伝子における追加の遺伝子改変を起こしてもよい。例えば、次の遺伝子degU、degS、degR、及びdegQのうち少なくとも1つにおける変異又は欠失を含むバチルス種を用いてもよい。いくつかの実施形態では、変異は、degU遺伝子において起こる(例えば、degU(Hy)32変異)。(Msadek et al.,J.Bacteriol.,172:824〜834[1990]、及びOlmos et al.,Mol.Gen.Genet.,253:562〜567[1997]を参照されたい)。よって、本発明の態様での使用が見出される親/遺伝子改変グラム陽性株の一例は、degU32(Hy)変異を担持する枯草菌細胞である。更なる実施形態では、バチルス宿主は、scoC4(Caldwell et al.,J.Bacteriol.,183:7329〜7340[2001]を参照されたい)、spoIIE(Arigoni et al.,Mol.Microbiol.,31:1407〜1415[1999]を参照されたい)、oppA又はoppオペロンの他の遺伝子(Perego et al.,Mol.Microbiol.,5:173〜185[1991]を参照されたい)における変異又は欠失を含んでいてもよい。実際に、oppA遺伝子の変異と同一の表現型を生じさせるoppオペロンにおける任意の変異は、本発明の改変バチルス株の一部の実施形態での使用が見出されることが想到される。いくつかの実施形態では、これらの変異は、単独で生じるが、他の実施形態では、変異の組み合わせが存在する。いくつかの実施形態では、本発明の改変バチルスは、1つ又は2つ以上の上記遺伝子への変異を既に含む親バチルス宿主株から得られる。代替の実施形態では、本発明の予め遺伝子改変されたバチルスは、1つ又は2つ以上の上記遺伝子の変異を含むように更に遺伝子操作される。
特定の実施形態では、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性は、遺伝子改変グラム陽性細胞において、本質的に同一の培養条件下で培養させた野生型及び/又は親細胞における活性のレベルの約3%(約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、又は約80%を含む)にまで低減される。そのため、ykfオペロンにおける1つ又は2つ以上の遺伝子の発現の低減の範囲は、約3%〜約80%、約4%〜約75%、約5%〜約70%、約6%〜約65%、約7%〜約60%、約8%〜約50%、約9%〜約45%、約10%〜約40%、約11%〜約35%、約12%〜約30%、約13%〜約25%、約14%〜約20%、などであり得る。上に記載の範囲内の発現のあらゆるサブ範囲が想到される。
特定の実施形態では、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性は、遺伝子改変グラム陽性細胞において、本質的に同一の培養条件下で培養させた野生型及び/又は親細胞における活性のレベルの約3%(約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、又は約80%を含む)まで増加する。そのため、ykfオペロンにおける1つ又は2つ以上の遺伝子の発現の低減の範囲は、約3%〜約80%、約4%〜約75%、約5%〜約70%、約6%〜約65%、約7%〜約60%、約8%〜約50%、約9%〜約45%、約10%〜約40%、約11%〜約35%、約12%〜約30%、約13%〜約25%、約14%〜約20%、などであり得る。上に記載の範囲内の発現のあらゆるサブ範囲が想到される。
特定の実施形態では、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質、及び/又はYkfBタンパク質、及び/又はYkfCタンパク質、及び/又はYkfDタンパク質、又はそれらの任意の組み合わせの活性と比較して、これらの活性は変化している。
一実施形態では、変異する遺伝子は、ペプチダーゼS66スーパーファミリーに属する。特定の実施形態では、変異する遺伝子は、ペプチダーゼS66スーパーファミリーに属するカルボキシペプチダーゼである。特定の実施形態では、変異するカルボキシペプチダーゼは、ykfオペロンによってコードされる遺伝子と少なくとも60%相同である。特定の実施形態では、変異するカルボキシペプチダーゼは、(配列番号1に示される)ykfAによってコードされる遺伝子と少なくとも60%相同である。
特定の実施形態では、遺伝子改変は、ykfオペロンのykfA遺伝子において起こる。親グラム陽性細胞(すなわち、本明細書に記載されるように、遺伝子改変される前)におけるykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であることを含み、配列番号1と少なくとも60%同一である遺伝子である。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。
以上のとおり、多くの異なるタンパク質は、グラム陽性細胞における目的のタンパク質(すなわち、遺伝子改変細胞において発現が増加したタンパク質)としての使用が見出される。目的のタンパク質は、相同タンパク質又は異種タンパク質であり得、野生型タンパク質又は天然の若しくは組換え変異体であってもよい。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、酵素であり、特定の事例では、酵素は、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、キナーゼ、及びホスファターゼから選択される。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、プロテアーゼであり、プロテアーゼは、スブチリシン、例えば、スブチリシン168、スブチリシンBPN’、スブチリシンカールスバーグ、スブチリシンDY、スブチリシン147、スブチリシン309、及びそれらの変異体から選択されるスブチリシンであってもよい。特定の実施形態では、目的のタンパク質は、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)である。
特定の実施形態では、本方法は、目的のタンパク質を回収する工程を更に含む。遺伝子改変グラム陽性細胞における目的のタンパク質の発現/産生のレベルが(野生型又は親細胞と比較して)増加するため、回収される目的のタンパク質の量は、本質的に同一の培養条件下(及び同一のスケール)で培養させた対応する野生型及び/又は親細胞と比較して増加している。当技術分野の当事者に既知の、細胞内及び細胞外発現したポリペプチドの発現レベル/産生を検出及び測定するためのアッセイが数多く存在する。かかるアッセイは、本発明のユーザによって評価され、かつ目的のタンパク質の同一性及び/又は活性(例えば、酵素活性)に依存し得る。例えば、プロテアーゼに関して、280nm下での吸光度として測定され、又はフォリン法を用いる比色測定により測定されるカゼイン又はヘモグロビンからの酸可溶性ペプチドの放出に基づくアッセイがある(例えば、Bergmeyer et al.,「Methods of Enzymatic Analysis「vol.5,Peptidases,Proteinases and their Inhibitors,Verlag Chemie,Weinheim[1984]を参照されたい)。他のアッセイは、発色性基質の可溶化を伴う(例えば、Ward,「Proteinases,」in Fogarty(ed.).,Microbial Enzymes and Biotechnology,Applied Science,London,[1983],251〜317ページを参照されたい)。アッセイの他の例として、スクシニル−Ala−Ala−Pro−Phe−パラニトロアニリドアッセイ(SAAPFpNA)及び2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩アッセイ(TNBSアッセイ)が挙げられる。当技術分野の当事者に既知の数多くの追加の参考文献により、好適な方法が提供される(例えば、Wells et al.,Nucleic Acids Res.11:7911〜7925[1983]、Christianson et al.,Anal.Biochem.,223:119〜129[1994]、及びHsia et al.,Anal Biochem.,242:221〜227[1999]を参照されたい)。
また、以上のとおり、宿主細胞における目的のタンパク質の分泌のレベルを検出するための手段、及び発現したタンパク質を検出する手段には、目的のタンパク質に特有のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれか一方を用いた免疫測定法の使用が含まれる。例としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、及び蛍光活性化細胞選別法(FACS)が挙げられる。しかしながら、他の方法も当技術分野の当事者には既知であり、目的のタンパク質を評価する工程での使用が見出される(例えば、Hampton et al.,Serological Methods,A Laboratory Manual,APS Press,St.Paul,MN[1990]、及びMaddox et al.,J.Exp.Med.,158:1211[1983]を参照されたい)。当技術分野において既知であるように、本発明を用いて作製された改変バチルス細胞は、保存され、目的のポリペプチドの細胞培養からの発現及び回収に適した条件下で増殖される(例えば、Hardwood and Cutting(eds.)Molecular Biological Methods for Bacillus,John Wiley & Sons[1990]を参照されたい)。本明細書に記載の遺伝子改変細胞は、1を超える目的のタンパク質を発現してもよく、これには、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上などが含まれることにもまた留意されたい。いくつかの実施形態では、細菌セクレトーム(bacterial secretome)におけるタンパク質の発現の増加が望まれるが、これには、細胞から分泌された数多くの異なるタンパク質が含まれる。
本発明の態様として、向上したタンパク質産生能力を用いて、改変グラム陽性菌細胞を得る方法が挙げられる。一般に、本方法は、(上で定義したように)ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が変化した遺伝子改変株をもたらすように、親グラム陽性細胞を遺伝子改変する工程を含む。
特定の実施形態では、本方法は、親グラム陽性菌細胞にポリヌクレオチド配列を導入する工程を含み、染色体に組み込まれた場合、又はエピソーム遺伝因子として維持された場合、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が変化した遺伝子改変グラム陽性細胞をもたらす。
ポリヌクレオチドベクター(例えば、プラスミド構築物)を使用して、バチルスの染色体を改変するために、又はバチルスのエピソーム遺伝因子を保存するためにバチルス種を形質転換する様々な方法は周知である。ポリヌクレオチド配列をバチルス細胞に導入する好適な方法は、例えば、Ferrari et al.,「Genetics,」in Harwood et al.(ed.),Bacillus,Plenum Publishing Corp.[1989],57〜72ページに示されており、また、Saunders et al.,J.Bacteriol.,157:718〜726[1984]、Hoch et al.,J.Bacteriol.,93:1925〜1937[1967]、Mann et al.,Current Microbiol.,13:131〜135[1986]、及びHolubova,Folia Microbiol.,30:97[1985]も参照されたく、枯草菌に関しては、Chang et al.,Mol.Gen.Genet.,168:11〜115[1979]、B.メガテリウムに関しては、Vorobjeva et al.,FEMS Microbiol.Lett.,7:261〜263[1980]、Bアミロリケファシエンス(Bamyloliquefaciens)に関しては、Smith et al.,Appl.Env.Microbiol.,51:634(1986)、卒倒病菌に関しては、Fisher et al.,Arch.Microbiol.,139:213〜217[1981]、並びにB.スファエリカス(B.sphaericus)に関しては、McDonald,J.Gen.Microbiol.,130:203[1984]を参照されたい。実際に、プロトプラスト形質転換及び会合(congression)を含む形質転換、形質導入、及び原形質融合などの方法は既知であり、本発明での使用に適している。形質転換の方法は、特に、本発明によって提供されるDNA構築物を宿主細胞に導入するためのものである。
加えて、宿主細胞へのDNA構築物の導入は、当技術分野において既知である、標的DNA構築物をプラスミド又はベクターに挿入せずに、DNAを宿主細胞に導入する物理的方法及び化学的方法を含む。かかる方法として、限定するものではないが、塩化カルシウム沈殿法、電気穿孔法、ネイキッドDNA法、及びリポソーム法などが挙げられる。追加の実施形態では、DNA構築物は、プラスミドに挿入されず、プラスミドと共に同時形質転換され得る。
安定形質転換体を選択するために選択可能マーカー遺伝子が用いられる実施形態では、任意の簡便な方法を用いて遺伝子改変グラム陽性株から選択マーカーを削除することが望ましく、数多くの方法が当該技術分野において知られている(Stahl et al.,J.Bacteriol.,158:411〜418[1984]、及びPalmeros et al.,Gene 247:255〜264[2000]を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、2つ以上のDNA構築物(すなわち、それぞれが宿主細胞を遺伝子改変するように設計されたDNA構築物)が親グラム陽性細胞に導入され、その結果、2つ以上の遺伝子改変、例えば、2つ以上の染色体領域での改変を細胞に導入する。いくつかの実施形態では、これらの領域は、連続的(例えば、ykfオペロン内の2つの領域又はykfオペロン及び近接遺伝子若しくはオペロン内の2つの領域)であるが、他の実施形態では、これらの領域は、分離されている。いくつかの実施形態では、遺伝子改変の1つ又は2つ以上は、エピソーム遺伝因子の付加によるものである。
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本発明に従って1つ又は2つ以上のDNA構築物で形質転換されて、宿主細胞において2つ以上の遺伝子が不活性化されている改変バチルス株を産生する。いくつかの実施形態では、2つ以上の遺伝子は、宿主細胞染色体から欠失される。代替の実施形態では、2つ以上の遺伝子は、DNA構築物の挿入によって不活性化される。いくつかの実施形態では、(欠失及び/又は挿入により不活性化された)不活性化されている遺伝子は、連続的であるが、他の実施形態では、これらの遺伝子は、連続的ではない。
一旦、遺伝子改変宿主細胞が作製されると、目的のタンパク質が発現するような条件下で培養することができ、特定の実施形態では、目的のタンパク質を回収する。
本発明の態様として、改変グラム陽性菌細胞が挙げられ、改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞と比較して、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性を変化させる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変グラム陽性細胞は、上述のとおり作製される。更に上述したとおり、改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種株(例えば、B.リケニフォルミス、B.レンタス、枯草菌、B.アミロリケファシエンス、B.ブレービス、B.ステアロサーモフィルス、B.アルカロフィラス、B.コアグランス、B.サークランス、B.プミルス、B.ロータス、B.クラウシイ、B.メガテリウム、又は卒倒病菌株)であり得る。特定の実施形態では、バチルス種株は、枯草菌株である。いくつかの態様では、改変グラム陽性菌細胞は、細胞の表現型を改良する追加の変異(例えば、degU、degQ、degS、scoC4、spoIIE、及びoppAからなる群から選択される遺伝子の変異)を更に含む。特定の実施形態では、変異は、degU(Hy)32である。
いくつかの実施形態では、本発明は、宿主細胞に安定して組み込まれた場合、(上で詳述したように)ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が変化するように細胞を遺伝子改変する入来配列を含むDNA構築物を含む。いくつかの実施形態では、DNA構築物は、インビトロで組み立てられた後、DNA構築物が宿主細胞染色体に組み込まれるように、構築物をコンピテントグラム陽性(例えば、バチルス)宿主に直接クローニングされる。例えば、PCR融合及び/又はライゲーションを用いて、インビトロでDNA構築物を組み立てる。いくつかの実施形態では、DNA構築物は、非プラスミド構築物(non-plasmid construct)であるが、他の実施形態では、DNA構築物は、ベクター(例えば、プラスミド)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、環状プラスミドが使用される。ある実施形態では、環状プラスミドは、適切な制限酵素(すなわち、DNA構築物を破壊しないもの)を用いるように設計される。よって、線状プラスミドは、本発明での使用が見出される。しかしながら、当該技術分野の当事者には既知であるように、本発明での使用には、他の方法が好適である(例えば、Perego,「Integrational Vectors for Genetic Manipulation in Bacillus subtilis,」in(Sonenshein et al.(eds.),Bacillus subtilis and Other Gram−Positive Bacteria,American Society for Microbiology(Washington,DC)[1993]を参照されたい)。
特定の実施形態では、DNA標的化ベクターの入来配列は、ykfA遺伝子由来の変異体配列を含むポリヌクレオチドを含む。これらの実施形態の一部では、変異体配列は、少なくとも約15ヌクレオチドの長さであり、配列番号1の全て又は一部と少なくとも60%同一であり、ykfA遺伝子内のヌクレオチド位置での少なくとも1つの変異を有し、ここで、該変異は、グラム陽性菌細胞の内因性ykfA遺伝子内に存在する場合、ykfオペロンによってコードされるタンパク質の活性の変化を引き起こす。変異体配列は、少なくとも約20ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約90ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約900ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約1100ヌクレオチド、約1200ヌクレオチド、約1300ヌクレオチド、約1400又はそれ以上のヌクレオチドであり得る。更に上記したとおり、変異体配列は、配列番号1と少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一であることを含み、配列番号1と少なくとも60%同一であり得る。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252又は253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、配列番号2のアミノ酸252及び253に対応する位置のアミノ酸における改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2のアミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2のアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。特定の実施形態では、遺伝子改変は、(配列番号4に示すように)配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす。
本発明の態様として、上述のポリヌクレオチド配列を含むベクターが挙げられる。特定の実施形態では、ベクターは、グラム陽性菌細胞への形質転換の際、相同組換えによって、ポリヌクレオチド配列における少なくとも1つの変異をグラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する位置に導入するように設計された標的化ベクターである。いくつかの実施形態では、入来配列/ベクターは、選択マーカーを含む。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、2つのloxP部位の間に位置しており(Kuhn and Torres,Meth.Mol.Biol.,180:175〜204[2002]を参照されたい)、抗菌遺伝子は、次いで、Creタンパク質の作用によって欠失される。
本発明の態様として、グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の発現を増大させる方法が挙げられ、上述のDNA構築物又はベクター(すなわち、宿主細胞に安定して組み込まれた場合、ykfオペロンによってコードされる1種類又は2種類以上のタンパク質の活性が変化するように細胞を遺伝子改変する入来配列を含むもの、例えば、前述したykfA遺伝子における変異を含むもの)で親グラム陽性菌細胞を形質転換させる工程と、改変グラム陽性菌細胞を作製するために、ベクターと、親グラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する領域とを相同組換えさせる工程と、目的のタンパク質の発現に好適な条件下で改変グラム陽性菌細胞を増殖させる工程であって、改変グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の産生は、形質転換工程前のグラム陽性菌細胞と比較して増加する、工程と、を含む。本発明の本態様での使用が見出されるグラム陽性株、変異、及び他の特性の例は、上で詳述している。
DNA構築物は、ベクターに組み込まれた場合であっても、あるいはプラスミドDNAの不存在下で使用された場合であっても、微生物を形質転換するために用いられる。形質転換のための任意の好適な方法は、本発明での使用が見出されることが想到される。ある実施形態では、DNA構築物の少なくとも1つのコピーは、宿主バチルス染色体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本発明の1つ又は2つ以上のDNA構築物は、宿主細胞を形質転換するために用いられる。
本発明を実施する様式及び方法は、以下の実施例を参照することにより当技術分野の当業者に更に十分に理解され、当該実施例は、本発明の範囲及び特許請求の範囲をいかなる手段においても限定する趣旨のものではない。
実験
以下の実施例は、例示目的で提供され、特定の実施形態及び本発明の態様を更に示すものであり、それらの範囲を制限するよう解釈されるものではない。
以下の実験の開示において、℃(摂氏温度)、rpm(毎分回転数)、μg(マイクログラム)、mg(ミリグラム)、μL(マイクロリットル)、mL(ミリリットル)、mM(ミリモル濃度)、μM(マイクロモル濃度)、sec(秒)、min(分)、hr(時間)、OD280(280nmでの光学密度)、OD600(600nmでの光学密度)、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、RT−PCR(逆転写PCR)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の略語の一部を適用する。
(実施例1)
バチルス種におけるタンパク質発現に対するykfA遺伝子の変異の効果
枯草菌のykfA遺伝子は、ペプチドグリカンの再利用に関与しているykfオペロンの第1のコード配列(図1)である。YfkAは、細菌ペプチドグリカンにおいて自然に発生するL−アミノ酸とD−アミノ酸とのアミド結合を切断するLD−カルボキシペプチダーゼである。
3つの単一ヌクレオチド多型は、バチルス株のykfA遺伝子における2つの非同義変異(P252L及びV253L)をもたらすことが分かっている。Janes及びStibitzによって記載された方法(Infection and Immunity,74(3):1949,2006)を用いて、ykfA変異を好適なバチルス株であるCB15−14(amyE:xylRPxylAcomK−ermC,ΔoppA,ΔspoIIE,ΔaprE,ΔnprE,degUHy32,ΔscoC)に導入した。
FNAプロテアーゼ(Y217L置換を含むスブチリシンBPN’)の発現に対するykfA変異の効果を試験するために、PaprE−FNA catR構築物をCB15−14及びCB15−14ykfA変異株のaprEローカスに導入し、本構築物を25μg/mLのクロラムフェニコールを含むルリア寒天プレート上で増幅させた。ykfA変異株及び野生型株を5mLのルリアブロス培地で一晩増殖させた。プロテアーゼ発現を試験するために、1mLの前培養を使用して、25mLのNB(2倍)(栄養ブロス(2倍)、SNB塩(1倍)、国際公開第WO2010/14483号に記載)を、Thompson製フラスコ中で250rpmで植え付けた。20倍に希釈されたブロス全体の細胞密度を、SpectraMax分光光度計(Molecular Devices製(Downington,PA,USA))を使用して、1時間おきに、600nmで測定した。600nmでの吸光度を時間の関数としてプロットし、その結果を図2Aに示す。ykfA変異の存在は、SNB培地(2倍)において、より高い細胞増殖をもたらした。
国際公開第WO 2010/144283号に記載されているように、N−suc−AAPF−pNA基質(Sigma Chemical Co.製)を使用して、プロテアーゼの発現をモニタした。簡潔に、ブロス全体をアッセイ緩衝液(100mMトリス、0.005%ツイン80、pH8.6)中で40倍に希釈し、10μLの希釈した試料をマイクロタイタープレート中で配列決定した。AAPFストックを希釈し、アッセイ緩衝液(100mg/mLのAAPFストックをDMSO中で100倍に希釈したもの)及び190μLの本溶液をマイクロタイタープレートに添加し、本溶液の吸光度を、SpectraMax分光光度計(Molecular Devices製(Downington,PA,USA))を使用して、405nmで測定した。405nmでの吸光度を時間の関数としてプロットし、その結果を図2Bに示す。FNA産生は、ykfA変異により、遅い時点(8時間)で増加した。
(実施例2)
バチルス種における緑色蛍光タンパク質発現に対するykfA変異の効果
他のタンパク質の発現に対するykfA変異の効果を試験するために、PaprE−GFP catR構築物をCB15−14及びCB15−14ykfA変異株のaprEローカスに導入し、5μg/mLのクロラムフェニコールを含むルリア寒天プレート上で形質転換体を選択した。ykfA変異株及び野生型株を5mLのルリアブロスで一晩増殖させた。緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を試験するために、1mLの前培養を使用して、25mLのNB培地(2倍)(栄養ブロス(2倍)、SNB塩(1倍))を、振盪フラスコ中で、37℃、250rpmで植え付けた。20倍に希釈されたブロス全体の細胞密度を、SpectraMax分光光度計(Molecular Devices製(Downington,PA,USA))を使用して、1時間おきに、600nmで測定した。600nmでの吸光度を時間の関数としてプロットし、その結果を図3Aに示す。定常期(NB(2倍)での増殖の4時間目と6時間目との間)に突入する際、ykfA変異株における細胞の増殖の低下は、ykfA変異により、向上した細胞の生存性を示す制御株と比較して遅延する。
GFP産生を測定するために、100μLの培養物を96ウェルマイクロタイタープレートに移し、485nmの励起波長、508nmの発光波長を使用して、495nmの発光カットオフフィルターを用いて、蛍光プレートリーダーにおいてGFP産生を測定した。485/508nmでの相対蛍光単位(RFU)を時間の関数としてプロットし、その結果を図3Bに示す。GFP産生は、ykfA変異により、増殖の6時間目から増加した。
(実施例3)
バチルス種におけるβ−D−グルコシダーゼ発現に対するykfA変異の効果
β−D−グルコシダーゼの発現に対するykfA変異の効果を試験するために、PaprE−BglC catR構築物をCB15−14及びCB15−14ykfA変異株のaprEローカスに導入し、5μg/mLのクロラムフェニコールを含むルリア寒天プレート上で形質転換体を選択した。ykfA変異株及び野生型株を5mLのルリアブロスで一晩増殖させた。分泌されたβ−D−グルコシダーゼの発現を試験するために、1mLの前培養を使用して、25mLのNB培地(2倍)(栄養ブロス(2倍)、SNB塩(1倍))を、振盪フラスコ中で、37℃、250rpmで植え付けた。20倍に希釈されたブロス全体の細胞密度を、SpectraMax分光光度計(Molecular Devices製(Downington,PA,USA))を使用して、1時間おきに、600nmで測定した。600nmでの吸光度を時間の関数としてプロットし、その結果を図4Aに示す。ykfA変異を持つ細胞は、より高い細胞増殖性を有しており、ykfA変異の存在による向上した細胞の生存性を示している。
4−ニトロフェニル−β−D−セロビオシド基質(Sigma Chemicals製(St.Louis,MO,USA)、カタログ番号N57590)を使用して、β−D−グルコシダーゼの発現をモニタした。基質を、1mLのDMSO中で溶解して、100mg/mLの原液を作製した。10mLのアッセイ緩衝液(100mMトリス、0.005%ツイン80、pH8.6)中で35μLの原液を希釈することによって、作業用(working)基質溶液を作製した。各培養物の40マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレートに移し、180μLの作業用基質溶液を各ウェルに添加した。マイクロタイタープレートを室温で5時間インキュベートし、インキュベーション時間の終わりに、本溶液の吸光度を、SpectraMax分光光度計(Molecular Devices製(Downington,PA,USA))を使用して、405nmで測定した。405nmでの吸光度を時間の関数としてプロットし、その結果を図4Bに示す。BglC産生は、ykfA変異の存在により、全ての時点で増加した。
上述のデータを考慮すると、グラム陽性菌細胞のykfオペロン(例えば、ykfA遺伝子)によってコードされるタンパク質の活性を変化させることにより(すなわち、親細胞と比較して)、同一の又は本質的に同一の培養条件下で培養した場合、目的のタンパク質の発現は、親細胞と比較して増加することが明らかである。
上記組成物及び方法は、一部の詳細において理解の明確化の目的のために例示及び実施例により説明したが、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなくこれに一定の変更及び修正を加えることができることは、本明細書の教示を考慮すれば当業者であれば容易に理解される。
したがって、上記記載は単に本組成物及び方法の原理を述べたに過ぎない。当業者であれば、ここに明瞭に記載され又は示されていなくとも、本組成物及び方法の原理を含み、各請求項の趣旨及び範囲内で様々な態様を考案できることを理解されたい。更に、本明細書に記載される全ての例及び暫定的な言い回しは、本組成物及び方法の原理並びに当該技術分野の進歩に寄与する本発明者らの思想が読者によって理解されるのを助けるためのものであり、そのように具体的に記載した例及び条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。また、本明細書において、本組成物及び方法の原理、態様、及び実施形態を記載する全ての表現、並びにその具体例は、その構成及び機能の両方の均等物を包含することを意図している。更に、そのような均等物が、現在知られている均等物と、将来創出される均等物、すなわち構成のいかんにかかわらず同じ機能をもたらすよう創出された任意の均等物の両方を包含することを意図している。したがって、本組成物及び方法の範囲は、本明細書に示され記載される実施形態に限定されるものではない。
配列
配列番号1−ykfA野生型ヌクレオチド配列
atgaaaggagtgttttcgttgaattacaagccgaaagcgttgaacaagggtgatacagtcggagtgatcgcgcccgcaagtccgccggatccaaaaaagcttgacaccgcgcttttatttttagaagagctcggtcttcaggtgaagttgggcaaggcgctgaaaaaccagcacggctatttagcgggacaggatgatgagcggctggcggatctccatgagatgttcagagacgatgaggtaaaagcagtgttgtgcgcatgcgggggttttgggacaggacgtatcgccgcgggcattgatttcagcttgatccgcaaacaccctaaaatcttttggggatacagcgatattacgtttttacatactgccattcatcaaaacacaggtcttgtcactttccatggcccgatgctcagcacggatattggccttgacgacgttcacccgctgacaaaagcgtcatataagcagctcttccaggagacggaattcacctatacagaagagctttctccgctgaccgagcttgttcctggaaaagcggaaggcgagcttgtcgggggaaatctgtctttgctgacgtctacactgggcacgccatttgaaattgatacgagaggaaagcttctgtttattgaagatattgacgaggagccttatcaaatcgaccggatgctgaatcagctgaaaatgggggggaagctgacggacgcggcgggaattctagtttgtgattttcacaattgtgtcccggtgaagcgagagaagtctctctcgcttgagcaggtgctggaagactatattatttctgcgggcaggcctgctctgagaggatttaaaatcggccactgctcgccaagtattgccgttccgatcggtgcgaaagctgctatgaatacagcagaaaaaacagccgtaatagaggcgggcgtttcagaaggggcgctgaagacatga
配列番号2−YkfA野生型タンパク質配列
MKGVFSLNYKPKALNKGDTVGVIAPASPPDPKKLDTALLFLEELGLQVKLGKALKNQHGYLAGQDDERLADLHEMFRDDEVKAVLCACGGFGTGRIAAGIDFSLIRKHPKIFWGYSDITFLHTAIHQNTGLVTFHGPMLSTDIGLDDVHPLTKASYKQLFQETEFTYTEELSPLTELVPGKAEGELVGGNLSLLTSTLGTPFEIDTRGKLLFIEDIDEEPYQIDRMLNQLKMGGKLTDAAGILVCDFHNCVPVKREKSLSLEQVLEDYIISAGRPALRGFKIGHCSPSIAVPIGAKAAMNTAEKTAVIEAGVSEGALKT
配列番号3−ykfA変異ヌクレオチド配列
atgaaaggagtgttttcgttgaattacaagccgaaagcgttgaacaagggtgatacagtcggagtgatcgcgcccgcaagtccgccggatccaaaaaagcttgacaccgcgcttttatttttagaagagctcggtcttcaggtgaagttgggcaaggcgctgaaaaaccagcacggctatttagcgggacaggatgatgagcggctggcggatctccatgagatgttcagagacgatgaggtaaaagcagtgttgtgcgcatgcgggggttttgggacaggacgtatcgccgcgggcattgatttcagcttgatccgcaaacaccctaaaatcttttggggatacagcgatattacgtttttacatactgccattcatcaaaacacaggtcttgtcactttccatggcccgatgctcagcacggatattggccttgacgacgttcacccgctgacaaaagcgtcatataagcagctcttccaggagacggaattcacctatacagaagagctttctccgctgaccgagcttgttcctggaaaagcggaaggcgagcttgtcgggggaaatctgtctttgctgacgtctacactgggcacgccatttgaaattgatacgagaggaaagcttctgtttattgaagatattgacgaggagccttatcaaatcgaccggatgctgaatcagctgaaaatgggggggaagctgacggacgcggcgggaattctagtttgtgattttcacaattgtgtcctgctcaagcgagagaagtctctctcgcttgagcaggtgctggaagactatattatttctgcgggcaggcctgctctgagaggatttaaaatcggccactgctcgccaagtattgccgttccgatcggtgcgaaagctgctatgaatacagcagaaaaaacagccgtaatagaggcgggcgtttcagaaggggcgctgaagacatga
配列番号4:YkfA変異タンパク質配列(P252L及びV253Lの改変を有する)
MKGVFSLNYKPKALNKGDTVGVIAPASPPDPKKLDTALLFLEELGLQVKLGKALKNQHGYLAGQDDERLADLHEMFRDDEVKAVLCACGGFGTGRIAAGIDFSLIRKHPKIFWGYSDITFLHTAIHQNTGLVTFHGPMLSTDIGLDDVHPLTKASYKQLFQETEFTYTEELSPLTELVPGKAEGELVGGNLSLLTSTLGTPFEIDTRGKLLFIEDIDEEPYQIDRMLNQLKMGGKLTDAAGILVCDFHNCVLLKREKSLSLEQVLEDYIISAGRPALRGFKIGHCSPSIAVPIGAKAAMNTAEKTAVIEAGVSEGALKT
配列番号5:FNAタンパク質配列(プロドメインを有する)
A Q S V P Y G V S Q I K A P A L H S Q G Y T G S N V K V A V I D S G I D S S H P D L K V A G G A S M V P S E T N P F Q D N N S H G T H V A G T V A A L N N S I G V L G V A P S A S L Y A V K V L G A D G S G Q Y S W I I N G I E W A I A N N M D V I N M S L G G P S G S A A L K A A V D K A V A S G V V V V A A A G N E G T S G S S S T V G Y P G K Y P S V I A V G A V D S S N Q R A S F S S V G P E L D V M A P G V S I Q S T L P G N K Y G A L N G T S M A S P H V A G A A A L I L S K H P N W T N T Q V R S S L E N T T T K L G D S F Y Y G K G L I N V Q A A A Q
配列番号6:GFPタンパク質配列
V N R N V L K N T G L K E I M S A K A S V E G I V N N H V F S M E G F G K G N V L F G N Q L M Q I R V T K G G P L P F A F D I V S I A F Q Y G N R T F T K Y P D D I A D Y F V Q S F P A G F F Y E R N L R F E D G A I V D I R S D I S L E D D K F H Y K V E Y R G N G F P S N G P V M Q K A I L G M E P S F E V V Y M N S G V L V G E V D L V Y K L E S G N Y Y S C H M K T F Y R S K G G V K E F P E Y H F I H H R L E K T Y V E E G S F V E Q H E T A I A Q L T T I G K P L G S L H E W V
配列番号7:BglCタンパク質配列
A A G T K T P V A K N G Q L S I K G T Q L V N R D G K A V Q L K G I S S H G L Q W Y G E Y V N K D S L K W L R D D W G I T V F R A A M Y T A D G G Y I D N P S V K N K V K E A V E A A K E L G I Y V I I D W H I L N D G N P N Q N K E K A K E F F K E M S S L Y G N T P N V I Y E I A N E P N G D V N W K R D I K P Y A E E V I S V I R K N D P D N I I I V G T G T W S Q D V N D A A D D Q L K D A N V M Y A L H F Y A G T H G Q F L R D K A N Y A L S K G A P I F V T E W G T S D A S G N G G V F L D Q S R E W L K Y L D S K T I S W V N W N L S D K Q E S S S A L K P G A S K T G G W R L S D L S A S G T F V R E N I L G T K D S T K D I P E T P S K D K P T Q E N G I S V Q Y R A G D G S M N S N Q I R P Q L Q I K N N G N T T V D L K D V T A R Y W Y K A K N K G Q N F D C D Y A Q I G C G N V T H K F V T L H K P K Q G A D T Y L E L G F K N G T L A P G A S T G N I Q L R L H N D D W S N Y A Q S G D Y S F F K S N T F K T T K K I T L Y D Q G K L I W G T E P N

Claims (18)

  1. グラム陽性菌細胞からの目的のタンパク質の発現を増加させる方法であって、
    a)目的のタンパク質を産生可能な改変グラム陽性菌細胞を得る工程であって、前記改変グラム陽性菌細胞は、ykfオペロンのykfA遺伝子における少なくとも1つの遺伝子改変を含む、工程と、
    b)前記改変グラム陽性菌細胞によって前記目的のタンパク質が発現するような条件下で前記改変グラム陽性菌細胞を培養する工程であって、前記改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の発現は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の発現と比較して増加する、工程と、を含み、
    前記遺伝子改変は、配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす、方法。
  2. 前記改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種(Bacillus sp.)株である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性が変化したYkfAタンパク質を有し、ここで、前記活性の変化は、活性の増加又は減少であり得る、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも0%同一である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記目的のタンパク質は、酵素である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記目的のタンパク質は、プロテアーゼである、請求項1に記載の方法。
  7. 前記目的のタンパク質を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  8. 改変グラム陽性菌細胞であって、前記改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞と比較して、ykfオペロンのykfA遺伝子における少なくとも1つの遺伝子改変を含み、前記遺伝子改変は、配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす、改変グラム陽性菌細胞。
  9. 前記改変グラム陽性菌細胞は、バチルス種株である、請求項8に記載の改変細胞。
  10. 前記改変グラム陽性菌細胞は、本質的に同一の培養条件下で増殖させた対応する非改変グラム陽性菌細胞におけるYkfAタンパク質の活性と比較して、活性が変化したYkfAタンパク質を有し、ここで、前記活性の変化は、活性の増加又は減少であり得る、請求項8に記載の改変細胞。
  11. 前記ykfA遺伝子は、配列番号1と少なくとも0%同一である、請求項8に記載の改変細胞。
  12. 前記改変細胞は、目的のタンパク質を発現する、請求項8に記載の改変細胞。
  13. 前記目的のタンパク質は、酵素である、請求項12に記載の改変細胞。
  14. 前記目的のタンパク質は、プロテアーゼである、請求項12に記載の改変細胞。
  15. ykfA遺伝子由来の変異体配列を含むポリヌクレオチドであって、
    前記変異体配列は、
    少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、
    配列番号1と少なくとも0%同一であり、
    少なくとも1つの遺伝子改変を含み、ここで、該遺伝子変化は、配列番号2の、アミノ酸252に対応する位置のアミノ酸におけるPからLへの改変及びアミノ酸253に対応する位置のアミノ酸におけるVからLへの改変をもたらす、ポリヌクレオチド。
  16. 請求項15に記載のポリヌクレオチド配列を含むベクター。
  17. 前記ベクターは、グラム陽性菌細胞への形質転換の際、相同組換えによって、前記ポリヌクレオチド配列における前記少なくとも1つの変異を前記グラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する位置に導入するように設計された標的化ベクターである、請求項16に記載のベクター。
  18. グラム陽性菌細胞における目的のタンパク質の発現を増大させる方法であって、
    a)請求項16に記載のベクターで親グラム陽性菌細胞を形質転換させる工程と、
    b)改変グラム陽性菌細胞を作製するために、前記ベクターと、前記親グラム陽性菌細胞のykfオペロンにおける対応する領域とを相同組換えさせる工程と、
    c)前記目的のタンパク質の発現に好適な条件下で前記改変グラム陽性菌細胞を増殖させる工程であって、該改変グラム陽性菌細胞における前記目的のタンパク質の産生は、前記形質転換工程前の前記グラム陽性菌細胞と比較して増加する工程と、
    を含む方法。
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