JP6583228B2 - 電流センサー用磁性コアの設計方法 - Google Patents
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Description
磁性コアの磁気飽和が発生する電流を大きくするには、該コアに設けたギャップ部の磁気抵抗を大きくすればよい。そのためには、該ギャップ部の長さを大きくすれば良いことが知られている。例えば、特許文献2には、コアに設けるギャップの個数を増やしてギャップ部の全長(総計)を大きくすることによって、磁気飽和に達する電流値を大きくできることが開示されている。特許文献2の図8の磁界−磁束密度の関係で示されるように、ギャップ部の全長が大きくなれば、磁界が大きくなっても磁束密度を小さくすることができる。磁界の大きさは電流に比例するから、計測対象の電流が大きくなっても、磁気飽和することなく電流測定が可能になる。
例えば磁束密度検出用センサーとしてホール素子を使用する場合、ホール素子の出力電圧は実用上必ず増幅装置を必要とするほど微弱であって、ノイズの影響を受けやすい。検出するコアの磁束密度が小さいとホール素子の出力電圧も小さくなるので、場合によってはノイズに埋もれてしまって検出できなくなる。このようにホール素子などの磁束密度検出用センサーの検出感度を考えると、SN比(信号とノイズとの比)の観点から、検出すべき信号の値、上記の例で言えばコアの磁束密度はセンサーの測定可能範囲において極力高くしなければならない。
電流センサーの測定精度として、定格電流以下の電流範囲に対しては高い精度が求められる。一方、電気機器に定格電流以上の過電流が流れることは頻度としては低いので、電流センサーの測定精度として定格電流以下の場合ほどの高精度が必要とされることは少なく、定格電流以上の電流が流れたことがわかるだけで良い場合もかつては多かった。
しかし、上記のように電気機器がノイズ環境にさらされる場合が増えてきているので、電気機器の耐過電流対策が求められるようになってきており、電流センサーに対しては過電流時の測定精度もよくすることが求められてきている。
また特許文献3の方法を用いて、被計測電流が過電流となる条件、すなわち、被計測電流とセンサー出力電圧が直線関係となる条件で磁気抵抗を最適化したとしても、その場合は大電流でも鉄心が磁気飽和しにくいようにギャップ長を大きく取った上でギャップ長を微調整することになるので、上記と同じ理由によりSN比(信号とノイズとの比)が低下してしまい、被計測電流値が小さい場合の電流検出精度が得られなくなる。
上記のように、従来技術は定格電流を被計測電流の最大値として、被計測電流の最大値の測定精度をよくするとともに、被計測電流が小さいときのSN比が大きくなるように最適化することまでは出来るが、その上にさらに定格電流よりも大きな過電流に対して測定精度を確保することは想定していないし、その方策も提示されていない。
上記した従来の定格電流値の測定精度を良くするとともに、被計測電流値が小さいときの測定精度をも良くするような最適化手法では、技術的には、コアの全ギャップ長をある特定の値にすることで、定格電流値と被計測電流値が小さいときの測定精度を両立させていることが分かった。そこで、さらに定格電流よりも大きな過電流に対する測定精度を良くするために、コアのギャップ数を複数化する一方で、全ギャップ長は一定値とし、各ギャップ長の配分比を変えることで定格電流値と被計測電流値が小さいときの測定精度を保ったまま過電流に対する測定精度を変えることが出来、その配分比を特定の値とすることで高い過電流測定精度を得ることができることを新たに知見するに到った。本発明は、上記の知見に由来するものである。
1.磁束を計測する磁気センサーを配置する第一のギャップと、第二のギャップとを有する電流センサー用磁性コアの設計方法であって、
前記電流センサーの被計測電流範囲の最小値電流および最大値電流における、前記電流センサーの設定測定精度に応じて、前記磁性コアの寸法と、前記第一のギャップの長さLsおよび前記第二のギャップの長さLgの合計である全ギャップ長とを決定する工程および、
前記被計測電流範囲の最大値電流を超える過電流値での前記電流センサーの設定測定精度に応じて、前記全ギャップ長における、前記第一のギャップの長さLsおよび第二のギャップの長さLgの配分比を調整する工程、
を有する電流センサー用磁性コアの設計方法。
また、該被計測電流範囲の最小値電流とは、所定の測定精度が担保される電流域の最小値である。同最大値電流とは、所定の測定精度が担保される電流域の最大値である。さらに、上記の電流センサーの設定測定精度とは、該電流センサーの仕様等によって予め決められる測定精度で、任意の電流値に対して設定することができる。
この電流センサー用コア11(以下、単にコアと示す)は、略環状であり、これを分断するギャップ2および3が設けられている。電流センサー1は、コア11の内径側に、電流を測定する被計測電流線10が配置されて使用に供される。被計測電流線10に電流が流れると、その電流の大きさに見合った磁束がコア11に発生する。この磁束は、アンペールの法則に従って、前記電流線10を一周するように形成される。この電流が大きくなれば、コア11内の磁束も大きくなる。しかし、電流が大きくなればやがて磁気飽和に至ることになる。
ここで、前記電流線10は、単芯または複数芯で構成されており、特に限定されない。
最大値電流および最小値電流に対する測定誤差あるいは測定精度(設定測定精度)が、図4に示すspec.1およびspec.2のようにそれぞれ与えられると、前記設定測定精度に応じた全ギャップ長がそれぞれ決定される。つまり、最大値電流および最小値電流に対する設定測定精度から、その磁性コアが取り得る全ギャップ長が、或る幅をもって決定される。その幅の最小値を2L0とする。
なお、全ギャップ長は、磁界解析ソフトを用いるなど、通常行われている手法で求めることができる。
すなわち、上記のコア11において、磁気センサー4を設置する一方のギャップ2の長さをLs、他方のギャップ3の長さをLgとしたとき、Lg+Ls=2L0 と全ギャップ長を一定としたままで2つのギャップ長の配分比を調整することが、被計測電流の最大値付近の測定精度と計測電流値が小さい場合の測定精度を確保しつつ、被計測電流の最大値よりも大きな過電流に対する測定精度を確保するために大切である。
このような電流センサーに用いるコアは、U字型の電磁鋼板(Si含有量が6.5質量%である0.1mm厚の珪素鋼板)60枚を積層した積層体の対を組み合わせることによって、図5に示すように、その磁路中に2箇所のギャップ2および3を有するコアとし、一方のギャップ2に磁気センサー(ホール素子)を備える形式とする(磁気センサーは図示を省略)。そして、磁気センサーを備える一方のギャップ2の長さLsと、他方のギャップ3の長さLgとが図5(a)〜(c)に示す関係にあるコアを設計する。
前記電流センサーによる電流測定を行って、次のとおり測定誤差を評価した。
はじめに、被計測電流として図6に示すように周波数10kHz、振幅50Aの交流電流に直流電流がオフセット電流として重畳する電流を与えたときに、磁気センサー(ホール素子)を設置する方のギャップの中心位置における磁束密度を測定する。そして、被計測電流のオフセット電流がゼロのときの当該磁束密度をB0、オフセット電流1000Aのときの当該磁束密度をB1000、オフセット電流1300Aのときの当該磁束密度をB1300としたとき、
(電流1000Aのときの誤差)=(B1000―B0)/B0×100 (%)
(電流1300Aのときの誤差)=(B1300―B0)/B0×100 (%)
として評価する。
なお、表1の仕様達成状況において、○は電流センサーの目標性能としての前記許容誤差、すなわち被計測電流1000Aのときは3%以下、被計測電流1300Aのときは7%以下を満足するもの、×は前記許容誤差を満足しないものを示している。
Claims (3)
- 磁束を計測する磁気センサーを配置する第一のギャップと、第二のギャップとを有する電流センサー用磁性コアの設計方法であって、
前記第一のギャップと前記第二のギャップとは環状のコアの相互に対向する位置に存在し、
前記電流センサーの被計測電流範囲の最小値電流および最大値電流における、前記電流センサーの設定測定精度に応じて、前記磁性コアの外形、内径および厚さと、前記第一のギャップの長さLsおよび前記第二のギャップの長さLgの合計である全ギャップ長を決定する工程および、
前記被計測電流範囲の最大値電流を超える過電流値での前記電流センサーの設定測定精度に応じて、前記全ギャップ長における、前記第一のギャップの長さLsおよび第二のギャップの長さLgの配分比をLg≦Ls≦1.35Lgに調整する工程、
を有する電流センサー用磁性コアの設計方法。 - 前記第一のギャップの長さLsおよび前記第二のギャップの長さLgの配分比を調整する工程において、前記配分比を1.11Lg≦Ls≦1.22Lgとする、請求項1に記載の電流センサー用磁性コアの設計方法。
- 前記電流センサー用磁性コアは、U字形の複数枚の電磁鋼板を積層した積層体の対を、前記ギャップLsおよびLgの長さを隔てて相対配置した環状組立体である請求項1に記載の電流センサー用磁性コアの設計方法。
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