JP6582038B2 - 配向制御剤、膜および有機発光素子 - Google Patents

配向制御剤、膜および有機発光素子 Download PDF

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Description

本発明は、遅延蛍光材料等を構成する化合物分子の配向を制御する配向制御剤、その配向制御剤を含む膜および有機発光素子に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、ホール輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、遅延蛍光材料を発光材料に利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
遅延蛍光材料は、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じた後、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光を放射する化合物である。こうした経路による蛍光は、基底状態からの直接遷移により生じた励起一重項状態からの蛍光(通常の蛍光)よりも遅れて観測されるため、遅延蛍光と称されている。ここで、例えば、発光材料をキャリアの注入により励起した場合、そのキャリア注入により直接生じる励起一重項状態と励起三重項状態の発生確率は統計的に25%:75%であるため、直接生じた励起一重項状態からの蛍光のみでは、発光効率の向上に限界がある。一方、遅延蛍光材料では、励起一重項状態のみならず、励起三重項状態も逆項間交差を介した経路により蛍光発光に利用することができるため、通常の蛍光材料に比べて高い発光効率が得られることになる。
こうした遅延蛍光材料として、特許文献1には、カルバゾリル基等のヘテロアリール基またはジフェニルアミノ基と少なくとも2つのシアノ基を有するベンゼン誘導体が提案され、そのベンゼン誘導体を発光層に用いた有機EL素子で高い発光効率が得られたことが確認されている。
また、非特許文献1には、下記式で表されるカルバゾリルジシアノベンゼン誘導体(4CzIPN)が熱活性型遅延蛍光材料であること、また、4CzIPNを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子で、高い内部EL量子効率を達成したことが報告されている。さらに、非特許文献2には、4CzIPNを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の構造を最適化することにより、高い発光効率と高い耐久性を実現したことが報告されている。
Figure 0006582038
特開2014−43541号公報
H. Uoyama, et al., Nature 492, 234 (2012) H. Nakanotani, et al., Scientific Reports, 3, 2127 (2013)
上記のように、特許文献1および非特許文献1、2で使用している4CzIPNは励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を介して蛍光を放射する遅延蛍光材料であり、こうした発光メカニズムにより高い発光効率を示す。しかし、発光効率が高い発光材料を使用しても、発光素子からは、それに見合うだけの発光効率(外部量子効率)が得られない場合も多くあり、発光材料の発光効率を発光素子の発光に十分に反映できていないという問題があった。
そのような中、本発明者らがより発光効率が高い有機発光素子を実現すべく検討を行ったところ、発光材料の分子配向を制御しうる化合物を併用して発光材料の配向性を高めれば、その発光材料が放射する光の取出効率が高くなり、発光素子の発光効率(外部量子効率)がさらに向上できるとの考えに至った。そして、発光材料の分子配向に影響する化合物を網羅的に探索して研究を行った結果、発光材料と併用する化合物の電荷分布の偏りが該発光材料の分子配向に大きく影響し、こうした電気的特性を利用して発光材料の分子配向性を高めることにより、発光素子の外部量子効率をより向上できることが判明した。これまでの発光素子の発光効率を高める研究は、主として発光材料自体の分子構造に着目したものであり、発光材料の分子配向を制御する化合物については、ほとんど検討がなされていない。
そこで本発明者らは、発光材料の分子配向性を高める作用を有する化合物に共通する物性を見出し、配向制御剤として有用な化合物を一般化することを目的として研究を重ねた。そして、こうした配向制御剤を利用することで、発光材料が高度に分子配向しており、外部量子効率がより高い有機発光素子を提供することを目的として鋭意検討を進めた。
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、3軸の各軸方向の双極子モーメントが特定の関係を満たし、且つ、一定以上の寿命を有する蛍光を放射する化合物が遅延蛍光材料の分子配向を効果的に制御する作用を有し、その化合物と遅延蛍光材料を組み合わせて発光層を構成することにより、外部量子効率がより高い有機発光素子が実現することを見いだした。本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に、以下の構成を有する。
[1] 双極子モーメントx,y,zが下記式(1)の関係を満たし、かつ、15ns以上の寿命を有する蛍光を放射する化合物からなる配向制御剤。
|x|−|y|−|z|>1.0 式(1)
(上式において、x,y,zは互いに直交する3軸の各軸方向の化合物分子の双極子モーメントを表し、最大値をとるものをxとしたものである。x,y,zのいずれか1つは化合物分子の長軸であり、化合物分子中に長軸が複数ある場合は、それに直交する軸が対称軸となるように選択する。)
[2] 前記化合物分子の長軸に対応する双極子モーメントがxである、[1]に記載の配合制御剤。
[3] 前記化合物の最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔESTが0.3eV以下である、請求項1または2に記載の配向制御剤。
[4] 前記化合物の配向秩序パラメータSが−0.3〜−0.5である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の配向制御剤。
[5] 前記化合物が下記式で表される化合物である、[1]に記載の配向制御剤。
Figure 0006582038
[6] 遅延蛍光材料の配向を制御するための、[1]に記載の配向制御剤。
[7] 前記遅延蛍光材料が、ジシアノベンゼンが1つ以上の9−カルバゾリル基で置換された構造を有する化合物である、[6]に記載の配向制御剤。
[8] [1]に記載の配向制御剤と遅延蛍光材料を含む膜。
[9] [1]に記載の配向制御剤と遅延蛍光材料を発光層に含む有機発光素子。
[10] 前記遅延蛍光材料を発光材料として前記発光層に含む、[9]に記載の有機発光素子。
[11] 有機エレクトロルミネッセンス素子である、[9]または[10]に記載の有機発光素子。
[12] 外部量子効率の測定値が、光取出効率を20%と仮定して計算した理論値よりも2.5%以上高い、[9]〜[11]のいずれか1項に記載の有機発光素子。
本発明の配向制御剤によれば、遅延蛍光材料等の発光材料の分子配向を効果的に制御することができる。この配向制御剤と遅延蛍光材料を含む膜を発光層に用いることにより、外部量子効率がより高い有機発光素子を実現することができる。
有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべてHであってもよいし、一部または全部がH(デューテリウムD)であってもよい。
<配向制御剤>
本発明の配向制御剤は、双極子モーメントx,y,zが下記式(1)の関係を満たし、かつ、15ns以上の寿命を有する蛍光を放射する化合物からなるものである。
|x|−|y|−|z|>1.0 式(1)
上式において、x,y,zは互いに直交する3軸の各軸方向の化合物分子の双極子モーメントを表し、最大値をとるものをxとしたものである。x,y,zのいずれか1つは化合物分子の長軸であり、化合物分子中に長軸が複数ある場合は、それに直交する軸が対称軸となるように選択する。
式(1)において、|x|−|y|−|z|の値は、分子中の電荷分布の偏り具合の指標となり、この値が1を超えるものは、特定の方向(x軸方向)における電荷分布の偏りが、他の方向における電荷分布の偏りよりも突出して大きく、言わば一軸配向したものであることを意味する。|x|−|y|−|z|の値は、1超であり、2超であることが好ましく、3超であることがより好ましい。また、化合物分子の長軸に対応する双極子モーメントは、x,y,zのうちのいずれであってもよいが、xであることが好ましい。
式(1)の双極子モーメントx,y,zは、分子軌道計算プログラムGaussian XXを採用し、計算条件として B3LYP/6-31++G(d,p) を用いて、化合物の分子構造から計算した。
また、本発明における「15ns以上の寿命を有する蛍光」とは、励起された化合物が励起一重項状態から基底状態へ戻る際に放射する光、すなわち励起一重項状態の輻射失活による光であって、発光寿命が15ns(ナノ秒)以上のものをいう。ここで、蛍光には、基底状態からの直接遷移により生じた励起一重項状態の輻射失活による蛍光(瞬時蛍光)と、励起三重項状態からの逆項間交差により生じた励起一重項状態の輻射失活による蛍光(遅延蛍光)とがあるが、本発明における「15ns以上の寿命を有する蛍光」は、遅延蛍光であることが好ましい。「瞬時蛍光」と「遅延蛍光」とは発光寿命により区別することができ、例えば寿命が異なる2種類の蛍光が観測される場合には、寿命が短い方の蛍光が「瞬時蛍光」であり、寿命が長い方の蛍光が「遅延蛍光」である。
本発明において、化合物が放射する蛍光の「寿命」は、測定対象化合物を蒸着等により成膜した薄膜に、窒素ガスレーザー励起光源(宇翔社製、KEN-2X)を用いて0.6ns(ナノ秒)のパルス幅の励起光を300Kで照射し、蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製ストリークカメラシステム等)により測定する。発光寿命は、下記式のτで示される。
F(t) = Fexp(−t/τ)
tは経過時間(単位:秒)であり、Fはt=0秒における励起状態の蛍光分子数であり、F(t)はt秒経過時の励起状態の蛍光分子数であり、τはt=0秒における励起状態の蛍光分子数(F)が1/e(約37%)まで減衰した時の経過時間(単位:秒)を表す。
こうした蛍光の寿命測定では、寿命が異なる複数の蛍光が観測される場合がある。このような場合、本発明で用いる化合物としては、寿命が最も長い蛍光の寿命が15ns以上であればよく、それよりも寿命が短い蛍光の寿命は15ns未満であっても構わない。なお、以下の説明では、寿命が異なる2種類の蛍光が観測される場合、寿命が短い方の蛍光の寿命を「発光寿命τ1」と言い、寿命が長い方の蛍光の寿命を「発光寿命τ2」と言うことがある。
化合物が放射する蛍光の寿命(寿命が異なる2種類の蛍光が観測される場合には、発光寿命τ2)は、15ns以上であることが好ましく、20ns以上であることがより好ましく、30ns以上であることがさらに好ましい。
本発明の配向制御剤を、発光材料と共存させると、その発光材料の分子配向性が高くなり、特に発光材料が遅延蛍光材料である場合に、その遅延蛍光材料を構成する化合物分子の配向性を効果的に向上させることができる。これは、配向制御剤を構成する化合物のx軸方向における双極子モーメントが、他の方向における双極子モーメントよりも突出して大きいことにより、その電荷分布の偏りに基づく静電相互作用が働いて、発光分子の双極子モーメントが最も大きい軸がx軸に沿うように配向するためであると考えられる。
配向制御剤として用いる化合物は、該化合物を蒸着して膜状に形成したとき、その膜形成面についての配向秩序パラメータSが−0.3〜−0.5であることが好ましく、−0.35〜−0.5であることがより好ましく、−0.4〜−0.5であることがさらに好ましい。配向秩序パラメータSは、−0.5のときに分子が完全に水平方向(膜形成面と平行な方向)に配向し、1のときに分子が完全に垂直方向(膜形成面の法線方向)に配向し、0のときに分子の配向状態が完全にランダムであることを意味する。そして、配向秩序パラメータSが上記の範囲である場合、化合物分子の大半が水平方向に配向していることを意味している。このような化合物分子からなる配向制御剤と発光材料で発光層を構成すると、発光材料の分子配向が水平方向に制御されて、発光材料の化合物分子が発した光の進行方向が膜形成面の法線方向付近に揃えられる、その結果、発光素子の光出射面からの光取出効率が向上し、一段と高い外部量子効率が実現することになる。
化合物の配向秩序パラメータSは、Adv. Func. Mater. 2011, 21, 1375-1382に記載された方法により測定することができる。
双極子モーメントx,y,zが式(1)の関係を満たす化合物として、1つ以上のアクセプター性基(A)と1つ以上のドナー性基(D)で置換された芳香環を有する化合物を挙げることができる。ここで、「ドナー性基(D)」とは、自らの電子を分子の他の箇所に供与する機能を有する置換基のことをいい、「アクセプター性基(A)」とは、分子の他の箇所の電子を、自らの方へ求引する機能を有する置換基のことをいう。
化合物を構成する芳香環は、炭化水素からなる芳香族炭化水素環であってもよいし、ヘテロ原子を含む芳香族ヘテロ環であってもよく、単環であっても縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることがさらにより好ましい。芳香族炭化水素環の具体例として、ベンゼン環、アントラセン環、ナフタレン環、フェナントレン環等を挙げることができ、ベンゼン環であることが好ましい。芳香族ヘテロ環の炭素数は5〜22であることが好ましく、5〜18であることがより好ましく、5〜14であることがさらに好ましく、5〜10であることがさらにより好ましい。芳香族ヘテロ環を構成するヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を挙げることができ、窒素原子であることが好ましい。芳香族ヘテロ環の具体例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができる。
化合物を構成する芳香環が線対称構造を有するものであって、その対称軸の少なくとも1つが芳香環の置換可能な位置(例えばメチン基−CH=)の2つに重なる場合、その対称軸に重なる2つの位置がアクセプター性基(A)とドナー性基(D)でそれぞれ置換されていることが好ましく、その対称軸に重なる位置の一方がアクセプター性基(A)で置換されており、その他方の両隣の置換可能な位置がドナー性基(D)で置換されていることも好ましく、その対称軸に重なる位置の一方がアクセプター性基(A)で置換されており、その他方と、その他方の両隣の置換可能な位置がドナー性基(D)で置換されていることも好ましい。式(1)を満たす化合物の好ましい例として、芳香環がベンゼン環であって、アクセプター基(A)のパラ位にドナー性基(D)を有する化合物、アクセプター基(A)の両方のメタ位にドナー性基(D)を有する化合物、アクセプター基(A)のパラ位と両方のメタ位にドナー性基(D)を有する化合物を挙げることができる。
アクセプター性基(A)には、ハメットのσ値が正である置換基を用いることができ、ドナー性基(D)には、ハメットのσ値が負である置換基を用いることができる。
ここで、「ハメットのσ値」は、L.P.ハメットにより提唱されたものであり、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したものである。具体的には、パラ置換ベンゼン誘導体における置換基と反応速度定数または平衡定数の間に成立する下記式:
log(k/k0) = ρσ
または
log(K/K0) = ρσ
における置換基に特有な定数(σ)である。上式において、kは置換基を持たないベンゼン誘導体の速度定数、k0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の速度定数、Kは置換基を持たないベンゼン誘導体の平衡定数、K0は置換基で置換されたベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数を表す。本発明における「ハメットのσ値」に関する説明と各置換基の数値については、Hansch,C.et.al.,Chem.Rev.,91,165-195(1991)のσ値に関する記載を参照することができる。
アクセプター性基(A)の具体例として、シアノ基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、オキサジアゾリル基、シラシクロペンタジエニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、電子吸引性基で置換されたフェニル基等を挙げることができる。ドナー性基(D)の具体例として、カルバゾリル基、ジアリールアミノ基、フェノキサジル基、フルオレニル基等を挙げることができる。
本発明で配向制御剤として用いる化合物は、双極子モーメントx,y,zが式(1)の関係を満たし、かつ、15ns以上の寿命を有する蛍光を放射するものである。発光寿命τ2が15ns以上の蛍光を放射する化合物として、例えば最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔESTが0.3eV以下である化合物や0.2eV以下である化合物を採用することも可能である。すなわち、本発明では、特定の位置が1つ以上のアクセプター性基(A)と1つ以上のドナー性基(D)で置換された芳香環を有し、ΔESTが0.3eV以下、好ましくは0.2eV以下である化合物を配向制御剤として採用することができる。ΔESTの測定方法については、下記の[最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔEST]の項の記載を参照することができる。
以下において、双極子モーメントx,y,zが式(1)の関係を満たし、かつ、15ns以上の寿命を有する蛍光を放射する化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において配向制御剤に用いることができる化合物は、この具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
Figure 0006582038
<膜>
本発明の膜は、本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料を含むものである。
本発明の配向制御剤の説明と好ましい範囲、具体例については、<配向制御剤>の項の記載を参照することができる。
本発明における「遅延蛍光材料」とは、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じ、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光(遅延蛍光)を放射する有機化合物のことを意味する。本発明では、蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製ストリークカメラシステム等)により発光寿命を測定したとき、発光寿命が15ns(ナノ秒)以上の蛍光が観測されるものを遅延蛍光材料と言う。遅延蛍光材料は、最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔESTが0.4eV以下であることが好ましく、0.3eV以下であることがより好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましく、0.1eV以下であることがさらにより好ましい。遅延蛍光材料のΔESTが小さい程、その励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差が起き易く、励起三重項エネルギーを効率よく励起一重項エネルギーに変換することができる。ここで、ΔESTは下記の測定方法により測定されるものであり、遅延蛍光材料の具体例については後述する。
本発明の膜は、こうした遅延蛍光材料と本発明の配向制御剤を含むことにより、遅延蛍光材料を構成する化合物分子の配向が制御されて遅延蛍光材料が高い配向性を有している。そのため、遅延蛍光材料を構成する化合物分子が発した光の進行方向が揃えられ、膜の特定の側から光を効率よく取り出すことができる。そのため、本発明の膜は、有機発光素子の発光層として有用であり、これにより、一段と高い外部量子効率を実現することができる。
配向制御剤と遅延蛍光材料の組み合わせの具体例として、化合物1と4CzIPN(1,2,3,5−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−4,6−ジシアノベンゼン)の組み合わせ、化合物1と4CzTPN(1,2,4,5−テトラキス(カルバゾール−9−イル)−3,6−ジシアノベンゼン)の組み合わせ、化合物1と5CzBN(1,2,3,4,5−ヘキサキス(カルバゾール−9−イル)−6−シアノベンゼン)の組み合わせを挙げることができる。なお、配向制御剤および遅延蛍光材料には、それぞれ1種類のものを単独で用いてもよいし、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
本発明の膜は、本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料のみから構成されていてもよいし、その他の材料を含んでいてもよい。その他の材料として、ホスト材料、通常の蛍光材料および燐光材料を挙げることができる。ホスト材料の説明と好ましい範囲、具体例については、下記の<有機発光素子>の項の記載を参照することができる。
膜における遅延蛍光材料の含有量は、膜の全重量に対して0.1〜80重量%であることが好ましい。また、膜における遅延蛍光材料の含有量は、膜の全重量に対して1重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることがさらにより好ましい。膜における遅延蛍光材料の含有量は、膜の全重量に対して70重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることがさらに好ましく、30重量%以下であることがさらにより好ましい。
膜における配向制御剤の含有量は、膜の全重量に対して20〜99重量%であることが好ましい。また、膜における配向制御剤の含有量は、膜の全重量に対して30重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることがさらにより好ましい。膜における配向制御剤の含有量は、膜の全重量に対して99重量%以下であることがより好ましく、95重量%以下であることがさらに好ましく、80重量%以下であることがさらにより好ましい。
本発明の膜の厚さは特に制限されず、用途に応じて適宜選択できる。また、膜の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらであってもよい。
[最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔEST
上記の配向制御剤や遅延蛍光材料の最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)の差ΔESTは、最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)を以下の方法で算出し、ΔEST=ES1−ET1により求められる。
(1)最低励起一重項エネルギー準位(ES1
測定対象化合物をSi基板上に厚さ100nmの試料を作製する。常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定し、励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得る。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とする。この発光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をES1とする。
換算式:ES1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(宇翔社製、KEN-2X)を、検出器にストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いることができる。
(2)最低励起三重項エネルギー準位(ET1
最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と同じ試料を5[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定する。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得る。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をET1とする。
換算式:ET1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
<有機発光素子>
本発明の有機発光素子は、本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料を発光層に含むものである。
本発明の配向制御剤の説明と好ましい範囲、具体例については、<配向制御剤>の項の記載を参照することができる。また、遅延蛍光材料の説明と好ましい範囲、配向制御剤と遅延蛍光材料の組み合わせの具体例、発光層における配向制御剤および遅延蛍光材料の含有量の好ましい範囲については、<膜>の項の記載を参照することができる。遅延蛍光材料の具体例については後に掲載する。配向制御剤および遅延蛍光材料には、それぞれ1種類のものを単独で用いてもよいし、2種類以上のものを組み合わせて用いてもよい。
本発明の有機発光素子は、発光層が本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料を含むことにより、極めて高い外部量子効率を得ることができる。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
そして、本発明の有機発光素子では、遅延蛍光材料とともに本発明の配向制御剤を発光層が含むことにより、遅延蛍光材料の分子配向が制御されて遅延蛍光材料が高い配向性を有している。そのため、遅延蛍光材料を構成する化合物分子が発した光の進行方向が揃えられ、有機発光素子の光出射面から光を効率よく取り出すことができる。そのため、一段と高い外部量子効率を実現することが可能である。
本発明の有機発光素子では、遅延蛍光材料を発光材料として含むことにより、上記のようなメカニズムで高い発光効率を得ることができる。また、遅延蛍光材料は、いわゆるアシストドーパントとして、発光層に含有される他の発光材料の発光をアシストする機能を有するものであってもよい。すなわち、遅延蛍光材料は、該遅延蛍光材料を含む層に含まれるホスト材料の最低励起一重項エネルギー準位と、この層に含まれる他の発光材料の最低励起一重項エネルギー準位の間の最低励起一重項エネルギー準位を有するものであってもよい。この場合には、本発明の配向制御剤により、遅延蛍光材料や発光材料の分子配向が制御されて、各材料が高い配向性を有することにより、発光材料の発光が効果的にアシストされるとともに、その発光材料が発した光が有機発光素子の光出射面から効率よく取り出され、より高い外部量子効率が得られることになる。
本発明の有機発光素子は、その外部量子効率の測定値が、光取出効率を20%と仮定して計算した理論値よりも2.5%以上高いことが好ましく、3%以上高いことがより好ましく、3.5%以上高いことがさらに好ましい。また、有機発光素子の外部量子効率の測定値は20%以上であることが好ましい。ここで、「光取出効率を20%と仮定して計算した理論値」とは、有機発光素子を構成する発光層と同じ構成の膜に励起光を照射して測定したフォトルミネッセンス量子効率PLQYに0.2をかけて算出される計算値(PLQY×0.2)である。膜のフォトルミネッセンス量子効率の測定値は、300KでQuantaurus-QY 絶対PL量子収率測定装置(C11347-02)を用いて測定される値である。
また、本発明の有機発光素子は、遅延蛍光を放射することが好ましく、その遅延蛍光成分の割合が発光全体の10%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。ここで、「発光全体」とは、時間分解を行っていない発光スペクトルのことを言い、「遅延蛍光成分」とは、15nsよりも遅い蛍光成分のことを言う。
本発明の有機発光素子は、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)であっても有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)であってもよい。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、ホール輸送層、ホール注入層、電子阻止層、ホール阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。ホール輸送層はホール注入機能を有したホール注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3はホール注入層、4はホール輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入されたホールおよび電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層である。本発明の有機発光素子では、発光層は少なくとも本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料を含む。配向制御剤および遅延蛍光材料には、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
発光層は、本発明の配向制御剤と遅延蛍光材料のみで構成されていてもよいし、その他の材料を含んでいてもよい。その他の材料として、ホスト材料、通常の蛍光材料および燐光材料を挙げることができる。これらのうち、ホスト材料に用いる化合物は、以下の点から選択することが好ましい。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、遅延蛍光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、遅延蛍光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に遅延蛍光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が遅延蛍光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、遅延蛍光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、遅延蛍光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる遅延蛍光材料から生じることが好ましい。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的に配向制御剤やホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、遅延蛍光材料が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層の厚さは特に制限されないが、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましく、20〜40nmであることがさらに好ましい。
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、ホール注入層と電子注入層があり、陽極と発光層またはホール輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくはホール)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層およびホール輸送層の間に配置されることができ、電子がホール輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、ホール阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、ホールが電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、ホール阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
(ホール阻止層)
ホール阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。ホール阻止層は電子を輸送しつつ、ホールが電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子とホールの再結合確率を向上させることができる。ホール阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味ではホールを輸送する機能を有する。電子阻止層はホールを輸送しつつ、電子がホール輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子とホールが再結合する確率を向上させることができる。
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内でホールと電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、ホール輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、ホール注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、ホール阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
(ホール輸送層)
ホール輸送層とはホールを輸送する機能を有するホール輸送材料からなり、ホール輸送層は単層または複数層設けることができる。
ホール輸送材料としては、ホールの注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知のホール輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(ホール阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、配向制御剤を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる配向制御剤と、発光層以外の層に用いる配向制御剤は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、ホール阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、ホール輸送層、電子輸送層などにも配向制御剤を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。
本発明で用いることができる遅延蛍光材料の種類や構造は、特に制限されない。例えば、ドナー性基(典型的にはハメットのσp値が負の基)とアクセプター性基(典型的にはハメットのσp値が正の基)がリンカー(典型的には芳香族基などの共役系連結基)に結合した構造をもつ遅延蛍光材料を採用することができる。特に、ドナー性基としてジアリールアミノ基(2つのアリール基はヘテロアリール基であってもよく、2つのアリール基は互いに結合してカルバゾリル基等の構造となっていてもよい)を有する化合物、アクセプター性基としてシアノ基かヘテロアリール環を含む基を有する化合物を好ましく採用することができるが、本発明において用いることができる遅延蛍光材料はこれらの化合物に限定されるものではない。
例えば、以下の構造を有する遅延蛍光材料を本発明において好ましく用いることができ、中でもジシアノベンゼンが1つ以上の9−カルバゾリル基で置換された構造を有する化合物であることが好ましく、実施例で使用している4CzIPNであることが最も好ましい。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
好ましい遅延蛍光材料として、WO2013/154064号公報の段落0008〜0048および0095〜0133、WO2013/011954号公報の段落0007〜0047および0073〜0085、WO2013/011955号公報の段落0007〜0033および0059〜0066、WO2013/081088号公報の段落0008〜0071および0118〜0133、特開2013−256490号公報の段落0009〜0046および0093〜0134、特開2013−116975号公報の段落0008〜0020および0038〜0040、WO2013/133359号公報の段落0007〜0032および0079〜0084、WO2013/161437号公報の段落0008〜0054および0101〜0121、特開2014−9352号公報の段落0007〜0041および0060〜0069、特開2014−9224号公報の段落0008〜0048および0067〜0076に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光を放射するものを挙げることができる。また、特開2013−253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015−129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射するものも好ましく採用することができる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
さらに以下に記載する一般式(A)〜(F)で表される化合物や、以下に記載する構造を有する化合物であって、遅延蛍光を放射するものも、本発明の遅延蛍光材料として好ましく用いることができる。
まず一般式(A)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(A)において、R、R、R、RおよびRのうちの1つ以上は、各々独立に、1位か8位の少なくとも一方に置換基を有する9−カルバゾリル基、1位か9位の少なくとも一方に置換基を有する10−フェノキサジル基、または1位か9位の少なくとも一方に置換基を有する10−フェノチアジル基を表す。残りは水素原子または置換基を表すが、該置換基は、1位か8位の少なくとも一方に置換基を有する9−カルバゾリル基、1位か9位の少なくとも一方に置換基を有する10−フェノキサジル基、または1位か9位の少なくとも一方に置換基を有する10−フェノチアジル基ではない。前記9−カルバゾリル基、前記10−フェノキサジル基および前記10−フェノチアジル基の各環骨格を構成する1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい。
一般式(A)のR、R、R、RおよびRのうちの1つ以上が表す「1位か8位の少なくとも一方に置換基を有する9−カルバゾリル基」の具体例(m−D1〜m−D23)を挙げる。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
一般式(A)のR、R、R、RおよびRのうちの上記の「1つ以上」を除いた残りが表す「置換基」の具体例(Cz、Cz1〜12)を挙げる。
Figure 0006582038
一般式(A)で表される化合物の具体例を挙げる。
Figure 0006582038
次に一般式(B)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(B)において、R、R、RおよびRのうちの3つ以上は、各々独立に置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の10−フェノキサジル基、置換もしくは無置換の10−フェノチアジル基、またはシアノ基を表す。残りは水素原子または置換基を表すが、該置換基は、置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の10−フェノキサジル基、または置換もしくは無置換の10−フェノチアジル基ではない。前記9−カルバゾリル基、前記10−フェノキサジル基および前記10−フェノチアジル基の各環骨格を構成する1以上の炭素原子は窒素原子で置換されていてもよい。Rは、各々独立に水素原子または置換基を表すが、該置換基は、置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基、置換もしくは無置換の10−フェノキサジル基、シアノ基、置換もしくは無置換の10−フェノチアジル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルキニル基ではない。
一般式(B)のR、R、RおよびRの具体例(D1〜D42)を例示する。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
一般式(B)で表される化合物の具体例を挙げる。
Figure 0006582038
次に一般式(C)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(C)において、
Spはベンゼン環またはビフェニル環を表し、
Czは1位と8位の少なくとも一方に置換基を有する9−カルバゾリル基(ここにおいて、9−カルバゾリル基のカルバゾール環の環骨格を構成する1〜8位の炭素原子の少なくとも1つは窒素原子で置換されていてもよいが、1位と8位がともに窒素原子で置換されていることはない。)を表し、
Dはハメットのσ値が負である置換基を表し、
Aはハメットのσ値が正である置換基(ただし、シアノ基は除く)を表し、
aは1以上の整数を表し、mは0以上の整数を表し、nは1以上の整数を表すが、a+m+nはSpが表すベンゼン環またはビフェニル環に置換可能な最大置換基数を超えることはない。
Czが表す「1位と8位の少なくとも一方に置換基を有する9−カルバゾリル基」の具体例として上記のm−D1〜m−D23を例示することができる。
Dが表す置換基の具体例として上記のCz、Cz1〜12を例示することができる。
Aが表す置換基の具体例(A−1〜A−78)を例示する。*は結合位置を示す。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
一般式(C)で表される化合物は、下記一般式S−1〜S−18で表される化合物であることが好ましい。R11〜R15、R21〜R24、R26〜R29は、各々独立に置換基Cz、置換基D、置換基Aのいずれかを表す。ただし、一般式S−1〜S−18は、それぞれ、R11〜R15、R21〜R24、R26〜R29のうちの該一般式が有するもの中に、置換基Czと置換基Aを少なくとも1つずつ有する。R、R、R、Rは各々独立にアルキル基を表す。R同士、R同士、R同士、R同士は、同一であっても異なっていてもよい。
Figure 0006582038
一般式(C)で表される化合物の具体例を挙げる。
Figure 0006582038
次に一般式(D)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(D)において、
Arは、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニルジイル基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。
〜R10は、水素原子または置換基を表し、RとRの少なくとも一方は置換基である。また、R〜Rの少なくとも1つはジベンゾフリル基またはジベンゾチエニル基である。
一般式(D)のArに結合するカルバゾリル基の具体例を挙げる。
Figure 0006582038
一般式(D)で表される化合物の具体例を挙げる。以下のXはOまたはSである。
Figure 0006582038
次に一般式(E)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(E)において、RおよびRは各々独立にフッ化アルキル基を表し、Dはハメットのσ値が負である置換基を表し、Aはハメットのσ値が正である置換基を表す。
Aが含む置換基の具体例として、一般式(C)で例示したAが表す置換基の具体例(A−1〜A−77)を挙げることができる。
以下において、一般式(E)で表される化合物の具体例を例示する。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
次に一般式(F)で表される化合物について説明する。
Figure 0006582038
一般式(F)において、R〜R、R12およびR14〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表し、R11は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つは置換もしくは無置換のアルキル基であり、R〜Rの少なくとも1つは置換もしくは無置換のアルキル基である。
一般式(F)で表される化合物の具体例を例示する。
Figure 0006582038
次に、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
次に、ホール注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
次に、ホール輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
次に、ホール阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
Figure 0006582038
Figure 0006582038
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 0006582038
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
Figure 0006582038
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
ただし、りん光については、本発明で用いる遅延蛍光材料では、励起三重項エネルギーが励起一重項エネルギーに変換されるため殆ど観測されない。また、励起三重項エネルギーは、励起一重項エネルギーに変換されない場合、不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活する。そのため、通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に配向制御剤と遅延蛍光材料を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、OLED IVL特性自動IVL測定装置 ETS-170(システム技研社製)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。分子配向特性は、分子配向特性測定装置(浜松ホトニクス社製:C14234−01)を用い、面内分子配向秩序を表すパラメータのS値を求めた。HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)のエネルギー準位およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギー準位は、大気中光電子分光法(理研計器社製AC−3等)により求めた。
本実施例で評価を行った化合物を以下に示す。
Figure 0006582038
(実施例1) 化合物1の配向制御剤としての評価
化合物1の双極子モーメントx、y、zから求めた|x|−|y|−|z|および配向秩序パラメータSを表1に示す。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度5×10−6Pa以下の条件にて化合物1の薄膜(単独膜)を15nmの厚さで形成した。
これとは別に、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度5×10−6Pa以下の条件にて化合物1と4CzIPNとを異なる蒸着源から蒸着し、4CzIPNの濃度が9.0重量%である薄膜(ドープ膜)を15nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
化合物1の単独膜の337nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)、発光寿命τ1および発光寿命τ2と、化合物1と4CzIPNのドープ膜の337nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)を表1に示す。ここで、発光寿命τ1および発光寿命τ2については、発光の過渡減衰曲線から求めた発光寿命のうち、短い方を発光寿命τ1であり、長い方を発光寿命τ2とした。また、化合物1の単独膜の蛍光極大波長は437nm、りん光極大波長は485nm、ΔESTは0.268eV、HOMOのエネルギー準位は5.95eV、LUMOのエネルギー準位は2.90eVであった。
さらに、化合物1を用いて以下のようにして有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5×10−6Pa以下で積層した。まず、ITO上にHATCNを10nmの厚さに形成した。続いて、TrisPCzを25nmの厚さに形成し、その上に、mCBPを5nmの厚さに形成した。次に、化合物1と4CzIPNを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、4CzIPNの濃度は9.0重量%とした。次に、T2Tを10nmの厚さに形成し、その上に、BPy−TP2を40nmの厚さに形成した。さらにLiqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに形成することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子について、1000cdで測定した外部量子効率と光取出効率を20%と仮定して計算した外部量子効率の理論値を表1に示す。ここで、外部量子効率の理論値は、(ドープ膜のPL量子効率PLQY)×0.2により求めた。
(比較例1〜4) 比較化合物1〜4の配向制御剤としての評価
比較化合物1〜4の双極子モーメントx、y、zから求めた|x|−|y|−|z|および配向秩序パラメータSを表1に示す。
また、化合物1の代わりに比較化合物1〜4を用いること以外は、実施例1と同様にして、比較化合物1〜4の各単独膜、および、比較化合物1〜4のいずれかと4CzIPNからなる各ドープ膜をそれぞれ作製した。各単独膜の337nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)、発光寿命τ1および発光寿命τ2と、各ドープ膜の337nm励起光によるフォトルミネッセンス量子収率(PL量子収率)を表1に示す。
さらに、化合物1の代わりに比較化合物1〜4を用いること以外は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)をそれぞれ作製した。各有機エレクトロルミネッセンス素子について、1000cdで測定した外部量子効率と光取出効率を20%と仮定して計算した外部量子効率の理論値の理論値を表1に示す。
Figure 0006582038
表1に示されているように、化合物1は、配向秩序パラメータSが−0.5に最も近く、水平配向度が高いものであった。また、化合物1の単独膜において、発光寿命τ2が32.3nsの蛍光放射を観測することができた。そして、化合物1と4CzIPNのドープ膜を発光層とする有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率は21.5%であり、理論値17.9%を大きく上回るものであった。これらの結果から、化合物1は4CzIPNを水平配向させる配向制御剤として効果的に機能するものであり、これにより、光取出効率が高くなって、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を飛躍的に向上できることがわかった。
一方、比較化合物1、2は発光寿命τ2が15ns未満であり、比較化合物3、4は|x|−|y|−|z|が1よりも小さいものであった。そして、これらの比較化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率は理論値とほとんど変わらず、各比較化合物に配向制御剤としての作用や光取出効率を上げる効果は認められなかった。
以上の結果から、発光材料の配向制御剤として機能するには、|x|−|y|−|z|が1よりも大きく、かつ、発光寿命τ2が15ns以上であることが必要であり、これらの要件を満たす化合物と発光材料とで発光層を構成することにより、発光効率が極めて高い有機発光素子が実現できることがわかった。
Figure 0006582038
本発明の配向制御剤によれば、遅延蛍光材料等の発光材料の分子配向性を効果的に制御することができる。こうした配向制御剤と遅延蛍光材料を用いて発光層を構成することにより、遅延蛍光材料が発した光が外部に効率よく取り出され、外部量子効率が一段と高い有機発光素子を実現することができる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 基板
2 陽極
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極

Claims (7)

  1. 下記式で表される化合物からなる、遅延蛍光材料(但し前記化合物を除く)の分子配向制御剤。
    Figure 0006582038
    (上式中、Czは下記の構造を表す。)
    Figure 0006582038
    (上式中、*は結合位置を表す。)
  2. 前記遅延蛍光材料が、ジシアノベンゼンが1つ以上の9−カルバゾリル基で置換された構造を有する化合物である、請求項に記載の分子配向制御剤。
  3. 請求項1に記載の分子配向制御剤と遅延蛍光材料を含む膜。
  4. 請求項1に記載の分子配向制御剤と遅延蛍光材料を発光層に含む有機発光素子。
  5. 前記遅延蛍光材料を発光材料として前記発光層に含む、請求項に記載の有機発光素子。
  6. 有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項またはに記載の有機発光素子。
  7. 外部量子効率の測定値が、光取出効率を20%と仮定して計算した理論値よりも2.5%以上高い、請求項のいずれか1項に記載の有機発光素子。
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