JP6576851B2 - 半抜き加工試験方法 - Google Patents

半抜き加工試験方法

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Description

本発明は、半抜き加工試験方法に関する。
塑性加工により鋼材を用いて歯車等の部品を製造する場合、鍛造加工後に浸炭処理を行い、歯面等の部品の表面を硬化処理するのが一般的である。浸炭処理により部品がオーステナイト温度域まで加熱されると、塑性加工時に部品の内部組織に蓄積された塑性ひずみエネルギーが解放され、部品の内部組織における結晶粒の粗大化が生じやすくなる。結晶粒の粗大化が生じると、部品の強度が低下し、破壊に至る場合がある。一般に、鋼材の浸炭処理時に発生する結晶粒の粗大化には、鍛造加工中のせん断ひずみの影響が大きいことが明らかにされている(例えば、非特許文献1,2参照)。
ところで、上記のように結晶粒の粗大化傾向を調査するための試験片にせん断ひずみを生じさせる手法として、据え込み加工(例えば、非特許文献1,2参照)やねじり加工(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)が知られている。据え込み加工では、円柱形状やテーパ形状(正面視で等脚台形状)の試験片を用いて、据え込み加工時に発生するせん断ひずみやひずみ分布等を観察する。試験片の形状に差を設けたのは、ひずみ分布を変化させるためである。
一方、ねじり加工では、所定形状のねじり試験片における所定角度のねじり加工時に発生するせん断ひずみやひずみ分布等を観察する。ねじり加工によれば、ねじり角度を大きくすることで変形の程度を大きくすることができ、ねじり加工時に導入されるせん断ひずみ量を据え込み加工の場合に比して大きくすることが可能である。
藤松威史、外3名、「冷間鍛造部品の浸炭におけるオーステナイト結晶粒粗大化機構」、鉄と鋼、2009年、第95巻、No.2、p.161-168 吉村英徳、外5名、「肌焼鋼浸炭時の旧オーステナイト粒異常成長機構の解明」、JFE技報、No.23、2009年3月、p.30-35 特許第5293205号公報
しかし、据え込み加工(テーパ試験片)で得られるせん断ひずみが1.5を僅かに超える程度、ねじり加工で得られるせん断ひずみが2.0を僅かに超える程度に過ぎないのに対し、実際に塑性加工により製造される部品、例えばストレートべベルギヤではその内部に生ずるせん断ひずみが3.0以上にも達する。このため、据え込み加工やねじり加工では、導入できるせん断ひずみが少ないことから、試験片で得られたせん断ひずみに基づいて、例えば浸炭試験による結晶粒粗大化傾向を判定しようとする場合、判定の精度が十分ではないという問題があった。また、上記据え込み加工やねじり加工では、試験片において観察対象となる範囲が広いため、結晶粒の範囲を特定するのが困難であり、ひずみを逐次加えていくような場合には観察範囲を同定しにくいという問題もあった。
本発明は以上のような事情を背景としてなされたものであり、その目的は例えば、鋼材の浸炭処理による結晶粒粗大化傾向を精度よく判定するのに好適な試験片を得るための試験方法を提供することにある。
本発明に係る半抜き加工試験は、ダイス孔径よりも大径の円板状の金属素材からなる試験片を、該ダイス孔の中心線と同軸状にダイスに固定し、その試験片よりも小径のパンチを該試験片の板厚未満のストロークで中心線方向である打ち抜き方向へ打ち抜く半抜き加工を行うことにより、パンチの先端部に対応して形成された止まり穴を有する素材本体と、打ち抜き方向へ突出形成された凸部とが止まり穴の底部周縁近傍にて円環状に繋がった接続部により一体に接続されてなる半抜き加工後の試験片を得ることを特徴とする。
半抜き加工後の試験片を用いて、鋼材の浸炭処理による結晶粒粗大化傾向を判定する場合、所定のオーステナイト温度域まで加熱する疑似浸炭試験後、せん断ひずみの値が3.0以上となる結晶粒を指標とすることが考えられる。
本発明に係る半抜き加工試験では、止まり穴を有する素材本体と凸部とを一体に接続する接続部が、金属素材の半抜き加工時にダイスとパンチにより挟持されて形成される。すなわち、接続部はダイスとパンチで強加工される変形部(強化部)に相当し、この接続部にて相当ひずみに加え、十分な大きさのせん断ひずみを生じさせることができる。したがって、接続部に生じたせん断ひずみを実際の部品に生じるせん断ひずみと対応させた研究を行うことが可能となる。また、半抜き加工後の試験片では、接続部を観察対象とすればよく、従来の場合に比して観察対象となる範囲が狭いため、結晶粒の範囲を特定するのが容易である。
そして、半抜き加工後の試験片を用いて、せん断ひずみの値が3.0以上となる結晶粒を指標として、鋼材の浸炭処理による結晶粒粗大化傾向を判定すれば、鋼材を用いた実際の部品に生じるせん断ひずみとの対応関係が密接したものとなり、その判定精度を高めることが可能である。
(a),(b),(c)はストレートべベルギヤにおけるひずみの観察位置を示す説明図。 図1に示した各ひずみの観察位置でのせん断ひずみ及び相当ひずみの計算値を示す説明図。 (a)は半抜き加工を行うダイセットのモデルを模式的に示す説明図。(b)は(a)による半抜き加工の一例を示す説明図。 解析に際して使用した応力―ひずみ曲線のグラフ。 n値を−0.09としてクリアランス別のせん断ひずみを算出したグラフ。 n値を−0.09としてクリアランス別の相当ひずみを算出したグラフ。 (a)はひずみ速度を0.1(1/s)に設定した場合のSCr420材の等温度・等ひずみ速度曲線のグラフ。(b)はひずみ速度を1(1/s)に設定した場合のSCr420材の等温度・等ひずみ速度曲線のグラフ。(c)はひずみ速度を20(1/s)に設定した場合のSCr420材の等温度・等ひずみ速度曲線のグラフ。 (a)は成形速度を30mm/s、背圧有りとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別のせん断ひずみを算出したグラフ。(b)は成形速度を30mm/s、背圧無しとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別のせん断ひずみを算出したグラフ。 成形速度を30mm/s、背圧有りとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別の相当ひずみを算出したグラフ。 成形速度を30mm/s、背圧有りとしてクリアランス別の材料温度を算出したグラフ。 (a)は成形速度を2mm/s、背圧有りとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別のせん断ひずみを算出したグラフ。(b)は成形速度を2mm/s、背圧無しとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別のせん断ひずみを算出したグラフ。 (a)は成形速度を2mm/s、背圧有りとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別の相当ひずみを算出したグラフ。(b)は成形速度を2mm/s、背圧無しとして熱連成を考慮に入れてクリアランス別の相当ひずみを算出したグラフ。 (a)は成形速度を2mm/s、背圧有りとしてクリアランス別の材料温度を算出したグラフ。(b)は成形速度を2mm/s、背圧無しとしてクリアランス別の材料温度を算出したグラフ。 (a)はストロークを2.8mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときのせん断ひずみ分布を示す説明図。(b)は(a)の拡大図。 (a)はストロークを4.5mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときのせん断ひずみ分布を示す説明図。(b)は(a)の拡大図。 (a)はストロークを2.8mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときの相当ひずみ分布を示す説明図。(b)は(a)の拡大図。 (a)はストロークを4.5mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときの相当ひずみ分布を示す説明図。(b)は(a)の拡大図。 各種疑似浸炭温度に加熱した試験片の結晶粒粗大化の様子をストローク別に示す組織写真。 素材から試験片を切り出す態様の変形例を模式的に示す説明図。
以下、本発明に係る半抜き加工試験方法を自動車部品としての歯車用の鋼材に適用した場合について説明する。
(歯車成形時に生ずるひずみレベル)
最初に、上記歯車の成形時に発生するひずみのレベルについて説明しておく。歯車の1例であるストレートべベルギヤの諸元を表1に示す。このストレートべベルギヤは、例えばSCrを素材として冷間鍛造により成形される。図1(a),(b),(c)に示されるように、歯部において高さの異なる部位S1,S2,S3にて半径方向に輪切りにし内部のひずみを解析した。具体的には、有限要素法ソフトDeformを用いて歯車の変形解析を行い、歯元のせん断ひずみと相当ひずみ(x軸,y軸,z軸の各軸方向のひずみを1軸方向のひずみに換算した値)を算出した。
解析結果を図2に示す。歯車の圧力角を22°30′、全歯丈を8.961とすると、観察位置S1,S2,S3の違いにかかわらず、歯底のR面近傍にてせん断ひずみと相当ひずみの最大値が発生した。そして、せん断ひずみは3.1〜4.7の範囲内にあり、相当ひずみは2.0〜2.8の範囲内にあった。
(半抜き加工)
次に、図3(a)及び表2に基づいて、半抜き加工を実施するためのダイセットのモデルについて説明する。このモデルは、上ダイス11、下ダイス12及びパンチ13を含む、通常の打ち抜きダイセット10を基本の構成としている。試験片2は、下ダイス12の孔径dよりも大径の円板状をなす金属素材であり(表3参照)、ダイス孔12aの中心線Lと同軸状に上下ダイス11,12に固定される。
試験片2には、パンチ13により板厚t未満のストロークで中心線L方向(打ち抜き方向)へ打ち抜く半抜き加工が施される。これにより、図3(b)に示されるような半抜き加工後の試験片20が得られる。半抜き加工後の試験片20は、パンチ13の先端部13aに対応して形成された止まり穴21aを有する素材本体21と、打ち抜き方向へ突出形成された凸部22とが止まり穴21aの底部周縁近傍にて円環状に繋がった接続部23により一体に接続されてなる。接続部23は、ダイス11,12とパンチ13で強加工される変形部(強化部)に相当し、この接続部23にて十分な大きさの相当ひずみとせん断ひずみを生じさせることができる。
次に、試験片2の加工硬化指数値であるn値(以下、単にn値という)を0.1,0.05,0,−0.05,−0.09とした場合の各応力−ひずみ曲線(図4参照)に基づいて、試験片2に半抜き加工を施した(半抜き工程をシミュレーションした)ときのせん断ひずみと相当ひずみの変化を予測した。この場合、計算ソフトとして「Simufact」を用い、(1)2D軸対称での解析とし、(2)加工発熱(熱連成)を考慮しないメカニカルのみを条件とし、(3)荷重条件として油圧プレスのパンチ速度を2.5mm/sに設定し、(4)摩擦条件としてパンチ13と試験片2間のせん断摩擦係数を0.1に設定した。また、半抜き時に打ち抜かれる試験片2の打ち抜き方向とは反対側から背圧をかけて押し込み、試験片20の凸部22に曲げがかからないモデルを想定した。
上記予測シミュレーションの結果、n値の絶対値が大きいほどせん断ひずみの増加割合が大きく、より効果的にひずみを集中させることが可能であることから、n値を−0.09とする応力−ひずみ曲線に基づいて、試験片2に半抜き加工を施したときのクリアランス別のせん断ひずみとストロークの関係、相当ひずみとストロークの関係を求めた。
せん断ひずみとストロークの関係を図5に示す。せん断ひずみは、1mmを超えたストローク(押し込み深さに相当)の初期である程度飽和に達し、その後2mmのストロークを超えると急激に大きくなる傾向を示す。また、せん断ひずみは、負のクリアランスの絶対値が増加するに従い大きく増加する傾向を示すことも分かる。
相当ひずみとストロークの関係を図6に示す。相当ひずみは、ストロークの増加に伴い増加する傾向を示し、その値は10以上に達する。この場合、相当ひずみは、クリアランス0が一番大きくなり、負のクリアランスの絶対値が増加すると減少する傾向を示すことも分かる。図5及び図6の解析結果から、本実施例の半抜き加工は、せん断ひずみを強調できる試験方法であると認識することができる。
次に、図7に示す実用鋼としての例えばSCr420材の応力−ひずみ曲線に基づいて、加工発熱(熱連成)を考慮に入れつつ、成形速度をそれぞれ30mm/s,2mm/sに設定して試験片2に半抜き加工を施した(半抜き工程をシミュレーションした)場合のせん断ひずみと相当ひずみの変化を算出した。なお、図7(a),(b),(c)は、それぞれひずみ速度(1/s)を0.1,1,20とした場合の等温度・等ひずみ速度曲線を示し、ひずみ速度が大きくなるほど変形抵抗が大きくなり、また内部の温度が高くなるほど変形抵抗が小さくなるという、応力、ひずみ及び加工中の材料温度相互の関係を示すものである。
成形速度を30mm/sに設定した場合の、せん断ひずみとストロークの関係を図8に示す。図8(a)は試験片2の打ち抜き方向とは反対側から背圧をかけた背圧有りの場合であり、図8(b)はそのような背圧をかけない背圧無しの場合である。図8(a),8(b)から明らかなように、せん断ひずみは負のクリアランスの絶対値が増加するに従い大きく増加する傾向を示す。すなわち、クリアランスが負の場合はストロークに応じて(1.5mm以上)せん断ひずみを3.0以上に制御することができ、実際の部品に適合した試験片20を作成することができる。一方、クリアランスが0又は正であっても、ストロークが小さければ(1〜1.5mm)せん断ひずみは2.0を上回るため、従来の試験片(せん断ひずみが1〜1.5程度)と比較して、実際の部品に近い試験片20とすることができる。なお、クリアランスが負の場合、背圧有りの場合ではストロークが増加するに従い、せん断ひずみが増加する傾向を示すのに対し、背圧無しの場合ではストロークが2mmを超えると、せん断ひずみが所定値に収束する傾向を示す。
成形速度を30mm/sに設定し、かつ背圧有りとした場合の、相当ひずみとストロークの関係を図9に示し、せん断帯の材料温度とストロークの関係を図10に示す。相当ひずみは、ストロークの増加に従い比例的に増加し、クリアランス間の差異は少ないことが分かる。また、せん断帯の材料温度は、負のクリアランスの絶対値が増加するに従い上昇し、250℃ほどに達する。
成形速度を2mm/sに設定した場合の、せん断ひずみとストロークの関係を図11に示し、相当ひずみとストロークの関係を図12に示し、せん断帯の材料温度とストロークの関係を図13に示す。図11(a)、図12(a)及び図13(a)は背圧有りの場合であり、図11(b)、図12(b)及び図13(b)は背圧無しの場合である。図8(a)と図11(a)、図8(b)と図11(b)、図9と図12(a)、図10と図13(a)はそれぞれ対応関係にあり、両者の傾向は成形速度が大きく変化しても、それほど大きくは変わらないことが分かる。また、図12(b)に示されるように、背圧無しの場合、相当ひずみはストロークの増加に従い所定値に収束する傾向を示す。また、図13(b)に示されるように、背圧無しの場合、せん断帯の材料温度は、負のクリアランスの絶対値が増加するに従い上昇し、最大で100℃ほどに達することが分かる。
図8〜図13の解析結果から明らかなように、鋼材が加工硬化材料であっても、加工軟化現象(負のn値)を利用してせん断帯に加工発熱を集中させることにより、実際の鍛造加工のプロセスにより適合したものとすることができる。
図14及び図15は、ストロークをそれぞれ2.8mm,4.5mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときのせん断ひずみ分布を示し、図16及び図17は、ストロークをそれぞれ2.8mm,4.5mmに設定して半抜き加工(背圧有り)したときの相当ひずみ分布を示す。図14〜図17の各図において、(b)は(a)における円で囲んだ領域の拡大図である。相当ひずみはパンチで押し込まれる側に生ずるが、せん断ひずみはせん断帯の界面に生じており、せん断帯には加工軟化によってせん断ひずみが集中(せん断ひずみの値が3.0以上)していることが分かる。後述するように、実際に結晶粒の粗大化が発生する位置は、接続部23におけるせん断帯の位置とほぼ一致している。
(半抜き加工試験)
表3に示す鋼種からなるφ60mm×200mmの熱間圧延素材からφ40mm×6mmの試験片2を切り出し、以下の試験条件で半抜き加工試験を行った。半抜き加工試験では、打ち抜きダイセットを500トンのサーボ油圧プレスに装着して用いた。
(1)ストローク:2.8mm,4.5mm
(2)クリアランス:−8.3%
(3)成形速度:30mm/s
(4)潤滑条件:摩擦係数0.05のテフロン(登録商標)シート使用
半抜き加工後の試験片20に対しては、疑似浸炭熱処理前に以下の焼準処理、球状化焼鈍処理をこの順に行った。
(1)焼準処理:950℃で2時間保持後、炉冷。
(2)球状化焼鈍処理:760℃で2時間保持後、650℃まで15℃/hで冷却し、その後空冷。
(疑似浸炭試験)
上記(1),(2)の熱処理後、真空炉にて850℃,900℃,925℃,950℃,975℃の各温度で2時間保持後、油焼入処理を行い、結晶粒を観察した。具体的には、各試験片20を中心線L方向に切断して研磨し、接続部23の界面を結晶粒現出液腐食にて腐食後、光学顕微鏡にて組織を観察した。
結果を図18に示す。ストローク2.8mm,4.5mmの何れにおいても、せん断ひずみの値が3.0以上の部位から結晶粒の粗大化が発生し、疑似浸炭温度の上昇に伴い結晶粒粗大化の範囲が表面から内部へと増大している。また、ストローク4.5mmの試験片20の方が、ストローク2.8mmの試験片20に比べて、疑似浸炭熱処理の温度が低い温度域(925℃)で結晶粒粗大化が発生していることが分かる。
以上の説明からも明らかなように、本実施例の半抜き加工試験では、止まり穴21aを有する素材本体21と凸部22とを一体に接続する接続部23が、試験片2の半抜き加工時にダイス11,12とパンチ13により挟持されて形成される。すなわち、接続部23はダイス11,12とパンチ13で強加工される変形部に相当し、この接続部23には相当ひずみに加え、十分な大きさのせん断ひずみが発生している。したがって、接続部23に生じたせん断ひずみを、実際の部品に生じるせん断ひずみと対応させた研究を行うことができる。
また、半抜き加工後の試験片20では、接続部23のせん断帯を観察対象とすればよく、従来の場合に比して観察対象となる範囲が狭いため、結晶粒の範囲を特定するのが容易である。なお、接続部23は円環状に形成されており、円環上の何れの部位においてもせん断ひずみの分布状況はほぼ同じと考えられるため、観察部位(サンプル部位)が豊富であり、複数の個所からサンプルを抽出することが可能である。
また、上記実施例では、ダイス11,12とパンチ13間のクリアランスが負に設定されている。また、試験片2に対して打ち抜き方向とは反対側ら背圧が付与されている。これにより、凸部22の曲げ変形が抑制されるので、その抑制度合に応じてせん断ひずみをより効果的に増加させることができる。
また、上記実施例では、金属素材として鋼材を使用し、半抜き加工後の試験片のせん断帯に生じるせん断ひずみの最大値が3.0以上に設定されている。これにより、接続部23に生じたせん断ひずみを、鋼材を用いた部品に生ずるせん断ひずみと対応させた研究を行うことができる。
また、本実施例の鋼材の浸炭処理による結晶粒粗大化傾向の判定方法では、半抜き加工後の試験片20を用いて、せん断ひずみの値が3.0以上となる接続部23の部位を指標として、鋼材の浸炭処理による結晶粒粗大化傾向が判定される。したがって、鋼材を用いた部品に生ずるせん断ひずみとの対応関係が密接したものとなり、その判定精度を高めることができる。ひいては、半抜き加工後の試験片におけるせん断ひずみの大きさを制御し、かつせん断ひずみを選択的に抽出することにより、結晶粒粗大化傾向の確認を定量的に予測することができる。
その他、本発明は上記実施例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、φ60mm×200mmの熱間圧延素材からφ40mm×6mmの試験片2を切り出す場合について説明したが、試験片2を切り出す態様はこれに限らず、例えば図19に示すように、素材200において観察対象としたい部位201が試験片20の接続部23と対応するように試験片2を切り出すようにしてもよい。この変形例によれば、素材中の金属元素の分布を事前に調べておけば、所定の金属元素が結晶粒の粗大化に及ぼす影響を直接的に反映させた解析結果を得ることが可能である。
2 試験片
10 ダイセット
11 上ダイス(ダイス)
12 下ダイス(ダイス)
12a ダイス孔
13 パンチ
13a 先端部
20 半抜き加工後の試験片
21 素材本体
21a 止まり穴
22 凸部
23 接続部

Claims (4)

  1. ダイス孔径よりも大径の円板状の金属素材からなる試験片を、該ダイス孔の中心線と同軸状にダイスに固定し、その試験片よりも小径のパンチを該試験片の板厚未満のストロークで前記中心線方向である打ち抜き方向へ打ち抜く半抜き加工を行うことにより、前記パンチの先端部に対応して形成された止まり穴を有する素材本体と、前記打ち抜き方向へ突出形成された凸部とが前記止まり穴の底部周縁近傍にて円環状に繋がった接続部により一体に接続されてなる半抜き加工後の試験片を得ることを特徴とする半抜き加工試験方法。
  2. 前記ダイスと前記パンチ間のクリアランスが負に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の半抜き加工試験方法。
  3. 前記試験片に対して前記打ち抜き方向とは反対側から背圧が付与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半抜き加工試験方法。
  4. 前記金属素材として鋼材を使用し、前記半抜き加工後の試験片の前記接続部に生ずるせん断ひずみの最大値が3.0以上に設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半抜き加工試験方法。
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