JP6573992B2 - 6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液 - Google Patents

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Description

本発明は、6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液に関する。詳細には、本発明は、クロムなめしをした革について、革に含有される3価クロムが6価に変化しないよう6価クロム還元化合物で処理されているかを検出するための検査液に関する。
革製品は時計用バンドやハンドバックなどさまざまな製品に使用されている。特に時計バンドやハンドバックは革の外観が商品価値を高め、消費者の満足度を高めている。また、このような商品では、革は直接肌に触れる構造をしており、革が肌に触れる感触が製品の付加価値を更に高めていることはいうまでもない。
このような革製品を製造するには、革の大きなシートをはじめに製造することが必要である。革を製造するには、ワニや牛など革製品に使用したい動物の皮を得る。このままでは耐久性に劣り使用できないので、これになめし処理を施す。この処理により耐熱性や耐久性が付与され、皮から革が製造される。こうして得られた革について、好みの色に着色したり、表面の形を整えたりして革のシートを得る。これを用いて革製品にするには、使用する形状に切り、芯材等に接着剤を使用して貼り付けるなどして加工する。このような革製品の製造は古来行われている手法で広く一般に知られている。
なめしは、皮を処理して耐久性のある革を得る方法で、植物から採取されるタンニンが用いられた時代もあったが、この処理では耐熱性、柔軟性、弾力性が不十分である。このため最近では、クロムなめし剤(塩基性硫酸クロム)を用いる耐熱性、柔軟性、弾力性が高いクロムなめしが主流となっている。クロムなめし法は、世界的比率が90%を超え、最大の経済的重要性を有する。水和クロム錯体がコラーゲンペプチド骨格のグルタミン酸およびアスパラギン酸のカルボキシル基の間に埋め込まれることにより、耐久性があり柔らかい皮革が得られる。クロムなめしの方法は公知で幅広く知られており、たとえば、非特許文献1に解説がされている。
耐熱性、柔軟性、弾力性に優れる高品質な皮革または革製品は、通常、クロムなめしを行うことにより得られる。クロムなめしを行うためのクロムなめし剤の中にはクロムを含有しており、これを用いてなめし処理を施した皮革または革製品中には結果として、多量のクロムが残留する。
クロムなめし剤のクロムは3価であるが、皮革または革製品の製造工程で加熱や接着などにより6価に酸化されることがある。また、クロムなめし剤に不純物として混入している6価クロムが、皮革または革製品に混入することもある。このような皮革または革製品の製造工程から含まれる6価クロムの他に、皮革または革製品中の3価クロムが、たとえば、光、熱、高温多湿などにより酸化されて生成する6価クロムも存在する。なお、6価クロムの存在は測定試験により確認できる。3価のクロムは無害であるが、6価のクロムは有害であり、皮膚や粘膜に接触すると、肌荒れやアレルギーなどを発症させ、重度であると皮膚炎や腫瘍の原因となり得る。このように人体に対する影響が大きい。また、6価クロムは少量であっても、発がん性、変異原性、生殖毒性の全ての有害性リスクを持っているとされ、その毒性から使用禁止物質としても扱われている。
そこで、皮革または革製品における6価クロムのEU規制が、欧州連合官報に規則(EU)番号3014/2014(Regulations(EU)、No 3014/2014)として2014年3月26日に公表された。該Regulationsによると、2015年5月1日より、革製品および肌に接触する部分に革が含まれる製品について、人体への影響(特に皮膚への刺激性)を考慮して、革および革部分の全乾燥重量中に、3mg/kg(3ppm)以上の酸化クロム(VI)を含む革製品が、規制されることになった。なお、該Regulationsには、皮革または革製品中の6価クロムの定量法として、EN ISO 17075標準法が現在利用できる国際的な唯一の分析法と記載されている(Regulationsの(6))。
これに対して、特許文献1の実施例2には、なめし処理された皮革に、アスコルビン酸の水溶液を滴下して、該皮革に含まれる6価クロムを無害化したことが記載されている。
特開2008−231388号公報
特定非営利活動法人 日本皮革技術協会、"皮革の知識"、[online]、[平成27年12月14日検索]、インターネット<URL:http://www.hikaku-kyo.org/htdoc/hikakunochisiki-04.htm>
ところで、アスコルビン酸など6価クロム還元化合物によって革を処理したかどうかは、処理前後において革の風合い、手触り、色が変化せず、外観からは判らないことが多い。このため、工業的に革製品を製造する工程において、上記処理が行われたかや処理漏れがないかを判定する手段がないという問題が生じている。また、6価クロム還元化合物による処理済みの革を購入した際に、簡便に確認するための受入検査の手段がないという問題が生じている。
そこで、本発明の目的は、革が、6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液および検査方法を提供することにある。いいかえると、クロムなめし後の革に含有される3価クロムが6価に変化した際に3価に還元されるよう処理が行われているかを簡便に検出するための6価クロム還元性検査液および検査方法を提供することにある。
本発明の検査液は、革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含むことを特徴とする。
本発明の検査液および検査方法によれば、革が、6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査できる。すなわち、EU基準に合致した革であるかを判定できる。このため、本発明の検査液および検査方法によれば、工業的に革製品を製造する工程において、上記処理が行われたかや処理漏れがないかを簡便に判定できる。また、6価クロム還元化合物による処理済みの革を購入した際に、簡便に受入検査ができる。
<検査液>
本発明の検査液は、革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含む。
<検査対象となる革>
本発明の検査液による検査対象となる革としては、特に限定されず、牛皮、羊皮、やぎ皮、豚皮、馬皮、シカ皮、カンガルー皮、ダチョウ皮、ワニ皮、トカゲ皮、ヘビ皮、トリ皮、魚の皮などに対して、クロムなめし工程を施して得られた革が挙げられる。また、クロムなめし工程に続いて、漉き工程、シェービング工程、再なめし工程、染色工程、加脂工程、仕上げ工程などを経た革であってもよい。
さらに、本発明の検査液による検査対象となる革は、上記革の加工品(革製品)であってもよく、加工品としては、たとえば、靴、衣料、帽子、手袋、ベルト、財布、名刺入れ、時計バンド、かばん、ソファー、クッションカバー、ブックカバー、筆入れ、携帯電話ケース、システム手帳、キーケース、自動車内装、眼鏡ケース、工具入れが挙げられる。
なお、革製品は、購入した革のシートを必要とする形に切り取り、これに芯材や革同士を接着剤や縫うなどして貼りあわせて得られる。たとえば、時計バンドの場合は、芯となる材料の周り、すなわち表面と裏面とに、バンドの形状に切り取った革を、接着剤で貼り合わせ、加熱して得られる。また、製品によっては周囲を縫うなどして質感を出して完成させる。
<6価クロム還元化合物による革の処理>
次に、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物による革の処理について説明する。
[6価クロム還元化合物]
6価クロム還元化合物は、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る化合物であって、本発明の検査液に含まれる鉄含有化合物中の鉄イオンと反応して発色させられる部位(たとえばヒドロキシ基)を有する。なお、後述するように、この発色がみられる場合を6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定する。
このような6価クロム還元化合物として、特許文献1に記載されたアスコルビン酸の他、本発明者が提案した化合物(国際出願PCT/JP2015/71509(国際出願日:平成27年7月29日))が挙げられる。以下に、本発明者が提案した6価クロム還元化合物について説明する。
上記6価クロム還元化合物は、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る化合物であり、たとえば、少なくとも、6価クロムと作用して3価に還元性を有する(3価に還元する性能を有する)C原子、O原子、H原子とからなり、3つの炭素間に1重結合と、2重結合を有し、中心の炭素に水酸基を有する下記式(1)に示される有機化合物(A)が挙げられる。式(1)に示される構造は、6価クロムと作用して3価に還元性を有する。
Figure 0006573992
式(1)中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、C、H、Oで構成される置換基(C、Hおよび必要に応じてOで構成される置換基)で、不飽和結合のカルボニル基を含むことが好ましいが、アルデヒド基、カルボキシル基といった反応性の官能基は有しない。また、アミン基、イソシアネート基などの窒素含有基、硫酸基などの硫黄含有基などの官能基も有しないことが好ましい。R1またはR2と、R3、R4またはR5のいずれかとは、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(1)に示される構造を有する化合物は、環式炭化水素であってもよく、さらに単環または縮合環で構成される芳香族炭化水素であってもよい。なお、芳香族炭化水素である場合、π結合は実際は式(1)の炭素1、炭素2の間の二重結合の部分にとどまらず、非局在化している。また、環式炭化水素または芳香族炭化水素は、置換基を有していてもよい。
該有機化合物(A)は、式(1)に示される構造およびヒドロキシル基を有し、かつ、その構造中に、アルデヒド基およびカルボキシル基といった反応性の官能基を有しないことが好ましい。
また、該6価クロム還元化合物として、該有機化合物(A)に加えて、6価クロムと作用して3価に還元性を有する式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない有機化合物(B)を含むことが好ましい。また、アミン基、イソシアネート基などの窒素含有基、硫酸基などの硫黄含有基などの官能基も有しないことが好ましい。
有機化合物(A)または(B)としては、たとえば、下記化合物(式(2)〜(14))およびその誘導体が挙げられる。本発明では、これらの混合物を用いることも好ましい。
Figure 0006573992
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なお、上記式(2)〜(12)、(14)における炭素2が、たとえば上記式(1)の炭素2に対応している。
6価クロム還元化合物は、有害な6価クロムに作用して、無害な化合物に化学変化をさせる有機化合物である。この化合物はたとえば6価のクロムを還元して3価のクロムとして無害化ができる。
一般に還元剤は、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、水素化ジブチルアルミニウム、シュウ酸、ギ酸などが知られている。これらの代表的還元剤を用いた場合、種々の問題がある。
水素化アルミニウムリチウムを用いた場合、薬剤は粉末状の強い還元剤であるが、水と激しく反応し水素を発生するため引火性を伴い危険である。革または革製品は、通常、皮膚(汗)に触れることや、雨などに晒されることが多いため、このような引火性物質は使用に耐えない。
水素化ホウ素ナトリウムを用いた場合、薬剤はやや吸湿性があり水分により分解しやすいので、密栓して保存しなければならない。汗や雨等の水分により生成した水溶液は、薬剤が分解生成物のため、強い塩基性を示す。そのため、皮膚(肌)や粘膜などに悪影響する。酸性および中性条件で分解して水素を発生するため、アルカリ溶液中で保存しなければならないため、革または革製品中に含有させることができない。水で分解し水素を発生するため、取り扱いも困難である。
ヒドラジンは、アンモニアに似た刺激臭を持つ無色の液体であり、空気に触れると白煙を生じるので使用に耐えない。水に易溶で、強い還元性を持ち、分解しやすく引火性があるので取り扱いも困難である。
水素化ジブチルアルミニウムを用いた場合、薬剤は無色液体だが、湿気に弱いため、不活性ガス雰囲気下で保存・使用することになるので一般の大気中で活用することは困難である。
シュウ酸を用いた場合には、薬剤は体内で血液中のカルシウムイオンと強く結合するため毒性があり、毒物および劇物取締法により医薬用外劇物に指定されている。このような毒物を革または革製品に使用することは目的に合わず使用に耐えない。
ギ酸を用いた場合には、液体のギ酸溶液や蒸気は皮膚や目に対して有害であり、特に目に対して回復不能な障害を与えてしまう場合もある。また、吸入すると肺水腫などの障害を与えることがあるため使用には耐えない。この他、慢性的な曝露により肝臓や腎臓に悪影響を及ぼすと考えられていること、アレルギー源としての可能性も考えられていることから本発明の目的に合わず使用に耐えない。
このようなことから本出願人は、革または革製品に使用できる6価クロム還元化合物を種々鋭意調査実験し、目的に見合った化合物を見出した。
6価クロム還元化合物として含まれる有機化合物(A)および(B)は、6価クロムの処理機能がありこれを無害化する基本性能はもとより、これで処理した革または革製品が皮膚に触れた状態で、肌荒れ等の影響を及ぼさないことと、有毒性を有しないものである。また、(A)および(B)は、それぞれの還元性によっても互いに分解を引き起こさず、また、反応せず互いに干渉し得ない化合物であることが、好ましい。該有機化合物としては、上記化学式(1)に示される基本骨格を有する化合物が好ましく、C、H、Oの原子からなる安定なものが好ましい。
上記化学式(1)に示される構造を有する該有機化合物には、アルデヒド基、カルボキシル基といった官能基を有しない。また、アミン基、イソシアネート基などの窒素含有基、硫酸基などの硫黄含有基などの官能基も有しないことが好ましい。このような官能基は反応性があるので革または革製品を使用中に予期しない反応をする恐れがあるため、6価クロム還元化合物には適さない。該有機化合物は、6価クロムに作用して6価として検出されない化合物を生成し、6価クロムを無害化することができる。
(有機化合物(A))
有機化合物(A)は、上記化学式(1)に示される構造およびたとえば下記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有する。該官能基を有することで、革または革製品中において、即効性もあり、長く安定して滞留し、長期にわたり還元作用を有し、耐熱性に優れる。それゆえ、長期にわたり、6価クロムの生成が抑制される。また、革または革製品に含まれることで、汗や雨などの水分によっても分解されにくい。このような優れた効果を有する理由については定かではないが、なめしによって、通常、皮の主成分であるコラーゲンは化学的に架橋され安定化されている。有機化合物(A)が有するヒドロキシフェニル基が、特に、該コラーゲンとの相互作用が高いため長く保持される一方で、該コラーゲンに完全に取り込まれず、海島構造の島部分のようになり、還元性を有するほどの自由度をもって取り込まれているためと推測している。有機化合物(A)としては、革または革製品に用いるため、安全性が高く、環境への負荷が少ない化合物が好ましい。
Figure 0006573992
化学式(15)中、Raは、一価の基または二価の基である。一価の基としては、水素原子、炭化水素基または酸素含有基が挙げられる。二価の基としては、二価の炭化水素基または二価の酸素含有基が挙げられる。この中でも、水素原子、一価の炭化水素基、二価の炭化水素基またはヒドロキシル基であることが、革または革製品中に対してより相溶性を得ることができるため、好ましい。Raは、それぞれ独立であり、互いに同一でも異なっていてもよいが、Raは、隣接する基が互いに結合して芳香環や脂肪族環を形成していてもよい。また、Raが、他のヒドロキシフェニル基のRaと結合していてもよい。Raの全てが同時に水素原子ではないことが好ましく、革または革製品中にて、より即効性があり、安定して長期にわたってより良好な還元性を示すことから、化学式(15)で表される基は、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基がより好ましく、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基がより好ましい。
炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、具体的には、炭素数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール(aryl)基あるいは置換アリール(aryl)基などが挙げられる。たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル(allyl)基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−ジプロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンジル基、クミル基を挙げることができ、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基などの酸素含有基を含むものも炭化水素基(たとえば、アルコキシル基)として挙げられる。また、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、(5−ノルボルネン−2−イル)エステルなどの不飽和カルボン酸エステル類(該不飽和カルボン酸がジカルボン酸である場合にはモノエステルであってもジエステルであってもよい)を含むものも炭化水素基として挙げられる。
酸素含有基としては、ヒドロキシル基が挙げられる。
有機化合物(A)としては、たとえば、上記化学式(2)〜(12)および(14)、
フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、
1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、
1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン等のテトラヒドロキシナフタレン、
3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、9−ヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシピレン、1−ヒドロキシフェナントレン、9−ヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールフルオレン、フェノールフタレイン、
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、
カテコール系タンニン、ピロガロール系タンニン、五倍子タンニン、没食子酸タンニン、フロロタンニンなどのタンニン類、
アントシアニン、ルチン、クエルセチン、フィセチン、ダイゼイン、ヘスペレチン、ヘスピリジン、クリシン、フラボノールなどのフラボノイド類、
カテキン、ガロカテキン、カテキンガラート、エピカテキン、エピカロカテキン、エピカテキンガレート、エピカロカテキンガレート、プロシアニジン、テアフラビンなどのカテキン類、
クルクミン、リグナン、
ロドデンドロール[4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール]、
アセチルロドデンドロール、ヘキサノイルロドデンドロール、オクタノイルロドデンドロール、ドデカノイルロドデンドロール、テトラデカノイルロドデンドロール、ヘキサデカノイルロドデンドロール、オクタデカノイルロドデンドロール、4−(3−アセトキシブチル)フェニルアセテート、4−(3−プロパノイルオキシブチル)フェニルプロパノエート、4−(3−オクタノイルオキシブチル)フェニルオクタノエート、4−(3−パルミトイルオキシブチル)フェニルパルミテート等のアシル化ロドデンドロール、
4−(3−メトキシブチル)フェノール、4−(3−エトキシブチル)フェノール、4−(3−オクチルオキシブチル)フェノール等のロドデンドロールアルキルエーテル体、
ロドデンドロール−D−グルコシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−ガラクトシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−キシロシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−マルトシド(αまたはβ体)等のロドデンドロール配糖体等、
αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロールなどを挙げることができる。
また、これらの誘導体、たとえば、アルコキシル基を有する化合物、エステル化物なども挙げられる。具体的には、たとえば、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジエチルエーテル、5−プロピルピロガロール−1−メチルエーテルなどが挙げられる。
有機化合物(A)としては、たとえば、上記化学式(2)に示した構造(1,2,3−Trihydroxybenzene骨格)の化合物やその誘導体が有る。このような化合物は6価クロムの除去機能を有する。
この誘導体としては上記化学式(2)に示した化合物の4,5,6位に、炭化水素基または酸素含有基などの置換基を有するものがある。好ましい置換基としては、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基および炭素数1〜20のエステル化物、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基および炭素数1〜10のエステル化物が挙げられる。これらの基については、上記に記載の通りである。なお、後述の化合物の誘導体についても同様である。たとえば、上記化学式(3)に示した化合物などの没食子酸のエステルや、上記化学式(2)の構造を1分子中に複数有する上記化学式(4)に示した化合物や該化合物の誘導体などがある。カテコール系タンニン、ピロガロール系タンニン、五倍子タンニン、没食子酸タンニン、フロロタンニンなどのタンニン類などが挙げられる。
このように、4,5,6位に導入する置換基は、それぞれの使用法にあった置換基を導入することができる。たとえば、エステル系の溶媒に溶かして使用する場合にはエステル基を導入し相溶性を高めることもできる。
本発明において、上記有機化合物(A)として、(i)没食子酸のエステルと、(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含むことが好ましく、(i)没食子酸のエステルと、(ii)タンニン酸を含むことがより好ましい。
没食子酸のエステルは、分子量が比較的小さいため、革または革製品からブリードし易いと考えられるが、タンニン酸の部分構造を有するため、還元力を維持しながら、タンニン酸およびその誘導体と好適に相互作用し、ブリードし難くなる。革または革製品中においても還元力があり、即効性が高い。還元力はアスコルビン酸ほどではないが、タンニン酸より還元力が高いため、アスコルビン酸が分解し還元力を喪失した後においても、長期にわたり還元力を発揮する(のちに6価へ酸化されたクロムイオンを再度還元することができる)。没食子酸のエステルは、革または革製品中において、汗や雨などの水分に対しても強く、分解されにくい。
タンニン酸およびその誘導体は、嵩高く、そもそもなめし処理に用いられるように、革または革製品中のコラーゲンなどに対して親和性がよいためブリードし難く、革および革製品中において長期にわたり還元力を維持できる。それゆえ、より長期にわたり、6価クロムの生成を抑制することができる。また、タンニン酸およびその誘導体は、ヒト(皮膚)に対して、低刺激性であるため、安全性が高い。還元力は、アスコルビン酸および没食子酸のエステルに比べて遅効性であるが、革および革製品と親和性が良く、分解されにくいため、アスコルビン酸および没食子酸のエステルに比べて、革製品がその効用および目的を達するまで還元力を維持することができる。
それゆえ、これらの化合物を含むと、革または革製品への浸透性が高く、長く革または革製品中に滞留でき、長期にわたり安定して還元することができる。さらに、ポリフェノール類は、還元性が強いため、褐変や色落ちが懸念されるが、これらの化合物は、色落ちの前に、革または革製品中に取り込まれるため、退色や変色し難く、革または革製品の色味や風合いを損なうおそれが少ないため、好ましい。
また、上記化学式(2)では、1位、2位、3位に水酸基を有しているが、同様に1位、2位、4位に水酸基が導入された骨格(上記化学式(5))、1位、3位、5位に水酸基が導入された骨格(上記化学式(6))の化合物についても同様の効果がある。また、誘導体についても同様の効果がある。
また、上記化学式(2)では1つの芳香族環に3つの水酸基が導入されているが、1つの水酸基を有する化合物または2つの水酸基を有する化合物についても同様に6価クロム除去機能を有する。この様な骨格としてはたとえば、フェノール、BHT、上記化学式(7)、上記化学式(8)、上記化学式(9)の化合物およびその誘導体がある。
芳香族環を複数結合した化合物に水酸基を有する化合物も同様の効果を有している。ナフタレン環に1つまたは、複数の水酸基を有するものなどが挙げられる。たとえば2つの水酸基を有する化合物としては上記化学式(10)、上記化学式(11)に示すものがある。この様な化合物の誘導体についても前述した化合物同様に6価クロム除去機能がある。
芳香族環が3つ連なったアントラセンに対して、水酸基を1つないし複数個任意の位置に導入した化合物についても同様の機能を示す。この様な化合物としては、たとえば上記化学式(12)に示す化合物がある。また、これらの誘導体についても同様に6価クロム除去機能を有している。
上記化学式(1)に示される化合物としては、たとえば、長鎖アルキル基と複合環を有する化合物がある。この様な化合物は、有機性が高くなり水溶性が低下する。しかし、一方で有機溶剤との親和性が高くなるので、炭化水素系の溶媒にも溶解できる利点がある。該化合物としては、たとえば、上記化学式(14)に示す化合物がある。
上記化学式(1)に示される化合物としては、カテキン、ガロカテキン、カテキンガラート、エピカテキン、エピカロカテキン、エピカテキンガレート、エピカロカテキンガレート、プロシアニジン、テアフラビンなどのカテキン類、およびカテキン類の誘導体であることも好ましい。これらのカテキン類は、安全性に優れ、革または革製品中においても還元力が高い。
(有機化合物(B))
有機化合物(B)は、上記化学式(1)に示される構造を有するが、たとえば上記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有さない。該ヒドロキシフェニル基を含まないことで、革または革製品中に浸透し難くなるが、化学式(1)に示される構造を有するので、革または革製品の表面にある6価クロムを3価クロムに好適に還元させ、無毒化させることができる。そのため、該化合物(B)を用いることで、汗や雨などの水分に溶解した6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を即効性良く抑制できる。該有機化合物(B)としては、たとえば、ヘテロ環を有する化合物がある。ヘテロ環としてはフラン、クロメン、イソクロメン、キサンテンなどがある。この様な誘導体としては、たとえば上記化学式(13)に示した構造の化合物やその誘導体、エリソルビン酸やその誘導体、4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンが有る。このような化合物は6価クロムの除去機能を有する。
アスコルビン酸の誘導体としては、特に限定されないが、たとえば、アスコルビン酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド(2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸)、アスコルビン酸グルコサミン、デヒドロアスコルビン酸等を挙げることができる。
エリソルビン酸の誘導体としては、エリソルビン酸エステル等を挙げることができる。
本発明において、上記有機化合物(B)が、アスコルビン酸およびエリソルビン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、アスコルビン酸であることがより好ましい。該化合物は、分解し易いため長期にわたり効果を実現できず、革または革製品からブリードし易いが、ヒト(皮膚)に対して低刺激性であり安全性に優れ、還元力も高く、即効性も高い。そのため、該化合物(B)を含む処理剤を革または革製品に接触させることで、6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を効果的かつ未然に防ぐことができる。また、特に表面を迅速に無毒化処理できるため、肌荒れやアレルギーなどの発症を好適に抑制することができる。該化合物(B)は、有機化合物(A)とも反応せず相溶しなく、該化合物(A)によって分解されないので、該処理液に好適に混合することができる。また、還元力が強いため、該化合物を含むことで、有機化合物(A)による褐色化や色落ちを防止できる。さらに分解性が高いため、色つきがし難く、革または革製品の色味や風合いを損なうことがないため、好ましい。
このように、上記化学式(1)に示される基本骨格を分子中に含む化合物であれば6価クロムを無害化し除去することができる。
(6価クロム還元化合物の好ましい態様)
6価クロム還元化合物として、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)と、タンニン(A−ii)とを組み合わせて用いることがより好ましい。
化合物(A−i)は下記式(A−i)で表される。
Figure 0006573992
式中、nは、0、1または2を表す。すなわち、化合物(A−i)は、ベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン構造を有する。
11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または下記式(a−i)で表される基を表す。ここで、R19は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Figure 0006573992
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
nが0のとき、R11〜R14、R16およびR17のうち少なくとも1個はヒドロキシ基である。R11〜R14、R16およびR17のうち、2個がヒドロキシ基である場合および3個がヒドロキシ基である場合は、6価クロムを還元する能力が高くなるため好ましい。
nが1または2のとき、R11〜R18のうち少なくとも1個はヒドロキシ基である。nが1または2のとき、R11〜R18のうち、2個がヒドロキシ基である場合および3個がヒドロキシ基である場合は、6価クロムを還元する能力が高くなるため好ましい。
なお、nが2のとき、複数あるR15は、同一であっても異なっていてもよく、R18についても同様である。
16とR17とは相互に一体となって5員環または6員環を形成していてもよく、該環を構成する原子としては炭素原子の他に酸素原子が含まれていてもよい。また、該環は置換基として炭素数1〜16のアルキル基を有していてもよい。炭素数1〜16のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
化合物(A−i)としては、具体的には、上述した式(2)、(3)、(5)〜(12)、(14)で表される化合物や、上述した例示化合物が挙げられる。化合物(A−i)は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
タンニン(A−ii)は、加水分解性タンニンであっても、縮合型タンニンであってもよい。加水分解性タンニンとしては、タンニン酸(上記式(4)で表される化合物)等のガロタンニン、エラジタンニンなどが挙げられる。後述する処理剤を調製する観点からは、加水分解性タンニンが好適に用いられる。タンニン(A−ii)は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、化合物(A−i)、タンニン(A−ii)において、ヒドロキシ基が結合している炭素が、たとえば上記式(1)の炭素2に対応している。
6価クロム還元化合物として、化合物(A−i)、タンニン(A−ii)とともに、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
Figure 0006573992
式中、Xは、下記式(b−i)〜(b−iii)で表される基のいずれかを表す。ここで、оは、0〜3の整数を表し、pは、1〜3の整数を表し、qは、1〜17の整数を表す。
Figure 0006573992
化合物(B−i)および化合物(B−ii)としては、具体的には、上述した式(13)で表される化合物や、上述した例示化合物が挙げられる。化合物(B−i)および化合物(B−ii)はそれぞれ単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、化合物(B−i)および化合物(B−ii)を組み合わせて用いてもよい。
化合物(A−i)、(A−ii)、(B−i)または(B−ii)を6価クロム還元化合物として用いて革の処理を行うと、すなわち化合物(A−i)、(A−ii)、(B−i)または(B−ii)が革または革製品に含まれるように処理を行うと、革または革製品に処理前から存在している6価クロムのみならず、処理後に何らかの原因で生成する6価クロムをも還元し、たとえば無害な3価クロムとすることができる。いいかえると、革または革製品がその効用および目的を達するまで、6価クロム量が規則(EU)番号3014/2014による規制値未満の状態を保てる。特に、即効性の高い化合物(A−i)と遅効性の化合物(A−ii)とを組み合わせると、革または革製品がその効用および目的を達するまで、より確実に規制値未満の状態を保てる。さらに、化合物(A−i)および/または(A−ii)とともに、還元力および即効性の高い化合物(B−i)および/または(B−ii)を組み合わせると、処理時に、革または革製品の特に表面付近に存在している6価クロムを効果的に還元できる。
[6価クロム還元化合物を含む処理剤]
6価クロム還元化合物によって処理する場合は、具体的には、6価クロム還元化合物を含む処理剤(本明細書において、6価クロム処理剤、6価クロム処理液ともいう。)を用いることが好ましい。この6価クロム処理剤中において、有機化合物(A)および(B)の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、重量%比((A):(B))で、50〜90:10〜50であることが好ましく、50〜80:20〜50であることがより好ましく、50〜70:30〜50であることがさらに好ましい(ただし、(A)と(B)との合計を100重量%とする)。有機化合物(B)は、即効性に優れるが、革または革製品に浸透しにくいため長期安定性を得られない。そのため、有機化合物(B)の量は、有機化合物(A)に比して、同程度か、少ない方が好ましい。一方、10重量%未満であると、革または革製品の表面にある6価クロムを3価クロムに好適に還元させ、無毒化させることができないおそれがある。
該6価クロム処理剤が、上記(i)没食子酸のエステルと、上記(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と、有機化合物(B)とを含む場合、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、重量%比((i):(ii):(B))で、1〜20:30〜89:10〜50の割合が好ましく、3〜17:33〜77:20〜50の割合がより好ましく、5〜15:35〜65:30〜50の割合がさらに好ましい(ただし、(i)、(ii)および(B)の合計を100重量%とする)。有機化合物(A)の量比については、前述のとおりである。有機化合物(B)としては、化合物(i)および(ii)と相溶せず、化合物(ii)に取り込まれず、好適に革または革製品の表面を還元させることができるため、アスコルビン酸および/またはエリソルビン酸が好ましい。化合物(i)および(ii)は、主として、革または革製品の内部の6価クロムを還元させる作用を有する。アスコルビン酸、没食子酸プロピルおよびタンニン酸は、OECDテストガイドライン(OECD Guidelines for the Testing of Chemicals)に規定する、発がん性、皮膚感作性および皮膚刺激性について、革または革製品に使用する濃度での国際的安全性の基準を満たしている。化合物(i)は、還元力が高いが、比較的分解し易い。一方、化合物(ii)は、化合物(i)を部分構造として有するため、化合物(ii)が分解されることで化合物(i)を得ることができるが、還元力は、アスコルビン酸および没食子酸のエステルに比べて遅効性である。そのため、化合物(ii)の量は、化合物(i)に比べて、多い方が好ましい。また、化合物(i)は、化合物(ii)および有機化合物(B)に比べて、ヒト(皮膚)に対して、若干、過敏性を有するおそれも指摘されており、比較的に着色性のおそれもあるため、化合物(ii)および有機化合物(B)よりも少ない量で用いることが好ましい。化合物(i)の量が1重量%未満であると、革または革製品中の6価クロムを迅速に無毒化できず、有機化合物(B)で処理しきれない量の、あるいは、有機化合物(B)が失活したあとに、未処理の6価クロムイオンが表面に溶出するおそれがある。ポリフェノール類は、還元性が強いため、褐色化や色落ちが懸念されるが、これらの量比で用いると、色落ちの前に、革または革製品中により好適に取り込まれ易くなるため、さらに退色や変色し難くなり、革または革製品の色味や風合いを殆ど損なうことがなくなるため、好ましい。また、これらの量比であれば、水および有機溶媒の両方に溶けやすくなるため、好ましい。該処理液は、長期信頼性が得られるため、好ましい。
また、6価クロム処理剤が化合物(A−i)とタンニン(A−ii)とを含む場合、化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、重量%比((A−i):(A−ii))で、11〜70:30〜89が好ましく、23〜67:33〜77がより好ましく、35〜50:50〜65がさらに好ましい(ただし、(A−i)および(A−ii)の合計を100重量%とする)。これにより、長期にわたり6価クロムが低減された状態を維持できる。
また、6価クロム処理剤が化合物(A−i)と、タンニン(A−ii)と、化合物(B−i)および/または(B−ii)とを含む場合、化合物(A−i)、タンニン(A−ii)、ならびに化合物(B−i)および(B−ii)の合計の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、重量%比((A−i):(A−ii):(B−i)および(B−ii)の合計)で、1〜20:30〜89:10〜50が好ましく、3〜17:33〜77:20〜50がより好ましく、5〜15:35〜65:30〜50がさらに好ましい(ただし、(A−i)、(A−ii)、(B−i)および(B−ii)の合計を100重量%とする)。なお、これらの割合が好ましい理由は、上記において(i)を(A−i)に、(ii)を(A−ii)に、(B)を(B−i)および(B−ii)に置き換えた場合と同じである。
6価クロム還元化合物を含む処理剤は、たとえば、6価クロム還元化合物を、水、炭素原子数1〜3のアルコール(プロパノール、イソプロパノール(IPA)、メタノールおよびエタノール)、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサン、ヘプタンなどの単独有機溶媒、水と該有機溶媒との混合溶媒あるいは有機溶媒を複数種混合した揮発性有機溶媒に溶解させ処理液とすることが好ましい。溶媒としては、水、炭素原子数1〜3のアルコール、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる少なくとも1種以上の溶媒を用いることが好ましく、2種以上の溶媒を用いると好適な処理液を得ることができるため、より好ましい。トルエンなどの炭化水素系溶媒は、革または革製品に対して浸透性に優れるが、ヒトに対して有害であることが多いので、出来れば、使用を避けた方がよい。
6価クロム処理剤は、6価クロム還元化合物をたとえば0.01〜10.0質量%の量で含む。
有機化合物(A)のみを用いる場合は、6価クロム処理液中に含まれる有機化合物(A)の量は、特に限定されないが、処理液100重量%中、合計で好ましくは0.01〜10.0(重量%)程度であり、より好ましくは0.1〜7.0(重量%)程度であり、さらに好ましく0.3〜5.0(重量%)程度であり、さらにより好ましくは0.5〜3.0(重量%)程度であり、最も好ましくは0.5〜2.0(重量%)程度である。該量で含まれると、革または革製品に対する退色や変色が特に少なくなるため、好ましい。また、長期にわたり6価クロムが低減された状態を維持できる。
有機化合物(A)と(B)とを組み合わせて用いる場合は、6価クロム処理液中に含まれる有機化合物(A)および(B)の量は、特に限定されないが、処理液100重量%中、合計で好ましくは0.01〜10.0(重量%)程度であり、より好ましくは0.1〜7.0(重量%)程度であり、さらに好ましく0.3〜5.0(重量%)程度であり、さらにより好ましくは0.5〜3.0(重量%)程度であり、最も好ましくは0.5〜2.0(重量%)程度である。該量で含まれると、革または革製品に対する退色や変色が特に少なくなるため、好ましい。また、長期にわたり6価クロムが低減された状態を維持できる。
なお、6価クロム処理剤が化合物(A−i)および/またはタンニン(A−ii)と、必要に応じて化合物(B−i)および/または(B−ii)とを含むときは、これらの量は、上記量において(A)を(A−i)および(A−ii)の合計に、(B)を(B−i)および(B−ii)の合計に置き換えた場合と同じである。
また、6価クロム処理剤が化合物(A−i)および/またはタンニン(A−ii)と、必要に応じて化合物(B−i)および/または(B−ii)とを含むときは、上記量以外の説明についても、(i)(没食子酸のエステル)を(A−i)に、(ii)(タンニン酸)を(A−ii)に、(A)を(A−i)および(A−ii)に、(B)を(B−i)および(B−ii)に置き換えた場合が適用される。
6価クロム処理剤は、革または革製品に対して浸透性を有することが好ましい。処理液中に有機溶媒を含むと、革または革製品は比較的脂溶性であるため好適に浸透させることができるため好ましく、水と炭素原子数1〜3のアルコールを含むと、さらに、高い安全性とハンドリング性が得られ、革または革製品の色合い、色味および風合いなどを損なわず、退色および褐色化を起こさないで浸透させることができるため、より好ましい。
6価クロム処理剤は、本発明の効果を得る限り特に限定されないが、革または革製品に対して迅速に浸透させ、無害化させる観点から、25℃における動粘度が、0.001(cSt)以上5(cSt)未満であることが好ましく、0.01(cSt)以上4.5(cSt)以下であることがより好ましく、0.05(cSt)以上4.3(cSt)以下であることがさらに好ましく、0.1(cSt)以上4.0(cSt)以下であることがさらにより好ましい。なお、動粘度は上記成分をたとえば上記の量で用いることで調整できる。特開2008−272552号公報には、アスコルビン酸を含み、粘度が5cP以上となる増粘剤によって増粘されている6価クロム汚染土壌用処理剤(水溶液)についての記載がある。該公報に記載の通り、処理剤の粘度が5cP未満であると、土壌への浸透性が高すぎて土壌中に万遍なく浸透しないため、5cP未満の処理剤は、土壌中の6価クロムの処理目的に使用することができない。革または革製品中の主成分であるコラーゲンは、化学的に架橋され安定化させているため、粘度が5cP以上となる処理剤では、革または革製品に対して、浸透しないおそれがある。
処理液に用いる溶媒としては、革または革製品の色合い、色味および風合いなどを損なわず、退色および褐色化を起こさないために、特にデザイン性を有する革または革製品を処理する場合には、水のみが好ましい。
有機化合物(B)は、比較的水溶性を示すことが多いが、有機化合物(A)は、フェニル基を有するため、比較的疎水性を示すことが多い。そのため、処理液に用いる溶媒としては、有機化合物(A)を好適に溶解させ、さらに、有機化合物(B)も溶解させることを考慮すると、無極性溶媒と比べると色落ちが起こることがあるが、極性溶媒を含むことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルコールを用いることがより好ましく、IPAが、高いハンドリング性が得られ、比較的、革または革製品の色合い、色味および風合いなどを損なわず、退色および褐色化を起こさず、他の溶媒との混和性にも優れ、多種の有機化合物に対する溶解性にも優れる観点から、さらに好ましい。また、高い安全性が得られ、有機化合物(B)を容易に溶解させることができるため、さらに水を含むことが好ましい。処理液が水とアルコールを含む場合、重量%比(水:アルコール)で、20〜80:20〜80が好ましく、30〜70:30〜70がより好ましく、40〜60:40〜60が、有機化合物(A)と(B)を好適に溶解、混合させることができ、革または革製品の色合い、色味および風合いなどを損なわず、退色および褐色化を起こさず処理できるため、さらに好ましい(ただし、両者の合計量を100質量%とする)。溶媒として水のみでは、革または革製品は撥水性があり、比較的疎水性(脂溶性)であるため、浸透しない恐れがあるが、水と炭素原子数1〜3のアルコールを含む処理液であれば、デザイン性を損なうことなく、程よい揮発性を有するため革または革製品のより深部まで浸透させることができるため、好ましい。また、該アルコールの量比が80重量%を超えると、該アルコールの引火点を考慮すると、工場内の火災の原因になるおそれがあるため、好ましくない。該アルコールとしてIPAを用いる場合、引火点を考慮すると、60重量%以下が好ましい。一方、該アルコールの量比が20重量%未満であると、革または革製品への溶解性の向上が図れないおそれがある。
有機化合物(B)として、アスコルビン酸および/またはエリソルビン酸を用いた場合、該化合物は水溶性が高いため、水以外の極性溶媒に対しても溶解しにくい。有機化合物(A)として、没食子酸のエステルおよび/またはタンニン酸の誘導体を用いた場合、該化合物は比較的疎水性が高いため、水に溶解しにくい。特に、没食子酸のエステルおよび/またはタンニン酸の誘導体は、無極性溶媒に溶解しにくい。なお、タンニン酸は、両親媒性である。
処理液に用いる溶媒としては、革または革製品の長期にわたる還元性の維持をより得ることが目的の場合、水よりも、無極性有機溶媒が好ましく、着色成分を抽出することなく、揮発性が高いことから色変化が他の非水系溶媒と比較して小さいので、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる少なくとも1種の溶媒がより好ましく、乾燥速度も速く作業性に富むことから、ヘキサンがさらに好ましい。これらの溶媒は、揮発性が良く、短時間で、比較的疎水性である有機化合物(A)を好適に溶解させ、比較的脂溶性である、革または革製品に好適に浸透させることができるため、好ましい。しかし、溶媒が、揮発性および引火性が高い有機溶媒のみであるため、特に、浸漬にて6価クロムを処理する方法など多量の溶媒を必要とする場合には、工場内の火災の原因になるおそれがあるため、取扱いに注意を要する。また、無極性有機溶媒は、比較的親水性の有機化合物を溶解させることが難しいため、使用できる有機化合物を適宜選択する必要がある。処理液の接触面は、デザイン性への影響などを考慮すると、革または革製品の裏面が好ましい。この場合、革または革製品の表面に対しては、水のみ、または水および極性溶媒を含む処理液を用いて処理することが好ましい。また、有機化合物(A)が比較的水溶性である場合には、ヘキサンおよび/またはヘプタンとの相溶性を考慮すると、水に比べて該有機化合物(A)を溶解させにくいが、炭素原子数1〜3のアルコールを用いることが好ましく、IPAを用いることが、革または革製品への影響度が少なく、安全性およびハンドリング性が得られることから、より好ましい。無極性溶媒と該アルコールとの混合溶媒は、革または革製品への影響度が少ないため、革または革製品のより深部まで浸透させることができ、また、多種多様な革または革製品に用いることができ、高い生産性が得られるため、好ましい。さらに、IPAは、ヘキサンやヘプタンなどに比して揮発性が低いので、作業中に溶媒が揮発しても、処理剤が析出することがなく、長時間にわたり作業を行うことができる。また、混合溶媒とすることで、種々の有機化合物を溶解させることができるため、好ましい。処理液が炭素原子数1〜3のアルコールと、ヘキサンおよび/またはヘプタンを含む場合、重量%比(アルコール:ヘキサンおよび/またはヘプタン)で、20〜90:10〜80が好ましく、35〜85:15〜65がより好ましく、45〜80:20〜55が、革または革製品への影響度が少なく、有機化合物(A)と(B)を比較的良好に溶解、混合させることができるため、さらに好ましい(ただし、両者の合計量を100質量%とする)。アルコールを90重量%超えて用いると、品質上は問題ないが、革または革製品表面が色落ちするおそれがある。
[6価クロム還元化合物を含む処理剤による革の処理]
上述した処理剤による革の処理、いいかえると6価クロムの無害化は、6価クロムを含む粗革または6価クロムを含む粗革製品と6価クロム処理剤とを接触させて行われる。なお、本明細書において、6価クロム還元化合物を含む処理剤で処理される前の革または革製品を、粗革または粗革製品ということもある。該接触方法としては、本発明の効果を得る限り特に限定されないが、たとえば、噴霧、散布、ディップ、塗布、浸漬が挙げられる。特に有機化合物(B)は、粗革または粗製品の表面に対して強い還元力を有するため、有機化合物(B)をそのまま接触させても、6価クロムを処理できる。革または革製品のより深部まで浸透させて長期にわたり還元性を維持させる場合には、上述した6価クロム除去剤を用意して処理することが好ましい。具体的には、革シートあるいは切り抜いた革シートに対して、スプレーなどによる吹付け、筆塗りや刷毛塗りなどによる塗布で除去剤を付着させて処理してもよく、また、除去剤を布に含ませて表面を擦って処理してもよい。また、革シートあるいは切り抜いた革シートを除去剤に浸漬して処理してもよい。このようにして革に6価クロム除去剤中の6価クロム還元化合物を含ませる。革または革製品の表面は非常に繊細で傷つきやすいため、スプレーなどの吹付で塗布することが好ましい。こうすることで、6価クロムは無害化され、無害な革を得られる。
さらに、タンナー工程での処理方法の一例を次に示す。通常、動物から剥いだ生の皮から脂肪分やたんぱく質などを除いたあと、クロムなめしの工程に供される。その後、洗浄、ドラム内での脱水後、ロールコーターにて加工され、革(たとえば、革のシート)が得られる。たとえば、該ドラムの中に6価クロム処理剤を入れて、6価クロムを無毒化処理することができる。また、該ロールコーターには、無数の孔が開いているので、たとえば、この孔から、水と共に6価クロム処理剤を吹きかけて、無毒化の処理を行うこともできる。これらの場合の6価クロム処理剤としては、水のみの処理液、または水と炭素原子数1〜3のアルコールを含む処理液を用いることが好ましい。
また、市場に出ている製品など、すでに製造された革製品中に6価クロムが含有されている場合も想定できる。このような革製品を処理する場合は、時計であれば革製品部分を取り外し、革製品部分に対して、スプレーなどによる吹付け、筆塗りや刷毛塗りなどによる塗布で除去剤を付着させて処理してもよく、また、除去剤を布に含ませて表面を擦って処理してもよい。また、革製品部分を除去剤に浸漬して処理してもよい。このようにして革製品部分に6価クロム除去剤中の6価クロム還元化合物を含ませる。
また、革の表側(銀面)ではなく裏側に上記処理剤を付着させて処理することが好ましい。これは、革の表側は元々密度が高く、また、仕上げ工程により革の表側が塗装等されている場合もあり、処理剤が浸み込みにくいためである。
さらに、6価クロム除去剤の適切な使用量は、革の繊維の太さ、密度等も考慮して適宜決定することができる。6価クロム除去剤による処理を適切に行うためには、たとえば、革の処理面に対して上述した濃度範囲で6価クロム還元化合物を含む処理剤をスプレー等により付着させていき、該処理面の裏面まで処理剤がしみ出しはじめる量を求め、この量で処理することが好ましい。この量で行うと、通常革がその効用または目的を達するまで6価クロムが規制値未満である状態を維持できる。
[6価クロム還元化合物を含む接着剤による革の処理]
革製品を製造する時に革とは異なる芯材(樹脂などの場合が多い)に、表裏に革を接着剤を用いて貼り付けることがある。該6価クロム還元化合物を含有させた接着剤を用いて接着すると6価クロムを無害化することができる。この場合、表面の革と裏面の革との間に6価クロム還元化合物が存在することなる。これにより、表裏間で6価クロムの移動が行われず、裏面の肌に触れる部分に汚染が広がらない利点がある。特に、表の革には多くのクロムが含まれていて、裏面の革はクロムを用いないなめし革を使用していた場合に有効である。なお、6価クロム還元化合物を含む接着剤を用いて革製品を製造する場合も、本発明においては、6価クロム還元化合物で処理された革に含まれる。
[革または革製品中のクロム濃度]
6価クロム還元化合物を含む処理剤によって革または革製品を処理すると、6価クロム還元化合物が革または革製品中の6価クロムを3価クロムに還元する。そして、革または革製品は、3価クロムとともに、上記還元に使われなかった残りの6価クロム還元化合物が含まれた状態となる。6価クロム還元化合物による処理で、革または革製品は、ISO17075:2008−02に準拠して測定された6価クロムの含有量が通常3ppm未満、好ましくは2ppm以下となる。なお、3価クロム含有量は、革または革製品によって異なるため特に限定されないが、通常4000ppm以上であり、4500ppm以上、さらに5000ppm以上含まれる場合もある。また、6価クロム処理剤による処理の前後で全クロム含有量は変化しない。
上記処理によって革中または革製品中に6価クロム還元化合物が含有された状態になると(革のワックス中に残留された状態となっていてもよい。)、処理後に、無害なクロムが有害な6価のクロムに変化した場合にも、この6価クロムを6価クロム還元化合物で無害化できる。すなわち、6価クロム除去剤で処理された革または革製品は、その効用または目的を達するまで6価クロムが規制値未満である状態を維持できる。
<検査液に含まれる成分>
次に、本発明の検査液に含まれる成分、すなわち6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物および水系溶媒などについて説明する。
具体的には、鉄含有化合物は、6価クロム還元化合物に含まれる部位であって、鉄含有化合物中の鉄イオンと反応しうる部位(たとえばヒドロキシ基)と反応する。鉄イオンは反応すると紫色または青色に発色する。これにより、本発明の検査液によれば、革が6価クロム還元化合物で処理されているか否かを判定できる。
より具体的には、式(1)で表される有機化合物(A)のヒドロキシ基は、芳香族環の炭素原子など2重結合を有する炭素原子に結合している。このようなヒドロキシ基は、アルキル基に導入されている水酸基とは異なり、水素が取れやすい性質を有している。この性質によってクロム以外のイオン(すなわち鉄イオン)と反応することができる。
鉄含有化合物としては、発色性の観点から、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)7水和物が好適に用いられる。
水系溶媒は、検査液の調製後ある程度の期間(たとえば6月間)、鉄含有化合物が溶解された状態を保てることが好ましい。なお、しばらくして鉄含有化合物が析出する場合であっても、上澄み液を検査液として用いることも可能である。また、検査液が革に染み込みやすくなるような溶媒、乾燥しやすい溶媒が好適に用いられる。
以下に、検査液の好ましい態様について説明する。
[鉄含有化合物として塩化鉄(III)を用いる態様]
塩化鉄(III)は、革に6価クロム還元化合物が含まれているときに、該化合物と反応する。6価クロム還元化合物中のたとえばヒドロキシ基、具体的には有機化合物(A)、(B)、化合物(A−i)、(A−ii)や化合物(B−i)、(B−ii)中のヒドロキシ基の水素原子がとれ、塩化鉄(III)に配位すると考えられる。この際、鉄イオンが発色する。
水系溶媒としては、水、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。有機溶媒は、水系溶媒としたときに塩化鉄(III)を溶解できるものが好ましい。また、揮発性を有することが好ましい。これは、革に検査液を垂らした直後は、革が塗れて色が深くなるので、青、茶などの濃い色の革の判定に苦慮することがあるためである。検査液がすぐに乾燥すれば、より速く結果を判定できる。有機溶媒を加えると、検査液の革への浸透性が増す利点がある。一方で、有機溶媒は引火性を有しているため添加量はできるだけ少ないほうが好ましい。なお、水性溶媒には水を含有していなければならない。これは、発色がイオン反応で起こるためである。
有機溶媒としては、揮発性の有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールなどの炭素数1〜4のアルコールが挙げられる。これらのうちで、乾燥しやすく、速やかに検査ができるようになるため、エタノール、IPAが好適に用いられる。これらは、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
混合溶媒中に、水および炭素数1〜4のアルコールの合計量を100質量部としたときに水が5〜80質量部の量で、炭素数1〜4のアルコールが20〜95質量部の量で含まれていることが好ましい。
水とIPAとからなる水系溶媒の場合は、水系溶媒の全量を100wt%とした場合、IPAは50wt%以下、好ましくは30wt%以下の量で用いることが望ましい。革への浸透力の観点から、IPAは20wt%以上の量で用いることが望ましい。
水とエタノールとからなる水系溶媒の場合は、水系溶媒の全量を100wt%とした場合、エタノールは50wt%以下、好ましくは30wt%以下の量で用いることが望ましい。革への浸透力の観点から、エタノールは25wt%以上の量で用いることが望ましい。
IPAとエタノールとで好ましい含有量の下限値が異なるのは、溶剤の持つ有機性の差であると考えられる。この2種の場合、IPAの方がエタノールに比較して有機性が高いためと考えている。
水性溶媒が水だけからなる場合には、革への浸透性を確保するため、検査液にさらに界面活性剤を添加させることが好ましい。また、水性溶媒が水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であるときにも、検査液にさらに界面活性剤を添加してもよい。水性溶媒中の有機溶媒の量が少ない場合など、革に対する検査液の浸み込みやすさを調整できる。界面活性剤が溶解したときにイオンを発生すると溶質の溶解度に影響を及ぼす懸念があるため、界面活性剤としてはノニオン系の界面活性剤が好適に用いられる。
ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、その他のポリオキシエチレン直鎖アルキルエーテル、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、その他のポリオキシアルキレンエーテル等のエーテル型、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のエステル型、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート等のソルビタンエステル型、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル・エチレンオキシド付加型、エチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリプロピレングリコールジステアレート、ポリプロピレングリコールジサクシネート等のジエステル型、グリセリロールモノステアレート、グリセリロールモノミリステート等のモノグリセライド型、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸グリセリル等のモノグリセライド・エチレンオキシド付加型、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレントリイソステアリン酸等のトリグリセライド・エチレンオキシド付加型、ポリオキシエチレンテトラオレイン酸等のソルビットエステル・エチレンオキシド付加型、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等のポリグリセリンアルキルエステル型、ココアルキルアミン酸化エチレン付加物、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)ラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンアルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルプロピレンジアミン等のポリエーテルアミン型、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、その他のヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド(1:2型)、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド型、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミド等のアルカノールアミド・エチレンオキシド付加型、ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルステアリルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等のアミンオキシド型(アミンオキシド型はたとえば水溶液として市販されている。)、ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)等のポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル型が挙げられる。これらのうちで、金属部品(美錠等の時計の部品など)に影響を与えないことから、エーテル型、アミンオキシド型が好適に用いられる。これらは、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
6価クロム還元化合物は、銀面と呼ばれる革表面に残留している量は少なく、大部分は革内部に浸透しているため、検査液は革に浸み込みやすい方が好ましい。上述のように、検査液の革への浸み込みやすさは、水性溶媒に含ませる有機溶媒や界面活性剤の種類や量によりコントロールできる。革へ浸み込みにくい検査液の場合は、6価クロム還元化合物による処理を施した革の場合でも、発色性が落ち、正しい判定が行なえない懸念がある。
上記検査液において、目視で発色を確認するために塩化鉄(III)は通常0.1wt%以上の量で含有されていればよい。目視による確認をより容易にするためには好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは3wt%以上、さらに好ましくは5wt%以上の量で含有されていることが望ましい。含有量が増加すると発色がはっきりして色の濃い革(黒、こげ茶など)でも発色を確認しやすくなる。ただし10wt%以上含有させても、発色する色の濃さは同じに見えることから、10wt%以下が好ましい。
上記検査液において、界面活性剤は、革に検査液を浸透させる効果が発揮できる量で含ませることが好ましい。具体的には好ましくは0.5〜10wt%、より好ましくは0.5〜1wt%の量で含有されていることが望ましい。浸透は遅くなるが少なくとも0.01wt%以上の量で含有されていることが望ましい。
上記検査液は、たとえば、水性溶媒に塩化鉄(III)と必要に応じて界面活性剤とを溶解させて得られる。なお、水性溶媒に有機溶媒を用いる場合は、たとえば、水と有機溶媒との混合溶媒を作製し、次いでこれに対して塩化鉄(III)と必要に応じて界面活性剤とを溶解させて得られる。
[鉄含有化合物として硫酸鉄(II)7水和物を用いる態様]
この態様では、硫酸鉄(II)7水和物とともに酒石酸カリウムナトリウムを用いる。酒石酸カリウムナトリウムは無水和物であっても4水和物であってもよい。
硫酸鉄(II)7水和物は、検査液中で酒石酸鉄となっており、革に6価クロム還元化合物が含まれているときは、酒石酸鉄が該化合物と反応する。6価クロム還元化合物中のたとえばヒドロキシ基、具体的には化合物(A−i)、(A−ii)や化合物(B−i)、(B−ii)中のヒドロキシ基の水素原子がとれ、酒石酸鉄に配位すると考えられる。この際、鉄イオンが発色する。
水系溶媒、界面活性剤、および酒石酸カリウムナトリウム以外の上記検査液に配合してもよいその他の成分について、具体例、量、それらの好ましい範囲や理由等は、塩化鉄(III)を用いる態様と同じである。ただし、水系溶媒としては、溶解度の観点から、水のみを用いることが特に好ましい。
また、上記検査液における硫酸鉄(II)7水和物の好ましい量、それらの理由等については、塩化鉄(III)を用いる態様における塩化鉄(III)のものと同じである。
上記検査液において、酒石酸カリウムナトリウムは、検査液中で酒石酸鉄が形成できるよう、1〜5wt%の量で含有されていればよい。発色できるためには、酒石酸および硫酸鉄(II)7水和物の割合は、重量%比(酒石酸:硫酸鉄(II)7水和物)で25〜98:2〜75が好ましい(ただし、酒石酸および7硫酸鉄(II)7水和物の合計を100重量%とする。)。
上記検査液は、たとえば、水性溶媒に硫酸鉄(II)7水和物および酒石酸カリウムナトリウムと必要に応じて界面活性剤とを溶解させて得られる。なお、水性溶媒に有機溶媒を用いる場合は、たとえば、水と有機溶媒との混合溶媒を作製し、次いでこれに対して塩化鉄(III)と必要に応じて界面活性剤とを溶解させて得られる。
鉄含有化合物として塩化鉄(III)を用いる態様の方が、発色性および検査液の安定性の観点から、鉄含有化合物として硫酸鉄(II)7水和物を用いる態様よりも好適に用いられる。
<検査方法>
本発明の革の検査方法は、革に上記検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含む。
上記検査液は、革の表側(銀面)に付着させるよりも裏側に付着させることが好ましい。これは、革の表側は元々密度が高く、また、検査対象となる革は仕上げ工程により表側が塗装等されている場合もあり、検査液が浸み込みにくいためである。6価クロム還元化合物は皮の内部に浸透しているため、革の裏側に検査液を付着させると検査液が浸み込みやすく、色の変化がわかりやすい。
また、時計バンド等の加工品(革製品)の場合は、革部分をはずして、好ましくは革の裏側に上記検査液を付着させる。濃い色の革であっても、裏側ならば検査液による発色を目視によって容易に確認できる。
検査液の付着は、スポイトで液滴をたらして行っても、筆で塗るなど塗布によって行ってもよい。
なお、検査液は常温で反応するため、検査液を付着させた後に加熱する必要はない。また、色の深い革の場合は、検出液を塗布した直後はぬれて、色の変化を判定しにくくなるため、検査液中の溶媒が蒸発してから判定することが好ましい。
このようにして、検査液が青色または紫色に発色した場合には、上述の反応が起こったと考えられ、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定できる。
購入した革のシートや製品が見た目では6価クロム還元化合物による処理がされているか否かがわからない場合、上記検査液を利用すれば該処理がされたものかを判定できる。また、生産管理の面では、本発明の検査方法を用いることにより、6価クロムが除去されていない革を除去済みであると誤って判断して出荷してしまうリスクがなくなる。また、何らかの理由で除去機能を失った6価クロム処理剤を用いて6価クロム除去工程を行った場合でも、本発明の検査方法によれば、革の発色性が低下するのでこれを検出できる。
また、上記判定工程が、検査液が発色した場合に、6価クロム還元化合物で処理された革であると判定し、さらに、検査液の発色の濃さから処理が適切であったかを判定する判定工程であってもよい。
6価クロム還元化合物による6価クロム除去処理を行っても処理液の量が少なかったり、処理液の濃度が低かったりすると、革の寿命まで6価クロム還元化合物が6価クロムの除去機能を果たせない恐れがある。このような場合、革に存在する6価クロム還元化合物の量が少ないため、本発明の検査液を付着させても発色が薄くなる。この場合は、6価クロム除去処理が適切でなかったと判定できる。
具体的には、まず、適切に6価クロム除去処理が行われた革、いいかえると、革の寿命まで6価クロム除去機能を果たせる程度に革中に6価クロム還元化合物が存在するよう、6価クロム除去処理が行われた革を用意する。この際、6価クロム還元化合物を上述した濃度で含む処理剤を用いて処理を行えばよい。これに検査液を付着させ発色させ発色基準サンプルとする。次いで、検査対象である革に検査液を付着させ、該革と上記発色基準サンプルとで発色の濃さを比較して、6価クロム除去処理が適切であったかを判定する。
さらに、以下のように6価クロム除去工程の管理を行ってもよい。まず、6価クロム処理剤が適切な量の場合、たとえば適切な量の7割の場合、3割の場合など、6価クロム除去処理を行った革を用意する。次に、これらの革について上述のように発色基準サンプルを作る。検査対象である革と上記発色基準サンプルとで発色の濃さを比較して、6価クロム除去工程の管理を実施してもよい。
なお、6価クロム除去剤に本発明の検査液を直接たらして発色の有無を確認し、除去機能が持続しているかも判定できる。
以上より、本発明は以下に関する。
[1]
革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含むことを特徴とする検査液。
上記検査液によれば、革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを簡便に判定できる。
[2]
上記6価クロム還元化合物が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)であることを特徴とする[1]に記載の検査液。
Figure 0006573992
(R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、C、H、Oで構成される置換基である。R1またはR2と、R3、R4またはR5のいずれかとは、互いに結合して環を形成していてもよい)。
[3]
上記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[2]に記載の検査液。
[4]
上記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[3]に記載の検査液。
[5]
上記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする[4]に記載の検査液。
[6]
上記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする[5]に記載の検査液。
[7]
上記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する上記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする[2]〜[6]のいずれかに記載の検査液。
[8]
上記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[7]に記載の検査液。
[9]
上記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の検査液。
Figure 0006573992
(nは、0、1または2を表す。R11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または下記式(a−i)で表される基(R19は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表す。nが0のとき、R11〜R14、R16およびR17のうち少なくとも1個はヒドロキシ基であり、nが1または2のとき、R11〜R18のうち少なくとも1個はヒドロキシ基である。nが2のとき、複数あるR15は、同一であっても異なっていてもよく、R18についても同様である。R16とR17とは相互に一体となって5員環または6員環を形成していてもよく、該環は置換基として炭素数1〜16のアルキル基を有していてもよい。)。
Figure 0006573992
[10]
上記6価クロム還元化合物が、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[9]に記載の検査液。
Figure 0006573992
(Xは、下記式(b−i)〜(b−iii)で表される基(оは、0〜3の整数を表し、pは、1〜3の整数を表し、qは、1〜17の整数を表す。)のいずれかを表す。)
Figure 0006573992
上記[2]〜[10]に記載された6価クロム還元化合物を用いると、革または革製品中がその効用および目的を達するまで、6価クロム量が規則(EU)番号3014/2014による規制値未満の状態を保てる。
[11]
上記鉄含有化合物が塩化鉄(III)であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載の検査液。
[12]
上記鉄含有化合物が硫酸鉄(II)7水和物であり、上記検査液がさらに酒石酸カリウムナトリウムを含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載の検査液。
上記[11]、[12]に記載された鉄含有化合物は、発色性の観点から好適に用いられる。
[13]
上記検査液中の上記鉄含有化合物の濃度が0.1〜10wt%であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれかに記載の検査液。
上記[13]に記載された濃度であれば、目視で発色を確認できる。
[14]
上記水系溶媒が水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載の検査液。
[15]
上記混合溶媒中に、水および炭素数1〜4のアルコールの合計量を100質量部としたときに水が5〜80質量部の量で、炭素数1〜4のアルコールが20〜95質量部の量で含まれていることを特徴とする[14]に記載の検査液。
[16]
上記水系溶媒が水であり、上記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載の検査液。
[17]
上記検査液中の上記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする[16]に記載の検査液。
[18]
上記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする[14]または[15]に記載の検査液。
[19]
上記検査液中の上記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする[18]に記載の検査液。
上記[14]〜[19]に記載された態様によれば、検査液が革に浸み込みやすくなる。
[20]
革に[1]〜[19]のいずれかに記載の検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含むことを特徴とする革の検査方法。
上記検査方法によれば、革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを簡便に判定できる。
[21]
上記判定工程が、検査液が発色した場合に、6価クロム還元化合物で処理された革であると判定し、さらに、検査液の発色の濃さから処理が適切であったかを判定する判定工程であることを特徴とする[20]に記載の革の検査方法。
[実施例]
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
<検査液の調製>
[実施例1−1−1]
水とIPAとを50:50(重量%比)で混合し、水性溶媒を調製した。
塩化鉄(III)5gを上記水性溶媒95gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液1−1を作製した(表1)。
[実施例1−1−2〜1−1−6]
塩化鉄(III)および水性溶媒の量を表1のように変更したほかは、実施例1−1−1と同様にして、検査液1−2〜1−6を作製した(表1)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液を作製した。
[実施例1−1−7〜1−1−11]
水とIPAとを表1に示す量で混合した水性溶媒に変更したほかは、実施例1−1−1と同様にして、検査液1−7〜1−11を作製した(表1)。
[実施例2−1−1]
塩化鉄(III)5gおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを水94.5gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液2−1を作製した(表2)。
[実施例2−1−2〜2−1−6]
塩化鉄(III)および水の量を表2のように変更したほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−2〜2−6を作製した(表2)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液を作製した。
[実施例2−1−7〜2−1−10]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水の量を表2のように変更したほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−7〜2−10を作製した(表2)。
[実施例2−1−11〜2−1−15]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液(ユニセーフA−LM(商品名)、日油株式会社製)を用い、さらに、検査液中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表2のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−11〜2−15を作製した(表2)。
[実施例2−1−16]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gとともに、さらに処理剤中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表2のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−16を作製した(表2)。
[実施例3−1−1]
硫酸鉄(II)7水和物5g、酒石酸カリウムナトリウム5g、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを水89.5gに溶解し、5質量%の濃度で硫酸鉄(II)7水和物が含まれる検査液3−1を作製した(表3)。
[実施例3−1−2〜3−1−6]
硫酸鉄(II)7水和物および水の量を表3のように変更したほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−2〜3−6を作製した(表3)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で硫酸鉄(II)7水和物が含まれる検査液を作製した。
[実施例3−1−7〜3−1−10]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水の量を表3のように変更したほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−7〜3−10を作製した(表3)。
[実施例3−1−11〜3−1−15]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液(ユニセーフA−LM(商品名)、日油株式会社製)を用い、さらに、検査液中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表3のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−11〜3−15を作製した(表3)。
[実施例3−1−16]
ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gとともに、さらに処理剤中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表3のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−16を作製した(表3)。
[実施例4−1−1]
塩化鉄(III)5gおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを上記水性溶媒(実施例1−1−1と同じ水性溶媒)94.5gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液4−1を作製した(表4)。
[実施例4−1−2〜4−1−5]
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水性溶媒の量を表4のように変更したほかは、実施例4−1−1と同様にして、検査液4−2〜4−5を作製した(表4)。
<検査方法>
検査対象として、以下の革を用意した。
〔革(A−1)(ワニおよび牛)〕
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器(エネルギー分散型蛍光X線分析装置、日本電子株式会社製JSX−3202EV ELEMENT ANALYZER)で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。なお、基準試料として、日本電子株式会社製 JSX3000シリーズ 基準試料1、JSX3000シリーズ 基準試料2およびJSX3000シリーズ エネルギー校正基準試料を用いた。測定は、日本電子株式会社資料QuickManual(番号EY07007−J00、J00 EY07007G、2007年8月版)に基づき、JSX starterにつづき PlasticD3により実施した。
次に、水およびIPA(50質量%:50質量%)の混合溶液500gに対して、化学式(3)で示される化合物0.5g、化学式(4)で示される化合物2.5gおよび化学式(13)で示される化合物2.0gを混合して溶解し、6価クロム処理剤を得た。該処理剤の25℃における動粘度は3.7(cSt)であった。なお、動粘度は、ウベローデ粘度計を用いて、溶媒として、IPAと水(1vol:1vol)の混合溶媒を用い、温度25.0℃で測定した。
得られた6価クロム処理剤に上記ワニの革を浸漬した後、これを乾燥させて、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。上記牛の革についても同様に処理を行った革を得た。直ぐに、ISO17075:2008−02で6価クロムの含有量を測定したところ、6価クロムは、ワニ、牛ともに検出限界(2ppm)以下であった。ワニ、牛ともに、全クロムの含有率は、蛍光X線分析器で分析したところ、6価クロム処理剤による処理前と変化していなかった。
〔革(A−2)(ワニおよび牛)〕
(A−1)で用いた6価クロム処理剤を混合溶液で5倍に薄めた処理剤に変更したほかは、(A−1)と同様にして、6価クロム処理剤による処理を行ったワニの革を得た。牛の革についても同様に処理を行った革を得た。
〔革(A−3)(ワニおよび牛)〕
(A−1)で用いた6価クロム処理剤を混合溶液で10倍に薄めた処理剤に変更したほかは、(A−1)と同様にして、6価クロム処理剤による処理を行ったワニの革を得た。牛の革についても同様に処理を行った革を得た。
〔革(B)(ワニおよび牛)〕
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。
次に、水およびIPA(50質量%:50質量%)の混合溶液100gに対して、化学式(3)で示される化合物0.3gおよび化学式(4)で示される化合物0.7gを混合して溶解し、6価クロム処理剤を得た。
得られた6価クロム処理剤に上記ワニの革を浸漬した後、これを乾燥させて、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。上記牛の革についても同様に処理を行った革を得た。直ぐに、ISO17075:2008−02で6価クロムの含有量を測定したところ、6価クロムは、ワニ、牛ともに検出限界(2ppm)以下であった。ワニ、牛ともに、全クロムの含有率は、蛍光X線分析器で分析したところ、6価クロム処理剤による処理前と変化していなかった。
〔革(C)(ワニおよび牛)〕
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの含有する全クロムの含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。
次に、エタノール10gに対して、化学式(4)で示される化合物0.3gを溶解し、6価クロム処理剤を得た。
得られた6価クロム処理剤に上記ワニの革を浸漬した後、これを乾燥させて、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。上記牛の革についても同様に処理を行った革を得た。直ぐに、ISO17075:2008−02で6価クロムの含有量を測定したところ、6価クロムは、ワニ、牛ともに検出限界(2ppm)以下であった。ワニ、牛ともに、全クロムの含有率は、蛍光X線分析器で分析したところ、6価クロム処理剤による処理前と変化していなかった。
〔革(D)(ワニおよび牛)〕
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。これらの革については、6価クロム処理剤による処理は行わなかった。
[実施例1−2−1]
革(A−1)(ワニおよび牛)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
革(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)についても、同様に、実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた。したがって、革(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)も、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)についても、同様に、実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこんだが、発色しなかった。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
[実施例1−2−2〜実施例1−2−11]
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例1−1−2〜実施例1−1−11で得られた検査液1−2〜1−11をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)について、実施例1−1−2〜1−1−10で得られた検査液1−2〜1−10の場合は、液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた(実施例1−2−2〜1−−2−10)。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)について、実施例1−1−2〜1−1−10で得られた検査液1−2〜1−10の場合は、液滴は速やかに革にしみこんだが、発色しなかった(実施例1−2−2〜1−2−10)。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)について、実施例1−1−11で得られた検査液1−11の場合は、液滴が革にしみこむまでに時間がかかったが、しみこむと青色に発色したことが確認できた(実施例1−2−11)。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)について、実施例1−1−11で得られた検査液1−11の場合は、液滴が革にしみこむまでに時間がかかったが、しみこんでも発色しなかった(実施例1−2−11)。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
[実施例2−2−1〜実施例2−2−16]
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例2−1−1〜実施例2−1−16で得られた検査液2−1〜2−16をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた(実施例2−2−1〜2−2−16)。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこんだが、発色しなかった(実施例2−2−1〜2−2−16)。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
[実施例3−2−1〜実施例3−2−16]
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例3−1−1〜実施例3−1−16で得られた検査液3−1〜3−16をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた(実施例3−2−1〜3−2−16)。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこんだが、発色しなかった(実施例3−2−1〜3−2−16)。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
[実施例4−2−1〜実施例4−2−5]
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例4−1−1〜実施例4−1−5で得られた検査液4−1〜4−5をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた(実施例4−2−1〜4−2−5)。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
一方、革(D)(ワニおよび牛)の場合は、液滴は速やかに革にしみこんだが、発色しなかった(実施例4−2−1〜4−2−5)。したがって、革(D)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革ではないと判定できた。
[実施例1−3−1]
革(A−1)(ワニ)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた。これを発色基準サンプルとした。
次に、革(A−2)(ワニ)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこんだが、発色の濃さは革(A−1)(ワニ)よりも薄かった。
次に、革(A−3)(ワニ)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこんだが、発色の濃さは革(A−2)(ワニ)よりも薄かった。
たとえば、革(A−1)の発色基準サンプルの濃さ以上の場合に出荷するという出荷基準を設けた場合、革(A−2)(ワニ)、革(A−3)(ワニ)については、上記出荷基準を満たさず、処理剤による処理が適切でないと判定できる。なお、処理が適切であったかについての判定基準(本実施例における出荷基準)は、革の寿命まで6価クロムが規制値未満である状態を維持できるかについての基準とは対応していなくてもよく、本実施例のようにより厳しい基準であってもよい。
なお、革(A−1)(牛)、革(A−2)(牛)、革(A−3)(牛)についても上記と同様にして検査を行ったところ、ワニと同様の結果が得られた。
Figure 0006573992
Figure 0006573992
Figure 0006573992
Figure 0006573992

Claims (20)

  1. 革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含み、
    前記6価クロム還元化合物が、6価クロムに作用して3価に還元する性能を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)を含み、
    前記鉄含有化合物が、塩化鉄(III)および/または硫酸鉄(II)7水和物である
    ことを特徴とする検査液。
    Figure 0006573992
    (R 1 、R 2 、R 3 、R 4 およびR 5 は、それぞれ独立に、C、H、Oで構成される置換基である。R 1 またはR 2 と、R 3 、R 4 またはR 5 のいずれかとは、互いに結合して環を形成していてもよい)。
  2. 前記有機化合物(A)が、6価クロム作用して3価に還元するを有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項に記載の検査液。
  3. 前記有機化合物(A)が、6価クロム作用して3価に還元するを有する化学式(1)に示される構造と、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項に記載の検査液。
  4. 前記有機化合物(A)が、
    (i)没食子酸のエステルと、
    (ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
    であることを特徴とする請求項に記載の検査液。
  5. 前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする請求項に記載の検査液。
  6. 前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロム作用して3価に還元するを有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の検査液。
  7. 前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項に記載の検査液。
  8. 革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含み、
    前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記鉄含有化合物が、塩化鉄(III)および/または硫酸鉄(II)7水和物であ
    ことを特徴とする検査液。
    Figure 0006573992
    (nは、0、1または2を表す。R11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または下記式(a−i)で表される基(R19は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)を表す。nが0のとき、R11〜R14、R16およびR17のうち少なくとも1個はヒドロキシ基であり、nが1または2のとき、R11〜R18のうち少なくとも1個はヒドロキシ基である。nが2のとき、複数あるR15は、同一であっても異なっていてもよく、R18についても同様である。R16とR17とは相互に一体となって5員環または6員環を形成していてもよく、該環は置換基として炭素数1〜16のアルキル基を有していてもよい。)。
    Figure 0006573992
  9. 前記6価クロム還元化合物が、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項に記載の検査液。
    Figure 0006573992
    (Xは、下記式(b−i)〜(b−iii)で表される基(оは、0〜3の整数を表し、pは、1〜3の整数を表し、qは、1〜17の整数を表す。)のいずれかを表す。)
    Figure 0006573992
  10. 前記鉄含有化合物が塩化鉄(III)であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の検査液。
  11. 前記鉄含有化合物が硫酸鉄(II)7水和物であり、前記検査液がさらに酒石酸カリウムナトリウムを含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の検査液。
  12. 前記検査液中の前記鉄含有化合物の濃度が0.1〜10wt%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の検査液。
  13. 前記水系溶媒が水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の検査液。
  14. 前記混合溶媒中に、水および炭素数1〜4のアルコールの合計量を100質量部としたときに水が5〜80質量部の量で、炭素数1〜4のアルコールが20〜95質量部の量で含まれていることを特徴とする請求項13に記載の検査液。
  15. 前記水系溶媒が水であり、前記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の検査液。
  16. 前記検査液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする請求項15に記載の検査液。
  17. 前記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の検査液。
  18. 前記検査液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする請求項17に記載の検査液。
  19. 革に請求項1〜18のいずれか1項に記載の検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含むことを特徴とする革の検査方法。
  20. 前記判定工程が、検査液が発色した場合に、6価クロム還元化合物で処理された革であると判定し、さらに、検査液の発色の濃さから処理が適切であったかを判定する判定工程であることを特徴とする請求項19に記載の革の検査方法。
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