JP6573992B2 - 6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液 - Google Patents
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Description
本発明の検査液は、革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含む。
本発明の検査液による検査対象となる革としては、特に限定されず、牛皮、羊皮、やぎ皮、豚皮、馬皮、シカ皮、カンガルー皮、ダチョウ皮、ワニ皮、トカゲ皮、ヘビ皮、トリ皮、魚の皮などに対して、クロムなめし工程を施して得られた革が挙げられる。また、クロムなめし工程に続いて、漉き工程、シェービング工程、再なめし工程、染色工程、加脂工程、仕上げ工程などを経た革であってもよい。
次に、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物による革の処理について説明する。
6価クロム還元化合物は、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る化合物であって、本発明の検査液に含まれる鉄含有化合物中の鉄イオンと反応して発色させられる部位(たとえばヒドロキシ基)を有する。なお、後述するように、この発色がみられる場合を6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定する。
6価クロム還元化合物は、有害な6価クロムに作用して、無害な化合物に化学変化をさせる有機化合物である。この化合物はたとえば6価のクロムを還元して3価のクロムとして無害化ができる。
6価クロム還元化合物として含まれる有機化合物(A)および(B)は、6価クロムの処理機能がありこれを無害化する基本性能はもとより、これで処理した革または革製品が皮膚に触れた状態で、肌荒れ等の影響を及ぼさないことと、有毒性を有しないものである。また、(A)および(B)は、それぞれの還元性によっても互いに分解を引き起こさず、また、反応せず互いに干渉し得ない化合物であることが、好ましい。該有機化合物としては、上記化学式(1)に示される基本骨格を有する化合物が好ましく、C、H、Oの原子からなる安定なものが好ましい。
有機化合物(A)は、上記化学式(1)に示される構造およびたとえば下記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有する。該官能基を有することで、革または革製品中において、即効性もあり、長く安定して滞留し、長期にわたり還元作用を有し、耐熱性に優れる。それゆえ、長期にわたり、6価クロムの生成が抑制される。また、革または革製品に含まれることで、汗や雨などの水分によっても分解されにくい。このような優れた効果を有する理由については定かではないが、なめしによって、通常、皮の主成分であるコラーゲンは化学的に架橋され安定化されている。有機化合物(A)が有するヒドロキシフェニル基が、特に、該コラーゲンとの相互作用が高いため長く保持される一方で、該コラーゲンに完全に取り込まれず、海島構造の島部分のようになり、還元性を有するほどの自由度をもって取り込まれているためと推測している。有機化合物(A)としては、革または革製品に用いるため、安全性が高く、環境への負荷が少ない化合物が好ましい。
有機化合物(A)としては、たとえば、上記化学式(2)〜(12)および(14)、
フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール、
1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、
1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン等のテトラヒドロキシナフタレン、
3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、9−ヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシピレン、1−ヒドロキシフェナントレン、9−ヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールフルオレン、フェノールフタレイン、
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、
カテコール系タンニン、ピロガロール系タンニン、五倍子タンニン、没食子酸タンニン、フロロタンニンなどのタンニン類、
アントシアニン、ルチン、クエルセチン、フィセチン、ダイゼイン、ヘスペレチン、ヘスピリジン、クリシン、フラボノールなどのフラボノイド類、
カテキン、ガロカテキン、カテキンガラート、エピカテキン、エピカロカテキン、エピカテキンガレート、エピカロカテキンガレート、プロシアニジン、テアフラビンなどのカテキン類、
クルクミン、リグナン、
ロドデンドロール[4−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノール]、
アセチルロドデンドロール、ヘキサノイルロドデンドロール、オクタノイルロドデンドロール、ドデカノイルロドデンドロール、テトラデカノイルロドデンドロール、ヘキサデカノイルロドデンドロール、オクタデカノイルロドデンドロール、4−(3−アセトキシブチル)フェニルアセテート、4−(3−プロパノイルオキシブチル)フェニルプロパノエート、4−(3−オクタノイルオキシブチル)フェニルオクタノエート、4−(3−パルミトイルオキシブチル)フェニルパルミテート等のアシル化ロドデンドロール、
4−(3−メトキシブチル)フェノール、4−(3−エトキシブチル)フェノール、4−(3−オクチルオキシブチル)フェノール等のロドデンドロールアルキルエーテル体、
ロドデンドロール−D−グルコシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−ガラクトシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−キシロシド(αまたはβ体)、ロドデンドロール−D−マルトシド(αまたはβ体)等のロドデンドロール配糖体等、
αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、δトコフェロールなどを挙げることができる。
有機化合物(B)は、上記化学式(1)に示される構造を有するが、たとえば上記化学式(15)に示すヒドロキシフェニル基を有さない。該ヒドロキシフェニル基を含まないことで、革または革製品中に浸透し難くなるが、化学式(1)に示される構造を有するので、革または革製品の表面にある6価クロムを3価クロムに好適に還元させ、無毒化させることができる。そのため、該化合物(B)を用いることで、汗や雨などの水分に溶解した6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を即効性良く抑制できる。該有機化合物(B)としては、たとえば、ヘテロ環を有する化合物がある。ヘテロ環としてはフラン、クロメン、イソクロメン、キサンテンなどがある。この様な誘導体としては、たとえば上記化学式(13)に示した構造の化合物やその誘導体、エリソルビン酸やその誘導体、4−ヒドロキシフラン−2(5H)−オンが有る。このような化合物は6価クロムの除去機能を有する。
本発明において、上記有機化合物(B)が、アスコルビン酸およびエリソルビン酸から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、アスコルビン酸であることがより好ましい。該化合物は、分解し易いため長期にわたり効果を実現できず、革または革製品からブリードし易いが、ヒト(皮膚)に対して低刺激性であり安全性に優れ、還元力も高く、即効性も高い。そのため、該化合物(B)を含む処理剤を革または革製品に接触させることで、6価クロムイオンの環境への溶出およびヒトへの曝露を効果的かつ未然に防ぐことができる。また、特に表面を迅速に無毒化処理できるため、肌荒れやアレルギーなどの発症を好適に抑制することができる。該化合物(B)は、有機化合物(A)とも反応せず相溶しなく、該化合物(A)によって分解されないので、該処理液に好適に混合することができる。また、還元力が強いため、該化合物を含むことで、有機化合物(A)による褐色化や色落ちを防止できる。さらに分解性が高いため、色つきがし難く、革または革製品の色味や風合いを損なうことがないため、好ましい。
6価クロム還元化合物として、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)と、タンニン(A−ii)とを組み合わせて用いることがより好ましい。
R11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、または下記式(a−i)で表される基を表す。ここで、R19は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
R16とR17とは相互に一体となって5員環または6員環を形成していてもよく、該環を構成する原子としては炭素原子の他に酸素原子が含まれていてもよい。また、該環は置換基として炭素数1〜16のアルキル基を有していてもよい。炭素数1〜16のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
6価クロム還元化合物として、化合物(A−i)、タンニン(A−ii)とともに、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
6価クロム還元化合物によって処理する場合は、具体的には、6価クロム還元化合物を含む処理剤(本明細書において、6価クロム処理剤、6価クロム処理液ともいう。)を用いることが好ましい。この6価クロム処理剤中において、有機化合物(A)および(B)の割合は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、重量%比((A):(B))で、50〜90:10〜50であることが好ましく、50〜80:20〜50であることがより好ましく、50〜70:30〜50であることがさらに好ましい(ただし、(A)と(B)との合計を100重量%とする)。有機化合物(B)は、即効性に優れるが、革または革製品に浸透しにくいため長期安定性を得られない。そのため、有機化合物(B)の量は、有機化合物(A)に比して、同程度か、少ない方が好ましい。一方、10重量%未満であると、革または革製品の表面にある6価クロムを3価クロムに好適に還元させ、無毒化させることができないおそれがある。
有機化合物(A)のみを用いる場合は、6価クロム処理液中に含まれる有機化合物(A)の量は、特に限定されないが、処理液100重量%中、合計で好ましくは0.01〜10.0(重量%)程度であり、より好ましくは0.1〜7.0(重量%)程度であり、さらに好ましく0.3〜5.0(重量%)程度であり、さらにより好ましくは0.5〜3.0(重量%)程度であり、最も好ましくは0.5〜2.0(重量%)程度である。該量で含まれると、革または革製品に対する退色や変色が特に少なくなるため、好ましい。また、長期にわたり6価クロムが低減された状態を維持できる。
上述した処理剤による革の処理、いいかえると6価クロムの無害化は、6価クロムを含む粗革または6価クロムを含む粗革製品と6価クロム処理剤とを接触させて行われる。なお、本明細書において、6価クロム還元化合物を含む処理剤で処理される前の革または革製品を、粗革または粗革製品ということもある。該接触方法としては、本発明の効果を得る限り特に限定されないが、たとえば、噴霧、散布、ディップ、塗布、浸漬が挙げられる。特に有機化合物(B)は、粗革または粗製品の表面に対して強い還元力を有するため、有機化合物(B)をそのまま接触させても、6価クロムを処理できる。革または革製品のより深部まで浸透させて長期にわたり還元性を維持させる場合には、上述した6価クロム除去剤を用意して処理することが好ましい。具体的には、革シートあるいは切り抜いた革シートに対して、スプレーなどによる吹付け、筆塗りや刷毛塗りなどによる塗布で除去剤を付着させて処理してもよく、また、除去剤を布に含ませて表面を擦って処理してもよい。また、革シートあるいは切り抜いた革シートを除去剤に浸漬して処理してもよい。このようにして革に6価クロム除去剤中の6価クロム還元化合物を含ませる。革または革製品の表面は非常に繊細で傷つきやすいため、スプレーなどの吹付で塗布することが好ましい。こうすることで、6価クロムは無害化され、無害な革を得られる。
革製品を製造する時に革とは異なる芯材(樹脂などの場合が多い)に、表裏に革を接着剤を用いて貼り付けることがある。該6価クロム還元化合物を含有させた接着剤を用いて接着すると6価クロムを無害化することができる。この場合、表面の革と裏面の革との間に6価クロム還元化合物が存在することなる。これにより、表裏間で6価クロムの移動が行われず、裏面の肌に触れる部分に汚染が広がらない利点がある。特に、表の革には多くのクロムが含まれていて、裏面の革はクロムを用いないなめし革を使用していた場合に有効である。なお、6価クロム還元化合物を含む接着剤を用いて革製品を製造する場合も、本発明においては、6価クロム還元化合物で処理された革に含まれる。
6価クロム還元化合物を含む処理剤によって革または革製品を処理すると、6価クロム還元化合物が革または革製品中の6価クロムを3価クロムに還元する。そして、革または革製品は、3価クロムとともに、上記還元に使われなかった残りの6価クロム還元化合物が含まれた状態となる。6価クロム還元化合物による処理で、革または革製品は、ISO17075:2008−02に準拠して測定された6価クロムの含有量が通常3ppm未満、好ましくは2ppm以下となる。なお、3価クロム含有量は、革または革製品によって異なるため特に限定されないが、通常4000ppm以上であり、4500ppm以上、さらに5000ppm以上含まれる場合もある。また、6価クロム処理剤による処理の前後で全クロム含有量は変化しない。
次に、本発明の検査液に含まれる成分、すなわち6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物および水系溶媒などについて説明する。
水系溶媒は、検査液の調製後ある程度の期間(たとえば6月間)、鉄含有化合物が溶解された状態を保てることが好ましい。なお、しばらくして鉄含有化合物が析出する場合であっても、上澄み液を検査液として用いることも可能である。また、検査液が革に染み込みやすくなるような溶媒、乾燥しやすい溶媒が好適に用いられる。
以下に、検査液の好ましい態様について説明する。
塩化鉄(III)は、革に6価クロム還元化合物が含まれているときに、該化合物と反応する。6価クロム還元化合物中のたとえばヒドロキシ基、具体的には有機化合物(A)、(B)、化合物(A−i)、(A−ii)や化合物(B−i)、(B−ii)中のヒドロキシ基の水素原子がとれ、塩化鉄(III)に配位すると考えられる。この際、鉄イオンが発色する。
この態様では、硫酸鉄(II)7水和物とともに酒石酸カリウムナトリウムを用いる。酒石酸カリウムナトリウムは無水和物であっても4水和物であってもよい。
上記検査液において、酒石酸カリウムナトリウムは、検査液中で酒石酸鉄が形成できるよう、1〜5wt%の量で含有されていればよい。発色できるためには、酒石酸および硫酸鉄(II)7水和物の割合は、重量%比(酒石酸:硫酸鉄(II)7水和物)で25〜98:2〜75が好ましい(ただし、酒石酸および7硫酸鉄(II)7水和物の合計を100重量%とする。)。
本発明の革の検査方法は、革に上記検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含む。
なお、検査液は常温で反応するため、検査液を付着させた後に加熱する必要はない。また、色の深い革の場合は、検出液を塗布した直後はぬれて、色の変化を判定しにくくなるため、検査液中の溶媒が蒸発してから判定することが好ましい。
購入した革のシートや製品が見た目では6価クロム還元化合物による処理がされているか否かがわからない場合、上記検査液を利用すれば該処理がされたものかを判定できる。また、生産管理の面では、本発明の検査方法を用いることにより、6価クロムが除去されていない革を除去済みであると誤って判断して出荷してしまうリスクがなくなる。また、何らかの理由で除去機能を失った6価クロム処理剤を用いて6価クロム除去工程を行った場合でも、本発明の検査方法によれば、革の発色性が低下するのでこれを検出できる。
以上より、本発明は以下に関する。
革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含むことを特徴とする検査液。
[2]
上記6価クロム還元化合物が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)であることを特徴とする[1]に記載の検査液。
上記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[2]に記載の検査液。
上記有機化合物(A)が、6価クロムと作用して3価に還元性を有する化学式(1)に示される構造と、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする[3]に記載の検査液。
上記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする[4]に記載の検査液。
上記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする[5]に記載の検査液。
[7]
上記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムと作用して3価に還元性を有する上記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする[2]〜[6]のいずれかに記載の検査液。
上記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[7]に記載の検査液。
上記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の検査液。
上記6価クロム還元化合物が、さらに下記式(B−i)で表される化合物(B−i)および下記式(B−ii)で表される化合物(B−ii)から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[9]に記載の検査液。
上記鉄含有化合物が塩化鉄(III)であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載の検査液。
上記鉄含有化合物が硫酸鉄(II)7水和物であり、上記検査液がさらに酒石酸カリウムナトリウムを含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載の検査液。
[13]
上記検査液中の上記鉄含有化合物の濃度が0.1〜10wt%であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれかに記載の検査液。
[14]
上記水系溶媒が水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載の検査液。
上記混合溶媒中に、水および炭素数1〜4のアルコールの合計量を100質量部としたときに水が5〜80質量部の量で、炭素数1〜4のアルコールが20〜95質量部の量で含まれていることを特徴とする[14]に記載の検査液。
上記水系溶媒が水であり、上記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載の検査液。
上記検査液中の上記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする[16]に記載の検査液。
上記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする[14]または[15]に記載の検査液。
上記検査液中の上記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする[18]に記載の検査液。
[20]
革に[1]〜[19]のいずれかに記載の検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含むことを特徴とする革の検査方法。
[21]
上記判定工程が、検査液が発色した場合に、6価クロム還元化合物で処理された革であると判定し、さらに、検査液の発色の濃さから処理が適切であったかを判定する判定工程であることを特徴とする[20]に記載の革の検査方法。
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
[実施例1−1−1]
水とIPAとを50:50(重量%比)で混合し、水性溶媒を調製した。
塩化鉄(III)5gを上記水性溶媒95gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液1−1を作製した(表1)。
塩化鉄(III)および水性溶媒の量を表1のように変更したほかは、実施例1−1−1と同様にして、検査液1−2〜1−6を作製した(表1)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液を作製した。
水とIPAとを表1に示す量で混合した水性溶媒に変更したほかは、実施例1−1−1と同様にして、検査液1−7〜1−11を作製した(表1)。
塩化鉄(III)5gおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを水94.5gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液2−1を作製した(表2)。
塩化鉄(III)および水の量を表2のように変更したほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−2〜2−6を作製した(表2)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液を作製した。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水の量を表2のように変更したほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−7〜2−10を作製した(表2)。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液(ユニセーフA−LM(商品名)、日油株式会社製)を用い、さらに、検査液中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表2のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−11〜2−15を作製した(表2)。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gとともに、さらに処理剤中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表2のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例2−1−1と同様にして、検査液2−16を作製した(表2)。
硫酸鉄(II)7水和物5g、酒石酸カリウムナトリウム5g、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを水89.5gに溶解し、5質量%の濃度で硫酸鉄(II)7水和物が含まれる検査液3−1を作製した(表3)。
硫酸鉄(II)7水和物および水の量を表3のように変更したほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−2〜3−6を作製した(表3)。すなわち、0.1、2、8、10、15質量%の濃度で硫酸鉄(II)7水和物が含まれる検査液を作製した。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水の量を表3のように変更したほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−7〜3−10を作製した(表3)。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液(ユニセーフA−LM(商品名)、日油株式会社製)を用い、さらに、検査液中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表3のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−11〜3−15を作製した(表3)。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5gとともに、さらに処理剤中でのジメチルラウリルアミンオキシドの濃度が表3のようになるように、また全量が100gとなるようにジメチルラウリルアミンオキシド水溶液および水を用いたほかは、実施例3−1−1と同様にして、検査液3−16を作製した(表3)。
塩化鉄(III)5gおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン707(商品名)、花王株式会社製)0.5gを上記水性溶媒(実施例1−1−1と同じ水性溶媒)94.5gに溶解し、5質量%の濃度で塩化鉄(III)が含まれる検査液4−1を作製した(表4)。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび水性溶媒の量を表4のように変更したほかは、実施例4−1−1と同様にして、検査液4−2〜4−5を作製した(表4)。
検査対象として、以下の革を用意した。
〔革(A−1)(ワニおよび牛)〕
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器(エネルギー分散型蛍光X線分析装置、日本電子株式会社製JSX−3202EV ELEMENT ANALYZER)で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。なお、基準試料として、日本電子株式会社製 JSX3000シリーズ 基準試料1、JSX3000シリーズ 基準試料2およびJSX3000シリーズ エネルギー校正基準試料を用いた。測定は、日本電子株式会社資料QuickManual(番号EY07007−J00、J00 EY07007G、2007年8月版)に基づき、JSX starterにつづき PlasticD3により実施した。
(A−1)で用いた6価クロム処理剤を混合溶液で5倍に薄めた処理剤に変更したほかは、(A−1)と同様にして、6価クロム処理剤による処理を行ったワニの革を得た。牛の革についても同様に処理を行った革を得た。
(A−1)で用いた6価クロム処理剤を混合溶液で10倍に薄めた処理剤に変更したほかは、(A−1)と同様にして、6価クロム処理剤による処理を行ったワニの革を得た。牛の革についても同様に処理を行った革を得た。
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの含有する全クロムの含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。
得られた6価クロム処理剤に上記ワニの革を浸漬した後、これを乾燥させて、6価クロム処理剤による処理を行った革を得た。上記牛の革についても同様に処理を行った革を得た。直ぐに、ISO17075:2008−02で6価クロムの含有量を測定したところ、6価クロムは、ワニ、牛ともに検出限界(2ppm)以下であった。ワニ、牛ともに、全クロムの含有率は、蛍光X線分析器で分析したところ、6価クロム処理剤による処理前と変化していなかった。
クロムなめしを行ったワニの革シートおよび牛の革シートを用意した。なお、時計用バンドに使用するサイズに切り取った。これらの革について、ISO17075:2008−02の手法で求めた6価クロムの含有量は、ワニが8ppm、牛が3ppmであった。また、それぞれのバンドの全クロム含有率を蛍光X線分析器で分析したところ、ワニは7141ppm、牛は16362ppmであった。これらの革については、6価クロム処理剤による処理は行わなかった。
革(A−1)(ワニおよび牛)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた。したがって、革(A−1)(ワニおよび牛)は、6価クロム還元化合物による処理がされた革であると判定できた。
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例1−1−2〜実施例1−1−11で得られた検査液1−2〜1−11をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例2−1−1〜実施例2−1−16で得られた検査液2−1〜2−16をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例3−1−1〜実施例3−1−16で得られた検査液3−1〜3−16をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
実施例1−1−1で得られた検査液1−1の代わりに、実施例4−1−1〜実施例4−1−5で得られた検査液4−1〜4−5をそれぞれ用いた他は、実施例1−2−1と同様にして、革(A−1)(ワニおよび牛)、(B)(ワニおよび牛)、(C)(ワニおよび牛)、(D)(ワニおよび牛)を検査した。
革(A−1)(ワニ)の裏側(銀面ではない側)に対して、スポイトを用いて実施例1−1−1で得られた検査液1−1の液滴をたらし、検査を行った。液滴は速やかに革にしみこみ、すぐに青色に発色したことが確認できた。これを発色基準サンプルとした。
Claims (20)
- 革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含み、
前記6価クロム還元化合物が、6価クロムに作用して3価に還元する性能を有する化学式(1)に示される構造およびヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(A)を含み、
前記鉄含有化合物が、塩化鉄(III)および/または硫酸鉄(II)7水和物である
ことを特徴とする検査液。
- 前記有機化合物(A)が、6価クロムに作用して3価に還元する性能を有する化学式(1)に示される構造と、ジヒドロキシフェニル基またはトリヒドロキシフェニル基とを有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項1に記載の検査液。
- 前記有機化合物(A)が、6価クロムに作用して3価に還元する性能を有する化学式(1)に示される構造と、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有し、かつ、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない化合物であることを特徴とする請求項2に記載の検査液。
- 前記有機化合物(A)が、
(i)没食子酸のエステルと、
(ii)タンニン酸およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物と
であることを特徴とする請求項3に記載の検査液。 - 前記化合物(ii)がタンニン酸であることを特徴とする請求項4に記載の検査液。
- 前記6価クロム還元化合物が、さらに、6価クロムに作用して3価に還元する性能を有する前記化学式(1)に示される構造を有し、かつ、ヒドロキシフェニル基、アルデヒド基およびカルボキシル基を有さない、有機化合物(B)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記有機化合物(B)が、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、エリソルビン酸およびエリソルビン酸の誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項6に記載の検査液。
- 革が、6価のクロムを3価のクロムに還元し得る6価クロム還元化合物で処理された革であるかを検査するための検査液であって、該6価クロム還元化合物と反応して発色し得る鉄含有化合物と、水系溶媒とを含み、
前記6価クロム還元化合物が、下記式(A−i)で表される化合物(A−i)およびタンニン(A−ii)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記鉄含有化合物が、塩化鉄(III)および/または硫酸鉄(II)7水和物である
ことを特徴とする検査液。
- 前記鉄含有化合物が塩化鉄(III)であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記鉄含有化合物が硫酸鉄(II)7水和物であり、前記検査液がさらに酒石酸カリウムナトリウムを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記検査液中の前記鉄含有化合物の濃度が0.1〜10wt%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記水系溶媒が水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記混合溶媒中に、水および炭素数1〜4のアルコールの合計量を100質量部としたときに水が5〜80質量部の量で、炭素数1〜4のアルコールが20〜95質量部の量で含まれていることを特徴とする請求項13に記載の検査液。
- 前記水系溶媒が水であり、前記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の検査液。
- 前記検査液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする請求項15に記載の検査液。
- 前記検査液がさらにノニオン系界面活性剤を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の検査液。
- 前記検査液中の前記ノニオン系界面活性剤の濃度が0.1〜1wt%であることを特徴とする請求項17に記載の検査液。
- 革に請求項1〜18のいずれか1項に記載の検査液を付着させ、検査液が発色した場合に、革が6価クロム還元化合物で処理された革であると判定する判定工程を含むことを特徴とする革の検査方法。
- 前記判定工程が、検査液が発色した場合に、6価クロム還元化合物で処理された革であると判定し、さらに、検査液の発色の濃さから処理が適切であったかを判定する判定工程であることを特徴とする請求項19に記載の革の検査方法。
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