JP6573175B2 - 分離装置、流体デバイス、分離方法及び混合方法 - Google Patents
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Description
本願は、2014年3月17日に出願された日本国特願2014−053353号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
更に、高価な試薬を使用する場合や少量の多検体を検査する場合において、有用性が高い方法として注目されている。
特許文献1には、トラップ容器内に液溜まりを作り、トラップ容器内に溜められた液体から気泡を除去する装置が開示されている。また、特許文献2には、デバイス内の流路の途中に気泡トラップ部を設け、主流路中を流れる流体中の気泡を除去する気泡除去手段を有する装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜2に記載の構造では、トラップに溜められた液から気泡が十分に分離されないまま、トラップから気泡を含んだ液が送液されるおそれがある。また、特許文献1に記載の装置は、トラップに溜められた液の送液を長時間継続させることが可能とするものであり、トラップには送液を継続させるために十分な液量が溜められることが想定されている。したがって、限られた量の液体の処理に用いるという観点からは改良の余地がある。
<第一実施形態>
本実施形態の分離装置は、液中に含まれる物質を分離する分離装置であって、液溜め部と、導入流路と、排出流路と、排出流路バルブと、を備えたものである。
図1Aは、本実施形態の分離装置を示す断面図である。また、図1Bは、本実施形態の分離装置を模式的に示す斜視図である。本実施形態の分離装置1は、液溜め構造12を有する液溜め部2と、導入流路3と、液溜め構造12の底面に配置され、液溜め構造12に溜められた液を排出する排出流路4と、排出流路4に設けられた排出流路バルブ4aと、を備えたものである。
本実施形態の分離装置は、前述した第一実施形態の分離装置を構成する液溜め構造の底面に、斜面が形成されているものである。
本実施形態の分離装置は、前述した第一実施形態の分離装置を構成する液溜め構造の底面に、斜面、及び、液溜め構造に溜められた液を排出流路に向けて排出する排出口が形成され、斜面は前記排出口に向かって下方に傾斜してなるものであってもよい。
排出流路が互いに異なる送液方向の少なくとも2つの流路を有している場合、排出流路バルブ4aが排出口12b近傍に位置することにより、液溜め構造内に液を溜めやすくすることができる。
互いに異なる送液方向の少なくとも2つの流路を有する排出流路4として、例えば、流体の流れる方向が互いに異なる第1流路と第2流路から構成され、第1流路は鉛直方向に平行に形成され、第2流路は第1流路と直角方向に形成された排出流路を例示できる(後述の実施例、図15A〜19C参照)。この場合、第1流路は液溜め構造の下方に形成され、第1流路上に排出流路バルブ4aが位置するので、液溜め構造を通過した液が排出流路バルブ4aと排出口12bとの間の空間に、重力にしたがって流れ込むが、第1流路は鉛直方向に平行に形成されているために物質の分離が進みやすく、第1流路における前記空間に液を溜めるための空間として用いることも可能である。
本実施形態の分離装置は、前述した第二実施形態の分離装置を構成する液溜め構造が、液溜め構造から気体を排出する気体排出口を更に備えるものである。
図3は、本実施形態の分離装置31を示す断面図である。分離装置31を構成する液溜め構造12は、液溜め構造12から気体を排出する気体排出口12cを備えている。導入流路3から液が液溜め部2へと導入されて液体に混入している気体が液溜め構造に入ると容器内の気圧が上昇する。そのため、気体排出口12cにつながる気体排出流路の先が大気解放している場合、気体排出口12cから液溜め構造内に存在していた気体が吸引等の操作を行わずとも自然と排出され、よりスムーズに液を液溜め部2へと導入させることができる。また、液溜め構造12内で分離され放出された気体を気体排出口12cから排出させることができる。そのため、液溜め構造内に溜めることのできる液量を増やすことも可能である。
また更には、気体排出口は、液溜め構造に溜められた液の液面よりも、高さ方向において上方に設けられていることが好ましい。これは、導入流路3より導入された液体が気体排出口より排出されることを防ぐためである。例えば、液面のメニスカスを考慮し、気体排出口は、液溜め構造に溜められた液の液面よりも、高さ方向において0.5mm以上上方に設けられていることが好ましく、1mm以上上方に設けられていることがより好ましく、1.5mm以上上方に設けられていることがさらに好ましい。
本実施形態の分離装置は、前述した第二実施形態の分離装置が導入流路を複数備えるものである。図4に示される、本実施形態の分離装置41では、液溜め部2へと液を導入する第1の導入流路3及び第2の導入流路3’を備えている。複数の導入流路を備えた分離装置は、複数種類の液を液溜め部内へと導入する場合に好適に用いることができる。液溜め構造に複数の物質が導入された場合、液溜め部においては、液溜め構造内に溜められた物質の混合と分離の両方が行われ得る。
本実施形態の分離装置は、前述した第三実施形態の分離装置において、液溜め構造と導入流路とをつなぐ連通口が液溜め構造の内壁面に開口し、導入流路の少なくとも底面の一部が液溜め構造の側面に対して傾斜して連通する傾斜部が設けられたものである。傾斜部は連通口の近傍に設けられていることが好ましい。本実施形態の分離装置51を示す断面図を図5に示す。導入流路3を通じて液を液溜め構造12へと導入する際、導入された液が液溜め構造12の内壁面を伝って、気体排出口12cへと到達し、液が排出されてしまう場合がある。本実施形態の分離装置51は導入流路3の少なくとも底面の一部に傾斜部3bを形成してなるものである。導入流路3を流れる液は傾斜部3bの底面を伝って液溜め構造12内へと導入される。そのため、液の導入位置を天井面から遠ざけることができ、液が液溜め構造内壁を伝って気体排出口12cへと到達することを防止することができる。そのため、液を無駄に排出させてしまうおそれを回避できる。
また、液が傾斜部3bを伝って導入される場合、傾斜部3bが無い場合と比較して、液の空気層への接触機会が高められる。そのため、傾斜部3bを設けることで液の表面張力を利用して液に含まれた気泡の分離を促進することができる。傾斜部3bの傾斜角は斜面12aと同一であってもよいし、異なってもよい。
液溜め構造への液の流入にあたっての傾斜部として、分離装置は、液を液溜め構造へと導入するための傾斜部材が、液溜め構造と導入流路とをつなぐ連通口に連接して設けられ、傾斜部材は液溜め構造の内部に向かって突出し、傾斜部材のうち液溜め構造と導入流路とをつなぐ連通口と連接する部分が最も上方に位置するように連接された形態としてもよい。本実施形態の分離装置61を示す断面図を図6に示す。傾斜部材22を設けたことで導入流路3を流れる液は傾斜部材22を伝って液溜め構造12内へと導入される。そのため、液の導入位置を天井面から遠ざけることができ、液が液溜め構造内壁を伝って気体排出口12cへと到達することを防止できる。そのため、液を無駄に排出させてしまうおそれを回避できる。傾斜部材22の傾斜角は傾斜部3bと同一であってもよいし、異なってもよい。
図7は本実施形態の分離装置を示す断面図である。本実施形態の分離装置71は、前述した第五実施形態の分離装置において、導入流路3から導入される液の飛散又は液溜め構造の内壁面の伝いを防止するための防止壁3cが、導入流路3の内壁面に形成されてなるものである。例えば防止壁3cは導入流路3の天井面に形成される。上述の第5実施形態及び第6実施形態において説明したように、導入流路3から導入されてきた液が液溜め構造12の内壁面を伝って、気体排出口12cへと到達してしまう場合がある。特に、強い吸引圧力で液体を吸引する場合等においては、より導入流路3から導入されてきた液が液溜め構造12の内壁面を伝って、気体排出口12cへと到達しやすい。また、強い吸引圧力で液体を吸引する場合等においては、導入流路3から導入されてきた液が液溜め構造12内部を飛散し、気体排出口12cへと到達してしまう場合がある。本実施形態の分離装置71では、導入流路3の天井面に形成された防止壁3cが設けられたことで、導入流路3を流れてきた液が液溜め構造12の内壁面を伝って気体排出口に到達することを防止できる。また防止壁3cは、導入流路3から導入されてきた液が液溜め構造12内部を飛散して気体排出口12cに到達することを防止できる。そのため、液を無駄に排出させてしまうおそれを回避できる。
上記防止壁にあたる構造は、液溜め構造12内部に形成されていてもよい。すなわち、分離装置は、導入流路から導入される液の飛散又は液溜め構造の内壁面の伝いを防止する防止壁が、液溜め構造の内壁面に形成されており、防止壁は、導入流路の開口部から導入された液が気体排出口へ到達しうる経路を遮るように形成されているものであってもよい。
例えば、前記防止壁は液溜め構造の天井面に形成されている。図8は本実施形態の分離装置を示す概略断面図である。本実施形態の分離装置81は、前述した第五実施形態の分離装置において、防止壁32が、液溜め構造12の天井面に形成されており、防止壁32は、導入流路3の開口部から導入された液が気体排出口12cへ到達しうる経路を遮るように形成されている。防止壁32は、前述の<第七実施形態>で説明した防止壁3cの場合と同様に、導入流路3を流れてきた液が液溜め構造12の内壁面を伝って気体排出口に到達すること、又は、導入流路3から導入されてきた液が液溜め構造12内部を飛散して気体排出口12cに到達することを防止できる。そのため、液を無駄に排出させてしまうおそれを回避できる。
<第一実施形態>
本実施形態の流体デバイスは、上記の第五実施形態の分離装置を備えた流体デバイスである。なお、本実施形態の流体デバイスを構成する流路は、マイクロメートルのスケールであっても、ミリメートルのスケールであってもよい。何れのスケールの流体デバイスについても、微細な流路を有するデバイスという意味において、「マイクロ流体デバイス」と呼ぶことができる。
本実施形態の流体デバイスは、上記の第一実施形態の流体デバイスに、更に生体分子精製部を備えたものである。図10に本実施形態の流体デバイスの基本構成を示す。流体デバイス111は生体分子精製部53の下流に分離装置51を有しており、生体分子精製部53において得られた液は、分離装置51へと送液される。
また、連続して実施する生体物質検出アプリケーションにおいて生体分子の正確な定量を行いたい場合等、生体分子精製部53から生体分子を含む溶出液をできる限り完全に回収する必要が生じる場合がある。しかし、そのために生体分子精製部53から強い吸引力で液を回収しようとすると、液の一部は飛沫あるいは気泡を含む状態で生体分子精製部53から溶出されてしまう。その点、本実施形態の流体デバイス111では、生体分子精製部53と分離装置51とを組み合わせて用いることで、生体分子精製部53において得られた精製された生体分子を含む溶出液から、容易に気泡を分離することができる。
本実施形態の分離方法は、上述した分離装置を用いて、液溜め構造に溜められた液中に含まれる物質を分離する分離方法であって、液を液溜め構造へと送液する送液工程と、液溜め構造に溜められた物質を重力により区別し、物質同士を分離させる分離工程と、を有する。
本実施形態の分離方法について、図12を参照して説明する。図12中には一例として、上述の≪分離装置≫の第5実施形態である分離装置の変形例である51’を用いた分離方法を図示してある。
前記排出流路に設けられた排出流路バルブが閉じられた状態及び、前記気体排出流路に設けられた気体排出流路バルブが開かれた状態で、前記導入流路から前記液を前記液溜め構造へと送液する送液工程と、
前記排出流路バルブが閉じられた状態および前記気体排出流路バルブが開かれた状態で、前記液中に含まれる前記気体を分離させる分離工程と、を含むものである。
まず、本実施形態の送液工程について図12(a)〜(b)を参照して説明する。
本実施形態の分離方法において、図12(a)に示される分離装置51’は、液溜め構造12へと送液される液6が気泡7を含んでいる。
送液工程は、排出流路バルブが閉じられた状態で行うことが好ましい。図12(b)に示す分離装置51’では、排出流路バルブ4aは閉じられている。排出流路バルブ4aが閉じられた状態で送液工程を行うことにより、液溜め構造12に溜められた液6が気泡7を含んだ状態で排出流路から排出されてしまうことを防止できる。
図12(c)は、送液が完了した後の分離装置51’の様子を示すものである。分離装置51’の液溜め構造12には気泡7を含んだ状態にある液6が溜められている。なお、本実施形態においては、分離工程を送液工程の後に行う場合を示しているが、前記分離工程は送液工程と同時又は一部同時に行われてもよい。
気体排出流路バルブ5aが開かれていることで、分離された気体を気体排出流路5から排出し易くすることができる。またこの時、導入流路バルブ3aを閉じることで、分離された気体を導入流路へと侵入させないようにすることができる。
このようにして、気泡7を含んだ液6から気泡を分離し、気泡7との分離が完了した液6を得ることができる。本発明の実施態様によれば、液を無駄にすることなく、液中からより確実に物質を分離することができる。
本実施形態の混合方法は、上述した分離装置を用いて、液溜め構造において液を混合する混合方法であって、第1の液及び/又は第2の液を導入流路を通して液溜め構造へと送液し、液溜め構造において、第1の液および第2の液を混合させる方法である。本実施形態の混合方法について、図13を参照して説明する。
図13(a’)に示すように、第1の液および第2の液は、第2の液26が溜められた状態にある液溜め構造12へと、第1の液16を導入流路3を通して液溜め構造12へと送液してもよい。あるいは、図13(a’ ’)に示すように第1の液16及び第2の液26を導入流路3を通して液溜め構造12へと順次送液してもよい。
[分離装置、及び分離装置を備えた流体デバイスの作製]
プラスチック板(日本アクリエース株式会社 アクリエース(登録商標)MS)を切削加工し、分離装置Aを作製した。分離装置Aの構造を説明する図を図15A及び図15Bに示す。また、分離装置Aの構成に加えて、導入流路に傾斜部を設けた分離装置Bを作製した。分離装置Bの構造を説明する図を図16A及び図16Bに示す。さらに、分離装置Bの構成に加えて、導入流路3の内壁面にポリジメチルシロキサン(PDMS)製の防止壁をさらに設けた分離装置Cを作製した。分離装置Cの構造を説明する図を図17A及び図17Bに示す。図15A〜図17Bに示す構造寸法の単位はmmである。
上記のとおり作製した流体デバイスA1、流体デバイスB1及び流体デバイスC1を用いて、以下のように検証実験を行った。
(1)核酸のシリカメンブレンへの捕捉
生体分子精製部に埋め込まれたシリカメンブレンに核酸捕捉液を通過させることで核酸を捕捉した。核酸捕捉液には、カオトロピック剤である1Mグアニジンチオシアネート、80%エタノール、生体分子として100amol miRNAが含まれる。前記核酸捕捉液1mlを吸引圧力50〜70kPaで送液し、1分かけて前記核酸捕捉液がシリカメンブレンを通過させるように送液した。バルブ161aを開き、流路161よりメンブレンを通過した液体を排出した。尚この時バルブ3a、バルブ4a、バルブ5aは閉じている(図18参照)。
続いて、洗浄液をシリカメンブレンへ導入しグアニジンチオシアネートを洗い流した。
洗浄液は80%エタノール、使用量は1mLである。洗浄液を吸引圧力50〜70kPa、1分かけて送液することで洗浄を行った。バルブ161aを開き、流路161よりメンブレンを通過した液体を排出した。尚この時バルブ3a、バルブ4a、バルブ5aは閉じている。
エタノールの持ち込みを防ぐため、シリカメンブレンを乾燥させた。洗浄液導入口から大気を吸引し、シリカメンブレンを通過させることで乾燥を行った。この時、吸引圧力50〜70kPa、所要時間2分であった。バルブ161aを開き、流路161より大気を吸引した。尚この時バルブ3a、バルブ4a、バルブ5aは閉じている。
核酸溶出液をメンブレンに導入し、核酸を溶出した。核酸溶出液はRNase-free waterである。核酸溶出液の使用量は30μlであり、吸引圧力50〜70kPa、10秒かけて吸引することでフィルターから核酸を含む溶出液を回収した。バルブ3a、バルブ5aを開き、気体排出流路5より吸引することで、導入流路3へ溶出液を送液した。尚この時バルブ4a、バルブ161aは閉じている。この時点では、核酸溶出液は飛沫あるいは気泡を含む状態でシリカメンブレンから溶出された。
核酸溶出液から気泡を分離するため、核酸溶出液を分離装置へ導入した。
核酸溶出液を気体排出流路より吸引圧力10〜50kPa、5秒かけて吸引し、液溜め構造内に核酸溶出液を導入した。バルブ3a、バルブ5aを開き、気体排出流路5より吸引することで、液溜め構造12へ溶出液を送液した。尚この時バルブ4a、バルブ161aは閉じている。流体デバイスA1〜C1のいずれを用いた場合でも、液体は空間下部へ留まった。
この時、液溜め構造の空間容積は30μLの溶出液に対して十分に大きいことが好ましいことが判明した。30μLの溶出液に対して、空間容量が45μLの場合、気体排出口から液体も排出されてしまう場合があった。空間容量が100μLの場合では、気体のみが排出され、液体は空間下部へ留まった。
流体デバイスA1を用いた場合でも、液体は液溜め構造の空間下部へ留まり、効率の良い分離が達成された。だが、流体デバイスA1を用いた場合、核酸溶出液を分離装置Aへと導入した際に、核酸溶出液の一部が液溜め構造の天井面を伝って気体排出口へ到達してしまう場合もあった。
(流体デバイスB1)
流体デバイスB1を用いた場合、流体デバイスA1を用いた場合と比較して、核酸溶出液が液溜め構造の天井面を伝って気体排出口へ到達してしまう頻度及び量を低く抑えることができた。これは、分離装置B1では、導入流路に傾斜部を設けたことにより、液体の流入位置を液溜め構造の天井面から遠ざけることができたためと考えられる。
(流体デバイス1)
しかし、さらに強い吸引圧力で液体を吸引する必要がある場合には分離装置Bの構造だけでは液体が液溜め構造の天井面を伝うことを防ぎきれない場合があった。また、導入する液体組成とデバイス素材の親和性が強い場合にも、液体が液溜め構造の天井面を伝うことを防ぎきれない場合があると考えられた。
そこで、流体デバイスC1を用いたところ、強い吸引圧力で液体を吸引した場合であっても、核酸溶出液が液溜め構造の天井面を伝って気体排出口へ到達してしまう頻度及び量を低く抑えることができた。これは、分離装置Cでは、導入流路に天井面に三角柱を横にした形状の防止壁を設けたことにより、液体の流入位置をさらに天井面から遠ざけることができたためと考えられる。
液溜めに溜まった気体を含まない核酸溶出液は、吸引操作によって排出流路より排出した。バルブ3a、バルブ4aを開き、排出流路4より吸引することで、溶出液を排出した。尚この時バルブ5a、バルブ161aは閉じている。
上述の方法で回収された核酸溶出液には気泡の残留がないことを目視により確認した。
また、回収できた核酸溶出液量は23μlであった。液溜め構造を設けない場合にも回収された溶出液量は23μlであり、この構造の追加に伴う液体のロスは無いことが確認された。
[分離装置、及び分離装置を備えた流体デバイスの作製]
プラスチック板(日本アクリエース株式会社 アクリエースMS)を切削加工し、分離装置Dを作製した。分離装置Dの構造を説明する図を図19A〜図19Cに示す。図19A〜図19Cに示されるように分離装置Dは2つの導入流路3及び導入流路3’を備える。図19A〜図19Cに示す構造寸法の単位はmmである。
さらに、プラスチック板(日本アクリエース株式会社 アクリエースMS)を切削加工し、上記分離装置Dを備えた流体デバイスD1を作製した。
上記のとおり作製した流体デバイスD1を用いて以下のように検証実験を行った。
(試薬)
混合する2種類の液体には超純水と100%エタノールを用いた。混合が判断しやすいように、超純水には色素を加え着色した。
一方の導入流路を通して着色した超純水0.5mLを吸引操作により液溜め構造内へ導入した。この時の吸引圧力は1〜30kPa、所要時間は15秒であった。バルブ3a、バルブ5aを開き、気体排出流路5より吸引することで、導入流路3より超純水を液溜め構造12へ送液した。尚この時バルブ3a’、バルブ4aは閉じている(図19A〜図19C参照)。
他方の導入流路を通してエタノール0.5mL を吸引操作により液溜め構造内へ導入した。
この時の吸引圧力は1〜30kPa、所要時間は15秒であった。バルブ3a’、バルブ5aを開き、気体排出流路5より吸引することで、導入流路3’よりエタノールを液溜め構造12へ送液した。尚この時バルブ3a、バルブ4aは閉じている。
エタノールの導入と並行して、2液の混合を目視により確認した。エタノール導入に伴い生じた乱流によって混合が確認できた。
また、混合の達成には、空間の容積、特に高さに十分な余裕があることが好ましいことが判明した。高さ5mm、直径20mm、容量約1.1mLの空間を用いた場合、液体が空間の壁面に表面張力で張り付いてしまい、メニスカス部分が気体排出口へ到達して外部に流出してしまう場合があった。高さ10mm、直径20mm、容量約2mLの空間を用いた場合、液体を一層容易に空間下部に収容できた。
混合後の溶液を、排出流路から吸引操作によって排出した。バルブ3a’、バルブ4aを開き、排出流路4より吸引することで、排出流路4より混合後の液体を排出した。尚この時バルブ3a、バルブ5aは閉じている。
Claims (28)
- 液中に含まれる物質を分離する分離装置であって、
液溜め構造を有する液溜め部と、
前記液溜め部へと液を導入する導入流路と、
前記液溜め構造の底面に配置され、前記液溜め構造に溜められた液を排出する排出流路と、
前記排出流路に設けられ、前記液溜め構造に液を溜めることと前記液溜め構造に溜められた液を排出することとを制御する排出流路バルブと、を備え、
前記液溜め構造と前記導入流路とをつなぐ連通口が前記液溜め構造の内壁面に開口し、前記導入流路の少なくとも底面の一部が前記液溜め構造の側面に対して傾斜して連通する傾斜部が設けられたことを特徴とする分離装置。 - 前記液溜め部の、液が溜められ得る空間の空間容積は、1μL〜10mLである、請求項1に記載の分離装置。
- 前記導入流路の高さは0.1〜0.5mmであり、液溜め構造の高さは0.2〜5mmである、請求項1又は2に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造の底面には斜面が形成されている、請求項1又は2に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造の底面に、前記液溜め構造に溜められた液を前記排出流路に向けて排出する排出口が形成され、前記斜面は前記排出口に向かって下方に傾斜してなる、請求項4に記載の分離装置。
- 前記斜面は、前記液溜め構造の側面から前記排出口まで連続的に勾配を有する、請求項5に記載の分離装置。
- 前記排出流路は、前記排出口に接続する第1流路と、前記第1流路に接続し、前記第1流路とは異なる方向に流体が流れる第2流路を有し、
前記排出流路バルブは、前記第1流路に位置する、請求項5又は6に記載の分離装置。 - 前記導入流路の流路内径は、前記排出流路の流路内径と比べて√2倍以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造に溜められた液は、前記物質として気体を含み、
前記液溜め構造は、前記液溜め構造から前記気体を排出する気体排出口を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分離装置。 - 前記気体排出口につながる気体排出流路を備え、前記気体排出流路と、前記導入流路とに各々バルブを備える、請求項9に記載の分離装置。
- 前記液溜め部へと液を導入するための吸引ポンプが前記気体排出口と接続されている、請求項9又は10に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造の底面に、前記液溜め構造に溜められた液を前記排出流路に向けて排出する排出口が形成され
前記液溜め構造の底面に形成された前記排出口が前記底面の中央部に位置し、前記液溜め構造の斜面は前記排出口に向かって集中して下方に傾斜してなる、請求項5〜11のいずれか一項に記載の分離装置。 - 前記導入流路を複数備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造と前記導入流路とをつなぐ連通口が前記液溜め構造の内壁面に開口し、前記連通口の少なくとも一部分が、前記液溜め構造に溜められた液の液面よりも、高さ方向において上方に設けられている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造に溜められた液は、前記物質として気体を含み、
前記液溜め構造は、前記液溜め構造から前記気体を排出する気体排出口を備え、
前記液溜め構造と前記導入流路とをつなぐ連通口が前記液溜め構造の内壁面に開口し、前記連通口の少なくとも一部分が、前記気体排出口よりも高さ方向において下方に設けられている、請求項9〜14のいずれか一項に記載の分離装置。 - 液を前記液溜め構造へと導入するための傾斜部材が、前記液溜め構造と前記導入流路とをつなぐ連通口に連接して設けられ、
前記傾斜部材は、前記液溜め構造の内部に向かって突出し、前記傾斜部材のうち前記連通口と連接する部分が最も上方に位置するように連接されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の分離装置。 - 前記導入流路から導入される液の飛散又は前記液溜め構造の内壁面の伝いを防止するための防止壁が、前記導入流路の内壁面に形成されている、請求項1〜16のいずれか一項に記載の分離装置。
- 前記液溜め構造に溜められた液は、前記物質として気体を含み、
前記液溜め構造は、前記液溜め構造から前記気体を排出する気体排出口を備え、
前記防止壁が、前記液溜め構造の内壁面に形成されており、
前記防止壁は、前記導入流路の開口部から導入された液が前記気体排出口へ到達しうる経路を遮るように形成されている、請求項17に記載の分離装置。 - 前記液溜め構造に溜められた液は、前記物質として気体を含み、
前記液溜め構造は、前記液溜め構造から前記気体を排出する気体排出口と、
前記気体排出口につながる気体排出流路と、を備え、
前記液溜め構造において、側面あるいは底面の少なくともいずれか1つの面は、前記液溜め構造の天井面あるいは気体排出流路の少なくともいずれか1つの面と比較して、前記液溜め構造へ導入され得る液との親和性が高い、請求項1〜18のいずれか一項に記載の分離装置。 - 請求項1〜19のいずれか一項に記載の分離装置を備えたことを特徴とする流体デバイス。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の分離装置を用いて、前記液溜め構造に溜められた液中に含まれる物質を分離する分離方法であって、
前記導入流路を通して、液を前記液溜め構造へと送液する送液工程と、
前記液溜め構造に溜められた物質を重力により区別し、物質同士を分離させる分離工程と、を有することを特徴とする分離方法。 - 前記送液工程は、前記排出流路バルブが閉じられた状態で行う、請求項21に記載の分離方法。
- 前記分離工程において、前記排出流路バルブが閉じられた状態を所定時間継続し、
その後、前記分離工程の後に、前記排出流路バルブを開き前記液溜め構造に溜められた液を排出する排出工程をさらに有する、請求項21又は22に記載の分離方法。 - 導入流路と排出流路と気体排出流路とを備え、前記排出流路に排出流路バルブが設けられ、前記気体排出流路に気体排出流路バルブが設けられた液溜め構造に溜められた液中に含まれる気体を分離する分離方法であって、
前記液溜め構造と前記導入流路とをつなぐ連通口が前記液溜め構造の内壁面に開口し、前記導入流路の少なくとも底面の一部が前記液溜め構造の側面に対して傾斜して連通する傾斜部が設けられており、
前記排出流路に設けられた前記排出流路バルブが閉じられた状態及び、前記気体排出流路に設けられた前記気体排出流路バルブが開かれた状態で、前記導入流路から前記液を前記液溜め構造へと送液する送液工程と、
前記排出流路バルブが閉じられた状態及び前記気体排出流路バルブが開かれた状態で、前記液中に含まれる前記気体を分離させる分離工程と、を含むことを特徴とする分離方法。 - 前記分離工程は、前記気体排出流路を介して前記液溜め構造内の気体を吸引することによって前記液中に含まれる前記気体を分離させることを含む、請求項24に記載の分離方法。
- 前記気体排出流路バルブが閉じられた状態で前記排出流路バルブを開き、前記液溜め構造に溜められた前記液を排出する排出工程を含む、請求項24又は25に記載の分離方法。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の分離装置を用いて、前記液溜め構造において液を混合する混合方法であって、
第1の液及び第2の液を、前記導入流路を通して前記液溜め構造へと送液し、或いは、第1の液を、前記導入流路を通して第2の液が溜められた状態にある前記液溜め構造へと送液し、
前記第1の液及び前記第2の液が導入された前記液溜め構造において、前記第1の液及び前記第2の液を混合させることを特徴とする混合方法。 - 請求項13〜19のいずれか一項に記載の分離装置を用いて、前記液溜め構造において液を混合する混合方法であって、
一方の導入流路を通して第1の液を、他方の導入流路を通して第2の液を、前記液溜め構造へと送液し、
前記液溜め構造において、前記第1の液及び前記第2の液を混合させることを特徴とする混合方法。
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