以下、本発明を適用する実施形態について、図面を参照し説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の記述により本発明が限定されるものではない。
<<第一の実施形態>>
第一の実施形態のMRI装置について、図1、図2等を用いて説明する。
第一の実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、図1に示すように、画像再構成静磁場中に置かれた被検体203に高周波磁場パルスおよび傾斜磁場を印加して、被検体から核磁気共鳴信号を複素信号として検出する計測部200と、計算部209とを備えている。計算部209は、図2のように、画像再構成部400と、磁化率分布算出部530と、信頼度分布算出部540とを備えている。画像再構成部400は、計測部200が検出した複素信号から被検体画像を再構成する。ここで、被検体画像とは、被検体を表す画像であればどのような画像であってもよく、たとえば複素画像や絶対値画像である。また、被検体画像は、画素値が複素数の複素画像であってもよい。磁化率分布算出部530は、被検体画像に基づいて被検体203の組織の磁化率の分布を算出する。信頼度分布算出部540は、磁化率の算出精度を表す信頼度の分布を被検体画像に基づいて算出する。
よって、操作者は、磁化率分布算出部530の算出した磁化率(算出磁化率)の分布から、被検体203の組織の磁化率の分布を把握することができる。このとき、信頼度分布算出部540は、磁化率分布算出部530の算出した磁化率の算出精度を表す信頼度の分布を、被検体画像に基づいて算出しているため、操作者は、所望の組織についての算出磁化率が、信頼度の高いものであるかどうかを信頼度の分布から容易に把握することができる。操作者は、組織の信頼度の高い領域を選ぶことにより、算出精度の高い磁化率を取得することが可能になる。
信頼度分布算出部540は、計測部209が検出した複素信号(MRI信号)に混入しているノイズに起因する磁化率の算出精度の低下の度合いを、信頼度として、予め定めた演算により算出する。被検体画像が位相画像である場合、位相画像の画素値は、SNRが低い領域においてばらつきが大きくなる。よって、磁化率分布算出部530が、被検体画像に基づいて算出する磁化率も、上記SNRが低い領域においてばらつきが大きくなり、算出精度が低下する。
よって、信頼度分布算出部540は、画像のSNRが低く、位相のばらつきが大きい領域において、信頼度が低くなるように信頼度を算出する。信頼度の算出方法としては、例えば、被検体画像である複素画像から磁場画像を算出し、磁場画像から信頼度画像を算出する方法を用いることができる。磁場画像の生成方法としては、たとえば水脂肪分離処理により得られた周波数画像から算出する方法を用いることができる。
信頼度分布算出部540による具体的な信頼度分布の算出方法としては複数の方法があるが、第1の方法としては、磁場画像の空間的なばらつきを求め、ばらつきが大きいほど、信頼度が低くなるように算出する方法を用いることができる。第2の方法としては、マルチエコー法により得られた複数の被検体画像を、水脂肪分離処理のための信号モデルにフィッティングする際の誤差を求め、誤差が大きいほど信頼度が低くなるように算出する方法を用いることも可能である。第3の方法としては、水脂肪分離処理により算出された推定画像から伝搬周波数誤差を算出し、算出した伝搬周波数誤差に応じた信頼度を算出する方法を用いることも可能である。第4の方法としては、被検体画像である複素画像の各画素の絶対値(絶対値画像)を求め、絶対値が小さい画素の信頼度が小さくなるように信頼度画像を算出する方法を用いることができる。第5の方法としては、磁化率画像からアーチファクトのある領域を検出し、検出したアーチファクトのある領域が他の領域に比べて小さい信頼度となるように信頼度画像を生成する方法を用いることも可能である。第6の方法としては、磁化率算出時の誤差を信頼度とする方法を用いることも可能である。
磁化率画像および信頼度画像の具体的な算出方法については、第二の実施形態において明らかにする。
磁化率分布算出部530は、磁化率分布として、被検体画像に対応して磁化率の分布を表す磁化率画像(以下、磁化率マップとも呼ぶ)を生成することが好ましい。同様に、信頼度分布算出部540は、磁化率画像に対応する、信頼度の分布を表す信頼度画像(以下、信頼度マップとも呼ぶ)33を生成し、生成した信頼度画像33を、図3のように被検体画像31および磁化率画像32のうち少なくとも一方とともに表示装置210に表示させることが望ましい。ここでの被検体画像とは、たとえば絶対値画像である。例えば、図3のように信頼度画像33を、被検体画像31および磁化率画像32と並べて表示装置210に表示する。図3の信頼度画像は、画像の濃度により信頼度を表しており、白いほど信頼度が高い。
操作者は、表示装置210に表示された磁化率画像32および信頼度画像33により、磁化率分布および信頼度分布を容易に把握することができる。また、被検体画像31および磁化率画像32のうち少なくとも一方とともに信頼度画像33を表示装置210に表示することにより、信頼度画像33と、被検体画像31や磁化率画像32との対応関係を操作者が容易に把握できる。よって、被検体画像31や磁化率画像32から、磁化率を取得したい組織の位置や範囲等を把握し、その範囲内で信頼度が高い領域を信頼度画像に基づいて選択することが可能になる。選択した信頼度の高い領域、すなわち磁化率の算出精度の高い領域に関心領域(ROI)を設定し、その関心領域の磁化率を、磁化率画像から読み出す等することができるため、操作者は信頼度の高い算出磁化率を取得することが可能になる。
磁化率画像32や信頼度画像33の表示方法としては、図3のように並べて表示する方法に限られるものではない。例えば、信頼度画像の信頼度に応じて、磁化率画像の対応する画素の透明度や彩度を変化させた画像に変換することも可能である。具体的には、信頼度画像の信頼度が低い位置に対応している磁化率画像の画素の透過度が高くなるように画像変換することが可能であるし、信頼度画像の信頼度が低い位置に対応している磁化率分布の画素の彩度を低下させることも可能である。
また、本実施形態のMRI装置は、磁化率分布(磁化率画像32)または被検体画像31において信頼度が予め定めた閾値以上の領域を、関心領域の設定可能領域として設定する関心領域設定部700をさらに有する構成としてもよい。関心領域設定部700は、関心領域設定可能領域34を例えば図4のように磁化率画像32、または被検体画像31上に表示することも可能である。図4の例では、磁化率画像32に重畳させて、信頼度が予め定めた閾値以上の関心領域設定可能領域34以外の領域を黒く塗りつぶす画像を表示している。これにより、黒くぬりつぶされていない領域は、信頼度が予め定めた閾値以上の関心領域設定可能領域34であることが認識でき、操作者は、この領域34内に1以上の関心領域35,36を容易に設定することができる。また、MRI装置は、操作者による1以上の関心領域35,36の位置決定の操作を受け付ける操作部(入力装置)212を備えていてもよい。これにより、操作者は、入力装置212を操作することにより、所望の位置に1以上の関心領域35,36を設定することができる。
関心領域設定部700は、入力装置212が受け付けた関心領域35,36の位置が、関心領域設定可能領域34内である場合、受け付けた位置に関心領域35,36を設定する。そして、関心領域設定部700は、関心領域35,36内の磁化率の値(画素値)に対して予め定めた演算処理を施す。例えば、磁化率の平均値や、磁化率分布の中央値等を求め、その関心領域の磁化率の代表値とする。関心領域35,36が複数である場合には、複数の関心領域の代表値の差をさらに演算により求めることができる。演算結果は、図4のように、関心領域35,36の位置と共に、表示装置210に表示する。演算結果とともに、関心領域の信頼度の値の平均等を図4の表に表示することもできる。なお、入力装置212が、操作者から受け付けた関心領域の位置が関心領域設定可能領域34の外側である場合には、位置を変更するように操作者に促す表示を表示装置210に表示させる等する。
また、関心領域設定部700は、磁化率分布(磁化率画像)または被検体画像に予め定めておいた被検体の組織のモデルをフィッティングし、モデルに基づいた被検体203の組織の範囲を、関心領域設定可能領域34とともに、表示装置210に表示させることも可能である。例えば、被検体画像の撮影部位が脳である場合、標準脳と呼ばれる標準的な脳画像を非剛体位置合わせ処理等することにより、被検体画像または磁化率分布画像にフィッティング(レジストレーション)することができる。これにより、被検体画像または磁化率分布画像上に、被検体組織の範囲を例えば重畳させて表示することができるため、操作者は、フィッティングされた組織のモデルを見ながら、所望の組織に関心領域を容易に設定することができる。ここで、もちろん、磁化率分布画像を標準脳にレジストレーションしてもよい。
また、操作者が関心領域を設定するのではなく、関心領域設定部700が、モデルに基づいた被検体の組織のうち、予め定めた組織の範囲内であって、関心領域設定可能領域34内に、1以上の関心領域を設定する構成にすることも可能である。例えば、関心領域設定部700は、入力装置212を介して操作者が関心領域を設定したい組織として、前頭葉と側頭葉とを受け付けた場合、標準脳でフィッティングした前頭葉と側頭葉の範囲内であって、関心領域設定可能領域34内に、それぞれ関心領域を設定するように構成することができる。
<<第二の実施形態>>
本発明の第二の実施形態として、具体的なMRI装置について説明する。
図5に、本実施形態のMRI装置の外観図の一例を示す。本実施形態のMRI装置の形状はどのようなものであってもよい。例えば、図5(a)のように、開放感を高めるために磁石を上下に分離したハンバーガー型(オープン型)の垂直磁場方式のMRI装置(垂直磁場MRI装置)100にすることができる。図5(b)のように、ソレノイドコイルで静磁場を生成するトンネル型磁石を用いた水平磁場方式のMRI装置(水平磁場MRI装置)101としてもよい。また、図5(c)のように、図5(b)と同じトンネル型磁石を用い、磁石の奥行を短くし且つ斜めに傾けることによって、開放感を高めた水平磁場方式のMRI装置102にしてもよい。図5(a)〜(c)のMRI装置の形態はそれぞれ一例であり、本発明のMRI装置の外観がこれらに限定されるものではない。
以下、図5(b)に示す水平磁場型のMRI装置101とする場合を例にあげて、さらに詳しい構成を図1、図6等を用いて説明する。また、以下、本実施形態では、MRI装置101の静磁場方向をz方向、それに垂直な2方向のうち、測定対称の被検体を載置するベッド面に平行な方向をx方向、他方向をy方向とする座標系を用いる。また、以下静磁場を単に磁場とも呼ぶ。
本実施形態のMRI装置101は、第1の実施形態と同様に、計測部200と計算部209とを備えている。計測部200は、図1のように、被検体203が配置される撮像空間に、被検体203の体軸に平行な方向に静磁場を発生するマグネット201と、撮像空間に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル202と、被検体203に対して高周波磁場を照射する送信コイルおよび核磁気共鳴信号(MRI信号、エコー)を検出する受信コイルを含むプローブ207とを備えている。さらに計測部200は、傾斜磁場コイル202に接続された傾斜磁場電源205と、プローブ207の送信コイルに接続された高周波磁場発生器206と、プローブ207の受信コイルに接続された受信器208と、これらの動作タイミングを制御するシーケンサ204と、計算部209と、入力装置212と、表示装置210と、記憶装置211と、を備える。被検体(例えば、生体)203は寝台(テーブル)等に載置され、マグネット201が静磁場を発生する撮像空間内に配置される。本実施形態では、撮像対象を肝臓とする。そのため、被検体の腹部が静磁場空間内に配される。ただし、撮像対象は肝臓に限定されず、頭部や心臓など任意であることは云うまでも無い。
シーケンサ204は、傾斜磁場電源205と高周波磁場発生器206とに命令を送り、それぞれ傾斜磁場コイル202およびプローブ207の送信コイルに所定の波形の電力を供給させ、所定の傾斜磁場および高周波磁場をそれぞれ発生させる。プローブ207の発生した高周波磁場が照射された被検体203からは、MRI信号に信号が発生し、プローブ207の受信コイルによって受波される。受信コイルの出力は、受信器208によって検波される。検波の基準とする核磁気共鳴周波数(検波基準周波数f0)は、シーケンサ204によりセットされる。検波された信号は、計算部209に送られ、ここで画像再構成などの信号処理が行われる。その結果は、表示装置210に表示される。必要に応じて、記憶装置211に検波された信号や測定条件、信号処理後の画像情報などを記憶させてもよい。シーケンサ204は、予めプログラムされたタイミング、強度で各部が動作するように制御を行う。プログラムのうち、特に、高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したものはパルスシーケンスと呼ばれる。
パルスシーケンスは、目的に応じて種々のものが知られており、任意のパルスシーケンスを用いることができる。本実施形態のMRI装置101では、磁場強度の空間分布の不均一性に応じた信号が得られるGrE(Gradient Echo)系のパルスシーケンスを用いる。GrE系のパルスシーケンスには、例えば、RSSG(RF-spoiled-Steady-state Acquisition with Rewound Gradient-Echo)シーケンスがある。
計算部209は、図6に示すように、計測制御部300と、画像再構成部400と、画像変換部500と、表示処理部600と、関心領域(ROI)設定部700と、ROI内統計値算出部800とを備えている。画像変換部500は、周波数画像算出部510と、磁場画像算出部520と、磁化率分布算出部530と、信頼度分布算出部540を含む。これらのうち、画像再構成部400と、磁化率分布算出部530と、信頼度分布算出部540と、関心領域(ROI)設定部700は、第1の実施形態の図2の各構成と同様のものである。なお、第2の実施形態では、画像処理により、磁化率分布として磁化率画像を、信頼度分布として信頼度画像を求めるため、以下、磁化率分布算出部530および信頼度分布算出部540をそれぞれ磁化率画像算出部540と呼ぶ。計算部209のこれらの各部の機能は、記憶装置211に格納されたプログラムを、計算部209のCPUがメモリにロードして実行することによりソフトウエアで実現することも可能であるし、これらの各部の機能のすべてまたはその一部を、ASICのようなカスタムICやFPGA等のプログラマブルIC等のハードウエアにより実現することも可能である。
以下、本実施形態の計算部209の、計測制御部300、画像再構成部400、画像変換部500、表示処理部600、ROI設定部700、ROI内統計値算出部800による処理の詳細を、図7に示した撮像処理の処理フローに沿って説明する。
操作者によって入力装置212を介して各種の計測パラメータが設定され、撮像開始の指示が入力されると、計測制御部300は、予め定めた計測シーケンス910を実行し、計測を行う(ステップS1101)。図8は、計測シーケンス910のタイムチャートの一部を示す。この計測シーケンス910は、グラディエントエコー(GrE)型のパルスシーケンスである。なお、計測シーケンス910において、RFはRFパルスの、Gsはスライス選択傾斜磁場の、Gpは位相エンコード傾斜磁場の、Grは読み出し傾斜磁場の、それぞれ印加タイミングをそれぞれ示す。またエコーは、エコー(NMR)信号の取得タイミングを示す。計測制御部300は、図8のように予め定められたパルスシーケンスに従って、シーケンサ204に指示を行い、エコー(NMR)信号を取得し、k空間に配置する。シーケンサ204は、計測制御部300の指示に従い、傾斜磁場電源205と高周波磁場発生器206とに命令を送り、それぞれ傾斜磁場および高周波磁場を発生させる。そして、プローブ207の受信コイルによってエコーを受波させ、受信器208が検波を行うことにより、エコー信号を複素信号として受信する。具体的には、計測シーケンス910では、1回の繰り返し時間TR内に以下の手順で複数のエコー信号の計測を行う。ここでは、4つの異なるエコー時間においてエコー信号931〜934を取得する場合を例示する。なお、最初のエコー時間をt1、その後のエコー時間の間隔(エコー間隔)をΔtとする。
すなわち、図8のパルスシーケンスでは、まず、RFパルス911を被検体203に照射し、被検体203の水素原子核スピンを励起する。この際、被検体203の特定のスライス(撮像領域)を選択するために、例えばz方向にスライス選択傾斜磁場(Gs)912をRFパルス911と同時に印加する。続いてエコー信号に位相エンコードするために、例えばy方向の位相エンコード傾斜磁場(Gp)913を印加する。その後、最初のRFパルス911照射から時間t1後に、例えばx方向の読み出し傾斜磁場(Gr)921を印加してエコー信号(第一エコー信号)931を計測する。更に、第一エコー信号931の計測から時間Δt後の時刻t2に、極性の反転した読み出し傾斜磁場(Gr)922を印加してエコー信号(第二エコー信号)932を計測する。同様に、第二エコー信号932の計測から時間Δt後の時刻t3に、極性の反転した読み出し傾斜磁場(Gr)923を印加してエコー信号(第三エコー信号)933を計測する。さらに、第三エコー信号933の計測から時間Δt後の時刻t4に、極性の反転した読み出し傾斜磁場(Gr)924を印加してエコー信号(第四エコー信号)934を計測する。
第一エコー信号931、第二エコー信号932、第三エコー信号933、第四エコー信号934を計測する際のエコー時間t1、t2、t3、t4の少なくとも一つは、水と脂肪の位相差が0にならない時刻となるように、エコー時間t1およびエコー間隔Δtを設定する。なお、水と脂肪の周波数差をfwfとしたとき、水と脂肪が同位相になる時間をtInとすると、tInはm/fwfで求めることができる(なお、mは整数である)。よって、エコー時間t1、t2、t3、t4の少なくとも一つが、このtInを避けるように、エコー時間t1、t2、t3、t4、またはエコー時間t1およびエコー間隔Δtを設定する。本実施形態では、エコー時間、エコー間隔、エコー取得回数は、予め設定しておくことも可能であるし、ユーザが入力装置212を介して設定するように構成することも可能である。
計測制御部300は、位相エンコード傾斜磁場913の強度を変化させながら、図8のパルスシーケンスを所定回数繰り返し実行させることにより、被検体101の予め定めた撮像領域へのRFパルス911の照射、および同領域からのエコー信号931、932、933、934の計測を繰り返す。繰り返し回数は、例えば128回、256回等である。これにより、当該撮像領域の画像再構成に必要な数のエコー信号を繰り返し取得する。繰り返し回数分の第一エコー信号931は、ステップ1102において1つの原画像(第一原画像)の再構成に用いられる。同様に、繰り返し回数分の第二エコー信号932、第三エコー信号933、第四エコー信号934により、それぞれ、第二原画像、第三原画像、第四原画像の再構成に用いられる。第一〜第四原画像は、ステップ1103で説明する水画像および脂肪画像を算出するための演算用の原画像として記憶装置等に保存され、使用される。なお、異なるエコー時間の数、すなわち原画像の数は4つに限らず、任意である。また、k空間において回転状にデータを取得するラジアルスキャンなど、ノンカーテシアン撮像方法を用いてもよい。
ステップ1102について具体的に説明する。ステップ1101において計測を終えると、画像再構成部400は、計測した各エコー時間t1、t2、t3、t4のエコー信号から画像(原画像I1〜I4)を再構成する画像再構成処理を行う(ステップS1102)。すなわち、各エコー信号を、k空間上に各々配置し、フーリエ変換することにより、各エコー時間t1、t2、t3、t4の原画像I1(第一原画像)、原画像I2(第二原画像)、原画像I3(第三原画像)、原画像I4(第四原画像)を図9(a)のようにそれぞれ算出する。各原画像I1〜I4は各画素値が複素数となる複素画像である。
画像変換部500は、得られた複素画像(原画像I1〜I4)に対して種々の画像変換処理を行って、複素画像(原画像I1〜I4)を、図3の磁化率画像32および信頼度画像33に変換する(ステップS1103)。画像変換処理の詳細は後述する。
表示処理部600は、得られた磁化率画像32と信頼度画像33を濃淡画像として表示装置210に、例えば第1の実施形態で説明した図3や図4のように表示する(ステップS1104)。なお、磁化率画像32だけを表示させてもよい。本実施形態の表示処理の詳細は後述する。
ROI設定部700は、例えば第1の実施形態で説明した図4のように、磁化率画像32、信頼度画像32または被検体画像31上で、信頼度画像に基づき1以上のROI35,36を設定するROI設定処理を行う(ステップS1105)。このROI設定処理の詳細は後述する。
ROI内統計値算出部800は、ROI設定部700が設定したROI35,36内の組織の磁化率についての統計値を、画像変換部500で得られた磁化率画像および信頼度画像の画素値を用いて予め定めた演算処理により算出する(ステップS1106)。ROI内統計値算出処理の詳細は後述する。
以下、上記ステップ1103の画像変換処理について、図10を用いて詳しく説明する。図10は、本実施形態の画像変換処理の処理フローである。図10に示されるように、本実施形態における画像変換処理は、周波数画像算出部510による周波数画像算出処理(S1201)、磁場画像算出部520による磁場画像算出処理(S1202)、磁化率分布(画像)算出部530による磁化率画像算出処理(S1203)、信頼度分布(画像)算出部540による信頼度画像算出処理(S1204)の4ステップを含む。なお、磁化率画像を用いずに信頼度画像を算出する演算方法を用いる場合は、ステップS1203とステップS1204の処理順序を逆にすることも可能である。
まず、周波数画像算出処理により周波数画像を算出する(ステップS1201)。周波数画像は、各画素の画素値が、その画素位置の組織の共鳴周波数の、プロトンの共鳴周波数からのオフセット周波数をあらわす画像である。オフセット周波数は、静磁場不均一などによって空間的に変化する。周波数画像算出部510は、水の信号強度、脂肪の信号強度、緩和速度R2 *(=1/T2 *)、オフセット周波数分布を用いてあらわされる信号モデルに、計測により得られた原画像I1〜I4の信号値をフィッティングする処理(水脂肪分離処理)により、周波数画像を算出する。水脂肪分離処理により、脂肪による周波数変化を除いたオフセット周波数を算出することができる。水脂肪分離処理は、肝臓などの組織内外に脂肪が存在する組織において正確なオフセット周波数を算出するために、とくに重要である。
図11のフローチャートを用いて、本実施形態の周波数画像算出処理について詳しく説明する。まず、エコー時間による信号値の変化を表す信号モデルを設定する(ステップS1301)。次に、フィッティング処理のための各種の初期値を設定する(ステップS1302)。そして、Ne個(Neは3以上の整数)の異なるエコー時間の原画像Inの信号値(画素値)と初期値と信号モデルとを用いて、非線形最小二乗法により、原画像Inの画素値を信号モデルにフィッティングさせるフィッティング処理を行う(ステップS1303)。これにより、周波数画像を算出する。以下、各ステップS1301〜1303の処理の詳細について詳しく説明する。
まず、ステップS1301の信号モデルの設定について説明する。本実施形態では、水の信号強度、脂肪の信号強度、オフセット周波数、見かけの緩和速度R2 *をフィッティング変数とする、信号モデルを設定する。信号モデルは、予め定めておいたものを用いることができる。ここでは、信号モデルとして、n番目のエコー時間tnで得たエコー信号から再構成した画像Inの、任意の画素における信号強度sn(n=1、…、Ne)を表す式(1)信号モデルs’nを用いる。
ここで、tnは、n番目のエコー時間、Ψはオフセット周波数、ρwおよびρfは、水と脂肪の複素信号強度、Knは、時刻tnにおける脂肪信号の位相変化量(複素数)、R2 *は、見かけの横磁化緩和速度を、それぞれ表す。R2 *は、水と脂肪で共通とする。なお、ステップS1301で用いることのできる信号モデルは、式(1)の形に限られるものではなく、他の信号モデルを用いることも可能である。たとえば、肝臓に比べて脂肪の少ない頭部を撮像した場合、水の信号強度、オフセット周波数、見掛けの緩和速度のみをフィッティング変数とする信号モデルを設定してもよい。
なお、脂肪の信号強度は、その分子構造により、複数のスペクトルピークを持つことが知られている。したがって、P個(Pは1以上の整数)のピークを持つ脂肪信号を考えた場合、脂肪信号の位相変化量Knは、以下の式(2)で表される。
apおよびfpは、p番目(pは、1≦p≦Pを満たす整数)の脂肪ピークの相対信号強度および水との周波数差をそれぞれ表す。なお、apは、以下の式(3)の条件を満たす。
以下、本実施形態では、脂肪が6つのピークを持つ(P=6)信号モデルを用いる。
次に、ステップS1302における、初期値の設定方法について説明する。設定する初期値は、各画素の水の複素信号強度および脂肪の複素信号強度と、オフセット周波数分布と、見かけの横磁化緩和速度R2 *とである。
水の複素信号強度ρwおよび脂肪の複素信号強度ρfの各画素の初期値は、実際に計測して得たNe枚の原画像Inの信号値snの絶対値|sn|を求め、対応する位置の画素同士で絶対値|sn|を比較した場合の最大値|sn|max(時間方向に最大値投影した値)を用いる。オフセット周波数分布の初期値は、全画素で0とする。見かけの横磁化緩和速度R2 *の初期値は、全画素で1とする。
なお、水と脂肪の複素信号強度ρwおよびρfの各画素の初期値、オフセット周波数分布の初期値、見かけの横磁化緩和速度R2 *の初期値は必ずしも上記の値でなくてもよく、非線形最小二乗法による演算結果が発散または振動しない値であればよい。
次に、ステップS1303における、フィッティング処理部343によるフィッティング処理について詳しく説明する。本実施形態では、フィッティングにより真値を推定する変数を、各画素の、水の信号強度をρw、脂肪の信号強度をρf、見かけの横磁化緩和速度をR2 *、オフセット周波数をΨとする。そして、各変数の推定値をそれぞれ、ρw’、ρf’、R2 *’、Ψ’とし、真値と推定値との差分をそれぞれ、Δρw、Δρf、ΔR2 *、ΔΨとする。
そして、原画像Inの画素値である信号値sn、推定値ρw’、ρf’、R2 *’、Ψ’を式(1)の信号モデルに代入して得た推定信号をs’nとすると、計測信号snと推定信号s’nとの差分Δsnは、行列表記により、以下の式(4)で表される。
従って、ベクトルxは、行列Aの擬似逆行列を用いて、以下の式(5)により算出できる。
なお、AHは、Aの複素共役転置行列を表す。
式(5)で算出した差分ベクトルxの各要素であるΔρw、Δρf、ΔR2 *、ΔΨを、推定値ρw’、ρf’、R2 *’、Ψ’にそれぞれに加えて、推定信号s’nを再計算した後、再び式(5)を用いて差分ベクトルxを算出する。この手順を繰り返すことにより、差分ベクトルxを最小化し、推定値を真値へ近づけていく。差分ベクトルxが予め定めておいた閾値以下となるまで、上記手順を繰り返す。
これにより、最終的に得られた、各画素の水の信号強度ρw’脂肪の信号強度ρf’、見かけの横磁化緩和速度R2 *’、オフセット周波数Ψ’を、それぞれ画素値とすることにより、図9(b)のように水画像、脂肪画像、R2 *画像、周波数画像をそれぞれ生成することができる。なお、非線形最小二乗法には、レーベンバーグ・マーカート法など任意の公知の方法を用いることもできる。
次に、本実施形態では原画像Inの画素値である信号値snと、最終的な推定値から算出した推定信号s’nを用いて、式(6)よりフィッティングエラーεを算出する。
得られたフィッティングエラーを画素値とするフィッティングエラー画像を生成することができる。
フィッティングエラーは、式(6)に限らず、任意の方法により算出できる。また、フィッティングエラーの算出を省略することも可能である。
なお、上述してきた周波数画像算出方法は、エコー時間の数(原画像Inの数)Neが3以上の場合に適用できるが、本実施形態は、これに限られるものではない。エコー時間の数(原画像の数)が1つの場合であっても、原画像I1の各画素値I1(r)とエコー時間t1を用いて以下の式(7)により周波数画像の各画素値Ψ’を算出することも可能である。
ここで、arg(c)は、複素数cの偏角をあらわす。
また、エコー時間の数(原画像Inの数)が2つの場合は、第一原画像I1および第二原画像I2のそれぞれの画素値(I1(r)およびI2(r))とエコー時間(t1およびt2)を用いて以下の式(8)により周波数画像を算出することが可能である。
上述のようにステップS1201においていずれかの方法により算出した周波数画像Ψ’に対し、以下に述べる磁場画像算出処理を行い、磁場画像ψを算出する(ステップS1202)。
ステップS1202の磁場画像算出処理では、図12のフローチャートに示すように、磁場画像変換処理(S1304)、大域的磁場変化除去処理(S1305)、ノイズマスク処理(S1306)、を行う。
まず、ステップS1304において、ステップS1201で求めた周波数画像から、磁場画像変換処理により磁場画像を生成する。磁場画像は、静磁場強度で規格化した相対的な磁場変化をあらわす画像である。磁場画像δ’(r)は、周波数画像ψ’(r)から以下の式(9)により生成できる。
ここで、γはプロトンの磁気回転比、B0は静磁場強度である。
次に、ステップS1305において、大域的な磁場変化を除去する大域的磁場変化除去処理を行う。ステップ1304において生成した磁場画像δ’は、撮像部位(例えば、頭部など)の形状等に依存して生じる静磁場不均一に起因する大域的な磁場変化と、組織間の磁化率変化に起因する局所的な磁場変化との和になっている。本実施形態では、磁場画像δ’を低次多項式でフィッティングすることにより大域的な磁場変化を抽出し、それを元画像から減算することにより、局所的な磁場変化に基づく磁場画像δを生成する。なお、大域的な磁場変化を除去する方法にはハイパスフィルターを実施するなど様々な公知の方法があり、こうした他の方法を用いてもよい。
最後に、ステップ1306において、磁場画像の中でノイズ成分の領域(ノイズ領域)にノイズマスク処理を実施する。本実施形態のノイズマスク処理は、まず、ステップS1102で求めた原画像I1の絶対値画像を生成し、絶対値画像からマスク画像を作成する。マスク画像は、予め定めた閾値を用い、絶対値画像における当該閾値より小さい値を持つ領域の画素値を0、それ以外の領域の画素値を1とすることにより生成する。そして、作成したマスク画像をステップS1305で生成した磁場画像δにかけあわせる。なお、閾値は、絶対値画像の全画素の画素値分布から判別分析法等の方法を用いて求めてもよい。
なお、ステップS1306のノイズマスク処理法は上記方法に限定されるものではなく様々な方法を用いることができる。例えば、ノイズマスク処理に用いるマスク画像として、空気領域の画素値を0とする方法などがある。この場合、脳と空気との境界部分を検出し、検出結果をもとに空気領域を抽出する。
なお、ステップS1304の磁場画像算出処理における上述した処理はあくまで一例であり、これに限られるものではない。また、上記ステップ1304〜S1306の処理の順序を任意に入れ替えることも可能である。また、ノイズマスク処理(S1306)や大域的な磁場除去処理(S1305)を省略することも可能である。その場合、ノイズや磁場不均一を除去できないため、後述するステップS1401で算出される磁化率画像上にアーチファクトが発生する可能性もあるが、少ない処理回数と処理時間で磁化率画像を算出できるというメリットがある。
また、折り返し補正処理を行ってもよい。複素画像のうち位相画像における一部の領域では、−πからπの範囲を超えた位相値が2nπずれることにより−πからπの範囲内に折り返される(nはある整数)。そのため、式(7)や式(8)を用いて位相画像から周波数を算出した場合に、この折り返しが周波数画像に生じている可能性がある。そのような場合、例えば領域拡大法などを用い、折り返しを補正することが可能である。
また、本実施形態で述べた大域的磁場変化除去処理(S1305)と、のちに述べる磁化率画像算出処理(S1203)を同時に行う公知の方法を用いることも可能である。
次に、磁場画像から磁化率画像を算出する(図10のステップS1203)。
本実施形態の磁化率画像算出処理手順を、図13の処理フローに従って説明する。まず、ステップ1202において算出した磁場画像と、これから算出する磁化率画像との関係式の誤差を示す誤差関数を設定する(ステップS1401)。そして、誤差関数を最小とする磁化率画像を算出する(ステップS1402)。
誤差関数の設定には、以下の式(10)で表わされる相対的な磁場変化δと磁化率分布χの関係式を用いる(ステップS1401)。
ここで、式(10)において、δ(r)は位置rにおける磁場変化、χ(r’)は位置r’における磁化率、αは静磁場方向とベクトルr’−rがなす角をあらわす。
磁場画像内の全ての画素を対象とするため、式(10)を行列式で表現すると、以下の式(11)のように表わされる。
ここで、δは、全画素数Npの大きさを持つ磁場画像の列ベクトル、χは、磁化率画像候補の列ベクトルである。また、Cは、Np×Npの大きさを持ち、χに対する畳み込み演算に相当する行列である。
本実施形態の磁化率画像算出処理では、式(11)に基づき、最小二乗法によって磁化率画像を求める。そのために、以下の式(12)に示す誤差関数e(χ)を用い、誤差関数e(χ)を最小化する磁化率画像を求める(ステップS1402)。
上記誤差関数e(χ)に基づいて算出される誤差を、χの初期値を0ベクトルとし、共役勾配法を用いた繰り返し演算によって最小化する。繰り返し演算の終了条件は、繰り返し回数を基準とする。すなわち、繰り返し回数が、あらかじめ定めた任意の閾値をこえたときに繰り返し演算を終了する。繰り返し演算により算出された磁化率画像候補を磁化率画像とする。これにより、磁化率画像を生成することができる(ステップS1203)。なお、繰り返し演算の終了条件には任意の方法を用いることができる。また、誤差関数を最小化する方法には、最急降下法などの様々な方法を用いることも可能である。
なお誤差関数は、式(12)の形に限られるものではない。たとえば、任意の重みを用いた重みつき最小二乗法により誤差関数を設定してもよい。また、例えば、式(12)に、L1ノルムやL2ノルムなどの正則化項、より一般的なLpノルム(p≧0)などの正則化項などを加えるなど、様々な公知の関数形を用いることができる。
また、磁場画像から磁化率画像を算出する方法として、上述の誤差関数を最小化させる方法ではなく、他の方法を用いてもよい。例えば、式(10)の右辺のたたみこみ演算がフーリエ空間上で積算になることを利用して、まずフーリエ空間上における磁化率を求め、それを逆フーリエ変換することにより実空間上の磁化率画像を求めてもよい。
また、固定された静磁場方向に対して撮像部位(例えば、頭部)の角度を様々に変えて複数回の計測を行い、得られた複数の磁場画像から一つの磁化率画像を算出してもよい。固定された静磁場方向に対して撮像部位(例えば、頭部)の角度を様々に変えることは、撮像組織(例えば、脳組織)の磁化率分布に対して印加する静磁場の方向を様々に変えることに等しい。従って、この計測により、異なる方向の静磁場が印加された時の複数の磁場画像を得ることができる。これらの複数の磁場画像から磁化率画像を算出することにより、一つの磁場画像から算出するよりも解の精度を高めることができる。磁化率画像の算出法には以上のような様々な公知の方法があり、それらの方法を用いることもできる。
次に、信頼度画像算出部540は、磁化率画像の磁化率の信頼度を算出する(ステップS1204)。ここでいう信頼度は、エコー信号(複素信号)に混入しているノイズに起因する磁化率の算出精度の低下の度合いを表す値であり、算出精度が低いほど信頼度が低く、算出精度が高いほど信頼度が高い。
ステップS1204では、磁場の空間的なばらつきに応じた信頼度画像を算出する。具体的には、まず任意の疑似的なエコー時間t’を用いて、以下の式(13)により磁場δを疑似的な位相値φに変換する。これにより、位相値Φを画素値とする位相画像を生成する(ステップS1307)。
式(13)において、t’は1エコーであれば計測に用いた値をエコー時間とする。2エコーの場合はエコー間の時間差に相当する値をエコー時間としてもよい。なお、位相値に変換せず、磁場のまま計算してもよい。
次に、ステップS1307で生成した位相画像から位相成分複素画像zを算出する(ステップS1308)。画素jの位相成分複素画像z(j)は、疑似的な位相画像φ(j)より、以下の式(14)より求められる。
式(14)において、iは虚数である。なお、位相成分複素画像を算出せず、位相や磁場のまま計算してもよい。
次に、ステップS1309において、位相ばらつき画像vを生成する。画素jの位相ばらつき画像v(j)は、式(15)により、画素jにおける周辺領域内の位相成分複素画像z(kj)のばらつきを標準偏差を算出することによって求める。
式(15)において、kjは、画素jの周辺領域の画素を表す。ここでは、ばらつきを求める周辺領域を3×3×3の立方体とする。そのため、kjは1から27までの値となる。sは、周辺領域の画素数を表す。本実施形態では、s=27である。m(j)は画素jの周辺領域におけるzの平均値である。すなわち、m(j)=Σkj(z(kj))/sである。式(15)で定義した場合は、画像によらず、v(j)の上限は1、下限は0となる。
なお、位相成分複素画像zではなく、位相画像φや磁場画像δから位相ばらつき画像を求めることができる。また、周辺領域の大きさや形は任意である。たとえば、信頼度が小さい領域を広げたい場合は、周辺領域を大きくし、5×5×5の立方体と設定してもよい。また、位相ばらつき画像を求める方法は任意である。たとえば、標準偏差ではなく分散で定義してもよい。
最後に、ステップS1310において、位相ばらつき画像vを信頼度画像に変換する。本実施形態では、位相ばらつきが小さい領域の信頼度は大きくし、位相ばらつきが大きい領域の信頼度は小さくするように、各画素jの信頼度R(j)は、v(j)を用いて以下の式(16)より求める。
式(16)の信頼度R(j)とv(j)の関係式は、これに限られるものではなく、任意の式を用いることができる。例えば、位相ばらつき画像v(j)と、その最大値vmaxを用いて、信頼度R(j)を以下の式(17)より求めることができる。
位相ばらつき画像の算出方法によっては、v(j)の上限値が画像によって変化するが、式(17)を用いて信頼度を算出することにより、画像によらず信頼度R(j)を1から0の値に設定できる。
または、以下の式(18)より信頼度R(j)を求めてもよい。
式(18)を用いて信頼度を算出することにより、式(16)や式(17)を用いて信頼度を算出した場合に比べ、位相ばらつきの変化に対する信頼度の変化を大きくすることができる。
第二の実施形態の方法により、第一の実施形態で第1の方法としてあげた、磁場画像の空間的なばらつきを求め、ばらつきが大きいほど信頼度が低くなるように信頼度画像を生成すことができる。本方法より求めた信頼度画像では、たとえば、肺や胃やその周辺領域のように内部に空気が存在するためSNRが小さい領域の信頼度が低くなる。また、血管やその周辺領域では、血管と周辺組織の(流れや磁化差に起因する)周波数差に基づき磁場の空間的なばらつきが増加するため、信頼度が低くなる。そのため、本実施形態で算出した信頼度画像を用いることにより、SNRの低い領域や血管周辺を避けたROI設定を行うことができる。また、本実施形態により算出した信頼度画像と磁化率画像を同時に表示することにより、ノイズに起因してみかけ上の磁化率変化が生じている領域を容易に検出できる。したがって、鉄過剰領域の視覚的評価に有用である。
また、第一の実施形態の第2の方法としてあげた、複数の被検体画像を水脂肪分離処理のための信号モデルにフィッティングする際の誤差を求め、誤差が大きいほど信頼度が低くなるように算出する方法により、信頼度画像を生成することもできる。この方法は、具体的には、上述の式(6)により求めた、水脂肪分離処理における周波数算出時のフィッティングエラーεから、フィッティングエラーの大きい領域の信頼度は小さく、フィッティングエラーεの小さい領域の信頼度は大きくする信頼度設定し、信頼度画像を生成する。たとえば、画素jの信頼度R(j)をフィッティングエラーε(j)と、以下の式(19)とにより算出する。
この方法により、フィッティングエラーεに基づいて生成した信頼度画像を算出することができる。一般的に知られているように、水脂肪分離処理は、不適切な初期値設定などを原因として、水の領域を脂肪、脂肪の領域を水として間違えて算出してしまうことがある。その場合、式(3)であらわされる複数のピークをもつ脂肪信号を、1つのピークしかもたない信号としてフィッティングし、1つのピークしかもたない水の信号を複数のピークをもつ信号としてフィッティングしてしまうため、フィッティング誤差が大きくなる。また、水と脂肪を間違えて算出した領域では周波数を正しく算出することができず、その結果磁化率画像の算出精度も低下する。そのため、フィッティングエラーεにより算出した信頼度画像を用いることにより、水脂肪分離処理の失敗により磁化率の算出精度が低下した領域を容易に認識することができ、算出精度が低下した領域を避けて、ROI設定を行うことができる。
また、第一の実施形態で述べたように、第3の方法としては、水脂肪分離処理により算出された推定画像から伝搬周波数誤差を算出し、算出した伝搬周波数誤差に応じた信頼度を算出する方法を用いることも可能である。この方法は、周波数画像算出処理における水脂肪分離処理で得られた任意の推定画像と画像のノイズの大きさσ0から周波数画像の伝搬誤差(ここでは伝搬周波数誤差とよぶ)を算出し、伝搬周波数誤差画像から信頼度を算出する。具体的には、推定画像として水画像・脂肪画像・R2 *画像を用いて伝搬周波数誤差を算出する。
ノイズの大きさσ0は、絶対値画像の空気領域に定めたROI内の標準偏差により求める。水・脂肪・R2 *・ノイズ量σ0と伝搬周波数誤差の関係式σψ=f(ρw、ρf、R2 *、σ0)は、水脂肪分離処理に用いた信号モデルおよび計測に用いたエコー時間tnに応じて、誤差伝搬法、モンテカルロシミュレーション、統計的手法などにより算出することができる。
したがって、算出した関係式σψ=f(ρw、ρf、R2 *、σ0)を用いて、水脂肪分離処理により得られた水画像・脂肪画像・R2 *画像から伝搬周波数誤差画像を算出できる。そして、算出した伝搬周波数誤差σψから以下の式(20)により、画素jの信頼度R(j)を算出できる。
これにより、水・脂肪の信号強度やR2 *値に応じた信頼度画像を算出することができる。この第3の方法は、たとえば肝臓内に脂肪が不均一に分布している場合などに有用である。脂肪が不均一に分布している場合、脂肪の量に応じて周波数の算出精度が変化し、その結果磁化率の算出精度が変化することが想定される。脂肪の量に応じた信頼度を画像化することにより、磁化率の算出精度が低下した領域を容易に認識することができ、算出精度が低下した領域を避けて、ROI設定を行うことができる。
また、第4の方法としては、被検体画像である複素画像の各画素の絶対値(絶対値画像)を求め、絶対値が小さい画素の信頼度が小さくなるように信頼度画像を算出する方法を用いることもできる。例えば、複数のエコーの原画像を生成した場合、全エコーの絶対値画像の二乗和平方根を画素ごとに算出し、任意の値(例えば算出した二乗和平方根の全画素中の最大値)で除算することにより信頼度画像を算出できる。また、1エコーの絶対値画像の場合は、絶対値画像を任意の値(例えば全画素の最大値やノイズ領域に設定したROI内の標準偏差)で規格化することにより、信頼度画像を算出できる。
本方法は、少ない計算量およびメモリで信頼度を算出できるため、計算に使えるメモリ容量が限られている装置などで有用である。また、受信コイル感度や送信磁場の不均一性に起因した精度変化を反映した信頼度画像を算出できる。たとえば、受信コイルの感度は、コイル形状に応じて感度の大きさが場所ごとに変化するため、体内の全領域で一定とならず、その結果画像のSNRが変化する。受信コイル感度や送信磁場の不均一性は、とくに体格の大きい被検体の腹部を計測する場合などに顕著である。本方法で算出した信頼度画像を用いることにより、コイル感度や送信磁場の不均一性に起因する磁化率画像の精度低下領域をさけてROI設定を行うことができる。
また、第5の方法としては、磁化率画像からアーチファクトのある領域を検出し、検出したアーチファクトのある領域が他の領域に比べて小さい信頼度となるように信頼度画像を生成する方法を用いることも可能である。ストリークアーチファクトは、公知の方法により検出できる。ストリークアーチファクトは、磁化率画像上において、磁場方向に対して特定の方向に筋状に発生する特徴がある。そのため、磁化率画像に対して、該当する方向の筋状コントラストに対してエッジ検出処理を実施することにより、検出することができる。そして、検出したストリークアーチファクト領域の信頼度を小さく、それ以外の領域の信頼度を大きくする信頼度画像を算出する。たとえば、ストリークアーチファクトの信頼度を0、それ以外の領域を1とした信頼度画像を算出する。
本方法は、対象組織の周辺にSNRの低い領域がある場合などに有効である。たとえば、脳において、黒質の周辺で出血部があった場合、出血領域から発生したストリークアーチファクトが黒質に生じてしまう可能性がある。その場合、黒質の平均磁化率を算出した場合、ストリークアーチファクトによる平均磁化率の精度低下が生じる。本方法により算出した信頼度画像を用いた重みづけ平均を算出することにより、ストリークアーチファクトによる平均磁化率の精度低下を防ぐことができる。
また、第6の方法としては、伝搬磁化率誤差を信頼度とする方法を用いることも可能である。この方法は、対象組織内外の磁場の誤差から、シミュレーションや誤差伝搬法により対象組織の伝搬磁化率誤差を算出し、伝搬磁化率誤差から信頼度画像を算出する方法である。ある組織の磁化率は、組織内外の磁場情報から算出される。そのため、組織内の算出磁化率の誤差も、組織内外の磁場の誤差から伝搬される。したがって、伝搬磁化率誤差を用いることにより、組織内外の磁場の誤差を考慮した信頼度が算出できる。
たとえば、ある静脈の磁化率伝搬誤差を算出したい場合、以下に示すように、静脈磁化率モデルを用いたシミュレーションにより算出する。静脈磁化率モデルは、三次元の格子状に対象静脈の直径・角度に応じた円柱をモデル化し、静脈内外の磁化率差を入力することで、設定できる。直径は、絶対値画像における対象静脈のピクセル数などからよみとる。静脈直径がピクセル数以下の場合は、近似的にピクセル径を静脈直径としてもよい。静脈の角度は、絶対値画像または位相画像に対してエッジ抽出処理などを行い、自動的に検出できる。なお、使用者が手動により角度を算出してもよい。また、直径や角度は固定値を用いてもよい。たとえば、直径1mm、角度は磁場方向に対して90度としてもよい。静脈内外の磁化率差には、任意の定数を用いることができるが、たとえば0.46ppmを用いる。三次元格子の大きさや解像度は任意であるが、たとえば大きさを128×128×128、解像度は、画像再構成部400で算出した原画像と同じ解像度を用いる。
以上により定めた静脈磁化率モデルから、式(10)の関係式に基づき磁場を算出し、静脈内外のSNRに応じたノイズを付加することで、モデル磁場画像を算出することができる。静脈内外のSNRは、対象静脈の静脈内外の絶対値を、画像に加えられたノイズで除算することにより算出できる。ここで、画像に加えられたノイズは、絶対値画像において、空気領域などの画素値変動が少ない領域にROIを設定し、ROI内の標準偏差を計算することで算出できる。算出したモデル磁場画像から、磁化率画像算出部530と同じ方法により磁化率画像を算出する。そして、算出した磁化率画像と静脈磁化率モデルの差分画像を算出し、静脈内に定めたROIにおける差分画像の画素値の標準偏差を算出し、算出した標準偏差の逆数を対象静脈の信頼度Rとする。
本方法は、複数の静脈の磁化率から脳内の広い領域(たとえば右半球全体)の酸素摂取率を算出する際などに有用である。その際、複数の静脈の磁化率からそれぞれの酸素摂取率を算出し、それらを平均化することにより広い領域の平均酸素摂取率を算出する。しかし、静脈ごとに磁化率の算出精度は異なるため、単純な平均では、算出精度の低い静脈の影響により平均酸素摂取率の算出精度が低下してしまう。そこで、本方法により求めた信頼度を用いて、重みづけした平均酸素摂取率を算出することにより、重みづけしない場合に比べて算出精度が向上する。
なお、本方法における対象組織は静脈に限らず、黒質などの深部灰白質組織や肝臓などを対象組織としてもよい。そのとき、たとえば黒質の場合は球でモデル化し、肝臓の場合は楕円球でモデル化することができる。
上述してきた種々の方法で算出した信頼度画像は、所望の閾値により二値化してもよい。二値化した信頼度画像を表示することにより、操作者がROI設定に用いる領域(関心領域設定設定可能領域)を容易に認識することができる。例えば、図4のように、二値化した信頼度画像を、磁化率画像と重畳して表示することにより、操作者はROI35,36を設定可能な領域を容易に認識できる。
また、複数の方法で算出した信頼度画像を組み合わせて、一つの信頼度画像を算出してもよい。たとえば、コイルの感度差によるSNR差が大きく、対象組織の近くに出血が存在する場合、不十分なコイル感度によるSNR低下領域やストリークアーチファクトを避けてROI設定を行うために、絶対値画像に基づく信頼度画像R1と検出したストリークアーチファクトに基づく信頼度画像R2を組み合わせて、一つの信頼度画像Rを算出するのが有効である。信頼度画像Rは、信頼度画像R1とR2の単純な和や積でもよいし、どちらかの比重を大きくした和でもよい。
また、信頼度画像は磁場画像の画像処理に用いることもできる。たとえば、撮像対象が肝臓の場合、磁場のばらつきに応じた信頼度画像を算出し、信頼度の低い領域の磁場画像を磁化率画像算出前にあらかじめマスクすることもできる。また、撮像対象が脳の場合、ストリークアーチファクトに応じた信頼度画像を算出し、ストリークアーチファクトの発生原因となっている領域の磁場画像をマスクすることもできる。このようにマスクした磁場画像を用いて磁化率画像を算出することにより、マスクしない磁場画像を用いた場合に比べて、ストリークアーチファクトの低減が期待できる。
表示処理部600は、得られた磁化率画像と信頼度画像を濃淡画像として表示装置210に表示する(ステップS1104)。例えば、第1の実施形態の図3のように磁化率画像33と信頼度画像32を並べて表示することが可能である。それにより、信頼度を視覚的に確認することができるため、鉄沈着による磁化率変化とノイズに起因した磁化率変化を視覚的にみわけることができる。したがって、磁化率画像を用いた鉄過剰領域の評価が容易になる。
また、磁化率画像および信頼度画像は、最大値投影処理や最小値投影処理などの方法を用いて複数の空間的に連続する画像情報として統合させて表示してもよい。また、磁化率画像に画像処理を行い、磁化率画像と異なるコントラストの画像を作成し、表示装置210に表示させてもよい。例えば、磁化率画像から組織間の磁化率差を強調した強調マスクを作成し、それを絶対値画像にかけ合わせた磁化率差強調画像を表示してもよい。磁化率差強調画像は、磁化率差を強調する処理によって組織の磁化率の情報は失われるが、磁化率の高い組織とそれ以外の組織とのコントラストが増加する。このような磁化率差強調画像を生成することにより、磁化率の高い組織が明瞭に描出され、操作者は磁化率の高い組織を容易に認識できる。
なお、表示処理部600は、磁化率画像と信頼度画像を、一枚の画像として同時に表示することもできる。例えば、信頼度に応じて磁化率画像の透明度を変化させて表示することができる。この場合、例えば、信頼度が低いほど、磁化率画像の色を透明化して表示する。すなわち、磁化率画像の場所ごとの透明度を信頼度画像の画素値に応じて変化させて表示する。または、磁化率画像をカラー表示し、信頼度が低いほど、磁化率画像の色を白黒に近付けて表示する。すなわち、磁化率画像の場所ごとの鮮度を信頼度画像の画素値に応じて変化させて表示する。これらの表示方法により、鉄過剰領域の検出を正確に素早く行うことができる。
また、表示処理部600は、磁化率画像のみを表示し、ポップアップ表示により信頼度を表示してもよい。例えば、カーソルを合わせると、対象画素における信頼度と磁化率の二つの値を同時に表示する方法などが考えられる。なお、信頼度の値だけを表示させてもよいし、位相画像の画素値など信頼度以外の値も同時に表示させてもよい。
また、表示処理部600では磁化率画像のみを表示してもよい。その場合、信頼度画像は、ROI設定部700やROI内統計値算出部800で活用される。
ROI設定部700は、信頼度画像を用いて、信頼度の高い領域にROIを設定する。例えば、腹部1080の肝臓1020内においてROI内の平均信頼度が最も高い場所を自動的に算出し、ROI1070を図15のよう設定することができる。設定したROI1070は、図15のように信頼度画像1010上に表示する。図15に示されるように、本実施形態により設定したROI1070は、肺1050や胃1060およびその周辺のSNRの低い領域や、血管1030、1040およびその周辺領域を避け、信頼度の高い領域に設定される。なお、算出したROI1070は磁化率画像上に表示してもよい。このように信頼度画像を用いてROI1070を設定することにより、ROI1070内の信頼性の高い磁化率を用いて、例えば平均磁化率を算出することができる。また、ROI設定の操作性の改善が期待できる。
なお、ROI1070の大きさは予め定めた大きさに設定することも可能であるし、操作者が大きさや形状を入力装置212を介して入力してもよい。また、ROI1070の位置を自動的に設定せず、信頼度画像をみながら操作者が入力装置212を介して手動でROI1070の位置を設定してもよい。
ROI内統計値算出部800は、ROI内の磁化率画像の画素値(磁化率)の例えば平均磁化率を算出する。このとき、磁化率を信頼度により重みづけした後、平均を求めてもよい。信頼度に応じた重みづけ平均を行うことにより、重みづけせずに平均を算出する場合に比べて、ROI内の平均磁化率の算出精度が向上する。たとえば、ストリークアーチファクトがROI内に存在する場合、ストリークアーチファクト領域の信頼度を低下させた信頼度画像で重みづけした重みづけ平均を算出する。それにより、ストリークアーチファクトによる平均磁化率の算出精度低下を低減することができる。なお、ROI内統計値算出部800では、ROI内の平均に限らず、標準偏差、分散など任意の統計値を算出することができる。また、算出した平均磁化率から、あらかじめ定めた磁化率と鉄濃度の比例関係式を用いて、対象組織の鉄濃度を算出してもよい。
なお、本実施形態では水平磁場MRIについて説明したが、垂直磁場MRIやその他の装置を用いても、同様の処理が適用でき、同様の効果が得られる。また、撮像断面も、横断面、冠状断面、矢状断面、オブリーク断面など任意の撮像断面で同様の処理が適用でき、同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、画像再構成部、画像変換部、表示処理部の各部の機能を、MRI装置が備える計算部209内で実現する場合を例にあげて説明したが、これに限られない。これらの各部の少なくとも1つは、例えば、MRI装置の計算部209とデータの送受信が可能なMRI装置とは独立した情報処理装置上に構築されていてもよい。
<<第三の実施形態>>
第二の実施形態では、一度の計測により、磁化率画像と信頼度画像を算出した。第三の実施形態では、対象組織の信頼度が所望の値を満たさない場合に再計測を行う。以下、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
本実施形態のMRI装置は、基本的に第二の実施形態と同様の構成を有する。
本実施形態の計算部209は、第一の実施形態と同じように、入力装置212を介して設定された(または、あらかじめ設定された)計測パラメータとパルスシーケンスに従いエコーの計測をシーケンサ204に指示し、エコーを計測する。得られたエコーをk空間に配置し、k空間に配置されたエコーに対して演算を行い磁化率画像と信頼度画像を算出し、得られた画像を表示装置210に表示する。また、必要に応じて、画像上にROIを設定し、ROI内の画素の統計値を算出する。本実施形態の計算部209は、第一の実施形態とは異なり、対象組織の信頼度が所望の値を満たさない場合に再計測を行う。
計算部209は、第二の実施形態の構成に加えて、代表信頼度算出部1400,判定部1500,計測パラメータ再設定部1600を備える。これらの各部の処理の詳細を、図17の処理フローに沿って説明する。図17のフローにおいて、第二の実施形態の図7のフローと同じ処理は、同じ符号を付して説明を省略する。
図17において、ステップS1101〜S1103の処理は、第二の実施形態と同様に行う。本実施形態における代表信頼度算出部1400は、画像変換処理S1103により算出した磁化率画像と信頼度画像を用いて、対象組織の信頼度を一つの値(代表信頼度)として算出する(S1504)。例えば、第二の実施形態のステップS1306において算出したマスク画像の画素値が1となる領域の平均信頼度を代表信頼度Rmとして算出する。なお、代表信頼度の算出方法は任意である。たとえば、対象組織における全画素中の最大信頼度を代表信頼度としてもよい。
次に、判定部1500は、ステップS1504で算出した代表信頼度と任意の定数(ここでは信頼度閾値とよぶ)の大小関係を判定する(S1505)。本実施形態では、信頼度閾値rmを0.5とする。代表信頼度Rmが信頼度閾値rmをこえた場合、適切な撮影条件での撮影が行われたとして、表示処理を行う(ステップS1508)。なお信頼度閾値は使用者が入力装置212を介して設定してもよい。
判定部1500において、代表信頼度Rmが信頼度閾値rm以下であった場合、本実施形態において計測パラメータ再設定部1600は、計測パラメータの再設定を行う(ステップS1506)。本実施形態では、計測パラメータ再設定部1600は、NSA(number of signals averaged)を前回計測時より増加した数(たとえば2倍)を再設定する。NSAとは、加算回数のことをあらわす。そして、計測パラメータ再設定部1600は、再設定した計測パラメータおよび再計測を行うかどうかの確認画面を表示装置210を介して使用者に提示する。そして、再計測を行うと使用者が判断した場合、再設定した計測パラメータを用いて計測を行う(ステップS1501)。また、この時点で使用者があらたに再設定した計測パラメータを用いてもよい。
一方、再計測を行わないと使用者が判断した場合は、第二の実施形態と同様に表示処理、ROI設定処理、ROI内統計値算出処理を行う(ステップS1104〜1106)。
なお、ステップS1506においては任意の計測パラメータを再設定できるように構成することができる。たとえば、SNRを高めるパラメータとして、前回の計測時より低下させた画素サイズ、増加させた繰り返し時間、低下させたエコー時間tnなどを再設定してもよい。
本実施形態は、通常行われる計測では十分な信頼度が得られない場合に有用である。たとえば肝臓の鉄濃度が大きい被検体の場合、磁化率効果により肝臓の信号減衰がはやく、鉄濃度が小さい被検体の場合に比べて肝臓領域のSNRが小さい。そのような被検体を計測した場合、通常用いられる計測パラメータでは肝臓領域で十分な信頼度が得られないことが想定される。その場合、通常のMRI装置では診断に十分な信頼度が得られていないことに気づかず、信頼度の低い磁化率画像を算出してしまうおそれがある。本実施形態のMRI装置は、撮影中に信頼度の低下を検出し、信頼度を高める計測パラメータを提示する。それにより、使用者の操作性を低下させずに、どのような被検体に対しても十分な信頼度で計測を行うことができる。
<<第四の実施形態>>
第一から第三の実施形態では、MRI装置において信頼度画像を算出したが、第四の実施形態では、MRI装置とは独立に存在する画像処理装置において信頼度画像を算出する。
図18に本実施形態における画像処理装置2000の構成を示す。画像処理装置は、計算機2100と、表示装置2200と、入力装置2300とを備えている。計算機2100は、デスクトップPCやワークステーションなどで構成する。
本実施形態における計算機2100は、図19のように、入力装置2300を介して1以上の原画像Inを受け取り、内蔵するメモリに格納する画像入力部3000を備えている。
また、計算機2100は、第二の実施形態の計算部209と同じように、画像変換部500、表示処理部600、ROI設定部700、ROI内統計値算出部800を備える。これらの各部の機能は、第二の実施形態と基本的に同様である。これらの構成により、原画像に基づいて磁化率画像および信頼度画像を算出し、得られた画像を表示装置2200に表示する。原画像Inは任意のMRI装置で撮影された画像である。なお、表示処理部600、ROI設定部700、ROI内統計値算出部800は備えていなくてもよい。
図20は本実施形態における画像処理装置の処理フローである。図20のフローにおいて、図7のフローと同じ処理については同じ符号を付し説明を省略する。まず、画像入力部3000は、入力装置2300を介してMRI装置で撮影された原画像Inを受け取り、内蔵するメモリに格納し、計算に必要な情報と画素値情報を取り出す(ステップS1601)。MRI装置で撮影された原画像は、例えばDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に基づいたファイル形式で入力される。本実施形態における画像入力部3000は、入力されたファイルから、原画像の撮影時に用いられた磁場強度、エコー時間、FOV(Field of view)などの画像変換処理に必要な情報と、原画像の画素値情報を取り出す。
画像変換部500は、第二の実施形態のステップS1103と同様に、入力された画像に基づき、磁化率画像および信頼度画像を生成する。画像変換部500の画像処理の内容は画像入力部3000に入力された画像に応じて変化する。たとえば、磁場画像が入力された場合、磁化率画像算出処理と信頼度画像算出処理のみを行う。また、計算機2100は、算出した磁化率画像または信頼度画像の各画素値を任意の形式でCDなどの媒体に出力することもできる。図20のステップS1104〜S1106は、第二の実施形態と同様である。
本実施形態により、MRI装置とは独立に存在する画像処理装置を用いて処理を行うことができる。そのため、たとえばMRI装置の計算機より処理速度に優れた計算機を用いることで、MRI装置を用いて処理する場合に比べて、より高速な処理を行うことができる。また本実施形態の画像処理フローは、外部のアプリケーション、たとえばPACS(Picture Archiving and Communication System)の機能の一つに組み込むことができる。PACSの画像位置合わせ機能や病変計測結果の保存機能と組み合わせることにより、たとえば過去の磁化率画像との位置合わせ、算出鉄濃度の経時的変化の管理などが可能になる。それにより、病状の進行度評価、治療効果のモニタリングなどを容易に行うことができる。また、外部のアプリケーションに蓄積されている別のモダリティの画像や患者の治療にかかわる情報とあわせて、統合的な分析を行うことも可能になる。