JP6568622B1 - アーク溶接方法、大型構造物の製造方法および溶接装置 - Google Patents

アーク溶接方法、大型構造物の製造方法および溶接装置 Download PDF

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Abstract

【課題】低い開先精度と組立精度であっても1パスで安定した溶け込み深さが得られるアーク溶接方法を提供する。【解決手段】溶接装置1は、溶接金属形成隙間にシールドガスを供給するガス供給装置12と、溶接金属形成隙間に溶融電極22の先端が位置するように溶融電極22を支持する溶接トーチ16と、溶接トーチ16を揺動させる揺動機構17と、溶接トーチ16に電圧を与える溶接電源装置18と、制御装置30とを備える。制御装置30は、溶融電極22と第1母材51および第2母材52間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、溶融電極22の先端を溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に交差する方向に往復動させながら溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なうように揺動機構17と溶接電源装置18とを制御する。【選択図】図1

Description

この発明は、アーク溶接方法、大型構造物の製造方法および溶接装置に関する。
鋼構造物の大型化および厚肉化にともない、製作工程における溶接工数は著しく増加する。厚板における溶接工数減を達成する方法としては溶接部における溶接金属の溶着量を減少させることが効果的であり、そのために開先断面積を小さくすること、すなわち狭開先化が有効となる。
狭開先化は、溶接材料使用量の減少、アークタイム減による溶接工数の減少、省エネルギー化、入熱量の減少による溶接金属および母材の機械的性質向上など、多数のメリットが得られる。一方で、狭開先化は、狭い開先によって溶接施工が格段に難しくなることで安定した溶接品質を得ることが非常に難しくなるデメリットがある。特に橋梁や鉄骨では、開先加工および組立精度が低いため狭開先施工はほとんど用いられていないのが現状である。
国際公開第2014/088110号(特許文献1)には、狭開先ガスシールドアーク溶接方法が開示されている。
国際公開第2014/088110号
大型鋼構造物などのように板厚が80mm以上となる対象物の溶接では、1パスでの溶接完了は困難であるため、複数回のアーク溶接を行なって肉盛を行なうことが一般的である。この場合、初層の溶接の仕上がり形状によっては2層目以降の溶接のしやすさが大きく異なってくるので初層の溶接が重要となる。
国際公開第2014/088110号(特許文献1)に開示された狭開先ガスシールドアーク溶接方法では、初層溶接において2パス以上として各パスを底部開先ギャップの両側に振り分けることが開示されている。これにより初層溶接で必要な溶込み深さおよび溶着量を確保することによって2層目以降の溶接がしやすい仕上がり形状を得るとともに、融合不良等による欠陥を抑制している。
しかしながら、パス数が多くなると欠陥が増えることが知られており、狭開先ギャップを溶接する場合でも初層を2パスとすることは欠陥が増加するデメリットがあり、1パスで溶融深さおよび溶着量が確保できれば1パスで初層を溶接することが望ましい。
この発明の目的は、低い開先精度と組立精度であっても1パスで安定した溶け込み深さが得られるアーク溶接方法を提供することである。
この発明は、溶融電極を使用して第1母材と第2母材とを溶接するアーク溶接方法に関するものである。アーク溶接方法は、第1母材と第2母材との間に溶接金属形成隙間を形成するように第1母材と第2母材とを配置する工程と、溶接金属形成隙間にシールドガスを供給する工程と、溶融電極と第1母材および第2母材間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、溶融電極の先端を、溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に交差する方向に往復動させながら溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なう工程とを備える。アーク溶接を行なう工程においては、溶融電極の先端が往復動の中央部に位置するときにオープンアークが生じ、溶融電極の先端が往復動の両端部に位置するときに埋もれアークが生じるようにアーク長が制御される。
好ましくは、溶融電極は、送給装置から溶接トーチのノズルに供給される溶接ワイヤである。ノズルの先端には、溶接ワイヤの送給方向が所定角度曲がるように構成されたチップが接続されている。アーク溶接を行なう工程においては、溶融電極の先端を往復動させるためにノズルを回動させ、ノズルの回動角に同期してアーク長が変更される。
より好ましくは、所定角度は、4°以上16°以下である。
より好ましくは、ノズルの回動角度は、45°以上130°以下である。
より好ましくは、ノズルの回動周期は、0.5秒以上2秒以下である。
より好ましくは、溶融電極の先端が往復動の両端に位置している状態から中央に向けて移動開始する第1タイミングは、埋もれアークに対応する電圧値をオープンアークに対応する電圧値に変更開始する第2タイミングと比べると、同時または遅れており、第1タイミングと第2タイミングの時間差は0秒以上0.2秒以下である。
好ましくは、アーク溶接を行なう工程において、溶融電極の先端が往復動の両端に位置する状態において往復動に停止時間を設ける。
この発明は、他の局面では、上記のいずれかに記載のアーク溶接方法によって、複数の鋼材を溶接して大型構造物を製造する、大型構造物の製造方法に関する。
この発明は、さらに他の局面では、溶融電極を使用して第1母材と第2母材とを溶接する溶接装置に関する。第1母材と第2母材との間に溶接金属形成隙間を形成するように第1母材と第2母材とが配置される。溶接装置は、溶接金属形成隙間にシールドガスを供給するガス供給部と、溶接金属形成隙間に溶融電極の先端が位置するように溶融電極を支持する溶接トーチと、溶接トーチを揺動させる揺動機構と、溶接トーチに電圧を与える電源装置と、溶融電極と第1母材および第2母材間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、溶融電極の先端を、溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に交差する方向に往復動させながら溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なうように揺動機構と電源装置とを制御する制御装置とを備える。制御装置は、溶融電極の先端が往復動の中央部に位置するときにオープンアークが生じ、溶融電極の先端が往復動の両端部に位置するときに埋もれアークが生じるようにアーク長を制御する。
本発明によれば、埋もれアークおよびオープンアークを用いた低周波重畳パルス波形を用いて溶接条件を適正化する。これによって、溶け込みの欲しい所を重点的に溶かし、そうでないところは溶け込み量を抑えるというような溶け込み形状コントロールが可能となる。
本実施の形態に係る溶接装置の構成を示す図である。 本実施の形態における母材と溶接トーチの配置関係の一例を示す図である。 溶融電極の先端の角度(前進角)について説明するための図である。 溶融電極の先端の往復動(前進角)について説明するための図である。 溶融電極の先端の角度(後退角)について説明するための図である。 溶融電極の先端の往復動(後退角)について説明するための図である。 本実施の形態に係るアーク溶接方法において、埋もれアークとオープンアークとが生じる位置を説明するための図である。 埋もれアークの状態を示す模式図である。 埋もれアークを撮影した写真である。 オープンアークの状態を示す模式図である。 オープンアークを撮影した写真である。 低周波重畳パルス波形の外形を示す図である。 低周波重畳パルス波形と埋もれアークを併用した動作を説明するための波形図である。 比較のために示した一般的なパルスMAG溶接によって得られた溶接部断面を示す写真である。 埋もれ/オープンアークを用いた低周波重畳パルスを用いたパルスMAG溶接によって得られた溶接部断面を示す写真である。 本実施の形態のアーク溶接方法によって得られた溶接部断面を示す写真である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
[溶接装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る溶接装置の構成を示す図である。図2は、本実施の形態における母材と溶接トーチの配置関係の一例を示す図である。
図1、図2を参照して、溶接装置1は、溶融電極22を使用して第1母材51と第2母材52とを溶接する。第1母材51と第2母材52との間に溶接金属形成隙間を形成するように第1母材51と第2母材52とが配置される。第1母材51と第2母材52で形成される溶接隙間の下部には当て金53が配置される。第1母材51と第2母材52はそれぞれ厚板である。特に、第1母材51と第2母材52が、1パスでの溶接が困難な板厚80mm以上の厚板の場合に、本実施の形態のアーク溶接方法は好適に使用できる。
溶接装置1は、溶接金属形成隙間にシールドガスを供給するガス供給装置12と、溶接金属形成隙間に溶融電極22の先端が位置するように溶融電極22を支持する溶接トーチ16と、溶接トーチ16を揺動させる揺動機構17と、溶接トーチ16に電圧を与える溶接電源装置18と、制御装置30とを備える。
本実施の形態では、設定した平均電流値より大きい電流値であるピーク電流値、平均電流値より小さい電流値であるベース電流値が交互に流れるようにパルス状の電圧を繰り返し与えるパルスMAG溶接を採用している。パルスMAG溶接は、一般的なMAG溶接と比べると、規則的に溶滴が母材に移行するので、スパッタの発生が抑制される。
制御装置30は、溶融電極22と第1母材51および第2母材52間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、溶融電極22の先端を溶接金属形成隙間に交差する方向に往復動させながら溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なうように揺動機構17と溶接電源装置18とを制御する。
図3は、溶融電極の先端の角度(前進角)について説明するための図である。図4は、溶融電極の先端の往復動(前進角)について説明するための図である。図3、図4に示すように、開先の幅Wよりも小さい範囲において、揺動機構17によって、溶融電極22の先端を往復動させながら、溶融電極22の先端を溶接方向に進行させる。
制御装置30は、溶融電極22の先端が往復動の中央部に位置するときにオープンアークが生じ、溶融電極の先端が往復動の両端部に位置するときに埋もれアークが生じるように電源装置によってパルス電圧の電圧値を制御する。
なお、図3、図4では、溶融電極が前進角で溶接方向に進行する例を示したが、本実施の形態の溶接方法は、前進角には限定されない。図5は、溶融電極の先端の角度(後退角)について説明するための図である。図6は、溶融電極の先端の往復動(後退角)について説明するための図である。図5に示すように後退角で溶接電極を溶接方向に進行させ、図6に示すような軌道で溶融電極の先端を揺動させても良い。
本実施の形態に係るアーク溶接方法は、低周波重畳パルス波形と埋もれアークを併用したものである。まず埋もれアークおよび低周波重畳パルス波形についてそれぞれ説明する。
[埋もれアークおよびオープンアークについて]
図7は、本実施の形態に係るアーク溶接方法において、埋もれアークとオープンアークとが生じる位置を説明するための図である。図3、図7を参照して、本実施の形態に係るアーク溶接方法では、開先の溶接隙間に直交する方向(溶接方向に直交する方向)における往復動の端部では、埋もれアークを生じさせ、往復動の中央部ではオープンアークを生じさせる。
図8は、埋もれアークの状態を示す模式図である。図9は、埋もれアークを撮影した写真である。埋もれアークとは、アークの力で押しのけられた溶融池の中で、母材もしくは溶融金属の表面より深い位置にワイヤ先端が埋もれてアークが発生する状態を言う。
図10は、オープンアークの状態を示す模式図である。図11は、オープンアークを撮影した写真である。オープンアークは、通常の溶接で見られるワイヤ先端が母材若しくは溶融金属よりも上に位置してアークが見える状態である。
一般的な埋もれアークのメリットは、非常に深い溶け込みが得られること、およびアークが深い所で発生しているためにスパッタが飛散しにくいことが挙げられる。埋もれアークのデメリットは、ビード形状が極端な凸形状となることである。オープンアークは幅の広い滑らかなビードが得られる反面、溶け込み深さが埋もれアークよりも小さくなる。
埋もれアークとオープンアークの切り替えは、ワイヤ送給速度や電圧調整で行うことが可能であり、単純にはパルスの電圧を低くすることでアーク長が短くなり、埋もれアークとすることができる。
[低周波重畳パルス波形について]
図12は、低周波重畳パルス波形の外形を示す図である。図12に示すように、低周波重畳パルス波形は、2組のユニットパルス条件(第1パルス、第2パルス)を低周波(0.5Hz〜32Hz)で切り換えるものである。低周波重畳パルス波形によって、入熱を周期的に変化させることができる。低周波重畳パルス波形は、MIG(Metal Inert Gas)溶接において用いられることが多く、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接と同等の美しいビードが得られること、および切り換え周波数を高くすることによって溶融プールに周期的な振動を与えることでブローホール発生の低減効果があることという利点がある。
[狭開先における低周波重畳パルス波形と埋もれアークの併用]
本実施の形態に係るアーク溶接方法は、板厚25mmを超える厚鋼材の突合せ継手(平継手および角継手等)の全ての開先形状に適用できるものである。本実施の形態に係るアーク溶接方法は、特に、一般的に溶接施工が非常に難しい「狭開先」と言われる、開先角度15度以下のレ型開先およびI型開先にも適用可能なものである。
図13は、低周波重畳パルス波形と埋もれアークを併用した動作を説明するための波形図である。図13には、パルス波形の平均電圧の時間変化と、溶接トーチの回転角の時間変化と、ワイヤ先端の軌跡とが示されている。
ワイヤ径1.6mmの場合に平均電圧を28Vにすることによってアークは埋もれアークとなり、平均電圧を28Vより高い電圧で32Vまで変化させることによってアークはオープンアークとなる。なお、平均電流値は、埋もれアークの場合とオープンアークの場合は、等しく400Aである。
図1の揺動機構17は、図13に示すように先端のチップ15の部分がθ=4〜16°の角をなすように回転軸であるノズル14から曲げられた溶接トーチ16の回転角を+55°から−55°の間で揺動させる。これにより、開先距離が18mmの場合に、溶接方向に直交する方向のワイヤ先端の位置を、開先中央を0mmとして±7mmの範囲で揺動させる。
図7(a)に示すように、大きな溶け込み深さが得られる埋もれアークを第2母材52と当て金53によって形成される隅部に適用する。もう一方の隅部方向にワイヤ先端が左右揺動および回転移動するのに合わせて、一旦図7(b)に示すように低周波重畳パルスを用いて開先中央にてオープンアークに切り替えて幅の広い滑らかなビード形状となるように整える。続いて、図7(c)に示すように、第1母材51と当て金53によって形成されるもう一方の隅部への左右揺動および回転移動に合わせて、低周波重畳パルスを用いて再度埋もれアークに切り替えることでもう一方の隅部でも深い溶け込みを得る。
溶融電極22は、ワイヤ送給装置20から溶接トーチ16のノズル14に供給される溶接ワイヤである。ノズル14の先端には、溶接ワイヤの送給方向が所定角度曲がるように構成されたチップ15が接続されている。アーク溶接を行なう工程においては、溶融電極の先端を往復動させるためにノズル14を回動させ、図13の波形に示されるように、ノズル14の回動角に同期してパルス電圧の電圧値が変更される。
なお、図13ではノズルの回動角を±55°としたが、左右揺動に合わせて±45°〜±130°の範囲で回転させればよい。なお、チップ角度8°、ワイヤの突出し長さ25mmの場合、ノズルの回動角を±130°とすると、ワイヤ先端は±8mmの範囲で揺動する。
隅部を狙えるようにノズル14に対して4°以上16°以下の角度範囲で取り付けたチップ15によりワイヤ先端が屈曲される。低周波重畳パルスの周波数は、ノズルの左右揺動および回転に合わせて0.5〜2Hz(周期は0.5秒〜2秒)とする。埋もれアーク/オープンアークの切り替えは、主に電圧調整によるアーク長変化によって行う。
図13において、時刻t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6は各0.5秒の埋もれアーク期間であり、時刻t2〜t3,t4〜t5は各0.5秒のオープンアーク期間である。なお、好ましくは、埋もれアークに対応する電圧値(28V)をオープンアークに対応する電圧値(28V〜32V)に変更開始する第1タイミングt2A,t4Aは、溶融電極の先端が往復動の両端に位置している状態から中央に向けて移動開始する第2タイミングt2,t4と比べて、それぞれ同時または早くする。好ましくは、第1タイミングt2A,t4Aと第2タイミングt2,t4の各時間差は0秒以上0.2秒以下である。より好ましくは、第1タイミングt2A,t4Aと第2タイミングt2,t4の各時間差は0.1秒である。このような時間差を設けることによって、ビード形状が改善される。
また、アーク溶接を行なう工程において、溶融電極の先端が往復動の両端に位置する状態において往復動に停止時間(t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6)を設けることが好ましい。図13のワイヤ先端の軌跡には、この停止時間を0.5秒としている例が示されている。
両端部で埋もれアークを適用するメリットは、溶け込み深さだけではない。両端部における埋もれアークは、アーク発生方向の制御にも顕著な効果がある。アークは、ワイヤと母材との間に発生するが、距離が近い母材の位置に発生する。仮にオープンアークのまま開先隅部を溶かすべくワイヤ先端を隅部に近づけた場合、ワイヤ先端−隅部よりも距離の近いワイヤ先端−開先壁面間にアークが発生し(図7における左右方向)、隅部にアークが届かなくなることで隅部が溶融されなくなり、隅部の溶け込みが全く得られなくなる。
これに対し埋もれアークでは電圧を低く設定することでアーク長およびアーク幅が小さくなる。その結果、溶接ワイヤの先端と壁面との距離が小さくなるまでアークは発生しないので、アークが下方向に集中して開先壁面へのアーク発生を防止できる。そのためワイヤ先端を隅部に近づけてもアークを隅部方向(図7における斜め下方向)へ指向して発生させることができ、隅部の溶け込み深さをより大きくすることが可能となる。
[効果の確認]
狭開先溶接が難しい主な理由は、開先幅が狭いために物理的に溶接トーチを傾けることが難しく、特に初層溶接において隅部を狙えないために溶け込み不足が生じやすいことである。さらに角継手の縦板側初層隅部は溶接入熱が上下方向に逃げること、鋼材表面を溶融させる必要があること等の理由により安定的な溶け込みを得ることが最も難しいと考えられる。
図14は、比較のために示した一般的なパルスMAG溶接によって得られた溶接部断面を示す写真である。図15は、埋もれ/オープンアークを用いた低周波重畳パルスを用いたパルスMAG溶接によって得られた溶接部断面を示す写真である。図16は、本実施の形態のアーク溶接方法によって得られた溶接部断面を示す写真である。
図14〜図16の全ての溶接はノズルの左右揺動および回転を用いている。オープンパルスのみを用いたMAG溶接(図14)では開先形状として優位な、隅部が溶融しやすい平継手形状であるにもかかわらず、ノズル回転機構を用いて隅部を狙っても、オープンアークであるがために隅部の溶け込みはほとんど得られていない。図14において、溶け込みは、一方の隅部が縦方向0.49mm、横方向0.15mmであり、他の一方の隅部が縦方向1.32mm、横方向0.34mmである。
一方、埋もれ/オープンアークを用いた低周波重畳パルスを用いたパルスMAG溶接(図15、平継手形状)では下方向の中央部の溶け込みは7.05mmとなり、劇的に改善されているのが分かる。図15において、隅部の溶け込みは、一方の隅部が縦方向2.09mm、横方向0.61mmであり、他の一方の隅部が縦方向2.89mm、横方向0.80mmである。これより埋もれアークの効果が伺えるが、表面のビード形状が上凸気味であり2パス目以降の隅部溶け込みが不安定となる可能性が高い。
これらに対して、本実施の形態のアーク溶接方法によって得られた溶接部(図16)では、縦板側隅部の溶け込みが得られにくい難度の高い角継手に対し、低周波重畳パルス波形にさらに両端停止を行うことで両隅部における深い溶け込みが得られている。図16において、隅部の溶け込みは、一方の隅部が縦方向5.22mm、横方向1.43mmであり、他の一方の隅部が縦方向6.21mm、横方向2.14mmである。
これに加え、ノズル回転に合わせてタイミング良くオープンアークに切り替えてオープンアーク時間を確保することで止端部の滑らかな下凸型のビードが得られており、2層目以降の隅部溶け込みを安定的に得ることができる。すなわち、埋もれアークおよびオープンアークを用いた低周波重畳パルス波形を用いて溶接条件を適正化することで、溶け込みの欲しい所を重点的に溶かし、そうでないところは溶け込みを抑制するというような溶け込み形状コントロールが可能となった。このことから本実施の形態に係るアーク溶接法によれば狭開先の厚板溶接に著しい効果が得られることがわかる。
なお、本実施の形態では、埋もれアークとオープンアークの切替は、パルス電圧の電圧制御によって行なう例を説明したが、他の方法で埋もれアークとオープンアークの切替を行なっても良い。たとえば、溶接ワイヤのワイヤ送給速度を変えることによってオープンアークと埋もれアークを切替えても良い。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 溶接装置、12 ガス供給装置、14 ノズル、15 チップ、16 溶接トーチ、17 揺動機構、18 溶接電源装置、20 ワイヤ送給装置、22 溶融電極、30 制御装置、51 第1母材、52 第2母材、53 当て金。

Claims (9)

  1. 溶融電極を使用して第1母材と第2母材とを溶接するアーク溶接方法であって、
    前記第1母材と前記第2母材との間に溶接金属形成隙間を形成するように前記第1母材と前記第2母材とを配置する工程と、
    前記溶接金属形成隙間にシールドガスを供給する工程と、
    前記溶融電極と前記第1母材および前記第2母材との間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、前記溶融電極の先端を、前記溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に交差する方向に往復動させながら前記溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なう工程とを備え、
    前記アーク溶接を行なう工程においては、前記溶融電極の先端が前記往復動の中央部に位置するときにオープンアークが生じ、前記溶融電極の先端が前記往復動の両端部に位置するときに埋もれアークが生じるようにアーク長が制御される、アーク溶接方法。
  2. 前記溶融電極は、送給装置から溶接トーチのノズルに供給される溶接ワイヤであり、
    前記ノズルの先端には、前記溶接ワイヤの送給方向が所定角度曲がるように構成されたチップが接続されており、
    前記アーク溶接を行なう工程において、前記溶融電極の先端を前記往復動させるために前記ノズルを回動させ、前記ノズルの回動角に同期して前記アーク長が変更される、請求項1に記載のアーク溶接方法。
  3. 前記所定角度は、4°以上16°以下である、請求項2に記載のアーク溶接方法。
  4. 前記ノズルの回動角度は、45°以上130°以下である、請求項2または3に記載のアーク溶接方法。
  5. 前記ノズルの回動周期は、0.5秒以上2秒以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のアーク溶接方法。
  6. 前記溶融電極の先端が前記往復動の両端に位置している状態から中央に向けて移動開始する第1タイミングは、前記埋もれアークに対応する電圧値を前記オープンアークに対応する電圧値に変更開始する第2タイミングと比べると、同時または遅れており、
    前記第1タイミングと前記第2タイミングの時間差は0秒以上0.2秒以下である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のアーク溶接方法。
  7. 前記アーク溶接を行なう工程において、前記溶融電極の先端が前記往復動の両端に位置する状態において前記往復動に停止時間を設けた、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアーク溶接方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のアーク溶接方法によって、複数の鋼材を溶接して大型構造物を製造する、大型構造物の製造方法。
  9. 溶融電極を使用して第1母材と第2母材とを溶接する溶接装置であって、
    前記第1母材と前記第2母材との間に溶接金属形成隙間を形成するように前記第1母材と前記第2母材とが配置され、
    前記溶接装置は、
    前記溶接金属形成隙間にシールドガスを供給するガス供給部と、
    前記溶接金属形成隙間に前記溶融電極の先端が位置するように前記溶融電極を支持する溶接トーチと、
    前記溶接トーチを揺動させる揺動機構と、
    前記溶接トーチに電圧を与える電源装置と、
    前記溶融電極と前記第1母材および前記第2母材との間にパルス電圧を繰り返し印加するとともに、前記溶融電極の先端を、前記溶接金属形成隙間に沿う溶接進行方向に交差する方向に往復動させながら前記溶接進行方向に移動させてアーク溶接を行なうように前記揺動機構と前記電源装置とを制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記溶融電極の先端が前記往復動の中央部に位置するときにオープンアークが生じ、前記溶融電極の先端が前記往復動の両端部に位置するときに埋もれアークが生じるようにアーク長を制御する、溶接装置。
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