JP6564314B2 - 画像符号化装置及びその制御方法及びプログラム並びに記憶媒体 - Google Patents

画像符号化装置及びその制御方法及びプログラム並びに記憶媒体 Download PDF

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Description

本発明は、画像の符号化技術に関するものである。
現在、画像データを高効率に圧縮符号化する符号化手法が提案されている。その中の代表的な符号化方式として、JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)が挙げられる。このJPEG方式では、周波数変換において、DCT(離散コサイン変換:Discrete Cosine Transform)が用いられる。しかし、JPEGにおけるDCTは、8×8画素の固定ブロック単位で処理する為、低ビットレートにおいて、ブロック歪みが発生しやすいことで知られている。
一方、このJPEGの後継として規格化されたJPEG2000と呼ばれる符号化方式では、周波数変換において、DWT(離散ウェーブレット変換:Discrete Wavelet Transform)が用いられている。DWTは、ハイパスフィルタとローパスフィルタを組み合わせたフィルタバンクと呼ばれるフィルタによって、画像データを複数の周波数帯域成分に分割する。DCTが固定ブロック単位で周波数変換を行うのに対し、DWTはそのサイズに実質的に制限はなく、たとえば画面単位に周波数変換を行うことができ、量子化に伴うブロック歪みが発生しない。そして、画像データを複数の周波数帯域(以降サブバンドと呼ぶ)に分割した後、サブバンド毎に量子化してから符号化する。量子化においては、人間の視覚特性を考慮して、低域サブバンドに符号量を多く割り当てることで、主観画質を損なわずに符号量を削減する手法が静止画や動画における量子化の一般的な考え方である。
ここで、JPEG2000におけるDWT及び量子化は、任意の矩形ブロック(以降タイルと呼ぶ)に対して適応可能である。このタイルに分割して符号化する技術により、処理の並列度を上げたり、内部で保持するRAM(ラインバッファ)容量を削減することができる。例えば、画像データを左右に2分割する場合を考察する。この場合、左右のタイルそれぞれの水平1ラインの画素数は、オリジナルのそれの半分になり、符号化する際に保持するラインバッファの容量も、オリジナルの場合の半分に削減できる。しかし、各タイルが独立した量子化を実行するため、各タイルの量子化誤差に差異が生じ、特に高圧縮時にはタイル境界部分で歪みが生じることが課題となっている。
先行技術として、DWTベースのタイル分割を行う画像符号化方式において、符号量制御のための下位ビットの破棄によって生じる画質の歪みを低減する方法が下記の特許文献1に開示されている。
特開2013−175870号公報
各タイルが共通の量子化パラメータを使用することができれば、タイル境界の歪みは発生しない。しかし、各タイルが同一の量子化パラメータを適用するようにすると、逆に符号量の制御性が悪化し、目標ビットレートに収束しないケースが発生し得る。
ここで、上述の特許文献1には、エンベデッド符号化(EBCOT)によるビットプレーン量子化を用いた符号量制御における、タイル間の下位ビット破棄位置が異なることで発生する境界歪みの低減方法が記載されている。詳細には、破棄すべき誤差データをタイルデータとは別に符号化して保持しておき、復号時には、保持していた誤差データを用いてタイルデータを復号することで境界歪みを低減する仕組みとなっている。しかし、この手法では、誤差データの符号化処理部、誤差データの復号処理部、復号時のタイルデータと誤差データの合成処理部が別途必要となるため、複雑かつ実装規模の増大が懸念される。
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、タイル分割した画像データを量子化、および符号化する際に、実装規模の増大を抑えつつ容易な制御方法で、タイル境界歪みの低減と符号量の高い制御性の両立を図る技術を提供しようとするものである。
この課題を解決するため、例えば本発明の画像符号化装置は以下の構成を備える。すなわち、
符号化対象の画像データを複数のタイルに分割し、当該タイルを単位に符号化する画像符号化装置であって、
符号化対象の画像データを複数のタイルに分割するタイル分割手段と、
前記タイル分割手段により分割されたタイルに対して周波数変換することで複数のサブバンドを生成する周波数変換手段と、
イル間の同一サブバンドに対し固定であって同一の量子化パラメータで量子化する第1の量子化方法、または、タイル間の同一サブバンドに対して可変の量子化パラメータで量子化する第2の量子化方法のいずれかの量子化方法により、前記周波数変換手段により生成されたサブバンドを量子化する量子化手段と、
前記量子化手段で量子化されたデータを符号化する符号化手段と、
前記符号化対象の画像データの目標データ量に応じて、前記第1の量子化方法で量子化するか、前記第2の量子化方法で量子化するかを切り換える制御手段とを備える。
本発明によれば、タイル分割した画像データを量子化、および符号化する際に、実装規模の増大を抑えつつ容易な制御で、タイル境界歪みの低減と符号量の高い制御性の両立を図ることが可能となる。
第1実施形態における撮像装置のブロック構成図。 実施形態における2つの量子化方法を説明するための図。 第1実施形態における量子化方法の決定処理を示すフローチャート。 第1実施形態におけるサブバンドの分割例と、ビットレートと各サブバンドに適用する量子化方法との関係を示す図。 第2実施形態におけるビットレートと量子化パラメータの許容範囲との関係と、量子化パラメータの推移を示す図。 サブバンドの符号化時の符号量の推移を示す図。 符号化処理手順を示すフローチャート。
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明において、画像符号化装置の適用する装置として、デジタルカメラに代表される撮像装置を例にして説明する。従って符号化対象の画像データの発生源は、撮像装置が有する撮像部となる。しかし、本発明は撮像装置のみに適用されるものではない。また、符号化対象の画像データの発生源は、撮像部に限らず、符号化対象の画像データを記憶した記憶媒体でもよく、その種類も問わない。あくまで理解を容易にするためであると理解されたい。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態が適用する撮像装置100のブロック構成図である。撮像装置100は、撮像した画像情報を複数のタイルに分割してから、記録する構成となっている。また、タイルのサイズは可変で、例えば、画像データ全体を1つのタイルとして設定してもよい。制御部110は参照符号101乃至109の各構成要素を制御し、装置全体の制御を司るものである。典型的には、制御部110は、CPU、CPUの処理手順を示すプログラムやデータを格納したROM、CPUのワークエリア等として利用するRAMで構成されるものである。なお、参照符号101乃至109のいくつか、もしくは全部が制御部110の処理により実現しても構わない。
操作部101は、ユーザの指令を受け付け、指令に応じた制御信号を生成する。例えば、撮像指示、タイル分割数(タイルのサイズ)、記録ビットレートの設定などもこの操作部101から入力される。入力されたタイル分割数はタイル分割部103に供給される。また、記録ビットレートは量子化制御部106に供給される。
撮像部102は、操作部101からの制御信号に基づき、撮像センサの画素毎に配置される赤、緑、青(RGB)のカラーフィルターを透過した光強度の信号を画像情報に変換してタイル分割部103に出力する。本第1実施形態は、撮像部102から出力される画像データを、生(未現像)の画像を意味するRAW画像データと称す。撮像部102に配置されるカラーフィルターの一例としてベイヤ―配列がある。ベイヤ―配列は、赤(R)、緑(G)、青(B)が画素毎にモザイク状に配置されていて、2×2の4画素につき赤(R)1画素、青(B)1画素、緑(G1、G2)2画素を1セットにして規則的に並べられた構造となっている。
タイル分割部103は、撮像部102から入力されるRAW画像を一旦内部メモリに格納し、操作部101から供給されるタイル分割数に基づき、RAW画像データを1つ以上のタイルに分割する。なお、操作部101からのタイル分割数はM×Nの形式であり、分割されるタイルは基本的に同じサイズとする。ただし、オリジナルのRAW画像データの水平画素数がMの整数倍となるとは限らないが、余った画素は予め設定された条件に従って適当なタイルにわりあてるものとする。かかる点は垂直方向の分割数Nについても同様である。タイル分割部103は、分割して得られたタイルをプレーン形成部104へ順次供給する。なお、操作部101から入力されるタイル分割数を用いずに、撮像部102から入力される画像サイズに応じて、内部のメモリリソースが破綻しないような分割数を自動的に算出するようにしてもよい。
プレーン形成部104は、タイル分割部103から供給されたタイルのRAW画像データを色成分毎に分解して色プレーンを形成する。ベイヤ配列のRAW画像であるため、色プレーン形成部104は、赤(R)、緑(G1)、緑(G2)、青(B)の各色成分を抜き出し、色プレーンを形成する。そして、プレーン形成部104は、形成したRプレーン、G1プレーン、G2プレーン、そして、Bプレーンを、例えばこの順に周波数変換部105に供給する。
周波数変換部105は、プレーン形成部104より受信したRプレーンに対して離散ウェーブレット変換を実行し、その結果得られた変換係数データを量子化部107に供給する。この離散ウェーブレット変換では、例えば、JPEG2000で規定される整数型5×3型フィルタであってもよく、又は実数型9×7フィルタを用いても良い。そして、周波数変換部105は、プレーン形成部」104から受信した他のプレーン(G1,G2,Bプレーン)に対しても離散ウェーブレット変換を実行し、その結果得られた変換係数データを量子化部107に供給する。
量子化制御部106は、操作部101から入力される記録ビットレートに基づき、量子化部107が使用する量子化パラメータを決定して、量子化部107に供給する。ここで、実施形態における量子化制御部106は、2つの量子化方法から量子化パラメータを決定する構成となっている。この2つの量子化方法の詳細は後述する。
量子化部107は、周波数変換部105から受信した変換係数データに対して、量子化制御部106から受信した量子化パラメータを用いて量子化を実行し、量子化後の係数をエントロピー符号化部108に供給する。
エントロピー符号化部108は、量子化部107から受信した量子化後の変換係数データを圧縮符号化し、符号化データを生成する。そして、エントロピー符号化部108は生成した符号化データを記憶媒体109に供給する。この圧縮符号化は、例えば、ゴロム符号化のようなエントロピー符号化を用いて実施する。
記憶媒体109は、エントロピー符号化部108から受信した符号化データを記憶する不揮発性メモリ(例えば脱着可能な記憶媒体(SDカード)等)である。
次に、量子化制御部106における、第1の量子化方法と、第2の量子化方法について、図2(a)、図2(b)を用いて説明する。
図2(a)は、第1の量子化方法を示す概念図であり、図2(b)は、第2の量子化方法を示す概念図である。以下、これらについてさらに詳しく説明する。なお、実施形態における周波数変換部105は、1つのタイルに対して、離散ウェーブレット変換を2回行うものとして説明する。結果、図4(a)に示すように、1つのタイルから7つのサブバンドSB0乃至SB6が生成される。なお、この離散ウェーブレット変換の実行回数は2回に限らず、1回以上であればその回数に制限はない。場合によっては、操作部101からその回数を設定できるようにしても良い。
<第1の量子化方法>
図2(a)に示すように、1つのサブバンドを面で均一に量子化する方法である。この量子化方法における量子化パラメータは、1サブバンドにつき1パラメータの関係が固定であり、各タイルにおける同一サブバンドの量子化パラメータ(量子化ステップ)が、隣接タイル間で同一の値とを取る。各タイルのサブバンドはタイル間で同一の量子化パラメータが設定されるため、量子化によるタイル境界の歪みが発生することはない。なお、本実施形態での量子化パラメータは、操作部101から入力されるビットレート付近に収束するような統計値を予め用意して量子化に適用する方法で説明する。
なお、実施形態では、周波数変換部105から、1つのタイルから7つのサブバンドが生成される。それ故、それぞれに対してサブバンドに対し、予め設定した量子化パラメータが設定される。
<第2の量子化方法>
図2(b)に示すように、1つのサブバンドをライン単位に分割し、各ラインが異なる量子化パラメータ(Q#x)(x=0,1,2…)を用いて量子化する方法である。この量子化方法は、ライン毎に量子化パラメータを変更することが可能であるため、設定ビットレートへの収束性が高い。
第1の量子化方法および第2の量子化方法の決定処理の基本的な考え方を説明する。ビットレートが低い場合(目標圧縮率が高い場合)は、符号量を抑制するために量子化パラメータが大きく設定されるため、量子化誤差は大きくなる。つまり、タイル境界部の歪みが視認しやすくなる傾向になる。かかる点に従い、タイル境界の画質を優先した第1の量子化方法に決定する。
一方、ビットレートが高い場合(目標圧縮率が低い場合)は、量子化パラメータが小さく設定されるため、量子化誤差は小さい。タイル境界部の歪みが視認しにくいことから、ビットレートの収束性を優先した第2の量子化方法に決定する。
続いて、RAW画像の符号化処理に対して、量子化制御部106が行う量子化方法決定処理について図3に示すフローチャートを基に説明を行う。
S301にて、量子化制御部106は、ユーザが設定した操作部101からビットレートRを取得する。なお、ビットレートは、ユーザがそれを変更しない限りメモリに保持される場合には、そのメモリよりビットレートを取得しても構わない。S302にて、量子化制御部106は、取得したビットレートRと予め設定された閾値Tと比較し、大小判定を行う。ビットレートRが閾値T0を下回る場合(R<0Tの場合)はS303に処理を進める。また、ビットレートRが閾値T0以上の場合にはS304に処理を進める。なお、閾値T0の設定例は後述する。
S303にて、量子化制御部106は、着目タイルの各サブバンドの量子化方法を、第1の量子化方法を用いるとして決定する。また、S304に処理が進んだ場合、量子化制御部106は、着目タイルの各サブバンドの量子化方法として、第1の量子化方法と第2の量子化方法との組み合わせを用いるものとして決定する。
ここで、閾値Tの設定例と、第1の量子化方法と第2の量子化方法とを組み合わせた量子化方法について、図4(a)、図4(b)を用いて説明する。
図4(a)は、1つのタイルに対し、離散ウェーブレット変換を2回実行した場合に生成されるサブバンドを示している。各サブバンドは以下の意味を持つ。
・サブバンドSB0(2LLとも表現する):
1回目の離散ウェーブレット変換で得られる低域成分の変換係数データの集合(1LL)に対して、垂直方向ローパスフィルタ処理、水平方向ローパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
・サブバンドSB1(2HLとも表現する):
1回目の離散ウェーブレット変換で得られる低域成分の変換係数データの集合(1LL)に対して、垂直方向ローパスフィルタ処理、水平方向ハイパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である
・サブバンドSB2(2LHとも表現する):
1回目の離散ウェーブレット変換で得られる低域成分の変換係数データの集合(1LL)に対して、垂直方向ハイパスフィルタ処理、水平方向ローパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
・サブバンドSB3(2HHとも表現する):
1回目の離散ウェーブレット変換で得られる低域成分の変換係数データの集合(1LL)に対して、垂直方向ハイパスフィルタ処理、水平方向ハイパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
・サブバンドSB4(1HLとも表現する):
タイルに対して、垂直方向ローパスフィルタ処理、水平方向ハイパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
・サブバンドSB5(1LHとも表現する):
タイルに対して、垂直方向ハイパスフィルタ処理、水平方向ローパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
・サブバンドSB6(1HHとも表現する):
タイルに対して、垂直方向ハイパスフィルタ処理、水平方向ハイパスフィルタ処理を施して得られた変換係数データの集合である。
ここで、量子化制御部304のS303,S304の処理の具体例を説明する。図4(b)は、各サブバンドの量子化方法適用パターンを示したテーブルである。閾値の大小関係は、T0<T1<T2<T3である。
・パターン1:
ビットレートRが、閾値T0未満の場合に、着目タイルから得られた全サブバンドに第1の量子化方法を適用するパターンである。このパターン1に相当する場合の処理がS303の処理でもある。以下に説明するパターン2乃至パターン5は、S304における処理となる。
・パターン2:
ビットレートRが、閾値T0以上T1未満の場合に、サブバンドSB6に第2の量子化方法が適用され、それ以外のサブバンドSB0乃至5に対しては第1の量子化方法を適用するパターンである。
・パターン3:
ビットレートRが、閾値T1以上T2未満の場合に、サブバンドSB4乃至SB6に第2の量子化方法が適用され、それ以外のサブバンドSB0乃至3に対しては第1の量子化方法を適用するパターンである。
・パターン4:
ビットレートRが、閾値T2以上T3未満の場合に、サブバンドSB3乃至SB6に第2の量子化方法が適用され、それ以外のサブバンドSB0乃至2に対しては第1の量子化方法を適用するパターンである。
・パターン5:
ビットレートRが、閾値T3以上の場合に、サブバンドSB1〜SB6に対して第2の量子化方法が適用され、サブバンドSB0に対しては第1の量子化方法を適用するパターンである。
ビットレートが最も高いパターン5においては、タイル境界部の歪みが視認しにくいため、第2の量子化方法を適用するサブバンドが最も多く、ビットレートの収束性を重視した制御となっている。
実施形態におけるサブバンドはSB#(#=0,1,2、…)と表現している。ウェーブレット変換を行う回数が2以外でもかかる表現を用いるのであれば、周波数成分の低い順で表していると言える。上記のパターン1乃至5における量子化制御部106の処理は以下(1)、(2)のようにまとめることができる。
(1)周波数変換で得られる複数のサブバンドを周波数の低い順に並べた場合の、最も低い周波数から高い周波数に向かうM個のサブバンドについては第1の量子化方法を適用し、M+1個目から最も高い周波数までのN個のサブバンドについては第2の量子化方法を適用する。
(2)ビットレートが低いほどMを大きくする(または、ビットレートは高いほどNを大きくする)
また、最も周波数の低いサブバンドSB0(実施形態では2LL)は、ビットレートとは無関係に、第1の量子化方法を採用する。
以上のようにすることで、タイル分割した画像の符号化において、ビットレートに応じて量子化方法を動的に切り替えることで、タイル境界歪みの抑制と符号量の制御性を両立可能な画像符号化装置を提供することができる。
なお、第1の量子化方法に基づく符号化処理は、着目サブバンドの全変換係数を同じ量子化パラメータに基づき量子化し、符号化することになるので、その説明は不要であろう。そこで以下では、第2の量子化方法にもとづく、各ラインの量子化パラメータの変更がどのようにして推移するのかを、その符号化処理と共に説明する。
着目サブバンドのライン0、1、2…と符号化を行っていくと、各ラインの符号化データが生成されていく。つまり、各ラインの符号化を継続していく限り、総符号量は単調増加していく。
着目サブバンドの全ラインの符号化を終えた際の目標符号量は、ユーザが設定したビットレートRに加え、分割タイル数、ウェーブレット変換の回数、並びに、着目サブバンドの種類で決まる。
図6は、着目サブバンドをライン0から順に量子化、符号化を行った際の符号量の推移を示している。図示の右肩上がりの直線は、目標符号量と原点を結ぶ理想推移を示す直線(以下、理想直線という)を示している。第0ラインから第iラインまでの累積目標符号量を『TA(i)』と表している。実際に量子化、符号化がこの理想直線上を推移するとは限らず、理想直線を上回ったり、下回ったりしながら累積符号量は増えていく。理想直線を上回った場合、符号量の発生を抑制する必要があることを意味する。それ故、次ラインの量子化の際には、量子化パラメータ(量子化ステップ)を所定値だけ増加させる。一方、理想直線を下回った場合、符号量を増やして画質を高めても良いことを意味する。それ故、次ラインの量子化の際には、量子化パラメータ(量子化ステップ)を所定値だけ減少させる。
かかる点を踏まえ、実施形態における制御部110の制御下における或るサブバンドの符号化処理を図7のフローチャートに従って説明する。なお、以下の説明で用いる変数iはライン番号を特定するために用いられる。また、変数Aは、第0〜第iラインまでの累積符号量を格納するために用いられるものである。
まず、制御部110は、S1にて、量子化制御部106を制御し、着目サブバンドの符号化に先立ち、量子化パラメータRに初期値を設定する。この初期値は、ユーザが設定したビットレートR、分割タイル数、ウェーブレット変換の回数、並びに、着目サブバンドの種類で決まる。
次に、S2にて、制御部110は変数i、Aをそれぞれ0クリアする。そして、S3にて、制御部110は量子化部107を制御し、着目サブバンドから第iラインの変換係数データを周波数変換部105から入力させ、S4にて量子化パラメータRを用いて量子化を行わせる。そして、S5にて、制御部110はエントロピー符号化部108を制御して、量子化後の1ライン分の変換係数データに対しエントロピー符号化を実行させる。そして、制御部110は、S6にて、変数Aに第iラインの符号化データ量を加算することで、変数Aを更新する。
次いで制御部110は、S7にて第iラインまでの累積符号量Aと累積目標符号量TA(i)との差が、予め設定した閾値ε以下であるか否かを判定する。閾値ε以下である場合、処理はS11に進み、制御部110は全ラインの符号化を終えたか否かを判定し、否の場合にはS12にて変数iを“1”増加させ、S3以降の処理を繰り返す。
また、第iラインまでの累積符号量Aと累積目標符号量TA(i)との差が閾値εを超える場合、制御部110は処理をS8に進め、A<TA(i)であるか否か、つまり、累積符号量Aが累積目標符号量TA(i)を下回っているか否かを判定する。A<TA(i)である場合、符号量を増やしても良いことになる。それ故、制御部110は、S9にて、量子化パラメータRを予め設定された正の所定値ΔRだけ減少させる。また、A>TA(i)であった場合、符号量を減らす必要がある。それ故、制御部110は、S10にて、量子化パラメータRを所定値ΔRだけ増加させる。
以上の結果、着目サブバンドの量子化パラメータをライン単位に変更した符号化が実現できる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る装置構成は、上記第1の実施形態と同様であるため、構成説明を省略する。また、量子化制御部106が行う量子化方法決定処理についても第1の実施形態と同様であるため省略する。異なる点は、本第2の実施形態における第2の量子化方法(図2(b))では、隣接タイルにおける同一サブバンド間の量子化パラメータが、所定の範囲内に収まるように、ライン毎の量子化パラメータを決定する構成とする点である。
第1実施形態における第2の量子化方法は、ビットレートに依存することなく処理内容は常に同じであり、タイル間の量子化パラメータの差分について考慮されていなかった。そのため、特に、低ビットレート時は、隣接タイル間の量子化パラメータ差分量が大きい場合に、タイル境界の歪みが発生し得る可能性があった。
そこで、本第2の実施形態の第2の量子化方法は、ビットレートに応じて隣接タイル間のライン毎の量子化パラメータに設定範囲を設けることで、より細かく画質とビットレートの収束性のバランスを最適にすることを目的とする。以下かかる詳細を説明する。
本第2実施形態における第2の量子化方法における量子化パラメータの設定方法、設定値の範囲について説明する。本第2実施形態では、分割したタイルの着目タイルのサブバンドの先頭ラインの量子化パラメータが、タイル間で同値であるものとする。
図5(a)は、タイルの所定のサブバンドの量子化パラメータの設定範囲を示している。また、図5(b)は、図5(a)で示した設定範囲の中に収まるように、ライン毎の量子化パラメータが推移していることを表している。図5(a)中の閾値T0,T1の設定方法については、例えば、記録可能な最大ビットレートを等割にした値を設定すればよい。ただし、閾値の大小関係はT0<T1であり、閾値に基づく設定パターンは3つであるものとして説明する。また、量子化パラメータ差分の許容範囲A、B、Cの大小関係はA<B<Cである。
・パターン1:
ビットレートRが、閾値T0未満の場合に、第2の量子化方法で用いる各ラインの量子化パラメータが、先頭ラインの量子化パラメータに対して、±Aの範囲に収まるように設定する。
・パターン2:
ビットレートRが、閾値T0以上T1未満の場合に、第2の量子化方法で用いる量子化パラメータが、先頭ラインの量子化パラメータに対して、±Bの範囲に収まるように設定する。
・パターン3:
ビットレートRが、閾値T1以上の場合に、第2の量子化方法で用いる量子化パラメータが、先頭ラインの量子化パラメータに対して、±Cの範囲に収まるように設定する。
図5(a)、図5(b)から分かるように、ビットレートが最も高いパターン3においては、タイル境界部の歪みが視認しにくいため、より広い範囲で量子化パラメータを設定する。
一方、ビットレートが最も低いパターン1においては、ビットレートが下がるとタイル境界部の歪みが視認しやすくなるため、より狭い範囲で量子化パラメータを設定することでタイル歪みを抑制している。
以上のようにすることで、タイル分割した画像の符号化において、ビットレートに応じて量子化パラメータの設定範囲を動的に切り替えることで、より細かく画質とビットレート収束性のバランスを調整することが可能な画像符号化装置を提供することができる。
なお、本実施形態の量子化パラメータの設定範囲を1つのサブバンドに着目して説明したが、設定範囲A、B、Cは、いずれのサブバンドにおいても同様の大小関係が成り立つ。また、設定範囲A,B,Cは、量子化パラメータのリミッタとして用いることになる。図7のフローチャートに適用するのであれば、設定値Aを適用する場合には、S9、S10の直後等に、『量子化パラメータの初期値±A』の範囲を超えた場合に範囲内に戻す処理を追加すればよい。
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
100…撮像装置、101…操作部、102…撮像部、103…タイル分割部、104…プレーン形成部、105…周波数変換部、106…量子化制御部、107…量子化部、108…エントロピー符号化部、109…記憶媒体、110…制御部

Claims (13)

  1. 符号化対象の画像データを複数のタイルに分割し、当該タイルを単位に符号化する画像符号化装置であって、
    符号化対象の画像データを複数のタイルに分割するタイル分割手段と、
    前記タイル分割手段により分割されたタイルに対して周波数変換することで複数のサブバンドを生成する周波数変換手段と、
    イル間の同一サブバンドに対し固定であって同一の量子化パラメータで量子化する第1の量子化方法、または、タイル間の同一サブバンドに対して可変の量子化パラメータで量子化する第2の量子化方法のいずれかの量子化方法により、前記周波数変換手段により生成されたサブバンドを量子化する量子化手段と、
    前記量子化手段で量子化されたデータを符号化する符号化手段と、
    前記符号化対象の画像データの目標データ量に応じて、前記第1の量子化方法で量子化するか、前記第2の量子化方法で量子化するかを切り換える制御手段と、
    を備えることを特徴とする画像符号化装置。
  2. 前記制御手段は、
    画像データの目標データ量が所定値より小さい場合には、前記周波数変換手段で生成された全てのサブバンドに対して前記第1の量子化方法で量子化すると決定し、
    画像データの目標データ量が前記所定値以上の場合には、前記周波数変換手段で生成された複数のサブバンドのうち、低域のサブバンドは前記第1の量子化方法で量子化し、高域サブバンドは前記第2の量子化方法で量子化すると決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。
  3. 前記符号化対象の画像データのビットレートを設定する設定手段を有し、
    前記制御手段は、前記設定手段により設定されたビットレートに応じて、前記第1の量子化方法で量子化するか、前記第2の量子化方法で量子化するかを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。
  4. 前記御手段は、
    前記設定手段で設定したビットレートが、第1の閾値を下回る場合は前記周波数変換手段で生成された全サブバンドを前記第1の量子化方法で量子化すると決定し、
    前記設定手段で設定したビットレートが、前記第1の閾値を下回らない場合は前記周波数変換手段で生成された複数のサブバンドのうち予め設定されたサブバンドには前記第1の量子化方法で量子化し、上記以外のサブバンドには前記第2の量子化方法で量子化すると決定する
    ことを特徴とする請求項に記載の画像符号化装置。
  5. 前記御手段は、
    前記周波数変換で得られる複数のサブバンドを周波数の低い順に並べた場合の、最も低い周波数から高い周波数に向かうM個のサブバンドについては第1の量子化方法を適用し、M+1個目から最も高い周波数までのN個のサブバンドについては第2の量子化方法を適用し、
    前記ビットレートが低いほど前記Mを大きくする
    ことを特徴とする請求項に記載の画像符号化装置。
  6. 前記御手段は、目タイルから得られた全サブバンドのうち最も低い周波数のサブバンドについては、前記ビットレートとは無関係に前記第1の量子化方法を適用するものとして決定する
    ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
  7. 前記第2の量子化方法は、着目サブバンドのラインを単位に量子化パラメータを決定する
    ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
  8. 前記御手段は、前記第2の量子化方法に従って着目サブバンドを量子化する際の量子化パラメータの許容範囲を、ビットレートに従って決定する
    ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
  9. 前記許容範囲は、ビットレートが低いほど狭くすることを特徴とする請求項に記載の画像符号化装置。
  10. 前記周波数変換手段は、ウェーブレット変換手段であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
  11. 符号化対象の画像データを複数のタイルに分割し、当該タイルを単位に符号化する画像符号化装置の制御方法であって、
    符号化対象の画像データを複数のタイルに分割するタイル分割工程と、
    前記タイル分割工程により分割されたタイルに対して周波数変換することで複数のサブバンドを生成する周波数変換工程と、
    イル間の同一サブバンドに対し固定であって同一の量子化パラメータで量子化する第1の量子化方法、または、タイル間の同一サブバンドに対して可変の量子化パラメータで量子化する第2の量子化方法のいずれかの量子化方法により、前記周波数変換工程により生成されたサブバンドを量子化する量子化工程と、
    前記量子化工程で量子化されたデータを符号化する符号化工程と、
    前記符号化対象の画像データの目標データ量に応じて、前記第1の量子化方法で量子化するか、前記第2の量子化方法で量子化するかを切り換える制御工程と、
    を備えることを特徴とする画像符号化装置の制御方法。
  12. コンピュータが読み込み実行することで、前記コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像符号化装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
  13. 請求項12に記載のプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
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