JP6564088B2 - 蒸着装置、蒸着方法及び有機el表示装置の製造方法 - Google Patents

蒸着装置、蒸着方法及び有機el表示装置の製造方法 Download PDF

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本発明は、例えば有機EL表示装置の有機層を蒸着する蒸着装置、蒸着方法及び有機EL表示装置の製造方法に関する。
例えば、有機EL表示装置が製造される場合、支持基板上にTFT等の駆動素子、平坦化膜及び電極が形成され、その電極の上に有機層が画素ごとに対応して積層される。この有機層は水分に弱くエッチングをすることができない。そのため、有機層の積層は、支持基板(被蒸着基板)と蒸着マスクとを重ねて配置し、その蒸着マスクの開口を通して有機材料の蒸着を行うことによりなされる。そして、必要な画素の電極の上のみに必要な有機材料が積層される。この被蒸着基板と蒸着マスクとは、できるだけ近接していないと画素の正確な領域のみに有機層が形成されない。正確な画素の領域のみに有機材料が堆積していないと表示画像が不鮮明になりやすい。そのため、蒸着マスクに磁性体を使用し、永久磁石又は電磁石と蒸着マスクとの間に被蒸着基板を介在させることで、被蒸着基板と蒸着マスクとを接近させるマグネットチャックが用いられている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−024956号公報
蒸着マスクとして、従来メタルマスクが用いられていたが、近年では、より精細な開口を形成するため、樹脂フィルムで形成されたマスクの開口の周囲が金属支持層で支持されたハイブリッド型の蒸着マスクが用いられる傾向にある。ハイブリッドマスクのように、磁性体が少ない蒸着マスクは、より強い磁場(磁界)でないと充分な吸着を行えない。
前述のように、マグネットチャックとして、永久磁石又は電磁石が用いられる。しかし、永久磁石では常に磁界が発生しているので、蒸着前に被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せ時も磁界が作用している。そのため、磁界が強いと、位置合せ時に蒸着マスクが被蒸着基板に吸着され、被蒸着基板と蒸着マスクの一方のみを移動させて位置合せをすることが困難になる。この磁界の影響をあまり受けないで位置合せをするためには、永久磁石を遠く離して行う必要がある。しかし、永久磁石を遠くに離して位置合せをしてから再度永久磁石を被蒸着基板に近づけると、その移動過程で蒸着マスクが横にずれて吸着される可能性がある。永久磁石を近づける際に蒸着マスクが位置ずれすると、精細な蒸着を行えない。また、永久磁石の磁界が存在すると、蒸着マスクなどを装着したり、脱着したりするときに、作業をし難いという問題もある。
一方、電磁石が用いられると、電磁石のコイルへの電流の印加をオフにすることによって、磁界を殆ど0にし、電流を印加することによって、磁界を発生させ吸着させ得る。そのため、位置合せの際などには磁界を印加しないで、位置合せ後に磁界を印加することができるので、被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せや、蒸着マスクなどの装着、脱着などが容易になる。しかも、電磁石を移動させることなく、電流の印加のみで磁界を発生させ得る。そのため、位置合せ後に磁界を発生させても、蒸着マスク又は被蒸着基板のいずれも移動することなく、正確な位置を保持し得る。
しかしながら、電磁石を用いて蒸着マスクを吸引する場合、大きい磁界を発生させるには、電流を大きくするか、コイルの巻数を多くする必要がある。電磁石の磁界の強さは電磁石のコイルの巻数とそのコイルに流れる電流との積に比例するからである。そのため、磁界を大きくすべく、電流を大きくしても、又はコイルの巻数を多くしても、いずれの場合でも、発熱量が大きくなる。元々電磁石のコイルには、大電流が流されるので、電磁石のコイルには抵抗の小さい電線が用いられるが、コストの関係から銅線よりもアルミニウム線が用いられる傾向にあり、電線の抵抗損の増加によって電磁石はより大きく発熱する。さらに、電磁石にコア(鉄心)が用いられると発生する磁界を大きくすることができるが、コアに渦電流が発生して渦電流による発熱も生じる。
発熱が生じると、被蒸着基板及び蒸着マスクにその熱が伝導して被蒸着基板及び蒸着マスクの温度が上昇する。被蒸着基板と蒸着マスクとは、材料が異なるため、その線膨張率も異なる。例えば被蒸着基板と蒸着マスクの線膨張率の差が3ppm/℃あると1mの長さの表示パネルでは、端と端で1℃当たり3μmのずれが生じる。例えば1画素の大きさの一辺が60μmとすると、5.6kの解像度では、15%程度のずれまでしか許容されないと考えられている。そうすると、熱膨張率差によるずれは9μmが限界である。前述の例では、1℃の温度上昇で3μmのずれが生じるので、3℃の温度上昇が限界になる。すなわち、電磁石の温度上昇による被蒸着基板及び蒸着マスクの温度上昇が3℃以下に抑えられることが必要になる。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せ時には磁界の影響を受け難くしながら、蒸着時には蒸着マスクを強く吸引して被蒸着基板と蒸着マスクとを近接させるマグネットチャックを用いることで、マグネットチャックによる蒸着マスクなどの温度上昇を防止し得る蒸着装置及び蒸着方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、上記蒸着方法を用いて、表示品位の優れた有機EL表示装置の製造方法を提供することにある。
本発明の第一の実施形態の蒸着装置は、磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、前記マスクホルダーによって保持される前記蒸着マスクに近接して被蒸着基板を配置すべく、前記被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、前記蒸着マスクの前記被蒸着基板と反対面に前記蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板の前記蒸着マスクと反対面に設けられ、前記蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、前記マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有している。
本発明の第二の実施形態の蒸着方法は、磁性体を有する蒸着マスクと、被蒸着基板と、前記蒸着マスクを吸引するマグネットチャックとを重ね合せ、前記マグネットチャックによる前記蒸着マスクの吸引によって、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとを近接させる工程、及び前記蒸着マスクと離間して配置される蒸着源からの蒸着材料の飛散によって前記被蒸着基板に前記蒸着材料を堆積する工程、を含み、前記マグネットチャックが永久磁石と電磁石とを有し、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとの位置合せを行う際に、前記永久磁石の磁界を弱くすべく、前記永久磁石の磁界の向きと逆向きの磁界を前記電磁石によって印加しながら前記位置合せを行い、位置合せ後に前記電磁石の磁界をオフにすることで、前記永久磁石によって前記蒸着マスクを吸引することを含んでいる。
本発明の第三の実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、支持基板上にTFT及び第一電極を少なくとも形成し、前記支持基板の表面に前述の蒸着方法を用いて有機材料を蒸着することによって有機層の積層膜を形成し、前記積層膜の上に第二電極を形成することを含んでいる。
本発明の第一及び第二の実施形態の蒸着装置及び蒸着方法によれば、マグネットチャックに永久磁石と電磁石とを備えている。そのため、被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せ時には電磁石によって永久磁石の磁界を弱めることで、磁界の影響を小さくして位置合せを行える。位置合せ後には、電磁石をオフにすることで、永久磁石によって蒸着マスクを充分に吸着し得る。従って、蒸着時には電磁石は動作しておらず、発熱も生じないで、永久磁石の強い磁界で蒸着マスクを吸引し得る。その結果、被蒸着基板や蒸着マスクの熱膨張も抑制される。ひいては、精密な蒸着パターンが得られる。その結果、有機層を蒸着する場合でも、その蒸着精度が向上し、正確なパターンで蒸着される。有機EL表示装置の製造に使用すれば、精細な画素によって、高精細な表示パネルが得られる。
本発明の一実施形態の蒸着装置の概略図を示す図である。 図1に示される蒸着装置の他の実施態様の蒸着装置の概略図である。 図1に示される蒸着装置のさらに他の実施態様の蒸着装置の概略図である。 図2に示される蒸着装置のさらに他の実施態様のマグネットチャックの一部の概略図である。 図3及び図4に示されるヒートパイプの構成例を説明する図である。 電磁石とヒートパイプとの接合のさらに他の実施態様を説明するためのヒートパイプの説明図である。 図6Aの吸熱部の平面図である。 図6Bのウィック構造体の説明図である。 図6Aのヒートパイプを蒸着装置に組み込んだ状態を示す模式図である。 蒸着マスクなどの駆動装置の一例を示す図である。 ヒートパイプを真空チャンバーに接続する構造例を示す図である。 蒸着マスクの一例の拡大図である。 本発明の有機EL表示装置の製造方法による蒸着工程を示す図である。 本発明の有機EL表示装置の製造方法で有機層が積層された状態を示す図である。
次に、図面を参照しながら本発明の第一及び第二の実施形態の蒸着装置及び蒸着方法が説明される。図1に示されるように、本実施形態の蒸着装置は、磁性体を有する蒸着マスク1を保持するマスクホルダー15と、マスクホルダー15によって保持される蒸着マスク1に近接して被蒸着基板2を配置すべく、被蒸着基板2を保持する基板ホルダー29と、蒸着マスク1の被蒸着基板2と反対面に蒸着マスク1と離間して設けられ、蒸着材料51を気化又は昇華させる蒸着源5と、基板ホルダー29に保持される被蒸着基板2の蒸着マスク1と反対面に設けられ、蒸着マスク1を磁力で吸引するマグネットチャック3と、を備え、マグネットチャック3が、永久磁石3Aと電磁石3Bとを有している。マスクホルダー15、基板ホルダー29などは、図1には図示されていないが、例えば図7Aを参照して後述されるように、先端部で駆動装置6によって上下動できるようになっている。
(マグネットチャック)
蒸着装置の概略構造については後述されるが、蒸着装置は、その一実施態様が図1に示されるように、蒸着マスク1と被蒸着基板2とは上下に並置して配置されている。この被蒸着基板2には、蒸着マスク1の開口のパターンに合せて蒸着材料が蒸着される。そのため、蒸着マスク1と被蒸着基板2とは密着していることが、蒸着マスク1のパターンを正確に被蒸着基板2に写すのに都合がよい。この密着性(良好な接近性)を得るため、被蒸着基板2の蒸着マスク1と反対面の上方に永久磁石又は電磁石からなる磁石を配置して、その磁力で磁性体を有する蒸着マスク1を吸引する方法が従来用いられている。すなわち、従来の方法では、この磁気吸引の方法として、永久磁石又は電磁石の一方のみが用いられている。しかし、前述のように、どちらにも一長一短がある。
本実施形態では、この磁気吸引するためのマグネットチャック3の磁力発生手段として、永久磁石3Aと電磁石3Bの両方を備え、蒸着時の蒸着マスクの吸引の際には永久磁石3Aによって吸引し、吸引する必要のない、被蒸着基板2などの装着の際、又は被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せの際には、電磁石3Bによって、永久磁石3Aの磁界の向きと逆向きの磁界を発生させて、蒸着マスク1に働く磁界を弱くする構成になっている。換言すると、本実施形態のマグネットチャック3は、永久磁石3Aで蒸着マスクを吸引しながら、磁界の不要なときには電磁石を用いて永久磁石3Aの磁界を弱くし得る吸引構造になっている。このマグネットチャック3は、永久磁石3Aと電磁石3B、被覆物34及び後述されるヨーク33(図4参照)なども含む意味である。なお、電磁石3Bはコア31及びコイル32を含んでいる。永久磁石3Aは、通常の永久磁石が用いられ得るが、保持力の大きいものが好ましい。また、電磁石3Bは、電線が巻回されたコイル32があれば電磁石3Bになるが、鉄などからなるコア(鉄心)31がコイル32内に設けられる方が磁界を強くできるので、好ましい。
この永久磁石3Aと電磁石3Bの配置は、図1に示されるように、永久磁石3Aと電磁石3Bとを横方向(蒸着マスク1の面と平行方向)に並べて配置されてもよいし、図2に示されるように、永久磁石3Aの軸方向(蒸着マスク1の面と垂直方向)に並べて配置されてもよい。図1に示される構造の場合、永久磁石3A及び電磁石3Bのそれぞれの蒸着マスク1と反対面の端部を軟性磁性体からなる磁性板35で接続することが好ましい。軟性磁性体は、保持力が小さく透磁率が大きいので、電磁石3Bによる磁化が残留し難く特に好ましい。軟性磁性体の例としては、鉄、ケイ素鋼(鉄に少量のSiを加えたもので、炭素は含まないもの)などが挙げられ、比較的安価で本実施形態の磁性板35として、特に好ましい。軟性磁性体としてその他に、パーマロイ(NiとFeの合金)などが挙げられる。
この磁性板35によって接続された状態で、電磁石3Bのコイルに図に示すような極性となる電流が流されることによって、永久磁石3A及び電磁石3Bに逆向きの磁力線が発生し、永久磁石3Aの磁界が弱められる。なお、この極性は、それぞれが図示の極性と逆の極性になってもよい。図1〜2に示される配置の場合、永久磁石3Aと電磁石3Bとが互いに反発するため、両者が離れないように被覆物34などによって確実に固定される必要がある。
また、図1に示されるように、永久磁石3Aと電磁石3Bとが並べて配置される場合、磁性板35を無くして、電磁石3Bを永久磁石3Aできるだけ接近させて永久磁石3Aを取り囲むように配置されてもよい。この場合、電磁石3Bの極性は、永久磁石3Aの極性とは異ならせ、図1に示されるタッチプレート4と対向する面の永久磁石3Aの極性Nに対して、タッチプレート4と対向する電磁石3Bの面の極性をSにする必要がある。そうすることによって、永久磁石3Aの極性を完全に打ち消すことはできなくても、弱くすることはできる。この端的な構造として、棒状の永久磁石3Aの周囲に電線を巻き付けるか、筒体にコイル32を巻き付けて永久磁石3Aに被せ、永久磁石3Aの磁界と逆向きの磁界を発生させることもできる。そうすれば、永久磁石3Aの磁界と電磁石3Bの磁界とが同軸になり、打ち消しやすい。なお、コア31のないコイル32だけでも電磁石3Bを構成する。なお、前述の電磁石3Bの極性は、電磁石3Bのコイル32に流す電流の向きで、右ネジの法則に基づき、右ネジの進む方向がN極になる。従って、永久磁石3Aの磁界の向きに応じて、電流の向きを調整すれば、電磁石3Bの磁界の向きは自由に設定し得る。
電圧の印加は、図示しない電源回路の制御回路によって変えられ、磁界の向きは選択され得る。この電磁石3Bによる磁界の強さは、永久磁石3Aの磁界を完全に打ち消す必要はなく、永久磁石3Aの磁界の強さの1/10以上で、1/2以下程度の磁界であればよい。位置合せ時などの強い吸引力を弱くするのが目的だからである。
前述のように、永久磁石3Aと電磁石3Bとが逆向きの磁界を発生するように両者が配置されることによって、電磁石3Bが動作すると、永久磁石3Aの磁界を打ち消すことになる。その結果、被蒸着基板2や蒸着マスク1を交換したり、被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せをしたりする際には、電磁石3Bを動作させて磁界の影響を弱くし得る。一方、被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せが終了した後は、電磁石3Bの電流印加をオフにして、永久磁石3Aのみの動作にする。そうすることで、マグネットチャック3を移動させることなく、電源操作のみで磁界を強くすることができる。なお、図1〜2に示される構造で電磁石3Bの電流がオフにされると、図1〜2に示されたN、Sはなくなり、電磁石3Bのコア31は、単なる磁性体として作用する。その結果、図1に示される構造では、馬蹄形の永久磁石と同様の作用をし、蒸着マスク1に向かって永久磁石3Aの強い磁界が印加される。図2に示される構造では、コア31の永久磁石3Aと反対面にS極が発生する。その結果、蒸着マスク1と被蒸着基板2との位置合せ後に、マグネットチャック3の移動を殆ど行う必要がないので、被蒸着基板2と蒸着マスク1との相対的移動を引き起こすことなく、充分に吸着され得る。
この被蒸着基板2の装着及び蒸着マスク1との相対的位置合せの時間は、最大でも10秒程度で蒸着時間の120秒程度より遙かに小さい。そのため、電磁石3Bのコイルに流れる電流によって発生するジュール熱は非常に小さく、被蒸着基板2や蒸着マスク1の温度上昇を招くことは大幅に抑制される。また、蒸着が完了して、被蒸着基板2が脱着される場合も、電磁石3Bを駆動させて磁界を弱くして作業することが好ましい。この場合は、位置合せのような細かい作業は不要であるので、より一層短時間で済み、マグネットチャック3の発熱は抑制される。要するに、発熱源である電磁石3Bの動作時間は非常に短いので、電磁石3Bの発熱による蒸着マスク1などの熱膨張への影響が極力抑制される。
一方、蒸着装置では、被蒸着基板2を次々と取り換えて連続的に蒸着が行われる。そのため、熱の発生が少ないといえども、その熱の蓄積が懸念される。しかし、被蒸着基板2と蒸着マスク1との相対的位置合せ(いわゆるアラメイント)時の動作の期間中は、蒸着マスク1は、マグネットチャック3によっては殆ど吸着されていないので、被蒸着基板2と蒸着マスク1とは密着せず、相互に若干離間している。そのため、たとえ被蒸着基板2の温度が上昇しても、その熱が直ちに蒸着マスク1に伝達して熱が蒸着マスク1に蓄積することは無く、ましてや被蒸着基板2は、蒸着後交換されるので、その都度冷えた被蒸着基板2が搬入され、被蒸着基板2への熱の蓄積は起こり難い。特に、被蒸着基板2を保持する基板ホルダー29と蒸着マスク1を保持するマスクホルダー15とが互いに接触せず、たとえば断熱部材などによって、熱的に隔離されていれば、蒸着マスク1への熱の蓄積は減じられる。この具体的構造例は、図7Aを参照して後述される。すなわち、本実施形態では、被蒸着基板2からの直接の伝熱が無ければ(つまり、蒸着マスク1が被蒸着基板2から僅かに浮いている場合は)、蒸着マスク1自体は温度上昇し難い構造になる。その結果、基板ホルダー29とマスクホルダー15との間での熱伝導を抑制することで、熱的な影響を受け難い、換言すると、蒸着マスク1が熱膨張することによる蒸着パターンの位置ずれが軽減されやすい、蒸着装置になる。
一方、永久磁石3Aの磁力だけでは、充分な吸引力が得られていない場合には、位置合せ後に電磁石3Bの磁界を永久磁石3Aの磁界の向きと同じ向きになるように、図示しない電源回路の制御回路によって電流の向きを変えることもできる。この場合、永久磁石3Aの補助であるため、電流は電磁石3Bのみで必要な磁界を得る場合の電流の1/10以下で済み、発熱は大幅に抑制される。しかし、前述の被蒸着基板2などの装着及び位置合せ時のジュール熱の発生、熱の蓄積などによって、マグネットチャック3が温度上昇する場合には、マグネットチャック3の冷却が併用されることが好ましい。マグネットチャック3の冷却構造については後述される。
前述の図2に示される永久磁石3Aと電磁石3Bの重ね合せの上下関係は、図2に示される例では、永久磁石3Aがタッチプレート4(被蒸着基板2)と対向するように設けられ、電磁石3Bが永久磁石3Aの被蒸着基板2と反対の面に設けられている。しかし、この上下関係はこの例に限定されない。但し、前述のように、発熱の恐れがある場合には、冷却する必要がある。後述されるヒートパイプ7(図3参照)によって冷却する場合には、図2に示される上下関係が好ましい。
電磁石3Bが用いられ、その電流のオンオフが行われる場合、急激に電流が増加したり、急激に電流が0に変化したりする場合、電磁誘導が発生して閉回路に電流が流れる。例えば有機EL表示装置の有機層を蒸着する場合には、支持基板上に駆動用などの薄膜トランジスタ(TFT)などの閉回路が形成されている。また、有機層が形成され、両電極が形成されると閉回路が形成される。その閉回路に電磁誘導による電流が流れると、TFTや有機層などの素子の破壊を引き起こす。この電磁誘導の発生は、急速に磁界が変化することによって発生するので、電磁石による磁界の急速変化は避けられなければならない。その観点から、電磁石3Bの図示しない電源回路に電磁石3Bと並列に例えば5000μF程度以上のキャパシタが挿入されたり、コイルに複数個の端子を設け、電流を印加するコイルを徐々に増減させたり、印加電流の立上りを緩やかにして印加したりすることによって、電磁誘導の問題を解決し得る。しかし、本実施形態では、永久磁石3Aによる磁界を打ち消す向きの磁界を印加するため、この電磁誘導の影響も小さいと考えられる。
(蒸着装置の概略構成)
本発明の一実施形態の蒸着装置は、図1にその一態様の概略図が示されている。真空チャンバー8(図3参照;図1〜2では省略されている)の内部に蒸着マスク1と被蒸着基板2とが近接して配置されるように、マスクホルダー15と基板ホルダー29とが上下に移動し得るように設けられている。この基板ホルダー29は、複数のフック状のアームで被蒸着基板2の周縁部を保持し、上下に昇降できるように、例えば図7Aに示されるように、駆動装置6に接続されている。被蒸着基板2などの交換の場合には、ロボットアームにより真空チャンバー8内に搬入された被蒸着基板2をフック状のアームで受け取り、被蒸着基板2が蒸着マスク1に近接するまで基板ホルダー29が下降する。マスクホルダー15もほぼ同様の構成になっている。そして位置合せを行えるように図示しない撮像装置も設けられている。
駆動装置6は、種々の構成で形成され得るが、例えば図7Aにマスクホルダー15の例が示されるように、マスクホルダー15の先端部にラック61が取り付けられ、ピニオン62をモータ63で回転させてマスクホルダー15を上下動できるようになっている。この駆動装置6は、チャンバー8内に取り付けられた支持板65にハウジング67をネジ68で取り付けることによって形成され得る。前述のマスクホルダー15と基板ホルダー29との間で熱伝導を阻止するために図7Aに示される例では、ハウジング67と支持板65との間に断熱材によって形成されたスペーサ66(断熱部材)が介在されている。この場合、ネジ68も金属ではなく、熱の伝わり難いプラスチック製のものなどが好ましい。その結果、マスクホルダー15だけではなく、基板ホルダー29が同じ支持板65に同様の構造で取り付けられても、マスクホルダー15と基板ホルダー29とは断熱部材(スペーサ66)を介しているので、熱の遮断が十分に行われる。
タッチプレート4は支持フレーム41により支持され、タッチプレート4を被蒸着基板2と接するまで降下させる駆動装置に支持フレーム41を介して接続されている。タッチプレート4が降下することによって、被蒸着基板2が平坦にされ、変形が生じないように押さえ付けられている。タッチプレート4は、図示されていないが、内部に冷却水が流され得る。また、蒸着マスク1の被蒸着基板2と反対面には、離間して蒸着源5が設けられ、蒸着材料51を蒸発又は昇華させられるようになっている。
タッチプレート4及びマグネットチャック3が下ろされてタッチプレート4と被蒸着基板2とが接触した状態で、被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せが行われる。蒸着マスク1と被蒸着基板2との位置合せの際に、蒸着マスク1と被蒸着基板2のそれぞれに形成されたアライメントマークを撮像しながら、被蒸着基板2と蒸着マスク1との相対的な移動が行われる。そのため、蒸着装置は、被蒸着基板2などの微動装置も備えている。この位置合せの際には、マグネットチャック3による強い吸引は無い方が好ましい。本実施形態では、前述のように、永久磁石3Aによって吸引しながら、この位置合せの際には電磁石3Bも駆動してその吸引力が弱められている。そのため、被蒸着基板2と蒸着マスク1とが強く接触していて微動し難いということはない。短時間で正確な位置調整を行いやすい。また、位置調整の終了後は電磁石3Bの電源をオフにするだけで、永久磁石3Aによる強い吸引力によって、蒸着マスク1が被蒸着基板2に向かって吸引される。
図1に示される例では、被覆物34で永久磁石3A及び電磁石3Bのコア31及びコイル32の部分が被覆されている。その結果、単位磁石(永久磁石3Aと電磁石3Bとの対)が固定されているので、設置などの取扱いが容易になる。また、後述されるヒートパイプ7(図3参照)による冷却が行われる場合に、ヒートパイプ7と、マグネットチャック3の被覆物34との接触が広い面積で得られやすくなる。また、コイル32で発生する熱もその周囲から被覆物34に伝達しやすいので、冷却効果を向上させやすい。また、蒸着マスク1は、図1に示されるように、蒸着マスク1の周囲に取り付けられたフレーム14がマスクホルダー15によって保持される構造になっている。その結果、蒸着マスク1の変形をもたらすことなく保持される。
マグネットチャック3は、前述のように、永久磁石3Aと電磁石3Bとを有している。電磁石3Bとしては、コア31を有するものや、ヨーク33(図4参照)を有するものや、被覆物34を有するものなど、種々のものが使用され得る。また、コア31の外形形状は四角形などの多角形でも円形でもよい。例えば蒸着マスク1の大きさが、1.5m×1.8m程度の大きさの場合、図2に示される単位マグネットチャック3(単位永久磁石3Aと単位電磁石3Bのセット)の断面が5cm角程度の大きさのコア31を有する電磁石3Bが、図2に示されるように、蒸着マスク1の大きさに合せて複数組並べて配置され得る(図2では、横方向が縮尺され、単位電磁石の数が少なく描かれている、また、永久磁石3Aと電磁石3Bとは、それぞれ1:1で対応する必要はなく、電磁石が少なくてもよい)。図1〜2に示される例では電磁石3Bのコイルの接続は図示されていないが、各コア31に巻回されるコイル32が直列に接続されても、並列に接続されてもよい。また、電磁石3Bの数個単位が直列に接続されてもよい。単位電磁石の一部に独立して電流が印加されてもよい。
蒸着マスク1は、図8に示されるように、樹脂フィルム11と金属支持層12と、その周囲に形成されるフレーム(枠体)14を備えており、蒸着マスク1は、図1に示されるように、フレーム14が、マスクホルダー15上に載置される。金属支持層12に磁性材料が用いられる。その結果、永久磁石3Aとの間で吸引力が働き、被蒸着基板2を挟んで吸着される。なお、金属支持層12は強磁性体で形成されてもよい。この場合、金属支持層12は、永久磁石3Aの強い磁界によって、着磁(外部磁界が除去されても強い磁化が残留する状態)される。この蒸着マスク1は、大型テレビジョンのような大きなパネル1個分で形成される場合もあるし、スマートフォンなどの小型のパネルを複数個分纏めて1個の蒸着マスクとされる場合もある。
金属支持層12としては、例えばFe、Co、Ni、Mn又はこれらの合金が用いられ得る。その中でも、被蒸着基板2との線膨張率の差が小さいこと、熱による膨張が殆どないことから、インバー(FeとNiの合金)が特に好ましい。金属支持層12の厚さは、5μm〜30μm程度に形成される。
なお、図8では、樹脂フィルム11の開口11aと金属支持層12の開口12aが被蒸着基板2(図1参照)に向かって先細りするようなテーパ形状になっている。その理由は、蒸着材料が蒸着される場合に、飛散する蒸着材料のシャドウにならないようにするためである。なお、蒸着源5は、点状、線状、面状など、種々の蒸着源5が用いられ得る。例えばるつぼが蒸着マスク1の幅(図1の紙面と垂直方向の長さ)の長さで線状に並べられて形成されたラインソースと呼ばれる蒸着源5が、例えば紙面の左端から右端まで走査されることにより、被蒸着基板2の全面に蒸着が行われる。従って、蒸着材料は種々の方向から飛散することになり、斜めから来た蒸着材料でも遮断されることなく被蒸着基板2に届くようにするため、前述のテーパが形成されている。
図2に示される例は、マグネットチャック3の永久磁石3Aと電磁石3Bとの配置関係が異なるだけで、他の構成は同じである。図2に示されるマグネットチャック3は、永久磁石3Aと電磁石3Bとが、軸方向に積み重ねて配置されている点で異なるだけで、他の構成は図1と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明は省略される。このように縦に並べて配置されても、全体としての永久磁石3Aの磁界は電磁石3Bの磁界によって相殺されて弱くなる。この構造にすれば、永久磁石3Aを多く配置できるので好ましい。しかし、この場合も図1の磁性板35と同様に、永久磁石3Aと電磁石3Bとの反発力が働くので、両者をしっかりと固定する必要がある。その観点からは、前述のように、永久磁石3Aの周囲に電磁石が形成されるのが好ましい。
前述のように、永久磁石3Aと電磁石3Bとの数は同じにする必要はなく、逆向きの磁界の絶対値が同じでなくてもよい。要は永久磁石3Aの磁界がある程度弱められれば、位置合せなどの磁界による影響を避けることができる。また、電磁石3Bの数が少なくて、打ち消す磁界が小さすぎる場合には、電流を増やして、電磁石3Bの磁界を調整することもできる。さらに、図2に示される例では、永久磁石3Aと電磁石3Bとが真横に並べて配置されているが、例えば電磁石3Bを半ピッチずらして4個の永久磁石3Aの対角線の交点付近に電磁石3Bを配置する構成にすることもできる。
図3〜4は、マグネットチャック3に冷却構造が形成された例である。すなわち、この実施態様は、マグネットチャック3を冷却する冷却手段が設けられることに特徴があるので、その冷却構造の説明で、他の説明は省略される。前述のように、本実施形態では、電磁石3Bを含んでいても、その稼働が非常に短時間であるので、発熱の問題は非常に抑制されている。また、前述のように、基板ホルダー29とマスクホルダー15とが熱的に遮断されていれば、被蒸着基板2は次々と交換されるので、熱的蓄積は起こり難い。しかし、位置合せ時に被蒸着基板2の温度が上昇すると、その後の蒸着時には被蒸着基板2と蒸着マスク1とが密着するので、蒸着マスク1に熱伝導する可能性がある。そして、被蒸着基板2を交換して連続的に蒸着が行われる場合でも、蒸着マスク1に伝導した僅かな発熱が冷め切らないうちに次の被蒸着基板2のための電磁石3Bの動作が行われ、同様の熱伝導の可能性があり得る。また、永久磁石3Aの磁力が弱い場合には、前述のように、電磁石3Bの磁界で補うこともあり得る。そのような場合には、電流が少なくてよいが、蒸着の時間中電流を流すことになる。
一方、電磁石3Bの温度が上昇すると、その熱の伝導によって、近くに配置される被蒸着基板2や蒸着マスク1の温度が上昇する。被蒸着基板2や蒸着マスク1の温度が上昇すると、両者の材料が異なり熱膨張率(線膨張係数)が異なるため、蒸着マスク1の開口パターンと被蒸着基板2の蒸着すべき位置のずれが生じ得る。そうすると、正確なパターンの蒸着が阻害され、画素の不鮮明さが生じ、精細な表示パネルが得られなくなる。そのため、マグネットチャック3の温度上昇は極力避けられなければならない。この場合、真空チャンバー8内は真空雰囲気であるため、マグネットチャック3の効果的な熱放出を行いにくいが、本発明者らは、鋭意検討を重ねて調べた結果、ヒートパイプ7(図5参照)を用いて放熱することによって、僅かな温度上昇でも非常に効率的に熱放散をし得ることを見出した。この場合、ヒートパイプ7をマグネットチャック3とできるだけ広い面積、少なくとも電磁石3Bのコイル32の内径の断面積以上の面積で接触させることによって、熱放散の効率が向上した。
(マグネットチャックの冷却構造)
ヒートパイプ7は、典型的な例としては、図5に示されるような構造になっている。すなわち、例えば銅などからなり、真空密閉されたパイプ(ケース;容器)75の内壁に、毛細管現象で液体を移動させるウィック76が形成され、パイプ75の内部に水などからなる作動液(図示せず)が少量封入された真空(低圧)構造になっている。この構造で、一端部である吸熱部71が周囲の熱によって加熱されると、作動液が蒸発して蒸気が発生し、パイプ75の内部圧力が高くなる。その蒸気が空間部73を通って、他端部である放熱部(冷却部)72で、凝縮して液化する。液化した作動液は、パイプ75の内壁に形成されたウィック76内を毛細管現象によって吸熱部71に向って進む。このような蒸発と凝縮に伴う潜熱移動によって、小さな温度差でも吸熱部71から放熱部72に大量の熱が輸送され、ヒートパイプ7の熱伝導は、銅の丸棒の熱伝導に比べて100倍にも達すると言われている。ウィック76は、毛細管現象で液体が進行する構造であればよく、金網や多孔質体やスポンジのような構造などでもよい。
前述のように、ヒートパイプ7が横向きに配置されると、凝縮した液体はウィック76を通って吸熱部71に運ばれる。しかし、例えばこのヒートパイプ7が縦向き(鉛直方向)に配置され、下部が吸熱部71にされる(すなわち温度の高い部分がヒートパイプ7の下端になるように配置される)と、下部で液体が蒸発し、その蒸気が上に昇って放熱部72で凝縮する。この場合、ウィック76が無くても、液化した液体は、自重で落下し、吸熱部71に戻る。これはサーモサイホン式と言われている。本実施形態では、いずれの方式のヒートパイプ7でも使用され得る。例えばヒートパイプ7が縦向きに配置される場合でも、ウィック76が存在していてもよい。
このようなヒートパイプ7を、図5に示されるような棒状の形状に限らず、例えば扁平な形状(平板状)にも形成され得る。扁平状に形成されれば、丸めて電磁石3Bのコア31内に埋め込み得る。そうすることによって、コア31内の磁力線への影響は殆ど生じない。また、後述される、例えばThermal Science & Engineering Vol. 2 No. 3(2015)の41〜56頁に示されているような、ループ型のヒートパイプの構造にして、その平面状の吸熱部を前述のマグネットチャック3の前面(被蒸着基板2に向く面)の全体に設けることも可能である。簡単な棒状構造のヒートパイプ7をマグネットチャック3に接合した例が、前述の図3〜4に示されている。
図3に示される例は、図1に示される蒸着装置と同様の構成で、永久磁石3Aと電磁石3Bとが軸方向に配置され、その周囲の全体が被覆物34で覆われている構造であり、その電磁石3Bのコア31の上面に接触してヒートパイプ7が設けられている。ヒートパイプ7の底面の径と電磁石3Bのコイル32の内径の断面積とはほぼ同じであるが、被覆物34の内部にヒートパイプ7の吸熱部71が埋め込まれている。そのため、コア31との接触面積以外に被覆物34の内部に埋め込まれているヒートパイプ7の側面の面積も接触面積になる。ヒートパイプ7の吸熱部71と反対の端部である放熱部72は真空チャンバー8の外部に導出されて、排熱槽95の内部に入れられて、空冷、水冷などによって冷却される。
被蒸着基板2や蒸着マスク1の取り換えの際には、このマグネットチャック3やタッチプレート4も上に持ち上げられる必要がある。また、交換後に再度下げられる必要がある。そのため、このヒートパイプ7を直接真空チャンバー8の壁面に気密封止で固着することができない。このような場合には、図7Bに示されるように、ベローズ96を介して真空チャンバー8に固定されることが好ましい。被蒸着基板2などの交換の際にマグネットチャック3などが持ち上げられる距離は、100mm程度以下であり、その程度に伸縮できるベローズ96であればよい。
しかし、マグネットチャック3やタッチプレート4は固定構造とし、蒸着マスク1や被蒸着基板2を下方に下げて被蒸着基板2などの取り換えを行い、その後に、持ち上げて所定の位置に配置することもできる。そのような構造にすれば、ベローズ96を用いることなく、ヒートパイプ7を直接真空チャンバー8に接着して封止し得る。また、前述のベローズ96が用いられる場合、ベローズ96が破損した場合、真空チャンバー8の内部が大気に晒されて内壁が汚れる。真空チャンバー8の内壁が汚れると、ガス源となるため、洗浄が必要となるので、二重構造にすることが好ましい。例えば図3に示される構造で、ベローズ96(図7B参照)の部分を含むように排熱槽95の外壁と真空チャンバー8の外壁との間のヒートパイプ7を図示しない被覆カバーによって被覆する構造にすることが好ましい。
図4に示される構造は、図3に示される実施態様の変形例を示す図である。この例は、軸と垂直方向に接続された永久磁石3Aと電磁石3Bの一端部にC型のヨーク(永久磁石3Aと電磁石3Bのコア31とでE型ヨークになる)33が接続され、永久磁石3Aの接続された面と反対面である第一端面(被蒸着基板2を向く面)とほぼ同一面にヨーク33の端面が配置される構造になっている。このような構造であれば、永久磁石3Aの磁力線は、永久磁石3Aの第一端面と反対面の、図に示される例におけるS極から磁気抵抗の小さい電磁石3Bのコア31とヨーク33を介してヨーク33の端面に導かれる。その結果、永久磁石3Aの第一端面とヨーク33の端面との間に強い磁力線が形成され、その近傍に設けられる蒸着マスク1にも強い磁界を印加し得る。この場合、このヨーク33もマグネットチャック3の一部になる。ヨーク33には、コア31と同様の鉄などの磁性体が用いられる。
この図4に示される例によれば、前述の例のように、ヒートパイプ7によってマグネットチャック3を冷却する場合、そのヒートパイプ7とマグネットチャック3との接触面積を大きくし得る。すなわち、ヨーク33の幅をコア31の幅(径)よりも大きくすることができる。そのため、ヒートパイプ7と磁気チャック3との接触面積を大きくし得る。接触面積を大きくすることで、より一層マグネットチャック3の熱量はヒートパイプ7を介して放出され得る。また、図4に示されるように、このヨーク33も含めて前述の被覆物34によって被覆されることによって、コイル32で発生する熱もより効果的に被覆物34に伝達することができるし、被覆物34の内部にヒートパイプ7を埋め込むことで、より一層ヒートパイプ7とマグネットチャック3との接触面積を大きくすることができる。その結果、マグネットチャック3の熱が有効に放出され得る。
このヨーク33に関しては、永久磁石3Aの上に電磁石3Bが設けられ、その上にヨーク33が設けられる構造には限定されない。電磁石3Bがタッチプレート4(被蒸着基板2)と対向して設けられ、永久磁石3Aがその上に配置され、その上にヨーク33が設けられてもよい。しかし、前述のように、ヒートパイプ7が設けられるのであれば、図4に示される配置にすることが好ましい。電磁石3Bが発熱し、その熱を放出するのが目的であるからである。
前述の各例では、マグネットチャック3がその全体を被覆物34で被覆された構造であったが、被覆物34で被覆されれば、取り扱いが容易であること、ヒートパイプ7によって冷却する場合には、コイルの熱も容易に放出しやすいこと、という利点がある。しかし、被覆物34は無くても構わない。ヒートパイプ7によって冷却する場合に、被覆物34がなくても、前述のように、ヨーク33の幅を広くすればヒートパイプ7とマグネットチャック3との接触面積を大きくすることができる。また、ヨーク33又はコア31の内部にヒートパイプ7の一部を埋め込むことによって、その接触面積を大きくすることもできる。
図6A〜6Dは、冷却構造の他の実施態様であり、ヒートパイプ7を、前述のThermal Science & Engineering Vol. 2 No. 3(2015)の41〜56頁に示されているループ型のヒートパイプと同様の構造にしたものである。このループ型のヒートパイプ7について、図6A〜6Cに、その側面図、吸熱部の平面説明図、ウィックの構造例が、それぞれ示されている。すなわち、図6Bに吸熱部71の平面説明図が示されるように、銅などからなるケース81の内部に、ウィック80が複数個(図6Bに示される例では6個)埋め込まれている。各ウィック80は、図6Cにその断面構造が示されているように、中心部にウィックコア83を有し、その周囲にウィック82が羽根状(歯車状)に形成され、その羽根状(歯車状)の各ウィック82の間に溝84が形成され、蒸気の通り道になっている。
このウィック82は、例えば8mm×9mm(高さを潰してオーバル形にすることによって吸熱部71の厚さを薄くすることができる)程度に形成され得る。この場合、溝84の深さは1mm、幅は0.5mm程度に形成され得る。このウィック82及びウィックコア83は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの多孔質体からなっている。この多孔質体の細孔は、平均半径が5μm程度で、空孔率が35%程度に形成され得る。このようなウィック82は、例えば粉末状のPTFEを成形により形成することによって、溝84も一体的に形成される。
図6A〜6Bで、86は蒸気集合部、87は蒸気管、88は液管、89は液溜めタンク、90は接続管、85は液分配部である。基本的な動作は、前述の図5に示されるヒートパイプと同じであるが、この装置で、液分配部85で各ウィックコア83の毛細管現象によって液体が吸引され、ウィックコア83からウィック82の毛細管に進み、ケース81からの熱によって蒸発する。蒸発した蒸気は溝84による空間内を通って、蒸気集合部86に進む。なお、溝84は、図6Aに示されるように、液分配部85との間をウィック82によって封鎖され、一方、蒸気集合部86には貫通している。そのため、液体の蒸発によって溝84内の圧力が高くなると、その蒸気は蒸気集合部86の方に進む。そして、蒸気管87を通って放熱部72で冷却されることによって、蒸気が液化し液管88を通って、液溜めタンク89に液が溜まる。液溜めタンク89に溜った液体は、重力によって接続管90を介して液分配部85に戻る。放熱部72で蒸気が液化することによって、ケース81内の圧力は下がり、吸熱部(蒸発部)71でさらに蒸発をし、上述の過程が繰り返される。吸熱部(蒸発部)71がこのような構造に形成されることによって、広い面積に亘って冷却することができる。
このようなループ型のヒートパイプ7が用いられることによって、例えば図6Dに示されるように、マグネットチャック3の前面(蒸着マスク1に向く面)にそのまま設けることができる。図6Dに示される例では、図1に示される蒸着装置のタッチプレート4に代えてヒートパイプの吸熱部71が設けられているが、従来のタッチプレート4はそのままにして、そのタッチプレート4とマグネットチャック3との間に挿入されてもよい。このような構造であれば、マグネットチャック3の蒸着マスク1に対向する面が冷却されることになるので、蒸着マスク1の温度上昇を抑制するのに最も適している。なお、図6Dにおいて、図1と同じ部分には同じ符号を付して、その説明は、省略される。また、91は放熱板である。すなわち、空冷などによって冷却される。
(蒸着方法)
次に、本発明の第二の実施形態による蒸着方法が説明される。本発明の第二の実施形態の蒸着方法は、前述の図1に示されるように、磁性体を有する蒸着マスク1と、被蒸着基板2と、蒸着マスク1を吸引するマグネットチャック3とを重ね合せ、マグネットチャック3による蒸着マスク1の吸引によって、被蒸着基板2と蒸着マスク1とを近接させる工程、及び蒸着マスク1と離間して配置される蒸着源5からの蒸着材料51の飛散によって被蒸着基板2に蒸着材料51を堆積する工程、を含み、マグネットチャック3が永久磁石3Aと電磁石3Bとを有し、被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せを行う際に、永久磁石3Aの磁界を弱くすべく、永久磁石3Aの磁界の向きと逆向きの磁界を電磁石3Bによって印加しながら位置合せを行い、位置合せ後に電磁石3Bの磁界をオフにすることで、永久磁石3Aによって蒸着マスク1を吸引するものである。
前述のように、蒸着マスク1の上に被蒸着基板2が重ねられる。この重ね合せは、図示しないロボットアームなどによって搬入される蒸着マスク1及び被蒸着基板2がそれぞれマスクホルダー15及び基板ホルダー29によって保持され、マスクホルダー15及び基板ホルダー29が所定の場所まで下ろされることによって行われる。また、この被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せは次のように行われる。被蒸着基板2と蒸着マスク1のそれぞれに形成された位置合せ用のアライメントマークを図示しない撮像装置で観察しながら、被蒸着基板2を蒸着マスク1に対して相対的に移動させることにより行われる。この際、前述のように、電磁石3Bを動作させることによって、蒸着マスク1を吸引する力を弱めた状態で行える。この方法によって、蒸着マスク1の開口11a(図8参照)と被蒸着基板2の蒸着場所(例えば後述される有機EL表示装置の場合、図9に示される支持基板21の第一電極22のパターン)とを一致させることができる。位置合せされた後に、電磁石3の動作をオフにする。その結果、永久磁石3Aと蒸着マスク1との間で強い吸引力が働き、被蒸着基板2と蒸着マスク1とがしっかりと接近する。この際、電磁石3Bのコイル32に電流を流す時間は、主として位置合せの時間で、最大でも10秒程度であるため、殆ど発熱することはない。被蒸着基板2の交換によって、連続的に蒸着が行われ、熱が蓄積される場合には、前述のように、ヒートパイプ7(図3参照)を用いた冷却が行われることが好ましい。その結果、蒸着マスク1の温度上昇は抑制される。
その後、図1に示されるように、蒸着マスク1と離間して配置される蒸着源5からの蒸着材料51の飛散(気化又は昇華)によって被蒸着基板2に蒸着材料51が堆積される。具体的には、前述のように、るつぼなどか線状に並べて形成されたラインソースが用いられるが、これには限定されない。例えば有機EL表示装置を作製する場合、開口11aが一部の画素に形成された蒸着マスク1が複数種類用意され、その蒸着マスク1が取り換えられて複数回の蒸着作業で有機層が形成される。この場合、蒸着チャンバー8(図3参照)を複数個準備し、それぞれの蒸着チャンバー8に異なる蒸着マスク1を設置しておき、被蒸着基板2を順次異なる蒸着チャンバー8に移して蒸着を続けることが効率的である。
この蒸着方法によれば、マグネットチャック3として、永久磁石3Aと電磁石3Bとを備え、被蒸着基板2の脱着時や、被蒸着基板2と蒸着マスク1との位置合せ時には、永久磁石3Aによる磁界が弱められた状態で行える。そのため、作業が容易になる。一方、位置合せ後には、電磁石3Bがオフにされるので、永久磁石3Aの磁力によって蒸着マスク1が吸引される。そのため、蒸着マスク1は強く被蒸着基板2に引き付けられ、密着状態に接し得る。そのため、蒸着マスク1のパターンと同じパターンで蒸着され得る。しかも、この蒸着中は、電磁石3Bはオフにされており、永久磁石3Aによる吸引は、全く発熱はしないので、蒸着中はマグネットチャック3の温度上昇はない。すなわち、マグネットチャック3として、永久磁石3Aを単独で用いた場合、及び電磁石3Bを単独で用いた場合の欠点を解消して、正確なパターンで蒸着がなされる。
(有機EL表示装置の製造方法)
次に、上記実施形態の蒸着方法を用いて有機EL表示装置を製造する方法が説明される。蒸着方法以外の製造方法は、周知の方法で行えるため、主として、本発明の蒸着方法により有機層を積層する方法が、図9〜10を参照しながら説明される。
本発明の第三の実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、支持基板21の上に図示しないTFT、平坦化膜及び第一電極(例えば陽極)22を形成し、その一面に蒸着マスク1を位置合せして重ね合せ、蒸着材料51を蒸着するに当たり、前述の蒸着方法を用いて有機層の積層膜25を形成することを含んでいる。積層膜25上に第二電極26(図10参照;陰極)が形成される。
例えばガラス板などの支持基板21は、完全には図示されていないが、各画素のRGBサブ画素ごとにTFTなどの駆動素子が形成され、その駆動素子に接続された第一電極22が、平坦化膜上に、AgあるいはAPCなどの金属膜と、ITO膜との組み合せにより形成されている。サブ画素間には、図9〜10に示されるように、サブ画素間を区分するSiO2又はアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁バンク23が形成されている。このような支持基板21の絶縁バンク23上に、前述の蒸着マスク1が位置合せして固定される。この固定は、前述の図1に示されるように、例えば支持基板21(被蒸着基板2)の蒸着面と反対面の上にタッチプレート4を介して設けられるマグネットチャック3の永久磁石3Aを用いて、吸着することにより行われる。前述のように、蒸着マスク1の金属支持層12(図8参照)に磁性体が用いられているので、マグネットチャック3により磁界が与えられると、蒸着マスク1の金属支持層12とマグネットチャック3との間で吸引力が発生する。この際、前述のように、電磁石3Bのコイル32に電流が流れる時間はごく短いので、熱の発生は殆どない。しかし、ヒートパイプ7が設けられることによって、僅かの熱でも、効率的に放散される。その結果、蒸着マスク1と支持基板21との間に熱膨張率の差があっても、相互の位置ずれは大幅に抑制される。そして、高精細な有機EL表示装置が得られる。
この状態で、図9に示されるように、蒸着装置内で蒸着源(るつぼ)5から蒸着材料51が飛散され、支持基板21において蒸着マスク1の開口11aに露出する部分のみに蒸着材料51が蒸着され、所望のサブ画素の第一電極22上に有機層の積層膜25が形成される。この蒸着工程は、順次蒸着マスク1が交換され、各サブ画素に対して行われてもよい。複数のサブ画素に同時に同じ材料が蒸着される蒸着マスク1が用いられてもよい。蒸着マスク1が交換される場合には、図9には図示されていない電磁石3B(図1参照)を動作させることによって、蒸着マスク1の金属支持層12(図8参照)への磁界を弱くするように図示しない電源回路によって制御される。
図9〜10では、有機層の積層膜25が単純に1層で示されているが、有機層の積層膜25は、異なる材料からなる複数層の積層膜25で形成されてもよい。例えば陽極22に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされて形成される。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq3などにより形成される。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることにより有機層の積層膜25が形成されている。なお、この有機層と金属電極との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。本実施形態では、これらも含めて有機層の積層膜25に含めている。
有機層の積層膜25のうち、発光層は、RGBの各色に応じた材料の有機層が堆積される。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、RGBの2色又は3色に共通して同じ材料で積層される場合もある。2色以上のサブ画素で共通する材料が積層される場合には、共通するサブ画素に開口が形成された蒸着マスク1が形成される。個々のサブ画素で蒸着層が異なる場合には、例えばRのサブ画素で1つの蒸着マスク1を用いて、各有機層を連続して蒸着することができる。また、RGBで共通の有機層が堆積される場合には、その共通層の下側まで、各サブ画素の有機層の蒸着がなされ、共通の有機層のところで、RGBに開口が形成された蒸着マスク1を用いて一度に全画素の有機層の蒸着がなされる。なお、大量生産する場合には、蒸着装置の真空チャンバーが何台も並べられ、それぞれに異なる蒸着マスク1が装着されていて、支持基板21(被蒸着基板2)が各蒸着装置を移動して連続的に蒸着が行われてもよい。
LiF層などの電子注入層などを含む全ての有機層の積層膜25の形成が終了したら、前述のように、電磁石3Bをオンにして磁界を弱めた上で、蒸着マスク1と支持基板21とが分離される。その後、第二電極(例えば陰極)26が全面に形成される。図10に示される例は、トップエミッション型で、図中支持基板21と反対面から光を出す方式になっているので、第二電極26は透光性の材料、例えば、薄膜のMg-Ag共晶膜により形成される。その他にAlなどが用いられ得る。なお、支持基板21を介して光が放射されるボトムエミッション型の場合には、第一電極22にITO、In34などが用いられ、第二電極26としては、仕事関数の小さい金属、例えばMg、K、Li、Alなどが用いられ得る。この第二電極26の表面には、例えばSi34などからなる保護膜27が形成される。なお、この全体は、図示しないガラス、耐湿性の樹脂フィルムなどからなるシール層により封止され、有機層の積層膜25が水分を吸収しないように構成される。また、有機層はできるだけ共通化し、その表面の上にカラーフィルタを設ける構造にすることもできる。
(まとめ)
(1)本発明の第一の実施形態に係る蒸着装置は、磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、前記マスクホルダーによって保持される前記蒸着マスクに近接して配置すべく設けられ、被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、前記蒸着マスクの前記被蒸着基板と反対面に前記蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板の前記蒸着マスクと反対面に設けられ、前記蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、前記マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有している。
本発明の一実施形態の蒸着装置によれば、マグネットチャックとして、永久磁石と電磁石とを有しているので、被蒸着基板などの装着や脱着、被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せの際には、電磁石によって永久磁石の磁界を弱くすることができる。その結果、非常に作業が容易になると共に、正確な位置合せに基づく正確な蒸着のパターンが得られる。また、電磁石による発熱も大幅に抑制される。
(2)前記永久磁石と前記電磁石は、前記永久磁石の軸方向と垂直方向に並置され、かつ、前記永久磁石及び前記電磁石の前記蒸着マスクに臨む面と反対面が磁性板によって接続されていることが好ましい。この構成にすることによって、電磁石がオフにされるとき、永久磁石の蒸着マスクを臨む面と反対面の極性は、電磁石のコアを介して、永久磁石の蒸着マスクを望む面と同じ面に導かれ、馬蹄形の永久磁石と同様の構造になり、蒸着マスクに強い磁界を提供できる。
(3)前記磁性板が、軟性磁性体によって形成されていることが、電磁石による残留磁化が残り難いので好ましい。
(4)前記電磁石は、前記永久磁石の軸方向と同軸に磁界を発生させるべく設けられてもよい。そうすることによって、従来の永久磁石の配置のスペースを殆ど減らすことなく両方の種類の磁石を配置することができる。この場合、永久磁石と電磁石とを軸方向に積み重ねなくても、永久磁石の周囲にコイルを巻回したり、筒体にコイルを巻回して永久磁石の外周に被せたりすることで、電磁石が形成され得る。
(5)前記電磁石は、前記永久磁石の磁界の向きと逆向きの磁界を生成する制御手段を有することによって、永久磁石の磁界を弱くすることができる。
(6)前記マスクホルダー及び基板ホルダーを支持する支持板と、前記マスクホルダーおよび前記基板ホルダーのそれぞれとの間に断熱部材が介在されていることが好ましい。そうすることによって、被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せ時に、たとえ被蒸着基板の温度が上昇し、被蒸着基板を取り換えて連続的に蒸着が行われても、蒸着マスクに熱の蓄積は生じにくい。
(7)前記マスクホルダー、前記基板ホルダー、前記蒸着源、及び前記マグネットチャックを内包する真空チャンバーと、ヒートパイプとをさらに有し、前記ヒートパイプの吸熱部が前記マグネットチャックと接触し、前記ヒートパイプの放熱部が前記真空チャンバーの外部に導出されていることが好ましい。この構造にすることでマグネットチャックに熱が発生しても、蒸着マスクなどへの熱伝導が抑制される。
(8)前記ヒートパイプの前記吸熱部の一部が前記マグネットチャックの一部に埋め込まれていることによって、ヒートパイプとマグネットチャックとの接触面積が多くなり、マグネットチャックの熱を有効に放散することができる。
(9)前記ヒートパイプの吸熱部が、前記マグネットチャックの前記被蒸着基板に向く面に設けられていることによって、蒸着マスクへの熱伝導をより一層抑制し得る。
(10)また、本発明の第二の実施形態の蒸着方法は、磁性体を有する蒸着マスクと、被蒸着基板と、前記蒸着マスクを吸引するマグネットチャックとを重ね合せ、前記マグネットチャックによる前記蒸着マスクの吸引によって、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとを近接させる工程、及び前記蒸着マスクと離間して配置される蒸着源からの蒸着材料の飛散によって前記被蒸着基板に前記蒸着材料を堆積する工程、を含み、前記マグネットチャックが永久磁石と電磁石とを有し、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとの位置合せを行う際に、前記永久磁石の磁界を弱くすべく、前記永久磁石の磁界の向きと逆向きの磁界を前記電磁石によって印加しながら前記位置合せを行い、位置合せ後に前記電磁石の磁界をオフにすることで、前記永久磁石によって前記蒸着マスクを吸引して行う。
本発明の第二の実施形態の蒸着方法によれば、被蒸着基板の装着や被蒸着基板と蒸着マスクとの位置合せは、磁界の影響を殆ど受けないで行える。その結果、作業が容易で、かつ、位置合せも確実に行い得る。また、蒸着時には永久磁石のみで強い磁界によって蒸着マスクが吸引されるので、発熱も生じないで、蒸着マスクと被蒸着基板との接触性がよく、蒸着材料が、蒸着マスクの正確なパターンで被蒸着基板に蒸着される。
(11)前記被蒸着基板の装着又は脱着の際に前記電磁石をオンにして前記永久磁石の磁界を弱くすることが、装着又は脱着の際の作業が容易になるので好ましい。
(12)前記電磁石をオフにする際に電流を徐々に減らしてオフにすることによって、電磁誘導による起電力の発生を抑制し得る。
(13)さらに、本発明の第三の実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、支持基板上にTFT及び第一電極を少なくとも形成し、前記支持基板の表面に前記(10)〜(12)のいずれか1項に記載の蒸着方法を用いて有機材料を蒸着することによって有機層の積層膜を形成し、前記積層膜の上に第二電極を形成することを含んでいる。
本発明の第三の実施形態の有機EL表示装置の製造方法によれば、有機EL表示装置が製造される際に、マグネットチャックとして電磁石を用いた場合と同様に作業をしやすく、かつ、マグネットチャックからの熱の発生を抑制し得るので、作業が容易でありながら、熱膨張による影響もなく正確なパターンの蒸着膜が得られ得る。
1 蒸着マスク
2 被蒸着基板
3 マグネットチャック
3A 永久磁石
3B 電磁石
4 タッチプレート
5 蒸着源
7 ヒートパイプ
8 真空チャンバー
12 金属支持層
15 マスクホルダー
21 支持基板
22 第一電極
23 絶縁バンク
25 積層膜
26 第二電極
29 基板ホルダー
35 磁性板
66 スペーサ(断熱部材)
71 吸熱部
72 放熱部
73 空間部
80 ウィック構造体
81 ケース(容器)
82 ウィック
83 ウィックコア
84 溝
96 ベローズ

Claims (12)

  1. 磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、
    前記マスクホルダーによって保持される前記蒸着マスクに近接して被蒸着基板を配置すべく、前記被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、
    前記蒸着マスクの前記被蒸着基板と反対面に前記蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、
    前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板の前記蒸着マスクと反対面に設けられ、前記蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、
    前記マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有し、前記永久磁石と前記電磁石とは、前記永久磁石が前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板と対向すると共に、軸方向に並べて配置されており、かつ、その周囲が被覆物によって固定されており、さらに、前記電磁石の前記永久磁石と反対面にヒートパイプの吸熱部が接触している、蒸着装置。
  2. 磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、
    前記マスクホルダーによって保持される前記蒸着マスクに近接して被蒸着基板を配置すべく、前記被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、
    前記蒸着マスクの前記被蒸着基板と反対面に前記蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、
    前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板の前記蒸着マスクと反対面に設けられ、前記蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、
    前記マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有し、前記電磁石が前記永久磁石の周囲にコイルを巻回することで形成されている、蒸着装置。
  3. 磁性体を有する蒸着マスクを保持するマスクホルダーと、
    前記マスクホルダーによって保持される前記蒸着マスクに近接して被蒸着基板を配置すべく、前記被蒸着基板を保持する基板ホルダーと、
    前記蒸着マスクの前記被蒸着基板と反対面に前記蒸着マスクと離間して設けられ、蒸着材料を気化又は昇華させる蒸着源と、
    前記基板ホルダーに保持される被蒸着基板の前記蒸着マスクと反対面に設けられ、前記蒸着マスクを磁力で吸引するマグネットチャックと、を有し、
    前記マグネットチャックが、永久磁石と電磁石とを有し、前記電磁石が筒体にコイルを巻回して前記永久磁石の外周に被せられている、蒸着装置。
  4. 前記電磁石は、前記永久磁石の磁界の向きと逆向きの磁界を生成する制御手段を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸着装置。
  5. 前記マスクホルダー及び基板ホルダーを支持する支持板と、前記マスクホルダーおよび前記基板ホルダーのそれぞれとの間に断熱部材が介在されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸着装置。
  6. 前記マスクホルダー、前記基板ホルダー、前記蒸着源、及び前記マグネットチャックを内包する真空チャンバーと、ヒートパイプとをさらに有し、前記ヒートパイプの吸熱部が前記マグネットチャックと接触し、前記ヒートパイプの放熱部が前記真空チャンバーの外部に導出されている、請求項〜5のいずれか1項に記載の蒸着装置。
  7. 前記ヒートパイプの前記吸熱部の一部が前記マグネットチャックの一部に埋め込まれている、請求項6に記載の蒸着装置。
  8. 前記ヒートパイプの吸熱部が、前記マグネットチャックの前記被蒸着基板と対向する面に設けられている、請求項6に記載の蒸着装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の蒸着装置を用いて、磁性体を有する蒸着マスクと、被蒸着基板と、前記蒸着マスクを吸引するマグネットチャックとを重ね合せ、前記マグネットチャックによる前記蒸着マスクの吸引によって、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとを近接させる工程、及び
    前記蒸着マスクと離間して配置される蒸着源からの蒸着材料の飛散によって前記被蒸着基板に前記蒸着材料を堆積する工程、
    を含み、
    前記マグネットチャックが永久磁石と電磁石とを有し、前記被蒸着基板と前記蒸着マスクとの位置合せを行う際に、前記永久磁石の磁界を弱くすべく、前記永久磁石の磁界の向きと逆向きの磁界を前記電磁石によって印加しながら前記位置合せを行い、位置合せ後に前記電磁石の磁界をオフにすることで、前記永久磁石によって前記蒸着マスクを吸引する、蒸着方法。
  10. 前記被蒸着基板の装着又は脱着の際に前記電磁石をオンにして前記永久磁石の磁界を弱くする、請求項9に記載の蒸着方法。
  11. 前記電磁石をオフにする際に電流を徐々に減らしてオフにする、請求項9又は10に記載の蒸着方法。
  12. 支持基板上にTFT及び第一電極を少なくとも形成し、
    前記支持基板の表面に請求項9〜11のいずれか1項に記載の蒸着方法を用いて有機材料を蒸着することによって有機層の積層膜を形成し、
    前記積層膜の上に第二電極を形成する
    ことを含む有機EL表示装置の製造方法。
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