JP6563720B2 - ダスト発生防止方法、及びダスト発生防止装置 - Google Patents

ダスト発生防止方法、及びダスト発生防止装置 Download PDF

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Description

本発明は、ダスト発生防止方法及びダスト発生防止装置に関する。
放射性セシウム、放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を含有する汚染水、例えば事故後の原子力発電所における炉心冷却用循環水、廃水等は、環境破壊を防止するために放射性汚染物質を基準値以下に低減しなければ排出することが許されない。
このため、事故後の原子力発電所では、余剰となった原子炉冷却水を回収した汚染水が多数のタンクに貯留されている。これらのタンクの多くは、複数の板状部材をボルト締めすることにより現地で接合して形成されたボルト締め型タンクである。このようなボルト締め型タンクでは、部材間の締結部のパッキン等の劣化により漏れが生じ得るため、数年が耐用期間と考えられる。
そこで、このようなボルト締め型タンクは、複数の板状部材を溶接により接合して形成され、より寿命の長い溶接型タンクに置き換えることが望ましい。しかしながら、ボルト締め型タンクから汚染水を排出しても、タンクの内面に付着した放射性物質のために、さらに除染処理をしなければボルト締め型タンクを容易に解体することができない。
このようなタンク内面の除染処理は、タンク内の汚染水を排出した後、作業員がタンク内に入り、デッキブラシなどを用いて手作業により行うことなどが考えられる。ここで、汚染水排出後のタンク内には放射性汚染物質を含有するダストが飛散するため、上記タンク内面の除染処理の前にタンク内のダスト除去処理が行われる。このダスト除去処理として、例えばタンク内の放射性物質濃度が所定値以下となるまでダスト吸引のための換気が行われる。
一方、上記タンク内面の除染処理は、解体作業の直前に実施されることが多い。上記ダスト除去処理を行ってから比較的短い時間内に解体作業を実施すればよいが、例えば上記ダスト除去処理の数日後に解体作業を実施する場合、タンク内に放射性ダストが再発生し、タンク内面の除染処理時にこの放射性ダストが飛散するおそれがある。この点について、例えば「“福島第一原子力発電所の汚染水の状況と対策について”、[online]、平成26年12月2日、東京電力株式会社、[平成27年6月1日検索]、インターネット(URL:http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/141202b.pdf)、p59」に、次のような調査結果が記載されている。すなわち、タンク内の汚染水の排出後、タンク内の放射性物質濃度が0.00002Bq/cm程度と十分に低下するまでタンク内のダスト吸引のための換気を実施した後、換気を停止させた後のタンク内の放射性物質濃度の経時変化が調査されている。この調査結果では、換気停止後3日目までは放射性物質濃度の上昇は見られていないが、その後放射性物質濃度が上昇し始め、換気停止5日後には、放射性物質濃度の高いところで0.00025Bq/cm近くまで上昇している。この原因は、定かではないが、タンク内の温度変化に伴いタンク内面が乾燥し、タンク内面にわずかに残留する放射性物質がダストになったものと考えられる。ここで、タンク内のダスト除去処理後、解体作業を実施するまで数日間以上放置する場合が多いことが実情であるため、このような放射性ダストの発生を防止することが重要である。
このような放射性ダストの発生は、タンク内面に残留する放射性物質を除去することにより防止できる。このようなタンク内面の放射性物質を除去するために、例えば作業員がタンク内に立ち入らずにタンク内面を除染する装置として、タンクの内壁面に沿って移動しながらタンク内壁面に付着した汚染物質を除去する装置が提案されている(特開平10−2995号公報参照)。
上記公報で提案の除染装置を用いることにより、タンク内壁面に残留する放射性物質を除去することができ、その結果上記放射性ダストの発生を防止することができる。しかし、この除染装置は、タンク内壁面の汚染物質の除去処理を行う際、汚染水排出後のタンク内に洗浄用の水を最高水位まで供給する必要がある。ここで、汚染水排水後のタンク下部には汚染水が残留するため、このようにタンク内に洗浄用の水が供給されると、この洗浄用の水が残留汚染水と混合し、その結果大量の汚染水が増加する。
また、上記公報で提案の除染装置を用いる以外の方法として、タンクの内面に長時間散水することによっても、タンク内面に残留する放射性物質を除去でき、上記放射性ダストの発生を防止することができる。しかし、この場合も、大量の洗浄水がタンク内の残留汚染水と混合し、大量の汚染水が増加する。
特開平10−2995号公報 "福島第一原子力発電所の汚染水の状況と対策について"、[online]、平成26年12月2日、東京電力株式会社、[平成27年6月1日検索]、インターネット(URL:http://www.tepco.co.jp/news/2014/images/141202b.pdf)、p59
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できるダスト発生防止方法及びダスト発生防止装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止方法であって、汚染水排水後の上記タンクの側壁内面に第1噴射用水を噴射する第1工程と、上記側壁内面に第2噴射用水を噴射する第2工程とを備え、上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、上記第1工程による噴射と第2工程による噴射との間に所定のインターバルがあることを特徴とするダスト発生防止方法である。
当該ダスト発生防止方法は、このように、タンクの側壁内面の少なくとも特定の領域において、第1工程での第1噴射用水の噴射との間に所定のインターバルを有するように第2工程で第2噴射用水の噴射を行う。この所定のインターバルの間に、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質が第1工程での噴射により付着した第1噴射用水中に溶解し、第2噴射用水の噴射により、このストロンチウム等が溶解した第1噴射用水が洗い流される。従って、当該ダスト発生防止方法により、例えばタンクの側壁内面の全面に対して上記第1工程及び第2工程を行うことにより、タンクの側壁内面全面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を第2噴射用水の噴射により洗い流すことができる。このように当該ダスト発生防止方法は、ストロンチウムの溶解に必要な量の第1噴射用水と、上記側壁内面に付着する第1噴射用水を洗い流すために必要な量の第2噴射用水とを噴射すればよいので、第1噴射用水及び第2噴射用水の使用量を低減しつつ、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。従って、当該ダスト発生防止方法は、第1噴射用水及び第2噴射用水の噴射に伴って増加する汚染水の量を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
上記所定のインターバルとしては、10分以上30分以内が好ましい。このように、上記所定のインターバルを上記範囲内とすることにより、上記側壁内面に残留するストロンチウム等が第1噴射用水中に溶解すると共に、上記側壁内面に付着した第1噴射用水を乾燥する前に洗い流すことができるので、より効率よく放射性ストロンチウム等を除去することができる。
上記第1工程での第1噴射用水の噴射及び上記第2工程での第2噴射用水の噴射による上記側壁内面への噴射用水の当接量としては、それぞれ平均100cc/m以上200L/m以下が好ましい。このように、上記側壁内面への噴射用水の当接量を上記範囲内となるよう第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射することにより、汚染水の増加を抑制しつつ、上記側壁内面に残留するストロンチウム等が第1噴射用水中に溶解し易くなると共に、上記側壁内面に付着した第1噴射用水を乾燥する前に洗い流すことができるので、より効率よく放射性ストロンチウム等を除去することができる。ここで、「側壁内面への噴射用水の当接量の平均」とは、噴射により側壁内面へ当接した噴射用水の全量を側壁内面の全面積で除した値である。
上記第1噴射用水及び第2噴射用水として、放射性ストロンチウム濃度が100Bq/cc以下の水を用いるとよい。このように、第1噴射用水及び第2噴射用水として放射性ストロンチウム濃度が上記上限以下の水を用いることにより、上記側壁内面の放射性ストロンチウムの残留をより確実に防止できる。
上記第1噴射用水として、上記タンク内の貯留汚染水を用いるとよく、上記第2噴射用水として、上記汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減した浄化水を用いるとよい。このように、第1噴射用水としてタンク内の貯留汚染水を用いることにより、汚染水の増加量をより抑制できる。また、第2噴射用水として汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減した浄化水を用いることにより、放射性汚染物質を含まない外部の水の使用量を低減できる。
上記第1工程及び第2工程で、複数のノズル及び首振り機構を有する水噴射モジュールにより上記噴射用水を噴射するとよく、上記首振り機構が、噴射用水の流入方向と平行な第1軸及びこの第1軸と垂直方向の第2軸を中心に、上記特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう上記ノズルを連続的に回転させるとよい。このように、上記第1軸及び第2軸を中心に連続的に回転する水噴射モジュールを用いて噴射用水を噴射することにより、効率よくタンクの側壁内面全体に噴射用水を噴射することができる。また、少なくとも特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるようノズルを連続的に回転させることにより、容易かつ確実に上記側壁内面の全面に対してこの所定のインターバルを有するように第2噴射用水を噴射させることができ、第1噴射用水及び第2噴射用水の噴射タイミングを容易に制御できる。ここで、「特定の領域への噴射間隔」とは、連続的に回転するノズルにより特定の領域に噴射用水が噴射された時点から、次にその領域に噴射用水が噴射される時点までの期間を意味する。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止装置であって、上記タンクの側壁内面に第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射する水噴射モジュールと、上記水噴射モジュールによる噴射を制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記水噴射モジュールにより上記側壁内面に第1噴射用水を噴射させ、この第1噴射用水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように第2噴射用水を噴射させる制御を行うことを特徴とするダスト発生防止装置である。
当該ダスト発生防止装置では、制御部が、水噴射モジュールにより第1噴射用水をタンクの側壁内面の少なくとも特定の領域に噴射させた後、所定のインターバルを有するように第2噴射用水をその領域に噴射させる制御を行う。この所定のインターバルの間に、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質が最初の噴射により付着した第1噴射用水中に溶解し、第2噴射用水の噴射により、このストロンチウム等が溶解した第1噴射用水が洗い流される。従って、当該ダスト発生防止装置は、制御部が、例えばタンクの側壁内面の全面に対して上記制御を行うことにより、タンクの側壁内面全面に残留する放射性ストロンチウム等の放射性汚染物質を上記噴射した第2噴射用水と共に洗い流すことができる。このように当該ダスト発生防止装置は、ストロンチウムの溶解に必要な量の第1噴射用水と、上記側壁内面に付着する第1噴射用水を洗い流すために必要な量の第2噴射用水とを噴射すればよいので、第1噴射用水及び第2噴射用水の使用量を低減しつつ、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。従って、当該ダスト発生防止装置は、第1噴射用水及び第2噴射用水の噴射に伴って増加する汚染水の量を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
本発明のダスト発生防止方法及びダスト発生防止装置は、上述のように、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
本発明の一実施形態に係るダスト発生防止装置の構成を示す模式図である。 図1の水噴射モジュールの模式的断面図である。 図1の水噴射モジュールの模式的正面図である。 図1の水噴射モジュールで噴射用水を噴射した際のタンク側壁内面の状態を示す模式的平面図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[ダスト発生防止装置]
図1の当該ダスト発生防止装置は、放射性汚染水を貯留していたタンク1の解体時におけるダストの発生防止装置である。当該ダスト発生防止装置は、タンク1の側壁内面に第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射する水噴射モジュール2と、水噴射モジュール2による噴射を制御する制御部3とを主に備える。また、当該ダスト発生防止装置は、水噴射モジュール2に第1噴射用水及び第2噴射用水を供給する第1供給配管4aと、第1三方弁5と、この第1三方弁5を介して第1供給配管4aへ第1噴射用水を流通させる第2供給配管4bと、第1三方弁5を介して第1供給配管4aへ第2噴射用水を流通させる第3供給配管4cとを備える。また、当該ダスト発生防止装置は、タンク1内の貯留汚染水の吸上げポンプ6と、この吸上げポンプ6で吸上げる汚染水の流通経路を切り替える第2三方弁7と、吸上げポンプ6で吸上げた汚染水を浄化する汚染水浄化設備8と、汚染水浄化設備8で浄化された水を貯留する浄化水タンク9と、浄化水タンク9内の浄化水を水噴射モジュール2へ圧送する供給ポンプ10とを備える。
<タンク>
タンク1は、当該ダスト発生防止装置によりダスト発生を防止する対象のタンクである。このタンク1としては、特に限定されないが、例えば事故後の原子力発電所における炉心冷却用循環水や廃水等の汚染水を貯留するために使用され、複数の板材の周縁に配設したフランジ間をボルトで締結して形成されたボルト締め型タンクが想定される。
また、タンク1は、解体前に内部の汚染水を排出するための不図示の排出口を有するが、底部にフランジがあるため、排出口から内部の汚染水を排出した後に内側下部に汚染水が不可避的に残留する。図1は、排出口から内部の汚染水を排出した後のタンク1の状態を示している。
タンク1の平均内径の下限としては、特に限定されないが、3mが好ましく、5mがより好ましい。一方、タンク1の平均内径の上限としては、25mが好ましく、20mがより好ましい。タンク1の平均内径が上記下限に満たないと、タンク容量を所定以上に大きくできず汚染水を貯留するためのタンク1の数が増加するおそれがある。逆に、タンク1の平均内径が上記上限を超えると、タンクの側壁内面に噴射用水を当接させることが容易ではないおそれがある。なお、「平均内径」とは、タンク内部の水平方向の最小寸法とこれに直交する水平方向の寸法との平均値を意味する。
また、タンク1の平均高さの下限としては、3mが好ましく、5mがより好ましい。一方、タンク1の平均高さの上限としては、25mが好ましく、20mがより好ましい。タンク1の平均高さが上記下限に満たないと、汚染水の貯留可能な容量に対してタンク1の設置面積が大きくなるため、設置面積に対する貯留効率が低下するおそれがある。逆に、タンク1の平均高さが上記上限を超えると、タンク1の上部のマンホールからタンク1内の適切な位置に水噴射モジュール2を配置することができないおそれがある。
また、このようなタンク1に貯留される汚染水は、本発明によりダスト発生を防止する物質としてどのような汚染物質を含むものであってもよいが、典型的には放射性物質、特に放射性ストロンチウムを含む放射性汚染水とされる。
タンク1に貯留される汚染水の汚染物質濃度としては、特に限定されないが、例えば500Bq/cc以上500,000Bq/cc以下とされる。
<水噴射モジュール>
図2及び図3に示す水噴射モジュール2は、複数のノズル25及びこれらのノズル25の方向を可変とする首振り機構26を有する。より詳細には、この水噴射モジュール2は、第1供給配管4aの先端に固定され、噴射用水の流入路を画定する固定部22と、この固定部22に噴射用水の流入方向と平行な第1軸Cを中心に回転可能に支持される胴部23と、上記第1軸Cと交差し、胴部23への噴射用水の流入方向と垂直な第2軸Cを中心に回転可能に支持される腕部24と、この腕部24に配設され、噴射用水を噴射する2つのノズル25とを有する。
上記首振り機構26は、腕部24を胴部23に対して連続的に回転させると共に、この腕部24の回転数に比例する速度で胴部23を固定部22に対して連続的に回転させることにより、ノズル25を水噴射モジュール2への噴射用水の流入方向の第1軸C及び流入方向と垂直な第2軸Cを中心に連続的に回転させる。これにより、水噴射モジュール2は、噴射用水の噴流をタンク1の内面全体に当接させる。つまり、水噴射モジュール2により噴出される噴射用水は、側壁内面と共に天板内面全体にも当接する。
さらに水噴射モジュール2は、胴部23の固定部22に対する回転を規制することにより、上記首振り機構26によるノズル25の回転速度を規制する調速機構27を有する。
この水噴射モジュール2への給水圧力の下限としては、0.3MPaが好ましく、0.5MPaがより好ましい。一方、水噴射モジュール2への給水圧力の上限としては、1.5MPaが好ましく、1.2MPaがより好ましい。水噴射モジュール2への給水圧力が上記下限に満たないと、水噴射モジュール2からの噴射用水の噴出速度が不十分となり、噴射用水をタンク1の側壁内面の遠い位置に当接させられないおそれがある。逆に、水噴射モジュール2への給水圧力が上記上限を超えると、水噴射モジュール2並びに水噴射モジュール2への配管等に耐圧性が要求され、当該ダスト発生防止装置が不必要に高価となるおそれがある。
(固定部)
固定部22は、配管に接続するためのフランジ28と、噴射用水が流入する流入路29と、流入路29を通過した噴射用水を径方向外側に流出させる複数の流出口30とを有する。
(胴部)
胴部23は、流出口30から径方向に流出した噴射用水が流通し、水噴射モジュール2への噴射用水の流入方向(第1軸C)と垂直な第2軸Cに沿って伸びる内部流路31を有する。
(腕部)
腕部24は、内部流路31を通過した噴射用水を2つのノズル25に分配する。
(ノズル)
ノズル25は、図3に示すように、腕部24に対して第2軸Cから偏心して配設され、噴射用水を噴射した反動により腕部24を回転させるよう配設されている。
これらのノズル25としては、噴射用水をできるだけ拡散させずに直線的に噴射するものが好ましい。ノズル25から直線的に噴射用水を噴出することにより、タンク1の側壁内面に噴き付けられた噴射用水が、タンク1の側壁内面に沿って連続的な水膜を形成するように拡がる。
ノズル25からの噴射用水の噴出速度の下限としては、10m/sが好ましく、20m/sがより好ましく、30m/sがさらに好ましい。一方、ノズル25からの噴射用水の噴出速度の上限としては、100m/sが好ましく、80m/sがより好ましく、60m/sがさらに好ましい。ノズル25からの噴射用水の噴出速度が上記下限に満たないと、ノズル25から噴射した噴射用水がタンク1の側壁内面の隅々まで届かないおそれがある。逆に、ノズル25からの噴射用水の噴出速度が上記上限を超えると、当該ダスト発生防止装置が不必要に高価となるおそれがある。
ノズル25から噴射される噴射用水の断面積拡大率の上限としては、2倍/mが好ましく、1.5倍/mがより好ましく、1.3倍/mがさらに好ましい。一方、ノズル25から噴射される噴射用水の断面積拡大率の下限としては特に限定されないが、理論上1倍/mが最小である。ノズル25から噴射される噴射用水の断面積拡大率が上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に噴き付けられた噴射用水が不連続に拡がり、タンク1の側壁内面全体に濡れ拡がらせることが容易でなくなるおそれがある。なお、「噴射用水の断面積拡大率」は、ノズルから水平に水を噴射し、ノズル先端からの水平距離が10mの位置において、噴射用水の噴射方向に垂直な平面内で圧力センサにより噴射用水を受けた際に測定される圧力が最大値の90%以上となる領域の面積をS(mm)、ノズルの開口面積をS(mm)として、(S/S0.1で表わされる値である。ここで用いる圧力センサとしては、直径3mmの円形の受圧面を有するものとする。
ノズル25の開口の円相当径の下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましく、7mmがさらに好ましい。一方、ノズル25の開口の円相当径の上限としては、15mmが好ましく、12mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。ノズル25の開口の円相当径が上記下限に満たないと、十分な水量を得ることができないおそれがある。逆に、ノズル25の開口の円相当径が上記上限を超えると、十分な噴出速度を得ることができないおそれがある。なお、「円相当径」とは、面積が等しい真円の直径を意味する。
ノズル25からの噴射用水の噴出量の下限としては、各ノズル当たり2m/hが好ましく、5m/hがより好ましい。一方、ノズル25からの噴射用水の噴出量の上限としては、各ノズル当たり30m/hが好ましく、15m/hがより好ましい。ノズル25からの噴射用水の噴出量が上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面に噴き付けたときに噴射用水が側壁内面に沿って十分に拡がらず、タンク1の側壁内面に噴射用水が付着しない領域ができるおそれがある。逆に、ノズル25からの噴射用水の噴出量が上記上限を超えると、ダスト防止のための噴射用水の使用量が増加するおそれがある。
(首振り機構)
首振り機構26は、水噴射モジュール2に圧送される噴射用水の水圧を原動力として、水噴射モジュール2への噴射用水の流入方向と平行な第1軸C及び上記流入方向と垂直な第2軸Cを中心にノズル25を連続的に回転させるよう構成される。つまり、首振り機構26は、ノズル25の偏心により水圧の反動が第2軸C周りの回転方向に作用することを利用して、ノズル25を第1軸C及び第2軸Cを中心に連続的に回転させるよう構成される。
この首振り機構26の具体的な構成としては、図2に示すように、腕部24の外周に配設される転動ベベルギア32と、この転動ベベルギア32が咬合するよう固定部22の外周に配設される案内ベベルギア33とを有する。
首振り機構26は、この構成により、ノズル25を支持する腕部24が第2軸Cを中心に回転するにつれ、転動ベベルギア32と案内ベベルギア33とのギア比に応じた角度だけ腕部24を第1軸Cを中心に回転させる。
(調速機構)
調速機構27は、固定部22の流入路29内に同軸に配設されるタービン34と、胴部23の内部に配設され、タービン34の回転を減速して出力する減速機35と、この減速機35により駆動される従動ギア36と、この従動ギア36が咬合するよう固定部22の外周に配設される規制ギア37とを有する。
減速機35は、タービン34と同軸で一体に回転する第1ウォーム38と、この第1ウォーム38に咬合するよう胴部23内に支持される第1ウォームホイール39と、この第1ウォームホイール39と同軸で一体に回転する第2ウォーム40と、この第2ウォーム40に咬合するよう胴部23内に支持され従動ギア36と同軸で一体に回転する第2ウォームホイール41とを有する。
この調速機構27は、流入路29における水の流速に応じたタービン34の回転数に比例する速度で従動ギア36を駆動することによって、ノズル25からの噴射水量に応じた速度で胴部23を固定部22に対して回転させ、首振り機構26の速度を調節する。より詳しくは、調速機構27は、首振り機構26が従動ギア36をより速い速度で回転させようとしても、ウォーム機構(38,39,40,41)を有することによって、従動ギア36に加えられる回転力を制動する。
水噴射モジュール2は、上記首振り機構26及び調速機構27を備えることにより、ノズル25から噴射する噴射用水をタンク1の内面全面に順次噴き付けていくことによって、噴射用水をタンク1の側壁内面全体に当接させる。
なお、図4は、水噴射モジュール2で噴射用水を噴射した際のタンク1の側壁内面の状態を示す模式的平面図である。図4の実線は、タンク1の側壁内面に噴射される噴射用水の中心位置Cを示している。また、図4の網掛け部分は、噴射により側壁内面に当接した直後の噴射用水が付着した領域を示している。この噴射用水付着領域は、時間が経過すると共に下方へ拡がっていき、側壁内面全体に噴射用水が付着する状態となる。
この水噴射モジュール2によってタンク1の側壁内面に噴射される噴射用水中心位置Cの平均ピッチPの下限としては、10cmが好ましく、20cmがより好ましい。一方、上記平均ピッチPの上限としては、1.5mが好ましく、1mがより好ましい。上記平均ピッチPが上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面全体に噴射用水を噴き付け終わるまでに必要以上に時間がかかるおそれがある。逆に、上記平均ピッチPが上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に噴射用水が付着しない領域が生じるおそれがある。なお、「平均ピッチ」とは、噴射用水中心位置Cの隣接し合う略平行な軌跡の間隔であって一方の軌跡上の一点から他方の軌跡への垂直距離の平均値を意味する。また、「略平行」とは、両者のなす角度が30°以下、好ましくは15°以下であることをいう。
この水噴射モジュール2によってタンク1の側壁内面に噴射される噴射用水の中心位置Cの最大間隔の下限としては、20cmが好ましく、30cmがより好ましい。一方、上記最大間隔の上限としては、2mが好ましく、1.5mがより好ましい。上記最大間隔が上記下限に満たないと、タンク1の内面全体に噴射用水を噴き付け終わるまでに必要以上に時間がかかるおそれがある。逆に、上記最大間隔が上記上限を超えると、タンク1の側壁内面に噴射用水が付着しない領域が生じるおそれがある。なお、「噴射用水中心位置の最大間隔」とは、噴射用水中心位置Cの全ての軌跡間の最大離間距離を意味し、軌跡間の交点での間隔はゼロとする。
当該ダスト発生防止装置は、このような構成を有する水噴射モジュール2を用いるので、効率よくタンク1の側壁内面全体に噴射用水を噴射することができる。これにより、当該ダスト発生防止装置は、噴射用水の使用量を低減させ易い。
<制御部>
制御部3は、水噴射モジュール2による噴射を制御する。具体的には、制御部3が、吸上げポンプ6により汚染水を吸上げさせ、水噴射モジュール2によりタンク1の側壁内面に第1噴射用水としてこの汚染水を噴射させる制御を行う。また、制御部3は、この第1噴射用水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように水噴射モジュール2により第2噴射用水として浄化水タンク9に貯留される浄化水を噴射させる制御を行う。なお、この制御部3の制御による当該ダスト発生防止装置の動作の詳細については後述する。
<供給配管>
第1供給配管4aは、水噴射モジュール2に噴射用水を供給する配管である。この第1供給配管4aの一端は第1三方弁5に接続され、他端は水噴射モジュール2の固定部22に固定される。
第2供給配管4bは、第1噴射用水を水噴射モジュール2へ供給する配管であり、第1三方弁5に接続される。また、第3供給配管4cは、第2噴射用水を水噴射モジュール2へ供給する配管であり、第1三方弁5に接続される。
<第1三方弁>
第1三方弁5は、第1供給配管4aにより水噴射モジュール2に供給する噴射用水を第2供給配管4bからの第1噴射用水又は第3供給配管4cからの第2噴射用水に切り替える。
<吸上げポンプ>
吸上げポンプ6は、タンク1の底部に着床して配置され、タンク1内下部から貯留汚染水を吸い上げる。この吸上げポンプ6としては、その下部から周囲の水を吸い込んで送出する排水用水中ポンプが好適に使用される。このような吸上げポンプ6は、タンク1の上部のマンホールからワイヤー等で吊り下ろされることによって設置される。
<第2三方弁>
第2三方弁7は、吸上げポンプ6により吸上げられた汚染水を水噴射モジュール2への供給又は汚染水浄化設備8への供給に切り替える。
<汚染水浄化設備>
汚染水浄化設備8は、タンク1内から吸上げられる汚染水を浄化し、浄化した水を後述する浄化水タンク9へ圧送する設備である。この汚染水浄化設備8により、タンク1内下部から吸上げられた汚染水の放射性汚染物質濃度が低減される。
汚染水浄化設備8は、汚染水のストロンチウム濃度を第2噴射用水として利用できる濃度まで低減できるものであればよく、例えば少なくともストロンチウムを選択的に吸着する吸着剤を有する設備が用いられる。このような設備であっても、例えば汚染水のストロンチウム濃度を100Bq/cc以下に低減できるものであればよい。
<浄化水タンク>
浄化水タンク9は、汚染水浄化設備8で浄化された水を貯留するタンクである。
浄化水を貯留可能な浄化水タンク9の容量の下限としては、5mが好ましく、10mがより好ましい。一方、浄化水タンク9の容量の上限としては、50mが好ましく、30mがより好ましい。浄化水タンク9の容量が上記下限に満たないと、1つの浄化水タンク9のみでタンク1の側壁内面全体に当接させる量の浄化水を供給できないおそれがある。逆に、浄化水タンク9の容量が上記上限を超えると、浄化水タンク9が不必要に大型になるおそれがある。
<供給ポンプ>
供給ポンプ10は、第3供給配管4cを介して、浄化水タンク9に貯留される浄化水を水噴射モジュール2へ所定の圧力で連続的に圧送する。
当該ダスト発生防止装置は、タンク1の内面へ最初に噴射する第1噴射用水として、タンク1下部の残留汚染水を用いる。また、当該ダスト発生防止装置は、第1噴射用水噴射後、タンク1の内面へ噴射する第2噴射用水として、浄化水タンク9に貯留される浄化水を用いる。上記構成を有する当該ダスト発生防止装置の動作について以下に説明する。
当該ダスト発生防止装置は、まず制御部3が、第1三方弁5及び第2三方弁7を切り替え制御した後、吸上げポンプ6によりタンク1下部の残留汚染水を吸上げさせることにより、この汚染水を水噴射モジュール2へ供給させる。この汚染水が水噴射モジュール2に供給されると、水噴射モジュール2からタンク1内面に当接するよう汚染水が噴射される。次に、制御部3は、第1三方弁5を切り替え制御した後、供給ポンプ10を制御して浄化水タンク9に貯留される浄化水を水噴射モジュール2へ供給させる。この浄化水が水噴射モジュール2に供給されると、水噴射モジュール2からタンク1内面に当接するよう浄化水が噴射される。なお、浄化水タンク9内の浄化水は、上記浄化水の噴射の前に貯留させておく。具体的には、制御部3が、第2三方弁7を切り替え制御した後、吸上げポンプ6によりタンク1下部の残留汚染水を汚染水浄化設備8に供給させ、汚染水浄化設備8で浄化された汚染水を浄化水タンク9に貯留させる。
このように、制御部3は、水噴射モジュール2により汚染水を噴射させた後、所定時間経過後、水噴射モジュール2により浄化水をタンク1内面に噴射させる。ここで、タンク1の側壁内面の特定の領域への最初の噴射による汚染水の当接後、所定のインターバルを経てその領域へ再噴射による浄化水が当接するよう上記所定時間が設定される。制御部3は、この設定された所定時間に基づいて水噴射モジュール2による上記汚染水及び浄化水の噴射を制御する。この所定のインターバルの間に、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムが最初の噴射により付着した汚染水中に溶解し、その後の浄化水の噴射により、このストロンチウムが溶解した汚染水が洗い流される。なお、上記水噴射モジュール2は、ノズル25が連続的に回転して汚染水及び浄化水の噴流をタンク1の内面全体に当接させるので、上述のように制御部4がタンク1の側壁内面への汚染水及び浄化水の噴射を制御することで、タンク1の側壁内面の全面において、最初の噴射による汚染水の当接後、所定のインターバルを経て再噴射による浄化水が当接する。これにより、当該ダスト発生防止装置は、タンク1の側壁内面の全面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できるので、タンク1解体時の放射性ダストの発生を防止できる。
このように当該ダスト発生防止装置は、ストロンチウムの溶解に必要な量の第1噴射用水と、上記側壁内面に付着する第1噴射用水を洗い流すために必要な量の第2噴射用水とを噴射すればよいので、第1噴射用水及び第2噴射用水の使用量を低減しつつ、上記側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを効果的に除去できる。
[ダスト発生防止方法]
続いて、当該ダスト発生防止装置を用いて行われる本発明の一実施形態に係るダスト発生防止方法について説明する。
当該ダスト発生防止方法は、放射性汚染水を貯留していたタンク1の解体時におけるダストの発生防止方法である。当該ダスト発生防止方法は、汚染水排水後のタンク1の側壁内面に第1噴射用水を噴射する第1工程と、上記側壁内面に第2噴射用水を噴射する第2工程とを主に備える。当該ダスト発生防止方法は、上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、上記第1工程による噴射と第2工程による噴射との間に所定のインターバルができるようにこれらの工程を行う。また、当該ダスト発生防止方法は、タンク1内の貯留汚染水を浄化する工程(浄化工程)を備える。
<浄化工程>
上記浄化工程では、タンク1内の貯留汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減する。具体的には、まず制御部3が、吸上げポンプ6により吸上げられる汚染水が汚染水浄化設備8に移送されるように、第2三方弁7を切り替え制御する。次に、制御部3が、吸上げポンプ6によりタンク1内の汚染水を吸上げさせることで、この汚染水を汚染水浄化設備8に供給させる。汚染水浄化設備8は、この汚染水を浄化し、浄化した水を浄化水タンク9へ圧送する。浄化水タンク9は、汚染水浄化設備8から圧送される浄化水を貯留する。なお、吸上げポンプ6により吸上げられる汚染水は、第2三方弁7の切り替えにより浄化工程又は後述する第1工程で用いられるので、浄化工程は第1工程とは別に行われる。また、後述する第2工程では、浄化工程で浄化して浄化水タンク9に貯留した浄化水を使用するので、浄化工程は第2工程よりも前に行われる。
<第1工程>
上記第1工程では、水噴射モジュール2により汚染水排水後のタンク1の側壁内面へ第1噴射用水を噴射する。なお、第1工程では、タンク1の側壁内面に噴射する第1噴射用水として、タンク1内の貯留汚染水を用いる。具体的には、まず制御部3が、吸上げポンプ6により吸上げられる汚染水が第2供給配管4b及び第1供給配管4aを介して水噴射モジュール2に供給されるように、第1三方弁5及び第2三方弁7を切り替え制御する。次に、制御部3が、吸上げポンプ6によりタンク1内の汚染水を吸上げさせることで、タンク1内の貯留汚染水を水噴射モジュール2に供給させる。水噴射モジュール2は、首振り機構26により上記第1軸C及び第2軸Cを中心にノズル25を連続的に回転させて、この供給された汚染水をノズル25からタンク1の内面へ噴射する。このとき、水噴射モジュール2は、噴射した汚染水の当接及び濡れ拡がりによりタンク1の側壁内面全体が汚染水で濡れるよう、上記汚染水の連続的な噴射を行う。
<第2工程>
上記第2工程では、上記第1工程後に、水噴射モジュール2によりタンク1の側壁内面へ第2噴射用水を噴射する。なお、第2工程では、タンク1の側壁内面に噴射する第2噴射用水として、タンク1内の貯留汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減した浄化水タンク9内に貯留する浄化水を用いる。具体的には、まず制御部3が、供給ポンプ10により第3供給配管4c内を流通する浄化水が水噴射モジュール2に供給されるように、第1三方弁5を切り替え制御する。次に、制御部3が、供給ポンプ10により浄化水タンク9に貯留される浄化水を水噴射モジュール2へ所定の圧力で連続的に供給させる。水噴射モジュール2は、首振り機構26により上記第1軸C及び第2軸Cを中心にノズル25を連続的に回転させて、この供給された浄化水をノズル25からタンク1の内面へ噴射する。このとき、水噴射モジュール2は、第1工程での汚染水の噴射によりタンク1の側壁内面全体に付着した汚染水が浄化水と共に洗い流されるよう、上記浄化水の連続的な噴射を行う。
ここで、第2工程では、タンク1の側壁内面の特定の領域において、第1工程での汚染水噴射と第2工程での浄化水噴射との間に所定のインターバルができるように、制御部3が上記浄化水の噴射を制御する。例えば、第1工程での汚染水噴射開始時の噴射方向と第2工程での浄化水噴射開始時の噴射方向とを同じとし、第1工程での汚染水噴射開始時点から上記所定のインターバル経過後に第2工程での噴射を開始するよう制御することで、当該ダスト発生防止方法は、タンク1の側壁内面の特定の領域において、第1工程での汚染水噴射と第2工程での浄化水噴射との間に上記所定のインターバルを確保させることができる。ここで、上記水噴射モジュール2は、ノズル25が連続的に回転して汚染水及び浄化水の噴流をタンク1の内面全体に当接させるので、上述のようにタンク1の側壁内面に対して第1工程及び第2工程を行うことで、タンク1の側壁内面の全面において、汚染水の噴射後、所定のインターバルを経て再噴射による浄化水が当接する。上記制御は、具体的には、まず水噴射モジュール2により第1工程での汚染水噴射を行わせ、タンク1の側壁内面全体に汚染水が付着した時点で汚染水噴射を停止させる。その後、上記制御は、第1工程での汚染水噴射開始時点から上記インターバルが経過した時点に、水噴射モジュール2による第2工程の浄化水噴射を開始させる。
このように、当該ダスト発生防止方法は、タンク1の側壁内面の少なくとも特定の領域において、第1工程での汚染水の噴射と第2工程での浄化水の噴射との間に所定のインターバルができるようにこれらの工程を行う。そのため、上記特定の領域が汚染水で濡れた後、浄化水で洗い流されるまでの間に、上記側壁内面に残留するストロンチウムが上記側壁内面に付着する汚染水に溶解する。その後、浄化水によりこの領域に付着する汚染水が洗い流されるので、上記側壁内面に残留するストロンチウムが除去される。これにより、当該ダスト発生防止方法は、タンク1解体時の放射性ダストの発生を防止できる。また、当該ダスト発生防止方法は、第1噴射用水としてタンク1内の貯留汚染水を用い、第2噴射用水としてタンク1内の貯留汚染水を浄化した水を用いるので、タンク1内面の洗浄に伴う汚染水の増加を大幅に抑制できる。
上記所定のインターバルの下限としては、10分が好ましく、15分がより好ましい。一方、上記所定のインターバルの上限としては、30分が好ましく、20分がより好ましい。上記所定のインターバルが上記下限に満たないと、上記側壁内面に残留するストロンチウムが側壁内面に付着する汚染水中に十分に溶解せず、側壁内面のストロンチウムを十分に除去できないおそれがある。逆に、上記所定のインターバルが上記上限を超えると、上記側壁内面に付着する汚染水が乾燥し始め、その汚染水に溶解したストロンチウムが析出して上記側壁内面に残留するおそれがある。
上記第1工程での汚染水の噴射及び上記第2工程での浄化水の噴射による上記側壁内面への汚染水及び浄化水の平均当接量の下限としては、それぞれ100cc/mが好ましく、150cc/mがより好ましい。一方、上記汚染水及び浄化水の平均当接量の上限としては、それぞれ200L/mが好ましく、100L/mがより好ましく、50L/mがさらに好ましい。上記汚染水の平均当接量が上記下限に満たないと、タンク1の側壁内面に残留するストロンチウムが上記側壁内面に付着する汚染水中に十分に溶解しないおそれがある。また、上記浄化水の平均当接量が上記下限に満たないと、ストロンチウムが溶解した汚染水を十分に洗い流せないおそれがある。従って、汚染水及び浄化水の平均当接量がそれぞれ上記下限以上となる量の汚染水及び浄化水を噴射させることで、第1工程及び第2工程を複数回繰り返さなくても、第1工程の後に第2工程を一度行うことによりタンク1の側壁内面に残留するストロンチウムを効果的に除去できる。つまり、平均当接量が上記下限以上となる量の汚染水及び浄化水を噴射させることで、上記第1工程及び第2工程をそれぞれ1回行うだけで、タンク1の側壁内面に残留する放射性ストロンチウムを十分に除去できる。逆に、上記汚染水又は浄化水の平均当接量が上記上限を超えると、タンク1内を洗浄するために噴射する汚染水量又は浄化水量が多くなりすぎるおそれや、噴射に要する時間が長くなりすぎるおそれがある。
なお、タンク1の側壁内面の少なくとも特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう水噴射モジュール2のノズル25を回転させることにより、上記第1工程及び第2工程の制御を容易にすることができる。水噴射モジュール2は上述した構造を有するので、上記噴射間隔の期間のノズル25の回転によりタンク1の内面全体に亘る噴射用水の噴射が行える。従って、上記噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう水噴射モジュール2のノズル25を回転させながら、第1工程での噴射による汚染水がタンク1の側壁内面の全体に当接したタイミングで第1三方弁5により水噴射モジュール2への汚染水の供給を浄化水の供給に切り替える制御のみで、第1工程に続けて第2工程が行える。
タンク1の側壁内面のストロンチウムを効率よく除去するためには、上記第2工程で噴射する浄化水の放射性ストロンチウム濃度は低いほど好ましい。このため、上記浄化水の放射性ストロンチウム濃度の具体的な上限としては、汚染水浄化設備8により浄化可能な100Bq/ccが好ましく、50Bq/ccがより好ましい。
また、上記第2工程において、タンク1の側壁内面に噴射する第2噴射用水として、放射性ストロンチウム濃度が上記上限以下の雨水、海水、地下水等を用いてもよい。このような水を第2噴射用水として用いる場合、上記浄化工程は省略できる。これらの水を第2噴射用水として用いることにより、放射性汚染物質を含まない外部の水の使用量を低減できる。なお、これらの水を第2噴射用水として用いる場合、ろ過により不純物を除去して用いることが好ましい。
また、タンク1の天板に溜まった雨水を第2噴射用水として用いる場合、タンク1周辺のホースの取り回しの認可が不要となるので、ダスト発生防止のための設備の設置期間を短縮できる。従って、第2噴射用水として、タンク1の天板に溜まった雨水をろ過して用いることが特に好ましい。
また、上記第1工程において、第1噴射用水としてタンク1内の貯留汚染水以外の汚染水を用いてもよい。例えば、汚染物質濃度が排出基準を超える他の汚染水貯留用タンク内の汚染水等を用いてもよい。第1噴射用水としてこのような汚染水を用いても、タンク内面の洗浄に伴う汚染水の増加を抑制できる。
タンク1内の貯留汚染水は、汚染物質濃度が排出基準を超える水であり、そのままでは排出することが許されない水である。上述のように第1噴射用水としてこのような汚染水を用いる場合、この汚染水をタンクの内壁側面全体が濡れるように噴射することに伴いタンクの天板内面にも汚染水が付着するので、第2噴射用水の天板内面への噴射によりこの天板内面に付着する汚染水を洗い流す必要がある。従って、第1噴射用水として汚染物質濃度が排出基準を下回る水を用いることで、天板内面に付着した第1噴射用水の洗い流しが必要ないため第2噴射用水の天板内面への噴射を不要とでき、第2噴射用水の使用量を低減することができる。
また、上記第1工程において、第1噴射用水として、第2工程で用いる浄化水と同種の浄化水を用いてもよい。このように第1噴射用水として第2噴射用水と同種の浄化水を用いる場合、第1噴射用水及び第2噴射用水として同じ浄化水タンク9内の浄化水を用いることができるので、第1三方弁5、第2三方弁7及び第2供給配管4bを省略でき、ダスト発生防止装置を簡易な構造とできる。また、タンク1の側壁内面の少なくとも特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう水噴射モジュールのノズルを回転させる場合、このように第1噴射用水として第2噴射用水と同じ浄化水タンク9内の浄化水を用いると、簡易な制御により上記第1工程に続けて第2工程を行わせることができる。すなわち、この場合、水噴射モジュール2のノズルを所定時間回転させるという簡易な制御のみで、上記第1工程に続けて第2工程を行わせることができる。また、このように浄化水タンク9内の浄化水を共用し制御することで、ダスト発生防止のための噴射用水の使用量が低減し易くなる。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
例えば、上記実施形態では、水噴射モジュールとして、複数のノズル及び首振り機構を有する三次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いることとしたが、放射性汚染水を貯留していたタンク(以下、汚染水貯留タンクと呼ぶ)の側壁内面に噴射用水を噴射できるものであれば、これ以外の洗浄用モジュールを用いてもよい。例えば、水噴射モジュールとして、回転式のスプレーボールを用いるような二次元ノズル式の洗浄用モジュールや、水平方向に噴射する一次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いてもよい。なお、上記一次元ノズル式の洗浄用モジュールを用いる場合、例えば水平方向に噴射用水を噴射させながらノズルを鉛直方向に移動させることにより、汚染水貯留タンクの側壁内面全体に噴射用水を噴射することができる。
また、上記実施形態では、第2工程の前に浄化工程を行うこととしたが、上記汚染水浄化設備が水噴射モジュールへの単位時間当たりの供給水量以上の浄化能力を有している場合、第2工程と並行して浄化工程を行わせることができる。このように、浄化工程を第2工程と並行して行わせることで、ダスト発生防止のための全処理時間を短縮することができる。さらに、上記汚染水浄化設備が、水噴射モジュールで必要とされる給水圧力以上の浄化水圧送能力を有している場合、供給ポンプを省略し、汚染水浄化設備が浄化水を直接水噴射モジュールに供給する構成としてもよい。これにより、ダスト発生防止装置をより簡易な構成とすることができる。
また、上記実施形態では、水噴射モジュールにより側壁内面の全面に第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射させる構成について説明したが、水噴射モジュールにより側壁内面の一部の領域のみに第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射させる構成としてもよい。このように側壁内面の一部の領域のみに第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射させる場合でも、その領域のタンク内面に残留する放射性物質を除去できるので、タンク解体時の放射性ダストの発生量を低減できる。
本発明のダスト発生防止方法及びダスト発生防止装置は、汚染水の増加を抑制しつつ、タンク解体時の放射性ダストの発生を防止できるので、特に事故後の原子力発電所において発生した汚染水を貯留する汚染水タンクの解体時に好適に利用することができる。
1 タンク
2 水噴射モジュール
3 制御部
4a 第1供給配管
4b 第2供給配管
4c 第3供給配管
5 第1三方弁
6 吸上げポンプ
7 第2三方弁
8 汚染水浄化設備
9 浄化水タンク
10 供給ポンプ
22 固定部
23 胴部
24 腕部
25 ノズル
26 首振り機構
27 調速機構
28 フランジ
29 流入路
30 流出口
31 内部流路
32 転動ベベルギア
33 案内ベベルギア
34 タービン
35 減速機
36 従動ギア
37 規制ギア
38 第1ウォーム
39 第1ウォームホイール
40 第2ウォーム
41 第2ウォームホイール
第1軸
第2軸
噴射用水中心位置
P ピッチ

Claims (5)

  1. 放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止方法であって、
    汚染水排水後の上記タンクの側壁内面に第1噴射用水を噴射する第1工程と、
    上記側壁内面に第2噴射用水を噴射する第2工程と
    を備え、
    上記側壁内面の少なくとも特定の領域において、上記第1工程による噴射と第2工程による噴射との間に所定のインターバルがあり、
    上記第1噴射用水として、上記タンク内の貯留汚染水を用い、
    上記第2噴射用水として、上記汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減した浄化水を用いることを特徴とするダスト発生防止方法。
  2. 上記所定のインターバルが、10分以上30分以内である請求項1に記載のダスト発生防止方法。
  3. 上記第1工程での第1噴射用水の噴射及び上記第2工程での第2噴射用水の噴射による上記側壁内面への噴射用水の当接量が、それぞれ平均100cc/m以上200L/m以下である請求項1又は請求項2に記載のダスト発生防止方法。
  4. 上記第1工程及び第2工程で、複数のノズル及び首振り機構を有する水噴射モジュールにより上記噴射用水を噴射し、
    上記首振り機構が、噴射用水の流入方向と平行な第1軸及びこの第1軸と垂直方向の第2軸を中心に、上記特定の領域への噴射間隔が上記所定のインターバル以上となるよう上記ノズルを連続的に回転させる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のダスト発生防止方法。
  5. 放射性汚染水を貯留していたタンクの解体時におけるダストの発生防止装置であって、
    上記タンクの側壁内面に第1噴射用水及び第2噴射用水を噴射する水噴射モジュールと、
    上記水噴射モジュールによる噴射を制御する制御部と
    を備え、
    上記制御部は、上記水噴射モジュールにより上記側壁内面に第1噴射用水を噴射させ、この第1噴射用水噴射後、上記側壁内面の少なくとも特定の領域へ所定のインターバルを有するように第2噴射用水を噴射させる制御を行い、
    上記第1噴射用水が上記タンク内の貯留汚染水であり、
    上記第2噴射用水が上記汚染水の放射性ストロンチウム濃度を低減した浄化水であることを特徴とするダスト発生防止装置。
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