用語「抗体」は、本明細書において、抗体ドメインからなるかまたは抗体ドメインを含むポリペプチドまたはタンパク質を指すものとし、抗体ドメインは、リンカー配列を伴うまたは伴わない、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常および/または可変ドメインと理解される。ポリペプチドは、ループ配列によって連結される抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータ−バレル構造を含むならば、抗体ドメインと理解される。抗体ドメインは、天然構造でもよいし、あるいは突然変異誘発または誘導体化によって修飾されて、例えば抗原結合特性または任意の他の特性、例えば安定性または機能特性、例えばFc受容体FcRnおよび/またはFcガンマ受容体への結合が修飾されてもよい。
本明細書記載の抗体は、1またはそれより多い抗原、あるいはこうした抗原の1またはそれより多いエピトープに結合する、特異的結合部位を有し、特に単一可変抗体ドメインのCDR結合部位、例えばVH、VLまたはVHH、あるいは可変抗体ドメイン対の結合部位、例えばVL/VH対、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含む抗体、例えばFab、F(ab’)、(Fab)2、scFv、Fv、あるいは全長抗体を含む。
用語「抗体」は、本明細書において、特に、単一可変抗体ドメイン、例えばVH、VLまたはVHH、あるいは連結配列またはヒンジ領域を伴うまたは伴わない、可変および/または定常抗体ドメインの組み合わせを含む、あるいはこれらからなる、抗体形式を指すものとし、可変抗体ドメイン対、例えばVL/VH対、VL/VHドメイン対および定常抗体ドメインを含むかまたはこれらからなる抗体、例えば重鎖抗体、Fab、F(ab’)、(Fab)2、scFv、Fd、Fv、または全長抗体、例えばIgGタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgM抗体が含まれる。用語「全長抗体」を用いて、Fcドメインの少なくとも大部分、および天然存在抗体単量体に一般的に見られる他のドメインを含む、任意の抗体分子を指すことも可能である。この句は、本明細書において、特定の抗体分子が抗体断片でないことを強調するために用いられる。
用語「抗体」には、特に、異なるターゲット抗原に対して向けられるか、または抗体ドメインの異なる構造配置を含む、他の抗体を実質的に含まない、単離型の抗体が含まれるものとする。なお、単離抗体は、例えば少なくとも1つの他の抗体、例えば異なる特異性を有するモノクローナル抗体または抗体断片を含む、単離抗体の組み合わせを含有する、組み合わせ調製物に含まれることも可能である。
用語「抗体」は、ヒト種を含む動物起源、例えばヒト、ネズミ、ウサギ、ヤギ、ラマ(lama)、ウシおよびウマ、または鳥類、例えば雌鶏(hen)を含む哺乳動物の抗体に適用されるものとする。
用語「抗体」は、さらに、異なる種起源の配列、例えばネズミおよびヒト起源の配列を持つキメラ抗体に適用される。
用語「キメラ」は、抗体に関して用いられる際、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列各々の1つの部分が、特定の種に由来するかまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同である一方、鎖の残りのセグメントが、別の種またはクラスの対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、哺乳動物の1種由来の抗体可変領域を模倣し、一方、定常部分は、別の種由来の抗体配列に相同である。例えば、可変領域は、例えばヒト細胞調製物由来の定常領域と組み合わせて、非ヒト宿主生物由来の、容易に入手可能なB細胞またはハイブリドーマを用いて、現在知られる供給源から得られうる。
用語「抗体」は、さらに、ヒト化抗体に適用される。
用語「ヒト化」は、抗体に関して用いた際、非ヒト種由来の免疫グロブリンから実質的に得られる抗原結合部位を有する分子を指し、ここで、分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全可変ドメイン、または可変ドメイン中の適切なフレームワーク領域上に移植された相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含むことも可能である。抗原結合部位は、野生型でもよいし、あるいは例えば1またはそれより多いアミノ酸置換によって、修飾されていてもよく、好ましくは、ヒト免疫グロブリンにより近く似るように修飾される。ヒト化抗体のいくつかの型は、すべてのCDR配列を保持する(例えば、マウス抗体由来の6つすべてのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の型は、元来の抗体に関して改変されている1またはそれより多いCDRを有する。
用語「抗体」は、さらにヒト抗体に適用される。
用語「ヒト」は、抗体に関して用いられる際、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を含むと理解される。本発明のヒト抗体には、例えばCDR中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばランダムまたは部位特異的突然変異誘発によってin vitroで、あるいは体細胞突然変異によってin vivoで導入される突然変異)が含まれてもよい。ヒト抗体には、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、あるいは1またはそれより多いヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックである動物から、単離される抗体が含まれる。
該用語は、特に、任意のクラスまたはサブクラスの抗体に適用される。重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、抗体IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの主要なクラスに割り当て可能であり、そしてこれらのいくつかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2に分けられうる。
該用語は、さらに、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、特に組換え抗体に適用され、こうした用語には、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるかまたは単離されるすべての抗体および抗体構造が含まれ、例えば、異なる起源由来の遺伝子または配列を含む、例えば動物、例えばヒトを含む哺乳動物から生じる抗体、例えばキメラ、ヒト化抗体、またはハイブリドーマ由来抗体が含まれる。さらなる例は、抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞から単離される抗体、あるいは抗体または抗体ドメインの組換えコンビナトリアルライブラリーから単離される抗体、あるいは他のDNA配列に抗体遺伝子配列をスプライシングする工程を含む、任意の他の手段によって、調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される抗体を指す。
用語「抗体」はまた、抗体の誘導体、特に機能的に活性である誘導体も指すと理解される。抗体誘導体は、1またはそれより多い抗体ドメインまたは抗体および/または融合タンパク質の任意の組み合わせと理解され、ここで、抗体の任意のドメインを、例えば他の抗体、例えばCDRループを含む結合構造、受容体ポリペプチドであってもよいが、またリガンド、足場タンパク質、酵素、毒素等の、1またはそれより多い他のタンパク質の任意の位で、融合させてもよい。多様な化学的技術、例えば共有カップリング、静電相互作用、ジスルフィド結合等による、他の物質への会合または結合によって、抗体の誘導体を得てもよい。抗体に結合する他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機および無機分子またはその任意の組み合わせ(例えばPEG、プロドラッグまたは薬剤)であってもよい。特定の態様において、抗体は、生物学的に許容されうる化合物との特異的相互作用を可能にするさらなるタグを含む誘導体である。本発明で使用可能なタグに関しては、抗体のターゲットへの結合に対して、まったく負の影響がないかまたは許容されうる負の影響しかない限り、特別な制限はない。適切なタグの例には、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ、Strepタグ、カルモジュリン・タグ、GSTタグ、MBPタグ、およびSタグが含まれる。別の特定の態様において、抗体は、標識を含む誘導体である。用語「標識」は、本明細書において、「標識」抗体を生成するような、抗体に直接または間接的にコンジュゲート化された、検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体検出可能であってもよく、例えば放射性同位体標識または蛍光標識であってもよく、あるいは酵素標識の場合、検出可能な基質化合物または組成物の化学的改変を触媒してもよい。
本明細書に記載するような好ましい誘導体は、抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは黄色ブドウ球菌を中和する能力を有し、そして/または防御抗体である。
用語「抗体」はまた、抗体の変異体も指すと理解される。
用語「変異体」は、特に、例えば突然変異誘発法によって、特に特定の抗体アミノ酸配列または領域を欠失させ、交換し、該配列または領域内に挿入物を導入するか、あるいはアミノ酸配列を化学的に誘導体化して、例えば定常ドメインにおいて、抗体安定性、エフェクター機能または半減期を操作するか、あるいは可変ドメインにおいて、例えば当該技術分野において利用可能なアフィニティ成熟技術によって抗原結合特性を改善して、得られる突然変異抗体または抗体断片などの抗体を指すものとする。任意の既知の突然変異誘発法が使用可能であり、これには、例えばランダム化技術によって得られる、望ましい位での点突然変異が含まれる。いくつかの場合、位は、例えば任意のありうるアミノ酸または抗体配列をランダム化するために好ましいアミノ酸の選択のいずれかを用いて、ランダムに選択される。用語「突然変異誘発」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を改変するための、任意の当該技術分野に認識される技術を指す。好ましいタイプの突然変異誘発には、エラープローンPCR突然変異誘発、飽和突然変異誘発、または他の部位特異的突然変異誘発が含まれる。
用語「変異体」は、特に、機能的に活性である変異体を含むものとする。
用語、抗体の「機能的に活性である変異体」は、本明細書において、1またはそれより多いアミノ酸の挿入、欠失または置換によるこの配列(親抗体または親配列)の修飾、あるいはアミノ酸配列中の1またはそれより多いアミノ酸残基、あるいはヌクレオチド配列内のヌクレオチド、あるいは配列の遠位端のいずれかまたは両方の化学的誘導体化から生じる配列であって、そしてこうした修飾がこの配列の活性に影響を及ぼさない(特に損なわない)、前記配列を意味する。選択されるターゲット抗原に特異性を有する結合部位の場合、抗体の機能的に活性である変異体は、なお、あらかじめ決定された結合特異性を有するであろうが、これを変化させてもよく、例えば特定のエピトープに対する優れた特異性、アフィニティ、アビディティ、KonまたはKoff速度等を変化させてもよい。特に、本発明の抗体の機能的に活性である変異体は、本明細書にさらに記載するように、黄色ブドウ球菌のHlaおよび少なくとも1つの二成分毒素に結合する、多重特異性結合部位を有する。
機能的に活性である変異体は、例えば親抗体の配列を変化させることによって得られることも可能であるが、結合部位に加えて抗体領域内に修飾を含む抗体、あるいは抗原結合を損なわず、そして好ましくは、黄色ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌毒素をターゲットとする特異的結合アッセイまたは機能試験によって決定されるように、特定の強度で、例えば実質的に同じ生物学的活性で、黄色ブドウ球菌のLukGH複合体に結合し、そして/または黄色ブドウ球菌を中和する能力を含めて、親抗体と類似の生物学的活性を有するであろう修飾によって、親抗体に由来する抗体がある。用語「実質的に同じ生物学的活性」は、本明細書において、親抗体に関して決定されるような活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも100%、または少なくとも110%、または少なくとも120%、または少なくとも130%、または少なくとも140%、または少なくとも150%、または少なくとも160%、または少なくとも170%、または少なくとも180%、または少なくとも190%、例えば最大200%である、実質的に同じ活性によって示されるような活性を指す。
好ましい態様において、親抗体の機能的に活性である変異体は
a)抗体の生物学的活性断片であり、該断片は、分子の配列の少なくとも50%を含み、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%を含み;
b)少なくとも1つのアミノ酸置換、付加および/または欠失によって、抗体から得られ、ここで、機能的に活性である変異体は、分子またはその部分に配列同一性を有し、例えば少なくとも50%の配列同一性、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%の配列同一性を有し;そして/または
c)抗体またはその機能的に活性である変異体、およびポリペプチドまたはヌクレオチド配列に対して異種であるさらに少なくとも1つのアミノ酸またはヌクレオチドからなる。
本発明の1つの好ましい態様において、本発明記載の抗体の機能的に活性である変異体は、本質的には、上記の変異体と同一であるが、異なる種の相同配列から得られている点で、それぞれ、そのポリペプチドまたはヌクレオチド配列とは異なる。これらは、天然存在変異体または類似体と称される。
用語「機能的に活性である変異体」にはまた、天然存在アレル変異体、ならびに突然変異体または任意の他の非天然存在変異体も含まれる。当該技術分野に知られるように、アレル変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を本質的には改変しない、1またはそれより多いアミノ酸の置換、欠失または付加を有すると特徴付けられる、(ポリ)ペプチドの代替型である。
機能的に活性である変異体は、例えば1またはそれより多い点突然変異によって、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列中の配列改変によって得られることも可能であり、ここで、配列改変は、本発明と組み合わせて用いられた際、改変されないポリペプチドまたはヌクレオチド配列の機能を保持する。こうした配列改変には、限定されるわけではないが、(保存的)置換、付加、欠失、突然変異および挿入が含まれうる。
特定の機能的に活性である変異体は、CDR変異体である。CDR変異体には、CDR領域中の少なくとも1つのアミノ酸によって修飾されたアミノ酸配列が含まれ、ここで、前記修飾は、アミノ酸配列の化学的または部分的改変であってもよく、修飾は、変異体が非修飾配列の生物学的特性を保持することを可能にする。CDRアミノ酸配列の部分的改変は、1から数個のアミノ酸、例えば1、2、3、4または5アミノ酸の欠失または置換によるか、あるいは1から数個のアミノ酸、例えば1、2、3、4または5アミノ酸の付加または挿入、あるいは1から数個のアミノ酸、例えば1、2、3、4または5アミノ酸の化学的誘導体化、あるいはその組み合わせであってもよい。アミノ酸残基における置換は、保存的置換、例えば1つの疎水性アミノ酸の別の疎水性アミノ酸に関する置換であってもよい。
保存的置換は、側鎖および化学的特性において関連するアミノ酸ファミリー内で行われる置換である。こうしたファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、非荷電極性側鎖、小側鎖、巨大側鎖等を含むアミノ酸である。
点突然変異は、特に、1またはそれより多い単一の(非保存的)または二つ組のアミノ酸の異なるアミノ酸に関する置換または交換、欠失または挿入において、操作されないアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列の発現を生じる、ポリヌクレオチドの操作と理解される。
好ましい点突然変異は、同じ極性および/または電荷のアミノ酸の交換を指す。これに関連して、アミノ酸は、64の3つ組コドンによってコードされる20の天然存在アミノ酸を指す。これらの20アミノ酸は、中性電荷、陽性電荷、および陰性電荷を有するものに分けられうる。
「中性」アミノ酸を、それぞれの3文字および1文字コードおよび極性とともに、以下に示す:
アラニン:(Ala、A)非極性、中性;
アスパラギン:(Asn、N)極性、中性;
システイン:(Cys、C)非極性、中性;
グルタミン:(Gln、Q)極性、中性;
グリシン:(Gly、G)非極性、中性;
イソロイシン:(Ile、I)非極性、中性;
ロイシン:(Leu、L)非極性、中性;
メチオニン:(Met、M)非極性、中性;
フェニルアラニン:(Phe、F)非極性、中性;
プロリン:(Pro、P)非極性、中性;
セリン:(Ser、S)極性、中性;
スレオニン:(Thr、T)極性、中性;
トリプトファン:(Trp、W)非極性、中性;
チロシン:(Tyr、Y)極性、中性;
バリン:(Val、V)非極性、中性;および
ヒスチジン:(His、H)極性、陽性(10%)中性(90%)。
「陽性」荷電アミノ酸は以下の通りである:
アルギニン:(Arg、R)極性、陽性;および
リジン:(Lys、K)極性、陽性。
「陰性」荷電アミノ酸は以下の通りである:
アスパラギン酸:(Asp、D)極性、陰性;および
グルタミン酸:(Glu、E)極性、陰性。
「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、本明細書記載の抗体配列および相同体に関して、配列を整列させ、そして最大配列同一性パーセントを達成するために、必要であればギャップを導入した後、そしていかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、特定のポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。当業者は、整列を測定するための適切なパラメータを決定することが可能であり、これには、比較しようとする配列の全長に渡って、最大整列を達成するために必要ないかなるアルゴリズムも含まれる。
抗体変異体は、機能性であり、そして機能的同等物として働きうる、例えば特定のターゲットに結合し、そして機能的特性を持つ、例えば糖鎖工学によって産生される、特異的グリコシル化パターンを持つ相同体、類似体、断片、修飾または変異体を含むと特に理解される。本明細書に記載するような好ましい変異体は、抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは黄色ブドウ球菌を中和する能力を有し、そして/または防御抗体である。
本発明の抗体は、Fcエフェクター機能を示してもよいし、または示さなくてもよい。作用様式は、主に、Fcエフェクター機能を持たない中和抗体によって仲介されるが、Fcは、補体を補充し、そして免疫複合体の形成を通じて、循環からのターゲット抗原、例えば毒素の除去を補助することも可能である。
特異的抗体は、活性Fc部分を欠き、したがって、抗体のFc部分を含有しないか、またはFcガンマ受容体結合部位を含有しない抗体ドメインで構成されるかいずれかであってもよいし、あるいは例えばFcエフェクター機能を減少させる、特にADCCおよび/またはCDC活性を無効にするかまたは減少させる修飾によって、Fcエフェクター機能を欠く抗体ドメインを含んでもよい。代替抗体を操作して、Fcエフェクター機能を増加させる、特にADCCおよび/またはCDC活性を増進させる修飾を取り込むことも可能である。
こうした修飾は、突然変異誘発、例えばFcガンマ受容体結合部位の突然変異によって、あるいは抗体形式のADCCおよび/またはCDC活性に干渉する誘導体または剤によって、達成可能であり、こうしてFcエフェクター機能の減少または増加を達成することも可能である。
Fcエフェクター機能の有意な減少は、典型的には、ADCCおよび/またはCDC活性によって測定されるような、非修飾(野生型)形式の10%未満のFcエフェクター機能、好ましくは5%未満のFcエフェクター機能を指すと理解される。
Fcエフェクター機能の有意な増加は、典型的には、ADCCおよび/またはCDC活性によって測定されるような、非修飾(野生型)形式の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%または50%のFcエフェクター機能の増加を指すと理解される。
用語「糖鎖操作(glycoengineered)」変異体は、抗体配列に関して、糖鎖操作の結果として、修飾された免疫原性特性、ADCCおよび/またはCDCを有するグリコシル化変異体を指すものとする。すべての抗体は、重鎖定常領域において、保存された位で炭水化物構造を含有し、各アイソタイプは、N連結炭水化物構造の異なるアレイを所持し、これはタンパク質アセンブリ、分泌または機能活性に多様に影響を及ぼす。IgG1タイプの抗体は、各CH2ドメインのAsn297に保存されたN連結グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に付着した2つの複雑な二分岐オリゴ糖は、CH2ドメインの間に包埋され、ポリペプチド主鎖との広範な接触を形成し、そしてその存在は、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を仲介するために必須である。例えば、N297の例えばAへの突然変異、またはT299を通じて、N297のN−グリカンを除去すると、典型的には、ADCCが減少した無グリコシル化抗体形式が生じる。
抗体グリコシル化の大きな相違は細胞株間で生じ、そして異なる培養条件下で増殖する所定の細胞株に関してであってもわずかな相違が見られる。細菌細胞における発現は、典型的には、無グリコシル化抗体を提供する。テトラサイクリンが制御する、二分GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)の発現を伴うCHO細胞は、改善されたADCC活性を有すると報告された(Umanaら, 1999, Nature Biotech. 17:176−180)。宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生中のグリコシル化に影響を及ぼす要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素添加、pH、精製スキーム等が含まれる。
用語「抗原結合部位」または「結合部位」は、抗原結合に関与する抗体部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および/または軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域、あるいはその可変ドメインのアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と称される、重鎖および軽鎖のV領域内の3つの非常に多様なストレッチは、フレームワーク領域として知られる、より保存された隣接ストレッチの間に挿入される。抗原結合部位は、結合するエピトープまたは抗原の三次元表面に相補的な表面を提供し、そして超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。CDR中に取り込まれる結合部位は、本明細書において、また、「CDR結合部位」とも称される。
用語「抗原」は、本明細書において、用語「ターゲット」または「ターゲット抗原」と交換可能に用いられ、全ターゲット分子または抗体結合部位によって認識されるこうした分子の断片を指すものとする。特に、免疫学的に適切である、一般的に「エピトープ」、例えばB細胞エピトープまたはT細胞エピトープと称される、抗原の部分構造、例えばポリペプチドまたは炭水化物構造は、こうした結合部位によって認識されうる。
用語「エピトープ」は、本明細書において、特に、抗体の結合部位に対する特異的結合パートナーを完全に構成してもよいし、または特異的結合パートナーの一部であってもよい、分子構造を指すものとする。エピトープは、炭水化物、ペプチド性構造、脂肪酸、有機、生化学的または無機物質またはその誘導体、およびその任意の組み合わせのいずれで構成されてもよい。エピトープが、ペプチド性構造、例えばペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質で構成される場合、通常、これには、少なくとも3アミノ酸、好ましくは5〜40アミノ酸、そしてより好ましくは約10〜20の間のアミノ酸が含まれるであろう。エピトープは直鎖またはコンホメーションエピトープのいずれかであってもよい。直鎖エピトープは、ポリペプチドまたは炭水化物鎖の一次配列の単一セグメントで構成される。直鎖エピトープは近接していてもまたは重複していてもよい。コンホメーションエピトープは、ポリペプチドをフォールディングして、三次構造を形成することによって寄せ集められたアミノ酸または炭水化物で構成され、そしてアミノ酸は、直鎖配列においては、互いに必ずしも隣接しない。特に、そしてポリペプチド抗原に関しては、コンホメーションエピトープまたは不連続エピトープは、一次配列中では分離されているが、ポリペプチドが天然タンパク質/抗原にフォールディングした際には分子表面上の一貫した構造に集合する、2またはそれより多い分散したアミノ酸残基の存在によって特徴付けられる。
本明細書において、用語「エピトープ」は、特に、抗体に認識される単一のエピトープ、または各々、交差反応性抗体によって認識されるエピトープ変異体を含むエピトープ混合物を指すものとする。
特に、LukGH複合体をターゲティングする抗体によって認識されるエピトープは、LukGのLukHへの結合によって形成される抗原性領域内に位置し、例えばLukHおよびLukGの両方と接触するタンパク質ドメイン、例えばリムまたはキャップドメインであるが、なおアクセス可能なドメイン上に位置し、そのため、本発明の抗体によって特に認識されるLukGH複合体のエピトープは、溶液中で二量体またはオリゴマーを形成するよう複合体化された際に、LukGおよびLukH成分によって形成され、そして抗体によって結合されるために曝露されているかまたはアクセス可能である。
特に、エピトープは、感受性細胞の受容体と、そうでなければ接触するタンパク質ドメイン上に位置し、そして可溶性LukGH複合体への抗体結合に際して、推定上の細胞受容体への可溶性LUKGH複合体の結合を阻害する。したがって、LukGH複合体のこうしたエピトープに対して向けられる抗体は、受容体結合に競合して、LukGH複合体に結合するであろう。
特に、エピトープは、可溶性LukGH複合体のみの上でアクセス可能であり、LukGHが感受性細胞に結合した際にはアクセス可能でないタンパク質ドメイン上に位置する。
用語「発現」は、以下のように理解される。発現産物、例えば本明細書に記載するような抗体の望ましいコード配列を含有する核酸分子、および作動可能であるように連結された制御配列、例えばプロモーターを、発現目的のために用いてもよい。これらの配列で形質転換されたかまたはトランスフェクションされた宿主は、コードされるタンパク質を産生可能である。形質転換を達成するため、発現系はベクター中に含まれていてもよい;が、適切なDNAはまた宿主染色体内に組み込まれてもよい。特に、該用語は、例えばベクターによって所持され、そして宿主細胞に導入される、外来(foreign)DNAによってコードされるタンパク質の発現のために適切な条件下にある、宿主細胞および適合するベクターを指す。
コードDNAは、例えば抗体のような特定のポリペプチドまたはタンパク質のための特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始するか、制御するか、あるいは別の方式で仲介するかまたは調節するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子由来であってもよいし、または異なる遺伝子由来であってもよく、そして同じまたは異なる生物由来であってもよい。組換えクローニングベクターには、しばしば、クローニングまたは発現のための1またはそれより多い複製系、宿主における選択のための1またはそれより多いマーカー、例えば抗生物質耐性、および1またはそれより多い発現カセットが含まれるであろう。
「ベクター」は、本明細書において、適切な宿主生物において、クローニングされた組換えヌクレオチド配列、すなわち組換え遺伝子の転写、およびそのmRNAの翻訳に必要な、DNA配列と定義される。
「発現カセット」は、定義される制限部位でベクター内に挿入可能な発現産物をコードする、DNAコード配列またはDNAセグメントを指す。カセット制限部位は、適切なリーディングフレームでのカセットの挿入を確実にするよう設計される。一般的に、外来DNAは、ベクターDNAの1またはそれより多い制限部位で挿入され、そして次いで、ベクターによって、伝達性ベクターDNAとともに、宿主細胞内に運ばれる。挿入されたまたは付加されたDNAを有するDNAのセグメントまたは配列、例えば発現ベクターはまた、「DNA構築物」とも称されうる。
発現ベクターは発現カセットを含み、そしてさらに通常、宿主細胞またはゲノム組込み部位における自立複製起点、1またはそれより多い選択可能マーカー(例えばアミノ酸合成遺伝子、あるいは抗生物質、例えばゼオシン、カナマイシン、G418またはハイグロマイシンに対する耐性を与える遺伝子)、いくつかの制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列および転写終結因子を含み、これらの成分は、機能可能であるように共に連結される。用語「ベクター」には、本明細書において、自律性複製ヌクレオチド配列、ならびにゲノム組込みヌクレオチド配列が含まれる。ベクターの一般的なタイプは「プラスミド」であり、これは一般的に、さらなる(外来)DNAを容易に受け入れ可能であり、そして適切な宿主細胞内に容易に導入可能である、二本鎖DNAの自己完結型分子である。プラスミドベクターは、しばしば、コードDNAおよびプロモーターDNAを含有し、そして外来DNAを挿入するのに適した1またはそれより多い制限部位を有する。特に、用語「ベクター」または「プラスミド」は、宿主を形質転換し、そして導入した配列の発現(例えば転写および翻訳)を促進するように、DNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)が宿主細胞内に導入可能であるビヒクルを指す。
用語「宿主細胞」は、本明細書において、特定の組換えタンパク質、例えば本明細書記載の抗体を産生するよう形質転換された一次対象細胞、およびその任意の子孫を指すものとする。すべての子孫が親細胞と正確に同一ではないが(計画的なまたは偶発性の突然変異、あるいは環境の相違による)、こうした改変された子孫は、子孫が元来形質転換された細胞のものと同じ機能性を保持する限り、これらの用語に含まれることが理解されなければならない。用語「宿主細胞株」は、組換え抗体などの組換えポリペプチドを産生する組換え遺伝子を発現するために用いられるような宿主細胞の細胞株を指す。用語「細胞株」は、本明細書において、長期間に渡って増殖する能力を獲得した、特定の細胞タイプの樹立されたクローンを指す。こうした宿主細胞または宿主細胞株を細胞培養中に維持し、そして/またはこれを培養して組換えポリペプチドを産生することも可能である。
用語「LukGH複合体」は、本明細書において、1:1二量体、または任意の他の比のLukGおよびLukH成分を含む、二量体またはオリゴマー、好ましくは少なくとも1つのLukGおよび少なくとも1つのLukH成分、あるいは少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つのLukGまたはLukH成分各々またはいずれか、あるいはLukGおよびLukH成分の両方を含む複合体を指すものとする。LukGH二量体は、1つのLukGおよび1つのLukH分子を含み、二量体複合体を形成するよう結合している、LukGH複合体と理解される。LukGH四量体は、2つのLukGおよび2つのLukH分子を含み、四量体複合体を形成するよう結合している、LukGH複合体と理解される。LukGH六量体は、3つのLukGおよび3つのLukH分子を含み、六量体複合体を形成するよう結合している、LukGH複合体と理解される。LukGH八量体は、4つのLukGおよび4つのLukH分子を含み、八量体複合体を形成するよう結合している、LukGH複合体と理解される。三量体または五量体LukGH複合体は、典型的には、1:1とは異なる比、例えば1つのLukGおよび2つのLukH分子、またはその逆を含み、三量体を形成するか、あるいは2つのLukGおよび3つのLukH分子、またはその逆を含み、五量体を形成する。
組成物、例えば、抗原またはエピトープを含む、本明細書において「免疫原」とも称される免疫原性組成物、あるいは本明細書に記載するようなワクチンに対する「免疫反応」は、関心対象の組成物またはワクチンに対する、細胞および/または抗体仲介性免疫反応の、宿主または被験体における発展である。通常、こうした反応は、関心対象の組成物またはワクチン中に含まれる単数または複数の抗原に対して特異的に向けられる、被験体が産生する抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞からなる。
「防御免疫反応」は、非免疫集団のものに比較して、誘導されたかまたは天然の感染または毒素曝露の、有意により優れた結果を提供する免疫反応と理解される。毒素に対する防御免疫反応は、主に、高いアフィニティを有する、例えば10−8M未満のKdを持つ中和抗体によって仲介される。毒素中和の利点は、ターゲット細胞の保護および炎症の防止である。Fc仲介性免疫複合体形成は、循環から毒素を除去する(RES細胞を介する)ことによってもまた寄与しうる。
免疫原または免疫原性組成物は、通常、抗原またはエピトープおよびキャリアーを含み、キャリアーは特にアジュバントを含んでもよい。用語「アジュバント」は、抗原と組み合わせて投与された際、抗原に対する免疫反応を増大し、そして/または再指示するが、単独で投与された際には、抗原に対する免疫反応を生じない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球補充、Bおよび/またはT細胞刺激、ならびにマクロファージ刺激を含む、いくつかの機構によって、免疫反応を増大させうる。例示的なキャリアーは、リポソームまたは陽イオン性ペプチドであり;例示的なアジュバントは、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム、MF59またはCpGオリゴヌクレオチドである。
用語「単離された」または「単離」は、本明細書において、核酸、抗体または他の化合物に関して、「実質的に純粋な」型で存在するように、こうした化合物が天然に会合するであろう環境から十分に分離されている化合物を指すものとする。「単離された」は、他の化合物または物質との人工的なまたは合成混合物、あるいは基本的活性に干渉せず、そして例えば不完全な精製のために存在しうる不純物の存在の排除を必ずしも意味しない。特に、本発明の単離された核酸分子はまた、化学的に合成されたものも含むよう意図される。
本発明の核酸に関連して、用語「単離された核酸」が時に用いられる。この用語は、DNAに適用された際、由来する生物の天然存在ゲノムにおいて直ちに隣接する配列から分離されたDNA分子を指す。例えば、「単離された核酸」は、ベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクター内に挿入されたか、あるいは原核または真核細胞または宿主生物のゲノムDNA内に組み込まれたDNA分子を含むことも可能である。RNAに適用された際、用語「単離された核酸」は、主に、上に定義するような単離されたDNA分子にコードされるRNA分子を指す。あるいは、該用語は、天然状態で(すなわち細胞または組織において)会合するであろう他の核酸から十分に分離されているRNA分子を指すことも可能である。「単離された核酸」(DNAまたはRNAいずれか)は、さらに、生物学的または合成的手段によって直接産生され、そしてその産生中に存在する他の成分から分離されている分子を指すことも可能である。
ポリペプチドまたはタンパク質、例えば本発明の抗体またはエピトープに関連して、用語「単離された」は、特に、例えば天然環境において、あるいはこうした調製がin vitroまたはin vivoで実施される組換えDNA技術による場合、調製される環境(例えば細胞培養)において、ともに見られる他の化合物などの、天然に会合している物質を含まないかまたは実質的に含まない、化合物を指す。単離された化合物を、希釈剤またはアジュバントとともに配合してもよく、そしてなお、単離される実際的な目的のため、例えば、診断または療法に用いる際には、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤と混合してもよい。
特に、本発明の単離LukGH複合体は、生理学的表面、例えばLukGおよびLukHが固定されて、こうしたLukGH二成分毒素による細胞溶解に感受性である細胞の表面上に、孔形成性LukGH二成分毒素を形成するであろう細胞表面から単離される。
用語「中和性」または「中和」は、本明細書において、最も広い意味で用いられ、そして中和が達成される機構に関わらず、病原体、例えば黄色ブドウ球菌に、被験体が感染するのを阻害するか、または病原体が強力なタンパク質毒素を産生することによって感染を促進するのを阻害するか、または毒素が被験体においてターゲット細胞を損傷するのを阻害する、任意の分子を指す。中和は、例えば、ターゲット細胞上の同族受容体と黄色ブドウ球菌毒素(単数または複数)の結合および/または相互作用を阻害する抗体によって、達成可能である。特定の態様において、本明細書記載の抗体は、毒素活性を中和させることも可能であり、ここで、毒素およびターゲット細胞、例えば赤血球の間の相互作用のin vivoまたはin vitro効果は、減少するかまたは排除される。中和はさらに、活性毒素の形成を阻害することによって、例えば黄色ブドウ球菌二成分細胞溶解素の場合、SおよびF成分の結合、または細胞膜におけるオリゴマー性孔の形成の阻害によって、起こることも可能である。
細胞溶解性毒素に対する抗体の中和能は、典型的には、所定の毒素に感受性である細胞の増加した生存度または機能性を測定することによって、標準アッセイにおいて決定される。中和は、抗体を含むおよび含まない生存細胞のパーセントによって表されうる。非常に強力な抗体に関しては、中和強度を表す好ましい方式は、抗体/毒素モル比であり、ここで、より低い値はより高い強度に対応する。1未満の値は非常に高い強度を定義する。
用語「交差中和性」は、本明細書において、USA300クローンのLukGH複合体および少なくとも1つのLukGH変異体を含む、LukGH複合体の主要な変異体の中和を指すものとする。
用語「黄色ブドウ球菌」または「S.アウレウス」または「病原性黄色ブドウ球菌」は、以下のように理解される。黄色ブドウ球菌細菌は、通常、人間および動物の皮膚上または鼻中に見られる。該細菌は、切り傷または他の創傷を通じて体内に進入しない限り、一般的には無害である。典型的には、感染は、健康な人々においては、重要でない皮膚の問題である。歴史的には、感染は、広域抗生物質、例えばメチシリンによって治療された。しかし、現在、メチシリンおよび他のベータ−ラクタム抗生物質、例えばペニシリンおよびセファロスポリンに耐性である特定の株が出現してきている。これらはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(また、多剤耐性黄色ブドウ球菌、または「MRSA」としても知られる)と称される。
MRSAを含む黄色ブドウ球菌感染は、一般的には、面疱、おできまたはクモの咬傷に似た小さな赤い隆起として始まる。これらの隆起または傷(blemishes)は、急速に、外科的排出を必要とする、深く有痛性の膿瘍に変わりうる。細菌は時に皮膚に限定されたままである。場合によって、これらは体の深部へと掘り進み、皮膚、軟組織、骨、関節、外科的創傷、血流、心臓弁、肺、または他の臓器を含む、広い範囲のヒト組織において、潜在的に生命の危険を伴う感染を引き起こしうる。したがって、黄色ブドウ球菌感染は、潜在的に致死性の疾患、例えば壊死性筋膜炎、心内膜炎、敗血症、毒素性ショック症候群、および壊死性肺炎を含む多様な型の肺炎、ならびにフルンケル症およびカルブンケル症における毒素産生である、関連する疾患状態を生じうる。MRSA感染は、患者が開放性創傷、侵襲性デバイス、および弱った免疫系のリスクにあるか、またはこうしたものに対する傾向があり、そしてしたがって、一般社会よりも感染のリスクがより大きい、病院または老人ホーム設定においては、特に厄介である。
黄色ブドウ球菌毒素を中和する抗体は、病原体および病原性反応に干渉し、したがって、感染を限定するかまたは防止し、そして/またはこうした感染から生じる疾患状態を寛解させるか、あるいは黄色ブドウ球菌病変形成、特に肺炎病変形成を阻害することが可能である。これに関連して、「防御抗体」は、本明細書において、能動免疫または受動免疫において観察される感染性病原体に対する免疫を担う中和抗体と理解される。特に、本明細書に記載するような防御抗体は、分泌される病原性因子(外毒素)の毒性効果(例えば細胞溶解、ターゲット細胞による炎症誘発性サイトカイン発現の誘導)を中和することが可能であり、そしてしたがって、黄色ブドウ球菌の病変形成能に干渉する。
用語「組換え」は、本明細書において、「遺伝子操作によって調製されるかまたは遺伝子操作の結果」を意味するものとする。組換え宿主は、特に、発現ベクターまたはクローニングベクターを含むか、あるいは特に宿主に対して外来性であるヌクレオチド配列を使用して、組換え核酸配列を含有するよう遺伝子操作されている。組換えタンパク質は、宿主においてそれぞれの組換え核酸を発現することによって産生される。用語「組換え抗体」には、本明細書において、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるかまたはトランス染色体性(transchromosomal)である動物(例えばマウス)あるいはそこから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う、任意の他の手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるかまたは単離される抗体が含まれる。こうした組換え抗体は、例えば抗体成熟中に生じる再編成および突然変異を含むよう操作される抗体を含む。
本明細書において、用語「特異性」または「特異的結合」は、分子の不均一集団において、関心対象の同族リガンドの決定要因である結合反応を指す。したがって、明示される条件(例えばイムノアッセイ条件)下で、抗体は,特定のターゲットに特異的に結合し、そして試料中に存在する他の分子には、有意な量では結合しない。特異的結合は、結合が、選択されるように、ターゲット同一性、高い、中程度または低い結合アフィニティまたはアビディティに関して選択性であることを意味する。選択的結合性は、通常、結合定数または結合動力学が少なくとも10倍異なる場合、好ましくは相違が少なくとも100倍である場合、そしてより好ましくは少なくとも1000倍である場合、達成される。
該用語はまた、例えば抗体が、いくつかの抗原に交差反応性である特定のエピトープに特異的である場合にも適用可能であり、この場合、特異的抗体は、交差反応性エピトープを所持する多様な抗原に結合可能であろう。抗体のこうした結合部位または交差反応性エピトープに結合する特異性を持つ抗体はまた、それぞれ、多重特異性または交差特異性結合部位および抗体とも称される。例えば、抗体は、エピトープ内の配列相同性および/または構造的類似性を持ち、本質的に同じ構造のコンホメーションエピトープを提供する、多くの異なる抗原と交差反応性である、例えば少なくとも黄色ブドウ球菌のHlaおよび二成分毒素に交差反応性であるエピトープに特異的に結合する、多重特異性結合部位を有してもよい。
交差反応性結合配列に抗体が示す、抗体の免疫特異性、その結合能および付随するアフィニティは、抗体が免疫反応する(結合する)交差反応性結合配列によって決定される。交差反応性結合配列特異性は、少なくとも部分的に、抗体の免疫グロブリンの重鎖可変領域のアミノ酸残基によって、および/または軽鎖可変領域アミノ酸残基配列によって、定義されうる。
用語「同じ特異性を有する」、「同じ結合部位を有する」または「同じエピトープに結合する」の使用は、同等のモノクローナル抗体が、同じまたは本質的に同じ、すなわち類似の免疫反応(結合)特性を示し、そしてあらかじめ選択されたターゲット結合配列への結合に関して競合することを示す。特定のターゲットに対する抗体分子の相対的特異性は、競合アッセイによって、例えばHarlowら, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988に記載されるように、相対的に決定可能である。
用語「被験体」は、本明細書において、温血哺乳動物、特にヒトまたは非ヒト動物を指すものとする。MRSAは、非常に重要なヒト病原体であり、これはまた、獣医学においても新たに発生している懸念である。該細菌は、広い範囲の非ヒト動物種に存在する。したがって、用語「被験体」はまた、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、ブタおよび家禽を含む動物もまた特に指す可能性もある。特に、本発明の医学的使用またはそれぞれの治療法は、黄色ブドウ球菌感染に関連する疾患状態の予防または治療が必要な被験体に適用される。被験体は、黄色ブドウ球菌感染のリスクがあるか、あるいは初期または後期疾患を含む疾患を患っている患者であってもよい。用語「患者」には、予防的または療法的治療のいずれかを受けているヒトおよび他の哺乳動物被験体が含まれる。用語「治療」は、したがって、予防的および療法的治療の両方を含むよう意図される。
被験体は、例えば、黄色ブドウ球菌疾患状態の予防または療法のために治療される。特に、感染の、あるいはこうした疾患または疾患再発を発展させるかいずれかのリスクがある被験体、あるいはこうした感染および/またはこうした感染に関連する疾患を患う被験体が治療される。
特に、用語「予防」は、病変形成の開始の防止または病変形成のリスクを減少させる予防的手段を含むよう意図される、防御手段を指す。
特に、本明細書に記載するような被験体における疾患状態を治療するか、防止するか、または遅延させるための方法は、状態の原因病原体としての黄色ブドウ球菌の病変形成に干渉することにより、ここで病変形成には、例えば特定の病原性因子または毒素による、被験体の細胞膜上に孔を形成する工程が含まれる。
黄色ブドウ球菌の病原性は、細菌が真核細胞膜に接着することを可能にする表面会合タンパク質、オプソニン化貪食作用から細菌を保護する莢膜多糖類、およびいくつかの外毒素を含む、多くの病原性因子の組み合わせによる。黄色ブドウ球菌は、主に、分泌される病原性因子、例えば溶血素、エンテロトキシンおよび毒素性ショック症候群毒素の産生を通じて疾患を引き起こす。これらの分泌される病原性因子は、宿主における多くの免疫学的機構を不活性化させることによって、免疫反応を抑制し、そして組織破壊を引き起こし、そして感染確立を補助する。後者は、孔形成毒素群によって達成され、このうち最も顕著なものが、黄色ブドウ球菌肺炎の重要な病原性因子であるHlaである。
黄色ブドウ球菌は、この細菌が異なる種類の免疫細胞、特に体の一次防御系を構成する白血球の下位集団による攻撃を中和し、そしてこれに抵抗することを可能にする、多様なアレイのさらなる病原性因子および毒素を産生する。これらの病原性因子および毒素の産生は、黄色ブドウ球菌が感染状態を維持することを可能にする。これらの病原性因子のうち、黄色ブドウ球菌は、いくつかの二成分ロイコトキシンを産生し、これは、2つの関連しないタンパク質またはサブユニットの相乗作用によって、宿主防御細胞および赤血球の膜を損傷する。これらの二成分毒素のうち、ガンマ溶血素(HlgABおよびHlgCB)およびパントン−バレンタイン・ロイコシジン(PVL)が最もよく特徴付けられている。
哺乳動物細胞に対するロイコシジンの毒性は、二成分の作用を伴う。最初のサブユニットはクラスS成分と称され、そして第二のサブユニットはクラスF成分と称される。SおよびFサブユニットは相乗的に作用して、単球、マクロファージ、樹状細胞および好中球(集合的に、食細胞として知られる)を含む白血球上に孔を形成する。黄色ブドウ球菌によって産生される二成分ロイコトキシンのレパートリーは、FおよびS成分の同族および非同族対、例えばLukGHを含むことが知られる。
用語「実質的に純粋」または「精製された」は、本明細書において、少なくとも50%(w/w)、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の化合物、例えば核酸分子または抗体を含む調製物を指すものとする。純度は、化合物に適した方法によって測定される(例えばクロマトグラフィ法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析等)。
用語「療法的に有効な量」は、本明細書において、用語、化合物、例えば本発明の抗体または免疫原の「有効量」または「十分量」のいずれとも交換可能に用いられ、被験体に投与された際、有益なまたは望ましい、臨床的な結果を含む結果を達成するのに十分な量または活性であり、そしてこうしたものとして、有効量またはその同義語は、適用される背景に応じる。
有効量は、こうした疾患または障害を治療するか、防止するかまたは阻害するのに十分である化合物の量を意味するよう意図される。疾患の背景において、本明細書に記載するような抗体の療法的有効量は、特に、黄色ブドウ球菌または黄色ブドウ球菌病変形成の阻害から利益を受ける、疾患または状態を治療するか、調節するか、減弱させるか、逆転させるか、または影響を及ぼすように用いられる。
こうした有効量に対応するであろう化合物の量は、多様な要因、例えば所定の薬剤または化合物、薬学的配合物、投与経路、疾患または障害のタイプ、治療される被験体または宿主の同一性等に応じて多様であろうが、にもかかわらず、当業者によってルーチンに決定可能である。
本発明の抗体または免疫原を予防的に用いて、黄色ブドウ球菌感染の開始を阻害するか、または黄色ブドウ球菌感染、特に抵抗性であることが知られるMRSAなどの黄色ブドウ球菌感染、または特定の被験体の場合、他の慣用的な抗生物質療法での治療に抵抗性であることが立証されているものを治療することも可能である。
治療の必要があるヒト患者に提供されるような、本明細書記載の抗体の療法的有効量は、特に、0.5〜500mg、好ましくは1〜400mg、さらにより好ましくは最大300mg、最大200mg、最大100mgまたは最大10mgの範囲であることも可能であるが、例えば、急性疾患状態を治療するために、より高い用量が示されうる。
さらに、療法的有効量の本発明の抗体での被験体の治療または防止投与計画は、単回投与からなることも可能であるし、あるいは一連の適用を含んでもよい。例えば、抗体を少なくとも1年に1回、少なくとも半年に1回または少なくとも1ヶ月に1回投与してもよい。しかし、別の態様において、所定の治療のため、週あたり約1回からほぼ毎日の投与で、抗体を被験体に投与してもよい。治療期間の長さは、多様な要因、例えば疾患の重症度、急性または慢性疾患であるか、患者の年齢、抗体形式の濃度および活性に応じる。治療または予防に用いられる有効投薬量は、特定の治療または予防投与計画の経過に渡って増加させてもまたは減少させてもよいこともまた、認識されるであろう。投薬量変化は、当該技術分野に知られる標準的診断アッセイによって生じ、そして明らかになりうる。いくつかの例では、長期投与が必要でありうる。
黄色ブドウ球菌感染と関連する疾患状態を発展させるリスクがある患者に提供されるものなどの、本明細書に記載するような免疫原の有効量は、特に、用量あたり、1〜15mg/kgの範囲であることも可能である。
例えば、プライム−ブースト免疫スキームにしたがって、免疫原を最初の用量として投与して、その後、特定の時間枠内で、1またはそれより多いブースター用量(単数または複数)を投与して、黄色ブドウ球菌感染に対する長期持続性の有効な免疫反応を誘導してもよい。好ましいワクチン接種スケジュールは、3回の用量、例えば第0日の最初の用量、第5〜40日の第二の用量、および第10〜100日の第三の用量、好ましくは第0日、第28日および第90日の投与を含むであろう。好ましい加速スケジュールにしたがって、投与は第0日、第7日および第14日であってもよい。加速スケジュールは、予防のため、例えば待機手術に直面している患者のために示されうる。通常、ミョウバンがアジュバントとして、例えばリン酸塩または水酸化物として、用いられる。
本発明の好ましい抗体は、前記LukGH複合体抗原に、高いアフィニティで、特に高いオンおよび/または低いオフ速度で、あるいは結合の高いアビディティで、特異的に結合する。抗体の結合アフィニティは、通常、解離定数(KdまたはKD)として知られる、抗原結合部位の半数が占有される抗体濃度に関して特徴付けられる。通常、結合剤は、Kd<10−8M、好ましくはKd<10−9Mの高アフィニティ結合剤と見なされ、さらにより好ましくはKdは<10−10Mである。
にもかかわらず、特定の好ましい態様において、抗原結合アフィニティは、例えば少なくとも2つの抗原に結合する際、例えば10−6未満であり、そして最大10−8MであるKdで、中程度のアフィニティである。
本発明にしたがって、好ましくは、必要であればアフィニティ成熟プロセスと組み合わせて、中程度のアフィニティの結合剤を提供してもよい。
アフィニティ成熟は、ターゲット抗原に対して増加したアフィニティを持つ抗体が産生されるプロセスである。本明細書に開示する、本発明の多様な態様にしたがって、アフィニティ成熟抗体を生成するため、当該技術分野で入手可能なアフィニティ成熟ライブラリーを調製し、そして/または用いる、任意の1またはそれより多い方法を使用してもよい。例示的なこうしたアフィニティ成熟法および使用、例えばランダム突然変異誘発、細菌ミューテーター株継代、部位特異的突然変異誘発、突然変異ホットスポットターゲティング、簡潔(parsimonious)突然変異誘発、抗体シャフリング、軽鎖シャフリング、重鎖シャフリング、CDR1および/またはCDR1突然変異誘発、ならびに本明細書に開示する本発明の多様な態様にしたがった方法および使用の実施を受け入れ可能なアフィニティ成熟ライブラリーを産生し、そして用いる方法には、例えば:Prasslerら(2009); Immunotherapy, Vol. 1(4), pp. 571−583; Sheedyら(2007), Biotechnol. Adv., Vol. 25(4), pp. 333−352; WO2012/009568; WO2009/036379; WO2010/105256; US2002/0177170; WO2003/074679に開示されるものが含まれる。
アミノ酸突然変異誘発、または免疫グロブリン遺伝子セグメントにおける体細胞突然変異の結果を含む、抗体の構造変化と共に、抗原に対する結合部位の変異体を産生し、そしてより高いアフィニティに関して選択する。アフィニティ成熟抗体は、親抗体より数対数倍(logfold)大きいアフィニティを示しうる。単一の親抗体をアフィニティ成熟に供してもよい。ターゲット抗原に対して類似の結合アフィニティを持つ抗体の別のプールは、アフィニティ成熟単一抗体またはこうした抗体のアフィニティ成熟プールを得るために変動する親構造と見なされうる。
本発明記載の抗体の好ましいアフィニティ成熟変異体は、結合アフィニティの少なくとも10倍増加、好ましくは少なくとも100倍増加を示す。親分子のそれぞれのライブラリーを使用する選択キャンペーンの経過において、結合アフィニティKd<10−8Mの特異的ターゲット結合特性を有する本発明の抗体を得るため、中程度の結合アフィニティを有する抗体いずれかとともにアフィニティ成熟を使用してもよい。あるいは、本発明にしたがった抗体のアフィニティ成熟によって、アフィニティをさらにより増加させて、10−9M未満、好ましくは10−10M未満、またはさらに10−11M未満、最も好ましくはピコモル範囲のKdに対応する高い値を得ることも可能である。
補体の活性化を使用する別の経路を通じて、食作用エフェクター細胞を活性化してもよい。微生物上の表面抗原に結合する抗体は、Fc領域との補体カスケードの最初の成分を誘引し、そして「古典的」補体系の活性化を開始する。これらは、食作用エフェクター細胞の刺激を生じ、これは最終的に、補体依存性細胞傷害性(CDC)によってターゲットを殺す。
特異的な態様にしたがって、本発明の抗体は、標準的ADCCまたはCDCアッセイにおいて測定されるように、免疫エフェクター細胞の存在下で、細胞傷害活性を有する。対照に比較した際、細胞溶解の割合に有意な増加があれば、ADCCまたはCDCアッセイのいずれかによって決定されるような細胞傷害活性を、本発明の抗体に関して示してもよい。ADCCまたはCDCに関連する細胞傷害活性は、好ましくは、絶対パーセント増加として測定され、これは好ましくは5%より高く、より好ましくは10%より高く、さらにより好ましくは20%より高い。
抗体ライブラリー、例えば酵母ディスプレイ抗体ライブラリーから抗体を選択するために本発明のLukGH複合体を用いてもよい。
望ましい中和特性を持つ抗体を同定するためのスクリーニング法は、ターゲット細胞への毒素結合の阻害、二量体またはオリゴマー形成の阻害、孔形成の阻害、細胞溶解の阻害、サイトカイン、リンホカイン、および任意の炎症誘発性シグナル伝達の誘導の阻害、ならびに/あるいは動物に対するin vivo効果(死亡、溶血、オーバーシュート炎症、臓器不全)の阻害であってもよい。例えば標準アッセイを用いて、望ましい毒素への直接結合、または別個のLukGまたはLukH(単量体)抗原の結合に比較したLukGH複合体への示差的結合に基づいて、反応性を評価してもよい。
ひとたび望ましい特性を持つ抗LukGH抗体が同定されたら、抗体によって認識される単数または複数のドミナントエピトープを決定してもよい。エピトープマッピングのための方法が、当該技術分野に周知であり、そして例えば、Epitope Mapping: A Practical Approach, WestwoodおよびHay監修, Oxford University Press, 2001に開示される。
エピトープマッピングは、抗体が結合するエピトープの同定に関する。タンパク質上のエピトープの位置を決定するために当業者に知られる多くの方法があり、これには、抗体−抗原複合体の結晶学分析、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドに基づくアッセイが含まれる。参照抗体と「同じエピトープに結合する」抗体は、本明細書において、以下の方式で理解される。2つの抗体が、同一であるかまたは立体的に重複するエピトープを認識する場合、抗体は、同じまたは本質的に同じ、あるいは実質的に同じエピトープと結合すると称される。2つの抗体が、同一のまたは立体的に重複するエピトープに結合するかどうかを決定するための、一般的に用いられる方法は、競合アッセイであり、該方法は、標識抗原または標識抗体のいずれかを用いて、多くの異なる形式のすべてに設置可能である。通常、抗原を96ウェルプレート上に固定して、そして放射性または酵素標識を用いて、非標識抗体が、標識抗体の結合を遮断する能力を測定する。
ひとたび、望ましい交差中和特性を持つ抗体が同定されたら、抗体断片を含むこうした抗体を、当該技術分野に周知の方法によって産生させることも可能であり、例えば、こうした方法には、ハイブリドーマ技術または組換えDNA技術が含まれる。
ハイブリドーマ法において、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを免疫して、免疫に用いたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するかまたは産生することが可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫してもよい。次いで、適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の産生に関してアッセイする。好ましくは、免疫沈降によって、またはin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を決定する。
組換えモノクローナル抗体は、例えば、必要な抗体鎖をコードするDNAを単離し、そして周知の組換え発現ベクター、例えば抗体配列をコードするヌクレオチド配列を含む本発明のプラスミドまたは発現カセット(単数または複数)を用いて、発現のためのコード配列で、組換え宿主細胞をトランスフェクションすることによって産生可能である。組換え宿主細胞は、上に記載するものなどの原核および真核細胞であることも可能である。
特定の側面にしたがって、遺伝子操作のためにヌクレオチド配列を用いて、抗体をヒト化するか、あるいは抗体のアフィニティまたは他の特性を改善することも可能である。例えば、抗体を臨床試験およびヒトにおける治療に用いる場合、定常領域を操作して、免疫反応を回避するために、ヒト定常領域により似せてもよい。抗体配列を遺伝子操作して、ターゲット毒素に対するより高いアフィニティおよび黄色ブドウ球菌に対するより高い有効性を得ることが望ましい可能性もある。当業者には、1またはそれより多いポリヌクレオチド変化を抗体に作製して、そしてなお、ターゲット毒素に対する結合能を維持することが可能であることが明らかであろう。
多様な手段による抗体分子産生は、一般的によく理解される。米国特許6331415(Cabillyら)は、例えば、単一細胞において、単一のベクターから、または2つの別個のベクターから、同時に重鎖および軽鎖が発現される、抗体の組換え産生のための方法を記載する。Wibbenmeyerら(1999, Biochim Biophys Acta 1430(2):191−202)、ならびにLeeおよびKwak(2003, J. Biotechnology 101 :189−198)は、大腸菌(E. coli)の別個の培養において発現されるプラスミドを用いた、別個に産生される重鎖および軽鎖からのモノクローナル抗体の産生を記載する。抗体産生に適した多様な他の技術は、例えば、Harlowら, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)に提供される。
別の側面において、本発明は、本発明の組換え抗体の産生のためにコードする配列を含む単離核酸を提供する。
別の側面において、本発明は、本発明の組換えエピトープの産生のためにコードする配列を含む単離核酸、または本発明のこうしたエピトープを含む分子を提供する。しかし、本発明のエピトープはまた、例えば当該技術分野に周知の合成法のいずれかを通じて、合成的に産生されてもよい。
核酸をコードする抗体またはエピトープは、任意の適切な特性を有し、そして任意の適切な特徴またはその組み合わせを含むことも可能である。したがって、例えば、抗体またはエピトープをコードする核酸は、DNA、RNA、またはそのハイブリッドの形であってもよく、そしてこれには、非天然存在塩基、修飾主鎖、例えば核酸の安定性を促進するホスホロチオエート主鎖、またはその両方が含まれてもよい。核酸は、好適には、ターゲット宿主細胞(単数または複数)における望ましい発現、複製、および/または選択を促進する特徴を含む、本発明の発現カセット、ベクターまたはプラスミド中に取り込まれてもよい。こうした特徴の例には、複製起点成分、選択遺伝子成分、プロモーター成分、エンハンサー要素成分、ポリアデニル化配列成分、終結成分等が含まれてもよく、これらの多くの適切な例が知られる。
本開示はさらに、1またはそれより多い本明細書記載のヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を提供する。これらの組換え構築物を、任意の開示する抗体をコードするDNA分子が挿入されているベクター、例えばプラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターと組み合わせて用いる。
培養中の連続細胞株によって抗体分子を産生する任意の方法を用いて、モノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体を調製するために適した方法の例には、Kohlerらのハイブリドーマ法(1975, Nature 256:495−497)およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, 1984, J. Immunol. 133:3001;およびBrodeurら, 1987, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, (Marcel Dekker, Inc., New York), pp. 51−63)が含まれる。
本発明はさらに、本明細書に記載するような抗体または免疫原および薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物を、ボーラス注射または注入として、あるいは連続注入によって、本発明にしたがって投与してもよい。投与のこうした手段を促進するために適した薬学的キャリアーが当該技術分野に周知である。
薬学的に許容されうるキャリアーには、一般的に、本発明によって提供される抗体または関連組成物または組み合わせと生理学的に適合する、あらゆる適切な溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に許容されうるキャリアーのさらなる例には、無菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそのいずれかの組み合わせが含まれる。
1つのこうした側面において、抗体を、所望の投与経路に適した1またはそれより多いキャリアーと組み合わせてもよく、抗体を、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、ポリビニルアルコールのいずれかと混合してもよく、そして場合によって、慣用的投与のため、さらに錠剤化する(tabletted)かまたは被包してもよい。あるいは、抗体を、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド性溶液、エタノール、コーン油、ピーナツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、および/または多様な緩衝剤中に溶解してもよい。他のキャリアー、アジュバント、および投与様式は、薬学業において周知である。キャリアーには、徐放物質または時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのみ、またはワックスと合わせたもの、あるいは当該技術分野に周知の他の物質が含まれてもよい。
さらなる薬学的に許容されうるキャリアーが当該技術分野に知られ、そして例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載される。液体配合物は、溶液、エマルジョンまたは懸濁物であることも可能であり、そしてこれには、懸濁剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤、およびキレート剤などの賦形剤が含まれてもよい。
本発明の抗体または免疫原および1またはそれより多い療法活性剤が配合される医薬組成物が意図される。望ましい度合いの純度を有する前記免疫グロブリンを、場合によって薬学的に許容されうるキャリアー、賦形剤または安定化剤と、凍結乾燥配合物または水溶液の形で混合することによって、本発明の抗体または免疫原の安定配合物を保存のために調製する。in vivo投与に用いようとする配合物は、特に、無菌であり、好ましくは無菌水溶液の形である。これは、無菌濾過膜または他の方法を通じた濾過によって容易に達成される。本明細書に開示する抗体および他の療法活性剤はまた、イムノリポソームとして配合され、そして/または微小カプセル中に捕捉されることも可能である。
本発明の抗体または免疫原を含む医薬組成物の投与を、経口、皮下、静脈内、鼻内、耳内(intraotically)、経皮、粘膜、例えばジェル、軟膏(salves)、ローション、クリーム等で局所、腹腔内、筋内、例えば吸入技術または肺送達系を使用して肺内、経膣、非経口、直腸、または眼内を含む多様な経路で行ってもよい。
非経口投与に用いられるような例示的な配合物には、例えば無菌溶液、エマルジョンまたは懸濁物のような、皮下、筋内または静脈内注射に適したものが含まれる。
1つの態様において、本発明の抗体または免疫原は、例えば疾患を修飾するかまたは防止する単一療法として、被験体に投与される、唯一の療法活性剤である。
あるいは、本発明の抗体または免疫原を、限定されるわけではないが、標準的治療、例えば抗生物質、炎症のステロイドおよび非ステロイド阻害剤、および/または例えば抗細菌または抗炎症剤を使用する、他の抗体に基づく療法を含めて、1またはそれより多い他の療法剤または予防剤と組み合わせて投与する。
併用療法は、特に、例えばMRSA感染を治療するために用いられるような、標準的な投与計画を使用する。これには、抗生物質、例えばチゲサイクリン、リネゾリド、メチシリンおよび/またはバンコマイシンが含まれうる。
併用療法において、抗体を混合物として、あるいは1またはそれより多い他の療法投与計画と組み合わせて、例えば同時療法の前に、同時に、または後にのいずれかで投与してもよい。
いくつかの場合、免疫原の予防的投与は、本発明の免疫原を含むワクチン、すなわち一価ワクチンを使用してもよい。にもかかわらず、同じまたは異なるターゲット病原体に対する免疫反応を誘導するため、異なる免疫原を含む多価ワクチンを使用してもよい。
本発明の抗体、免疫原またはそれぞれの薬学的調製物の生物学的特性を、細胞、組織、および全生物実験において、ex vivoで特徴付けてもよい。当該技術分野に知られるように、薬剤はしばしば、疾患または疾患モデルに対する治療に関する薬剤の有効性を測定するため、あるいは薬剤の薬物動態学、薬力学、毒性、および他の特性を測定するため、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、およびサルを含む動物において、in vivoで試験される。動物は、疾患モデルと称されることも可能である。療法剤は、しばしば、限定されるわけではないが、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植マウス、およびトランスジェニックマウス(ノックインおよびノックアウトを含む)を含むマウスで試験される。こうした実験は、抗体が、能動または受動免疫療法に際して、適切な半減期、エフェクター機能、(交差)中和活性および/または免疫反応を伴う療法剤としてまたは予防剤として、使用される能力の決定のための意義あるデータを提供しうる。任意の生物、好ましくは哺乳動物が、試験に使用可能である。例えば、ヒトに対する遺伝的類似性のため、霊長類、サルが適切な療法モデルである可能性もあり、そしてしたがって、これらを用いて、対象の剤または組成物の有効性、毒性、薬物動態学、薬力学、半減期、または他の特性を試験することも可能である。ヒトにおける試験は、最終的には、薬剤としての認可に必要であり、そしてしたがって、もちろん、これらの実験が意図される。したがって、本発明の抗体、免疫原およびそれぞれの医薬組成物を、ヒトにおいて試験して、療法的または予防的有効性、毒性、免疫原性、薬物動態学、および/または他の臨床特性を決定してもよい。
本発明はまた、診断目的のため、例えば生物学的液体試料中の免疫試薬またはターゲットとしての毒素または抗体を検出し、そしてその濃度を定量的に決定する方法において使用するための、本発明の対象抗体も提供する。
本発明はまた、生物学的試料、例えば体液において、毒素または黄色ブドウ球菌感染のレベルを検出するための方法であって、本発明の抗体と試料を接触させる工程を含む、前記方法も提供する。本発明の抗体を、任意の既知のアッセイ法、例えば競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイ、ならびに酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)において使用してもよい。
本発明にしたがって用いられるような体液には、被験体の生物学的試料、例えば組織抽出物、尿、血液、血清、便および痰が含まれる。
1つの態様において、方法は、固体支持体を、ターゲット、例えば本発明の抗体によってターゲットとされる毒素の少なくとも1つとの複合体を特異的に形成する、特定のタイプの抗体断片の過剰量と、抗体が固体支持体表面に付着するのを可能にする条件下で、接触させる工程を含む。抗体が付着している、生じた固体支持体を、次いで、生物学的液体中のターゲットが抗体に結合し、そしてターゲット−抗体複合体を形成するように、生物学的液体試料と接触させる。複合体を検出可能マーカーで標識してもよい。あるいは、複合体の形成前に、ターゲットまたは抗体のいずれかを標識してもよい。例えば、検出可能マーカー(標識)を抗体にコンジュゲート化してもよい。次いで、複合体を検出し、そして定量的に決定し、それによって、生物学的液体試料中のターゲットを検出し、そしてその濃度を定量的に決定することも可能である。
特定の適用のため、本発明の抗体を、有機分子、酵素標識、放射性標識、着色標識、蛍光標識、色素原標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属複合体、金属、コロイド性金およびその混合物からなる群より選択される、標識またはレポーター分子にコンジュゲート化する。標識またはレポーター分子にコンジュゲート化された抗体を、例えばアッセイ系または診断法において用いて、例えば黄色ブドウ球菌感染またはそれに関連する疾患状態を診断してもよい。
本発明の抗体を、例えば結合アッセイ(例えばELISA)および結合研究において、前記コンジュゲートの単純な検出を可能にする他の分子にコンジュゲート化してもよい。
本発明の別の側面は、1またはそれより多い抗体に加えて、多様な診断または療法剤を含んでもよい、抗体を含むキットを提供する。キットにはまた、診断または療法において使用するための使用説明書も含まれてもよい。こうした使用説明書は、例えば、キット中に含まれているデバイス、例えば診断目的のために生物学的試料を調製する、例えば、疾患を診断しようとするそれぞれの毒素(単数または複数)を決定する前に、細胞および/またはタンパク質含有分画を分離するためのツールまたはデバイス上に含まれてもよい。好適には、こうしたキットには、1またはそれより多くの本明細書記載の多様な診断法において使用可能な抗体および診断剤または試薬が含まれる。別の好ましい態様において、キットには、使用前に混合して近い将来の投与のための注射可能組成物を形成可能な薬学的に許容されうるキャリアー(単数または複数)と組み合わせて、例えば凍結乾燥型の抗体が含まれる。
実施例1:組換え毒素の生成
6つの黄色ブドウ球菌毒素−LukH_TCH1516、LukH_MRSA252、LukH_MSHR1132、LukG_TCH1516、LukG_MRSA252およびLukG_MSHR1132を、大腸菌(BL21、RosettaまたはTuner DE3)中で組換え的に産生した。成熟タンパク質のための毒素遺伝子(SignalP 4.1 Server; http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/を用いて決定)を大腸菌発現のためにコドン最適化して、そして黄色ブドウ球菌株USA300_TCH1516、MRSA252およびMSHR1132の公表されるゲノム配列に基づいた遺伝子合成によって生成した(図1A、配列番号1〜12、図10)。すべての毒素は、不溶性型でタグを伴わずに発現され、タンパク質は封入体から再フォールディングされて、そして精製され;精製は、LukHに関してはサイズ排除カラム上の2工程から、そしてLukGに関しては、陽イオン交換上の1工程およびpH10.2〜11.0での陰イオン交換上の1工程からなった。純度(SDS−PAGEによる)および単量体状態(サイズ排除による)に関して、ならびに実施例3に記載するように、in vitroアッセイにおいて、機能性に関して(図1B)、タンパク質をアッセイした。すべてのタンパク質を、アミノ反応性試薬スルホ−NHS−LCビオチンで標識した。
実施例2:LukGおよびLukH結合性ヒトモノクローナル抗体の選択
WO2009/036379A2、WO2012009568およびWO2010105256にしたがって発展させた酵母表面ディスプレイライブラリーによって、毒素結合抗体を選択した。実施例1に記載するように、毒素分子を組換え大腸菌産生タンパク質として発現させ、そしてビオチンで標識した。
およそ109〜10の多様性で、全長ヒトIgG1抗体を発現するよう操作された酵母細胞のライブラリーを、異なる濃度のビオチン標識毒素とインキュベーションした。磁気ビーズ選択、およびいくつかの連続する(最大5回)選択周期で、ストレプトアビジン二次試薬を使用する蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって、毒素への結合能を持つ抗体を発現している酵母細胞を単離した。次いで、選択した酵母クローンによって抗体を産生し、そしてプロテインAアフィニティクロマトグラフィによって精製した。ForteBio Octet Red装置[Pall Life Sciences]を用いたインターフェロメトリー測定によって、異なる毒素への個々の可溶性mAbの結合を確認し;ビオチン化抗原または抗体をセンサー上に固定し、そして抗体Fab断片のまたは抗原の会合および解離を、それぞれ(典型的には200nM)、溶液中で、測定した。測定した動力学パラメータ(konおよびkoff)に基づいて、アフィニティ(Kd値)を計算した。
実施例3:LukGH中和活性に関するヒトmAbの分析。
実施例2に記載するように、LukH_TCH1516およびLukG_TCH1516で選択した、LukGH毒素に対するヒトmAbの中和活性を、ヒト好中球を用いた生存度アッセイで評価した。この目的のため、赤十字(ヘパリン処理)から得たか、または正常健康志願者からK−EDTAバキュテナーチューブ(BD、米国)中に静脈穿刺によって得たかいずれかの新鮮なヒト全血から、好中球を単離した。赤血球を凝集させるため、1部分のHetaSep溶液(Stem Cell Technologies、フランス)を5部分の血液に添加し、混合し、そして血漿/赤血球界面が総体積のおよそ50%になるまで、37℃でインキュベーションした。白血球濃縮血漿層を2段階Percoll勾配(HBSS中で希釈した73%および63%Percoll Plus、GE Healthcare)上に注意深く重層し、そして680xg、RT、ノーブレーキで30分間遠心分離した。スピン後勾配の第一層および第二層(主に血清および単球)を吸引によって除去した。第二の不透明層から好中球を採取し、そして50ml HBSS(Gibco、米国)+10mMグルコース中で2回洗浄した。血球計数器中、トリパンブルー色素排除を用いて、生存細胞数を計数した。記載する単離法は、通常、50ml全血から、生存度≧95%の1〜5x10E8の好中球を生じた。生存度アッセイのため、10%FCS、L−グルタミンおよびPen/Strepを補ったRPMI 1640(PAA Laboratories、オーストリア)(=好中球培地)中に細胞を再懸濁した。あるいは、HL−60(ATCC CCL−240TM)ヒト前骨髄性白血病細胞株もまた、好中球様細胞の供給源として用いた(Gallagher, Blood, 1979:713; Collins, PNAS, 1978:2458)。細胞を好中球培地中で培養し、そしてRomero−Steiner, Clin Diagn Lab Immunol, 1997:415に記載されるように、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド、100mM)で5日間処理することで分化させた。文献(例えばCollado−Escobar, Biochem J, 1994:553; Trayner, Leuk Res, 1998:537; Watanabe, J Leuk Biol, 1993:40)に記載される標準法にしたがって、ブリリアント・バイオレット421コンジュゲート化抗CD11b(クローンICRF44、BioLegend、米国)およびPEコンジュゲート化抗CD71モノクローナル抗体(クローンOKT9、eBioscience、米国)を用い、CD71の消失およびCD11b染色の出現によって、分化を決定した。
モノクローナル抗体を、好中球培地中で連続希釈し、そして細胞生存度を≧95%減少させる固定濃度の毒素と混合した[〜1nM、60ng/ml]。毒素への抗体結合を可能にする、30分間のプレインキュベーション工程後、生存度アッセイを開始した。ウェルあたり25,000細胞を添加し、そして反応を37℃、5%CO2を含む加湿大気中で4時間インキュベーションした。製造者の指示にしたがって、細胞ATPレベルの発光測定に基づく市販の細胞生存度アッセイ(CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存度アッセイ;Promega、米国)を用いて、PMNの生存度を評価した。偽処理対照に比較して、%生存度を計算した。以下の式:%阻害=[(毒素のみの生存度−阻害された活性)/(毒素のみの生存度)]x100を用いて、毒素活性の%阻害を計算した。すべてのアッセイに、対照mAb(関連しない抗原:鶏卵リゾチームに対して生成されたもの)が含まれた。
この方法を用いて、本発明者らは、LukGまたはLukH毒素成分で生成されるものの中に、強力な中和抗体を同定することが不可能であった(図2中に示す例)。原因を探し求める試みの中で、本発明者らは、選択した抗体が、他の成分の存在下で、同族毒素成分に結合不能でありうると仮定した。forteBio測定を用いた一連の結合研究において、本発明者らは、LukG mAbがLukHの存在下ではLukGに結合することを阻害され、そして逆に、LukH mAbがLukGの存在下ではLukHに結合することを阻害されることを証明した。LukHおよびLukGの間で接触するタンパク質ドメインに対して、mAbが生成された疑いを確認するため、中和アッセイを修飾して行った。他の毒素成分を添加する前に、mAbを同族毒素成分のみとプレインキュベーションした。実際に、LukGおよびLukH mAbの大部分で、毒素中和の多大な改善が見られた(図3に示す例)。しかし、これらの抗体は、黄色ブドウ球菌によって産生され、そして細菌培養上清中に存在する天然毒素を中和することは不可能であった。これらの実験はすべて、LukGおよびLukHが、ターゲット細胞への結合前に、溶液中で複合体を形成することを示唆し、こうしたことは黄色ブドウ球菌二成分ロイコシジンに関しては報告されたことがなかった。
実施例4:組換えLukGおよびLukHは、同時発現され、そして溶液中で二量体を形成する際、大腸菌溶解物から同時精製される。
本発明者らは、異なる抗生物質耐性マーカーを含有し、そして各々、lukHまたはlukG遺伝子のいずれかを所持する2つのプラスミドで同時トランスフェクションすることによって、同じ大腸菌細胞において、LukHおよびLukG成分を同時発現した。LukGを、N末端にNusA/His6を持つ融合タンパク質として発現させて、複合体の金属アフィニティ精製を可能にする一方、LukHを非タグ化型で発現させた。イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で、20℃で20時間、発現誘導を行った。2つのタンパク質が可溶性分画に見出され、そしてこれらは固定金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(IMAC)によって同時精製された。NusA/His6タグをタンパク質分解的に(エンテロキナーゼで)除去し、非タグ化成熟LukGH複合体を得て、これをさらに、陽イオン交換クロマトグラフィによって精製した。
同時発現は、個々のタンパク質を安定させた。個々の成分は常に、大腸菌の不溶性分画において発現され(実施例1を参照されたい)、同時発現LukGHは可溶性分画に見出された。
SDS−PAGEによって、複合体中のLukG:LukHの化学量論は、1:1であることが示された。溶液中の複合体のサイズを決定するため、本発明者らは、静的光散乱検出装置を装備したDynoPro NanoStar(Wyatt)装置を用いて、動的光散乱(DLS)測定を使用した(図5)。静的光散乱検出装置で測定した分子量(MW−S)は、ヘテロ二量体の計算された分子量、73kDaとよく一致している。
実施例5:非常に強力なLukGH中和mAbが、組換えLukGH複合体で選択される
抗原として、ビオチン化LukGH複合体を用い、実施例2に記載するものと同じ方式で、酵母表面ディスプレイによって、抗体選択を行った。ユニークなCDR配列を持つ、84のヒトmAbを選択した。分化したHL−60細胞または新鮮に単離したヒトPMNのいずれかを用いて、実施例3に記載するように、中和活性を測定し、そして非常に強力なLukGH複合体、または1%カザミノ酸を補充したRPMI−1640培地中で培養した黄色ブドウ球菌細胞(培養上清)によって産生された天然LukGHと、抗体のプレインキュベーションを行った。LukGまたはLukH mAbで得た結果とは対照的に、LukGH複合体で選択した抗体は、強力であることが立証され、これらの3/4は、300nM未満の最大半量阻害濃度(IC50)を示した。最も有効なmAbは、<30nMのIC50を有した(およそ10のmAb:毒素比)。分化したHL−60細胞を用いた、組換えLukGH複合体(図6A)または天然LukGH(図6B)のいずれかでの例を、図6に示す。新鮮に単離したヒトPMNをターゲット細胞として用いた際、強度に関して、同じ順位序列が見られた(図7A)。
LukGHは異なる変異体で存在するため、異なる黄色ブドウ球菌株によって発現されるすべてのLukGH変異体を中和可能であるmAbを選択することが重要な側面である。この目的のため、CC30(同一クローン集団)およびST36(配列タイプ)に属する、MRSA252株によって発現される最も多様な配列変異体LukGHを、やはり毒素中和アッセイにおいて試験した。特定のmAbが非常に強力であることが立証される一方、他のものは機能性を示さなかったため、このアッセイは、大きな差別化能力を有する(図7B)。抗体を抗ヒト捕捉センサー上に固定し、そして溶液中の毒素(PBS+3%BSA中、100nM)の会合を監視した際、強度は、ForteBio測定における反応値に基づいて、LukGH複合体変異体への結合と相関することが示された。LukGH複合体変異体へのmAbの結合は、LukGまたはLukH変異体に対するものより有意に優れている(図7C)。
LukGH中和抗体の作用様式を解明するため、ビオチン化LukGH複合体の結合を、フローサイトメトリーに基づく表面染色アッセイにおいて、蛍光ストレプトアビジン(ビオチンに結合する)を用いて、LukGH mAbの非存在下または存在下で監視した。抗体の存在は、蛍光表面シグナルの欠如と相関し、推定上の受容体への結合が、毒素にmAbが結合した際に阻害されることを示唆した(図8)。
結論として、溶液中のLukGおよびLukHによる複合体形成の発見は、ヒト食作用細胞を溶解から保護する強力な毒素中和抗体の同定を導いた。抗体サブグループは、広い結合特異性を有し、そして最も異なるLukGH配列を交差中和する。中和LukGH mAbは、食作用細胞に対する毒素の結合を阻害し、そしてしたがって溶解を防止する。mAbのこれらの特性によって、該mAbは広い臨床適用に適したものとなる。
実施例6:LukGHに対するヒト受容体としてのCD11b/CD18複合体の同定
本発明者らは、フローサイトメトリーに基づく表面染色を用いて、LukGH複合体が、ヒトPMNおよび分化したHL−60細胞に結合するが、未分化HL−60細胞には結合しないことを確定した。後者の細胞タイプがLukGHに完全に耐性である(細胞溶解がまったく検出されない)ため、これは毒素感受性に相関した。これらのデータによって、LukGH受容体がPMNおよび分化したHL−60細胞によって発現されることが示唆された。この受容体を同定するため、ビオチン標識LukGH(2μg)および108細胞を用いて、プルダウン実験を行った。ビオチン化LukGHおよびその結合パートナー(単数または複数)をストレプトアビジン・アガロース樹脂(ビオチンに結合する)上で収集し、そしてSDS−PAGEによって分析した。分子量150および90kDaの2つのユニークなタンパク質バンドが、PMNおよび分化したHL−60のプルダウン試料に見られたが、未分化HL−60分画には欠けており、そしてまたLukGHを添加せずに精製したPMN試料からも欠けていた(図9A)。これらのバンドをゲルから切り出し、そして質量分析(ペプチド・マス・フィンガープリンティング)に供した。ゲルバンドを消化し(トリプシン)、得たペプチドを、ナノ−LC−MS/MSによって測定し、そしてMascot(http://www.matrixscience.com)データベースに対して、MS/MSスペクトルを問い合わせた。トリプシンペプチドのマスに基づいて、2つのタンパク質は、CD11b(150kDa)およびCD18(90kDa)と同定された(図9B)。CD11bおよびCD18は、PMNおよび分化したHL−60細胞の表面上で複合体を形成することが知られ、補体受容体3(CR3)、または白血球インテグリンMac−1ともまた称される(FEMS Immunol. Med. Microbiol. 2002, 34, 255)。PMNおよび分化したHL−60のプルダウン物質におけるCD11bの存在は、抗CD11b特異的mAb(Abcam ab52478)を用いたウェスタンブロットにおいて確認された(図9C)。これは興味深い知見であり、そしてすべてCD11b/CD18を発現することが知られる、ヒトPMN、単球および樹状細胞に対して毒性であると報告される、LukGHの細胞タイプ特異性を完全に説明する。未分化HL−60細胞がこの複合体の表面発現を欠くこともまた、広く確立されている。実際、陽性CD11b/CD18染色は、in vitroでのHL−60細胞の効率的な分化のマーカーとしてルーチンに用いられる。ペプチド質量分析はまた、より低いスコアで、PMNから単離された150kDaバンド中のCD11dを同定した(図9B)。CD11dはまた、CD18と複合体を形成して、インテグリンαDβ2を生じ、これは、炎症性マクロファージ上で上方制御され、そしてマクロファージ接着性およびその遊走を調節することが示された(Exp. Cell. Res. 2008, 314, 2569)。αDβ2は、アミノ酸レベルで、CD3に58%同一であり、そしてLukGHの潜在的な代替受容体である。
これらのデータはまた、齧歯類CD11b/CD18は、ヒト対応物と〜75%のアミノ酸同一性しか共有しないため、マウスおよびウサギ細胞に対して向けられる毒性活性が欠如しているかまたは非常に低いことを説明する(文献、Malachowaら、2012に報告され、そして本発明者らによって確認される)。同様に、ヒトCD11dは、マウス変異体に〜70%の同一性しか持たない。
実施例7:LukGH八量体の結晶構造は、二量体形成に重要な残基を同定する
2.8Å解像度で解析されるLukGH USA300の構造によって、八量体孔配置が明らかになり、非対称性単位である2つの八量体があり、各八量体は、HlgABで得られるもの(PNAS 108, 17314, 2011)と同様に、4つの交互のLukGおよびLukHサブユニットで構成される(図10A)。毒素プロトマーは、八量体の界面の2つのタイプ:鎖AおよびBの間の界面(界面1)ならびに鎖BおよびCの間の界面(界面2)に関与する。包埋される表面積は、それぞれ、界面1および2に関して、2188および2461Å2である。界面1において、主な相互作用は、キャップドメイン間で起こり(図10B)、一方、界面2において、2つの単量体のキャップドメインおよびリムドメインの間の両方との相互作用がある(図10C)。LukGH八量体における2つの界面間の接触残基の分析によって、界面1が、34の水素結合、ならびにLukH由来の残基Asp39、Asp75およびAsp197、ならびにLukG由来のLys56、Lys58、Arg23およびLys218を伴う、一連の静電相互作用によって安定化されることが示されてきている。界面2においては、全部で56の水素結合があり、キャップドメイン間のLukH由来の残基Arg49およびArg240、ならびにLukG由来のAsp49およびGlu171、そしてリムドメイン間のLukH由来の残基Arg215およびArg234、ならびにLukG由来のAsp189およびAsp191を伴う静電相互作用がある。HlgAB八量体(pdbコード3B07)で観察される塩架橋と比較した際、キャップドメイン間で見られるものは、LukGHおよびHlgAB八量体の間で大部分保存されている(そしてまた、他のSおよびF成分間でも)が、リムドメイン間のもの(界面2におけるもの)は、LukGHにしか見られず、そして関与する残基は、LukGH変異体間で完全に保存されている(図1C)。2つの界面における包埋された表面積サイズに基づいて、そして界面2において、他のFおよびS成分(溶液中で二量体を形成することが知られていないもの)との塩架橋残基の保存が欠如していることに基づき、LukGH二量体に関する最もありうる界面は、界面2である(図10C)。この仮説を確認するため、本発明者らは、以下のように、静電相互作用に関与する残基を、Alaに変化させることによって、界面突然変異体を生成した。LukH中のAsp75およびAsp197をAlaに突然変異させて、LukH1(界面1 LukH突然変異体)を生じ、そしてLukG中のArg23およびLys218をAlaに突然変異させて、LukG1(界面1 LukG突然変異体)を生じた。第二の界面の突然変異体、LukH2およびLukG2を作製するため、LukH中のArg215、Arg234およびArg240、ならびにLukG中のAsp189、Asp191およびGlu171を、それぞれ、Alaに突然変異させた。
LukGH変異体を同時形質転換し、そしてWT複合体に関するように、複合体の同時発現を20℃で誘導した。同様のレベルですべての複合体が同時発現されたが、可溶性複合体の量は、異なる変異体間で多様であり;界面1突然変異体:LukG1H、LukGH1およびLukG1H1はWT複合体と類似の可溶性を示し、一方、界面2突然変異体:LukG2H、LukGH2およびLukG2H2は主に不溶性であった。したがって、界面1突然変異体複合体を、WT LukGHに関するものと類似の方法を用いて精製し、そして類似の収量を得た。円二色性(CD)によって、フォールディングに関して精製LukGH変異体をチェックし、そしてそのCDスペクトルは、WT複合体に関するものと本質的に同じであり、突然変異が、複合体の二次構造に影響を及ぼさなかったことが示された。
個々の成分:LukG1、LukG2ならびにLukH1およびLukH2もまた発現させ、そしてWT LukGおよびLukHに関するように封入体から精製した。WT対応物に関するものと類似の収量が、LukG1、LukG2およびLukH2に関して得られ:LukH2のCDスペクトルは、WT LukHのものとよく匹敵し、そしてLukG変異体に関して同じことが当てはまったが、タンパク質を配合し、そしてスペクトルを得たpH10.0緩衝液中では、すべてのLukGタンパク質は、主にランダムコイル構造を示す。LukH1収量は、WTタンパク質に関するより有意に低く、これは、LukH1が部分的にアンフォールディングされるという事実によって裏付けられ、そしてしたがって、LukH1は、さらなる実験に含まれなかった。
ビオチン化LukHまたはLukH2をストレプトアビジンセンサー上に固定し、そしてあらかじめ装填したセンサーに対するLukGの会合に関して反応値を測定することによって、個々の成分からのLukGH複合体の形成をForte−Bioにおいて監視した。LukH2における突然変異が二量体界面に影響を及ぼすことに一致して、LukH2とよりもLukHとの結合が有意に高かった(図11A)。グルタルアルデヒドを用いたLukGおよびLukH変異体(各々、35μg/ml)の混合物の架橋(図11B)によって、界面2突然変異体がLukGH二量体を形成不能であるが、界面1 LukG突然変異体は、WT成分に関して観察されるものと類似のレベルで、二量体を形成可能であることが確認されている。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]LukGH複合体を含む、単離黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ロイコシジン抗原。
[態様2]LukGH複合体が、二量体またはオリゴマーとして、LukGおよびLukH成分を含む、態様1に記載の抗原。
[態様3]LukGH複合体が、組換えタンパク質および/または黄色ブドウ球菌株由来のタンパク質で構成される、態様1または2に記載の抗原。
[態様4]LukGおよびLukH成分が、組換え宿主細胞によって同時発現され、天然供給源から精製され、そして/または同時再フォールディングされる、態様3に記載の抗原。
[態様5]可溶性型のタンパク質複合体として提供される、態様1〜4のいずれか1に記載の抗原。
[態様6]ヒトCD11b/CD18受容体に結合可能な、態様1〜5のいずれか1に記載の抗原。
[態様7]LukGH複合体に特異的に結合する抗体。
[態様8]LukGH複合体を中和する、態様7に記載の抗体。
[態様9]USA300クローン由来の、好ましくはTCH1516株由来のLukGH複合体、およびLukGH複合体変異体の少なくとも1つに結合する、態様7または8に記載の抗体。
[態様10]LukGH複合体変異体が、USA300クローン由来のLukGH複合体に比較した際に、LukGまたはLukH成分のいずれかのアミノ酸配列中に、少なくとも1つの点突然変異を有する、態様7〜9のいずれか1に記載の抗体。
[態様11]LukGH複合体変異体が、配列番号8、12、13、14、15、16、17、18、19および20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むLukG成分、ならびに/または配列番号6、10、21、22、23、24、25、26、27および28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むLukH成分を含む、態様7〜10のいずれか1に記載の抗体。
[態様12]USA300クローン由来のLukGH複合体が、配列番号4のアミノ酸配列を含むLukG成分および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むLukH成分を含む、態様7〜11のいずれか1に記載の抗体。
[態様13]LukGH複合体およびLukGH複合体変異体を交差中和する、態様7〜12のいずれか1に記載の抗体。
[態様14]黄色ブドウ球菌LukGH二成分細胞溶解素の結合または毒性を決定する方法において使用するための、ヒトCD11b/CD18複合体。
[態様15]天然型で、あるいは単離型または固定型で用いられる、態様14に記載の使用のためのCD11b/CD18複合体。
参考文献