本明細書に記載されるシステムおよび方法は、送信器、受信器、および/または(チャネル中にある1つまたは複数の目標物を含む)チャネルについての情報を得るために、マルチパスチャネルなどの周波数選択性チャネルを通して送信器から受信器に伝播された信号を分析するのに有用である。これらのシステムおよび方法は、たとえば、マルチパスチャネルを進行した後に受信器に到達する送信信号の修正されたバージョンを生起させるマルチパス伝播効果を利用することができる。(そのようなマルチパス伝播効果は、図1に関して議論される。)受信器で検出される送信信号のこれらの修正されたバージョンは、送信器、受信器、および/またはチャネルについての情報を決定するために、互いに、および/または元々の送信信号自体と比較することができる。
図1は、マルチパスチャネルで動作する無線周波数(RF)送信器110および受信器120を図示する。送信器110は、RF波をマルチパスチャネルへと送信するアンテナT1を含む。RF波は、受信器アンテナR1によって受信される。マルチパスチャネルは、送信した無線波を、反射、屈折、回折、散乱、または他の方法でマルチパスに沿って受信器アンテナR1に到達させる、1つまたは複数の目標物130、132を含む。
図示された例では、送信器アンテナT1からのRF波は、見通し線(LOS)経路ならびに目標物130、132が存在することから生じる2つの他のマルチパスM1およびM2に沿って、受信器アンテナR1に到達する。いくつかの場合では、目標物130、132により誘起されるマルチパス効果は、時間変動する可能性がある。たとえば、マルチパスチャネル中の目標物は、物理的に移動する場合があり、または、受信器で受信されるRF波に影響を及ぼす何らかの他の時間変動する特性を有する可能性がある。送信器、チャネル、および受信器からの効果からなる集合的な応答は、システム応答、システムインパルス応答、システム伝達関数、時間変動システムインパルス応答、時間変動システム伝達関数などと呼ぶ場合がある。
多くの用途で、マルチパス信号は、望ましくなく、しばしば障害であると考えられる。しかし、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、目標物130、132の1つまたは複数の特性における変化を含む、伝播チャネル中の変化を検出するために、マルチパス伝播効果(または、他のタイプの周波数選択性チャネルで発生する他の効果)を利用することができる。マルチパス伝播効果は、各マルチパス成分に対し、強め合うもしくは弱め合う干渉、位相偏移、時間遅延、周波数偏移、および/または偏波の変化を(散乱、反射、屈折、回折などを通して)誘起することを含む、多くの方法で送信信号を変化させる場合がある。本明細書に記載されるシステムおよび方法は、チャネル中にある目標物130、132を含むマルチパスチャネルについての情報を獲得するために、これらの効果のいずれかまたはその他を識別、測定、および/または分析するための技法を使用することができる。しかし、マルチパス伝播チャネルの文脈で本出願の様々な実施形態が記載されるが、本明細書に記載されるシステムおよび技法は、他のタイプの周波数選択性チャネルにも適用可能であることを理解されたい。たとえば、チャネルは、1つの(または多分複数の)経路が、周波数選択性媒体または周波数選択性表面反射など、それ自体が周波数選択性であるものであってよい。
加えて、(チャネル中にある1つまたは複数の目標物を含む)チャネルについての情報を獲得するために使用することの外に、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、送信器および/または受信器についての情報を獲得するためにも使用することができる。たとえば、本明細書で議論されるシステムおよび方法は、送信される信号の偏波状態の変化、送信器アンテナの向きまたは位置の変化、複数の送信器アンテナからの信号の組合せの変化(たとえば、複数の送信信号に適用される振幅および/または位相の重み付け係数の変化)、送信信号間の相対的な遅延の変化などを識別または特徴づけるために使用することができる。同様に、本明細書で議論されるシステムおよび方法は、受信器における同様の効果を識別または特徴づけるために使用することができる。システム応答に影響を及ぼすこれらの効果のいずれかは、送信器、受信器、および/または(チャネル中にある目標物130、132を含む)チャネルについての情報を獲得するために、識別、測定、および/または分析することができる。
このようにして、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、チャネルだけでなく、送信器および/または受信器も特徴づけることができる。たとえば、送信器および受信器が固定される場合、測定される信号は、チャネルの変化を特徴づけるために使用することができる。しかし、固定したチャネルおよび固定した受信器の場合には、測定される信号は、送信器の位置および/または性質の変化を特徴づけることができる。同様に、固定した送信器およびチャネルの場合には、受信信号は、受信器の位置および/または性質の変化を特徴づけることができる。または、一般的に、測定される信号は、送信器効果、チャネル効果、および受信器効果についての情報を含有する場合がある(これらの効果は、分離可能な場合もあり、そうでない場合もある)。
受信信号は、送信信号とチャネルとの畳み込みを表し、したがって、送信信号の関数である。送信信号がわかっているとき、その知識を受信器が使用して、典型的には送信信号がわかっていない場合よりも非常に正確にシステム応答を推定することができる。この能力には、特に、任意の時間変動するスペクトルの性質を呈するものといった、送信される特定の波形に起因する影響を制限する利点がある。
図2は、マルチパスチャネルなどのチャネルを通って伝播した後の、受信器で測定した信号中の偏波モード分散を特徴づけるためのシステム200を図示する。偏波モード分散と本明細書で呼ばれる現象は、信号の周波数成分の関数としての、受信信号の偏波状態の変動として一般的に理解することができる(すなわち、偏波状態は、受信信号の異なる周波数成分に対してはっきり変わる)。偏波モード分散は、たとえば、直交偏波により搬送される信号間の遅延拡散と、偏波モード間の電力結合との両方を呈するチャネルで発生する場合がある。偏波モード分散の一例は、チャネルが、場合によっては周波数依存の様態で、垂直偏波経路に対して異なる遅延を有する経路上で垂直偏波を水平偏波へと結合することができ、逆も同様である場合である。各偏波モードで、チャネル中の複素伝達関数利得(振幅および位相)は、周波数の関数として明確な変動を呈し、偏波モード分散をもたらす場合がある。偏波モード分散は、送信器、チャネル、または受信器によって誘起される可能性がある。たとえば、偏波モード分散は、マルチパスチャネルなどの周波数選択性チャネルによって、もしくは送信器における意図的に誘起される偏波モード分散によって引き起こされる場合があり、または互いに対して遅延した受信信号を使用することによって受信器において誘起される場合がある。
図2に図示されるシステム200は、偏波送信アンテナT1を有する送信器210を含む。アンテナT1は、任意に、垂直、水平、右円もしくは左円、±45°傾斜などであってよいx偏波を有する。システム200は、二重偏波受信アンテナR1を有する受信器220も含む。二重偏波受信アンテナR1は、u偏波とv偏波であり、ここで、uとvは、垂直と水平、右円と左円、+45°傾斜と-45°傾斜などを含む、直交偏波の任意の対を表す。いくつかの実施形態では、u偏波またはv偏波は、送信アンテナT1のx偏波と同偏波であるが、このことは必要ではない。
送信器210は、RF周波数f0に中心がある帯域幅BWの信号ST1xを送信する。これを達成する1つの方法は、帯域幅BWのベースバンド信号を生成し、この信号をRF搬送周波数f0にアップコンバートすることである。結果として得られる信号を、送信器アンテナT1を通して送信することができる。あるいは、送信器は、周波数が離れている少なくとも2つのトーンからなる信号を送信することができ、または送信器は、トーンの周波数を掃引すること、もしくはRFトーンをパルス発信することができる。いくつかの実施形態では、RF周波数f0に中心がある帯域幅BWを有する信号は、デジタル信号処理とその後のデジタルアナログ変換を使用して、直接生成することができる。信号生成の他の方法も可能である。
送信器アンテナT1から放出された送信信号は、送信信号の帯域幅BWを有する周波数の全範囲にわたり、x偏波RF波としてマルチパスチャネルを通して伝播を始める。ここで検討される場合では、マルチパスチャネルは、受信器220においてマルチパスの寄与を誘起する1つまたは複数の目標物230を含み、このことによって、成分間の経路遅延が十分な広がりを呈する場合、周波数選択性ベクトル伝播チャネル(すなわち、偏波モードのうちの少なくとも1つについての周波数選択性チャネル)が得られる場合がある。受信アンテナR1は、送信RF信号の直交偏波チャネルの修正されたバージョンを検出する。信号SR1uは、検出された信号のu偏波成分を表し、一方信号SR1vは、v偏波成分を表す。これらの直交偏波信号は、送信器、チャネル、および/または受信器についての情報を決定するために、受信器220で処理することができる。たとえば、送信器および受信器が固定される場合、受信信号は、マルチパスチャネルの変化を検出および特徴づけるために使用することができる。これは、その全体の内容がここで本開示に参照によって組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0332115号(特許文献1)で議論される。
いくつかの実施形態では、受信器220は、受信したRF信号をダウンコンバートし、アナログデジタル変換を実施する。ダウンコンバートした信号は、同相直交信号成分を含む、任意の好適な形で表すことができる。ダウンコンバートしたSR1u信号およびSR1v信号は、サブバンドごとに分析することができる。たとえば、受信器220は、信号を周波数領域におけるN個のビンへと変換するために、N点高速フーリエ変換(FFT)または他の好適な変換を実施することができる。これらの周波数ビンの各々を(サブ周波数または副搬送波とも呼ばれる)サブバンドと考えることができる。たとえば、元々送信したベースバンド信号が20MHzの帯域幅を有する場合、受信したSR1u信号およびSR1v信号は、20MHz帯域幅を任意の数のサブバンドへと分割し、これらを独立にまたは組み合わせて考えて、送信器-チャネル-受信器システムを周波数の関数として分析することができる。
いくつかの実施形態では、ジョーンズベクトルまたは(ジョーンズコヒーレンシー行列を計算することにより得ることができる)ストークスパラメータを計算するために、受信器220は、ベースバンドSR1u信号およびSR1v信号の周波数領域表現を使用することにより、各サブバンドについての偏波を計算する。これらの計算は、当技術分野で知られており、本明細書に参照によって組み込まれる米国特許出願公開第2013/0332115号中に例が提供されている。二重偏波(直交偏波)アンテナからの信号を使用して計算すると、これらの計算の結果は、偏波状態の情報である。偏波情報は、アンテナR1で受信した、ダウンコンバートしたベースバンド信号の各サブバンドについて計算することができる。偏波は、相対的な意味で測定することができ、または、受信器アンテナR1の向きが知られていれば、絶対的な意味で測定することができる。偏波の度数などの偏波の統計値は、信号全体について測定することもできる。あるいは、各サブバンドについて偏波の状態の測定を繰り返すことを使用して、サブバンドと関連する偏波の度数を特徴づけることができる。
偏波状態の情報は、チャネルまたは他の要因によって引き起こされる、偏波モード分散、すなわち偏波モード偏移の周波数依存性を特徴づける。各サブバンドについての偏波の値(たとえば、ストークスパラメータ)を正規化することができ、信号が偏波の単位度数を有するのか有さないのかに依存して、S1、S2、およびS3ストークスパラメータをスケーリングして単位量のベクトルが作られる。(十分に小さいサブバンド間隔を使用すると、一般的に、各サブバンド中で、単位元に近い偏波の度数が得られる。)結果として得られる偏波の値を、視覚的な補助として、ポアンカレ球上、またはポアンカレ球の周りにプロットすることができる。たとえば、各サブバンドについて正規化したS1、S2、およびS3ストークスパラメータを座標と考えて、点として(単位半径を有する)ポアンカレ球上にプロットすることができる。ポアンカレ球上の各位置は、異なる偏波状態に対応する。複数のサブバンドについてのストークスパラメータがプロットされると、その結果、偏波モード分散(PMD)曲線と呼ぶことができる、点の軌跡が得られる。米国特許出願公開第2013/0332115号で議論されるように、PMD曲線を分析して、マルチパスチャネルについての情報を決定することができる。PMD曲線は、任意の他のタイプの周波数選択性チャネルについて、または送信器-チャネル-受信器システムの任意の部分についての情報も提供できる。
S1、S2、およびS3ストークスパラメータの単位ベクトルへの正規化はいくつかの実施形態で有利であるが、他の実施形態では、パラメータ中の振幅情報を保持することが望ましく、この場合には、S0値が、S1、S2、S3とともに維持されることになる。完全なストークスベクトル[S0 S1 S2 S3]から取った正規化していないパラメータS1、S2、およびS3も3D空間にプロットすることができるが、一般的に、単位球上に存在する軌跡にとどまることはない。それでも、結果として得られる曲線を分析して、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定することが依然としてできる。また、ストークスパラメータの形成で使用される信号のRF位相情報を保持することも有用となる場合がある。
図2は、偏波モード分散を分析するためのシステムを図示するが、他のシステムアーキテクチャおよび方法を使用して、送信器-チャネル-受信器システムからの効果を分析することができる。これらの他のシステムアーキテクチャおよび方法は、送信器-チャネル-受信器システムの任意の部分について、価値のある追加情報をもたらすことができる。これらの他のシステムアーキテクチャの例は、図3A、図4A、および図5Aに図示される。
図3Aは、1つの送信アンテナおよび2つの空間的に分離した受信アンテナを使用する、送信器-チャネル-受信器システムを分析するためのシステム300を図示する。システム300は、送信アンテナT1を有する送信器310を含む。送信アンテナT1は、任意に偏波することができる。システム300は、2つの空間的に分離した受信アンテナR1、R2を有する受信器320も含む。いくつかの実施形態では、受信アンテナR1、R2は、典型的には、送信器310により使用されるRF搬送周波数の、少なくとも0.5波長だけ分離される。受信アンテナR1、R2は、互いに同じである必要がない、または送信アンテナT1の偏波と同じである必要がない、任意の偏波をそれぞれ有することができる。
送信器310は、RF周波数f0に中心がある帯域幅BWを有する信号ST1をアンテナT1を介して送信する。送信器信号は、たとえば、本明細書に開示される任意の方法で生成することができる。信号は、受信アンテナR1、R2において周波数選択性応答を作り出す1つまたは複数の目標物330を有する、マルチパスチャネルなどの周波数選択性チャネルを通して伝播する。たとえば、チャネルは、空間的に分離した受信アンテナR1、R2で受信される、送信信号ST1の異なる修正されたバージョンを引き起こすことができる。信号SR1はR1で受信した信号を表し、一方信号SR2はR2で受信した信号を表す。受信器320は、これらの信号をダウンコンバートして、アナログデジタル変換を実施することができる。本明細書でさらに議論されるように、受信信号SR1およびSR2は、コヒーレントに受信すること(たとえば、コヒーレントにサンプリングして処理すること)ができる。加えて、これらの信号についての2つの受信器チャネルは、位相および/または利得を一致させることができる。
SR1信号およびSR2信号がダウンコンバートされてサンプリングされると、ベースバンドのSR1信号およびSR2信号の周波数成分の位相および振幅を比較することができる。これは、(たとえば、フィルタバンクを介して)時間領域で、または周波数領域で行うことができる。たとえば、受信信号の各々を、N点FFT演算を使用して、周波数領域へと変換することができる。この演算は、ダウンコンバートしたSR1信号およびSR2信号の各々の帯域幅を、N個の周波数ビンへと分割する。SR1信号およびSR2信号の周波数成分のそれぞれの振幅および位相を、次いで、各サブバンドについて比較することができる。たとえば、信号のうちの一方の周波数成分の振幅は、それぞれの振幅間の差、または振幅比を計算することによって、他方のものと比較することができる。同様に、信号のうちの一方の周波数成分の位相は、それぞれの位相間の差を計算することによって、他方のものと比較することができる。これらは、それぞれの振幅および/または位相を比較するために実施することができる計算のほんのいくつかの例である。多くの他の計算も可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、SR1信号およびSR2信号の周波数成分のそれぞれの振幅および位相を、各サブバンドについてSR1/SR2信号対を使用して、ジョーンズベクトルまたは(正規化した、または正規化していない)ストークスパラメータを計算することによって、比較することができる。2つの信号の周波数成分の位相および/または振幅を比較するために、他の数学的計算を使用することもできる。
SR1信号およびSR2信号が二重偏波アンテナから得られた場合、この計算の結果は、(図2に関して上で既に議論したように)偏波情報となる。しかし、受信アンテナR1およびR2が実質的に共設されない、または必ずしも送信信号の直交偏波成分をサンプリングしないために、ジョーンズベクトルまたはストークスパラメータ計算の結果が偏波を定量化しないことになる。実際には、結果として得られる値は、何ら特定の知られている物理量を記述しない。しかしながら、各周波数サブバンドについての、空間的に分離したアンテナで受信した信号の、それぞれの振幅および/位相の比較は、依然として、送信器-チャネル-受信器システムについての有用な情報を提供することができる。結果として得られる値は偏波値でないが、それらは、依然として、視覚的な補助として、(ポアンカレ球と同様に)単位球上または単位球の周りの各サブバンドについてプロットすることができる。(正規化が適用されている場合、信号は、単位球上に収まり、そうでなければ、一般的に信号は単位球にとどまらないことになる。)しかし、結果として得られる点の軌跡は、偏波モード分散(PMD)曲線ではない。その代わり、結果として得られる曲線は、コヒーレント信号分散曲線(CSDC)と呼ぶことができる。さらに、受信信号が互いに比較されること以外に、受信信号SR1およびSR2の周波数成分の振幅および/または位相を、元々の送信信号ST1のものと比較することもできる。また、受信信号の周波数成分の振幅および/または位相と元々の送信信号のものとのこの比較は、サブバンドベースで実行することができる。
図3Bは、図3Aで示されるシステム300についてコヒーレント信号分散情報を決定するために、周波数成分の位相および/または振幅を比較することができる信号対をリスト化する表である。既に議論したように、図3Aのシステム300は、1つの送信器チャネル、および空間的に分離したアンテナから得られる2つの受信器チャネルを含む。図3Bの表に示されるように、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、それぞれの周波数成分の位相および/振幅を比較することができる3つの信号対をシステムが提供する。すなわち、2つの受信信号SR1およびSR2のそれぞれの周波数成分の位相および/振幅を互いに比較することができる。これが、図3Bの表中に示される第1の信号対である。加えて、これら2つの受信信号SR1およびSR2のそれぞれの周波数成分の位相および/振幅を、元々の送信信号ST1のものと各々比較することもできる。これらが、図3Bの表中に示される第2および第3の信号対である。したがって、図3Aに図示されるシステム300は、3つのコヒーレント信号分散曲線を提供することができる。これらの曲線の各々を、本明細書で議論されるように分析し、送信器、受信器、および/または(チャネル中の1つまたは複数の目標物の特性を含む)チャネルについての情報を決定することができる。
直前で言及したように、これらの信号対の各々の、それぞれの周波数成分の振幅および/または位相を(たとえば、各サブバンドについて)比較することができる。(既に開示したように、計算することができる比較値の一例は、各信号対の各サブバンドについてのストークスパラメータである。各サブバンドについてのストークスパラメータ(S
0、S
1、S
2、およびS
3)は、以下の式、すなわち、
に従って計算することができ、上式で、Y
1は、比較される信号の対における第1の信号についての振幅および/または位相情報を有する複素数であり、Y
2は、比較される信号の対における第2の信号についての振幅および/または位相情報を有する複素数である。)位相は、受信器320において、互いに対する、または局部発振器に対する相対的な意味でのみ測定することができる。代替的に、および/または追加として、位相は、送信器310における位相基準(たとえば、局部発振器)に対して測定することができる。(偏波の度数になぞらえられる)周波数分散の統計値は、各サブバンドについて決定することができる。前述または同様の情報を推定するための他の計算は、Prattらの、「A Modified XPC Characterization for Polarimetric Channels」、IEEE Transactions on Vehicular Technology, Vol. 60, No. 7, September 2011, p. 20904-2013(非特許文献1)に記載されるような電力測定から計算することができる。この参照文献では偏波特性を記載するが、前述の技法は、偏波情報をもたらさないものの、本明細書に開示される信号対に適用することができる。したがって、この参照文献は、そのような分析技法を開示するために、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
いくつかの実施形態では、受信器320は、追加の受信信号を得るために、3つ以上の受信アンテナを含むことができる。加えて、いくつかの実施形態では、システム300のアーキテクチャは示されているものと逆にすることができ、代わりに、2つ以上の送信器信号を送信するための2つ以上の送信器アンテナおよび受信器信号を得るための1つのみの受信器アンテナを含むことができる。(2つ以上の送信器信号を有する実施形態では、送信器信号は、本明細書でさらに議論されるように、コヒーレントに合成することができる。)または、システム300は、(2つ以上の送信器信号を送信するための)2つ以上の送信器アンテナおよび(2つ以上の受信器信号を得るための)2つ以上の受信器アンテナを含むことができる。いずれの場合も、本明細書に開示されるように、結果として得られる信号対のすべてを使用して、システムを分析することができる。
図4Aは、1つの送信アンテナおよび2つの空間的に分離した二重偏波受信アンテナを使用する、送信器-チャネル-受信器システムを分析するためのシステム400を図示する。システム400は、送信アンテナT1を有する送信器410を含む。送信アンテナT1は、任意に偏波することができる。システム400は、2つの空間的に分離した受信アンテナR1、R2を有する受信器420も含む。いくつかの実施形態では、受信アンテナR1、R2は、典型的には、送信器410により使用されるRF搬送周波数の、少なくとも0.5波長だけ分離される。受信アンテナR1、R2は、両方とも二重偏波される。二重偏波受信アンテナR1は、u偏波とv偏波であり、ここで、uとvは、垂直と水平、右円と左円、+45°傾斜と-45°傾斜などを含む、直交偏波の任意の対を表す。いくつかの実施形態では、u偏波またはv偏波は、送信アンテナT1の偏波と同偏波であるが、このことは必要ではない。いくつかの実施形態では、第2の二重偏波受信アンテナR2もやはりu偏波およびv偏波される。しかし他の実施形態では、第2の二重偏波受信アンテナR2の直交偏波は、第1の受信アンテナR1のものと異なってよい。
送信器410は、RF搬送周波数f0に中心がある帯域幅BWを有する信号ST1をアンテナT1を介して送信する。信号ST1は、本明細書で開示される任意の技法または任意の他の好適な技法を使用して生成することができる。チャネルは、受信アンテナR1、R2への1つまたは複数の信号経路を作る1つまたは複数の目標物430を含むことができる。これらの信号経路は、典型的には、空間的に分離した二重偏波受信アンテナR1、R2で受信される、送信信号ST1の異なる修正されたバージョンを引き起こす、周波数選択性伝播効果をもたらす。第1の受信アンテナR1は、送信RF信号のチャネルの修正されたバージョンの直交偏波成分を検出する。信号SR1uは、第1の受信アンテナR1で検出された信号のu偏波成分を表し、一方信号SR1vは、v偏波成分を表す。第2の受信アンテナR2は、同様に、送信RF信号のチャネルの修正されたバージョンの直交偏波成分を検出する。信号SR2uは、第2の受信アンテナR2で検出された信号のu偏波成分を表し、一方信号SR2vは、v偏波成分を表す。
受信アンテナR1、R2の各々からの直交偏波信号成分を、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、受信器420で処理することができる。受信器420は、これらの信号をダウンコンバートして、アナログデジタル変換を実施することができる。本明細書でさらに議論されるように、受信信号SR1u、SR1v、SR2u、およびSR2vは、コヒーレントに受信すること(たとえば、コヒーレントにサンプリングして処理すること)ができる。加えて、これらの信号についての4つの受信器チャネルは、位相および/または利得を一致させることができる。SR1u信号、SR1v信号、SR2u信号、およびSR2v信号がダウンコンバートされてサンプリングされると、様々な信号対の周波数成分の位相および振幅を比較することができる。これらの異なる信号対については図4Bに関して下で記載される。加えて、各信号対についての(何らかの基準に対する)絶対値の周波数成分の位相および振幅を測定することができ、偏波の度数に相当するものなどの信号の統計値も計算することができる。
受信信号SR1u、SR1v、SR2u、およびSR2vの各々を、N点FFT演算を使用して周波数領域へと変換することができる。この演算は、ベースバンドのSR1u、SR1v、SR2u、およびSR2v信号の各々の帯域幅を、N個の周波数ビンへと分割する。信号の様々な対のそれぞれの周波数成分の振幅および位相を、次いで、本明細書で議論される任意の計算または任意の他の好適な計算を使用して、各サブバンドについて比較することができる。いくつかの実施形態では、特定の信号対について、それぞれの周波数成分の振幅および位相を、たとえば各サブバンドについてジョーンズベクトルまたは(正規化した、もしくは正規化していない)ストークスパラメータを計算することによって、比較することができる。加えて、絶対値の位相および振幅情報ならびに統計値も測定することができる。
図4Bは、図4Aで示されるシステム400についてコヒーレント信号分散情報を決定するために、周波数成分の位相および/または振幅を比較することができる信号対をリスト化する表である。既に議論したように、図4Aのシステム400は、1つの送信器チャネル、および空間的に分離した二重偏波アンテナから得られる4つの受信器チャネルを含む。図4Bの表に示されるように、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、システム400は、それぞれの周波数成分の位相および/振幅を比較することができる10個の信号対を提供する。最初の6個の信号対は、受信信号SR1u、SR1v、SR2u、およびSR2vの様々な組合せによって形成される。第1の信号対は、第1のアンテナR1で検出されたRF信号から作られる。これらは、SR1uおよびSR1vである。第2の信号対は、第2のアンテナR2で検出されたRF信号から作られる。これらは、SR2uおよびSR2vである。これらの場合の両方で、各対における信号の位相および/または振幅を比較することによって、偏波情報を得ることができる。
異なるアンテナで検出された信号からの、それぞれの周波数成分の位相および/または振幅をやはり比較することによって、送信器-チャネル-受信器システムについての追加情報を得ることができる。全部で4つの信号対を形成して、これらの「アンテナ間」比較を行うことができる。これらは、図4Bに示される表における信号対3〜6である。それらは、2つのu偏波信号、SR1uとSR2u、2つのv偏波信号、SR1vとSR2v、第1のアンテナからのu偏波信号と第2のアンテナからのv偏波信号、SR1uとSR2v、最後に第1のアンテナからのv偏波信号と第2のアンテナからのu偏波信号、SR1vとSR2uからなる。それぞれの周波数成分の位相および/または振幅のこれらのアンテナ間比較から生じる値(すなわち、図4Bに示される表における信号対3〜6から計算される値)は、偏波値ではない。それにもかかわらず、それらは、送信器-チャネル-受信器システムについての(チャネル内の1つまたは複数の目標物に起因する効果を含む)重要な情報を含むことができる。
図4Bに示される表における最初の6個の信号対は、受信信号だけから作られる。しかし、受信信号SR1u、SR1v、SR2u、およびSR2vの各々を元々の送信信号ST1と比較することによって、送信器-チャネル-受信器システムについてのさらなる追加情報を得ることができる。これらは、図4Bに示される表における信号対7〜10である。
本明細書で議論されるように、図4Bに示される表から、信号対の各々についてのそれぞれの周波数成分の位相および/または振幅を、様々な方法で比較することができる。たとえば、これは、各サブバンドについてジョーンズベクトルまたはストークスパラメータを(たとえば本明細書で開示される式を使用して)計算することによって、サブバンドごとに各信号対について行うことができる。結果として得られる計算値の大部分は偏波値ではないが、それらは、依然として、視覚的な補助として、ポアンカレ球と同様の単位球上または単位球の周りにプロットすることができる。結果として得られる10個の曲線のうちの2つ(すなわち、図4Bの表における信号対1および2から得られるもの)が偏波モード分散(PMD)曲線である。他の8個の曲線(すなわち、図4Bの表における信号対3〜10から得られるもの)は、コヒーレント信号分散曲線(CSDC)として記載することができる。これらの曲線の各々を、本明細書で議論されるように分析して、チャネル中の1つまたは複数の目標物の特性を含む、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定することができる。加えて、各信号対についての絶対値の位相および/または振幅情報ならびに統計値も測定することができる。
いくつかの実施形態では、受信器420は、追加の受信信号を得るために、3つ以上の二重偏波受信アンテナを含むことができる。加えて、いくつかの実施形態では、システム400のアーキテクチャは示されているものと逆にすることができ、代わりに、2つ以上の送信器信号を送信するための2つ以上の(空間的に分離した、および/または二重偏波であってよい)送信器アンテナおよび受信器信号を得るための1つのみの(二重偏波であってよい)受信器アンテナを含むことができる。または、システム400は、(2つ以上の送信器信号を送信するための)2つ以上の送信器アンテナおよび(2つ以上の受信器信号を得るための)2つ以上の受信器アンテナを含むことができる。いずれの場合も、本明細書に開示されるように、結果として得られる信号対のすべてを使用して、システムを分析することができる。
図5Aは、1つの二重偏波送信アンテナおよび2つの空間的に分離した二重偏波受信アンテナを使用する、送信器-チャネル-受信器システムを分析するためのシステム500を図示する。システム500は、二重偏波である、送信アンテナT1を有する送信器510を含む。(システム500は、単一の送信アンテナで図示されるが、複数の空間的に分離した送信アンテナも使用することができる。)二重偏波受信アンテナT1は、x偏波とy偏波であり、ここで、xとyは、垂直と水平、右円と左円、+45°傾斜と-45°傾斜などを含む、直交偏波の任意の対を表す。システム500は、2つの空間的に分離した受信アンテナR1、R2を有する受信器520も含む。いくつかの実施形態では、受信アンテナR1、R2は、典型的には、送信器510により使用されるRF搬送周波数の、少なくとも0.5波長だけ分離される。2つの受信アンテナR1、R2は、二重偏波であってよい。第1の二重偏波受信アンテナR1は、u偏波とv偏波であり、ここで、uとvは、垂直と水平、右円と左円、+45°傾斜と-45°傾斜などを含む、直交偏波の任意の対を表す。いくつかの実施形態では、u偏波またはv偏波は、送信アンテナT1のx偏波またはy偏波と同偏波であるが、このことは必要ではない。いくつかの実施形態では、第2の二重偏波受信アンテナR2もやはりu偏波およびv偏波される。しかし他の実施形態では、第2の受信アンテナR2の直交偏波は、第1の受信アンテナR1のものと異なってよい。
送信器510は、コヒーレントに合成され、搬送周波数f0に中心があり、送信アンテナT1を介して送信されるベースバンド波形ST1xおよびST1yをそれぞれ提供することができる、2つの波形発生器504a、504bを含む。波形発生器504a、504bは、以下の波形すなわち、シングルトーン連続波、広帯域雑音、帯域制限雑音、チャープ、ステップ周波数、マルチトーン、パルス、パルスチャープ、直交周波数分割多重(OFDM)、二相位相変調(BPSK)、リニアFMオンパルス(LFMOP)などのうちのいずれかを提供することができる。しかし、これらは単なる例示の波形であり、所与の用途に適する可能性があるいずれかの所望の任意の波形を含む、多種多様な他の波形を使用することもできることを理解されたい。波形発生器504a、504bの各々は独立に動作することができ、任意の所与の時間に異なる波形を提供することができる。いくつかの実施形態では、送信信号は、互いのスケーリングしたバージョン、および/または互いの位相偏移したバージョンであってよい。たとえば、二重偏波送信チャネルを使用するとき、直交偏波チャネル間の相対的な位相および振幅を制御することによって、送信される偏波状態に対する制御がもたらされる。他の実施形態では、たとえば意図的に分散を誘起するために、直交偏波チャネル間で制御した相対的なスケーリングおよび/または偏移をそれぞれが有する、時間遅延した信号を生成することも可能である。
波形発生器504a、504bにより作成されたベースバンド波形は、アップコンバータ502a、502bに提供されて、RF搬送周波数f0が中心にされる。RF搬送周波数は、局部発振器508によって提供される。搬送周波数は、局部発振器508からアップコンバータ502a、502bに信号線506a、506bを介して供給される。いくつかの実施形態では、信号線506a、506bは、アップコンバータ502a、502bにおける搬送周波数の位相コヒーレンシーを維持するために、整合した信号線である。図5Aに見られるように、単一の局部発振器508が両方のアップコンバータ502a、502bに供給することができる。あるいは、異なる局部発振器がアップコンバータ502a、502bにそれぞれ供給することができる。異なる局部発振器が使用される場合、それらは、位相および周波数が同期していることが好ましい。いくつかの実施形態では、送信器510は、送信信号ST1xとST1yがコヒーレントに合成されるように、コヒーレントに動作する。図5Aは、送信信号をコヒーレントに合成するための1つのシステムを図示するが、他のものも使用することができる。たとえば、送信器510は、2つ以上のコヒーレントな連続波またはパルス状(または他のやり方で変調した)RFトーンからなる信号を送信することができる。または、2つ以上のコヒーレントな信号を、デジタル信号処理とその後に続くデジタルアナログ変換を使用して直接生成することができる。コヒーレントな信号生成の他の方法も可能である。
直前で議論したように、いくつかの実施形態では、送信信号はコヒーレントである。様々な送信信号間で位相情報を保持することができる。送信信号間でコヒーレンシーを達成する1つの方法は、アップコンバート処理で使用される共通の局部発振器508を共有することである。共通の局部発振器は、マルチチャネル送信器で有利な場合がある。というのは、局部発振器中の任意の障害は、すべてのチャネルに相対的に等しく影響を及ぼす可能性があり、したがって、相対的なチャネル間比較に実質的に影響を及ぼさないためである。いくつかの事例では、局部発振器の位相の制御は、たとえば、各送信信号についての開始位相基準が実質的に同一であることを確実にするのに有利な場合がある(同一でない場合にはわかるので、送信信号間の差異を補償することができる)。いくつかの実施形態では、送信器は、送信器で使用される様々な生成した信号間で、位相、振幅、サンプリング、および周波数の正確な制御を有利に達成することができる。さらに、いくつかの実施形態では、隣接するサブバンドに結合する1つのサブバンド中の所望の信号のエネルギーが、その隣接するバンドで検出される信号よりも著しく小さい(たとえば、2桁以上小さい)ので、局部発振器508の位相雑音は無視できる。
加えて、いくつかの実施形態では、送信器中の各信号チャネルは、位相および利得が互いに実質的に一致することができる。この一致を達成するために、補償回路を含むことができる。たとえば、送信器が各チャネルにおいて異なる増幅器回路を含む場合、送信信号および各チャネルにおける増幅器の非線形挙動に応じて、(たとえば、1つのチャネル上の効果が他のチャネルと同一でないといった)非対称な信号歪が発生する可能性がある。そのような挙動は、コヒーレントな一致したシステムに有害である可能性があり、そのため、チャネルにおける位相および振幅の不一致を減少または最小化させるために補償回路を使用することができる。
図5A中の送信器510は、前の図中の送信器よりも詳細に示されているが、本明細書で議論される送信器の各々は、送信信号をコヒーレントに合成するために、送信器510に関して議論されるものと同様の要素および特徴を含むことができる。
いくつかの実施形態では、送信信号ST1xおよびST1yは、有利に分離可能である。これは、送信信号ST1xおよびST1yが、受信器520によって互いに区別できる性質を有することを意味する。たとえば、送信器で生成される異なる信号は、信号間のクロストークをほとんど生じずに信号を受信器で分離できるように、何らかの意味でほぼ直交することができる。送信器で生成される複数の信号は、各アンテナで異なる信号を使用して、または各信号を送信するために複数のアンテナの異なる線形結合を使用することによって送出することができる。加えて、送信信号は、たとえば、符号間干渉を減少させるのを助ける巡回プレフィックスを採用することができる(非直交副搬送波)。
送信信号の分離特性は、たとえば、時分割多重、周波数分割多重、および/または符号分割多重を使用することを含む、いくつかの異なる方法で達成することができる。固有分解または特異値分解に基づく方法も使用することができる。他の方法も可能な場合がある。時分割多重の場合には、信号ST1xおよびST1yは、受信器が送信信号の各々に対する受信アンテナの各々の応答を区別できるように、異なるタイムスロット期間に送信することができる。しかし、多くの場合、システム500は、マルチパスチャネルの時間変動する性質を検出するために使用される。したがって、時間変動する性質をより完全に特徴づけるために、信号ST1xおよびST1yの両方を同時に、または重複する時間で送信することが望ましい場合がある。これは、送信信号についてのタイムスロットの長さと比較して短いタイムスケールで監視される変化が発生する場合に、特に成り立つ。信号ST1xとST1yが同時に(または重複する時間期間に)送信されるのが望ましい場合、周波数分割多重、符号分割多重、固有分解、特異値分解、および/または他の方法を使用することができる。
図5Bおよび図5Cは、図5Aで示されるシステムで使用することができる、2つの分離可能な送信信号を図示する。図示される例では、2つの送信信号は、周波数分割多重に基づいて分離可能である。図5Bは、周波数領域における送信信号ST1xの抽象的表現を示す。信号ST1xの帯域幅(BW)は、8個のセグメントへと分割されて示されている。斜線領域は、ST1xにより利用される周波数帯を示す。この場合、ST1xは、奇数の周波数サブバンド(すなわち、周波数サブバンド1、3、5、および7)を利用する。一方、図5Cは、周波数領域における送信信号ST1yの抽象的表現を示す。今度の場合も、信号ST1yの帯域幅(BW)は、8個のセグメントへと分割されて示されており、斜線領域は、ST1yにより利用される周波数帯を示す。この場合、ST1yは、偶数の周波数サブバンド(すなわち、周波数サブバンド2、4、6、および8)を利用する。信号ST1xとST1yは周波数が重複しないので、受信アンテナにおけるこれらの送信信号の各々に対する応答は、信号が同時に送信される可能性があるという事実にもかかわらず、別個に決定することができる。送信信号ST1xおよびST1yのこの分離特性は、送信器-チャネル-受信器システムを特徴づけるために取得して分析できる信号対(したがって、コヒーレント信号分散曲線)の数を、著しく増加することを可能にする。図5Bおよび図5Cが周波数分割多重方式のほんの1つの理想的な例を図示することを理解されたい。多くの他のものを使用することができる。さらに、符号分割多重は図示されていないが、同時または重複する時間に分離可能な信号を送信するために、符号分割多重も使用することができる。
送信器510は、アンテナT1を介して、RF搬送周波数にアップコンバートされた、分離可能なベースバンド信号ST1xおよびST1yを送信する。ST1x信号が送信アンテナT1のx偏波成分を介して送信される一方、ST1y信号は送信アンテナのy偏波成分を介して送信される。(信号は、x偏波モードとy偏波モードの異なる重み付けの組合せを使用して送信できることも可能である。)周波数選択性チャネル(この例では、マルチパスチャネル)は、受信アンテナR1、R2への複数の信号経路を作る1つまたは複数の目標物530を含む。これらの複数の信号経路は、空間的に分離した二重偏波受信アンテナR1、R2で受信される、分離可能な送信信号ST1xおよびST1yの異なる変調バージョンを引き起こす、マルチパス伝播効果をもたらす。
第1の受信アンテナR1は、受信RF信号の直交偏波成分を検出する。送信信号S
T1xに起因する第1の受信アンテナR1における検出信号のu偏波成分を表すために信号表記
を使用することができる一方、信号
が、送信信号S
T1xに起因する第1の受信アンテナR1における検出信号のv偏波成分を表す。この表記では、任意の所与の受信信号について、下付文字が受信アンテナおよび偏波チャネルを示し、一方上付文字は、その特定の受信信号を励起した送信信号を示す。この表記を使用して、送信信号S
T1yに起因するR1で検出されたu偏波成分およびv偏波成分は、それぞれ
と書くことができる。同様に、送信信号S
T1xに起因するR2で検出されたu偏波成分およびv偏波成分は、それぞれ
と書くことができる。また、送信信号S
T1yに起因するR2で検出されたu偏波成分およびv偏波成分は、それぞれ
と書くことができる。
これらの信号を、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、受信器520で処理することができる。受信器520によって実施することができる処理の部分は、送信信号ST1xおよびST1yの各々に起因する、4つのアンテナ入力の各々における信号応答を分離することである。たとえば、第1の受信器アンテナR1のu偏波成分における応答は、一般的に、それぞれ、x偏波とy偏波の両方で送信された送信信号ST1xおよびST1yのチャネルの修正されたバージョンの重ね合わせからなることになる。同じことが、一般的に、第1の受信アンテナR1のv偏波成分における応答および第2の受信アンテナR2のu偏波成分およびv偏波成分について当てはまる。受信器520は、送信信号の各々に起因する、各受信器入力における応答を分離するための、信号分離動作を実施することができる。
送信信号ST1xおよびST1yが、(図5Bおよび図5Cに示されるように)周波数分割多重を使用して分離可能にする場合、第1の受信アンテナR1のu偏波成分で受信されるそれぞれの信号ST1xおよびST1yは、送信信号の各々によってそれぞれ使用された周波数成分を分離することによって得ることができる。同じことを、他の3つの受信器入力で受信される信号に行うことができる。もちろん、実施される特定の信号分離動作は、送信信号を分離可能にするため送信器510で使用される技法(たとえば、時分割多重、周波数分割多重、および/または符号分割多重)に依存することになる。これらの多重化技法、ならびに固有分解または特異値分解技法などの他の技法を使用して組み合わされた信号を分離するための技法が当技術分野で知られている。任意のそのような分離技法を、受信器520が採用することができる。
要約すれば、送信器510が複数の信号を送信する場合(特に、複数の送信信号が時間的に一致する場合)、受信器520の各入力ポートにおいて検出される応答は、一般的に、複数の送信信号の各々の、送信器、受信器、および/またはチャネルの修正されたバージョンの重ね合わせからなることになる。受信器520によって実施される信号分離動作は、各送信信号に起因する、各受信器アンテナの各偏波成分における個別の応答を決定するために、これらの重ね合わされた信号を分離する。図5Aのシステム500の場合、信号分離動作の出力は、
信号となる。本明細書で議論されるように、受信器520は、チャネル中の1つまたは複数の目標物を含む、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、これらの信号をコヒーレントにサンプリングおよび処理することができる。
受信器520は、
信号をダウンコンバートし、アナログデジタル変換を実施することができる。これは、ダウンコンバータ522a〜522dおよびアナログデジタル変換器524a〜524dを使用して実行される。これらの構成要素の各々は、一貫した位相および/またはタイミング基準を維持するために、(回路構成に応じて適用可能であるが)共通の局部発振器528および/またはクロック信号に接続されて制御することができる。たとえば、信号を一貫した位相基準を使用してダウンコンバートすることができ、アナログデジタル変換器が同期したサンプルを取得することができる。これは、入力信号間の相対的な位相情報がデジタル化した信号で確実に保持されるのを助ける。加えて、受信器で位相のコヒーレンシーを維持するのにさらに助けとなるように、局部発振器528からこれらの信号構成要素への信号線526a〜526dを整合することができる。図5Aは、単一の局部発振器528を図示するが、複数の発振器が同期する場合には、複数の発振器を使用することができる。アナログデジタル変換器524a〜524dから出力されるデジタル信号をメモリ540に保存し、分析のためにプロセッサ550に送信することができる。図示されないが、受信器520は、増幅器、フィルタなどの、信号調整回路構成も含むことができる。加えて、受信器520は、中間周波数(IF)処理ステージを含むことができる。
いくつかの実施形態では、受信信号は、コヒーレントに受信されて分析される。様々な受信信号間で位相情報を保持することができる。たとえば、ダウンコンバート処理で使用した共通の局部発振器528を受信信号が共有することができ、デジタル変換の期間に信号を同期してサンプリングすることができる。受信器におけるコヒーレンスは、位相同期、周波数同期、サンプリング同期、ならびに周波数、時間および/または位相での局部発振器同期を含むことができる様々な形で、信号チャネルの同期を必要とする。いくつかの実施形態では、受信器520は、送信器510ともコヒーレントである場合がある。たとえば、送信器510と受信器520は、(送信器と受信器が一緒に収容されるモノスタティック実施形態でのように)局部発振器などの共通の位相基準を共有することができる。(これは、たとえば、システムに誘起されるドップラーの広がり特性を可能にすることによって、送信器-チャネル-受信器システムを特徴づけるさらなる方法を提供することができる。)さらに、対象のすべての周波数成分にわたって、(アンテナからアナログデジタル変換器への)受信器信号チャネルで利得および位相が一致すること、および各チャネルへの局部発振器信号利得が実質的に一致することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、受信器520は、様々な受信器チャネル間で、位相、振幅、サンプリング、および周波数の正確な制御を有利に達成することができる。
既に言及したように、受信器チャネルは、位相および/または利得を一致させることができる。いくつかの場合、位相および/または利得の一致は、動的に調整することができる。これは、各受信器チャネルで位相シフト要素および/または増幅器を使用して達成することができる。いくつかの実施形態では、これらの位相シフト要素および/または増幅器を、たとえば較正制御入力に基づいて調整可能とすることができる。較正制御入力は、較正信号を様々な受信器処理チャネルを通過させることにより得ることができる。較正信号に対する各処理チャネルの効果を、ここで決定することができる。各処理チャネルが較正信号に対して有する効果間の差異を減少または除去するために、較正制御入力を生成することができる。たとえば、受信器チャネルのそれぞれの利得間の差異を減少または除去するため、および/またはチャネル間の位相の差異を低減または除去するために、較正制御入力を生成することができる。加えて、異なる動作温度で誘起される場合がある、位相および/または利得の不一致の減少を助けるために、位相および/または利得の一致を温度補償することができる。位相および/または利得の一致を達成するために、デジタル化した信号のデジタル補償も採用することができる。
図5A中の受信器520は、前の図中の受信器よりも詳細に示されているが、本明細書で議論される受信器の各々は、受信信号をコヒーレントに受信および分析するために、受信器520に関して議論されるものと同様の要素および特徴を含むことができる。
一旦、
信号がダウンコンバートされてサンプリングされると、様々な信号対についてのそれぞれの周波数成分の位相および振幅を、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を学ぶ手段として、比較することができる。それらの異なる信号対については、図5Dに関して下で記載される。
図5Dは、図5Aで示されるシステム500についてコヒーレント信号分散情報を決定するため、周波数成分の位相および/または振幅を比較することができる信号対をリスト化する表である。既に議論したように、図5Aのシステム500は、(1つの二重偏波送信アンテナからの)2つの送信器チャネル、および(空間的に分離した二重偏波アンテナから得られる)4つの受信器チャネルを含む。図5Dの表に示されるように、システム500は、送信器-チャネル-受信器システムについての情報を決定するために、それぞれの周波数成分の位相および/振幅を比較することができる44個もの信号対を提供する。
図5Dにおける最初の6個の信号対は、第1の送信信号S
T1xに起因する、第1の受信器アンテナR1および第2の受信器アンテナR2における受信信号の様々な組合せによって形成される。これらは、
である。信号対1〜2は、受信アンテナR1、R2のうちの1つで検出された直交偏波成分からそれぞれ作られる。これらの場合の両方で、各対における信号について、それぞれの周波数成分の位相および/または振幅を比較することによって偏波情報を得ることができる。
異なるアンテナで検出された信号からの、それぞれの周波数成分の位相および/または振幅をやはり比較することによって、マルチパスチャネルについての追加の非偏波情報を得ることができる。図5Dにおける信号対3〜6を形成して、これらのアンテナ間比較を行うことができる。それらは、第1の送信信号S
T1xから生じ、
である2つのu偏波信号、第1の送信信号S
T1xから生じ、
である2つのv偏波信号、第1の送信信号S
T1xから生じ、
である第1のアンテナからのu偏波信号と第2のアンテナからのv偏波信号、最後に第1の送信信号S
T1xから生じ、
である第1のアンテナからのv偏波信号と第2のアンテナからのu偏波信号からなる。同じ送信信号S
T1xから生じる受信信号のそれぞれの周波数成分の位相および/または振幅のこれらのアンテナ間比較から生じる値(すなわち、図5Dに示される表における信号対3〜6から計算される値)は、偏波値ではない。それにもかかわらず、それらは、チャネル内の1つまたは複数の目標物を含む、送信器-チャネル-受信器システムについての重要な情報を含むことができる。
図5Dにおける第2の6個の信号対は、第2の送信信号S
T1yに起因する、第1の受信器アンテナR1および第2の受信器アンテナR2における受信信号の様々な組合せによって形成される。これらは、
である。共通アンテナ信号対は、受信アンテナR1、R2のうちの1つで検出された直交偏波成分からそれぞれ作られるものである。これらは、図5D中の信号対7および8である。これらの信号対について、それぞれの周波数成分の位相および/または振幅を比較することによって、偏波情報を得ることができる。しかし、追加の非偏波情報を、アンテナ間信号対から得ることもできる。これらは、図5D中の信号対9〜12である。
図5Dにおける次の16個の信号対(すなわち、信号対13〜28)は、第1の送信信号(すなわち、
)に起因する4つの受信信号の各々を、第2の送信信号(すなわち、
)に起因する4つの受信信号の各々と個別に対にすることによって形成される。具体的には、信号対13〜16は、第1の送信信号S
T1xに起因する第1の受信アンテナR1で検出されたu偏波成分と、第2の送信信号S
T1yに起因する(第1の受信アンテナR1および第2の受信アンテナR2の両方で検出された)受信信号の各々との比較を表す。信号対17〜20は、第1の送信信号S
T1xに起因する第1の受信アンテナR1で検出されたv偏波成分と、第2の送信信号S
T1yに起因する(第1の受信アンテナR1および第2の受信アンテナR2の両方で検出された)受信信号の各々との比較を表す。信号対21〜24は、第1の送信信号S
T1xに起因する第2の受信アンテナR2で検出されたu偏波成分と、第2の送信信号S
T1yに起因する(第1の受信アンテナR1および第2の受信アンテナR2の両方で検出された)受信信号の各々との比較を表す。最後に、信号対25〜28は、第1の送信信号S
T1xに起因する第2の受信アンテナR2で検出されたv偏波成分と、第2の送信信号S
T1yに起因する(第1の受信アンテナR1および第2の受信アンテナR2の両方で検出された)受信信号の各々との比較を表す。したがって、これらの信号対の各々が、「送信信号間」比較と呼ぶことができるものを表す。しかし、いくつかが共通アンテナ、送信信号間比較である一方、他のものは、アンテナ間、送信信号間比較である。それぞれの周波数成分の振幅および/または位相を比較するとき、これらの信号対は、偏波情報をもたらさない。それにもかかわらず、それらは、チャネル中にある目標物を含む、送信器-チャネル-受信器システムについての有用な情報をもたらす場合がある。
図5Dに示される表における最初の28個の信号対は、受信信号だけから作られる。しかし、8個の受信信号
の各々を2つの元々の送信信号S
T1xおよびS
T1yの各々と比較することによって、マルチパスチャネルについてのさらなる追加の非偏波情報を得ることができる。これらは、図5Dに示される表における信号対29〜44である。具体的には、信号対29〜30は、第1の送信信号S
T1xとそれに起因する4つの受信信号の各々(すなわち、
)との比較を表す。信号対33〜36は、第1の送信信号S
T1xと他の送信信号S
T1yに起因する4つの受信信号の各々(すなわち、
)との比較を表す。信号対37〜40は、第2の送信信号S
T1yと他の送信信号S
T1xに起因する4つの受信信号の各々(すなわち、
)との比較を表す。最後に、信号対41〜44は、第2の送信信号S
T1yとそれに起因する4つの受信信号の各々(すなわち、
)との比較を表す。
図5Aは、単一の二重偏波アンテナからの2つの送信器チャネルを有するシステム500を図示するが、2つの送信器チャネルは、代わりに、2つの空間的に分離したアンテナに接続することができる。実際に、システムは、任意の数の空間的に分離した送信器アンテナを含むことができ、それらの各々が、二重偏波であって、各々2つの送信器チャネルを提供することができる。さらに、図5Aに図示されるシステム500は2つの受信器アンテナを含むが、システム500は、単一の受信器アンテナを含む、任意の数の空間的に分離した受信器アンテナを含むことができる。また、それらの各々が二重偏波であって、各々2つの受信器チャネルを提供することができる。多数の送信器チャネルおよび受信器チャネルを有するシステムは、多数のコヒーレント信号分散曲線を提供することができる。たとえば、4送信器チャネル×4受信器チャネルシステムは、分析のために、100以上のコヒーレント信号分散曲線を提供することができる。しかし、本明細書に図示されるものなどのシステムは、任意の数のコヒーレントな送信器チャネルおよび任意の数のコヒーレントな受信器チャネルを含むことができることを理解されたい。加えて、任意の方向からの電場の送信または受信を可能にするように、送信器および/または受信器によって、三重偏波(tri-polarized)アンテナを使用することができる。
本明細書では、別個の送信器および/または受信器信号が、別個のアンテナポートの個々の出力と関係するとして記載してきたが、各送信信号が単一のアンテナを介して送信されるものとだけ対応する、または各受信信号が単一のアンテナを介して受信されるものとだけ対応する必要はない。たとえば、基本量としてアンテナポートを採用する代わりに、(送信器側および/または受信器側の)アンテナ素子の重み付けを行った組合せから導出されるビームを代わりに使用することができる。そのような場合、各ビームを、本明細書に記載される分析のための送信器/受信器信号のうちの1つとして取り扱うことができる。これは、コヒーレントシステムの利益の1つである。実施に、これらのビームは周波数依存性であってさえよい。空間的に分離したアンテナの線形な組合せでは、周波数依存性の重みが、周波数の関数として、異なるビームステアリング方向に対応することができる。単一の二重偏波アンテナの線形な組合せでは、周波数依存性の重みは、一般的に、周波数の関数として、異なる偏波に対応することになる。空間と偏波の両方で分離した素子を有するアンテナシステムでは、空間および偏波の次元を含む重み付けした組合せを使用することができる。
図1、図2A、図3A、図4A、および図5Aのすべてがバイスタティック送信器/受信器構成を図示するが、他の実施形態では、それらは各々モノスタティック構成であってよい。さらに、送信器および受信器は、それぞれ異なるアンテナを使用すると本明細書では記載してきたが、(たとえば、モノスタティックシステム中のように)送信器と受信器の両方で、1つまたは複数のアンテナを共通に共有することができる。これらの場合では、同時に動作するときの送信器と受信器との間の分離を改善するために、サーキュレータ(または、受信器での送信の影響を緩和する他の回路)を採用することができる。複数の分離可能な送信器信号が採用される場合、各受信器信号は、(分離回路により減衰される)共通アンテナに結合される送信器信号からの干渉にさらされるが、他の送信器信号からの対象の信号が直交し、それによって、受信器において分離可能な信号の受信を容易にすることができる。
加えて、図2、図3A、図4A、および図5Aは本明細書に記載される測定を実行するためRF信号を使用するが、本概念は、赤外線もしくは可視光信号、紫外線信号、またはx線信号など、様々なタイプの電磁放射により搬送される信号を含む、他のタイプの信号に等しく適用できることを理解されたい。加えて、本明細書に記載される概念は、音響信号など、電磁気力以外の他のタイプの波動現象により搬送される送信線または信号に適用することができる。さらに、電場を測定するアンテナの代わり、または電場を測定するアンテナに加えて、磁場を測定するため、代替センサを採用することができる。したがって、本明細書に記載されるシステムは、異なるタイプの信号を使用して動作するように適用することができる。
図6は、たとえば、図5Aのシステム500から送受信した信号を使用して、コヒーレント信号分析を行うための例示的な方法600を図示する。方法600は、ブロック610で開始し、ここで、たとえば図5Aに関連して議論されたように、複数の送信信号がコヒーレントに合成される。これらの送信信号は、チャネルを通して受信器(たとえば、受信器520)に送信することができる。ブロック620で、複数の信号は、マルチパスチャネルなどのチャネルを通して伝播された後に受信される。信号は、2つ以上の空間的に分離した受信器アンテナを使用して受信することができる。受信器アンテナは、二重偏波であってよい。受信信号は、(たとえば、送信器510を使用して)1つまたは複数の送信信号から生じる場合がある。受信信号は、たとえば図5Aに関連して議論されたように、コヒーレントに受信および分析すること(たとえば、コヒーレントにダウンコンバートし、同期してサンプリングすること)ができる。受信信号が複数の分離可能な送信信号から生じる場合、この処理は、各送信信号に起因する受信信号を分離するための信号分離動作を実施することを含むことができる。コヒーレントなサンプリングおよび処理は、様々な受信信号間の位相情報を保持することが好ましい。加えて、(モノスタティック構成で共有される局部発振器を使用して可能であるような)位相基準が送信器と受信器の両方の間で共有される場合、位相情報を送受信信号間で保持することができる。
ブロック630で、ブロック610および620からの送受信信号を、それぞれ、周波数サブバンドに分離することができる。これは、たとえば、フーリエ変換または他の処理を使用して行うことができる。
ブロック640で、送受信信号の複数の対が形成される。図5Dは、これらの信号対の例を図示する。一般的に、信号対は、受信信号のみの間、または受信信号と送信信号の間で形成することができる。受信信号と送信信号の間で信号対が形成されると、これらは、受信信号と受信信号が起因する特定の送信信号とを含む対、または受信信号と受信信号が起因するもの以外の送信信号とを含む対を含むことができる。信号対は、同じアンテナまたは異なるアンテナで検出された受信信号間で形成することができる。信号対は、同じ偏波または異なる偏波を有する受信信号間で形成することができる。加えて、信号対は、同じ送信信号に起因する受信信号間、または異なる送信信号に起因する受信信号間で形成することができる。
ブロック650で、ブロック640からの各信号対、およびブロック630からの各周波数サブバンドについて、周波数成分の位相および/または振幅の比較データを計算することができる。たとえば、信号のうちの一方の周波数成分の振幅は、それぞれの振幅間の差、または振幅比を計算することによって、他方のものと比較することができる。同様に、信号のうちの一方の周波数成分の位相は、それぞれの位相間の差を計算することによって、他方のものと比較することができる。これらの振幅および位相を比較するのに、他の計算も有用な場合がある。たとえば、いくつかの実施形態では、位相および/または振幅比較データの計算は、各信号対の各サブバンドについて、ジョーンズベクトルまたは(正規化した、または正規化していない)ストークスパラメータを計算することによって達成される。(この場合も、各サブバンドについてのストークスパラメータ(S
0、S
1、S
2、およびS
3)は、以下の式、すなわち、
に従って計算することができ、上式で、Y
1は、比較される信号の対における第1の信号についての振幅および/または位相情報を有する複素数であり、Y
2は、比較される信号の対における第2の信号についての振幅および/または位相情報を有する複素数である。)これらの計算は、従来では偏波状態を決定するために使用されているが、これらの計算は、計算が偏波情報をもたらさないような信号対である場合でさえも、解析ツールとして適用することができる。本明細書で議論したように、各信号対のサブバンド比較値ごとの組を、具体的な信号対に応じて、コヒーレント信号分散(CSD)曲線または偏波モード分散(PMD)と呼ぶことができる。
直前で言及したように、本明細書に記載される任意のシステムアーキテクチャから得られる各信号対について、ジョーンズベクトルまたはストークスベクトルを形成することができる。前者の表現は、単位ジョーンズベクトルを乗算する複素スケールファクタ(振幅および位相)として書くことができる。相対的な振幅および相対的な位相のみが(単位球上の偏波状態を特徴づけることなどで)対象である場合は複素スケールファクタを無視することができるが、複素スケールファクタにより提供される振幅および位相情報は、検知および他の用途で潜在的に有用な可能性がある。たとえば本明細書に提供される式を使用して、[S0 S1 S2 S3]という形のストークスベクトルを、各信号対について形成することができる。ストークスベクトルのこの正規化されていない形は、単位元の偏波の度数を有して(すなわち、S0の二乗が、S1、S2、およびS3の二乗の和に等しくて)もよく、有さなくてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、偏波の度数が単位元に近くなるように、サブバンド間隔を選択することができる。いくつかの場合では、(たとえば、S1、S2、およびS3の二乗の和がS0の二乗に等しく、このことによって、本質的に、偏波の単位度数を有する状態が「強制される」ように)、[S1 S2 S3]ベクトルを正規化するのが適切な場合がある。これらの場合のいずれかで、CSD曲線またはPMD曲線をプロットするとき、3Dの軌跡は単位球に束縛されないことになるが、いくつかの場合では、CSD曲線またはPMD曲線が単位球に束縛されるように[S1 S2 S3]ベクトルを正規化して単位振幅を持たせるのが有用な場合がある。PMDの場合、これは、偏波状態(すなわち、信号対に関連する信号間の相対的な振幅および相対的な位相)を考慮することに等しい。これらの表現は、主に相対的な振幅および相対的な位相情報を扱うために、いくつかの振幅および位相情報(複素スケールファクタ)は、この表現を通して保持されない。これらの場合すべてについて、特定の表現で失われる可能性がある信号対に関連する振幅および/または位相情報を保持することが有用である場合がある。振幅および位相は、これらの値を測定するために使用される何らかの基準と相対的であってよい。
各サブバンドについてのストークスパラメータの組の計算は、各サブバンドについてのストークスベクトルをもたらす。(この場合も、CSD信号対についてのストークスベクトルを計算するために、PMD信号対についてと同じ式を使用することができるが、CSD信号対についてのストークスベクトルは、偏波情報からなるわけではない。)ストークスベクトル(したがって曲線)が単位大きさに正規化されない場合、ベクトルは、信号を分析するのに位相情報に加えて利用できる振幅情報(たとえば、ストークスベクトル中のS0項が振幅情報を提供する)を含有する。正規化されていないストークスベクトルから得られたCSD(またはPMD)曲線は、必ずしも単位球上に存在するように束縛されないことになる。いくつかの場合では、CSDおよびPMD曲線が連続的となる場合がある。しかし、いくつかの場合では、結果として得られる曲線は、連続的でない場合がある点の軌跡である。たとえば、送信偏波がサブバンドで変わる場合、またはより一般的に、送信ポート間の相対的な振幅および位相がサブバンドで変わる場合、結果として得られる曲線は、不連続性を呈する場合がある。
各信号対について、(たとえば、1つまたは複数のサンプリングによって信号のうちの1つが遅延される)異なる相対遅延について、または(たとえば、2つの信号の副搬送波が同じでなく、意図的にオフセットされる)異なる周波数オフセットについて信号間で周波数成分の振幅および/または位相比較を行うことができる。遅延および周波数におけるこれらのオフセットは、同時に(たとえば、遅延におけるオフセットおよび周波数におけるオフセットを)考慮することもできる。そのような特性は、非相関時間および非相関周波数を確立するのに有用な場合がある。さらに、受信器信号および送信器信号からなる信号対は、比較のため信号を時間的に整合させるために、信号についての遅延差を使用することができる。たとえば、信号の相互相関を使用して、送信器信号を受信器信号と整合させるために使用されるべき遅延を識別することができる。
ダイナミックCSD曲線は、直前で記載した技法を時間的に繰り返して適用することによって、決定することができる。これは、受信信号/送信信号の対から、所望の長さのデータの時間窓を抽出することによって行うことができる。次いで、各時間窓について、周波数成分の位相および/または振幅の比較データは、各周波数サブバンドについて計算することができる。次いで時間窓を進めることができ、サブバンドごとの比較値をもう一度計算することができる。このプロセスは、CSD曲線の時間領域の挙動を決定するために、求められる限り繰り返すことができる。これらの繰り返しの各々についての時間窓の長さは、たとえば、分析されるべき時間変動する効果のタイムスケールに基づいて選択することができる。
ブロック660で、ブロック650からの周波数成分の位相および/または振幅の比較データ(たとえば、コヒーレント信号分散(CSD)曲線)を、チャネル中にある目標物の特性を含む、送信器、受信器、および/またはチャネルの特性を決定するために、分析することができる。いくつかの実施形態では、この分析は、球体もしくは他の多様体上またはその周りに各信号対についてのサブバンドごとの比較データをプロットすることによる視覚化を含むことができる。図7は、球体700上の例示的なコヒーレント信号分散曲線710、720、730を図示する。本明細書で以前に議論したように、偏波状態を視覚化するために、従来ではポアンカレ球が使用されてきた。ポアンカレ球上の各点は、従来では、異なる偏波状態に対応する。球体の反対側の点は、従来では、直交偏波状態に対応する。しかし、偏波情報をもたらさない信号対では、本表現は異なる量に対応する。本明細書に記載されるコヒーレント信号分散曲線710、720、730が偏波情報に関係しないという事実ににもかかわらず、有用な視覚化技法として、ポアンカレ球700と同様の単位球上または単位球の周りにコヒーレント信号分散曲線710、720、730をプロットすることが依然としてできる。
ブロック660における分析は、所与の時間におけるブロック660からの比較データの特性(たとえば、CSD曲線の球体上の長さ、形状、位置など)を識別することを含むことができる。対象の特性は、たとえば、比較データを較正データまたは以前に引き出された比較データと関係づけることにより識別することができる。加えて、分析は、時間の関数として、比較データの特性(たとえば、CSD曲線の球体上の長さ、形状、位置など)の変化を識別することを含むことができる。比較データの特性は、システムの物理特性に対応することができる。たとえば、CSD曲線の長さは、チャネル間の時間的な分散を反映することができ、CSD曲線の複雑さは、マルチパス構成を表すことができ、周期的な発振は、送信器-チャネル-受信器システム中の周期的なプロセスを反映することができる。比較データのこれらの性質のいずれか、または他のものを分析することができる。これらの分析は、時間領域、空間領域、および/または周波数領域で行うことができる。たとえば、チャネル内の目標物が周波数fvで振動するが、送信器および受信器は静止を保つと仮定する。PMDまたはCSDデータから計算されるダイナミックストークスパラメータのうちの1つまたは複数の、おそらく離散フーリエ変換を介したスペクトル分析が、fvにおける周波数成分の存在を表すはずである。他の周波数成分が存在する可能性と、このfv成分の強度が、前記振動する目標物についての有用な情報を提供することができる。したがって、スペクトル分析は、たとえば、ブロック660からの比較データの1つまたは複数のスペクトル成分の強度を決定することを含むことができる。マルチパスチャネルについての有用な情報を得るため偏波モード分散曲線を分析するために、多くの技法が、米国特許出願公開第2013/0332115号で開示される。偏波モード分散曲線とコヒーレント信号分散曲線との間の差異にもかかわらず、本明細書に開示されるCSD曲線に対して同じPMD曲線分析技法を適用することができる。したがって、米国特許出願公開第2013/0332115号は、そのような分析技法の開示のために、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
これらの分析の部分としてコヒーレント信号分散曲線に実施することができる様々な演算としては、フィルタ処理、平均化、統計分析、除去、統合、回転、平滑化、相関、固有分解、フーリエ分析、および多くの他のものが挙げられる。
いくつかの分析では、各コヒーレント信号分散曲線を、全体として曲線を表す単一の値に単純化することが有利な場合がある。これは、たとえば、質量中心演算を使用して行うことができる。コヒーレント信号分散曲線の質量中心が、不要な雑音を効率的、効果的に低減する一方、送信器-チャネル-受信器システムについての有用な情報を依然として提供できることを実験が示している。
測定されるCSD曲線におけるばらつきを減少させるために、推定技法を適用することができる。これは、典型的には曲線中の隣接するサブバンドについての値間に相関があるために、実行することができる(すなわち、コヒーレンス信号分散情報は、一般的に、1つのサブバンドから次のもので不連続性を呈すると予想されない)。コヒーレント信号分散曲線のこの性質は、CSD曲線推定の品質を改善する技法の使用を可能にする。
CSD曲線は、チャネル内の任意の目標物の状態を含む、送信器-チャネル-受信器システムに著しく依存すると考えられる。(たとえば、分析される帯域幅にわたって送信信号が適切な信号強度を有する限り、CSD曲線は、送信信号の特定の内容または性質に対してより低く、潜在的にははるかに低く依存する場合がある。)言い換えれば、CSD曲線は、送信器に影響を及ぼす要因(送信アンテナ位置/動き、送信偏波、ビームパターンなど)、受信器に影響を及ぼす要因(受信器アンテナ位置/動きおよびビームパターンなど)、およびチャネル応答をもたらす要因に強く依存すると考えられる。CSD曲線は、送信アンテナおよび受信アンテナの位置に関する、散乱体目標物の物理的な運動を含む、周波数選択性環境における物理的な変化に応じて変わることになる。これは、時間的に所与の瞬間におけるCSD曲線の特性を使用して、場合によっては、CSD曲線を作った送信信号の知識なしに、チャネル中にある目標物の具体的な状態を含む、具体的なマルチパスチャネルを識別することができる。
この性質の1つの用途は、チャネル中にある目標物についての有用な情報を決定するために、送信信号が必ずしも知られている必要がなくなることである。その代わり、送信信号として、機会の信号(signal of opportunity)を使用することができる。機会の信号としては、たとえば、セルラ電話信号、インターネットのホットスポットからのWiFi信号、および多くの他のものが挙げられる。これらの信号は、たとえば、環境中にある目標物についての情報を学習するために、本明細書で議論されるシステムおよび技法を使用して、受信および分析することができる。機会の信号の使用を伴うことができる1つの具体的な用途は、病院または他の診療環境において患者の心臓または呼吸数を測定するためのシステムである。そのような環境は、典型的には、ワイヤレス信号の送信に関する厳格な規制がある。したがって、システムがシステム自体の送信器を必要とせず、知られていない既存の機会の信号の使用を代わりに行うことができる場合、有利になることができる。システムは、本明細書で議論されるように、それらの既存の送信信号を受信して処理することによって、1つまたは複数のCSD曲線を生成することができる。受信器と知られていない機会の送信信号との間の伝播チャネル中に患者の心臓または肺が存在する場合、1つまたは複数のCSD曲線は、心臓または肺の運動の速度についての情報を含む可能性がある。この運動の速度は、たとえば、CSD情報の周波数内容を分析することによって決定することができる。
本明細書に記載されるCSD分析の別の用途は、たとえば、機械的な機構の運動を監視することに関する。固定された送信アンテナおよび受信アンテナの場合、そのような運動は、小さい振動の場合でさえ、目標物のマルチパスワイヤレス環境への変化をもたらす可能性がある。既に言及したように、マルチパスチャネル環境中のこれらの変化は、本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用して検出されるCSD曲線に対応する変化をもたらす可能性がある。機構の正常な動作を監視するため、または新しいもしくは異なる振動などの不規則動作を検出するためにさえ、CSD曲線中の変化を分析することができる。3枚羽根ファンの例を考える。ファンの回転周波数は、CSD曲線から決定することができる。というのは、CSD曲線は、ファンの回転周波数に対応する速度で変わることになるためである。さらに、ボールベアリングが作用しなくなり始めた、またはファンの羽根のうちの1つが損傷した場合、そのことにより、やはりCSD曲線中の変化を監視することによって検出できる振動の変化が誘起されることになる。目標物体のそのような物理的な運動についての有用な情報を得るため偏波モード分散曲線を分析するために、多くの技法が、米国特許出願公開第2013/0332115号で開示される。偏波モード分散曲線とコヒーレント信号分散曲線との間の差異にもかかわらず、本明細書に開示されるCSD曲線に対して同じPMD曲線分析技法を適用することができる。したがって、米国特許出願公開第2013/0332115号は、そのような分析技法の開示のために、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
本明細書に記載されるCSD曲線が米国特許出願公開第2013/0332115号に記載されるPMD曲線を超える1つの利益は、PMD曲線をはるかに凌駕するCSD曲線の豊かな多様性である。CSD曲線の豊かな多様性のために、チャネル中の目標物体を含む、マルチパスチャネルの所与の時間変動する特性がCSD曲線のうちの少なくとも1つで明らかになる可能性がはるかに高くなる。
米国特許出願公開第2013/0332115号は、PMD分析の多くの他の実際の用途を記載する。CSDを実施するために本明細書に記載されるシステムおよび方法は、おそらくは改善された結果を伴って、それらの用途のいずれにも適用することができることを理解されたい。このようにして、米国特許出願公開第2013/0332115号は、すべてのそのような実際の用途の開示のために、本明細書に参照によって組み込まれる。
図8は、本明細書で記載されるコヒーレント信号分散分析を実施するための卓上分析器800の例である。卓上分析器800は、本明細書で議論されるような、偏波モード分散曲線およびコヒーレント信号分散曲線の測定および分析を可能にすることができる。図示される実施形態は、RF信号を使用して動作するが、他のタイプの波により搬送される信号も使用することができる。卓上分析器800は、受信器(たとえば、520)のみ、送信器(たとえば、510)のみ、または送信器(たとえば、510)と受信器(たとえば、520)の両方を含むことができる。
卓上分析器800は、研究室用途と現場用途の両方で、PMD識別特性とCSD識別特性の測定および特徴づけを可能にすることができる。これらは、限定はしないが、以下、すなわち、ワイヤレスセキュリティのための識別特性測定、振動測定システム、表面粗さの特徴づけ、マルチパスの特徴づけ、変化検出、形状変化検知、平行移動検知、誘電体変化、心拍数/心律動測定、呼吸数/呼吸律動測定、湿度変化検知、温度変化検知、熱膨張、空隙比検知を含むキャビテーション、マルチフロー位相変化検知、パルスデインターリーブ、ジェットエンジンタービン振動、パルス源関連、MIMOレーダ目標物関連、地震学、干渉抑制、生物組織の画像化、マルチモードの画像化、通信、地下レーダ、熱膨張、構造物完全性、音響振動測定法、鉄道線路の健全性監視、音楽の楽曲再構築、器具調整、食品製造ラインにおける混入物検出、周波数デホッピング、構造物監視、電子戦争、および多くの他の用途を含むことができる。
典型的には単一の入力RFポートを組み込み、単一のポート上で受信した信号の時間変動する電力スペクトルを監視するスペクトル分析器とは異なり、分析器800は、最低限2つの受信器入力ポートを必要とする。これら2つの受信器チャネルは、位相がコヒーレントであり、機器の周波数範囲にわたって、利得および位相の一致を呈することができる。
分析器800は、受信器(たとえば、図5Aに示される520)を収納する筐体840を含む。受信器は、少なくとも2つの入力ポート850、好ましくは少なくとも4個の入力ポートを有する。受信器入力ポート850は、受信器520のコヒーレント処理チャネルに信号を提供する。受信器入力ポート850を、2つ以上の外部アンテナ出力に接続することができる。アンテナは、図2、図3A、図4A、または図5Aに示される構成のいずれかで設けることができる。さらなるアンテナ構成も可能である。いくつかの実施形態では、分析器800は、受信器入力ポート850に接続されるアンテナの構成(たとえば、二重偏波、空間的に分離した、空間的に分離した二重偏波、など)をユーザが指定することを可能にする、ユーザ入力モジュールを含む。接続されるアンテナ入力の数および構成に基づいて、分析器800は、どの信号対を形成して分析するのかを決定することができる。たとえば、信号対は、図3B、図4B、または図5Dに図示されるもののいずれかであってよい。他の実施形態では、受信器入力ポート850を、中間周波数信号またはベースバンド信号に接続することができる。
分析器800の筐体840は、送信器(たとえば、図5Aに示される510)も収納することができる。送信器510は、少なくとも1つの出力ポート860を有する。(図示されるように、送信器510および/または受信器520を取外し可能なモジュールとして実装することができる。)いくつかの実施形態では、送信器510は、2つ、4つ、またはそれ以上の出力ポート860を有する。送信器出力ポート860を、1つまたは複数の送信アンテナに接続することができる。いくつかの実施形態では、分析器800は、送信器出力ポート860に接続されるアンテナの構成をユーザが指定することを可能にする、ユーザ入力モジュールを含む。
分析器800は、1つまたは複数のディスプレイ880も含むことができる。これらは、球体上のコヒーレント信号分散曲線、および他の視覚化補助手段を表示することができる。分析器800は、ボタン、ノブなどの、1つまたは複数のユーザ入力要素870も含むことができる。ユーザ入力要素870は、信号処理パラメータ、信号分析機能、出力などの、様々なユーザ選択可能なオプションを制御するために使用することができる。加えて、分析器800は、周辺デバイスと通信するための入出力ポート890を含むことができる。分析器800は、本明細書で開示されるシステムに関して議論される構成要素のいずれかも含むことができる。加えて、分析器800は、本明細書で議論される処理機能のいずれかを実施することができる。
実施形態は、添付図面に関して記載されてきた。しかし、図は、原寸に比例して描かれていないと理解されたい。距離、角度などは、単に例示であり、図示されるデバイスの実際の寸法およびレイアウトに対し必ずしも正確な関係を持たない。加えて、上記の実施形態は、当業者が本明細書に記載されるデバイス、システムなどを作って使用することが可能な詳細さのレベルで記載されてきた。多種多様な変形形態が可能である。構成要素、要素、および/またはステップは、変更、追加、除去、または再配置することができる。ある実施形態が明示的に記載されている一方で、この開示に基づいて、当業者には他の実施形態が明らかとなろう。
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、たとえば、コンピュータソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またなソフトウェア、ハードウェア、およびファームウェアの任意の組合せを使用して有利に実装することができる。ソフトウェアモジュールは、本明細書に記載される機能を実施するためのコンピュータ実行可能なコードを含むことができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能なコードは、1つまたは複数の汎用コンピュータによって実行される。しかし、当業者は、本開示に鑑みて、汎用コンピュータ上で実行されるソフトウェアを使用して実装され得る任意のモジュールを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェアの異なる組合せを使用して実装することもできることを理解されよう。たとえば、そのようなモジュールは、集積回路の組合せを使用して、完全にハードウェアで実装することができる。代替または追加として、そのようなモジュールは、汎用コンピュータによってではなく、むしろ本明細書に記載された具体的な機能を実施するように設計された専用コンピュータを完全にまたは部分的に使用して実装することができる。加えて、少なくとも部分的にコンピュータソフトウェアによって実行される、または実行することができる方法が記載されているが、そのような方法は、コンピュータまたは他の処理デバイスによって読み取られると、コンピュータまたは他の処理デバイスに方法を実行させるコンピュータ可読媒体(たとえば、CDまたはDVDなどの光学ディスク、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、ディスケットなど)上で提供することができることを理解されたい。
当業者は、本開示に鑑みて、複数の分散コンピューティングデバイスが、本明細書に説明される任意の1つのコンピューティングデバイスを代替することができることも理解されよう。そのような分散型の実施形態では、1つのコンピューティングデバイスの機能は、いくつかの機能が分散コンピューティングデバイスの各々で実施されるように分散される。
ある実施形態が明示的に記載されている一方で、この開示に基づいて、当業者には他の実施形態が明らかとなろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照することにより規定されることが意図され、明示的に記載されている実施形態に単純に関係して規定されることは意図されない。