(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2013年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/861,109号、2014年5月29日に出願された米国仮特許出願第62/004,436号の利益を主張し、これらは参照により組み込まれる。
肥満症は世界的にまん延し、2型糖尿病、心血管疾患、脂肪肝及びがんのような慢性疾患に関連する。肥満症は、エネルギー消費量を超えるエネルギー摂取量の結果として発症し、脂肪組織内に脂肪の形態での余分なカロリーの最終的な貯蔵につながる。肥満症は、代謝的に、2型糖尿病(インスリン抵抗性)及び脂肪肝と関連し、後者は、脂肪性肝炎、肝細胞がんの発症及び肝不全をもたらし得る。したがって、食欲を抑制する、食事脂肪呼吸を阻害する、脂肪モビリゼーションを誘導する、或いは代謝を増大する医薬アプローチが、肥満症及び関連する代謝障害の治療に理想的であろう。
ファルネソイドX受容体(FXR)は、ラット肝臓cDNAライブラリーから初めて同定された核内オーファン受容体であり(Forman, et al., Cell 81:687−693,1995)、それは、昆虫エクジソン受容体に最も密接に関連する。FXRは、ステロイド、レチノイド及び甲状腺ホルモンの受容体を含む転写因子の核内受容体のスーパーファミリーのメンバーである(Mangelsdorf, et al., Cell 83:841−850,1995)。ノーザンブロット法及びin situハイブリダイゼーション分析により、FXRが、肝臓、腸、腎臓及び副腎において最も豊富に発現することが示された(B.M. Forman, et al., Cell 81:687−693.1995; Seol, et al., Mol. Endocrinol. 9:72−85, 1995)。FXRは、ビタミンA誘導体9−cisレチノイン酸により活性化するレチノイン酸受容体α(RXRα)とのヘテロ二量体としてDNAに結合するリガンド活性化核内受容体である。FXR/RXRαヘテロ二量体は、逆方向反復として組織化され、単一のヌクレオチドにより分離されるコンセンサスAG(G/T)TCAの2つの核内受容体半部位から構成される反応エレメント(IR−1モチーフ)に優先的に結合する(Forman, et al., Cell 81:687−693,1995)。初期の報告では、ラットFXRがマイクロモル濃度のファルネソイド類(例えばファルネソール)及び幼若ホルモンにより活性化されることが示されている(このように、そのオリジナル名が説明される。)(Forman, et al., Cell 81:687−693, 1995)。しかしながら、これらの化合物は、弱いリガンドであり、また、対応するマウス及びヒトのFXRを活性化することはできず、内因性FXRリガンドの性質は不明のままであった。しかしながら、いくつかの天然に存在する胆汁酸が生理的濃度でFXRに結合して活性化することが見出された。(Makishima, et al., Science 284:1362−1365, 1999; Parks, et al., Science 284:1365−1368, 1999; Wang et al., Mol. Cell 3:543−553,1999; PCT WO 00/37077(2000年6月29日公開))。FXRリガンドとして機能する胆汁酸としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)及びこれらの胆汁酸のタウリン及びグリシン複合体が挙げられる。
胆汁酸は、肝臓で形成し、腸の十二指腸に分泌されるコレステロール代謝物であり、それらは、食物の脂肪及びビタミンの可溶化及び吸収で重要な役割を果たす。次いで、約95%の胆汁酸が、回腸で再吸収され、腸肝循環系を介して肝臓に戻される。肝臓でのコレステロールから胆汁酸への変換は、フィードバック調節に基づき、胆汁酸は、胆汁酸生合成における律速工程を触媒する酵素をコードするシトクロムP450 7A1(CYP7A1)の転写を下方調節する。FXRは、FXR標的遺伝子の小ヘテロ二量体パートナー(SHP)及び肝臓受容体ホモログ1に関連する間接的機構を介して胆汁酸によるCYP7A1の発現の抑制に関与している(Goodwin et al., Mol. Cell 6:517−528, 2000; reviewed in Matsubara et al., Mol. Cell. Endocrinol. 368:17−29, 2013)。回腸において、胆汁酸は、FXRに依存して、腸内胆汁酸結合タンパク質(IBABP)、細胞質タンパク質(胆汁酸と高い親和性で結合し、それらの細胞取り込み及び輸送に関与している可能性のあるもの)の発現を誘発する。現在、2つのグループが、胆汁酸は、ヒト、ラット、及びマウスのIBABP遺伝子プロモーターに保存されているIR−1型反応エレメントに結合するFXRの活性化を通じてIBABP発現に対するそれらの効果を媒介するということを証明している。したがって、FXRは、胆汁酸及びコレステロールのホメオスタシスに関与する標的遺伝子の刺激(IBABP)及び抑制(CYP7A1)の両方に関与している。また、FXRは、非抱合胆汁酸及び抱合胆汁酸/塩を肝細胞から胆汁に輸送する胆汁酸塩輸送ポンプ(BSEP、ABC11)の発現を誘導する (Matsubara et al., Mol. Cell. Endocrinol. 368:17−29, 2013を見直し)。
テンポール(4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)(酸化防止剤及び放射線防護剤)がマウスの肥満症を防ぐことが報告された(Mitchell et al., Free Radic. Biol Med. 34: 93−102, 2003)。最近の質量分析に基づく研究は、テンポールが脂肪酸代謝に影響を与え得るということを明らかにし、疑わしい腸内微生物産生代謝物のレベルの変化により、テンポールがマイクロバイオームを変化し得るという初期の手掛かりを提供した(Li et al., J. Proteome Res., 12:1369−1376, 2013)。これまでの研究により、腸内マイクロバイオームの変化が、肝臓、心臓及び腎臓における胆汁酸のレベルに影響を与え得るということが証明された(Swann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108:4523−4530, 2011)。高脂肪食は、FXRを含む核内受容体により制御される小腸における遺伝子の発現の変化を誘導し得る(de Wit et al., BMC Med. Genomics 1:14, 2008)。したがって、変化する腸内の胆汁酸と、FXRシグナル伝達との間に関係が存在する可能性があり、それにより、高脂肪食誘発性肥満症を改めさせることができる可能性がある。既知の天然型及び合成型FXR作動薬が存在する一方で、FXRに拮抗する治療薬は開示されていない。最近の研究により、二次胆汁酸タウロ−β−ムリコール酸(TβMCA)が、腸内の胆汁酸シグナル伝達に拮抗できることが明らかとなった(Sayin et al., Cell Metab. 225−235, 2013; Li et al., Nat. Commun. 4:2384, 2013)。FXR拮抗薬である三置換ピラゾールカルボキサミド類似体が合成されたが、代謝及び生理機能に対する影響を調べられていなかった(Yu et al., Bioorg. Med. Chem. 2919−2938, 2014)。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、他の肝疾患又は大量のアルコール消費を伴わない肝臓における、大量の異所性トリグリセリド(TG)の蓄積により特徴づけられる(Weiβ et al., Dtsch. Arzteb.l Int. 2014; 111:447−452, 2014)。NAFLDは、世界中の成人人口の20〜30%、肥満の人々の80%以上が冒されている最も一般的な肝臓障害である。NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、線維症、肝硬変、さらには肝細胞癌を発症させ得る(Browning et al., J. Clin Invest. 114:147−152, 2004)。メタボリックシンドロームの構成要因として、NAFLDは、肥満症、インスリン抵抗性/2型糖尿病、並びに冠動脈疾患及びアテローム性動脈硬化症と密接に関連している(Bhatia et al., Eur. Heart J. 33:1190−1200, 2012)。現在までに、NAFLD発症の根本的な分子機構は、ほとんど知られていないままであり、NAFLDの治療のための新規標的の同定が高い優先度にある。
上記は、FXR受容体の拮抗薬、並びに体重損失、インスリン抵抗性及びNAFLDを誘導する肥満患者の治療方法に満たされない必要性が存在することを示している。
本発明は、哺乳動物(特にヒト)における肥満症の治療又は予防のための核内受容体ファルネソイドX受容体の阻害剤を提供する。本発明の実施形態の化合物は、ファルネソイドX受容体を阻害し、ファルネソイドX受容体により媒介されるシグナル伝達を介する高脂肪食誘発性肥満症に作用する。本発明によれば、本発明は、肥満症の治療又は予防の治療剤としてのこれらの化合物を含む組成物及びこれらの化合物の使用方法を提供する。
また、本発明は、本発明の原理を具現化する化合物又は塩、及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、本発明の原理を具現化する化合物又はその医薬上許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるファルネソイドX受容体の阻害方法を提供する。
さらに、本発明は、本発明の原理を具現化する化合物又はその医薬上許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における肥満症の治療又は予防方法を提供する。
また、本発明は、本発明の原理を具現化する化合物又はその医薬上許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの治療又は予防方法を提供する。望ましくは、その化合物は、腸内のファルネソイドX受容体を阻害し、腸内のファルネソイドX受容体のみにより媒介され、肝臓のファルネソイドX受容体によっては媒介されないシグナル伝達を介して、肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDに作用する。好ましくは、その化合物が任意の全身毒性を最小限に抑える肝臓のファルネソイドX受容体を阻害しないために、その化合物は最小限の全身生物学的利用能を有する。
さらに、本発明は、本発明の実施形態の化合物の合成方法を提供する。
図1は、タウロ−β−ムリコール酸(TβMCA)が、培養された初代肝細胞においてFXR作動薬タウロコール酸(TCA)によりファルネソイドX受容体(FXR)活性化に拮抗することを示すルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
図2は、タウロ−β−ムリコール酸(TβMCA)が、Caco2細胞においてFXR作動薬タウロコール酸(TCA)によりFXR活性化に拮抗することを示すルシフェラーゼアッセイの結果を示す。
図3は、8週間高脂肪食で飼育されたFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの回腸粘膜におけるATPレベルを説明する。
図4は、グリシン−β−ムリコール酸によるケノデオキシコール酸でのShp mRNAの誘導阻害を説明する。
図5は、グリシン−β−ムリコール酸によるGW4064でのShp mRNAの誘導阻害を説明する。
図6は、グリシン−β−ムリコール酸によるGW4064でのFgf19 mRNAの誘導阻害を説明する。
図7は、グリシン−β−ムリコール酸によるGW4064でのAtp5g mRNA阻害の拮抗を説明する。
図8は、本発明の実施形態に従う化合物の合成を示す。
図9は、本発明の実施形態に従う化合物の合成を示す。
図10は、β−ムリコール酸、タウロ−β−ムリコール酸(TβMCA)、グリシン−β−ムリコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸(TCA)及びグリシン−ケノデオキシコール酸の構造を示す。
図11は、高脂肪食10週間後にビヒクル又はテンポールで処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの体重増加を説明する。
図12は、高脂肪食14週間後のFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの体重の割合としてのグラムでの脂肪質量を説明する。
図13は、高脂肪食7週間後のFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの耐糖試験(GTT)の結果を説明する。
図14は、高脂肪食13週間後のFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスのインスリン耐性試験(ITT)の結果を説明する。
図15は、高脂肪食15週間後のFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの絶食時糖、絶食時血清インスリン及びHOMA指数を説明する。
図16は、テンポールでの処置時に標準的な固形飼料を与えたマウスのファーミキューテス門からバクテロイデス門へのシフトを示す。
図17は、ファーミキューテス門のバクテロイデス門に対する比、及び標準的な固形飼料及びビヒクル処置マウス又はテンポール処置マウスの糞便中の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素活性の比較を示す。
図18は、合成した作動薬GW4064及び多様な用量のTUDCA、TωMCA、TβMCA、TαMCAを用いたヒトFXR競合アッセイを説明する。結果をウミシイタケ発現に標準化した。
図19Aは、weighted UniFrac distanceの主座標分析のプロットを示す。円は、ビヒクル処置マウスの盲腸コミュニティーを示し、四角は、テンポール処置マウスの盲腸コミュニティーを示す。両方のグループとも10週間高脂肪食を与えた。
図19B〜Gは、盲腸の内容物の種類レベルの16S rRNA遺伝子配列解析を示す。データは、平均±SDとして示す。
図20Aは、14週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの尿のイオンの主成分分析(PCA)モデルのスコア散布図を示す。
図20Bは、PCAモデルにおける全ての検出された尿のイオンの負荷散布図を示す。p[1]及びp[2]値は、主成分1及び2に対する各イオンの寄与質量を示す。最も高い負荷値の2つのイオンの識別のために、プロットに注釈をつける。全てのデータは、エレクトロスプレイイオン化法ネガティブモード(ESI−)で得た。
図20Cは、p−クレゾールスルファート及びp−クレゾールグルクロニドの尿のレベルを示す。値をビヒクル処置マウスのものに標準化し、相対量として表した。
図20Dは、p−クレゾールスルファート(下パネル)及びp−クレゾールグルクロニド(上パネル)のタンデムMS及び化学構造を示す。
図21Aは、高脂肪食の処置の14週間後のビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの尿のイオンのPCAモデルのスコア散布図を示す。
図21Bは、HFDの14週間後のビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスにおける尿のイオンのPCAモデルの負荷散布図を示す。p[1]及びp[2]値は、主成分1及び2に対する各イオンの寄与質量を示す。最も高い負荷値の2つのイオンの識別のために、プロットに注釈をつける。全てのデータは、ネガティブモード(ESI−)で得た。
図21Cは、高脂肪食の処置の14週間後のビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスにおけるp−クレゾールスルファート及びp−クレゾールグルクロニドの尿のレベルを示す。値をビヒクル処置マウスのものに標準化し、相対量として表した。グループあたりn=5マウス。全てのデータは平均±SDとして示す。分散分析に続いて両側スチューデントのt検定をした。*P<0.05、**P<0.01は、ビヒクル処置マウスとの比較。
図22Aは、14週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図22Bは、14週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓切片における脂質液滴の代表的なOil Red O染色を示す。
図22Cは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓の質量を示す。
図22Dは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスにおける体重に対する肝臓の質量の比を示す。
図22Eは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓トリグリセリド(TG)内容物を示す。
図23Aは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図23Bは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓の質量を示す。
図23Cは、16週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの体重に対する肝臓の質量の比を示す。
図23Dは、16週間高脂肪食を与えたビヒクルで処置したもの及び抗生剤で処置したものの肝臓TG内容物を示す。
図24Aは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの回腸のイオンのPCAモデルのスコア散布図を示す。
図24Bは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスにおける回腸のイオンのPCAモデルの負荷散布図を示す。p[1]及びp[2]値は、主成分1及び2に対する各イオンの寄与質量を示す。最も高い負荷値を有する2つのイオンの識別のために、プロットに注釈をつける。全てのデータは、ネガティブモード(ESI−)で得た。
図25Aは、14週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの回腸の総胆汁酸に対する単一タウリン結合胆汁酸の比を示す。
図25Bは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの回腸における総胆汁酸に対する単一タウリン結合胆汁酸の比を示す。
図26Aは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの糞便のBSH酵素活性を示す。グループあたりn=4−5のマウス。
図26Bは、12週間高脂肪食を与えたマウスにおける回腸のFXR発現のウエスタンブロット解析を示す。各レーンは1匹のマウスを示す。
図26Cは、12週間高脂肪食を与えたマウスの回腸におけるFxr mRNAレベル及びFXR標的遺伝子Shp及びFgf15のmRNAレベルを示す。グループあたりn=3マウス。
図26Dは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの回腸におけるFXR標的遺伝子Shp及びFgf15のmRNAレベルを示す。グループあたりn=3マウス。
図26Eは、7週間高脂肪食を与えたマウスの、ビヒクル、タウロコール酸(TCA)及びタウリン−β−ムリコール酸(TβMCA)(TCAと共に)で処置した24時間後の回腸におけるFXR標的遺伝子Shp及びFgf15のmRNAレベルを示す。グループあたりn=3マウス。
図27Aは、14週間高脂肪食を与えた対照フロックス(Fxrfl/fl)マウス及び腸特異的ノックアウトマウス(FxrΔ1E)のマウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図27Bは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔ1Eマウスの肝臓切片における脂質液滴の代表的なOil Red O染色を示す。
図27Cは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔ1Eマウスの肝臓の質量を示す。
図27Dは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔ1Eマウスの肝臓トリグリセリド内容物を示す。
図28Aは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔ1Eマウスの回腸粘膜のミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)関連酵素のmRNAレベルを示す。
図28Bは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの回腸粘膜のミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)関連遺伝子のmRNAレベルを示す。グループあたりn=3マウス。
図28Cは、12週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔ1Eマウスの回腸粘膜の複合体I及び複合体II依存呼吸に対する測定された状態III呼吸を示す。
図28Dは、7週間高脂肪食を与えたFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの回腸粘膜におけるATPレベルを示す。
図29Aは、血清遊離脂肪酸類を示す。左から右への各脂肪酸のバーは、ビヒクルで処置したFxrfl/fl マウス、テンポールで処置したFxrfl/fl マウス、ビヒクルで処置したFxrΔIEマウス及びテンポールで処置したFxrΔIEマウスである。
図29Bは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの血清セラミドを示す。グループあたりn=3マウス。
図29Cは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの回腸におけるセラミド合成関連酵素及びセラミド異化関連酵素をエンコードするmRNAの発現を示す。
図29Dは、14週間高脂肪食を与えたマウスの抗生剤の治療の7週間後の回腸におけるセラミド合成関連酵素及びセラミド異化関連酵素をエンコードするmRNAのレベルを示す。
図30Aは、セラミド由来のMSフラグメントの構造を示す。
図30B〜30Gは、様々なセラミドのタンデムMS及び化学構造を示す。
図31Aは、高脂肪食を3日間与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスにおける肝臓TG内容物を示す。
図31Bは、14週間高脂肪食を与え、次いでビヒクル又は抗生剤で3日間処置したマウスの回腸におけるFxr、Shp及びFgf15のmRNAレベルを示す。
図31Cは、14週間高脂肪食を与え、次いでビヒクル又は抗生剤で3日間処置したマウスの回腸に由来するセラミドのプロファイルを示す。
図31Dは、ビヒクル及び2μM、5μM及び10μMセラミド(n=4)でのインキュベーションの24時間後の初代肝細胞のトリグリセリド(TG)内容物を示す。
図31Eは、ビヒクル及び2μM、5μM及び10μMセラミドでインキュベーションの16時間後の初代肝細胞における脂肪酸合成、トリグリセリド合成、及び脂肪酸異化に関連する遺伝子のmRNAレベルを示す(各mRNAについて左から右のバー、各n=5)。
図31Fは、ビヒクル、及び2μM及び10μMセラミド(n=3)でのインキュベーションの24時間後の初代肝細胞における核SREBP1−N発現のウエスタンブロット解析を示す。
図31Gは、ビヒクル、及び2μM及び10μMセラミド(n=3)でのインキュベーションの24時間後の初代肝細胞におけるCIDEA発現のウエスタンブロット解析を示す。
図32Aは、14週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの肝臓における脂肪酸合成及びトリグリセリド合成の関連酵素をエンコードするmRNAのレベルを示す。
図32Bは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓における脂肪酸及びトリグリセリドの合成に関連する酵素をエンコードするmRNAの発現を示す。
図32Cは、7週間高脂肪食を与えたマウスの肝臓における脂肪酸の酸化関連遺伝子のmRNAレベルを示す。
図32Dは、14週間高脂肪食を与えたFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの肝臓における脂肪酸酸化関連遺伝子のmRNAレベルを示す。
図32Eは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの肝臓におけるSREBP1−Nタンパク質発現のウエスタンブロット解析を示す。LAMIN A/Cを負荷対照として使用した(n=3)。
図32Fは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの肝臓におけるCIDEAタンパク質発現のウエスタンブロット解析を示す。β−ACTINを負荷対照として使用した(n=3)。
図32Gは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの肝臓におけるCyp7a1mRNAレベルを示す(n=3)。
図32Hは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓におけるCyp7a1mRNAレベルを示す(n=3)。
図32Iは、7週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したものの肝臓における炎症関連遺伝子のmRNAレベルを示す(n=3)。
図32Jは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びテンポール処置マウスの肝臓における炎症関連遺伝子のmRNAレベルを示す(n=3)。
図33Aは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図33Bは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓切片における脂質液滴のOil Red O染色を示す。
図33Cは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓の質量を示す。
図33Dは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの体重に対する肝臓の質量の比を示す。
図33Eは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓トリグリセリド内容物を示す。
図33Fは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの回腸におけるセラミドのリピドミクスプロファイルを示す(各セラミドについてはそれぞれ左から右のバー)。
図33Gは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及び抗生剤で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの血清セラミドレベルを示す(各セラミドについてはそれぞれ左から右のバー)。
図34Aは、14週間高脂肪食を与えた、ビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図34Bは、高脂肪食の14週間でビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの肝臓切片における脂質液滴のOil Red O染色を示す。
図34Cは、高脂肪食の14週間でビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの肝臓の質量を示す。
図34Dは、高脂肪食の14週間でビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの体重に対する肝臓の質量の比を示す。
図34Eは、高脂肪食の14週間でビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの肝臓トリグリセリド値を示す。
図34Fは、高脂肪食の14週間でビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスの肝臓における脂肪酸合成、トリグリセリド合成、及び脂肪酸異化に関連する遺伝子のmRNAレベルを示す。それぞれのmRNAに基づくバーは、左から右へに、ビヒクルで処置したFxrfl/flマウス、テンポールで処置したFxrfl/flマウス、ビヒクルで処置したFxrΔIEマウス、テンポールで処置したFxrΔIEマウスである。
図34Gは、高脂肪食の16週間でのFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスのテンポール処置後の肝臓核SREBP1−N発現のウエスタンブロット解析を示す。各レーンは単一のマウスを示す。
図34Hは、脂肪食の16週間でのFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスのテンポール処置後の肝臓CIDEA発現のウエスタンブロット解析を示す。各レーンは単一のマウスを示す。
図35は、腸内細菌を含む糞便のタンパク質を用いたインキュベーション後の陽性対照タウロ−β−ムリコール酸(TβMCA)及びグリシン−β−ムリコール酸(Gly−MCA)の生成物β−ムリコール酸(TβMCA)への代謝を示す。
図36は、0、1、5、及び50mg/kgのGly−MCAの経口投与後のマウスの回腸におけるGly−MCAの濃度を示す。
図37Aは、Gly−MCAでの処置の24時間後のマウスにおける血清アミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。
図37Bは、Gly−MCAでの処置の24時間後のマウスにおけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。
図38は、Gly−MCAの存在下及び不存在下で加えられたFXR作動薬GW4064の濃度の関数として、キメラ受容体構造と一時的に同時にトランスフェクトするHEK293T線維芽細胞で観察されたルシフェラーゼ活性を示す。
図39は、100μMのCDCA及びビヒクル(対照)、又は100μMのCDCAと共に100μM及び200μMのGly−MCA(n=3)で処理した分化Caco−2細胞におけるShpのmRNA発現を示す。
図40Aは、100μM及び200μMのGly−MCAでの処置後、及び2μMのGW4064又は5μMのGW4064での処置後の分化Caco−2細胞におけるShpのmRNAのレベルを示す(n=3)。Gly−MCAの各用量については、左から右に、さらなるGW4064なし、2μMのGW4064、及び5μMのGW4064でさらに処置したことを示す。
図40Bは、100μM及び200μMのGly−MCAでの処置後、及び2μMのGW4064又は5μMのGW4064での処置後の分化Caco−2細胞におけるFgf19のmRNAのレベルを示す(n=3)。Gly−MCAの各用量について、左から右に、さらなるGW4064なし、2μMのGW4064、及び5μMのGW4064でさらに処置をしたことを示す。
図40Cは、100μM及び200μMのGly−MCAでの処置後、及び2μM又は5μMのGW4064での処置後の分化Caco−2細胞におけるAtp5gのmRNAレベルを示す(n=3)。Gly−MCAの各用量について、左から右に、GW4064なし、2μMのGW4064、及び5μMのGW4064で処置したことを示す。
図41A及び41Bは、高脂肪食を与え、ビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスそれぞれの、9週間にわたる、体重変化の成長曲線(A)及び初期体重における%変化(B)を示す。グループあたりn=5のマウス。
図41C及び41Dは、NMRで測定された身体組成を示し、ビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスそれぞれの、高脂肪食での9週間後の、脂肪質量(C)及び除脂肪質量に対する脂肪質量の比(D)を示す。グループあたりn=5のマウス。
図42Aは、高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの1週間(6から7週)の期間にわたる平均された1日あたりの累積の食物摂取量を示す。
図42Bは、高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの1週間(6〜7週)の平均期間の間接的なエネルギー収支(TEEbal)を用いる24時間のエネルギー消費量を示す。グループあたりn=5のマウス。
図43Aは、高脂肪食を与えて6〜7週間後のビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの耐糖試験(GTT)を示す。グループあたりn=5のマウス。
図43Bは、図45Aで示された耐糖試験の曲線下面積(AUC)を示す。
図43Cは、高脂肪食を与えて6〜7週間後のビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスのインスリン耐性試験(ITT)を示す。グループあたりn=5のマウス。
図44Aは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスにおける肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。
図44Bは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの肝臓の質量を示す。グループあたりn=5のマウス。
図44Cは、7週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの体重に対する肝臓の質量の比を示す。グループあたりn=5のマウス。
図44Dは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの肝臓トリグリセリド内容物を示す。グループあたりn=5のマウス。
図45A及び45Bは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスそれぞれの血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。
図46Aは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの糞便のイオンのPCAモデルのスコア散布図を示す。
図46Bは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの糞便のイオンの部分最小二乗法判別分析(PLS−DA)の散布図を示す。各ポイントは単一のマウスの糞便のイオンを示す。標識イオンは、Gly−MCA処置で影響される、β−MCA、TβMCA、タウロコール酸(TCA)及びGly−MCAとして識別される。p(corr)[1]P値は階級間差異を示し、p[1]P値はイオンの相対量を示す。データをネガティブイオン化モード(ESI−)で得た。
図46Cは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの糞便のイオンにおける単一の胆汁酸の組成を示す。
図46Dは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの糞便中のGly−MCAレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータを平均±SDとして示す。
図47Aは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスにおける回腸のイオンのPCAモデルのスコア散布図を示す。
図47Bは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸のイオンのPLS−DAの散布図を示す。各ポイントは、単一のマウスの糞便のイオンを示す。標識イオンは、Gly−MCA処置で誘導されるT−α−MCA、TβMCA、タウロコール酸(TCA)、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)、タウロデオキシコール酸(TDCA)及びタウロケノデオキシコール酸(TCDCA)及びGly−MCAとして識別される。p(corr)[1]P値は階級間差異を示し、p[1]P値はイオンの相対量を示す。全てのデータをネガティブモード(ESI−)で得る。
図47Cは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸の胆汁酸の組成を示す。
図47Dは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸におけるGly−MCAレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図48は、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの血清の総トリグリセリド値を示す。グループあたりn=5のマウス。図48は、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの血清トリグリセリド種のプロファイルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図49は、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの血清セラミドのプロファイルを示す。グループあたりn=5のマウス。図49は、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸セラミドのプロファイルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図50Aは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸におけるFXR標的遺伝子のShp及びFgf15のmRNAレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。
図50Bは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの回腸におけるセラミド代謝に関与する遺伝子をエンコードするmRNAのレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図51Aは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの肝臓におけるFXR標的遺伝子ShpのmRNAレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。
図51Bは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの肝臓におけるCyp7a1のmRNAレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図52は、ビヒクル及びGly−MCAで6週間処置した遺伝的に肥満のレプチン受容体欠損(db/db)の成長曲線を示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図53A及び53Bは、ビヒクル及びGly−MCAで6週間処置したdb/dbマウスのNMRで測定された身体組成、脂肪質量の身体組成、及び除脂肪質量に対する脂肪質量を示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図54Aは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスにおける肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。グループあたりn=5のマウス。
図54B及び54Cは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスにおける肝臓の質量、及び体重に対する肝臓の質量の比を示す。グループあたりn=5のマウス。
図54Dは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスの肝臓トリグリセリド内容物を示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図55A及び55Bは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスにおける血清ALT及びASTレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図56A及び56Bは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスの糞便及び回腸における胆汁酸の組成を示す。グループあたりn=5のマウス。
図56Cは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスの回腸、糞便、肝臓及び血清におけるGly−MCAの相対的なレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図57Aは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したdb/dbマウスにおける血清トリグリセリド種のプロファイルを示す。グループあたりn=5のマウス。
図57B及び57Cは、9週間高脂肪食を与えたビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスの血清及び回腸セラミド種のプロファイルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
図58は、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置したHFD誘導の肥満のマウスの体重の曲線を示す。グループあたりn=5のマウス。
図59は、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置した高脂肪食誘導の肥満のマウスにおけるNMR測定による身体組成を示す。グループあたりn=5のマウス。
図60Aは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置した高脂肪食誘導の肥満のマウスの肝臓切片の代表的なH&E染色を示す。グループあたりn=5のマウス。
図60B及び60Cは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置した高脂肪食誘導の肥満のマウスにおける肝臓の質量及び体重に対する肝臓の質量の比を示す。グループあたりn=5のマウス。
図61A及び61Bは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置した高脂肪食誘導の肥満のマウスの糞便及び回腸における胆汁酸の組成を示す。グループあたりn=5のマウス。
図61Cは、6週間ビヒクル及びGly−MCAで処置した高脂肪食誘導の肥満のマウスの回腸、糞便、肝臓及び血清におけるGly−MCAの相対的なレベルを示す。グループあたりn=5のマウス。全てのデータは平均±SDとして示される。
発明の詳細な説明
実施形態において、本発明は、式(I)又は(II):
[式中、
R1及びR2は、独立して、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
R4は、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
Xは、C=O及びCH2から選ばれ、
Yは、CH2、NR5、O、S、SO、SO2、及びSeから選ばれるか、或いは
X及びYが一緒になってC=Cを形成し、
Zは、COOR6、SO3R7、及びP(=O)(OR8)2から選ばれ、
R3、R5、R6、R7、及びR8は、独立して、水素、アルキル、及びアリールから選ばれ、
R4は、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
mは、1〜6の整数であり、且つ
nは、1〜6の整数である。]
の化合物又はその医薬上許容される塩を提供する(ただし、式(I)の化合物で、m及びnが2であり、XがC=Oであり、YがNHであり、R1及びR2が共に水素であり、且つR4が水素である場合は、ZがSO3Hではない。)。
ある実施形態によれば、式(I)の化合物で、mが2であり、XがC=Oであり、YがNHであり、R1及びR2が共に水素であり、R4が水素であり、且つnが1である場合は、ZがCOOHではない。
ある実施形態によれば、化合物が式(I)の化合物である。
上記実施形態の何れかによれば、R4が水素である。
ある実施形態によれば、R1及びR2が水素である。
ある実施形態によれば、XがC=Oである。
ある実施形態によれば、mが2である。
ある実施形態によれば、YがNHである。
ある実施形態によれば、nは1〜6の整数である。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
ある実施形態によれば、XがCH2である。
ある実施形態によれば、Yが、NH、O、S、及びSeから選ばれる。
ある実施形態によれば、mが2である。
ある実施形態によれば、nが2である。
ある実施形態によれば、ZがSO3Hである。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
ある実施形態によれば、化合物が式(II)の化合物である。
ある実施形態によれば、R1及びR2が水素である。
ある実施形態によれば、XがC=Oである。
ある実施形態によれば、mが2である。
ある実施形態によれば、YがNHである。
ある実施形態によれば、nは1〜6の整数である。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
ある実施形態では、XがCH2である。
ある実施形態によれば、Yが、NH、O、S、及びSeから選ばれる。
ある実施形態では、mが2である。
ある実施形態では、nが2である。
ある実施形態では、ZがSO3Hである。
ある好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
あるより好ましい実施形態によれば、化合物が:
から選ばれる。
また、本発明は、式(III):
[式中、
R1及びR2は、独立して、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
R11は、水素、ハロ、アルキル、OR2、及びC(=O)R3であり、
R12は、水素、ハロ、アルキル、OR4、又はC(=O)R3であり、
R13は、水素、アルキル、OR14、又はC(=O)R3であり、
R4は、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
R15、R16、R17、及びR18は、独立して、水素及びハロから選ばれ、且つ
R14は、グリシン、アラニン、β−アラニン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸メチル、アスパラギン酸、グルタミン酸メチル、グルタミン酸、メチルプロリン、プロリン、バリン、2−フルオロ−β−アラニン、2−ブロモアラニン、2−クロロアラニン、2−フルオロアラニン、2−ヨードアラニン、3−ブロモアラニン、3−クロロアラニン、3−フルオロアラニン、3−ヨードアラニン、4−ブロモフェニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、タウリン、及び4−ヨードフェニルアラニンから選ばれる。]
の化合物又はその医薬上許容される塩を提供する(ただし、R1が水素であり、R11及びR12が共にβ−ヒドロキシルであり、R13、R15、R16、R17、及びR18が全て水素である場合は、R14がグリシン又はタウリンではなく、R1が水素であり、R11が、α−ヒドロキシルであり、R12、R13、R15、R16、R17、及びR18が全て水素である場合は、R14がグリシン又はタウリンではない。)。
ある実施形態では、化合物が:
から選ばれる。
ある実施形態では、R11がハロであり、R12及びR13がヒドロキシルであり、R15、R16、R17、及びR18が全て水素である。
ある実施形態では、R11及びR12が共にハロであり、R15、R16、R17、及びR18が全て水素である。
ある実施形態では、R18がハロであり、R15、R16、及びR17が全て水素である。
本明細書で一般的に用いられる用語を参照すれば、用語「アルキル」は、例えば、1ないし約6個の炭素原子、好ましくは1ないし約4個の炭素原子、より好ましくは1ないし2個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル置換基を意味する。このような置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル等が挙げられる。
用語「アリール」とは、当技術分野で一般的に理解されるような無置換又は置換された芳香族炭素環の置換基と言う。用語「C6−C10アリール」としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。用語アリールが、平面であり且つヒュッケル則に従って4n+2π個の電子を含む環状置換基に適用されることが理解される。
上記実施形態の何れかにおいて、式(I)又は(II)の化合物又は塩のC−20炭素原子は、R配置、S配置を有していてもよく、或いはR異性体及びS異性体の混合物であってもよい。
上記実施形態の何れかにおいて、不斉炭素原子の立体化学が指定されていない場合、不斉炭素原子は、R配置、S配置を有していてもよく、或いはR異性体及びS異性体の混合物であってもよい。
成句「医薬上許容される塩」は、従来の化学的手法により塩基性又は酸性の部分を含む親化合物から合成される非毒性塩を含むことを意図する。一般的に、このような塩は、遊離酸又は遊離塩基の形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な塩基又は酸と、水若しくは有機溶媒又はその2つの混合液中で反応させることにより調製することができる。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、「Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1990, p. 1445」及び「Journal of Pharmaceutical Science, 66, 2−19 (1977)」で見出される。
望ましい塩基としては、アルカリ及びアルカリ土類金属の塩基のような無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のような金属カチオンを含む塩基)が挙げられる。望ましい塩基の非限定的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムが挙げられる。望ましい酸類としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等のような無機酸類、及びp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、脂肪酸類、長鎖脂肪酸類等のような有機酸類が挙げられる。酸性の部分を有する本発明の化合物の好ましい医薬上許容される塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。塩基性の部分(例、ジメチルアミノアルキル基)を有する本発明の化合物の好ましい医薬上許容される塩としては、塩酸塩及び臭化水素酸塩が挙げられる。酸性の部分又は塩基性の部分を含む本発明の化合物は、遊離塩基若しくは遊離酸の形態又はその医薬上許容される塩の形態で有用である。
本発明のあらゆる塩の一部を形成する特定の対イオンは、その塩が全体として薬理学に許容される限り、さらに対イオンが全体として塩に望ましくない性質を与えない限り、通常、重大な性質を示さないと理解されるべきである。
さらに、上記の化合物及び塩は、溶媒和物を形成していてもよく、或いは実質的に無水形態のような非複合体形態で存在していると理解される。本明細書で用いられる、用語「溶媒和物」とは、結晶化溶媒のような溶媒分子が結晶格子に組み込まれている分子複合体を言う。溶媒和物に組み込まれる溶媒が水である場合、分子複合体は水和物と呼ばれる。医薬上許容される溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、メタノール和物及びエタノール和物)、アセトニトリル和物等が挙げられる。これらの化合物は多形体として存在していてもよい。
さらに、本発明は、医薬上許容される担体及び本明細書に記載の少なくとも1つの化合物又は塩を含む医薬組成物に関する。
医薬上許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であるもの、使用条件下で有害な副作用や毒性を示さないものであることが好ましい。
担体の選択は、選択される本発明の特定の化合物により、並びに組成物を投与するために用いられる特定の方法によりある程度決定され得る。従って、本発明の医薬組成物の適切な多種多様な製剤が存在する。ある実施形態では、製剤は、消化管への投与に適し、特に、小腸への投与に適する。
経口投与に適する製剤としては、(a)治療有効量の本発明の化合物を、水、食塩水又はオレンジジュースのような希釈液に溶解したような液剤、(b)それぞれ、固体又は顆粒として所定量の活性成分を含む、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、ロゼンジ剤、及びトローチ剤、(c)散剤、(d)適切な液体中の懸濁剤、及び(e)適切な乳剤が挙げられる。液体製剤は、医薬上許容される界面活性剤、懸濁化剤、又は乳化剤を添加した或いは添加していない、水及びアルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール類)のような希釈液を含んでいてもよい。カプセル剤の形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤及び不活性なフィラー(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びトウモロコシデンプン)を含む通常の硬殻或いは軟殻ゼラチン型のものであり得る。錠剤の形態を、1以上のラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及びその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、及び薬理学に適合する賦形剤を含んでいてもよい。芳香錠が、不活性な基剤(例えば、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア)中に活性成分を含み、乳剤、ゲル剤等が、活性成分に加えて、当技術分野で周知の賦形剤を含んでいるのと同様に、ロゼンジ剤の形態は、香味中に活性成分を含んでいてもよく、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカントを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、製剤は、本発明の化合物が哺乳動物の消化管(特に、哺乳動物の小腸)と接触する時間を延長するのに適していてもよい。この点において、持続放出製剤、及び化合物が小腸内に放出される前の胃の中で保持される時間が延長されるように設計された製剤のような様々な製剤が利用可能である。多くの好適な製剤が、レミントン「The Science and Practice of Pharmacy, Gennaro, A.R., ed., pp. 858−929, Lippincott Williams and Wilkins (2000)」に提示されている。
いくつかの実施形態では、本発明の化合物又は塩は、食品又は飲料と混合して食品添加物の形態で投与することができる。食品添加物として使用するために、化合物又は塩は、それ自体を食品又は飲料と混合することができ、或いは1以上の適切な賦形剤を含む組成物として製剤化してから食品又は飲料と混合することができる。食品又は飲料は任意の適切な食品又は飲料であり得る。いくつかの実施形態では、食品又は飲料は比較的高い脂肪含量を有する。
前記の医薬組成物に加えて、本発明の化合物又は塩を、シクロデキストリン包接錯体のような包接錯体、又はリポソームとして製剤化してもよいことが当業者に理解されるであろう。リポソームは、化合物の標的をリンパ系組織又は癌性肝細胞のような特定の組織とするのに役立つ。また、リポソームは、本発明の化合物の半減期を増大させるために用いることができる。本発明において有用なリポソームは、乳剤、発泡体、ミセル、不溶解性単分子層、液晶、リン脂質分散体、ラメラ層等を含む。これらの調製において、送達される活性剤は、単独で又は適切な化学療法剤と共にリポソームの一部として組み込まれる。このように、望ましい本発明の化合物又はその塩を充填したリポソームは、特定の組織型の部位(例えば、肝細胞)に向かうことができ、次いでリポソームが選択された組成物を送達する。本発明で用いられるリポソームは、標準的な小胞形成脂質(一般的に、中性及び負電荷リン脂質及びステロール(例えば、コレステロール)が挙げられる。)から形成される。脂質は、一般的に、例えば、リポソームのサイズ及び血中でのリポソームの安定性を考慮して選択される。リポソームを調製するために、例えば、「Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9, 467 (1980)」及び米国特許4,235,871、4,501,728、4,837,028及び5,019,369で開示されているような、さまざまな方法が利用可能である。特定の組織型の細胞を標的にするために、リポソームに組み込むリガンドとしては、例えば、標的の組織型の細胞表面の決定要因に特異的な抗体又はそのフラグメントが挙げられる。本発明の化合物又は塩を含むリポソーム懸濁液は、投与形態、送達される薬剤、及び治療される疾患の病期に応じた投与量で、静脈投与、限局投与、局所投与等により投与してもよい。
ある実施形態では、医薬組成物は、非経口投与(例えば、静脈投与、皮下投与、皮内投与、又は筋肉内投与)することができる。このように、本発明は、本発明の化合物又は塩を非経口投与に適した許容される担体に溶解し或いは懸濁した溶液又は懸濁液(水性及び非水性の等張性滅菌注射液を含む)を含む非経口投与のための組成物を提供する。多くのこのような組成物が当技術分野で知られている。
実施形態によれば、本発明は、有効量の本発明の化合物を哺乳動物に投与することを含む、それを必要とする哺乳動物におけるファルネソイドX受容体の阻害方法を提供する。
好ましくは、動物は哺乳動物である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。
用語「哺乳動物」としては、げっ歯目(例えばマウス)及びウサギ目(例えばウサギ)が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物は、ネコ類(ネコ)及びイヌ類(イヌ)を含むネコ目であることが好ましい。哺乳動物は、ウシ類(ウシ)及びブタ類(ブタ)を含むウシ目、又はウマ類(ウマ)を含むウマ目であることがより好ましい。哺乳動物は、サル目、セボイド(Ceboids)又はシモイド(Simioids)(サル)、又は類人目(ヒト及び類人猿)であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳動物はヒトである。
ある実施形態では、FXR介在疾患又は状態は、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高コレステロール血症、又は高脂血症、慢性肝疾患、胃腸疾患、腎疾患、心血管疾患、代謝性疾患、癌(即ち大腸癌)又は神経症状(例えば脳卒中)である。ある実施形態では、慢性肝疾患は、原発性胆汁性肝硬変症(PBC)、脳腱黄色腫症(CTX)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、薬剤誘導性胆汁鬱滞、妊娠肝内胆汁鬱滞、非経口的栄養法関連胆汁鬱滞(PNAC)、細菌の異常増殖又は敗血症関連胆汁鬱滞、自己免疫性肝炎、慢性ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝移植関連移植片対宿主病、生体移植肝再生、先天性肝線維症、総胆管結石症、肉芽腫性肝疾患、肝内又は肝外悪性腫瘍、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、ウィルソン病、ゴーシェ病、ヘモクロマトーシス、又はアルファ1−抗トリプシン欠乏症である。ある実施形態では、胃腸疾患は、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、過敏性大腸症候群(IBS)、細菌の異常増殖、吸収不良、放射線照射後大腸炎(post−radiation colitis)、又は顕微鏡的大腸炎である。ある実施形態では、腎疾患は、糖尿病性腎症、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、慢性移植糸球体症、慢性間質性腎炎、又は多嚢胞性腎疾患である。ある実施形態では、心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、脂質異常症、高コレステロール血症、又は高トリグリセリド血症である。
好ましい実施形態によれば、本発明は、哺乳動物に有効量の本発明の化合物又は塩を投与することを含むそれを必要とする哺乳動物における肥満症の治療又は予防方法を提供する。
本明細書で用いられる肥満症は、過剰な体脂肪がヒトに健康上の危険をもたらし得る状態として考えることができる(Barlow and Dietz, Pediatrics 102: E29, 1998; National Institutes of Health, Obes. Res. 6 (suppl. 2):51S−209S, 1998を参照)。過剰な体脂肪は、エネルギー摂取量及びエネルギー消費量の不均衡の結果である。一実施形態では、ヒトにおいて、肥満度指数(BMI)が肥満症の評価に用いられる。一実施形態では、25.0kg/m2〜29.9kg/m2のBMIは太り過ぎ(グレードIの肥満症とも呼ばれる)であり、その一方、30kg/m2のBMIは真性肥満(グレードIIの肥満症とも呼ばれる)である。
ヒトにおける他の実施形態では、胴囲が肥満症の評価に用いられる。この実施形態では、男性では102cm以上の胴囲が肥満とみなされ、その一方で、女性では89cm以上の胴囲が肥満とみなされる。強力な証拠は、肥満症が個人の罹患率及び死亡率の両方に影響を与えることを示す。例えば、肥満者は、数ある中でもとりわけ、心疾患、非インスリン依存性(2型)糖尿病、高血圧症、脳卒中、癌(例、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、及び結腸癌)、脂質異常症、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、低受精率、及び骨関節炎のリスクが増大する(Lyznicki et al., Am. Fam. Phys. 63:2185, 2001参照)。
本発明によれば、哺乳動物(特にヒト)に投与される用量は、所望の反応をもたらすのに十分な量であるべきである。このような反応には、治療が望まれる或いは所望の利益をもたらす、腸内で発現するファルネソイドX受容体により媒介される疾患又は障害の望ましくない影響の拮抗又は予防が含まれる。ある実施形態では、障害は、非アルコール性脂肪性肝疾患、肥満症及び2型糖尿病(インスリン抵抗性)である。当業者は、その用量が、ヒトの年齢、状態及び体重、並びにヒトにおける非アルコール性脂肪性肝疾患の程度を含む様々な要因に依存すると認識するであろう。また、用量サイズは、投与の経路、タイミング及び頻度、並びに特定の化合物の投与及び所望の生理学的効果に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質及び範囲により決定されるであろう。非アルコール性脂肪性肝疾患、肥満症、2型糖尿病(インスリン抵抗性)又はその他の疾患又は障害の有効な治療法は多回投与を含む長期の治療を必要とする可能性もあると当業者により理解されるであろう。
この点において、腸内のファルネソイドX受容体の阻害を介するNAFLDの治療は、哺乳動物における脂肪肝の臨床症状の減少とみなすことができる。多くの場合、NAFLDは徴候又は症状を引き起こさない一方で、NAFLDは、疲労、疼痛(特に右上腹部におけるもの)及び体重減少を引き起こし得る。いくつかの例では、NAFLDは、非アルコール性脂肪性肝炎、肝臓における炎症に進行する可能性がある。NAFLDは、肝臓機能の顕著な低下を伴う肝臓の瘢痕である非アルコール性脂肪性肝疾患関連肝硬変に進行する可能性がある。時間が経つにつれ、瘢痕は、肝臓が十分に機能しなくなるほど深刻になり得る。
NAFLDは、例えば、超音波、コンピューター断層撮影法、磁気共鳴試験、或いは肝生検により評価することができる。ある実施形態では、哺乳動物は高脂肪食を消費している。高脂肪食は、脂肪として30%を上回るエネルギーを提供するものとみなすことができる(例えば、Churchill Livingstone’s Dictionary of Sport and Exercise Science and Medicine, S. Jennett, Elsevier Limited, 2008を参照)。他の実施形態では、本発明は哺乳動物における非アルコール性脂肪性肝疾患の予防方法を提供する。非アルコール性脂肪性肝疾患の予防は、低脂肪食又は中間脂肪食から高脂肪食への食事の変更が行われた哺乳動物における脂肪肝の予測される兆候を低減することとみなすことができる。
現在、NAFLDに対する標準的な治療法は存在しない。医師は、通常、疾患に寄与する危険因子を治療する。例えば、医師は、減量プログラム、並びに健康食の選択、糖尿病のコントロール、及びコレステロールの低減により罹患した患者を助ける。
この点において、ファルネソイドX受容体の阻害を介する肥満症の治療は、哺乳動物の体重増加率を低減するものとしてみなすことができる。ある実施形態では、哺乳動物は高脂肪食を消費している。高脂肪食は、脂肪として30%を上回るエネルギーを提供するものとみなすことができる(例えば、Churchill Livingstone’s Dictionary of Sport and Exercise Science and Medicine, S. Jennett, Elsevier Limited, 2008を参照)。他の実施形態では、本発明は、哺乳動物における肥満症の予防方法を提供する。肥満症の予防は、低脂肪食又は中間脂肪食から高脂肪食への食事の変更が行われた標準体重の哺乳動物における予測される体重増加を低減することとみなすことができる。
この点において、ファルネソイドX受容体の阻害を介する糖尿病の治療は、それに罹患した患者におけるインスリン抵抗性を低減することとみなすことができる。インスリン抵抗性は高血糖症をもたらし得る。インスリン抵抗性の減少は血糖値の低減をもたらし得る。ファルネソイドX受容体の阻害を介して治療される症状の非限定的な例としては、脳神経衰弱及び集中不能、高血糖、腸内膨満、眠気、体重増加、脂肪貯蔵、減量困難、血中トリグリセリド値上昇、血圧上昇、心血管疾患に関連する炎症誘発サイトカイン増大、鬱病、黒色表皮腫、並びに空腹亢進が挙げられる。
本発明によれば、哺乳動物(特にヒト)に投与される用量は、所望の反応をもたらすのに十分な量であるべきである。このような反応には、治療が望まれる或いは所望の利益をもたらす、ファルネソイドX受容体により媒介される疾患又は障害の有害な影響の拮抗又は予防が含まれる。ある実施形態では、障害は肥満症である。当業者は、その用量が、ヒトの年齢、状態及び体重、並びにヒトにおける肥満症の程度を含む様々な要因に依存すると認識するであろう。また、用量サイズは、投与の経路、タイミング及び頻度、並びに特定の化合物の投与及び所望の生理学的効果に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び範囲により決定されるであろう。肥満症又はその他の疾患又は障害の有効な治療法は、多回投与を含む長期の治療を必要とする可能性もあると当業者により理解されるであろう。
この点において、ファルネソイドX受容体の阻害を介する肥満症の治療は、哺乳動物における体重増加の割合の減少とみなすことができる。ある実施形態では、哺乳動物は高脂肪食を消費している。高脂肪食は、脂肪として30%を上回るエネルギーを提供するものとみなすことができる(例えば、Churchill Livingstone’s Dictionary of Sport and Exercise Science and Medicine, S. Jennett, Elsevier Limited (2008)を参照)。他の実施形態では、本発明は哺乳動物における肥満症の予防方法を提供する。肥満症の予防は、低脂肪食又は中間脂肪食から高脂肪食への食事の変更が行われた標準体重の哺乳動物における予測される体重増加を低減することとみなすことができる。
適切な投与量及び投与計画は、範囲を見出す当業者に周知の従来の技術により決定することができる。一般的に、治療は、化合物の最適な投与量未満のより低用量で開始される。その後、用量は、その条件下で最適な効果が得られるまで小量分ずつ増加される。本発明の方法は、通常、1種以上の上記化合物を、哺乳動物1kg体重あたり約0.1〜約300mg(例えば、約0.1〜約150mg、約0.1〜約100mg又は約0.1〜約50mg)投与することを含むであろう。
投与される化合物(単数又は複数)の治療有効量は、所望の効果及び上記の要因により変化し得る。通常、用量は、対象の体重に対して0.01mg/kg及び250mg/kgの間、より典型的には、約0.05mg/kg及び100mg/kgの間(例えば、対象の体重に対して、約0.2〜約80mg/kg、約5〜約40mg/kg又は約10〜約30mg/kg)である得る。このように、単位剤形は、上記の適切な範囲及び対象の体重に基づいて製剤化され得る。本明細書で用いられる用語「単位剤形」とは、治療対象に適切な物理的に別々の単位の治療剤を言う。
別の方法として、用量は、体表面積に基づいて計算され、1日あたり約1mg/m2〜約200mg/m2(例えば、約5mg/m2〜約100mg/m2)が、対象に投与されるだろう。特定の実施形態では、化合物(単数又は複数)の治療有効量の投与には、1日あたり約5mg/m2〜約50mg/m2(例えば、約10mg/m2〜約40mg/m2)を対象に投与することが含まれる。現在のところ、化合物(単数又は複数)を単回投与することが望ましいが、治療上の効果的な用量が、長期にわたる期間投与されてもよいし、或いは1日あたり複数回投与されてもよいと考えられている。このように、単位剤形は、また、上記の適切な範囲及び所望の投与スケジュールに基づき、対象の体表面積を用いて計算することができる。
本明細書で実証されているように、ファルネソイドX受容体は肥満症の発症に関与する。したがって、ファルネソイドX受容体の阻害剤の投与により、特に高脂肪食を消費する哺乳動物における、肥満症の発症の治療又は予防が期待される。
また、本明細書では、腸内ファルネソイドX受容体が、NAFLDの進行に絶対不可欠な役割を果たしていることが示されている。本発明の実施形態の腸内ファルネソイドX受容体の阻害は、高脂肪食により誘発されるNAFLDを改善することが示されている。
それぞれ、腸内細菌をリモデリングして殺す、テンポール及び抗生剤に対する研究を通じて、これらの薬剤が、腸内微生物叢の集団を変化させ、それにより、酵素胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)を発現する細菌が減少する新たな経路が明らかになった。より少ないBSHは、腸内の抱合胆汁酸(例えばT−β−MCA)のレベルの増大をもたらす。次にT−β−MCAは腸内FXRの拮抗薬である。より少ない腸内のFXRシグナル伝達が、高脂肪食を与えたマウス及び遺伝的に肥満のマウスにおいて、肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの減少をもたらす。これらの研究は、FXRの阻害が肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDを伴う患者の治療の有望なアプローチであるだろうという仮説を導いた。新規化学物質グリシンβ−ムリコール酸(Gly−MCA)の経口投与は、高脂肪食処置マウス及び遺伝的に肥満のマウスにおいて、肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDを減少させた。経口投与され、腸内に保持される化合物であって、腸内FXRを阻害し、肝臓で発現するFXRに対しては何の影響もない任意の化合物が、肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの患者の治療に対する有用性を有し得るということを提案している。
(化学)
式1の化合物(ただし、WがOR4(R4は水素である)であり、R1及びR2が水素であり、XがC=Oであり、mが2であり、YがNHであるもの)(例えばβ−ムリコール酸9)及びその複合体(例えば、代表的な実施形態のタウロ−β−ムリコール酸10及びグリシン−β−ムリコール酸16)は、図8に記載のスキームで説明されるようにして調製することができる。酸触媒下でのジヒドロキシ酸1の例えばメタノールとのエステル化は、エステル2を提供する。A環のヒドロキシル基のエチルクロロホルマートでの保護は、カーボネート3を提供する。7−ヒドロキシル基の例えばクロム酸カリウムでの酸化はケトン4を与える。例えばHBrにおける臭素を用いる臭素化はブロモケトン5を与える。例えばケトンの還元はブロモアルコール6を与える。例えば亜鉛金属を用いる臭素の還元的脱離はオレフィン7を提供する。例えば四酸化オスミウムを用いるcis−ジヒドロキシル化はcisジオール8を与える。両方のエステルの加水分解はβ−ムリコール酸9を提供する。β−ムリコール酸9は、適切なカップリング剤を用いてタウリンと結合させることができ、タウロ−β−ムリコール酸10を提供することができる。グリシンは、タウリンと置き換えることができ、β−ムリコール酸のグリシン複合体(16)を提供することができる。2−アミノエチルホスホン酸は、タウリンと置き換えることができ、タウロ−β−ムリコール酸のホスホン酸類似体を提供することができる。化学は、「Iida, T., et al., Lipid, 16: 863−5 (1981)」、「Iida T., et al., Journal of Lipid Research, 30: 1267−1279 (1989)」及び「Tserng K−Y., et al., J. Lipid Research, 18: 404−407 (1977)」に記載されている。
式Iの化合物(ただし、XがCH2であり、mが2であるもの)は、例えば、実例としての実施形態のβ−ムリコール酸9で開始する図9で説明される経路により調製することができる。カルボン酸を酸触媒エステル化により保護して化合物11を提供する。化合物11のヒドロキシル基を任意の適切な保護基(例えばベンジル(Bzl))を用いて保護して、化合物12を得ることができる。任意の適切な還元剤(例えば水素化アルミニウムリチウム)を用いるカルボキシル基の還元はアルコール13を提供する。任意の適切な試薬(例えば、トリフェニルホスフィン及び四臭化炭素)を使用する、ヒドロキシル基の適切な脱離基(例えばブロモ)への変換は、化合物14を与える。例えば、式:HYCH2CH2SO3H(式中YはNH、O、S、又はSeである)の求核試薬を用いる13における脱離基の置換とそれに続く脱保護は、タウリン結合類似体15を与える。
実施形態において、本発明は、式(I):
[式中、
R1 、R2及びR4は水素であり、
Xは、CH2であり、
Yは、CH2、NR5、O、S、SO、SO2、及びSeから選ばれ、
Zは、COOR6、SO3R7、P(=O)(OR8)2及びNR9R10から選ばれ、
R3、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、独立して、水素、アルキル、及びアリールから選ばれ、
R4は、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
mは、1〜6の整数であり、且つ
nは、1〜6の整数である。]
の化合物の合成方法であって、
(i)式(IV)の化合物を提供する工程:
(ii)式(IV)の化合物をアルコールで処理して、式(V)の化合物を提供する工程:
(iii)式(V)の化合物におけるヒドロキシル基を保護して、式(VI)の化合物を提供する工程:
(iv)式(VI)の化合物を還元剤で処理して、式(VII)の化合物を提供する工程:
(v)式(VII)の化合物を式(VIII)(式中LGは脱離基である)の化合物に変換する工程:
(vi)式(VIII)の化合物を式:HY(CH2)nZ(式中YはNH、S、O又はSeである。)の化合物で処理して、式(IX)の化合物を提供する工程:及び
(vii)式(IX)の化合物を式(I)の化合物へ変換する工程を含む方法を提供する。
実施形態において、本発明は式(II):
[式中、
R1及びR2は、水素であり、
Xは、CH2であり、
Yは、CH2、NR5、O、S、SO、SO2、及びSeから選ばれ、
Zは、COOR6、SO3R7、P(=O)(OR8)2及びNR9R10から選ばれ、
R3、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、独立して、水素、アルキル、及びアリールから選ばれ、
R4は、水素、アルキル、及びC(=O)R3から選ばれ、
mは、1〜6の整数であり、且つ
nは、1〜6の整数である。]
の化合物の合成方法であって、
(i)式(X)の化合物を提供する工程:
(ii)式(X)の化合物をアルコールで処理して、式(XI)の化合物を提供する工程:
(iii)式(XI)の化合物におけるヒドロキシル基を保護して、式(XII)の化合物を提供する工程:
(iv)式(XII)の化合物を還元剤で処理して、式(XIII)の化合物を提供する工程:
(v)式(XIII)の化合物を式(XIV)(式中LGは脱離基である。)の化合物に変換する工程:
(vi)式(XIV)の化合物を式:HY(CH2)nZ(式中、YはNH、S、O又はSeである。)の化合物で処理して、式(XV)の化合物を提供する工程:及び
(vii)式(XV)の化合物を式(II)の化合物に変換する工程を含む方法を提供する。
以下の実施例により、さらに本発明を説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
(ルシフェラーゼアッセイ)
PGL4−Shp−TKホタルルシフェラーゼ構造物及びヒトFxr発現プラスミドは、ラトガース大学のGrace L. Guoにより提供された。ヒトAsbt発現プラスミドは、ウェイクフォレスト大学医学部のPaul A.Dawsonにより提供された。プラスミドを、X−TREMEGENETMHP DNAトランスフェクション試薬(ロシュ)を用いて細胞にトランスフェクトした。細胞を溶解して、ルシフェラーゼ活性をDUAL−LUCIFERASETMアッセイキット(プロメガ)で測定した。ホタルルシフェラーゼ活性を、ウミシイタケ(Remilla)ルシフェラーゼ活性に対して標準化した。
(ATPアッセイ)
ATP検出を以下のプロトコルで行った。ATPの抽出については、10mgの回腸粘膜を、1.0mLの氷冷TE飽和フェノール(シグマ−アルドリッチ)でホモジナイズした。200μLのクロロホルム及び150μLの脱イオン水の混合物を加え、ホモジネートを20秒間十分に振とうし、4℃にて10,000gで5分間遠心分離した。上清からのアリコートを100倍に脱イオン水で希釈し、10μLの希釈抽出物をATP測定キット(インビトロゲン社)で測定した(Chida et al., Analytica Chimica Acta 727: 8−12 (2012))。
テンポール、バシトラシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシンは、シグマ−アルドリッチ(ミズーリ州セントルイス)から購入した。胆汁酸は、ステラロイズ社(ロードアイランド州ニューポート)及びシグマ(ミズーリ州セントルイス)で注文し、タウロコール酸−d5ナトリウム塩は、トロントリサーチケミカルズ社(オンタリオ州トロント)で注文した。セラミドは、アバンティポーラリピッドから得た。HFD(60kcal%脂肪)は、Bio−Serv(ニュージャージー州フレンチタウン)で購入した。T−β−MCA及びGly−MCAは、図41に示したスキームに従って合成し、実施例1に記載した。全ての溶媒及び有機試薬は、利用可能な最高グレードであった。
(動物研究)
高脂肪食(HFD)(60%kcalが脂肪からなるもの)を、Bioserv社から購入した。腸特異的Fxr−null(FxrΔIE)マウス及び野生型(Fxrfl/fl)マウスはC57BL/6Nの遺伝的背景を有した。Fxrfl/fl及びFxrΔIE(Kim et al., J. Lipid Res. 48:2664−2672, 2007)マウスを、10世代にわたってC57BL/6Nマウスと戻し交配した。抗生剤(バシトラシン、ネオマイシン及びストレプトマイシンの組み合わせ)の研究については、6週齢からのオスのC57BL/6Nマウスに高脂肪食(“HFD)を与え、飲用水中で各0.1%(w/v)の化合物(バシトラシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシンの組み合わせ)を投与した。テンポールの研究については、6週齢からのオスのC57BL/6Nマウスに、HFDを与え、飲用水中で0.064%(w/v)のテンポールを投与した。in vivoのTβMCAについては、6週齢からのオスのC57BL/6NマウスにHFDを与え、抗生剤(バシトラシン、ネオマイシン、及びストレプトマイシンの組み合わせの各0.1%の化合物)で3日間処置した。ビヒクル(食塩水)、TCA(400mg/kg体重、食塩水に溶解したもの)又はTCA及びTβMCAの組み合わせ(各化合物400mg/kg体重、食塩水に溶解したもの)をマウスに経口投与し、続く第2の投与を12時間後とした。マウスを組織採取のために2時間後に殺した。Gly−MCAの研究について、Gly−MCAをカスタム合成した。ベーコン風味の練り粉丸剤は、Gly−MCA(0.25mgGly−MCA/丸剤、10mg/kgの用量)を経口投与するために開示されているようにして製造した(Walker et al., Toxicol. Appl. Pharmacol. 260:65−69, 2012)。研究の前にマウスが練り粉丸剤を食すように訓練した。肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの予防のために、オスの野生型(WT)C57BL/6Nマウス(6〜8週齢)に6週齢から高脂肪食(Bio−Serv、ニュージャージー州フレンチタウン;60kcal%脂肪)を与え、ビヒクル(対照丸剤)又はGly−MCA(0.25mg/丸剤/日、用量10mg/kg)を経口投与した。C57BL/6Nマウスに12週間高脂肪食を与え、投与した(0.25mgGly−MCA/丸剤、用量5mg/kg)。レプチン欠損db/dbマウス(6〜8週齢)に固形飼料を与え、Gly−MCA(0.25mg/丸剤/日、10mg/kg)を投与した。マウスを個別にホームケージに収容した。累積の食物摂取量及びTEEbalを、6ないし7週間のHFDのビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスで1週間測定した。TEEbalを以前の開示のようにして測定した(Ravussin et al., Int. J. Obesity 37:399−403, 2013)。
全ての動物研究は、実験動物資源ガイドライン協会に従って行い、NCI動物実験委員会により承認された。
(初代肝細胞の調製及び培養)
6週齢のC57BL/6Nマウスの初代肝細胞を、コラゲナーゼ1(インビトロゲン、カリフォルニア州カールズバッド)のかん流により得た。細胞を45%Percoll(シグマ、ミズーリ州セントルイス)密度遠心分離により精製し、10%ウシ胎仔血清及び1%インスリン−トランスフェリン−セレン−エタノールアミン(ITS−X)(インビトロゲン、カリフォルニア州カールズバッド)を伴うDMEM(インビトロゲン、カリフォルニア州カールズバッド)中にて培養した。肝細胞の生存率を、トリパンブルー色素排除を用いて測定し、85%を超える高い生存率のものを用いた。培地を4時間の培養後に1%ウシ胎仔血清を伴うDMEMに変更した。4時間飢えさせた後、細胞をセラミドにさらした。所定の時点で、細胞を採取し、qPCR分析及びTG内容物の検出を行った。
(RNA分析)
腸の粘膜を穏やかに擦り取り、肝臓を採取し、その両方を液体窒素中で急速冷凍し、RNAを調製するまで−80℃で保存した。TRIzol試薬(インビトロゲン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いてRNAを凍結した腸及び肝臓から抽出した。cDNAをSuperscript II逆転写酵素(インビトロゲン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて1μgの全RNAから合成した。qPCRプライマーをqPrimerDepotを用いて設計した。測定されたmRNAレベルを18SリボソームRNAのレベルに対して標準化し、対照群のレベルに対して相対的な倍数変化として表した。
(ウエスタンブロット解析)
肝臓全細胞又は核抽出液を調製した。膜をFXR(サンタクルーズバイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルーズ)、SREBP1(BDバイオサイエンス、カリフォルニア州サンノゼ)、及びCIDEA(アブカム、マサチューセッツ州ケンブリッジ)に対する抗体とインキュベートした。得られたシグナルを、全細胞抽出液についてはβ−ACTIN(アブカム)及び核抽出液についてはLAMIN A/C(サンタクルーズ)に対して標準化した。
(腸内マイクロバイオームの16S rRNA遺伝子シークエンシング)
糞便中の細菌及び盲腸内容物をPowerSoil DNA単離キット(モーバイオラボラトリーズ社、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて抽出した。PCR生成物(およそ1000bps)を、454 Technical Bulletin #2011−002のShort Fragment Removal Procedureに記載されたようにして、Agencourt AMPure technology(ベックマンコールター、カリフォルニア州ブレア)を用いて精製した。精製後、生成物を、KAPA Biosystems Library定量キット(KapaBiosystems、マサチューセッツ州ウーバン)を用いてQubit(Lifetech、カールズバッド、カリフォルニア州)及びqPCRの両方を定量化した(モル量に基づいて統合し、1%アガロースゲル上で行い、抽出した。)。QIAquick PCR精製キット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)で精製した後、質及び量を、Agilent2100バイオアナライザ(アジレントテクノロジー、カリフォルニア州サンタクララ)上でDNA7500LabChip及びQubit quantificationを用いて評価した。シークエンシングを、454 Life Sciences Genome Sequencer FLX+(ロシュダイアグノスティックス、インディアナ州インディアナポリス)で4分の1のPTPプレートを用いて行った。16S rRNA遺伝子配列解析をこれまでに開示されたようにして行った(Lozupone and Knight, Appl. Environ. Microbiol. 71:8228−8235, 2005)。細菌の個体数の変化を評価するためのWeighted UniFrac解析を、Galaxyのウェブ上のプラットフォームで行った(Blankenberg et al., Bioinformatics 26:1783−1785, 2010; Goecks et al., Genome Biol. 11: 126, 2010; Giardine et al., Genome Res. 15:1451−1455, 2005)。
(メタゲノムデータ分析)
質のフィルタリング及び重複排除の後、各サンプルには平均11000の読み込みが含まれた。Mothurソフトウェアパッケージを用いて、シークエンシングデータを前もって処理し、RDP多分類装置を用いて、各シーケンスを分類学上のランクに割り当てた。前処理は、20の平均的な質についてのフィルタリングの読み込み、重複配列の除去、バーコードによるサンプルの分割、その一方でのバーコードの一つのミスマッチの許可から構成された。サンプルあたりの全読み込みにおける差異を説明するために、分類を全読み込みの割合に変換した。このアプローチは、その後のグループ内及びグループ間の正確な比較を可能にした。
(メタボロミクス解析)
リピドミクス解析:血清のリピドミクス解析については、25μl血清を、内部標準として2μMのLPC(17:0)、PC(17:0)、SM(17:0)及びCER(17:0)(アバンティポーラリピッド、アラバマ州アラバスター)を含む4倍の冷クロロホルム:メタノール(2:1)溶液により抽出した。サンプルを30秒間ボルテックスし、次いで室温で5分間静置した。混合物を13,000rpmで5分間遠心分離し、次いで、下層の有機相を回収し、真空下にて室温で留去した。UPLC−MS解析の前に、残渣をクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解し、2μM PC(17:0)を含むイソプロパノール:アセトニトリル:H2O(2:1:1)で希釈した。組織のリピドミクス解析については、約50mgの正確に量った組織を、700μLメタノール:H2O(4:3)溶液でホモジナイズし、次いで内部標準として2μMのLPC(17:0)、SM(17:0)及びCER(17:0)を含む800μLのクロロホルムを使用して抽出した。ホモジネートを37℃で20分間インキュベートし、続いて20分間13,000rpmで遠心分離した。下層の有機相を新たなチューブに移し、真空下で乾燥した。注射の前に、残渣を100μLのクロロホルム:メタノール(1:1)溶液に懸濁し、次いで2μMのPC(17:0)を含むイソプロパノール:アセトニトリル:H2O(2:1:1)溶液で希釈した。リピドミクスの解明については、サンプルを、以下の条件下でWater Acquity CSH 1.7um C18カラム(2.1x100mm)を用いてUPLC−ESI−QTOF MSで分析した:UPLC:A−アセトニトリル/水(60/40)、B−イソプロパノール/アセトニトリル(90/10)。A及びBには、共に10mMの酢酸アンモニウム及び0.1%のギ酸が含まれた。グラジエント:初期60%Aから2分で57%Aに、2.1分*で50%Aに、12分で46%Aに、12.1分*で30%Aに、18分で1%Aに、その後18.5分で初期条件に戻し、さらに2分間の平衡を伴う(*は加速度グラジエントを示す)。流速は0.4ml/分であった。カラム温度を55℃に維持した。MSはランタイムが18分間である点を除いて上記と同様の条件であった。
グローバルメタボロミクス解析:尿サンプルを20μLの尿を180μLの50%アセトニトリル水溶液(50:50水/アセトニトリル)に加えることにより調製した。サンプルを5分間ボルテックスし、4℃で18000×gにて20分間遠心分離し、微粒子及び析出したタンパク質を除去した。上清を、分析のためにオートサンプラバイアルに移した。5μMのクロルプロパミド(内部標準)を含む500mLの50%アセトニトリル水溶液中で50mg組織サンプルをホモジナイズした。サンプルをボルテックスし、4℃で13,000rpmにて20分間遠心分離し、微粒子及び析出タンパク質を除去した。上清を分析のためにオートサンプラバイアルに移した。メタボロミクス発見のため、上清サンプルの5μlのアリコートを、Waters Acquity BEH 1.7um C18(2.1x50mm)カラムを備えるUPLC−ESI−QTOFMSシステム(Waters、マサチューセッツ州ミルフォード)に注入した。グラジエント移動相は、水中の0.1%ギ酸(A)及びアセトニトリル中の0.1%ギ酸(B)を含む。グラジエントは、最初の0.5分間95%Aに維持し、4分で40%Aに、次いで8分で1%Aとした。カラムを1分間フラッシュし、次いで1.5分間初期条件で平衡化した。流速は0.5ml/分であった。カラム温度を60℃に維持した。Waters Synapt HDMS Q−TOFを、0.3スキャン/秒の速度で50−850amuにてスキャンしてポジティブモード及びネガティブモード両方で運転した。以下の機器条件を使用した:キャピラリー3kV、温度源120℃、サンプリングコーブ30V、脱溶媒ガス流量50L/h(400℃)。バイオマーカー同定及び定量:バイオマーカーを負荷散布図におけるイオンを分析することによりスクリーニングし、メタボロミクスデータベース(METLIN and Madison Metabolomics Consortium Database)を検索し、有力な候補を見つけ出した。推定指標の同一性を確認するために、真性の標準を、MS/MSフラグメンテーションパターン及び保持時間に基づいて代謝物と比較した。代謝物の濃度を真性の標準を用いて標準曲線に基づき多重反応モニタリング質量分析により決定した。
(データプロセシング及び多変量データ解析)
クロマトグラフの及びスペクトルデータをMarkerLynxソフトウエア(Waters)により解析した。サンプル識別、イオン識別(保持時間及びm/z)、及びイオン存在度の情報を含む多変量データマトリクスを質量中心、同位体分離、フィルタリング、ピーク認識、及び積分を通じて得る。各イオンの強度を全クロマトグラムにおいて総イオンカウントに対して単一のイオンカウントを標準化することにより計算した。さらに、データマトリクスをSIMCA−Pソフトウエア(Umetrics、ニュージャージー州キネロン)にエクスポートし、平均センタリング及びパレートスケーリング(ノイズの大幅な増幅なく低存在度イオンの重要性を増大させる技術)により変換した。主成分分析(PCA)、部分最小二乗法判別分析(PLS−DA)、及び潜在構造直交射影判別分析(OPLS−DA)を含む統計モデルは、データマトリクスにおける主要な潜在変数を表すために確立された。
(NMRベースのメタボロミクス実験)
メタノール、K2HPO4、NaH2PO4(全て分析グレード)、ナトリウム3−トリメチルシリル[2,2,3,3−d4]プロピオナート(TSP−d4)及びD2O(Dが99.9%)をシグマアルドリッチ(ミズーリ州セントルイス)から購入した。リン酸バッファー(0.1M K2HPO4/NaH2PO4及びPH7.4)を、良好な溶解度及び低温安定性のためにK2HPO及びNaH2PO4を用いて調製した。肝臓サンプル(〜50mg)を、PreCellys Tissue Homogenizer(ベルタンテクノロジーズ、メリーランド州ロックビル)を用いて0.6mL(600μL)の予め冷却したメタノール−水の混合物(2/1、v/v)で三回抽出した。11180×gにて4℃で10分間遠心分離した後、まとめた上清を乾燥した。各水性抽出物を別々に50%D2O及び0.005%TSP−d4(化学シフト参照)を含む600μLリン酸バッファーに再構成した。遠心分離後、それぞれ550μLの抽出物を5mmのNMRチューブに移した。盲腸内容物のサンプルは、以前に開示された最適化された手順(Wu et al., 2010)を用いて直接抽出した。簡単に説明すると、サンプル(〜50mg)を600μLの予め冷却されたリン酸バッファーと混同し、30秒間ボルテックスし、3連続で凍結解凍を行い、続いて、PrecellysTM組織ホモジナイザーを用いて均質化した。10分間遠心分離(11,180×g、4℃)した後、上清(550μL)を、NMR分析のために5mmのNMRチューブに移した。
(1H NMR分光法)
水性の肝臓抽出物及び糞便抽出物の1H NMRスペクトルを、Brukerインバース極低温プローブ(Bruker Biospin、独国)を備えるBruker Avance III 850MHz分光計(1Hに対して850.23MHzで作動)にて298Kで記録した。NOESYパルスシーケンス(NOESYPR1D)の最初の増大を用いて、全ての各サンプルについて代表的な一次元NMRスペクトルを取得した。水のシグナルを抑制するために、繰り返し時間(2秒)及び混合時間(100ミリ秒)の間に水のピークに対して弱い連続波照射を適用した。90°のパルス幅を、各サンプルについておよそ10マイクロ秒に調節した。64の過渡信号を、20ppmのスペクトル幅を有する各スペクトルについて32kのデータポイントに回収した。NMRのシグナル帰属を容易にするために、選択されたサンプルについて、2D NMRスペクトルの範囲を取得し、1H−1H相関分光法(COSY)、1H−1H全相関分光法(TOCSY)、1H−13C異種核単量子相関(HSQC)、及び1H−13C異核多結合相関分光法(HMBC)を含めて以前に開示されたようにして処理した(Dai et al., 2010; Ding et al., 2009)。
(スペクトルデータプロセシング及び多変量データ解析)
全ての自由誘導減衰(FID)をフーリエ変換の前に1Hz線拡大係数を用いて指数関数により掛け算をした。1H NMRスペクトルを、位相及びベースラインの歪みを手動で補正し、スペクトル領域δ0.5−9.5を、AMIXソフトウェアパッケージ(V3.8、Bruker−Biospin、独国)を用いて0.004ppmの等しい幅(2.4Hz)を有する領域に統合した。領域δ4.45−5.20は不完全な水飽和により放棄した。また、領域δ1.15−1.23及びδ3.62−3.69は、マウス解剖プロセスの間における盲腸内容物のエタノール汚染のため除去した。次いで、それぞれのバケツ領域を、スペクトル積分の総和に対して標準化し、統計的データ解析の前に全体的な濃度差について補った。
多変量データ解析は、SIMCAP+ソフトウエア(version13.0、Umetrics、スウェーデン)を用いて行われた。はじめに、主成分分析(PCA)を、NMRデータ上で行い、概略を得、データの質を評価した。次いで、判別分析を伴う潜在構造に対する直交射影(OPLS−DA)を、NMRデータ上で行った。OPLS−DAモデルを、7倍相互検証法を用いて検証し、モデルの質をパラメーターR2X及びQ2値により記載した。結果の解釈を容易にするため、OPLS−DAから生じた負荷の逆変換(Cloarec et al.、Anal. Chem. 77:517−526、2005)を、負荷プロットを生み出すために行った。それを、MATLABのために社内開発したスクリプト(マスワークス社;マサチューセッツ州ナトウィック)を用いて変数(又は代謝物)のピアソン線形相関係数で色分けした。本研究では、|r|>0.811(r>0.755及びr<−0.755)のカットオフ値を、判別有意性(p≦0.05)に基づいて有意な相関関数のために選択した。
(胆汁酸塩ヒドロラーゼ活性)
糞便のタンパク質を、超音波処理を用いてpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS、5.0mL)中の糞便サンプル(0.5g)から調製した。胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)活性を、糞便におけるTCDCAからのCDCAの生成に基づいて測定した。簡潔に説明すると、インキュベーションを、200μLの最終体積中0.1mg/mlの糞便のタンパク質及び50μMのTCDCA−d5を含む3mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)中で行った。37℃での20分のインキュベーション後に、サンプルをドライアイスに落下させることにより反応を停止した。100μLのアセトニトリルを反応混合物に直接加えた。14,000×gで20分間遠心分離した後、5μLの上清を、オートサンプラバイアルに移して、XEVO三連四重極タンデム質量分析計(Waters Corp.、マサチューセッツ州ミルフォード)と連結したUPLCシステムにより分析した。
(ミトコンドリアの単離及び機能的研究)
腸内のミトコンドリアについては、回腸の粘膜を穏やかに擦り取り、PBSで2回洗浄し、氷冷したミトコンドリアの0.2%BSAを含む均質化バッファー(225mMマンニトール、75mMスクロース、5mM MOPS、0.5mM EGTA及び2mMタウリン(pH7.25))中でみじん切りにし、ゆったりしたホモジナイザーでホモジナイズした。ホモジネートを500xgにて4℃で10分間遠心分離した。次いで、上清を10,000xgにて4℃で10分間遠心分離した。最終のミトコンドリアのペレットを、機能的評価の前に0.5mg/mlの濃度で0.2%BSAを含むミトコンドリアの単離緩衝液中で再懸濁した。
単離されたミトコンドリアの酸素消費量を25℃でクラーク型O2電極(Instech)及びO2モニター(Model 5300、YSI社)に接続したチャンバー内で測定した。ミトコンドリアを、コンプレックスI(5mMグルタミン酸塩及び5mMリンゴ酸塩)、又はコンプレックスII(5mMコハク酸塩及び1μMロテノン)の何れかに対する基質と共に呼吸バッファー(120mM KCl、5mM MOPS、0.1mM EGTA、5mM KH2PO4及び0.2%BSA)中でインキュベートした。状態3(最大)呼吸活性を1mMのADPの添加後に測定した。ADP独立呼吸活性(状態4)を、2μMオリゴマイシンの添加後にモニターした。呼吸調節比は状態3/状態4の呼吸速度で決定される。
(組織学的分析)
ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を、標準的なプロトコルを用いてホルマリン固定パラフィン包埋切片上で行った。Oil red O染色を、標準的なプロトコルを用いて凍結された肝臓切片上で行った。それぞれのマウスについて少なくとも3つの不連続な肝臓切片を評価した。
(トリグリセリド内容物の定量化)
肝臓の脂質を、2:1のクロロホルム−メタノール溶液を用いて抽出した。肝臓トリグリセリドを、製造業者(Bioassay Systems、カリフォルニア州ヘイワード)の推奨に従ってトリグリセリド比色分析キットを用いて測定した。
(細胞培養)
Caco−2(ATCCTMHTB−37TM)細胞を、上記の方法のようにして分化誘導した(Ferraretto et al., Anticancer Res. 27:3919−3925, 2007)。分化Caco−2細胞を、1% ウシ胎仔血清を伴うDMEM培地と8時間インキュベートし、次いでGly−MCA/CDCA/GW4064に24時間曝した。RNAを、トリゾール試薬(インビトロゲン)を用いて凍結された腸から抽出した。cDNAをSuperscript II逆転写酵素(インビトロゲン)を用いて1μgの全RNAから合成した。
(腸内細菌によるGly−MCAヒドロキシル化)
糞便のタンパク質を、超音波処理を用いてpH7.4PBS(5.0ml)中の糞便のサンプル(0.5g)から調製した。インキュベーションを200mlの最終体積で0.1mg/ml糞便のタンパク質及び50μMのGly−MCA又はT−β−MCAを含む3mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)中で行った。37℃で20分インキュベーションした後、サンプルをドライアイスに投入し、反応を停止した。100μLのメタノールを100mlの反応混合物に直接加えた。14,000gで20分間遠心分離した後、5mlの上清を、オートサンプラバイアルに移し、XEVO三連四重極タンデム質量分析計(Waters社、マサチューセッツ州ミルフォード)に連結したUPLCシステムにより分析した。
(動物研究)
高脂肪食(HFD)(60%kcalが脂肪からなるもの)をBioserv社から購入した。Gly−MCAをカスタム合成した。
ベーコン風味の練り粉丸剤を、Gly−MCA(0.25mgGly−MCA/丸剤)の経口投与のために開示されているようにして製造した(Walker et al., Toxicol. Appl. Pharmacol. 260:65−69, 2012)。マウスが研究の前に練り粉丸剤を食すように訓練した。
オスの野生型(WT)C57BL/6Nマウス(6〜8週齢)に6週齢からHFD(Bio−Serv、ニュージャージー州フレンチタウン;60kcal%脂肪)を与え、ビヒクル(対照丸剤)又はGly−MCA(0.25mg/丸剤/日、10mg/kg)を経口投与した。マウスを個別にホームケージに収容した。累積の食物摂取量及びTEEbalを、6ないし7週間のHFDのビヒクル処置マウス及びGly−MCA処置マウスで1週間測定した。TEEbalを以前に開示されたようにして測定した(Ravussin et al., Int. J. Obesity 37:399−403, 2013)。全ての動物研究は、実験動物資源ガイドライン協会に従って行い、NCI動物実験委員会により承認された。
(代謝アッセイ)
耐糖試験(GTT)のために、マウスを16時間絶食させ、血液を採取し、マウスに1g/kgのブドウ糖を腹腔内(i.p.)注射した。インスリン耐性試験(ITT)のために、マウスを4時間絶食させ、血液を採取した、次いで、インスリン(イーライリリー、ワシントンDC)を1U/kg体重の用量でi.p.により注射した。血液サンプルを注射してから15分後、30分後、60分後、及び90分後に尾から採取した。ブドウ糖をGlucometer(Bayer、ペンシルベニア州ピッツバーグ)を用いて測定した。
本実施例は、タウロ−β−ムリコール(TβMCA)酸が、一次マウス肝細胞においてタウロコール酸(TCA)によるFXR活性化を拮抗するということを示す。
Fxr+/+及びFxr−/−マウスの初代肝細胞を、PGL4−Shp−TKホタルルシフェラーゼ構造物及び対照プラスミドphRL−SV40でトランスフェクトした。24時間後、細胞を100μMタウロコール酸(TCA)、TβMCA又はTCAを伴うTβMCAで処理した。細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を、本明細書に記載するようにして測定した。結果を図1に示す。
図1に示された結果から明らかなように、TβMCAは、Fxr+/+マウスの初代肝細胞ではTCAによるFXR活性化を拮抗したが、Fxr−/−マウスの初代肝細胞では拮抗しなかった。
本実施例は、TβMCAが、Caco−2細胞においてTCAによるFXR活性化を拮抗することを示す。
Caco−2細胞を、PGL4−Shp−TKホタルルシフェラーゼ構造物、対照プラスミドphRL−SV40、及びヒトFXR及びヒトASBT発現プラスミドでトランスフェクトした。24時間後、細胞を、100μM TCA、TβMCA、又は100μLの100μM TCAを伴うTβMCAで処理した。細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を本明細書で記載されたようにして測定した。結果を図2に示す。
図2に示された結果から明らかなように、TβMCAは、Caco−2細胞においてTCAによるFXR活性化を拮抗した。
本実施例は、マウス回腸粘膜におけるATPレベルが、高脂肪食での14週間後において、Fxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスで著しく高くなるということを示す。
2つの個別の群のFxrfl/flマウス及びFxrΔIEマウスを、14週間高脂肪食で保持した。両群のマウスの回腸粘膜におけるATPレベルを、本明細書に記載されたようにして測定した。結果を図3に示す。
図3に示された結果から明らかなように、腸においてファルネソイドX受容体(FXR)を発現しないFxrΔIEマウスの回腸粘膜におけるATPレベルは、腸内FXRを発現する対照Fxrfl/flマウスの回腸粘膜におけるATPレベルと比較して著しく高かった。これらの結果は、エネルギー消費量の増加が、核内受容体FXRの不存在の小腸で起こるということを示す。
本実施例は、グリシン−β−ムリコール酸(Gly−MCA)がFXR拮抗薬であることを示す。
肝臓において、マウスはTβMCAを産生し、その一方でヒトは優先的にGly−MCAを産生する。したがって、Gly−MCAがFXR拮抗薬であるかどうかを決定することは興味深かった。100μMの用量でFXR作動薬ケノデオキシコール酸(CDCA)は、Fxr標的遺伝子Shp mRNAの発現を4倍増加させ、CDCAでのShp mRNAの誘導を、用量依存的にGly−MCAにより阻害した(図4)。合成したFXR作動薬Gw4064は、FXR標的遺伝子Shp及びFgf19の発現を2μM及び5μMの濃度で共に誘導した。両方の遺伝子の誘導は、用量依存的にGly−MCA□により阻害された(図5及び6)。さらに、Gw4064での処置は、Atp5g mRNA発現を阻害し、Gly−MCAはこの阻害を逆転させた(図7)。これらのデータは、ヒトにおいて産生されたGly−MCAが、TβMCAと同様のFXR拮抗薬であることを示す。
本実施例は、高脂肪食で処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスの体重に対するテンポールの効果を示す。
ビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスを、10週間高脂肪食で保持した。図11は、高脂肪食を与えて10週間後のビヒクル及びテンポールで処置したFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスのグラムでの体重増加を示す。
図11に示された結果から明らかなように、Fxrfl/flマウスのテンポール処置は、ビヒクル処置マウスが示した体重増加のおよそ65%未満の体重増加をもたらした。腸特異的なFxr−nullマウスであるFxrΔIEマウスのテンポール処置は、体重増加で有意な差をもたらさなかった。その結果、腸内FXRは、高脂肪食を与えられたマウスのテンポールによる体重増加の低減の媒介に関与している。
本実施例は、脂質及び糖代謝における腸内FXRの役割を示す。
FxrΔIEマウスが高脂肪食誘発性肥満症に耐性であることを明らかにするためにオスのFxrfl/fl及びFxrΔIEマウスに高脂肪食を与えた。グラムにおいて体重の割合としての脂肪質量を、Echo3−in−1NMR分析装置(Echo Medical Systems、テキサス州ヒューストン)を用いて麻酔をかけていないマウスにおいて測定した。結果を図12に示した。結果は、Fxrfl/flマウスの脂肪質量及び脂肪と体重の比が、FxrΔIEマウスよりも高いということを示す。図13に示される耐糖試験(GTT)は、Fxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスの耐糖能異常が改善することを明らかにした。これは、時間の関数として血糖値(mg/dLで)の曲線下面積を示す。図14に示されるインスリン耐性試験(ITT)により、FxrΔIEマウスにおけるインスリン感受性が、Fxrfl/flマウスと比較して有意に増大することが示された。さらに、図15に示されるように、FxrΔIEマウスにおける絶食時血清インスリン値及びHOMAは、Fxrfl/flマウスと比較して有意に増加した一方で、絶食時糖は、両群のマウスともおおよそ同じであった。
本実施例は、テンポールがラクトバチルス属の阻害を介して胆汁酸のホメオスタシスに影響を与えることを示す。
腸のマイクロバイオーム組成物におけるファーミキューテス門からバクテロイデス門への有意な門レベルのシフトが、通常の固形飼料でのマウスの強制飼養(250 mg/kg)でテンポール処置の5日後にマウスの盲腸において観察された。16S rRNAシークエンシングのヒートマップ図は、テンポール処置がラクトバシラセエファミリーを劇的に減少させることを示した。テンポール処置が確実にラクトバチルス属を減少させることが見出された。強制飼養を介する急性処置の結果と同様、図16に示されるように、高脂肪食を与えたマウスから得られた疑わしい糞便微生物のqPCR分析から、テンポール処置がファーミキューテス門からバクテロイデス門へのシフトをもたらす一方で、総細菌量はビヒクル処置マウスとテンポール処置マウスとの間で変化しないままということが明らかとなった。これらの結果は、腸のマイクロバイオームに対するテンポールの影響が食事や肥満状態に無関係であるということを示す。さらに、図17に示されるように、糞便中の胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)酵素活性の有意なダウンレギュレーションと同時に、ラクトバシラセエのラクトバチルス属を減少させた。胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)は、肝臓において製造されるタウリン結合胆汁酸を遊離胆汁酸に脱複合させる。
これらの結果は、テンポールがラクトバチルス属の阻害を介して胆汁酸ホメオスタシスに影響を与えていることを示す。
本実施例は、合成作動薬Gw4064及び様々な用量のTUDCA、TωMCA、TβMCA、TαMCA4を用いるヒトFXR競合アッセイの結果を示す。結果をウミシイタケ発現に対して標準化した。
HEK293T細胞を、1)構造的に活性のSV40プロモーターの調節制御下、ヒトFXR(天然リガンド結合ドメイン及びAF2トランス活性化ドメインを含むもの)のカルボキシ末端部が、アミノ末端GAL4 DNA結合ドメインと縮合した、キメラ受容体構造物;2)UAS GAL4 DNA反応エレメントにより誘導されるホタルルシフェラーゼレポータープラスミド;及び3)トランスフェクション効率制御としてのウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子(pRL−ルシフェラーゼ;プロメガ;ウィスコンシン州マディソン)と同時にトランスフェクトした。ルシフェラーゼ検出を二重ルシフェラーゼレポーターアッセイキット(プロメガ社、ウィスコンシン州マディソン)及びTecan GeniosPro発光性プレートリーダー(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)を用いて行った。結果は図18で説明する。
図18で説明された結果から明らかなように、胆汁酸複合体TUDCA、TωMCA、TβMCA、及びTαMCAの全てが、合成作動薬Gw4064の存在下でFXRを阻害した。
本実施例は、テンポールによってもたらされる腸内微生物叢における変化がNAFLDと相関するということを示す。
高脂肪食(HFD)は、NAFLDのマウスモデルとして広く使用される。酸化防止剤テンポールは、通常の食事条件下で腸内微生物叢の組成物及び代謝を選択的に調節する(Li et al., Nat. Commun. 4: 2384, 2013)。テンポールが、HFD誘導NAFLDモデルにおける腸のマイクロバイオームを改善するかどうかを決定するための試験として、16S rRNA遺伝子配列解析が行われた。Weighted UniFracTM分析は、12週間のHFDでのビヒクル及びテンポールで処置した群から分離された盲腸のコミュニティーの明確なクラスター化を示す。主座標1(PC1)は、56.08%の変異を説明し、12週間のHFDでのマウスにおいてテンポールがビヒクルよりも微生物叢の組成物により強い影響を与えたことを示す(図19A)。主成分分析プロットのサンプルの分離は、ファーミキューテス門を有意に減少し、且つプロテオバクテリアを著しく増加する個体数の差を示す。デスルホビブリオ属が、プロテオバクテリアを増大させる主要な寄与因子として特定さた(図19B)。それは、肥満の被験者において有意により低いことが見出された(Karlsson et al., Obesity 20:2257−2261, 2012)。ロゼブリア属の劇的な増加が観察された(図19C)。それは、イヌの体重との負の相関性がある(Handi et al., FEMS Microbiol. Ecol. 84332−343, 2013)。また、クロストリジウム属(狹義)及びラクトバチラス属のレベルは、テンポール処置マウスで有意に減少している。その一方で、バクテロイデス属及びストレプトコッカス属のレベルは同じままであった(図19D〜G)。
尿における腸内微生物叢に関連するマーカーを特定するために、エレクトロスプレイイオン化四重極飛行時間型質量分析(UPLC−ESI−QTOFMS)と連結した超高性能液体クロマトグラフィーに基づくメタボロミクス解析を用いた。マウスの尿のUPLC−ESI−QTOFMSネガティブモードデータのPCAモデリングにより、テンポール群と対照群との間で明確な区別が示された(図20A)。負荷散布図の分析により、2つの化合物p−クレゾールスルファート(保持時間2.61分でm/s 187.0060)及びp−クレゾールグルクロニド(保持時間3.04分でm/s 283.0812)が、テンポールで処置した群の尿で有意に減少することが明らかになった(図20B及びC)。これらの化合物の同一性をMS/MS分析により確認した(図20D)。これらの結果は、14週間HFDを与えたマウスにおいて、テンポールが腸内微生物叢の組成物を作り替え、腸内微生物叢関連代謝マーカーを変化させることを示した。特に腸内微生物叢を調節するテンポール処置モデルの結果と同様に、メタボロミクス解析により、p−クレゾールスルファート及びp−クレゾールグルクロニドの尿中レベルが14週間HFDを与えた抗生剤処置マウスにおいて殆ど存在しないということが明らかにされた(図21A〜C)。腸内微生物叢の組成組成物及び関連代謝物の変化の後、肝組織像が、16週間HFDを与えたテンポール処置マウス及び7週間HFDを与えた抗生剤処置マウスの肝臓の脂質液滴の有意な減少を示す(図22A及びB、及び図23A)。腸内微生物叢の組成物も変化させるテンポール処置及び抗生剤処置は、肝臓の質量及び肝臓/体重の比を減少させた(図22C及びD、図23A及びB)。肝臓のトリグリセリド(TG)内容物は、抗生剤及びテンポールで処置されたマウスで、それぞれ、およそ50%及び35%減少した(図22E及び図23D)。
本実施例は、腸内微生物叢が胆汁酸代謝を変更し、FXRシグナル伝達に影響を与えるということを示す。
腸内微生物叢は胆汁酸代謝と密接に関連している。UPLC−ESI−QTOFMSに基づくメタボロミクス解析が、腸における胆汁酸組成物及び胆汁酸代謝物のレベルを測定するために採用された。マウスの回腸のUPLC−ESI−QTOFMSネガティブモードデータのPCAモデルのスコア散布図は、ビヒクル群と抗生剤群との間の明確な代謝プロファイルを示した(図24A)。最も豊富な代謝物TβMCA(m/z 514.2871、保持時間=6.64分)は、従来の方法に従う負荷散布図(図24B)で明らかにされたように7週間HFDを与えた抗生剤処置マウスで増加した;この増加はテンポール処置で観察されたものと同様であった(Li et al., J. Proteome Res., 12:1369−1376, 2013)。回腸の胆汁酸の組成物の分析により、タウリン結合胆汁酸TβMCAのレベルが抗生剤処置後に有意に増加することが明らかにされた(図25A)。同様の結果が16週間HFDを与えたテンポール処置マウスから生じた(図25B)。腸内微生物叢は、微生物の酵素活性により胆汁酸組成物を変化させることができる。タウリン結合胆汁酸を遊離胆汁酸に加水分解する細菌の酵素胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)の活性は、7週間HFDを与えた抗生剤処置マウスにおいて大幅に減少した(図26A)。これは、FXR拮抗薬TβMCAであったHFDを与えた抗生剤処置マウス及びテンポール処置マウスの回腸における最も有意に豊富な胆汁酸を構成する可能性が高い(Li et al., J. Proteome Res., 12:1369−1376, 2013; Sayin et al., Cell Metab. 225−235, 2013)。ウエスタンブロット及びqPCR分析は、FXR標的遺伝子小ヘテロ二量体パートナー(Shp)のmRNA及び線維芽細胞増殖因子15(Fgf15)mRNAを増大させることにより明らかなように、12週間のHFD処置が回腸におけるFXRタンパク質レベル(図26B)及びFXRシグナル伝達を誘導することを示した(図26C)。逆に、抗生剤処置はShp及びFgf15のmRNAを減少させ、それは、FXRシグナル伝達を回腸において阻害することを示した(図26D)。TβMCAが、in vivoにおいてHFD処置マウスでFXRシグナル伝達を阻害したかどうか疑問が生じた。TβMCA処置は3日間HFDを与えた抗生剤処置マウスの回腸においてFXR作動薬TCAによるShp及びFgf15誘導を有意に鈍らせた(図26E)。これらの結果は、主に、HFDを与えたマウスの回腸におけるFXRシグナル伝達を阻害するより低い細菌BSH活性によりTβMCAを増加させることで、抗生剤及びテンポール処置の両方が胆汁酸組成物を調節することを示した。
本実施例は、腸特異的なFxrの断絶が、高脂肪食を与えたマウスでの肝臓の脂質蓄積を減少させることを示す。
NAFLDの進行での腸内FXRの役割をさらに明確にするために、腸特異的なFxr−null(FxrΔIE)マウスを14週間HFDで処置した。肝臓切片のH&E染色及びOil red O染色は、野生型(Fxrfl/fl)マウスと比較して、FxrΔIEマウスの肝臓の脂質蓄積において有意な減少を示した(図27A及びB)。FxrΔIEマウスは、肝臓の質量及び肝臓の質量の比の有意な減少を示した(図27C)。この肝臓の質量の変化は、主に、14週間HFDを与えたFxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスで50%低い肝臓トリグリセリド(TG)量によるものであった(図27D)。メカニズムの研究により、ミトコンドリアの電子伝達系(ETC)複合体II関連遺伝子(例えば、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体、サブユニットD、内在性膜タンパク質(Sdhd)、複合体III関連遺伝子(例えばシトクロムc1(Cyc1))、複合体IV関連遺伝子(例えばミトコンドリアでエンコードされたシトクロムcオキシダーゼII(mt−Co2))、シトクロムcオキシダーゼサブユニットIVアイソフォーム1(Cox4i1)、シトクロムcオキシダーゼサブユニットVa(Cox5a)、ATP合成酵素、H+輸送、ミトコンドリアF0複合体、サブユニットC1(サブユニット9)(Atp5g)及びATP合成酵素、H+輸送、ミトコンドリアF0複合体、サブユニットD(Atp5h))の発現が、FxrΔIEマウスの回腸上皮において高いということが明らかにされた(図28A)。同様の結果が抗生剤処置マウスで得られた(図28B)。次いで、Fxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスの回腸ミトコンドリアにおいて、複合体IIのおよそ70%の活性増加があり、複合体Iの活性では有意な上昇はなかった(図28C)。また、FxrΔIEマウスにおける回腸ATPレベルは、Fxrfl/flマウスにおけるものに比べて有意に高かった(図28D)。遊離脂肪酸類は脂肪肝の進行に密接に関連している(Donnelly et al., J. Clin. Invest. 115:1343−1351, 20052005)。しかしながら、血清リピドミクスにより、遊離脂肪酸類の種類のサブセットがビヒクル及びテンポールで処置したFxrΔIEマウス及びFxrfl/flマウスにおいて同様のレベルであることが明らかとなった(図29A)。LC−MS/MS定量により、回腸のC16:0、C18:0、C20:0、C22:0、C24:0及びC24:1のセラミドレベルが、7週間HFDを与えた抗生剤処置マウスで有意に減少したことが確認された(図29B)。従って、抗生剤処置マウスにおける血清のC16:0、C18:0、C20:0、C24:0及びC24:1のセラミドレベルも、ビヒクル処置マウスにおけるものよりも有意に低かった(図29C)。各セラミドの同一性はLC−MSフラグメントグラフィーにより確認された(図30A〜G)。さらに、de novoセラミド合成関連遺伝子(例えば、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、長鎖ベースサブユニット3(Sptlc3)、セラミド合成酵素4(Cers4)、変性精母細胞ホモログ1(Degs1)、及びスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ3(Smpd3))をエンコードする腸内のmRNAは、FxrΔIEマウス及び抗生剤処置マウスにおいて有意に減少した(図29C及びD)。セラミド合成酵素2(Cers2)mRNAレベルは、抗生剤処置マウスにおいて有意に減少し、FxrΔIEマウスで減少傾向(P=0.06)を有する。遺伝子の発現は、スフィンゴミエリンシンターゼ1及び2(Sgms1及びSgms2)にようにセラミドの異化に関連し、アルカリ性セラミダーゼ1及び3(Acer1及びAcer3)は、FxrΔIEマウス及び抗生剤処置マウスにおいて同様のままであった(図29C及びD)。
本実施例はセラミドが肝臓におけるSREBP1c−CIDEA経路を調節することを示す。
セラミドレベルの減少及びNAFLDの改善の間の因果関係を確立するために、HFDを与えたマウスを、短い期間抗生剤で治療した。3日間の抗生剤処置により、肝臓においてトリグリセリド内容物を減少しなかった(図31A)。次いで、FXR標的遺伝子Shp及びFgf15 mRNAsの発現の減少により明らかになったようにFXRシグナル伝達経路を阻害した(図31B)。抗生剤処置後早ければ3日で、抗生剤処置マウスの回腸におけるセラミドレベルが有意に減少した(図31C)。これらの結果は、NAFLDの進行の結果及びNAFLDをモニターするバイオマーカーよりもむしろ、セラミドが原因である可能性があることを示した。さらに、セラミドのNAFLDに対する寄与を、培養されたマウスの初代肝細胞において評価した。セラミドの処置は、用量依存的に初代肝細胞においてトリグリセリド内容物の増大を有意に誘導した(図31D)。セラミドが脂肪肝をもたらすメカニズムを解明するために、肝臓の脂質生成及び脂肪酸酸化に関連する遺伝子の発現を測定した。脂肪酸合成関連遺伝子(例えば、ステロール反応エレメント結合タンパク質1c(Srebp1c)、DNA断片化因子α様エフェクター(Cidea)、極長鎖脂肪酸伸長酵素タンパク質6(Elovl6))及びTG構築関連遺伝子(例えば、ジアシルグリセロールO−アシルトランスフェラーゼ2(Dgat2))は、初代肝細胞においてセラミドにより有意にアップレギュレートされた(図31E)。対照的に、脂肪酸β−酸化に関連する遺伝子(例えば、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(Cpt1)、アシル−補酵素Aオキシダーゼ1(Acox1)、エノイル−補酵素A、ヒドラターゼ/3−ヒドロキシアシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ(Ehhadh)、及びアセチル−補酵素Aアシルトランスフェラーゼ1A(Acaa1a))の発現は、セラミドの処置によっては影響しなかった(図31E)。mRNAの結果と一致して、2μM及び10μMでのセラミド曝露は、SREBP1−N及びSREBP1−N標的遺伝子タンパク質CIDEAの成熟した核の形態のタンパク質レベルを有意に誘導した(図31F及びG)。in vivoにおいて、肝臓の脂肪酸合成関連遺伝子Srebp1c、Cidea、脂肪酸シンターゼ(Fasn)及びElovl6によりエンコードされたmRNAsは、ビヒクル処置マウスと比較して抗生剤処置マウスで減少し、Fxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスで減少した(図32A及びB)。脂肪酸に関連する遺伝子の発現は、ビヒクル処置マウスと比較して抗生剤処置マウスで同様のレベルのままであり、Fxrfl/flマウスと比較してFxrΔIEマウスで同様のレベルのままであった(図32C及びD)。さらに、ウエスタンブロット解析により、SREBP1−N及びCIDEAの成熟した核の形態のタンパク質レベルが、7週間HFDを与えた抗生剤処置マウスの肝臓中で有意にダウンレギュレートされることが明らかとなった(図32E及びF)。律速酵素コレステロール7α−ヒドロキシラーゼ(CYP7A1)は、胆汁酸合成のための古典的経路を開始し、脂質代謝の調節に重要な役割を果たす。Cyp7a1 mRNAレベルを抗生剤処置マウスでわずかに誘導するが、テンポール処置マウスでは誘導しない(図32G及びH)。さらに、炎症関連遺伝子(例えば、トール様受容体2(Tlr2)、トール様受容体4(Tlr4)、トール様受容体9(Tlr9)及び腫瘍壊死因子α(Tnfα))は、抗生剤マウス及びテンポールマウスで同等であった(図32I及びJ)。本結論により、セラミド代謝の阻害は、抗生剤処置マウスにおいてHFD誘導NAFLDの進行を改善する主要な要因である可能性があることが明らかになった。
本実施例は、腸内FXRの阻害が腸のマイクロバイオームを媒介するNAFLDの進行のために必要とされていることを示す。
NAFLDの進行における腸内FXRの役割を決定するためにFxrΔIEマウスを使用した。肝組織像は、抗生剤処置及びテンポール処置により14週間及び16週間HFDを与えたFxrfl/flマウスそれぞれで肝臓の脂質液滴が減少することを明らかにした;これらの処置をしたFxrΔIEマウスでは、肝臓の脂質の変化が観察されなかった(図33A及びB及び図34A及びB)。抗生剤及びテンポールで処置したFxrfl/flマウスの肝臓の質量及び肝臓/体重の比は、有意に減少した。その一方で、肝臓の質量及び肝臓/体重の比はFxrΔIE及びFxrfl/flマウスで同様であった(図33C及びD、図34C及びD)。肝臓のトリグリセリド内容物分析により、抗生剤及びテンポール処置はFxrΔIEマウスの脂肪肝を緩和しないということが確認された(図33E及び図34E)。回腸及び血清のC16:0、C18:0、C20:0、C22:0、C24:0及びC24:1のセラミドレベルがFxrΔIEマウス及びテンポールで処置したFxrfl/flマウスで有意に減少したが、FxrΔIEマウスでは減少しなかった(図33F及びG)。FxrΔIEマウスにおいて、肝臓の脂肪酸合成関連遺伝子(例えば、Srebp1c、Cidea、Fasn及びElovl6)は、ビヒクル処置マウス及び抗生剤処置マウスの間で変化しないままであった(図34F)。さらに、SREBP1及びCIDEAタンパク質の成熟した核の形態のタンパク質レベルは、テンポール処置マウスの肝臓において有意に減少した。その一方で、テンポールで処置したFxrΔIEマウスでは減少が認められなかった(図34G及びH)。本結論により、腸内FXRの阻害が、抗生剤及びテンポール処置によりもたらされるNAFLDの改善を媒介するということが明らかとなった。
本実施例は、テンポール及び抗生剤の処置に対する高脂肪食を与えたマウスの全身の反応を示す。
アミノ酸類、炭水化物及びヌクレオチドの代謝に関連する合計53の代謝物が、1H NMRによって同定された。盲腸内容物の1D1H NMRスペクトルでは、短鎖脂肪酸類(SCFA)、ヌクレオチド類、オリゴ糖類及びいくつかのアミノ酸類が主要なものである。グリコーゲン、ブドウ糖、アミノ酸類及びヌクレオチドが、肝臓の1H NMRスペクトルにおいて観察された主要な代謝物である。
異なる生体サンプルグループに関連する代謝の変化を達成するために、ペアワイズOPLS−DAを、テンポール又は抗生剤処置後のマウスの盲腸の内容物又は肝臓で得られるデータ間で行った。さらに、OPLS−DA及びPLS−DAモデルに対するCV−ANOVA(p<0.05)及び並べ替え検定(200試験)を用いた評価により、これらのモデルの質が有効であることを確認した。ビヒクルで処置した野生型マウスと比較して、テンポールでの処置は、SCFA(アセテート、プロピオナート、及びブチレート)のレベルを有意に減少させたが、盲腸の内容物においてオリゴ糖類及びブドウ糖のレベルを有意に上昇させた。また、SCFA及びオリゴ糖において同様の変化が、各対照のものに比べて、抗生剤で処置した野生型マウスの盲腸の内容物で観察された。しかしながら、SCFA及びオリゴ糖のレベルで有意な差は、テンポール処置したFxrΔIEマウス及びビヒクルで処置したFxrΔIEマウスの間で、盲腸の内容物において観察されなかった。
テンポールでの処置は、肝臓における脂質及び不飽和脂肪酸(UFA)のレベルを有意に減少させた。その一方で、テンポールでの処置は、ビヒクルで処置した野生型マウスと比較して、ブドウ糖、グリコーゲン、胆汁酸及び様々なヌクレオチド代謝物(例、ウリジン、ヒポキサンチン及び5’−IMP)、ニコチヌレート及びコリンのレベルを有意に上昇させた。これらの観察は、テンポール処置による肝臓における脂質生成の減少と一致する。しかしながら、脂質及び糖代謝の有意な変化は、テンポールでの処置後、FxrΔIEマウスの肝臓において観察されなかった。さらに、抗生剤での処置は、肝臓において、胆汁酸、トリメチルアミンオキシド(TMAO、コリン、フマレート、ホルマート、アミノ酸類(分枝鎖アミノ酸類(ロイシン、イソロイシン及びバリン)、アラニン、グリシン、チロシン及びフェニルアラニンを含む)及び一部の核酸類(例えばヒポキサンチン、ウリジン及び5’−IMP)のレベルを有意に高めた。ビヒクルで処置したFxrfl/flマウスと比較して、FxrΔIEマウスは、肝臓において、より低い脂質及びUFAレベルを示したが、より高いタウリン及びグリコーゲンのレベルを示した。
本実施例は、本発明の実施形態に従うβ−ムリコール酸9、グリシン−β−ムリコール酸(Gly−MCA)10及びタウロ−β−ムリコール酸(T−β−MCA)11の合成を示す。
β−ムリコール酸(β−MCA)9を、文献の手順に従って、図41で示されたようにして調製した(Iida T, Momose T, et al., Journal of Lipid Research, 30: 1267−1279 (1989))。一般的に、酸触媒下でのジヒドロキシ酸1のメタノールとのエステル化により、定量的収率でエステル2を得た。3位のヒドロキシル基のエチルクロロホルマートを用いた保護により、カーボネート3を得た。6−ヒドロキシル基のクロム酸カリウムを用いた酸化は、定量的収率でケトン4を与えた。47%HBr溶液を用いた臭素化により、ブロモケトン5を与え、NaBH4を用いた還元により中程度の収率でブロモヒドリン6を与えた。亜鉛金属を用いた還元的な脱臭化水素化により、約80%収率でオレフィン7を得た。四酸化オスミウムを用いたCis−ジヒドロキシル化により、cisジオール8を得、続いて加水分解により定量的収率でs−ムリコール酸9を得た。r−ムリコール酸9をグリシンと結合させ、グリシン−β−ムリコール酸(Gly−MCA)10を得た。エチルグリシナートの懸濁液を、終夜還流してβ−MCA9及びEEDQと反応させた。ウォークアップ後に得られた残渣を、煮沸エタノール中に溶解し、10%K2CO3で加水分解した。水溶液を酸性化し、収率68%で白色粉末としてGly−MCA10を得た。1H NMR(CDCl3) 0.75(s、3H、18−Me)、1.01(d、3H、J=6.5Hz、21−Me)、1.14(s、3H、19−Me)、3.44−3.56(m、2H)、3.58−3.61(m、1H)、3.91(s、2H).
TβMCA11を、グリシンの代わりにタウリンと結合させることによって9から同様に調製した。
本実施例は、Gly−MCAが腸内で安定であることを示す。
糞便の抽出物を上記のように調製した。Gly−MCA(50μM)を糞便の抽出物(0.1mg/mL)とインキュベートした。陰性対照は、糞便の抽出物単独であった。陽性対照は、糞便の抽出物(0.1mg/mL)及びTβMCA酸(50μM)であった。試料をUPLCにより分析し、ββ−MCA(加水分解生成物)の量を測定した。結果を図35に示した。
Gly−MCAは、0、1、5、及び50mg/kgのGly−MCAの用量で経口投与によりマウスに与えた。ここで、Gly−MCAはトウモロコシ油中で投与された。Gly−MCAを、超高性能液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレイイオン化−四重極飛行時間型質量分析(UPLC−ESI−QTOFMS)を用いて検出した。結果を図36に示す。
図35及び36に示される結果から明らかなように、Gly−MCAは腸内で安定している。
本実施例は、Gly−MCAで処置したマウスで有意な肝臓毒性が生じないことを示す。
マウスに、1mg/kg、5mg/kg及び50mg/kgでビヒクル又はGly−MCAを投与した。24時間後に、血清アミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルを測定した。結果を図37に示した。
図37で示される結果から明らかなように、Gly−MCAは、ビヒクルと比較して各用量で有意な肝臓毒性を示さなかった。
本実施例は、Gly−MCAが合成FXR作動薬GW4064により誘導されるFXR活性を有意に阻害することを示す。
HEK293T線維芽細胞を、(1)構造的に活性のSV40プロモーターの調節制御下、ヒトFXR(天然リガンド結合ドメイン及びAF2トランス活性化ドメインを含むもの)のカルボキシ末端部が、アミノ末端GAL4 DNA結合ドメインと縮合した、キメラ受容体構造物、(2)UAS GAL4 DNA反応エレメントにより誘導されるホタルルシフェラーゼレポータープラスミド、及び(3)トランスフェクション効率制御としてのウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子(pRLルシフェラーゼ;プロメガ;ウィスコンシン州マディソン)と一時的に同時にトランスフェクトした。GW4064又はGW4064及びGly−MCAを24時間培地に加え、細胞を回収し、細胞抽出液を調製した。ルシフェラーゼ検出を二重ルシフェラーゼレポーターアッセイキット(プロメガ;ウィスコンシン州マディソン)及びTecan GeniosProTM発光性プレートリーダー(ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク)を用いて行った。結果を図38に示す。
図38で示される結果から明らかなように、Gly−MCAは、GW4064により誘導されるFXR活性を有意に阻害する
本実施例はGly−MCAがFXRの強力な拮抗薬であること示す。
分化Caco−2細胞を、100μMのFXR作動薬ケノデオキシコール酸(CDCA)で処理し、0、100μM、又は200μMのGly−MCAで処理した。FXR標的遺伝子Shp mRNAの発現を測定した。図39で示された結果から明らかなように、CDCAは、Shp mRNAの発現の4倍の増加をもたらした。Gly−MCAは、用量依存的にCDCAでのShp mRNAの誘導を阻害した。
分化Caco−2細胞を、0.2μM又は5μMのGW4064で処理し、100μM又は200μMのGly−MCAで処理した。対照細胞は何れの薬剤でも処理しなかった。FXR標的遺伝子mRNA類、Shp mRNA、Fgf19 mRNA、及びAtp5g mRNAの相対的な発現を測定した。結果をそれぞれ図40A−Cに示した。GW4064により誘導されるShp mRNA及びFgf19 mRNAの発現は、用量依存的にGly−MCAにより阻害された(図40A及びB)。GW4064での処置はFXR標的遺伝子Atp5g mRNAの発現を阻害し、Gly−MCAは阻害を逆転させた(図40C)。
本実施例は、Gly−MCAによるFXRシグナル伝達の阻害が、肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの治療のための強力な治療戦略であることを示す。
腸内FXRの阻害が、高脂肪食(HFD)誘導肥満症、インスリン抵抗性及びNAFLDの治療標的であり得るかどうかを決定し、この転写因子が適切な創薬ターゲットであることを確認するために、HFD処置マウスにGly−MCAを経口投与した。Gly−MCAでの処置により、HFDでの処置の1週間後に体重上昇が抑えられた(図41A及びB)。NMRにより測定された絶対脂肪質量及び脂肪/除脂肪質量の比は、処置の7週間後に、ビヒクル処置マウスと比較して、Gly−MCA処置マウスで有意に減少した(図41C及びD)。Gly−MCA処置マウスにおける脂肪症の減少メカニズムを調べるために、エネルギー収支技術を用いて、累積食物摂取量、エネルギー消費量(EE)(TEEbal:食品エネルギー摂取量及び身体組成の変化)を測定した。食物摂取量は2つの群の間は同等であった(図44A)。Gly−MCAでの処置は、ビヒクル処置マウスと比較して、HFDを与えたマウスの体重増加抑制に寄与し得るエネルギー消費量を有意に増加させた(図42B)。肥満症関連ブドウ糖ホメオスタシスにおけるGly−MCAの役割を明確にするために、耐糖試験及びインスリン耐性試験(それぞれGTT及びITT)を行った。GTTにより、ビヒクル処置マウスと比較して、HFDを与えて6週間後のGly−MCA処置マウスが、ブドウ糖負荷後の血糖値を有意に減少させることを示すことが明らかとなった(図43A及びB)。ITTにより、インスリン感受性がGly−MCA処置後に有意に増加することが示された(図43C)。これらの結果は、Gly−MCAがHFD誘導性肥満症及びインスリン抵抗性を改善することを示した。肝組織像は、7週間HFDを与えたマウスのGly−MCA処置後の肝臓の脂質液滴の顕著な減少を示した(図44A)。Gly−MCAでの処置は、肝臓の質量及び肝臓/体重の比を減少させた(図44B)。肝臓トリグリセリド内容物が、Gly−MCAで処置したマウスで約51%に減少した(図44D)。これらの結果が、Gly−MCAでの処置がHFD誘導性非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からマウスを保護したということを示す。体重及びNAFLDに対するGly−MCAの効果が非特異的な毒性効果によるものである可能性を排除するために、肝臓毒性の血清アミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のバイオマーカーを測定した。ALT及びASTはHFDに対して有意により高く、GlyMCAでの処置は血清ALT及びASTレベルを有意に減少させた(図45A及びB)。このように、使用したGly−MCAの用量では毒性はなかったが、実質的にHFD誘導性の肝臓毒性を減少させることを示した。NAFLDは胆汁酸代謝と密接に関連がある。UPLC−ESI−QTOFMSに基づくメタボロミクス解析が、糞便及び腸における胆汁酸組成物及び胆汁酸代謝物のレベルを測定するために採用された。マウスの糞便及び回腸のUPLC−ESI−QTOFMSネガティブモードデータのPCAモデルのスコア散布図により、ビヒクルで処置した群とGly−MCAで処置した群との間での明確な代謝プロファイルが示された(図46A及びB)。負荷散布図において明らかなように、最も豊富な代謝物TβMCA(m/z 514.2871、保持時間=6.64分)は、9週間HFDを与えたGly−MCA処置マウスで増加した(図46B及び47B)。Gly−MCA処置後の糞便において、T−β−MCAのレベルが有意に増加した一方で、TCAのレベルは、有意に減少した(図46C)。タウリン結合胆汁酸のレベルが、Gly−MCA処置マウスの回腸において増加し、とりわけTβMCAのレベルが有意に増加した(図46C)。Gly−MCAのレベルは、Gly−MCA処置9週間後の糞便及び回腸において著しく増加した(図46D及び47Dそれぞれ)。血清トリグリセリド値は、HFDを9週間与えた2群の間で同じままであった(図48A及びB)。血清のC16:0、C20:0、C22:0及びC24:1セラミドレベル、並びに回腸のC16:0、C18:1及びC24:0セラミドレベルは、HFDを9週間与えたGly−MCA処置マウスで減少した(図49A及びB)。Gly−MCA処置はShp及びFgf15 mRNAを減少させ、それは、回腸においてFXRシグナル伝達を阻害することを示す(図50A)。セラミドde novo合成関連遺伝子をエンコードする腸内のmRNA(例えば、セリンSptlc3、Cers4、Degs1、及びSmpd3)が、Gly−MCA処置マウスにおいて有意に減少した(図50B)。Shp mRNAの発現は二群の間で同様であり、それは、FXRシグナル伝達が肝臓において影響を受けなかったことを示す(図51A)。Cyp7a1 mRNAレベルがGly−MCA処置マウスで誘導された(図51B)。Fgf15 mRNAレベルがより低いので、これが、Gly−MCA処置マウスにおけるCyp7a1 mRNAレベルの増加に寄与する可能性がある。遺伝的誘導性肥満症のモデルにおいて、ビヒクル処置マウスと比べて、6週間Gly−MCAで処置したレプチン受容体欠損(db/db)マウスで体重減少した;処置のちょうど1週間後に有意に体重低下した(図52)。NMRで測定された絶対脂肪質量及び脂肪/除脂肪質量の比は、ビヒクル処置マウスと比較して、Gly−MCA処置db/dbマウスで、Gly−MCA処置6週間後に有意に減少した(図53A及びB)。肝組織像は、Gly−MCA処置後に肝臓の脂質液滴を有意に減少させることを示した(図54A)。Gly−MCAでの処置により、肝臓の質量及び肝臓/体重の比が減少した(図54B及びC)。肝臓TG内容物が、Gly−MCAで処置したマウスで劇的に改善した(図54D)。Gly−MCA処置により、血清ALT及びASTレベルが有意に減少した(図55A及び55B)。したがって、これにより、用いたGly−MCAの用量では、db/dbマウスに対する毒性がなく、このマウスモデルにおいて肝臓毒性を抑えるということが示された。T−α−MCA及びTβMCAのレベルが、Gly−MCAの処置後の糞便及び回腸において有意に増加した(図56A及び56B)。回腸におけるGly−MCAの蓄積は、肝臓、糞便及び血清と比べてはるかに多い(図56C)。血清トリグリセリド値は、Gly−MCA処置の6週間後で同様のままであった(図57A)。血清のC16:0、C20:0、C22:0、及びC24:1のセラミドレベル、並びに回腸のC16:0、C18:0、C18:1、C20:0、C22:0、C24:0及びC24:1のセラミドレベルが、ビヒクル処置マウスに比べてGly−MCA処置マウスにおいて減少した(図57B及びC)。HFD誘導性肥満症の他のモデルにおいて、高脂肪食を与えてから12週までに肥満になったC57BL/6Nマウスを、Gly−MCAで処置した。限られた量のGly−MCAのため、これらのマウスを5mg/kgのGMCAのみで処置した。より少ない用量にもかかわらず、それらは、処置の2週間後から、ビヒクル処置マウスに比べて体重増加が抑制された(図58)。NMRで測定された絶対脂肪質量が、ビヒクル処置マウスと比較して処置の6週間後にGly−MCAで処置した肥満のマウスで有意に減少した(図59)。肝組織像は、Gly−MCA処置後に肝臓の脂質液滴での著しい改善を示した(図60A)。Gly−MCAの処置により、肝臓の質量及び肝臓/体重の比が減少した(図60B及びC)。TαMCA及びTβMCAのレベルは、Gly−MCAの処置後に糞便及び回腸において有意に増大した(図61A及び61B)。回腸におけるGly−MCAの蓄積は、肝臓、糞便、及び血清に比べてはるかに多い(図61C)。
本明細書に引用されている刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献は、各文献をそれぞれ具体的に参照により組み込むために示され、その全体が本明細書に記載されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明を説明する文脈における用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」及び類似の指示対象(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)の使用は、本明細書で特に指定がない或いは文脈により明らかに否定されない限り、単数及び複数の両方を網羅するものと解釈される。1以上の項目の列挙に続く用語「少なくとも1つ」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書で特に指定がない或いは文脈により明らかに否定されない限り、列挙された項目から選ばれる1つの項目(A又はB)或いは列挙された項目の2以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するものと解釈するべきである。用語「備える」、「有する」、「包含する」及び「含む」は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(即ち、「を含むが、それらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において、本明細書に特に指定がない限り、単に、その範囲内のそれぞれの個別の値に対して、個々に言及することの簡略法としての役割を果たすことを意図しており、それぞれの個別の値は、本明細書でそれぞれが列挙されているかのように、明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書に特に記載がない或いは文脈により明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で提示される任意の例示及び全ての例示又は例示的言語(例、「のような」)の使用は、単に、本発明をよりよく説明することを意図しており、特に特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書内のいかなる言語も、特許請求されていない任意の要素が、本発明の実施に絶対不可欠であることを示すものと解釈するべきではない。
発明者が知る本発明を実施するための最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。これらの好ましい実施態様の変形は、上述の記載を読んだ当業者により明らかになり得る。本発明者は、当業者がこのような変形を適宜使用することを予期しており、さらに本発明者は、本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法により許容される限り、本明細書に添付した特許請求の範囲で述べられている主題のすべての変更及び均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組合せが、本明細書で特に示されていない或いは文脈により明らかに否定されない限りは、本発明に包含される。