以下に図面を用いて本実施の形態につき詳細に説明する。以下に述べる形状、寸法、角度、材質、孔の個数、磁極数等は、説明のための例示であって、回転電機のロータの仕様等により、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、ロータコアの製造用金型40を示す図である。以下では、特に断らない限り、ロータコアの製造用金型40を、金型40と呼ぶ。金型40は、ロータコアの製造装置の一部である。ロータコアは、磁極を形成する複数の磁石挿入孔を有するコア片18(図2(a)参照)を所定枚数で積層したものである。ロータコアの製造装置は、コア片製造装置と、積層装置を含む。金型40は、コア片製造装置において用いられる。
コア片製造装置は、長尺のシート状の磁性体薄板10からコア片18を形成する装置で、複数の成形ステーションを有する順送プレス成形装置が用いられる。以下では、特に断らない限り、シート状の磁性体薄板10を、磁性体薄板10と呼ぶ。
磁性体薄板10は、コア片18の外径よりも十分大きなシート幅を有し、所定の板厚t0を有する。材質としては電磁鋼板が用いられる。磁性体薄板10の両面には、絶縁コート等の絶縁処理が施される。この絶縁コートによって、回転電機ロータに用いられるロータコアにおいて、積層された各コア片18の間が電気的に絶縁され、外部変動磁界により発生し得る渦電流が小さなループに分割されるので、渦電流損失を抑制することができる。
磁性体薄板10には、図示しないが、長手方向に沿って所定ピッチで複数の送り穴が配置され、その送り穴を用いて、磁性体薄板10が送り方向に順次送られ、各成形ステーションにおいて、所定の成形が順次行われる。図1では、紙面の手前側から向こう側に向かう方向が磁性体薄板10の送り方向である。各成形ステーションは、送り順に、孔抜きステーション、ブリッジ部強化ステーション、外形抜きステーションを含む。外形抜きステーションにおいて磁性体薄板10からコア片18が打ち抜かれ、打ち抜かれた複数のコア片18は、その後、積層装置において積層されロータコアとなる。
上記では、3つのステーションを述べたが、これは例示であって、コア片18の仕様に応じて、仕上げ抜き等の付加加工用のステーションを別に設けてもよい。上記では、コア片製造装置として順送プレス成形装置を述べたが、これに代えて、孔抜きプレス装置、ブリッジ部強化プレス装置、外形抜きプレス装置等を個別に備えるものとしてもよい。
金型40は、ブリッジ部強化ステーションで用いられる。ブリッジ部強化ステーションの前は、孔抜きステーションであるので、磁性体薄板10は、複数の孔が打ち抜かれた状態でブリッジ部強化ステーションに搬送されてくる。
図1は、ブリッジ部強化ステーションにおける金型40を示す図である。磁性体薄板10は、金型40の構成要素ではないが、ブリッジ部強化処理の対象となるワークである。金型40は、磁性体薄板10の裏面を支持するダイス部42と、磁性体薄板10の上面に向かい合うパンチ部44とを含む。図1(a)は、磁性体薄板10を挟んで、ダイス部42とパンチ部44が配置されることを示す図である。
磁性体薄板10のおもて面を上面STとし、上面STの反対側の面を磁性体薄板10の裏面SBとする。ダイス部42において、磁性体薄板10の裏面SBに向かい合う面をダイス部42の上面DTとし、上面DTとは反対側の面をダイス部42の下面DBとする。パンチ部44において、磁性体薄板10の上面STに向かい合う面をパンチ部44の上面PTとし、上面PTとは反対側の面をパンチ部44の下面PBとする。図1(a)では、紙面における上方側から下方側に向かって、(パンチ部44のPB)−(パンチ部のPT)−(磁性体薄板10のST)−(磁性体薄板10のSB)−(ダイス部42のDT)−(ダイス部42のDB)の順に配置される。
図1(b)は、パンチ部44をダイス部42に対して矢印方向に開き、パンチ部44の上面PTを上方側に向けた状態の図である。パンチ部44の上面PTには、ブリッジ部強化のための潰しパンチ50,51が配置される。
ブリッジ部強化処理は、磁性体薄板10について隣接する孔の間の磁気通路を狭くしたブリッジ部の機械的強度を向上させる処理である。具体的には、磁性体薄板10の裏面SBをダイス部42の上面DTで支持し、磁性体薄板10のブリッジ部の上面STに、パンチ部44の上面PTの潰しパンチ50,51を向い合せる。そして、ダイス部42に対し、パンチ部44を降下させ、潰しパンチ50,51で、ブリッジ部の上面ST側から磁性体薄板10の板厚方向に、所定の押し潰し圧力で所定の押し潰し形状となるように押し潰す。ブリッジ部において押し潰された部分は、塑性加工による加工硬化を生じ、機械的強度が向上する。これによってブリッジ部強化が実現される。
加工硬化を生じさせるために、磁性体薄板10の板厚方向に潰しパンチ50,51を所定の押し潰し圧力で押し付けると、押付部分において磁性体材料は塑性変形し流動化して板厚方向に薄くなるが、その部分の磁性体材料は他の箇所に移動する。押付部分の周りが磁性体材料で取り囲まれていると、磁性体材料の流動性が低下し、磁性体薄板10に反りが生じることがある。磁性体薄板10に反りが生じると、その後に打ち抜かれたコア片18が反った状態となり、ロータコアにおけるコア片18の占積率が低下し、また、積層処理に支障が生じる。
本実施の形態においては、1磁極当りの複数の孔をまとめて孔集合体12と呼ぶと、既に孔抜き処理されて磁極数分の複数の孔集合体12を有する磁性体薄板10に対してブリッジ部強化処理が行われる。つまり、潰しパンチ50,51の押付部分であるブリッジ部の両側は孔であるので、押付部分において塑性変形した磁性体材料は孔に向かって流動しやすい。この磁性体材料の流動性の向上によって、磁性体薄板10の反りが抑制され、ロータコアにおけるコア片18の占積率の低下が防止され、積層処理に支障が生じない。
図2は、ブリッジ部強化ステーションに磁性体薄板10が搬送されたが、ブリッジ部強化処理が行われる前において、パンチ部44を開いたときの状態を示す図である。図2(a),(b)は、磁性体薄板10の上面STを示す図であり、(c),(d)はパンチ部44の上面PTを示す図である。
図2(a)は、磁性体薄板10において、既に複数の孔集合体12が孔抜き処理された状態を示す図である。複数の孔集合体12は、円環状に配置され、その配置数は、ロータの磁極数と同じである。図2(a)の例では、複数の孔集合体12の配置数=8であり、ロータの磁極数=8である。複数の孔集合体12に対してブリッジ部強化処理が行われると、その後に、外形抜き処理が行われる。図2(a)に、外形抜き処理において打ち抜かれる中心穴14と外形抜き穴16を二点鎖線で示す。外形抜きによって磁性体薄板10から打ち抜かれたものがコア片18である。中心穴14は、外形抜き処理でなくても、複数の孔集合体12を形成する孔抜き処理で行ってもよい。
図2(b)は、(a)の1磁極分の拡大図である。1磁極分における複数の孔集合体12は、孔20,21,22,24及び符号を付さない2つの小孔を含む。孔20,21,24は、それぞれにロータの磁極を形成する永久磁石が挿入される磁石挿入孔であり、孔22と2つの小孔は磁気通路を狭めるためや軽量化のために設けられる孔である。磁極の中心線26に対し、孔20,21及び符号を付さない2つの小孔は線対称に配置され、孔22,24は、磁極の中心線26に対し線対称の形状を有する。
ブリッジ部30は、孔22と孔20との間に細長く延びる磁気通路の狭い部分であり、ブリッジ部31は、孔22と孔21との間に細長く延びる磁気通路の狭い部分である。ブリッジ部30,31も磁極の中心線26に対し線対称に配置される。1磁極当り2つのブリッジ部30,31があるので、1つのコア片18当たりでは、8組のブリッジ部30,31がある。各ブリッジ部30,31の長手方向の長さL0は、磁気通路が他の部分より細くなった領域の長さで、ブリッジ部30,31の幅寸法が一定のW0である領域の長さよりも長い。
図2(c),(d)は、磁性体薄板10の上面STに向かい合うパンチ部44の上面PTを示す図である。(c)はパンチ部44の上面図であり、(d)は、1磁極分の拡大図である。これらにおいて、孔集合体12、中心穴14、外形抜き穴16の配置位置を二点鎖線で示す。パンチ部44の上面PTに設けられる潰しパンチ50,51は、磁性体薄板10のブリッジ部30,31に対応する位置に配置され、細長く延びるブリッジ部30,31に対応して細長く延びる。1磁極当り1組の潰しパンチ50,51が設けられるので、1つのコア片18当たりでは、パンチ部44全体では、8組の潰しパンチ50,51が設けられる。
各潰しパンチ50,51の長手方向の長さL1は、ブリッジ部30,31の長手方向の長さL0よりも短く、(ブリッジ部30,31の幅寸法が一定のW0である領域の長さ)に(金型40と磁性体薄板10との間の位置決め精度)を考慮した長さに設定される。潰しパンチ50,51の幅W1は、潰しパンチ50,51のPTを基準とした高さhpをh1として、潰しパンチ50,51のそれぞれの幅の両側にhpの余裕を有することが好ましい。そこで、潰しパンチ50,51の幅W1は、W0≦W1≦(W0+2h1)の範囲に設定することがよい。
図2(d)に、パンチ部44において、径方向、周方向と共に、潰しパンチ50,51の高さhpの方向を示す。径方向は、磁極の中心線26に沿った方向で、外周側に向かう方向を正方向(+)、内周側に向かう方向を負方向(−)とする。周方向は、円環状のコア片18の周方向であり、パンチ部44の上面PTにおいて時計方向回りを正方向(+)、反時計方向回りを負方向(−)とする。図2(d)では、磁極の中心線26の右方向が周方向の正方向(+)で、左方向が周方向の負方向(−)である。潰しパンチ50,51の高さhpの方向は、パンチ部44の上面PTを基準として上面PTの上方側を正方向(+)とする。パンチ部44の上面PTは高さhp=0であり、潰しパンチ50,51は上面PTよりも高さhp=h1で突き出すので、潰しパンチ50,51の高さhpは、hp=h1>0である。
図2(b)に戻り、磁性体薄板10における径方向、周方向と共に、ブリッジ部30,31における潰し深さhsの方向を示す。径方向は、磁極の中心線26に沿った方向で、外周側に向かう方向を正方向(+)、内周側に向かう方向を負方向(−)とする。これは、パンチ部44における径方向の向きと同じである。
磁性体薄板10における周方向は、円環状のコア片18の周方向であるが、磁性体薄板10の上面STはパンチ部44の上面PTと向かい合う関係になるので、パンチ部44の周方向の向きを基準とすると、磁性体薄板10の周方向の向きは逆向きになる。すなわち、磁性体薄板10の上面STにおける時計方向回りが負方向(−)となり、反時計方向回りが正方向(+)となる。図2(b)では、磁極の中心線26の左方向が周方向の正方向(+)で、右方向が周方向の負方向(−)である。この関係によって、磁性体薄板10の上面STにおいて磁極の中心線26に対し左側にあるブリッジ部30に対応するのは、パンチ部44の上面PTにおいて磁極の中心線26に対し右側にある潰しパンチ50となる。同様に、磁性体薄板10の上面STにおいて磁極の中心線26に対し右側にあるブリッジ部31に対応するのは、パンチ部44の上面PTにおいて磁極の中心線26に対し左側にある潰しパンチ51となる。
磁性体薄板10において、ブリッジ部30,31の潰し深さhsの方向は、磁性体薄板10の板厚を減少させる方向であるので、磁性体薄板10の上面STから裏面SBに向かう方向を正方向(+)とする。ブリッジ部30,31の潰し深さhsは、潰しパンチ50,51の高さhpと同じである。磁性体薄板10の上面STの潰し深さhs=0であり、ブリッジ部30,31の潰し深さhsは、hs=hp>0である。hs>0は、磁性体薄板10の板厚t0を減少させる方向である。
図2に示すように、複数の孔集合体12とブリッジ部30,31とが磁極の中心線26に対し線対称であるので、潰しパンチ50,51も磁極の中心線26に対し線対称に配置される。潰しパンチ50,51は同じ構造であるので、以下では、ブリッジ部30に対応する潰しパンチ50について述べる。
図3は、潰しパンチ50の斜視図である。潰しパンチ50は、潰しパンチ50の径方向に沿って延びるパンチ中心線32Pに線対称に配置され、パンチ部44の上面PTから突き出す2つの立体的形状のパンチ面52P,54Pを含む。パンチ面52Pは、ブリッジ部30における孔20側の部分に対応して設けられ、パンチ面54Pは、ブリッジ部30における孔22側の部分に対応して設けられる。パンチ中心線32Pは、ブリッジ部30の径方向に沿って延びるブリッジ中心線32S(図5参照)に対応する位置に配置される。パンチ面52Pとパンチ面54Pとに挟まれパンチ中心線32Pに沿って延びる平坦面53Pは、パンチ部44の上面PTの一部である。
パンチ面52P,54Pは、径方向に沿って細長く延びる平坦段差部56Pと、平坦段差部56Pの両側先端部分の円弧状傾斜部58Pとを有する。円弧状傾斜部58Pは、細長く延びる先端側に行くにつれ幅寸法が徐々に狭くなると共に高さ寸法が徐々に低くなる形状を有する。両側の円弧状傾斜部58Pの形状は、平坦段差部56Pを挟んで対称形である。以下では、パンチ面52P,54Pについて、径方向に沿った全長L1のうち、負方向(−)側の半分の部分について述べる。
図4は、図3の潰しパンチ50について、径方向に沿った全長L1のうち、径方向における負方向(−)側の半分の部分の拡大図である。潰しパンチ50は、径方向に沿って正方向(+)側の平坦段差部56Pと、平坦段差部56Pよりも径方向の負方向(−)側の円弧状傾斜部58Pとを含む。潰しパンチ50を構成するパンチ面52P,54Pは、パンチ中心線32Pに対し線対称の形状であるので、以下では、パンチ面52Pについて述べる。パンチ面52Pとパンチ面54Pとにおいてそれぞれ対応する構成要素には同一の符号を用いて、重複する説明を省略する。
パンチ面52Pにおける平坦段差部56Pは、上面PTから立ち上がる段差壁面60P、段差壁面60Pの頂部の天井面に相当する平坦面62P、及び、平坦面62Pからパンチ中心線32P側に傾斜して下がり上面PTに達する中心線側傾斜面64Pを含む。平坦面62Pの高さhpは、hp=h1>0である。
パンチ面52Pにおける平坦段差部56Pと円弧状傾斜部58Pの境界点として、Q1P,Q2P,Q3Pを示す。Q1PとQ2Pは、平坦面62P上の点で、径方向の位置が同じで、上面PTからの高さhpも共にhp=h1である。Q3Pは、上面PT上の点で、Q1P,Q2Pと径方向の位置が同じであり、Q2Pから中心線側傾斜面64Pに沿って下がり、上面PTに達した点である。
円弧状傾斜部58Pは、径方向の負方向(−)側の先端点Q4Pと、Q1P,Q2P,Q3Pを結ぶ円弧状傾斜面である。Q4Pは、上面PT上の点で、Q1Pと周方向の位置が同じであり、Q1Pから傾斜して下がり、上面PTに達した点である。
円弧状傾斜部58Pは、段差壁面66Pと、円弧状曲面68Pと、円弧状曲面70Pとを含む。段差壁面66Pは、Q1P,Q4Pを含み、パンチ部44の上面PTから立ち上がる壁面である。円弧状曲面68Pは、Q1P,Q2P,Q4Pを含む曲面である。円弧状曲面70Pは、Q2P,Q3P,Q4Pを含む曲面である。
円弧状曲面70Pは、円弧状曲面68Pから周方向に沿った傾斜角度θ1で傾斜して下がり、上面PTに向かう傾斜曲面である。円弧状曲面70Pと円弧状曲面68Pとの境界には、半径R1の丸みが設けられる。これによって、円弧状曲面68Pと円弧状曲面70Pは滑らかに接続される。
円弧状曲面68Pと円弧状曲面70Pとは、平坦段差部56Pの径方向に沿った負方向(−)側で、径方向に沿って先端側のQ4Pに行くにつれ、高さhpがhp=h1からhp=0まで低く徐変した曲面である。また、円弧状曲面68Pと円弧状曲面70Pとは、径方向に沿って先端側に行くにつれ、周方向に沿ってQ2P,Q3Pの位置からQ4Pの位置まで幅寸法が次第に狭く徐変した曲面でもある。このように、円弧状曲面68Pと円弧状曲面70Pとは、段差壁面でなく、径方向に沿って先端側に行くにつれ、高さが次第に低く徐変し、周方向に沿って幅寸法が次第に狭く徐変した曲面である。
図5は、ブリッジ部30の上面ST側から磁性体薄板10の板厚方向に向かって所定の押し潰し圧力で潰しパンチ50を押し付けたときに押し潰されたブリッジ部30の立体的形状を示す図である。ここでは、図4に対応して、ブリッジ部30について、径方向に延びる全長L0のうち、径方向における負方向(−)側の半分の部分の拡大図を示す。
潰しパンチ50によるブリッジ部30の押し潰し深さhsは、ブリッジ部30の上面STから板厚の減少方向に向かって、潰しパンチ50の高さhpと同じ大きさである。つまり、ブリッジ部30の押し潰された立体的形状は、潰しパンチ50の立体的形状を転写した形状であり、凹凸の方向が異なるだけで実質的にパンチ面52P,54Pの立体的形状と同じである。以下では、パンチ面52P,54Pの立体的形状の符号に付した「P」の添え字を「S」の添え字に代えて、ブリッジ部30の立体的形状の符号とする。例えば、ブリッジ部30における平坦面62Sは、パンチ面52Pの平坦面62Pによって押し潰された対応面を示す。
潰しパンチ50は、パンチ中心線32Pに対し線対称に配置される2つの立体的に突き出した形状のパンチ面52P,54Pを含む。これに対応し、ブリッジ部30もブリッジ中心線32Sに対し線対称に配置される2つの立体的に窪んだ形状の加工硬化面52S,54Sを含む。
加工硬化面52S,54Sは、潰しパンチ50によって転写された面であるが、転写では周方向の正方向(+)と負方向(−)が入れ替わる。図4、図5を参照して、孔20,22の周方向に対する配置が逆となるが、加工硬化面52Sはパンチ面52Pによって転写された面とし、加工硬化面54Sはパンチ面54Pによって転写された面とする。加工硬化面52Sは、ブリッジ部30において孔20側の部分に設けられ、加工硬化面54Sは、ブリッジ部30において孔22側の部分に設けられる。加工硬化面52Sと加工硬化面54Sとに挟まれブリッジ中心線32Sに沿って延びる平坦面53Sは、磁性体薄板10の上面STの一部である。
加工硬化面52S,54Sは、ブリッジ中心線32Sに対し線対称の形状であるので、以下では、パンチ面54Pによって押し潰される加工硬化面54Sについて述べる。加工硬化面54Sと加工硬化面52Sとにおいてそれぞれ対応する構成要素には同一の符号を用いて、重複する説明を省略する。
加工硬化面54Sは、ブリッジ部30の孔22側の部分に設けられるので、図5において、孔22のブリッジ部30側の側面22Sを示す。加工硬化面54Sは、径方向に沿って、平坦段差部56Sと、平坦段差部56Sに接続する円弧状傾斜部58Sとを有する。平坦段差部56Sと円弧状傾斜部58Sは、それぞれ、パンチ面54Pの平坦段差部56Pと円弧状傾斜部58Pがブリッジ部30に転写された部分である。
なお、潰しパンチ50の幅W1は、潰しパンチ50の上面PTからの高さhpをh1として、W0≦W1≦(W0+2h1)の範囲に設定されるので、図4で述べた段差壁面60Pはブリッジ部30に接触しない。したがって、潰しパンチ50の段差壁面60Pに対応する転写面はブリッジ部30の孔22側に現われない。
平坦段差部56Sは、平坦面62Sと、中心線側傾斜面64Sとを含む。平坦面62Sは、ブリッジ中心線32Sに沿ったブリッジ部30の上面STから傾斜して潰し深さhs=h1まで押し潰された底面である。中心線側傾斜面64Sは、ブリッジ中心線32Sに沿って延びるブリッジ部30の上面STから平坦面62Sに向かって傾斜して下がる面である。平坦面62Sと中心線側傾斜面64Sは、それぞれ、パンチ面54Pの平坦面62Pと中心線側傾斜面64Pがブリッジ部30に転写された部分である。
平坦面62Sは、ブリッジ中心線32Sの反対側の端面において、孔22の側面22Sに接続する。平坦面62Sの端部における孔22の側面22Sの高さ方向の寸法は、{(磁性体薄板10の板厚t0)−(潰し深さhs=h1)}の磁性体厚さに相当する。この磁性体厚さが、ブリッジ部強化処理が行われた後のブリッジ部厚さである。ブリッジ部強化処理によるブリッジ部30の板厚方向に沿った圧縮率は、[{(磁性体薄板10の板厚t0)−(潰し深さhs=h1)}/t0]×100(%)である。圧縮率の大きさは、ブリッジ部30の幅W0、長さL0、磁気抵抗、材質、機械的強度等の仕様に基づいて設定される。圧縮率の一例を挙げると、約80%〜95%程度の範囲である。これは説明のための例示であり、上記の仕様等に基づいて適宜変更が可能である。
加工硬化面54Sにおける平坦段差部56Sと接続する円弧状傾斜部58Sの境界点として、Q1S,Q2S,Q3Sを示し、円弧状傾斜部58Sの径方向の負方向(−)側の先端点としてQ4Sを示す。Q1S,Q2S,Q3S,Q4Sは、それぞれパンチ面54PのQ1P,Q2P,Q3P,Q4Pがブリッジ部30に転写された点である。
Q1SとQ2Sは、平坦面62S上の点で、径方向の位置が同じで、上面STからの潰し深さhsも共にhs=h1>0である。Q3Sは、上面ST上の点で、Q1S,Q2Sと径方向の位置が同じであり、Q2Sから中心線側傾斜面64Sに沿って上がり、上面STに達した点である。
円弧状傾斜部58Sは、径方向の負方向(−)側の先端点Q4Sと、Q1S,Q2S,Q3Sを結ぶ円弧状傾斜面である。Q4Sは、上面ST上の点で、Q1Sと周方向の位置が同じであり、Q1Sから傾斜して上がり、上面STに達した点である。
これにより、孔22の側面22Sの高さは、潰し深さhs=h1を有するQ1Sから、潰し深さhs=0である上面ST上のQ4Sに向かって傾斜して高くなる。図5では、側面22Sが高くなって上面STに達する面を三角形面22S’で示す。
円弧状傾斜部58Sは、円弧状曲面68Sと、円弧状曲面70Sとを含む。円弧状曲面68Sは、Q1S,Q2S,Q4Sを含む曲面である。円弧状曲面70Sは、Q2S,Q3S,Q4Sを含む曲面である。
円弧状曲面70Sは、円弧状曲面68Sから周方向に沿った傾斜角度θ1で傾斜してブリッジ部30の上面PTに向かう傾斜曲面である。円弧状曲面70Sと円弧状曲面68Sとの境界には、半径R1の丸みが設けられる。これによって、円弧状曲面68Sと円弧状曲面70Sは滑らかに接続される。
なお、潰しパンチ50の幅W1は、W0≦W1≦(W0+2h1)の範囲に設定されるので、図4で述べた潰しパンチ50の段差壁面66Pはブリッジ部30に接触せず、段差壁面66Pに対応する転写面はブリッジ部30の孔22側に現われない。代わりに、段差壁面66Pの傾斜に対応して、三角形面22S’が現われる。
円弧状曲面68Sと円弧状曲面70Sとは、平坦段差部56Sの径方向に沿った負方向(−)側で、径方向に沿って先端側のQ4Sに行くにつれ、潰し深さhsがhs=h1からhs=0まで徐変した曲面である。また、円弧状曲面68Sと円弧状曲面70Sとは、径方向に沿って先端側に行くにつれ、周方向に沿ってQ2S,Q3Sの位置からQ4Sの位置まで幅寸法が次第に狭く徐変した曲面でもある。このように、円弧状曲面68Sと円弧状曲面70Sは、段差壁面でなく、径方向に沿って先端側に行くにつれ、潰し深さhsが次第に浅く徐変し、周方向に沿って幅寸法が次第に狭く徐変した曲面である。
ブリッジ部強化処理は、ダイス部42とパンチ部44の潰しパンチ50との間にブリッジ部30を挟み、潰しパンチ50をブリッジ部30の上面STに押し付けて行われる。これにより、ブリッジ部30の磁性体材料は、塑性変形し、流動化して、ブリッジ部30側から他の方向に向かって流れる。潰しパンチ50の表面には、ブリッジ部30から孔20,22に向かう第一方向に磁性体材料が塑性流動するときの摩擦係数が、第一方向と垂直方向に磁性体材料が塑性流動するときの摩擦係数よりも小さくなる加工が施される。具体的には、潰しパンチ50のパンチ面52P,54Pには、ブリッジ部30側から孔20,22に向かう方向に沿って延びる加工目として、細かい凹凸溝が設けられる。
図6に、潰しパンチ50のパンチ面52P,54Pに設けられる細かい凹凸溝80Pを示す。凹凸溝80Pの延びる方向を示す黒塗矢印82P,84Pは、ブリッジ中心線32Sに対応するパンチ中心線32P側から、孔20,22に向かう方向を示す。平坦段差部56Pにおける黒塗矢印82Pの方向は、パンチ中心線32Pに対し直角方向である。円弧状傾斜部58Pにおける黒塗矢印84Pの方向は、平坦段差部56P側から径方向に沿った先端側に行くに従って、パンチ中心線32Pに対し、次第に傾斜する方向となる。黒塗矢印82P,84Pの方向は、ブリッジ部30から孔20,22に向かう第一方向であり、黒塗矢印82P,84Pの方向に垂直な方向が第二方向である。
図7は、凹凸溝80Pの形成方法を示す図である。ここでは、適当な先端丸みを有する加工工具86を、潰しパンチ50のパンチ面52P,54Pの表面に押し当て、黒塗矢印82P,84Pの方向である第一方向に平行な方向を加工方向として移動させる。
凹凸溝80Pは、パンチ面52P,54Pの表面に対し垂直に凹凸する段差溝であってもよいが、パンチ面52P,54Pの表面に対し適当な傾斜角度を有して凹凸する傾斜凹凸溝が好ましい。また、図7に示されるように、凹凸の山部と谷部とは適当な丸みを有することが好ましい。凹凸溝80Pの凹凸深さは、所定の押し潰し圧力の下で塑性変形し流動化した磁性体材料の塑性流動に対する摩擦係数に異方性が生じる程度でよい。塑性流動に対する摩擦係数の異方性とは、(黒塗矢印82P,84Pの方向である第一方向に沿った摩擦係数)>(黒塗矢印82P,84Pの方向に垂直な第二方向に沿った摩擦係数)である。凹凸深さはパンチ面52P,54Pの表面粗さとなるが、一例を挙げると、約1μm以下の表面粗さとなる凹凸深さでよい。好ましくは、200nm程度の表面深さとなる凹凸深さがよい。
図7では、加工方向に沿って連続する凹凸溝80Pを示したが、塑性流動に対する摩擦係数に異方性があればよいので、加工方向を長手方向とし、加工方向に垂直な方向を短手方向とする細長い凹凸窪みを多数設けてもよい。凹凸溝80Pの形成方法は、図7に示す加工工具86を用いる方法以外でもよい。例えば、予め凹凸溝を形成した母型を用いて、転写によってパンチ面52P,54Pに凹凸溝80Pを形成してもよい。あるいは、適当な条件の下でのショットピーニング、エッチング等の技術を用いてもよい。
図8は、図6の潰しパンチ50を用いて形成されたブリッジ部30を示す図である。潰しパンチ50のパンチ面52P,54Pの表面に設けられた凹凸溝80Pに対応して、ブリッジ部30の加工硬化面52S,54Sに凹凸溝80Sが形成されている。凹凸溝80Sは、黒塗矢印82S,84Sの方向に延びる。黒塗矢印82S,84Sの方向は、パンチ面52P,54Pにおける黒塗矢印82P,84Pの方向である第一方向に対応する。したがって、加工硬化面52S,54Sにおいて所定の押し潰し圧力の下で塑性変形し流動化した磁性体材料は、第一方向である黒塗矢印82S,84Sの方向に延びて、孔20,22に向かって流動していることが示される。
図9は、ブリッジ部強化処理において、互いに押し付け合った状態のパンチ面54Pと加工硬化面54Sとの状態を示す断面図である。図9は、円弧状傾斜部58Sにおいて、周方向に平行なA−A’線(図4、図5参照)に沿った断面である。円弧状傾斜部58Sは、加工硬化面54Sにおいて径方向に沿って細長く延びた先端部で、後述する従来技術の矩形形状の加工硬化面で応力集中が生じやすい短辺部分(図12から図14参照)に対応する部分である。
図9に示すように、加工硬化面54Sは、パンチ面54Pの転写面に相当し、円弧状傾斜部58Sにおいて、潰し深さhsを有する円弧状曲面68Sから、潰し深さhs=0の上面STに向かって、板厚方向に傾斜角度θ1で徐変する円弧状曲面70Sを有する。傾斜が始まる位置では、半径R1の丸みを有する。このように、加工硬化面52Sは、円弧状傾斜部58Sにおいて、潰し深さhsが傾斜角度θ1で板厚方向に徐変する。板厚が徐変することで磁性体材料が流動化して移動するときの流動方向は黒塗矢印84Sで示す方向である。
傾斜角度θ1は、小さいほど応力集中を緩和できるが、加工硬化面52Sの長さが長くなる。傾斜角度θ1が大きいと加工硬化面52Sの長さを短くできるが、応力集中が大きくなる。その兼ね合いで傾斜角度θ1が決定される。一例を挙げると、傾斜角度θ1を約15度から30度の範囲とすることがよい。半径R1の丸みは、傾斜角度θ1が小さいほど半径を大きくする。一例を挙げると、半径R1は、約0.2mmである。これらは、説明のための例示であり、金型40の仕様によって適宜変更が可能である。
図10は、ブリッジ部30において、ブリッジ部強化処理を受けた加工硬化面54Sと、ブリッジ部強化処理を受けていない上面STとの境界部を示す図である。図10(a)は、図5のB部の平面図である。加工硬化面54Sは、パンチ面54Pが押し付けられることで磁性体材料が塑性加工によって流動化し、孔22へ向かって流動し、ブリッジ部30の元々の外形輪郭線より孔22の側にエッジ状に突き出る。そのために、磁性体材料が流動化しない上面STとの境界部であるB部において、ブリッジ部30の外形輪郭線90に凹状の不連続部92が生じる。
図10(b)は、(a)の不連続部92を滑らかにする加工処理を行った後のブリッジ部30の外形輪郭線94を示す図である。不連続部92を滑らかにする加工処理としては、ブリッジ部強化処理の後に、孔集合体12について仕上げ抜きを行う方法、仕上げ抜きに代えて、不連続部92について研磨処理や押し潰し処理等を行ってもよい。
上記では、潰しパンチ50の幅W1は、潰しパンチ50のPTからの高さhpをh1として、W0≦W1≦(W0+2h1)の範囲に設定されるので、ブリッジ部30の幅W0とほぼ同じ寸法である。そのために潰しパンチ50は、図6に示すように、細長い形状となり、幅W1の寸法の管理が必要である。ブリッジ部30の両側は孔20,24であるので、潰しパンチ50の幅を広げられる余裕がある。図11に、幅広の潰しパンチ100の例を示す。
図11(a)は、幅広の潰しパンチ100の下面PBを示す図である。幅広の潰しパンチ100は、パンチ中心線32Pに対し線対称に配置される2つのパンチ面102P,104Pを有する。図11(a)に示す二点鎖線は、ブリッジ部30の外形輪郭線で、ブリッジ中心線32Sをパンチ中心線32Pに合わせてある。2つのパンチ面102P,104Pは、ブリッジ部30の外形輪郭線を超えて、孔20,22の側に延び、潰しパンチ100の幅W2は、図4の潰しパンチ50の幅W1よりも広い。幅W2が幅W1より広いことを除けば、潰しパンチ100の立体的形状の基本構造は潰しパンチ50と同様で、2つのパンチ面102P,104Pは、径方向に沿って、中央部の平坦段差部106Pと、平坦段差部106Pの両側の円弧状傾斜部108Pとを有する。
図11(b)は、(a)のB−B線に沿った断面図である。ここでは、パンチ面104Pと、ダイス部42とが示される。(c)は、(b)のC部の拡大図で、円弧状傾斜部108Pにおける円弧状曲面の傾斜が示される。図11の潰しパンチ100を用いても、図4の潰しパンチ50と同様なブリッジ部強化処理を行うことができ、同様の加工硬化面52S,54Sを得ることができる。
上記では、パンチ部44を基準に、磁性体薄板10、ブリッジ部30、潰しパンチ50、加工硬化面52S,54S等の径方向、周方向の正方向と負方向を述べたが、潰しパンチ50を単独で考えるときは、径方向は、細長く延びる方向であり、周方向は、幅方向である。そこで、本実施の形態に係るロータコアの製造用金型40は、ロータコアに用いられ複数の孔を有する磁性体薄板10の裏面SBを支持するダイス部42を備える。それと共に、ダイス部42に支持された磁性体薄板10の隣接する孔20,22の間に細長く延びるブリッジ部30に対応して細長く延びブリッジ部30を上面ST側から押し潰して塑性流動させる潰しパンチ50を有するパンチ部を備える。そして、潰しパンチ50は、細長く延びる先端側に行くにつれ幅寸法が徐々に狭くなると共に高さ寸法であるhpが徐々に低くなる円弧状傾斜部58Pを有する。さらに、潰しパンチ50の表面は、ブリッジ部30から孔20,22に向かう第一方向に磁性体材料が塑性流動するときの摩擦係数が、第一方向に垂直な第二方向に磁性体材料が塑性流動するときの摩擦係数よりも小さい。
上記構成の作用効果について、従来技術の潰しパンチを用いてブリッジ部強化処理を行う例と比較して、以下に図12から図16を用い、さらに詳細に説明する。
図12は、従来技術の潰しパンチ110の斜視図である。本実施の形態に係る図4の潰しパンチ50と同様に、従来技術の潰しパンチ110は、2つのパンチ面112P,114Pを含む。潰しパンチ110の幅W3と長さL3は、それぞれ、図4の潰しパンチ50の幅W1と長さW1とほぼ同じで、パンチ部44の上面PTからの高さhpは、図4の潰しパンチ50の高さhp=h1と同じである。図4の潰しパンチ50と潰しパンチ110との間の大きな相違点は、円弧状傾斜部58Pの有無である。潰しパンチ110は、2つのパンチ面112P,114Pの平面形状が細長い長方形で、長方形の短辺部分の端面は、ピン角116Pと呼ばれるが、パンチ部44の上面PTからほぼ垂直に立ち上がる壁面である。
図13は、潰しパンチ110を用いてブリッジ部強化処理を行ったときに、ブリッジ部30の磁性体材料に生じる応力分布を、ブリッジ部30の平面図上に示す図である。ここでは、応力集中が強い領域を黒塗で示し、応力集中が生じるが比較的弱い領域を斜線で示し、応力集中が生じない領域には黒塗も斜線も付さずに示す。図13に示すように、潰しパンチ110のピン角116Pに対応するピン角116Sの領域に強い応力集中が生じる。
図14は、図13のD−D線に沿ったブリッジ部30の断面図である。ブリッジ部30は、ピン角116Sにおいて、上面STから潰しパンチ110の高さhp=h1だけ垂直に圧縮されている。圧縮されて平坦な底面における板厚は、{(磁性体薄板10の板厚t0)−(潰しパンチ110の高さhp=h1)}である。図14では、ブリッジ部30の断面図における磁性体材料に生じる応力集中の程度を、応力集中が大きくなるにつれて、白地から斜線、二重斜線、黒塗に順次変わるように、4段階で示す。断面形状が板厚方向で急変するピン角116S近傍で応力集中が最も強く生じ、そこから板厚方向にかなり強い応力集中の広がりが生じていることが分かる。
図15は、切欠半径の大小による応力集中の程度を示す図である。図15(a)は大きな切欠半径の場合の応力集中の程度を示す図で、(b)は小さな切欠半径の場合の応力集中の程度を示す図である。各図において、横軸に深さ方向、縦軸に正規化した応力の大きさを示す。(a),(b)を比較すると、小さな切欠半径の場合に、深さ方向に急峻な応力変化が生じていることが分かる。この効果は、窪み深さを切欠として、切欠効果と呼ばれる。従来技術の潰しパンチ110のピン角116Sでは断面形状が急変し、切欠半径が小さいので、切欠効果が顕著に現れ、その箇所で機械的強度が低下する。また、切欠半径が小さいので、深さ方向に応力集中が拡がりやすいことになる。
図16は、本実施の形態に係る金型40における潰しパンチ50を用いたときのブリッジ部30の断面図である図9を用いて、図14と同様な4段階で応力集中の程度を示す図である。図9では、従来技術のピン角116Pに相当する部分が、切欠半径の大きな円弧状傾斜部58Pとなっており、ブリッジ部30の断面形状が板厚方向に徐変している。さらに、磁性体材料も黒塗矢印84Sに示すように、ブリッジ部30側から孔22に向かって流動しやすくなっているので、応力集中の度合いも斜線レベルで留まっている。このように、本実施の形態に係るロータコアの製造用金型40を用いることで、従来技術に比べ、磁性体材料の塑性流動の滞留が抑制され、磁性体薄板における応力集中を緩和できる。