JP6554078B2 - 波長掃引光源 - Google Patents

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本発明は、波長掃引光源に関し、より詳細には、KTNを使用した光偏向器を用いた波長掃引光源であって、波長掃引の中心波長、掃引波長範囲の再現性が高い波長掃引光源に関する。
波長掃引型レーザ光源は、例えば、ミクロンオーダーの空間分解能で生体表皮下の断層イメージを取得できる計測技術として知られている光コヒーレントトモグラフィ(OCT:Optical Coherence Tomography)に適用することができる。OCTには、断層イメージを取得する複数の方法が存在する。そのうち、光源の波長掃引を行う波長掃引型レーザ光源を用いたOCT(SS−OCT:Swept Source-OCT)は、イメージ取得の高速性において大きな利点を有する。SS−OCTでは、光源の波長が連続的に掃引される。光源からの光の波長掃引を行うことによって、1つの検出器を使用して、時分割で各波長の信号を検出できる。すなわち、時間によって波長分割を行って、検出器を1つで済ませることができる。
波長掃引型レーザ光源を用いたOCT用光源は、高速で波長を変化させることが必要であるとともに、瞬時発振スペクトルの幅を狭くすること、および、波長掃引範囲が広いことが必要である。SS−OCTにおいて、高速の波長掃引が可能になると、高速の画像処理、血流観測、および酸素飽和濃度の変化等の動的解析ができる。また、SS−OCTにおいては、瞬時の発振スペクトルが狭線幅化することによって、生体表皮下の観察可能な深度を深くすることができる。SS−OCTでは、広範囲の波長掃引によって高分解のイメージを取得することができる。
さらに、臨床診断においては、観察対象の動きの影響を受けずに、鮮明な断層イメージを得るために、上記の高速性とともに、長時間安定動作する波長掃引型レーザ光源が求められている。
高速で広帯域の走査が可能なレーザ光源として、外部共振器型レーザ光源が知られている。一般的な外部共振器型レーザ光源は、半導体等の利得媒質と、外部ミラーとを配置し、これらが外部共振器を構成している。そして、利得媒質と外部ミラーとの間に設けられたバンドパスフィルターを利用して、特定の波長のみを発振させている。バンドパスフィルターでは、透過波長を連続的に変化させてレーザ発振波長を連続的に掃引している。レーザ共振器内に備えられている波長分散素子と光偏向器との機能によって、バンドパスフィルターの透過波長は、変化するように制御される。波長分散素子としては、例えば、回折格子やプリズムがある。光偏向器としては、ポリゴンミラー、ガルバノミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)、音響光学偏向器、電気光学偏向器等がある。
電気光学偏向器の一つである、タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbx3(0<x<1)、K1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1):以下、総称してKTNという)結晶を用いたKTN光偏向器は、高速で偏向動作し、かつ低電圧動作が可能である。KTN光偏向器と回折格子とを組み合わせ、高速な波長掃引光源が実現されている。
図1に、従来のKTN光偏向器を用いた波長掃引光源の構成を示す。この波長可変光源は、KTN光偏向器により光の進行方向を変えることによって、発振波長を切換える構成であり、例えば、非特許文献1に開示されている。この波長可変光源は、利得媒質として光半導体増幅素子(SOA)が用いられている。以下、波長可変光源の構成と動作について説明する。
波長可変光源100において、利得媒質101は、集光レンズ103およびコリメートレンズ102の間に配置されている。利得媒質101は、コリメートレンズ102、電気光学偏向器106を経て、回折格子104および直入射する端面鏡108から構成される波長フィルタに結合されている。集光レンズ103は、出力結合鏡105に相対している。出力結合鏡105と端面鏡108とを両端部とする光共振器が構成される。出力結合鏡105から、光共振器のレーザ作用による出力光107が得られる。出力光107の波長を、電気光学偏向器106により光の進行方向を変え、波長分散素子である回折格子104への入射角θを変えることによって変化させる。すなわち、回折格子104の溝を横切る方向に偏向することによって、入射角が変化することにより、光共振器における発振波長を選択することができる。
出力光107の波長選択は、電気光学偏向器106に結線された制御電圧源109の電圧により行われる。電気光学偏向器106に対する印加電圧を制御して、図1のx軸方向(出力光107の光軸(z軸)に垂直な方向)の電界を変化させることによって行われる。すなわち、電気光学偏向器106に与えられる電界の変化により電気光学偏向器106で屈折率の変化が誘起される。その結果、利得媒質101から回折格子104へ出力される光束が、電気光学偏向器106を通過する際に、屈折率の高い方へ曲がり、光束の回折格子104への入射角が変化する。このようにして、電気光学偏向器106への印加電圧を変えることによって、可動部の介在なしに高速な波長変化が実現されている。
しかしながら、従来のKTN光偏向器を用いた波長可変光源では、KTN光偏向器を長時間にわたって偏向動作させた場合、KTN光偏向器の動作状態が徐々に変化し、波長掃引光源の光出力、掃引波長帯域、コヒーレンス長が減少してしまう問題があった。そこで、特許文献1に記載された波長可変光源では、光源の長時間安定性を確保するために、KTN光偏向器への印加電圧として、波長掃引のための交流(AC)電圧に加えて直流(DC)のバイアス電圧を重畳し、KTN結晶の内部全体にわたって電子の量を一定にしている。これによって、72時間以上の安定動作が可能なことが報告されている。
特開2015−142111号公報 国際公開第2006/137408号
Y. Okabe, et al. "200 kHz swept light source equipped with KTN deflector for optical coherence tomography," Electron. Lett. 48, 201-202 (2012). S. H. Yun, et al. "High-speed optical frequency-domain imaging," Opt. Express 11, 2953-2963 (2003). Y. Yasuno, V. D. Madjarova, S. Makita, and K. Chan, "swept-source optical coherence tomography for in vivo investigation of human anterior eye segments," Opt. Express 13, 10652-10664 (n.d.).
誘電体結晶に電圧を印加したとき、結晶内の電流量は、空間電荷制御状態にある場合には、結晶の誘電率に比例する(例えば、特許文献2参照)。電流によって供給される電子と、熱や光などによってトラップサイトから励起される電子とのバランスによって、結晶内にトラップされる電子量が影響を受ける。KTN結晶に備えられている温度制御素子(例えば、ペルチェ素子)の制御が及ばないような外気温の大きな変動があり、KTN結晶の結晶温度が変化した場合には、誘電率も変化する。これにより、結晶内の電流量も変動し、結晶内への電子の供給量が変動することになり、結果として結晶内のトラップ電子量が変動する。トラップ電子量の変動により、内部電界も変化するので屈折率分布も変化することになる。KTN結晶の光偏向は、屈折率分布を有する結晶内を光が透過する際に、屈折率分布に応じて、その進行方向が蓄積して変化することを利用している。従って、波長掃引の中心波長、掃引波長範囲が変動する。
SS−OCTにおいては、光源からの光出力を2分岐し、被測定物内からの反射光と参照光の干渉信号を計測する。反射光と参照光の光路長差に応じて、干渉信号の周波数が変化し、被測定物内の反射点の深度、位置を得ることができる。被測定物への入射位置を2次元的にスキャンし、各々の点での反射点の情報をつなぎ合わせることにより、断層画像を形成することができる。
被測定物の屈折率をn、反射点までの物理的な距離をLとすると、SS−OCT計測にて得られる干渉信号は、n×Lの光路長に対応する。さらに、被測定物の屈折率が波長依存性を持ち、n(λ)と書き表すと、計測する干渉信号はn(λ)×Lである。このとき、波長掃引光源の中心波長が変化すると、計測するn(λ)×Lの値が波長に応じて変化してしまう。また、SS−OCT計測における被測定物の深さ方向の空間分解能δzは、非特許文献2によれば、
Figure 0006554078
である。λ0は波長掃引時の中心波長である。波長掃引光源の波長掃引帯域Δλが変化すると、Δλに応じて、計測毎に空間分解能が変化してしまう。従って、取得するSS−OCT画像においても、鮮明さが画像ごとに変化してしまう。つまり、波長掃引光源の中心波長、波長掃引帯域の変化によって、被測定物に変化が無くとも、一定のOCT画像が得られなくなり、安定したSS−OCT計測を阻害することになる。
本発明の目的は、波長掃引の中心波長、掃引波長範囲が長時間にわたって安定した波長掃引光源によって、再現性の高いSS−OCT計測を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、一実施態様は、一方の端面が光偏向器を介して回折格子および端面鏡から構成される波長フィルタに結合され、他方の端面が出力結合鏡に相対している利得媒質を含み、前記端面鏡と前記出力結合鏡との間で光共振器を構成する波長掃引光源であって、前記光偏向器は、電気光学結晶と、前記電気光学結晶の対向する面に形成された2つの電極と、前記電極を介して前記電気光学結晶内に電界を形成するための制御電圧を出力する制御電圧源とを含み、前記制御電圧により形成される電界の方向に略垂直な光軸に沿って入射される入射光を、前記電界に平行な方向に偏向させ、前記入射光を前記回折格子の溝を横切る方向に偏向させて、出力光の波長を可変する波長掃引光源において、前記出力光のうち2つの波長の光を検出して、波長モニタ信号を出力する波長モニタを備え、波長掃引時において前記波長モニタ信号を測定して、前記2つの波長の光が出現する時刻の中点の時刻が一定になるように、前記光偏向器をフィードバック制御することを特徴とする。
本発明によれば、波長掃引光源の波長掃引の中心波長、掃引波長範囲を一定に保つことが可能となり、被測定物の波長分散の影響を受けずに、再現性の高いSS−OCT計測を実行することができる。
従来のKTN光偏向器を用いた波長掃引光源の構成を示す図である。 波長モニタの動作原理を説明するための図である。 KTN光偏向器の偏向におけるDCバイアスによる偏向中心の変化を示す図である。 波長掃引の時間変化とKTN光偏向器に印加するDCバイアス電圧の関係を示す図である。 本発明の実施例1にかかる波長掃引光源の構成を示す図である。 本発明の実施例2にかかる波長掃引光源の構成を示す図である。 実施例2における波長モニタの動作を説明するための図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
SS−OCT計測に用いる波長掃引光源の出力光を分岐して、一方をOCT計測に用い、他方を波長モニタに入力する。波長モニタに入力された光は、掃引波長範囲の特定波長のみを透過・選択する波長選択素子を介して、フォトディテクタ(PD)によって受光される。このような波長選択素子として、グレーティング、プリズム、誘電体多層膜ミラーなどを用いることができる。波長をモニタする方法としては、PDから出力された信号を、オシロスコープ等で観測し、特定波長の光の出現時刻を観測する。
PDは、波長選択素子によって選択された光を検出すると、図2に示すように、波長掃引時に印加電圧に同期したトリガ信号を基準として、時刻t1に波長モニタ信号を出力する。波長モニタ信号には、検出された光の波長の情報は有さないが、波長選択素子によって特定の波長λ1のみが検出されているので、波長掃引時の時刻t1に特定の波長λ1が出力されていることを知ることができる。グレーティング、プリズム、誘電体多層膜ミラーは、これら素子への入射角度によって、透過・選択する波長を変化させることができるので、PDにて検出する特定の波長を変化させることができる。
波長掃引光源は、上述したとおり、光共振器内に波長選択素子を有している。例えば、KTN結晶などの電気光学結晶を光偏向器として用い、回折格子との組み合わせによって、波長選択素子を形成することができる。回折格子へ入射する光の波長と角度に応じて回折角度が決まり、光共振器内の利得媒質に帰還された波長において、レーザ発振する。このとき、光偏向器の偏向角度範囲に応じて、発振波長範囲が決定される。従って、偏向角や偏向幅の中心が変化した場合には、レーザ発振する範囲や中心波長が変化してしまう。
本実施形態においては、波長掃引時に特定の波長が出現する時刻を、波長モニタより検出する。波長掃引の間に出現する時刻が一定となるように、波長掃引光源の電気光学結晶に印加する電圧、温度をフィードバック制御する。
非特許文献3によれば、PDからの電流i(t)は、被測定物の反射点が、反射光と参照光の光路長差Z0となる深さの場合、
Figure 0006554078
となる。ここで、k(t)=2π/λ(t)であり、波長掃引光源からの出力光における波長の時間変化λ(t)によって、PDにて検出される時間波形i(t)が決定される。ここで、波長掃引光源からの出力光における波長の時間変化λ(t)が変化すれば、i(t)も変化するのは明らかである。
このことから、波長掃引光源の中心波長および掃引波長範囲を一定にすることにより、時間波形として計測される干渉波形内の周波数も安定化することができる。波長掃引光源の中心波長および掃引波長範囲を安定化することにより、SS−OCT計測において、被測定物の波長分散によって実効的な反射点が変化するのを防げる。これにより、精度の高い計測を安定して行えるようになる。
図3に、KTN光偏向器の偏向におけるDCバイアスによる偏向中心の変化を示す。KTN光偏向器は、KTN結晶201の対向する面に電極202,203が形成され、制御電圧源204から印加される電界に垂直に、光軸が設定されている。DCバイアス電圧を変えることによって、入射光211に対して、低DCバイアス時の出射光の中心軸212から、高DCバイアス時の出射光の中心軸213へと変えることができる。電気光学結晶の誘電率などの変化によって結晶内への電子の供給量が変化すると、結晶内の屈折率分布が変化して、出射光の中心軸も変化するが、DCバイアス電圧によって、これを補償することができる。KTN光偏向器からの出射光の中心軸を一定にすることは、波長掃引光源内にて用いられる場合に、回折格子への入射角の中心を一定にすることであり、波長掃引時の中心波長を安定化することにつながる。
図4に、波長掃引の時間変化とKTN光偏向器に印加するDCバイアスの関係を示す。KTN結晶の誘電率が一定の場合、印加するDCバイアス電圧を変化させて、出射光の偏向角の中心軸を制御することにより、波長掃引の時間変化を制御できることを示している。KTN結晶の誘電率が変化した場合には、偏向角の中心軸の変化に伴って波長掃引の時間変化が時間方向にシフトする。SS−OCT計測においては、波長掃引が行われている時間に干渉波形を取得し、一定の波長掃引幅と中心波長を利用して計測を行っている。従って、波長掃引の時間変化が時間方向にシフトしてしまうと、シフトした量に応じて干渉波形を取り込む時間をシフトさせなければならず、処理が煩雑になってしまう。
そこで、このような波長掃引の時間的なシフトを、KTN光偏向器への印加電圧制御によって打消しておけば、常に同じ波長掃引の時間変化が得られる。このとき、SS−OCT計測の干渉波形を取り込む時間を制御する必要はなく、SS−OCT計測に用いられている波長掃引範囲も常に一定であるので、被測定物の波長分散によって実効的な反射点が変化するのを防ぐことができ、精度の高い計測を行うことができる。
図5に、本発明の実施例1にかかる波長掃引光源の構成を示す。SS−OCT計測用の光源は、1.3μm帯の波長可変光源300を含む。波長掃引光源300は、利得媒質として半導体光増幅(SOA)チップと、KTN光偏向器とを備えている。KTN光偏向器は、4.0x3.2x1.2mmのKTN結晶と、4.0x3.2mmの面に蒸着されたTi/Pt/Auからなる電極とからなり、電極間隔が1.2mmとなる。KTN結晶の誘電率が立方晶領域で17,500となるように温度調節し、その後、KTN結晶に制御電圧を印加する。入射光の直径は1.0mmとし、電圧印加によって生成される内部電界に平行な直線偏光で、電界に垂直な光軸に沿って電極間を伝播する。
KTN光偏向器からの出射光は、コリメートレンズを透過後、刻線数1200mm-1、の回折格子に入射される。回折格子への入射角θは、KTN光偏向器が下記の電圧印加条件で駆動しているときの中心波長が1310nmとなるように設定した。回折格子によって回折した光のうち、レーザ共振器内に帰還される波長により発振する。
KTN光偏向器への印加電圧条件は次の通りである。最初に、トラップ充填時間において、正負同じ値の300VのDC電圧を交互に60秒間印加して、KTN結晶を初期トラップ充填状態に設定する。ここでは、正負交互に印加したが、正の電圧のみ、または負の電圧のみであってもよい。続いて、DCバイアス電圧−200Vを重畳した20kHzの交流電圧(振幅300V)を印加し、高速偏向器として動作させる。波長掃引光源300からの光出力は、中心波長1310nm、波長掃引幅100nmである。
波長掃引光源300からの光出力は、光ファイバ301に接続されたカプラ302により2分岐される。一方の光出力はSS−OCT計測の波長掃引光として出力され、他方は波長モニタに用いられる。波長モニタ用の光は、カプラ302からサーキュレータ303を介して、ファイバコリメータ304に入力される。ファイバコリメータ304によって空間に平行光として取り出され、分光素子である回折格子305に入射される。回折格子305は、波長1310nmの光の一次回折光がファイバコリメータ304に再結合される配置とする。ファイバコリメータ304に再結合された光は、サーキュレータ303を介して、フォトディテクタ(PD)306に入射される。
PD306は、回折格子305を含む波長選択素子によって選択された光を検出すると、波長モニタ信号をオシロスコープ307に出力する。オシロスコープ307により、受光された光のピーク値、すなわち波長選択素子によって選択された特定の波長λ1(=1310nm)のピーク値を計測する。このピーク値が出現した時刻、すなわち波長掃引時の時刻t1は、印加電圧に同期した矩形上のトリガ信号の立下りエッジを基準としたとき、立下りエッジから16.17μsの時刻であった。この時刻情報を波長掃引光源300にフィードバックする。
波長モニタで検出された特定の波長が出現する時刻が、波長掃引の間に、常に一定に出現するように、波長掃引光源300内のKTN光偏向器のDCバイアス電圧を制御する。
波長掃引光源300を、周囲温度が大幅に変化する環境下にて動作させ、光偏向器の動作変動とそれに伴う波長掃引光源の中心波長、波長掃引範囲の変化が起きるようにした。これに伴って、波長1310nmの光が検出される時刻が16.17μsの時刻から変動することを確認した。KTN光偏向器へ印加されているDCバイアス電圧を−200V〜−205Vの範囲でフィードバック制御し、波長1310nmの光が検出される時間が16.17μsと一定なるようにする。
その結果、SS−OCT計測時に、波長モニタのPDにて検出される時間波形が同一になった。また、フィードバック制御をしない場合には、被測定物における計測深さが0.2%変動したが、フィードバック制御を行った場合には、0.04%まで変動を抑制することができた。波長掃引型のSS−OCT計測では、数mm深さを数μm程度の分解能で計測するので、波長モニタによるフィードバック制御により、分解能の1/10程度まで計測の変動を抑制することができる。
実施例1では、KTN光偏向器に印加するDCバイアス電圧を変化させることにより、波長掃引光源として所望の発振波長が得られるよう制御を行った。一方、KTN光偏向器のKTN結晶の温度を制御して誘電率を変化させ、出射光の偏向角を変化させて、所望の発振波長が得られるよう制御を行っても良い。さらに、KTN光偏向器のKTN結晶に対して紫外光を照射し、紫外光の強度を変えてトラップ電子密度を変化させ、出射光の偏向角を変化させて、所望の発振波長が得られるよう制御を行っても良い。
図6に、本発明の実施例2にかかる波長掃引光源の構成を示す。SS−OCT計測用の光源は、1.3μm帯の波長可変光源400を含む。波長掃引光源400の構成は、実施例1に同じである。
波長掃引光源400からの光出力は、光ファイバ401に接続されたカプラ402により2分岐される。一方の光出力はSS−OCT計測の波長掃引光として出力され、他方は波長モニタに用いられる。波長モニタ用の光は、カプラ402から誘電体多層膜フィルタ408に入力される。誘電体多層膜フィルタ408によって1280nmと1340nmの2つの波長の光のみが透過され、フォトディテクタ(PD)406に入射される。
PD406は、波長選択素子である誘電体多層膜フィルタ408によって選択された光を検出すると、波長モニタ信号をオシロスコープ407に出力する。オシロスコープ407により、受光された光の2つのピーク値を計測する。このピーク値が出現した時刻を、波長掃引光源400へフィードバックする。
図7を参照して、実施例2における波長モニタの動作を説明する。図7に示すように、短波長から長波長への波長掃引に伴って、2つの波長(1280nmと1340nm)のピーク値が検出される。時間の早い波長モニタ信号が1280nmに対応し、時間の遅い波長モニタ信号が1340nmに対応する。印加電圧に同期した矩形上のトリガ信号の立下りエッジを基準としたとき、立下りエッジから、2本のピーク値が出現する時刻の中点の時刻((t1+t2)/2)が、波長掃引の間に、常に一定に出現するように、波長掃引光源400内のKTN光偏向器のDCバイアス電圧を制御する。
また、2本のピーク値一方または両方の出現時刻が、上記のトリガ信号に対して時間差が一定になるように、KTN光偏向器のDCバイアス電圧を制御してもよい。加えて、2本のピーク値の出現時刻の時間差が一定になるように、KTN光偏向器への印加電圧のうち、AC電圧の振幅をフィードバック制御する。その結果、SS−OCT計測時に、波長モニタのPDにて検出される時間波形が同一になり、実施例1と同様に、分解能の高い計測が可能となる。
100,300,400 波長可変光源
101 利得媒質
102 コリメートレンズ
103 集光レンズ
104 回折格子
105 出力結合鏡
106 電気光学偏向器
107 出力光
108 端面鏡
109,204 制御電圧源
201 KTN結晶
202,203 電極
205 入射面
206 出射面
211 入射光
212 低DCバイアス時の出射光の中心軸
213 高DCバイアス時の出射光の中心軸
214 低DCバイアス時の波長掃引幅
215 高DCバイアス時の波長掃引幅
301,401 光ファイバ
302,402 カプラ
303 サーキュレータ
304 ファイバコリメータ
305 回折格子
306,406 フォトディテクタ(PD)
307,407 オシロスコープ
408 誘電体多層膜フィルタ

Claims (4)

  1. 一方の端面が光偏向器を介して回折格子および端面鏡から構成される波長フィルタに結合され、他方の端面が出力結合鏡に相対している利得媒質を含み、前記端面鏡と前記出力結合鏡との間で光共振器を構成する波長掃引光源であって、前記光偏向器は、
    電気光学結晶と、
    前記電気光学結晶の対向する面に形成された2つの電極と、
    前記電極を介して前記電気光学結晶内に電界を形成するための制御電圧を出力する制御電圧源とを含み、
    前記制御電圧により形成される電界の方向に略垂直な光軸に沿って入射される入射光を、前記電界に平行な方向に偏向させ、前記入射光を前記回折格子の溝を横切る方向に偏向させて、出力光の波長を可変する波長掃引光源において、
    前記出力光のうち2つの波長の光を検出して、波長モニタ信号を出力する波長モニタを備え、
    波長掃引時において前記波長モニタ信号を測定して、前記2つの波長の光が出現する時刻の中点の時刻が一定になるように、前記光偏向器をフィードバック制御することを特徴とする波長掃引光源。
  2. 前記2つの波長の光が出現する時刻の時間差が一定になるように、前記光偏向器をフィードバック制御することを特徴とする請求項に記載の波長掃引光源。
  3. 前記2つの波長の光の一方または両方の出現時刻が、前記光偏向器の前記電気光学結晶に印加する印加電圧に同期したトリガ信号に対して時間差が一定になるように、前記光偏向器をフィードバック制御することを特徴とする請求項に記載の波長掃引光源。
  4. 前記電気光学結晶は、KTN(KTa1-xNbx3(0<x<1):タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶、またはKTN結晶にリチウムを添加したKLTN(K1-yyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1))結晶であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の波長掃引光源。
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