JP6553856B2 - ガラス - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスに関するものであり、特に、光学ガラス及び有機EL照明用のガラス基板に適した、高屈折率を有するガラスに関するものである。
有機EL素子は、軽量で薄く、低消費電力で駆動することができ、面発光を特徴とするため、次世代の照明用途として期待されている。この有機EL素子は、透光性のガラス基板の表面に、透明電極層を介して有機発光層を設け、さらに有機発光層の表面に対向電極が設けられている。この透明電極層と対向電極との間に電圧が印加されることにより、有機発光層が発光する。有機発光層から発せられた光は、透明電極層及び透光性基板を透過して、外界へと照射される。ここで、有機発光層や透明電極層の屈折率は比較的高いため、透光性のガラス基板も屈折率の高いガラスを使用しないと、有機発光層又は透明電極層とガラス基板との界面で全反射が生じ、光の取り出し効率が低下するという問題がある。
また、有機EL照明用のガラス基板は、低コストで生産するために、溶融ガラスから直接薄板状に成形することが求められる。
しかし、従来のガラスにおいては、薄板状に成形可能な粘性を有し、かつ、全反射の問題を解決する高い屈折率を有するガラスは存在しなかった。
また、有機EL照明用のガラス基板以外の光学用途においても、例えばウエハーレベルオプティクス技術等の分野において、高い屈折率を有する光学ガラスを低コストで薄板状に成形するという要求がある。
特許文献1には、屈折率ndが1.74のガラスが開示されているが、有機発光層や透明電極の屈折率ndは、1.9程度であり、十分に高い屈折率が実現されていない。
特開2013−149406号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、薄板成形が可能な粘性を有しながらも、高い屈折率ndを有するガラスを得ることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、特定の組成を有することで、薄板成形に適した粘性と、高い屈折率とを有するガラスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(構成1)
酸化物換算の質量%で、
SiO成分を5%〜50%、
La成分を4%〜35%、
TiO成分を3%〜30%、
ZrO成分を0%〜20%、
BaO成分を5%〜50%含有し
La成分及びBaO成分の合計含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比(La+BaO)/SiOの値が、1.1以上4.0以下であるガラス。
(構成2)
屈折率ndが1.75以上である構成1に記載のガラス。
(構成3)
酸化物換算の質量%で、
成分を0%〜40%、
Nb成分を0%〜20%、
含有する構成1又は2に記載のガラス。
(構成4)
酸化物換算の質量%で、B成分の含有範囲が0%〜15%であり、SiO成分及びB成分の合計含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比(SiO+B)/SiOの値が0.50以上2.00以下である構成1から3のいずれかに記載のガラス。
(構成5)
酸化物換算の質量%で、Nb成分の含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比Nb/SiOの値が0.60以下である構成1から4のいずれかに記載のガラス。
(構成6)
酸化物換算の質量%で、
Gd成分を0%〜40%、
Al成分を0%〜15%、
MgO成分を0%〜15%、
CaO成分を0%〜15%、及び
SrO成分を0%〜15%含有する構成1から5のいずれかに記載のガラス。
(構成7)
酸化物換算の質量%で、
Ta成分の含有量が0%〜10%、
TeO2成分の含有量が0%〜10%、
WO成分の含有量が0%〜10%、
Bi成分の含有量が0%〜10%、
Sb成分の含有量が0%〜0.5%未満、
As成分の含有量が0%〜0.5%未満、及び
Yb成分の含有量が0%〜0.9%、
O成分(RはLi、Na及びKから選ばれる1種以上)の含有量が0%〜4%未満
の範囲である構成1から6のいずれかに記載のガラス。
(構成8)
液相温度におけるガラス融液の粘性が10.0dPa・s以上である構成1から7のいずれかに記載のガラス。
(構成9)
ガラス転移点Tgが625℃以上である構成1から8のいずれかに記載のガラス。
(構成10)
液相温度が1300℃以下である構成1から9のいずれかに記載のガラス。
(構成11)
構成1から10のいずれかに記載のガラスからなるガラス基板。
(構成12)
構成1から10のいずれかに記載のガラスを母材とする光学素子。
本発明によれば、薄板成形に適した粘性と、高い屈折率とを有するガラスを得ることができる。すなわち、液相温度におけるガラス融液の粘性が10.0dPa・s以上であり、1.75以上の屈折率ndを有するガラスを得ることができる。
実施例1のガラスの温度と粘性の関係を示すグラフであり、横軸はガラス融液の温度(℃)、縦軸はガラスの粘性であり、縦軸は粘性η(dPa・s)の常用対数(logη)の値である。
以下、本発明のガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
[ガラス成分]
本発明のガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
SiO成分は、ガラス形成酸化物として欠かすことができない必須成分である。SiO成分を5%以上含有することで、溶融ガラスの粘度を高め、ガラスの着色を低減する効果を有する。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは5%、より好ましくは6.7%、最も好ましくは、10%を下限とする。
一方で、SiO成分の含有量を50%以下にすることで、屈折率の低下を抑えながらも、耐失透性を高められる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは50%、より好ましくは45%、最も好ましくは、40%を上限とする。
La成分は、ガラスの屈折率を高める成分である。特に、La成分を4%以上含有することで、可視域の透過率を劣化させることなく薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、所望の高屈折率を得ることができる。従って、La成分の含有量は、好ましくは4%、より好ましくは4.5%、最も好ましくは5%を下限とする。
一方、La成分の含有量を35%以下にすることで、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、ガラスの耐失透性を高められる。従って、La成分の含有量は、好ましくは35%、より好ましくは32%、最も好ましくは30%を上限とする。
TiO成分は、薄板成形に好適な所望の粘性が得つつも、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低く調整し、且つ耐失透性を高められる成分である。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは3%、より好ましくは5%、最も好ましくは7%を下限とする。
一方で、TiOの含有量を30%以下にすることで、薄板成形に好適な所望の粘性が得つつも、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、且つ、TiO成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは30%、より好ましくは28%、最も好ましくは25%を上限とする。
ZrO成分は、可視域の透過率を劣化させることなくガラスの高屈折率化及び低分散化に寄与でき、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。そのため、ZrO成分を含有させる場合、その含有量は、より好ましくは1%、さらに好ましくは2.5%、最も好ましくは5.1%を下限とする。
一方で、ZrO成分を20%以下にすることで、ZrO成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは15%、さらに好ましくは9.8%、最も好ましくは7.5%を上限とする。
BaO成分は、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる成分である。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは5%、より好ましくは7%、最も好ましくは10.9%を下限とする。
一方で、BaO成分の含有量を50%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは50%、より好ましくは45%、最も好ましくは40%を上限とする。
本発明のガラスは、La成分及びBaO成分の合計含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比(La+BaO)/SiOの値が、1.1以上4.0以下であることを特徴とする。この比の値を1.1以上4.0以下とすることで、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、屈折率の低下および、耐失透性の悪化を抑えることが可能となる。従って、前記(La+BaO)/SiOの値は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、最も好ましくは1.3を下限とする。また、前記(La+BaO)/SiOの値は、好ましくは4.0、より好ましくは3.8、最も好ましくは3.5を上限とする。
成分は、高屈折率及び比重を低減できる任意成分である。
一方で、Y成分の含有量を40%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つガラスの耐失透性を高められる。従って、Y成分の含有量は、好ましくは40%、より好ましくは30%、最も好ましくは15%を上限とする。
Nb成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Nb成分の含有量を20%以下にすることで、材料のコストを抑えつつ、Nb成分の過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下や、可視光の透過率の低下を抑えることができる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは20%、より好ましくは14%、最も好ましくは9.8%を上限とする。
成分は、ガラス形成酸化物として含有できる任意成分である。
成分を含有することで、ガラスの耐失透性を高めることができる。従って、B成分含有させる場合、その含有量は、より好ましくは0.1%、最も好ましくは5.0%%を下限とする。
一方、B成分の含有量を15%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くでき、化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは10%、さらに好ましくは7.9%、最も好ましくは8%を上限とする。
本発明のガラスは、SiO成分及びB成分の合計含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比(SiO+B)/SiOの値が0.50以上2.00以下であることが好ましい。この比の値を0.50以上2.00以下とすることで、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、耐久性に優れた効果を得ることが可能となる。従って、前記(SiO+B)/SiOの値は、好ましくは0.5、より好ましくは0.6、最も好ましくは0.7を下限とする。また、前記(SiO+B)/SiOの値は、好ましくは2.00、より好ましくは1.90、最も好ましくは1.80を上限とする。
本発明のガラスは、SiO成分とB成分の含有量の和が19%以上であることが好ましい。SiO成分とB成分の含有量の和を19%以上とすることで、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、耐失透性の低下を抑えることが可能となる。従って、SiO成分とB成分の含有量の和が19%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、21%以上であることが最も好ましい。また、SiO成分とB成分の含有量の和は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることが最も好ましい。
本発明のガラスは、Nb成分の含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比Nb/SiOの値が0.60以下であることが好ましい。この比の値を0.60以下にすることで、薄板成形に好適な所望の粘性を得つつも、材料コストを抑え、耐失透性の優れた効果を得ることができる。従って、前記Nb/SiOの値は、好ましくは0.60、より好ましくは0.56、最も好ましくは0.53を上限とする。また、前記Nb/SiOの値は0を下限として良い。
Gd成分は、ガラスの屈折率を高められる任意成分である。
一方で、希土類元素の中でも高価なGd成分を40.0%以下に低減することで、ガラスの材料コストを低減できる。また、これによりガラスのアッベ数の必要以上の上昇を抑えられる。従って、Gd成分の含有量は、好ましくは40.0%、より好ましくは30.0%、最も好ましくは10%を上限とする。
Al成分及びGa成分は、ガラスの化学的耐久性を高められ、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、Al成分及びGa成分の各々の含有量を15%以下にすることで、これらの過剰な含有によるガラスの耐失透性の低下を抑えられる。従って、Al成分及びGa成分の各々の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは5.0%、最も好ましくは3.0%を上限とする。
MgO成分は、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、MgO成分の含有量を15%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは12%、最も好ましくは10%を上限とする。
CaO成分は、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。しかし、CaO成分の含有量を15%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、CaOの含有量は、好ましくは15%、より好ましくは12%、最も好ましくは10.3%を上限とする。
SrO成分は、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。
一方で、SrO成分の含有量を15%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは15%、より好ましくは12%、最も好ましくは10%を上限とする。
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の合計(質量和)は、50%以下が好ましい。これにより、RO成分の過剰な含有による、ガラスの屈折率の低下や耐失透性の低下を抑えられる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは50%、より好ましくは45%、最も好ましくは40%を上限とする。
Ta成分は、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を高め、且つ熔融ガラスの粘性を高められる任意成分である。一方で、高価なTa成分を10%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは7%、最も好ましくは5%を上限とする。
TeO成分は、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
しかしながら、TeOは白金製の坩堝や、溶融ガラスと接する部分が白金で形成されている溶融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限とし、さらに好ましくは含有しない。
WO成分は、他の高屈折率成分によるガラスの着色を低減しながら屈折率を高め、且つガラスの耐失透性を高められる任意成分である。従って、WO成分の含有量は、より好ましくは0%超、さらに好ましくは1.0%を下限としてもよい。
一方で、WO成分の含有量を10%以下にすることで、WO成分によるガラスの着色を低減して可視光透過率を高めることができる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限とする。
Bi成分は、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
一方で、Bi成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められ、且つ、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは5%、最も好ましくは3%を上限とする。
Yb成分は、ガラスの屈折率を高め、且つアッベ数を高められる任意成分である。
一方で、Yb成分が過剰に添加されると、ガラスの耐失透性が損なわれやすくなる。従って、Yb成分の含有量は、好ましくは0.9%、より好ましくは0.5%を上限とし、Yb成分を含有しないことが最も好ましい。
O成分(式中、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上)は任意に添加できる成分であるが、過剰に添加すると、ガラスの粘性が低くなり、所望の粘性が得難くなり、また、高い屈折率が得難くなる。従って、RO成分の含有量は4%未満であることが好ましく、2%以下であることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。
LiO成分は、ガラスの熔融性を改善し、且つガラス転移点を低くできる任意成分であるが、過剰に添加すると、ガラスの粘性が低くなり、所望の粘性が得難くなり、また、高い屈折率が得難くなるため、その含有量は2%以下とすることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
NaO成分、KO成分及びCsO成分は、ガラスの熔融性を改善し、ガラスの耐失透性を高め、且つガラス転移点を低くできる任意成分であるが、過剰に添加すると、ガラスの粘性が低くなり、所望の粘性が得難くなり、また、高い屈折率が得難くなるため、NaO成分、KO成分及びCsO成分の各々の含有量は2%以下とすることが好ましく、NaO、KO及びCsOの各々の成分は含有しないことがより好ましい。
ZnO成分は、屈折率を高めつつ且つ化学的耐久性を高められる任意成分である。そのため、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超としてもよい。
一方で、ZnO成分の含有量を10%以下にすることで、ガラスの屈折率の低下や、粘性の低下を抑えられガラスへの脈理の発生を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは10%、より好ましくは8%、最も好ましくは6%を上限とする。
成分は、0%超含有する場合に、ガラスの耐失透性を高められる任意成分である。特に、P成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性、特に耐水性の低下を抑えられる。従って、P成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%を上限とする。
GeO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高め、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。しかしながら、GeOは原料価格が高いため、その量が多いと材料コストが高くなる。従って、GeO成分の含有量は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
SnO成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄し、且つガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。
一方で、SnO成分の含有量を1.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
Sb成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
一方で、Sb量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.4%を上限とする。
As成分は、環境負荷が高い成分であるため、その含有量を0.5%未満とすることが好ましく、含有しないことがより好ましい。
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
上述されていない他の成分を、本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、実質的に含まないことが好ましい。
また、PbO等の鉛化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
[製造方法]
本発明のガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100〜1500℃の温度範囲で2〜5時間熔融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。
[物性]
本発明のガラスは、高屈折率を有することが好ましい。特に、本発明のガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.75、より好ましくは1.76、最も好ましくは1.77を下限とする。この屈折率の上限は、好ましくは1.91、より好ましくは1.90、さらに好ましくは1.89であってもよい。このような高屈折率を有することで、本発明のガラスで有機EL用ガラス基板を作製した場合、有機発光層又は透明電極層とガラス基板との界面で全反射を抑制し、光の取り出し効率を高めることが可能となる。また、本発明のガラスをレンズなどの光学素子に用いた場合でも、光学素子の薄型化を図っても大きな光の屈折量を得ることができる。
本発明のガラスは、耐失透性が高いこと、より具体的には、低い液相温度を有することが好ましい。すなわち、本発明のガラスの液相温度は、好ましくは1300℃、より好ましくは1250℃、さらに好ましくは1200℃を上限とする。これにより、より低い温度で熔融ガラスを流出しても、作製されたガラスの結晶化が低減されるため、特に熔融状態からガラスを形成したときの失透を低減でき、ガラスを用いた基板や光学素子の光学特性への影響を低減できる。また、ガラスの熔解温度を低くしてもガラスを成形できるため、ガラスの成形時に消費するエネルギーを抑えることで、ガラスの製造コストを低減できる。一方、本発明のガラスの液相温度の下限は特に限定しないが、本発明によって得られるガラスの液相温度は、好ましくは500℃、より好ましくは600℃、さらに好ましくは700℃を下限としてもよい。
なお、本明細書中における「液相温度」は、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1350℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を表す。ここで降温する際の所定の温度は、500℃までの10℃刻みの温度である。
本発明のガラスは、液相温度におけるガラス融液の粘性を10.0dPa・s以上とする。このような粘性を有することで、脈理の発生を抑制し、溶融ガラスから薄板に成形することが可能となる。したがって、本発明のガラスは、液相温度におけるガラス融液の粘性を10.0dPa・s以上とすることが好ましく、31.6dPa・s以上とすることがより好ましく、100.0dPa・s以上とすることが最も好ましい。また、液相温度におけるガラス融液の粘性の上限は特に設けないが、本発明のガラスが採りうる当該粘性の範囲の上限値は104.5dPa・sである。
なお、液相温度におけるガラス融液の粘性は、対象のガラスの液相温度を予め測定し、その温度でガラスを保温し、玉引上げ式粘度計(有限会社オプト企業社製)により測定することができる。
本発明のガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。
本発明のガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)は、好ましくは600nm、より好ましくは550nm、さらに好ましくは500nmを上限とする。
また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ)は、好ましくは470nm、より好ましくは460nm、さらに好ましくは400nmを上限とする。
これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、このガラスを、有機EL照明用基板やレンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
本発明のガラスは、625℃以上のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。これにより、溶融ガラスを薄板状に成形することが容易となる。従って、本発明の光学ガラスのガラス転移点は、好ましくは625℃、より好ましくは700℃、さらに好ましくは710℃を下限とする。なお、この本発明のガラス転移点は、好ましくは800℃を上限としてもよい。
[薄板状の成形]
本発明のガラスは、溶融ガラスを薄板状に成形するために適した液相温度及び粘性を有しているため、公知の方法によって、溶融ガラスを直接薄板状に成形することが可能である。本発明のガラスを薄板状に成形する方法としては、フロート法、ダウンドロー法、フュージョン法、アクアフロート法等が挙げられる。本発明のガラスは溶融ガラスを直接薄板状に成形することが可能であるので、有機EL照明用基板その他光学用途の薄板を安価に製造することが可能である。
その他、本発明のガラスは、液相温度における粘性が高いため、ダイレクトプレス法を使用して薄板状に成形することも可能である。ダイレクトプレス法は、溶融ガラスを対向する少なくとも二つの型で直接プレス成形する方法である。本発明のガラスの製造において、ダイレクトプレス法は、例えばウエハーレベルオプティクス用の光学素子群の成形品又はウエハーレベルオプティクス用の光学素子群の成形品をリヒートプレス法で成形するためのガラス基板を製造する場合に好適に使用することが可能である。
[ガラス成形体及び光学素子]
本発明のガラスは、例えば研削及び研磨加工の手段等を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製することができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されず、上記ダイレクトプレス法やリヒートプレス法を用いることも可能である。
このように、本発明のガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子に用いることが好ましい。これにより、径の大きなガラス成形体の形成が可能になるため、光学素子の大型化を図りながらも、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
本発明のガラスの実施例の組成、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ及びλ70)、液相温度、液相温度の粘性及びガラス転移点(Tg)の結果を表1〜表27に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
本発明の実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100〜1500℃の温度範囲で2〜5時間熔融した後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
ここで、実施例のガラスの屈折率及びアッベ数は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01―2003に基づいて測定した。ここで、屈折率及びアッベ数は、徐冷降温速度を−25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
また、実施例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003に準じて測定した。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ(透過率5%時の波長)及びλ70(透過率70%時の波長)を求めた。
また、実施例のガラスの液相温度は、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1350℃で完全に熔融状態にし、1300℃〜500℃まで10℃刻みで設定したいずれかの温度まで降温して12時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察し、結晶が認められない一番低い温度を求めた。
また、実施例のガラスのガラス転移点(Tg)は、横型膨張測定器を用いた測定を行うことで求めた。ここで、測定を行う際のサンプルはφ4.8mm、長さ50〜55mmのものを使用し、昇温速度を4℃/minとした。
本発明の実施例のガラスは、いずれも屈折率ndが1.75以上であり、液相温度におけるガラス融液の粘性が、10.0dPa・s以上であり、溶融ガラスを薄板状に成形することが容易であることが明らかとなった。また、本発明のガラスの液相温度は、1300℃以下であり、所望の範囲内であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、液相温度が低く、耐失透性が高いことが明らかになった。
本発明のガラスは、有機EL照明基板用途に好適であり、さらに、レンズその他光学素子用途にも好適である。

Claims (5)

  1. 酸化物換算の質量%で、
    SiO成分を10%〜40%、
    La成分を4%〜30%、
    TiO成分を10.05%〜25%、
    ZrO成分を5.1%〜7.5%、
    BaO成分を10.9%〜40%含有し
    成分を0%〜10%
    CaO成分を0%〜10.3%
    Nb 成分を0%〜7.45%、
    La成分及びBaO成分の合計含有量の、SiO成分の含有量に対する質量比(
    La+BaO)/SiOの値が、1.1以上4.0以下であり、
    LiO、NaO、KO及びCsO成分を実質的に含有しない
    ガラスであって、
    ガラス転移点Tgが625℃以上、液相温度が1300℃以下、屈折率(nd)が1.7
    5〜1.90であることを特徴とする前記ガラス。
  2. 酸化物換算の質量%で、Nb成分の含有量の、SiO成分の含有量に対する質
    量比Nb/SiOの値が0.60以下である請求項1に記載のガラス。
  3. 液相温度におけるガラス融液の粘性が10.0dPa・s以上である請求項1又は2に
    記載のガラス。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のガラスからなるガラス基板。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載のガラスを母材とする光学素子。
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