以下に、本願発明を具体化した実施形態について、農作業用トラクタを図面に基づき説明する。図1〜図10に示す如く、トラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の走行クローラ3で支持されている。走行機体2の前部にディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)を搭載し、走行クローラ3をエンジン5で駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面にはキャビン7が設置される。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、走行クローラ3を操向操作する操縦ハンドル9とが配置されている。キャビン7の左右外側には、オペレータが乗降するステップ10が設けられている。キャビン7の左右側方下側に、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられており、燃料タンク11は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。キャビン7の左側方には、燃料タンク11前方に電力供給するバッテリ817が設けられており、燃料タンク11と共に左のリヤフェンダー21によって覆われている。
図1〜図10に示す如く、走行機体2は、前バンパ12及び旋回用ミッションケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。旋回用ミッションケース13の左右両端側から外向きに、車軸16を回転可能に突出させており、車軸16を覆う車軸ケース90を旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けている。旋回用ミッションケース13の左右両端側に車軸16を介してスプロケット62を取り付けている。機体フレーム15の後部は、エンジン5からの回転動力を適宜変速してスプロケット62に伝達するための直進用ミッションケース17と連結している。
直進用ミッションケース17の後部には、例えばロータリ耕耘機などの対地作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取付けている。前記対地作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構111を介して直進用ミッションケース17の後部に連結される。直進用ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
左右一対となるエンジンフレーム(前部フレーム)14は、その前端側内側面をフレーム連結部材12aの左右外側面と連結しており、フレーム連結部材12a前方に前バンパ12が固定されている。フレーム連結部材12aは、矩形状の金属鋳物で構成されており、このフレーム連結部材12aで架設したエンジンフレーム14上に、ディーゼルエンジン5を支持させる。エンジンフレーム14前端側上方を覆うように、フレーム底板233を左右のエンジンフレーム14上縁及びフレーム連結部材12a上面で架設させている。エンジンフレーム14下縁には、旋回用ミッションケース13の下側を覆うアンダーカバー296をエンジンフレーム14前端より後方に向かって架設している。アンダーカバー296は、その前端をフレーム連結部材12a下面と連結させる一方で、その左右側縁それぞれを左右のエンジンフレーム14と連結している。
ファンシュラウド234を背面側に取り付けたラジエータ235を、エンジン5の前面側に位置するようにフレーム底板233上に立設している。ファンシュラウド234は冷却ファン206の外周側を囲っていて、ラジエータ235と冷却ファン206とを連通させている。ラジエータ235の前面側には、矩形枠状の枠フレーム226をフレーム板233上に立設させている。枠フレーム226内には、インタークーラ220、オイルクーラ274、及びコンデンサ275などが設置されており、枠フレーム226の前面の上方位置には、エアクリーナ221が設置されており、エアクリーナ221下方に燃料クーラ273が設置されている。
左右の機体フレーム15の前端側は、左右のエンジンフレーム14後端側と連結しており、左右の機体フレーム15が、左右のエンジンフレーム14を狭持するように配置されている。左右一対の機体フレーム15の中途部が、支持用梁フレーム236が連結されている。機体フレーム15は、前端がエンジンフレーム14後端と連結し、中途部が支持用梁フレーム236の端面(外側面)と連結し、後端が直進用ミッションケース17と連結している。支持用梁フレーム236は、左右の機体フレーム15それぞれとボルト締結して、左右の機体フレーム15を架設しており、その上面に、エンジン支持フレーム237を搭載している。エンジン支持フレーム237は、その下端面を支持用梁フレーム236の上面とボルト締結することで、支持用梁フレーム236と共にディーゼルエンジン5のフライホイル26を囲う形状となる。
図1〜図10に示す如く、ディーゼルエンジン5は、エンジン出力軸5a(図12参照)とピストンとを内蔵するシリンダブロック上にシリンダヘッドを搭載しており、シリンダヘッド右側面に吸気マニホールドを配置する一方、シリンダヘッド左側面に排気マニホールドを配置する。すなわち、エンジン5においてエンジン出力軸5aに沿う両側面に、吸気マニホールドと排気マニホールドとを振り分けて配置する。ディーゼルエンジン5におけるシリンダブロック前面に冷却ファン206を配置する一方、シリンダブロック後面にフライホイル26を配置する。すなわち、エンジン5においてエンジン出力軸5aと交差する両側面に、フライホイル26と冷却ファン206とを振り分けて配置する。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a(図12参照)後端には、フライホイル26を直結するように取付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28とを連結している。直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した直進用出力軸30には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸31を介して、旋回用ミッションケース13から後向きに突出した直進用入力カウンタ軸508を連結している。エンジン5の前側面から前向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)5a前端には、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸711を介して、旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出した旋回用入力カウンタ軸712を連結している。
エンジン5のシリンダブロック左右側面には防振ゴムを有する前部機関脚体(エンジンマウント)238がそれぞれボルト締結されている。左右一対のエンジンフレーム14の中途部外側に連結したエンジン支持ブラケット298上部に、機関脚体238をボルト締結している。左右一対の機関脚体238によりディーゼルエンジン5をエンジンフレーム14で挟持し、ディーゼルエンジン5前側を支持させている。ディーゼルエンジン5は、後面のフライホイルハウジング60上部を、防振ゴムを有する機関脚体(エンジンマウント)240を介して、エンジン支持フレーム237上面と連結している。ディーゼルエンジン5の後面を、支持用梁フレーム236、エンジン支持フレーム237、及び機関脚体240を介して、左右一対の機体フレーム15の前端側に連結して、機体フレーム15前端でディーゼルエンジン5後側を支持させている。
図1〜図10に示す如く、走行機体2の下面側に左右のトラックフレーム61を配置する。トラックフレーム61は前後方向に延設されて左右一対設けられて、エンジンフレーム14及び機体フレーム15の両外側に位置している。左右のトラックフレーム61は左右方向に延設するロアフレーム67によりエンジンフレーム14及び機体フレーム15と連結される。左右のトラックフレーム61それぞれの前端は、旋回用ミッションケース13の左右両側面に設けた車軸ケース90と連結している。左右のトラックフレーム61それぞれの外側には、オペレータが乗降するステップ10aが設けられている。
ロアフレーム67の左右中央部は、連結ブラケット72を介して、エンジンフレーム14の後部側面に固設されている。左右のトラックフレーム61の前後中途部分に、左右方向に延設させた梁フレーム68の左右両端が連結されている。左右のトラックフレーム61後部で内方向に突設したリヤビーム73を、直進用ミッションケース17の左右側面に固設したリヤハウジング74に連結して、トラックフレーム61後部を直進用ミッションケース17左右側面で固定させる。
トラックフレーム61には、走行クローラ3にエンジン5の動力を伝える駆動スプロケット62と、走行クローラ3のテンションを維持するテンションローラ63と、走行クローラ3の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ64と、走行クローラ3の非接地側を保持する中間ローラ65とを設けている。駆動スプロケット62によって走行クローラ3の前側を支持し、テンションローラ63によって走行クローラ3の後側を支持し、トラックローラ64によって走行クローラ3の接地側を支持し、中間ローラ65によって走行クローラ3の非接地側を支持する。テンションローラ63はトラックフレーム61の後端より後方に伸縮可能に構成したテンションフレーム69の後端に回転自在に支持される。トラックローラ64はトラックフレーム61の下部に前後揺動自在に支持したイコライザフレーム71の前後に回転自在に支持される。
また、トラクタ1の前部にはフロントドーザ80を装着可能に構成している。左右一対のドーザブラケット81が、エンジンフレーム14の前部側面と車軸ケース90とロアフレーム67に固定されており、フロントドーザ80の平面視U字状(コ字状)の支持アーム83が左右のドーザブラケット81の外側(機外側)に着脱可能に枢支される。左右ドーザブラケット81は、前端内側(機内側)が左右エンジンフレーム14側面に連結されており、後端下側がロアフレーム67中途部の上面に連結されており、中途部が車軸ケース90中途部を上下で狭持するように連結されている。ドーザブラケット81は、エンジンフレーム14と車軸ケース90とロアフレーム67の3体に強固に固定されることで、フロントドーザ80による重作業に耐えられる強度を確保できる。
フロントドーザ80は、左右一対のドーザブラケット81それぞれ外側(機外側)とボルト締結される左右一対の連結フレーム82を備えており、平面視略コ字状に構成された支持アーム83の左右両側後端を左右の連結フレーム82の前下部で上下回動自在に枢支している。左右支持フレーム82その前上部と支持アーム83の左右両側上面の前端部との間に左右一対の昇降シリンダ85を介装して、昇降シリンダ85の伸縮により支持アーム83を昇降可能としている。
支持アーム83の前端には、ブレード取付体88を介してブレード84を設けている。ブレード取付体88が、支持アーム83の左右中央に左右回動自在に枢支されるとともに、ており、ブレード取付体88の前面にブレード84が傾倒可能に支持されている。ブレード84の左右中央上部とブレード取付体88の左右一側との間には傾斜シリンダ87が介装されており、傾斜シリンダ87の伸縮によりブレード54を傾倒可能としている。支持アーム83の左右両側後部とブレード取付体88の左右両側との間に左右一対のアングルシリンダ86が介装されており、左右アングルシリンダ86を互いに反対方向に伸縮させてブレード取付体88を左右回動可能としている。こうして、ブレード84が昇降及び前後傾斜及び上下傾斜可能とされる。
図1〜図10に示す如く、走行機体2上にある操縦座席8を覆うキャビン7は、骨組を構成するキャビンフレーム300を備えている。キャビンフレーム300は、操縦座席8の前方に位置する左右一対の前支柱301と、操縦座席8の後方に位置する左右一対の後支柱302と、前支柱301同士の上端部間を連結する前梁部材303と、後支柱302同士の上端部間を連結する後梁部材304と、前後に並ぶ前支柱301と後支柱302との上端部間を連結する左右の側梁部材305とを備えた略箱枠状のものである。キャビンフレーム301の上端側、すなわち前梁部材303、後梁部材304及び左右の側梁部材305で構成した矩形枠上には屋根体306を着脱可能に取付けている。
各前支柱301の下端側には、左右内向きに延びる前下部板部材307の左右外端側を連結している。左右両前下部板部材307の左右内端側に、ダッシュボード33を固定支持する縦長のボード支持板901を連結し、左右両前支柱301の間にボード支持板901を立設している。一方、左右両後支柱302の下端部間には、後梁部材304と平行状に延びる後中間梁部材309を連結している。後中間梁部材309には、下向きに延びる左右一対の後下部フレーム310の上端側を連結している。
前後に並ぶ前下部プレート板307と後下部フレーム310の下端側とには、前後に延びる底フレーム311の長手方向各端部を連結している。左右の底フレーム311上面側に床板40を張設させ、床板40前端側にダッシュボード33を立設させ、ダッシュボード33の後面側にステアリングコラム32を介して操縦ハンドル9を装設している。床板40の前部上面側にブレーキペダル35などが配設されると共に、床板40の後部上面側に操縦座席8が取付けられている。
キャビン7は、左右の前部支持台96と及び左右の後部支持台97とを介して、走行機体2に支持されている。左右の機体フレーム15の機外側面のうち前端部に前部支持台96をボルト締結させ、前部支持台96の上面側に防振ゴム体98を介してキャビン7の前側底部を防振支持している。また、直進用ミッションケース17の左右に設けられたリヤハウジング74の外側面に後部支持台97をボルト締結させ、後部支持台97の上面側に防振ゴム体99を介してキャビン7の後側底部を防振支持している。従って、キャビン7は、複数の防振ゴム体98,99を介して走行機体2に防振支持されている。
タンクフレーム18が、左右の後部支持台97上面に固定され、後部支持台97を介してリヤハウジング74に支持される。即ち、左右一対のタンクフレーム18は、クローラ3上方となる位置で、キャビン7左右に振り分けて走行機体2に固定される。左右のタンクフレーム18はそれぞれ、燃料タンク11が上面に載置されるタンク搭載用プレート289に、前後2本の支持用柱フレーム290を立設させている。支持用柱フレーム290は、キャビン7側に設けられており、燃料タンク11は、タンク搭載用プレート289上面であって支持用柱フレーム290よりも外側(機外側)となる位置に設置される。そして、支持用柱フレーム290の上端に一端が接続されたバンド286の他端をタンク搭載用プレート290に固定することで、燃料タンク11の前後2カ所がバンド286でタンク搭載用プレート289上に結束固定される。
左右のタンクフレーム18のうちの一方(本実施形態では、左タンクフレーム18)には、バッテリ817が設置される。バッテリ817は、燃料タンク11前方に設置されており、タンクフレーム18のタンク搭載用プレート289前側にバッテリ搭載用プレート291が延設されている。バッテリ搭載用プレート291下側が、後部支持台97の前側面と連結させた補強フレーム292と連結されており、バッテリ291が高剛性に支持されている。
左右のタンクフレーム18に搭載される燃料タンク11及びバッテリ817は、キャビン7下側のリヤフェンダー21によって覆われており、リヤフェンダー21がタンクカバーとして機能する。左右リヤフェンダー21の内の一方(本実施形態では、左リヤフェンダー21)が、燃料タンク11と共にバッテリ817を覆宇構成となっており、バッテリ817が設置される前部側面に、バッテリ用開放扉21aを設けている。バッテリ用開放扉21aは、バッテリ817に対応する位置となる前方位置に設けられており、リヤフェンダー21内部にも受けたヒンジ部材により、後方外側に開かれる。バッテリ用開放扉21aを開くことで、リヤフェンダー21のバッテリ817設置位置を大きく開口できるため、バッテリ817の交換を始めとした各種メンテナンス作業が容易になる。
キャビン7下側で左右に振り分けて設置される左右の燃料タンク11は、その前方下側が燃料連通管281で連通されるとともに、左右の燃料タンク11の内の一方(本実施形態では、右燃料タンク11)の上方位置に給油口283が設けられている。これにより、給油口283より一方の燃料タンク11に供給された燃料が、燃料連通管281を通じて他方の燃料タンク11にも供給される。
また、左右リヤフェンダー21の内の一方(本実施形態では、右リヤフェンダー21)は、その後方上側であって給油口283に対応する位置に給油用開放扉21bを備える。給油用開放扉21bは、リヤフェンダー21内部にも受けたヒンジ部材により、後方外側に開かれる。従って、給油用開放扉21bを開けた状態であっても、キャビン7のドアを開けた際に給油用開放扉21bに衝突することがない。更に、燃料タンク11の給油口283とバッテリ817を左右逆側に配置することで、リヤフェンダー21の開口面積を抑制し、強度低下を防止できるだけでなく、オペレータにとって扉21a,21bを識別しやすくなる。
燃料タンク11内を大気開放するブリーザホース331,332が、キャビンフレーム300に沿って後方上側まで配管されている。具体的には、左右の燃料タンク11上面を連結するブリーザホース331が、後中間梁部材309に沿って左右に延設されている。ブリーザホース331は、後支柱302と後中間梁部材309との連結部下側で、一方の燃料タンク11(実施形態では、右燃料タンク11)上面に連結したブリーザホース332と接続し、左右の燃料タンク11内の空気をブリーザホース331,332で合流させている。ブリーザホース332は、ブリーザホース331との連結位置から後支柱302に沿って上側に延設されている。ブリーザホース331の上端は、屋根体306内に埋設することにより、ブリーザホース331に雨水がかからないようにして、燃料タンク11内への雨水の浸入を防止する。
左右燃料タンク11の内の一方が搭載されたタンクフレーム18に、燃料タンク11内の燃料をディーゼルエンジン5に供給する油水分離機215と補助燃料ポンプ216を配置している。本実施形態では、エンジン5右側方に燃料フィルタ217が配置されるとともに、油水分離機215及び補助燃料ポンプ216が右タンクフレーム18に固定される。即ち、左タンクフレーム18にはバッテリ817も設置されることから、油水分離機215及び補助燃料ポンプ216を設置空間の広い右タンクフレーム18に有効に配置できるだけでなく、燃料フィルタ217と同一側方に油水分離機215及び補助燃料ポンプ216を配置させ、燃料供給路の配管作業の効率化も図れる。油水分離機215が、タンクフレーム18の後側支持用柱フレーム290に吊り下げ支持される一方、補助燃料ポンプ216が、タンク搭載用プレート289上面であって燃料タンク11前側に載置固定されている。
図1〜図10に示すように、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、直進用ミッションケース17の上面蓋体にリフト支点軸を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
次に、図11及び図12等を参照しながら、キャビン7内部の構造を説明する。キャビン7内における操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、キャビン7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。
ステアリングコラム32の右側には、走行機体2を制動操作するためのブレーキペダル35を配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用のクラッチ(図示省略)を遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。ステアリングコラム32の背面側には、ブレーキペダル35を踏み込み位置に保持するための駐車ブレーキレバー43が配置されている。ステアリングコラム32の右側には、油圧式昇降機構22の昇降動作を操作するための作業機昇降レバー963が設けられている。
ステアリングコラム32の左側で前後進切換レバー36の下方には、前後進切換レバー36に沿って延びる誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。接触防止具である誤操作防止体38を前後進切換レバー36下方に配置することによって、トラクタ1に乗降する際に、オペレータが前後進切換レバー36に不用意に接触するのを防止している。ダッシュボード33の背面上部側には、液晶パネルを内蔵した操作表示盤39を設けている。
キャビン7内にある操縦座席8前方の床板40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度または車速などを制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、直進用ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構の出力範囲を切換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。
操縦座席8と右サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、操縦座席8とは別体に構成すると共に、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機といった対地作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。また、本実施形態においては、主変速レバー50を前傾操作したとき、走行機体2の車速が増加する一方、主変速レバー50を後傾操作したとき、走行機体2の車速が低下する。主変速レバー50は、前面に上下への傾動により油圧式昇降機構22の上下動を指定する作業機昇降スイッチ964を備えるとともに、操縦座席89側となる側面に油圧式昇降機構22の上下動を微調整する昇降調節スイッチ965を備える。
右サイドコラム42には、前側から順に、タッチパネル機能を有してトラクタ1各部への指令操作が可能な操作用モニタ55と、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、直進用ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ430を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)と、リヤハウジング74前面に配置する複動バルブ機構431を切換操作するための単複動切換スイッチ56を配置している。ここで、油圧外部取出バルブ430は、トラクタ1に後付けされるフロントローダといった別の作業機の油圧機器に作動油を供給制御するためのものである。複動バルブ機構431は、直進用ミッションケース17の上面側に配置する昇降バルブ機構652とともに動作することでリフトシリンダ117を複動式で作動させるためのものである。
次に、主として図12を参照しながら、ブレーキペダル35とブレーキ機構751との関係について説明する。ステアリングコラム32前方において、ブレーキペダル軸755を軸支するブレーキペダル支持ブラケット916がボード支持板(エアカットプレート)901背面(操縦座席8側)に固定されている。ブレーキペダル軸755にはブレーキペダル35の基端ボス部35aを被嵌しており、ブレーキペダル35の基端ボス部35aをブレーキペダル軸755と一体回動するように連結している。ブレーキペダル軸755の両端部には、前向きに突出するペダル軸アーム756を固着しており、ペダル軸アーム756はブレーキペダル軸755と共に回動する。
ボード支持板(エアカットプレート)901の左右下部側には、左右一対で横向きのブレーキ操作軸757を支持させている。左のブレーキ操作軸757には、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結するリンクボス体758を回動可能に被嵌している。リンクボス体758外周面に突設させたリンクアーム759に、左側ペダル軸アーム756と連結した上下長手のリンクロッド762の下端と、ブレーキ機構751の制動動作を段階的なものとする二段階伸縮リンク体763の上端とが連結されている。二段階伸縮リンク体763の下端が、ブレーキロッド766後端のリンクアーム767の先端と連結している。ブレーキロッド766は、エンジンフレーム14に固定されたリンク支持ブラケット764,765に支持されるとともに前後方向に延設されている。そして、ブレーキロッド766前端のリンクアーム768が、連結プレート753を介して、旋回用ミッションケース13内のブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。
すなわち、ブレーキペダル軸755左端は、リンクロッド762、二段階伸縮リンク体763、及びブレーキロッド766を介して、ブレーキ機構751の制動アーム752と連結している。従って、ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキペダル軸755が回動することで、制動アーム752を回動させることができ、ブレーキ機構751による制動動作を実行できる。このとき、二段階伸縮リンク体763が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
右のブレーキ操作軸757には、リンクアーム761を有するリンクボス体760を回動可能に被嵌している。右側ペダル軸アーム756に、ブレーキペダル35への踏み込みを段階的なものとする二段階伸縮リンク体769の上端が連結され、リンクボス体760外周面に突設させたリンクアーム761に、二段階伸縮リンク体769の下端が連結されている。ブレーキペダル35の踏み込みに従って、ブレーキ操作軸757を回動させたとき、二段階伸縮リンク体769が作用することで、走行速度を調整する踏み込み量が少ない時(ブレーキ機構751の遊び領域)に比べて、急ブレーキをかける踏み込み量が多い時(ブレーキ機構751による制動領域)には、ブレーキペダル35への踏力が大きくなる。
次に、主として図12〜図14を参照しながら、直進用ミッションケース17及び旋回用ミッションケース13の内部構造とトラクタ1の動力伝達系統について説明する。直進用ミッションケース17の前室内には、直進用の油圧機械式無段変速機500と、後述する前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503とを配置している。直進用ミッションケース17の中間室内には、油圧機械式無段変速機500からの回転動力を正転又は逆転方向に切り換える前後進切換機構501を配置している。直進用ミッションケース17の後室内には、エンジン5からの回転動力を適宜変速してPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。クリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503は、前後進切換機構501経由の変速出力を多段変速する走行変速ギヤ機構に相当するものである。直進用ミッションケース17の右外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取り付けている。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸5aにはフライホイル26を直結している。フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27に、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、直進用ミッションケース17前面側から前向きに突出した入力カウンタ軸28を連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由して直進用ミッションケース17の入力カウンタ軸28に伝達され、油圧機械式無段変速機500とクリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503とによって適宜変速される。クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した変速動力は、前方出力軸30、動力伝達軸31及び直進用入力カウンタ軸508を介して、旋回用ミッションケース13内のギヤ機構に伝達される。
直進用の油圧機械式無段変速機(HMT)500は、主変速入力軸511に主変速出力軸512を同心状に配置し且つ油圧ポンプ部521とシリンダブロックと油圧モータ部522とを直列状に配置した直列型(インライン型)のものである。入力カウンタ軸28の後端側には主変速入力ギヤ513を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の後端側には、主変速入力ギヤ513に常時噛み合う入力伝達ギヤ514を固着している。従って、入力カウンタ軸28の回転動力は、主変速入力ギヤ513、入力伝達ギヤ514及び主変速入力軸511を介して油圧機械式無段変速機500に伝達される。主変速出力軸512には、走行出力用として、主変速高速ギヤ516、主変速逆転ギヤ517及び主変速低速ギヤ515を相対回転不能に被嵌している。主変速入力軸511の入力側と主変速出力軸512の出力側とは、同一側(油圧機械式無段変速機500から見ていずれも後方側)に位置している。
油圧機械式無段変速機500は、可変容量形の油圧ポンプ部521と、当該油圧ポンプ部521から吐出する高圧の作動油によって作動する定容量形の油圧モータ部522とを備えている。油圧ポンプ部521には、主変速入力軸511の軸線に対して傾斜角を変更可能して作動油供給量を調節するポンプ斜板523を設けている。ポンプ斜板523には、主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角を変更調節する主変速油圧シリンダ524を連動連結している。実施形態では、油圧機械式無段変速機500に主変速油圧シリンダ524を組み付けていて、一つの部材としてユニット化している。
主変速レバー50の操作量に比例して主変速油圧シリンダ524を駆動させると、これに伴い主変速入力軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角が変更される。実施形態のポンプ斜板523は、傾斜略ゼロ(ゼロを含むその前後)の中立角度を挟んで一方(正)の最大傾斜角度と他方(負)の最大傾斜角度との間の範囲で角度調節可能であり、且つ、走行機体2の車速が最低のときにいずれか一方に傾斜した角度(この場合は負で且つ最大付近の傾斜角度)に設定している。
ポンプ斜板523の傾斜角が略ゼロ(中立角度)のときは、油圧ポンプ部521では入力側プランジャ群が押し引きされない。シリンダブロックが主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するものの、油圧ポンプ部521からの作動油供給がないため、シリンダブロックの出力側プランジャ群ひいては油圧モータ部522が駆動せず、主変速入力軸511と略同一回転速度にて主変速出力軸512が回転する。
主変速入力軸511の軸線に対してポンプ斜板523を一方向(正の傾斜角又は正転傾斜角といってもよい)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が入力側プランジャ群を押し引きして油圧モータ部522に作動油を供給し、シリンダブロックの出力側プランジャ群を介して油圧モータ部522を主変速入力軸511と同一方向に回転させる。このとき、シリンダブロックは主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するため、主変速入力軸511より速い回転速度で主変速出力軸512が回転する。すなわち、主変速入力軸511の回転速度(シリンダブロックの回転速度といってもよい)に油圧モータ部522の回転速度が加算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、主変速入力軸511の回転速度より高い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(正の傾斜角又は正転傾斜角といってもよい)に比例して、主変速出力軸512の変速動力が変更される。ポンプ斜板523が正で且つ最大付近の傾斜角度のときに、主変速出力軸512は高速回転するものの、走行機体2は、最低速(略ゼロ)から最高速までのちょうど中間に当たる中間速になる。
主変速入力軸511の軸線に対してポンプ斜板523を他方向(負の傾斜角又は逆転傾斜角といってもよい)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が入力側プランジャ群を押し引きして油圧モータ部522に作動油を供給し、シリンダブロックの出力側プランジャ群を介して油圧モータ部522を主変速入力軸511と逆方向に回転させる。このとき、シリンダブロックは主変速入力軸511と同一方向且つ略同一回転速度で回転するため、主変速入力軸511より低い回転速度で主変速出力軸512が回転する。すなわち、主変速入力軸511の回転速度(シリンダブロックの回転速度といってもよい)から油圧モータ部522の回転速度が減算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、主変速入力軸511の回転速度より低い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(負の傾斜角又は逆転傾斜角といってもよい)に比例して、主変速出力軸512の変速動力が変更される。ポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度のときに、主変速出力軸512は最低速(略ゼロ)になる。
なお、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482の両者を駆動させるポンプ駆動軸483には、ポンプ駆動ギヤ484を相対回転不能に被嵌している。ポンプ駆動ギヤ484は、平ギヤ機構485を介して、入力カウンタ軸28の主変速入力ギヤ513を動力伝達可能に連結している。また、直進用ミッションケース17は、油圧機械式無段変速機500や前後進切換機構501等に潤滑用の作動油を供給する潤滑油ポンプ518を備えている。潤滑油ポンプ518のポンプ軸519に固着したポンプギヤ520は主変速入力軸511の入力伝達ギヤ514に常時噛み合っている。従って、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482と潤滑油ポンプ518とは、エンジン5の回転動力によって駆動する。
次に、前後進切換機構501を介して実行する前進と後進との切換構造について説明する。入力カウンタ軸28の後部側に、前進高速ギヤ機構である遊星ギヤ機構526と、前進低速ギヤ機構である低速ギヤ対525とを配置している。遊星ギヤ機構526は、入力カウンタ軸28に回転可能に軸支した入力側伝動ギヤ529と一体的に回転するサンギヤ531、複数の遊星ギヤ533を同一半径上に回転可能に軸支したキャリア532、並びに内周面に内歯を有するリングギヤ534を備えている。サンギヤ531及びリングギヤ534は入力カウンタ軸28に回転可能に被嵌している。キャリア532は入力カウンタ軸28に相対回転不能に被嵌している。サンギヤ531はキャリア532の各遊星ギヤ533と半径内側から噛み合っている。また、リングギヤ534の内歯は各遊星ギヤ533と半径外側から噛み合っている。入力カウンタ軸28には、リングギヤ534と一体回転する出力側伝動ギヤ530も回転可能に軸支している。低速ギヤ対525を構成する入力側低速ギヤ527と出力側低速ギヤ528とは一体構造になっていて、入力カウンタ軸28のうち遊星ギヤ機構526と主変速入力ギヤ513との間に回転可能に軸支している。
直進用ミッションケース17には、入力カウンタ軸28、主変速入力軸511及び主変速出力軸512と平行状に延びる走行中継軸535並びに走行伝動軸536を配置している。伝達軸としての走行中継軸535に前後進切換機構501を設けている。すなわち、走行中継軸535には、湿式多板型の前進高速油圧クラッチ539で連結される前進高速ギヤ540と、湿式多板型の後進油圧クラッチ541で連結される後進ギヤ542と、湿式多板型の前進低速油圧クラッチ537で連結される前進低速ギヤ538とを被嵌している。走行中継軸535のうち前進高速油圧クラッチ539と後進ギヤ542との間には、走行中継ギヤ543を相対回転不能に被嵌している。走行伝動軸536には、走行中継ギヤ543と常時噛み合う走行伝動ギヤ544を相対回転不能に被嵌している。主変速出力軸512の主変速低速ギヤ515が入力カウンタ軸28側にある低速ギヤ対525の入力側低速ギヤ527と常時噛み合い、出力側低速ギヤ528が前進低速ギヤ538と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速高速ギヤ516が入力カウンタ軸28側にある遊星ギヤ機構526の入力側伝動ギヤ529と常時噛み合い、出力側伝動ギヤ530が前進高速ギヤ540と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速逆転ギヤ517が後進ギヤ542と常時噛み合っている。
前後進切換レバー36を前進側に操作すると、前進低速油圧クラッチ537又は前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進低速又は前進高速の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。前後進切換レバー36を後進側に操作すると、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
なお、前後進切換レバー36の前進側操作によって、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のどちらが動力接続状態になるかは、主変速レバー50の操作量に応じて決定される。また、前後進切換レバー36が中立位置のときは、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略ゼロ(主クラッチ切りの状態)になる。一方、前後進切換レバー36の操作状態に拘らず主変速レバー50を中立操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)となり、主変速出力軸512や走行中継軸535は最低速回転状態(略ゼロ)になる。ひいてはトラクタ1の車速が略ゼロになる。
前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から中間速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、前進低速油圧クラッチ537が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525を介して走行中継軸535に、前進低速の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から前進中間速回転状態まで変化する。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
前後進切換レバー36を前進側に操作した状態で主変速レバー50を中間速から最高速程度まで増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によって正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)からゼロを介して負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)まで変化し、ポンプ斜板523が油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を高速から略ゼロまで減速させる。このとき、前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から遊星ギヤ機構526を介して走行中継軸535に、前進高速の回転動力が伝達される。すなわち、遊星ギヤ機構526においてエンジン5からの動力と主変速出力軸512への減速動力とが合成されてから、当該合成動力によって走行中継軸535が前進中間速回転状態から前進最高速回転状態まで変化する。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。走行機体2は最高速となる。
前後進切換レバー36を後進側に操作した状態で主変速レバー50を中立から増速側に操作した場合は、主変速油圧シリンダ524の駆動によってポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度(逆転傾斜角)からゼロを介して正で且つ最大付近の傾斜角度(正転傾斜角)まで変化し、油圧モータ部522から主変速出力軸512への変速動力を略ゼロから高速まで増速させる。このとき、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から主変速逆転ギヤ517及び後進ギヤ542を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、主変速出力軸512への増速動力によって走行中継軸535が最低速回転状態から後進高速回転状態まで変化する。そして、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
次に、走行変速ギヤ機構であるクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を介して実行する超低速と低速と高速との切換構造について説明する。直進用ミッションケース17内には、前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503と、走行伝動軸536と同軸状に延びる走行カウンタ軸545と、走行カウンタ軸545と平行状に延びる副変速軸546とを配置している。
走行カウンタ軸545の後部側には伝達ギヤ547とクリープギヤ548とを設けている。伝達ギヤ547は、走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌すると共に、走行伝動軸536に一体回転するように連結している。クリープギヤ548は走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌している。走行カウンタ軸545のうち伝達ギヤ547とクリープギヤ548との間には、クリープシフタ549を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。超低速レバー44を入り切り操作することによって、クリープシフタ549がスライド移動して、伝達ギヤ547及びクリープギヤ548が走行カウンタ軸545に択一的に連結される。副変速軸546のうち前室内の箇所には、減速ギヤ対550を回転可能に被嵌している。減速ギヤ対550を構成する入力側減速ギヤ551と出力側減速ギヤ552とは一体構造になっていて、走行カウンタ軸545の伝達ギヤ547が副変速軸546の入力側減速ギヤ551に常時噛み合い、クリープギヤ548が出力側減速ギヤ552に常時噛み合っている。
走行カウンタ軸545の前部側には低速中継ギヤ553と高速中継ギヤ554とを設けている。低速中継ギヤ553は走行カウンタ軸545に固着している。高速中継ギヤ554は走行カウンタ軸545に相対回転不能に被嵌している。副変速軸546のうち減速ギヤ対550よりも前部側には、低速中継ギヤ553に噛み合う低速ギヤ555と、高速中継ギヤ554に噛み合う高速ギヤ556とを回転可能に被嵌している。副変速軸546のうち低速ギヤ555と高速ギヤ556との間には、副変速シフタ557を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。副変速レバー45を操作することによって、副変速シフタ557がスライド移動して、低速ギヤ555及び高速ギヤ556が副変速軸546に択一的に連結される。
更に、走行カウンタ軸545や副変速軸546と平行状に延びる直進用中継軸568及び直進用出力軸30を配置している。副変速軸546の前端側に相対回転不能に被嵌した主動ギヤ569に、直進用中継軸568に相対回転不能に被嵌した従動ギヤ570を常時噛み合わせている。直進用中継軸568の後端側に相対回転不能に被嵌した直進用中継ギヤ582に、直進用出力軸30に相対回転不能に被嵌した直進用出力ギヤ583を常時噛み合わせている。副変速軸546の主動ギヤ569と、直進用中継軸568の従動ギヤ570及び直進用中継ギヤ582と、直進用出力軸30の直進用出力ギヤ583とが、副変速軸456の回転を直進用出力軸30に動力伝達させる直進用出力ギヤ機構509を構成している。
実施形態では、超低速レバー44を入り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、クリープギヤ548が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568を経て、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。
超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568などを経て、直進用出力軸30より超低速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。
超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を高速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、高速ギヤ556が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545、副変速軸546及び直進用中継軸568などを経て、直進用出力軸30より高速の走行駆動力が旋回用ミッションケース13に向けて出力される。
旋回用ミッションケース13から後ろ向きに突出する直進用入力カウンタ軸508と、直進用ミッションケース17の前面下部から前向きに突出する直進用出力軸30とを、動力伝達軸31によって連結している。旋回用ミッションケース13は、エンジン5からの回転動力を適宜変速する旋回用の油圧式無段変速機(HST)701と、油圧式無段変速機701からの出力回転を左右の走行クローラ3(スプロケット62)に伝達する差動ギヤ機構702と、差動ギヤ機構702からの回転動力と直進用ミッションケース17からの回転動力とを合成する左右一対の遊星ギヤ機構703とを備える。
油圧式無段変速機701は、1対の油圧ポンプ部704及び油圧モータ部705を並列に配置しており、ポンプ軸706に伝達された動力にて、油圧ポンプ部704から油圧モータ部705に向けて作動油が適宜送り込まれる。なお、ポンプ軸706には、油圧ポンプ704及び油圧モータ705に作動油を供給するためのチャージポンプ707が取付けられている。旋回用油圧式無段変速機構701は、油圧ポンプ部704におけるポンプ斜板708の傾斜角度を変更調節して、油圧モータ部705への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、油圧モータ705から突出したモータ軸709の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
旋回用ミッションケース13は、旋回用入力カウンタ軸712を油圧ポンプ部704のポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力カウンタ軸712に旋回用入力ギヤ713を相対回転不能に被嵌している。旋回用入力カウンタ軸712とポンプ軸706の間には、旋回用中継軸714を旋回用入力カウンタ軸712及びポンプ軸706と平行に配置しており、旋回用入力ギヤ713と常時噛合させた旋回用中継ギヤ715を旋回用中継軸714に対して相対回転不能に被嵌している。ポンプ軸706には、旋回用中継ギヤ715と常時噛合させたポンプ入力ギヤ710を相対回転不能に被嵌しており、旋回用入力カウンタ軸712に伝達されたエンジン5からの回転動力が、旋回用中継軸714を介してポンプ軸706に伝達される。
旋回用ミッションケース13内において、モータ軸709後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ716の両側に左右一対のサイドギヤ717を噛合させたベベルギヤ機構にて、差動ギヤ機構702を構成している。また、差動ギヤ機構702は、一端にサイドギヤ717を相対回転不能に被嵌させた左右一対の旋回用出力軸718を左右側方に向けて延設している。左右一対の旋回用出力軸718それぞれの他端に、左右一対の遊星ギヤ機構703に動力伝達させる旋回出力ギヤ719を、相対回転不能に被嵌させている。
モータ軸709から出力される油圧モータ部705からの回転動力(旋回回転動力)は、差動ギヤ機構702により、正逆回転動力に分岐して左右一対の旋回用出力軸718を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。すなわち、差動ギヤ機構702において、左サイドギヤ717を被嵌させた左旋回用出力軸718を介して逆転回転動力として、左遊星ギヤ機構703に伝達される一方、右サイドギヤ717を被嵌させた右旋回用出力軸718を介して正転回転動力として、右遊星ギヤ機構703に伝達される。
旋回用ミッションケース13内において、直進用ミッションケース17からの回転動力が伝達される直進用入力カウンタ軸508上に、ブレーキペダル35の動作にあわせて連動するブレーキ機構751を設けている。そして、直進用入力カウンタ軸508前端に、直進用入力ギヤ720を相対回転不能に被嵌させている。また、直進用中継軸721を直進用入力カウンタ軸508と平行に配置しており、直進用入力ギヤ720と常時噛合させた直進用中継ギヤ722を直進用中継軸721に対して相対回転不能に被嵌している。
直進用中継軸721後端に相対回転不能に被嵌させたピニオンギヤ723にリングギヤ724を噛合させたベベルギヤ機構を設けており、左右に延設させた直進用出力軸725にリングギヤ724を相対回転不能に被嵌させている。直進用出力軸725の両端がそれぞれ、左右一対の遊星ギヤ機構703それぞれと連結している。直進用入力カウンタ軸508に入力される直進用ミッションケース17からの回転動力(直進回転動力)は、直進用出力軸725を介して、左右一対の遊星ギヤ機構703に伝達される。また、ブレーキペダル35の操作に応じてブレーキ機構751が制動作動することで、直進用出力軸725の回転動力を減衰又は停止させる。
左右各遊星ギヤ機構703は、1つのサンギヤ726と、サンギヤ726に噛合する複数の遊星ギヤ727と、旋回出力ギヤ719に噛合させたリングギヤ728と、複数の遊星ギヤ727を同一円周上に回転可能に配置するキャリア729とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構703のキャリア729は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右の各サンギヤ726は、中途部にリングギヤ724を被嵌させた直進用出力軸725の両端に固着している。
左右の各リングギヤ728は、直進用出力軸725に回転可能に被嵌しているとともに、その外周面の外歯を左右の各旋回出力ギヤ719に噛合させて、旋回用出力軸718と連結している。リングギヤ728に固定されたキャリア729は、遊星ギヤ727を回転可能に軸支している。左右の各キャリア729が、左右の各差動出力軸730に回転可能に被嵌している。また、左右の各遊星ギヤ727と一体回転する左右の各出力側伝動ギヤ731は、左右の各差動出力軸730に対して回転不能に被嵌している左右の差動入力ギヤ732に噛合している。左右の差動出力軸730が、中継ギヤ733,734を介して左右の中継軸735と連結しており、左右の中継軸735が、ファイナルギヤ736,737を介して左右の車軸16に連結している。
左右の各遊星ギヤ機構703は、直進用中継軸721及び直進用出力軸725を介して、直進用ミッションケース17からの回転動力を受けて、サンギヤ726を同方向の同一回転数にて回転させる。即ち、左右のサンギヤ726は、直進用ミッションケース17からの回転動力を直進回転として受け、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、差動出力軸730に伝達する。従って、直進用ミッションケース17から左右の遊星ギヤ機構703に伝達された回転動力は、左右の車軸16から各駆動スプロケット62に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ3を同方向の同一回転数にて駆動して、走行機体1を直進(前進、後退)移動させる。
一方、左右の各遊星ギヤ機構703は、差動ギヤ機構702及び旋回用出力軸718を介して、油圧モータ部705からの回転動力を受けて、リングギヤ728を同一回転数にて互いに逆方向で回転させる。即ち、左右のリングギヤ728は、油圧モータ部705からの回転動力を旋回回転として受け、キャリア729によりサンギヤ726からの直進回転に旋回回転を重畳させ、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を回転させる。これにより、左右の差動出力軸730の一方には、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を加算させた回転動力が伝達され、左右の差動出力軸730の他方には、遊星ギヤ727及び出力側伝導ギヤ731を介して、直進回転に旋回回転を減算させた回転動力が伝達される。
直進用入力カウンタ軸508及びモータ軸709からの変速出力は、左右の各遊星ギヤ機構703を経由して、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62にそれぞれ伝達され、走行機体2の車速(走行速度)及び進行方向が決定される。すなわち、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を停止させて左右リングギヤ728を静止固定させた状態で、直進用ミッションケース17からの回転動力が直進用入力カウンタ軸508に入力されると、直進用入力カウンタ軸508の回転が左右サンギヤ71に左右同一回転数で伝達され、左右の走行クローラ3が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体2が直進走行する。
逆に、直進用ミッションケース17の直進用出力軸30による回転が停止して左右サンギヤ71が静止固定した状態で、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705を駆動させると、モータ軸709からの回転動力にて、左のリングギヤ728が正回転(逆回転)し、右のリングギヤ728は逆回転(正回転)する。その結果、左右の走行クローラ3の駆動スプロケット62のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体2はその場で方向転換(信地旋回スピンターン)される。
また、直進用ミッションケース17からの直進回転によって左右サンギヤ726を駆動しながら、油圧式無段変速機701の油圧モータ部705の旋回回転によって左右リングギヤ728を駆動することによって、左右の走行クローラ3の速度に差が生じ、走行機体2は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ3の速度差に応じて決定される。
次に、PTO変速機構505を介して実行するPTO軸25の駆動速度の切換構造(正転三段及び逆転一段)について説明する。直進用ミッションケース17には、エンジン5からの動力をPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。この場合、主変速入力軸511の後端側に、動力伝達継断用のPTO油圧クラッチ590を介して、主変速入力軸511と同軸状に延びるPTO入力軸591を連結している。また、直進用ミッションケース17には、PTO入力軸591と平行状に延びるPTO変速軸592、PTOカウンタ軸593及びPTO軸25を配置している。PTO軸25は直進用ミッションケース17後面から後方に突出している。
PTOクラッチスイッチ53を動力接続操作すると、PTO油圧クラッチ590が動力接続状態となって、主変速入力軸511とPTO入力軸591とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速入力軸511からPTO入力軸591に向かって回転動力が伝達される。
PTO入力軸591には、前側から順に、中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595、高速入力ギヤ596及び逆転シフタギヤ598を設けている。中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595及び高速入力ギヤ596は、PTO入力軸591に相対回転不能に被嵌している。逆転シフタギヤ598は、PTO入力軸591に相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。
一方、PTO変速軸592には、中速入力ギヤ597に噛み合うPTO中速ギヤ601、低速入力ギヤ595に噛み合うPTO低速ギヤ599、及び高速入力ギヤ596に噛み合うPTO高速ギヤ600を回転可能に被嵌している。PTO変速軸592には、前後一対のPTO変速シフタ602,603を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。第一PTO変速シフタ602はPTO中速ギヤ601とPTO低速ギヤ599との間に配置している。第二PTO変速シフタ603はPTO高速ギヤ600よりも後端側に配置している。前後一対のPTO変速シフタ602,603は、PTO変速レバー46の操作に伴い連動して軸線方向にスライド移動するように構成している。PTO変速軸592のうちPTO低速ギヤ599とPTO高速ギヤ600との間にPTO伝動ギヤ604を固着している。
PTOカウンタ軸593には、PTO伝動ギヤ604に噛み合うPTOカウンタギヤ605と、PTO軸25に相対回転不能に被嵌したPTO出力ギヤ608に噛み合うPTO中継ギヤ606と、PTO逆転ギヤ607とを相対回転不能に被嵌している。PTO変速レバー46を中立操作した状態で副PTOレバー48を入り操作することによって、逆転シフタギヤ598がスライド移動して、逆転シフタギヤ598とPTOカウンタ軸593のPTO逆転ギヤ607とが噛み合うように構成している。
PTO変速レバー46を変速操作すると、前後一対のPTO変速シフタ602,603がPTO変速軸592に沿ってスライド移動し、PTO低速ギヤ595、PTO中速ギヤ597、及びPTO高速ギヤ596がPTO変速軸592に択一的に連結される。その結果、低速〜高速の各PTO変速出力が、PTO変速軸592からPTO伝動ギヤ604及びPTOカウンタギヤ605を介してPTOカウンタ軸593に伝達され、更に、PTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
副PTOレバー48を入り操作すると、逆転シフタギヤ598がPTO逆転ギヤ607と噛み合い、PTO入力軸591の回転動力が、逆転シフタギヤ598及びPTO逆転ギヤ607を介してPTOカウンタ軸593に伝達される。そして、逆転のPTO変速出力が、PTOカウンタ軸593からPTO中継ギヤ606及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
次に、図14を参照しながら、トラクタ1の油圧回路620構造について説明する。トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を備えている。実施形態では、直進用ミッションケース17が作動油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油(潤滑油)が、二連のオイルフィルタ(サクションフィルタ)656を介して、作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482に供給される。走行用油圧ポンプ482は、オイルフィルタ(ラインフィルタ)487を介して、直進用の油圧機械式無段変速機500における油圧ポンプ521と油圧モータ522とをつなぐ閉ループ油路623に接続している。エンジン5の駆動中は、走行用油圧ポンプ482からの作動油が閉ループ油路623に常に補充される。
また、走行用油圧ポンプ482は、オイルフィルタ(ラインフィルタ)487を介して、油圧機械式無段変速機500の主変速油圧シリンダ524に対する主変速油圧切換弁624と、PTO油圧クラッチ590に対するPTOクラッチ電磁弁627及びこれによって作動する切換弁628とに接続している。更に、走行用油圧ポンプ482は、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632と、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633と、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634と、前記各クラッチ電磁弁632〜634への作動油供給を制御するマスター制御電磁弁635とに接続している。
また、作業機用油圧ポンプ481が、直進用ミッションケース17の上面後部側にある油圧式昇降機構22の上面に積層配置した複数の油圧外部取出バルブ430と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する複動制御電磁弁432と右リフトロッド121に設けた水平シリンダ122への作動油供給を制御する傾斜制御電磁弁647と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117下側への作動油供給を制御する上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と、上昇油圧切換弁648を切換作動させる上昇制御電磁弁650と、下降油圧切換弁649を作動させる下降制御電磁弁651とに接続している。なお、複動バルブ機構431が、複動制御電磁弁432を含む油圧回路で構成されており、昇降バルブ機構652が、上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と上昇制御電磁弁650及び下降制御電磁弁651による油圧回路で構成される。
傾斜制御電磁弁647を切換駆動させると、水平シリンダ122が伸縮動して、前部側にあるロワーリンクピンを支点にして右側のロワーリンク23が上下動する。その結果、左右両ロワーリンク23を介して対地作業機が走行機体2に対して左右に傾動して、対地作業機の左右傾斜角度が変化する。複動制御電磁弁432を切換制御することにより、油圧リフトシリンダ117の駆動方式として、単動式又は複動式のいずれかを選択できる。すなわち、単複動切換スイッチ56の切換動作に従って、複動制御電磁弁432を切り換えることで、油圧リフトシリンダ117の駆動方式が設定される。
油圧リフトシリンダ117を単動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると、油圧リフトシリンダ117が伸縮動し、リフトアーム120及び左右両ロワーリンク23が共に上下動する。その結果、対地作業機が昇降動し、対地作業機の昇降高さ位置が変化する。一方、油圧リフトシリンダ117を複動式で駆動させる場合、上昇油圧切換弁648又は下降油圧切換弁649を切換作動させると同時に複動制御電磁弁432を切換駆動させて、油圧リフトシリンダ117を伸縮動させる。これにより、対地作業機が昇降動させることができるとともに、対地作業機を下降させたときに地面に向かって加圧し、対地作業機を下降位置に保持できる。
図25に示すように、単動方式が指定されている場合、又は、油圧リフトシリンダ117による降下動作がなされていない場合、複動制御電磁弁432が右側に変位しており、分流弁436からの作動油が油圧外部取出バルブ430に供給される。このとき、油圧リフトシリンダ117の上側ポートが、複動制御電磁弁432を介して直進用ミッションケース17による作動油タンクと接続する。
また、図25に示すように、単複動切換スイッチ56(図11参照)により複動方式が指定された上で、作業機昇降レバー963(図11参照)又は作業機昇降スイッチ964(図11参照)により油圧式昇降機構22の降下(下げ動作)が指定されると、複動制御電磁弁432が左側に変位し、分流弁436からの作動油が油圧リフトシリンダ117の上側ポートに供給される。なお、複動方式の指定時において、昇降調節スイッチ965(図11参照)により油圧式昇降機構22の降下が調整されたとき、複動制御電磁弁432は右側に変位したままとなり、油圧リフトシリンダ117の上側ポートが、複動制御電磁弁432を介して直進用ミッションケース17による作動油タンクと接続した状態となっている。
また、図14に示すように、トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動するチャージポンプ707を備え、チャージポンプ707が、旋回用の油圧式無段変速機701における油圧ポンプ704と油圧モータ705とをつなぐ閉ループ油路740に接続している。実施形態では、直進用ミッションケース17が作動油タンクとして利用されていて、直進用ミッションケース17内の作動油が、オイルフィルタ(サクションフィルタ)743を介してチャージポンプ707に供給される。そして、エンジン5の駆動中は、チャージポンプ707からの作動油が、オイルフィルタ(ラインフィルタ)744を介して閉ループ油路740に常に補充される。トラクタ1の油圧回路620は、油圧式無段変速機701における油圧ポンプ702のポンプ斜板708角度を変更させる旋回油圧シリンダ741と、旋回油圧シリンダ741に対する旋回油圧切換弁742とを備える。
トラクタ1の油圧回路620は、前述の作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482以外に、エンジン5の回転動力で駆動する潤滑油ポンプ518も備えている。潤滑油ポンプ518には、PTO油圧クラッチ590の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給するPTOクラッチ油圧切換弁641と、油圧機械式無段変速機500を軸支する主変速入力軸511の潤滑部と、前進低速油圧クラッチ537の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進低速クラッチ油圧切換弁642と、前進高速油圧クラッチ539の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進高速クラッチ油圧切換弁643と、後進油圧クラッチ541の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する後進クラッチ油圧切換弁644とに接続している。なお、油圧回路620には、図14に示す如く、上述の構成以外にも、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
図1〜図10、図12及び図15などに示す如く、旋回用ミッションケース13は、油圧式無段変速機701を内蔵する旋回用変速機ケース91と、油圧式無段変速機701におけるポンプ軸706及びモータ軸709と連結する継軸を内装する中継ケース92と、エンジン5及び直進用ミッションケース17からの回転動力が入力されるとともに車軸16に回転動力を出力するギヤ機構を備えた入出力ケース93とから構成される。旋回用変速機ケース91は、前面にチャージポンプ707が配置されており、その上面に旋回油圧切換弁742が配置されている。旋回用変速機ケース91の後方に、中継ケース92を介して入出力ケース93が連結されており、入出力ケース93の両側に車軸ケース90が連結されている。
図1〜図10、図12及び図15などに示す如く、オイルフィルタ743,744が、旋回用ミッションケース13前方に併設されている。オイルフィルタ743,744は、左右エンジンフレーム14前端を連結させるフレーム連結部材12aの左右上縁に架設されているフィルタ固定ブラケット459に吊り下げ固定されている。また、旋回用ミッションケース13上方には、左右のエンジンフレーム14に架設された仕切り板460が設けられている。
旋回用ミッションケース13に作動油を循環させる油圧配管450〜456が、直進用ミッションケース17から旋回用ミッションケース13に向かって延設されている。直進用ミッションケース17側の油圧配管450,456は、走行機体2(エンジンフレーム14及び機体フレーム15)外側で走行機体2に沿って配設される。一方、旋回用ミッションケース13側の油圧配管451,452,455は、走行機体2内側に配設され、走行機体2内側に設けたフィルタ743,744を介して旋回用ミッションケース13に接続されている。
旋回用ミッションケース13が、左右の走行部(クローラ)3に動力を出力するギヤ機構を内装する後部ケース(入出力ケース)93と、第二無段変速装置701を内装する前部ケース(旋回用変速機ケース)91とを連結させた構成と有している。走行機体2(エンジンフレーム14)に架設された仕切り板460が、旋回用ミッションケース13上方であって前部ケース91と後部ケース93の接続位置に設けられている。仕切り板460により油圧配管451,455の途中が固定されており、フィルタ743,744が前記旋回用ミッションケース13前方で走行機体2(エンジンフレーム14)に吊り下げ支持されている。旋回用変速機ケース91と入出力ケース93の間に、中継軸を内装した中継ケース92が設けられており、仕切り板460は、中継ケース92と入出力ケース93との境界位置より前側に設けられる。
走行機体2前方に装着される作業機(フロントドーザ)80を支持する支持ブラケット81が、走行機体2(エンジンフレーム14)の左右側面それぞれに固定されている。旋回用ミッションケース13の後部ケース(入出力ケース)93両側に接続された左右一対の車軸ケース90がそれぞれ、左右一対となる支持ブラケット81と連結されている。そして、油圧配管451,455は、前後方向で前記支持ブラケットと重なる位置において、走行機体2(エンジンフレーム14)内側に配設されている。また、走行クローラ3のトラックフレーム61前方を支持するロアフレーム67が、走行機体2(エンジンフレーム14)下側で吊り下げ支持されるとともに、支持ブラケット81と連結している。
直進用ミッションケース17内の作動油の一部を作業機(フロントドーザ)80に供給する油圧配管89aを備えており、油圧配管89aと油圧配管89bとを連結させる配管連結部材89と、油圧配管89bから作業機(フロントドーザ)80への作動油の入出を切換える作業機バルブ機構89cとが、左右の支持ブラケット81の一方(実施形態では、右支持ブラケット81)に固定されている。油圧配管89bは、走行機体2外側で走行機体2に沿って支持ブラケット81より後方に向かって配設されており、直進用ミッションケース17上方に配置された油圧外部取出機構430の油圧回路に連結される。
次に、図15〜図17を参照して、直進用ミッションケース17の構造及び各部品の取付け構造について説明する。直進用ミッションケース17は、主変速入力軸28等を有する前部変速ケース112と、リヤハウジング74と接続される後部変速ケース113と、前部変速ケース112の後側に後部変速ケース113の前側を連結させる中間ケース114を備えている。中間ケース114の左右側面に左右の上下機体連結軸体115,116を介して左右の機体フレーム15の後端部を連結する。即ち、2本の上機体連結軸体115と、2本の下機体連結軸体116にて、中間ケース114の左右両側面に左右の機体フレーム15の後端部を連結させ、機体フレーム15と直進用ミッションケース17を一体的に連設して、走行機体2の後部を構成すると共に、左右の機体フレーム15の間に前部変速ケース112または動力伝達軸29などを配置して、前部変速ケース112などを保護するように構成している。左右のリヤハウジング74が、後部変速ケース113の左右両側に外向きに突出するように取り付けている。実施形態では、中間ケース114及び後部変速ケース113を高剛性の鋳鉄製にする一方、前部変速ケース112を軽量かつ加工性良好なアルミダイキャスト製にしている。
上記の構成によると、直進用ミッションケース17を、前部変速ケース112、中間ケース114及び後部ケース113の三者に分割して構成しているから、各ケース112〜114に軸やギヤ等の部品を予め組み込んでから、前部変速ケース112、中間ケース114及び後部変速ケース113の三者を組み立てできる。従って、直進用ミッションケース17の組み立てを正確に且つ能率よく行える。
また、左右のリヤハウジング74を後部変速ケース113の左右両側に取付け、走行機体2を構成する左右の機体フレーム15に、前部変速ケース112と後部変速ケース113とをつなぐ高剛性構造の中間ケース114を連結しているから、例えば中間ケース114及び後部変速ケース113を機体フレーム15に取付けた状態で、前部変速ケース112だけを取外して、油圧無段変速機500などが内設された前部変速ケース112内部の軸やギヤの交換などのメンテナンスまたは修理作業を実行できる。従って、直進用ミッションケース17全体をトラクタ1から取外す分解作業の頻度を格段に低くでき、メンテナンス時や修理時の作業性の向上を図れる。
更に、中間ケース114及び後部変速ケース113を鋳鉄製にする一方、前部変速ケース112をアルミダイキャスト製にしているから、機体フレーム15に連結される中間ケース114と、左右のリヤハウジング74が連結される後部変速ケース113とを、走行機体2を構成する強度メンバーとして高剛性に構成できる。その上で強度メンバーではない前部変速ケース112を軽量化できる。従って、走行機体2の剛性を十分に確保しつつ、直進用ミッションケース17全体としての軽量化を図れる。
図15〜図17に示す如く、直進用ミッションケース17のうち後部変速ケース113の右外面前部にポンプケース480を配置している。ポンプケース480内に、作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容している。作業機用油圧ポンプ481と走行用油圧ポンプ482との吸入側が、後部変速ケース113の右外面前部のうちポンプケース480の下方にある二連のオイルフィルタ656にフィルタブラケット655を介して接続している。二連のオイルフィルタ656はフィルタブラケット655に着脱可能に装着している。フィルタブラケット655には、直進用ミッションケース17内部(後部変速ケース113内部)に延びる吸い込みノズル657を取り付けている。後部変速ケース113内の吸い込みノズル657は、フィルタブラケット655経由で二連のオイルフィルタ656に連通している。
作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482と二連のオイルフィルタ656とは、後部変速ケース113から左右外向きに突出したリヤハウジング74(実施形態では右リヤハウジング74)よりも前方で、且つ、走行機体2上にある操縦座席8の下方に位置している(図8参照)。このように、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482と二連のオイルフィルタ656とは、キャビン7で囲われた操縦座席8から離して配置されている。
後部変速ケース113の右外面前部のうち二連のオイルフィルタ656の上方に、平ギヤ機構485を収容したギヤケース486を左右外向きに突設している。ギヤケース486の前面側にポンプケース480を取り付けている。ポンプケース480内の作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482から突出したポンプ駆動軸483がギヤケース486内に延びている。ギヤケース486内において、ポンプ駆動軸483に固着したポンプ駆動ギヤ484が平ギヤ機構485に動力伝達可能に連結している(図14参照)。
図15〜図17に示す如く、直進用ミッションケース17のうちポンプケース480等の反対側に位置する左右他側部(後部変速ケース113の左外面側)には、複動バルブ機構431を備えている。複動バルブ機構431は、後部変速ケース113から左右外向きに突出したリヤハウジング74(実施形態では右リヤハウジング74)よりも前方で、且つ、走行機体2上にある操縦座席8の下方に位置している。即ち、ポンプケース480は、直進用ミッションケース17(後部変速ケース113)を挟んで左右に振り分けられた位置に設けられている。
複動バルブ機構431は、直進用ミッションケース17を挟んで、ポンプケース480と対向する位置に配置されており、ポンプケース480内の作業機用油圧ポンプ481と油圧配管で接続されている。そのため、複動バルブ431と作業機用油圧ポンプ481とを接続する油圧配管745を短尺に配管でき、配管作業のおける作業効率を向上できるだけでなく、油圧回路745における配管ロスを低減できる。
複動バルブ機構431は、直進用ミッションケース17の後方側部(後部変速ケース113の左外面側)に連結されたリヤハウジング74の前面に固定されたバルブ支持ブラケット433上に載置されている。即ち、バルブ支持ブラケット433が、直進用ミッションケース17の側方(左側方)に張り出したリヤハウジング74の前面にボルト締結されており、複動バルブ機構431が、バルブ支持ブラケット433上面にボルト締結されている。そのため、複動バルブ機構431をリヤハウジング74により高剛性に支持できる。
また、リヤハウジング74の前方、すなわち後方走行部3の左右内側という作業スペースを確保し易い箇所を有効利用して、油圧ポンプ481,482及び二連のオイルフィルタ656とともに複動バルブ機構431を配置していたものであり、直進用ミッションケース17のコンパクト化の一助になる。また、油圧ポンプ481と複動バルブ機構431とを直進用ミッションケース17を挟んで左右に振り分けた位置に配置したため、油圧ポンプ481と複動バルブ機構431とを繋ぐ油圧配管の短尺化を図れる。
図15〜図17に示す如く、直進用ミッションケース17の前面、すなわち前部変速ケース112の前面に着脱可能に締結した前蓋部材491には、油圧源である走行用油圧ポンプ482と各油圧クラッチ537,539,541とをつなぐ油圧回路620の一部を形成している。前蓋部材491の前面側には、各クラッチ電磁弁632,633,634及びマスター制御電磁弁635を配置している。
各クラッチ電磁弁632,633,634及びマスター制御電磁弁635を油路ブロック660に組み付けてユニット化している。そして、各クラッチ電磁弁632,633,634及びマスター制御電磁弁635付きの油路ブロック660を前蓋部材491の前面側に着脱可能に締結している。また、前蓋部材491前面には、油圧機械式無段変速機500への作動油供給路上に配置されるオイルフィルタ(ラインフィルタ)487が固定されている。
直進用ミッションケース17は、PTO変速機構505への動力伝達を継断するPTO油圧クラッチ590と、PTO油圧クラッチ590を作動させるPTOクラッチ電磁弁627及び切換弁628(PTOバルブ)を収容したPTOバルブケース663とを備えている。図15〜図17に示す如く、直進用ミッションンケース17の左外面、すなわち後部変速ケース113の左外面前部には、側面視でPTO油圧クラッチ590と重複する位置にPTOバルブケース663を配置している。前述の通り、後部変速ケース113の右外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取り付けている。従って、後部変速ケース113を挟んで左右に、ポンプケース480とPTOバルブケース663とが位置している。
後部ケース113のうちリヤハウジング74よりも前方で且つ油圧ポンプ481,482の反対側に位置する左右一側面に、PTOバルブ627,628を備えたPTOバルブケース663を位置させている。後部変速ケース113を挟んで左右に、前記油圧ポンプ481,482とPTOバルブ627,628とを振り分けて配置することになり、リヤハウジング74の前方という作業スペースを確保し易い箇所を有効利用して、前記油圧ポンプ481,482と前記PTOバルブ627,628とを効率よく配置できる。更には、PTOバルブケース663は、直進用ミッションケース17と複動バブル機構431の間となる空間に有効に配置されており、直進用ミッションケース17のコンパクト化の一助となっている。
図15〜図18などに示す如く、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、直進用ミッションケース17のうち後部変速ケース113上面側に設ける開閉可能な上面蓋体118にリフト支点軸119を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。
また、上面蓋体118の背面側にトップリンクヒンジ123を固着し、トップリンクヒンジ123にヒンジピンを介してトップリンク24を連結する。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
そして、図15〜図17などに示す如く、後部変速ケース113の上面に設置される上面蓋体118に昇降バルブ機構652(上昇油圧切換弁648と下降油圧切換弁649)及び傾斜制御電磁弁647を配置している。したがって、直進用ミッションケース17の後方に設ける昇降機構22に関する油圧機器部品を上面蓋体118にまとめて配置してユニット構成でき、直進用ミッションケース17上面側に配置させる昇降バルブ機構652(上昇油圧切換弁648と下降油圧切換弁649)及び傾斜制御電磁弁647の組立及びメンテナンス作業などを容易に簡略化でき、直進用ミッションケース17の組立容易性を向上できる。
昇降機構22は、図15〜図17などに示す如く、左右のリフトシリンダ117と左右のロワーリンク23を連結させる左右のリフトアーム120を備えている。そして、上面蓋体118の後部に昇降支点軸としてのリフト支点軸119を左右向きに貫通させて、リフト支点軸119の左右両端部に左右のリフトアーム120基端部を回動可能に軸支し、上面蓋体118に昇降支点軸としてのリフト支点軸119を介して左右のリフトアーム120を配置している。したがって、上面蓋体118の上面側に昇降機構22(昇降バルブ機構652、リフトアーム120)を配置でき、直進用ミッションケース17への昇降機構22の組立及びメンテナンス作業などを簡略化できる。また、上面蓋体118の前部に昇降バルブ機構652を支持し、上面蓋体118の後部にリフト支点軸119を介してリフトアーム120を支持することで、直進用ミッションケース17(後部変速ケース113)の上面側に昇降機構22をコンパクトに設置できる。
図15〜図17に示す如く、リフトシリンダ117に油圧配管を介して油圧接続させるバルブプレート653と、昇降バルブ機構652としての油圧比例弁(上昇制御電磁弁650と下降制御電磁弁651)とを備えている。そして、上面蓋体118の上面前部にバルブプレート653を載置させ、バルブプレート653上面に昇降バルブ機構652(油圧比例弁としての上昇制御電磁弁650と下降制御電磁弁651)を載置している。また、上面蓋体118の上面後部に傾斜制御電磁弁647を配置している。より詳細には、上面蓋体118の上面のうち、上面蓋体118の上面前部の昇降バルブ機構652とリフト支点軸119の間の上面に、傾斜制御電磁弁647を配置している。
したがって、油圧回路を構成したバルブプレート653を介して上面蓋体118に昇降バルブ機構652(上昇油圧切換弁648と下降油圧切換弁649、上昇制御電磁弁650と下降制御電磁弁651)を組付けた状態で、上面蓋体118に対してバルブプレート653を着脱できる一方、上面蓋体118にバルブプレート653を組付けた状態で、前記直進用ミッションケース17上面に上面蓋体118を着脱でき、昇降バルブ機構652と傾斜制御電磁弁647の組立及びメンテナンス作業性を簡単化できる。また、上面蓋体118の上面側のうち、水平シリンダ122により近接した上面側に、傾斜制御電磁弁647を配置でき、水平シリンダ122と傾斜制御電磁弁647の油圧配管作業またはメンテナンス作業などを簡略化できる。
図1〜図6、図10、及び図15などに示す如く、走行機体2に着脱可能に装着する油圧駆動作業機(フロントローダ作業機など)に作動油を供給する油圧外部取出機構としての油圧外部取出バルブ430とを備えている。そして、上面蓋体118におけるリフト支点軸119設置部の上方に油圧外部取出バルブ430を配置している。したがって、直進用ミッションケース17の後方に設ける昇降機構22に関する油圧機器部品(油圧外部取出バルブ430)を上面蓋体118にまとめて配置してユニット構成でき、直進用ミッションケース17への油圧外部取出バルブ430の組立及びメンテナンス作業などを容易に簡略化でき、直進用ミッションケース17の組立容易性を向上できる。
そして、上面蓋体118上面であって傾斜制御電磁弁647後方に油圧外部取出バルブ430を載置している。したがって、前記上面蓋体118に油圧外部取出バルブ430と傾斜制御電磁弁647を組付けた状態で、直進用ミッションケース17に上面蓋体118を着脱でき、油圧外部取出バルブ430と傾斜制御電磁弁647の組立及びメンテナンス作業性を簡単化できる。直進用ミッションケース17上面の最後部の油圧配管容易な位置に油圧外部取出バルブ430を配置して、油圧外部取出バルブ430の取扱い作業性を向上できる。
図15〜図18に示す如く、昇降機構22は、リンク機構111を昇降させる昇降シリンダ117と、昇降シリンダ117に作動油を供給してシリンダロッド125を上昇させる昇降バルブ機構652と、昇降シリンダ117に作動油を供給してシリンダロッド125を下降させる複動バルブ機構431とで構成されている。直進用ミッションケース17後方上面(実施形態では、上面蓋体118上面)に昇降バルブ機構652が配置されており、直進用ミッションケース17後方一側方(実施形態では、後部変速ケース113左側方)に複動バルブ機構431が配置される。
従って、昇降機構22として複動バルブ機構431を追加で取り付けた場合に、直進用ミッションケース17の後方に昇降機構22の各部品が配置されているため、複動バルブ機構431と連結させる各油圧配管746〜749を短尺化できるだけでなく、その配管設置作業の煩雑さを解消できる。また、昇降機構22のうち、複動バルブ機構431以外の単動動作可能な各部品について、直進用ミッションケース17の上面蓋体118にまとめて設置する一方、複動動作をも可能とする複動バルブ機構431については、直進用ミッションケース17の後部変速ケース113側方に設置している。そのため、昇降機構22として、昇降バルブ機構652のみの単動動作による機構を備えた作業車両と、複動バルブ機構431も供えた複動動作も可能となる機構を備えた作業車両とを組み立てる際に、それぞれの組立作業における誤りを防止できる。
また、図15〜図18に示す如く、昇降機構22が、リンク機構111に支持される作業機の左右傾斜角度を変化させる水平シリンダ122と、水平シリンダ122を作動させる傾斜制御電磁弁(水平制御バルブ)647とを更に備えている。そして、直進用ミッションケース17後方上面(実施形態では、上面蓋体118上面)において、傾斜制御電磁弁647を昇降バルブ機構652後方に配置する。更に、走行機体2に着脱可能に装着する油圧駆動作業機への作動油の入出を切換える油圧外部取出バルブ430を傾斜制御電磁弁647後方に配置する。そして、油圧外部取出バルブ430及び傾斜制御電磁弁647それぞれと複動バルブ機構431とを油圧配管747,748で接続させる。
図18〜図21に示す如く、クローラ3を履帯させたトラックフレーム61後部と連結するリヤハウジング(フレーム後部連結体)74を直進用ミッションケース17の左右に連結する。このとき、リヤハウジング74側面でキャビン(操縦部)7の後方を支持させるとともに、複動バルブ機構431をリヤハウジング74の前面で支持させる。また、トラックフレーム61の後端に連結されるリヤビーム72が、リヤハウジング74の下面に連結する。従って、複動バルブ機構431がキャビン7と共に、走行機体2の一部であり高剛性部品となる直進用ミッションケース17により支持される。また、リヤハウジング74がトラックフレーム61とも連結する部材であるため、複動バルブ機構431は安定な状態で支持されることとなる。
リヤハウジング74は、その前側面にバルブ支持ブラケット433がボルト締結されており、その側面に後部支持台97がボルト締結されており、その下面にリヤビーム72がボルト締結されている。リヤハウジング74に対して片持ち梁状に固定されたバルブ支持ブラケット433の上面に、複動バルブ機構431がボルト締結により載置固定される。また、リヤハウジング74に対して片持ち梁状に固定された後部支持台97の上面に、タンクフレーム18及び防振ゴム体99が設置される。そして、タンクフレーム18に燃料タンク11及びバッテリ817が固定されるとともに、防振ゴム体99にキャビンフレーム300が連結され、後部支持台97により、キャビン7の後方部分だけでなく、燃料タンク11及びバッテリ817が支持される。
また、複動バルブ機構431は、油圧配管749によりリヤハウジング74とも接続している。これにより、複動バルブ機構431からの作動油がリヤハウジング74を通じて作動油タンクである直進用ミッションケース17に戻される。従って、リヤハウジング74にバルブ支持ブラケット743を介して複動バルブ機構431を支持することで、複動機能を付加するためのユニットとして、リヤハウジング74と共に構成できるため、組立容易性を向上できる。
図10、図18、図21及び図22に示す如く、リンク機構111は、トップリンク24がトップリンクヒンジ123に連結されるとともに、ロワーリンク23がリヤビーム72の後端面に設けられた支点軸受けブラケット137に軸支されている。また、伸縮調節可能なターンバックル付き振れ止めロッド体(揺振規制体)103の両端部が、リヤビーム72の後端面に設けられたチェンブラケット101及びロワーリンク23に連結される。
リヤビーム72の後端面に、2枚の板状の支点軸受けブラケット137が並設されており、支点軸受けブラケット137よりも外側(機外側)にチェンブラケット101が固着している。支点軸受けブラケット137は、一方がリヤビーム72の内側(直進用ミッションケース17に近い側)面から後方に延設され、他方が、リヤビーム72後端面の中途部から後方に延設される。二枚の支点軸受けブラケット137は、互いに平行になるように、リヤビーム72の後面に固着されている。また、支点軸受けブラケット137はそれぞれ、相互に対向する面に支点軸ボス136が固着されている。2つの支点軸ボス136には間隙が設けられており、支点軸ボス136の間にロワーリンク23基端部が挿入される。
上記したように、リヤビーム72の後端面に支点軸ボス136と支点軸受けブラケット137を固着している。そして、支点軸ボス136にロワーリンク支点軸体130の一端側を嵌挿させると共に、ロワーリンク支点軸体130の他端側に軸止め板138を固着する。この際、支点軸受けブラケット137に機外側方からロワーリンク支点軸体130の一端側を貫通させ、ロワーリンク23基端部と支点軸ボス136にロワーリンク支点軸体130の一端側を嵌着させ、支点軸受けブラケット137の機外側面に軸止め板138をボルト締結させる。即ち、直進用ミッションケース17の左右外側方向からリヤビーム72にロワーリンク支点軸体130を着脱させ、ロワーリンク23を着脱可能に構成している。
図10、図18、図21及び図22に示す如く、ヒッチ体131は、直進用ミッションケース17の側面部外側に締結する左右の側板体132と、直進用ミッションケース17の底面部外側に締結する底板体133を有し、底板体133の左右端部に左右の側板体132の下端側を一体的に固着し、直進用ミッションケース17の側面部と底面部を前記ヒッチ体131にて囲むように構成している。したがって、直進用ミッションケース17の左右側面に配置させるリヤビーム72とヒッチ体131の干渉を容易に防止できるものでありながら、大型の作業機に適応した支持荷重を簡単に確保できる。
図10、図18、図21及び図22に示す如く、直進用ミッションケース17にリフト支点軸119を介して左右のリフトアーム120基端側を連結し、左右のリフトアーム120先端側にリフトロッド121を介して左右のロワーリンク23中間を連結している。そして、左右のリフトアーム120中間にリフトシリンダ117を取付けており、ヒッチ体131のシリンダ受け体146にシリンダ取付け軸体147を介してリフトシリンダ117を連結している。したがって、直進用ミッションケース17の上面側に左右のリフトアーム120を配置でき、直進用ミッションケース17の背面側にリフトシリンダ117を配置でき、直進用ミッションケース17後部の左右側面及び上下面を有効に活用して、昇降機構22をコンパクトに組付けることができるものでありながら、昇降機構22の組付け分解作業性などを向上できる。
図10、図18、図21及び図22に示す如く、リンク機構111は、左右ロワーリンク23それぞれの中途部が昇降機構22のリフトロッド121で吊り下げられるとともに、ロワーリンク23それぞれに設けられた左右一対の揺振規制体103にて作業機の横振れを規制する。揺振規制体103は、その一端がリフトロッド121前側となる位置でロワーリンク23と連結される一方、その他端がリヤビーム72に連結されている。ロワーリンク23を軸支させるリヤビーム72に揺振規制体103を連結する構造とするため、リンク機構111を支持させるための部品を共通化でき、組立容易性を向上できる。また、単一の部品でリンク機構111のロワーリンク23及び揺動規制体103の支持部材を構成するため、リンク機構111の取り付け調整の煩雑さを低減できる。
図10、図18、図21及び図22に示す如く、揺動規制体103の一端が、リフトロッド121前側となる位置でロワーリンク23に左右方向に揺動可能にボルト締結されている。揺動規制体103の他端が、チェンブラケット101に左右方向に回動可能に軸支されている。チェンブラケット101は、揺動規制体103の設置方向と平行となるように、リヤビーム72後端面の機外側からロワーリンク23における揺振規制体103の固定部分に向かって延設されている。これにより、揺動規制体103によりロワーリンク23を最短で連結することができ、揺動規制体103にかかる負荷を低減し、リンク機構11の揺動を安定させるとともに、揺動規制体103の破損や単寿命化を防止できる。
チェンブラケット101の後端側に左右貫通状の装着穴152を形成している。チェンブラケット101の装着穴152には、ロワーリンク支点軸体130の左右外側の端部を軸心線方向から臨ませている。装着穴152の内径はロワーリンク支点軸体130が挿通可能な大きさに設定している。すなわち、装着穴152の内径をロワーリンク支点軸体130の直径よりも大きく設定している。装着穴152には、枢支ピン151が差し込まれる軸受体153を着脱可能に嵌め込んでいる。揺動規制体103の基端側とチェンブラケット101の装着穴152に嵌め込んだ軸受体153とに、頭部付きで横長の枢支ピン151を貫通させている。枢支ピン151のうち頭部と反対側の突端部に、抜け止め用の止めピンを着脱可能に装着している。枢支ピン151は、止めピンによって揺動規制体103の基端側及びチェンブラケット101の軸受体153に対して抜け不能に保持される。止めピンを外して枢支ピン151を引き抜いて揺動規制体103とチェンブラケット101との連結を解除し、軸受体153と外カバー体140とを取り外した状態では、側面視で挿通穴152を通じてロワーリンク支点軸体130の左右外側の端部が見えることになる。
すなわち、揺動規制体103とチェンブラケット101との連結を解除し、軸受体153と外カバー体140とを取り外した状態であれば、装着穴152を通してロワーリンク支点軸体130を抜き差しできる。従って、直進用ミッションケース17(リヤビーム72)に対するロワーリンク23着脱作業を簡便に行える。また、枢支ピン151を軸支する部分(軸受体153の軸穴部分)が摩耗した場合は、軸受体153だけを交換すれば足りることになり、メンテナンス作業性を向上できると共に、メンテナンスコスト低減にも貢献する。
図23及び図24に示すように、直進用ミッションケース17には、リヤハウジング74の代わりに、後車軸ケース19を取り付けることが可能である。すなわち、走行部としてクローラ3の代わりに車輪(ホイル)4を設けるべく、後車軸を回転可能に内挿した後車軸ケース19が、直進用ミッションケース17の後部変速ケース113両側面に取り付けられる。このとき、旋回用ミッションケース13の両側面に取り付けられた車軸ケース90に内挿された前車軸16にも車輪(ホイル)4を取り付けることで、トラクタ1をホイルトラクタとして構成できる。このようにすることで、走行部としてクローラ3及びホイル4を選択可能となり、多機種の作業車両において、直進用ミッションケース17を共通部品とできる。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。