JP2016078599A - 作業車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】PTO軸25を正転駆動させる主PTO操作具46と、PTO軸25を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTO操作具48を備える作業車両において、正転のPTO出力と車速同調又は逆転のPTO出力とがPTO軸上で競合するのを回避する。
【解決手段】主PTO操作具46の中立以外の操作と副PTO操作具48の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材713を備える。PTO牽制部材713は、主PTO操作具46及び副PTO操作具48のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピン714と、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴715付きの連動板704とで構成する。PTO牽制ピン714を牽制リンク穴715に遊嵌させる。
【選択図】図28

Description

例えばトラクタ等の農作業機やクレーン車等の特殊作業機のような作業車両に関するものである。
従来、トラクタやホイルローダといった作業車両では、機体フレームの前部にエンジンを搭載し、機体フレームの後部にミッションケースを連結し、前後の走行部によって走行機体を支持している。ミッションケースには、例えば走行変速ギヤ機構、差動ギヤ機構及びPTO変速ギヤ機構等を内蔵している。前側のエンジンの動力は後側のミッションケースに伝わり、ミッションケース内の差動ギヤ機構から少なくとも左右の後方走行部に伝達される。ミッションケース内のPTO変速ギヤ機構からロータリ耕耘機等の作業部にも動力伝達される(例えば特許文献1等参照)。
特開2010−52734号公報
ところで、この種の作業車両では、操縦部内に配置した各種操作具とそれぞれ対応する変速ギヤ機構とを、電気的に連動連結したり機械的に連動連結したりしている。操作具と変速ギヤ機構とを電気的に連動連結した構造では、電動アクチュエータといった電子機器類が必要になるが、当該電子機器類は泥土等の影響を受け易く、農作業等で作業車両を用いた場合、電子機器類が泥土を被って動作不良や故障を招来し易く、信頼性向上の点で検討の余地がある。一方、操作具と変速ギヤ機構とを機械的に連動連結した構造では、前述の電気的連結構造に比べて故障等は少ないものの、構造が複雑化し易く部品コストが嵩むおそれがある。
また、トラクタ等の作業車両の中には、ミッションケースから突出したPTO軸を正転駆動させるPTO変速レバーと、PTO軸を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTOレバーとを備えたものがある。この場合、両方のレバー操作によって、正転のPTO出力と車速同調又は逆転のPTO出力とがPTO変速ギヤ機構やPTO軸上で競合するのを回避する必要がある。
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した作業車両を提供することを技術的課題としている。
請求項1の発明は、ミッションケースから突出したPTO軸を正転駆動させる主PTO操作具と、前記PTO軸を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTO操作具を備える作業車両において、前記主PTO操作具の中立以外の操作と前記副PTO操作具の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材を備えているというものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両において、前記PTO牽制部材は、前記主PTO操作具及び前記副PTO操作具のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピンと、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴付きの連動板とで構成し、前記PTO牽制ピンを前記牽制リンク穴に遊嵌させているというものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の作業車両において、前記副PTO操作具に前記PTO牽制ピンを連動連結する一方、前記主PTO操作具に前記牽制リンク穴付きの連動板を連動連結しているというものである。
本願発明によると、ミッションケースから突出したPTO軸を正転駆動させる主PTO操作具と、前記PTO軸を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTO操作具を備える作業車両において、前記主PTO操作具の中立以外の操作と前記副PTO操作具の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材を備えているから、前記PTO牽制部材の存在によって、前記主PTO操作具の中立以外の操作と前記副PTO操作具の入り操作との両方を行うことがなくなり、正転のPTO出力と車速同調又は逆転のPTO出力とが前記PTO軸上で競合するおそれを確実に回避できる。
請求項2の発明によると、前記PTO牽制部材は、前記主PTO操作具及び前記副PTO操作具のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピンと、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴付きの連動板とで構成し、前記PTO牽制ピンを前記牽制リンク穴に遊嵌させているから、前記両PTO操作具同士の牽制構造を簡略化でき、組立作業性を向上できる。
請求項3の発明によると、前記副PTO操作具に前記PTO牽制ピンを連動連結する一方、前記主PTO操作具に前記牽制リンク穴付きの連動板を連動連結しているから、例えば前記主PTO操作具の主PTO支点軸及び主PTOリンク体と、前記副PTO操作具の副PTO支点軸及び副PTOリンク体とを、同一ブラケットに組み付けてユニット構成にしたりすることが可能になり、構成部品数や組立工数等の削減を図れる。
トラクタの左側面図である。 トラクタの右側面図である。 トラクタの平面図である。 走行機体の左側面説明図である。 走行機体の右側面説明図である。 走行機体の平面図である。 走行機体を左後方から見た斜視図である。 走行機体を右後方から見た斜視図である。 走行機体を左側方から見た拡大斜視図である。 走行機体を右側方から見た拡大斜視図である。 走行機体を左前方から見た斜視図である。 走行機体を右側方から見た斜視図である。 トラクタの動力伝達系統のスケルトン図である。 トラクタの油圧回路図である。 ミッションケースの内部構造を示す左側面説明図である。 ミッションケースの内部構造を示す平面説明図である。 ミッションケースの内部構造を示す斜視説明図である。 ミッションケース前部の左側面断面図である。 ミッションケース中間部の左側面断面図である。 ミッションケース後部の左側面断面図である。 ミッションケースの背面説明図である。 操縦座席周辺の構造を左前方から見た斜視図である。 PTO軸を車速同調駆動させる仕様での各種レバーとミッションケースとの関係を示す左側面説明図である。 走行副変速ギヤ機構及びクリープ変速ギヤ機構の切換作動構造を示す概略斜視図である。 変速牽制部材を説明する概略斜視図である。 PTO変速レバーと副PTOレバーとの牽制構造を示す拡大斜視図である。 PTO変速レバーと副PTOレバーとの牽制構造を示す拡大正面図である。 PTO変速レバー及び副PTOレバーとミッションケースとの関係を示す拡大左側面説明図である。 PTO軸を逆転駆動可能にする仕様での各種レバーとミッションケースとの関係を示す左側面説明図である。
以下に、本願発明を具体化した実施形態について、農作業用トラクタを図面に基づき説明する。図1〜図8に示す如く、トラクタ1の走行機体2は、走行部としての左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。左右一対の後車輪4が後方走行部に相当するものである。走行機体2の前部にディーゼルエンジン5(以下、単にエンジンという)を搭載し、後車輪4または前車輪3をエンジン5で駆動することによって、トラクタ1が前後進走行するように構成されている。エンジン5はボンネット6にて覆われている。走行機体2の上面には、操縦部としてのキャビン7が設置される。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、前車輪3を操向操作する操縦ハンドル9とが配置されている。キャビン7の左右外側には、オペレータが乗降するステップ10が設けられている。エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11がキャビン7底部の下側に設けられている。
走行機体2は、前バンパー12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム15とにより構成されている。前車軸ケース13の左右両端側から外向きに、前車軸16を回転可能に突出させている。前車軸ケース13の左右両端側に前車軸16を介して前車輪3を取り付けている。機体フレーム15の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前後四輪3,3,4,4に伝達するためのミッションケース17を連結している。左右の機体フレーム15及びミッションケース17の下面側には、左右外向きに張り出した底面視矩形枠板状のタンクフレーム18をボルト締結している。実施形態の燃料タンク11は左右2つに分かれている。タンクフレーム18の左右張り出し部の上面側に、左右の燃料タンク11を振り分けて搭載している。ミッションケース17の左右外側面には、左右の後車軸ケース19を外向きに突出するように装着している。左右の後車軸ケース19には左右の後車軸20を回転可能に内挿している。ミッションケース17に後車軸20を介して後車輪4を取り付けている。左右の後車輪4の上方は左右のリヤフェンダー21によって覆われている。
ミッションケース17の後部には、例えばロータリ耕耘機などの対地作業機(図示省略)を昇降動させる油圧式昇降機構22を着脱可能に取付けている。前記対地作業機は、左右一対のロワーリンク23及びトップリンク24からなる3点リンク機構111を介してミッションケース17の後部に連結される。ミッションケース17の後側面には、ロータリ耕耘機等の作業機にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸25を後ろ向きに突設している。
エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸(ピストンロッド)には、フライホイル26(図4〜図6、図10及び図11参照)を直結するように取付けている。両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27と、ミッションケース17前面側から前向きに突出した主変速入力軸28とを連結している(図4〜図6参照)。ミッションケース17内には、油圧無段変速機500、前後進切換機構501、走行変速ギヤ機構及び後輪用差動ギヤ機構506などを配置している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17の主変速入力軸28に伝達され、油圧無段変速機500及び走行変速ギヤ機構によって適宜変速され、当該変速動力が後輪用差動ギヤ機構506を介して左右の後車輪4に伝達されるように構成している。
ミッションケース17の前面下部から前向きに突出した前車輪出力軸30には、前車輪駆動軸31を介して、前輪用差動ギヤ機構507を内蔵する前車軸ケース13から後向きに突出した前車輪伝達軸508を連結している。ミッションケース17内の油圧無段変速機500及び走行変速ギヤ機構による変速動力は、前車輪出力軸30、前車輪駆動軸31及び前車輪伝達軸508から前車軸ケース13内の前輪用差動ギヤ機構507を経由して、左右の前車輪3に伝達されるように構成している。
次に、図3、図7及び図8等を参照しながら、キャビン7内部の構造を説明する。キャビン7内における操縦座席8の前方にステアリングコラム32を配置している。ステアリングコラム32は、キャビン7内部の前面側に配置したダッシュボード33の背面側に埋設するような状態で立設している。ステアリングコラム32上面から上向きに突出したハンドル軸の上端側に、平面視略丸型の操縦ハンドル9を取り付けている。
ステアリングコラム32の右側には、走行機体2を制動操作するための左右一対のブレーキペダル35を配置している。ステアリングコラム32の左側には、走行機体2の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー36(リバーサレバー)と、動力継断用のクラッチ(図示省略)を遮断操作するためのクラッチペダル37とを配置している。
ステアリングコラム32の左側で前後進切換レバー36の下方には、前後進切換レバー36に沿って延びる誤操作防止体38(リバーサガード)を配置している。接触防止具である誤操作防止体38を前後進切換レバー36下方に配置することによって、トラクタ1に乗降する際に、オペレータが前後進切換レバー36に不用意に接触するのを防止している。ダッシュボード33の背面上部側には、液晶パネルを内蔵した操作表示盤39を設けている。
キャビン7内にある操縦座席8前方の床板40においてステアリングコラム32の右側には、エンジン5の回転速度または車速などを制御するアクセルペダル41を配置している。なお、床板40上面の略全体は平坦面に形成している。操縦座席8を挟んで左右両側にはサイドコラム42を配置している。操縦座席8と左サイドコラム42との間には、左右両後車輪4を制動状態に維持する操作を実行するための駐車ブレーキレバー43と、トラクタ1の走行速度(車速)を強制的に大幅に低減させる超低速レバー44(クリープレバー)と、ミッションケース17内の走行副変速ギヤ機構503の出力範囲を切換えるための副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換え操作するためのPTO変速レバー46とを配置している。操縦座席8の下方には、左右両後車輪4の差動駆動をオンオフするためのデフロックペダル47を配置している。操縦座席8の後方左側には、PTO軸25を車速同調駆動させる操作か又は逆転駆動させる操作を実行する副PTOレバー48を配置している。
操縦座席8と右サイドコラム42との間には、操縦座席8に着座したオペレータの腕や肘を載せるためのアームレスト49を設けている。アームレスト49は、操縦座席8とは別体に構成すると共に、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー50と、ロータリ耕耘機といった対地作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル51(昇降ダイヤル)とを備えている。なお、アームレスト49は、後端下部を支点として複数段階に跳ね上げ回動可能な構成になっている。
右サイドコラム42には、前側から順に、エンジン5の回転速度を設定保持するスロットルレバー52と、PTO軸25からロータリ耕耘機等の作業機への動力伝達を継断操作するPTOクラッチスイッチ53と、ミッションケース17の上面側に配置する油圧外部取出バルブ430(図14参照)を切換操作するための複数の油圧操作レバー54(SCVレバー)とを配置している。ここで、油圧外部取出バルブ430は、トラクタ1に後付けされるフロントローダといった別の作業機の油圧機器に作動油を供給制御するためのものである。実施形態では、油圧外部取出バルブの数(4連)に合わせて、油圧操作レバー54を4つ配置している。
さらに、図9〜図12などに示す如く、キャビン7の前側を支持する左右の前部支持台96と、キャビン7の後部を支持する左右の後部支持台97を備える。左右の機体フレーム15の機外側面のうち前後中間部に前部支持台96をボルト締結させ、前部支持台96の上面側に防振ゴム体98を介してキャビン7の前側底部を防振支持すると共に、左右方向に水平に延設させる左右の後車軸ケース19の上面のうち左右幅中間部に後部支持台97をボルト締結させ、後部支持台97の上面側に防振ゴム体99を介してキャビン7の後側底部を防振支持している。また、図4及び図5などに示す如く、後車軸ケース19の上面側に後部支持台97を配置し、後車軸ケース19の下面側に振れ止めブラケット101を配置し、後部支持台97と振れ止めブラケット101をボルト締結すると共に、前後方向に延設したロワーリンク23の中間部と振れ止めブラケット101とに、伸縮調節可能なターンバックル付き振れ止めロッド体103の両端部を連結し、ロワーリンク23の左右方向の揺振を防止している。
次に、図4〜図8などを参照して、ボンネット6下のディーゼルエンジン5とエンジンルーム構造について説明する。ディーゼルエンジン5は、エンジン出力軸とピストンとを内蔵するシリンダブロック上にシリンダヘッドを搭載しており、ディーゼルエンジン5(シリンダヘッド)右側面には、エアクリーナ221にターボ過給機211を介して接続させる吸気マニホールド203と、排気マニホールド204からの排気ガスの一部を再循環させるEGR装置210を配置し、排気マニホールド204に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド203に還流することによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が低下し、ディーゼルエンジン5からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減するように構成している。一方、ディーゼルエンジン5(シリンダヘッド)左側面に、テールパイプ229に接続させる排気マニホールド204と、ターボ過給機211を配置する。即ち、エンジン5においてエンジン出力軸に沿う左右側面に、吸気マニホールド203と排気マニホールド204とを振分け配置する。ディーゼルエンジン5(シリンダブロック)前面側に冷却ファン206を配置する。
加えて、図4〜図8などに示す如く、ディーゼルエンジン5は、ディーゼルエンジン5の上面側(排気マニホールド204上方)に配置する連続再生式の排気ガス浄化装置224(DPF)を備え、排気ガス浄化装置224の排気側にテールパイプ229を接続している。排気ガス浄化装置224によって、エンジン5からテールパイプ229を介して機外に排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)が除去されると共に、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減されるように構成している。
さらに、図1〜図3などに示す如く、ボンネット6は、前部下側にフロントグリル231を有し、エンジンルーム200の上面側と前面側を覆う。ボンネット6の左右下側に、多孔板で形成した側部エンジンカバー232を配置して、エンジンルーム200左右側方を覆っている。すなわち、ボンネット6及びエンジンカバー232によって、ディーゼルエンジン5の前方、上方及び左右を覆っている。
また、図4〜図8に示すように、ファンシュラウド234を背面側に取り付けたラジエータ235を、エンジン5の前面側に位置するようにエンジンフレーム14上に立設している。ファンシュラウド234は冷却ファン206の外周側を囲っていて、ラジエータ235と冷却ファン206とを連通させている。ラジエータ235前面の上方位置にエアクリーナ221を配置している。なお、ラジエータ235前面側には、上記のインタークーラ他、オイルクーラや燃料クーラなどが設置される。
一方、図9〜図12などに示す如く、左右一対の機体フレーム15は、支持用梁フレーム236によって連結されている。支持用梁フレーム236は、左右の機体フレーム15それぞれとボルト締結して、左右の機体フレーム15の前端部(エンジン5後面側)に架設しており、防振ゴムを有する機関脚体を介して、支持用梁フレーム236上面にディーゼルエンジン5の後部を連結する。なお、図1、図2、図4、図5、図11及び図12に示すように、左右一対のエンジンフレーム14の中途部に、防振ゴムを有する左右の前部機関脚体238を介して、ディーゼルエンジン5前部の左右側面を連結している。即ち、エンジンフレーム14にディーゼルエンジン5前側を防振支持させると共に、左右一対の機体フレーム15の前端側に支持用梁フレーム236を介してディーゼルエンジン5の後部を防振支持させている。
次に、図4〜図12を参照して、ミッションケース17、油圧式昇降機構22及び3点リンク機構111の取付け構造について説明する。前記ミッションケース17は、主変速入力軸28等を有する前部変速ケース112と、後車軸ケース19などを有する後部変速ケース113と、前部変速ケース112の後側に後部変速ケース113の前側を連結させる中間ケース114を備えている。中間ケース114の左右側面に左右の上下機体連結軸体115,116を介して左右の機体フレーム15の後端部を連結する。即ち、2本の上機体連結軸体115と、2本の下機体連結軸体116にて、中間ケース114の左右両側面に左右の機体フレーム15の後端部を連結させ、機体フレーム15とミッションケース17を一体的に連設して、走行機体2の後部を構成すると共に、左右の機体フレーム15の間に前部変速ケース112または動力伝達軸29などを配置して、前部変速ケース112などを保護するように構成している。左右の後車軸ケース19は、後部変速ケース113の左右両側に外向きに突出するように取り付けている。実施形態では、中間ケース114及び後部変速ケース113を鋳鉄製にする一方、前部変速ケース112をアルミダイキャスト製にしている。
上記の構成によると、ミッションケース17を、前部変速ケース112、中間ケース114及び後部ケース113の三者に分割して構成しているから、各ケース112〜114に軸やギヤ等の部品を予め組み込んでから、前部変速ケース112、中間ケース114及び後部変速ケース113の三者を組み立てできる。従って、ミッションケース17の組み立てを正確に且つ能率よく行える。
また、左右の後車軸ケース19を後部変速ケース113の左右両側に取り付け、走行機体2を構成する左右の機体フレーム15に、前部変速ケース112と後部変速ケース113とをつなぐ中間ケース114を連結しているから、例えば中間ケース114及び後部変速ケース113を機体フレーム15に取り付けたままで前部変速ケース112だけを取り外して、軸やギヤの交換といった作業を実行できる。従って、ミッションケース17全体をトラクタ1から降ろす(取り外す)頻度を格段に低くでき、メンテナンス時や修理時の作業性の向上を図れる。
更に、中間ケース114及び後部変速ケース113を鋳鉄製にする一方、前部変速ケース112をアルミダイキャスト製にしているから、機体フレーム15に連結される中間ケース114と、左右の後車軸ケース19が連結される後部変速ケース113とを、走行機体2を構成する強度メンバーとして高剛性に構成できる。その上で強度メンバーではない前部変速ケース112を軽量化できる。従って、走行機体2の剛性を十分に確保しつつ、ミッションケース17全体としての軽量化を図れる。
さて、図4〜図12に示すように、油圧式昇降機構22は、作業部ポジションダイヤル51等の操作にて作動制御する左右の油圧リフトシリンダ117と、ミッションケース17のうち後部変速ケース113上面側に設ける開閉可能な上面蓋体118にリフト支点軸119を介して基端側を回動可能に軸支する左右のリフトアーム120と、左右のロワーリンク23に左右のリフトアーム120を連結させる左右のリフトロッド121を有している。右のリフトロッド121の一部を油圧制御用の水平シリンダ122にて形成し、右のリフトロッド121の長さを水平シリンダ122にて伸縮調節可能に構成している。
なお、図7、図8及び図10などに示す如く、上面蓋体118の背面側にトップリンクヒンジ123を固着し、トップリンクヒンジ123にヒンジピンを介してトップリンク24を連結する。トップリンク24と左右のロワーリンク23に対地作業機を支持した状態下で、水平シリンダ122のピストンを伸縮させて、右のリフトロッド121の長さを変更した場合、前記対地作業機の左右傾斜角度が変化するように構成している。
次に、図13及び図15〜図20等を参照しながら、ミッションケース17の内部構造及びトラクタ1の動力伝達系統について説明する。ミッションケース17は、主変速入力軸28等を有する前部変速ケース112と、後車軸ケース19等を有する後部変速ケース113と、前部変速ケース112の後側に後部変速ケース113の前側を連結させる中間ケース114を備えている。ミッションケース17は全体として中空箱形に形成されている。
ミッションケース17の前面、すなわち前部変速ケース112の前面に前蓋部材491を配置している。前蓋部材491は前部変速ケース112の前面に複数のボルトで着脱可能に締結している。ミッションケース17の後面、すなわち後部変速ケース113の後面に後蓋部材492を配置している。後蓋部材492は後部変速ケース113の後面に複数のボルトで着脱可能に締結している。中間ケース114内の前面側には、前部変速ケース112と中間ケース114との間を仕切る中間仕切り壁493を一体的に形成している。後部変速ケース113の前後中途部には、後部変速ケース113内を前後に仕切る後部仕切り壁494を一体的に形成している。
従って、ミッションケース17内部は、中間及び後部仕切り壁493,494によって、前室495、後室496及び中間室497の三つの室に区画されている。ミッションケース17内部のうち前蓋部材491と中間仕切り壁493との間の空間(前部変速ケース112内部)が前室495となっている。後蓋部材492と後部仕切り壁494との間(後部変速ケース113後側の内部)が後室496となっている。中間仕切り壁493と後部仕切り壁494との間の空間(中間ケース114及び後部変速ケース113前側の内部)が中間室497となっている。なお、前室495、中間室497及び後室496は、各室495〜497内の作動油(潤滑油)が相互に移動し得るように各仕切り壁493,494の一部を切り欠いて連通している。
ミッションケース17の前室495内(前部変速ケース112内)には、油圧無段変速機500と、後述する前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503と、前後車輪3,4の二駆と四駆とを切り換える二駆四駆切換機構504とを配置している。ミッションケース17の中間室497内(中間ケース114及び後部変速ケース113前側の内部)には、油圧無段変速機500からの回転動力を正転又は逆転方向に切り換える前後進切換機構501を配置している。ミッションケース17の後室496内(後部変速ケース113後側の内部)には、エンジン5からの回転動力を適宜変速してPTO軸25に伝達するPTO変速機構505と、クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した回転動力を左右の後車輪4に伝達する後輪用差動ギヤ機構506とを配置している。クリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503は、前後進切換機構501経由の変速出力を多段変速する走行変速ギヤ機構に相当するものである。後部変速ケース113の右外面前部には、エンジン5の回転動力で駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を収容したポンプケース480を取り付けている。
図4〜図6に示すように、エンジン5の後側面から後ろ向きに突設するエンジン5の出力軸にはフライホイル26を直結している。フライホイル26から後ろ向きに突出した主動軸27に、両端に自在軸継手を有する動力伝達軸29を介して、ミッションケース17前面(前蓋部材491)側から前向きに突出した主変速入力軸28を連結している。エンジン5の回転動力は、主動軸27及び動力伝達軸29を経由してミッションケース17(前部変速ケース112)の主変速入力軸28に伝達され、油圧無段変速機500とクリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503とによって適宜変速されてから、後輪用差動ギヤ機構506に伝達され、左右の後車輪4を駆動させる。クリープ変速ギヤ機構502又は走行副変速ギヤ機構503を経由した変速動力は、二駆四駆切換機構504から前車輪出力軸30、前車輪駆動軸31及び前車輪伝達軸508を介して、前車軸ケース13内の前輪用差動ギヤ機構507に伝達され、左右の前車輪3を駆動させる。
前蓋部材491から前向きに突出した主変速入力軸28は、前部変速ケース112から中間ケース114(前室495から中間室497)にわたって前後方向に延びている。主変速入力軸28の前後中途部は中間仕切り壁493に回転可能に軸支している。主変速入力軸28の後端側は、後部仕切り壁494の前面側(中間室497側)に着脱可能に締結した中間補助プレート498に回転可能に軸支している。中間補助プレート498と後部仕切り壁494とは、両者498,494の間に前後方向の隙間が空くように配置している。前部変速ケース112から中間ケース114にわたって(前室495から中間室497にわたって)は、主変速入力軸28から動力伝達される入力伝達軸511を主変速入力軸28と平行状に配置している。前部変速ケース112内(前室495内)には、入力伝達軸511を介して油圧無段変速機500を配置している。油圧無段変速機500の前部側は、前部変速ケース112の前面開口部を着脱可能に塞ぐ前蓋部材491の内面側に取り付けている。入力伝達軸511の後端側は中間補助プレート498と後部仕切り壁494とに回転可能に軸支している。
前室495内にある油圧無段変速機500は、入力伝達軸511に主変速出力軸512を同心状に配置したインライン式のものである。入力伝達軸511のうち中間室497内の箇所に、円筒形の主変速出力軸512を被嵌している。主変速出力軸512の前端側は中間仕切り壁493を貫通していて、中間仕切り壁493に回転可能に軸支している。主変速出力軸512の後端側は中間補助プレート498に回転可能に軸支している。従って、入力伝達軸511の入力側である後端側の方が主変速出力軸512の後端よりも後方に突出している。主変速入力軸28の後端側(中間補助プレート498と後部仕切り壁494との間)には主変速入力ギヤ513を相対回転不能に被嵌している。入力伝達軸511の後端側(中間補助プレート498と後部仕切り壁494との間)には、主変速入力ギヤ513に常時噛み合う入力伝達ギヤ514を固着している。従って、主変速入力軸28の回転動力は、主変速入力ギヤ513、入力伝達ギヤ514及び入力伝達軸511を介して油圧無段変速機500に伝達される。主変速出力軸512には、走行出力用として、主変速高速ギヤ516、主変速逆転ギヤ517及び主変速低速ギヤ515を相対回転不能に被嵌している。
油圧無段変速機500は、可変容量形の油圧ポンプ部521と、当該油圧ポンプ部521から吐出する高圧の作動油によって作動する定容量形の油圧モータ部522とを備えている。油圧ポンプ部521には、入力伝達軸511の軸線に対して傾斜角を変更可能して作動油供給量を調節するポンプ斜板523を設けている。ポンプ斜板523には、入力伝達軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角を変更調節する主変速油圧シリンダ524を連動連結している。実施形態では、油圧無段変速機500に主変速油圧シリンダ524を組み付けていて、一つの部材としてユニット化している。主変速油圧シリンダ524の駆動でポンプ斜板523の傾斜角を変更することによって、油圧ポンプ部521から油圧モータ部522に供給される作動油量を変更調節し、油圧無段変速機500の主変速動作が行われる。
すなわち、主変速レバー50の操作量に比例して主変速油圧シリンダ524を駆動させると、これに伴い入力伝達軸511の軸線に対するポンプ斜板523の傾斜角が変更される。実施形態のポンプ斜板523は、傾斜略零(零を含むその前後)の中立角度を挟んで一方(正)の最大傾斜角度と他方(負)の最大傾斜角度との間の範囲で角度調節可能であり、且つ、走行機体2の車速が最低のときにいずれか一方に傾斜した角度(この場合は負で且つ最大付近の傾斜角度)に設定している。
ポンプ斜板523の傾斜角が略零(中立角度)のときは、油圧ポンプ部521では油圧モータ部522が駆動されず、入力伝達軸511と略同一回転速度にて主変速出力軸512が回転する。入力伝達軸511の軸線に対してポンプ斜板523を一方向(正の傾斜角)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が油圧モータ部522を増速作動させ、入力伝達軸511より速い回転速度で主変速出力軸512が回転する。このため、入力伝達軸511の回転速度に油圧モータ部522の回転速度が加算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、入力伝達軸511の回転速度より高い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(正の傾斜角)に比例して、主変速出力軸512からの変速動力(車速)が変更される。ポンプ斜板523が正で且つ最大付近の傾斜角度のときに、走行機体2は最高車速になる。
入力伝達軸511の軸線に対してポンプ斜板523を他方向(負の傾斜角)側に傾斜させたときは、油圧ポンプ部521が油圧モータ部522を減速(逆転)作動させ、入力伝達軸511より低い回転速度で主変速出力軸512が回転する。このため、入力伝達軸511の回転速度から油圧モータ部522の回転速度が減算されて、主変速出力軸512に伝達される。その結果、入力伝達軸511の回転速度より低い回転速度の範囲で、ポンプ斜板523の傾斜角(負の傾斜角)に比例して、主変速出力軸512からの変速動力が変更される。ポンプ斜板523が負で且つ最大付近の傾斜角度のときに、走行機体2は最低車速になる。
なお、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482の両者を駆動させるポンプ駆動軸483には、ポンプ駆動ギヤ484を相対回転不能に被嵌している。ポンプ駆動ギヤ484は、平ギヤ機構485を介して、主変速入力軸28の主変速入力ギヤ513を動力伝達可能に連結している。また、中間補助プレート498と後部仕切り壁494との間には、油圧無段変速機500や前後進切換機構501等に潤滑用の作動油を供給する潤滑油ポンプ518を配置している。潤滑油ポンプ518のポンプ軸519に固着したポンプギヤ520は入力伝達軸511の入力伝達ギヤ514に常時噛み合っている。従って、作業機用及び走行用油圧ポンプ481,482と潤滑油ポンプ518とは、エンジン5の回転動力によって駆動する。
次に、前後進切換機構501を介して実行する前進と後進との切換構造について説明する。主変速入力軸28のうち中間室497内の箇所(主変速入力軸28の後部側)に、前進高速ギヤ機構である遊星歯車機構526と、前進低速ギヤ機構である低速ギヤ対525とを配置している。遊星歯車機構526は、主変速入力軸28に回転可能に軸支した入力側伝動ギヤ529と一体的に回転するサンギヤ531、複数の遊星ギヤ533を同一半径上に回転可能に軸支したキャリア532、並びに内周面に内歯を有するリングギヤ534を備えている。サンギヤ531及びリングギヤ534は主変速入力軸28に回転可能に被嵌している。キャリア532は主変速入力軸28に相対回転不能に被嵌している。サンギヤ531はキャリア532の各遊星ギヤ533と半径内側から噛み合っている。また、リングギヤ534の内歯は各遊星ギヤ533と半径外側から噛み合っている。主変速入力軸28には、リングギヤ534と一体回転する出力側伝動ギヤ530も回転可能に軸支している。低速ギヤ対525を構成する入力側低速ギヤ527と出力側低速ギヤ528とは一体構造になっていて、主変速入力軸28のうち遊星歯車機構526と主変速入力ギヤ513との間に回転可能に軸支している。
ミッションケース17の中間室497内(中間ケース114及び後部変速ケース113前側の内部)には、主変速入力軸28、入力伝達軸511及び主変速出力軸512と平行状に延びる走行中継軸535並びに走行伝動軸536を配置している。走行中継軸535の前端側は中間仕切り壁493に回転可能に軸支している。走行中継軸535の後端側は中間補助プレート498に回転可能に軸支している。走行伝動軸536の前端側は中間仕切り壁493に回転可能に軸支している。走行伝動軸536の後端側は中間補助プレート498に回転可能に軸支している。
走行中継軸535に前後進切換機構501を設けている。すなわち、走行中継軸535には、湿式多板型の前進高速油圧クラッチ539で連結される前進高速ギヤ540と、湿式多板型の後進油圧クラッチ541で連結される後進ギヤ542と、湿式多板型の前進低速油圧クラッチ537で連結される前進低速ギヤ538とを被嵌している。走行中継軸535のうち前進高速油圧クラッチ539と後進ギヤ542との間には、走行中継ギヤ543を相対回転不能に被嵌している。走行伝動軸536には、走行中継ギヤ543と常時噛み合う走行伝動ギヤ544を相対回転不能に被嵌している。主変速出力軸512の主変速低速ギヤ515が主変速入力軸28側にある低速ギヤ対525の入力側低速ギヤ527と常時噛み合い、出力側低速ギヤ528が前進低速ギヤ538と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速高速ギヤ516が主変速入力軸28側にある遊星歯車機構526の入力側伝動ギヤ529と常時噛み合い、出力側伝動ギヤ530が前進高速ギヤ540と常時噛み合っている。主変速出力軸512の主変速逆転ギヤ517が後進ギヤ542と常時噛み合っている。
前後進切換レバー36を前進側に操作すると、前進低速油圧クラッチ537又は前進高速油圧クラッチ539が動力接続状態となり、前進低速ギヤ538又は前進高速ギヤ540と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星歯車機構526を介して走行中継軸535に、前進低速又は前進高速の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。前後進切換レバー36を後進側に操作すると、後進油圧クラッチ541が動力接続状態となり、後進ギヤ542と走行中継軸535とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速出力軸512から低速ギヤ対525又は遊星歯車機構526を介して走行中継軸535に、後進の回転動力が伝達され、走行中継軸535から走行伝動軸536に動力伝達される。
なお、前後進切換レバー36の前進側操作によって、前進低速油圧クラッチ537及び前進高速油圧クラッチ539のどちらが動力接続状態になるかは、主変速レバー50の操作量に応じて決定される。また、前後進切換レバー36が中立位置のときは、全ての油圧クラッチ537,539,541がいずれも動力切断状態となり、主変速出力軸512からの走行駆動力が略零(主クラッチ切りの状態)になる。
次に、走行変速ギヤ機構であるクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を介して実行する超低速と低速と高速との切換構造について説明する。ミッションケースの前室495内(前部変速ケース112内)には、前後進切換機構501を経由した回転動力を変速する機械式のクリープ変速ギヤ機構502及び走行副変速ギヤ機構503を配置している。この場合、前室495内(前部変速ケース112内)に、走行伝動軸536と同軸状に延びる走行カウンタ軸545を配置している。また、前部変速ケース112から後部変速ケース113にわたって(前室495から中間室497を介して後室496にわたって)は、走行カウンタ軸545と平行状に延びる副変速軸546を配置している。走行カウンタ軸545の前端側は前蓋部材491に回転可能に軸支している。走行カウンタ軸545の後端側は中間仕切り壁493に回転可能に支持させている。副変速軸546の前端側は前蓋部材491に回転可能に軸支している。副変速軸546の前後中途部は中間仕切り壁493に回転可能に軸支している。副変速軸546の後端側は中間補助プレート498及び後部仕切り壁494に回転可能に軸支している。
走行カウンタ軸545の後部側には伝達ギヤ547とクリープギヤ548とを設けている。伝達ギヤ547は、走行カウンタ軸545に回転可能に被嵌すると共に、走行伝動軸536に一体回転するように連結した状態で中間仕切り壁493に回動可能に軸支している。クリープギヤ548は走行カウンタ軸545に相対回転不能に被嵌している。走行カウンタ軸545のうち伝達ギヤ547とクリープギヤ548との間には、クリープシフタ549を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。超低速レバー44を入り切り操作することによって、クリープシフタ549がスライド移動して、伝達ギヤ547及びクリープギヤ548が走行カウンタ軸545に択一的に連結される。副変速軸546のうち前室495(前部変速ケース112)内の箇所には、減速ギヤ対550を回転可能に被嵌している。減速ギヤ対550を構成する入力側減速ギヤ551と出力側減速ギヤ552とは一体構造になっていて、走行カウンタ軸545の伝達ギヤ547が副変速軸546の入力側減速ギヤ551に常時噛み合い、クリープギヤ548が出力側減速ギヤ552に常時噛み合っている。
走行カウンタ軸545の前部側には低速中継ギヤ553と高速中継ギヤ554とを設けている。低速中継ギヤ553は走行カウンタ軸545に固着している。高速中継ギヤ554は走行カウンタ軸545に相対回転不能に被嵌している。副変速軸546のうち減速ギヤ対550よりも前部側には、低速中継ギヤ553に噛み合う低速ギヤ555と、高速中継ギヤ554に噛み合う高速ギヤ556とを回転可能に被嵌している。副変速軸546のうち低速ギヤ555と高速ギヤ556との間には、副変速シフタ557を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。副変速レバー45を操作することによって、副変速シフタ557がスライド移動して、低速ギヤ555及び高速ギヤ556が副変速軸546に択一的に連結される。
実施形態では、超低速レバー44を入り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、クリープギヤ548が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545及び副変速軸546を経て、超低速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。なお、超低速レバー44と副変速レバー45とは、変速牽制部材(詳細は後述する)を介して連動連結していて、副変速レバー45の高速側操作と超低速レバー45の入り操作との両立を禁止するように構成している。すなわち、超低速レバー44を入り操作した状態では副変速レバー45を高速側に操作できず、副変速レバー45を高速側に操作した状態では超低速レバー44を入り操作できないように構成している。
超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を低速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、低速ギヤ555が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545及び副変速軸546を経て、低速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。超低速レバー44を切り操作すると共に副変速レバー45を高速側に操作すると、伝達ギヤ547が走行カウンタ軸545に相対回転不能に連結されると共に、高速ギヤ556が副変速軸546に相対回転不能に連結され、走行伝動軸536から走行カウンタ軸545及び副変速軸546を経て、高速の走行駆動力が前車輪3や後車輪4に向けて出力される。
副変速軸546の後端側は後部仕切り壁494を貫通して後室496内部にまで延びている。副変速軸546の後端部にはピニオン558を設けている。また、後室496内(後部変速ケース113後側の内部)には、左右の後車輪4に走行駆動力を伝達する後輪用差動ギヤ機構506を配置している。後輪用差動ギヤ機構506には、副変速軸546のピニオン558に噛み合うリングギヤ559と、リングギヤ559に設けた差動ギヤケース560と、左右方向に延びる一対の差動出力軸561とを備えている。差動出力軸561がファイナルギヤ562等を介して後車軸20に連結している。後車軸20の先端側に後車輪4を取り付けている。
左右の差動出力軸561にはブレーキ機構563をそれぞれ配置している。ブレーキ機構563は、ブレーキペダル35の操作と自動制御という2つの系統によって、左右の後車輪4にブレーキを掛けるものである。すなわち、各ブレーキ機構563は、ブレーキペダル35の踏み込み操作によって、対応する差動出力軸561ひいては後車輪4にブレーキが掛かるように構成している。操縦ハンドル9の操舵角が所定角度以上になれば、旋回内側の後車輪4に対するオートブレーキ電磁弁631(図14参照)の切換作動によってブレーキシリンダ630(図14参照)が作動し、旋回内側の後車輪4に対するブレーキ機構563が自動的に制動作動するように構成している(いわゆるオートブレーキ)。このため、トラクタ1はUターン(圃場の枕地での方向転換)等の小回り旋回走行を簡単に実行できる。
なお、後輪用差動ギヤ機構506には、自身の差動を停止(左右の差動出力軸561を常時等速で駆動)させるデフロック機構585を設けている。デフロックペダル47の踏み込み操作によって、デフロック機構585を構成するデフロックピンを差動ギヤケース560の差動ギヤに係合させると、差動ギヤが差動ギヤケース560に固定され、差動ギヤの差動機能が停止し、左右の差動出力軸561が等速で駆動する。
次に、二駆四駆切換機構504を介して実行する前後車輪3,4の二駆と四駆との切換構造について説明する。ミッションケースの前室495(前部変速ケース112)内には二駆四駆切換機構504を配置している。この場合、前室495内(前部変速ケース112内)に、走行カウンタ軸545や副変速軸546と平行状に延びる前車輪入力軸568及び前車輪出力軸30を配置している。副変速軸546の前端側に相対回転不能に被嵌した主動ギヤ569に、前車輪入力軸568に相対回転不能に被嵌した従動ギヤ570を常時噛み合わせている。前車輪入力軸568には、倍速中継ギヤ571と四駆中継ギヤ572とを、従動ギヤ570を挟んだ前後両側に振り分けて相対回転不能に被嵌している。
前車輪出力軸30に二駆四駆切換機構504を設けている。すなわち、前車輪出力軸30には、湿式多板型の倍速油圧クラッチ573で連結される倍速ギヤ574と、湿式多板型の四駆油圧クラッチ575で連結される四駆ギヤ576とを被嵌している。前車輪入力軸568の倍速中継ギヤ571が前車輪出力軸30の倍速ギヤ574と常時噛み合い、四駆中継ギヤ572が四駆ギヤ576と噛み合っている。
駆動切換スイッチ又は駆動切換レバー(図示省略)を四駆側に操作すると、四駆油圧クラッチ575が動力接続状態となり、前車輪出力軸30と四駆ギヤ576とが相対回転不能に連結される。そして、副変速軸546から前車輪入力軸568及び四駆ギヤ576を経由して前車輪出力軸30に回転動力が伝達される結果、トラクタ1は後車輪4と共に前車輪3が駆動する四輪駆動状態になる。また、操縦ハンドル9をUターン操作等して操舵角が所定角度以上になると、倍速油圧クラッチ573が動力接続状態となり、前車輪出力軸30と倍速ギヤ574とが相対回転不能に連結される。そして、副変速軸546から前車輪入力軸568及び倍速ギヤ574を経由して前車輪出力軸30に回転動力が伝達される結果、四駆ギヤ576経由の回転動力による前車輪3の回転速度に比べて約二倍の高速度で、前車輪3が駆動する。
前車軸ケース13から後ろ向きに突出する前車輪伝達軸508と、前記ミッションケース17(前蓋部材491)の前面下部から前向きに突出する前車輪出力軸30とを、前車輪3に動力を伝達する前車輪駆動軸31によって連結している。前車軸ケース13内には、左右の前車輪3に走行駆動力を伝達する前輪用差動ギヤ機構507を配置している。前輪用差動ギヤ機構507には、前車輪伝達軸508前端側に設けたピニオン577に噛み合うリングギヤ578と、リングギヤ578に設けた差動ギヤケース579と、左右方向に延びる一対の差動出力軸580とを備えている。差動出力軸580がファイナルギヤ581等を介して前車軸16に連結している。前車軸16の先端側に前車輪3を取り付けている。なお、前車軸ケース13の外側面には、操縦ハンドル9の操舵操作によって前車輪3の走行方向を左右に変更するパワーステアリング用の操舵油圧シリンダ622(図14参照)を設けている。
次に、PTO変速機構505を介して実行するPTO軸25の駆動速度の切換構造(正転三段及び逆転一段)について説明する。ミッションケース17の後室496内(後部変速ケース113後側の内部)には、エンジン5からの動力をPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を配置している。この場合、主変速入力軸28の後端側に、動力伝達継断用のPTO油圧クラッチ590を介して、主変速入力軸28と同軸状に延びるPTO入力軸591を連結している。PTO入力軸591は後室496内に配置している。この場合、PTO入力軸591の前端側は後部仕切り壁494に回転可能に軸支している。図20に示すように、後室496内には、後室496を前後に区画する上下の支持壁部613,614を一体的に形成している。PTO入力軸591の前後中途部は、後室496内の上支持壁部613に回転可能に軸支している。PTO入力軸591の後端側は後蓋部材492の内面側に回転可能に軸支している。
後室496内には、PTO入力軸591と平行状に延びるPTO変速軸592、PTOカウンタ軸593及びPTO軸25を配置している。PTO変速軸592の前端側は上支持壁部613に回転可能に軸支し、PTO変速軸592の後端側は後蓋部材492の内面側に回転可能に軸支している。PTOカウンタ軸593の前端側は下支持壁部614に回転可能に軸支し、PTOカウンタ軸593の後端側は後蓋部材492の内面側に回転可能に軸支している。PTO軸25は後蓋部材492から後方に突出している。PTO軸25の前端側は下支持壁部614に回転可能に軸支している。
PTOクラッチスイッチ53を動力接続操作すると、PTO油圧クラッチ590が動力接続状態となって、主変速入力軸28とPTO入力軸591とが相対回転不能に連結される。その結果、主変速入力軸28からPTO入力軸591に向かって回転動力が伝達される。
PTO入力軸591には、前側から順に、中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595、高速入力ギヤ596及び逆転シフタギヤ598を設けている。中速入力ギヤ597、低速入力ギヤ595及び高速入力ギヤ596は、PTO入力軸591に相対回転不能に被嵌している。逆転シフタギヤ598は、PTO入力軸591に相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。
一方、PTO変速軸592には、中速入力ギヤ597に噛み合うPTO中速ギヤ601、低速入力ギヤ595に噛み合うPTO低速ギヤ599、及び高速入力ギヤ596に噛み合うPTO高速ギヤ600を回転可能に被嵌している。PTO変速軸592には、前後一対のPTO変速シフタ602,603を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合している。第一PTO変速シフタ602はPTO中速ギヤ601とPTO低速ギヤ599との間に配置している。第二PTO変速シフタ603はPTO高速ギヤ600よりも後端側に配置している。前後一対のPTO変速シフタ602,603は、PTO変速レバー46の操作に伴い連動して軸線方向にスライド移動するように構成している。PTO変速軸592のうちPTO低速ギヤ599とPTO高速ギヤ600との間にPTO伝動ギヤ604を固着している。
PTOカウンタ軸593には、PTO伝動ギヤ604に噛み合うPTOカウンタギヤ605と、PTO軸25に相対回転不能に被嵌したPTO出力ギヤ608に噛み合うPTO中継ギヤ606と、PTO逆転ギヤ607とを相対回転不能に被嵌している。PTO変速レバー46を中立操作した状態で副PTOレバー48を入り操作することによって、逆転シフタギヤ598がスライド移動して、逆転シフタギヤ598とPTOカウンタ軸593のPTO逆転ギヤ607とが噛み合うように構成している。
PTO変速レバー46を変速操作すると、前後一対のPTO変速シフタ602,603がPTO変速軸592に沿ってスライド移動し、PTO低速ギヤ595、PTO中速ギヤ597、及びPTO高速ギヤ596がPTO変速軸592に択一的に連結される。その結果、低速〜高速の各PTO変速出力が、PTO変速軸592からPTO伝動ギヤ604及びPTOカウンタギヤ605を介してPTOカウンタ軸593に伝達され、更に、PTO中継ギヤ607及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
副PTOレバー48を入り操作すると、逆転シフタギヤ598がPTO逆転ギヤ607と噛み合い、PTO入力軸591の回転動力が、逆転シフタギヤ598及びPTO逆転ギヤ607を介してPTOカウンタ軸593に伝達される。そして、逆転のPTO変速出力が、PTOカウンタ軸593からPTO中継ギヤ607及びPTO出力ギヤ608を介してPTO軸25に伝達される。
上記の説明から明らかなように、実施形態のPTO変速機構505は、後室496のうち上下支持壁部613,614よりも後方側に位置している。後室496のうち上下支持壁部613,614よりも前方側に、後輪用差動ギヤ機構506を配置している。このように実施形態では、ミッションケース17の後室496内に、後輪用差動ギヤ機構506とPTO変速機構505(PTO伝動系統)とを選り分けして簡単且つコンパクトに配置して、前記ミッションケース17の組み立て作業性並びにメンテナンス性の向上を図っている。
また、PTO軸25等の各軸25,591,592,593の軸支構造からも明らかなように、ミッションケース17の後面開口部を着脱可能に塞ぐ後蓋部材492を着脱することによって、後室496のうち上下支持壁部613,614よりも後方側にPTO変速機構505を出入可能に構成している。そして、後室496のうち上下支持壁部613,614よりも後方側にPTO変速機構505を装着した状態では、上下支持壁部613,614と後蓋部材492とによってPTO変速機構505を支持している。このため、ミッションケース17から後蓋部材492を取り外せば、PTO変速機構505を露出できることになる。従って、ミッションケース17の組み立て作業性及び分解作業性、PTO変速機構505のメンテナンス性の更なる向上を図れる。
実施形態では、上支持壁部613と後蓋部材492とによってPTO入力軸591及びPTO変速軸592を軸支し、下支持壁部614と後蓋部材492とによってPTOカウンタ軸593及びPTO軸25を軸支している。そして、これら各軸25,591〜593の位置関係を背面視で矩形の頂点に位置するように設定し(図21参照)、上段のPTO入力軸591から中段のPTO変速軸592及びPTOカウンタ軸593を経て下段のPTO軸25に、PTO出力を伝達するように構成している。このように構成すると、PTO出力の高出力化に伴う各軸25,591〜593の反力を相殺し合うことが可能になる。その結果、ミッションケース17及び走行機体2への振動伝達を軽減できる。
後部変速ケース113内には、中間室497から後室496にわたって、副変速軸546と平行状に延びる前後長手の車速同調軸564を配置している。車速同調軸564の前端側には車速同調入力ギヤ565を相対回転不能に被嵌している。車速同調入力ギヤ565は、副変速軸546のうち中間室497内の箇所に相対回転不能に被嵌した動力分岐ギヤ566と常時噛み合っている。PTO軸25のうちPTO出力ギヤ608よりも前部側に回転可能に被嵌した車速同調出力ギヤ610には、車速同調軸564の後端部に固着した車速同調中継ギヤ609と常時噛み合っている。PTO軸25のうち車速同調出力ギヤ610とPTO出力ギヤ608との間には、車速同調シフタ611を相対回転不能で且つ軸線方向にスライド可能にスプライン嵌合させている。PTO変速レバー46を中立操作した状態で副PTOレバー48を入り操作することによって、車速同調シフタ611がスライド移動して、車速同調出力ギヤ610がPTO軸25に連結される。その結果、副変速軸546から車速同調軸564を経由した車速同調出力がPTO軸25に伝達される。
ここで、実施形態では、PTO軸25の駆動仕様に応じて副PTOレバー48の機能を異ならせている。すなわち、PTO軸25を逆転駆動可能にする仕様では、副PTOレバー48の手動操作によって逆転シフタギヤ598をスライド移動させ、逆転のPTO変速出力をPTO軸25に伝達するように構成している。PTO軸25を車速同調駆動させる仕様では、副PTOレバー48の手動操作によって車速同調シフタ611をスライド移動させ、車速に同調したPTO変速出力をPTO軸25に伝達するように構成している。
なお、いずれの仕様においても、PTO変速レバー46と副PTOレバー48とはPTO牽制部材(詳細は後述する)を介して連動連結していて、PTO変速レバー46の中立以外の変速操作と副PTOレバー48の入り操作都の両立を禁止するように構成している。すなわち、副PTOレバー48を入り操作した状態ではPTO変速レバー46を中立以外に変速操作できず、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作した状態では副PTOレバー48を入り操作できないように構成している。
ここで、図23はPTO軸25を車速同調駆動させる仕様の例を示している。この例においてPTO変速レバー46は、主PTOリンク体695を介して、後部変速ケース113(ミッションケース17)の左側面後部から外向きに突出した主PTO操作軸696に連動連結している。PTO変速レバー46を変速操作すると、主PTOリンク体695を介して主PTO操作軸696が回動して、前後一対のPTO変速シフタ602,603をPTO変速軸592に沿ってスライド移動させる。その結果、PTO低速ギヤ595、PTO中速ギヤ597、及びPTO高速ギヤ596がPTO変速軸592に択一的に連結され、低速〜高速の各PTO変速出力(正転出力)がPTO軸25に伝達される。
また、副PTOレバー48は、副PTOリンク体697を介して、後部変速ケース113(ミッションケース17)の左側面後部から外向きに突出した副PTO操作軸698に連動連結している。副PTOレバー48を入り操作すると、副PTOリンク体697を介して副PTO操作軸698が回動して、車速同調シフタ611をPTO軸25に沿ってスライド移動させる。その結果、車速同調出力ギヤ610がPTO軸25に連結され、副変速軸546から車速同調軸564を経由した車速同調出力がPTO軸25に伝達される。
次に、図14を参照しながら、トラクタ1の油圧回路620構造について説明する。トラクタ1の油圧回路620は、エンジン5の回転動力によって駆動する作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482を備えている。実施形態では、ミッションケース17が作業油タンクとして利用されていて、ミッションケース17内の作動油が作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482に供給される。走行用油圧ポンプ482は、パワーステアリング用のコントロール弁機構621を介して操縦ハンドル9によるパワーステアリング用の操舵油圧シリンダ622に接続すると共に、油圧無段変速機500の油圧ポンプ521と油圧モータ522とをつなぐ閉ループ油路623に接続している。エンジン5の駆動中は、走行用油圧ポンプ482からの作動油が閉ループ油路623に常に補充される。
また、走行用油圧ポンプ482は、油圧無段変速機500の主変速油圧シリンダ524に対する主変速油圧切換弁624と、倍速油圧クラッチ573に対する倍速油圧切換弁625と、四駆油圧クラッチ575に対する四駆油圧切換弁626と、PTO油圧クラッチ590に対するPTOクラッチ電磁弁627及びこれによって作動する切換弁628とに接続している。
更に、走行用油圧ポンプ482は、左右一対のオートブレーキ用のブレーキシリンダ630をそれぞれ作動させる切換弁としての左右のオートブレーキ電磁弁631と、前進低速油圧クラッチ537を作動させる前進低速クラッチ電磁弁632と、前進高速油圧クラッチ539を作動させる前進高速クラッチ電磁弁633と、後進油圧クラッチ541を作動させる後進クラッチ電磁弁634と、前記各クラッチ電磁弁632〜634への作動油供給を制御するマスター制御電磁弁635とに接続している。
作業機用油圧ポンプ481は、ミッションケース17の上面後部側にある油圧式昇降機構22の上面に積層配置した複数の油圧外部取出バルブ430と、左右後車輪4間のトレッド(車輪間距離)を調節する左右のトレッド調節油圧シリンダ645への作動油供給を制御する左右のトレッド調節電磁弁646と、右リフトロッド121に設けた水平シリンダ122への作動油供給を制御する傾斜制御電磁弁647と、油圧式昇降機構22における油圧リフトシリンダ117への作動油供給を制御する上昇油圧切換弁648及び下降油圧切換弁649と、上昇油圧切換弁648を切換作動させる上昇制御電磁弁650と、下降油圧切換弁649を作動させる下降制御電磁弁651とに接続している。
左右のトレッド調節電磁弁646を切換駆動させると、左右のトレッド調節油圧シリンダ645が伸縮動して左右の後車軸ケース19を左右方向に伸縮動させる。その結果、左右後車輪4間のトレッドが長くなったり短くなったりする。傾斜制御電磁弁647を切換駆動させると、水平シリンダ122が伸縮動して、前部側にあるロワーリンクピンを支点にして右側のロワーリンク23が上下動する。その結果、左右両ロワーリンク23を介して対地作業機が走行機体2に対して左右に傾動し、対地作業機の左右傾斜角度が変化する。上昇制御電磁弁650によって上昇油圧切換弁648を切換作動させるか又は下降制御電磁弁651によって下降油圧切換弁649を切換作動させると、油圧リフトシリンダ117が伸縮動し、リフトアーム120及び左右両ロワーリンク23が共に上下動する。その結果、対地作業機が昇降動し、対地作業機の昇降高さ位置が変化する。
トラクタ1の油圧回路620は、前述の作業機用油圧ポンプ481及び走行用油圧ポンプ482以外に、エンジン5の回転動力で駆動する潤滑油ポンプ518も備えている。潤滑油ポンプ518には、PTO油圧クラッチ590の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給するPTOクラッチ油圧切換弁641と、油圧無段変速機500を軸支する入力伝達軸511の潤滑部と、前進低速油圧クラッチ537の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進低速クラッチ油圧切換弁642と、前進高速油圧クラッチ539の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する前進高速クラッチ油圧切換弁643と、後進油圧クラッチ541の潤滑部に作動油(潤滑油)を供給する後進クラッチ油圧切換弁644とに接続している。なお、油圧回路620には、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
上記の記載並びに図13及び図15〜図20から明らかなように、走行機体2に搭載したエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速するミッションケース17と、前記ミッションケース17の左右両側に後車軸ケース19を介して設けた後方走行部4とを備え、前記ミッションケース17内に、前記ミッションケース17経由の変速動力を前記左右の後方走行部4に伝達する差動機構506を配置している作業車両において、前記ミッションケース17に前室495、中間室497及び後室496を形成し、前記後室496内には前記後室496を前後に区画する支持壁部613,614を備え、前記差動機構506を前記後室496のうち前記支持壁部613,614よりも前方側に配置し、前記エンジン5の動力を変速して前記ミッションケース17から後向きに突出するPTO軸25に伝達するPTO変速機構505を、前記後室496のうち前記支持壁部613,614よりも後方側に配置しているから、前記ミッションケース17の前記後室496内に、前記差動機構506と前記PTO変速機構505(PTO伝動系統)とを選り分けして簡単且つコンパクトに配置でき、前記ミッションケース17の組み立て作業性並びにメンテナンス性の向上を図れる。
また、前記ミッションケース17の後面開口部を着脱可能に塞ぐ後蓋部材492を備え、前記後蓋部材492を着脱することによって、前記後室496のうち前記支持壁部613,614よりも後方側に前記PTO変速機構505を出入可能に構成し、前記後室496のうち前記支持壁部613,614よりも後方側に前記PTO変速機構505を装着した状態では、前記支持壁部613,614と前記後蓋部材492とによって前記PTO変速機構505を支持しているから、前記ミッションケース17から前記後蓋部材492を取り外せば、前記PTO変速機構505を露出できることになる。従って、前記ミッションケース17の組み立て作業性及び分解作業性、前記PTO変速機構505のメンテナンス性の更なる向上を図れる。
更に、背面視で矩形の頂点に位置するように、前記PTO変速機構505を構成する3本の軸591〜593及びPTO軸25を前記支持壁部613,614と前記後蓋部材492とに軸支しているから、PTO出力の高出力化に伴う前記各軸25,591〜593の反力を相殺し合うことが可能になる。その結果、前記各軸25,591〜593に対する軸受構造の長寿命化を図れると共に、前記ミッションケース17及び前記走行機体2への振動伝達を軽減できる。
次に、図15、図17及び図22〜図25を参照しながら、走行副変速ギヤ機構503及びクリープ変速ギヤ機構502を切換作動させる構造について説明する。図22に詳細に示すように、操縦座席8と左サイドコラム42との間には、左右両後車輪4を制動状態に維持する操作を実行するための駐車ブレーキレバー43と、クリープ変速操作具である超低速レバー44(クリープレバー)と、副変速操作具である副変速レバー45と、PTO軸25の駆動速度を切換操作するPTO変速レバー46とを配置している。実施形態では、駐車ブレーキレバー43が操縦座席8寄りに位置している。超低速レバー44、副変速レバー45及びPTO変速レバー46は左サイドコラム42寄りに位置すると共に、前から超低速レバー44、副変速レバー45、PTO変速レバー46の順に並んでいる。駐車ブレーキレバー43は上下回動可能に構成し、超低速レバー44、副変速レバー45及びPTO変速レバー46は前後回動可能に構成している。
図23に示すように、超低速レバー44の基端側は、クリープリンク体670を介して、後部変速ケース113(ミッションケース17)の左側面前部から外向きに突出したクリープ操作軸671に連動連結している。また同様に、副変速レバー45の基端側は、副変速リンク体680を介して、後部変速ケース113(ミッションケース17)の左側面前部から外向きに突出した副変速操作軸681に連動連結している。
ミッションケース17の左内面寄りには、前部変速ケース112から後部変速ケース113前部にわたって(前室495から中間室497にわたって)、主変速入力軸28等と平行状に前後に延びるクリープフォーク軸672及び副変速フォーク軸682を配置している。クリープフォーク軸672と副変速フォーク軸682とは、近接した状態で互いに平行状に延びている。クリープフォーク軸672の長手中途部には、走行カウンタ軸545上のクリープシフタ549と係合したクリープフォーク673を固着している。副変速フォーク軸682の先端側には、副変速軸546上の副変速シフタ557と係合した副変速フォーク683を固着している。クリープフォーク軸672の先端側は副変速フォーク683を前後スライド可能に貫通している。副変速フォーク軸682の長手中途部はクリープフォーク673を前後スライド可能に貫通している。すなわち、互いのフォーク軸672,682を互いのフォーク673,683に軸支している。
クリープフォーク軸672の後端側には係合切り欠き溝674を形成している。クリープ操作軸671の内端側には、上向きに突出したクリープ切換アーム675を固着している。クリープ切換アーム675の先端カム部676をクリープフォーク軸672の係合切り欠き溝674に摺動可能に係合している。また、副変速フォーク軸682の後端側にも係合切り欠き溝684を形成している。副変速操作軸681の内端側には、下向きに突出した副変速切換アーム685を固着している。副変速切換アーム685の先端カム部686を副変速フォーク軸682の係合切り欠き溝684に摺動可能に係合している。
超低速レバー44を前傾操作すると、クリープリンク体670を介してクリープ操作軸671が図23の反時計回りに回動して、クリープ切換アーム675を前向きに傾動させ、クリープフォーク軸672を前方に移動させる。この場合、副変速フォーク軸682の長手中途部がクリープフォーク673を前後スライド可能に貫通しているので、副変速フォーク軸682がクリープフォーク673を走行カウンタ軸545や副変速軸546等と平行な前方向に案内する。そうすると、クリープシフタ549が走行カウンタ軸545に沿って前方にスライド移動して、クリープギヤ548と走行カウンタ軸545とが相対回転不能に連結され、クリープ入りの状態になる。
超低速レバー44を後傾操作すると、クリープリンク体670を介してクリープ操作軸671が図23の時計回りに回動して、クリープ切換アーム675を後向きに傾動させ、クリープフォーク軸672を後方に移動させる。この場合は、副変速フォーク軸682がクリープフォーク673を走行カウンタ軸545や副変速軸546等と平行な後方向に案内する。そうすると、クリープシフタ549が走行カウンタ軸545に沿って後方にスライド移動して、伝達ギヤ547と走行カウンタ軸545とが相対回転不能に連結され、クリープ切りの状態になる。
副変速レバー45を中立位置から後傾操作すると、副変速リンク体680を介して副変速操作軸681が図23の時計回りに回動して、副変速切換アーム685を前向きに傾動させ、副変速フォーク軸682を前方に移動させる。この場合、クリープフォーク軸672の先端側が副変速フォーク683を前後スライド可能に貫通しているので、クリープフォーク軸672が副変速フォーク683を走行カウンタ軸545や副変速軸546等と平行な前方向に案内する。そうすると、副変速シフタ557が副変速軸546に沿って前方にスライド移動して、低速ギヤ555と副変速軸546とが相対回転不能に連結され、副変速低速の状態になる。
副変速レバー45を中立位置から前傾操作すると、副変速リンク体680を介して副変速操作軸681が図23の反時計回りに回動して、副変速切換アーム685を後向きに傾動させ、副変速フォーク軸682を後方に移動させる。この場合は、クリープフォーク軸672が副変速フォーク683を走行カウンタ軸545や副変速軸546等と平行な後方向に案内する。そうすると、副変速シフタ557が副変速軸546に沿って後方にスライド移動して、高速ギヤ556と副変速軸546とが相対回転不能に連結され、副変速高速の状態になる。
上記の説明から分かるように、クリープフォーク軸672と副変速フォーク軸682とは、一方の操作具44(45)の操作によって一方のフォーク軸672(682)を長手方向に移動させるにあたり、他方のフォーク軸682(672)が一方のフォーク軸672(683)側のフォーク673(683)を長手方向に案内するという連動関係になっている。
さて、超低速レバー44と副変速レバー45とは、変速牽制部材690を介して連動連結していて、副変速レバー45の高速側操作と超低速レバー45の入り操作との両立を禁止するように構成している。すなわち、超低速レバー44を入り操作した状態では副変速レバー45を高速側に操作できず、副変速レバー45を高速側に操作した状態では超低速レバー44を入り操作できないように構成している。
この場合、副変速フォーク軸682の後端側に、上向き開口状のストッパー溝691を形成する一方、クリープ切換アーム675の上下中途部には、ストッパー溝691内に突出する牽制ピン692を取り付けている(図25参照)。ストッパー溝691と牽制ピン692とが変速牽制部材690を構成している。実施形態では、副変速レバー45を高速側操作したときのストッパー溝691の前内端面693と、超低速レバー45を入り操作したときの牽制ピン692とが互いに重複するような位置関係にあり、超低速レバー44を入り操作し且つ副変速レバー45を高速側に操作した場合、ストッパー溝691の前内端面693と牽制ピン692とが当接し合って干渉するように設定している。
このため、超低速レバー44を入り操作した状態で副変速レバー45を高速側に操作しようとしても、ストッパー溝691の前内端面693が牽制ピン692に当接して、副変速フォーク軸683が後方に移動できず、副変速レバー45の高速側操作ができないことになる。また、副変速レバー45を高速側に操作した状態で超低速レバー44を入り操作しようとしても、牽制ピン692がストッパー溝691の前内端面693に当接して、クリープフォーク軸673が前方に移動できず、超低速レバー44を入り操作できないことになる。超低速レバー44を入り操作し且つ副変速レバー45を高速側に操作した場合以外は、ストッパー溝691と牽制ピン692とが干渉し合うことはない。
上記の記載並びに図15、図17及び図22〜図25から明らかなように、走行機体2に搭載したエンジン5と、前記エンジン5の動力を変速するミッションケース17とを備える作業車両において、前記ミッションケース17内に、前記エンジン5の動力を無段階に変速する油圧無段変速機500と、前記油圧無段変速機500経由の変速動力を複数段に変速する副変速ギヤ機構503と、前記油圧無段変速機500経由の変速動力を超低速に変速するクリープ変速ギヤ機構502と、副変速フォーク軸682を介して前記副変速ギヤ機構503を変速操作する副変速操作具45と、クリープフォーク軸672を介して前記クリープ変速ギヤ機構502を変速操作するクリープ変速操作具44とを備え、前記副変速フォーク軸682と前記クリープフォーク軸672とを前記ミッションケース17内に平行状に配置し、前記副変速フォーク軸682には副変速フォーク683を設け、前記クリープフォーク軸672にはクリープフォーク673を設け、一方の操作具44(45)の操作によって一方のフォーク軸672(682)を長手方向に移動させるにあたり、他方のフォーク軸682(672)が前記一方の操作軸672(682)側のフォーク673(683)を前記長手方向に案内するように、前記互いのフォーク軸672,682を前記互いのフォーク673,683に軸支しているから、前記両フォーク673,683を操作可能に支持する構造を簡素化してコンパクトに構成でき、前記副変速ギヤ機構503と前記副変速操作具45とを機械的に連動連結する構造、並びに、前記クリープ変速ギヤ機構502と前記クリープ変速操作具44とを機械的に連動連結する構造について、前記ミッションケース17内に省スペースに配置できると共に、部品点数を削減して部品コストを抑制できる。
また、前記副変速操作具45の高速側操作と前記クリープ変速操作具44の入り操作との両立を禁止する変速牽制部材690を備えているから、前記副変速ギヤ機構503と前記クリープ変速ギヤ機構502との間での不要な変速の組合せを的確に除外でき、例えばギヤの歯こぼれといった破損のおそれを回避できる。
更に、前記ミッションケース17を、前部ケース112、中間ケース114及び後部ケース113の三者に分割して構成し、前記中間ケース114及び前記後部ケース113を鋳鉄製にする一方、前記前部ケース112をアルミダイキャスト製にし、前記油圧無段変速機500と前記副変速ギヤ機構503と前記クリープ変速ギヤ機構502とを前記前部ケース112内に位置させているから、重量の軽い前記前部ケース112側に前記油圧無段変速機500、前記副変速ギヤ機構503及び前記クリープ変速ギヤ機構502を配置して、前記ミッションケース17を良好な重量バランスをすることが可能になる。
次に、図22、図23及び図26〜図28を参照しながら、PTO変速レバー46と副PTOレバー48との牽制構造について説明する。ここでは、PTO軸25を車速同調駆動させる仕様を例として、以下に説明する。
前述の通り、主PTO操作具としてのPTO変速レバー46は、主PTOリンク体695を介して、後部変速ケース113の左側面後部から外向きに突出した主PTO操作軸696に連動連結している。副PTO操作具としての副PTOレバー48は、副PTOリンク体697を介して、後部変速ケース113の左側面後部から外向きに突出した副PTO操作軸698に連動連結している(図23及び図28参照)。
実施形態では、操縦座席8と左サイドコラム42との間のうち後部寄りに、下向き開口した門型の支点ブラケット701を配置している。支点ブラケット701の左側板に、左右外向きに突出する主PTO支点軸702を軸支している。PTO変速レバー46の下端側に設けた回動ボス部703を主PTO支点軸702に回動可能に被嵌している。PTO変速レバー46の回動ボス部703に連動板704の上端側を固着している。連動板704の下端側には主PTOロッド705の前端側を回動可能に枢着している。主PTOロッド705の後端側は、主PTO操作軸696の外向き突端部に固着した主PTO操作アーム706に回動可能に枢着している。連動板704、主PTOロッド705及び主PTO操作アーム706の組合せが主PTOリンク体695に相当する。
一方、支点ブラケット701の後方に配置したカバーブラケット707には、縦長の副PTOレバー48を昇降操作可能に挿嵌している。副PTOレバー48の下端側は、前後長手の中継アーム708の後端側に回動可能に枢着している。中継アーム708の前端寄り部位に設けた回動ボス部709は、支点ブラケット701の二股状下端部の間に軸支した副PTO支点軸710に回動可能に被嵌している。中継アーム708の前端側には、副PTOロッド711の前端側を回動可能に枢着している。副PTOロッド711の後端側は、副PTO操作軸698の外向き突端部に固着した副PTO操作アーム712に回動可能に枢着している。中継アーム708、副PTOロッド711及び副PTO操作アーム712の組合せが副PTOリンク体697に相当する。
主PTOリンク体695と副PTOリンク体697とには、PTO変速レバー46の中立以外の操作と副PTOレバー48の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材713を備えている。PTO牽制部材713は、PTO変速レバー46及び副PTOレバー48のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピン714と、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴715付きの連動板704とで構成している。実施形態では、副PTOレバー48にPTO牽制ピン714を連動連結する一方、PTO変速レバー46に牽制リンク穴715付きの連動板704を連動連結している。この場合、中継アーム708の回動ボス部709に固着した連動アーム716に、PTO牽制ピン714を左右外向きに突設する一方、主PTO支点軸702回りにPTO変速レバー46と一体回動する連動板704の上下中途部に、牽制リンク穴715を形成している。連動板704の牽制リンク穴715にPTO牽制ピン714を遊嵌している。
牽制リンク穴715は、主PTO支点軸702を曲率半径の中心とする円弧状穴部717と、円弧状穴部の前後中途部位から分岐して上向きに延びる分岐穴部718とを備えている。図26及び図28に示すように、副PTOレバー48を下降させる切り操作をした状態で且つPTO変速レバー46が中立位置にある場合は、円弧状穴部717と分岐穴部718との交点にPTO牽制ピン714が位置するように設定している。
PTO変速レバー46が中立位置の状態で副PTOレバー48を昇降操作(入り切り操作)した場合は、副PTO支点軸710回りの連動アーム716の回動に伴いPTO牽制ピン714が分岐穴部718に沿って移動可能になっている。このため、PTO変速レバー46を中立位置に操作した場合だけ副PTOレバー48を入り切り操作でき、副変速軸546から車速同調軸564を経由した車速同調出力をPTO軸25に伝達することが可能になっている。副PTOレバー48を入り操作した状態では、PTO牽制ピン714が分岐穴部718の上端側に位置するため、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作しようとしても、PTO牽制ピン714の存在によって連動板704が回動できず、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作できないのである。
副PTOレバー48を切り操作した状態では、PTO牽制ピン714が円弧状穴部717内に位置するため、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作しても、PTO牽制ピン714が連動板704の回動を妨げない。従って、PTO変速レバー46を中立以外に変速操作できる。TO変速レバー46を中立以外に変速操作した状態では、PTO牽制ピン714が円弧状穴部717の前端側又は後端側に位置するため、副PTOレバー48を上昇操作(入り操作)しようとしても、PTO牽制ピン714の存在によって連動アーム716ひいては中継アーム708が回動できず、副PTOレバー48を入り操作できないのである。
さて、図29はPTO軸25を逆転駆動させる仕様の例を示している。この例において副PTOレバー48は、副PTOリンク体697を介して、後部変速ケース113の左側面後部から外向きに突出した副PTO操作軸698に連動連結している。図29の例での副PTO操作軸698は主PTO操作軸696よりも前方に位置している。そして、副PTO操作軸698が車速同調シフタ611ではなく逆転シフタギヤ598に連動連結している。副PTOレバー48を入り操作すると、副PTOリンク体697を介して副PTO操作軸698が回動して、逆転シフタギヤ598をPTO入力軸591に沿ってスライド移動させる。その結果、逆転シフタギヤ598がPTOカウンタ軸593上のPTO逆転ギヤ607と噛み合い、逆転のPTO変速出力がPTO軸25に伝達される。PTO変速レバー46と副PTOレバー48との牽制構造は、前述したPTO軸25を車速同調駆動させる仕様と共通である。従って、PTO変速レバー46と副PTOレバー48との牽制構造を仕様ごとに設計製造する必要がなく、製造コストの削減に有効である。
上記の記載並びに図22、図23及び図26〜図29から明らかなように、ミッションケース17から突出したPTO軸25を正転駆動させる主PTO操作具46と、前記PTO軸25を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTO操作具48を備える作業車両において、前記主PTO操作具46の中立以外の操作と前記副PTO操作具48の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材713を備えているから、前記PTO牽制部材713の存在によって、前記主PTO操作具46の中立以外の操作と前記副PTO操作具48の入り操作との両方を行うことがなくなり、正転のPTO出力と車速同調又は逆転のPTO出力とが前記PTO軸25上で競合するおそれを確実に回避できる。
また、前記PTO牽制部材713は、前記主PTO操作具46及び前記副PTO操作具48のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピン714と、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴715付きの連動板704とで構成し、前記PTO牽制ピン714を前記牽制リンク穴715に遊嵌させているから、前記両PTO操作具46,48同士の牽制構造を簡略化でき、組立作業性を向上できる。
更に、前記副PTO操作具48に前記PTO牽制ピン714を連動連結する一方、前記主PTO操作具46に前記牽制リンク穴715付きの連動板704を連動連結しているから、例えば前記主PTO操作具46の主PTO支点軸702及び主PTOリンク体695と、前記副PTO操作具48の副PTO支点軸710及び副PTOリンク体697とを、同一ブラケット701に組み付けてユニット構成にしたりすることが可能になり、構成部品数や組立工数等の削減を図れる。
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
2 走行機体
5 ディーゼルエンジン
17 ミッションケース
25 PTO軸
44 超低速レバー
45 副変速レバー
46 PTO変速レバー
48 副PTOレバー
112 前部変速ケース
113 後部変速ケース
114 中間ケース
495 前室
496 後室
497 中間室
500 油圧無段変速機
502 クリープ変速ギヤ機構
503 副変速ギヤ機構
672 クリープフォーク軸
673 クリープフォーク
682 副変速フォーク軸
683 副変速フォーク
690 変速牽制部材
695 主PTOリンク体
697 副PTOリンク体
701 支点ブラケット
702 主PTO支点軸
704 連動板
708 中継アーム
710 副PTO支点軸
713 PTO牽制部材
714 PTO牽制ピン
715 牽制リンク穴

Claims (3)

  1. ミッションケースから突出したPTO軸を正転駆動させる主PTO操作具と、前記PTO軸を車速同調駆動又は逆転駆動させる副PTO操作具を備える作業車両において、
    前記主PTO操作具の中立以外の操作と前記副PTO操作具の入り操作との両立を禁止するPTO牽制部材を備えている、
    作業車両。
  2. 前記PTO牽制部材は、前記主PTO操作具及び前記副PTO操作具のうちいずれか一方のPTO操作具と連動作動するPTO牽制ピンと、他方のPTO操作具と連動作動する牽制リンク穴付きの連動板とで構成し、前記PTO牽制ピンを前記牽制リンク穴に遊嵌させている、
    請求項1に記載の作業車両。
  3. 前記副PTO操作具に前記PTO牽制ピンを連動連結する一方、前記主PTO操作具に前記牽制リンク穴付きの連動板を連動連結している、
    請求項2に記載の作業車両。
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