図1を参照すると、薬液注入装置100と漏出検出装置1とを有する、本発明の一実施形態による薬液注入システムのブロック図が示される。
薬液注入装置100は、シリンジに充填された造影剤および生理食塩水といった薬液を、注入針を介して被験者の血管内に注入するのに使用される装置であり、ピストン駆動機構130と、タッチパネル104と、注入装置制御部101と、を有する。ピストン駆動機構130は、シリンジのピストンを操作する機構であり、本形態では2つのシリンジについてそれぞれのピストンを独立して操作できるように、2つのピストン駆動機構130を有している。しかし、ピストン駆動機構130の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
注入装置制御部101は、薬液の注入量および注入速度等の注入条件を設定したり、決定した注入条件に従ってシリンジから薬液が注入されるようにピストン駆動機構130の動作を制御したり、タッチパネル104の表示の制御をしたりする等、この薬液注入装置全体の動作を制御する。タッチパネル104は、ディスプレイ上にタッチスクリーンを配置したユニットであり、薬液の注入条件の設定に必要なデータ等の入力および表示、注入プロトコルの表示、注入動作の表示、各種警告の表示等を行う。本形態では、データ等の入力および表示をタッチパネル104で行うように構成されるが、表示用のユニットと入力用のユニットをそれぞれ別のユニットで構成することもできる。その場合、表示用のユニットとしては、例えば液晶ディスプレイ等の公知の表示ユニットを用いることができ、入力用のユニットとしては、例えば、キーボードおよび/またはマウスなどの公知の入力ユニットを用いることができる。
漏出検出装置1は、薬液注入装置100により注入された薬液(特に造影剤)の血管外漏出を検出するのに用いられる装置であり、センサヘッド10、センサ制御部20および漏出判断部30を有する。
センサヘッド10は、薬液注入の際、被験者に密着させた状態で固定されて使用され、複数の発光素子11および1つの受光素子12を有している。発光素子11は、電圧が印加されることによって所定の波長の光を出射する素子であり、発光素子11としては、例えば、赤外線を出射する発光ダイオードを用いることができる。受光素子12は、少なくとも発光素子11が出射する波長の光を受光することによって、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であり、受光した光の強度に応じた大きさの電気的出力が得られる。受光素子12としては、例えばフォトトランジスタを用いることができる。
センサ制御部20は、発光素子11および受光素子12の動作の制御回路として構成され、予め設定された手順に従ってどの発光素子11をどのタイミングで駆動するかを制御する。漏出判断部30は、受光素子12から出力された電気的検出値の変化に基づいて薬液の漏出を判断し、漏出が生じたと判断した場合に、電気信号である漏出検出信号を出力する電気回路である。センサ制御部20および漏出判断部30は、個別にあるいは組み合わせられて、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには、この漏出検出装置1の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、漏出検出装置1の各部の動作を制御する。
漏出検出装置1は、ランプ62および警報器64の少なくとも一方を任意に有することができる。ランプ62は、例えばLEDランプなどを用いることができ、センサ制御部20によって制御されて、この漏出検出装置1の動作状態(例えば、停止状態であるか検出動作中であるか等)に応じて、消灯、点灯、点滅といった点灯状態が切り換えられ、これによって操作者に漏出検出装置1の動作状態を報知することができる。また、ランプ62が複数色の光で発光できるものであれば、漏出検出装置1の動作状態に応じて異なる色で発光するようにすることもできるし、さらに、発光色と点灯状態とを組み合わせることもできる。
警報器64は、例えば電子ブザーを用いることができ、センサ制御部20によって制御されて、この漏出検出装置1の動作状態(例えば、漏出の検出、漏出検出装置自身のエラー発生)に応じて警報音を発し、これによって操作者に漏出検出装置1の動作状態を報知することができる。
次に、上述した薬液注入システムの機械的構成および各要素の配置等について詳細に説明する。
図2に示すように、薬液注入装置100は、ピストン駆動機構130(図1参照)を備えた注入ヘッド110と、タッチパネル104(図1参照)を備えたコンソール120と、を有する。注入ヘッド110とコンソール120とは、電気信号を送受信可能に互いに接続されている。図示した例では、ヘッドケーブル102およびヘッド延長ケーブル103を介して注入ヘッド110とコンソール120とが接続されているが、両者は任意の1本または複数本のケーブルで接続することができる。注入ヘッド110とコンソール120とは無線接続とすることもできる。
コンソール120は、図1に示した注入装置制御部101を備えることができる。注入装置制御部101は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成することができ、CPU、ROM、RAM、他の機器とのインターフェースを有することができる。ROMには薬液注入装置100の制御用のコンピュータプログラムが実装されている。CPUは、このコンピュータプログラムに対応して各種機能を実行することで、薬液注入装置100の各部の動作を制御する。注入装置制御部101の機能を、他の汎用コンピュータあるいは他の装置に組み込み、コンソール120はデータの入力および表示の機能のみを有するように構成することもできる。薬液注入装置100は、補助的なデータ入力ユニットとしてハンドスイッチ140をさらに有することもできる。
注入ヘッド110は、適宜のヘッド支持部材に支持される。ヘッド支持部材は、公知の可動式スタンドの一部であってもよいし、天井に固定される多関節の支持アームアセンブリの一部であってもよい。図示した例では、注入ヘッド110は、多関節の支持アームアセンブリの一部である吊り下げ部材150に支持されている。
また、図3に示すように、注入ヘッド110は、2つのシリンジ200C、200Pを並列に着脱自在に装着する。シリンジ200C、200Pは、末端にシリンダフランジ221aが形成されるとともに先端にノズル部221bが形成されたシリンダ221と、シリンダ221内に進退移動可能に挿入されたピストン222とを有している。
ピストン222がシリンダ221の先端へ向けて前進することで、充填されている薬液が、ノズル部221bを介してシリンジ200C、200Pから押し出される。各シリンジ200C、200Pのノズル部221bには、先端側から末端側へと向かう途中で二股に分岐した延長チューブ230の末端部が連結される。延長チューブ230の先端部には、注入針が接続される。これらシリンジ200C、200Pおよび延長チューブ230などでシリンジユニットが構成される。被験者の血管に注入針を穿刺して、シリンジ200C、200Pに充填されている薬液を被験者に注入することができる。シリンジ200C、200Pに充填される薬液としては、造影剤および生理食塩水などが挙げられ、例えば、一方のシリンジ200Cに造影剤を充填し、もう一方のシリンジ200Pに生理食塩水を充填することができる。
注入ヘッド110の上面先端部には、2つのシリンジ200C、200Pが載せられるシリンジ受け120が備えられている。シリンジ受け120は、シリンダ221の外周面を受け入れるように形成された2つの凹部120aを有する。また、シリンジ受け120には、シリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを受け入れるシリンジアダプタ121、122が着脱自在に装着される。
シリンジ受け120に載せられたシリンジ200C、200Pは、ノズル部221bを先端側に向けた状態でシリンダ221を凹部121内に位置させ、シリンダフランジ221aが保持されることで、注入ヘッド110に固定された状態で装着される。ただし、シリンジ200C、200Pには種々のサイズおよび/形状のものが存在し、それら全ての種類のシリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを共通の保持構造で保持するのは困難である。そこで、本形態では、装着されるシリンジ200C、200Pの形状ごとに、それぞれシリンダフランジ221aを保持するのに適した保持構造を有してシリンジ受け120に着脱自在に装着される複数種類のシリンジアダプタ121、122を用意し、使用するシリンジアダプタ121、122をシリンジ200C、200Pの種類に応じて交換することで、種々のサイズおよび/またはシリンジ200C、200Pを注入ヘッド110に装着できるようにしている。
ピストン駆動機構130は、各シリンジ200C、200Pが装着される位置に対応して配置されている。ピストン駆動機構130は、駆動モータ(不図示)、駆動モータの回転出力を直線運動に変換する運動変換機構(不図示)、およびピストン222を前進および後退させるために、運動変換機構に連結されてピストン222の末端部を係脱自在に保持するピストン保持機構(不図示)と、を有する。このようなピストン駆動機構130としては、薬液注入装置で一般に用いられる公知の機構を用いることができるので、ここではその詳細な説明は省略する。
再び図2を参照すると、漏出検出装置1は、センサヘッド10と、操作ユニット40と、電源ユニット50と、を有する。操作ユニット40は、適宜のケーブルを介して電源ユニット50と電気的に接続され、さらに、操作ユニット40とセンサヘッド10も適宜のケーブルを介して互いに電気的に接続される。図示した形態では、操作ユニット40と電源ユニット50とは操作ユニット接続ケーブル42および操作ユニット延長接続ケーブル44を介して接続され、操作ユニット40とセンサヘッド10とはセンサヘッド接続ケーブル16を介して接続されているが、これらのケーブルは任意のケーブルであってよい。漏出検出装置1が電源ユニット50を有することで、漏出検出装置1は、薬液注入装置100に電源が投入されているか否かに関係なく作動することができる。
図4〜6に示すように、センサヘッド10は、例えば樹脂等により形成された筐体15と、筐体15から延びるヘッドケーブル19と、を有する。ヘッドケーブル19は、図2に示したセンサヘッド接続ケーブル16または操作ユニット40と電気的に接続することができる。筐体15は、略円柱状の外形を有して形成され、その底面は、使用時に被験者に密着される平坦な密着面17とされる。また、筐体15は、閉じたケースとして構成されており、複数の発光素子11および1つの受光素子12が内部に保持されている。発光素子11の数は任意であってよいが、図示した形態では、センサヘッド10は4つの発光素子11を有している。筐体15の上面には、複数のリブ15a(図示した形態では4つ)が、筐体15の周方向に等間隔で形成されている。各リブ15aは、筐体15の上面の直径方向に延び、各リブ15aの延長線が筐体15の中心で交わるように形成されている。
図7に示すように、4つの発光素子11および1つの受光素子12は、1つの基板13に実装されて筐体15(図4〜6参照)の内部に固定されている。受光素子12は、筐体15の密着面17の中心に相当する位置に配置され、4つの発光素子11は、受光素子12を、受光素子12から等距離で、かつ、互いに周方向に等角度間隔で取り囲んだ位置に配置されている。発光素子11および受光素子12のこのような配置により、すべての発光素子11による発光領域の中心と、受光素子12による受光領域の中心が一致する。本実施形態では4つの発光素子11を有するので、これら発光素子11が、受光素子12を中心に90度間隔で配置される。
上記のように1つの受光素子12および4つの発光素子11が配置された基板13は、密着面17側から見たときに、例えば、受光素子12が4つのリブ15a(図4参照)の延長線の交点上に位置し、かつ、4つの発光素子11がリブ15aに対して特定の位置関係に配置されるように筐体15に固定される。
図5に示すように、筐体15の密着面17には、中央の開口部17a、およびその周囲の4つの開口部17bが形成されている。
中央の開口部17aは、筐体15の内部に配置された受光素子12と対向するように密着面17の中心に位置しており、受光素子12は、この開口部17aを通って筐体15の内部に入射した光を受光する。このようにして、受光素子12には、開口部17aを通過して筐体15の内部に入射した光を作用させる。よって、筐体15は、それ自身が外光を透過させないように構成されることが好ましい。そのためには、例えば、筐体15を、外光を透過しない材料で形成するか、筐体15の内面を塗装などによって黒色とするか、またはこれらを組み合わせて構成することができる。
外周部の4つの開口部17bは、それぞれが各発光素子11と対向するように開中央の口部17aを中心に周方向等角度間隔で形成されており、各発光素子11からの光はそれぞれ対向する開口部17bを通って筐体15の外部へ出射される。
発光素子11による光の照射範囲および受光素子12による受光範囲は、それぞれ開口部17bおよび17aの形状の影響を受ける。よって、発光素子11から出射した光の効率的な利用という観点からは、開口部17a、17bの形状は円形であることが好ましい。
図8に、中央の開口部17aが形成された部分でのセンサヘッド10の要部縦断面図を示す。図8に示すように、開口部17aには、発光素子11(図8では不図示)が出射する光を透過する透光部材18が、筐体15の内側から嵌め込まれている。透光部材18は、開口部17aの内周面との間に液体が流通できる隙間が生じないように、開口部17aの開口形状と等しいサイズおよび形状の横断面を有している。
透光部材18の厚み方向一端にはフランジ部18aが形成されている。透光部材18は、フランジ部18aを筐体15の内側に位置させて取り付けられており、このフランジ部18aを含めた透光部材18の外周面を筐体15に密着させて、開口部17aから外れないように保持される。または、透光部材18は、フランジ部18aが筐体15の内面に接着されることによって、開口部17aから外れないように筐体15の内面に保持されていてもよい。フランジ部18aの接着には接着剤を用いることもできるし、接着テープを用いることもできる。また、透光部材18がフランジ部18aを有することにより、異物や薬液が筐体15の内部に浸入し難い構造となっている。透光部材18のフランジ部18aを除いた部分の厚さは筐体15の下壁の厚さと等しく、これにより、筐体15の下面と透光部材18の下面とは同一平面上に位置している。
図8では、受光素子12に対向する開口部17aに関連する構造について説明したが、発光素子11に対向する開口部17bもこれと同様に構成され、各開口部17bにそれぞれ透光部材18が筐体15の内側から嵌め込まれて保持されている。各開口部17a、17bに透光部材18が嵌め込まれることにより、筐体15の下面全体は、透光部材18の下面も含めて平坦な密着面17を形成する。
筐体15の内面への透光部材18の保持は、図9に示すように、筐体15の下壁5aと基板13との間に位置するように筐体15に形成された押さえ部材19により透光部材18のフランジ部18aを筐体15の内側から下壁5aに押さえ付けられることで、透光部材18を筐体15の内面に保持することもできる。図9に示す構成も、受光素子12に対向する開口部17aに嵌め込まれる透光部材18および発光素子11に対向する開口部17bに嵌め込まれる透光部材18の何れにも適用することができる。
このように、透光部材18がフランジ部18aを有することで、このフランジ部18aを利用して透光部材18を様々な方法で筐体15に保持させることができる。フランジ部18aを利用して透光部材18を保持させることで、透光部材18を透過する光に何ら影響を与えることなく、透光部材18を筐体15に確実に保持することができる。
さらに、図8に示した構造においては、筐体15の内部には、開口部17a(各開口部17b)およびそれと対向する受光素子12(各発光素子11)を全周にわたって取り囲む隔壁5bが、筐体15の下壁5aから基板13に向かって延びて形成されていることが好ましい。これにより、各発光素子11から開口部17bを通過して筐体15の外部へ出射する光の経路、および筐体15の外部から開口部17aを通過して受光素子12に到達する光の経路をそれぞれ独立させ、その結果として漏出の検出精度を向上させることができる。6に示した透光部材18の保持構造においても、図5に示した隔壁5bと同様の効果を押さえ部材19によって達成できるようにするために、押さえ部材19を、開口部17a(開口部17b)および受光素子12(発光素子11)を全周にわたって取り囲むように形成することができる。
電源ユニット50は、発光素子11、受光素子12、センサ制御部20および漏出判断部30など、漏出検出装置1の電気的に作動される各部に電力を供給するユニットである。本形態では、電源ユニット50として、電源ケーブル52を介して商用電源を利用する場合を例に挙げているが、乾電池、二次電池、燃料電池などのバッテリーを備えるものであってもよい。また、電源ユニット50は、例えば注入装置接続ケーブル105を介してコンソール120に接続されることによって薬液注入装置100にも電力を供給するようにすることもできる。
操作ユニット40は、センサヘッド10による血管外漏出の検出の開始および停止の際に操作されるユニットであり、図10に示すように、検出開始/停止ボタン41を備えている。この検出開始/停止ボタン41を操作することによって、センサヘッド10による検出動作の開始と停止を切り換えることができる。
前述したセンサ制御部20、漏出判断部30、ランプ62および警報器64(いずれも図1参照)は、この操作ユニット40の構成の一部として操作ユニット40に組み込まれることができる。あるいはこれらの一部、例えばランプ52および警報器54のみを操作ユニット40に組み込み、残りのセンサ制御部20および漏出判断部30を他のユニットに組み込んでもよい。この場合、センサ制御部20および漏出判断部30が組み込まれるユニットは、漏出検出装置1を構成するユニットの一部である、センサヘッド10または電源ユニット50であってよい。センサ制御部20および漏出判断部30は同じユニットに組み込まれてもよいし、別々のユニットに組み込まれてもよい。
また、ランプ62を操作ユニット40に設ける場合、ランプ62の取り付けは、ランプ62からの光を操作者が視認できるように取り付けられていれば任意であってよい。例えば、図10に示す検出開始/停止ボタン41を、ランプ62からの光を透過できる程度の透明または半透明の部材で構成し、その検出開始/停止ボタン41の背面側にランプ62を配置することにより、検出開始/停止ボタン41を通して、ランプ62からの光を視認できるようにすることができる。
センサ制御部20および漏出判断部30は、薬液注入装置100の機能の一つとして構成することもできる。この場合、センサ制御部20および漏出判断部30は、コンソール120または注入ヘッド110に組み込まれ、センサヘッド10は注入ヘッド110に接続されることが好ましい。センサヘッド10が注入ヘッド110に接続される場合は、センサヘッド10の動作用電力には薬液注入装置100を動作させる電力を利用することができる。
センサ制御部20と注入装置制御部101とは、互いにデータ等を送受信可能に接続されることが好ましい。こうすることによって、漏出検出装置1による検出結果に基づいて薬液注入装置100の動作を制御したり、薬液注入装置100による薬液の注入動作と漏出検出装置1による検出動作を連動させたりすることが可能となる。
次に、上述した薬液注入システムによる漏出検出動作の一例について説明する。
センサヘッド10を被験者に固定するのに先立って、注入針が被験者の血管に穿刺される。通常は、被験者の腕の血管に注入針が穿刺される。注入針の穿刺後、センサヘッド10は、その密着面17の中心(センサヘッド10の中心)が、穿刺された注入針の先端のほぼ真上に位置するように、好ましくは注入針の先端が密着面17の中心(センサヘッド10の中心)より手前になるように、粘着シートを用いて被験者に固定される。
この際、前述したように筐体15の上面にリブ15aが形成されていれば、注入針の先端のほぼ真上、好ましくは注入針の先端よりも先の位置にリブ15aの交点が位置するように筐体15を配置することによって、注入針とセンサヘッド10との位置合わせを容易に行なうことができる。また、注入針は血管に沿って穿刺されるので、筐体15に形成された何れかのリブ15aの長手方向が注入針の穿刺方向と一致するように筐体15を固定すれば、発光素子11が血管に対して特定の位置に配置されることになり、造影剤の血管外漏出をより良好に検出することができるようになる。
なお、本実施形態において筐体15の上面に形成したリブ15aは、センサヘッド10(筐体15)を被験者に固定する際のおおよその位置および/または向きの目安を示す目印となる役割を有する。この役割を果たす限り、リブ15aは任意の形状であってよい。また、筐体15の上面に形成される目印は、目視できるものであれば任意の形態とすることができ、リブ15aの代わりに、凹部として形成したり、印刷によって形成したりしたものであってよい。
センサヘッド10を被験者に固定するための粘着シートとしては、両面粘着シートあるいは片面粘着シートを使用することができる。粘着シートとして両面粘着シートを用いれば、両面粘着シートを被験者の体表面に貼付し、さらにその上にセンサヘッド10の密着面17を押し付けることによってセンサヘッド10を被験者に固定することができる。あるいは、粘着シートとして比較的大面積の片面粘着シートを用いることもでき、その場合は、センサヘッド10を覆うようにして、センサヘッド10と一緒に片面粘着シートを被験者に貼付することによってセンサヘッド10を被験者に固定することができる。さらには、これらの両方を併用することもできる。
筐体15の上面がドーム状に形成されていれば、センサヘッド10の筐体15を粘着シートで覆って被験者に固定する場合に、粘着シートと筐体15との接着面積がより大きくなるため、センサヘッド10を被験者に対してより安定して固定することができる。
センサヘッド10が被験者に固定された後、操作者によって、操作ユニット40の検出開始/停止ボタン41が操作されることによって漏出検出装置1が作動を開始する。すなわち、漏出検出装置1による漏出の監視が開始される。漏出の監視中、センサ制御部20はランプ62を点灯させる。
漏出検出装置1による漏出の監視が開始されると、センサ制御部20は、漏出の監視が開始されたことを表す電気信号である漏出監視開始信号を薬液注入装置100の注入装置制御部101へ送信する。注入装置制御部101は、漏出監視開始信号を受信すると、タッチパネル104への表示を利用して、操作者に漏出監視中であることを報知する。
漏出検出装置1が漏出監視中であることを表す表示は文字、記号、画像など任意であってよく、それらの中でも、監視状態を操作者が直感的に理解できるような表示であることが好ましい。そのような、タッチパネル104への表示の一例を図11に示す。
図11を参照すると、薬液注入装置100(図1参照)による薬液の注入動作実行中の画面である注入中画面300が示される。漏出検出装置1による漏出監視動作中、すなわち漏出検出装置1の作動中は、この注入中画面300に、漏出検出装置1が漏出監視動作中であることを表す画像の一例として、漏出監視アイコン310が表示される。なお、図示した注入中画面300には、漏出監視アイコン310の他に、注入条件(注入速度、注入量、注入時間)301、各シリンジの薬液残量302、注入開始からの経過時間303、注入圧力304、時間経過による注入圧力の推移を表す注入グラフ305が表示されているが、注入中画面300の表示はこれに限定されるものではなく、必要に応じて任意に変更することができる。
図11に示す漏出監視アイコン310は、センサヘッド10の主要部の外形状を模した図形で表されており、筐体15を表す円形の部分は、発光素子11の数および配置に対応して複数の領域(本形態では4つ)に区画されている。ここでは、漏出監視アイコン310が注入中画面300に表示される場合を例に挙げたが、漏出監視アイコン310が表示される画面は、漏出監視動作中を実行し得る画面であれば、注入プロトコルを設定するのに必要なデータを入力するためのデータ入力画面、注入速度設定画面、設定確認画面など任意の画面であってよい。
漏出監視アイコン310は、漏出監視動作の実行中にのみ表示され、漏出監視動作が実行されていない間は表示されないようにすることが好ましい。この場合は、漏出が検出されて操作者が操作ユニット40の検出開始/停止ボタン41を操作すると、タッチパネル104に表示されている画面から漏出監視アイコン310が表示されなくなる。これにより、例えば、漏出の検出により漏出監視動作を一旦停止させた後、再度薬液の注入を開始する際に、タッチパネル104上の漏出監視アイコン310が表示されていないことから、操作者が検出開始/停止ボタン41の操作忘れを抑制できる。また、薬液の注入動作の開始および停止(終了)に同期して、漏出監視動作の開始および停止が制御されるようにしてもよい。この場合は、注入動作の開始と同時に、注入装置制御部101からセンサ制御部20へ注入開始信号が送信され、センサ制御部20は、注入開始信号の受信をトリガーとして漏出監視動作を開始し、さらに、注入動作の停止(終了)と同時に、注入装置制御部101からセンサ制御部20へ注入停止信号が送信され、センサ制御部20は、注入停止信号の受信をトリガーとして漏出監視動作を終了するようにすることができる。
一方、センサヘッド10においては、漏出監視動作中は、センサ制御部20からの指令により複数の発光素子11が駆動され、これによって各発光素子11から光が出射される。本形態では、複数の発光素子11は、2つ以上の発光素子11が同時に駆動されないように、予め決められた順番に従って1つずつ順番にパルス駆動される。発光素子11から出射した光は、開口部17bを通って被験者の体表面および体内を照らし、その光の一部が、開口部17aを通って筐体15内に入射し、受光素子12によって受光される。受光によって、受光素子12にはその光強度に応じた大きさの電流が流れ、その電流値に応じた電気的な検出値を、センサ制御部20を経由してまたは直接、漏出判断部30に出力する。
ここで、薬液の血管外漏出が発生していなければ、受光素子12からの検出値は変化しない。ところが、血管外漏出が発生すると、被験者の体内に入射した光の一部が血管外の周辺組織に漏出した薬液によって吸収されるので、受光素子12での受光強度が低下し、受光素子12からの検出値が低下する。漏出判断部30は、発光素子11が駆動されている間の受光素子12からの検出値の大きさが、予め決められた閾値以下になると、血管外漏出が発生したと判断する。より詳しくは、漏出判断部30は、上記閾値を記憶するメモリを有し、この閾値と入力された検出値とを比較し、比較の結果に基づいて血管外漏出が発生したか否かを判断する。血管外漏出が発生したという判断は、血管外漏出が検出されたことを意味する。
漏出判断部30により血管外漏出が生じたことが判断されると、血管外漏出が生じたことを意味する電気信号である漏出情報をセンサ制御部20へ出力する。漏出情報を受信したセンサ制御部20は、ランプ62の動作状態を変化させるとともに、警報器64を作動させ、血管外漏出が生じたことを操作者に報知する。ランプ62の動作状態の変化としては、例えば、点灯から点滅に変更すること、ランプ62の発光色を変更する(例えば、緑色から赤色へ)こと、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
漏出情報を受信したセンサ制御部20は、さらに、注入装置制御部101を介して、タッチパネル104に表示されている漏出監視アイコン310の表示を制御(変更)する。前述したように、漏出監視アイコン310は、発光素子11の数および配置に応じた複数の領域に区画されている。本形態では、図12に示すように、漏出監視アイコン310は、4つの領域310a〜310dに区画され、それぞれセンサヘッド10における発光素子11a〜11dの配置に従って、1つの領域310a〜310dに1つの発光素子11a〜11dが対応している。なお、図12に示す発光素子11a〜11dは、各領域310a〜310dとの対応関係を分かり易くするためのものであり、実際の漏出監視アイコン310には表示されていてもよいし表示されていなくてもよい。
漏出情報は、血管外漏出が発生したと判断された検出値が得られたときに駆動された発光素子11a〜11dを特定できる情報を含んでおり、例えば、領域310aに対応する発光素子11aの駆動に基づいて漏出の発生が判断された場合、漏出判断部30は、その発光素子11aを特定できる情報を、漏出情報としてセンサ制御部20へ出力する。そのために、例えば、各発光素子11a〜11dに固有の番号を予め割り当てておき、その番号を漏出情報として出力することができる。
漏出情報を受信したセンサ制御部20は、図12Aに示すように、漏出監視アイコン310の表示を制御し、領域310aを他の領域310b〜310dと異なる色で表示させる。同様に、3つの領域310a〜310cにそれぞれ対応する3つの発光素子11a〜11cについて漏出の発生が判断された場合は、図12Bに示すように、センサ制御部20は、3つの領域310a〜310cを他の領域310dと異なる色で表示させる。これらの漏出監視アイコン310の表示は、他と異なる色で表示された領域の近傍で血管外漏出が発生していることを表している。
以上のように、複数の発光素子11について、発光素子11ごとに血管外漏出の有無を判断し、その発光素子11ごとに漏出情報を出力することで、血管外漏出が発生した場合に、その程度を把握できる情報を取得することができる。例えば、血管外漏出の検出結果を図12A、図12Bに示すようにグラフィックで表すことにより、図12Aに示す状態と図12Bに示す状態とを比較すると、図12Bに示す状態のほうが、より広範囲にわたって血管外漏出が拡がっていることを直感的に把握することができる。その結果、仮に血管外漏出の発生が検出された場合であっても、それが薬液の注入を直ちに停止して緊急に対処すべき程度の漏出なのか、あるいは様子を見ながら薬液の注入を継続してもよい程度の漏出なのかなど、操作者の適切な判断に大いに役立つ。
薬液の注入を停止するか否かを薬液注入装置100の注入装置制御部101で判断するようにすることもできる。その場合、漏出判断部30から出力される漏出情報が、血管外漏出が発生したと判断された発光素子11の数についての情報も含めるようにし、例えば、全ての発光素子11のうち半数以上の発光素子11について血管外漏出の発生が判断された場合に、センサ制御部20は、注入動作を停止させるための注入停止信号を注入装置制御部101に送信し、この注入停止信号の受信に基づいて注入制御部101がピストン駆動機構130の動作を停止させるステップを実行させるようにすることができる。
血管外漏出が発生していると判断された検出値が得られたときに駆動された発光素子11は必ずしも特定される必要はなく、漏出判断部から出力される漏出情報は、発光素子11の数に関する情報であってもよい。この場合は、漏出監視アイコン310の代わりに、例えば図13に示すような、発光素子の数と等しい複数の領域311a〜311dを有するレベルインジケータを模した漏出監視アイコン311を表示し、どの発光素子11において漏出の発生が判断されたかとは無関係に、漏出の発生が判断された発光素子11の数だけ、例えば左の領域311aから順番に表示を変更するようにすることもできる。
ここで、駆動していない発光素子11側でセンサヘッド10の浮き上がりが生じると、外光が密着面17と被験者の体表面との間で反射を繰り返しながら進行し、最終的には開口部17aを介して受光素子12まで達してしまう場合が考えられる。これを防止するために、本実施形態では密着面17の少なくとも開口部17aの周囲を含む領域を黒色とし、外光が密着面17で吸収されやすいようにしている。これによって、外光の影響がより排除され、より安定した検出結果を得ることができる。
センサヘッド10の浮き上がりについては、例えば以下のようにして検出することができる。
センサヘッド10に浮き上がりが生じると、受光素子12は、外乱光を検出し、受光強度が高くなるので、外乱光を検出しない場合と比べて検出値が高くなる。従って、発光素子11からの光を検出するタイミングでの受光素子12からの検出値が、薬液の血管外漏出がない場合の検出値よりも高ければ、受光素子12は発光素子11からの光以外の光、すなわち外乱光を受光したということであり、漏出判断部30は、センサヘッド10に剥がれが生じたと判断することができる。また、発光素子11からの光を検出するタイミングではないタイミングで受光素子11から所定の値以上の検出値が得られた場合、本来は受光素子11が光を受光しない状態で光を受光したということであるので、この場合も、漏出判断部30は、センサヘッド10に浮き上がりが生じたと判断することができる。
さらに、本実施形態の漏出検出センサ1は、光を通過させるために筐体15に形成された開口部17a、17bに透光部材18を嵌め込み、密着面17を凹凸のない平坦面としている。その結果、密着面17に異物や薬液が溜りにくくなるので、これら異物や薬液による検出感度の低下を防止することができる。仮に異物や薬液が密着面17に付着した場合であっても、密着面17が平坦であるので、その除去は極めて容易である。
ところで、従来の一般的なセンサヘッドでは、図14に示すように、平板状の透光部材1018が筐体の内側から開口部1017aを塞ぐように保持されているので、密着面1017を被験者に密着させても、開口部1017aの部分において、被験者の体表面と透光部材1018との間に、被験者と密着しない空気層が形成される。発光素子1011により被験者に照射される光、および被験者の体内で反射して受光素子1012に入射する光は、この空気層を通過する。しかし、空気層は、被験者へのセンサヘッドの押圧力の違いおよび被験者の体の弾性の違いなどにより、厚みや被験者の体表面との境界面形状が変化し、様々なレンズとして作用するので、それが不安定な検出結果を招く要因となっていた。
これに対して本形態のセンサヘッド10では、開口部17a、17bに透光部材18が嵌め込まれることにより、開口部17a、17bが形成された部分では透光部材18が被験者に密着される。そのため、発光素子11から出射した光は、従来のように空気層を通過することなく、被験者の体内で反射して受光素子12に入射する。つまり、開口部17a、17bが形成された部位では透光部材18が被験者に密着するようにすることで、密着面17と被験者との間で一定の密着状況を得ることができ、結果的に、センサヘッド10の被験者への押圧力や被験者の体の弾性などに依存しない、安定した検出結果を得ることができる。
なお、受光素子12からの検出値は被験者によるばらつきが生じるため、通常は、漏出検出に先だって、薬液が注入されていない状態においてキャリブレーションを実施し、キャリブレーションによって得られた検出値を基準値とする。
以上、本発明を代表的な実施形態によって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
例えば、発光素子11の配置は任意であってよく、図15に示すようにマトリックス状に配置することもできる。さらに、受光素子12の数および配置についても任意であってよく、図15に示すように、複数の受光素子12を有することができる。
複数の受光素子12を有することによって、例えば、ある発光素子11が駆動されたときに複数の受光素子12のうち何れかから得られる検出値が所定の閾値以下であるときに漏出が生じていると判断すれば、複数の受光素子12によるより広い領域での検出が可能となるので、漏出の発生をより良好に検出することができる。
また、複数の受光素子12を有する場合は、漏出判断のアルゴリズムにおいて、どの受光素子12からの検出値が閾値以下であるかを特定できるようにすることで、検出の分解能を高くする、言い換えれば、漏出を検出できる領域の数を発光素子11の数よりも多くすることができる。例えば、図15に示す発光素子11および受光素子12の配置において、4つの受光素子12のうち何れかの検出値が閾値以下であるときに漏出が発生したと判断する場合は、漏出を検出できる領域の数は、発光素子11の数と同じ数であり、その領域の配置は、図15に実線で区画されているように、発光素子11の配置に対応する。
しかし、発光素子11および受光素子12の配置が同じであっても、例えば、図15Aに示す発光素子11aを駆動したときに、4つの受光素子12a〜12dのうち、1つの受光素子12aからの検出値が閾値以下であれば、領域310aの近傍で漏出が発生したと判断でき、また、受光素子12bからの検出値が閾値以下であれば、領域310bの近傍で漏出が発生したと判断できる。さらに、2つの受光素子12a、12bからの検出値が閾値以下であれば、2つの領域310a、310bの近傍で漏出が発生したと判断することができる。こうすることにより、漏出を検出できる領域の数を、図15Aに一点鎖線で示すように、より細分化することができる。
このように、ある発光素子11を駆動したとき、受光素子11からの検出値が閾値以下であるかを受光素子11ごとに確認し、閾値以下である場合に、その発光素子11と受光素子12との組み合わせについて漏出が発生したと判断し、その判断を、全ての発光素子11について行い、漏出判断部30(図1参照)から出力される漏出情報が、判断された発光素子11および受光素子12を特定できる情報を含むように、漏出判断部30(図1参照)が構成されることで、より高い分解能で漏出を検出することができる。漏出判断部30から出力される漏出情報は、前述した、センサヘッドを模した漏出監視アイコン310(図11等参照)やレベルインジケータを模した漏出監視アイコン311(図13参照)など、漏出の程度および/またはおおよその範囲を視覚的に表す画像の表示に利用することができる。
また、発光素子11と受光素子12との関係を置き換え、センサヘッド10は単一の発光素子11と複数の受光素子12とを有することも可能である。その一例として、図16に示す形態では、密着面の外周部に複数の受光素子12を配置し、中央部に1つの発光素子11を配置した例を示す。発光素子11はパルス駆動されてもよいし連続駆動されてもよい。
この場合、漏出判断部30は、発光素子11が駆動されている間の受光素子12からの検出値が、予め決められた閾値以下であるか否かの判断を受光素子12ごとに行い、閾値以下であれば、その受光素子12について、血管外漏出の発生が検出されたと判断する。そして、血管外漏出が発生していると判断された場合は、その検出値が得られた受光素子12について、漏出情報を受光素子12ごとに出力する。漏出情報は、前述した形態と同様、血管外漏出が発生していると判断された検出値が得られた受光素子12を特定できる情報を含んでいてもよいし、血管外漏出が生じていると判断された検出値が得られた受光素子12の数に関する情報を含んでいてもよいし、これらの両方を含んでいてもよい。漏出情報は、センサ制御部20を介して薬液注入装置100へ送信され、前述した形態と同様、薬液注入装置100のタッチパネル104への、血管外漏出の程度および/またはおおよその範囲を視覚的に表す画像の表示に利用することができる。なお、本形態のように受光素子12ごとに血管外漏出の判断を行う場合においても、発光素子11の数は複数であってよい。発光素子11の数が複数である場合、発光素子11を予め決められた順番で1つずつ発光するようにパルス駆動し、各発光素子11の駆動タイミングで受光素子12ごとの血管外漏出の判断を行い、漏出判断部30から出力される漏出情報が、血管外漏出が生じていると判断された検出値が得られた受光素子12を特定できる情報をさらに含むようにすることにより、図15Aを用いて説明した場合と同様、漏出検出の分解能を高くすることができる。
複数の発光素子11および複数の受光素子12を有する場合、発光素子11の数と受光素子12の数は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
複数の発光素子11および複数の受光素子12の数が同じである場合、複数の発光素子11および複数の受光素子12を、1対1で対応させて配置することもできる。その一例を図17に示す。図17に示す例では、密着面が4つの領域に区画され、各領域に、それぞれ1つの発光素子11と1つの受光素子12とがペアとなるよう、互いに隣接して配置されている。本形態においては、血管外漏出の発生の有無の判断は、発光素子11および受光素子12のペアごとに行うことができる。例えば、漏出判断部30は、発光素子11が駆動されている間、その発光素子11に対応する受光素子12からの検出値が予め決められた閾値以下であるか否かの判断を行い、閾値以下であれば、その受光素子12について、血管外漏出の発生が検出されたと判断する。これを発光素子11と受光素子12の対ごとに行い、血管外漏出が発生していると判断された場合は、血管外漏出が発生していると判断された検出値が得られた発光素子11と受光素子12の対について、その対ごとに漏出情報を出力する。発光素子11は、1つずつ順番に駆動される方法、あるいは全てが同時に駆動される方法など、任意の方法で駆動することができる。
漏出情報は、前述した形態と同様、血管外漏出が発生していると判断された検出値が得られた受光素子12の対を特定できる情報を含んでいてもよいし、血管外漏出が生じていると判断された検出値が得られた受光素子12の数に関する情報を含んでいてもよいし、これらの両方を含んでいてもよい。漏出情報は、センサ制御部20を介して薬液注入装置100へ送信され、前述した形態と同様、薬液注入装置100のタッチパネル104への、血管外漏出の程度および/またはおおよその範囲を表す画像の表示に利用することができる。
また、これまでの形態では、血管外漏出の状態を表す画像が、薬液注入装置100が有するディスプレイユニット(タッチパネル104)に表示される場合を示した。しかし、漏出検出装置1がディスプレイユニットを備え、そのディスプレイユニットに、例えば図12に示した、センサヘッドを模した漏出監視アイコン310や、図13に示した、レベルインジケータを模した漏出監視アイコン311など、血管外漏出の状態を表す画像を表示させるようにしてもよい。
そのようなディスプレイユニットの一例を図18に示す。図18を参照すると、注入ヘッド110に一体に設けられたディスプレイユニットA151の一例が示される。ディスプレイユニットA151は、連結機構A155を介してヘッド支持構造A158に接続されている。特に限定されるものではないが、ディスプレイユニットA151は、注入ヘッド110と間隔をあけて、注入ヘッド110の上方に位置してもよい。連結機構A155は、例えば、鉛直軸周りおよび/または水平軸周りに注入ヘッド110が回動できるように注入ヘッド110を保持するものであってもよい。
上述のような構成によれば、ディスプレイユニットA151の向きを、注入ヘッド110の向きとは無関係に、上下方向および左右方向に広範囲で調整できるので、操作者がディスプレイユニットA151をより視認しやすいものとなる。また、ディスプレイユニットA151を注入ヘッド110と間隔をあけて配置することにより、ディスプレイユニットA151を、注入ヘッド110やその他の装置にノイズの影響を与えにくい最適位置に配置することができる。また、ディスプレイユニットA151は、薬液注入装置100のサブディスプレイとして、注入条件の設定画面や注入動作中の画面などを表示するのに利用することもできる。
上述した形態では、1つのセンサヘッド10に適宜数の発光素子11および受光素子12を配置した例を示したが、これら発光素子11および受光素子12を複数のセンサヘッド10に振り分けることもできる。あるいは、図7等に示すように発光素子11および受光素子12が配置された複数のセンサヘッド10を用いて血管外漏出を検出することもできる。このように複数のセンサヘッド10を用いる場合、センサ制御部20は、センサヘッド10ごとに発光素子11の駆動を制御してもよいし、複数のセンサヘッドを1つのセンサヘッドとみなして発光素子11の駆動を制御してもよい。漏出判断部30による血管外漏出の判断についても同様である。
また、複数のセンサヘッド10を用いることによって、例えば、複数のセンサヘッド10を被験者の腕の周方向に沿って固定して血管外漏出を検出するようにすることにより、血管外漏出の程度や範囲などを、平面的にではなく立体的に把握することもできる。
また、上述した形態では、漏出判断部30による血管外漏出の判断について、受光素子12からの検出値が所定の閾値以下であるときに血管外漏出が発生したと判断するものとして説明した。しかし、漏出判断部30は、受光素子12からの検出値の大きさに応じて複数段階で血管外漏出を判断することもできる。
受光素子12から出力される検出値は受光強度に応じて変化し、受光強度が大きいほど受光素子12からの検出値は大きい。よって、例えば、漏出判断部30に、漏出判断のレベルを検出値により、血管外漏出が生じていない第1レベル、血管外漏出が生じているがそのまま薬液の注入を継続して問題ない第2レベル、および薬液の注入を停止すべき程度まで血管外漏出が生じている第3レベルの3段階に設定しておく。第1〜第3のレベルは、それぞれに対応する検出値が第1〜第3参照値として規定される。第2参照値は第1参照値よりも小さく、第3参照値は第2参照値よりも小さい。
漏出判断部30は、まず、受光素子12からの検出値を、第1参照値と比較し、第1参照値のほうが大きければ、血管外漏出は発生していないと判断する。第1参照値が検出値以下であれば、漏出判断部30は、次いで、検出値と第2参照値とを比較し、第2参照値のほうが大きければ、第1レベルの血管外漏出が発生していると判断する。第2参照値が検出値以下であれば、漏出判断部30は、次いで、検出値と第3参照値とを比較し、第3参照値のほうが大きければ、第2レベルの血管外漏出が発生していると判断する。第3参照値が検出値以下であれば、漏出判断部30は、第3レベルの血管外漏出が発生していると判断する。
以上の判断結果は、漏出監視アイコンの表示に利用され、例えば、第1レベルであれば緑色、第2レベルであれば橙色、第3差ベルであれば赤色というように、異なる表示色で表示されるようにすることで、操作者はどのレベルにあるか視覚的に判断できる。このような色分けによる漏出レベルの表示は、例えば図12に示したようなセンサヘッドを模した漏出監視アイコン310においては、各領域をそれぞれ漏出のレベルに応じた色で表示させることができる。あるいは、発光素子ごとおよび/または受光素子ごとの漏出判断結果および上述した漏出レベル判断結果を利用して予め決められた判断手順にしたがって、全体についての漏出レベルを総合的に判断し、例えば図19に示すような単純化された漏出監視アイコン312の領域312aを、前述したように、漏出レベルに応じて緑色、橙色および赤色で表示するようにすることもできる。
以上、漏出レベルの判断およびその色分け表示について、漏出レベルを3段階とした場合を例に挙げて説明したが、漏出レベルの段階は2段階であってもよいし4段階以上であってもよい。表示の色は、レベルごとに異なる色とされることが好ましい。