JP6551470B2 - 高炉操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素を吸着させた固体還元材を高炉羽口から吹込み、還元材比を低減させる高炉操業方法に関する。
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出COの抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reduction Agent Ratioの略で、銑鉄1t製造当りの、羽口からの吹込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主にコークスおよび羽口から吹込む微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては、炭酸ガス排出抑制を達成するために微粉炭の燃焼性を改善させて、コークスの使用量を低減する方策が有効である。
特許文献1には、50〜150℃の温度範囲のO含有雰囲気に吹込み炭を曝し、Oを吹込み炭に化学吸着させて未燃炭素量を減少させる技術が開示されている。また、特許文献2には、平均揮発分が25mass%以下の微粉炭と同時に吹込まれる気体中の酸素濃度を微粉炭吹込みランス先端部近傍周辺で70vol%以上、または、微粉炭搬送ガス中の酸素濃度を70vol%以上として低揮発分微粉炭の燃焼性を向上させる技術が開示されている。
特許第5843968号公報 特開2003−286511号公報
特許文献1に開示された発明炭はO原子含有割合が高く、かつOが化学吸着しているため、燃焼温度が高くなることが記載されている。しかし、従来炭と比較してO含有割合が高いことからCの含有割合が低く、燃焼により発生するCOガス発生量も低下する。高炉において鉄鉱石から銑鉄への還元はCOガスによるガス還元が主である。吹込み炭からのCOガス発生量が低下した場合、それを補うために必要なコークス原単位を増加させることが必要になり、結果的に還元材原単位が増加する可能性がある。また、O原子含有割合が高いために通常の高炉に吹込む微粉炭よりも発熱量が小さく高炉内の炉熱が低下しコークス比および還元材比も低下しない可能性がある。
また、特許文献2に開示された技術は、微粉炭と同時に吹込まれるガス中の酸素濃度を一定以上にするように記載しているが、微粉炭の燃焼においては微粉炭周囲に酸素が近接して存在することが重要である。特に、微粉炭がランスから吐出される場合は微粉炭粒子群として吹込まれるため、粒子群内部では酸素濃度が低下する。したがって、ガス中の酸素濃度を上げても、微粉炭の粒子群内部の酸素濃度を向上できないので、粒子群の外側に存在する一部の微粉炭の燃焼性は改善できるとしても、微粉炭全体の燃焼性を改善することはできない。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、所定量の酸素を固体還元材に吸着させることで固体還元材全体の燃焼性を改善させ、当該固体還元材を単管のランスから吹込むことで、高炉の還元材比を低減させることにある。
このような課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
(2)高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、比表面積が2.0m/g以上であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満である固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
(3)高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、比表面積が2.0m/g以上であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満であり、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
(4)高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、酸素の吸着量が0.055kg/kg−coal未満の固体還元材に、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた固体還元材を、全固体還元材量に対して50質量%以上となるように配合して、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
(5)高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、酸素の吸着量が0.055kg/kg−coal未満の固体還元材に、比表面積が2.0m/g以上であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満であり、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた固体還元材を、全固体還元材量に対して10質量%以上となるように配合して、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
(6)前記固体還元材は、微粉炭であることを特徴とする(1)から(5)の何れか1つに記載の高炉操業方法。
(7)前記微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、および、廃材の少なくとも1つを混合することを特徴とする(6)に記載の高炉操業方法。
本発明の高炉操業方法を実施することで、全体の燃焼性が改善された固体還元材を高炉羽口から吹込むことができる。全体の燃焼性が改善された固体還元材は、部分的に燃焼性が改善された固体還元材と比較して、より少ない固体還元材量で高炉の炉内温度を高めることができるので、本発明の高炉操業方法を実施することで高炉の還元材比の低減が実現できる。
燃焼実験装置10の部分断面模式図である。
本発明は、高炉の羽口から固体還元材を吹込んで高炉の炉内温度をより高める手法として、固体還元材に酸素を吸着させることに着目してなされたものである。すなわち、固体還元材に酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させることで、固体還元材全体の燃焼性を改善させることができる。このように、燃焼性が改善された当該固体還元材を高炉の羽口から吹込むことで、少ない固体還元材量で高炉の炉内温度を高めることができ、これにより、高炉の還元材比を低減できることを見出して本発明を完成させた。
まず、本発明をするに到った燃焼試験について説明する。酸素の吸着量、比表面積およびドライベースの酸素原子含有割合を変えた5種の微粉炭を準備し、燃焼試験を実施した。5種の微粉炭のうち、調整微粉炭1〜4は、含有水分60質量%、ドライベースの揮発分50質量%の低品位炭を準備し、500〜1000℃の範囲内の温度で所定時間加熱処理して、含有水分を1質量%以下とした。なお、ドライベースとは、微粉炭に含まれる含有水分量を除いた質量を意味する。この加熱処理済みの低品位炭を、例えば、粒径74μm以下の微粉の割合が80質量%以上になるように粉砕して、比表面積を変えた調整微粉炭1〜4の微粉炭を製造した。
比表面積は、Nガス吸着によるBET法で測定した。BET法は、粉末試料に吸着する気体量を吸着気体の圧力の関数として測定する方法である。粉末試料に気体を物理吸着させたとき、吸着した気体量Vaと吸着平衡にある吸着気体の圧力Pとの間には、P/Pの値が0.05〜0.30の範囲内で(1)式の関係がある。

但し、(1)式において、Pは吸着平衡圧(kPa)であり、Pは、測定温度における吸着気体の蒸気圧(kPa)であり、Vaは吸着平衡時の吸着量(mL)であり、Vは単分子層吸着量(mL)であり、Cは吸着熱、凝縮熱などの定数である。
吸着平衡時の吸着量Vaは、流動法または容量法を用いて測定できる。流動法は、吸着気体と吸着気体を搬送するキャリア気体の混合
気体を試料に接触通過させ、通過前後の吸着気体の濃度変化から吸着量を算出する方法である。容量法は、容積が既知の容器に粉末試料を入れ、試料表面における気体の吸着に伴う圧力変化から吸着量を算出する方法である。粉末試料の比表面積は、(1)式の単分子層吸着量Vと(2)式とを用いて算出できる。

但し、(2)式において、Sは比表面積(m/g)であり、Nはアボガドロ数であり、aは吸着気体分子1個の有効断面積(m)であり、mは粉末試料の質量(g)である。
この微粉炭に100kPa以上の圧力で酸素を吸着させた。酸素の吸着量は、酸素吸着前後の微粉炭の質量差から求めた。また、酸素原子含有割合は、微粉炭を元素分析(ドライベース)して求めた。なお、燃焼試験で用いた微粉炭は固体還元材の一例である。
微粉炭Aは、加熱処理せずに、粒径74μm以下の微粉の割合が80質量%以上になるように粉砕されて製造された微粉炭である。表1に燃焼試験に用いた微粉炭Aおよび調整微粉炭1〜4の酸素吸着量、比表面積およびドライベースの酸素原子含有割合を示す。
表1に示すように、調整微粉炭1は、酸素の吸着量を0.055kg/kg−coal未満、比表面積を2.0m/g未満、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%以上に調整した微粉炭である。調整微粉炭2は、酸素の吸着量を0.055kg/kg−coal以上、比表面積を2.0m/g未満、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%以上に調整された微粉炭である。調整微粉炭3は、酸素の吸着量を0.055kg/kg−coal未満、比表面積を2.0m/g以上、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%未満に調整された微粉炭である。調整微粉炭4は、酸素の吸着量を0.055kg/kg−coal以上、比表面積を2.0m/g以上、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%未満に調整された微粉炭である。
燃焼試験は、高炉の羽口付近を模した装置であって、ランスを介して羽口から吹込まれた微粉炭が燃焼した位置を視認できるように構成された燃焼実験装置を用いて実施した。羽口からの微粉炭の吹込み速度を29.8kg/h(銑鉄1t当り100kgに相当)として、単管ランスから微粉炭Aまたは調整微粉炭1〜4を吹込み燃焼試験を実施した。
送風条件は、送風温度を1200℃、流量を300Nm/h、流速を70m/s、送風中のO濃度を26.5体積%(O富化量を+5.5体積%)とした。微粉炭の搬送ガスにはNを用いた。この試験条件で、微粉炭Aと、調整微粉炭1〜4の着火性および燃焼温度を評価した。その結果を表2に示す。
着火性は、着火距離と着火時間で評価した。着火距離とは、ランスから吹込まれた微粉炭が着火するまでのランス先端からの距離である。この距離が短い微粉炭を着火性に優れる微粉炭と判定し、この距離が長い微粉炭を着火性に劣る微粉炭と判定した。
図1は、燃焼実験装置10の部分断面模式図である。図1は、燃焼実験装置10におけるランス16が設けられた部分を示している。図1に示すように、燃焼実験装置10の炉壁12から燃焼実験装置10の内側に羽口18が挿入されている。微粉炭は、ランス16から、搬送ガスであるNとともに送風管(ブローパイプ)14内に吹込まれる。送風管14内に吹込まれた微粉炭は、酸素富化された空気とともに、羽口18から燃焼実験装置10内の高温領域に吹込まれて着火する。図1において、着火位置20は、ランス16から燃焼実験装置10内に吹込まれた微粉炭が着火した位置を示す。図1における距離aは、羽口18の先端から着火位置20までの距離であって、表2における着火距離である。距離aは、ランスから吹込まれる微粉炭流を燃焼実験装置10に設けられた覗き窓から高速度カメラにより撮影して測定した。
同様に、着火時間とは、羽口18の先端から燃焼実験装置10内に吹込まれた微粉炭が、燃焼実験装置10内で着火するまでの時間である。この時間が短い微粉炭を着火性に優れる微粉炭であると判定し、この時間が長い微粉炭を着火性に劣る微粉炭であると判定した。なお、表2の着火性における「判定」の行に示した「△」は、着火性が微粉炭Aと同程度であることを意味し、「○」は、着火性が微粉炭Aよりも優れることを意味し、「◎」は、着火性が微粉炭Aより大きく優れることを意味する。
また、燃焼温度とは、微粉炭が燃焼した際の温度である。この温度が高い微粉炭を燃焼温度が高い微粉炭であると判定し、この温度が低い微粉炭を燃焼温度が低い微粉炭であると判定した。なお、表2の燃焼温度における「判定」の行に示した「△」は、燃焼温度が1505℃未満であることを意味し、「○」は、燃焼温度が1505℃以上1540℃未満であることを意味し、「◎」は、燃焼温度が1540℃以上であることを意味する。なお、微粉炭の燃焼温度は、2色温度計を用いて測定を行なった。
表2に示すように、調整微粉炭1は、微粉炭Aよりも着火距離が短かったが、その差は僅かであり、また、着火時間が同じであった。このため、調整微粉炭1の着火性は、微粉炭Aと同程度であると判定した。また、調整微粉炭2は、微粉炭Aと着火時間が同じであったが、着火距離が微粉炭Aより短かった。このため、調整微粉炭2の着火性は、微粉炭Aよりも優れると判定した。調整微粉炭3は、微粉炭Aよりも着火距離が短く、着火時間が早かった。しかしながら、着火時間の差が僅かであったことから、調整微粉炭3の着火性は、微粉炭Aよりも優れると判定した。調整微粉炭4は、微粉炭Aよりも着火距離が著しく短くなり、着火時間も著しく早くなった。このため、調整微粉炭4の着火性は、微粉炭Aよりも大きく優れると判定した。
また、燃焼温度について、調整微粉炭1の燃焼温度は、微粉炭Aと同じであり、その温度が1505℃未満であったので「△」と判定した。また、調整微粉炭2および調整微粉炭3の燃焼温度は、微粉炭Aよりも高くなり、その温度が1505℃以上1540℃未満の範囲内であったので「○」と判定した。また、調整微粉炭4の燃焼温度は、微粉炭Aよりも著しく高くなり、その温度が1540℃以上であったので「◎」と判定した。
ここで、表1に示した微粉炭Aおよび調整微粉炭1〜4の酸素吸着量および比表面積から表2の結果を考察すると、着火性および燃焼温度は、微粉炭への酸素吸着量と微粉炭の比表面積に影響を受けると考えられる。すなわち、微粉炭粒子に吸着された酸素は、送風由来の熱により速やかに離脱し、さらに、個々の微粉炭粒子に酸素が吸着しているので、微粉炭粒子群の内側に酸素を多量に存在させることができる。これにより、酸素を微粉炭粒子群全体に均一に接触させることができ、この結果、微粉炭の燃焼性が向上した。また、微粉炭の比表面積が増えると、微粉炭が時間当たりに外部から受ける熱量が増加するとともに微粉炭周囲の酸素との接触性が改善されるので、これにより着火性が向上し、燃焼温度が高められたと考えられる。
調整微粉炭1および調整微粉炭2の結果から、微粉炭に酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた微粉炭を用いることで、微粉炭の着火性を向上させることができ、燃焼温度を高められることが確認された。また、調整微粉炭1および調整微粉炭3の結果から、比表面積を2.0m/g以上に調整された微粉炭を用いることで、微粉炭の着火性を向上させることができ、燃焼温度を高められることが確認された。更に、調整微粉炭1および調整微粉炭4の結果から、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させ、比表面積を2.0m/g以上に調整された微粉炭を用いることで、微粉炭の着火性を大きく向上させ、燃焼温度を大きく高められることが確認された。なお、微粉炭の比表面積が大きい程微粉炭の燃焼性が向上するので、微粉炭の比表面積の上限は設けなくてよい。しかしながら、揮発分を多く含み空孔が多い比表面積の大きい石炭であっても、その比表面積は最大で10m/g程度である。この石炭の比表面積を更に大きくするには乾留する等の予備処理が必要になり、当該予備処理を行うと石炭に含まれる揮発分が減少して石炭の着火性が低下する。このため、微粉炭の比表面積は、1000m/g以下とすることが好ましい。
また、低品位炭の加熱処理条件の変更により微粉炭の酸素原子含有割合(ドライベース)を変更した微粉炭に調整微粉炭4と同量の酸素を吸着させた調整微粉炭5、6を作製した。調整微粉炭4〜6の性状を表3に示す。なお、表3に示した調整微粉炭4は、表1に示した調整微粉炭4と同じである。
表3に示すように、ドライベースの酸素原子含有割合を高めると、発熱に寄与する微粉炭中のC原子含有割合が低くなり、C原子含有割合に主に依存する低位発熱量が低下する。
微粉炭の低位発熱量は、JIS M 8814に準拠して高位発熱量H(MJ/kg)を測定し、測定された高位発熱量Hと(3)式とを用いて算出した。

但し、(3)式において、Hは低位発熱量(MJ/kg)であり、Hは燃焼前の試料中の水素含有量(質量%)であり、wは燃焼前の試料中の水分含有量(質量%)であり、rは水蒸気の凝縮潜熱(MJ/kg)である。この調整微粉炭5、6についても、燃焼実験装置10を用いて燃焼試験を行なった。この結果を表4に示す。
表4に示すように、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%以上である調整微粉炭6は、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満である調整微粉炭4、5と比較して着火性は向上したが燃焼温度は低下した。調整微粉炭6は、表3に示したように、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満である調整微粉炭4、5よりも低位発熱量が低い。このため、調整微粉炭6は、調整微粉炭4、5よりも着火性は向上したものの燃焼温度が低下した。このことから、着火性を向上させ、燃焼温度を高めるには、微粉炭のドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%未満とすることが好ましいことがわかる。
また、同条件で2重管ランスにおいて内側から29.8kg/h(銑鉄1t当たり100kgに相当)の微粉炭、外側から調整微粉炭4に吸着した酸素量と同じ量の酸素をランスから吹込んだ場合の着火性、燃焼温度を測定した。この結果を表5に示す。
表5に示すように、2重管ランスを用いて、内管から微粉炭Aを吹込み、外管から酸素を吹込んだ場合と比較して、同じ量の酸素を吸着させた微粉炭を単管で吹込んだ方が、着火性の向上効果および燃焼温度を高める効果が大きかった。
これは、外管から吹込まれた酸素は、内管から吹込まれた微粉炭Aの粒子群のうち外周側に存在する微粉炭には接近できるが、粒子群の中心側に存在する微粉炭には接近できない。このため、酸素を微粉炭粒子群全体に均一に接触させることができず、2重管ランスを用いて微粉炭と酸素とを別々に吹込む方法では、部分的な微粉炭の燃焼性の改善はなされるものの、微粉炭全体の燃焼性を改善できない。
一方、微粉炭に酸素を吸着させることで、粉炭粒子群の内側に酸素を多量に存在させることができる。これにより、酸素を微粉炭粒子群全体に均一に接触させることができ、この結果、微粉炭全体の燃焼性を改善できる。このため、2重管を用いて微粉炭と酸素とを別々に吹込む場合と比較して、酸素を微粉炭に吸着させた微粉炭を単管で吹込む方が、着火性向上効果および燃焼温度向上効果が大きくなったと考えられる。
このように着火性が向上され、燃焼温度が高められた微粉炭を、ランスを介して高炉羽口から吹込むことによって、着火性が向上されておらず、燃焼温度が高められていない微粉炭を吹く込む場合よりも高炉の炉内温度を高めることができる。これにより、高炉の炉熱を確保でき、高炉操業における還元材比の低減が実現できる。
また、上述したように、微粉炭に酸素を吸着させることで、2重管ランスを用いることなく単管ランスを用いて微粉炭を吹込むことができる。これにより、微粉炭を吹込むランスを細くすることができ、ランスの圧力損失を少なくできる。
さらに、このように着火性が向上され、燃焼温度が高められた微粉炭に、着火性が改善されておらず、燃焼温度が高められていない微粉炭を配合した配合微粉炭を高炉の羽口から吹込んでもよい。この場合に、着火性が改善され、燃焼温度が高められた微粉炭を、全微粉炭量に対して少なくとも50質量%以上となるように配合することが好ましい。なお、着火性が改善され、燃焼温度が高められた微粉炭を多く配合すれば着火性および燃焼温度が改善された微粉炭を多く含むことになり、より高炉の炉内温度を高められることになる。このため、着火性および燃焼温度が改善された微粉炭の配合率については、下限値を定めれば上限値は定めなくても高炉の還元材比の低減は実現できる。なお、着火性が改善されておらず、燃焼温度が高められていない微粉炭とは、例えば、酸素の吸着量を0.055kg/kg−coal未満とした微粉炭である。
38本の羽口を備えた高炉を使用し、微粉炭Aまたは調整微粉炭1〜4を吹込んで高炉の操業を実施した実施例について説明する。内容積5000mの高炉であって、目標11500t/dayの銑鉄生産量、150kg/t−銑鉄の微粉炭比、送風温度1200℃、O富化+5.5体積%の条件下で、ランスを介して高炉羽口から微粉炭Aまたは調整微粉炭1〜6を吹込みながら高炉の操業をそれぞれ3日間実施した。微粉炭Aおよび調整微粉炭1〜6の3日間の平均コークス比(kg/t−銑鉄)を算出した。この結果を表6に示す。
表6において、調整微粉炭2〜6は発明例であり、微粉炭Aおよび調整微粉炭1は比較例である。表6に示すように、調整微粉炭1は、微粉炭Aと比較してコークス比に変化はなく、還元材比であるコークス比を低減できなかった。調整微粉炭1の着火性および燃焼温度は、微粉炭Aと同程度であるので、このような微粉炭を用いても微粉炭の燃焼性を改善させることができず、このため、コークス比が低減しなかったと考えられる。
一方、調整微粉炭2、3、6は、微粉炭Aと比較して還元材比であるコークス比が低減した。調整微粉炭2は、微粉炭Aよりも着火性が向上され、燃焼温度も高い。このような調整微粉炭2を用いることで、微粉炭Aを用いた場合よりも高炉の炉内温度を高めることができ、これにより、コークス比が低減した。
また、調整微粉炭4、5は、微粉炭Aと比較して還元材比であるコークス比が大きく低減した。調整微粉炭4、5は、微粉炭Aよりも着火性が大きく向上し、燃焼温度も著しく高い。このような調整微粉炭4、5を用いることで、微粉炭Aを用いた場合よりも高炉の炉内温度を著しく高めることができ、これにより、コークス比が大きく低減した。
このように、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた調整微粉炭2をランスを介して高炉羽口から吹込むことで高炉の還元材比であるコークス比を低減できることが確認された。同様に、比表面積を2.0m/g以上とした調整微粉炭3または酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させ、比表面積を2.0m/g以上とした調整微粉炭6をランスを介して高炉羽口から吹込むことでも高炉の還元材比であるコークス比を低減できることが確認された。
また、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させ、比表面積を2.0m/g以上とし、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%未満とした調整微粉炭4、5をランスを介して高炉羽口から吹込むことで、高炉の還元材比であるコークス比を大きく低減できることが確認された。このため、高炉羽口から吹込む微粉炭としては、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させ、比表面積を2.0m/g以上とし、酸素原子含有割合を10.0質量%未満とした微粉炭を吹込むことがより好ましいことがわかる。このような微粉炭を高炉羽口から吹込むことによって、高炉の還元材比を低減することができ、これにより、高炉操業における還元材使用量の低減が実現できる。
次に、微粉炭Aに調整微粉炭2および調整微粉炭4を、全微粉炭量に対して所定比率(5、10、20、50質量%)となるように配合した配合炭を作製し、上記と同じ高炉および同じ操業条件下で、当該配合炭を高炉に吹込む操業をそれぞれ3日間実施し、平均コークス比(kg/t−銑鉄)を算出した。表7に調整微粉炭2の配合比率と算出した平均コークス比を示す。また、表8に調整微粉炭4の配合比率と算出した平均コークス比を示す。
表7に示すように、調整微粉炭2においては、配合比率が50質量%以上になるように調整微粉炭2を配合することで、コークス比の低減が可能となった。また、表8に示すように、調整微粉炭4においては、配合比率が10質量%以上になるように調整微粉炭4を配合することでコークス比の低減が可能となった。
着火性が向上され、燃焼温度が高められた調整微粉炭2および調整微粉炭4は、微粉炭Aと比較して早く着火する。この着火による燃焼熱は微粉炭Aに伝熱されるので、これにより、微粉炭Aに調整微粉炭2または調整微粉炭4が配合された微粉炭全体の着火性が改善され、燃焼温度を高めることができたと考えられる。そして、このような微粉炭をランスを介して高炉羽口から吹込むことで、コークス比の低減が実現できたと考えられる。
この結果から、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させた調整微粉炭2を、微粉炭Aに50質量%以上配合することで、還元材比であるコークス比の低減が可能となることが確認された。さらに、酸素を0.055kg/kg−coal以上吸着させ、比表面積を2m/g以上とし、ドライベースの酸素原子含有割合を10.0質量%未満とした調整微粉炭4を、微粉炭Aに10質量%以上配合することで、還元材比であるコークス比の低減が可能となることが確認された。このように、着火性が向上されてなく、燃焼温度が高められていない微粉炭Aも、着火性が向上され燃焼温度が高められた調整微粉炭2または調整微粉炭4を配合することでコークス比の低減が可能となり、微粉炭Aも有効に利用することができた。
ここで、微粉炭Aは、比表面積が2.0m/g未満であり、酸素の吸着量が0.055kg/kg−coal未満であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%以上の微粉炭である。このため、表7および表8に示した例において、調整微粉炭2および調整微粉炭4を配合する微粉炭としては、少なくとも、酸素の吸着量が0.055kg/kg−coal未満の微粉炭であればよい。このような微粉炭であれば、調整微粉炭2または調整微粉炭4を上述したそれぞれの配合率で配合することで、還元材比であるコークス比の低減が可能となることが確認された。
なお、燃焼試験および本実施例において、固体還元材として微粉炭を用いた例を示したが、これに限られない。固体還元材としては、微粉炭、プラスチック、廃タイヤ、RDF等の固形燃料、生物に由来する資源である有機性資源、廃木材等の廃材の少なくとも1種であってよい。
10 燃焼実験装置
12 炉壁
14 送風管
16 ランス
18 羽口
20 着火位置

Claims (4)

  1. 高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、
    100kPa以上の圧力で酸素を物理吸着させ、酸素吸着前後の固体還元材の質量差から求めた吸着量が0.055kg/kg−固体還元材以上固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
  2. 高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、
    比表面積が2.0m/g以上であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満であり、100kPa以上の圧力で酸素を物理吸着させ、酸素吸着前後の固体還元材の質量差から求めた吸着量が0.055kg/kg−固体還元材以上固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
  3. 高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、
    100kPa以上の圧力で酸素を物理吸着させ、酸素吸着前後の固体還元材の質量差から求めた吸着量が0.055kg/kg−固体還元材以上固体還元材を、全固体還元材量に対して50質量%以上となるように配合して得た固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
  4. 高炉羽口から固体還元材を吹込む高炉操業方法であって、
    比表面積が2.0m/g以上であり、ドライベースの酸素原子含有割合が10.0質量%未満であり、100kPa以上の圧力で酸素を物理吸着させ、酸素吸着前後の固体還元材の質量差から求めた吸着量が0.055kg/kg−固体還元材以上固体還元材を、全固体還元材量に対して10質量%以上となるように配合して得た固体還元材を、ランスを介して前記高炉羽口から吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
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