JP6550661B2 - 表面被覆切削工具の製造方法 - Google Patents

表面被覆切削工具の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面被覆切削工具に関する。
従来から、基材上に被膜を形成した表面被覆切削工具が用いられている。たとえば、特開2013−063504号公報(特許文献1)には、Ti化合物層を下部層とし、この下部層上にα型の結晶構造を有するAl23層からなる上部層を配設した被膜を有する表面被覆切削工具が提案されている。特に、この表面被覆切削工具では、上部層の下部層との界面における(11−20)配向を30〜70面積%とし、上部層全体における(0001)配向を45面積%以上とした構成が開示されている。その一方で、α−Al23層の深さ方向における(001)配向の分布については開示がない。
特開平10−204639号公報(特許文献2)には、異なったX線回折パターンを示す2層以上のα型酸化アルミニウム単位層からなり、α型酸化アルミニウム単位層が、2θで25.5度、35.5度、37.2度、および68.4度のいずれかに最強ピークが現われ、最強ピーク高さ(H1)と同じX線回折パターンにおける2番目のピーク高さ(H2)の比(H1)/(H2)が1.5〜2.7であるX線回折パターンを示すα型酸化アルミニウム複合層で構成された硬質被覆層を備える表面被覆超硬合金製切削工具が提案されている。
特開2000−218410号公報(特許文献3)には、結晶配向が高い下部層と結晶配向が低い上部層からなり、上部層の層厚を、下部層との合計に占める割合で10〜40%に相当する層厚としたα型結晶構造の酸化アルミニウム層を含む硬質被覆層を備えた表面被覆超硬合金製切削工具が提案されている。
特開2013−063504号公報 特開平10−204639号公報 特開2000−218410号公報
上記特許文献1〜3で提案されるように、α−Al23の膜質改良を図ることにより、超硬合金からなる切削工具の性能向上、特に耐クレーター摩耗性および耐チッピング性を向上させることが期待されている。しかしながら膜質改良に関し、上記特許文献1のように、Al23の結晶粒の特定方向への配向性に着目する限りでは、膜強度が向上する効果が得られる一方で、様々な問題を包含することとなる。
たとえば、α−Al23の結晶粒の(001)配向は、基材表面と平行な方向に対して熱膨張係数が高くなる傾向を示すため、成膜後の冷却時に被膜に亀裂が多数発生する恐れがある。また、(001)配向するα−Al23の結晶粒は、速度の速い条件下で成長が進むため、結晶粒が粗大化し耐摩耗性が低下する恐れもある。一方で、上記特許文献2、3のように配向性の異なる複数のAl23の結晶粒を含んだ被膜に着目する限りでは、特定方向(たとえば、(001)面方向)へ配向するα−Al23の結晶粒の割合が低くなるため、膜強度が向上する効果を十分に得ることが困難となる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされ、膜強度が向上する効果を十分に得た上で、結晶粒の粗大化を防ぎ、冷却時の被膜の亀裂発生を防ぐことが可能な表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備え、該被膜は、複数のα−Al23の結晶粒を含んだα−Al23層を含み、該α−Al23層は、該基材側に配置された下層部と、該下層部上に配置された中間部と、該中間部上に配置された上層部とを含み、該下層部は、前記α−Al23層の断面研磨面に対する電子線後方散乱回折装置を用いた結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となり、該中間部は、該結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となり、該上層部は、該結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となり、該α−Al23層の厚みは、4〜18μmであり、該中間部の厚みは、該α−Al23層の厚みの50%以上を占め、該下層部および該上層部の厚みはいずれも1μm以上である。
上記によれば、膜強度が向上する効果を十分に得た上で、結晶粒の粗大化を防ぎ、冷却時の被膜の亀裂発生を防ぐことができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
[1]本発明の一態様に係る表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備え、該被膜は、複数のα−Al23の結晶粒を含んだα−Al23層を含み、該α−Al23層は、該基材側に配置された下層部と、該下層部上に配置された中間部と、該中間部上に配置された上層部とを含み、該下層部は、前記α−Al23層の断面研磨面に対する電子線後方散乱回折装置を用いた結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となり、該中間部は、該結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となり、該上層部は、該結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となり、該α−Al23層の厚みは、4〜18μmであり、該中間部の厚みは、該α−Al23層の厚みの50%以上を占め、該下層部および該上層部の厚みはいずれも1μm以上である。このような構成により表面被覆切削工具は、膜強度が向上する効果を十分に得た上で、結晶粒の粗大化を防ぎ、冷却時の被膜の亀裂発生を防ぐことができる。
[2]上記下層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となることが好ましい。これにより、結晶粒の粗大化を抑制する効果を高めることができる。
[3]上記上層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となることが好ましい。これにより、冷却時の被膜の亀裂発生を抑制する効果を高めることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本実施形態の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える。被膜は、基材の全面を被覆することが好ましい。しかしながら、基材の一部がこの被膜で被覆されていなかったり被膜の構成が部分的に異なっていたりしていたとしても、本発明の範囲を逸脱するものではない。
本実施形態の表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップなどの切削工具として好適に使用することができる。
<基材>
基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれも使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえば、WC基超硬合金、WCのほか、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nbなどの炭窒化物を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCNなどを主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、立方晶型窒化ホウ素焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
これらの各種基材の中でも超硬合金、特にWC基超硬合金、またはサーメット(特にTiCN基サーメット)を選択することが好ましい。これらの基材は、特に高温における硬度と強度のバランスに優れ、上記用途の表面被覆切削工具の基材として優れた特性を有している。
表面被覆切削工具が刃先交換型切削チップなどである場合、基材はチップブレーカーを有するものも、有さないものも含まれる。また、刃先稜線部は、その形状がシャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドを組み合わせたものの中で、いずれのものも含まれる。
<被膜>
被膜は、複数のα−Al23(結晶構造がα型である酸化アルミニウム)の結晶粒を含んだα−Al23層を含む。たとえば被膜は、複数のα−Al23の結晶粒を含んだα−Al23層を1層以上含み、さらに他の層を含んだ複数の層から構成することができる。α−Al23層は、複数のα−Al23の結晶粒を含んだ多結晶のα−Al23を含んでいる。α−Al23の結晶粒は通常、約0.1〜2μm程度の大きさの粒径を持つ。
被膜は、厚みが4〜45μm(4μm以上45μm以下、なお本願において数値範囲を「〜」を用いて表わす場合、その範囲は上限および下限の数値を含むものとする)である。さらに被膜の厚みは、5〜35μmであることが好適である。この厚みが4μm未満であれば、耐摩耗性が不十分となる恐れがある。この厚みが45μmを超えると、断続加工などにおいて被膜と基材との間に大きな応力が加わった際に、被膜の剥離または破壊が高頻度に発生する恐れがある。なお、本明細書において被膜、後述するα−Al23層、TiCN層など各種の膜および層の「厚み」とは、「平均厚み」を意味する。
上記他の層として、TiCNO層、TiBN層、TiC層、TiN層、TiAlN層、TiSiN層、AlCrN層、TiAlSiN層、TiAlNO層、AlCrSiCN層、TiCN層、TiSiC層、CrSiN層、AlTiSiCO層、TiSiCN層などを例示することができる。ここで本明細書において上記のように化合物を化学式で表わすとき、原子比を特に限定しない場合は従来公知のあらゆる原子比を含み、必ずしも化学量論的範囲のものに限定されない。
たとえば「TiAlN」と記載されている場合、TiAlNを構成する原子数の比はTi:Al:N=0.5:0.5:1に限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。このことは、「TiAlN」以外の化合物の記載についても同様である。また、本実施形態において、Ti、Al、Si、ZrまたはCrなどの金属元素と、N(窒素)、O(酸素)またはC(炭素)などの非金属元素とは、必ずしも化学量論的な組成を構成している必要がない。
他の層の例示としてたとえば、TiCN層は、α−Al23層と基材との間に配置される。このTiCN層は耐摩耗性に優れるため、被膜により好適な耐摩耗性を付与することができる。TiCN層は、とりわけMT−CVD(medium temperature CVD)法により形成することが好ましい。MT−CVD法は約850〜900℃という比較的低温で成膜することができ、成膜時の加熱による基材のダメージを低減することができる。
TiCN層は、その厚みが2〜20μmであることが望ましい。この厚みを2μm未満とすれば摩耗が進みやすくなる恐れがある。この厚みが20μmを超えると耐チッピング性が低下する恐れがある。
なお他の層として、最表面層および中間層なども被膜に含むことができる。最表面層は、被膜の最も表面側に配置される層である。中間層は、この最表面層とα−Al23層との間、α−Al23層とTiCN層の間またはTiCN層と基材との間などに配置される層である。最表面層としてたとえば、TiN層を例示することができる。中間層としてたとえば、TiCNO層を例示することができる。
<α−Al23層>
α−Al23層は、基材側に配置された下層部と、下層部上に配置された中間部と、中間部上に配置された上層部とを含む。
下層部は、α−Al23層の断面研磨面に対する電子線後方散乱回折(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)装置を用いた結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となる。
中間部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となる。上層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となる。
本実施形態の表面被覆切削工具は、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となる中間部により、α−Al23層の特定方向((001)面方向)への配向性によって膜強度が向上する効果を十分に得ることができる。さらに、下層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となるので、α−Al23の結晶粒の粗大化を防ぐことができ、耐摩耗性の低下を抑制することができる。また、上層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となるので、冷却時の被膜の亀裂発生を防ぐことができ、耐チッピング性の低下を抑制することができる。すなわち、このような下層部および上層部を備えることにより、α−Al23層の(001)面方向への配向性が高すぎることのデメリットであるα−Al23の結晶粒の粗大化および冷却時の被膜の亀裂発生を抑制することができる。
ここで、「(001)配向したα−Al23の結晶粒」とは、基材表面(被膜表面側に位置する表面とする)の法線に対し、(001)面の傾斜角(基材表面の法線と(001)面の法線とがなす角度)が0〜10°となるα−Al23の結晶粒をいう。α−Al23層において、任意のα−Al23の結晶粒が(001)配向しているか否かは、EBSD装置を備えた電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて確認することができる。EBSDとは、後方散乱電子によって発生する菊池回折パターンの自動分析に基づくものである。
たとえば、EBSD装置を備えたFE−SEMを用い、基材表面の法線を含む平面でα−Al23層を切断した切断面(α−Al23層の垂直断面)である断面研磨面(断面研磨面が、該切断面の研磨されてなる面であることは後述する)を撮影する。次に、撮影画像の各ピクセルの(001)面の法線方向と、基材表面の法線方向(すなわち断面研磨面におけるα−Al23層の厚み方向に平行となる直線方向)とのなす角度を算出する。そして、その角度が0〜10°以内となるピクセルを選択する。この選択されたピクセルが、基材表面に対して(001)面の傾斜角が0〜10°となるα−Al23の結晶粒、すなわち(001)配向したα−Al23の結晶粒に対応する。
そして、α−Al23層の断面研磨面の所定領域における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率は、結晶方位マッピングとして、断面研磨面のα−Al23層に対し、上記選択されたピクセルを色分けすることで作成されるカラーマップに基づいて算出される。結晶方位マッピングでは、上記選択されたピクセルに予め定められた色が付与されているため、所定領域における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を、その付与された色を指標にして算出することができる。上記なす角度の算出、該角度が0〜10°以内であるピクセルの選択、および上記面積比率の算出は、市販のソフトウェア(商品名:「Orientation Imaging Microscopy Ver 6.2」、EDAX社製)を用いて行なうことができる。
上記結晶方位マッピングから、本実施形態においてα−Al23層は、その断面研磨面において基材側に配置され、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となる下層部を含むことが特定される。また、この下層部上に配置され、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となる中間部を含むことが特定される。さらに、この中間部上に配置され、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満の上層部を含むことが特定される。なお、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を算出するにあたり、FE−SEMの観察倍率を2000〜20000倍の範囲から適宜選択することができる。また観察面積も200〜10000μm2、たとえば250μm2となるように視野数(1〜10程度)を調整することができる。
下層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が30%以下となることが好ましい。α−Al23の結晶粒の粗大化を効果的に防ぐことができるからである。中間部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となることが好ましい。(001)面方向へ配向することによって膜強度が向上する効果を十分有利に得ることができるからである。上層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が30%以下となることが好ましい。冷却時並びに使用時の被膜の亀裂発生を効果的に防ぐことができるからである。
なお、上記結晶方位マッピングにおいて、下層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率の下限値は0%であることが好ましい。中間部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率の上限値は100%であることが好ましい。上層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率の下限値は0%であることが好ましい。各層部は、このような面積比率の範囲において、それぞれ上記効果を得ることができる。
<α−Al23層の厚み>
α−Al23層は、厚みが4〜18μmである。このような厚みとすることにより、耐摩耗性、耐チッピング性を向上させることができる。被削材の溶着を抑制する効果を得ることもできる。特に、α−Al23層の厚みは、5〜15μmであることが好ましい。α−Al23層の厚みを4μm未満とすれば薄すぎて、耐摩耗性の向上効果および被削材の溶着を抑制する効果が得られない恐れがある。α−Al23層の厚みが18μmを超えると、厚すぎて被膜が剥離しやすくなり、耐チッピング性が低下する恐れがある。
<中間部の厚みがα−Al23層の厚みにおいて占める比率>
中間部の厚みは、α−Al23層の厚みの50%以上を占める。これにより、α−Al23層全体における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が高まり、膜強度が向上する効果を十分に得ることができる。中間部の厚みが占める比率の上限値は、80%である。上限値である80%を超えると、上層部または下層部の厚みが薄すぎることとなり、α−Al23の結晶粒の粗大化を抑制する効果または亀裂発生を抑制する効果が十分に得られなくなる恐れがある。中間部の最適な厚みは、α−Al23層の厚みの55〜65%である。
ここで、下層部、中間部および上層部の厚みは、次のようにして算出することができる。すなわち、上記断面研磨面に対し、基材表面の法線方向に沿って、α−Al23層の表面(被膜表面側に位置する表面とする)から基材へ向けて順に、EBSD装置を備えたFE−SEMで1×1μmの範囲を撮影し、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を算出していく。まず、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となる領域を上層部として特定する。続けて、35%以上となる領域が現れたら中間部と特定し、その後再び35%未満となる領域が現れたら下層部と特定する。下層部、中間部および上層部が特定されたら、続けて断面研磨面上の特定した各部の偏らない5か所で、上記FE−SEMによる1×1μmの範囲の撮影を再び行なうことにより、各層部の厚みを決定することができる。
その結果、本実施形態において中間部の厚みは、α−Al23層の厚みの50%以上を占めるようになる。さらに、下層部および上層部の厚みはいずれも1μm以上となる。
また、α−Al23層の厚みは、上記断面研磨面を観察することにより測定することができる。たとえば、α−Al23層の厚みは、エネルギー分散型X線分析装置(EDS:Energy Dispersive X−ray Spectroscpy)を備えた電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用い、α−Al23層の断面研磨面を観察することにより測定することができる。複数箇所のα−Al23層の断面研磨面を観察し、その厚みの平均値を算出することによって決定すればよい。そして、本実施形態では、α−Al23層は、厚みが4〜18μmとなる。
<下層部および上層部における(110)配向したα−Al23の結晶粒>
上記α−Al23層の下層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となることが好ましい。α−Al23の熱膨張率は(110)面の法線方向で高く、平行な方向では低い。そのために下層部の熱膨張率を相対的に低くすることで、冷却時の被膜の亀裂発生を効果的に防ぐことができ、耐チッピング性の低下を有利に抑制することができるからである。また、(001)配向を得るための成膜条件下において、α−Al23の結晶粒は粗大化しやすいことから、(001)配向ではないα−Al23層を配置し、これを抑制しようとするからである。これにより、α−Al23の結晶粒の粗大化による硬度低下を効果的に防ぐことができ、耐摩耗性の低下を有利に抑制することができる。
また、上記α−Al23層の上層部は、上記結晶方位マッピングにおいて、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となることが好ましい。これにより、使用時の被膜の亀裂発生を効果的に防ぐことができ、耐チッピング性の低下を有利に抑制することができる。
配向する結晶面同士のなす角度(方位差)が大きいほど、亀裂が進展しにくくなって刃先のチッピングを抑制する効果が得られると考えられる。そのため、配向する結晶面同士のなす角度が90°前後である結晶粒が層中で共存するとき、亀裂発生と進展の抑制効果を効果的に得ることができる可能性がある。
そして、α−Al23の結晶粒の(110)面は、(001)面とのなす角度が90°となる。このため、本実施形態では、(001)配向したα−Al23の結晶粒を有する下層部および上層部において、(110)配向するα−Al23の結晶粒を有するように制御し、亀裂発生の抑制効果と結晶粒の粗大化の抑制効果とを得ることができるようにした。
その一方で、α−Al23層の中間部は、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上である。このような中間部の(001)面方向への配向性によって本実施形態の表面被覆切削工具は、膜強度が向上する効果を十分に得ることができる。
なお、下層部および上層部の(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上であることについても、上述したα−Al23層の断面研磨面に対する電子線後方散乱回折装置を用いた結晶方位マッピングから測定することができる。「(110)配向したα−Al23の結晶粒」とは、基材表面の法線に対し、(110)面の傾斜角(基材表面の法線と(110)面の法線とがなす角度)が0〜10°となるα−Al23の結晶粒をいう。
すなわち、EBSD装置を備えたFE−SEMを用い、α−Al23層の断面研磨面を撮影し、上記市販のソフトウェアを用いて、撮影画像の各ピクセルの(110)面の法線方向と、基材表面の法線方向とのなす角度の算出、およびその角度が0〜10°以内となるピクセルの選択を行なう。続いて、結晶方位マッピングとして、選択されたピクセルを色分けしてカラーマップを作成する。そのカラーマップの色を指標にすることで、α−Al23層の下層部および上層部における(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を算出することができる。
上記結晶方位マッピングから、下層部および上層部の(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率は、それぞれ40%以上であることが特定される。なお、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を算出するにあたっても、上述のようにFE−SEMの観察倍率を適宜選択することが好ましく、観察面積が適切となるように視野数を調整することが好ましい。
なお、下層部および上層部の(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率は高ければ高いほど好ましく、その上限は理想的には100%である。(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が高いほど、下層部において結晶粒の粗大化の抑制効果を得ることができ、上層部において亀裂発生の抑制効果を得ることができる。
<α−Al23層の切断面の研磨加工>
以下、(001)配向したα−Al23の結晶粒および(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率を算出するために必要な、あるいは、α−Al23層および中間部の厚みを測定するために必要なα−Al23層の切断面(断面研磨面)を準備するための研磨加工方法について説明する。
まずα−Al23層を後述の製造方法に基づき形成する。形成されたα−Al23層を、α−Al23層に垂直な断面が得られるように切断する(すなわち、基材表面の法線を含む平面でα−Al23層を切断し、その切断面を露出させる)。その後、その切断面を耐水研磨紙(研磨剤としてSiC砥粒研磨剤を含むもの)で研磨する。
上記の切断は、たとえばα−Al23層の表面(α−Al23層上に他の層が形成されている場合は被膜表面とする)を、十分に大きな保持用の平板上にワックス等を用いて密着固定した後、回転刃の切断機でその平板に対して垂直方向に切断する(該回転刃と該平板とが可能な限り垂直となるように切断する)。この切断は、このような垂直方向に対して行なわれる限り、α−Al23層の任意の部位で行なうことができる。
また、上記の研磨は、当該耐水研磨紙#400、#800、#1500を順に用いて行なう(耐水研磨紙の番号(#)は研磨剤の粒径の違いを意味し、数字が大きくなるほど研磨剤の粒径は小さくなる)。
引続き、上記の断面研磨面をArイオンによるイオンミーリング処理によりさらに平滑化する。イオンミーリング処理の条件は以下の通りである。
加速電圧: 6kV
照射角度: 基材表面の法線方向から0°
照射時間: 6時間。
その後、上記の平滑化されたα−Al23層の断面研磨面を、EBSD装置を備えたFE−SEMによって観察すればよい。たとえば、HKL NL02 EBSD検出器を備えたZeiss Supra 35 VP(CARL ZEISS社製)を用いることができる。EBSDデータは、集束電子ビームを各ピクセル上へ個別に位置させることによって順に収集することができる。
<表面被覆切削工具の製造方法>
本実施形態の表面被覆切削工具は、次のようにして製造することができる。
まず、原料を焼結することにより、たとえば、超硬合金からなる基材を準備する。続いて、必要に応じてブラシまたはプラスチックメディアなどの一般的な手法を用い、基材の刃先稜線部の近傍領域に対してホーニング処理を施す。
次いで、上記の基材上に被膜を、化学気相蒸着(CVD)法により形成することによって好適に製造することができる。CVD法を用いると、成膜温度が800〜1200℃となる。この温度は物理蒸着法と比較して高く、これにより基材との密着性が向上する。被膜のうち、Al23層以外の他の層としての各層が形成される場合、それらの層は従来公知の条件で形成することができる。
α−Al23層を形成するには、原料ガスとしてたとえば、AlCl3、HCl、CO2、H2SおよびH2を用いればよい。配合量は、AlCl3を0.5〜5体積%、HClを1〜5体積%、CO2を0.3〜3体積%、H2Sを0.05〜1.5体積%とし、残部をH2とする。さらにCVD装置の諸条件は、温度が950〜1050℃であり、圧力が1〜20kPaであり、ガス流量(全ガス量)が10〜150L/minである。
なお、α−Al23層およびα−Al23層以外の各層の厚みは、成膜時間を適宜調節することにより調整することができる(各層の成膜速度は、約0.5〜2.0μm/時間である)。
被膜を形成した後に、必要に応じてブラシ処理、またはサンドブラスト処理、ウエットブラスト処理、ショットピーニング処理などのブラスト処理、あるいはPVDのボンバード処理などの各種手法を用いて表面処理をすることができる。これにより被膜に対して圧縮応力を付与することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<基材の調製>
6.5質量%のCoと、1.2質量%のTaCと、0.5質量%のZrCと、残部のWCとからなる組成比で配合した原料粉末をアトライタ(湿式メディア攪拌型微粉砕機、商品名(型番):「湿式アトライタ100S」、日本コークス工業株式会社製)で10時間湿式混合した後、乾燥させた。その後100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を真空容器に入れて2Paの真空中で1440℃、1時間保持した。
次に、この圧粉体を真空容器から取り出し、底面を平面研磨した後、刃先処理としてSiCブラシですくい面から見て0.6mmのホーニングを行なってJIS(Japanese Industrial Standard) B 4120(2013)に規定されるCNMA120408の形状のWC超硬合金製の基材(住友電気工業製)を調製した。調製した基材は、後述するα−Al23層の形成条件の組み合わせに対応するため、複数個準備した。
<被膜の形成>
上記で得られた各基材に対し、その表面に被膜を形成した。具体的には、基材をCVD装置内にセットすることにより、CVD法により基材上に被膜を形成した。被膜の形成条件は、以下の表1、表2、表3および表4に記載したとおりである。表1には、α−Al23層以外の各層を形成するための条件(温度条件、圧力条件および厚み)を示した。表2には、α−Al23層以外の各層を形成するための原料ガスの組成比(単位は、体積%)を示した。なお、α−Al23層以外の各層を形成するための条件および原料ガスの組成比は、各基材に対し共通である。
また表3には、α−Al23層を形成するための原料ガスの組成比(単位は、体積%)および当該原料ガスの温度条件、圧力条件を示した。表3に示すように、α−Al23層を形成する原料ガスのガス条件は、a〜dの4とおり存在する。本実施例では、下層部、中間部および上層部の各層部の作成に際し、これら4とおりのガス条件を組み合わせるなどして適用することで、全15とおり(試料1〜15)のα−Al23層を形成した。表4には、各試料に対して下層部、中間部および上層部の各層部を形成するのに適用した原料ガスのガス条件(a〜d)、および各層部の厚みを示した。表1および表4に記載したα−Al23層の厚み、およびそれ以外の各層部の厚みの測定方法は上述したとおりであり、測定された5箇所の厚みの平均値がそれぞれ表示されている。
各層部の成膜方法は、例えば試料5であればガス条件「d」で一定時間、下層部の成膜を行なった後、ガス条件(配合比率)を「a」に切り替えて中間部を成膜し、その後ガス条件を「d」に切り替えて、上層部を成膜するという方法である。
また、表4中、試料12はα−Al23層が1層からなり、この1層が後述するように、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が80%である層となるため、試料12の中間部の欄に、α−Al23層を形成したガス条件および層の厚みを記載することとした。試料13はα−Al23層が2層からなり、この2層が後述するように、基材側から(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が15%である層、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が75%である層となる。このため、試料13の下層部および中間部の欄に、それぞれガス条件および層の厚みを記載することとした。
α−Al23層およびα−Al23層以外の各層の厚みは、成膜時間を適宜調節することにより調整することができる。また、表1および表2中、MT−TiCNとは、MT−CVD法により形成するTiCN層を意味し、HT−TiCNとは、HT−CVD(High temperature CVD)法により形成するTiCN層を意味する。TiN(第1層)とは、基材上にまずTiN層が成膜されたことを意味する。本実施例において被膜の構成は、基材側からTiN層、MT−TiCN層、HT−TiCN層、TiCNO層およびα−Al23層の順である。そしてα−Al23層は、基材側から下層部、中間部、上層部の順で構成される。本実施例は、Al23層の上層部が、被膜の最表面に配置される。
Figure 0006550661
Figure 0006550661
Figure 0006550661
Figure 0006550661
<表面処理>
被膜を形成した各試料に対してブラスト処理を行ない、圧縮応力を付与した。
<α−Al23層の配向性測定>
以上から得られた各試料に関し、基材表面の法線を含む平面でα−Al23層を切断し、その切断面(α−Al23層の垂直断面)に対して上述したような研磨加工を行った。さらに、得られたα−Al23層の断面研磨面について、上述のようにしてEBSD装置を備えたFE−SEM(商品名(型番):「SU6600」、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、α−Al23の結晶粒の結晶方位を測定した。具体的には、上述した結晶方位マッピングにより、α−Al23層の下層部、中間部および上層部における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率、および(110)配向したα−Al23の面積比率を算出した。(001)配向したα−Al23の結晶粒であるか否か、および(110)配向したα−Al23の結晶粒であるか否かの判断は、上述の定義のとおりに行なった。(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率、および(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率の算出にあたって行なう観察倍率を20000倍とし、観察面積は200μm2となるように視野数を調整した。
上記配向性測定から得られた(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率、(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率をそれぞれ、以下の表5に示す。表5には、α−Al23層の厚み(μm)、およびα−Al23層の厚みのうち中間部の厚みが占める比率(中間部の厚み/α−Al23層の厚み)(%)も記載した。
<切削試験>
また各試料に対し、以下の条件により切削試験を行なった。
被削材 : FCD450丸棒
切削速度: 250m/min
送り : 0.30mm/rev
切込み : 1.5mm
切削油 : 湿式(水溶性油)
評価 : 逃げ面摩耗幅≧0.3mmを寿命として測定。
切削試験では、切削工具を切削機にセットして切削した。30秒ごとに切削機から切削工具を取り外し、逃げ面摩耗量を測定し、これが0.3mmを超えるまでの時間を寿命として評価した。この時間が長いほど寿命が長いといえ、膜強度が向上する効果とともに、結晶粒の粗大化、亀裂発生などを防ぐことができる切削工具であると評価することができる。この結果についても以下の表5に示す。
なお、表5における備考の欄には、切削試験中および切削試験終了後に各試料を観察することで認められた工具の形状変化について記載した。表5の備考の欄中、「性能良好」とは、寿命が8分以上であり、この寿命が到来するまで、チッピングの発生、摩耗が大きく進んだことなどが認められるような形状変化がなかったことを意味する。
また、「チッピング発生」とは、切削試験中にチッピングが発生して寿命が到来したことを意味する。「摩耗大」とは、切削試験中に摩耗が大きく進んで寿命が到来したことを意味する。「被膜剥離発生」とは、切削試験中に被膜の剥離が発生して寿命が到来したことを意味する。
Figure 0006550661
<試験結果および考察>
表5に示すように、実施例(試料1、2、5、6、7、8、10および14)のα−Al23層は、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満の下層部および上層部と、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上の中間部とからなっていた。また、α−Al23層の厚みは4〜18μmであり、中間部の厚みがα−Al23層の厚みにおいて占める比率は、50%以上だった。なお、下層部および上層部の厚みはいずれも1μm以上である。これらの試料は、「性能良好」であると評価することができた。
特に、試料5、6、7は、下層部、中間部および上層部における(001)配向したα−Al23の結晶粒の上述した特徴に加え、少なくとも上層部または下層部において(110)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%以上となった。これらの試料では、寿命が11分以上であり、さらに良好な性能を有していた。
一方、比較例(試料3、4、9、11、12、13および15)のα−Al23層を考察する。試料3は、上層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%となり、「チッピング発生」と評価され、寿命は6分だった。工具の冷却時に被膜に亀裂が発生したものと考えられる。試料4は、上層部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が40%となり、「摩耗大」と評価され、寿命は6分だった。被膜の形成過程でα−Al23の結晶粒の粗大化が起きたものと考えられる。
試料9は、α−Al23層の厚みのうち中間部の厚みが占める比率が50%未満となり、「摩耗大」と評価され、寿命は5分だった。α−Al23層における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が低く、膜強度が向上する効果が十分に得られなかったものと考えられる。試料11は、α−Al23層の厚みが20μmとなり、「被膜剥離発生」と評価され、寿命は3分だった。α−Al23層の厚みが厚すぎたと考えられる。
試料12、13は、α−Al23層が1層または2層からなり、「チッピング発生」と評価され、かつ「摩耗大」と評価される場合があった。寿命は5または6分だった。α−Al23層において下層部、中間部、上層部のいずれかが存在しなかったことによる不都合が生じたものと考えられる。試料15は、中間部の(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が30%となり、すくい面の「摩耗大」と評価され、寿命は6分だった。α−Al23層における(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が低く、膜強度が向上する効果が十分に得られなかったことが考えられる。
したがって、実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比べ、(001)面方向へ配向することで膜強度が向上する効果を十分に得た上で、(001)面方向への配向性が高すぎることのデメリットである結晶粒の粗大化、および冷却時の被膜の亀裂発生を抑制することができる点で優れているといえる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形したりすることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (4)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを備え、
    前記被膜は、複数のα−Al23の結晶粒を含んだα−Al23層を含み、
    前記α−Al23層は、前記基材側に配置された下層部と、該下層部上に配置された中間部と、該中間部上に配置された上層部とを含み、
    前記α−Al23層の厚みは、4〜18μmであり、
    前記中間部の厚みは、前記α−Al23層の厚みの50%以上を占め、
    前記下層部および前記上層部の厚みはいずれも1μm以上である、表面被覆切削工具の製造方法であって、
    前記基材を準備する工程と、
    前記基材上にCVD法により被膜を形成する工程と、を含み、
    前記被膜を形成する工程は、前記下層部を形成する工程と、前記中間部を形成する工程と、前記上層部を形成する工程と、を備え、
    前記下層部を形成する工程および前記上層部を形成する工程では、AlCl 3 を0.6体積%、HClを2体積%、CO 2 を0.5体積%、H 2 Sを0.3体積%とし、残部をH 2 とした配合量の原料ガスが用いられ、またはAlCl 3 を0.6体積%、HClを4体積%、CO 2 を0.5体積%、H 2 Sを0.1体積%とし、残部をH 2 とした配合量の原料ガスが用いられ、
    前記中間部を形成する工程では、AlCl 3 を0.6体積%、HClを2体積%、CO 2 を0.5体積%、H 2 Sを0.6体積%とし、残部をH 2 とした配合量の原料ガスが用いられ、またはAlCl 3 を0.6体積%、HClを2体積%、CO 2 を0.5体積%、H 2 Sを1.0体積%とし、残部をH 2 とした配合量の原料ガスが用いられ、
    前記被膜を形成する工程では、温度を950〜1050℃とし、圧力を1〜20kPaとし、ガス流量を10〜150L/minとした条件のCVD装置が用いられる、表面被覆切削工具の製造方法。
  2. 前記基材を準備する工程は、前記基材の刃先稜線部の近傍領域に対してホーニング処理を施す工程を含む、請求項1に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
  3. 前記被膜を形成する工程の後に表面処理を行なう工程を含み、
    前記表面処理を行なう工程は、ブラシ処理、サンドブラスト処理、ウエットブラスト処理、ショットピーニング処理、ボンバード処理からなる群より選ばれる少なくとも1の処理が用いられる、請求項1または請求項2に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
  4. 前記下層部は、前記α−Al23層の断面研磨面に対する電子線後方散乱回折装置を用いた結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となり、
    前記中間部は、前記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%以上となり、
    前記上層部は、前記結晶方位マッピングにおいて、(001)配向したα−Al23の結晶粒の面積比率が35%未満となる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の表面被覆切削工具の製造方法。
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