JP6550440B2 - 自律神経評価装置、自律神経評価方法、プログラム及び記録媒体 - Google Patents

自律神経評価装置、自律神経評価方法、プログラム及び記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、自律神経評価装置、自律神経評価方法、プログラム及び記録媒体に関する。
従来、疲労を客観的に評価するための指標として、自律神経系の機能解析が注目されている。自律神経は、主に起きているときや緊張しているときに働く交感神経と、主に寝ているときやリラックスしているときに働く副交感神経とがあり、両者がバランスを取りながら機能し、生理的機能を調節していることが知られている。
交感神経と副交感神経はストレスの影響を受けやすく、そのバランスが崩れると、本来活動しているときに働いてくれる交感神経が働かずに、やる気が出なかったり、逆に休息の時に働いてくれる副交感神経がうまく働かず、眠れないといったことが起こる。また、疲労病態では、交感神経系の緊張が高まり、副交感神経系の活動が低下することが報告されている。
本発明者らは、疲労時に見られる交感神経と副交感神経のバランスの崩れに着目し、交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値の比(LF/HF)に基づいて、疲労度を定量的に判定する処理システムを提供している(特許文献1)。例えば、この処理システムを用いて指先加速度脈波を2分間計測、最大エントロピー法による周波数解析にて自律神経系の評価を行うと、健常者(安静時 座位)でLF値とHF値の比(LF/HF)は通常1〜1.5程度であるのに対して、慢性疲労症候群患者では明らかに増加することが観察される。
また、本発明者らは、被験者の年齢が増加するのに伴って、LF値とHF値との和、すなわち{LF+HF}値が減衰する傾向があることを見出し、被験者の自律神経機能のレベルを年齢に換算した自律神経機能年齢を判定する処理を行う判定システムを確立した(特許文献2)。
特開2010−201113号公報 特開2012−147879号公報
このように、自律神経機能の解析は、疲労度を客観的に評価するために重要であると考えられるが、自律神経機能の解析結果に基づき疲労度を客観的に評価する方法としては、上述の方法以外に様々な方法が考えられる。例えば、自律神経機能の解析結果をより詳細に評価することや、被験者の自律神経機能を同年代の被験者の自律神経機能と比較することが考えられる。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、被験者の自律神経機能を評価する装置及び評価処理を行う方法等を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る自律神経評価装置は、評価対象である被験者の年齢と、被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを取得する取得部と、LF値とHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記憶する記憶部と、取得部で取得された、被験者のLF値とHF値とから、被験者の自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出する自律神経バランス算出部と、自律神経活動量分布データと、被験者の年齢と、被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、被験者の自律神経活動量の偏差値を算出する偏差値算出部と、被験者のLF/HF値と、被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき被験者の自律神経の状態を評価して評価結果を出力する評価部と、を有する。この態様によれば、被験者の自律神経機能を評価する装置を提供することができる。
上記態様において、評価部は、被験者のLF/HF値及び被験者における自律神経活動量の偏差値の変化に基づき、被験者の自律神経の状態の変化を評価するようにしてもよい。この態様によれば、被験者に対して自律神経の状態の変化を通知することが可能になるとともに、過去の自律神経の状態を踏まえて被験者が行うべき行動等に関するアドバイスを行うことが可能になる。
上記態様において、評価部は、被験者における過去のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値と、被験者における現在のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値とを比較することで、被験者の自律神経の状態の変化を評価するようにしてもよい。この態様によれば、被験者に対して自律神経の状態の変化を通知することが可能になるとともに、過去の自律神経の状態を踏まえて被験者が行うべき行動等に関するアドバイスを行うことが可能になる。
上記態様において、評価部は、被験者のLF/HF値が4段階に区切った範囲のうちどの範囲に属するのかと、被験者の自律神経活動量の偏差値が4段階に区切った範囲のうちどの範囲に属するのかと、を評価することで、被験者の自律神経の状態を評価するようにしてもよい。この態様によれば、被験者の自律神経の状態を、LF/HF値の範囲及び自律神経活動量の偏差値の範囲に応じて評価することが可能になる。
上記態様において、評価部は、被験者のLF/HF値が、0.8未満であるのか、0.8〜2.0の範囲であるのか、2.0〜5.0の範囲であるのか、5.0以上であるのかを評価することで、被験者の自律神経の状態を評価するようにしてもよい。この態様によれば、被験者の自律神経の状態を、具体的なLF/HF値の範囲に応じて評価することが可能になる。
上記態様において、評価部は、被験者の自律神経活動量の偏差値が、37以下であるのか、38〜42の範囲であるのか、43〜56の範囲であるのか、57以上であるのかを評価することで、被験者の自律神経の状態を評価するようにしてもよい。この態様によれば、被験者の自律神経の状態を、具体的な自律神経活動量の偏差値の範囲に応じて評価することが可能になる。
上記態様において、評価部は、被験者の自律神経の状態を評価した評価結果に関するレポートを出力するようにしてもよい。この態様によれば、被験者に対して具体的な行動指針等を示すことが可能になる。
また、本発明の一態様に係る自律神経評価方法は、被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記憶する記憶部を有する自律神経評価装置が行う自律神経評価方法であって、評価対象である被験者の年齢と、被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを取得するステップと、取得された被験者のLF値とHF値とから、被験者の自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出するステップと、自律神経活動量分布データと、被験者の年齢と、被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、被験者の自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、被験者のLF/HF値と、被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき被験者の自律神経の状態を評価して評価結果を出力する評価ステップと、を含む。この態様によれば、被験者の自律神経機能を評価する方法を提供することができる。
また、本発明の一態様に係るプログラムは、本発明の自律神経評価方法の各ステップを、自律神経活動量分布データを記憶する記憶部を有するコンピュータに実行させることを特徴とする。本発明のプログラムは、CD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
本発明によれば、被験者の自律神経機能を評価する装置及び評価処理を行う方法等を提供することができる。
本実施形態に係る自律神経機能評価システムの構成例を示す図である。 ccvTPと年齢との関係を示す図である。 自律神経の状態の総合的な評価結果を示す図である。 本実施形態に係る自律神経機能評価システムの処理の流れを示すフローチャートである。 職業性ストレス簡易調査票を示す図である。 素点換算表を示す図である。 職業性ストレス簡易調査票による判定結果の一例を示す図である。 VASを用いた自覚的な疲労関連症状を測定した結果の一例を示す図である。 自律神経活動量の偏差値を測定した結果の一例を示す図である。 領域Aの評価点と自律神経活動量の偏差値との関係を示す図である。 領域Bの評価点と自律神経活動量の偏差値との関係を示す図である。 領域Cの評価点と自律神経活動量の偏差値との関係を示す図である。 VASを用いた疲労関連症状と自律神経活動量の偏差値との関係を示す図である。
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。(なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。)
(システム構成について)
図1は、本実施形態に係る自律神経機能評価システム100の構成例を示す図である。本実施形態に係る自律神経機能評価システム100は、入力装置110と、生体情報取得装置120と、生体情報解析装置130と、評価装置140と、出力装置150とを有する。
入力装置110は、被験者に関するデータを入力するための装置であり、例えば、キーボードやタッチパネル上の入力インタフェースなどにより構成される。本実施形態においては、被験者に関するデータとして、少なくとも被験者の年齢が入力装置110に入力される。また、被験者の年齢に加えて、被験者の氏名、住所、性別などが入力されてもよい。
生体情報取得装置120は、被験者の生体情報データを収集するための装置である。ここで被験者の生体情報データとは、好適には、心拍データまたは脈拍データもしくは加速度脈波データを意味する。市販の心電計や脈拍計を生体情報取得装置120として利用してもよい。なお、入力装置110と生体情報取得装置120は一体であってもよい。すなわち、生体情報取得装置120は、入力装置110としての機能を有していてもよい。
生体情報解析装置130は、生体情報取得装置120で収集された被験者の生体情報データを解析して、被験者の交感神経及び副交感神経の働きを定量化するための装置である。本実施形態では、被験者の生体情報データを周波数解析して、周波数領域の低周波数成分からLF値を算出し、高周波数成分からHF値を算出する。一般に、LF値は被験者の交感神経の働きを示す指標であり、HF値は被験者の副交感神経の働きを示す指標であるとされている。
生体情報データは、生体情報取得装置120から生体情報解析装置130に随時入力されるものであってもよいし、生体情報取得装置120にて一定期間の生体情報データを取得した後に、まとめて生体情報解析装置130に入力されるものであってもよい。
生体情報データからLF値やHF値を得るために周波数解析が行われるが、周波数解析(時間周波数解析)の手法は公知の解析手法を利用可能であり、例えば、最大エントロピー法(MEM法)、高速フーリエ変換法(FFT法)、ウェーブレット法等が挙げられる。これらの中でも、最大エントロピー法を用いるのが好ましい。最大エントロピー法によれば、時間分解能の高い解析を行うことができる。用いられる生体情報データは、心拍(心電図)のR−R間隔(心拍のパターン)や、加速度脈波のa−a間隔である。例えば、心拍(心電図)のR−R間隔を最大エントロピー法(MEM)を用いて周波数領域の低周波数成分(LF:0.04−0.15Hz)と高周波数成分(HF:0.15−0.40Hz)に分離し、低周波数成分及び高周波数成分のパワーの総和をそれぞれLF値及びHF値として算出する。
具体的には、LF値とHF値は、例えば、以下の式により算出することができる。
ここで、LF(t)はLF値、HF(t)はHF値、P(f)はパワースペクトル関数、C(t)は心拍(心電図)のR−R間隔の自己相関関数、tは時間、fは周波数を示す。数3に示すとおり、数式上P(f)は全時間領域で積分するものとしているが、実際は、観測領域で積分すれば足りる。
ここで、LF値やHF値の上限及び下限とした周波数は欧州心電図学会で定義されているなど一般に広く使われている数値であるが、LF値及びHF値を分離するための周波数帯はこれに限定されるものではなく、他の周波数帯によってLF値とHF値を定義付けてもよい。また、測定誤差等が許容されることは言うまでもない。なお、市販の自律神経測定器を、生体情報取得装置120及び生体情報解析装置130として利用してもよい。
評価装置140は、LF値及びHF値等に基づいて算出される自律神経活動量(自律神経機能の活動量と称してもよい)について、予め多数の被験者から収集された年齢ごとの分布を統計的に示す自律神経活動量分布データを保持しており、当該分布データと、被験者の年齢及び自律神経活動量から、被験者における自律神経活動量の偏差値を算出する。また、評価装置140は、被験者のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値を用いて、被験者の自律神経機能に関する評価を行い、評価結果を出力する機能を有する。
また、評価装置140は、各被験者の自律神経機能に関する評価結果を履歴として保存しておき、現在の評価結果と過去の評価結果と比較することで、比較結果に関する情報を出力する機能を有する。比較結果に関する情報とは、例えば、被験者の自律神経機能が悪化しているか、改善しているか又は変化が見られないといった情報である。
出力装置150は、評価装置140によって評価された被験者の自律神経機能に関する評価結果を出力するための装置である。出力される情報としては、評価結果の詳細をレポート形式で出力してもよいし、評価結果に加えて(又は代えて)、被験者のLF値及びHF値、LF/HF値、自律神経活動量の偏差値をそのまま出力してもよい。出力装置150としては、ディスプレイなどの表示出力装置やプリンタなどの印刷出力装置を利用可能である。
(機能構成について)
次に、評価装置140における機能構成について説明する。図1に示すように、評価装置140は、取得部11と、算出部12と、評価部13と、記憶部14とを有する。これらの各機能部は、評価装置140のメモリに記憶されたプログラムが、CPUに実行させる処理により実現され得る。また、記憶部14は、評価装置140が備えるメモリ、HDD(Hard Disk)等又は評価装置140にネットワークを介して接続された記憶装置等を用いて実現される。
取得部11は、入力装置110に入力された被験者の年齢、生体情報解析装置130で行われた解析により得られた被験者のLF値及びHF値、及び生体情報取得装置120で測定された被験者の心拍データを取得する機能を有する。なお、被験者は、予め測定しておいた自身のLF値、HF値及び心拍データに関する測定結果を入力装置110に入力し、取得部11は、被験者のLF値、HF値及び心拍データを入力装置110から取得することとしてもよい。心拍データには、LF値及びHF値の測定に用いた時間中の心拍数の平均又はR−R間隔の平均が含まれる。
算出部12は、取得部11で取得された被験者のLF値及びHF値から、被験者の自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出する機能を有する。また、算出部12は、自律神経活動量分布データと、被験者の年齢と、被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量と、を比較することで、被験者の自律神経活動量の偏差値を算出する機能を有する。算出部12は、LF/HF値を算出する自律神経バランス算出部、及び被験者の自律神経活動量の偏差値を算出する偏差値算出部から構成されることとしてもよい。
「LF/HF値」とは、交感神経と副交感神経のバランスを表す指標であり、LF値をHF値で除算することで求められる。例えばLF/HF値が5.0を超えると、交感神経と副交感神経のバランスが大きく崩れていることを意味する。
「自律神経活動量」は、ccvTPと呼ばれる、自律神経機能の働きを示す指標を用いて数値で表現される。ccvTPは、TP(トータルパワー)と呼ばれる、LF値とHF値の総和(以下、「{LF+HF}値」と記載する。)を、LF値及びHF値の測定に用いた時間中の心拍数(より具体的にはR−R間隔の平均)で補正することで算出される値である。具体的には、ccvTPは、以下の式により算出することができる。
ここで、RRは、被験者における心拍のR−R間隔(秒)を示す。なお、R−R間隔(秒)=60÷心拍数(回/分)である。
心拍数が高い場合はTPが高い値となることが実験により知られていることから、心拍数の高さに応じて補正されたccvTPを用いることで、被験者の心拍数の高低にかかわらず、自律神経活動量を適切に表現することができる。なお、{LF+HF}値は、年齢とともに数値が減少することが本発明者らによって明らかにされており、ccvTPについても同様である。
「自律神経活動量分布データ」とは、自律神経活動量(ccvTP)について被験者の年齢ごとの統計的な分布を示すデータであり、例えば、年齢の異なる多数の被験者からccvTPを収集して統計的に解析することにより得られる。ここで、ccvTPと年齢との関係を示す一例を図2に示す。曲線G1は、同年齢の被験者において、ccvTPが高い上位25%の被験者が属する境界線を示している。曲線G2は、同年齢の被験者におけるccvTPの中央値を示している。曲線G3は、同年齢の被験者において、ccvTPが低い下位75%の被験者が属する境界線を示している。図2によれば、年齢とともにccvTPが減少することが明らかである。
本実施形態では、予め収集された年齢の異なる多数の被験者のccvTPから、被験者の年齢ごとのccvTPの平均値と、被験者の年齢ごとのccvTPの標準偏差(σ)を算出し、これらをデータベース化したものを自律神経活動量分布データとして記憶部14に格納しておくこととしてもよい。このような自律神経活動量分布データを用いることで、算出部12は、例えば、被験者の自律神経活動量の偏差値を以下の手順で算出することができる。
1.被験者の{LF+HF}値を被験者の心拍数で補正することで被験者のccvTPを算出
2.自律神経活動量分布データから、被験者の年齢に対応するccvTPの平均値と標準偏差(σ)を取得
3.「自律神経活動量の偏差値=10×(被験者のccvTP−被験者の年齢に対応するccvTPの平均値)÷被験者の年齢に対応するccvTPの標準偏差(σ)+50」の式を用いて、被験者の自律神経活動量の偏差値を算出
評価部13は、算出部12により算出された被験者のLF/HF値と被験者における自律神経活動量の偏差値とを用いて、被験者の自律神経の状態を評価し、評価結果を出力する機能を有する。また、評価部13は、被験者の自律神経の状態を評価した評価結果を、評価を行った日時とともに、被験者ごとの履歴データとして記憶部14に格納する。なお、評価部13は、被験者の自律神経の状態を評価した評価結果に加えて、被験者の年齢、被験者のLF値、HF値、LF/HF値、TP、心拍データ、ccvTP及び自律神経活動量の偏差値についても、被験者ごとの履歴データとして記憶部14に格納するようにしてもよい。
また、評価部13は、被験者ごとの履歴データを用いることで、被験者のLF/HF値及び被験者における自律神経活動量の偏差値の変化に基づき、被験者の自律神経の状態の変化を評価する。より具体的には、評価部13は、被験者における過去のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値と、被験者における現在のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値とを比較することで、被験者の自律神経の状態の変化を評価する機能を有する。
なお、自律神経機能評価システム100を構成する各構成要素、すなわち入力装置110と、生体情報取得装置120と、生体情報解析装置130と、評価装置140と、出力装置150とは、単一の装置又はコンピュータにより構成されるものであってもよいし、ネットワーク上に分散した複数の装置又はコンピュータにより構成されるものであってもよい。また、生体情報解析装置130及び評価装置140はクラウドサーバ又は仮想サーバにより構成されるものであってもよい。評価装置140は、コンピュータが、評価装置140の各機能を実現するためのプログラムが記憶された記録媒体を読み込んでプログラムに従った所定の処理を実行することによって実現することができる。
(自律神経の状態に関する評価について)
続いて、評価部13が行う評価方法について説明する。まず、評価部13は、算出部12により算出された被験者のLF/HF値と、自律神経バランス評価基準値データとを対比することで、被験者の自律神経バランスを評価する。自律神経バランスに関する評価基準値データは、LF/HF値について、0.8未満を「低値」、0.8〜2.0を「基準値」、2.0〜5.0を「高値」、0.5以上を「極高値」とするものである。すなわち、評価部13は、被験者のLF/HF値から、被験者の自律神経バランスを4段階に評価する。自律神経バランス評価基準値データは、予め記憶部14に格納されていてもよいし、プログラム中に組み込まれていてもよい。
ここで、LF/HF値が「低値」の場合とは、交感神経系/副交感神経系のバランスがリラックス状態にあることを意味する。LF/HF値が「基準値」の場合とは、交感神経系/副交感神経系のバランスがうまく保たれていることを意味する。LF/HF値が「高値」の場合とは、交感神経系/副交感神経系のバランスが崩れていて交感神経系の軽度過緊張がみられる状態であることを意味する。LF/HF値が「極高値」の場合とは、交感神経系/副交感神経系のバランスが大きく崩れていて交感神経系の過緊張がみられる状態であることを意味する。
従来技術(特許文献1)におけるLF/HF値の評価では、健常者に対して安静時閉眼にて自律神経バランスを評価した場合はLF/HF値が2.0以下になる一方、慢性的な疲労状態では交感神経系の過緊張状態がみられることを考慮し、LF/HF値が2.0未満を「基準値」、2.0〜5.0を「高値」、5.0以上を「極高値」として被験者の自律神経バランスを評価していた。
しかしながら、本発明者らは、被験者が抑うつ状態や極度の慢性的疲労状態にある場合、交感神経系の活動も低下してLF/HF値が0.8未満になることを見出した。すなわち、LF/HF値が0.8未満である場合は抑うつ状態や極度の慢性的疲労状態にあるために自律神経活動が低下していると評価することができ、健常者のリラックス状態と区別することが可能である。
そこで、本実施形態では、LF/HF値が0.8未満の場合を「低値」として定義することで、健常者のリラックス状態と、抑うつ状態や極度の慢性的疲労状態にあるために自律神経活動が低下している場合とを区別して評価することを可能にした。
次に、評価部13は、算出部12により算出された被験者における自律神経活動量の偏差値と、自律神経活動量の偏差値に関する評価基準値データとを対比することで、被験者の自律神経活動量を評価する。自律神経活動量の偏差値に関する評価基準値データは、偏差値について、37以下を「極低値」、38〜42を「低値」、43〜56を「基準値」、57以上を「高値」とするものである。すなわち、評価部13は、被験者の自律神経活動量の偏差値から、被験者の自律神経活動量を4段階に評価する。なお、偏差値に小数点が含まれる場合、37以下を「極低値」、37を超えて〜42以下を「低値」、42を超えて〜56以下を「基準値」、56を超える場合を「高値」としてもよい。評価基準値データは、予め記憶部14に格納されていてもよいし、プログラム中に組み込まれていてもよい。
ここで、偏差値が「高値」の場合とは、自律神経機能活動が活発である状態にあることを意味する。偏差値が「基準値」の場合とは、自律神経機能活動が正常である状態にあることを意味する。偏差値が「低値」の場合とは、自律神経機能活動が少し低下した状態にあることを意味する。偏差値が「極低値」の場合とは、自律神経機能活動が明らかに低下した状態にあることを意味する。
平成27年12月より、労働安全基準法の改正に基づき、ストレス検診が実施されるようになった。この検診では、個人ごとのリスク評価(パーソナルケア)とともに、集団ごとのリスク評価(ラインケア)を行うことにより、組織(会社)の健康の維持・増進・疾病予防を実施することが求められている。現在は、抑うつや不安、疲労などの自覚症状調査や環境ストレス評価などの問診票を用いた判定が行われているが、より客観的な指標を用いた判定法が望まれている(体調不良を自覚している被験者が、問診票調査では異常なしと回答する事例が報告されており、客観的指標の必要性が望まれている)。
これまで、自律神経活動については、心拍の周波数解析を実施することで算出されるccvTPを用いて自律神経活動量の指標としてきた。自律神経活動は、慢性的な疲労状態や抑うつ状態で低下することが明らかになってきており、このような病態に陥っているか否かを客観的に評価する個人における指標としてccvTPは有用である。しかし、自律神経活動は前述のように年齢により異なり、加齢に伴い自律神経活動は低下することが判明している。したがって、ある特定個人の継時的な自律神経機能の変化を評価する場合には、ccvTPや自律神経機能年齢を用いて評価することは可能であるが、職場などにおけるある集団の健康状態について自律神経機能を用いて評価する場合には、集団ごとに被験者の年齢分布が異なることから、ccvTPや自律神経機能年齢を用いて集団分析を実施することは困難であった。
このような集団分析を実施するためには、年齢ごとに異なる自律神経機能評価を、各個人の年齢の影響を受けない指標に置き換える必要がある。そこで、本実施形態では、健常者1000名以上の年齢ごとのccvTP分布データを用いて被験者の年齢に対応するccvTPの平均値と標準偏差(σ)を取得し、被験者の自律神経活動量の偏差値を算出するようにした。
この被験者の自律神経活動量の偏差値は、被験者の年齢の影響を受けない指標であることから、年齢分布が異なる集団の分析においても活用が可能となり、新たな客観的な指標として自律神経活動量の偏差値を用いることで、集団ごとのリスク評価(ラインケア)を容易に行うことが可能になる。例えば、自律神経活動量の偏差値が極低値又は低値である被験者が多い集団と、自律神経活動量の偏差値が基準値である被験者が多い集団とでは、前者の集団のほうがストレス等の影響が大きい職場環境であるといったリスク評価を行うことが可能になる。また、同一の集団について、各被験者の偏差値の継時的な変化を追うことで、例えば、その集団における職場環境等の変化を評価することも可能になる。
また、前述したように、自律神経活動量の偏差値に関する評価基準値データは、偏差値について、37以下を「極低値」、38〜42を「低値」、43〜56を「基準値」、57以上を「高値」とするものである。より具体的には、偏差値37以下(極低値)は、健常者分布における下位11.5%未満に該当する状態であり、偏差値38〜42(低値)は、健常者分布における下位11.5%未満には該当しないが下位21.2%には該当する状態であり、偏差値43〜56(基準値)は、健常者分布における下位21.2%及び上位24.2%のいずれにも該当しない状態であり、偏差値57以上(高値)は、健常者分布における上位24.2%に該当する状態である。
前述のとおり、自律神経活動は、慢性的な疲労状態や抑うつ状態で低下することが明らかになってきていることから、自律神経活動が低下している状態は、正常な状態と区別して、「低値」群(健常者分布における下位11.5%未満には該当しないが下位21.2%には該当する状態)、「極低値」(健常者分布における下位11.5%未満に該当する状態)として区別するようにした。自律神経活動が上昇している群には、健常者群と急性ストレス反応群が含まれるが、現在は、これをより詳細に区分する意義が明らかではないため、57以上を「高値」群(健常者分布における上位24.2%に該当する状態)として表現するようにした。
次に、評価部13は、被験者の自律神経バランスの評価結果と、自律神経活動量の偏差値の評価結果を組み合わせることで、被験者の自律神経の状態を16段階で総合的に評価する。図3は、自律神経の状態の総合的な評価結果を示す図である。具体的には、評価部13は、被験者の自律神経バランスの評価結果と、自律神経活動量の偏差値の評価結果との組み合わせが、A〜Pまでの領域のうちいずれの領域に属するのかを判定することで、被験者の自律神経の状態を総合的に評価する。
具体的には、評価部13は、A、B、E、Fに属する場合、被験者の自律神経の状態は「良好」であると評価し、C、G、I、J、Kに属する場合、被験者の自律神経の状態は「注意」であると評価し、D、H、L、M、N、O、Pに属する場合、被験者の自律神経の状態は「要注意」であると評価する。
評価部13は、A〜Pまでの16通りの評価の各々に対し、自律神経バランスに関する評価結果、自律神経活動量に関する評価結果、及び、総合的な評価結果を示すレポートを、出力装置150を介して出力する。一例として、Aと評価した場合のレポート例を示す。
A:「交感神経系/副交感神経系のバランスはリラックス状態にあり、自律神経機能活動も活発な状態です。睡眠や休息をとるには適しており、理想的な状態です。時に、仕事や勉強をするときに活動モードに切り替えることができない場合がありますので、抑うつ、意欲の低下などがみられるようでしたら再検査をお勧めします。」。本レポート例において、「交感神経系/副交感神経系のバランスはリラックス状態にあり、」の部分は、自律神経バランスに関する評価結果に該当し、「自律神経機能活動も活発な状態です。」の部分は、自律神経活動量に関する評価結果に該当し、その他の部分は、総合的な評価結果に該当するレポートである。
本実施形態では、被験者の自律神経バランスの評価結果と、自律神経活動量の偏差値の評価結果を組み合わせて評価するようにしたことで、急性ストレス状態、慢性疲労状態、抑うつ状態などをより正確に評価することが可能になる。
(自律神経の状態の変化に関する評価について)
続いて、評価部13が、被験者の自律神経の状態の変化に関する評価を行う方法について説明する。まず、評価部13は、被験者における現在のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値を用いて、被験者の現在における自律神経の状態が図3に示すA〜Pの領域のうち、どの領域に該当するかを評価する。
次に、評価部13は、当該被験者における過去のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値を記憶部14に記憶されている履歴データから抽出し、図3に示すA〜Pの領域のうち、どの領域に該当するかを評価する。続いて、評価部13は、被験者の現在における自律神経の状態が、被験者の過去における自律神経の状態と比較してどの領域からどの領域に変化したかを判断することで、被験者の自律神経の状態の変化を評価する。
例えば、評価部13は、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が両方とも「良好」である領域にある場合(すなわち、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が両方ともA、B、E、Fのいずれかの領域に属する場合)、被験者の自律神経の状態は「変化していない」と評価するようにしてもよい。同様に、評価部13は、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が、「良好」から「注意」の領域に変化した場合、及び、「注意」から「要注意」の領域に変化した場合、被験者の自律神経の状態は「悪化した」と評価するようにしてもよい。同様に、評価部13は、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が、「良好」から「要注意」の領域に変化した場合、被験者の自律神経の状態は「著しく悪化した」と評価するようにしてもよい。同様に、評価部13は、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が、「注意」から「良好」の領域に変化した場合、及び、「要注意」から「注意」の領域に変化した場合、被験者の自律神経の状態は「改善した」と評価するようにしてもよい。同様に、評価部13は、被験者の現在及び過去の自律神経の状態が、「要注意」から「良好」の領域に変化した場合、被験者の自律神経の状態は「著しく改善した」と評価するようにしてもよい。
また、評価部13は、被験者の現在における自律神経の状態が、被験者の過去における自律神経の状態の“平均値”と比較してどの領域からどの領域に変化したかを判断することで、被験者の自律神経の状態の変化を評価するようにしてもよい。例えば、被験者の過去における自律神経の状態の平均値とは、被験者の直近における過去の所定回数分(例えば3回又は4回分)のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値をそれぞれ平均し、平均したLF/HF値及び平均した偏差値に対応する領域(A〜Pのいずれかの領域)としてもよい。また、他の例として、被験者の過去における自律神経の状態の平均値とは、履歴データに記録されている、被験者の直近における過去の所定回数分(例えば3回又は4回分)のLF値、HF値及び心拍データをそれぞれ平均し、平均化されたLF値、HF値及び心拍データを用いて算出されたLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値に対応する領域(A〜Pのいずれかの領域)であってもよい。
評価部13は、以上説明した、自律神経の状態の変化に関する評価結果を示すレポートを、出力装置150を介して出力する。例えば、被験者の自律神経の状態を「著しく悪化した」と評価した場合、評価部13は、「前回測定時と比較して、交感神経系/副交感神経系のバランス及び自律神経機能活動が著しく悪化しています」といったレポートを出力するようにしてもよい。
なお、評価部13は、以上説明した方法に限定されず、他の方法で自律神経の状態の変化を評価するようにしてもよい。例えば、本実施形態では、被験者の現在及び過去の自律神経の状態の変化を、16(A〜Pまでの16領域)×16(A〜Pまでの16領域)=256通りで表現可能であることから、評価部13は、被験者の自律神経の状態の変化を256通りの粒度で評価してレポートを出力するようにしてもよい。
また、例えば、評価部13は、被験者における過去のLF/HF値と現在のLF/HF値の変化量(例えば、LF/HF値がどの程度増減したか)、及び、被験者における過去の自律神経活動量の偏差値と現在の自律神経活動量の偏差値の変化量(例えば、偏差値がどの程度増減したか)をそのまま用いて(すなわち、どの領域に該当するのかを判断せずに)、自律神経の状態の変化を評価するようにしてもよい。更に細かい粒度で自律神経の状態の変化について評価を行うことが可能になる。
また、評価部13は、3回以上の評価を受けている被験者に対しては、過去の評価を平均した状態の評価とともに、平均した状態の評価と、今回(最新)の評価との変化をコメントするようにしてもよい。
自律神経の状態の変化を評価することで、被験者に対して自律神経の状態の変化を通知することが可能になるとともに、過去の自律神経の状態を踏まえて被験者が行うべき行動等に関するアドバイスを行うことが可能になる。また、被験者に異常の可能性があると判定された場合、本自律神経機能評価システム100による評価を複数回受けてもらうことで、当該被験者に対して継時的な変化を測定することができ、より正しい対処法を選択することが可能となる。
(自律神経機能評価システムの動作について)
次に、本実施形態に係る自律神経機能評価システム100が行う動作について説明する。
図4は、本実施形態に係る自律神経機能評価システム100の処理の流れを示すフローチャートである。まず、被験者は、自身の年齢を含む個人情報を入力装置110に入力する。また、これと並行して、被験者は、生体情報取得装置120を用いて自身の生体情報データを測定する。測定された被験者の生体情報データは、生体情報解析装置130により解析される。続いて、評価装置140の取得部11は、入力装置110に入力された被験者の年齢、及び生体情報解析装置130により解析された被験者のLF値、HF値、及び生体情報取得装置120で測定された心拍データを取得する(S11)。算出部12は、ステップS11で取得された被験者の年齢、被験者のLF値、HF値及び心拍データを用いて、被験者のLF/HF値及び自律神経活動量(ccvTP)の偏差値を算出する(S12)。
評価部13は、被験者における過去の自律神経機能に関する評価結果が履歴データに記録されているか否かを判断する(S13)。記録されてない場合はステップS14に進み、記録されている場合はステップS15に進む。評価部13は、ステップS12で算出された被験者のLF/HF値と被験者における自律神経活動量の偏差値とを用いて、被験者の現在の自律神経の状態を評価し、評価結果を示すレポートを出力する(S14、S15)。評価部13は、被験者における過去のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値と、被験者における現在のLF/HF値及び自律神経活動量の偏差値と、を比較することで、被験者の自律神経の状態の変化を評価し、評価結果を示すレポートを出力する(S16)。
(ストレスと自律神経活動量の偏差値に関する評価結果について)
103名の被験者(男性52名、女性51名、平均年齢39.1±9.2歳)を対象に、自律神経活動量の偏差値、VAS(Visual analog scale)を用いた自覚的な疲労関連症状(10項目)、及び職業性ストレス簡易調査票(57項目)を用いたストレスチェックに関するデータ収集を行い、被験者のストレスと自律神経活動量の偏差値との関係を評価した結果を示す。
職業性ストレス簡易調査票を用いたストレス評価方法については、厚生労働省が作成した「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」に記載されている。本マニュアルによれば、職業性ストレス簡易調査票(図5)による被験者の回答結果を、素点換算表(図6)を用いて「ストレスの原因と考えられる因子(以下、領域Aと記載)」、「ストレスによっておこる心身の反応(以下、領域Bと記載)」及び「ストレス反応に影響を与える他の因子(以下、領域Cと記載)」に分けて評価点の計算を行う。“領域A+領域Cの評価点の合計が26点以下であり、かつ領域Bの評価点の合計が17点以下の場合”又は“領域Bの評価点の合計が12点以下”の場合に、被験者は高ストレスであると判定される。
103名の被験者について、職業性ストレス簡易調査票による判定結果を図7に示す。図7に示すように、103名の被験者のうち17名(16.5%)が高ストレスであると判定された。また、103名の被験者のうち高ストレスと判定された17名と非高ストレスと判定された86名について、VASを用いた自覚的な疲労関連症状を測定した結果を図8に示す。図8に示すように、高ストレスと判定された17名は、VASを用いた疲労関連症状の10項目全てにおいて、非高ストレスと判定された86名よりも高い数値(疲労感やストレスを感じている状態)であった。
次に、職業性ストレス簡易調査票により高ストレスと判定された17名と非高ストレスと判定された86名について、自律神経活動量の偏差値を測定した結果を図9に示す。高ストレスと判定された17名の自律神経活動量の偏差値の平均は56.3であった。一方、非高ストレスと判定された86名の自律神経活動量の偏差値の平均は47.9であった。この結果は、高ストレス状態では自律神経機能の働きが低下することを示していると考えられる。
次に、103名の被験者について、職業性ストレス簡易調査票の領域A、B及びCの評価点と自律神経活動量の偏差値との関係を評価した結果を、それぞれ図10、図11及び図12に示す。その結果、領域A(ストレスの原因と考えられる因子)及び領域C(ストレス反応に影響を与える他の因子)と自律神経活動量の偏差値との間では有意な相関は見られなかったが、領域B(ストレスによっておこる心身の反応)と自律神経活動量の偏差値との間では正の相関(r値=0.334、P値<0.01)が見られた。領域B(ストレスによっておこる心身の反応)の評価点は、評価点が低いほど症状が強いことを示すものであることから、ストレスによっておこる心身の反応が強いほど自律神経活動の偏差値が低下することがわかる。この結果は、自律神経活動の偏差値を用いた客観的な疲労評価が集団の疲労分析に有用であることを示唆している。
次に、103名の被験者について、VASを用いた疲労関連症状(10項目)と自律神経活動量の偏差値と関係を図13に示す。図13に示すように、VASによる自覚的な疲労関連症状のうち、精神的ストレス、身体的ストレス、疲労感、抑うつ、不安感、イライラ感、思考力低下及び筋肉痛については、自律神経活動量の偏差値との間に負の相関が認められた。また、意欲については、自律神経活動量の偏差値との間に正の相関が認められた。
以上説明した評価結果によれば、高ストレス時には自律神経活動の偏差値が実際に低下すること、自律神経活動の偏差値がストレスによっておこる心身の反応や自覚的な疲労関連症状と関連していることが確認された。これにより、自律神経活動量の偏差値を評価することが、客観的な疲労評価に有効であると言うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
なお、本実施形態において示した各処理のステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。さらに本明細書等において、評価装置140を実現するプログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
11…取得部、12…算出部、13…評価部、14…記憶部、100…自律神経機能評価システム、110…入力装置、120…生体情報取得装置、130…生体情報解析装置、140…評価装置、150…出力装置

Claims (4)

  1. 評価対象である、所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に含まれる複数の被験者の年齢と、前記複数の被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを前記被験者ごとに取得する取得部と、
    LF値とHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記憶する記憶部と、
    前記取得部で取得された、前記被験者ごとのLF値とHF値とから、前記被験者ごとの自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出する自律神経バランス算出部と、
    前記自律神経活動量分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、前記被験者ごとの自律神経活動量の偏差値を算出する偏差値算出部と、
    前記被験者のLF/HF値と、前記被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき前記被験者の自律神経の状態を前記被験者ごとに評価して評価結果を出力することで、前記所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に対するストレス影響について評価を行う評価部と、
    を有する自律神経評価装置。
  2. 被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記憶する記憶部を有する自律神経評価装置が行う自律神経評価方法であって、
    自律神経評価装置が、評価対象である、所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に含まれる複数の被験者の年齢と、前記複数の被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを前記被験者ごとに取得するステップと、
    自律神経評価装置が、取得された前記被験者ごとのLF値とHF値とから、前記被験者ごとの自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出するステップと、
    自律神経評価装置が、前記自律神経活動量分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、前記被験者の自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、
    自律神経評価装置が、前記被験者のLF/HF値と、前記被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき前記被験者の自律神経の状態を前記被験者ごとに評価して評価結果を出力することで、前記所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に対するストレス影響について評価を行う評価ステップと、を含む
    自律神経評価方法。
  3. 被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記憶する記憶部を有するコンピュータに実行させるプログラムであって、
    評価対象である、所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に含まれる複数の被験者の年齢と、前記複数の被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを前記被験者ごとに取得するステップと、
    取得された前記被験者ごとのLF値とHF値とから、前記被験者ごとの自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出するステップと、
    前記自律神経活動量分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、前記被験者ごとの自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、
    前記被験者のLF/HF値と、前記被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき前記被験者の自律神経の状態を前記被験者ごとに評価して評価結果を出力することで、前記所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に対するストレス影響について評価を行う評価ステップと、を含むみ、
    プログラム。
  4. 被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値とに基づいて算出される自律神経活動量について被験者の年齢ごとの分布を示す自律神経活動量分布データを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに、
    評価対象である、所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に含まれる複数の被験者の年齢と、前記複数の被験者の交感神経の働きを示す指標であるLF値と副交感神経の働きを示す指標であるHF値と心拍データを前記被験者ごとに取得するステップと、
    取得された前記被験者ごとのLF値とHF値とから、前記被験者ごとの自律神経のバランスを示すLF/HF値を算出するステップと、
    前記自律神経活動量分布データと、前記被験者の年齢と、前記被験者のLF値とHF値と心拍データに基づき算出される自律神経活動量とを用いて、前記被験者ごとの自律神経活動量の偏差値を算出するステップと、
    前記被験者のLF/HF値と、前記被験者における自律神経活動量の偏差値と、に基づき前記被験者の自律神経の状態を前記被験者ごとに評価して評価結果を出力することで、前記所属する被験者の年齢が異なる所定の集団に対するストレス影響について評価を行う評価ステップと、を実行させる
    プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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