以下、図面を参照し、本発明の日除け装置の実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態における各構成要素の材質、形状、および、それらの相対的な位置関係などは、あくまで例示に過ぎない。本発明の日除け装置は、これらによって限定的に解釈されるものではない。また、以下では、フロントガラスの近傍に取付けられるバス用の日除け装置を例に、実施形態1の日除け装置が説明される。しかし、本発明の日除け装置は、バス、トラックまたは普通車などの自動車に限らず、列車、船舶および航空機などの各種の乗り物、ならびに、住居やオフィスビルなどの各種の建物において用いられ得る。
<実施形態1>
図1には、実施形態1の日除け装置1が、自動車(バス)Cの車室内に配置され、かつ、使用状態に位置付けられた状態で示されている。図2には、日除け装置1の日除け部材2および表示装置3が示され、図3には、図2のIII−III線での断面図が示されている。また、図4には、日除け装置1の撮像装置4によって撮像される撮像領域41が模式的に示されている。
図1〜4に示されるように、本実施形態の日除け装置1は、板状の日除け部材2と、日除け部材2の使用時に、日除け部材2の操作者、すなわち本実施形態では運転者Mを向く表面2aに、表示部3aを運転者Mに向けて配置される表示装置3と、を備えている。日除け部材2は、光の透過率を変化させ得る調光ガラス板20を用いて形成されている。表示装置3は光を透過し得る透光性の材料を用いて形成されている。日除け装置1は、さらに、日除け部材2の表面2aの反対面2bが向く領域を撮像して撮像データを生成する撮像装置4を備えている。なお、以下の説明では、日除け部材2の「表面2a」は、日除け部材2の「第1面2a」とも称される。また、表面2aの反対面2bは、日除け部材2の「第2面2b」とも称される。日除け装置1は、さらに、撮像装置4が生成した撮像データに基づいて、日除け部材2の使用時に表示装置3の表示部3aに表示されるべき表示画像データを生成するデータ処理回路5(図12参照)と、日除け部材2を構成する調光ガラス板20における光の透過率を切り換えるスイッチ9と、を備えている。スイッチ9は、図1では、概念的に機能ブロックとして矩形で示されている。図示されていないが、撮像装置4とデータ処理回路5とは、有線または無線でデータの送受信が可能なように接続されている。
なお、以下の説明において、日除け部材2の「使用」は、日差しに第2面2bが照らされる位置に日除け部材2を位置付けることによって、第1面2aが向く領域を照射し得る日差しの少なくとも一部を日除け部材2に遮らせることを意味する。また、日除け部材2の「使用状態」は、日除け部材2が「使用」されている状態であり、日除け部材2の「使用位置」は、日除け部材2が「使用状態」となる位置である。
日除け部材2は、図1に示される例では、扁平なU字形状を有する支持部材F1と、回動可能に支持部材F1と組み合わされる係合部材F2とを用いて自動車Cの車室の天井部などに取り付けられている。日除け部材2を構成する調光ガラス板20は、光の透過率を変化させることができ、その変化に応じて、光を透過させ、または、光を遮ることができる。調光ガラス板20は、対向して設けられている2枚のガラス板21a、21bと、ガラス板21a、21bの間に配置されている液晶シート22と、を含んでいる。後述されるように、調光ガラス板20は、液晶シート22に印加される電圧の大きさに基づいて光の透過率を変化させる。液晶シート22に印加される電圧はスイッチ9によって切り換えられる。
スイッチ9は、たとえば、図示されない車両の電源部(バッテリ、オルタネータ、または、バッテリなどの電力を受けて安定化電圧を生成する電圧レギュレータなど)と、調光ガラス板20との間に接続される電気的な開閉器である。この場合、スイッチ9は、調光ガラス板20への所定の電圧の印加および非印加の2つの状態を切り替える。また、スイッチ9は、図示されない電圧レギュレータの出力電圧の基準となる基準電圧を変化させることにより、電圧レギュレータの出力に接続される調光ガラス板20への印加電圧を切り換えるものでもよい。たとえば、スイッチ9は、電源部とグランドラインとの間に接続され、電圧レギュレータの基準電圧入力端子に中間端子を接続される可変抵抗などであってもよい。この場合、スイッチ9は、段階的または連続的に、調光ガラス板20における光の透過率を切り換えることができる。スイッチ9には、調光ガラス板20への電圧の印加と非印加とを切り換え得る、または、調光ガラス板20への印加電圧の大きさを変化させ得る任意のスイッチング要素が用いられる。スイッチ9は、運転者Mなどの人の手によって操作されてもよく、後述のように、日除け装置1の他の構成要素によって操作されてもよい。
前述のように、表示装置3は透光性の材料を用いて形成されている。従って、調光ガラス板20がスイッチ9によって光を透過する状態にされているときは、たとえば運転者Mなどの車室内の人は、表示装置3および日除け部材2を通して車外の光景を見ることができる。
一方、日差しが車室内に射し込むときは、スイッチ9を用いて調光ガラス板20における光の透過率を低くすることによって日差しが遮られる。また、撮像装置4によって生成された撮像データに基づいて、日除け部材2の第2面2bが向く車外の光景の画像が表示装置3の表示部3aに表示され得る。なお、表示装置3の表示部3aは、実際に画像が表示される部分(たとえば表示画面)である。本実施形態では、表示装置3における車室を向く面のほぼ全面が表示部3aである。図1〜3では、理解され易いように、表示部3aが、表示装置3における周縁や車室を向く面に沿って二点鎖線で描かれている(図1〜3以外の図面では、表示部3aは省略されている)。
図1は、表示装置3に画像が表示されている状態を示しており、図1に示される表示装置3には、信号機S1、および「指定方向外進行禁止」を示す規制標識S2、主要地点などを示す案内標識S3、および規制標識S2の規制対象時間などを表示する補助標識S4の画像が表示されている。図1において表示装置3に表示されている信号機S1や規制標識S2は、本来、図1に示される状況において、運転者の視界に入るべき位置に存在している。ところが、日差しを遮るべく、調光ガラス板20の光の透過率が低くされると、信号機S1などが存在する領域は日除け部材2に隠れてしまい、信号機S1などが運転者Mに直接視認されなくなってしまう。しかし、本実施形態では、撮像装置4によって車外の光景が撮像され、調光ガラス板20の位置に本来見えるべき光景が、車室の内側に向けて配置されている表示装置3の表示部3aに画像として表示される。本実施形態の日除け装置1によれば、運転者Mなどは、逆光下であっても、道路標識や信号機などを見落とすことなく確認することができる。日本では、道路標識として、前述の規制標識および案内標識、ならびに、特定の許可や命令を示す指示標識および注意を促す警戒標識を含む本標識と、補助標識とが設置されている。本実施形態の日除け装置1によれば、光の透過率を低くされた調光ガラス板20に隠れてしまう光景が表示装置3に表示されるので、逆光下であっても、運転者Mは、案内標識や補助標識に書かれた文字などでさえも明瞭に確認することができる。
図4に示されるように、撮像装置4は、運転者Mの視界のうちの光の透過率を低くされた調光ガラス板20によって遮られる死角部分Bを含む撮像領域41を撮像すべく、自動車Cに配置される。そのように配置された撮像装置4によって死角部分Bを含む領域が撮像され、撮像データが生成される。撮像データに基づく表示画像データがデータ処理回路5(図12参照)によって生成されて表示装置3に送られる。その結果、死角部分Bとなり得る領域を含む光景の画像が、運転者Mに向けて表示装置3(図1参照)に表示され得る。運転者Mが、光の透過率を低くされた調光ガラス板20に隠れる部分の光景を、表示装置3を介して視認することができる。そのため、日除け部材2が使用されるような日差しの下での、運転者Mによる信号機や道路標識などの見落としを少なくすることができる。本実施形態の日除け装置1は、交通の安全確保に寄与し得るものと考えられる。
また、本実施形態では、使用状態となり得る位置に日除け部材2が位置付けられていても、調光ガラス板20の光の透過率が高くされている限り、日除け部材2によって運転者Mの視界に死角が生じることはない。従って、日除け部材2の非使用時に日除け部材2を非使用位置に移動することは必ずしも必要ではない。すなわち、日差しを遮る必要があるときと、日差しを遮る必要が無いときとの間で、日除け部材2の移動は必ずしも必要とされない。日差しを遮る必要があるときには、調光ガラス板20の光の透過率を低くするだけで、日差しを遮るか少なくともその強さを弱めることができる。また、日差しを遮る必要が無いときは、調光ガラス板20における光の透過率を高くするだけで、調光ガラス板20の位置に見えるべき車外の光景を車室の内部から見えるようにすることができる。車両の進行方向の変化などに伴って日差しの入射状況が変化する際に必要とされた、従来の日除け装置の移動に係る運転者Mなどにとっての煩わしさが軽減される。
また、このように本実施形態の日除け装置1では、日除け部材2の使用時および非使用時のいずれにおいても、運転者などの視界に実質的な死角が生じない。従って、日除け部材2は、窓(図1〜4の例では自動車のフロントガラス)の上縁付近だけでなく、さらに広範な領域、たとえば図1に示されるように窓の上側半分の領域を覆うような大きさにさえ形成され得る。日除け部材2の使用時および非使用時を問わず問題なく視界を確保しつつ、調光ガラス板20の光の透過率を低くすることによって、比較的低い高度にある太陽から差し込む日差しをも遮ることができる。鉛直方向に広いフロントガラスを有する、バスやトラックなどの日除け装置として、本実施形態の日除け装置1は特に好適である。
本実施形態では、撮像装置4は、日除け部材2と別個に形成され、自動車Cの内部に配置されている。撮像装置4は、透過率を低くされた調光ガラス板20によって生じ得る死角部分Bの全てが、運転者Mに極力近い位置において撮像領域41内に収まるように配置される。たとえば、そのような撮像領域41をもたらし得る画角を有するレンズを備えたカメラなどが撮像装置4として用いられる。あるいは、そのような撮像領域41を得るのに適した位置および角度で、撮像装置4が配置される。撮像装置4は、図4に示されるように、好ましくは、運転者Mと日除け部材2と撮像装置4とが、自動車Cの前後方向においてほぼ直線上に並ぶ位置に、好ましくは、死角部分Bの中心と撮像領域41の中心とが一致するような角度で配置される。図4に示されるように、日除け部材2および撮像装置4が配置されると、画角の小さいレンズを備える撮像装置4であっても、撮像領域41内に死角部分Bを収めることが容易になる。なお、撮像装置4が風雨などに対する適度な耐久性と耐汚性とを有している場合は、撮像装置4は車外に配置されてもよい。
撮像装置4は、図4に示される位置に限定されず、適切な撮像領域41を得ることが可能な任意の位置に配置され得る。例えば、撮像装置4は、自動車Cのフロントガラスの左右方向(自動車Cの車幅方向)の中央部、たとえばバックミラー(リアビューミラー)の裏面(自動車Cの前方を向く面)に配置されてもよい。また、撮像装置4は、自動車Cのフロントガラスの左右方向の縁部付近や、図示されないダッシュボードの上に配置されてもよい。なお、フロントガラスの少なくとも撮像装置4に面する部分の車外に向く表面には、酸化チタンなどの光触媒効果を用いた防汚コーティングが施されていることが好ましい。また、撮像装置4は、日除け部材2の第2面2bに配置されてもよい。しかし、後述のように、日除け部材2は任意の位置(角度)で使用され得るため、撮像装置4は、安定した撮像領域41を確保するという点で、日除け部材2とは別の物に支持されるべく配置されるのが好ましい。
撮像装置4は、所望の撮像領域の光景を撮像でき、データ処理回路5で処理され得る形式の撮像データを生成できるものであれば、特に限定されない。たとえば、撮像装置4としては、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有するデジタルカメラなどが例示される。撮像領域中の光景に基づく光エネルギーが、微小エリア毎に、CCDイメージセンサなどの内部にマトリックス状に配置された受光素子によって電気信号に変換され、それらの電気信号に基づく撮像データが生成される。好ましくは、カラー撮影の可能なイメージセンサを有するカメラなどが、撮像装置4に用いられる。
図4には、一点鎖線で示される円Z内に、撮像装置4が、拡大されて模式的に示されている。本実施形態の日除け装置1の撮像装置4は、屈折率の調整により光の反射を低減する被覆層4aが形成されている表面を有するレンズ4bを備えている。撮像装置4は、日除け部材2の使用時に日差しに照らされる第2面2bが向く領域の光景を撮像する。従って、撮像装置4には、逆光の下での撮影が求められる。そのため、撮像装置4のレンズ4bには、被覆層4aが設けられている。被覆層4aによって、逆光の下での撮影において生じ易いフレアやゴーストの発生が抑制され得る。被覆層4aは、レンズ4bの表面にナノサイズの多数のくさび状の構造物を形成することや、レンズ4bの表面にナノサイズの微粒子の層を形成することによって形成され得る。なお、撮像装置4は、必ずしも被覆層4aを有するレンズを備えていなくてもよい。
図5Aおよび図5Bを参照して、調光ガラス板20の動作が説明される。図5Aおよび図5Bには、調光ガラス板20の断面構造が模式的に示されている。図5Aおよび図5Bに示されるように、調光ガラス板20は、具体的には、前述の2枚のガラス板21a、21bに加えて、光を透過させる2枚の導電膜22b、22cと、2枚の導電膜22b、22cの間に封入された液晶分子22aと、を含んでいる。導電膜22b、22cと、複数の液晶分子22aにより液晶シート22が構成されている。
ガラス板21a、21bの種類としては、フロートガラスが例示されるが、ガラス板21a、21bの種類は、一定の透光性を有するものであれば特に限定されない。一般的に無機ガラスがガラス板21a、21bに好適に使用されるが、ガラス板21a、21bには、有機ガラスが用いられてもよく、たとえば、アクリルガラスなどの透光性を有するプラスチック板が用いられてもよい。導電膜22b、22cの材料も、透光性および導電性を有するものであれば、特に限定されない。たとえば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化亜鉛などが、導電膜22b、22cに用いられ得る。なお、後述されるように、表示装置3は、好ましくは有機EL表示パネルであり、表示装置3には、有機材料が含まれ得る。紫外線や熱に起因する有機材料へのストレスの軽減のために、調光ガラス板20は、紫外線および/または赤外線に対する遮光性を有していることが好ましい。たとえば、2つのガラス板21a、21bの間に、紫外線や赤外線を吸収する図示されない中間膜が設けられていてもよい。あるいは、日除け部材2の第2面2bを構成する調光ガラス板20の表面上に、紫外線および/または赤外線を遮蔽および/または反射する層が形成されていてもよい。なお、調光ガラス板20のガラス板21a、21bとしてプラスチック板が用いられる場合は、紫外線および/または赤外線を遮蔽および/または反射する層を第2面2b上に形成することが、特に好ましい。
液晶分子22aは、楕円体状の形状を有している。図5Aに示されるように、導電膜22bと導電膜22cとの間に所定の大きさの電圧が印加されると、複数の液晶分子22aは、調光ガラス板20の厚さ方向とほぼ平行な方向に配向する。その結果、光は調光ガラス板20を透過することができる。
一方、図5Bに示されるように、導電膜22b、22cに電圧が印加されていないときには、複数の液晶分子22aは、自身の楕円体の形状をそれぞれ任意の方向に向けて液晶シート22内に存在している。図5Bに示される状態では、調光ガラス板20(具体的には液晶分子22a)によって光が遮られる。導電膜22bと導電膜22cとの間に印加される電圧の大きさに基づいて、複数の液晶分子22aの配向性が変化する。従って、導電膜22bと導電膜22cとの間に印加する電圧の大きさを制御することによって、調光ガラス板20における光の透過率を制御することができる。
本実施形態の日除け装置1は、調光ガラス板20における光の透過率に基づいて、表示装置3のオンオフ状態を制御する制御回路7(図12参照)を、さらに備えていてもよい。調光ガラス板20によって日差しが遮られたときに、調光ガラス板20に隠れる部分の光景を表示装置3に表示させるために必要な車両の運転者などによる操作を少なくすることができる。たとえば、現に調光ガラス板20に印加されている電圧と、調光ガラス板20に所定の光の透過率をもたらす電圧とを比較する調光ガラス板用比較器(図示せず)が、さらに日除け装置1に備えられてもよい。そして、この調光ガラス板用比較器の出力に基づいて、制御回路7によって表示装置3のオン状態とオフ状態とが切り換えられてもよい。また、日除け部材2の第1面2aおよび第2面2bそれぞれに、光の強さを検知し得る照度センサ(図示せず)などが設けられてもよい。この2つの照度センサの出力の差が所定の基準値よりも小さい場合は、制御回路7によって表示装置3がオフ状態へと制御され、その差が基準値よりも大きいときには、表示装置3がオン状態へと制御されてもよい。そのように表示装置3が制御されることによって、調光ガラス板20における光の透過率が所定の基準値を下回るときに表示装置3がオン状態となり、表示装置3に画像が表示される。
再度、図2および図3を参照して、日除け部材2および表示装置3が、さらに詳細に説明される。日除け部材2は、板状の形状を有し、第1面2aおよび第2面2bにおける形状として全体としてほぼ矩形の形状を有している。日除け部材2における長手方向とほぼ平行な2つの端縁2d1、2d2のうちの一方の端縁2d1における左右両側の端部それぞれに、係合部材F2が備えられている。日除け部材2は、端縁2d1が日除け部材2の使用時に上側となるように、係合部材F2および支持部材F1を介して窓の上部(たとえば自動車Cの天井部)に取り付けられる。
表示装置3は、透光性の材料で形成され、データ処理回路5(図12参照)によって生成される表示画像データに基づく画像を表示部3aに表示する。表示装置3は、そのような画像表示機能を有し、透光性の材料で構成され得るものであれば特に限定されない。表示装置3としては、薄型の形状に形成されることが可能な有機EL表示パネルや液晶表示パネルが例示されるが、透光性を下げる要素となり得るカラーフィルタやバックライトなどを原理的に必要としない有機EL表示パネルが、表示装置3として特に好ましい。
表示装置3は、日除け部材2に、たとえば、シート状態で提供される光学透明接着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)によって固定されている。OCAに代えて、液状で提供され、UV照射により硬化する光学透明樹脂(OCR:Optical Clear Resin)を用いて、表示装置3が日除け部材2に接合されてもよい。しかし、日除け部材2への表示装置3の固定手段は、これらに限定されない。
図6には、表示装置3を構成し得る有機EL表示パネル30の一画素分の断面図が例示されている。樹脂などからなる可撓性フィルム37上に、R、G、Bのサブ画素ごとにTFT38などのスイッチ素子が形成され、その上に形成された平坦化膜31上に、第1電極(たとえば陽極)32が形成されている。可撓性フィルム37は、たとえば、透明なポリイミド樹脂で形成される。また、第1電極32は、たとえば、ITO膜などの透光性を備えた導電性材料により形成され、TFT38などのスイッチ素子に接続されている。TFT38は、たとえば、インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物のような、透明アモルファス酸化物半導体により形成されている。なお、TFT38は、必ずしも透光性の材料で形成されていなくてもよく、たとえば、TFT38は、個々の画素領域の外側に低温ポリシリコン(LTPS)を用いて形成されていてもよい。また、TFT38は、無機半導体材料よりも伸張性を有する、ペンタセン、銅フタロシアニン、フッ素化フタロシアニンなどのような有機半導体材料を用いて形成されてもよい。また、可撓性フィルム37に代えて、ガラス板などの剛性を有する透光性の板材がベース基材として用いられてもよい。
サブ画素間には、SiO2などからなる絶縁バンク33が形成されている。絶縁バンク33で囲まれた領域に有機層34が蒸着されている。なお、図6では、有機層34は1層で示されているが、実際には、有機層34は、異なる有機材料からなる複数層の積層膜で形成されてもよい。
有機層34の上には第2電極(たとえば陰極)35が、たとえばMg−Ag合金層やアルカリ金属層を光の波長よりも十分薄く形成することによって透明性を有するように蒸着法などを用いて形成されている。さらに、第2電極35の表面には、例えばSi3N4などからなる保護膜36が形成されている。図6に示される各要素は、有機層34や第2電極35が水分や酸素などを吸収しないように、図示されない樹脂フィルムなどからなるシール層により全体的に封止される。なお、図6に示される断面構造は一例に過ぎず、表示装置3を構成する有機EL表示パネル30の構造や各構成要素の材料は、ここで説明された構造や材料に限定されない。
本実施形態の日除け装置1に用いられる有機EL表示パネル30では、第1電極32と第2電極35とは、R、G、Bの各サブ画素のいずれにおいても、ほぼ同じ間隔を空けて形成されている。換言すると、第1電極32および第2電極35は、互いの間の間隔を、各色のサブ画素ごとに意図的に異ならされていない。一方、一般の有機EL表示パネルでは、パネルの表示面に垂直な方向に放射される光の強度を高めるために、有機層で発せられた光が陽極と陰極との間で反射を繰り返すように、各サブ画素の陽極と陰極との間隔と、そのサブ画素が発する色の光の波長とが合致されている(マイクロキャビティ構造)。すなわち、一般の有機EL表示パネルでは、各色のサブ画素ごとに、陽極と陰極との間隔が異なっている。
これに対して、本実施形態の日除け装置1では、表示装置3は、運転者などに任意の角度から見られ得る。従って、表示装置3の表示面に垂直な方向に放射される光の強度を高めることは特に必要とされず、むしろ、角度が変わっても色度が大きく変化しないように、R、G、B各色の視野角依存性を一致させる方が重要である。そのため、本実施形態の日除け装置1に用いられる有機EL表示パネル30の第1電極32と第2電極35は、一般の有機EL表示パネルと異なり、マイクロキャビティ効果を利用していない。たとえば、第1電極32と第2電極35は、R、G、Bの各サブ画素間でほぼ同じ距離だけ離間されていてもよい。換言すると、各サブ画素における陰極と陽極との間隔は、そのサブ画素が発する光の波長に合致していなくてもよい。すなわち、有機EL表示パネル30は、複数のサブ画素を含み、複数のサブ画素のそれぞれは、複数のサブ画素のそれぞれが発する光の波長と異なる長さの間隔を空けて配置された2つの電極を含んでいてもよい。
本実施形態の日除け装置1は、さらに、日除け部材2の操作者(本実施形態では運転者M)の眼の位置を検知する検知器(第1検知器6)を備えていてもよい。第1検知器6は、たとえば、図7に示されるように、2つの既知の位置にそれぞれ設置される眼検知用カメラ6a、6bおよび眼検知用カメラ6a、6bの撮影画像を分析する分析装置(図示せず)によって構成される。眼検知用カメラ6a、6bは、たとえば、遠赤外線センサを備え、撮像領域内の各部の温度データを生成する。常人の眼球は、顔の中の他の部分よりも低温であるという特徴がある。図示されない分析装置は、眼検知用カメラ6a、6bによって生成される温度データに基づいて、眼検知用カメラ6a、6bによる撮影画像における運転者Mの顔の位置、さらに眼の位置を特定する。眼検知用カメラ6a、6bに一般的なデジタル式のカメラが用いられ、図示されない分析装置における画像認識によって眼の位置が特定されてもよい。
眼検知用カメラ6a、6bの撮影画像における運転者Mの眼の位置が特定されることによって、既知の位置にある2つの眼検知用カメラ6a、6bを結ぶ直線L1と、眼検知用カメラ6a、6bそれぞれと運転者Mの眼を結ぶ直線とのなす角度θ1、θ2が特定される。そして、直線L1の長さと、角度θ1、θ2とに基づいて、三角法を用いて、眼検知用カメラ6a、6bに対する運転者Mの眼の位置が特定される。運転者Mの両眼のいずれか一方の位置だけが特定されてもよく、両眼の位置がそれぞれ特定されてもよい。両方の眼の位置が特定される場合は、たとえば、両眼を結ぶ線の中点の位置が算出され、その中点の位置が運転者Mの眼の位置として扱われる。また、運転時にいずれか一方の眼が優先して使用される場合(例えば、運転者Mが他方の眼を損傷している場合、画像を効き眼で視認したい場合等)、本実施形態の日除け装置1は、両眼に基づく設定から一方の眼に基づく設定に切り替えかつ右眼と左眼のどちらを使用するのかを指定する補助部を有していることが好ましく、補助部に入力された情報は後述する表示対象データ選択回路53によるデータ処理に用いられる。眼検知用カメラ6a、6bは、たとえば、自動車Cのピラーや、車幅方向の中央部におけるフロントガラスの近傍に1つずつ配置される。しかし、眼検知用カメラ6a、6bは、図7に示される位置に限定されず、運転者Mの眼の位置を検知し得る任意の位置に設けられてもよい。第1検知器6の検知結果の利用方法については後述される。
本実施形態の日除け装置1は、さらに、図8Aおよび図8Bに示されるように、日除け部材2の位置を検知する検知器(第2検知器8)を備えていてもよい。第2検知器8は、少なくとも、日除け部材2の使用状態と非使用状態とを識別すべく、日除け部材2の位置を検知する。第2検知器8は、好ましくは、日除け部材2の第1面2aの角度(たとえば、自動車Cの上下方向に対する角度)を検知することにより日除け部材2の位置を検知する。
図8Aには、第2検知器8の例として角度センサ8aが示されている。図8の例では、角度センサ8aは、ロータリーポテンショメータを用いた回転角度検出センサである。図8Aの角度センサ8aは、支持部材F1を軸に日除け部材2および係合部材F2と共に回動する可動部8a1と、支持部材F1に固定される固定部8a2とを有し、支持部材F1と係合部材F2との係合部に配置されている。角度センサ8aは、固定部8a2と、日除け部材2と共に回動する可動部8a1との間の、支持部材F1を軸とする周方向における位置の差異を検知することで、日除け部材2の角度、すなわち、回動方向における位置を検知する。
図8Bに示される例では、日除け部材2は、係合部材F2が取り付けられている端縁2d1と反対側の端縁2d2の近傍に、第2検知器8として磁気センサ8bを備えている。図8Bには、運転者Mの側方からの図として日除け部材2の使用状態の例が示されている。日除け部材2は、係合部材F2を用いて支持部材F1に回動可能に結合されている。日除け部材2は、支持部材F1を軸として回されることによって、使用されていない位置である非使用位置P0から、使用位置P1などの使用位置へと位置付けられる。なお、使用位置P1は、日除け部材2の使用位置の一例に過ぎず、日除け部材2は、車室内に差し込む日差しの少なくとも一部を遮り得る任意の位置で使用され得る。
図8Bに示されるように、日除け部材2が非使用位置P0にあるときに磁気センサ8bと近接する位置にマグネット81が配置されている。また、日除け部材2が支持部材F1を軸として非使用位置P0から最も遠くまで回動した位置(図8Bの例では使用位置P1)にあるときに磁気センサ8bと近接する位置にマグネット82が配置されている。マグネット81、82は、たとえば、車室の天井部を構成する内装材の表面もしくはその裏側や、ピラーの表面や内部に配置され得る。
マグネット81、82は、たとえば、磁気センサ8bに向って、互いに同じ磁極(N極またはS極)を向けて配置される。磁気センサ8bは、日除け部材2の回動に伴って、マグネット81とマグネット82とによって作り出される磁界の中を移動する。磁気センサ8bは、自身の位置における磁界の向きおよび強度を検知し、たとえば電気的に検知結果を出力する。磁気センサ8b、マグネット81、82を用いることによって、日除け部材2が、非使用位置P0にあるか、所定の使用位置たとえば使用位置P1にあるかを検知することができる。磁気センサ8bは、たとえば、ホール素子や、単に磁気コイルなどによって構成され得る。第2検知器8は、日除け部材2の位置を検知することができればよく、図8Aや図8Bに示された例に限定されない。たとえば、図8Bにおける磁気センサ8bの位置にマグネットが配置され、マグネット81、82の位置それぞれに第2検知器8として磁気センサが設けられてもよい。また、マグネット81、82のいずれか1つだけが配置されてもよい。
第2検知器8が設けられる場合、日除け装置1には、好ましくは、前述の制御回路7(図12参照)が備えられ、第2検知器8は制御回路7に接続される。この場合、制御回路7は、少なくとも、第2検知器8の検知結果に基づいて日除け部材2が使用位置にあるか否かを判断してもよい。そして、制御回路7は、調光ガラス板20における光の透過率と、第2検知器8の検知結果とに基づいて、表示装置3のオンオフ状態を制御してもよい。
たとえば、制御回路7は、調光ガラス板20における光の透過率が所定の基準値と同じまたは所定の基準値を上回るときには、日差しは遮られておらず、よって表示装置3への画像表示は不要であると判断し、日除け部材2の位置に関わらず表示装置3をオフ状態へと制御してもよい。そして、制御回路7は、調光ガラス板20における光の透過率が所定の基準値を下回るときには、第2検知器8の検知結果に基づいて表示装置3のオンオフ状態を制御してもよい。たとえば、第2検知器8の検知結果が、所定の位置よりも非使用位置P0から遠い位置に日除け部材2があることを示していると、制御回路7は、日除け部材2が使用位置にあると判断してもよい。そして、そのときに表示装置3がオフ状態にある場合は、制御回路7は表示装置3をオン状態へと制御し、表示装置3に画像を表示させてもよい。また、第2検知器8の検知結果が所定の位置よりも非使用位置P0の近くに日除け部材2があることを示していると、制御回路7は、日除け部材2が非使用位置にあると判断してもよい。そして、そのときに表示装置3がオン状態にある場合は、制御回路7は、表示装置3をオフ状態へと制御し、画像の表示を停止させてもよい。日除け装置1がこのような構成を備えることによって、運転者Mは、日除け部材2を操作する、および/または、調光ガラス板20の光の透過率を変化させるだけで、表示装置3に画像を表示させたり、その表示を停止させたりすることができる。
第2検知器8は、角度センサ8aや磁気センサ8bに限定されず、重力センサなど、日除け部材2の位置(角度)に基づいて変化する事象の検出が可能な任意の検知器であってもよい。なお、第2検知器8は必ずしも設けられなくてもよい。すなわち、表示装置3のオンオフの制御は、日除け部材2の操作者によって行われてもよい。
なお、調光ガラス板20の透過率と表示装置3における画像の表示とは、必ずしも連動していなくてもよい。たとえば、調光ガラス板20の透過率が高いときに、表示装置3に画像が表示されてもよい。たとえば夜間など、車外が暗い状況では、調光ガラス板20の光の透過率が高い状態でも、表示装置3は、運転者に十分に視認され得る画像を表示することができる。そのような場合、任意の情報が表示装置3に表示されてもよい、一方、光の透過率を低くされている調光ガラス板20に隠れる部分に、視認されるべき物が存在しない状況では、調光ガラス板20の光の透過率の高低に拘らず表示装置3がオフ状態にされてもよい。
本実施形態の日除け装置1は、図9Aおよび図9Bに示されるように、表示装置3と別個に設けられ、表示装置3の画素の駆動に用いられる信号を出力するドライバ(第1ドライバ11)をさらに備えていてもよい。第1ドライバ11は、データ処理回路5(図12参照)によって生成される表示画像データに基づいて、表示装置3の画素の駆動用の信号を出力する。第1ドライバ11は、たとえば、表示装置ドライバICおよび表示装置ドライバIC用実装基板などによって構成され得る。第1ドライバ11によって、たとえば、表示装置3における画像表示に必要なソース信号やゲート信号が適切なタイミングで生成され、出力信号として出力される。
また、表示装置3は、第1ドライバ11の出力信号に基づいて表示装置3の画素を駆動するドライバ(第2ドライバ12)を備えていてもよい。第2ドライバ12は、たとえば、表示装置3の表面上またはその内部に形成される。第2ドライバ12は、たとえば、表示装置3のTFT38(図6参照)と同様に表示装置3の内部に形成された複数のトランジスタにより構成され得る(なお、図9Aおよび図9B、ならびに後述の図10A〜図11では、解り易いように、表示装置3の表面上に、厚さおよび短辺方向の長さを誇張して第2ドライバ12が模式的に示されている)。
第1ドライバ11と第2ドライバ12とは配線11aによって接続されている。配線11aは、たとえば、フレキシブルプリント配線板を構成する導体パターンである。図示されていないが、第2ドライバ12は、表示装置3に形成される配線によって、表示装置3の各画素のTFT38に接続される。第2ドライバ12と各画素のTFT38とを接続する図示されない配線は、表示装置3においてマトリックス状に並ぶ複数の画素の列(column)の数または行(row)の数に応じて複数個設けられる。
一方、第1ドライバ11は、導電線11bによって、データ処理回路5(図12参照)またはデータ処理回路5と第1ドライバ11との間に設けられる任意の中継回路(図示せず)に接続されている。導電線11bは、並列に配置された、または、束ねられた複数の導電線によって構成され得る。図9A及び図9Bの例では、導電線11bは、管状材を用いて形成されている支持部材F1の内部に挿通されている。第1ドライバ11は、導電線11bとの接続部11cを備えている。第1ドライバ11と導電線11bとは、接続部11cにおいて、異方性導電フィルムなどを用いた熱圧着、はんだ付け、またはコネクタの嵌合などによって接続され得る。
第1ドライバ11によって表示装置3の各画素の列や行に応じた駆動信号が生成される。そのため、第1ドライバ11と第2ドライバ12との間は、表示装置3における画素の列数または行数に応じた多数の配線11aで接続される。しかし、第1ドライバ11とデータ処理回路5(図12参照)との間は、数十本程度の導電線11bによって接続され得る。従って、比較的高価なフレキシブルプリント配線板などを用いることなく、単線または撚線によって個々に形成された複数の導電線11bによって、第1ドライバ11とデータ処理回路5などとを接続することも十分可能となり得る。加えて、データ処理回路5と第1ドライバ11との間の接続構造に関する設計の自由度も向上する。
図9Aおよび図9Bの例では、表示装置3は略矩形の表示画面3bを備えており、第1ドライバ11は、日除け部材2の縁部において表示画面3bの長手方向に沿っている第1縁部2e1に配置されている。第1縁部2e1は、日除け部材2の使用時に上側(たとえば図1の例における自動車Cの車室の天井部)に向けられるべき日除け部材2の端縁およびその近傍部分である。第1ドライバ11は、前述のように、必ずしも透光性を有さない表示装置用ドライバICなどによって構成されるため、日除け部材2の操作者の視界に死角を生じさせることがある。しかし、日除け部材2の第1縁部2e1に第1ドライバ11を配置することによって、運転者の視界に生じ得る死角をフロントガラスなどの窓の上縁部だけに限定することができる。また、人の視線の移動は、上下方向よりも水平方向の方がスムーズであるため、上下方向において視界の寸断箇所がある方が、寸断されている印象を運転者に与え難いと考えられる。
また、図9Aおよび図9Bの例では、第1ドライバ11は、日除け部材2の第1縁部2e1における日除け部材2の側面に配置されている。第1ドライバ11が扁平な形状を有する場合、このように、その側面を運転者などに向けるべく日除け部材2の側面に第1ドライバ11を配置することが、第1ドライバ11によって生じ得る死角を小さくできる点で好ましい。しかし、第1ドライバ11は、日除け部材2の第1面2aまたは第2面2bに配置されてもよい。
さらに、第1ドライバ11が、表示画面3bの長手方向に沿っている縁部に配置されていると、第1ドライバ11を構成する各駆動素子が駆動信号を送るべき画素の数が少なくなる。その結果、第1ドライバ11と、第1ドライバ11から最も遠い画素との間の(配線11aおよび表示装置3の内部配線を含めた)配線の長さを短くすることができる。各配線における電圧降下や導体抵抗による発熱を小さくすることができる。表示装置3に電流駆動式である有機EL表示パネルが用いられる場合、図9Aなどに示されるような第1ドライバ11および第2ドライバ12の配置は特に好ましい。
第1ドライバ11は、図10Aおよび図10Bに示されるように、日除け部材2と離間して設けられてもよい。第1ドライバ11による死角の発生を確実に防止することができる。図10Aおよび図10Bの例では、日除け装置1は、配線11aを備える可撓性フィルム11dを備え、配線11aによって第1ドライバ11と表示装置3とが接続されている。可撓性フィルム11dは、略矩形の表示画面3bを備える表示装置3の縁部における、表示画面3bの長手方向に沿っている部分に接続されている。また、可撓性フィルム11dは、日除け部材2との関係においては、表示画面3bの長手方向に沿っていて日除け部材2の使用時に上側に向けられるべき日除け部材2の第1縁部2e1において表示装置3に接続されている。図9Aなどに示される例と同様に、第1ドライバ11と、第1ドライバ11から最も遠い画素との間の配線の長さを短くすることができる。可撓性フィルム11dは、たとえば、異方性導電フィルム(図示せず)などを用いた熱圧着などによって表示装置3に接続され、好ましくは、その接続箇所がエポキシ樹脂などで被覆される。
可撓性フィルム11dは、たとえば、ポリイミド樹脂などを用いて形成されており、可撓性フィルム11dと配線11aとによってフレキシブルプリント配線板が構成されている。日除け部材2が回動しても、可撓性フィルム11dに支持された配線11aによって、第1ドライバ11と表示装置3との接続が正常に維持される。図10Bの例では、配線11aを保護するカバーレイ11d1がフレキシブルプリント配線板に備えられている。なお、第1ドライバ11は、たとえば、自動車C(図1参照)の車室の天井部を構成する内装材(図示せず)と、車両(自動車C)のルーフを構成する外装板との間に配置され得る。
可撓性フィルム11dは、可撓性もしくは少なくとも一箇所において曲がり得る不透明のカバー部材によって表面を覆われていてもよい。図10Aおよび図10Bでは、可撓性フィルム11dは、カバー部材11eによって表面を覆われている。可撓性フィルム11dは、前述のようにポリイミドなどにより形成されるため一般的には茶褐色を呈し、運転者などに特に美感を与えないと考えられる。しかし、所望の装飾性を有するカバー部材を可撓性フィルム11dに備えることによって、外観上の品質を高めることができる。また、可撓性フィルム11d上や配線11a上への埃などの堆積が防止され、さらに、埃および結露などによる水分による配線11a間の短絡故障が防止され得る。なお、図10Aおよび図10Bの例では、可撓性フィルム11dの両側にカバー部材11eが備えられているが、カバー部材11eは、たとえば、可撓性フィルム11dにおける、運転者M(図3参照)に向けられる表面またはその反対面だけに備えられてもよい。また、中空のカバー部材によって可撓性フィルム11の表裏両面が一括して覆われてもよい。
カバー部材11eは、たとえば金属や樹脂などの任意の材料によって形成され、好ましくは、絶縁性の材料で形成される。カバー部材11eが剛性を有する材料で形成される場合は、個々に形成された部材をヒンジなどで連結することによって少なくとも一箇所に折り曲げ可能な部分が設けられてもよい。カバー部材11eは、可撓性フィルム11dの屈曲を顕著に制限しない程度に少なくとも一箇所で曲がり得る任意の構造を有することができる。なお、カバー部材11eは、たとえば、絶縁性の接着剤などを用いて、可撓性フィルム11dやカバーレイ11d1などに接着されてもよく、カバー部材11eは任意の手段で可撓性フィルム11dなどに固定され得る。
図10Aおよび図10Bに示される例では、第2ドライバ12も、可撓性フィルム11dを覆うカバー部材11eによって覆われている。第2ドライバ12上への埃などの堆積が防止され、第2ドライバ12を構成する複数のトランジスタ間などでの短絡故障が防止され得る。しかし、カバー部材11eは、必ずしも第2ドライバ12を覆っていなくてもよい。
前述のように、第1ドライバ11は、表示装置3が矩形の表示画面3bを有する場合、表示画面3bの長手方向に沿った日除け部材2の縁部に配置されることが好ましい。しかし、第1ドライバ11は、日除け部材2における表示画面3bの短辺方向に沿っている縁部に配置されてもよい。たとえば、日除け部材2における表示画面3bの長辺方向に沿った縁部よりも短辺方向に沿っている縁部の方が目に付き難いような場合には、第1ドライバ11は、好ましくは、図11に例示されるように、表示画面3bの短辺方向に沿った縁部に配置される。
図11の例では、表示装置3は略矩形の表示画面3bを備え、第1ドライバ11が、日除け部材2の縁部において表示画面3bの短辺方向に沿っている第2縁部2e2に配置されている。この例では、第1ドライバ11は、日除け部材2の第1面2a上に配置されている。また、第2ドライバ12は、表示画面3bの短辺方向に沿っていて、日除け部材2の第2縁部2e2に隣接する表示装置3の縁部に設けられている。日除け部材2は、第2縁部2e2に取付けられた係合部材F2によって、たとえば、自動車C(図1参照)の車室の天井部から延びる支持部材F1に固定されている。前述の図9Aなどに示される例と同様に、第1ドライバ11は、接続部11cにおいて熱圧着などによって導電線11bと接続されており、導電線11bは支持部材F1の内部に挿通されている。
図11に例示される支持部材F1は、所望の箇所にヒンジ(図示せず)などによって折り曲げ部F1aを設けられてもよい。そして、支持部材F1の折り曲げ部F1aでの曲げ伸ばしによって、日除け部材2が前述の図8Bに示されるように非使用位置P0および任意の使用位置(たとえば使用位置P1)に位置付けられてもよい。その場合、図11に示されるように第1ドライバ11が配置されると、日除け部材2の位置の移動に伴って第1ドライバ11と導電線11bとの接続部11cに加わり得る機械的なストレスが軽減されると考えられる。接続部11cの強度劣化などが抑制されると考えられる。
なお、第2縁部2e2は、日除け部材2が自動車C(図1参照)のフロントガラスに対して用いられるときに、自動車Cの上下方向に沿った縁部であって、かつ、自動車Cの車幅方向において中央部よりもドアの近くに位置付けられるべき縁部であることが好ましい。すなわち、日除け部材2が、自動車Cの右側に設けられた運転席に対して用いられる場合は、第1ドライバ11は、好ましくは、図11に示されるように、日除け部材2の第1面2aに向って右側の縁部に配置される。また、日除け部材2が、自動車Cの左側に設けられた運転席に対して用いられる場合は、第1ドライバ11は、好ましくは、日除け部材2の第1面2aに向って左側の縁部に配置される。同様に、日除け部材2が自動車Cの助手席に対して用いられる場合も、第1ドライバ11は、好ましくは、自動車Cの中央部よりもドアの近くの縁部に配置される。第1ドライバ11によって死角が生じる場合でも、運転者などに与える視覚的な不自然さが少ないと考えられる。
図12には、本実施形態の日除け装置1の主な構成要素がブロック図で示されている。撮像装置4で生成された撮像データはデータ処理回路5に送られる。データ処理回路5によって撮像データに基づいて生成された表示画像データは第1ドライバ11に送られ、第1ドライバ11で生成された信号に基づいて表示装置3の各画素が駆動される。その結果、表示画像データに基づく画像が、表示装置3の表示部3aに表示される。前述の第1検知器6はデータ処理回路5に接続されている。第2検知器8は制御回路7およびデータ処理回路5に接続されている。
図12に示されるように、本実施形態の日除け装置1は、さらに第3検知器13を備えている。第3検知器13は制御回路7に接続されている。制御回路7はスイッチ9および表示装置3に接続されている。スイッチ9は、図12の例では、電源ラインVと日除け部材2(調光ガラス板20)との間に接続されている。なお、図12は、本実施形態における日除け装置1の構成の一例に過ぎず、日除け装置1は、図12に示される構成要素を必ずしも全て含んでいなくてもよく、図12に示されていない構成要素をさらに含んでいてもよい。また、データ処理回路5の内部の構成も、図12に示されるものに限定されない。以下、第3検知器13、制御回路7、および、データ処理回路5が順に説明される。
第3検知器13は、調光ガラス板20に射しこむ入射光の強さを検知する。第3検知器13としては、たとえば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、または照度センサなどが例示される。しかし、第3検知器13は、光の強さに応じた検知結果を出力できるものであれば、これらに限定されない。第3検知器13は、好ましくは、調光ガラス板20の周囲に配置される。第3検知器13は、調光ガラス板20を照射する日差しに照射され得る場所でさえあれば、任意の位置に配置され得る。
制御回路7は、前述の表示装置3のオンオフ状態の制御に加え、さらに、第3検知器13の検知結果に基づいて、調光ガラス板20における光の透過率を切り換えるべくスイッチ9を制御する。制御回路7は、たとえば、第3検知器13の検知結果と、所定の閾値とを比較し、第3検知器13の検知結果が、所定の閾値以上の強さの入射光に照らされていることを示している場合、スイッチ9を開状態へと制御する。調光ガラス板20への電源ラインVからの電圧の印加が停止される。その結果、調光ガラス板20における光の透過率が低下し、調光ガラス板20によって日差しが遮られる。前述のようにスイッチ9が、段階的または連続的に、調光ガラス板20に入力される電圧の大きさを切り換え得るときは、制御回路7も、スイッチ9の状態を多段階に切り替えることが好ましい。制御回路7は、たとえば、コンパレータや幾つかのゲート素子の組み合わせによって構成され得る。また、制御回路7は、マイコンやゲートアレイの一部によって構成されてもよく、データ処理回路5に含められていてもよい。
データ処理回路5は、それぞれ固有の機能を有する回路ブロックである、データ生成回路50、角度識別回路51、データ補正回路52、表示対象データ選択回路53、メモリ回路54、比較回路55、および表示画像強調回路56を含んでいる。表示対象データ選択回路53は、メモリ回路53aを備えている。これらの回路ブロックは、部分的にまたは全体的に、同一の回路素子を共用していてもよい。データ処理回路5は、マイコンやASIC、またはFPGAなどの任意の信号処理用半導体装置およびその周辺回路によって形成することができる。マイコンなどは、所定の処理手順を規定するソフトウェアに従って動作する。データ処理回路5内の各回路ブロックは、個々に半導体積回路装置や個別半導体素子を用いて形成されてもよい。
データ生成回路50は、データ処理回路5の基本機能を担う回路ブロックであり、撮像データに基づいて、表示装置3の画素ごとの発光強度および発光のタイミングに関する情報を含む表示画像データを生成する。データ生成回路50は、たとえば、有機EL表示パネルなどの駆動信号の生成のために用いられ、所定の処理手順を規定するソフトウェアに従って動作する、所謂タイミングコントローラおよびその周辺回路であってよい。
角度識別回路51、データ補正回路52の機能が、図13A、13B、14Aおよび14Bを参照して、以下に説明される。角度識別回路51は、少なくとも第1検知器6(図7参照)の検知結果に基づいて、日除け部材2の第1面2aに対する、日除け部材2に向けられる操作者(本実施形態では運転者M)の視線の角度θAを識別する。たとえば、角度識別回路51は、日除け部材2が予め設定された使用位置(基準使用位置)に位置付けられていると仮定して、日除け部材2の第1面2aに対する運転者Mの視線Iの角度θAを識別してもよい。この場合、基準使用位置に日除け部材2が位置付けられたときに、そのことを操作者に伝える手段が設けられることが好ましい。たとえば、支持部材F1における係合部材F2との係合面にノッチなどの凹部が設けられてもよい。そして、係合部材F2の係合面における、日除け部材2が基準使用位置にあるときにこの凹部と相対する位置に日除け部材2の移動を妨げない程度の微小な凸部が設けられてもよい。基準使用位置は、日除け部材2の移動範囲における任意の位置であってよく、たとえば、基準使用位置は、日除け部材2の第1面2aが自動車Cの上下方向に沿うように位置付けられる位置である。
基準使用位置にある日除け部材2と、第1検知器6の構成要素であって既知の位置にある2つの眼検知用カメラ6a、6b(図7参照)との位置関係は予め特定され得る。また、前述のように、第1検知器6は、眼検知用カメラ6a、6bに対する運転者Mの眼の位置を検知し得る。従って、基準使用位置にあると仮定される日除け部材2の第1面2aに対する運転者Mの眼の位置も特定される。その結果、基準使用位置にあると仮定される日除け部材2を見る運転者Mの視線Iの方向を特定することができる。すなわち、第1検知器6の検知結果に基づいて、基準使用位置にあると仮定される日除け部材2の第1面2aに対する、日除け部材2に向けられる運転者Mの視線Iの角度θAを識別することができる。
また、角度識別回路51は、第1検知器6の検知結果、および前述の第2検知器8(図8A、8B参照)の検知結果に基づいて、運転者Mの視線Iの角度を識別してもよい。前述のように、第2検知器8は、日除け部材2の回動方向における位置を検知し得る。従って、現に特定の使用位置に位置付けられている日除け部材2と、既知の位置にある2つの眼検知用カメラ8a、8bとの位置関係も第2検知器8の検知結果から特定され得る。従って、任意の位置で使用され得る日除け部材2の第1面2aに対する、日除け部材2に向けられる運転者Mの視線Iの角度θAを、いっそう正確に特定することができる。角度識別回路51は、たとえば、このように角度θAを特定する手順を含むソフトウェアなどに従って動作する。
データ補正回路52は、所定の基準角度に対する角度θAの差異Δθに基づいて撮像データを補正する(以下、基準角度を90度として説明がなされる)。図13Aに示されるように、角度θAが90度である(Δθがゼロ、日除け部材2の第1面2aと視線Iとが直交する)場合、図13Aにおける左側の図に例示されるように、表示装置3に表示される信号機S1の画像は、ほぼ適正に運転者Mの眼に捉えられる。しかし、図13Bに示されるように、角度θAが90度以外の角度である場合、図13Bにおける左側の図に示されるように、信号機S1の画像は、上下方向に縮小して歪んだ形状で運転者Mの眼に捉えられる。データ補正回路52は、所定の基準角度と角度θAとの差異Δθに基づいて、図13Bに示されるような状態でも、表示装置3に表示される画像が適正に運転者Mの眼に捉えられるように、撮像データを補正する。
たとえば、データ補正回路52は、撮像データのうちの表示装置3に表示させる領域の上下方向における中心画素から2つ上の画素のデータを、中心画素から1つ上の画素のデータに置き換える。また、中心画素から3つ上の画素および4つ上の画素のデータは、中心画素から2つ上の画素のデータ(前述のように置き換えられる前のデータ)に置き換えられる。データ補正回路52は、このようなデータ補正を、上下両方向において、表示装置3に表示させる領域に対応する撮像データに対して行う。このような補正を行うことにより、表示装置3に表示される画像を上下方向に2倍に引き延ばすことができる。表示画像を上下方向に引き延ばす倍率は、所定の基準角度に対する角度θAの差異Δθに基づいて選択される。たとえば、表示画像は、日除け部材2の第1面2aに対する運転者Mの視線Iの角度θAが90度から離れれば離れるほど、より大きな倍率で上下方向に引き延ばされる。
データ処理回路5は、所定の基準角度と、日除け部材2の第1面2aに対する視線Iの角度との差異について補正された表示画像を表示装置3に表示すべく、データ補正回路52によって補正された後の撮像データに基づいて、表示画像データを生成する。そうすることによって、たとえば、実際の表示装置3には、図14Aに示されるように、上下方向に引き延ばされた画像が表示される。しかし、運転者には、図14Bに示されるように、本来の表示対象物(図14Bでは信号機S1)の形状に近い形状の画像として捉えられる。運転者にとって表示対象物の認識が容易になると考えられる。なお、データ補正回路52は、データ生成回路50によって生成された表示画像データに対して補正するものであってもよい。
つぎに、表示対象データ選択回路53(図12参照)の機能が、図15および図16を参照して説明される。
表示装置3には、日除け部材2の操作者(本実施形態では運転者M)の視界において、調光ガラス板20における光の透過率が低いときに生まれる死角部分の光景だけを表示することが、運転者Mの眼に違和感無く画像が映る点で好ましいと考えられる。図15に示されるように、日除け部材2の基準位置PRおよび運転者Mの眼の基準位置PIが定められれば、これらと日除け部材2の大きさとに基づいて、撮像装置4(図4参照)の撮像領域における死角部分(基準死角部分BR)が定まる。なお、撮像領域は、撮像装置4の位置や特性によって固定的に定まる。日除け部材2および運転者Mの眼の位置が固定であれば、撮像データのうちの、基準死角部分BRに対応する領域(基準表示対象領域)を表示対象領域とすることによって、常に死角部分の光景だけが表示装置3に表示される。しかし、日除け部材2および運転者Mの眼は移動し、それにより死角部分が変動する。そのため、表示対象領域を死角部分の変動に応じて変更することが好ましい。表示対象データ選択回路53は、このような表示のために、日除け部材2の操作者の視界における、光の透過率を低くされた日除け部材2によって遮られる死角部分を判別し、かつ、撮像データのうちの死角部分に対応する表示対象データを選択する。
表示対象データ選択回路53には第1検知器6および第2検知器8が接続されている(図12参照)。従って、表示対象データ選択回路53には、運転者Mの眼の位置および日除け部材2の位置についての情報が入力される。また、表示対象データ選択回路53はメモリ回路53a(図12参照)を備えている。メモリ回路53aには、様々な日除け部材2の位置および/または角度、ならびに運転者Mの眼の位置ごとに、光の透過率を低くされた調光ガラス板20によって遮られることで生じる死角部分BAと、基準死角部分BRとの差分に関する情報が記憶されている。図15には、一例として、運転者Mの眼が位置PAにあるときの死角部分BAが示されている。たとえば、メモリ回路53aには、実際の死角部分BAの位置を得るために必要な、基準死角部分BRに対する上下方向および左右方向への移動量や拡大率もしくは縮小率などが記憶されている。表示対象データ選択回路53は、第1および第2の検知器6、8からの運転者Mの眼の位置および日除け部材2の位置についての情報、ならびにメモリ回路53aの記憶内容に基づいて、実際の死角部分BAの位置を数値演算などにより特定する。そして、表示対象データ選択回路53は、撮像データのうちの、実際の死角部分BAに対応する領域のデータを、表示対象とすべき表示対象データとして選択する。
なお、表示対象データ選択回路53は、第2検知器8の検知結果を用いずに、前述のように、日除け部材2が「基準使用位置」に位置付けられていると仮定して、第1検知器6の検知結果に基づいて、表示対象データを選択してもよい。
そして、データ生成回路50は、実際の死角部分BAの光景を表示装置3に表示させるべく、選択された表示対象データに基づいて表示画像データを生成する。その結果、図16に示されるように、撮像領域41のうちの、基準死角部分に対応する基準表示対象領域DRに対して変更された(図16の例では上方にシフトされた)実際に表示すべき表示対象領域DAの画像が、表示装置3に表示される。フロントガラス越しに見える光景との対比において違和感の少ない画像を表示装置3に表示することができる。
なお、表示対象データ選択回路53は、車体に対する運転者Mの相対的な僅かな動きによって生じる画像表示の細かな揺れをキャンセルする機能を有していてもよい。たとえば、表示対象データ選択回路53は、第1検知器6(図7参照)からの情報が所定のレベル以上に頻繁に変動する場合は、第1検知器6からの情報をサンプリングする周期を長くするように構成されていてもよい。また、表示対象データ選択回路53は、運転者Mの眼の位置の変化が所定の条件を満たさない場合には、表示対象データの選択動作を新たに開始しないように構成されていてもよい。また、表示対象データ選択回路53における第1検知器6からの情報を受け取る入力部分にローパスフィルタが設けられてもよい。
つぎに、表示画像強調回路56、比較回路55およびメモリ回路54(図12参照)の機能が、図17、18Aおよび18Bを参照して説明される。
メモリ回路54は、撮像装置4(図4参照)によって撮像され得る所定の対象物の外見的特徴に関する参照データを記憶する。図17には、メモリ回路54に記憶される参照データ54a、54bの例が、その参照データ54a、54bによって再構成され得る画像として概念的に示されている。すなわち、図17に示されるように、メモリ回路54には、信号機S1や規制標識S2などの、撮像装置4によって撮影される可能性のある物体の外見的特徴がデータ化して記憶されている。たとえば、メモリ回路54には、信号機S1などを実際に撮像装置4で撮影することにより生成された撮像データが記憶されている。或いは、信号機S1などの形状が微小三角形のような単位要素を用いてモデリングされ、その各単位要素の頂点座標によって参照データ54a、54bが形成されてもよい。参照データは任意の方法で形成され得る。メモリ回路54は、特に限定されないが、たとえば、SRAMやPROMなどの任意の半導体記憶装置により構成される。前述の表示対象データ選択回路53のメモリ回路53aとの間で同一の記憶装置が共用されてもよい。
比較回路55は、撮像装置4によって生成された撮像データと、メモリ回路54に記憶されている参照データ54a、54bとを比較する。比較回路55は、たとえば、撮像データおよび参照データ54a、54bを画像に再構成し、パターン認識技術によって比較してもよい。また、撮像データおよび参照データ54a、54bのデータ形式が同じであれば、実際のデータのままビットもしくはバイト単位で両データが逐次比較されてもよい。比較回路55によって行われる比較の方法は特に限定されない。比較回路55は、撮像データと参照データ54a、54bとの比較によって、所定の判定基準を満たすほど参照データ54a、54bのいずれかと近似している近似撮像データがある場合、その近似撮像データを検出する。
表示画像強調回路56は、比較回路55の比較の結果、近似撮像データが検出された場合は、近似撮像データに基づいて表示される所定の対象物の表示画像をその他の表示画像よりも強調して表示装置3に表示させる。具体的には、表示画像強調回路56は、データ生成回路50(図12参照)によって生成される表示画像データのうちの、近似撮像データに基づいて生成された表示画像データを加工する。
たとえば、表示画像強調回路56は、図18Aの表示装置3における左側に示されるように、強調対象物(信号機)の画像S11の周囲の画素のデータを加工し、画像S11が際立つように画像S11を囲む枠S12を表示させる。また、図18Aの表示装置3における右側に示されるように、強調対象物(規制標識)の画像S21の周囲の画素のデータが加工され、画像S21の拡大画像S22が表示されてもよい。また、表示画像強調回路56は、図18Bに示されるように、強調対象物の表示画像S11、S21における特定の色(たとえば赤色や青色)を強調すべく、その特定の色のサブ画素の輝度を高めてもよい。
また、表示画像強調回路56は、近似撮像データが検出された場合、その近似撮像データが含まれる撮像データに基づいて表示されるべき画像を所定の時間枠で静止画として表示装置3に表示させてもよい。たとえば、データ生成回路50によって生成される表示画像データが随時ビデオメモリ(図示せず)などに記録される。そして、近似撮像データが検出されたときには、表示装置3に送られる表示画像データが、所定の時間の間、データ生成回路50によって随時生成される表示画像データから、図示されないビデオメモリに記録されている表示画像データに切り換えられてもよい。表示画像強調回路56は、これらの方法に限定されることなく任意の方法で特定の画像を強調することができる。このような強調によって、運転者Mに認識させる必要性の高い対象物に対する視認性を高めることができる。
以上の説明では、自動車のフロントガラスに対して用いられる場合を例に、本実施形態の日除け装置1が説明された。しかし、本実施形態の日除け装置1は、フロントガラスに対するものに限定されず、自動車のリアガラスを始め、任意の車両の窓ガラスや、前述のように、他の任意の乗り物および任意の建物の窓ガラスに適合し得るものと理解されるべきである。
<まとめ>
本発明の態様1に係る日除け装置は、光の透過率を変化させ得る調光ガラス板を用いて形成される板状の日除け部材と、前記日除け部材におけるその使用時に操作者を向く表面に、表示部を該操作者に向けて配置される、光を透過し得る表示装置と、前記表面の反対面が向く領域を撮像して撮像データを生成する撮像装置と、前記撮像装置が生成した撮像データに基づいて、前記日除け部材の使用時に前記表示部に表示されるべき表示画像データを生成するデータ処理回路と、前記調光ガラス板における光の透過率を切り換えるスイッチと、を備えることを特徴としている。
本発明の態様1の構成によると、日除け装置の使用時に日除け部材によって隠れる領域を含む光景の画像を日除け部材の操作者に向けて表示することができ、しかも、非使用時に使用位置に置かれても死角を生じさせ難い日除け装置を提供することができる。
本発明の態様2に係る日除け装置は、上記態様1において、前記日除け部材の操作者の眼の位置を検知する第1検知器をさらに備えており、前記データ処理回路が、前記第1検知器の検知結果に基づいて、前記表面に対する前記日除け部材に向けられる前記操作者の視線の角度を識別する角度識別回路と、所定の基準角度に対する前記視線の角度の差異に基づいて前記撮像データを補正するデータ補正回路と、をさらに有し、前記データ処理回路は、前記所定の基準角度に対する前記視線の角度の差異について補正された表示画像を前記表示装置に表示すべく前記データ補正回路により補正された後の撮像データに基づいて前記表示画像データを生成してもよい。
本発明の態様2の構成によると、操作者の眼の位置に応じて、操作者にとって認識し易い画像を表示装置に表示させることができる。
本発明の態様3に係る日除け装置では、上記態様2において、前記データ処理回路が、前記日除け部材の操作者の視界における前記日除け部材によって遮られる死角部分を判別し、かつ、前記撮像データのうちの前記死角部分に対応する表示対象データを選択する表示対象データ選択回路をさらに有し、前記データ処理回路が、前記死角部分の光景を前記表示装置に表示させるべく前記表示対象データに基づいて前記表示画像データを生成してもよい。
本発明の態様3の構成によると、操作者の動きに伴って日除け部材による死角部分が変化する場合でも、操作者にとって違和感の少ない画像を表示装置に表示させることができる。
本発明の態様4に係る日除け装置は、上記態様2または3において、前記日除け部材の位置を検知する第2検知器をさらに備えており、前記角度識別回路は、前記第1検知器の検知結果および前記第2検知器の検知結果に基づいて、前記視線の角度を識別してもよい。
本発明の態様4の構成によると、日除け部材の使用位置に基づいて補正または選択された画像を表示装置に表示することができる。
本発明の態様5に係る日除け装置では、上記態様1〜4のいずれかにおいて、前記調光ガラス板における光の透過率に基づいて前記表示装置のオンオフ状態を制御する制御回路をさらに備えていてもよい。
本発明の態様5の構成によると、操作者は、調光ガラス板に隠れる部分の光景を表示装置に表示させるために必要となる日除け部材の操作者による操作を少なくすることができる。
本発明の態様6に係る日除け装置は、上記態様4において、前記調光ガラス板における光の透過率が所定の基準値と同じまたは前記所定の基準値を上回るときに前記表示装置をオフ状態へと制御し、前記調光ガラス板における光の透過率が前記所定の基準値を下回るときに、前記第2検知器の検知結果に基づいて前記表示装置のオンオフ状態を制御する制御回路をさらに備えていてもよい。
本発明の態様6の構成によると、日除け部材の操作者は、日除け部材を操作する、および/または、調光ガラス板の光の透過率を変化させるだけで、表示装置に画像を表示させたり、その表示を停止させたりすることができる。
本発明の態様7に係る日除け装置は、上記態様5または6において、前記調光ガラス板に射しこむ入射光の強さを検知する第3検知器をさらに備え、前記制御回路は、さらに、前記第3検知器の検知結果に基づいて、前記調光ガラス板における光の透過率を切り換えるべく前記スイッチを制御してもよい。
本発明の態様7の構成によると、室内などへの入射光の強さに応じて、日除け部材の遮光性を切り換えることができる。
本発明の態様8に係る日除け装置では、上記態様1〜7のいずれかにおいて、前記データ処理回路が、所定の対象物の外見的特徴に関する参照データを記憶させておくメモリ回路と、前記撮像データと前記参照データとを比較する比較回路と、前記表示装置に表示される前記所定の対象物の表示画像を他の表示画像よりも強調すべく前記表示画像データを加工する表示画像強調回路と、をさらに有していてもよい。
本発明の態様8の構成によると、操作者に認識させる必要性の高い対象物に対する視認性を高めることができ、そのような対象物に対する操作者の見落としを少なくすることができる。
本発明の態様9に係る日除け装置は、上記態様1〜8のいずれかにおいて、前記表示装置と別個に設けられ、前記表示画像データに基づいて、前記表示装置の画素の駆動に用いられる信号を出力する第1ドライバをさらに備えていてもよい。
本発明の態様9の構成によると、表示画像データに基づいて、表示装置の画素を適切に駆動することができる。
本発明の態様10に係る日除け装置では、上記態様9において、前記表示装置は略矩形の表示画面を備え、前記第1ドライバは、前記日除け部材の縁部において前記表示画面の長手方向に沿っていて前記日除け部材の使用時に上側に向けられるべき第1縁部に配置されていてもよい。
本発明の態様10の構成によると、第1ドライバによって生じ得る死角を窓の上縁部に限定することができ、また、第1ドライバと表示装置の画素との間の配線長を短くすることができる。
本発明の態様11に係る日除け装置は、上記態様9において、前記第1ドライバと前記表示装置とを接続する配線を備える可撓性フィルムをさらに備えており、前記第1ドライバは、前記日除け部材と離間して設けられ、前記表示装置は略矩形の表示画面を備え、前記可撓性フィルムは、前記表示装置の縁部における前記表示画面の長手方向に沿っている部分に接続されていてもよい。
本発明の態様11の構成によると、第1ドライバによる死角の発生を確実に防止することができ、また、日除け部材が回動しても、第1ドライバと表示装置との接続を正常に維持することができると共に、第1ドライバと表示装置の画素との間の配線長を短くすることができる。
本発明の態様12に係る日除け装置では、上記態様11において、前記可撓性フィルムは、前記日除け部材における前記表示画面の前記長手方向に沿っていて前記日除け部材の使用時に上側に向けられるべき第1縁部において、前記表示装置に接続されていてもよい。
本発明の態様12の構成によると、可撓性フィルムの配置を窓の上縁部とすることができる。
本発明の態様13に係る日除け装置では、上記態様11または12において、前記可撓性フィルムが、少なくとも一箇所において曲がり得るカバー部材によって覆われていてもよい。
本発明の態様13の構成によると、日除け部材の周囲部分の装飾性を高めることができ、また、可撓性フィルム上や配線上への埃などの堆積や結露による短絡故障を防ぐことができる。
本発明の態様14に係る日除け装置では、上記態様13において、前記表示装置は、前記第1ドライバの出力信号に基づいて前記画素を駆動する第2ドライバをさらに備え、前記第2ドライバが前記カバー部材に覆われていてもよい。
本発明の態様14の構成によると、第2ドライバを構成する配線やトランジスタの間の短絡故障を防ぐことができる。
本発明の態様15に係る日除け装置では、上記態様9において、前記表示装置は略矩形の表示画面を備え、前記第1ドライバは、前記日除け部材の縁部において前記表示画面の短辺方向に沿っている第2縁部に配置されていてもよい。
本発明の態様15の構成によると、日除け部材の移動に伴って第1ドライバにおける配線との接続部に加わり得る機械的なストレスが軽減されることがある。
本発明の態様16に係る日除け装置では、上記態様15において、前記第2縁部は、前記日除け部材が自動車のフロントガラスに対して用いられるときに、前記自動車の上下方向に沿って、かつ、前記自動車の車幅方向において中央部よりもドアの近くに位置付けられるべき縁部であってもよい。
本発明の態様16の構成によると、第1ドライバ11によって死角が生じる場合でも、自動車の運転者などに与える視覚的な不自然さを少なくすることができる。
本発明の態様17に係る日除け装置では、上記態様1〜16のいずれかにおいて、前記表示装置が有機EL表示パネルであってもよい。
本発明の態様17の構成によると、光を透過し得る表示装置を容易に構成することができる。
本発明の態様18に係る日除け装置では、上記態様1〜17のいずれかにおいて、前記撮像装置は、屈折率の調整により光の反射を低減する被覆層が形成されている表面を有するレンズを備えていてもよい。
本発明の態様18の構成によると、撮像装置による撮像が逆光下で行われる場合でも、フレアやゴーストの少ない画像を表示装置に表示することができる。
本発明の態様19に係る日除け装置では、上記態様1〜18のいずれかにおいて、前記調光ガラス板が、光を透過させる2枚の導電膜と、前記2枚の導電膜の間に封入された液晶分子とを含んでいてもよい。
本発明の態様19の構成によると、調光ガラス板への印加電圧を制御することによって、調光ガラス板における光の透過率を容易に切り替えることができる。