以下、本発明に係る可視光カットフィルタの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明において、可視光領域とは、光の波長が約400nm以上、約700nm未満までの領域を指し、より好ましくは、光の波長が400nm以上、約600nm以下までの領域とする。また、近赤外領域とは、光の波長が約700nm以上、約1100nm以下までの領域を指すものとする。
図1は、可視光カットフィルタを用いた撮像デバイスの概略構成図である。
本発明に係る可視光カットフィルタ10(11、12、13、14)は、レンズ80によって集光された光について垂直入射させた場合に、可視光領域を遮光するとともに近赤外領域に透過帯を有しており、CCDやCMOS等の撮像素子90に透過光を照射させるための可視光カットフィルタ10(11、12、13、14)であって、透光性基板20と、表面遮光膜Fと、裏面遮光膜Rと、を備えている(図1及び後述する図2、10、22、30参照)。
そして、表面遮光膜F及び裏面遮光膜Rの各々は、可視光領域を複数の領域に区画したときに、各領域の光を遮光させる遮光膜が積層された構成である。
以下、本発明に係る可視光カットフィルタの4つの実施形態について、説明する。
−第1実施形態−
本発明に係る可視光カットフィルタ11の第1実施形態について図2〜図9を参照しながら説明する。
図2は、可視光カットフィルタを示す概略模式図、図3は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の各層の構成を示す表、図4は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図5は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図6は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の各層の構成を示す表、図7は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図8は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図9は、可視光カットフィルタの透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフである。
本実施形態に係る可視光カットフィルタ11は、透光性基板20と、表面遮光膜Fと、裏面遮光膜Rと、を備えている。以下、各構成について詳述し、その後に可視光カットフィルタ11の作用効果を説明する。
・透光性基板
透光性基板20は、本実施形態では水晶板である。なお、透光性基板20は水晶板に限られるものではなく、光を透過可能な基板であれば、例えばガラス板であってもよい。また、単板の水晶板、例えば複屈折板であってもよく、複数枚からなる複屈折板であってもよい。また、水晶板とガラス板を組み合わせてもよい。
・表面遮光膜
表面遮光膜Fは、透光性基板20の表面に成膜され、少なくとも可視光領域の光を遮光するものであって、短波長遮光多層膜41と、長波長遮光多層膜51とを備えている。
短波長遮光多層膜41は、透光性基板20の表面上に形成され、高屈折率膜41HであるTiO2と低屈折率膜41LであるSiO2とが、交互に10層ずつ、合計で20層積層されている(図2及び図3参照)。すなわち、透光性基板20側から数えて奇数番目の層が高屈折率膜41Hであり、偶数番目の層が低屈折率膜41Lである。
なお、図3中の光学膜厚は、下記の数式1によって算出される数値である。
[数式1]
Nd=λ/4(Nd:光学膜厚、λ:中心波長)
また、図3中の中心波長は、光学膜厚の値が1であるときの、光を遮光させる遮光領域の中心の波長である。光学膜厚の値が1より小さい場合は、中心波長の値よりも短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトする。一方で、光学膜厚の値が1よりも大きい場合は、中心波長の値よりも長波長側に遮光領域の中心の波長がシフトする。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が600nmとされており(図3参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜41(図3における1〜20層目)の光学膜厚の平均値が0.72と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜41のフィルタ特性は、中心波長である600nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図4(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である600nmよりも短波長側にシフトするとともに、約400〜520nmの波長領域の光を遮光している。
長波長遮光多層膜51は、短波長遮光多層膜41上に形成され、高屈折率膜51HであるTiO2と低屈折率膜51LであるSiO2とが交互に10層ずつ、合計で20層積層されている(図2及び図3参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が600nmとされており(図3参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜51(図3における21〜40層目)の光学膜厚の平均値が1.01と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜51のフィルタ特性は、遮光領域の中心が中心波長である600nmと略一致しており、図4(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が略600nmであって、約520〜680nmの波長領域の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の表面遮光膜Fによれば、短波長遮光多層膜41と、長波長遮光多層膜51と、を備えているので、両遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図5(a)及び(b))。すなわち、図5(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が700nmであるとともに、光の波長が700nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図5(a)の実線のグラフ)。
なお、図5(a)及び(b)のグラフにおいて、実線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ11に垂直に光を入射させたときのグラフであり、破線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ11に光を斜入射(光の入射角は40°)させたときのグラフである。
・裏面遮光膜
裏面遮光膜Rは、透光性基板20の裏面に成膜され、少なくとも可視光領域の光を遮光するものであって、短波長遮光多層膜42と、長波長遮光多層膜52とを備えている。
短波長遮光多層膜42は、透光性基板20の裏面上に形成され、高屈折率膜42HであるTiO2と低屈折率膜42LであるSiO2とが交互に10層ずつ、合計で20層積層されている(図2及び図6参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が604nmとされており(図6参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜42(図6における1〜20層目)の光学膜厚の平均値が0.72と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜42のフィルタ特性は、中心波長である604nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図7(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である604nmよりも短波長側にシフトするとともに、約400〜520nmの波長の光を遮光している。
長波長遮光多層膜52は、短波長遮光多層膜42上に形成され、高屈折率膜52HであるTiO2と低屈折率膜52LであるSiO2とが交互に10層ずつ、合計で20層積層されている(図2及び図6参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が604nmとされており(図6参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜52(図6における21〜40層目)の光学膜厚の平均値が1.01と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜52のフィルタ特性は、遮光領域の中心が、中心波長である604nmと略一致しており、図7(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が約604nmであって、約520〜680nmの波長領域の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の裏面遮光膜Rによれば、短波長遮光多層膜42と、長波長遮光多層膜52と、を備えているので、両遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図8(a)及び(b))。すなわち、図8(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が705nmであるとともに、光の波長が705nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図8(a)の実線のグラフ)。
・本実施形態の作用効果
本実施形態では、透光性基板20の表面に、透過率が50%であるときの光の波長が700nmである表面遮光膜Fが形成され、透光性基板20の裏面に、透過率が50%であるときの光の波長が705nmである裏面遮光膜Rが形成されている(表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとの波長差は5nm)。これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせることにより、表面遮光膜Fの可視光領域に発生するリップルと裏面遮光膜Rの可視光領域に発生されたリップルとが打ち消されるように減衰するので、リップルを抑制することができる。
具体的には、図5(b)の表面遮光膜Fのフィルタ特性では、光を垂直入射させた場合に、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長400nm付近及び、波長500〜550nmの間で確認され(図5(b)の実線のグラフ)、図8(b)の裏面遮光膜Rのフィルタ特性では、光を垂直入射させた場合に、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長400nm付近及び、波長500〜550nmの間で確認されている(図8(b)の実線のグラフ)。しかしながら、これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせた本発明に係る可視光カットフィルタ11のフィルタ特性では、波長400〜680nmの間でリップルは抑制されている(図9(b)の実線のグラフ)。
さらに、可視光カットフィルタ11に斜入射(光の入射角は40°)させた場合であっても、波長400〜600nmの間でリップルは抑制されている(図9(b)の破線のグラフ)。
以上により、本実施形態によれば、少なくとも、短波長遮光多層膜41、42及び長波長遮光多層膜51、52を組み合わせることにより、短波長遮光多層膜41、42によって光を遮光させる領域、長波長遮光多層膜51、52によって光を遮光させる領域が重なり合うので、可視光領域の光の透過率を低減させることができる。
また、本実施形態では、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が、少なくとも5nmであるので、これら表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、可視光領域におけるリップルがより減衰し、光の透過率を低減させることができる。
なお、本実施形態では、表面遮光膜F及び裏面遮光膜Rの層数を40層として説明したが、この例に限られず、表面遮光膜F及び裏面遮光膜Rの層数を40層より少なくてもよいし、多くてもよい。また、表面遮光膜Fの層数と裏面遮光膜Rの層数とを同じ層数として説明したが、この例に限られず、表面遮光膜Fの層数と裏面遮光膜Rの層数とが異なっていてもよい。
また、本実施形態では、透光性基板20の表面を、透過率が50%であるときの光の波長が700nmである遮光膜とし、透光性基板20の裏面を、透過率が50%であるときの光の波長が705nmである遮光膜としたが、この例に限られず、透光性基板20の表面を、透過率が50%であるときの光の波長が705nmである遮光膜とし、透光性基板20の裏面を、透過率が50%であるときの光の波長が700nmである遮光膜としてもよい。
ところで、本実施形態の可視光カットフィルタ11は、1枚の水晶板から複数個製造されるので、各可視光カットフィルタに製造バラツキが生じる。そこで、可視光カットフィルタ11の製造時には、製造バラツキを考慮して、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差を20nmとすることが好ましい。このように波長差を設定することにより、製造バラツキを考慮しても、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差を、少なくとも5nmとすることができる。
−第2実施形態−
次に、第2実施形態について、図10〜17を参照しながら説明する。本実施形態は、上述した第1実施形態と、表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rにおける可視光領域の区画数が異なるものであるので、以下、その相違点に関する事項についてのみ説明し、同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
図10は、可視光カットフィルタを示す概略模式図、図11は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の各層の構成を示す表、図12は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(c)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図13は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図14は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の各層の構成を示す表、図15は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(c)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図16は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図17は、可視光カットフィルタの透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフである。
・表面遮光膜
表面遮光膜Fは、透光性基板20の表面に成膜され、短波長遮光多層膜41と、中間波長遮光多層膜61と、長波長遮光多層膜51とを備えている(図10参照)。
短波長遮光多層膜41は、透光性基板20の表面上に形成され、高屈折率膜41HであるTiO2と低屈折率膜41LであるSiO2とが、交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図11参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が644nmとされており(図11参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜41(図11における1〜16層目)の光学膜厚の平均値が0.58と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜41のフィルタ特性は、中心波長である644nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図12(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である644nmよりも短波長側にシフトするとともに、約400〜480nmの波長領域の光を遮光している。
中間波長遮光多層膜61は、短波長遮光多層膜41上に形成され、高屈折率膜61HであるTiO2と低屈折率膜61LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図11参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が644nmとされており(図11参照)、上述した数式1から、中間波長遮光多層膜61(図11における17〜32層目)の光学膜厚の平均値が0.72と算出される。したがって、当該中間波長遮光多層膜61のフィルタ特性は、中心波長である644nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図12(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である644nmよりも短波長側にシフトするとともに、約440〜540nmの波長領域の光を遮光している。
長波長遮光多層膜51は、中間波長遮光多層膜61上に形成され、高屈折率膜51HであるTiO2と低屈折率膜51LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図11参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が644nmとされており、上述した数式1から、長波長遮光多層膜51(図11における33〜48層目)の光学膜厚の平均値が0.85と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜51のフィルタ特性は、中心波長である644nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図12(c)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である644nmよりも短波長側にシフトするとともに、約520〜650nmの波長領域の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の表面遮光膜Fによれば、短波長遮光多層膜41と、中間波長遮光多層膜61と、長波長遮光多層膜51と、を備えているので、各遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図13(a)及び(b))。すなわち、図13(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が700nmであるとともに、光の波長が700nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図13(a)の実線のグラフ)。
なお、図13(a)及び(b)のグラフにおいて、実線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ12に垂直に光を入射させたときのグラフであり、破線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ12に光を斜入射(光の入射角は40°)させたときのグラフである。
・裏面遮光膜
裏面遮光膜Rは、透光性基板20の裏面に成膜され、少なくとも可視光領域の光を遮光するものであって、短波長遮光多層膜42と、中間波長遮光多層膜62と、長波長遮光多層膜52とを備えている(図10及び図14参照)。
短波長遮光多層膜42は、透光性基板20の裏面上に形成され、高屈折率膜42HであるTiO2と低屈折率膜42LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図14参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が649nmとされており(図14参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜42(図14における1〜16層目)の光学膜厚の平均値が0.58と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜42のフィルタ特性は、中心波長である649nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図15(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である649nmよりも短波長側にシフトするとともに、約400〜480nmの波長の光を遮光している。
中間波長遮光多層膜62は、短波長遮光多層膜42上に形成され、高屈折率膜62HであるTiO2と低屈折率膜62LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図14参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が649nmとされており(図14参照)、上述した数式1から、中間波長遮光多層膜62(図14における17〜32層目)の光学膜厚の平均値が0.72と算出される。したがって、当該中間波長遮光多層膜62のフィルタ特性は、図15(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である649nmよりも短波長側にシフトするとともに、約440〜550nmの波長の光を遮光している。
長波長遮光多層膜52は、中間波長遮光多層膜62上に形成され、高屈折率膜52HであるTiO2と低屈折率膜52LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図14参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が649nmとされており(図14参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜52(図14における33〜48層目)の光学膜厚の平均値が0.85と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜52のフィルタ特性は、図15(c)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である649nmよりも短波長側にシフトするとともに、約520〜660nmの波長の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の裏面遮光膜Rによれば、短波長遮光多層膜42と、中間波長遮光多層膜62と、長波長遮光多層膜52と、を備えているので、各遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図16(a)及び(b))。すなわち、図16(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が705nmであるとともに、光の波長が705nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図16(a)の実線のグラフ)。
・本実施形態の作用効果
本実施形態では、透光性基板20の表面に、透過率が50%であるときの光の波長が700nmである表面遮光膜Fが形成され、透光性基板20の裏面に、透過率が50%であるときの光の波長が705nmである裏面遮光膜Rが形成されている(表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとの波長差は5nm)。これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせることにより、表面遮光膜Fの可視光領域に発生するリップルと裏面遮光膜Rの可視光領域に発生されたリップルとが打ち消されるように減衰するので、リップルを抑制することができる。
具体的には、図13(b)の表面遮光膜Fのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長460〜500nmの間で確認され(図13(b)の破線のグラフ)、図16(b)の裏面遮光膜Rのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップルが、波長400nm付近及び、波長470〜520nmの間で確認されている(図16(b)の破線のグラフ)。しかしながら、これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせた本発明に係る可視光カットフィルタ12のフィルタ特性(図17(b)の破線のグラフ)では、波長400〜600nmの間でリップルは抑制されている。
以上により、本実施形態によれば、少なくとも、短波長遮光多層膜41、42、中間波長遮光多層膜61、62及び長波長遮光多層膜51、52を組み合わせることにより、短波長遮光多層膜41、42によって光を遮光させる領域、中間波長遮光多層膜61、62によって光を遮光させる領域、長波長遮光多層膜51、52によって光を遮光させる領域が重なり合うので、可視光領域の光の透過率を低減させることができる。
また、本実施形態では、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が、少なくとも5nmであるので、これら表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、可視光領域におけるリップルがより減衰し、光の透過率を低減させることができる。
なお、本実施形態では、表面遮光膜F及び裏面遮光膜Rの層数を48層として説明したが、この例に限られず、表面遮光膜F及び裏面遮光膜Rの層数を48層より少なくてもよいし、多くてもよい。また、表面遮光膜Fの層数と裏面遮光膜Rの層数とを同じ層数として説明したが、この例に限られず、表面遮光膜Fの層数と裏面遮光膜Rの層数とが異なっていてもよい。
−第2実施形態の変形例−
次に、第2実施形態の変形例について、図18〜21を参照しながら説明する。当該変形例は、裏面遮光膜の構成が異なるだけであるから、以下、その相違点に関する事項について説明し、同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
図18は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の変形例の各層の構成を示す表、図19は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の変形例の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(c)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図20は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の変形例の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図21は、可視光カットフィルタの変形例の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフである。
・裏面遮光膜
裏面遮光膜Rは、透光性基板20の裏面に成膜され、可視光領域の光を遮光するものであって、短波長遮光多層膜42と、中間波長遮光多層膜62と、長波長遮光多層膜52とを備えている(図10及び図18参照)。
短波長遮光多層膜42は、透光性基板20の裏面上に形成され、高屈折率膜42HであるTiO2と低屈折率膜42LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図18参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が922nmとされており(図18参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜42(図18における1〜16層目)の光学膜厚の平均値が0.58と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜42のフィルタ特性は、中心波長である922nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図19(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である922nmよりも短波長側にシフトするとともに、約520〜650nmの波長の光を遮光している。
中間波長遮光多層膜62は、短波長遮光多層膜42上に形成され、高屈折率膜62HであるTiO2と低屈折率膜62LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図18参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が922nmとされており(図18参照)、上述した数式1から、中間波長遮光多層膜62(図18における17〜32層目)の光学膜厚の平均値が0.72と算出される。したがって、当該中間波長遮光多層膜62のフィルタ特性は、図19(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である922nmよりも短波長側にシフトするとともに、約620〜780nmの波長の光を遮光している。
長波長遮光多層膜52は、中間波長遮光多層膜62上に形成され、高屈折率膜52HであるTiO2と低屈折率膜52LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図10及び図18参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が922nmとされており(図18参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜52(図18における33〜48層目)の光学膜厚の平均値が0.85と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜52のフィルタ特性は、図19(c)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である922nmよりも短波長側にシフトするとともに、約750〜910nmの波長の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の裏面遮光膜Rによれば、短波長遮光多層膜42と、中間波長遮光多層膜62と、長波長遮光多層膜52と、を備えているので、各遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、約500〜970nmの光を遮光するフィルタ特性が得られる(図20(a)及び(b))。すなわち、図20(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が1000nmであるフィルタ特性が得られる(図20(a)の実線のグラフ)。
なお、図20(a)及び(b)のグラフにおいて、実線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ12に垂直に光を入射させたときのグラフであり、破線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ12に光を斜入射(光の入射角は40°)させたときのグラフである。
・本実施形態の作用効果
本実施形態では、透光性基板20の表面に、透過率が50%であるときの光の波長は700nmである表面遮光膜Fが形成され、透光性基板20の裏面に、透過率が50%であるときの光の波長は1000nmである裏面遮光膜Rが形成されている(表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとの波長差は300nm)。これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせることにより、表面遮光膜Fの可視光領域に発生するリップルと裏面遮光膜Rの可視光領域に発生されたリップルとが打ち消されるように減衰するので、リップルを抑制することができる。
具体的には、図13(b)の表面遮光膜Fのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長450〜500nmで確認され(図13(b)の破線のグラフ)、図20(b)の裏面遮光膜Rのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長400〜700nmまでの領域で多数確認されている(図20(b)の破線のグラフ)。しかしながら、これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせた本発明に係る可視光カットフィルタ12のフィルタ特性(図21(b)の破線のグラフ)では、波長400〜600nmの間でリップルは抑制されている。
以上により、本実施形態によれば、少なくとも、短波長遮光多層膜41、42、中間波長遮光多層膜61、62、及び長波長遮光多層膜51、52を組み合わせることにより、短波長遮光多層膜41、42によって光を遮光させる領域、中間波長遮光多層膜61、62によって光を遮光させる領域、長波長遮光多層膜51、52によって光を遮光させる領域が重なり合うので、可視光領域の光の透過率を低減させることができる。
また、本実施形態では、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が、300nmであっても、これら表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、可視光領域におけるリップルがより減衰し、光の透過率を低減させることができる。
すなわち、上述した第2実施形態及び第2実施形態の変形例によれば、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が、5〜300nmの間であれば、可視光領域におけるリップルがより減衰し、光の透過率を低減させることができる結果が得られた。
−第3実施形態−
次に、第3実施形態について、図22〜29を参照しながら説明する。本実施形態は、上述した第1実施形態と、表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rにおける可視光領域の区画数が異なるものであるので、以下、その相違点に関する事項についてのみ説明し、同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
図22は、可視光カットフィルタを示す概略模式図、図23は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の各層の構成を示す表、図24は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、第1中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(c)は、第2中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(d)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図25は、可視光カットフィルタにおける表面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図26は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の各層の構成を示す表、図27は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、短波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(b)は、第1中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(c)は、第2中間波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、(d)は、長波長遮光多層膜の透過率特性を示すグラフ、図28は、可視光カットフィルタにおける裏面遮光膜の透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフ、図29は、可視光カットフィルタの透過率特性を示すグラフであって、(a)は、透過率の範囲を0〜100%としたグラフ、(b)は、透過率の範囲を0〜5%としたグラフである。
・表面遮光膜
表面遮光膜Fは、透光性基板20の表面に成膜され、短波長遮光多層膜41と、第1中間波長遮光多層膜63と、第2中間波長遮光多層膜65と、長波長遮光多層膜51と、を備えている(図22及び図23参照)。
短波長遮光多層膜41は、透光性基板20の表面上に形成され、高屈折率膜41HであるTiO2と低屈折率膜41LであるSiO2とが、交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図22及び図23参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が628nmとされており(図23参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜41(図23における1〜16層目)の光学膜厚の平均値が0.47と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜41のフィルタ特性は、中心波長である628nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図24(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である628nmよりも短波長側にシフトするとともに、約350〜380nmの波長領域の光を遮光している。
第1中間波長遮光多層膜63は、短波長遮光多層膜41上に形成され、高屈折率膜63HであるTiO2と低屈折率膜63LであるSiO2とが交互に7層ずつ、合計で14層積層されている(図22及び図23参照)。このように第1中間波長遮光多層膜63の積層数が短波長遮光多層膜41の積層数よりも少ない理由は、第1中間波長遮光多層膜63が遮光する遮光領域は、前述した短波長遮光多層膜41又は後述する第2中間波長遮光多層膜65によっても遮光領域をカバーすることができるためであり、積層数を少なくすることによって、製造コストを抑えることができるからである。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が628nmとされており(図23参照)、上述した数式1から、第1中間波長遮光多層膜63(図23における17〜30層目)の光学膜厚の平均値が0.58と算出される。したがって、当該第1中間波長遮光多層膜63のフィルタ特性は、中心波長である628nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図24(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である628nmよりも短波長側にシフトするとともに、約350〜450nmの波長領域の光を遮光している。
第2中間波長遮光多層膜65は、第1中間波長遮光多層膜63上に形成され、高屈折率膜65HであるTiO2と低屈折率膜65LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で14層積層されている(図22及び図23参照)。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が628nmとされており(図23参照)、上述した数式1から、第2中間波長遮光多層膜65(図23における31〜46層目)の光学膜厚の平均値が0.74と算出される。したがって、当該第2中間波長遮光多層膜65のフィルタ特性は、中心波長である628nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図24(c)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である628nmよりも短波長側にシフトするとともに、約410〜530nmの波長領域の光を遮光している。
長波長遮光多層膜51は、第2中間波長遮光多層膜65上に形成され、高屈折率膜51HであるTiO2と低屈折率膜51LであるSiO2とが交互に7層ずつ、合計で14層積層されている(図22及び図23参照)。このように長波長遮光多層膜51の積層数が第2中間波長遮光多層膜65の積層数よりも少ない理由は、長波長遮光多層膜51の遮光領域が、他の遮光領域よりも狭いためであり、積層数を少なくすることによって、製造コストを抑えることができるからである。
本実施形態の表面遮光膜Fでは、中心波長が628nmとされており(図23参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜51(図23における47〜60層目)の光学膜厚の平均値が0.85と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜51のフィルタ特性は、中心波長である628nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図24(d)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である628nmよりも短波長側にシフトするとともに、約520〜640nmの波長領域の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の表面遮光膜Fによれば、短波長遮光多層膜41と、第1中間波長遮光多層膜63と、第2中間波長遮光多層膜65と、長波長遮光多層膜51と、を備えているので、各遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図25(a)及び(b))。すなわち、図25(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が700nmであるとともに、光の波長が700nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図25(a)の実線のグラフ)。
なお、図25(a)及び(b)のグラフにおいて、実線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ13に垂直に光を入射させたときのグラフであり、破線で示されたグラフは、可視光カットフィルタ13に光を斜入射(光の入射角は40°)させたときのグラフである。
・裏面遮光膜
裏面遮光膜Rは、透光性基板20の裏面に成膜され、少なくとも可視光領域の光を遮光するものであって、短波長遮光多層膜42と、第1中間波長遮光多層膜64と、第2中間波長遮光多層膜66と、長波長遮光多層膜52とを備えている(図22及び図26参照)。
短波長遮光多層膜42は、透光性基板20の裏面上に形成され、高屈折率膜42HであるTiO2と低屈折率膜42LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図22及び図26参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が900nmとされており(図26参照)、上述した数式1から、短波長遮光多層膜42(図26における1〜16層目)の光学膜厚の平均値が0.45と算出される。したがって、当該短波長遮光多層膜42のフィルタ特性は、中心波長である900nmから短波長側に遮光領域の中心の波長がシフトしており、図27(a)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である900nmよりも短波長側にシフトするとともに、約400〜500nmの波長の光を遮光している。
第1中間波長遮光多層膜64は、短波長遮光多層膜42上に形成され、高屈折率膜64HであるTiO2と低屈折率膜64LであるSiO2とが交互に7層ずつ、合計で14層積層されている(図22及び図26参照)。このように第1中間波長遮光多層膜64の積層数が短波長遮光多層膜42の積層数よりも少ない理由は、第1中間波長遮光多層膜64が遮光する遮光領域は、前述した短波長遮光多層膜42又は後述する第2中間波長遮光多層膜66によっても遮光領域をカバーすることができるためであり、積層数を少なくすることによって、製造コストを抑えることができるからである。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が900nmとされており(図26参照)、上述した数式1から、第1中間波長遮光多層膜64(図26における17〜30層目)の光学膜厚の平均値が0.59と算出される。したがって、当該第1中間波長遮光多層膜64のフィルタ特性は、図27(b)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である900nmよりも短波長側にシフトするとともに、約480〜610nmの波長の光を遮光している。
第2中間波長遮光多層膜66は、第1中間波長遮光多層膜64上に形成され、高屈折率膜66HであるTiO2と低屈折率膜66LであるSiO2とが交互に8層ずつ、合計で16層積層されている(図22及び図26参照)。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が900nmとされており(図26参照)、上述した数式1から、第2中間波長遮光多層膜66(図26における31〜46層目)の光学膜厚の平均値が0.73と算出される。したがって、当該第2中間波長遮光多層膜66のフィルタ特性は、図27(c)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である900nmよりも短波長側にシフトするとともに、約600〜740nmの波長の光を遮光している。
長波長遮光多層膜52は、第2中間波長遮光多層膜66上に形成され、高屈折率膜52HであるTiO2と低屈折率膜52LであるSiO2とが交互に7層ずつ、合計で14層積層されている(図22及び図26参照)。このように長波長遮光多層膜52の積層数が第2中間波長遮光多層膜66の積層数よりも少ない理由は、長波長遮光多層膜52の遮光領域が、他の遮光領域よりも狭いためであり、積層数を少なくすることによって、製造コストを抑えることができるからである。
本実施形態の裏面遮光膜Rでは、中心波長が900nmとされており(図26参照)、上述した数式1から、長波長遮光多層膜52(図26における47〜60層目)の光学膜厚の平均値が0.85と算出される。したがって、当該長波長遮光多層膜52のフィルタ特性は、図27(d)のグラフによれば、遮光領域の中心の波長が、中心波長の値である900nmよりも短波長側にシフトするとともに、約750〜870nmの波長の光を遮光している。
以上、説明したとおり、本実施形態の裏面遮光膜Rによれば、短波長遮光多層膜42と、第1中間波長遮光多層膜64と、第2中間波長遮光多層膜66と、長波長遮光多層膜52と、を備えているので、各遮光膜のフィルタ特性を重ね合わせることにより、可視光領域の光を遮光するフィルタ特性が得られる(図28(a)及び(b))。すなわち、図28(a)のグラフによれば、光を垂直入射させた場合、透過率を50%としたときの光の波長が1000nmであるとともに、光の波長が1000nmよりも短波長側の光を遮光したフィルタ特性が得られる(図28(a)の実線のグラフ)。
・本実施形態の作用効果
本実施形態では、透光性基板20の表面に、透過率が50%であるときの光の波長は700nmである表面遮光膜Fが形成され、透光性基板20の裏面に、透過率が50%であるときの光の波長は1000nmである裏面遮光膜Rが形成されている(表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとの波長差は300nm)。これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせることにより、表面遮光膜Fの可視光領域に発生するリップルと裏面遮光膜Rの可視光領域に発生されたリップルとが打ち消されるように減衰するので、リップルを抑制することができる。
具体的には、図25(b)の表面遮光膜Fのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長450〜500nmで確認され(図25(b)の破線のグラフ)、図28(b)の裏面遮光膜Rのフィルタ特性では、光を斜入射させたときに、透過率1%を超えるリップル(フィルタ特性の脈打ち)が、波長460nmより短波長側、約540nm付近に確認されている(図28(b)の破線のグラフ)。しかしながら、これら表面遮光膜Fと裏面遮光膜Rとを組み合わせた本発明に係る可視光カットフィルタ13のフィルタ特性(図29(b)の破線のグラフ)では、波長400〜650nmの間でリップルは抑制されている。
以上により、本実施形態によれば、少なくとも、短波長遮光多層膜41、42、第1中間波長遮光多層膜63、64、第2中間波長遮光多層膜65、66及び長波長遮光多層膜51、52を組み合わせることにより、短波長遮光多層膜41、42によって光を遮光させる領域、第1中間波長遮光多層膜63、64によって光を遮光させる領域、第2中間波長遮光多層膜65、66によって光を遮光させる領域、長波長遮光多層膜51、52によって光を遮光させる領域が重なり合うので、可視光領域の光の透過率を低減させることができる。
また、本実施形態では、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が300nmであるので、これら表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、可視光領域におけるリップルがより減衰し、光の透過率を低減させることができる。
−第4実施形態−
次に、本発明に係る第4実施形態について、図30を参照しながら説明する。図30は、可視光カットフィルタ14を示す概略模式図である。
本実施形態は、表面遮光膜Fにおける可視光領域の区画数と、裏面遮光膜Rにおける前記可視光領域の区画数と、が異なるものである。図30の実施形態では、透光性基板20の表面には4種類の遮光膜が積層されているので可視光領域を4つに区画し、各遮光膜がそれぞれ対応する領域の光を遮光している。一方で、透光性基板20の裏面には3種類の遮光膜が積層されているので可視光領域を3つに区画し、各遮光膜がそれぞれ対応する領域の光を遮光している。
このような構成によれば、表面遮光膜Fにおける可視光領域の区画数と、裏面遮光膜Rにおける可視光領域の区画数とが異なるので、表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rとのフィルタ特性との間に差を生じさせることができる。これにより、表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rとのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、フィルタ特性に差が生じている領域は、フィルタ特性が打ち消されるように減衰するので、光の透過率を低減させることができる。
なお、表面遮光膜Fにおける可視光領域の区画数と、裏面遮光膜Rにおける可視光領域の区画数は、上記した例に限られるものではない。
−第5実施形態−
また、表面遮光膜Fにおける可視光領域の区画数と裏面遮光膜Rにおける前記可視光領域の区画数とが1区画であって、表面遮光膜Fの透過率を50%とする光の波長と、裏面遮光膜Rの透過率を50%とする光の波長との波長差が、少なくとも5nmである実施形態であってもよい。
このような構成によれば、表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とが、互いに少なくとも5nmの波長差に相当する特性だけ異なるので、これら表面遮光膜Fのフィルタ特性と裏面遮光膜Rのフィルタ特性とを重ね合わせることによって、フィルタ特性に差が生じている領域のフィルタ特性が減衰し、光の透過率を低減させることができる。
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、本実施形態では、高屈折率膜はTiO2としたが、これに限られず、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Ta2O5といった材料でもよい。つまり、屈折率が2.0より大きいものが好ましい。また、低屈折率膜は、SiO2に限られず、例えばMgF2といった材料でもよい。つまり、高屈折率膜よりも屈折率が小さいものが好ましく、さらに好ましくは屈折率が1.5より小さいものがよい。このような構成によると、高屈折率材料と低屈折率材料との屈折率の差によって光を遮光する領域を広く設計することができるので、可視光領域の光の遮光効果を高めることができる。
また、本実施形態では、遮光膜は電子ビーム蒸着を用いて成膜しているが、成膜手法は、この例に限られるものではなく、例えば、イオンビームアシスト蒸着、スパッタ等で行われてもよい。電子ビーム蒸着によって表面遮光膜及び裏面遮光膜を成膜した場合は、比較的低コストで成膜することができ、イオンビームアシスト蒸着によって表面遮光膜及び裏面遮光膜を成膜した場合は、比較的密着性、緻密性の高い膜を成膜することができる。
また、本実施形態では、透光性基板20の表面に表面遮光膜Fを、裏面に裏面遮光膜Rを成膜しているが、この例に限られるものではなく、透光性基板20を2つ用意し、各透光性基板20の片面にのみ遮光膜を成膜するとともに、各透光性基板における遮光膜が成膜されていない面同士を貼り合わせた構成であってもよい。このような構成によれば、特に電子ビーム蒸着を用いて成膜を行った場合に、膜剥がれの抑制に有効である。