以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1に与えるブロック図は、本実施形態に係る顕微鏡100の機能構成を示す。顕微鏡100は、試料の表面又は内部を拡大してその像を表示する観察装置の一例であり、ユーザの操作により指定された観察条件で撮像された複数の撮像画像を表示するとともに、観察条件の遷移の前後に撮像された撮像画像の間における当該観察条件の遷移、すなわち操作を表す遷移表示画像を表示することで、ユーザに対して、試料を観察する際の試行錯誤を支援することを目的とする。なお、試料は、観察対象が表面に付着或いは形成されたガラス、金属、絶縁物、半導体等の基板、又は観察対象を表面に固定したプレパラートであってよい。顕微鏡100は、本体部102及び制御部104を備える。
本体部102は、光学系110、照明系115、撮像部120、及びステージ部170を備える。
光学系110は、試料の拡大像を生成する系であり、接眼レンズ、複数の対物レンズ、レボルバ、及び鏡筒(不図示)を有する。接眼レンズは、対物レンズが結ぶ中間像を拡大して見るための光学素子であり、複数の倍率のレンズから選択して交換することができる。複数の対物レンズは、試料の上に配されてその試料の中間像を結ぶ光学素子であり、それぞれ異なる倍率を有する。レボルバは、複数の対物レンズを支持して回転することで、それらのいずれかを光学系110の光軸上に位置決めする回転機構である。
レボルバを用いることで、複数の対物レンズを切り替えることができる。レボルバは、例えば回転モータ等の駆動装置を有し、これにより回転する。レボルバの回転位置(又は回転量)はセンサにより測定される。その測定結果は、制御部104内の設定部190に送信される。駆動装置は、設定部190からの指示により、レボルバを目標位置に回転する。なお、駆動装置と併せて、手動で回転できることとしてもよい。
上述の構成の光学系110において、接眼レンズ及び複数の対物レンズの一方又は両方を切り替えることにより、それらの組み合わせにより、光学系110の倍率を切り替えることができる。なお、接眼レンズ及び対物レンズの組み合わせに関する情報は、適宜、設定部190に送信される。
鏡筒(不図示)は、光学系110の構成各部及び後述する撮像部120を保持する。鏡筒は、駆動装置を有し、これにより光学系110を光軸方向に駆動する。鏡筒の光軸方向の位置(或いは変位)は、センサにより測定される。センサとして、例えば、リニアエンコーダを採用することができる。その測定結果は、制御部104内の設定部190に送信される。駆動装置は、設定部190からの指示により、鏡筒を目標位置に駆動する。駆動装置として、例えばモータ等を採用することができる。なお、駆動装置と併せて、駆動ダイヤルを手動で回転することにより鏡筒を駆動する駆動機構を設けてもよい。これにより、光学系110のフォーカスを変更することができる。
なお、鏡筒内に、光学系110(複数の対物レンズ)と撮像部120との間にハーフミラーを配し、これを透過する光を撮像部120に、反射する光を接眼レンズに送る構成を採用してよいし、撮像時にのみ光を撮像部120に送る構成を採用してもよい。また、接眼レンズに代えて又はこれと併せて、モニタ等により試料を観察可能な構成を採用してもよい。
照明系115は、試料を照明する光を生成し、それを用いて下方又は上方(或いは側方)から試料を照明する。試料を下方から照明する場合、試料を透過する光が、光学系110を介して撮像部120又は接眼レンズに向かう。試料を上方から照明する場合、試料から反射する光が、光学系110を介して撮像部120又は接眼レンズに向かう。照明系115は、輝度、波長、偏光、絞り等、幾つかの照明条件を選択することができる。なお、照明条件に関する情報は、適宜、制御部104内の設定部190に送信される。
撮像部120は、一例としてCCD、CMOS等の撮像素子を有し、これを用いて光学系110を通して試料を撮像し、その撮像画像を制御部104内の記憶部140に送信する。撮像部120は、ユーザが後述する操作部160を介して顕微鏡100を操作して観察条件を変更した後、その観察条件が変更されずに一定時間継続したことが検出されると、それに応じて試料を撮像してよい。それにより、ユーザの操作に応じた観察条件において試料が撮像される。なお、撮像部120は、これと併せて、ユーザにより操作部160を介して明示的に撮像が指示された場合にも、試料を撮像することとしてもよい。
ステージ部170は、試料が載置されるステージ、センサ、及び駆動装置を有する。ステージは、光学系110の光軸に対して直交する一面を有する平板状の部材であり、その一面上に試料を支持する。ステージは、光学系110の光軸(これに平行にZ軸を定める)に対して、これに直交する面(XY面)に平行な方向(X軸及びY軸方向)、Z軸方向、XY面内での回転方向(θz方向)、Z軸に対するチルト方向(θx及びθy方向)の6DOF方向に移動可能に構成される。センサは、ステージの6DOF方向それぞれの位置(或いは変位)を測定する。センサとして、例えば、リニアエンコーダを採用することができる。その測定結果は、制御部104内の設定部190に送信される。駆動装置は、ステージを6DOF方向に駆動する。駆動装置として、例えば複数のモータ、ヘキサポッドステージ等を採用することができる。駆動装置は、設定部190からの指示により、ステージを目標位置に駆動する。なお、駆動装置に代えて又はこれと併せて、駆動ダイヤル(粗動用ダイヤル及び微動用ダイヤル)を手動で回転することによりステージを駆動する駆動機構を設けてもよい。
上述の構成のステージ部170により、駆動装置を用いて試料を保持するステージを駆動することで、光学系110の光軸に対して(その視野内で或いは視野範囲を越えて)、試料を移動(試料上の観察位置を移動)することができる。
制御部104は、設定部190、操作部160、表示処理部130、記憶部140、及び表示部150を備える。制御部104は、コンピュータ、マイクロコントローラ等を含む情報処理装置に制御用プログラムを実行させることによって実現されてもよい。
設定部190は、本体部102の構成各部、すなわち光学系110、照明系115、撮像部120、及びステージ部170を制御する。設定部190は、これら各部からそれぞれの状態に関する情報を収集するとともに、操作部160から送信される指示に応じて各部を制御して、それらの状態、すなわち観察条件を設定又は変更する。例えば、設定部190は、倍率変更の指示に応じて光学系110(レボルバ)を制御して、変更倍率に対応する対物レンズに切り替える。また、設定部190は、フォーカスの変更の指示に応じて鏡筒を変更フォーカスに対応する目標位置に駆動して、光学系110のフォーカスを変更する。また、設定部190は、照明条件の変更の指示に応じて照明系115を制御して、変更照明に対応する照明条件を選択する。また、設定部190は、撮像部120を制御して、試料を撮像する。また、設定部190は、観察位置の移動の指示に応じてステージ部170(駆動装置)を制御して、試料を支持するステージを指示された目標位置に駆動する又は指示された変位量、駆動することで、試料上の観察位置を移動する。また、設定部190は、観察条件の再現の指示に応じて、構成各部を制御して観察条件に対応するそれぞれの状態に設定することで、目的の観察条件を再現する。
操作部160は、マウス、キーボード、ペンタブレット等の入力装置162を介してユーザからの操作の指示を取得し、処理する。操作は、一例として、倍率の変更、フォーカスの変更、照明条件の変更、ステージの位置(観察位置)の変更、観察条件の再現、画像処理等を含む。なお、倍率の変更は、接眼レンズの交換及び対物レンズの切り替えを含む。フォーカスの変更は、光軸方向への鏡筒及びステージの駆動を含む。照明条件の変更は、照明の輝度、波長、偏光、絞り等の変更を含む。ステージの位置の変更は、ステージの6DOF方向への移動を含む。観察条件の再現は、過去に設定された観察条件の中から選択されるいずれかの観察条件を再現することを含む。画像処理は、記録された撮像画像を画像処理すること、それにより撮像画像の特徴、観察された試料の特徴等の特徴量を生成することを含む。
操作部160は、入力された操作の指示を処理して、対物レンズの選択、鏡筒の目標位置(又は目標変位)、照明条件の選択、ステージの目標位置(又は目標変位)等、顕微鏡100の各部の状態設定の指示及び画像処理の指示を設定部190に送信する。また、操作部160は、撮像部120による試料の撮像に併せて、試料が撮像された時刻(撮像時刻)、入力された操作の内容と操作量(操作情報)、及び顕微鏡100(各部)の設定状態の情報(設定情報)を設定部190を介して記憶部140に送信する。
なお、入力装置162として、ユーザの手指等によるタッチ入力を検知するタッチパネルを採用することもできる。この場合、入力装置162は、フリック、ピンチ等のジェスチャ操作(マルチタッチによるジェスチャ操作を含む)による操作を処理することとしてもよい。
記憶部140は、撮像部120から送信される撮像画像を、操作部160による観察条件の設定に応じて設定部190から送信される撮像時刻、操作情報、及び設定情報(これらをまとめて履歴情報とも呼ぶ)とともに記憶する。また、表示処理部130からの指示に応じて、記録した撮像画像(撮像時刻を含む)、操作情報、及び設定情報を表示処理部130に送信する。なお、記憶部140は、画像処理プログラム等、顕微鏡100の機能を拡張するためのプログラムをプラグイン可能に格納する記憶装置を有してもよい。
表示処理部130は、記憶部140により記録された撮像画像、操作情報、及び設定情報を用いて顕微鏡100の操作の履歴マップを作成し、表示部150に送信する。表示処理部130は、レイアウト部132、クラスタリング部134、統合処理部136、及び生成部138を含む。レイアウト部132は、履歴マップのレイアウトを作成する、すなわち履歴マップ上の撮像画像の配置を決定する。クラスタリング部134は、複数の撮像画像をクラスタリングして、それらを代表する一部の撮像画像を代表画像として履歴マップ上に配置する。統合処理部136は、複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像から別の1つの撮像画像に至る複数の操作による複数回の観察条件の変更を1回の操作による観察条件の変更として統合(マクロ化)する。生成部138は、例えばユーザの指示又は自動的に選択されてプラグインされた画像処理プログラムを起動して、画像処理機能を得る。生成部138は、複数の撮像画像のうちの対象画像を画像処理して変換後の画像又は特徴量を生成する。履歴マップの作成及び各部の機能の詳細は、後述する。
表示部150は、1又は複数の表示装置152に接続可能であり、その画面上に表示処理部130により作成される履歴マップを表示する。表示装置として、例えば、CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、及びプロジェクタ等の表示装置を採用することができる。
なお、操作部160及び表示部150は、1又は複数のユーザ端末154に接続することができる。ユーザ端末154は、履歴マップを表示する表示装置として機能するだけでなく、タッチパネル等のポインティングデバイスを有し、それぞれ独立の入力装置としても機能する。
図2のフロー図は、顕微鏡100の動作手順300の一例を示す。なお、顕微鏡100の電源が投入されることで、制御部104は、一連の手順を開始する。
ステップ302では、設定部190は、顕微鏡100の構成各部、特に光学系110、照明系115、及びステージ部170の状態を初期設定する。初期設定において、例えば、設定部190は、光学系110、照明系115、及びステージ部170からそれらの設定情報を収集し、操作部160に送信する。これに先立って、設定部190は、鏡筒(不図示)の光軸方向に関する位置、ステージの6DOF方向それぞれの位置等を較正してもよい。操作部160は、それらの情報を表示部150に送信して、表示装置152の画面上に表示する。また、設定部190は、タイマの設定時間をセットする。
ステップ304では、設定部190は、観察条件が変更されたことを示すフラグFをクリアし、ゼロとする。
ステップ306では、設定部190は、ユーザからの操作の指示の有無を判断する。操作部160はユーザからの操作の指示を取得し、処理して、顕微鏡100の各部の状態設定の指示を設定部190に送信する。設定部190は、状態設定の指示を受信しない限り、操作の指示はないと判断する。判断が肯定されるとステップ310に移行し、否定されるとステップ308に移行する。
ステップ308では、設定部190は、フラグFが立てられているか否か(Fは1であるか否か)判断する。判断が肯定されるとステップ314に移行し、否定されるとステップ306に戻る。ここでは、フラグFはクリアされているので、ステップ306に戻る。それにより、ユーザからの操作の指示があるまで、ステップ306,308を繰り返す。
ステップ310では、設定部190は、ステップ306において受信した状態設定の指示に従って、光学系110、照明系115、及びステージ部170を制御することにより、顕微鏡100の観察条件を変更する。設定部190による制御の詳細は、先述の通りである。
ステップ312では、設定部190は、フラグFを立てる(Fに1を代入する)とともにタイマをセットし、観察条件の変更からの経過時間を計る。
ステップ314では、設定部190は、設定時間が経過したか否かを判断する。設定部190は、ステップ312にてセットされたタイマを用いて、ステップ310において観察条件が変更された後、その条件(顕微鏡100の設定状態)を維持したまま設定時間が経過したか否かを判断する。判断が肯定されるとステップ316に進み、否定されるとステップ306に戻る。
ステップ314の判断が否定された場合のフローをより詳細に説明する。
ステップ306に戻った後、ユーザからの次の操作の指示があると、ステップ306の判断が肯定され、設定部190はステップ310,312,314を繰り返す。ステップ310では、設定部190は、先のステップ310において指示された操作による観察条件の変更に重ねてさらに新たに指示された操作による観察条件に変更する。ステップ312では、設定部190は、フラグFを継続して立て、且つタイマをリセット(リスタート)する。そして、ステップ314において、設定部190は、リスタートしたタイマにより、観察条件が変更されてからその条件を維持したまま設定時間が経過したか否かを判断する。
ステップ306に戻った後、ユーザからの次の操作の指示がないと、ステップ306の判断が否定され、設定部190はステップ308,314を繰り返す。ステップ314では、観察条件が最後に変更されてから、その条件を維持したまま設定時間が経過したか否かが判断されることとなる。観察条件が最後に変更されてから設定時間が経過してステップ314の判断が肯定されると、ユーザによる一連の操作が完了したものとして、設定部190はステップ316に移行する。経過していない場合、ユーザによる操作はまだ継続しているものとして、設定部190はステップ306に戻り、ステップ306,308,310,312,314を繰り返す。
ステップ316では、設定部190は、試料を撮像する。設定部190は、撮像部120により、一連のステップ306,308,310,312,314により設定された観察条件において、試料を撮像する。その結果(撮像画像)は記憶部140に送信され、記録される。
なお、本実施形態では、一連のステップ306,308,310,312,314により観察条件が最後に変更されてからその条件を維持したまま設定時間が経過した場合に、ユーザによる一連の操作が完了したものとして、ステップ316に移行して試料を撮像することとしたが、これに限らず、ユーザにより撮像が指示された場合に、設定時間の経過を待つことなく試料を撮像することとしてもよい。係る場合、設定部190は、ステップ312,314を省略し、ステップ310からステップ316に移行することとしてよい。
ステップ318では、設定部190は、操作履歴を記録する。設定部190は、ステップ316にて撮像画像が得られた時刻、一連の操作の内容と操作量、及び一連の操作により最終的に設定された顕微鏡100の状態の情報を記憶部140に送信する。なお、一連の操作は、1つの操作としてその内容と操作量が記録される。送信された各情報は、撮像画像に対応付けて記憶部140により記憶される。
ステップ320では、表示処理部130により履歴マップが作成され、表示装置152の画面上に表示される。表示処理部130は、ステップ318において操作履歴が記録される度に履歴マップを作成する。それにより、ユーザによる複数の操作に伴って撮像された複数の対象画像とともに、操作に伴う観察条件の遷移の前後に撮像された対象画像同士の間における当該観察条件の遷移の種類を示す遷移表示画像が表示される。
図3A及び図3Bは、履歴マップの作成の一例を示す。図3Aは、顕微鏡100の電源が投入された直後の初期状態Sにおける履歴マップを示す。履歴マップの右下に、初期状態Sにおいて撮像された撮像画像200が表示されている。ユーザにより操作の指示が入力され(ステップ306)、顕微鏡100の観察条件が変更され(ステップ310)、その操作の履歴が記録されると(ステップ318)、表示処理部130は、図3Bに示すように、撮像画像200を履歴マップ上で(縮小して)同じ位置又は近傍に残し、この位置から右上に操作後の観察条件における試料のライブビューを表示する。なお、表示処理部130は、ライブビューに代えてステップ316において得られた撮像画像202を表示してもよいし、任意のタイミングでライブビューを撮像画像202に置き換えてもよい。試料のライブビュー(又は撮像画像202)を表示する際、表示処理部130は、操作の内容(さらに操作量等)に応じて異なる種類(例えば、異なる色、形状、線種等)の遷移表示画像201を併せて表示する。遷移表示画像201は、2つの撮像画像200,202を結ぶように表示される。それにより、操作に伴う観察条件の遷移の前後に撮像された対象画像の対応とそれらの関係が表される。
ステップ320が完了すると、設定部190は、ステップ304に戻る。設定部190は、顕微鏡100の電源がオフされるまで一連のステップ304〜320を繰り返す。従って、ステップ306においてユーザからの操作の指示が確認される都度、ステップ310にて観察条件が変更され、ステップ316にてその観察条件で試料が撮像され、ステップ320にて履歴マップが作成され、表示画面上に表示される。
操作履歴の記録、すなわち、ステップ318における操作情報(すなわち、操作の内容と操作量)及び設定情報(すなわち、顕微鏡100の設定状態の情報)の記録について説明する。
図4Aは、ユーザにより入力される操作履歴の一例を示す。顕微鏡100は、時刻t=0にて、始状態である状態S0にあるものとする。この時、撮像部120により、撮像画像202が得られている。時刻t=1にて、ユーザが操作部160を介して操作O1、すなわち観察位置の移動を指示し、それにより顕微鏡100は状態S0から状態S1に遷移する。この時、撮像部120により、撮像画像204が得られる。時刻t=2にて、ユーザがフォーカス変更(操作O2)を指示し、それにより顕微鏡100は状態S1から状態S2に遷移する。この時、撮像部120により、撮像画像206が得られる。時刻t=3にて、ユーザは状態S1における観察条件を再現する観察条件の再現(操作O3)を指示し、それにより顕微鏡100は状態S2から状態S1に遷移する。時刻t=4にて、ユーザがフォーカス変更(操作O4)を指示し、それにより顕微鏡100は状態S1から状態S4に遷移する。この時、撮像部120により、撮像画像208が得られる。時刻t=5にて、ユーザが倍率変更(操作O5)を指示し、それにより顕微鏡100は状態S4から状態S5に遷移する。この時、撮像部120により、撮像画像210が得られる。なお、簡単のため、観察位置の移動量、フォーカスの変更量、倍率の変更量等の操作量の詳細は省略する。
図4Bは、上記の操作履歴を木構造により記録する方法を示す。記憶部140は、撮像部120から試料の撮像画像が送信されると、これと併せて設定部190から送信される撮像時刻、操作情報(すなわち、操作の内容と操作量)、及び設定情報(すなわち、顕微鏡100の設定状態)を木構造により記録する。木構造は、ノードとリンクを有し、ノードは観察条件、すなわち顕微鏡100の設定状態S0,S1,S2,S4,S5、それぞれの観察条件において撮像された撮像画像202,204,206,208,210、及びそれらの撮像時刻を表し、リンクは遷移前後の観察条件間の関係、すなわち操作O1,O2,O3,O4,O5を表す。
上の操作履歴の一例に対し、図4Bの木構造は、操作O1により顕微鏡100が設定状態S0からS1に遷移して、時刻t=1に画像204が得られ、操作O2により設定状態S1からS2に遷移して、時刻t=2に画像206が得られ、操作O3により設定状態S2からS1に戻り(時刻t=3)、操作O4により設定状態S1からS4に遷移して、時刻t=4に画像208が得られ、操作O5により設定状態S4からS5に遷移して、時刻t=5に画像210が得られたことが記録される。それにより、観察条件の再現の操作により顕微鏡100が過去の設定状態に戻り、その状態から別の操作により異なる状態に遷移する履歴を含む場合においても、すべての操作情報と設定情報が記録される。
ステップ320における履歴マップの作成及び表示について、より詳細に説明する。
図5Aから図5Fは、上の操作履歴の一例に対して、表示処理部130により作成及び表示される履歴マップの遷移の一例を示す。
図5Aは、時刻t=0にて、始状態である設定状態S0において作成された履歴マップを示す。この履歴マップでは、初期状態S及び設定状態S0において得られた撮像画像200,202及びそれらの対応及び操作を表す遷移表示画像201が表示されている。この状態において、ユーザにより観察位置の移動(操作O1)が指示されると、試料を保持するステージが移動し、それにより顕微鏡100は状態S0から状態S1に遷移し、時刻t=1にて状態S1における撮像画像204が得られる。
図5Bは、時刻t=1にて、設定状態S1に遷移した状態において作成された履歴マップを示す。表示処理部130は、撮像画像200,202及び遷移表示画像201を同じ位置に残しつつ、撮像画像200,202と異なる位置、すなわち画像202の左上近傍に設定状態S1における試料のライブビュー(又は撮像画像204)を表示するとともに、観察位置の移動(操作O1)を示す遷移表示画像203を2つの画像202,204を結ぶように表示する。
なお、表示処理部130内のレイアウト部132は、観察位置を移動する操作O1が指示されたことに応じて、2つの撮像画像202,204の間の配置を、観察位置の移動方向に基づいて決定してもよい。例えば、観察位置を、撮像画像202における観察位置から左上に移動する場合、その操作により得られる撮像画像204を操作前の撮像画像202の左上に配置する。さらに、撮像画像202,204の離間距離を、観察位置の移動距離に応じて定めてもよい。
次に、設定状態S1において、ユーザによりフォーカス変更(操作O2)が指示されると、鏡筒又はステージが光学系110の光軸方向に駆動され、それにより顕微鏡100は状態S1から状態S2に遷移し、時刻t=2にて状態S2における撮像画像206が得られる。
図5Cは、時刻t=2にて、設定状態S2に遷移した状態において作成された履歴マップを示す。表示処理部130は、撮像画像200,202,204及び遷移表示画像201,203を同じ位置に残しつつ、撮像画像200,202,204と異なる位置、すなわち画像204の右上近傍に設定状態S2における試料のライブビュー(撮像画像206)を表示するとともに、フォーカス変更(操作O2)を表す遷移表示画像205を2つの画像204,206を結ぶように表示する。なお、操作の内容を区別できるよう、遷移表示画像205として遷移表示画像203と異なる色の画像が選択されている。
次に、設定状態S2において、ユーザによりt=1での観察条件の再現(操作O3)が指示されると、その観察条件に対応する設定状態S1が再現される。この時、ユーザは、履歴マップに表示されている複数の撮像画像の中から再現を希望する観察条件に対応する撮像画像(この場合、画像204)を選択する。操作部160は、設定部190に観察条件の再現を指示する。設定部190は、その指示に従って選択された撮像画像を撮像した時の観察条件(操作情報及び設定情報)を記憶部140から読み出し、本体部102の各部を制御して、観察条件に対応する顕微鏡状態を再現する。この場合、鏡筒又はステージが光学系110の光軸方向に先と逆方向に同じ駆動量、駆動される。それにより、顕微鏡100は状態S1に戻る。
図5Dは、設定状態S1が再現された後の時刻t=3にて作成された履歴マップを示す。表示処理部130は、ユーザにより選択された状態S1に対応する撮像画像204を強調表示する。なお、撮像画像の強調表示として、図5Dでは一例として撮像画像204の枠を太く表示することとしたが、これに限らず、撮像画像の枠の色を変更する、撮像画像を拡大する等してもよい。このとき、表示処理部130は、引き続き撮像画像204を表示してもよいし、現時刻での状態S1における試料のライブビューを表示してもよい。
次に、設定状態S1において、ユーザによりフォーカス変更(操作O4)が指示されると、鏡筒又はステージが光学系110の光軸方向に駆動され、それにより顕微鏡100は状態S1から状態S4に遷移し、時刻t=4にて状態S4における撮像画像208が得られる。
図5Eは、時刻t=4にて、設定状態S4に遷移した状態において作成された履歴マップを示す。表示処理部130は、撮像画像200,202,204,206及び遷移表示画像201,203,205を同じ位置に残しつつ、撮像画像200,202,204,206と異なる位置、すなわち画像204の左下近傍に設定状態S4における試料のライブビュー(又は撮像画像208)を表示するとともに、フォーカス変更(操作O4)を示す遷移表示画像207を2つの画像204,208を結ぶように表示する。
このように、表示処理部130は、再現した観察条件に対応する状態S1で、ユーザが先と異なる操作をしたことに応じて、先の操作(この場合、操作O2)に伴って撮像された撮像画像206と、新たな操作(操作O4)に伴って撮像された撮像画像208と、を撮像画像204から分岐して表示する。
次に、設定状態S4において、ユーザにより倍率変更(操作O5)が指示されると、対物レンズが交換され、それにより顕微鏡100は状態S4から状態S5に遷移し、時刻t=5にて状態S5における撮像画像210、すなわち状態S4における撮像画像208の一部を拡大する画像が得られる。
図5Fは、時刻t=5にて、設定状態S5に遷移した状態において作成された履歴マップを示す。表示処理部130は、撮像画像200,202,204,206,208及び遷移表示画像201,203,205,207を残しつつ、撮像画像200,202,204,206,208と異なる位置、すなわち画像208の左上近傍に設定状態S5における試料のライブビュー(又は撮像画像210)を表示するとともに、倍率変更(操作O5)を表す遷移表示画像209を2つの画像208,210を結ぶように表示する。なお、操作の内容を区別できるよう、遷移表示画像209は遷移表示画像203,205,207と異なる遷移の方向に拡がる画像が選択されている。
なお、表示処理部130は、倍率変更の操作O5が指示されたことに応じて、2つの撮像画像208,210の間の配置を、画像の拡大又は縮小の中心位置に基づいて決定してもよい。例えば、撮像画像208内の基準位置から左上に位置する中心位置について画像を拡大又は縮小する場合に、新たな画像210を元の画像208の左上に配置する。また、画像の倍率に応じて、画像208に対して画像210を拡大又は縮小して表示してもよい。
本実施形態の顕微鏡100は、上述の履歴マップの作成、表示により、撮像された複数の撮像画像を表示するとともに、それらの撮像画像間の関係、すなわち操作(その内容及び操作量)をユーザが把握できるように表示することで、ユーザに対して、試料を観察する際の試行錯誤を支援することができる。ユーザは、撮像画像間の関係を把握できることで、過去に記録した画像をただ選択するだけでなく、再現したい観察条件を選択し、そしてより最適な観察条件及びより最適な操作を探すことができる。
図6A及び図6Bは、履歴マップを利用して2つの撮像画像を選択して、それらを比較表示する一例を示す。ユーザは、図6Aに示す履歴マップ上に表示されている複数の撮像画像から2つ又はそれ以上の画像を選択する。ここでは、ユーザは、操作部160を介して、撮像画像200,206を選択したとする。これに応じて表示処理部130は、履歴マップ上で撮像画像200,206を強調表示する。撮像画像200,206が選択されると、表示処理部130は、図6Bに示すように、履歴マップを表示画面上でその下端を軸に上端を後方斜め右に倒すように射影変換をして表示画面の下側に縮退し、表示画面の上側に選択された2つの画像200,206を拡大して対比可能に表示する。ここで、表示処理部130は、拡大して比較表示した撮像画像200,206が履歴マップ上に配置された撮像画像に対応することを表す画像を合わせて表示する。図6Bの例では、履歴マップ上の対応する撮像画像から拡大表示された画像まで延びる矢印210,216が表示されている。
図7A及び図7Bは、履歴マップを利用して複数の操作を1つの操作としてマクロ化する一例を示す。ここで、操作のマクロ化とは、履歴マップ上に表示される複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像から別の1つの撮像画像に至る複数の操作による複数回の観察条件の変更(設定状態の遷移)を1回の操作による観察条件の変更(設定状態の遷移)として統合することをいう。図7Aに示すように、ユーザは履歴マップ上に表示されている複数の撮像画像から2つの画像202,208を選択する。図7Aでは、選択された2つの画像202,208が強調表示されている。なお、2つの撮像画像を選択するに代えて、2つの撮像画像を結ぶ2以上の遷移表示画像(この場合、画像203,207)を選択してもよい。
表示処理部130に含まれる統合処理部136は、2つの撮像画像202,208が選択されると、2つの単位操作O1,O4を単一の操作O6として統合し、その操作O6の内容及び操作量を設定情報(顕微鏡100の設定状態)とともに記憶部140により記録される。操作O6が記録されると、表示処理部130は、図7Bに示すように、選択された2つの撮像画像202,208の間に配置される撮像画像204,206及びそれらの画像を結ぶ遷移表示画像203,205,207を消去し、2つの撮像画像202,208を直接結ぶ遷移表示画像211を表示する。遷移表示画像211は、2つの単位操作O1,O4を統合した操作O6を表す。それにより、ユーザは、新たに表示された図7Bの履歴マップを利用して、2つの単位操作O1,O4を単一の操作O6として一括指定することができる。
表示処理部130に含まれるレイアウト部132は、グラフ可視化アルゴリズムにより履歴マップのレイアウトを作成する、すなわち履歴マップ上の複数の撮像画像の配置を決定する。グラフ可視化アルゴリズムとして、Kamada-Kawaiアルゴリズム、Fruchterman-Reingoldアルゴリズム等を採用することができる。
グラフ可視化アルゴリズムでは、一例として力学モデルを採用することができる。力学モデルでは、複数の撮像画像それぞれを有限の質量を有する質点とみなし、撮像画像を結ぶ複数の遷移表示画像それぞれを有限のばね定数を有するばねとみなし、履歴マップに対応する2次元面上で複数のばねにより連結された複数の質点系の力学的エネルギが安定化する配置を演算により決定する。演算では、複数の質点の運動エネルギ及び複数のばねの弾性エネルギの和によりコスト関数を定義し、そのコスト関数が極小値を持つ力学系の平衡状態を得る。その平衡状態における複数の質点の配置が、複数の撮像画像の配置として決定される。
コスト関数に制約項を追加することで、複数の撮像画像及び複数の遷移表示画像をより好適なレイアウトで履歴マップ上に配置することができる。例えば、複数の質点は撮像画像の表示サイズに相当する面積を有するとし、それらが2次元面上で重ならないように、また複数のばねが交差しないように、相当する制約項をコスト関数に追加してもよい。また、先述の通り、観察位置の移動方向、画像の拡大又は縮小の中心位置等に基づいて撮像画像の配置を決定する場合、相当する制約項をコスト関数に追加してよい。ばねにより結ばれる2つの質点の離間距離は一定としてもよいし、観察位置の移動距離、マクロ化された1つの操作における単位操作の回数(設定状態の遷移回数)、後述するようにクラスタ化された撮像画像の数(設定状態の遷移回数)等に応じて可変としてもよい。ここで、遷移回数が少ない場合に離間距離への影響を大きく、多い場合に影響を小さくしてよい。
表示処理部130に含まれるクラスタリング部134は、履歴マップ上に配置する撮像画像の数が増えた場合、記憶部140に記録されている撮像画像の数と表示部150の表示画面の大きさとに応じて、互いに類似する複数の撮像画像をクラスタリングして、それらを代表する一部(1以上又は2以上)の撮像画像を代表画像として表示する。ここで、階層的クラスタ分析を利用して撮像画像をクラスタリングすることができる。
撮像画像の階層的クラスタ分析では、撮像画像に対して類似度を定義し、その類似度に基づいて複数の撮像画像を1以上のクラスタに分類する。ここで、類似度は、撮像画像iを得た際の観察条件Xiに基づいて定義することができる。観察条件Xi[=(Xi1,Xi2,…,Xin,…,XiN)]は、接眼レンズ及び対物レンズの組み合わせにより定まる倍率、鏡筒の光軸方向の位置により定まるフォーカス、照明光の輝度、波長、偏光、絞り等を含む照明条件、試料を支持するステージの位置により定まる観察位置等の各属性を要素とする多次元ベクトルである。また、観察条件の類似度に基づくクラスタリングと併せて、画像のサイズ、コントラスト、色調等の撮像画像の画像特性を用いて類似度を定義し、これに基づいて複数の撮像画像をクラスタリングしてもよい。2つの撮像画像i,jの類似度εijは、それぞれの観察条件Xi,Xj及び重みc[=(c1,c2,…,cn,…,cN)]を用いて、例えばεij=√Σn=1〜Ncn|Xin−Xjn|2と定義される。
階層的クラスタ分析は、全ての撮像画像間の類似度を求め、その類似度が最も高い、すなわちεijの値が最小の2つの撮像画像をクラスタ化する。そのクラスタ化された撮像画像を含め、再度、撮像画像の間の類似度を求め、その類似度が最も高い2つの撮像画像をクラスタ化する。この操作を、すべての撮像画像が1つのクラスタにクラスタ化されるまで繰り返す。それにより、互いに類似する撮像画像が1又は複数のクラスタに分類されるとともに、1つのクラスタに属する複数の撮像画像が類似度に対応する階層に応じてさらに複数のクラスタに分類される。
図8A及び図8Bは、撮像画像がクラスタリングされた履歴マップのクラスタ表示の一例を示す。これらの例では、複数の撮像画像が4つのクラスタC0〜C4にクラスタ化されている。それぞれのクラスタC0〜C4は互いに類似する撮像画像を含み、それぞれを代表する1以上の代表画像が履歴マップ上に配置されている。
表示装置152の表示画面の大きさに基づいて、履歴マップ上に表示するクラスタのサイズ(粒度と呼ぶ)が決定される。表示処理部130は、大きいサイズの表示画面に対して、表示するクラスタの階層を下げる。それにより、類似度の大きい画像まで表示されて、表示されるクラスタの粒度が細かくなる。例えば図8Aに示すように、それぞれのクラスタC0〜C4内に含まれる低い階層のクラスタに属する撮像画像まで表示される。表示処理部130は、小さいサイズの表示画面に対して、表示するクラスタの階層を上げる。それにより、類似度の大きい画像が非表示となり、類似度の小さい画像のみが表示されて、表示されるクラスタの粒度が粗くなる。例えば図8Bに示すように、それぞれのクラスタC0〜C4内に含まれる高い階層のクラスタに属する1つの撮像画像のみが表示される。
なお、図8A又は図8Bのクラスタ表示された履歴マップ上で、いずれかのクラスタ、例えばクラスタC0が選択されると、表示処理部130は、そのクラスタのみを図5F等に示すように詳細表示することとしてもよい。それにより、ユーザは、履歴マップをクラスタ表示から詳細表示に切り替えて、顕微鏡100の操作を続けることができる。
なお、本実施形態の顕微鏡100では、撮像された複数の撮像画像とともにそれら撮像画像間の関係、すなわち操作をユーザが把握できるように履歴マップ上に表示することとしたが、これに併せて、顕微鏡100において撮像画像の画像処理を行い、これによる画像処理の遷移を履歴マップ上に表示することとしてもよい。画像処理の一例として、顕微鏡100を用いて組織を観察する場合にその組織内の特定の細胞の数を数える処理が挙げられる。
表示処理部130に含まれる生成部138は、操作部160がユーザから画像処理の操作の指示を取得すると、これに応じて、指定された対象画像を画像処理して特徴量を生成する。表示処理部130は、画像処理された対象画像を複数の撮像画像の一部として履歴マップ上に表示するとともに、その対象画像に対応付けて特徴量を示す情報を履歴マップ上に表示する。ここで、表示処理部130は、履歴マップ上に、画像処理された画像を処理される前の画像の近傍に配置し、それら2つの画像を結ぶように、ユーザの操作に伴う画像処理の種類を示す遷移表示画像を表示する。
なお、画像処理により特徴量を生成するのに適する画像と、ユーザに視認可能に提示するのに適する画像と、は異なることがある。その場合、設定部190は、例えば、特徴量を対応付ける対象画像に対して、観察位置及び倍率を固定し、フォーカス等、その他の観察条件の少なくとも一部を変更して処理用画像を撮像する。生成部138は、対象画像に代えて処理用画像を画像処理して特徴量を生成する。表示処理部130は、履歴マップ上に、対象画像と、これに対応付けて生成された特徴量を示す情報を表示する。
なお、複数のユーザ端末154を複数のユーザがそれぞれ使用して、1つの共通の顕微鏡100を操作することとしてもよい。複数のユーザは、それぞれのユーザ端末154の画面上に複数の撮像画像が配置された履歴マップ内の異なる部分を独立に表示させ、顕微鏡100を独立に操作する。操作部160は、複数のユーザ端末154のそれぞれから複数のユーザの操作の指示を取得する。操作部160は、複数のユーザ端末154のいずれかから操作の指示を取得すると、それに応じて指示を処理して顕微鏡100の各部の状態設定の指示を設定部190に送信する。
なお、ユーザ端末154の画面上に試料のライブビューを表示して試料を観察しつつ、そのユーザ端末154を用いてその試料を支持するステージを駆動制御することとしてもよい。ここで、試料上の観察対象を的確な角度及びフォーカスで観察するために、試料を観察しながら、試料を支持するステージをチルト方向(θx方向及びθy方向)に駆動すること及びステージ又は鏡筒を光軸方向に駆動することがある。そこで、ユーザ端末154を用いてのステージのチルト制御及びフォーカス制御について説明する。
ユーザ端末154は、表示画面の傾きを測定するチルトセンサ、少なくとも表示画面の法線方向に対するその変位を測定する変位センサを有する。チルトセンサ及び変位センサとして、例えば、それぞれジャイロセンサ及び加速度センサを採用することができる。チルトセンサ及び変位センサの測定結果は、操作部160に送信される。また、ユーザ端末154を用いて傾きの中心を指定し、その情報を操作部160に送信することとしてもよい。操作部160は、チルトセンサ及び変位センサの測定結果からステージのチルト量及びフォーカス変更量を算出し、その結果を設定部190に送信して、ステージのチルト及びステージ又は鏡筒の光軸方向への駆動を指示する。設定部190は、その指示に応じてステージ又は鏡筒を制御して、ステージのチルト及びフォーカスを変更する。
なお、ユーザが表示画面上に表示される試料を観察しつつ、直感的にステージ及び鏡筒を駆動制御できるよう、ステージのX軸及びY軸方向をそれぞれ表示画面の横及び縦方向に一致するように(これに限らず既定の方向に一致するように)、光学系110を介して観察される試料のライブビューを表示することとする。
図9Aは、ユーザ端末154を用いてのステージのチルト操作の方法を示す。ユーザ端末154の画面上には、顕微鏡100により観察されている試料のライブビューが表示されている。ユーザは、一方の手指でユーザ端末154を支持しつつ、他方の手指で画面上の一点、すなわちチルト中心154aをタッチする。それにより、ステージのチルト操作が指示されるとともに、傾きの中心が指定される。ユーザは、画面にタッチした状態(傾きの中心を指定した状態)で、ユーザ端末154を支持する一方の手指でそのユーザ端末154を例えば矢印方向に傾ける。それにより、試料を支持するステージは、指定された傾きの中心を中心に、チルト操作を指示(画面にタッチ)している間におけるユーザ端末154のチルトの方向及びその量に応じて、チルト駆動される。ユーザは、チルト操作を指示する手指を画面から離すことで、ステージのチルト操作を終了する。なお、ステージがチルト駆動された後(又はチルト駆動の間においても)、その状態における試料のライブビューが画面上に表示される。
図9Bは、ユーザ端末154を用いてのフォーカス操作の方法を示す。ユーザ端末154の画面上には、顕微鏡100により観察されている試料のライブビューが表示されている。ユーザは、一方の手指でユーザ端末154を支持しつつ、画面左上の領域154bをタッチする。それにより、フォーカス変更の操作が指示される。ユーザは、画面にタッチした状態(フォーカス変更を指示した状態)で、ユーザ端末154を支持する一方の手指でそのユーザ端末154を矢印方向(画面の法線方向)に動かす。それにより、試料を支持するステージ又は鏡筒は、フォーカス変更を指示(画面の領域154bにタッチ)している間におけるユーザ端末154の変位量に応じて、光軸方向に駆動される。ユーザは、フォーカス変更を指示する手指を領域154bから離すことで、フォーカス変更の操作を終了する。なお、フォーカス変更の操作の後(又はその操作の間においても)、試料のライブビューが画面上に表示される。
なお、本実施形態では、観察装置の一例として顕微鏡(光学顕微鏡)を挙げたが、これに限らず、レーザ顕微鏡、電子顕微鏡、X線顕微鏡、超音波顕微鏡等の顕微鏡システムとしてもよい。また、マイクロスコープ、望遠鏡、双眼鏡等、対象物の観察に用いられる各種の観察装置としてもよい。
図10は、本実施形態に係るコンピュータ1900のハードウェア構成の一例を示す。本実施形態に係るコンピュータ1900は、ホスト・コントローラ2082により相互に接続されるCPU2000、RAM2020、グラフィック・コントローラ2075、及び表示装置2080を有するCPU周辺部と、入出力コントローラ2084によりホスト・コントローラ2082に接続される通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、及びCD−ROMドライブ2060を有する入出力部と、入出力コントローラ2084に接続されるROM2010、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070を有するレガシー入出力部とを備える。
ホスト・コントローラ2082は、RAM2020と、高い転送レートでRAM2020をアクセスするCPU2000及びグラフィック・コントローラ2075とを接続する。CPU2000は、ROM2010及びRAM2020に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等がRAM2020内に設けたフレーム・バッファ上に生成する画像データを取得し、表示装置2080上に表示させる。これに代えて、グラフィック・コントローラ2075は、CPU2000等が生成する画像データを格納するフレーム・バッファを、内部に含んでもよい。
入出力コントローラ2084は、ホスト・コントローラ2082と、比較的高速な入出力装置である通信インターフェイス2030、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060を接続する。通信インターフェイス2030は、ネットワークを介して他の装置と通信する。ハードディスクドライブ2040は、コンピュータ1900内のCPU2000が使用するプログラム及びデータを格納する。CD−ROMドライブ2060は、CD−ROM2095からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。
また、入出力コントローラ2084には、ROM2010と、フレキシブルディスク・ドライブ2050、及び入出力チップ2070の比較的低速な入出力装置とが接続される。ROM2010は、コンピュータ1900が起動時に実行するブート・プログラム、及び/又は、コンピュータ1900のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。フレキシブルディスク・ドライブ2050は、フレキシブルディスク2090からプログラム又はデータを読み取り、RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供する。入出力チップ2070は、フレキシブルディスク・ドライブ2050を入出力コントローラ2084へと接続すると共に、例えばパラレル・ポート、シリアル・ポート、キーボード・ポート、マウス・ポート等を介して各種の入出力装置を入出力コントローラ2084へと接続する。
RAM2020を介してハードディスクドライブ2040に提供されるプログラムは、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095、又はICカード等の記録媒体に格納されて利用者によって提供される。プログラムは、記録媒体から読み出され、RAM2020を介してコンピュータ1900内のハードディスクドライブ2040にインストールされ、CPU2000において実行される。
コンピュータ1900にインストールされ、コンピュータ1900を顕微鏡100の制御部104として機能させるプログラムは、設定モジュールと、操作モジュールと、表示処理モジュールと、記憶モジュールと、表示モジュールとを備える。これらのプログラム又はモジュールは、CPU2000等に働きかけて、コンピュータ1900を、設定部190、操作部160、表示処理部130、記憶部140、及び表示部150としてそれぞれ機能させる。
これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ1900に読込まれることにより、ソフトウェアと上述した各種のハードウェア資源とが協働した具体的手段である設定部190、操作部160、表示処理部130、記憶部140、及び表示部150として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ1900の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の顕微鏡100の制御部104が構築される。
一例として、コンピュータ1900と外部の装置等との間で通信を行う場合には、CPU2000は、RAM2020上にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理内容に基づいて、通信インターフェイス2030に対して通信処理を指示する。通信インターフェイス2030は、CPU2000の制御を受けて、RAM2020、ハードディスクドライブ2040、フレキシブルディスク2090、又はCD−ROM2095等の記憶装置上に設けた送信バッファ領域等に記憶された送信データを読み出してネットワークへと送信し、もしくは、ネットワークから受信した受信データを記憶装置上に設けた受信バッファ領域等へと書き込む。このように、通信インターフェイス2030は、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)方式により記憶装置との間で送受信データを転送してもよく、これに代えて、CPU2000が転送元の記憶装置又は通信インターフェイス2030からデータを読み出し、転送先の通信インターフェイス2030又は記憶装置へとデータを書き込むことにより送受信データを転送してもよい。
また、CPU2000は、ハードディスクドライブ2040、CD−ROMドライブ2060(CD−ROM2095)、フレキシブルディスク・ドライブ2050(フレキシブルディスク2090)等の外部記憶装置に格納されたファイルまたはデータベース等の中から、全部または必要な部分をDMA転送等によりRAM2020へと読み込ませ、RAM2020上のデータに対して各種の処理を行う。そして、CPU2000は、処理を終えたデータを、DMA転送等により外部記憶装置へと書き戻す。このような処理において、RAM2020は、外部記憶装置の内容を一時的に保持するものとみなせるから、本実施形態においてはRAM2020および外部記憶装置等をメモリ、記憶部、または記憶装置等と総称する。本実施形態における各種のプログラム、データ、テーブル、データベース等の各種の情報は、このような記憶装置上に格納されて、情報処理の対象となる。なお、CPU2000は、RAM2020の一部をキャッシュメモリに保持し、キャッシュメモリ上で読み書きを行うこともできる。このような形態においても、キャッシュメモリはRAM2020の機能の一部を担うから、本実施形態においては、区別して示す場合を除き、キャッシュメモリもRAM2020、メモリ、及び/又は記憶装置に含まれるものとする。
また、CPU2000は、RAM2020から読み出したデータに対して、プログラムの命令列により指定された、本実施形態中に記載した各種の演算、情報の加工、条件判断、情報の検索・置換等を含む各種の処理を行い、RAM2020へと書き戻す。例えば、CPU2000は、条件判断を行う場合においては、本実施形態において示した各種の変数が、他の変数または定数と比較して、大きい、小さい、以上、以下、等しい等の条件を満たすかどうかを判断し、条件が成立した場合(又は不成立であった場合)に、異なる命令列へと分岐し、またはサブルーチンを呼び出す。
また、CPU2000は、記憶装置内のファイルまたはデータベース等に格納された情報を検索することができる。例えば、第1属性の属性値に対し第2属性の属性値がそれぞれ対応付けられた複数のエントリが記憶装置に格納されている場合において、CPU2000は、記憶装置に格納されている複数のエントリの中から第1属性の属性値が指定された条件と一致するエントリを検索し、そのエントリに格納されている第2属性の属性値を読み出すことにより、所定の条件を満たす第1属性に対応付けられた第2属性の属性値を得ることができる。
以上に示したプログラム又はモジュールは、外部の記録媒体に格納されてもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク2090、CD−ROM2095の他に、DVD又はCD等の光学記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、テープ媒体、ICカード等の半導体メモリ等を用いることができる。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステムに設けたハードディスク又はRAM等の記憶装置を記録媒体として使用し、ネットワークを介してプログラムをコンピュータ1900に提供してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。