以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るブレーキ駆動装置及びブレーキシステムについて説明する。
以下では、固定翼航空機に搭載され回転体としての車輪1を制動する航空機用のブレーキシステム101及びブレーキ駆動装置100について説明する。
ブレーキシステム101は、作業者によって操作される操作部としてのブレーキペダル2の操作量に応じて、ブレーキ装置10を駆動し、車輪1を制動するものである。
ブレーキシステム101は、図1に示すように、作動油(作動流体)の圧力によって伸縮作動する制動アクチュエータ11によって車輪1を制動するブレーキ装置10と、制動アクチュエータ11との間で作動油を流通させてブレーキ装置10を駆動するブレーキ駆動装置100と、を備える。
航空機の車輪1は、ホイール(図示省略)の外周にタイヤ(図示省略)が取り付けられて構成される。ホイールは、軸受(図示省略)を介して車軸(図示省略)に取り付けられる。つまり、ホイールが回転しても車軸は回転しない。
ブレーキ装置10は、車輪1と共に回転する複数の回転ディスク12と、車軸に回転不能に取り付けられる非回転ディスク13と、非回転ディスク13に押し付けられる制動ピストン14と、ブレーキ駆動装置100から給排される作動油の圧力によって制動ピストン14を非回転ディスク13に向けて進退させる制動アクチュエータ11と、を有する。ブレーキ装置10は、制動アクチュエータ11によって制動ピストン14を非回転ディスク13に押し付けることにより、回転ディスク12と非回転ディスク13とを当接させ、摩擦力によって制動力を発生する。
回転ディスク12は、所定の間隔をおいて複数枚設けられる。回転ディスク12の両面には、非回転ディスク13が設けられる。よって、非回転ディスク13もまた、所定の間隔をおいて複数枚設けられる。ブレーキ装置10では、3枚の非回転ディスク13の間に2枚の回転ディスク12が挟まれるように配置される。なお、非回転ディスク13及び回転ディスク12のそれぞれの枚数は、これに限らず、要求される制動力などに応じて任意に設定される。
回転ディスク12は、円盤状に形成される。回転ディスク12は、外周がホイールの内周に支持され、車輪1と一体として回転する。回転ディスク12は、ホイールに対して車軸方向(図1中左右方向)に変位可能に、即ちスライド可能に支持される。
非回転ディスク13は、円盤状に形成される。非回転ディスク13は、内周が車軸に支持される。非回転ディスク13は、車輪1が回転しても回転しない。非回転ディスク13は、車軸方向に変位可能に、即ちスライド可能に支持される。
制動ピストン14は、非回転ディスク13に向けて進退可能に、非回転ディスク13に対峙して設けられる。制動ピストン14は、円板状のベースプレート15に複数設けられ、車輪1の回転周方向に所定の間隔をあけて配置される。また、制動ピストン14は、ブレーキ装置10が制動力を発生しない非制動状態において、非回転ディスク13との間に隙間を持って設けられる。つまり、制動ピストン14は、非回転ディスク13との間に所定の隙間だけ離れて対峙する。なお、図1では、2つの制動ピストン14を図示しているが、制動ピストン14の個数はこれに限らず、要求される制動力等に応じて任意に設定される。
制動アクチュエータ11は、圧力室(図示省略)に作動油が給排されることにより伸縮作動する油圧アクチュエータである。制動アクチュエータ11は、作動油が圧力室に供給されると伸長作動して、ベースプレート15を介して制動ピストン14を非回転ディスク13に押し付ける。制動アクチュエータ11は、圧力室から作動油が排出されると、収縮作動して、制動ピストン14を非回転ディスク13から離間させる。
ブレーキ駆動装置100は、ハウジング20と、ハウジング20に形成される円筒状のシリンダ21と、シリンダ21の内部を第1流体圧室25及び第2流体圧室26に区画する駆動ピストン30と、駆動ピストン30をシリンダ21の内周面に沿って摺動自在に移動させるアクチュエータ40と、第1流体圧室25が拡大する方向に駆動ピストン30を付勢するリターンスプリング50と、を備える。
シリンダ21は、駆動ピストン30が収容される第1シリンダ部22と、ハウジング20の端面に開口し第1シリンダ部22の内径よりも小さい内径を有する第2シリンダ部23と、第1シリンダ部22と第2シリンダ部23との間に形成される円環状の段差部24と、を有する。
駆動ピストン30は、第1シリンダ部22の内周面に沿って、第1シリンダ部22の底部22Aと段差部24との間で摺動する。つまり、駆動ピストン30は、第1流体圧室25を拡大する方向(図1中左方向)への所定以上の移動が段差部24によって規制される。このように、段差部24は、駆動ピストン30の所定以上の移動を規制可能な規制部として機能する。なお、駆動ピストン30は、図1に示すように後述するボールナット44を介して段差部24に当接するが、段差部24に直接当接するものでもよい。
駆動ピストン30と第1シリンダ部22の底部22Aとによって区画される流体圧室が、第1流体圧室25である。第1シリンダ部22のうち駆動ピストン30と段差部24との間に形成される流体圧室と、第2シリンダ部23の内部と、が第2流体圧室26である。第1流体圧室25及び第2流体圧室26には、それぞれ作動油が充填される。
リターンスプリング50は、駆動ピストン30と第1シリンダ部22の底部22Aとの間に圧縮状態で介装される。リターンスプリング50は、第1流体圧室25が拡大する方向、言い換えれば後述するようにブレーキ装置10による制動が解除される方向に駆動ピストン30を付勢する。
ハウジング20には、第1流体圧室25に連通する第1ポート25Aと、第2流体圧室26に連通する第2ポート26Aと、ブレーキ装置10に給排される作動油が通過する給排ポート20Aと、が形成される。
第2ポート26Aは、図1に示すように、駆動ピストン30の移動が段差部24によって規制された状態であっても、駆動ピストン30及びボールナット44によって完全に塞がれないように形成される。具体的には、第2ポート26Aは、少なくとも一部が第2シリンダ部23の内周面に開口するように形成される。駆動ピストン30及びボールナット44が段差部24に向かって移動して段差部24に当接する直前では、駆動ピストン30及びボールナット44によって第2ポート26Aの一部が閉じられて第2ポート26Aの開口面積が小さくなる。この状態であっても、第2ポート26Aの少なくとも一部が第2シリンダ部23の内周面に開口することにより、第2ポート26Aの開口面積が確保され、第2ポート26Aを通じて排出される作動油に大きな抵抗が付与されることが防止される。よって、第2流体圧室26内の作動油が第2ポート26Aを通じてスムーズに排出される。
給排ポート20Aは、給排通路としての油圧配管16を通じてブレーキ装置10における制動アクチュエータ11の圧力室に連通する。
アクチュエータ40は、ハウジング20に取り付けられる電動モータ41と、電動モータ41の回転を駆動ピストン30の直線運動に変換するボールねじ機構42と、を有する。
電動モータ41は、電力が供給されることにより、出力軸(図示省略)が回転する。電動モータ41は、出力軸の回転を許容及び規制する保持ブレーキ41Aを有する。
ボールねじ機構42は、電動モータ41の出力軸(図示省略)に連結され第1シリンダ部22及び第2シリンダ部23にわたって挿入されるボールねじ43と、ボールねじ43に螺合すると共に駆動ピストン30に固定されるボールナット44と、を有する。電動モータ41に電力が供給され出力軸が回転すると、ボールねじ43が出力軸と共に回転する。ボールねじ43の回転により、その回転方向に応じてボールねじ43の軸方向にボールナット44が直線運動する。よって、電動モータ41を回転させることで、駆動ピストン30が第1シリンダ部22の内周面に沿って直線運動する。
ブレーキ駆動装置100は、作動油を蓄える貯留部としてのアキュムレータ51と、第1流体圧室25とブレーキ装置10との間で作動油を流通させる第1通路60と、第2流体圧室26とアキュムレータ51との間で作動油を流通させる第2通路61と、をさらに備える。
アキュムレータ51は、内部に封入されるガス圧によって、作動油を蓄圧しながら蓄える。アキュムレータ51は、ハウジング20内部に設けられる。なお、貯留部は、作動油を蓄圧して貯留するアキュムレータ51に限らず、蓄圧せずに貯留するリザーバやタンクでもよい。
第1通路60は、第1ポート25Aと給排ポート20Aとを連通して、両者の間で作動油を流通させる。第1流体圧室25は、第1ポート25A、第1通路60、給排ポート20A、及び油圧配管16を通じて、制動アクチュエータ11の圧力室に連通する。
また、ブレーキ駆動装置100は、それぞれ第1通路60と第2通路61とを接続する接続通路62及びリリーフ通路63と、接続通路62に設けられ第2通路61から第1通路60へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁52と、リリーフ通路63に設けられ第1通路60内の圧力が開弁圧を超えると開弁して第2通路61に作動油を逃がすリリーフ弁53と、をさらに備える。
接続通路62及びリリーフ通路63は、それぞれハウジング20に形成される。また、逆止弁52及びリリーフ弁53は、それぞれハウジング20内に設けられる。このように、アキュムレータ51、逆止弁52、及びリリーフ弁53は、ハウジング20に内蔵されるものであるが、ハウジング20に外付けされるものでもよい。
ブレーキ駆動装置100に接続通路62及び逆止弁52が設けられることにより、第1流体圧室25及び第1通路60内の作動油が不足した場合に、接続通路62を通じてアキュムレータ51から作動油が補充される。よって、第1流体圧室25及び第1通路60内での負圧の発生を防止することができる。
ブレーキシステム101は、車輪1の回転速度を検出する回転検出器としての回転センサ70と、第1流体圧室25の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ71と、作業者によるブレーキペダル2の操作量を検出する操作量検出器としての操作量センサ72と、操作量センサ72の検出結果に応じた制動量を発揮するように、回転センサ70及び圧力センサ71の検出結果に基づいてブレーキ駆動装置100のアクチュエータ40を制御するコントローラ80と、をさらに備える。
回転センサ70は、車輪1に取り付けられ、車輪1の回転速度を検出する。回転センサ70の検出結果は、コントローラ80に送信される。回転センサ70によって車輪1の回転速度を検出することにより、車輪1がロックするなどの不具合を検知することができる。
圧力センサ71は、ブレーキ駆動装置100のハウジング20に取り付けられ、第1流体圧室25内の圧力を検出する。圧力センサ71の検出結果は、コントローラ80に送信される。
操作量センサ72は、作業者によって操作されるブレーキペダル2に設けられ、ブレーキペダル2の操作量を検出する。操作量センサ72の検出結果は、コントローラ80に送信される。
コントローラ80は、作業者によるブレーキペダル2の操作量に応じた所望の制動力を発揮するように、電動モータ41の回転を制御する。
次に、ブレーキシステム101およびブレーキ駆動装置100の作動について説明する。
以下では、第1流体圧室25を収縮する駆動ピストン30の移動方向(図1中右方向)を「制動方向」、第1流体圧室25を拡大する駆動ピストン30の移動方向(図1中左方向)を「解除方向」と称する。また、駆動ピストン30を制動方向に移動させる電動モータ41の回転方向を「正方向」、駆動ピストン30を解除方向に移動させる電動モータ41の回転方向を「逆方向」と称する。
ブレーキペダル2の操作量がゼロである非制動状態では、図1に示すように、ボールナット44がシリンダ21の段差部24に当接する。この状態では、ブレーキ装置10の制動アクチュエータ11は最収縮状態であり、制動ピストン14は所定の隙間を持って非回転ディスク13から離間する。
非制動状態から作業者によってブレーキペダル2が踏み込まれると、コントローラ80は、操作量センサ72によって検出されるブレーキペダル2の操作量に応じて、正方向に回転するように電動モータ41に指令信号を出力する。
正方向への電動モータ41の回転に伴ってボールねじ43も回転し、図2に示すように、リターンスプリング50の付勢力に抗して制動方向に駆動ピストン30が直線運動する。これにより、第1流体圧室25から作動油が排出される。接続通路62には逆止弁52が設けられるため、第1流体圧室25から排出される作動油が接続通路62を通じて第2通路61に導かれることはない。よって、第1流体圧室25から排出された作動油は、第1ポート25A、第1通路60、給排ポート20A、及び油圧配管16を通じて、制動アクチュエータ11の圧力室に供給される。したがって、制動アクチュエータ11が伸長作動する。
制動アクチュエータ11が伸長作動すると、制動ピストン14が非回転ディスク13に向けて押し付けられる。非回転ディスク13に制動ピストン14が押し付けられることにより非回転ディスク13と回転ディスク12とが当接する。これにより、非回転ディスク13への制動ピストン14の押し付け力及び車輪1の回転速度に応じた制動力(摩擦力)が発生する。
ブレーキ装置10による制動力は、非回転ディスク13への制動ピストン14の押し付け力を調整することにより、制御される。具体的には、回転センサ70が検出する車輪1の回転速度に対して、所望の制動力を発揮するための適切な押し付け力がコントローラ80によって演算される。ブレーキ装置10による押し付け力は、制動アクチュエータ11に供給される作動油の圧力、つまり、第1流体圧室25から排出される作動油の圧力によって定められる。よって、コントローラ80は、圧力センサ71が検出する第1流体圧室25の圧力が所望の押し付け力を発揮させる圧力となるように指令信号を出力して電動モータ41を駆動する。これにより、車輪1の回転速度に対して適切な押し付け力で制動ピストン14が非回転ディスク13に押し付けられる。このようにして、作業者によるブレーキペダル2の操作量に応じた所望の制動力がブレーキ装置10により発揮される。
駆動ピストン30が制動方向に移動するのに伴い、第2流体圧室26は拡大する。第2流体圧室26が拡大すると、第2通路61及び第2ポート26Aを通じてアキュムレータ51から作動油が第2流体圧室26に供給される。このように、制動方向への駆動ピストン30の移動に伴い第2流体圧室26が拡大しても、第2流体圧室26にはアキュムレータ51から作動油が供給されるため、駆動ピストン30の移動に対する抵抗が生じない。
作業者によるブレーキペダル2の操作量が減少すると、コントローラ80は、逆方向に回転するように電動モータ41に指令信号を出力する。
逆方向への電動モータ41の回転に伴いボールねじ43も回転して、駆動ピストン30が解除方向に移動する。第1流体圧室25の拡大に伴い、制動アクチュエータ11の圧力室から作動油が排出されて第1流体圧室25に供給される。よって、制動アクチュエータ11は収縮作動する。
制動アクチュエータ11が所定のストロークだけ収縮作動すると、制動ピストン14と非回転ディスク13とが離間して、ブレーキ装置10の制動が解除される。作業者によるブレーキペダル2の操作量がゼロになると、図1に示すように、ボールナット44が段差部24に当接して駆動ピストン30の解除方向へのそれ以上の移動が規制される。この際、制動アクチュエータ11は、最収縮状態となる。これにより、制動ピストン14が非回転ディスク13から所定の隙間を空けるように離間する。
駆動ピストン30が解除方向に移動するのに伴い、第2流体圧室26が収縮して、第2流体圧室26から作動油が排出される。第2流体圧室26から排出される作動油は、アキュムレータ51に貯留される。
以上のように、ブレーキ駆動装置100は、駆動ピストン30の移動に伴い第1流体圧室25とブレーキ装置10における制動アクチュエータ11の圧力室との間で作動油を流通させることにより、ブレーキ装置10を制動及び解除するように駆動する。ブレーキシステム101は、作業者によるブレーキペダル2の操作量に応じてブレーキ駆動装置100を駆動することにより、ブレーキ装置10によって所望の制動力を発生する。
ここで、第2流体圧室が気体を密閉した気室である場合には、駆動ピストンを制動方向に移動させると、第2流体圧室は容積が拡大して圧力が低下する。このような圧力低下は、ブレーキ装置によって車輪を制動する際の駆動ピストンの移動の抵抗となり、ブレーキ装置の駆動にエネルギロスが発生する。
また、駆動ピストンを解除方向に移動させてブレーキ装置による制動を解除するためには、第2流体圧室を収縮させて内部の気体を圧縮しなければならない。第2流体圧室に作動油が浸入して気室が占める容積が減少すると、その分気体を圧縮しなければならず、駆動ピストンを解除方向に移動させる場合にも抵抗が生じる。第2流体圧室への作動油の浸入量が多いと、ブレーキ装置の制動を解除するために必要な気体の圧縮量が大きくなり、駆動ピストンを充分に移動させることができずに、ブレーキ装置10を完全に解除できないおそれもある。
このような問題を防止するためには、ハウジングの表面に開口し第2流体圧室26に連通する穴を形成して、第2流体圧室26を大気解放することも考えられる。しかしながら、この場合には、第1流体圧室内の作動油が第2流体圧室に侵入すると、穴を通じてハウジングの外部にまで作動油が漏れ出すおそれがある。
これに対し、ブレーキ駆動装置100の第1流体圧室25及び第2流体圧室26には、駆動ピストン30の移動による拡縮に伴いそれぞれ作動油が給排される。このため、駆動ピストン30の移動に伴い第1流体圧室25及び第2流体圧室26が拡大しても、駆動ピストン30の移動に対する抵抗は生じない。したがって、ブレーキ駆動装置100におけるエネルギロスを低減することができる。
また、ブレーキ装置10を解除する際にも気体による抵抗が生じないため、気体を圧縮する抵抗によってブレーキ装置10が完全に解除できなくなるおそれもない。また、ハウジング20の表面に開口する穴を形成する必要もないため、穴を通じて作動油が漏れ出すおそれもない。
また、一般に、図2に示すような制動状態において、電動モータ41に電力を供給できない等の不具合が発生すると、車輪1の制動を解除できなくなるおそれがある。車輪1の制動を解除できない状態が続くと、タイヤのバーストを招くおそれがある。
これに対し、ブレーキ駆動装置100では、リターンスプリング50によって、駆動ピストン30が解除方向に付勢される。したがって、このような不具合時であっても、リターンスプリング50の付勢力により駆動ピストン30を解除方向に移動させてブレーキ装置10の制動を解除することができる。よって、電動モータ41を駆動できない不具合が発生しても、タイヤのバーストを防止することができる。
また、ボールねじ機構42ではボールねじ43とボールナット44とが相対移動する抵抗が小さいため、リターンスプリング50の付勢力が比較的小さくてもボールナット44を軸方向に移動させることができる。よって、アクチュエータ40がボールねじ機構42を有することにより、付勢力が小さい小型のリターンスプリング50を使用することができる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、ブレーキシステムが固定翼航空機の車輪1を制動するブレーキシステム101である。これに代えて、ブレーキシステムは、自動車や鉄道の車輪を制動するものでもよい。また、ブレーキシステムは、回転体としてヘリコプター(回転翼航空機)のロータを制動するものでもよい。
また、上記実施形態では、ブレーキ駆動装置100は、ブレーキ装置10を駆動する。ブレーキ駆動装置100は、ブレーキ装置10の駆動に限らず、摩擦クラッチ機構の摩擦板を駆動するクラッチ駆動装置として利用されてもよい。
また、上記実施形態では、第2ポート26Aは、少なくとも一部が第2シリンダ部23に開口する。これにより、駆動ピストン30が段差部24に当接する直前であっても、第2ポート26Aの開口面積を確保して第2流体圧室26からスムーズに作動油を排出することができる。これに代えて、第2ポート26Aは、第2シリンダ部23に開口しなくてもよい。この場合には、第2流体圧室26からスムーズに作動油を排出するために、ボールナット44や駆動ピストン30に切欠き等を形成し、駆動ピストン30が段差部24に当接した状態であっても、切欠き等を通じて第2ポート26Aと第2シリンダ部23とが連通することが望ましい。
また、上記実施形態では、アクチュエータ40は、電動モータ41とボールねじ機構42とを有する。これに代えて、駆動ピストン30を直線運動させるものであれば、アクチュエータはその他の構成であってもよい。例えば、アクチュエータ40は、ボイスコイルモータ、リニアアクチュエータ、圧電アクチュエータ等であってもよい。
また、上記実施形態では、ブレーキ駆動装置100は、接続通路62に設けられる逆止弁52と、リリーフ通路63に設けられるリリーフ弁53とを有する。接続通路62及び逆止弁52により、第1通路60から第2通路61に作動油が導かれることを防止しつつ、油漏れなどによって第1流体圧室25及び第1通路60内の作動油が不足した場合に、接続通路62を通じてアキュムレータ51から作動油を補充できる。リリーフ弁53は、第1流体圧室25、第1通路60、及び油圧配管16内の圧力が異常に上昇した場合に開弁して、異常圧力を逃がすことができる。したがって、ブレーキ駆動装置100は、接続通路62、逆止弁52、リリーフ通路63、及びリリーフ弁53を有することが望ましいが、これらを有していなくてもよい。
以上の実施形態によれば以下の効果を奏する。
ブレーキ駆動装置100では、第1流体圧室25から作動油が排出されるのに伴い、第2流体圧室26には作動油が供給される。このように、第2流体圧室26の拡大に応じて作動油が供給されることにより、第2流体圧室の圧力低下が防止され、駆動ピストン30の移動が妨げられない。したがって、ブレーキ駆動装置100のエネルギロスを低減することができる。
また、ブレーキ駆動装置100では、第1流体圧室25及び第2流体圧室26に気体が密閉されるものではないため、気体を圧縮する抵抗によってブレーキ装置10が完全に解除できなくなるおそれもない。また、気体による抵抗をなくすためにハウジング20の表面に開口する穴を形成する必要もないため、穴を通じて作動油が漏れ出すおそれもない。
また、ブレーキ駆動装置100では、アクチュエータ40の電動モータ41を駆動できない不具合時であっても、リターンスプリング50の付勢力によって駆動ピストン30が移動される。したがって、不具合時であっても、ブレーキ装置10による車輪1の制動を解除することができ、タイヤのバーストを招くことが防止される。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
車輪1を制動するブレーキ装置10を駆動するブレーキ駆動装置100は、シリンダ21と、シリンダ21内部を第1流体圧室25及び第2流体圧室26に区画する駆動ピストン30と、駆動ピストン30を第1シリンダ部22の内周面に沿って直線運動させるアクチュエータ40と、を備え、第1流体圧室25及び第2流体圧室26には、駆動ピストン30の移動に伴い作動油が給排され、駆動ピストン30の移動に伴い第1流体圧室25とブレーキ装置10との間で作動油を流通させてブレーキ装置10を駆動する。
この構成では、第1流体圧室25から作動油が排出されるのに伴い、第2流体圧室26には作動油が供給される。このように、第2流体圧室26の拡大に応じて作動油が供給されることにより、第2流体圧室の圧力低下が防止され、駆動ピストン30の移動が妨げられない。したがって、ブレーキ装置10を駆動するブレーキ駆動装置100のエネルギロスが低減される。
また、ブレーキ駆動装置100は、ブレーキ装置10による車輪1の制動が解除される方向に駆動ピストン30を付勢するリターンスプリング50をさらに備える。
この構成では、アクチュエータ40を駆動できない不具合時であっても、リターンスプリング50の付勢力によって駆動ピストン30が移動される。したがって、この構成によれば不具合時であっても、ブレーキ装置10による車輪1の制動を解除することができる。
また、ブレーキ駆動装置100は、アクチュエータ40が、電動モータ41と、電動モータ41の回転を駆動ピストン30の直線運動に変換するボールねじ機構42と、を有する。
この構成では、電動モータ41が回転することにより、ボールねじ機構42が駆動ピストン30を第1シリンダ部22の内周面に沿って直線運動させる。
また、ブレーキ駆動装置100は、作動油を蓄えるアキュムレータ51と、第1流体圧室25とブレーキ装置10との間で作動油を流通させる第1通路60と、第2流体圧室26とアキュムレータ51との間で作動油を流通させる第2通路61と、をさらに備える。
この構成では、駆動ピストン30の移動に伴い第1通路60を通じて第1流体圧室25とブレーキ装置10との間で作動油を流通させることにより、ブレーキ装置10が駆動される。駆動ピストン30の移動に伴い第2流体圧室26には第2通路61を通じてアキュムレータ51から作動油が給排されるため、第2流体圧室26の容積が拡大しても、圧力低下が防止され、駆動ピストン30の移動が妨げられない。
また、ブレーキ駆動装置100は、第1通路60と第2通路61とを接続する接続通路62と、接続通路62に設けられ第2通路61から第1通路60へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁52と、をさらに備える。
この構成によれば、第1流体圧室25及び第1通路60内の作動油が不足しても、接続通路62を通じて作動油が補充されるため、第1流体圧室25及び第1通路60内での負圧の発生を防止することができる。
ブレーキシステム101は、上記各構成のいずれか一つのブレーキ駆動装置100と、ブレーキ装置10と、車輪1の回転速度を検出する回転センサ70と、第1流体圧室25の圧力を検出する圧力センサ71と、作業者によるブレーキペダル2の操作量を検出する操作量センサ72と、操作量センサ72の検出結果に応じた制動力を発揮するように、回転センサ70及び圧力センサ71の検出結果に基づいてブレーキ駆動装置100のアクチュエータを制御するコントローラ80と、を備える。
この構成では、回転センサ70及び圧力センサ71の検出結果に基づいてブレーキ駆動装置100のアクチュエータ40をコントローラ80が制御することにより、作業者による制動操作量に応じた所望の制動力をブレーキ装置10が発揮することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。