以下、添付図面を用いて、実施形態に係る画像処理装置及び磁気共鳴イメージング装置について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置の概略ブロック図である。図1に示す磁気共鳴イメージング装置は、ガントリ10(概略断面で示す)と、これに接続された各種の関連システム構成要素(MRIシステム20)とを有する。少なくともガントリ10は、通常はシールドルーム内に配置される。図1に示すMRIシステム20の構造は、実質的に同軸の円筒形に配置された(静磁場)B0磁石12と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイル14と、大型の全身用RF(Radio Frequency)コイル(WBC(Whole Body Coil))16とを有する。この円筒形に配置される要素の横軸に沿って、患者用寝台11によって支持された患者9の身体の一部を実質的に取り囲むように、撮像ボリューム18が示される。比較的小型のアレイRFコイル(AC(Array Coil))19が、患者9の一部に連結されてもよい。本明細書では、アレイRFコイル19を使用したスキャンを受ける患者9の部位を、例えば、撮像ボリューム18内の「スキャン被検体」又は「被検体」と呼ぶ。当業者には明らかなように、表面コイル等のように、全身用RFコイルと比較して小さいコイルやアレイコイルは、特定の身体部位(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨等)に合わせて設計されることが多い。以後、そのような小型RFコイルを、アレイコイルまたはフェーズドアレイコイル(Phased Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらは、RF信号を撮像ボリューム内に送信するよう構成された少なくとも1つの送信コイルと、撮像ボリュームにおいて、上記の例における生体の一部等の被検体からのRF信号を受信するよう構成された1以上の受信コイルとを含んでもよい。
システム制御部22は、ディスプレイ24、キーボード26、およびプリンタ28に接続された入出力ポートを有する。当然のことながら、ディスプレイ24は、制御入力もできるようにタッチスクリーンタイプのものでもよい。
図1に示す磁気共鳴イメージング装置は、システム制御部22またはシステム制御部22に連結されたコンピュータを操作して、インストールされたソフトウェアプログラムに従って、パルスシーケンスに関する情報をシーケンス制御部30に供給したりシステム全体の作業を管理したりしてもよい。また、システム制御部22は、自動音声合成技術を用いて生成された音声メッセージにより、例えば息止め等のタスクを行うように患者9に指示する要素として機能してもよい。
システム制御部22はシーケンス制御部30に接続され、シーケンス制御部30は、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信機34および送受信スイッチ36(同じRFコイルが送信と受信の両方に使用される場合)を制御する。シーケンス制御部30は、MRIイメージング(核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)イメージングとしても知られている)技術を実装するための適切なMAP/MRIデータ収集プログラムコード構造38を含む。磁気共鳴イメージング技術として、例えば、パラレルイメージング等のイメージングシーケンスがある。
パルスシーケンス情報は、パルスシーケンスに従ってGx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、ならびにRF送信機34および送受信スイッチ36(同じRFコイルが送信と受信の両方に使用される場合)を操作するのに必要とされる情報を含む。そのような情報は、xコイル、yコイル、およびzコイルに印加されるパルス電流の強度、継続時間、および印加タイミングを含む。
MRIシステム20は、ディスプレイ24に送られる処理画像データを作成するために、入力をMRIデータプロセッサ42に送るRF受信機40を有する。また、MRIデータプロセッサ42は、マップ/MRI画像メモリ46ならびに画像再構成プログラムコード構造44およびプログラム記憶装置50へアクセスできるように構成される。画像再構成プログラムコード構造44およびプログラム記憶装置50は、MRI画像を再構成する制御論理回路に加えて、全身用RFコイル16とアレイRFコイル19のうち少なくとも一方からMRデータを取得する制御論理回路を有してもよい。また、MRIデータプロセッサ42は、図3に示す方法300またはその一部等の各種方法を実行して、強調されたCEST効果を利用して画像を取得するように動作する。
RF送信機34、送受信スイッチ36、およびRF受信機40は、全身用RFコイル16およびアレイRFコイル19から離れて位置するものとして図1に示されているが、実施形態によっては、それらのいずれかが、全身用RFコイル16およびアレイRFコイル19の一方または両方に近接して設置されてもよく、または、全身用RFコイル16およびアレイRFコイル19の一方または両方の表面に設置されてもよい。
また図1は、プログラム記憶装置50の一般的な説明を示す。プログラム記憶装置50では、(例えば、画像再構成のためや、グラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface:GUI)を定義しGUIへの操作者の入力を受け取るための)格納されたプログラムコード構造が、MRIシステムの各種データ処理構成要素へアクセス可能な非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納される。当業者には明らかなように、プログラム記憶装置50をセグメント化して、少なくとも一部分を、MRIシステム20の処理コンピュータのうち、通常操作においてそのような格納されたプログラムコード構造を最優先で必要とする別のコンピュータに直接接続してもよい(すなわち、システム制御部22に普通に格納したり直接接続したりするのではなく)。当業者には明らかなように、コンピュータ制御回路の構成は、1以上のコンピュータの中央処理回路(Central Processing Unit:CPU)において実行する命令を提供する、格納されたコンピュータプログラムコード構造(ソフトウェアまたはファームウェアと呼ぶこともある)だけにより実現することはできない。またコンピュータ制御回路を、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)またはプログラムゲートアレイ(Programmed Gate Array:PGA)等として構成してもよい。
実際に、当業者には明らかなように、図1は、後述する実施形態を実現するために変更された典型的なMRIシステムの、非常に大まかな概略図を示したものである。システム構成要素は様々な論理集合の「ボックス」に分割することができ、通常、多数のデジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)と、マイクロプロセッサと、専用処理回路(例えば、高速AD変換用、高速フーリエ変換用、アレイ処理用等)とを含む。これらのプロセッサの各々は、通常、クロック制御された「状態マシン」であり、物理データ処理回路は、クロックサイクル(または、所定数のクロックサイクル)毎に、ある物理状態から別の物理状態に移る。
処理回路(例えば、CPU、レジスタ、バッファ、演算装置)の物理状態が、操作過程において、あるクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連データ記憶媒体の物理状態(例えば、磁気記憶媒体内のビット記憶場所)も、このようなシステムの操作過程において、ある状態から別の状態に変換される。例えば、画像再構成処理や時としてコイル感度マップ生成処理の終わりに、物理的記憶媒体内のコンピュータ可読でアクセス可能なデータ値の記憶場所の配列は、ある初期状態(例えば、全て一様に「0」値、または全て「1」値)から新しい状態に変換され、そのような配列における物理的場所の物理状態は、最小値と最大値との間で変化して、実世界の物理的事象および物理的条件(例えば、撮像ボリューム空間内の患者9の内部物理構造)を表す。当業者には明らかなように、命令レジスタに順次読み込まれMRIシステム20の1以上のCPUによって実行されたときに、MRIシステム内で特定のシーケンスの動作状態を引き起こし遷移させる特定構造のコンピュータ制御プログラムコードと同様に、そのような格納データ値の配列は物理的構造を表し構成する。
本明細書に示す実施形態は、CEST効果(MT(Magnetization Transfer)パルスを用いることで有効になる)が診断等の用途に用いられる任意の被検体の磁気共鳴イメージングに適用し得る。スキャンプロセスの間に、ガントリ10内に位置する被検体を用い、被検体の特定の部位において核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)スピンを励起するために、全身用RFコイル16やアレイRFコイル19等の1以上のRFコイルで、被検体の選択された部位にRFパルスを送信してもよい。例えば、アレイRFコイル19は例えば生体の領域に配置される。特にその領域において核スピンを励起するために、アレイRFコイル19を用いてもよい。次に、前の励起により生成された磁気共鳴信号(例えば、エコー信号)が、1以上のRF受信コイルにより受信される。RFパルスの送信およびMR信号の受信は、同じRFコイル(例えば、RF励起パルスの送信と、対応する磁気共鳴信号の受信の両方を行うアレイRFコイル19)を用いて行ってもよく、または、異なるRFコイル(例えば、全身用RFコイル16でRFパルスを送信し、アレイRFコイル19で対応する磁気共鳴信号を受信するようにする)で行ってもよい。診断等の目的で使用される磁気共鳴イメージング画像を生成するために、処理のためのMRIデータプロセッサ42を含む処理システム等の制御システムに、受信された磁気共鳴信号に対応するデータを通信する必要がある。
MT効果(または、磁化移動コントラスト(Magnetization Transfer Contrast:MTC)効果と呼ぶことができるもの)は、例えば、MR血管造影(MR Angiography:MRA)(これに限定されない)等の用途において血液(例えば、血流)と組織との間の画像コントラストを利用する。MT効果は、自由水(バルク水とも呼ばれる)や様々な高分子等の、複数種類の核プールのNMRプロトン(例えば、水素核)間の化学交換や交差緩和に基づく。複数種類の核プールの各々は、異なる方法で束縛されたプロトンを含んでもよく、また、他の核プール内のプロトンと異なるラーモア周波数を有してもよい。
「MTパルス」は、例えば自由水および高分子において、MT効果を生じさせるRFパルスである。自由水の共鳴ピーク周波数F0を中心周波数と見なした場合、MTパルスとして作用する周波数選択的パルスを印加して、自由水の中心周波数F0から例えば500Hzだけシフトした周波数範囲が励起される(すなわち、オフレゾナンス励起)。この励起により、自由水中の原子核のNMR磁化が生じ、もし存在するなら、周波数選択的パルスにより選択された他の高分子中の原子核のNMR磁化も生じる。時間の経過とともに、自由水の原子核のNMR磁化は高分子中の原子核のNMR磁化へと移動する。この移動の結果、自由水から生じたNMR信号は低下する。MT効果、化学交換や、自由水と高分子との間の交差緩和が発生する領域と、MT効果が発生しない(または、かなり少ない程度で発生する)別の領域との間で、信号の差が生じる。これらの差を利用して、例えば、血流と、組織等の関心のある領域または物体との間のコントラストが強調され観察される。
実施形態によっては、MRIデータ収集は、(a)MTパルスシーケンスと(b)MRイメージングパルスシーケンスとを有する合成パルスシーケンスを印加する工程を含む。実施形態におけるイメージングパルスシーケンスとして、2次元(Two-Dimensional:2D)スキャンパルスシーケンスまたは3次元(Three-Dimensional:3D)スキャンパルスシーケンスを適用することができる。使用可能な磁気共鳴イメージングパルスシーケンスとして、スピンエコー(Spin Echo:SE)シーケンス、傾斜磁場エコー(Field Gradient Echo:FE)シーケンス、高速SE(Fast SE:FSE)シーケンス、高速非対称SE(Fast Asymmetric SE:FASE)シーケンス等が挙げられる。
磁気共鳴イメージングシーケンスの前に、MTパルスが印加される。また通常、イメージングシーケンス(メインシーケンスと呼ぶこともある)の前に、MTパルスとして機能するRFパルスを含むプレシーケンスも印加される。プレシーケンスは、任意の1以上の軸方向(例えば、スライス方向、位相エンコード方向、および読み出し方向)に印加される傾斜磁場スポイラーパルスを含んでもよい。
MTパルスは、スライス選択的に印加してもよく、または非選択的に印加してもよい。MTパルスは、通常、例えば、先端を切り取ったsinc関数の形状を有する包絡線で個別に形成される、NMR励起用のRFパルスで構成される。またMTパルスは、ガウス関数に基づく包絡線のRFパルスで構成されてもよい。MTパルスは、例えば、シンク関数で変調することにより形成され、RFパルスは、それぞれ所望の周波数オフセットを有する。また、MTパルスとして、特許文献1のような二項パルスを用いてもよい。イメージングサイクルの間のパルスシーケンスにおいて印加されるMTパルスの数は、10パルスや40パルス等の数である。
スキャン中の被検体の領域にMTパルスを印加すると、選択された周波数において下垂する束縛プロトンとその領域内の自由水プロトンとの間にMT効果が発生する。MT効果によって、選択された束縛プロトンからの信号は、自由水プロトンの信号よりも大きい量だけ減少し、その結果、画像内の対応する領域間のコントラストが増大する。
化学交換飽和移動(Chemical Exchange Saturation Transfer:CEST)は、MTCと同様に、磁気共鳴イメージングにおけるコントラストを改善するための別の技術である。CEST効果を利用するイメージングにおいて、アミド(−NH)、ヒドロキシ(−OH)、アミン(−NH2)等の高分子中の交換可能なプロトンに対して選択的に照射したRFパルスの影響は、化学交換の結果水信号が徐々に飽和していくことを通じて検出することができる。CESTでは、MTCが用いられる半固体においてではなく、プロトンが可動な上記化合物において、磁化の移動が観察される。MTCと同様に、CESTには、化学交換と双極性交差緩和の両方の寄与があるが、交換が速ければ多くの場合、後者を無視することができる。MTCとは異なり、CEST撮像では、関心のあるプロトンの選択的照射を可能にするために、磁気共鳴の時間スケールで十分に緩やかな交換が必要である。
上述のように、自由水プロトンとは異なる周波数で共鳴する交換可能高分子プロトンを飽和させ、溶質プロトンが自由水プロトンと交換される際にその飽和磁化を交換可能高分子プロトンから自由水プロトンへと移動させることによって、MT効果およびCEST効果を引き起こすことができる。自由水信号は、磁化の移動により減衰する。しかし、自由水プールは一般的に高分子プールよりもはるかに大きいため、MT効果/CEST効果による水信号の減衰を視認可能とするには、通常、1よりも多いパルス、そしてできる限り多い数のパルス、例えば、40MTパルスのシーケンス等の複数のパルスを用いて、長い継続時間(約1〜3秒)で飽和を実現すべきである。
MT効果やCEST効果の効率は、通常、結果的に得られたMT効果またはCEST効果による信号または磁化の低減の大きさで測ることができる。CEST効果により生じた周波数依存飽和効果は、飽和なしの信号により規格化された水飽和度をプロットすることにより、飽和周波数(印加したRFパルスの周波数)の関数として視覚化してもよい。これにより、「Zスペクトル」が得られる。Zスペクトルは、水周波数F0周辺の左右対称の直接飽和により特徴づけられる(換言すると、Zスペクトルは、0ppm(parts per million)を水周波数に割り当てて示される)。
RFパルスの印加毎に、ヒドロキシプロトン、アミンプロトン、およびアミドプロトンの各信号を別々に高めることにより、CEST効果を生じさせてもよい。例えば、ヒドロキシプロトン(1ppm)、アミンプロトン(約2ppm)、およびアミドプロトン(約3.5ppm)の特定周波数を照射することにより、CEST効果を得ることができる。ここで、ppm値で表した周波数は、自由水周波数F0を基準として指定される。サンプルのZスペクトルを解析するために、−6ppm〜+6ppmの範囲、またはその部分範囲の従来のMTパルスを印加してもよい。
しかし、単一の周波数での励起により得られるCEST効果は、比較的小さい。例えば、正常組織において、CEST効果による信号利得の効果は、所定周波数での正常組織については約2〜3%である。
また、従来のシステムでは、多くの場合MTRasymスペクトルに、アミンプロトン、アミドプロトン、およびヒドロキシプロトンの各効果が混在して表示される。これら異なるプロトンの効果が混在することにより、特定種類のプロトンまたは特定基の種類のプロトンに起因するCEST効果の描写が妨げられ、これにより正確な診断が妨げられる。また、従来のシステムでは、CEST画像には、例えば、(3.5ppmの)アミド、(2ppmの)アミン、および/または(1ppmの)ヒドロキシのような隣接する信号の効果により、データが不明瞭になる。加えて、従来のシステムでは、CEST画像には、病変部での異常だけでなく、正常組織にも異常がデータが表れてしまうこともあった。
ここで、CEST撮像、CESTスペクトル及びMTRasymについて再度簡単に要約すると、CEST撮像は、バルク水(自由水)プロトンと異なる周波数で共鳴する交換可能な溶質プロトンが、RFパルスの印加により選択的に飽和されることを利用して行われる。飽和した溶質プロトンは、速やかに自由水プロトンに移行するので、十分な時間が経過したのち、自由水のプロトン信号Ssatは、RFパルス印加直後に比べて減少する。自由水のプロトン信号の減少効果は、印加するRFパルスの周波数に依存する。周波数依存する、自由水のプロトン信号の減少効果は、Ssat(Δω)/S0(Δω)をプロットすることで視覚化できる。ここで、S0は飽和がない場合の信号、Δωは、印加するRFパルスの周波数の、自由水の共鳴周波数からのオフセットである。Ssat(Δω)/S0(Δω)をZ−スペクトルあるいはCESTスペクトルと呼ぶ。
ところで、CEST効果、すなわち自由水プロトンと異なるプロトンが飽和されることによる間接効果は、自由水の直接飽和効果に比べて小さい。また、自由水の直接飽和効果は、自由水の共鳴周波数0ppmを中心として、おおむね左右に対称な周波数依存性を示す。このような性質を利用して、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置のMRIデータプロセッサ42は、一例として、MTRasym(Asymmetric Magnetization Transfer)、すなわちΔωの関数として、MTRasym(Δω)=(Ssat(−Δω)−Ssat(Δω))/S0を算出する。MTRasymの値を周波数についてプロットしたMTRasymスペクトルは、自由水の直接飽和効果が除去され、かつCEST効果の大きさを反映されたスペクトルになっている。
本明細書に開示する実施形態により、CEST効果を表す画像のコントラストを向上することが可能になる。
図1に示す磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部30と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部と、表示部としてのディスプレイ24と、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部とを備える。シーケンス制御部30は、MT(Magnetic transfer)パルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、複数の周波数それぞれにおけるCEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像を生成する。ディスプレイ24は、複数の第1の画像のうち少なくとも1つの画像を表示する。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数の値を取得する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、受付部が取得した周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
実施形態によっては、特定プロトンのCEST効果を明確に識別することができる強調CEST画像を出力するために、図2について説明するように、MTRasym(Asymmetric Magnetization Transfer Ratio)スペクトルを用いても良い。
この場合、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部(又は、第1生成部1002A)は、CEST効果の大きさを表す量として、MTRasymの値を用いる。
図2は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理を示すフローチャートである。操作202〜218は、図1に示すMRIデータプロセッサ42、システム制御部22、および/またはシーケンス制御部30により実行および/または制御されてもよい。
CEST解析ルーチンに入ると、解析対象の被検体(例えば、患者9)およびMRIシステムが、スキャンのために準備される(ステップS202)。具体的には、システム制御部22及びシーケンス制御部30は、データ収集のためにMRIシステムを設定する。準備は、シーケンス制御部30が、被検体に印加するパルスシーケンスを選択する工程を含んでもよい。選択されたパルスシーケンスは、MRイメージングパルスシーケンスの前に印加するMTパルスシーケンスを含む。実施形態によっては、シーケンス制御部30は、事前に格納された複数の合成パルスシーケンスから、所望の合成パルスシーケンスを選択してもよい。実施形態によっては、システム制御部22を通じてユーザから受け付けられた入力をシーケンス制御部30に送信し、シーケンス制御部30が送信された情報を受け付けることで、ユーザが、パルスシーケンスを指定したり、または事前に格納されたパルスシーケンスの一部を修正したりすることが可能となる。
MRIデータプロセッサ42は、化学交換飽和移動(CEST)解析パラメータを設定する(ステップ204)。実施形態により設定できるCEST解析パラメータは、複数のCEST画像を表示する周波数範囲、目標周波数に対応する強調CEST画像を生成するためにCEST効果を積分する(または平均する、または合計する)範囲、CEST効果データを収集するための周波数間隔等を含んでもよい。
シーケンス制御部30は、ガントリ10内の被検体の撮像ボリュームに、選択した(または設定した)磁化移動(MT)パルスシーケンスを印加する(ステップ206 前段)。一実施形態によると、シーケンス制御部30は、各パルスが約100msの継続時間を有するMTパルスシーケンスを、連続的に約2秒間送信する。当業者には明らかなように、シーケンス制御部30は、特定の状況に対して望ましいように、または必要なように、MTパルスの数、MTパルスの継続時間、送信のシーケンスおよび時間を調整してもよい。シーケンス制御部30は、続いてイメージングパルスシーケンスを印加する(ステップ206 後段)。イメージングパルスシーケンスは、通常、例えば、NMRスピンエコーRF応答の生成を刺激するための90°RF励起章動パルス等の、1以上のRF励起パルスを含んでもよい。
シーケンス制御部30は、RF受信機40を通じて、イメージングパルスに応答する核磁気共鳴(NMR)スピンエコーRF共鳴データを、MR k空間データとして収集する(ステップ208)。水周波数(例えば、+6ppmおよび−6ppm)のいずれか一方の側の所望の周波数オフセットのためのNMRスピンエコーデータを取得するために、ステップ206〜208が繰り返される。シーケンス制御部30は、1つのオフセット周波数と別のオフセット周波数との間でパルスシーケンスを繰り返す前に、6〜9秒等の緩和間隔を入れてもよい。さらに、シーケンス制御部30は、十分なZスペクトルデータを収集するために、複数のスキャン周波数間隔(例えば、下端値から上端値までの0.1ppm毎)で操作206〜208を繰り返してもよい。
このように、シーケンス制御部30は、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。
MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、シーケンス制御部30がRF受信機40を通じて収集したデータを基に、CEST画像を計算する(ステップ210)。第1生成部は、一例として、CEST画像の計算を、特定周波数について、(a)特定周波数からの正のオフセットに起因する信号と、(b)同じ特定周波数からの負のオフセットに起因する信号との差分を取る計算を用いて行う。第1生成部は、計算されたCEST画像は、CEST効果によるコントラストの強調を含むことから、シーケンス制御部30がRF受信機40を通じて収集したデータ(生データ)と比較して、MT効果および/またはCEST効果に影響される特定領域内のコントラストが改善された、空間領域におけるMRI画像を得る。
実施形態によっては、第1生成部は、設定可能な周波数範囲について、その範囲内で設定可能な周波数間隔で、CEST画像を計算してもよい。一実施形態では、第1生成部は、例えば、1ppm〜6ppmの範囲内の周波数について、その範囲内で0.1ppmの増分毎に、CEST画像(例えば、1、1.1、1.2、1.3、・・・、5.8、5.9、6ppmにおけるCEST画像)を計算してもよい。MRIデータプロセッサ42は、次のアクセスおよび使用のために、計算したCEST画像をメモリに格納してもよい。
このように、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、複数の周波数それぞれにおけるCEST効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像(例えば、上述のCEST画像)を生成する。前述したように、第1生成部は、例えば、CEST効果の大きさを表す量として、MTRasymの値を用いる。
ディスプレイ24は、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部が生成したCEST画像のデータをMRIデータプロセッサ42から受け取り、複数の周波数におけるCEST画像(例えば、後述する図3におけるCEST画像)を表示する(ステップ212)。ディスプレイ24は、設定可能な周波数範囲内(表示コントラスト範囲304内)の通常の設定可能な間隔におけるCEST画像として、表示されたこれら複数のCEST画像を選択してもよい。ディスプレイ24は、例えば、1ppmと4.5ppmとの間の0.5ppm毎のCEST画像を、図3に示すように表示してもよい。CEST画像が表示される周波数範囲と、表示のために選択されるCEST画像間の周波数間隔とを、設定で変えられるようにしてもよい。ディスプレイ24は、CEST画像が表示される範囲を、より大きな全範囲の部分範囲(例えば、0.5ppm間隔で1〜4ppm)としてもよく、CEST画像を計算するステップ210について上述した範囲(例えば、0.1ppm間隔で1〜6ppm)としてもよい。ディスプレイ24は、CEST画像の表示や表示に関する設定等を、例えば、図4〜6に示すようなGUIを用いて行っても良い。
このように、ディスプレイ24は、複数の第1の画像(例えば、上述のCEST画像)のうち少なくとも1つの画像を表示する(ステップ212)。
MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、表示されたCEST画像に基づき、目標周波数の選択を取得する(ステップ214)。例えば、表示したCEST画像302から1つをユーザが選択する等、ユーザ入力に基づいて、目標周波数を識別してもよい。一例として、ディスプレイ24は、GUI(Graphical User Interface)上のマップ表示領域に少なくとも1つの画像を表示し、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、当該少なくとも1つの画像のうち1以上の画像をユーザが指定する操作を入力操作として受け付けることで、指定された当該1以上の画像から算出された周波数の値を取得する。一実施形態によると、表示された複数のCEST画像をユーザが視覚的に解析して、最高のCESTを有する画像(例えば、最大のCEST効果を有する画像)を識別してもよく、また、対応する周波数を、所望の目標周波数として選択かつ識別してもよい。例えば、図3において、3.5ppmに対応するCEST画像(右側2段目の画像)を最高のCESTを有する画像として、ユーザが識別してもよい。
このように、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数の値を取得する。
また、ディスプレイ24は、周波数帯域を指定するための入力を受け付けるGUIを備えてもよい。
MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、ステップ214でMRIデータプロセッサに含まれる受付部が取得した目標周波数の選択に基づき、強調された強調CEST画像を生成する(ステップ216)。
具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が取得した周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。より具体的には、一例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、当該推定値を、周波数帯域で、積分することにより、または平均することにより、または合計することにより第2の画像(強調CEST画像)を生成する。ここで、受付部が取得した周波数帯域は、例えば、印加された複数の周波数のMTパルスの周波数帯域より狭い周波数帯域である。
まずはじめに、第2生成部が第2の画像を生成するにあたって、データ点の推定を行わないケースについて説明する。例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が取得した周波数が「3.5ppm」で、受付部が取得した周波数を含む周波数帯域が、「3.0ppm〜4.0ppm」、第1の画像の信号の大きさが既知である周波数が、「3.0ppm、3.25ppm、3.5ppm、3.75ppm、4.0ppm」である場合を考える。
第1の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、第1の画像の信号の大きさの推定値を、周波数帯域で、平均することにより、第2の画像を生成する。すなわち、周波数がxのときの第1の画像の信号の大きさをf(x)とすると、(f(3.0)+f(3.25)+f(3.5)+f(3.75)+f(4.0))/5の値を算出することにより、第2の画像を生成する。
第2の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、第1の画像の信号の大きさの推定値を、周波数帯域で、合計することにより、第2の画像を生成する。すなわち、f(3.0)+f(3.25)+f(3.5)+f(3.75)+f(4.0)の値を算出することにより、第2の画像を生成する。
第3の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、第1の画像の信号の大きさの推定値を、周波数帯域で積分することにより、第2の画像を生成する。一例として、第2生成部は、被積分範囲を適切な多項式で補間(ラグランジュ補間)して、当該多項式を、周波数帯域で積分する。例えば、台形公式、シンプソンの公式、シンプソンの3/8公式、ブールの公式、或いは、高次のニュートン・コーツ法が知られている。例えば、第2生成部は、4次のニュートン・コーツ法を利用することにより、(4.0−3.0)/90×(7×f(3.0)+32×f(3.25)+12×f(3.5)+32×f(3.75)+7×f(4.0))の値を算出することにより、第2の画像を生成する。
第4の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部が第2の画像を生成するにあたって、いったんデータの補間を行い、補間されたデータを用いて、第2の画像を生成する例について説明する。今、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が取得した周波数が、「1.25ppm」、当該周波数を含む周波数帯域が、「1ppm〜1.5ppm」の場合を考える。また、周波数帯域においてデータの値を推定すべき周波数が、「1ppm、1.01ppm、1.02ppm、…1.49ppm、1.5ppm」であり、第1の画像のデータ点として、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm、1.3ppm、1.4ppm、1.5ppm」が利用可能であるとする。
このとき、第2生成部は、まず初めに、区間「1ppm〜1.5ppm」におけるデータ点を、第1の画像のデータ点「1ppm、1.1ppm、1.2ppm、1.3ppm、1.4ppm、1.5ppm」の6つのデータ点をもとに、例えばスプライン補間する。すなわち、第2生成部は、「1.0+(n−1)×0.1ppm〜1.1+(n−1)×0.1ppm(n=1〜5)」の5つの区間における推定値を算出するための5つの三次曲線であって、それらが端点で連続にかつ滑らかに接続されるような5つの三次曲線を、所定のアルゴリズムに従って算出する。
算出された三次曲線の組を用いることにより、第2生成部は、周波数帯域「1ppm〜1.5ppm」に含まれる任意の被積分区間において、第1の画像の信号の大きさの推定値の積分を実行することができる。例えば、被積分区間が、「1.18ppm〜1.29ppm」であった場合を考える。この時、第2生成部は、周波数帯域「1.1ppm〜1.2ppm」の区間における推定を算出するための三次曲線を、「1.18ppm〜1.2ppm」の被積分区間で積分し、周波数帯域「1.2ppm〜1.3ppm」の区間における推定を算出するための三次曲線を被積分帯域「1.2ppm〜1.29ppm」で積分したものに足し合わせればよい。このようにして、第2生成部は、第2の画像を生成する。
また、補間の例としては、3次スプライン補間を用いる例について説明したが、実施形態はこれに限られない。対象となるデータの性質に応じて、例えば、線形補間、対数補間、多項式補間、他の次数のスプライン補間、ラグランジュ補間などを行っても良いし、補間ではなく外挿を行ってもよい。
このようにしてMRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部が生成した第2の画像(強調CEST画像)は、一般的に、第1の画像(CEST画像)と比較して、コントラストが向上し、SNR(Signal to Noise Ratio)が改善された画像になる。これは次の理由による。すなわち、第1に、CEST効果そのものが、自由水の信号強度と比較して2〜3%と非常に小さい効果であり、MTRasymスペクトルを生成する際に、二つの大きい信号のわずかな差分に着目するので、第1の画像には、ノイズがのりやすい。第2に、MTRasymスペクトルには、着目する溶媒プロトン、例えばアミド基以外の様々なプロセスの寄与が含まれ、例えば病的でない組織であるのにもかかわらず、病的な組織と同じようなMTRasymスペクトルを示す、すなわち偽陽性が生じやすい。
このような状況において、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、例えば所定の周波数帯域で第1の画像を周波数に関して積分することで(あるいは和、平均を取ることで)、前述のノイズを減少させることが可能になる。例えば、前述の第1の点について、例えば、第2生成部が、第1の画像のデータ点をN個(N>1)使用して周波数に関して積分して第2の画像を生成する場合を考える。信号はおおよそNに比例して増加するのに対して、ノイズは高々Nの平方根に比例してしか増加しないから、Nが大きい時には相対的にSNRが高くなり、第2生成部が生成する第2の画像のコントラストは増強される。また、前述の第2の点について、意図せぬスペクトルが混入するためMTRasymのSNRが低下した場合に、第2生成部が、混入したスペクトルの帯域幅より大きい周波数帯域幅で積分を取って第2の画像を生成することにより、混入の効果を低減させ、コントラストを増強させることができる。
しかしながら、周波数帯域幅等、コントラストが最も増強するようなパラメータがどのような値になるのかは、撮像の細かい条件や被検体の詳細などに応じて異なり、最適なパラメータを事前に予測決定することは難しい。したがって、出力された画像を見ながら人間が、第2の画像を生成するためのパラメータを決定する必要が生じる。従って、表示部に画像を出力して、その結果に応じて、人間から最適パラメータの入力を受け付けるGUIの存在が望まれる。本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、かかる状況を鑑みたものである。
以上のように、一実施形態によると、第2生成部は、目標周波数を含む範囲の周波数(例えば、0.1ppm間隔で3.0〜4.0ppm)についてのCEST画像をまとめて(例えば、画素毎に)平均し、強調CEST画像を生成する。別の実施形態では、第2生成部は、目標周波数を含む指定範囲内の周波数についてのCEST画像をまとめて(例えば、画素毎に)合計し、強調CEST画像を生成する。さらに別の実施形態では、第2生成部は、目標周波数を含む指定範囲内の周波数についてのCEST画像の積分(例えば、画素毎に再度計算される)を行い、強調CEST画像を生成する。
MRIデータプロセッサ42は、ディスプレイ24に、第2生成部がステップ216で生成した強調CEST画像を出力する(ステップ218)。MRIデータプロセッサ42は、強調CEST画像を、GUIや、別のディスプレイや、プリンタ等の他の出力装置に出力してもよい。実施形態によっては、MRIデータプロセッサ42は、画像を、さらなる処理のためにメモリに出力してもよく、または遠隔位置に送信してもよい。
図3は、図2のステップ212において表示される画像の一例である。
一例として、ディスプレイ24は、複数の第1の画像を同時に表示する。例えば、例示的ディスプレイ画面302において、ディスプレイ24は、1ppm〜4ppmの範囲の7つのCEST画像を、同時に表示する。ディスプレイ24は、(例えば、0.1ppmといったより短い間隔で、データは取得または補間されているかもしれないが)その範囲内で周波数間隔0.5ppm毎に画像を表示する。このように、ディスプレイ24は、最上段の左から、1ppm、1.5ppm、2ppmの各CEST画像を表示する。ディスプレイ24は、2段目の左から右に、2.5ppm、3ppm、3.5ppmの各画像を表示する。ディスプレイ24は、最下段には、4ppmの画像を表示する。
実施形態によっては、ディスプレイ24は、CEST画像をディスプレイ画面302にカラーで表示し、種々の色がどのように信号レベル(すなわち、信号強度)に対応しているかについての視覚ガイドを便利よく提供するガイドバンド304も表示する。CEST画像において、信号レベルは、コントラストのレベルに対応する。
ディスプレイ24が、1つの画面に(例えば、全ての収集したデータセットの間隔よりも比較的大きい間隔で)複数のCEST画像を同時に表示することで、ユーザ(例えば、操作者)は、より高い精度かつ短い時間で、ピークコントラストと見られるものを有する画像を、素早く識別できるようになる。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザによってピーク信号を有する画像として識別された選択画像に対応するオフセット周波数を、強調CEST出力画像を生成するための最適な「目標」周波数として決定してもよい(そして、最終出力される強調CEST画像において実際に最適なCESTデータセットがより確実に用いられるように、指定範囲内の目標周波数により小さいオフセットにおけるCEST画像データの組み合わせとして、この強調CEST画像を生成してもよい)。
また、ディスプレイ24は、アミド基に対応する周波数に係る画像及びアミン基に対応する周波数に係る画像を、複数の第1の画像として表示してもよい。このように、ディスプレイ24が複数のオフセット周波数におけるCEST画像を表示することにより、アミドが支配的なCESTにおける関心領域と、アミンが支配的なCESTにおける領域とを、ユーザが比較できる等の別の利点がもたらされる。例えば、図3において、2ppmにおけるアミンのCEST画像と3.5ppmにおけるアミドのCEST画像との比較により、臨床的支援のための、アミドが支配的な腫瘍とアミンが支配的な腫瘍との間の臨床的な区別が可能になる。また、ディスプレイ24は、ヒドロキシル基に対応する周波数に係る画像を、複数の第1の画像として更に表示してもよい。
図4は、第1の実施形態に係る、グラフィカルユーザインタフェース(Graphical User Interface:GUI)の一例である。GUI400は、CEST画像を表示するための領域402と、表示されたCEST画像を制御するための制御ツールとを備える。
制御ツールは、開始周波数から終了周波数までの範囲にわたるスクロールバー404と、開始周波数用の目盛と終了周波数用の目盛との間の任意の点にユーザが動かすことができるスライダ406とを含む。示した実施形態では、2ppmの開始周波数と3.5ppmの終了周波数との間(実施形態によっては、開始周波数および終了周波数も含まれる)の周波数を選ぶために、スクロールバー404に沿ってスライダ406を動かすことができる。
実施形態によっては、MRIデータプロセッサ42は、GUI400用に開始周波数および終了周波数を設定してもよい。示した実施形態では、入力領域408により、ユーザが、開始周波数入力フィールド410に所望の開始周波数を指定し、終了周波数入力フィールド412に所望の終了周波数を指定できるようになる。ユーザによってフィールド410およびフィールド412に与えられた値は、設定されたデフォルト値またはシステムによって自動的に決定されたデフォルト値のいずれのデフォルト値であっても、それに優先してもよい。ディスプレイ24は、フィールド410およびフィールド412で指定された値に基づき、スクロールバー404を自動的に再設定してもよい。このように、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24に表示される少なくとも1つの画像の周波数の範囲の指定を受け付けてもよい。上述したように、受付部は、例えば、ディスプレイ24に表示される開始周波数入力フィールド410及び終了周波数入力フィールド412を通じて、ユーザから、ディスプレイ24に表示される少なくとも1つの画像の周波数の範囲の指定を受け付ける。受付部が、開始周波数フィールド410及び終了周波数入力フィールド412を通じて、ディスプレイ24に表示される少なくとも1つの画像の周波数の範囲の指定を受け付けると、ディスプレイ24は、受け付けた周波数の範囲の指定に基づいて、CEST画像を表示するための領域402に、受け付けた周波数の範囲のCEST画像を表示する。
ディスプレイ24は、スライダ406により示された周波数に対応する収集CEST画像の1つを、表示領域402に表示してもよい。このため、スライダ406を制御することにより、指定範囲内の各周波数におけるCEST画像を、ユーザは便利かつ効率的に見ることができる。上述のように、周波数範囲も、ユーザが設定してもよい。
図5は、第1の実施形態に係るGUIの別の一例である。具体的には、1以上の実施形態による、目標周波数を含む周波数範囲に基づき収集され計算されるCEST画像を表示するためのGUI500の概略図である。GUI500は、CEST画像を表示するための領域502と、表示されたCEST画像を制御するための制御ツールとを備える。
制御ツールは、開始周波数から終了周波数までの範囲にわたるスクロールバー504と、開始周波数用の目盛と終了周波数用の目盛との間の任意の点にユーザが動かすことができるスライダ506とを含む。示した実施形態では、開始周波数と終了周波数との間(実施形態によっては、開始周波数および終了周波数も含まれる)の周波数を選ぶために、スクロールバー504に沿ってスライダ506を動かすことができる。
実施形態によっては、MRIデータプロセッサ42は、GUI500用に開始周波数および終了周波数を設定してもよい。示した実施形態では、入力領域508により、ユーザが、開始周波数入力フィールド510に所望の開始周波数を指定し、終了周波数入力フィールド512に所望の終了周波数を指定できるようになる。ユーザによってフィールド510およびフィールド512に与えられた値は、設定されたデフォルト値またはシステムによって自動的に決定されたデフォルト値のいずれのデフォルト値であっても、それに優先してもよい。ディスプレイ24は、フィールド510およびフィールド512で指定された値に基づき、スクロールバー504を設定してもよい。ディスプレイ24は、例えば、入力フィールド510で指定された値を最小値とし、入力フィールド512で指定された値を最大値として、スクロールバー504を設定する。
実施形態によっては、GUI500を用いてスライダ506で示された周波数を含む範囲内の複数のCEST画像に基づき、MRIデータプロセッサ42がコントラスト値を計算することによって、ディスプレイ24は、スライダ506で示された周波数に対応する強調CEST画像を表示してもよい。また、GUI500は幅入力フィールド514を含み、これを介して、強調CEST画像を決定するためにコントラスト値が計算される周波数の範囲を、ユーザが設定することができる。示した例では、ユーザは幅入力フィールド514に1ppmを指定しており、これによってシステムは、スライダ506で示された周波数に対応する強調CEST画像を表示する際に、スライダ506で示された周波数を含む1ppmの範囲内に周波数を有する複数のCEST画像に基づき、強調CEST画像を決定する。
このように、GUI500を用いて、現在の目標周波数を含む範囲内の複数の画像に基づきCEST効果を(画素毎に)計算することにより強調された合成CEST画像を、ユーザは便利かつ効率的に視覚的に解析を行うことができる。
図6は、第1の実施形態に係るGUIの別の一例である。具体的には、目標周波数を含む周波数範囲に基づき計算される強調CEST画像を表示するため、かつ、そのような複数の画像を保存/出力するためのGUI600の概略図である。GUI600は、CEST画像を表示するための領域602と、表示されたCEST画像を制御するための制御ツールとを備える。
制御ツールは、開始周波数から終了周波数までの範囲にわたるスクロールバー604と、開始周波数用の目盛と終了周波数用の目盛との間の任意の点にユーザが動かすことができるスライダ606とを含む。示した実施形態では、開始周波数と終了周波数との間(実施形態によっては、開始周波数および終了周波数も含まれる)の周波数を選ぶために、スクロールバー604に沿ってスライダ606を動かすことができる。
実施形態によっては、GUI600用に開始周波数および終了周波数を設定してもよい。示した実施形態では、入力領域608により、ユーザが、開始周波数入力フィールド610に所望の開始周波数を指定し、終了周波数入力フィールド612に所望の終了周波数を指定できるようになる。ユーザによってフィールド610およびフィールド612に与えられた値は、設定されたデフォルト値またはシステムによって自動的に決定されたデフォルト値のいずれのデフォルト値であっても、それに優先してもよい。ディスプレイ24は、フィールド610およびフィールド612で指定された値に基づき、スクロールバー604を設定してもよい。ディスプレイ24は、例えば、フィールド610で指定された値を最小値とし、フィールド612で指定された値を最大値とするように、スクロールバー604を設定する。
実施施形態によっては、ディスプレイ24は、GUI600を用いて、スライダ606で示された周波数を含む範囲内の対応する周波数を有する複数のCEST画像に基づき、コントラスト値を計算することによって、スライダ606で示された周波数に対応する強調CEST画像を表示してもよい。また、GUI600は幅入力フィールド614を含み、これを介して、強調された画像を決定するためにコントラスト値が計算される周波数の範囲を、ユーザが設定することができる。示した例では、ユーザは幅入力フィールド614に1ppmを指定しており、これによってシステムは、スライダ606で示された周波数に対応する強調CEST画像を表示する際に、スライダ606で示された周波数を含む1ppmの範囲内に周波数を有する複数のCEST画像に基づき、強調CEST画像を決定する。
GUI600はさらなる入力領域616を備え、その中で、ユーザは生成対象のマップの数を指定してもよく、またユーザは生成された複数のマップの保存を指示してもよい。マップ入力フィールド618を用いて、マップの数を指定してもよい。ユーザは、制御記号620をクリックすることにより、生成された複数のマップを保存するバッチ保存を実行するよう指示してもよい。
バッチ保存処理の応用例として、例えば、MRIデータプロセッサ42に含まれる記憶部(或いは、マップ/MRI画像メモリ46)が、第2の画像を生成するための1以上のパラメータを、異なるスライスにおける画像生成に用いるために記憶してもよい。記憶部が、異なるスライスにおける画像生成に用いるために当該1以上のパラメータを記憶したのち、受付部が、制御記号620のクリック入力を受け付けると、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、異なるスライスごとに、記憶部に記憶されたパラメータに従って異なるスライスごとに強調CEST画像を生成する。第2生成部は、異なるスライスごとに強調CEST画像を生成すると、生成された強調CEST画像のデータを、記憶部に格納する。このようにして、MRIデータプロセッサ42は、異なるスライスにおける強調CEST画像を自動生成することができる。
また、記憶部が、第2の画像を生成するための1以上のパラメータを、異なるスライスにおける画像生成に用いるために記憶する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、記憶部が、第2の画像を生成するための1以上のパラメータを、異なる条件における画像生成に用いるために記憶する場合でもよい。ここで、異なる条件とは、例えば、同じパラメータを用いて、多数の被検体について撮像を行うようなケースが例として挙げられる。また、記憶部は、必要に応じて、第1の画像や、第2の画像を適宜記憶してもよい。
GUI600は、レポートを生成する際に、特に役に立つようにしてもよい。例えば、図6に示す例では、10(フィールド618で入力)の積分されたCESTマップを生成するために、開始周波数2ppm(フィールド610で入力)におけるCESTマップから開始し、終了周波数3.5ppm(フィールド612で入力)におけるCESTマップで終了させる設定パラメータを、ユーザが与えている。マップについて選択された周波数を中心に1ppm(フィールド614で入力)の範囲にわたって各マップが積分される。このようにして、2ppmについて、また2ppmから0.15ppm毎(例えば、2ppm、2.15ppm、2.30ppm、・・・)に、強調されたマップを形成することによって、10のマップが生成される。なお、CESTデータを0.1ppmの周波数刻みで収集してもよいが、CEST後処理において、0.01ppm等のはるかに小さい刻みにZスペクトルが補間され得る。
図7は、第1の実施形態において生成される画像の一例である。具体的には、本明細書で開示する改善を適用した後の、3.5ppmにおけるCEST画像を示す。
臨床環境において、操作者は、様々な色で印を付けてコントラストを変化させながら、カラーで図7に示す画像を表示した画面を見るであろう。図7の領域702は、開示する改善を適用していないCEST画像において対応する領域と比較して、改善されたCESTを示すであろう。開示する改善の有り無しで観察領域のCEST画像を視覚的に比較することは、関心のある信号の迅速かつ正確な診断に関し、多くの場合において十分である。より容易な診断ができるようにするために、図7に示すような強調された信号を、元の画像の上に重ね合わせることができる。この時、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、例えば、第2の画像に、同一の患者及びスライス断面に係る画像を重ね合わせ、第3の画像を生成する。
第1の実施形態により、MTRasymスペクトルを選択的に使用することで、元の画像について次に解析することができる関心のある信号を観察することが可能になり、診断に役立つ。実施形態により、上述のようなアミド、アミン、ヒドロキシ等の複数の周波数におけるCEST効果の観察がさらに可能となる。さらに、関心のある周波数を中心にした周波数範囲に基づき強調CEST画像を計算することにより、CEST効果をさらに強調することができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、CEST効果の大きさを表す量(例えばMTRasymの値)を用いた複数の第1の画像を表示し、それを参照するユーザからパラメータの入力を受け付ける場合について説明した。第2の実施形態では、周波数ごとの画像ではなく、周波数スペクトルを第1生成部が生成し、ディスプレイ24が生成したスペクトルを、(又はスペクトル及び画像を)表示する。それを基に、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が、ユーザからのパラメータの入力を受け付ける。この結果、ユーザはCEST効果の周波数依存性を、より直感的に把握することが可能になり、より最適な強調CEST画像の生成が容易になる。
以下、特に断りがない限り、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、図1で示された第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の概略ブロック図に記載されているのと同様の構成を取ることができ、そのような構成について詳細な説明は省略する。
第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部30と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部と、表示部としてのディスプレイ24と、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部とを備える。シーケンス制御部30は、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、所定の空間位置における、或いは所定のROIで積分された、CEST効果の大きさを表す量を用いて周波数スぺクトルを生成する。ディスプレイ24は、周波数スペクトルを表示する。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、複数の周波数のうち、受付部が取得した周波数帯域に含まれる1以上の周波数におけるCEST効果の大きさを表す1以上の画像である第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
図8は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理を示すフローチャートである。第1の実施形態において図2において示されたフローチャートと同様の処理を行うステップについては、図2と同じ符号を用いている。また、このようなステップについて、詳細な説明は省略する。例えば、図8において、ステップ202、204、206、208、216、218においては、第1の実施形態と同様の処理を行う。また、このようなステップについては、第1の実施形態で説明した種々の変形例が可能である。また、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明した要素を適宜取り入れることも可能である。
CEST解析ルーチンに入ると、システム制御部22及びシーケンス制御部30は、データ収集のためにMRIシステムを設定する(ステップ202)。続いて、MRIデータプロセッサ42は、化学交換飽和移動(CEST)解析パラメータを設定する(ステップ204)。次に、シーケンス制御部30は、MTパルスシーケンスを印加し、続いてイメージングパルスシーケンスを印加する(ステップ206)。シーケンス制御部30は、RF受信機40を通じて、イメージングパルスに応答する核磁気共鳴(NMR)スピンエコーRF共鳴データを収集する(ステップ208)。周波数ごとに、必要に応じてステップ206〜208が繰り返される。
このように、シーケンス制御部30は、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。
続いて、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、シーケンス制御部30がRF受信機40を通じて収集したデータを基に、CEST効果の大きさを表す量を用いたスペクトル(例えば、MTRasymの値を用いたMTRasymスペクトル)を生成する(ステップ210A)。具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、所定の空間位置における、或いは所定のROIで積分された、CEST効果の大きさを表す量を用いて周波数スぺクトルを生成する。
ここで、「所定の空間位置における」とは、例えば、所定の1ピクセルを意味する。例えば、周波数として、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」で収集を行った場合、第1生成部は、例えば、所定の位置のピクセルに関して、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」の31個の周波数においてMTRasymを計算して、周波数の関数として31個のデータ点をもつ1つのグラフ(周波数スペクトル)を生成する。この所定の1ピクセルの位置は、例えば予め与えられた初期設定値であってもよいし、例えばT1画像等を参照したユーザから所定のGUIを用いて入力された値でも良い。また、所定の周波数におけるCEST画像を参照したユーザから所定のGUIを用いて入力された値でもよい。
また、「所定のROI」とは、例えば、撮像範囲全体でもよい。この場合、例えば、周波数として、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」で収集を行った場合、第1生成部は、例えば、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」の31個の周波数ごとに、各々のピクセルでのMTRasymを計算し、次にすべてのピクセルに関して積分する。この結果、第1生成部は、例えば、周波数の関数として31個のデータ点をもつ1つのグラフ(周波数スペクトル)を生成する。
また、「所定のROI」とは、例えば、撮像範囲の一部分でもよい。この場合、例えば、周波数として、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」で収集を行った場合、第1生成部は、例えば、「1ppm、1.1ppm、1.2ppm…4.0ppm」の31個の周波数ごとに、所定のROIに含まれる各々のピクセルでのMTRasymを計算し、次に所定のROIに含まれるすべてのピクセルに関して積分する。この結果、第1生成部は、例えば、周波数の関数として31個のデータ点をもつ1つのグラフ(周波数スペクトル)を生成する。この所定のROIの範囲は、例えば予め与えられた初期設定値であってもよいし、例えばT1画像等を参照したユーザから所定のGUIを用いて入力された範囲でも良い。また、所定の周波数におけるCEST画像を参照したユーザから所定のGUIを用いて入力された範囲でもよい。
ディスプレイ24は、第1生成部が生成した周波数スペクトルを表示する(ステップ212A)。ここで、実施形態によっては、例えば、第1の実施形態と同様に、第1生成部がステップ210の処理を行ってCEST画像を計算し、ディスプレイ24がステップ212の処理を行ってCEST画像を表示する処理を、ディスプレイ24が周波数スペクトルを表示する処理と、同時或いは並行して行うこともできる。
MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザーからの入力を受け付け、受け付けた入力を取得する(ステップ214A)。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。
ここで、受付部は、周波数帯域を、例えば、周波数帯域が、「1ppm〜2ppm」というように、周波数帯域の上端と下端を指定した形式で受け付けてもよい。また、受付部は、周波数帯域を、例えば、周波数帯域が、「中心周波数が1.5ppm、周波数帯域幅が0.5ppm」というように、周波数帯域の中心周波数及び周波数帯域幅を指定した形式で受け付けてもよい。また、受付部は、周波数帯域を、その他の形式で受け付けてもよい。
MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、ステップ214Aで受付部が取得した周波数帯域の値を基に、強調CEST画像を生成する(ステップ216)。より具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、複数の周波数のうち、受付部が取得した周波数帯域に含まれる1以上の周波数におけるCEST効果の大きさを表す1以上の画像である第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。第2生成部は、図2のステップ216において述べたのと同様の手続きに従って、典型的には、第1の画像の信号の大きさの推定値を、受付部が取得した周波数帯域で積分(或いは平均、和等を取る)する。この結果、第2生成部は、第2の画像(強調CEST画像)を得ることができる。積分アルゴリズムは、前述したように、台形公式やニュートン・コーツ法を用いても良いし、例えばガウス型数値積分など他の方法を用いても良いし、被積分関数を前述した方法で適切に補間してもよい。
MRIデータプロセッサ42は、ディスプレイ24に、第2生成部がステップ216で生成した強調CEST画像を出力する(ステップ218)。
MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザから、処理を終了する旨の入力を受け付ける(ステップ220A)。ユーザが、表示された画像に満足して、処理を終了する旨の入力をし、受付部が処理を終了する旨の入力を受け付けると(ステップ220A Yes)、処理は終了する。必要に応じて、MRIデータプロセッサ42は、必要なデータをMRIデータプロセッサ42に含まれる記憶部またはマップ/MRI画像メモリ46に保存してもよい。ユーザが、表示された画像に満足せず、受付部が処理を終了する旨の入力を受け付けない場合(ステップ220A No)、処理は214Aに戻り、受付部は、ユーザーからの入力を再度受け付け、受け付けた入力を再度取得する。
図9は、第2の実施形態に係るGUIの一例である。表示部としてのディスプレイ24は、例えば、図2のステップ202に相当する処理を行い、図8のステップ208以降の所定のタイミングで、第1画像表示領域810に、参照用として、複数の第1の画像を表示する。図9では、ディスプレイ24が、第1画像表示領域810に、第1の画像811(1.0ppm)、第1の画像812(1.5ppm)、第1の画像813(2.0ppm)、第1の画像814(2.5ppm)、第1の画像815(3.0ppm)、第1の画像816(3.5ppm)、第1の画像817(4.0ppm)、第1の画像818(4.5ppm)を表示している例を示している。ユーザは、第1画像表示領域810に表示されている複数の第1の画像を見て、CEST効果の大きさの周波数依存性の全体像を把握することができる。
ディスプレイ24は、例えば、図8のステップ210Aにおいて、MTRスペクトル表示領域830に、MTRasymスペクトル831を表示する。MTRasymスぺクトル831は、横軸を周波数(ppm)の関数として、MTRスぺクトル表示領域830に表示されている。
ディスプレイ24は、例えば、図8のステップ218において、強調CEST画像表示領域840に、強調CEST画像を表示する。ユーザは、複数の強調CEST画像を、パラメータを変化させながら生成することができる。例えば、図9に示されているGUIでは、ユーザは、「#1」「#2」「#3」の、合計3つのパラメータセットに対して、各々のパラメータセットに対応した強調CEST画像を試作することができる。例えば、ディスプレイ24は、第1強調画像表示領域841に、第1のパラメータセットに対応する強調CEST画像を表示する。また、ディスプレイ24は、第2強調画像表示領域842に、第2のパラメータセットに対応する強調CEST画像を表示する。また、ディスプレイ24は、第3強調画像表示領域843に、第3のパラメータセットに対応する強調CEST画像を表示する。
ディスプレイ24は、強調CEST画像を生成するにあたって必要なパラメータセットを、適宜表示する。ディスプレイ24は、周波数下端表示領域850、周波数上端表示領域851、周波数中心表示領域852、周波数幅表示領域853に、それぞれ、周波数帯域の下端の値、周波数帯域の上端の値、中心周波数の値、周波数帯域の幅の値を表示する。図9の例では、第1強調画像表示領域841に係る第1のパラメータセットは、周波数帯域の下端の値が「3.0ppm」、周波数帯域の上端の値が「4.0ppm」、中心周波数の値が、「3.5ppm」、周波数帯域の幅の値が「1.0ppm」である。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、図8のステップ216において、これらのパラメータを用いて、強調CEST画像を生成する。ディスプレイ24は、生成された強調CEST画像を、第1強調画像表示領域841に表示する。
ディスプレイ24は、表示領域800に、参照用画像を表示する。ユーザは、表示領域800に表示する画像の種類を、ラジオボタン801,802,803を用いることにより選択することができる。例えば、ユーザがラジオボタン801を選択すると、ディスプレイ24は、表示領域800に、T1画像を表示する。ユーザがラジオボタン802を選択すると、ディスプレイ24は、表示領域800に、T2画像を表示する。また、例えば別のモダリティを用いて取得した画像などのユーザ定義ファイルを表示させることもできる。例えば、ユーザがラジオボタン803を選択して、画面に表示されたダイヤログボックスに例えば画像ファイル名を入力すると、ディスプレイ24は、表示領域800に、選択された画像ファイルのデータを表示する。
ラジオボタン880及び881は、ユーザが、表示領域800に表示された画像に、強調CEST画像を重ね合わせ(オーバーレイ)するか否かを選択するための機能である。例えば、ユーザがラジオボタン881を選択すると、オーバーレイは「NO」となり、強調CEST画像に表示領域800に表示されている画像は重ね合わせがされない。その結果、ディスプレイ24は、第1強調画像表示領域841に、表示領域800に表示されている画像が重ね合わせがされない、強調CEST画像を表示する。また、ユーザがラジオボタン880を選択すると、オーバーレイは「YES」となり、強調CEST画像に、表示領域800に表示されている画像が重ねあわされる。この結果、ディスプレイ24は、第1強調画像表示領域841に、強調CEST画像と、表示領域800に表示されている画像が重ねあわされた画像を表示する。
ディスプレイ24は、MTRスぺクトル表示領域830に、周波数帯域に関する情報を、重ね合わせて表示する。ディスプレイ24は、マーカー833を表示し、周波数帯域の下端の値「3.0ppm」を表示する。ディスプレイ24は、マーカー832を表示し、周波数帯域の上端の値「4.0ppm」を表示する。同様にして、ディスプレイ24は、マーカー835及び834を表示し、周波数帯域の下端の値「1.5ppm」及び、周波数帯域の上端の値「2.5ppm」を表示する。同様にして、ディスプレイ24は、マーカー837及び836を表示し、周波数帯域の下端の値「0.2ppm」及び、周波数帯域の上端の値「6.2ppm」を表示する。
次に、強調CEST画像を生成するためのパラメータの値の変更について説明する。受付部は、ボタン860、861、862,863,864,865,866,867等を通じて、ユーザからパラメータの値の変更を受け付ける。例えば、ユーザがボタン860を1回クリックすると、MRIデータプロセッサ42は、周波数帯域の下端の値を、「3.0ppm」から、「3.1ppm」に変更する。また、ユーザがボタン861を1回クリックすると、MRIデータプロセッサ42は、例えば、周波数帯域の下端の値を、「3.0ppm」から、「2.9ppm」に変更する。同様に、ユーザーがボタン862〜867の値をクリックすると、MRIデータプロセッサ42は、周波数帯域の上端の値、周波数帯域の下端の値、中心周波数の値、周波数帯域の幅の値を、所定の値だけ変化させる。
受付部は、マーカー832,833,834,835,836、837等を通じて、ユーザから、周波数帯域の変更を受け付けることもできる。例えば、ユーザがマーカー832をドラッグ・アンド・ドロップして画面上の位置を移動させると、MRIデータプロセッサ42は、それに対応して、周波数帯域の上端の値を変更することもできる。マーカー833,834,835,836,837についても同様である。
ディスプレイ24は、例えば、強調CEST画像表示領域840に表示されている周波数帯域に関する情報と、MTRスぺクトル表示領域830に表示されている周波数帯域に関する情報を、連動させて表示させる。ディスプレイ24は、受付部が、ボタン860,861,862,863等を通じて、ユーザから周波数帯域の下端の値或いは上端の値の変更を受け付けると、対応するマーカー822或いは823の位置を、連動させて表示する。同様に、ユーザがマーカー822或いは823の位置を変更すると、ディスプレイ24は、周波数下端表示領域850或いは周波数上端表示領域851に表示する、周波数帯域の下端の値或いは上端の値を、連動して変更して表示する。また、MRIデータプロセッサ42は、例えば、ユーザから、周波数帯域の下端又は上端の値の変更を受け付けると、中心周波数の値及び周波数帯域の幅の値を変更する。
このように、受付部が、ユーザから周波数帯域等、パラメータの変更を受け付けると、(例えば、図8のステップ214A)、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、変更後のパラメータを基に、強調CEST画像を生成し(図8のステップ216)、表示装置としてのディスプレイ24は、生成された強調CEST画像を出力する(図8のステップ218)。例えば、ディスプレイ24は、第1強調画像表示領域841等の描画処理を更新し、表示されていた変更前のパラメータに係る強調CEST画像に代えて、変更後のパラメータに係る強調CEST画像を、第1強調画像表示領域841等に表示する。ユーザが、処理を終了する旨のボタン(図示していない)をクリック(図8のステップ220A Yes)しない限り、受付部は、ユーザからパラメータの変更を受け付け続ける。
また、受付部は、LOADボタン870、SAVEボタン871、CLEARボタン872等を通じて、ユーザから各種パラメータの設定を受け付ける。例えば、ユーザがCLEARボタン872をクリックすると、受付部は、各種パラメータを初期値にリセットする。また、ユーザがSAVEボタン871をクリックすると、MRIデータプロセッサ42は、パラメータセット又は/及び強調CEST画像等の各種画像を、MRIデータプロセッサ42に含まれる記憶部又はマップ/MRI画像メモリ46に格納する。また、ユーザがLOADボタン870をクリックすると、MRIデータプロセッサ42は、所定のパラメータセットを、MRIデータプロセッサ42に含まれる記憶部又はマップ/MRI画像メモリ46から呼び出してロードする。この時、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、ロードされたパラメータを基に、周波数スペクトルや強調CEST画像を再生成する。
ディスプレイ24は、例えば、MTRasymスペクトルなどの周波数スペクトルに係るROI(Region Of Interest)の設定の入力を、ユーザから受け付けるためのGUIを有しても良い。図9に、そのようなGUIの一例を示している。
ディスプレイ24は、周波数スペクトル生成ROI表示領域890に、周波数スペクトルを生成するためのROIを表示する。ラジオボタン893、894、895は、周波数スペクトルを生成するためのROIをユーザが選択するためのボタンである。ユーザがラジオボタン893を選択すると、MRIデータプロセッサ42は、「ROI1」を用いて、周波数スペクトルを算出する。ユーザがラジオボタン894を選択すると、MRIデータプロセッサ42は、「ROI2」を用いて、周波数スペクトルを算出する。ユーザがラジオボタン895を選択すると、MRIデータプロセッサ42は、データ収集範囲すべてについてデータを積分して、周波数スペクトルを算出する。
ディスプレイ24は、周波数スペクトル生成ROI表示領域890に、ROIを、画像に重ね合わせて表示する。ディスプレイ24がROIに重ね合わせる画像としては、例えば表示領域800に表示されている画像でもよいし、例えば第1強調画像表示領域841に表示されている画像でもよいし、その他の画像でも良い。図9では、ディスプレイ24は、ROI1を領域891に、ROI2を領域892に表示している。
受付部は、ROI操作ボタン896A,896B,896C,896D、897、898を通じて、ユーザから、ラジオボタン893、894或いは895によってアクティブになっているROIの変更の入力を受け付ける。例えば、ラジオボタン893が「ON」になっているので、受付部は、ユーザから、ROI1の変更の入力を受け付けている。受付部は、例えばROI操作ボタン896A、896B、896C、896Dを通じて、ユーザからROIの上下左右への平行移動入力を受け付ける。例えば、ユーザがROI操作ボタン896A、896B、896C,896Dをクリックすると、受付部は、ROIを、それぞれ上、左、下、右に所定の大きさだけ平行移動させる。同様に、ユーザがROI操作ボタン897、898をクリックすると、受付部は、ROIをそれぞれ、所定の割合だけ拡大、縮小させる。
受付部がROIの変更の入力をユーザから受け付けると、第1生成部は、変更後のROIに基づいて再計算を行い、周波数スペクトルを再生成する。ディスプレイ24は、MTRスぺクトル表示領域830の描画を更新し、表示されている周波数スペクトルを、再生成された周波数スペクトルに置き換えて表示する。受付部は、新たに表示された周波数スペクトルを参照したユーザからの入力を受け付ける。
すなわち、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザからROIの入力を受け付ける。MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が受け付けたROIを所定のROIとして再設定して周波数スペクトルを再生成する。ディスプレイ24は、周波数スペクトルが再生成された場合、再生成された周波数スペクトルを再表示する。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、周波数スペクトルが再表示された場合、再表示された周波数スペクトルに対するユーザからの応答を周波数帯域の入力として受け付ける。
ここで、周波数スペクトルを生成するためのROIの変更をユーザから受け付けるためのGUIを備える理由は、例えば以下の通りである。第1に、関心のある領域、例えば腫瘍などの大まかな位置が、例えばT1画像などから同定できる場合、ユーザは重要でない領域をROIから除外し、診断に重要な領域のみROIに含めることができる。これにより、画像の質が向上する。第2に、画像にノイズやアーチファクトが存在し、T1画像やその他の画像から総合的に、ユーザが、ノイズやアーチファクトのある領域を同定できる場合、ユーザはアーチファクト等が起こっている領域をROIから手動で除外することができる。これにより、ノイズやアーチファクトを手動で排除でき、画像の質が向上する。
また、ディスプレイ24が、ラジオボタン893,894,895により選択されアクティブになっているROIに係る周波数スペクトルを、MTRスペクトル表示領域830に表示する場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。ディスプレイ24は、選択されアクティブになっているROIを含んだ全てのROIに係る周波数スペクトルを、MTRスペクトル表示領域830に同時表示してもよい。換言すると、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、ユーザの入力操作により受け付けられた複数のROIのそれぞれについて、シーケンス制御部30により収集されたデータを基に、CEST効果の大きさを表す量を用いて周波数スペクトルを生成する。ディスプレイ24は、複数のROIのそれぞれの周波数スペクトルを同時に表示する。ここで、「同時に表示」とは、重畳表示及び並列表示の両方を含む。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、同時に表示された複数の周波数スペクトルを参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、複数の周波数のうち、このようにして受付部が取得した周波数帯域に含まれる1以上の周波数におけるCEST効果の大きさを表す1以上の画像である第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
本変形例において、複数のROIに係る周波数スペクトルを同時に表示する理由は以下の通りである。すなわち、一般に、組織によって、MTRasymスペクトルの振る舞いは大きく異なる。例えば、正常組織と、異常組織では、MTRasymスペクトルの振る舞いは大きく異なる。加えて、異常組織の中でも、水や血液の塊などのeffusion(滲出物)等があり、組織は均一ではない。従って、ROIの選び方によって、MTRasymスペクトルの振る舞いは大きく異なる。ROIの選び方の自由度をユーザに持たせることによって、強調CEST画像の画質を向上させることができる。
図10は、第2の実施形態に係るGUIの別の一例である。図10のGUIは、図9のGUIと同様のGUIであるが、図9の強調CEST画像表示領域840に係るGUIを、別のGUIに置き換えたものである。図9と同様に、ディスプレイ24は、図10において、第1画像表示領域900、第2画像表示領域901、第3画像表示領域902に、それぞれ第1のパラメータセット、第2のパラメータセット、第3のパラメータセットに係る、第2の画像(強調CEST画像)を表示する。ディスプレイ24は、第1スペクトル表示領域903、第2スぺクトル表示領域904、第3スペクトル表示領域905に、それぞれ、第1のパラメータセットに係る周波数帯域、第2のパラメータセットに係る周波数帯域、第3のパラメータセットに係る周波数領域を、周波数スペクトルに重ね合わせて表示する。例えば、ディスプレイ24は、マーカー910を用いて、周波数帯域の上端の値を表示し、マーカー911を用いて、周波数帯域の下端の値を表示する。
受付部は、例えばボタン912、913、914、915を通じて、ユーザから周波数帯域の入力の変更を受け付ける。例えば、ユーザがボタン912をクリックすると、受付部は、周波数帯域の上端の値を所定の値だけ加算する。ユーザがボタン913をクリックすると、受付部は、周波数帯域の下端の値を所定の値だけ減算する。ユーザがボタン914、915をクリックすると、周波数帯域が、所定の割合だけ、それぞれ拡大、縮小される。
このように、受付部が、ユーザから周波数帯域等、パラメータの変更を受け付けると、(例えば、図8のステップ214A)、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、変更後のパラメータを基に、強調CEST画像を生成し(図8のステップ216)、表示装置としてのディスプレイ24は、生成された強調CEST画像を出力する(図8のステップ218)。例えば、ディスプレイ24は、第1画像表示領域900等の描画処理を更新し、表示されていた変更後のパラメータに係る強調CEST画像に代えて、変更後のパラメータに係る強調CEST画像を、第1画像表示領域900等に表示する。ユーザが、処理を終了する旨のボタン(図示していない)をクリック(図8のステップ220A Yes)しない限り、受付部は、ユーザからパラメータの変更を受け付け続ける。
このように、第2の実施形態では、周波数スペクトルを、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部が生成し、生成したスペクトルを、ディスプレイ24が表示する。このことにより、周波数ごとの画像を表示した場合に比べて、周波数スペクトルそのものを表示した場合には、ユーザはスペクトルの周波依存性をより直感的に容易に把握することが可能になる。これにより、ユーザは、強調CEST画像を生成するための周波数パラメータをより適切に調整することができ、CEST効果を表す画像のコントラストを向上することができる。
(第3の実施形態)
これまでの実施形態では、ディスプレイ24が、第1の画像または周波数スペクトルを表示し、それを基に、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が、ユーザからのパラメータの入力を受け付ける例について説明した。第3の実施形態では、第1生成部が、所定の周波数の値を自動的に算出し、算出結果を基に、強調CEST画像を初期画像として生成する。受付部は、表示された初期画像としての強調CEST画像を参照したユーザから、強調CEST画像を再生成するためのパラメータの入力を受け付ける。以下、特に断りがない限り、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、図1に記載されているのと同様の構成を取ることができる。
第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部30と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部と、表示部としてのディスプレイ24と、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部と、MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部とを備える。シーケンス制御部30は、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集されたデータを基に、複数の周波数それぞれにおけるCEST効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像を生成する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、複数の第1の画像に基づいて、所定の周波数の値を算出し、算出した所定の周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、初期画像を生成する。ディスプレイ24は、初期画像を表示する。MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が取得した周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
図11は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の行う処理を示すフローチャートである。第3の実施形態において図2、図8において示されたフローチャートと同様の処理を行うステップについては、図2、図8と同じ符号を用いている。また、このようなステップについて、詳細な説明は省略する。また、このようなステップについては、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した種々の変形例が可能である。また、第3の実施形態において、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した要素を適宜取り入れることも可能である。
CEST解析ルーチンに入ると、システム制御部22及びシーケンス制御部30は、データ収集のためにMRIシステムを設定する(ステップ202)。続いて、MRIデータプロセッサ42は、化学交換飽和移動(CEST)解析パラメータを設定する(ステップ204)。次に、シーケンス制御部30は、MTパルスシーケンスを印加し、続いてイメージングパルスシーケンスを印加する(ステップ206)。シーケンス制御部30は、RF受信機40を通じて、イメージングパルスに応答する核磁気共鳴(NMR)スピンエコーRF共鳴データを収集する(ステップ208)。周波数ごとに、必要に応じてステップ206〜208が繰り返される。
このように、シーケンス制御部30は、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行ってデータを収集する。
続いて、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、図2のステップ210で説明したのと同様の処理を行って、シーケンス制御部30がRF受信機40を通じて収集したデータを基に、CEST画像を計算してもよい。具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、複数の周波数それぞれにおけるCEST効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像を生成する。第1生成部は、例えば、CEST効果の大きさを表す量として、MTRasymの値を用いる。
或いは、複数の第1の画像を生成する代わりに、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、図8のステップ210Aで説明したのと同様の処理を行って、シーケンス制御部30がRF受信機40を通じて収集したデータを基に、CEST効果の大きさを表す量(例えば、MTRasymスペクトル)を生成してもよい。具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、収集したデータを基に、所定の空間位置における、或いは所定のROIで積分された、CEST効果の大きさを表す量を用いて周波数スぺクトルを生成してもよい。
MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、典型的には、生成された複数の第1の画像、周波数スペクトルに基づいて、強調CEST画像を生成する周波数である目標周波数を自動抽出する(ステップ209B)。すなわち、一例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、複数の第1の画像に基づいて、所定の周波数の値を算出する。続いて、第1生成部は、算出した所定の周波数を含む周波数帯域であって、初期画像を生成するための周波数帯域を算出する。別の例として、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、周波数スペクトルに基づいて、初期画像を生成するための周波数帯域を算出する。
ここで、第1生成部は、初期画像としての強調CEST画像を生成する目標周波数として、例えば、画像の信号値の強度或いは周波数スペクトルが最大値となるような周波数を自動抽出してもよい。また、別の例として、第1生成部は、画像の信号値の強度或いは周波数スペクトルがグローバルな最大値となるような周波数ではなく、所定の周波数の付近で、画像の信号値の強度或いは周波数スペクトルが極大値となるような周波数を検出して自動抽出してもよい。この時第1生成部は、必要に応じて、所定の周波数として事前設定されたパラメータ値を利用してもよい。
例えば、画像生成の関心が、「アミド」である旨事前設定されている場合、第1生成部は、「アミド」の周波数である3.5ppm付近での信号強度の極大値を探索する。例えば、第1生成部が、周波数5.0ppm、3.47ppm、2.1ppmに強い信号強度のピークを発見し、周波数3.52ppmに弱い信号強度の増大(ハンプ)を発見した場合、第1生成部は、周波数3.47ppmを、目標周波数として抽出する。また、例えば、第1生成部が、周波数3.8ppm、3.53ppm、3.49ppm、3.42ppm、2.1ppmに信号強度のピークを発見した場合、周波数3.53ppm、3.49ppm、3.42ppmを、ターゲットとなるスペクトルであると判定して、これらのスペクトルの重心位置の周波数を目標周波数として抽出する。
このようにして、初期画像としての強調CEST画像を生成する周波数である目標周波数を抽出すると、第1生成部は、続いて、初期画像としての強調画像を生成するための周波数帯域を算出する。周波数帯域の算出の方法として、第1生成部は、初期画像を生成するための周波数帯域の幅として、あらかじめ初期設定で決められた値を採用してもよい。例えば、初期設定で決められた周波数帯域の幅が「0.5ppm」として定められているとき、第1生成部が、目標周波数の値を「x ppm」と算出したとき、周波数帯域は、「x−0.5ppm〜x+0.5ppm」となる。また、例えば、「アミド」に対する周波数帯域の幅は「0.5ppm」、「ヒドロキシル」に対する周波数帯域の幅は「0.3ppm」というように、対象に応じて周波数帯域の幅は事前設定されてもよい。また、第1生成部は、第1の画像或いは周波数スぺクトルのデータから、スペクトルの半値幅を自動検出し、検出したスペクトルの半値幅に応じて周波数帯域の幅を算出してもよい。
また、第1生成部は、第1の画像の周波数依存性または周波数スペクトルのデータを、「アミド」「アミノ」「ヒドロキシル」などのスペクトルの寄与ごとに自動的に分解し、分解した結果に応じて、目標周波数及び周波数帯域を算出してもよい。第1生成部は、スペクトルの分解を、例えば、スペクトルを複数のガウス型或いはローレンツ型スペクトルの和として考え、例えば最小二乗法フィッティングを行うことにより行うことができる。
また、第1生成部は、強調CEST画像を生成する周波数である目標周波数として、あらかじめ初期設定で決められた値を採用し、初期画像を生成するための周波数帯域のみを算出してもよい。
次に、所定の周波数及び周波数帯域を算出すると、MRIデータプロセッサ42に含まれる第1生成部は、算出した所定の周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、初期画像としての強調CEST画像を生成する(ステップ216B)。
ディスプレイ24は、初期画像を表示する(ステップ218)。ディスプレイ24の有するGUIの例としては、例えば図9のようなインタフェースを用いることができる。このGUIの例では、ディスプレイ24は、例えば第1強調画像表示領域841、第2強調画像表示領域842、第3強調画像表示領域843等に、初期画像を表示する。ディスプレイ24は、必要に応じて、同時に種々のパラメータを表示してもよい。例えば、周波数下端表示領域850及び周波数上端表示領域851、マーカー832、833に周波数帯域の表示を、MTRスぺクトル表示領域830に周波数スペクトルを、第1画像表示領域810に第1の画像を適宜表示してもよい。
MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザから、処理を終了する旨の入力を受け付ける(ステップ220A)。ユーザが、表示された画像に満足して、処理を終了する旨の入力をし、受付部が処理を終了する旨の入力を受け付けると(ステップ220A Yes)、処理は終了する。必要に応じて、MRIデータプロセッサ42は、必要なデータをMRIデータプロセッサ42に含まれる記憶部またはマップ/MRI画像メモリ46に保存してもよい。ユーザが、表示された画像に満足せず、受付部が処理を終了する旨の入力を受け付けない場合(ステップ220A No)、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ユーザからの入力を受け付け、受け付けた入力を取得し(S214B)、処理はステップ216Bへと戻る。具体的には、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。MRIデータプロセッサ42に含まれる第2生成部は、MRIデータプロセッサ42に含まれる受付部が取得した周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像(更新された初期画像)を生成する(ステップ216B)。ディスプレイ24は、更新された初期画像を表示し(ステップ218)、以下同様の処理が、ユーザが表示された画像に満足するまで繰り返される。
このように、第3の実施形態では、強調CEST画像を生成するためパラメータをユーザと対話的に調整するためのGUIに、強調CEST画像を一部自動的に生成する処理機能を組み合わせた。このことにより、ルーチン的に行うことのできる部分についてはパラメータ設定を機械が自動的に行うことで、ユーザは煩わしさから解放されるとともに、例外的な処理、異常が生じた場合や、ユーザが高度にパラメータをカスタマイズしたい場合に、ユーザがパラメータを柔軟に調整できることで、CEST効果を表す画像のコントラストを向上することができる。
(画像処理装置)
これまでの実施形態において説明した磁気共鳴イメージング装置の有する画像処理機能を抽出して、磁気共鳴イメージング装置から独立した画像処理装置を構成することができる。図12は、実施形態に係る画像処理装置1000の概略ブロック図である。
一例として、画像処理装置1000は、例えば、記憶部1001と、生成部1002と、表示制御部1003と、受付部1004と、表示部としてのディスプレイ24を有する。生成部1002は、第1生成部1002Aと、第2生成部1002Bとを有する。記憶部1001は、例えば図1のマップ/MRI画像メモリ46或いはMRIデータプロセッサ42の有する記憶部と同様の構成を備える。第1生成部1002Aは、例えば図1のMRIデータプロセッサ42の有する前述した第1生成部と同様の構成を備える。第2生成部1002Bは、例えば図1のMRIデータプロセッサ42の有する前述した第2生成部と同様の構成を備える。表示制御部1003は、ディスプレイ24その他表示機能を制御し、例えば図1のシステム制御部22と同様の構成を備える。受付部1004は、例えば図1のMRIデータプロセッサ42の有する前述した受付部と同様の構成を備える。図8のディスプレイ24は、例えば図1のディスプレイと同様の構成を備える。画像装置1000は、必要に応じて、例えば図4、図5、図6、図9、図10等のGUIを備えても良い。
画像処理装置1000が、第1の実施形態で説明した処理を行う場合、第1生成部1002Aは、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行って収集したデータを基に、前記複数の周波数それぞれにおけるCEST効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像を生成する。ディスプレイ24は、複数の第1の画像のうち少なくとも1つの画像を表示する。受付部1004は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数の値を取得する。第2生成部1002Bは、受付部1004が取得した周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
また、画像処理装置1000が、第2の実施形態で説明した処理を行う場合、第1生成部1002Aは、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行って収集したデータを基に、所定の空間位置における、或いは所定のROIで積分された、CEST効果の大きさを表す量を用いて周波数スぺクトルを生成する。ディスプレイ24は、周波数スペクトルを表示する。受付部1004は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。第2生成部1002Bは、複数の周波数のうち、受付部1004が取得した周波数帯域に含まれる1以上の周波数におけるCEST効果の大きさを表す1以上の画像である第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
また、画像処理装置1000が、第3の実施形態で説明した処理を行う場合、第1生成部1004Aは、MTパルスを印加したのちイメージングシーケンスを実行する操作を複数の周波数のMTパルスについて行って収集されたデータを基に、前記複数の周波数それぞれにおけるCEST効果の大きさを表す量を用いて複数の第1の画像を生成し、複数の第1の画像に基づいて、所定の周波数の値を算出し、算出した所定の周波数を含む周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、初期画像を生成する。ディスプレイ24は、初期画像を表示する。受付部1004は、ディスプレイ24を参照するユーザの入力操作から、周波数帯域を取得する。第2生成部1002Bは、受付部1004が取得した周波数帯域における複数の第1の画像の信号の大きさの推定値を基に、第2の画像を生成する。
以上述べた1以上の画像処理装置又は磁気共鳴イメージング装置によれば、CEST効果を表す画像のコントラストを向上することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。