以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)排熱回収器:
本発明の排熱回収器は、排気系に設けられた排気分配部と、排気分配部を挟んで排気系の上流側及び下流側に設けられた2つの排気分岐部と、2つの排気分岐部に連結するように配設された熱交換部と、を備えたものである。本発明の排熱回収器は、内燃機関の排気通路(以下、「排気系」ともいう)に設置し、排気通路を通過する排気ガスの排気熱を回収するために用いられる。排熱回収器においては、排気ガスとの熱交換による排熱を回収するための熱交換媒体が用いられる。例えば、排熱回収器が、自動車に搭載されて用いられる場合には、熱交換媒体として、水や不凍液(JIS K 2234で規定されるLLC)などを用いることができる。
排気分配部は、排気系の通気抵抗を変更し、排気分岐部を流れる排気ガスの排気量を可変して、熱交換部における熱回収量を調整する、排気分配機構を有する。この排気分配機構は、排気熱の回収を抑制したい場合の、排気ガスの経路のバイパスに設けられている。以下、排気分配部が設けられる排気ガスの経路(別言すれば、上記バイパス)を、「バイパス流路」ということがある。
排気分岐部は、排気分配部を挟んで排気系の上流側及び下流側に2つ設けられており、1つの排気分岐部が、熱交換部に排気ガスを流入させるための流入口となり、もう1つの排気分岐部が、熱交換部により熱回収を行った排気ガスを排気系に戻すための流出口となる。
熱交換部は、第一端面及び第二端面を有し、第一端面から第二端面に向かう軸方向の中央部分が空洞の中空柱状のハニカム体と、このハニカム体を収容するケーシングと、を有する。ハニカム体は、隔壁を有し、この隔壁によって、第一端面から第二端面まで延びる、排気ガスの流路となる複数のセルが区画形成されたものである。
熱交換部のケーシングは、ハニカム体の外周を覆うように配置された第一ケーシングと、第一ケーシングの外周に配置された第二ケーシングと、を有する。このケーシングは、第一ケーシングと第二ケーシングとの間に、排気ガスとの熱交換による排熱を回収するための熱交換媒体の経路が形成されたものである。そして、熱交換部は、ハニカム体の複数のセルによって形成された流路と、2つの排気分岐部のうちの一方の排気分岐部とが連通し、且つ、ハニカム体に形成された空洞と、2つの排気分岐部のうちのもう一方の排気分岐部とが連通するように配設されている。
本実施形態の排熱回収器は、装置の小型化を実現することができるとともに、熱遮断性に優れたものである。本実施形態の排熱回収器は、例えば、排気分配部により、当該排気分配部が設けられた排気系の通気抵抗を大きくすることにより、1つの排気分岐部から、熱交換部のハニカム体の複数のセルによって形成された流路に排気ガスを優先的に流入させ、排熱を回収することができる。また、熱回収済みの排気ガスについては、ハニカム体の中央部分の空洞を通じて、もう1つの排気分岐部から排出することができる。一方、排気熱の回収を抑制したい場合には、排気分配部が設けられた排気系(バイパス流路)の通気抵抗を小さくすることにより、熱交換部を迂回するように排気ガスを優先的に流すことができる。以下、ハニカム体の中央部分の空洞を除く外周部分、即ち、ハニカム体の隔壁及びこの隔壁によって区画されたセルが存在する外周部分を、「ハニカム体の実体部分」ということがある。なお、熱交換部については、ハニカム体の中央部分の空洞から排気ガスを流入させ、ハニカム体の実体部分を通じて、排気分岐部から排出してもよい。
本実施形態の排熱回収器は、1つの排気系に対して、ハニカム体を有する熱交換部を配設することにより排熱を回収しているため、熱回収を行うための流路と、バイパス流路との2つの流路を設ける必要が無く、装置の小型化を実現することができる。また、装置の構造についても簡便なものとなる。更に、本発明の排熱回収器は、熱交換部における熱の受け渡し媒体であるハニカム体と、バイパス流路と、の接触面積が少なく、熱遮断性にも優れている。また、本発明の排熱回収器は、従来のSUS製の排熱回収器と異なり、排気ガスと水等の熱交換媒体とを空間的に分離できるため、シンプルな構造を実現することができる。
(1−1)排熱回収器の第一実施形態:
排熱回収器の第一実施形態は、図1〜図5に示す排熱回収器100である。図1は、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す上面図である。図2は、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す断面図であり、排気系の流れ方向に平行な断面を示す断面図である。図3は、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す平面図であり、図2に示す排熱回収器を矢印Aの方向に見た平面図である。図4は、本発明の排熱回収器の第一実施形態における排気ガスの流れを説明するための模式図である。図5は、本発明の排熱回収器の第一実施形態に用いられるハニカム体を模式的に示す斜視図である。
排熱回収器100は、排気系に設けられた排気分配部40と、排気分配部40を挟んで排気系の上流側61及び下流側62に設けられた2つの排気分岐部30(30a,30b)と、熱交換部10と、を備えたものである。
排気分配部40は、この排気分配部40が設けられた排気系の通気抵抗を変更し、排気分岐部30a,30bに流れる排気ガスの排気量を可変して、熱交換部10における熱回収量を調整する、排気分配機構41を有している。
熱交換部10は、第一端面18及び第二端面19を有し、第一端面18から第二端面19に向かう軸方向の中央部分14が空洞14aの中空柱状のハニカム体11と、ハニカム体11を収容するケーシング21と、を有する。
ハニカム体11は、隔壁13を有し、この隔壁13によって、第一端面18から第二端面19まで延びる、排気ガスの流路となる複数のセル12が区画形成されたものである。このように構成されていることにより、ハニカム体11のセル12を流通する排気ガス50の熱を効率よく集熱し、外部(具体的には、熱交換媒体51)に伝達することができる。また、ハニカム体11の中央部分14に形成された空洞14aのことを、単に、「ハニカム体11の空洞14a」ということがある。また、ハニカム体11の「中央部分14」とは、中空柱状(ドーナツ形状)のハニカム体11における軸方向の中央寄りの部分であって、この中央部分14の周りに、環状のハニカム体11の実体部分(外周部分15)が存在することを意味する。例えば、ハニカム体11の「中央部分14」は、ハニカム体11の軸方向に直交する断面における正確な中心を含んでいなくともよい。
ケーシング21は、ハニカム体11の外周を覆うように配置された第一ケーシング22と、第一ケーシング22の外周に配置された第二ケーシング23と、を有する。ケーシング21は、第一ケーシング22と第二ケーシング23との間に、排気ガスとの熱交換による排熱を回収するための熱交換媒体の経路25が形成されたものである。なお、第一ケーシング22は、例えば、ハニカム体11の第一端面18が排気ガスの出入口となる場合には、ハニカム体11の外周面及び第二端面19側を覆うように配置される。そして、第一ケーシング22は、ハニカム体11の第二端面19との間に、ハニカム体11の実体部分を通過した排気ガスが、当該ハニカム体11の空洞14aへと流れることを阻害しない程度の、隙間を有することが好ましい。
熱交換部10は、ハニカム体11の複数のセル12によって形成された流路と、一方の排気分岐部30aとが連通し、且つ、ハニカム体11に形成された空洞14aと、もう一方の排気分岐部30bとが連通するように、排気系に配設されている。
本実施形態の排熱回収器100は、熱交換部10に中空柱状のハニカム体11を用いているため、ハニカム体11の実体部分を通過する排気ガスの熱を、ケーシング21に形成された経路25内を流れる熱交換媒体51に、有効に伝達することができる。ハニカム体11の空洞14aは、排気ガスの出し入れを行う際の流路として利用する。ハニカム体11の実体部分と、ハニカム体11の空洞14aとを利用して排気ガスの出し入れを行うことで、装置の小型化を実現することができる。また、このようなハニカム体11を有する熱交換部10を用いることにより、熱遮断性に優れ、また、熱交換部10の過度な圧力損失の上昇を抑制することができる。
本実施形態の排熱回収器100においては、例えば、排気分岐部30aを経由してハニカム体11の第一端面18から排気ガスが流入すると、ハニカム体11の実体部分を通過する際に、熱交換媒体51と熱交換が行われる。熱交換済みの排気ガス(別言すれば、熱回収済みの排気ガス)は、ハニカム体11の第二端面19から流出し、当該ハニカム体11の外周を覆うように配設された第一ケーシング22によって、その流れ方向を転じさせ、ハニカム体11の空洞14aへと流れる。そして、ハニカム体11の空洞14aを経由し、更に、排気分岐部30bを通じて、排気系に戻され、以降、この排気系を通じて、適宜外部へと排出される。このように、本実施形態の排熱回収器100においては、熱交換部10内における流路と、バイパス流路とを完全に分離することができる。
本実施形態の排熱回収器100においては、排気分配部40を構成する排気系の配管42の延びる方向に対して、ハニカム体11の第一端面18が、平行であることが好ましい。例えば、図2に示すように、バイパス流路内の排気ガス50の流れ方向が、図2の紙面の左側から右側に向かう方向である場合には、ハニカム体11は、以下のような状態で、ケーシング21内に収納されていることが好ましい。ハニカム体11は、その軸方向が、バイパス流路の排気ガス50の流れ方向に対して直交するような状態で、ケーシング21内に収納されていることが好ましい。このように構成することによって、排熱回収器100の小型化が可能である。また、ハニカム体11を収納する第一ケーシング22は、空洞14aが形成された部分を含め、ハニカム体11の第二端面19側においても、排気ガス50が高頻度に接触するため、伝熱面積を広くとることができる。このため、熱回収効率に優れた排熱回収器を実現することができる。
ハニカム体11は、中央部分14が空洞14aの中空柱状(ドーナツ形状)であり、空洞14aの内側は円筒状に連続した、内壁構造17が備わっているものであってもよい。
ハニカム体11の外形は、特に制限はない。ハニカム体11のセル12の延びる方向に直交する断面における断面形状は、円形、楕円形、四角形、またはその他の多角形であってもよい。図5に示すハニカム体11は、セル12の延びる方向に直交する断面における断面形状が円形のものである。
ハニカム体11の隔壁13の材質については特に制限はない。例えば、ハニカム体11の隔壁13は、セラミックを主成分とするものや、金属粉末を成形後に焼結させた焼結金属からなるものを挙げることができ、特に、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。「セラミックを主成分とする」とは、「隔壁13の全質量に占めるセラミックの質量比率が50質量%以上であること」をいう。
中央部分14の空洞に設けられた内壁構造17は、例えば、中央部分14の空洞14aに収まるような、例えば、金属製の配管を配設したものであってもよい。なお、中央部分14の空洞14aに設けられた内壁構造17は、隔壁13と同一又は異なる成分のセラミックからなるものであってもよい。
ハニカム体11の隔壁13がセラミックや焼結金属からなるものである場合には、隔壁13の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。隔壁13の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。なお、隔壁13の気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
隔壁13は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム体11の50質量%以上がSiCであることを意味する。
さらに具体的には、ハニカム体11の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si3N4、及びSiC等を採用することができる。
ハニカム体11のセル12の延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、特に制限はない。円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
ハニカム体11のセル密度(即ち、単位面積当たりのセルの数)については特に制限はない。セル密度は、適宜設計すればよいが、4〜320セル/cm2の範囲であることが好ましい。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁の強度、ひいてはハニカム体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、排気ガス50が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。なお、ハニカム体11のセル密度は、中央部分14を除いた、外周部分15におけるセル密度のことである。
ハニカム体11のアイソスタティック強度は、1MPa以上が好ましく、5MPa以上が更に好ましい。ハニカム体11のアイソスタティック強度が、1MPa以上であると、ハニカム体11の耐久性を十分なものとすることができる。なお、ハニカム体11のアイソスタティック強度の上限値は、100MPa程度である。ハニカム体11のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
ハニカム体11の隔壁13の厚さについては、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。隔壁13の厚さは、0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁の厚さを0.1mm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、隔壁の厚さを1mm以下とすることにより、排気ガス50の圧力損失が大きくなったり、熱回収効率が低下したりするといった不具合を防止することができる。
ハニカム体11の熱伝導率は、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100〜300W/(m・K)であることが更に好ましく、120〜300W/(m・K)であることが特に好ましい。ハニカム体11の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率よくハニカム体内の熱を、ハニカム体に嵌合するように配置された第一ケーシング22を介して、熱交換媒体51に伝達することができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法により測定した値である。
ハニカム体11の隔壁13に触媒を担持させてもよい。隔壁13に触媒を担持させると、排気ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含有する触媒を好適例として挙げることができる。上記元素は、金属単体、金属酸化物、およびそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましい。また、貴金属を含む触媒の担持量としては、0.1〜5g/Lであることが好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。
第一ケーシング22及び第二ケーシング23の材質としては、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができる。第一ケーシング22と第二ケーシング23との間には、排気ガス50との熱交換による排熱を回収するための熱交換媒体51の経路25が形成される。第二ケーシング23には、熱交換媒体51が導入される熱交換媒体導入口26、及び熱交換媒体51が排出される熱交換媒体排出口27を有することが好ましい。熱交換媒体導入口26、及び熱交換媒体排出口27は、第二ケーシング23に少なくとも一対形成されていることが好ましい。
ケーシング21は、第一ケーシング22の外周面の全域に、熱交換媒体の経路が形成されたものであってもよい。このように構成することによって、熱交換部10に流入する排気ガス50の熱を効率よく集熱し、熱交換媒体51に良好に伝達することができる。ここで、「第一ケーシング22の外周面の全域」とは、ハニカム体11の第一端面18が排気ガスの出入口となる場合において、このハニカム体11の外周面及び第二端面19側を覆うように配置された第一ケーシング22の外周面の全域のことを意味する。
排気分岐部30は、排気分配部40を挟んで排気系の上流側61及び下流側62に、それぞれ設けられている。図1〜図4に示す例では、排気分配部40を挟んで排気系の上流側61に排気分岐部30aとして、排気系を貫通する4つの貫通孔33が、排気分岐部30aの分岐路として設けられ、この4つの貫通孔33により、排気分岐部30aと、熱交換部10のハニカム体11の実体部分と、が連通している。また、図1〜図4に示す例では、排気分配部40を挟んで排気系の下流側62に排気分岐部30bとして、排気系を貫通する1つの貫通孔33が、排気分岐部30aの分岐路として設けられ、排気分岐部30bと、熱交換部10のハニカム体11の空洞14aと、が連通している。
排気分岐部30a,30bとして、排気系を貫通する貫通孔33を設ける場合には、それぞれの貫通孔33の数については、特に制限はない。熱交換部10のハニカム体11の実体部分と連通するための排気分岐部30aは、排気分岐部30aにおける貫通孔33の面積(貫通孔33が複数個の場合は、その総面積)を「S1」とし、排気系のバイパス流路の断面積を「S2」とした場合に、S1/S2の値が、0.01以上、0.7以下であることが好ましく、0.1以上、0.5以下であることが特に好ましい。S1/S2の値が、0.01未満であると、熱交換部10に流入又は流出する際の圧力損失が増大することがある。また、S1/S2の値が、0.7を超えると、熱遮断性が悪化する点で好ましくない。
排気分岐部30bにおける貫通孔33の面積(貫通孔33が複数個の場合は、その総面積)を「S3」とし、排気系のバイパス流路の断面積を「S2」とした場合に、S3/S2の値が、0.01以上、0.7以下であることが好ましく、0.1以上、0.5以下であることが特に好ましい。S3/S2の値が、0.01未満であると、熱交換部10に流入又は流出する際の圧力損失が増大することがある。また、S3/S2の値が、0.7を超えると、熱遮断性が悪化する点で好ましくない。
ハニカム体11の実体部分の断面積を「S4」とし、排気系のバイパス流路の断面積を「S2」とした場合に、S4/S2の値が、0.3以上、1.55以下であることが好ましく、0.3以上、1.0以下であることが特に好ましい。S4/S2の値が、0.3未満であると、熱交換部10に流入又は流出する際の圧力損失が増大することがある。また、S4/S2の値が、1.55を超えると、熱遮断性が悪化する点で好ましくない。
ハニカム体11の空洞14aの断面積を「S5」とし、排気系のバイパス流路の断面積を「S2」とした場合に、S5/S2の値が、0.03以上、1.15以下であることが好ましく、0.3以上、1.0以下であることが特に好ましい。S5/S2の値が、0.03未満であると、熱交換部10に流入又は流出する際の圧力損失が増大することがある。また、S5/S2の値が、1.15を超えると、熱遮断性が悪化する点で好ましくない。
排気分岐部30の分岐路は、図1及び図2に示すような貫通孔33に限定されることはない。例えば、排気分岐部30の分岐路としては、排気ガス50のガス流れを少なくとも2系統に分岐して、熱交換部10と、排気系のバイパス流路とに、それぞれ個々に排気ガス50を流入させることが可能なものであればよい。
排気分配部40は、この排気分配部40が設けられた排気系の通気抵抗を変更し、排気分岐部30に流れる排気ガス50の排気量を可変して、熱交換部10における熱回収量を調整する、排気分配機構41を有する。図1及び図2に示す排熱回収器100においては、排気分配部40を構成する配管42(別言すれば、バイパス流路)に、開閉弁43が設けられおり、この開閉弁43が排気分配機構41となっている。開閉弁43が閉となると、配管42(バイパス流路)の通気抵抗が上昇し、熱交換部10に流通する排気量が増加する。一方、開閉弁43が開となると、配管42の通気抵抗が低下し、熱交換部10に流通する排気量が減少する。したがって、図1及び図2に示す排熱回収器100においては、排気熱の回収を促進したい場合には、開閉弁43を閉とし、排気熱の回収を抑制したい場合には、開閉弁43を開とすることで、必要に応じて熱回収量を調整することができる。図1及び図2に示す開閉弁43は、弁棒44を軸に、弁体45がガス流れに対して、直交方向から平行方向に90°移動することで、弁の開閉を行うものである。なお、開閉弁43の開閉機構は、図1及び図2に示す開閉弁43に限定されることはない。
排気分配部40は、バイパス流路となる排気系の通気抵抗が最小となるように変化させた時に、2つの排気分岐部30a,30bのうちのいずれか一方の排気分岐部(図2においては、排気分岐部30b)を閉鎖するように構成されていてもよい。本実施形態の排熱回収器においては、熱交換部10の背圧と、排気系のバイパス流路の背圧と、を比較した場合、総じて、熱交換部10の背圧が大きくなることが多い。このため、排気熱の回収を抑制したい場合において、開閉弁43を開とするのみで、特段、排気分岐部30a,30bのうちのいずれか一方を閉鎖せずとも、バイパス流路に優先的に排気ガスを流すことができる。上記したように、バイパス流路となる排気系の通気抵抗が最小となるように変化させた時に、排気分岐部30bを閉鎖するように構成することで、排気熱の回収を抑制したい場合において、熱交換部10への排気ガスの流入をより有効に遮断することができる。
排熱回収器100は、内燃機関を有する自動車などの排気系に対して接続を行うための接続機構を有している。排熱回収器100は、バイパス流路を構成する配管42の両端に、接続機構としてフランジ部64を有しており、自動車などの排気系に対して接続を行うことができる。
ここで、本実施形態の排熱回収器についてのより詳細な構成を図6A〜図8Bに示す。図6Aは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す斜視図である。図6Bは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す断面図であり、排気系の流れ方向に平行な断面を示す断面図である。図6Cは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す平面図であり、図6Bに示す排熱回収器を矢印Bの方向に見た平面図である。図7Aは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す斜視図であって、排気系の流れ方向に平行な面で切断した状態を示す図である。図7Bは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す斜視図であって、排気系の流れ方向に直交する面で切断した状態を示す図である。図7Cは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す別の斜視図であって、排気系の流れ方向に平行な面で切断した状態を示す図である。図7Dは、本発明の排熱回収器の第一実施形態を模式的に示す別の斜視図であって、排気系の流れ方向に直交する面で切断した状態を示す図である。図8Aは、本発明の排熱回収器の第一実施形態における排気ガスの流れを説明するための模式図である。図8Bは、本発明の排熱回収器の第一実施形態における排気ガスの流れを説明するための模式図である。
(排熱回収器の製造方法)
次に、排熱回収器の製造方法を説明する。本発明の排熱回収器は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、セラミック粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の材料としては、ハニカム体の隔壁の好適材料として挙げたセラミックを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム体を製造する場合、まず、所定量のSiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、得られた坏土を成形して、所望形状のハニカム成形体を作製する。そして、作製したハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁によって複数のセルが区画形成されたハニカム体を得ることができる。次に、ハニカム体の中央部分をくり抜き、中空柱状とする。なお、ハニカム体の中央部分をくり抜く場合には、ハニカム成形体の状態で行ってもよいし、焼成後の焼成体(ハニカム体)の状態で行ってもよい。また、中空柱状のハニカム体を押し出して成形してもよい。
次に、ハニカム体の外周を覆うように、第一ケーシングを配設する。例えば、第一ケーシングとしては、ステンレスからなる有頂筒状部材を用いることができる。このような有頂筒状部材内にハニカム体を挿入し、焼き嵌めにより、有頂筒状部材の側面をハニカム体の外周面に嵌合させることにより、ハニカム体の外周を覆うように、第一ケーシングを配設することが好ましい。なお、ハニカム体と有頂筒状部材との嵌合は、焼き嵌め以外に、圧入やろう付け、拡散接合等を用いてもよい。
次に、ステンレスからなり、ケーシングの一部となる第二ケーシングを作製する。次に、作製した第二ケーシングの内部に、ハニカム体と、ハニカム体に嵌合するように配置された第一ケーシング(有頂筒状部材)とを配置する。第二ケーシングと第一ケーシングとを接合して、ケーシングを作製する。このようにして、ハニカム体と、ハニカム体を収容するケーシングと、を有する熱交換部を作製する。なお、第一ケーシングと第二ケーシングとの間には、排気ガスとの熱交換による排熱を回収するための熱交換媒体の経路が形成されるように、所定の隙間を設ける。また、第二ケーシングには、熱交換媒体が導入される熱交換媒体導入口、及び当該熱交換媒体が排出される熱交換媒体排出口を形成する。
また、排気分配部、及び排気分岐部を作製する。具体的には、まず、排気分配部及び排気分岐部を構成し、排熱回収器内のバイパス流路となる配管を用意する。そして、用意した配管に、開閉弁を配設する。排気分岐部は、例えば、上述したように開閉弁を配設した配管の上流側及び下流側に、それぞれ貫通孔を形成することによって形成することができる。配管に形成するそれぞれの貫通孔の位置は、当該配管に、上記熱交換部を接続した場合に、一方の貫通孔が、ハニカム体の実体部分と連通するようなものとし、もう一方の貫通孔が、ハニカム体の空洞と連通するようなものとする。
排気分岐部及び排気分配部を作製した配管に、熱交換部を接続し、排熱回収器を作製する。熱交換部の接続は、分離可能な方法で行ってもよいし、分離不可の方法で行ってもよい。なお、排熱回収器を作製する方法は、これまでに説明した方法に限定されることはなく、各実施形態の排熱回収器の構成に応じて、適宜変更、改良等を行うことができる。
(1−2)排熱回収器の第二実施形態:
排熱回収器の第二実施形態は、図9〜図11に示す排熱回収器200である。図9は、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す上面図である。図10は、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す断面図であり、排気系の流れ方向に平行な断面を示す断面図である。図11は、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す平面図であり、図10に示す排熱回収器を矢印Cの方向に見た平面図である。図9〜図11に示す排熱回収器200において、図1〜図4に示す排熱回収器100と同様に構成されたものについては、同一の符号を付し説明を省略することがある。
排熱回収器200は、熱交換部10と、排気分岐部30と、排気分配部40と、を備えている。本実施形態の排熱回収器200は、熱交換部10が、排気分岐部30から分離可能に構成されている。即ち、排気分岐部30が設けられた配管42と、熱交換部10のケーシング21とが、固定部63によってねじ止め固定されており、固定部63における固定を解除することで、熱交換部10を排気分岐部30から分離することができる。なお、固定部63における固定方法については、ねじ止め固定に限定されることはなく、種々の固定方法(締結方法)を採用することができる。このように構成することによって、例えば、排熱回収器200の一部の構成要素が破損した場合に、排熱回収器200全体を交換せずに、熱交換部10などを部分的に交換することができる。また、排熱回収器200自体も、排気系に対して取り外し可能に構成されていてもよい。このように構成することによって、排熱回収器100のメンテナンス等が容易となる。
熱交換部10は、固定部63によって分離可能に構成されていること以外は、図1〜図4に示す排熱回収器100の熱交換部10と同様に構成されていることが好ましい。また、排気分岐部30及び排気分配部40についても、図1〜図4に示す排熱回収器100の熱交換部10と同様に構成されていることが好ましい。また、排熱回収器200は、バイパス流路を構成する配管42の両端に、接続機構としてフランジ部64(図1参照)を有していてもよい。
排熱回収器200の排気分配部40における排気分配機構41は、図1〜図4に示す排熱回収器100の開閉弁43と同様に構成されたものであるが、排気系の通気抵抗を変更することが可能なものであれば、図示のような開閉弁43に限定されることはない。例えば、図示は省略するが、排気分配部の排気分配機構が、配管の中央を横切るように配設された弁棒を軸に、弁体が回転するように構成された開閉弁等であってもよい。なお、排気系の通気抵抗の変化に伴い、排気分岐部のいずれか一方を閉鎖するための開閉弁43としては、図9〜図11に示すような開閉弁43が好ましい。
ここで、本実施形態の排熱回収器についてのより詳細な構成を図12A〜図14Bに示す。図12Aは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す斜視図である。図12Bは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す断面図であり、排気系の流れ方向に平行な断面を示す断面図である。図12Cは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す平面図であり、図12Bに示す排熱回収器を矢印Dの方向に見た平面図である。図13Aは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す斜視図であって、排気系の流れ方向に平行な面で切断した状態を示す図である。図13Bは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す斜視図であって、排気系の流れ方向に直交する面で切断した状態を示す図である。図13Cは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す別の斜視図であって、排気系の流れ方向に平行な面で切断した状態を示す図である。図13Dは、本発明の排熱回収器の第二実施形態を模式的に示す別の斜視図であって、排気系の流れ方向に直交する面で切断した状態を示す図である。図14Aは、本発明の排熱回収器の第二実施形態における排気ガスの流れを説明するための模式図である。図14Bは、本発明の排熱回収器の第二実施形態における排気ガスの流れを説明するための模式図である。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の排熱回収器として、図1〜図4に示す排熱回収器100と同様に構成された排熱回収器を製造した。以下、実施例1の排熱回収器の製造方法を示す。
(ハニカム体の作製)
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押し出した後、乾燥し、所定の外形寸法に加工後、Si含浸焼成することによって、円柱状のハニカム焼成体を作製した。ハニカム焼成体は、端面の直径(外径)が70mm、セルの延びる方向の長さ25mmのものであった。ハニカム焼成体のセル密度は、35セル/cm2、隔壁の厚さ(壁厚)は0.3mmであった。ハニカム焼成体の熱伝導率は150W/(m・K)であった。
次に、作製したハニカム焼成体の端面の中心を含む直径50mmの範囲を、円柱状にくり抜き、中央部分が空洞の中空柱状のハニカム体を作製した。作製したハニカム体の空洞の内側に、当該空洞の内径に一致する大きさの、ステンレスからなる円筒状の内壁を配置した。
(熱交換部の作製)
次に、第一ケーシングとして、以下のように構成された、ステンレスからなる有頂筒状部材を作製した。第一ケーシングとしての有頂筒状部材は、内径が69.8mmで、軸方向の長さが30mmの有頂円筒状であり、肉厚が1mmであった。次に、作製した第一ケーシングにハニカム体を挿入し、焼き嵌めにより、ハニカム体の外周面に嵌合するように第一ケーシングを配置した。なお、第一ケーシングの頂部である天面と、ハニカム体との間には、排気ガスが流通できるように、2mmの隙間を設けた。
次に、第二ケーシングとして、以下のように構成された、ステンレスからなる有頂筒状部材を作製した。第二ケーシングとしての有頂筒状部材は、内径が78mmで、軸方向の長さが34mmの有頂円筒状であり、肉厚が1.5mmであった。第二ケーシングとしての有頂筒状部材には、熱交換媒体が導入される熱交換媒体導入口、及び当該熱交換媒体が排出される熱交換媒体排出口を形成した。
次に、作製した第二ケーシングの内部に、ハニカム体が内部に配設された第一ケーシングを配置し、第二ケーシングと第一ケーシングとを溶接により接合し、熱交換部を作製した。第二ケーシングと第一ケーシングとの間には、ハニカム体の径方向に、第二ケーシングと第一ケーシングとの距離が3mmの熱交換媒体の経路が形成されていた。
(排気分配部及び排気分岐部の作製)
まず、排気分配部及び排気分岐部を構成し、排熱回収器内のバイパス流路となる配管を用意した。次に、用意した配管の中央付近に、開閉弁を配設した。この開閉弁が、排気分配部の排気分配機構となる。次に、開閉弁を配設した配管の上流側及び下流側に、それぞれ貫通孔を形成し、これらの貫通孔を、排気分岐部の分岐路とした。なお、配管の上流側には、図1と同様に、配管に対して熱交換部を接続した際に、ハニカム体の実体部分と連通する位置に、各開口面積が125mm2の貫通孔を、4つ形成した。また、配管の下流側には、図1と同様に、配管に対して熱交換部を接続した際に、ハニカム体の空洞と連通する位置に、開口面積が500mm2の貫通孔を、1つ形成した。
排気分配部及び排気分岐部を形成した配管に、熱交換部を接続し、実施例1の排熱回収器を作製した。
(実施例2)
実施例2の排熱回収器として、図9〜図11に示す排熱回収器200と同様に構成された排熱回収器を製造した。実施例2の排熱回収器においては、まず、実施例1と同様の原料を用いて、端面の直径(外径)が42mm、セルの延びる方向の長さ25mmのハニカム焼成体を作製した。ハニカム焼成体のセル密度は、35セル/cm2、隔壁の厚さ(壁厚)は0.3mmであった。
次に、作製したハニカム焼成体の端面の中心を含む直径30mmの範囲を、円柱状にくり抜き、中央部分が空洞の中空柱状のハニカム体を作製した。
次に、第一ケーシングとして、以下のように構成された、ステンレスからなる有頂筒状部材を作製した。第一ケーシングとしての有頂筒状部材は、内径が41.8mmで、軸方向の長さが30mmの有頂円筒状であり、肉厚が1mmであった。次に、作製した第一ケーシングにハニカム体を挿入し、焼き嵌めにより、ハニカム体の外周面に嵌合するように第一ケーシングを配置した。なお、第一ケーシングの頂部である天面と、ハニカム体との間には、排気ガスが流通できるように、2mmの隙間を設けた。
次に、第二ケーシングとして、以下のように構成された、ステンレスからなる有頂筒状部材を作製した。第二ケーシングとしての有頂筒状部材は、内径が50mmで、軸方向の長さが34mmの有頂筒状部材であり、肉厚が1.5mmであった。第二ケーシングとしての有頂筒状部材には、熱交換媒体が導入される熱交換媒体導入口、及び当該熱交換媒体が排出される熱交換媒体排出口を形成した。また、この有頂筒状部材の裾部分には、有頂筒状部材の側面に対して直交するようにはみ出したフランジ部を設け、このフランジ部の四隅に、後述する排気分配部及び排気分岐部を構成する配管との締結を行うための固定部を形成した。
次に、作製した第二ケーシングの内部に、ハニカム体が内部に配設された第一ケーシングを配置し、第二ケーシングと第一ケーシングとを溶接により接合し、熱交換部を作製した。第二ケーシングと第一ケーシングとの間には、ハニカム体の径方向に、第二ケーシングと第一ケーシングとの距離が3mmの熱交換媒体の経路が形成されていた。
(排気分配部及び排気分岐部の作製)
まず、排気分配部及び排気分岐部を構成し、排熱回収器内のバイパス流路となる配管を用意した。次に、用意した配管の中央付近に、開閉弁を配設した。この開閉弁が、排気分配部の排気分配機構となる。次に、開閉弁を配設した配管の上流側及び下流側に、それぞれ貫通孔を形成し、これらの貫通孔を、排気分岐部の分岐路とした。なお、配管の上流側には、図9と同様に、配管に対して熱交換部を接続した際に、ハニカム体の実体部分と連通する位置に、開口面積が260mm2の、切り欠きドーナツ形状の貫通孔を、1つ形成した。また、配管の下流側には、図9と同様に、配管に対して熱交換部を接続した際に、ハニカム体の空洞と連通する位置に、開口面積が260mm2の、円形の貫通孔を、1つ形成した。
(熱遮断性の評価)
実施例1,2の排熱回収器の熱遮断性について、以下の方法で評価を行った。排熱回収器へ高温・高流量の排気ガスを流入させたとき、熱回収部への流入熱量を調査した。評価条件として排気ガスは1,000℃、100g/sとし、熱交換媒体は40℃、3L/minの水を使用した。結果、水は沸騰することなく安定して稼動することができた。
(比較例1)
比較例1の排熱回収器として、図15に示す排熱回収器300と同様に構成された排熱回収器を製造した。図15は、比較例1の排熱回収器を模式的に示す断面図であり、排気系の流れ方向に平行な断面を示す断面図である。図15に示すように、比較例1の排熱回収器300は、ハニカム体111を、ケーシング121内に収容し、ケーシング121のハニカム体111が配置された箇所の外周側に、熱交換媒体51の経路125を設けたものである。
(熱回収効率の測定)
実施例1,2及び比較例1の排熱回収器に、排気ガス(第一流体)を通気し、熱交換媒体として水(第二流体)を用いた場合の、熱回収効率を測定した。なお、熱回収効率は、排熱回収器に流入した入熱量、及び排熱回収器が回収した回収熱量を測定し、下記式(1)によって求めた。
熱回収効率=回収熱量/入熱量×100 (1)
入熱量は、「排熱回収器に流入する前の第一流体と第二流体との温度差」、「第一流体の比熱容量」、及び「第一流体の質量流量」の積として求めることができる。なお、「排熱回収器に流入する前の第一流体と第二流体との温度差」とは、排熱回収器に流入する直前の第一流体の温度から、排熱回収器に流入する直前の第二流体の温度を引いた値のことである。また、回収熱量は、「排熱回収器に流入する前と流出した後の第二流体の温度差」、「第二流体の比熱容量」、及び「第二流体の質量流量」の積として求めることができる。「排熱回収器に流入する前と流出した後の第二流体の温度差」とは、排熱回収器から流出した直後の第二流体の温度から、排熱回収器に流入する直前の第二流体の温度を引いた値のことである。
熱回収効率の測定においては、排気ガスの温度を、400℃とし、排気ガスの流量を、5g/秒、10g/秒、20g/秒、40g/秒、60g/秒、及び100g/秒の6つの条件にて測定を行った。なお、実施例1,2の排熱回収器において、5g/秒、10g/秒、20g/秒の3つの条件においては、排気分配部の排気分配機構として用いた開閉弁を「閉」として熱回収を行った。そして、実施例1,2の排熱回収器において、40g/秒、60g/秒、及び100g/秒の3つの条件においては、排気分配部の排気分配機構として用いた開閉弁を「開」として熱回収を行った。熱回収効率の測定結果を、表1に示す。
(結果)
実施例1,2の排熱回収器は、上述した熱遮断性の評価により、熱遮断性に優れることが分かった。また、実施例1,2の排熱回収器は、比較例1の排熱回収器と比較して、排気ガスの流量に応じて、熱回収効率を調整し、適切な排熱の回収を行うことができた。