JP6530394B2 - 混入物除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アポリポタンパク質を精製するための、特に、アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)含有溶液からウイルス病原体を除去するための方法と、Apo A−I調製物を提供することとに関する。
アポリポタンパク質は、可溶性リポタンパク質複合体の主要構成成分であり、アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)は、高密度リポタンパク質(HDL)粒子の主要タンパク質成分である。
アポリポタンパク質のA、CおよびEファミリーは、共通の祖先遺伝子から進化し、構造的に類似している。これらのタンパク質分子は、プロリン残基によってしばしば隔てられた一連の22−アミノ酸タンデム反復を一般に含む。反復22−アミノ酸セグメントは、両親媒性α−へリックスを形成しており、脂質表面と水表面の両方に結合することができる。ヒトApo A−I(243アミノ酸;28.1kDa)の場合には、8つの22マーおよび2つの11マー両親媒性へリックスがある(非特許文献1)。アポリポタンパク質の両親媒性α−へリックスは、リポタンパク質の安定化に重要な役割を果たす。この安定化は、アポリポタンパク質を、主要な疎水性へリックス面が複合体内の疎水性脂質と相互作用できるように配向させ、一方で反対側のアポリポタンパク質の主要な親水性面が周囲の水性環境と相互作用するように配向させることにより行われる。しかしながら、これらのタンパク質は、脂質成分から分離されると、疎水性アミノ酸残基の水性環境への露出により、操作が困難になる場合がある。特にα−へリックスの疎水性面は自己会合する傾向があり、その結果凝集物を形成し、条件によっては沈殿を生ずる。例えば、Apo A−I Milanoを含有する1mg/mLの溶液では、50mMのリン酸緩衝液中pH7.4で保存するとき、80%のタンパク質が凝集形態で含まれると考えられる(非特許文献2)。
Apo A−Iは、肝臓および腸で合成され、血液中のHDLの生理機能;「コレステロール逆転送」(reverse cholesterol transport、RCT)として知られる機構によって、末梢組織からコレステロールを取り除き、肝臓または他のリポタンパク質のいずれかに戻す生理機能における役割を担う。結果として、HDL粒子は血漿中に一連の大きさで存在し、このRCT脂質輸送作用によって絶えず再構築されている。したがってHDL粒子は高い密度(>1.063g/ml)と約5〜20nm(Stoke径)の範囲の大きさとによって特徴づけられる。高レベルの血清コレステロールと冠性心疾患(CHD)の発症との明らかな相関関係が、疫学的および長期的研究に基づいて繰り返し確認されてきた。HDL中のApo A−Iは、抗炎症機能を有し、CHDの発生と発症とを抑制すると考えられる。さらに、Apo A−Iは、血液中の低密度リポタンパク質(LDL)のレベルを低下させることが示されており、さらにリポ多糖またはエンドトキシンに結合することが知られており、したがってHDLの抗エンドトキシン機能において主要な役割を担う。HDLおよび主要タンパク質成分としてのApo A−Iの「保護」作用がいくつかの研究で確認されてきた。Apo A−Iの高い血漿レベルは、CHDのリスクおよび冠状動脈病変の減少に関与している。したがって、Apo A−Iは、急性冠状動脈症候群、アテローム性動脈硬化症処置、抗炎症処置、抗毒素処置、肝臓標的薬などの用途に対する再構成HDL(reconstituted HDL)などの薬物への応用が期待される。
組み換えによるまたは血漿由来の生物学的治療薬は一般に、ウイルスなどの病原体が本質的に混入(contaminate)している生物学的供給原料を使用して製造される。さらに、いくつかの製造プロセスは、その性質上、外来の病原体の混入を受け易い。したがって、生物学的治療薬の製造者は、十分なウイルスクリアランス工程を製造プロセスに導入して製品が確実に混入物を含まないようにする必要がある。
バイオテクノロジー製品(典型的にはタンパク質またはDNA)は、細胞培養、遺伝子導入動物、または遺伝子導入植物における組換えDNAを用いて製造される。製造に使用される一般的な細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、および酵母が挙げられる。細胞ベースの製造システムは、典型的には2つまたはそれ以上のバッチモードで行われ、一部では潅流システムも使用される。最終的な商業的規模の発酵は、1,000〜100,000Lスケールで実施され、大半のCHOベースの発酵槽は8,000〜25,000Lスケールである。
ヒト血漿は、今日では、大量に採取され(例えば、推計では2010年に世界中で3千万リットルの血漿が採取された)、個々の分画へと処理される;これらの分画のいくつかはアポリポタンパク質Apo A−Iを含んでいる。そのような血漿分画の例として、Cohn上清I、Cohn分画II+III、およびCohn分画IV(例えば、Cohn分画IV−1)またはそれらの変種(例えば、Kistler/Nitschmann分画IV)が挙げられる。血液および血漿は潜在的に輸液移行送性の病原体を含むため、そのような病原体、特にウイルスは、治療薬または治療薬送達のためのビヒクルとして血液または血漿由来成分を使用するとき、除去または不活化しなければならない。しかしながら、ウイルスは容易に除去できず、高度に精製した場合でさえ、依然として血漿由来製品に存在する場合がある。特に、小型のノンエンベロープウイルス、例えば約27〜32nmの大きさを有するピコルナウイルス科ウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス)および約18〜26nmの大きさを有するパルボウイルスが懸念される。その理由は、これらがいずれも小型であり、生理学的安定性が高いためである。したがって、血漿由来タンパク質治療薬を効率的にウイルス除去および不活化する方法の開発が引き続き必要とされている。
一般的なウイルス不活化技術としては、例えば、古典的低温殺菌方法(60℃で10時間加熱)、短波長紫外線光照射またはγ線照射などの物理的方法、および、溶解作用を有する界面活性剤または低pHインキュベーションなどの化学的方法が挙げられる。ウイルス除去技術としては、しばしばナノ濾過と称されるウイルス濾過などのサイズ排除方法が挙げられる。これらのウイルス濾過方法は、タンパク質溶液からウイルスを除去するために効果的な方法であることが示されてきた。
ウイルス濾過は、タンパク質溶液からウイルスを除去するための穏やかな方法であり、一般的に高レベルのタンパク質回収が可能で、タンパク質の生物学的活性が完全に保存されるという利点を有する。最適なウイルスフィルターは、容量(capacity)、処理能力(throughput)、および選択性(selectivity)を最大限にするものである。ウイルスフィルターの容量は、定圧濾過において流束が許容できない値に低下するまでに処理可能な、フィルター表面積1m当たりの濾液の合計体積である。処理能力は、供給物を濾過することができる速度(持続可能な最大透過流束)を指す。選択性は、高い生成物回収率と高いウイルス粒子保持を得る能力を指す。これらのフィルターは、許容される濾過流束で大量の供給物全体を処理し、ウイルス粒子を除去し、タンパク質の通過を最大限にしなければならない。ウイルス濾過の間のファウリング(fouling)は、通常、タンパク質凝集物、DNA、部分変性産物、または他のデブリによって占められる。
フィルター製造業者は、しばしば市販フィルターに公称または平均孔径格付などの用語を付しているが、これらは、実際の孔径の幾何学的大きさではなく、粒子または微生物に対する一定の保持基準に合致するものであることを一般に示している。
ウイルスクリアランスにおいて、濾過は、除去すべきウイルスの有効径よりも公称孔径が小さい濾過膜を通して実施する。ほんの少数でも異常に大きな孔が存在すると(300kDaまたはそれ以上の公称分子量カットオフ、NMWCO)、過度のウイルス漏出を許すことになる。したがって、ウイルスフィルターは全てのマクロの欠陥が除去されるように製造されなければならない。これは一般的にウイルス保持能と機械的安定性の必要な組合せを提供する複合膜の使用により達成される。ウイルス除去濾過膜は、一般に、再生セルロース、例えば銅アンモニア再生セルロース、または非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5および非特許文献6に記述されている親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)もしくは親水性ポリエーテルスルホン(PES)のような合成ポリマー材料などから作られる。
記載されているウイルス濾過方法としては、特許文献1が挙げられる。この文献は、溶液に少なくとも0.2Mのレベルまで塩を添加することによる、高分子(つまり、タンパク質)を含む溶液をウイルス濾過する方法に関する。この文献の出願人は、高価格品のホフマイスター・シリーズに特徴的な高塩析効果を示す塩類の使用、特にシトレート、タートレート、サルフェート、アセテートまたはホスフェートアニオン、およびナトリウム、カリウム、アンモニウムまたはカルシウムカチオンの使用を推奨している。塩化ナトリウムが特に好ましく、低い塩析効果を示す一連の低価格品(例えば、GuHCl)は使用されない。
特許文献1と整合することには、Kimら(非特許文献7)は、塩化ナトリウム(250mMのNaCl、30mMのTris、pH8)の存在下でのApo A−Iのウイルス濾過を記述している。この工程は、DEAE−FFカラムから溶出後すぐに実施される。しかしながら、Apo A−Iの凝集する性質により製造限界があり、理想的に濾過工程はApo A−Iがカラムから溶出されるときに完了する必要があるか、代替的にApo A−Iを非常に低いタンパク質濃度(例えば、0.1mg/mL)で塩の存在下で保存する必要がある。この後者の手法では、過剰な濾過体積が必要になるという欠点がある。ウイルスフィルターの費用は相当になる。このように、アポリポタンパク質の凝集などによる濾過容量の減少または過剰の濾過体積により、商業的規模において処理費用が非常に高くなる可能性がある。
特許文献2は、ポリオール糖または糖アルコール(つまりスクロースおよびソルビトール)などのクラスレート修飾物の使用に関する。特許文献2は、濾過膜表面の疎水性を増加させ、タンパク質の流体力学的半径を減少させること、ならびに濾過されることが望ましいタンパク質の自己会合傾向を減少させることを目的としている。
特許文献3は、フィブリノーゲン(340kDa)のような高分子量タンパク質の溶液からナノ濾過によってウイルスを除去する方法に関する。
比較的小さい(28kDa)Apo A−Iのようなアポリポタンパク質は、容易にウイルス濾過を適用できるはずである。しかしながら、既に上述したように、疎水性作用と凝集物形成という不適当な性質により、フィルター表面上でタンパク質クラスターの形成が促進され、フィルターの孔を閉塞させる。フィルターの観点からみると、膜の上流側の表面で、孔の閉塞および/またはケーキもしくは沈殿物の形成が生じる可能性があり、膜の孔構造内で生じる可能性もある。ファウリングは、定圧操作での流速の低下を引き起こし、一定濾液流束で操作するための圧力を増加させる。フィルターのファウリングの結果として、濾過の選択性の低下が生じ、結果的にタンパク質回収率の低下および/またはウイルス保持能の低下に至る。さらに、フィルターのファウリングは、容量および処理能力を低下させ、濾過時間の延長および/またはフィルター面積増加の必要性を生じさせる。さらに、アポリポタンパク質の可溶性の維持と凝集抑制に最適な操作条件は、高いウイルスクリアランスを確実にするのに最適な条件とは異なる可能性がある。特にアポリポタンパク質を溶解させるために使用されるカオトロピック物質は、病原体(例えば、ウイルス)の濾過性能およびおそらくは濾過膜の性能を変化させる。結果として、特定濃度でのカオトロピック物質の存在は、所望しないウイルスが濾過膜を通過することを許し、アポリポタンパク質を含む溶液を処理する工程の有用性を失わせる可能性がある。
国際公開第96/00237号 国際公開第03/105989号 米国特許出願公開第2003/232969(A1)号
Lund−Katz & Phillips、2010、Subcell Biochem. 51、183−227頁 Suurkuust & Hallen、2002、Spectroscopy 16、199−206頁 Manabe.S、Removal of virus through novel membrane filtration method.、Dev. Biol. Stand.、(1996)88:81−90頁 Brandwein Hら、Membrane filtration for virus removal.、Dev Biol(Basel).、(2000)102:157−63頁 Aranha−Creadoら、Clearance of murine leukaemia virus from monoclonal antibody solution by a hydrophilic PVDF microporous membrane filter.、Biologicals.(1998)6月;26(2):167−72頁 Moce−Llivinaら、Comparison of polyvinylidene fluoride and polyether sulfone membranes in filtering viral suspensions、Journal of Virological Methods、(2003)4月、109巻、1号、99−101頁 Biotechnology & Bioprocess Engineering、2011、16、785−792頁
したがって、本発明の目的は、ウイルス、特にパルボウイルス科ウイルスなどの小型のノンエンベロープウイルスを安全に除去するための濾過方法であって、Apo A−Iなどのアポリポタンパク質を含む溶液に対して好適で、産業的用途にも適した前記濾過方法を提供することである。
本発明の目的は、概して、アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)を精製するための方法であって、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液を、適切な孔径を有するフィルターを通して濾過する工程を含む方法によって達成される。
本発明の一態様では、アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)を精製するための方法であって、a)Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液を用意する工程;および、b)該溶液を15nm〜35nmの範囲の孔径を有するフィルターを通して濾過する工程を含む前記方法を提供する。
一実施形態において、本方法は、Apo A−Iにおけるウイルス混入を減少させるための方法である。本発明のいくつかの実施形態において、本方法は、Apo A−Iにおけるパルボウイルスを含むウイルス混入を減少させるための方法である。特定の実施形態において、パルボウイルスは、マウスの微小ウイルス(MVM)である。本発明のいくつかの実施形態において、本方法は、Apo A−Iにおけるピコルナウイルス科ウイルスを含むウイルス混入を減少させるための方法である。特定の実施形態において、ピコルナウイルス科ウイルスは、脳心筋炎ウイルス(EMCV)またはA型肝炎ウイルスである。
好ましい実施形態において、溶液は、5〜30g/Lの範囲内、特に5〜20g/Lの範囲内、例えば7〜12g/Lの範囲内のApo A−Iタンパク質濃度を含む。
好ましい実施形態において、溶液は、Apo A−Iの凝集を減少させるまたは阻害するGuHCl濃度を含む。溶液は、特に1.3〜3.2Mの範囲内、特に1.5〜2.0Mの範囲内のGuHCl濃度を含む。より好ましくは、溶液中のGuHCl濃度は1.7Mである。
一実施形態において、溶液のpHは、7.1〜7.5の範囲内、例えば7.3である。
一実施形態において、溶液は、1)Apo A−I沈殿物を4.0〜4.6MのGuHClに懸濁する工程;ならびに/または2)該懸濁物を5〜30g/Lの範囲内のApo A−Iタンパク質濃度および/もしくは1.3M〜3.2Mの範囲内のGuHCl濃度に希釈する工程の1つまたはそれ以上によって調製される。
一実施形態において、工程b)の後に、ウイルス不活化のために熱処理工程が実行される。熱処理は、溶液のpHを6.6〜8.0の範囲内に調節する工程;および続けて該溶液を55〜61℃の温度で約30分〜約4時間加熱する工程を含む。
代替的実施形態において、工程a)の前に、ウイルス不活化のために熱処理工程が実行される。熱処理は、GuHClとApo A−IをpH6.6〜8.0の範囲内で含む溶液を用意する工程;および続けて該溶液を55〜61℃の温度で約30分〜約4時間加熱する工程を含む。
好ましい実施形態において、pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液は、2.7〜3.9Mの範囲内、より好ましくは3.5MのGuHCl濃度を含む。
本発明の一実施形態において、pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液のpHは、好ましくは7.0〜8.0の範囲内である。特定の実施形態において、pHは7.3である。
本発明の一態様は、本発明の方法により精製されたApo A−Iも提供する。
本発明の一態様は、パルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(log reduction value、対数減少値);および/またはノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRV;および/または脂質エンベロープウイルスに対して少なくとも8.5log LRVを有するApo A−I調製物も提供する。特定の実施形態において、Apo A−I調製物は、医薬用途に適している。
別の態様において、本発明は、前記態様によるApo A−IまたはApo AI調製物を、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに含む医薬組成物を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、医薬組成物を製造する方法であって、前記態様に記載の方法によりApo A−Iを製造する工程、およびApo A−Iを医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせ;または前記態様に記載のApo A−I調製物を医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせ;それにより医薬組成物を製造する工程を含む、医薬組成物の前記方法を提供する。
本発明のさらなる態様は、前記態様に記載のApo A−IまたはApo−AI調製物を脂質と共に含むrHDL製剤を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、再構成HDL製剤を製造する方法であって、前記態様に記載の方法によりApo A−Iを製造する工程、およびApo A−1を脂質と組み合わせ;または前記態様に記載のApo A−I調製物を脂質と組み合わせ;それにより再構成HDL製剤を製造する工程を含む、再構成HDL製剤の前記方法を提供する。
さらなる本発明の態様は、哺乳動物における疾患、障害または状態を処置または予防する方法であって、前記態様のいずれかによるApo−A1、Apo−A1調製物、医薬組成物、またはrHDL製剤を哺乳動物に投与し、それにより疾患、障害または状態を処置または予防する工程を含む前記方法を提供する。
3.2MのGuHCl、19.7g/Lのタンパク質の条件下でのナノ濾過における溶液の処理能力[kg/m]を示す図である。 1.7MのGuHCl、8.9g/Lのタンパク質の条件下でのナノ濾過における溶液の処理能力[kg/m]を示す図である。 1.7MのGuHCl、5.8g/Lのタンパク質の条件下でのナノ濾過における溶液の処理能力[kg/m]を示す図である。 ナノ濾過全体にわたる負荷と流束を示す図である。
本明細書を通して、他に断りがない限り、用語「含む(comprise)」またはその変形、例えば「含む(comprises)」または「含む(comprising)」は、示した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を包含するが、任意の他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除するものではないことを意味すると理解される。
本明細書における任意の先行刊行物(もしくはそれに基づく情報)または公知の任意の物質についての言及は、その任意の先行の刊行物(もしくはそれに基づく情報)または公知の任意の物質が、本明細書と関連して検討した分野の共通の一般的知識の一部を形成することの認識もしくは承認または何らかの形の示唆ではなく、さらにそのような認識もしくは承認または何らかの形の示唆と解釈されるべきでない。
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示していない限り、複数の態様を含むことに留意が必要である。したがって、例えば、「タンパク質(a protein)」という言及は、1つのタンパク質だけでなく2つまたはそれ以上のタンパク質を含む。
数値xに関連した用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
本発明の複数の連続する工程を含む方法の提供において、本発明は、総数より少ない工程を含む方法も提供する。異なった工程を、異なる人により、異なる場所で(例えば異なる国で)、多様な時間において実施することができる。
特別に示さない限り、2つまたはそれ以上の成分の混合工程を含むプロセスは、特定の混合順序を何ら必要とするものではない。したがって成分は、任意の順序で混合することができる。3つの成分がある場合、2つの成分を互いに組み合わせ、次いで3番目の成分を組み合わせることなどが可能である。
フィルターの内容において用語「孔径」は、通常、フィルターの孔の大きさを意味する。典型的には、孔径は、フィルターにより除去することができる最小のウイルスのサイズより小さいまたはそれ未満である。この内容において、本発明の一定の実施形態は孔径の幾何学的特性(例えば、直径)に言及することもあるが、以下でさらに詳述されるように、孔径が機能的に定義できることも理解される。
驚くべきことに、本発明にしたがって塩酸グアニジン(GuHCl)(塩化グアニジンと呼ばれることもあり、GdHCl、GdmClまたはGndClと略されることもある)を使用するとき、Apo A−I溶液が、孔径15nm〜35nmの範囲の孔を有するフィルターを通じて濾過され、実質的または完全なウイルスクリアランスを、タンパク質の凝集およびフィルターの閉塞なく達成できることを見出した。特定の実施形態において、フィルターは、15nm〜35nm;または15nm〜35nm未満;または15nm〜30nm;または15nm〜25nm;または15nm〜20nm;または20nm〜25nm;または18nm〜23nm;または15nm〜26nm;または18nm〜26nm;または27nm〜32nm;または25nm〜30nm;または20nm〜30nmの範囲の孔径を有する。
本発明の実施形態において、15nm〜35nmの範囲の孔径を有するフィルターは、15nm〜35nmの範囲の平均孔径を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、15nm〜35nm未満;または15nm〜30nm;または15nm〜26nm;または18nm〜26nm;または15nm〜25nm;または15〜20nm;または20nm〜25nm;または18nm〜23nm;または27nm〜32nm;または25nm〜30nm、または20nm〜30nmの範囲の平均孔径を有する。特定の実施形態において、平均孔径は、約15nm;または約20nm;または約25nm;または約30nm;または約35nmである。
GuHClの使用は、以下の2つの点から有利である:1)カオトロピック特性により、GuHClは、抗凝集剤として機能し、例えば、溶液中のApo A−Iタンパク質の凝集クラスターの形成を阻害する;2)一方で、アポリポタンパク質構造に不可逆的影響はなく、したがってGuHClが除去されると、Apo A−Iへリックスが再形成され、タンパク質は脂質と結合して、再構成HDLのような粒子を形成する。さらにアポリポタンパク質はその生物学的活性を維持している。このことは生成物をさらに医薬物質として使用するために極めて重要である。
本発明の利点は、流速を上げ、液体体積ならびに濾過に必要なフィルター面積および処理時間を減少させることが可能となることである。結果として、より大量のApo A−I溶液を、短時間で濾過することができ、処理の効率を大幅に向上させることができる。
本発明で効率的に除去することができるウイルスは、約300nmより小さいサイズを有する。適切に除去することができるウイルスのサイズは約200nmより小さい。そのようなウイルスの例としては、サイトメガロウイルス(約180〜200nm、血漿製品);単純ヘルペスウイルス(約150〜200nm、組み換え製品);およびエプスタインバー・ウイルス(約120〜200nm、組み換え抗体製品)を挙げることができる。除去することのできるウイルスのサイズは好ましくは約120nmより小さい。そのようなウイルスの例としてはHIV(約80〜120nm、血漿由来製品)が挙げられる。通常、除去することのできるウイルスは、約20nm、つまりパルボウイルス(15〜26nm、血漿および組換え由来製品)のおよそのサイズより大きい。サイズが約18〜26nmのB19(血漿製品)のようなパルボウイルスは、治療タンパク質源から除去することが困難である。よって、パルボウイルスの既知のサイズに近い20nm領域のフィルター孔径を使用するときのナノ濾過がウイルスクリアランスを評価するための重要な製造工程と一般にみなされる。しかしながら、本発明のプロセスは、小さいウイルス、例えば、パルボウイルスファミリーのメンバー、ならびにA型肝炎ウイルス(約27〜32nm、血漿製品)、B型肝炎ウイルス(約42nm、血漿製品)、C型肝炎ウイルス(約30〜60nm、血漿製品)および脳心筋炎ウイルス(約25〜30nm;組み換え製品)の安全で効率的な除去を可能にする。このことは特に注目すべきであり、その理由は、当該分野の技術水準によれば、タンパク質の凝集やフィルターの閉塞を防ぐために過剰な量の希釈液が必要となり、これにより、しばしば小型ウイルスの流出がもたらされるためである。
本発明の特定の実施形態において、フィルターは、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液からパルボウイルス、例えばMVMまたはB19;および/またはA型肝炎ウイルス;および/またはピコルナウイルス科ウイルス、例えば脳心筋炎ウイルスを除去することができる孔径を有する。
ウイルス保持能は、適切には、供給物中のウイルス濃度対濾液中のウイルス濃度の比率の対数(底は10)として定義される対数減少値(LRV):LRV=−log10Sによって特徴づけられる;ここでSは、ウイルスの篩係数である。必要とされるLRVの合計は、出発物質のウイルス混入の性質と潜在性に依存する。ウイルス濾過工程は、通常、最小でも4−logのウイルス除去(LRV)が得られるように設計される。ウイルスクリアランス試験は、高力価の感染性ウイルス(異なる物理学的特性を有する)をスケールダウンしたモジュールにスパイクし、LRVを評価することによって達成される。エンベロープおよびノンエンベロープウイルスの両方の除去を実施することもできる。一般的なモデルウイルスとしては、動物パルボウイルス(例えば、MVM、B19)、ポリオウイルス(非特異性モデルウイルス)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)(A型肝炎などのピコルナウイルス科ウイルスについてのモデル)、シミアンウイルス40(SV40、非特異性モデルウイルス)、シンドビスウイルス(C型肝炎についてのモデル)、ウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV、C型肝炎などのフラビウイルス科ウイルスについてのモデル)、アヒルB型肝炎ウイルス(B型肝炎についてのモデル)、日本脳炎ウイルス(C型肝炎についてのモデル)およびレオウイルス(非特異性モデルウイルス)が挙げられる。初期設計試験も、はるかに高純度および高力価での取得が可能で分析がより容易な(およびより安価な)バクテリオファージを用いて実施することができる。
ウイルス濾過の妥当性試験は、典型的には13〜47mmのディスクを備えた自給式装置を使用して小規模で通常実施される。全てのプロセスパラメータを線形的に規模縮小し、ウイルスクリアランスに関して最悪である条件を示すべきである。最悪のプロセス条件下での妥当性を保証するために、産業的規模のプロセス設計と比較して表面積当たりより大量の供給流を処理することも重要である。ウイルスクリアランスは、いくつかの分画で測定されるべきである。いくつかの最近の研究から、ウイルスクリアランスにより、パルボ型ウイルスフィルター(20nm孔径)を用いるときの膜ファウリング(透過性減少)の程度を低減できることが実証された。
本発明の方法は、ウイルスの不活化および/または除去のための非常に効率的な方法を提供する。原理的に、そのような高ウイルス濃度が実際に存在することを想定して、本発明は、パルボウイルスなどの特に小型のノンエンベロープウイルスの含有量を、少なくとも3log LRV(ウイルスの数を1,000分の1に低下)、適切には少なくとも4log LRV(10,000分の1に低下)、好適には少なくとも5log LRV(100,000分の1に低下)、好ましくは少なくとも6log LRV(ウイルスの数を1,000,000分の1に低下)に低下することを可能にする。
さらに、本発明の濾過方法は、ウイルスをさらに減少させることを確実にするための他のウイルス除去または不活化手法、例えば熱処理工程と、容易に組み合わせることができる。
場合により、前濾過(pre−filtration)または清澄濾過(clarifying filtration)工程は、マクロサイズの粒子を除去するために、ウイルス濾過の前に実施することができる。そのような前濾過は、ウイルス除去膜よりも大きい孔径を有する膜を含むフィルターを用いて実施することもできる。本発明の一実施形態において、前置フィルターは、0.05〜0.5μmの範囲の孔径を有する。特定の実施形態において、前置フィルターは、Pall Nylon膜フィルター(SKL7002 NTP0.1μmもしくはFTKNI)またはSartopore2フィルターから選択される。特定の実施形態において、前置フィルターの大きさは、出発原料Apo A−I沈殿物1kg当たり少なくとも0.025mのフィルター表面積を使用するように選択される。他の実施形態において、前置フィルターの大きさは、出発原料Apo A−I沈殿物1kg当たり少なくとも0.014mのフィルター表面積を使用するように選択される。特定の実施形態において、前置フィルターの大きさは、出発原料Apo A−I沈殿物1kg当たり約0.014m〜約0.035mの範囲のフィルター表面積を使用するように選択される。前濾過は、ウイルスフィルターに対して直列的にまたはウイルスフィルターに対して系外のいずれかで実施することができる。特定の実施形態において、前濾過は、ウイルスフィルターに対して直列的に実施される。特定の実施形態において、前置フィルターは、ウイルス除去フィルターと同じ膜材料で作られる。
本発明のウイルス濾過方法のために好適なフィルターは市販されており、例えば特に、プラノバBioEx(旭化成株式会社)などの名称下で、購入することができる。そのようなフィルターは「小型ウイルス」除去フィルターと呼ばれることもある。
特定の実施形態において、ウイルス除去フィルターは、銅アンモニア再生セルロース、親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDF複合体、表面修飾PVDF、ナイロンおよびポリエーテルスルホンから選ばれる1つまたはそれ以上の材料から製造される膜を含む。
本発明の実施形態において、濾過膜はフラットシートまたは中空繊維膜である。フラットシート膜の例としては、親水性化PVDF濾過膜、例えば、Pegasus(商標)グレードSV4小型ウイルス除去フィルター(Pall Corporation)が挙げられる。実施形態において、フィルターは、PVDFフラットシート膜を含む。実施形態において、フィルターは、親水性PVDFフラットシート膜、複合PVDFフラットシート膜、または表面修飾PVDFフラットシート膜を含む。特定の実施形態において、フィルターは、Pegasus(商標)グレードSV4である。
他の実施形態において、フィルターは中空繊維膜である。中空繊維膜フォーマットは、典型的には、一束のストロー状中空繊維を、各中空繊維の壁が微細毛細管によって相互に連結した空間で構成された孔の3次元ウェブ構造を含有している状態で含有している。中空繊維フィルターの例としては、親水性修飾ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が中空繊維膜フォーマットに組み込まれたプラノバ(商標)BioEXフィルター(旭化成株式会社)が挙げられる。一実施形態において、フィルターは、中空繊維膜フォーマットのPVDF膜を含む。一実施形態において、フィルターは、親水性PVDF中空繊維膜フォーマットを含み、またはPVDF中空繊維膜フォーマットを含み、または表面修飾PVDF中空繊維膜フォーマットを含む。特定の実施形態において、フィルターは、プラノバ(商標)BioEXである。
非常に異なる構造を有する濾過膜を比較するために、顕微鏡検査のような視覚的方法を使用して孔径を調べることは適切でない。したがって、本明細書での孔径への言及は、視覚的方法ではなく、機能的方法で評価したフィルターの構造特性について記述する。フィルター孔径の評価は、機能的方法を使用して行うことができる。そのような方法としては、バブルポイント測定、液−液ポロシティ、圧入ポロシメトリー、高分子(例えば、バクテリアファージ)の篩分け、および/または既定した大きさの粒子が挙げられる。
平均フローバブルポイントは、ASTM E1294−89にしたがって測定することができる(「膜フィルターの孔径特徴に対する自動化液体ポロシメータを用いる標準試験法(Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter)」)。簡単には、この方法は、パーフルオロヘキサン(例えば、Fluorinert(商標)FC−72)を含むフィルターを湿らせて、次いで異なる空気圧力を適用して流体を除去することを含む。湿性フローが、乾性フロー(濡れ性溶媒の無いフロー)の2分の1に等しい点での圧力差を使用して平均フロー孔径が計算される。
本発明の特定の実施形態において、フィルターは、100psiを超える、または120psiを超えるパーフルオロヘキサンを用いて測定した平均フローバブルポイントを有する。
本発明の他の実施形態において、フィルターの孔径は、コロイド金粒子溶液をフィルターにかけること(例えば、AGPTS−旭化成金粒子テストシステム)によって評価することができる。試験の開始前にインラインの視覚的波長分光計で初期吸光度を測定する。金粒子溶液がフィルターを通過するとき、第2の吸光度読取により、金粒子除去率が評価され、孔径分布結果が、吸光度値のLRV計算に基づき決定される。
アポリポタンパク質は、天然のHDLまたは再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の機能的な生物学的に活性な成分である任意のアポリポタンパク質である。特定のアポリポタンパク質としては、A、CおよびEファミリーのメンバーが含まれる。典型的には、アポリポタンパク質は、血漿由来または組換えアポリポタンパク質、例えばApo A−I、Apo A−II、Apo A−V、pro−Apo A−I、またはApo A−I Milanoなどの変異体もしくは4WFなどのいわゆる酸化耐性形態である。特定の実施形態において、アポリポタンパク質はApo A−Iである。いくつかの実施形態において、Apo A−Iは血漿由来である。他の実施形態において、Apo A−Iは組換えApo A−Iである。好ましくは、Apo A−Iは、野生型配列またはMilano配列を含めて組換え的に誘導されるかまたはヒト血漿から精製される。Apo A−Iは、単量体、二量体、三量体、もしくは多量体、またはそれらの混合物の形態である。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の生物学的に活性な断片の形態であることもある。そのような断片は、天然物、化学的合成物または組換え体であることもある。例示として、Apo A−Iの生物学的に活性な断片は、好ましくは、Apo A−Iのレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)刺激活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%〜100%、さらには100%超を有する。
Apo A−Iのようなアポリポタンパク質を含む出発物質は、例えばKistler and Nitschmann分画法に従った沈殿物IVに由来し、例えば冷エタノール沈殿によりさらに精製されたものであってよい。代替的実施形態において、Apo A−Iなどのアポリポタンパク質を含む出発物質は、細胞培養物/発酵抽出物である。複数の実施形態において、Apo A−Iは、大腸菌宿主/ベクター系または哺乳動物宿主細胞、例えば、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(例えば、CHO−KIまたはCHO−S)、VERO、BHK、BHK570、HeLa、COS−I、COS−7、MDCK、293、3T3、PC12およびW138、またはミエローマ細胞もしくは細胞株(例えば、マウスミエローマ細胞または細胞株)で細胞培養することによって産生される。特定の実施形態において、細胞培養物は、無血清培地で培養されたものである。特定の実施形態において、細胞培養物は、動物由来成分を欠如させた無血清培地で培養されたものである。
使用前にApo A−I沈殿物は−20℃未満の温度で冷凍庫に保存しておくことができる。
Apo A−I沈殿物の懸濁について、Apo A−I沈殿物の溶液に対する比率は、1:2〜1:5の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、Apo A−I沈殿物の溶液に対する体積比は、1:3〜1:4の範囲である。特定の実施形態において、Apo A−I沈殿物の溶液に対する体積比は、1:3、または1:3.1、または1:3.2、または1:3.3、または1:3.4、または1:3.5である。
再懸濁を容易にするために、凍結Apo A−I沈殿物は、ポリエチレン袋の内部で例えばpharmaハンマーを使用して、小片(直径<5cm)に破砕した後に溶液に添加することができる。
懸濁は、溶液中のApo A−Iタンパク質濃度およびGuHCl濃度を所望の範囲に調節するために、WFI(注射用水)で連続的に希釈することができる。
いくつかの実施形態において、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液は、PCT/AU2014/000584で記載された精製Apo A−Iに由来するものである。
本発明の文脈において、表現「5〜30g/LのApo A−I」および同様の表現は、5〜30gのアポリポタンパク質A−I(Apo A−I)タンパク質が1Lの溶液に溶解されていることを意味する。濾過工程についてのアポリポタンパク質濃度は、典型的には、0.5g/L〜50g/Lの範囲である。特定の実施形態において、工程a)の溶液のApo A−Iタンパク質濃度は、5〜25g/L;または5〜20g/L;または5〜15g/L;または5〜12g/L;または7〜12g/L;または5〜11g/L;または7〜11g/L;または5〜10g/L;または7〜10g/Lの範囲である。本発明のいくつかの実施形態において、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液のタンパク質濃度は、280nmで吸光度を測定し、次いで実施例1に記載のようにタンパク質濃度を計算することによって決定される。いくつかの実施形態において、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液のタンパク質濃度は、比濁分析または高性能キャピラリー電気泳動(実施例1に記載の方法を使用)によって測定することができる。
工程a)の溶液のGuHCl濃度は1.3〜3.2Mの範囲内であることが特に好ましい。特定の実施形態において、GuHCl濃度は、1.3〜3.0M;または1.3〜2.75M;または1.3〜2.5M;または1.5〜3.0M;または1.5〜2.75M;または1.5〜2.5M;または1.5〜2.25M;または1.5〜2.0M;または1.5〜1.9Mの範囲内である。より好ましくは、GuHCl濃度は1.6〜1.9Mの範囲内であり、最も好ましくは、GuHCl濃度は1.7Mである。この濃度は、溶液中のApo A−Iタンパク質の凝集形成を抑制し、濾過性(つまり容量および処理能力)を改善し、濾過膜(つまり選択性)中のウイルスの最大保持能を確実にするために理想的である。本発明の実施形態において、Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液中のGuHCl濃度は、イオン交換クロマトグラフィーを使用して決定される。本発明の特定の実施形態において、グアニジンの含有量は、適切な陽イオン交換カラム(例えば、IonPac CS19分析カラム、4×250mm(Thermo Scientific、Dionex))を有するイオンクロマトグラフィー(HPLC)を用いて実施される。Dionex IonPac CS19カラムは、伝導度検出を伴った自動的メタンスルホン酸(MSA)溶離生成および電解質溶離抑制のためのReagent−Free(商標)イオンクロマトグラフィー(RFIC(商標))システムと共に使用することができる。このようにして、移動相からのイオン(例えば、メタンスルホン酸、MSA)によるバックグラウンドを抑制して、伝導度測定によりグアニジンの検出を実施することができる。Apo A−Iおよびグアニジンを含む試料は、内部標準(例えば、酢酸ホルムアミジン)と混合し、グアニジン濃度が約0.1〜2.0mg/mLとなるように希釈することもできる。クロマトグラフィーは均一濃度または勾配モードのいずれかで実行することができる。定量は、5点較正(0.1〜2.0mg/mL)を用いたピーク面積および内部標準に基づいて行うことができる。
一実施形態において、ウイルス濾過工程前の溶液のpHは、約7〜約10;または約7〜約9;または約7〜約8の範囲内である。特定の実施形態において、ウイルス濾過工程前の溶液のpHは、7.1〜7.5の範囲内である。さらなる実施形態において、ウイルス濾過工程前の溶液のpHは7.3である。このpH範囲は、生理学的pH(約7.35〜7.45)またはほぼ生理学的pHである。理想的にはpHはアポリポタンパク質の等電点から少なくとも1pH単位離れている。特定の実施形態において、pHはアポリポタンパク質の等電点から少なくとも1pH単位離れている。ヒトApo A−Iおよびその変異体の場合において、等電点は、典型的には、約pH5.2〜5.8の範囲である。アポリポタンパク質の等電点は、等電点電気泳動(IEF)、例えば、Contieroら、(1997)Electrophoresis 18(1)、122−126頁に記載されるような方法によって、測定することができる。複数のアポリポタンパク質アイソフォームピークがIEFプロフィールに存在するとき、平均等電点を使用することができる。
本発明の文脈において、溶液が所与のpH範囲内、例えば7.1〜7.5の範囲内にあるときは、溶液がそのpH、例えば7.1〜7.5の範囲のpHを「有する」ことを意味する。このことは、溶液がpH7.1〜7.5で形成されるか、または溶液の形成後にpHを7.1〜7.5とすることを意味する。
一般的には、pHは、Apo A−Iタンパク質を前記溶液に添加する前の溶液;またはApo A−Iタンパク質と溶液とを混合した直後の溶液のいずれかで測定される。典型的には、工程a)の溶液のpHは、前駆体成分を混合した直後に測定される。代替的に、混合物のpHは、混合物の成分の計画された量および濃度に基づく計算によって決定することもできる。
本発明において、溶液は、場合により1つまたはそれ以上の溶媒、例えばメタノールまたはエタノールを含む少なくとも50重量%の水を含む溶液を指す。溶媒は、任意の薬学的グレードの溶媒であってよい。本発明の特定の実施形態において、溶媒は、エタノール、例えば95%の薬学的グレードのエタノール(例えば5%メタノールを含む3A)である。さらなる実施形態において、溶液は約20%のエタノールを含む。
場合により、工程a)で使用されるフィルターは、溶液を濾過する前にWFIおよび/またはGuHCl溶液で予洗(prewash)される。この予洗工程は、フィルターを通過するタンパク質の透過性を向上させる。特定の実施形態において、フィルターは、1.3〜2.0MのGuHClで予洗される。
ウイルス濾過全体にわたるタンパク質の損失を最小化するために、いくつかの実施形態において、濾過後にフィルターはGuHClで後洗浄(post−wash)される。特定の実施形態において、フィルターは1.3〜2.0MのGuHClで後洗浄される。
ウイルス濾過は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)または「デッドエンド」濾過(全量濾過またはダイレクトフロー濾過としても知られる)のいずれかを用いて実施することができる。ウイルスフィルターは、供給物が非対称膜の上部表層と隣接して流れるTFFで使用するためにもともとは設計されたものである。TFFは、膜表面を一掃して濃度分極およびファウリングを減少させる高流束を提供する。一方、デッドエンド濾過は簡便で資本価格が低いため、デッドエンド濾過のために特別に設計されたウイルスフィルターが広範囲に使用されている。TFFとは対照的に、これらのデッドエンドフィルターは通常、膜の供給流に面した開放的な側で操作され、タンパク質凝集物および他の大きな混入物質がマクロ多孔質構造内に捕捉され、それによりウイルス保持表面層が保護される。単回使用のデッドエンドフィルターを使用することの利点としては、システム設計と妥当性検査の両方が簡便で、作業と資本価格が軽減されることが挙げられる。
デッドエンド濾過は、典型的には、流体を表面から膜に押し出すための単一のポンプの使用を含む。
タンジェンシャル濾過は、一般的に、濾過膜の表面で流速を維持するための第1のポンプと、膜の裏側で負の圧力を生じさせてタンパク質を膜へ引き出す第2のポンプとを必要とする。
特定の実施形態において、濾過はデッドエンド濾過で実行される。
特定の実施形態において、デッドエンド濾過プロセスは、定圧濾過あるいは等速濾過のいずれかを使用して行われる。特定の実施形態において、デッドエンド濾過処理は、定圧濾過を使用して行われる。
濾過は、本明細書で使用されるウイルス除去膜の材料に依存して、膜が耐えられるレベルと同じまたはそれ未満の濾過圧、例えば約0.2〜約3.4バールの圧力で実施される。特定の実施形態において、濾過圧は、約0.2バール〜約3.4バールで維持される。複数の実施形態において、濾過圧は、約1〜約3バール;または約1.5〜約3バール;または約1.7〜約3バール;または約2〜約3バール;または約2.2〜約3バール;または約2.2〜約2.7バールで維持される。いくつかの実施形態において、濾過圧は、約1.7バール〜約2.4バール;または約2.2バール〜約2.4バールで維持される。
温度は、タンパク質溶液の粘度に影響し、さらにウイルス除去膜の濾過に対する流束にも影響を与える。濾過工程で使用される溶液は、0℃からタンパク質が変性する温度までの温度を有するべきである。溶液の温度は適切には、約10℃〜約50℃までの範囲内である。特定の実施形態において、溶液の温度は、約18℃〜約35℃までの範囲内である。いくつかの実施形態において、溶液は、約18℃〜約26℃の室温で濾過される。
特定の実施形態において、2つまたはそれ以上のフィルターが直列で使用される。特定の実施形態において、濾過は、15nm〜35nmの範囲の孔径を有する2つのフィルターを直列で使用して行われる。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のフィルターは、15nm〜35nm未満;または15nm〜30nm;または15nm〜25nm;または15〜20nm;または20nm〜25nmの範囲の孔径を有する。特定の実施形態において、2つまたはそれ以上のフィルターは、約15nm;または約20nm;または約25nm;または約30nm;または約35nmの群から選択される平均孔径を有する。
本発明の実施形態において、ウイルスフィルター性能は、フィルター表面積1m当たり、少なくとも200kg、または少なくとも300kg、または少なくとも340kg、または少なくとも500kg、または少なくとも750kg、または少なくとも1000kgのApo A−IおよびGuHClを含む溶液を有する。
工程a)の溶液は、Apo A−I沈殿物を4.0〜4.6MのGuHClを含む溶液に懸濁させ、続けて懸濁液を5〜30g/Lの範囲内の所望のApo A−Iタンパク質濃度および1.3〜3.2Mの範囲内の所望のGuHCl濃度に希釈することによって調製することができる。
本発明の特定の実施形態において、アポリポタンパク質(Apo A−I)を精製するための方法は、5〜30g/LのApo A−Iを約7〜約8のpHで含み、塩酸グアニジン(GuHCl)を1.3〜3.2Mの濃度で含む溶液を濾過することを含む。ここで、フィルターは、15nm〜35nmの範囲の孔径を有し、濾過は、圧力が約1〜約3バールで温度が約18℃〜約35℃のデッドエンド濾過である。
本発明の特定の実施形態において、アポリポタンパク質(Apo A−I)を精製するための方法は、5〜20g/LのApo A−Iを約7〜約8のpHで含み、塩酸グアニジン(GuHCl)を1.5〜3.0Mの濃度で含む溶液を濾過することを含む。ここで、フィルターは15nm〜35nm未満の範囲の孔径を有し、濾過は圧力が約1〜約3バールで温度が約18℃〜約35℃のデッドエンド濾過である。
本発明の特定の実施形態において、アポリポタンパク質(Apo A−I)を精製するための方法は、5〜20g/LのApo A−Iを約7〜約8のpHで含み、塩酸グアニジン(GuHCl)を1.5〜2.0Mの濃度で含む溶液を濾過することを含む。ここで、フィルターは、15nm〜26nmの範囲の孔径を有し、濾過は、圧力が約1〜約3バールで温度が約18℃〜約35℃のデッドエンド濾過である。
常套手段として、ウイルスフィルターには、フィルターが要求された性能レベルを確実に達成するように、使用前および使用後に完全性試験が行なわれる。この試験を容易にするために、フィルター製造業者は、様々な破壊性および非破壊性物理的完全性試験を発展させた。これらの物理的完全性試験の目的は:(1)ウイルスフィルターが適切に設置されていること;(2)フィルターに欠陥および破損が無いこと;ならびに(3)フィルターの性能が製造業者の仕様書およびエンドユーザーのウイルス保持能試験の両方と一致していること、を確認することである。最も一般的に使用される非破壊性試験としては、バブルポイント試験、拡散流量試験(例えば、Palltronic Flowstar XC(Pall))、水侵入試験、およびバイナリーガス試験が挙げられる。バブルポイント試験および拡散流量試験のいずれもガスの自由流動に対する障壁として濡れた膜を評価する。水侵入試験は、HydroCorr試験とも称され、水、非濡れ性流体の自由流動に対する障壁として乾燥疎水性膜を使用する。バイナリーガス試験は、透過性が大きく異なる2種のガスの混合物を使用し、この試験は水で濡れた膜の上流および下流のガス混合物の組成を測定することに基づく。金粒子試験、プラノバ(旭化成株式会社)フィルターを用いる使用後完全性試験は、破壊性完全性試験である。一般的には、初回試験が失敗した場合にフィルターの完全性を再試験する選択肢を考慮して、非破壊性試験が使用される。使用後完全性試験および再試験が不合格である場合、再濾過がウイルス濾過工程のために一般的に実施される。これらの試験は上述のように、フィルター孔径を推定するために使用することもできる。
本発明の特定の実施形態によれば、本方法は、ウイルスをさらに減少させるための熱処理工程をさらに含む。好ましい実施形態において、熱処理工程は、工程a)の前に実施される(オプションI)。代替的実施形態において、熱処理工程は、工程b)の後に実施される(オプションII)。
熱不活化工程に対するアポリポタンパク質濃度は、典型的には0.5〜50g/Lの範囲である。特定の実施形態において、Apo A−Iタンパク質濃度は、5〜30g/Lの範囲内である。
上記実施形態のオプションIによれば、熱処理工程は、工程a)の前、したがってウイルス濾過の前に実施される。この場合、例えば2.7〜3.9Mの濃度でGuHClを含み、pH6.6〜10.0、特定の実施形態ではpH6.6〜8.0でApo A−Iを含む溶液が、第1の工程で用意される。次いで溶液は、溶液中に依然として存在している可能性のあるウイルスを不活化するために、55〜61℃の温度で約30分〜約4時間加熱される。
上記実施形態のオプションIIによれば、熱処理工程は、工程b)の後、したがってウイルス濾過後に行われる。この場合、工程b)後の溶液中のGuHCl濃度は、GuHClを例えば2.7〜3.9Mの濃度およびpH6.6〜8.0で含む溶液が用意されるように調節される。次いで溶液は、溶液中に依然として存在している可能性のあるウイルスを不活化するために、55〜61℃の温度で約30分〜約4時間加熱される。
オプションIおよびオプションIIの両方において、pH6.6〜8.0を有する溶液中のGuHCl濃度は、好ましくは3.0〜3.9Mの範囲内であり、最も好ましくは3.5Mである。この濃度範囲内では、溶液中のタンパク質の凝集形成が抑制される。
一実施形態において、pH6.6〜8.0を有する溶液のpHは、7.0〜8.0の範囲内である。特定の実施形態において、溶液のpHは、7.3または約7.3である。このことは本発明による方法が生理学的(約7.35〜7.45)またはほぼ生理学的なpHで実施され、標的タンパク質が脱変性および生理学的活性を損失するリスクを減少させることを意味する。
熱処理工程がウイルス濾過の前に実施されるオプションIの場合において、pH6.6〜8.0の溶液は、好ましくは、Apo A−I沈殿物を4.0〜4.6MのGuHClに懸濁させ、続けてGuHClを2.7〜3.9Mの範囲内の濃度およびpHを6.6〜8.0の範囲内に例えば希釈により調節することにより調製される。GuHClの濃度は特に2.7〜3.5Mの範囲内である。
熱処理後、工程(a)の溶液は、pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液から、例えばWFIを含む溶液で希釈することによりApo A−Iタンパク質濃度およびGuHClの濃度を溶液(A)の所望の範囲に調節することによって調製される。
ウイルス濾過後に熱処理工程が実施されるオプションIIの場合において、pH6.6〜8.0の溶液は、好ましくは、工程b)後の溶液から、溶液中のApo A−Iタンパク質濃度を5〜30g/Lの範囲内およびGuHCl濃度を1.3〜3.2Mの範囲内に調節することによって調製される。
溶液がGuHClを含むことと6.6〜8.0の範囲内のpHを有することとの特定の組合せにより、ウイルスクリアランスが従来既知の低温殺菌手法よりも非常に早くなる、つまり確立された10時間の方法に対してウイルスクリアランスが60℃で約30分〜約4時間以内となる。
ウイルスクリアランスを達成するために必要な時間の減少により、本発明の方法は、時間が重要な要素となる産業的用途での使用において特に好適である。
さらに、標的タンパク質が高温に曝される時間が短縮されることにより、安定化剤を添加せずとも、したがってタンパク質の機能低下のリスクなしに、タンパク質が不可逆的に変性されるリスクが大幅に減少する。このため本発明の方法は、治療的使用を目的とする、または治療薬送達媒体とすることを目的とするタンパク質からウイルスを除去するための方法として特に適した方法となる。
上記熱処理方法が好ましい一方で、熱処理工程は、Apo A−I溶液を60℃で少なくとも10時間加熱するなどの従来的方法を伴ってもよいことが認識される。
熱処理工程および濾過工程の組合せは、MVMなどのパルボウイルスに対して少なくともLRV12log LRV、EMCVなどのノンエンベロープウイルスに対して少なくともLRVが9log、およびBVDVなどの脂質エンベロープウイルスに対して少なくともLRVが8.5logである。
本発明はパルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値);および/またはノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRV;および/または脂質エンベロープウイルスに対して少なくとも8.5log LRVを有するApo A−I調製物を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、パルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値);および/またはノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRVを有するApo A−I調製物も提供する。本発明のいくつかの実施形態において、パルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値)を有するApo A−I調製物も提供する。特定の実施形態において、パルボウイルスはMVMである。特定の実施形態において、ノンエンベロープウイルスは、ピコルナウイルス科ウイルス、例えばEMCVである。特定の実施形態において、脂質エンベロープウイルスは、フラビウイルス科ウイルスである。特定の実施形態において、Apo A−I調製物は、医薬用途に適している。本発明の特定の実施形態において、Apo A−I調製物についてのMVMおよび/またはEMCV LRVは、実施例6に記載の方法によって決定される。
本発明で使用される溶液は、添加剤、例えばEDTAをさらに含むことができる。特定の実施形態において、EDTAは、約1mMの濃度で添加される。
本発明の方法は実験室規模で実施することができる一方、条件をそれほど変化させることなく産業的規模へスケールアップすることもできる。したがって、本明細書に開示の実施形態において、本発明の方法は、産業的または商業的規模で実施される。好ましくは、本発明の方法は、ヒトアポリポタンパク質A−1(Apo A−I)の商業的規模の製造のために適切である。例えば、本発明の方法において血漿分画を使用するとき、商業的規模での製造では、少なくとも約500kgの血漿から誘導される血漿分画の使用を含むことができる。より好ましくは、開始血漿分画は、バッチ当たり少なくとも約5,000kg、7,500kg、10,000kgおよび/または15,000kgの血漿から誘導される。
精製されたアポリポタンパク質は、続いて、医薬組成物、例えば再構成HDL(rHDL)を作製するために、他の成分と共に製剤化される。したがって本発明の方法は、精製されたアポリポタンパク質を脂質と混合してrHDL製剤を作製するためのさらなる工程を含むことができる。本明細書で使用するとき、rHDL製剤は、血漿中に通常存在する高密度リポタンパク質(HDL)と機能的に同様である、類似する、一致する、または模倣物である任意の人工的に製造されたアポリポタンパク質製剤または組成物である。rHDL製剤には、その範囲内に「HDL模倣物」および「合成HDL粒子」も含まれる。適切には、rHDL製剤には、アポリポタンパク質、脂質、および場合により、界面活性剤が含まれる。
本発明のrHDL製剤は、さらにコレステロールを含むことができる。製剤は、有機溶媒を使用して製造することができ、いくつかの場合において、例えば米国特許第5,652,339号に記載のように製剤を製造するときに、有機溶媒が脂質成分(例えば、ホスファチジルコリン)を溶解するために使用される。しかしながら、アポリポタンパク質製剤は、有機溶媒の非存在下で製造されることが好ましい。
適切には、アポリポタンパク質は、約5〜100g/L、好ましくは10〜50g/L、より好ましくは25〜45g/Lの濃度である。この濃度には、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95および100g/L、ならびにこれらの量の間の任意の範囲が含まれる。他の実施形態において、アポリポタンパク質は、約5〜20g/L、例えば約8〜12g/Lの濃度である。
脂質は、天然HDLまたは再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の成分である任意の脂質である。そのような脂質には、リン脂質、コレステロール、コレステロール−エステル、脂肪酸、および/またはトリグリセリドが含まれる。好ましくは、脂質はリン脂質である。リン脂質の非限定的な例は、ホスファチジルコリン(PC)(レシチン)、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン(PE)(セファリン)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびスフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン−1ホスフェートまたは天然もしくは合成のそれらの誘導体が挙げられる。天然誘導体としては、卵PC、卵PG、大豆PC、水添大豆PC、大豆PG、脳PS、スフィンゴ脂質、脳SM、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、セファリン、カルディオリピン、およびジアセチルホスフェートが挙げられる。合成誘導体としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSM)およびジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSM)が挙げられる。リン脂質は、上記リン脂質のいずれかの誘導体または類似体であることもできる。
いくつかの実施形態において、rHDLの脂質成分は、少なくとも2種の異なるホスファチジルコリンを含む。特定の実施形態において、少なくとも2種のホスファチジルコリンは、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)およびジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)である。特定の実施形態において、本発明の再構成HDL製剤は、POPCおよびDPPCを含む。特定の実施形態において、POPC:DPPCの比率は、約75:25または約50:50である。
他の特別の実施形態において、脂質は、スフィンゴミエリンと負に荷電されたリン脂質、例えばホスファチジルグリセロール(例えば、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(l−グリセロール))との組合せであるまたはそれを含む。スフィンゴミエリンとホスファチジルグリセロール(特に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(l−グリセロール))との組合せは、脂質として使用することを特に企図したものである。これらの実施形態において、スフィンゴミエリンとホスファチジルグリセロールとは、任意の適切な比率、例えば、90:10〜99:1(w:w)、典型的には95:5〜98:2、および最も典型的には97:3で存在する。
好ましくは、リン脂質は、ホスファチジルコリン単独またはホスファチジルコリンと1つもしくはそれ以上の他のリン脂質との組合せであるまたはホスファチジルコリン単独またはホスファチジルコリンと1つもしくはそれ以上の他のリン脂質との組合せを含む。別のリン脂質の例はスフィンゴミエリンである。いくつかの実施形態において、アポリポタンパク質製剤は、界面活性剤を含む。
典型的には、排他的ではないが、脂質は10〜100g/L、好ましくは30〜60g/Lの濃度で存在する。
界面活性剤は、rHDL製剤で使用することが適切な任意のイオン性(例えば、陽イオン性、陰イオン性、両イオン性)界面活性剤または非イオン性界面活性剤であってよく、例えば胆汁酸およびその塩が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、胆汁酸およびその塩、ポリソルベート(例えば、PS80)、CHAPS、CHAPSO、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド、ラウロイルサルコシン、n−オクチル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、n−デシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートおよび4’−アミノ−7−ベンゾアミドタウロコール酸が挙げられる。
胆汁酸は、典型的には、24個の炭素を有するジヒドロキシル化またはトリヒドロキシル化ステロイドであり、例えばコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸またはウルソデオキシコール酸である。好ましくは、界面活性剤は、胆汁酸塩、例えば、コール酸塩、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩またはウルソデオキシコール酸塩である。特に好ましい界面活性剤はコール酸ナトリウムである。
しかしながら、高レベルの界面活性剤が、いくつかの系、例えば、0.3g/gのレベルのApo−AIまたは6g/LのレベルのrHDL製剤(20g/LのApo−AI)で肝毒性に関わることが示されている。したがって、5〜10%のレベルの界面活性剤が、本発明、つまり0.015〜0.03g/gのApo−AIまたは0.5〜0.9g/LのrHDL製剤(30g/LのApo−AI)で使用するために好ましい。界面活性剤の「レベル」は、界面活性剤の絶対量、界面活性剤の濃度(例えばrHDL製剤の単位体積当たりの量)、および/または別の一定量のアポリポタンパク質製剤の成分の量または濃度と比較した界面活性剤の量または濃度の比率とすることができる。これは例にすぎないが、界面活性剤のレベルは、rHDL製剤中に存在するアポリポタンパク質(例えば、Apo−AI)の総量に換算して表すこともできる。30g/Lのアポリポタンパク質を有するrHDL製剤の約0.45g/L未満の界面活性剤濃度は、安定性および非毒性の両方の点で好ましい。安定性は、当該分野で公知の任意の手法により都合よく測定することができるが、rHDL製剤の濁度が好ましい測定尺度である。特定の実施形態において、界面活性剤の濃度は、rHDL製剤中0.5〜1.5g/Lである。界面活性剤の濃度は比色定量分析を使用して決定することができる。例えば、Gallsauren試験キットおよびGallsauren Stoppreagensを用いて血漿と共に反応バイアルに添加する(1mLの反応体積に125μLの血漿)。
より一般的には、本発明のrHDL製剤中に存在するときの界面活性剤のレベルは、肝毒性を示すレベルの約5〜35%である。この範囲には、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%および35%が含まれる。より好ましくは、界面活性剤のレベルは、肝毒性を示すレベルの約5〜20%である。有利には、界面活性剤のレベルは肝毒性を示すレベルの約5〜10%である。好ましくは、これらのレベルは、肝毒性を示す界面活性剤の最小または閾値レベルによって表される。肝毒性は、インビトロおよびインビボモデルにおいて様々に評価することができる。インビトロモデルの一例ではHEP−G2細胞を使用する。この場合、HEP−G2細胞を対数期に成長させることを含む。次いで細胞を培養培地から除去し、PBSで洗浄してトリプシン処理し、10mLの培養培地(90%DMEM、10%不活性化FCS、1%非必須アミノ酸、1%Pen/Strep)で再懸濁する。細胞成長および生存率は、Neubauer血球計数計およびトリパンブルー染色を使用して観察する。続けて、10×10C/mLを含む100μLのアリコートを、96ウェルF底プレートに播種し、37℃、5%CO、95%HOで一晩インキュベートする。試験品(例えば、rHDL製剤)を含む試料(700μL)を、培養培地を添加して調製する。ウェルの第1列から培地を除去し、200μLの試験品溶液を添加する。1:2連続希釈をプレート上で完了させる。プレートを次いで72時間、37℃、5%CO、95%HOでインキュベートする。その後、細胞生存性を測定する。この測定は、50μLの3×Neutral Red溶液(100mLのPBS中、70mgのNeutral Red)を各ウェルに添加することにより行うことができる。このプレートを、2時間、37℃、5%CO、95%HOでインキュベートし、ウェルを200μLのPBSで1回洗浄する。この後、100μLのエタノールを各プレートに添加し、20分振盪させてから、540nmで測定を行う。インビボ肝毒性モデルの例は、意識下ウサギモデルである。モデルは、拘束装置(ウサギ用ホルダー)に入れ、i.v.カテーテルを耳静脈に挿入したウサギを使用する。試験物質は、40分間、i.v.注入して与える。血液試料は、耳の動脈から採り、血清およびストレプトキナーゼ−血漿(5%)バイアルに回収する。血液試料を血清と血漿に処理し、血清は−20℃で保存し、血漿は−80℃で保存する。次いで試料は、商業的に利用可能な酵素光度測定試験キット(Greiner Biochemica)を使用して、ALTおよびAST活性のレベルについて評価することができる。一方で、ヒトApo A−Iレベルについて、比濁分液または高性能キャピラリー電気泳動を使用して測定することができる。
さらに好ましい実施形態において、rHDL製剤は、肝毒性を生じないレベルで脂質を含む。適切には脂質のレベルは肝毒性を引き起こさないまたは肝毒性に関連しないレベルの約20〜70%である。特定の実施形態において、脂質のレベルは肝毒性を引き起こさないまたは肝毒性に関連しないレベルの約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、もしくは65%、またはこれらの量の間の任意の範囲であることが好ましい。好ましくはこれらのレベルは、肝毒性を示す脂質の最小または閾値レベルによって表される。例として、肝毒性との関係が示された脂質のレベルは84g/Lである。したがって脂質は好ましくは約30〜60g/Lの濃度である。このレベルは、30、35、40、45、50、55および60g/Lならびにこれらの量の間の任意の範囲を含む。特に有利な脂質の濃度は、約30〜50g/L、または一定の実施形態では約34もしくは47g/Lである。脂質の「レベル」は、脂質の絶対量、脂質の濃度(例えばrHDL製剤の単位体積当たりの量)、および/または別の一定量のアポリポタンパク質製剤の成分の量または濃度と比較した脂質の量または濃度の比率とすることができる。これは例にすぎないが、脂質のレベルは、一定用量のrHDL製剤中に存在するアポリポタンパク質(例えば、Apo−AI)のモル比に換算して表すこともできる。
好ましい一実施形態において、本発明のrHDL製剤のアポリポタンパク質:脂質のモル比は、1:20〜1:100の範囲である。この範囲には、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80および1:90などのモル比が含まれる。より好ましくは、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、1:40〜1:80;または1:40〜1:75;または1:45〜1:70;または1:40〜1:65;または1:40〜1:60;または1:40〜1:55;または1:40〜1:50;または1:45〜1:80;または1:45〜1:75;または1:45〜1:70;または1:45〜1:65;または1:45〜1:60;または1:45〜1:55;または1:50〜1:80;または1:50〜1:75;または1:50〜1:65;または1:50〜1:60の範囲である。アポリポタンパク質:脂質の特に有利な比率は、約1:40;または約1:45;または約1:50;または約1:55;または約1:60である。
他の実施形態において、本発明のrHDL製剤におけるアポリポタンパク質:脂質のモル比は、約1:80〜約1:120の範囲である。例えば、その比は、1:100〜1:115、または1:105〜1:110である。これらの実施形態において、モル比は、例えば、1:80〜1:90、1:90〜1:100、または1:100〜1:110である。
特定の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって得られたrHDL製剤を提供する。
特定の実施形態において、本発明はパルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値);および/またはノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRV;および/または脂質エンベロープウイルスに対して少なくとも8.5log LRVを有する、Apo A−I調製物を含むrHDL製剤を提供する。本発明のいくつかの実施形態において、パルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値);および/またはノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRVを有するApo A−I調製物を含むrHDL製剤が提供される。本発明のいくつかの実施形態においては、パルボウイルスに対して少なくとも12log LRV(対数減少値)を有するApo A−I調製物が提供される。特定の実施形態において、パルボウイルスはMVMである。特定の実施形態において、ノンエンベロープウイルスは、EMCVなどのピコルナウイルス科ウイルスである。特定の実施形態において、脂質エンベロープウイルスは、フラビウイルス科ウイルスである。本発明の特定の実施形態において、rHDL製剤に含まれるApo A−I調製物についてのMVMおよび/またはEMCV LRVは、実施例6に記載の方法によって決定される。特定の実施形態において、rHDL製剤は医薬用途に適している。
当業者であれば、ウイルス濾過および加熱不活化の2つの特に設計されたウイルス減少工程に、精製/分離工程を追加することにより、本発明のApo A−I調製物およびrHDL製剤にさらなるレベルのウイルスクリアランスがもたらされることを理解する。例えば、血漿からApo A−I濃縮分画を得るときしばしば使用される高エタノール濃縮液は、ウイルスを不活化することが示されている(Heninら、1988、Vox Sang. 54(2):78−83頁)。そのような状況において、これらの工程のLRVは、本発明のApo A−I調製物またはrHDL製剤についての全LRVに加えることができる。
上述の精製Apo A−Iは、医薬組成物、例えば治療的使用のための再構成HDL(上述のものを含む)に製剤化することができる。そのような医薬組成物は、医薬的に許容される担体または希釈剤を含むことができる。医薬的に許容される担体または希釈剤の非限定的な例としては、水、乳化剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、緩衝剤、安定化剤、塩、アルコールおよびポリオール、界面活性剤、タンパク質およびペプチド、脂質、ガム、糖および他の炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。
再構成HDLは、Apo−AIに加えて、限定されないが、1つまたは複数の脂質、界面活性剤および安定化剤を含むことができる。脂質の非限定的な例には、リン脂質、コレステロール、コレステロール−エステル、脂肪酸および/またはトリグリセリドが含まれる。好ましくは、脂質はリン脂質である。リン脂質の非限定的な例には、ホスファチジルコリン(PC)(レシチン)、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン(PE)(セファリン)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびスフィンゴミエリン(SM)または天然もしくは合成のそれらの誘導体が挙げられる。安定化剤は、砂糖(例えばスクロース)または糖アルコール(例えばマンニトールもしくはソルビトール)のような炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。存在させる場合、界面活性剤は、任意のイオン性(例えば、陽イオン性、陰イオン性、両イオン性)界面活性剤または非イオン性界面活性剤であってよく、例えば胆汁酸およびその塩、例えばコール酸ナトリウムが挙げられる。
特定の実施形態において、医薬組成物は、国際公開第2014/066943号に記載されている。
本発明は、哺乳動物における疾患、障害または状態を処置または予防する方法であって、前記態様のいずれかによるApo−A1、Apo−A1調製物、医薬組成物、またはrHDL製剤を哺乳動物に投与し、それにより疾患、障害または状態を処置または予防する工程を含む前記方法も提供する。
Apo A−1および/または再構成HDL製剤の治療的用途には、心血管疾患(例えば、急性冠状動脈症候群(ACS)、アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞)、またはACSが素因となる糖尿病、脳卒中および心筋梗塞などの疾患、障害もしくは状態、高コレステロール血症(例えば、高血清コレステロールもしくは高LDLコレステロール)ならびに高密度リポタンパク質(HDL)のレベル減少から生じる低コレステロール血症、例えば、タンジール(Tangier)疾患症候の処置または予防が挙げられる。
本発明の特定の実施形態を以下に実施例を参照して説明するが、これらの実施例は例示のみを目的とし、上述の一般的記載の範囲を限定することを意図するものではない。
以下の実施例では、本発明によるプロセスの好ましい実施形態に従った連続的プロセス工程手順を記述する。このプロセスでは、出発材料に由来する分画IV沈殿物を、GuHClの存在下で溶解し、濾過して濾過助剤を除去した後、pH調節、熱処理、希釈およびウイルス濾過工程を含む。熱処理工程は代替的にウイルス濾過工程後に実施することもできる。
方法および材料
Apo A−Iタンパク質濃度
概略するに、溶液中のApo A−Iタンパク質濃度は、希釈剤としてWFI(注射用水)を典型的には5〜30g/Lで使用し、280nmの吸光度を決定することによって測定した。タンパク質の計算は以下に従った:
Figure 0006530394
代替的にApo A−Iタンパク質濃度は、比濁分析または高性能キャピラリー電気泳動を使用して測定できる(Hewlett Packard 3D CE、Agilent Technology)。簡潔には高性能キャピラリー電気泳動に関連する方法は以下の工程を含んだ:およそ2〜3mg/mLのApo A−I(場合により水で希釈)を含む試料(150μL)を、16%のSDS(25μL)およびフェニルアラニン(25μL、4mg/mL)を用いて調製した。次いで試料を水浴中で3分間インキュベートした後、電気泳動バッファー(50mMのホウ酸ナトリウム、0.2%SDS、300μL)で希釈して濾過した(0.45μm)。次いで、試料を、溶融シリカキャピラリー(56cm×50μm内径、Agilent G1600−61232)に充填した。電気泳動を25kVで実施した。使用した標準液は、International Apo A−I Standard(BCR−393)であった。この方法は、Apo A−Iが再構成HDLの一部であるとき、特に有用である。
4.6Mの塩酸グアニジン溶液
1mMのEDTA(Titriplex)を含む4.6MのGuHCl溶液を、WFI(注射用水)、GuHCl塩およびEDTAから調製した。4.6MのGuHCl溶液のpHをNaOHでpH7.2〜7.4に調節した。
1.7Mの塩酸グアニジン
1mMのEDTA(Titriplex)を含む1.7MのGuHCl溶液は、WFI(注射用水)、GuHCl塩およびEDTAから調製した。1.7MのGuHCl溶液のpHはNaOHでpH7.2〜7.4に調節した。
10mMのNaCl透析濾過溶液
透析濾過溶液は、WFIおよびNaClから調製した。透析濾過溶液の伝導度は1.0〜1.2mS/cmであった。
実験手順
Apo A−I沈殿物の溶解
Apo A−I沈殿物を、4.6Mの塩酸グアニジン(GuHCl)に溶解し、均質化し、pHを7.3±0.1に調節した。
清澄濾過
濾過溶液を、深層濾過で清澄化して、残余の濾過助剤を除去した。フィルターを注射用水(WFI)で予洗し、4.6MのGuHCl溶液で後洗浄した。後洗浄物と濾過物を組み合わせて、濾液中のGuHCl濃度は約3.5Mに達した。組み合わせた濾液を回収し、0〜30g/Lの範囲のApo A−I濃度を得た。
ウイルス濾過工程の前に、熱処理工程を行ってウイルスを不活化した。
熱処理
熱処理ではpHを7.1〜7.5に調節した。GuHCl濃度を以下の式にしたがって計算し、少なくとも3.0Mに調節した。
GuHCl=−41.4−(0.0170×タンパク質[g/L])+(41.5×密度[g/cm])
次いで混合物を約60.0℃の温度で約30分〜約4時間インキュベートした。混合物を室温に戻し、希釈して、ウイルス濾過工程を施した。
希釈工程
ウイルス濾過工程の前に、混合物をWFIで希釈して、最終GuHCl濃度を1.5〜2.0M、Apo A−I濃度を0〜30g/Lの範囲とした。
ウイルス濾過
ウイルス濾過工程の目的は、物理的にウイルス粒子を除去することであった。
前濾過は、PALL SKL7002 NTP0.1μm(Nylon)を使用して行った。次いで、1mのフィルター面積を有する滅菌プラノバBioExナノフィルター(旭化成株式会社)を濾過工程に使用した。BioExフィルターは、フィルター表面積1m当たり少なくとも340kgの溶液を通した。前置フィルターおよびウイルス除去フィルターの両方を、室温で1.7MのGuHClでフラッシュした。デッドエンドウイルス濾過工程は、室温で実施した。圧力は3.4バール未満を維持した。濾過の完了後、フィルターを1.7MのGuHClで、後フラッシュした(post−flushed)。工程全体にわたるApo A−Iの除去率は良好で、95%を上回り、典型的には約100%であった。
様々なGuHCl(1.7M&3.2M)およびApo A−I濃度(5.8、8.9、19.7g/L)の存在下でBioExフィルターを用いた濾過の比較を行った(図1〜3)。上記実施例1と同様の方法で、ウイルス濾過工程を行った。
さらなる濾過試験により、GuHCl(1.0M&1.3M)の濃度がより低くなると、この系でフィルター閉塞を引き起こす不安定な溶液が生じることが実証された。これらの結果から、ウイルス濾過を容易にするためにGuHCl濃度を最適化することの利点が強調される。
Apo A−I試料にMVMを1:1000の比率でスパイクした。スパイクした試料を、10〜12g/Lのタンパク質濃度で、プラノバBioEXウイルス除去フィルターを用いて、デッドエンド様式で、約2.4バールの圧力で濾過した。濾液中の試料を取り出し、残存ウイルスの感染力について評価した(表1)。結果は、完全なウイルス保持能が、GuHClの濃度範囲全体にわたって達成されたことを実証する。GuHCl濃度が低くなると、MVM対数減少値(LRV)が増加した。
Figure 0006530394
同様の条件下で実施したさらなるウイルス濾過試験では、MVMウイルスの漏出が3.4MのGuHClの存在下で観察された。したがって、約3.0M未満のGuHCl濃度は、Apo A−I調製物の製造においてウイルス除去フィルター(BioExなど)を使用することによる、およそ20nmの直径を有するウイルス(例えばパルボウイルス)の除去を改善すると考えられる。
この試験は、Apo A−Iの製造におけるウイルス濾過が出発材料からMVMを除去する有効性の決定を目的とした。MVMは、B19Vなどの非常に強健な小型のノンエンベロープウイルスのモデルウイルスとして使用した。
試験設計
Apo A−I試料にMVMを1000:1の比率でスパイクした。スパイクした試料を、プラノバBioEXウイルス除去フィルターに通して濾過した。様々な時間点で濾液の試料を取り出し、残存ウイルス感染力について評価した。
≧115gの濾液を回収すると、試験系にMVMを100:1の比率で再びスパイクした。その後、濾過を続け、≧8gの濾液が回収されたときに停止した。濾液を残存ウイルス感染性について分析した。最後にフィルターを少なくとも12gの1.7mol/LのGuHCl溶液で後洗浄した。後洗浄分画を別個に回収し、ウイルス感染性も分析した。
各実験において:
− 試験系の細胞毒性を測定した。
− ウイルスストックの力価を測定した。
− ウイルスの安定性を測定した。
− 干渉を測定した。
− クリアランスを測定した。
細胞毒性効果の評価
細胞毒性は、ウイルス不含試験系を使用して、細胞培養培地で連続希釈して、試料中の最終細胞毒性効果を測定する非放射活性細胞生存性分析により分析した。増殖活性がポジティブコントロールの60%未満に至った試料を、細胞毒性を有するとみなした。
ウイルス干渉分析
ウイルス干渉は、ウイルス不含試験系の非細胞毒性濃度を、ストックウイルスの連続希釈に用いることによって、TCID50エンドポイントタイトレーションにより実施した。干渉は、干渉アッセイで得られたウイルス力価と、培養培地で実施したストックウイルスの標準TCID50分析で得られたウイルス力価とを直接比較して分析した。
ウイルス力価測定(TCID50)
ウイルス力価は、TCID50(組織培養感染用量50%)により決定した。脱塩試料の3倍連続希釈物を使用した。ウイルス感染力は、96ウェルプレート中の指標細胞のエンドポイントタイトレーションによって分析した。
バルク分析(Bulk Analysis、BA)
BAを使用してウイルス測定分析の検出限界を低下させた。ウイルス感染性は、元試料の3mlに相当する9mlの各脱塩試料を、2つの96ウェルプレート上で指標細胞に分配させて分析した。
データ処理
マイクロタイタープレート上でTCID50により計算されたウイルス力価の計算
ウイルス力価およびその誤差を、Spearman&Karberの方法(Excel Makro:kaerber3_111.xls)を使用して計算した。インプット数は、力価測定から得た。
減少率(reduction factor)の計算
このプロセスのウイルス減少率(LRF)は、「Virus validation studies: the design、contribution and interpretation of studies validating the inactivation and removal of viruses」(CPMP/BWP/268/95/Final;1996年2月14日)およびthe Bundesgesundheitsamt and the Paul−Ehrlich−Institute、Bundesamt fur Sera und Impfstoffe(1994年5月4日)の要件にしたがって、計算した。
結果
細胞毒性
細胞毒性は、ウイルス不含試験系のいずれのロットでも観察されなかった。
干渉分析
Figure 0006530394
干渉は観察されなかった。
バルク分析
3mlの試料を用いたバルク分析により、検出限界を、≦−0.0006log TCID50/ml(95%信頼限界)まで低下させた。試験した全ての試料は、ウイルス感染性が陰性であった。したがって、MVMの完全な除去が両方の実験の濾過を通して達成された。
議論および結論
この試験は、ウイルス濾過が試験物質からMVMを除去する有効性の決定を目的とした。MVMを、非常に強健な小型のノンエンベロープウイルスおよびB19Vについてのモデルウイルスとして使用した。
プラノバBioEXウイルス除去フィルターによりMVMの完全なクリアランスが観察され、≧6.21±0.11の平均LRFが得られた。試験系への細胞毒性は観察されず、ウイルス感染の干渉も観察されなかった。
Apo A−I溶液に対する熱処理工程(実施例1、熱処理の項目に記載の通り)の効果を調べるために、60±1℃へ加熱し、MVMを100:1の比率でスパイクした。
スパイクした試験系をその温度で3時間維持した。試料を様々な時間点で回収し、ウイルス感染性を分析して、プロセスを通じたウイルス減少と不活化動態を観察した。
試験系の試料を、60±1℃に温め、試験全体を通してこの温度で維持した。温度を監視し、実験の間、記録した。標的温度に達した後、試験系に0.1μmの濾過MVMを100:1の比率にてスパイクした。試料1はスパイク後すぐに取り出した。さらなる試料は1、5、10、15、30、60、120および180分後に取り出した。全ての試料を、氷冷細胞培養培地で1:10に希釈し、さらに処理するまで氷上で保存した。次いで、1mlの希釈試料を、PD−10サイズ排除カラム(GE Healthcare)に通し、GuHClを除去した。簡潔には、1mlの試料をカラムにかけ、フロースルーを廃棄した。次いで、カラムを1mlのPBSで濯ぎ、フロースルーを廃棄した。最後に、3mlのPBSをカラムにかけたところ、脱塩画分(desalted fraction)は3mlの体積で回収された;この結果、さらに1対3希釈された。次いで、脱塩試料中のウイルス力価をエンドポイントタイトレーション(TCID50)により測定した。さらなる試料をバルク分析(BA)のために30、60、120および180分で取り出し、さらなる処理まで氷冷上で保存した。各試料から3回、1mlを上記のように脱塩した。合計で9mlの脱塩画分が回収された。次のパラメータを、上記実施例4で記載した方法ごとに評価した:
− 試験系の細胞毒性
− ウイルスストックの力価
− 干渉
− クリアランス
全ての試験試料において、細胞毒性もウイルス感染の干渉も観察されなかった。不活化動態は急速で、30分以内にMVMが完全に不活化されるのが観察された。得られた≧6.03±0.12logの平均LRFは、60℃で30分以内の熱処理の間の効率的なMVMのクリアランスを示した。
この試験は、2つの特別に設計されたウイルス減少工程、ウイルス濾過および加熱処理工程がApo A−I溶液からウイルスを取り除く有効性の決定を目的とした。従った製造プロセススキームは実施例1に記載されたものと同様であり、スパイク試験は、実施例4(ウイルス濾過)および実施例5(熱処理)と同様の方法で実施した。試験は、以下のようなウイルスレベルの減少を示した:
Figure 0006530394
したがって、本発明の方法は、Apo A−Iを、MVMなどのパルボウイルスに対して少なくとも12log LRV、EMCVなどのノンエンベロープウイルスに対して少なくとも9log LRV、およびBVDVなどの脂質エンベロープウイルスに対して少なくとも8.5log LRVで製造することを可能にする。
当業者であれば、本明細書に記載の発明が、詳細に説明されたもの以外の変形または改変も受けることを理解する。本発明は、本発明の趣旨および範囲内のそのような全ての変形および改変を包含すると理解されるべきである。さらに本発明は、本明細書で参照または示された全ての工程、特徴、組成物および組合せを個別にまたは集約的に含み、ならびにそれらの2つまたはそれ以上の工程または特徴の任意のまたは全ての組合せを含む。

Claims (13)

  1. アポリポタンパク質A−I(Apo A−I)を精製するための方法であって、
    a)Apo A−Iと塩酸グアニジン(GuHCl)とを含む溶液を用意する工程;および
    b)該溶液を15nm〜35nmの範囲の孔径を有するフィルターを通して濾過する工程
    を含み、
    ここで、該溶液は、1.3〜3.0Mの範囲内の濃度でGuHClを含む前記方法。
  2. 溶液は、5〜30g/L、または5〜20g/L、または7〜12g/Lの範囲内のApo A−Iタンパク質濃度を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 溶液は、Apo A−Iの凝集を減少させるまたは阻害する濃度でGuHClを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 溶液は、1.5〜2.0Mの範囲内の濃度でGuHClを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 溶液のpHは、7.1〜7.5の範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 濾過は、0.2〜3.4バールの範囲内の圧力、および18〜26℃の範囲内の温度で実行される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 溶液は、
    1)Apo A−I沈殿物を4.0〜4.6MのGuHClに懸濁する工程;ならびに/または
    2)該懸濁物を5〜30g/Lの範囲内のApo A−Iタンパク質濃度および/もしくは1.3M〜3.0Mの範囲内のGuHCl濃度に希釈する工程
    の1つまたはそれ以上によって調製される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 工程a)の前に、ウイルス不活化のために熱処理工程が実行される、または工程b)の後に、ウイルス不活化のために熱処理工程が実行される、請求項1または7に記載の方法。
  9. 熱処理は、
    溶液のpHを6.6〜8.0の範囲内に調節する工程;および続けて
    該溶液を55〜61℃の温度で30分〜4時間加熱する工程
    を含む、請求項8に記載の方法。
  10. pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液は、2.7M〜3.9Mの範囲内の濃度のGuHClを含む、請求項9に記載の方法。
  11. pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液のpHは、7.0〜8.0の範囲内である、請求項9または10に記載の方法。
  12. pHが6.6〜8.0の範囲内である溶液は、
    1)Apo A−I沈殿物を4.0〜4.6MのGuHClに懸濁する工程;ならびに
    2)GuHCl濃度を2.7M〜3.9Mの範囲内に、およびpHを6.6〜8.0の範囲内に調節する工程
    によって調製される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 再構成HDL製剤を製造する方法であって、
    請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法によりApo A−Iを製造する工程;および
    Apo A−1を脂質と組み合わせ;それにより再構成HDL製剤を製造する工程
    を含む前記方法。
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