以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る走行経路生成装置を示すブロック図である。図1に示す走行経路生成装置100は、乗用車等の車両に搭載され、車両の自動運転において走行する走行経路を生成する装置である。自動運転とは、運転者が運転操作を行うことなく、自動で車両を走行させる車両制御である。本実施形態に係る自動運転には、運転者の運転支援として、一時的に車両を自動で走行させる車両制御(運転支援としての自動運転)も含まれる。走行経路とは、自動運転において車両の走行する目標となる経路である。
[走行経路生成装置の構成]
図1に示されるように、走行経路生成装置100は、走行経路の生成を行うためのECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU10では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
ECU10には、GPS受信部1、外部センサ2、内部センサ3、地図情報記録部4、走行データ記録部5、走行軌跡データ記録部6、運転操作検出部7、及び自動運転ECU8が接続されている。
GPS受信部1は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両の位置(例えば車両の緯度及び経度)を測定する。GPS受信部1は、測定した車両の位置情報をECU10へ送信する。
外部センサ2は、車両の周辺環境を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ、レーダー[Radar]又はライダー[LIDAR:LaserImaging Detection and Ranging]を含む。カメラは、例えば、車両のフロントガラスの裏側に設けられ、車両の前方を撮像する。カメラは、車両周囲の撮像情報をECU10へ送信する。
レーダーは、電波(例えばミリ波)を利用して車両の外部の障害物を検出する。レーダーは、電波を車両の周囲に送信し、障害物で反射された電波を受信することで障害物を検出する。レーダーは、検出した障害物情報をECU10へ送信する。ライダーは、電波に代えて光を用いて障害物を検出する。ライダーは、検出した障害物情報をECU10へ送信する。
内部センサ3は、車両の走行状態を検出する検出機器である。内部センサ3は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサを含む。車速センサは、車両の速度を検出する検出器である。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に送信する。加速度センサは、車両の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、例えば、車両の加速度情報(前後加速度、横加速度、上下加速度)をECU10に送信する。ヨーレートセンサは、車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両のヨーレート情報をECU10へ送信する。
地図情報記録部4は、地図情報を記録するデータベースである。地図情報記録部4は、例えば、車両に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]内に形成されている。地図情報には、例えば、道路(車線)の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率等)、合流路及び分岐路の位置情報、交差点の位置情報が含まれる。また、地図情報には、車線の左右境界点の情報が含まれる。車線の左右境界点とは、車線を形成する左右二本の白線上にそれぞれ所定間隔で設定される地図上の点である。車線の左右境界点について後述する。
走行データ記録部5は、走行データを記録するデータベースである。走行データ記録部5も、例えば、車両に搭載されたHDD内に形成されている。走行データは、過去の車両の走行に関するデータである。走行データには、車両の走行した実走行軌跡(X、Y、Z)、車両の車速、天候(晴、雨、雪)、ヘッドライトの点灯の有無、運転状態(自動運転、協調運転、手動運転)、運転技量(上級、中級、初級)、日時(年/月/日/時/分/秒)、車両情報(車両カテゴリ、メーカ、車名、車両ナンバー、車両総重量、ホイールベース、トレッド、地図更新年月日など)が含まれる。
走行軌跡データ記録部6は、走行記録データを記録するデータベースである。走行軌跡データ記録部6も、例えば、車両に搭載されたHDD内に形成されている。走行記録データは、車両の走行した軌跡(実走行軌跡)に対応するデータであり、地図情報に関連付けられて記録されている。走行軌跡データは、走行経路生成に用いるために、地図情報に基づき走行データから演算される。走行軌跡データは、経路生成補正情報として用いられる。走行軌跡データ及び走行軌跡データの演算について詳しくは後述する。
地図情報記録部4、走行データ記録部5、及び走行軌跡データ記録部6は、別々のデータベースである必要はなく、一つ又は二つのデータベースとしてまとめて構成されていてもよい。また、地図情報記録部4、走行データ記録部5、及び走行軌跡データ記録部6は、必ずしも車両に搭載されている必要はなく、車両と通信可能なサーバ等に設けられていてもよい。
運転操作検出部7は、運転者による車両の運転操作を検出する。運転操作検出部7には、操舵センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサが含まれる。操舵センサは、例えば操舵トルクセンサ及び操舵タッチセンサを有している。操舵トルクセンサは、車両のステアリングシャフトに対して設けられ、運転者がステアリングホイールに与える操舵トルクを検出する。操舵タッチセンサは、車両のステアリングホイールに設けられ、ステアリングホイールに対する運転者の接触及び運転者がステアリングホイールを握る圧力を検出する。アクセルペダルセンサは、アクセルペダルのシャフト部分に対して設けられ、運転者によるアクセルペダルの踏力又は踏込み量(アクセルペダルの位置)を検出する。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルのシャフト部分に対して設けられ、運転者によるブレーキペダルの踏力又は踏込み量(ブレーキペダルの位置)を検出する。
自動運転ECU8は、車両の自動運転を実行するため電子制御ユニットである。自動運転ECU8は、自動運転を開始する場合、車両の走行する走行経路の生成をECU10に要求する。自動運転ECU8は、車両の各種アクチュエータに制御信号を送信することで、走行経路に沿った車両の自動運転を実行する。
次に、ECU10の機能的構成について説明する。ECU10は、車両位置認識部11、周辺環境認識部12、走行状態認識部13、走行経路生成部14、経路選択部15、走行データ取得部16、走行軌跡データ演算部17、及び操作介入検出部18を有している。
車両位置認識部11は、GPS受信部1の位置情報及び地図情報記録部4の地図情報に基づいて、車両の地図上の位置を認識する。車両位置認識部11は、地図情報記録部4の地図情報に含まれた電柱等の固定障害物の位置情報及び外部センサ2の検出結果を利用して、SLAM[Simultaneous Localization and Mapping]技術により車両の位置を認識してもよい。また、車両位置認識部11は、車載のカメラにより撮像された車両前方の撮像画像(白線の画像)に基づいて、周知の画像処理手法により、車両の横位置を認識する。
周辺環境認識部12は、外部センサ2の検出結果に基づいて、車両の周辺環境を認識する。周辺環境には、車両に対する障害物の位置、車両に対する障害物の相対速度、車両に対する障害物の移動方向などが含まれる。周辺環境認識部12は、カメラの撮像画像、レーダーの障害物情報、又はライダーの障害物情報に基づいて、周知の技術により、車両の周辺環境を認識する。周辺環境認識部12は、カメラの撮像画像に基づいて、周知の技術により路面摩擦係数や路面カントを認識してもよい。
走行状態認識部13は、車両の走行状態を認識する。車両の走行状態には、車両の速度、車両の加速度、車両の舵角などが含まれる。走行状態認識部13は、内部センサ3の検出結果に基づいて、車両の走行状態を認識する。
走行経路生成部14は、自動運転において車両が走行する目標となる走行経路を生成する。走行経路生成部14は、静的ロジックによる走行経路の生成と動的ロジックによる走行経路の生成とを行う。
静的ロジックによる走行経路の生成とは、過去の走行軌跡データを用いない、走行経路の生成である。走行経路生成部14は、車両の地図上の位置、車両の周辺環境、及び車両の走行状態に基づいて、周知の技術により、静的ロジックによる走行経路の生成を行う。走行経路生成部14は、地図情報に記録された車線の左右境界点から車両トレッド、マージンを考慮し、車両を質点として扱うことで走行可能な走路境界(車線幅方向における車線内の走行可能な範囲)を算出し、その走路境界内で目的関数を最適化する走行経路を生成する。具体的に、静的ロジックによる走行経路の生成として、2014 IEEE Intelligent Vehicles Symposium(IV) Trajectory Planning forBERTHA−a Local, Continuous Method に記載の内容を採用することができる。
動的ロジックによる走行経路の生成とは、過去の走行軌跡データを用いた走行経路の生成である。走行経路生成部14は、車両の地図上の位置、車両の周辺環境、車両の走行状態、及び、走行軌跡データ記録部6に記録された走行軌跡データに基づいて、動的ロジックによる走行経路の生成を行う。
ここで、図2(a)は、走行軌跡データを用いた走行経路生成(すなわち動的ロジックによる走行経路の生成)を説明するための図である。図2(a)に、車線R、車線Rの白線L1,L2、車線Rの左境界点E1a〜E1e、車線Rの右境界点E2a〜E2e、車線Rにおける走行軌跡データDb〜Dd、走行可能な走路境界Ka〜Keを示す。車線Rの左境界点E1a〜E1eは、白線L1上に所定間隔で設定された地図上の点である。車線Rの右境界点E2a〜E2eは、白線L2上に所定間隔で設定された地図上の点である。左境界点E1a〜E1e及び左境界点E2a〜E2eの情報は、地図情報記録部4の地図情報に含まれている。
走行軌跡データDb〜Ddは、走行軌跡データ記録部6に記録された複数の走行軌跡データである。走行軌跡データDbは、左境界点E1bと右境界点E2bとを結ぶ線(車線Rの車線幅方向に平行な線)上に位置する走行軌跡データである。走行軌跡データDcは、左境界点E1cと右境界点E2cとを結ぶ線上に位置する走行軌跡データである。走行軌跡データDdは、左境界点E1dと右境界点E2dとを結ぶ線上に位置する走行軌跡データである。
走行可能な走路境界Ka〜Keは、生成される走行経路が通ることが可能な範囲である。走路境界Kaは、左境界点E1aと右境界点E2aとを結ぶ線上に設定されている。走路境界Kbは、左境界点E1bと右境界点E2bとを結ぶ線上に設定されている。走路境界Kc〜Keも同様である。図2(a)に示す走行可能な走路境界Kb〜Kdは、走行軌跡データDb〜Ddの位置と対応している。すなわち、走路境界Kbの左端は、走行軌跡データDbのうち最も左側の点の位置に相当する。走路境界Kbの右端の位置は、走行軌跡データDbのうち最も右側の点の位置に相当する。走路境界Kc,Kdも同様である。
走行経路生成部14は、図2(a)に示すように走行軌跡データDb〜Ddと対応するように走行可能な走路境界Kb〜Kdを設定する。また、走行経路生成部14は、対応する走行軌跡データが存在しない走路境界Ka,Keは白線L1と白線K2との間の範囲として設定する。走行経路生成部14は、車両の地図上の位置、車両の周辺環境、及び車両の走行状態に基づいて、これらの走路境界Ka〜Keを通るように走行経路を生成する。なお、走路境界Kb〜Kdの範囲を走行軌跡データDb〜Ddの標準偏差2σに対応する範囲として設定してもよい。
図2(b)は、走行軌跡データを用いた走行経路生成の他の例を説明するための図である。図2(b)に、車線を車線幅方向に三分割する分割線H1,H2を示す。図2(b)に示すように、走行経路生成部14は、白線L1から分割線H1までの範囲、分割線H1から分割線H2までの範囲、分割線H2から白線L2までの範囲の3つの範囲のうち、走行軌跡データDb〜Ddが最も少ない範囲を除外してもよい。図2(b)に示す状況では、走行経路生成部14は、走行軌跡データDb〜Ddが存在する分割線H1から分割線H2までの範囲と分割線H2から白線L2までの範囲を、走路境界Kb〜Kdとして設定している。
また、走行経路生成部14は、操作介入検出部18が運転者の操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に車両が走行した軌跡に対応する走行軌跡データを走行経路の生成に使用しない。この点について詳しくは後述する。
経路選択部15は、静的ロジックにより生成された走行経路と、動的ロジックにより生成された走行経路から、出力する走行経路を選択する。静的ロジックと動的ロジックを比較すると、静的ロジックは走路境界Ka〜Keの制限を受けないため、静的ロジックにより生成された走行経路の方が動的ロジックにより生成された走行経路より曲率変化が滑らかになる。このため、経路選択部15は、動的ロジックを選択する必要性がある場合に、動的ロジックによる走行経路を選択する。経路選択部15は、動的ロジックを選択する必要性がない場合、静的ロジックによる走行経路を選択する。
以下、動的ロジックを選択する必要性がある場合について図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。図3(a)は、動的ロジックを選択する必要性がある場合を説明するための図である。図3(a)に、静的ロジックにより生成された走行経路Tsと、動的ロジックにより生成された走行経路Td、偏差eを示す。偏差eは、車線幅方向における走行経路Tsと走行経路Tdの差である。経路選択部15は、図3(a)に示す状況において、偏差eが閾値(例えば30cm)以上である場合、動的ロジックによる走行経路Tdを選択する。
図3(b)は、動的ロジックを選択する必要性がある場合の他の例を説明するための図である。図3(b)に、走行軌跡データDb〜Ddの標準偏差2σの範囲であるQb〜Qdを示す。経路選択部15は、図3(b)に示す状況において、静的ロジックによる走行経路Tsが、走行軌跡データDb〜Ddの標準偏差2σの範囲Qb〜Qdに入らなかった場合、動的ロジックによる走行経路Tdを選択する。
走行データ取得部16は、車両の走行データを取得する。走行データ取得部16は、自動運転又は手動運転に関わらず走行データを取得する。走行データ取得部16は、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置に基づいて、車両が実際に走行した軌跡(実走行軌跡)上の位置情報である実走行軌跡データを走行データとして取得する。走行データ取得部16は、周辺環境認識部12の認識した車両の周辺環境に基づいて、周辺障害物の有無を走行データとして取得する。走行データ取得部16は、走行状態認識部13の認識した走行状態に基づいて、車両の車速、ハンドル角、前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨーレート、車体スリップ角、タイヤスリップ率、路面摩擦係数を走行データとして取得する。走行データ取得部16は、自動運転ECU8から車両の運転状態(自動運転、協調運転、手動運転)の情報を走行データとして取得する。また、走行データ取得部16は、自動運転ECU8から障害物回避のブレーキ制御やステア制御、衝突回避制御、横滑り防止制御を行っているか否かの情報を走行データとして取得する。
また、走行データ取得部16は、車両のワイパーの作動の有無と外気温センサから、車両の外の天候を走行データとして取得してもよい。走行データ取得部16は、例えば、ワイパーの作動が無い場合には晴、ワイパーの作動が有り外気温が0度を超えていれば雨、ワイパーの作動が有り外気温が0度以下であれば雪として天候を決定する。また、走行データ取得部16は、周知の運転技量判定手法を利用して運転者の運転技量(初級、中級、上級)を判定し、その運転技量を走行データとして取得する。また、走行データ取得部16は、日時についても走行データとして取得する。
走行データ取得部16は、走行データを取得した場合、後述する操作介入検出部18において自動運転中に運転者による操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に取得された走行データであるか否かを判定する。予め設定された時間とは、例えば2秒である。走行データ取得部16は、操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に取得された走行データであると判定した場合、当該走行データを不使用走行データとして走行データ記録部5に記録する。走行データ取得部16は、操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に取得された走行データではないと判定した場合、当該走行データをそのまま走行データとして走行データ記録部5に記録する。
なお、走行データ取得部16は、走行データとして走行データ記録部5に記録した後に操作介入が検出された場合、操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に取得された走行データを走行データ記録部5から削除すると共に不使用走行データとして記録し直す。
走行軌跡データ演算部17は、走行データ記録部5に記録された走行データに基づいて地図情報に関連付けられた走行軌跡データを演算する。走行軌跡データ演算部17は、車両が実際に走行した実走行軌跡に対応する位置情報である走行軌跡データを演算する。走行軌跡データ演算部17は、走行軌跡データの演算に不使用走行データを用いない。
走行軌跡データ演算部17は、走行データ記録部5に記録された走行データのうち、所定の条件を一定時間(例えば2秒)以上連続して満たす走行データに基づいて、走行軌跡データを演算する。所定の条件とは、一例として、車速>30km/h、ハンドル角速度絶対値<50deg/s、前後加速度絶対値<2m/s2、横加速度絶対値<2m/s2、上下加速度絶対値<2m/s2、ヨーレート絶対値<20deg/s、車体スリップ角絶対値<1deg、タイヤスリップ率絶対値<2%、路面摩擦係数推定値>0.5、ブレーキ制御無し、緊急回避のためのステア作動無し、周辺障害物無し、障害物回避無しである。
ここで、図4は、走行軌跡データの演算を説明するための図である。図4に、走行データに含まれる実走行軌跡データCa〜Ce、実走行軌跡データCa〜Ceを結ぶ曲線(実走行軌跡)Tを示す。
図4に示されるように、実走行軌跡データCa〜Ceは、車両側のタイミングで取得されるため、地図情報における左境界点E1a〜E1d及び左境界点E2a〜E2dと対応していない。そこで、走行軌跡データ演算部17は、走行データに含まれる実走行軌跡データCa〜Ceを曲線関数(Bスプライン、スプライン曲線、クロソイドなど)を用いて補間することで、実走行軌跡Tを演算する。走行軌跡データ演算部17は、実走行軌跡T上で左境界点E1a〜E1d及び左境界点E2a〜E2dに対応する位置を、走行軌跡データDa〜Ddとして演算する。走行軌跡データDaは、左境界点E1aと右境界点E2aとを結ぶ線と実走行軌跡Tとの交点に設定される。走行軌跡データDbは、左境界点E1bと右境界点E2bとを結ぶ線と実走行軌跡Tとの交点に設定される。走行軌跡データDc,Ddも同様である。
走行軌跡データ演算部17は、走行軌跡データDaの直前の実走行軌跡データCaに対応する車速、天候、ヘッドライトの点灯の有無、運転状態、運転技量、日時を、走行軌跡データDaと関連付けて走行軌跡データ記録部6に記録する。複数車両で走行軌跡データ記録部6を共有する場合には、車両ナンバーなどの車両情報も走行軌跡データDaに関連付けて記録する。走行軌跡データ演算部17は、走行軌跡データDb〜Ddも同様にして走行軌跡データ記録部6に記録する。
操作介入検出部18は、車両が自動運転中である場合に、運転者が運転操作を開始する操作介入を検出する。操作介入検出部18は、自動運転ECU8からの信号に基づいて、車両が自動運転中であるか否かを認識する。操作介入検出部18は、運転操作検出部7の検出結果に基づいて、運転者による操作介入を検出する。操作介入検出部18は、車両が自動運転中である場合に、運転者の操作するステアリングホイールの操舵角が閾値以上になったときに、操作介入を検出する。操作介入検出部18は、車両が自動運転中である場合に、運転者によるブレーキペダル又はアクセルペダルの踏込み量が閾値以上になったときに、操作介入を検出してもよい。
[走行経路生成装置による走行経路生成処理]
次に、本実施形態に係る走行経路生成装置100による走行経路生成処理について図5を参照して説明する。図5は、走行経路生成装置100による走行経路生成処理を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、自動運転ECU8から走行経路生成の要求を受けた場合に実行される。
図5に示すように、走行経路生成装置100のECU10は、S10において車両位置認識部11による車両の地図上の位置の認識を行う。車両位置認識部11は、GPS受信部1の位置情報及び地図情報記録部4の地図情報に基づいて、車両の地図上の位置を認識する。ECU10は、車両の地図上の位置を認識した場合、S12に移行する。
S12において、ECU10は、走行経路生成部14により静的ロジックによる走行経路の生成を行う。走行経路生成部14は、車両の地図上の位置、車両の周辺環境、及び車両の走行状態に基づいて、周知の技術により、静的ロジックによる走行経路の生成を行う。ECU10は、静的ロジックによる走行経路の生成が行われた場合、S14に移行する。
S14において、ECU10は、走行経路生成部14により動的ロジックによる走行経路の生成を行う。走行経路生成部14は、車両の地図上の位置、車両の周辺環境、車両の走行状態、及び、走行軌跡データ記録部6に記録された走行軌跡データに基づいて、動的ロジックによる走行経路の生成を行う。
この走行軌跡データの演算には、操作介入検出部18が運転者の操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に走行データ取得部16が取得した走行データ(不使用走行データ)は含まれない。すなわち、走行経路生成部14は、操作介入検出部18が運転者の操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に車両が走行した軌跡に対応する走行軌跡データを走行経路の生成に使用しない。ECU10は、動的ロジックによる走行経路の生成が行われた場合、S16に移行する。なお、S12とS14の順番は逆であってもよく、同時に行われてもよい。
S16において、ECU10は、経路選択部15により走行経路の選択を行う。経路選択部15は、動的ロジックを選択する必要性がある場合、動的ロジックによる走行経路を選択する。経路選択部15は、動的ロジックを選択する必要性がない場合、静的ロジックによる走行経路を選択する。ECU10は、走行経路が選択された場合、今回の走行経路生成処理を終了する。ECU10は、選択された走行経路を自動運転ECU8に送信する。
[走行経路生成装置による走行データの記録処理]
続いて、走行経路生成装置100による走行データの記録処理について説明する。図6(a)は、走行経路生成装置100による走行データの記録処理を示すフローチャートである。図6(a)に示すフローチャートは、車両が走行中である場合に実行される。
図6(a)に示すように、ECU10は、S20として、走行データ取得部16による走行データの取得を行う。走行データ取得部16は、車両位置認識部11の認識した車両の地図上の位置に基づいて、車両が実際に走行した軌跡である実走行軌跡データを走行データとして取得する。走行データ取得部16は、走行状態、運転状態、日時などを含む各種のデータを走行データとして取得する。ECU10は、走行データを取得した場合、S22に移行する。
S22において、ECU10は、走行データ取得部16により、S20で取得した走行データが、操作介入を検出したときから予め設定された時間(所定時間)前までの間に取得された走行データであるか否かの判定を行う。走行データ取得部16は、操作介入検出部18の検出結果に基づいて、操作介入を検出したときから所定時間前までの間に取得された走行データであるか否かを判定する。ECU10は、操作介入を検出したときから所定時間前までの間に取得された走行データであると判定した場合(S22:YES)、S24に移行する。ECU10は、操作介入を検出したときから所定時間前までの間に取得された走行データではないと判定した場合(S22:NO)、S26に移行する。
S24において、ECU10は、走行データ取得部16によりS20で取得した走行データを不使用走行データとして走行データ記録部5に記録する。その後、ECU10は、S20に戻って新たな走行データを取得する。
S26において、ECU10は、走行データ取得部16によりS20で取得した走行データを走行データとして走行データ記録部5に記録する。その後、ECU10は、S20に戻って新たな走行データを取得する。
[走行経路生成装置による走行軌跡データの記録処理]
次に、走行経路生成装置100による走行軌跡データの記録処理について説明する。図6(b)は、走行経路生成装置100による走行軌跡データの記録処理を示すフローチャートである。図6(b)に示すフローチャートは、走行データ記録部5に複数の走行データが記録されて走行軌跡データを演算可能になった場合に実行される。なお、定期的(数時間毎、1日毎)に実行される態様であってもよい。
図6(b)に示されるように、ECU10は、S30において、走行軌跡データ演算部17により走行軌跡データを演算する。走行軌跡データ演算部17は、走行データ記録部5に記録された走行データに基づいて、車両が実際に走行した実走行軌跡に対応する位置情報である走行軌跡データを演算する。走行軌跡データ演算部17は、不使用走行データに基づいて走行軌跡データを演算しない。ECU10は、走行軌跡データを演算した場合、S32に移行する。
S32において、ECU10は、走行軌跡データ演算部17により走行軌跡データを走行軌跡データ記録部6に記録する。走行軌跡データ演算部17は、地図情報に関連付けて走行軌跡データを走行軌跡データ記録部6に記録する。その後、ECU10は、一例として、他の走行軌跡データを演算可能である場合、再びS30から処理を繰り返す。ECU10は、演算可能な全ての走行軌跡データを走行軌跡データ記録部6に記録した場合、処理を終了する。
[走行経路生成装置の作用効果]
以上説明した本実施形態に係る走行経路生成装置100によれば、運転者は自動運転の走行経路が自らの感覚に合わない場合に操作介入を行うと考えられることから、操作介入検出部18が操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に車両が走行した軌跡に対応する走行軌跡データを走行経路の生成に使用しないことで、運転者の感覚に合わない走行経路を生成することを抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
例えば、走行経路生成部14における動的ロジックによる走行経路の生成は、上述した実施形態に限定されない。走行経路生成部14は、走行軌跡データを直近(例えば1ヶ月内)のデータに限定して用いてもよい。また、走行経路生成部14は、記録されたときの車速が現在の車速と同じ範囲(例えば四捨五入して同じ値となる範囲)の走行軌跡データに限定して用いてもよく、記録されたときの天候(晴、雨、雪)が現在の天候と同じデータに限定して用いてもよい。また、走行経路生成部14は、ヘッドライトの点灯の有無が現在の状態と同じ走行軌跡データに限定して用いてもよく、運転者の運転技量の判定結果が現在の運転技量の判定結果と同じ走行軌跡データに限定して用いてもよい。走行経路生成部14は、車両の運転状態(自動運転、協調運転、手動運転)が現在の運転状態と同じ走行軌跡データに限定して用いてもよい。
また、走行軌跡データを複数の車両で共有する場合には、車両情報で走行軌跡データを限定してもよい。例えば、走行経路生成部14は、車両のカテゴリが自車と同じで、ホイールベース及びトレッドの差が自車と20mm以内であり、地図更新年月日が3年以内の車両から得られた走行軌跡データに限定して用いてもよい。なお、車両ナンバーの情報を用いて、自車の走行軌跡データに限定することも可能である。
上述した実施形態の変形例(参考例)として、操作介入を検出したときから予め設定された時間前までの間に車両が走行した軌跡に対応する位置情報である走行軌跡データを避けるように、走行経路を生成することも考えられる。この場合には、走行軌跡データ演算部17は、不使用走行データに基づいて、避けるための走行軌跡データを演算し、走行軌跡データ記録部6に記録する。走行経路生成部14は、不使用走行データに基づいて演算された走行軌跡データを避けるように走行経路を生成することで、運転者の感覚に合わない走行経路を生成することを抑制する(受容性の高い走行経路の生成が可能となる)。なお、走行経路生成部14は、周知の経路生成の評価関数に、不使用走行データに基づいて演算された走行軌跡データに類似する走行経路を悪く評価する項を加えることで、不使用走行データに基づいて演算された走行軌跡データを避けるように、走行経路を生成してもよい。
更に、上述した実施形態の変形例として、走行軌跡データ記録部6に記録された走行軌跡データの網羅性向上の観点から次のように走行経路を生成する態様も考えられる。図7は、走行経路生成の第1変形例を説明するための図である。図7に示すように、走行経路生成部14は、白線L1から分割線H1までの範囲、分割線H1から分割線H2までの範囲、分割線H2から白線L2までの範囲の3つの範囲のうち、走行軌跡データDb〜Ddが無い範囲を通るように走路境界Kb〜Kdを設定し、走路境界Kb〜Kdを通るように走行経路を生成することが考えられる。これにより、走行軌跡データDb〜Ddが無い範囲に対応する走行軌跡データを得ることができ、走行軌跡データの網羅性を向上させることができる。
また、走行軌跡データの網羅性向上と道路劣化度合いを均等化させることを目的として、車線を車線幅方向に三分割し、1台もしくは複数台の車両に対して異なる領域を走行するように走行経路を生成することが考えられる。図8(a)は、走行経路生成の第2変形例の一態様を説明するための図である。図8(b)は、走行経路生成の第2変形例の他の態様を説明するための図である。図8(c)は、走行経路生成の第2変形例の更に他の態様を説明するための図である。走行経路生成部14は、車両が図8(a)〜図8(c)に示される異なる走路境界Ka〜Keを通るように走行経路を生成する。
また、上述した実施形態の変形例として、車両挙動が複雑な状況においては、走行軌跡データ記録部6の各種パラメータのデータ精度が劣化する。劣化を最小限とするために複数の車両に一時的に、あるパラメータの精度を向上させるタスク(例えば、直進状態、速度低下など)を割り振り、その一時的な区間の走行データを集めることにより、高精度で網羅的な走行軌跡データ記録部6を構築する。
図9は、走行経路生成の第3変形例を説明するための図である。図9に、ある車両の分担する走路境界の範囲B1、別の車両の分担する走路境界の範囲B2を示す。範囲B1には、走路境界Ka〜Kdが含まれる。範囲B1には、走路境界Kc〜Keが含まれる。図9に示す状況では、精度を向上させるパラメータとして路面カントを対象としている。路面カントは、車両が直進走行中であれば精度良く推定できるため、直進走行できる範囲を各車両に分担してもらう。直進走行中の走行データを取得することで、路面カントの情報の精度を高める。
その他、上述した実施形態の変形例として、走行軌跡データの中から所望の項目で抽出した走行軌跡データを運転者の感覚に合うものとして採用することが考えられる。但し、この変形例では走行経路だけではなく、車両の目標となる目標車速も合わせて生成する。走行軌跡データには、過去の車両の車速も関連付けられている。この場合、走行経路生成部14は、走行軌跡データに関連付けられている車速のデータの標準偏差2σの範囲に含まれるように、車両の目標車速を生成する。
なお、走行軌跡データに関連付けられている車速のデータの標準偏差2σの範囲内の値の最小値(車線の最低制限速度より低い場合には最低制限速度)を目標車速としてもよい。走行経路生成部14は、走行軌跡データを直近(例えば1ヶ月内)のデータなどに限定することなく、全ての走行軌跡データに関連付けられている車速の標準偏差2σの範囲に含まれるように、車両の目標車速を生成してもよい。また、車速は環境に合致した値を選択することが望ましい。具体的に、天候が現在と同じ、ヘッドライトの点灯の有無が現在と同じ、日時に関して季節が現在と同じ走行軌跡データに関連付けられている車速を用いることが望ましい。
その他、走行軌跡データ記録部6に記録された走行軌跡データについて、走行経路の生成に用いる走行軌跡データの抽出条件を運転者(ユーザ)が設定可能であってもよい。ユーザ設定及び車両の状況を鑑みて、装置が抽出条件を動的に変化させてもよい。