JP6528522B2 - 延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents

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本発明は、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
近年、自動車の燃費向上を目的として自動車を構成する各種部品の軽量化が進められている。軽量化手段は部品各々の要求性能により違い、例えば骨格部品では鋼板の高強度化による薄肉化、パネル部品では鋼板のAl合金等の軽金属への置換等が行われている。しかし、鋼と比較した場合、Al合金等の軽金属は高価であるため主に高級車に適用されているのが現状である。
一方、自動車需要は先進国から新興国にシフトしており、今後は軽量化と低価格化の両立が求められることが予想される。部品に関わらず鋼の高強度化と薄肉化による軽量化の達成が必要となる。
乗用車用ホイールは、意匠性の観点でアルミ鋳造および鍛造品が有利であった。しかし最近はスチールプレス品でも材料、工法を工夫することによりアルミホイールと同等の意匠性の製品が出現している。
特にエンドユーザーの目に触れるホイールディスクにおいてこれまで求められてきた優れた疲労耐久性、耐食性に加え、アルミホイールと同等の意匠性、美麗性をスチールホイールにも求められている。同様に、ホイールディスク用の鋼板においても、薄肉化を達成する高強度化と、これまでの疲労耐久性、耐食性に加え、部品としての意匠性を向上させるための加工性の向上と美麗性を担保するための表面性状の改善が求められるようになった。
これまでホイールディスク用の鋼板に求められる特性としては張り出し加工性、絞り加工性と疲労耐久性が特に重要視されていた。これは、ホイールディスクの成形工程の中でもハット部の加工が厳しく、また、ホイールの部材特性で最も厳しい基準で管理されているのが疲労耐久性であるためである。疲労耐久性は、切り欠きの無い平滑材の疲労特性と、応力集中下での切り欠き疲労特性の二種類に分類され、ホイールディスクにおいては両方の疲労特性が良好であることが望ましい。
現在、これらホイールディスク用の高強度熱延鋼板として部材での疲労耐久性を重視して、疲労特性に優れる590MPa級のフェライト−マルテンサイトの複合組織鋼板(いわゆるDual Phase鋼)が用いられている。しかし、これらの鋼板に要求される強度レベルは590MPa級から780MPa級へとさらなる高強度化へ向かいつつある。
非特許文献1には、鋼板のミクロ組織をフェライトとマルテンサイトから構成されるDual Phase鋼(以下、DP鋼と表記する。)のように複合組織化することで同一強度でも均一伸びを確保する方法が開示されている。
一方、DP鋼は曲げ成形、穴拡げ加工やバーリング加工に代表される局部変形能は、低いことが知られている。これはフェライトとマルテンサイトの強度差が大きいために、成形に伴ってマルテンサイト近傍のフェライトに大きな歪、応力集中が発生し、クラックが発生することが理由である。この知見を元に、組織間の強度差を低減することで穴広げ率を高めた高強度鋼板が開発されている。
特許文献1ではベイナイトまたはベイニティックフェライトを主相として強度を確保し、穴広げ性を大きく向上させた鋼板が提案されている。単一組織鋼にすることで前述したような歪、応力集中が発生せず、高い穴広げ率が得られるというものである。
しかしながら、ベイナイトやベイニティックフェライトの単一組織鋼にしたことで大きく伸びが劣化し、伸びと穴広げ性の両立を達成することはできていない。
さらに、近年では単一組織鋼の組織として伸びに優れるフェライトを利用し、Ti、Mo等の炭化物を利用して高強度化を図った高強度鋼板が提案されている(例えば、特許文献2〜4)。
特許文献2にて提案された鋼板は多量のMoを含有する。
特許文献3にて提案された鋼板は多量のVを含有する。
特許文献4にて提案された鋼板は、結晶粒を微細化するため、圧延の途中で冷却することが必要である。
そのため、これらの鋼板には、合金コストや製造コストが高くなるという問題がある。また、これらの鋼板においてもフェライト自体を大きく高強度化させたことにより伸びは劣化してしまっている。これらの鋼板は、ベイナイトやベイニティックフェライトの単一組織鋼の伸びを上回るものの、伸び−穴広げ性バランスは必ずしも十分ではなかった。
特許文献5では、DP鋼中のマルテンサイトをベイナイトとし、フェライトとの組織間強度差を小さくすることで穴広げ性を高めた複合組織鋼板が提案されている。しかし、強度を確保するためにベイナイト組織の面積率を高めた結果、伸びが劣化し、伸び−穴広げ性バランスは十分ではなかった。
特許文献7〜9には、DP鋼のフェライトを析出強化することで硬質組織との強度差を低減させた鋼板も提案されている。
しかし、この技術ではMoが必須元素となっており、製造コストが高くなる問題がある。またフェライトを析出強化しても、硬質組織であるマルテンサイトとの強度差は大きく、高い穴広げ性向上効果は得られていない。
一方、これらDP鋼はミクロ組織をフェライトとマルテンサイトの複合組織とするために、フェライト変態を促進する目的でSiが添加されていることが多い。しかし、Siの含有は、赤スケール(Siスケール)と呼ばれるタイガーストライプ状のスケール模様が鋼板の表面に生成するため、美麗性が求められる高意匠ホイールディスクに用いられる各種鋼板への適用は難しい。
特許文献10には、780MPa以上の鋼板において、DP鋼のマルテンサイト分率を3〜10%に制御することで、伸びと穴広げ性のバランスの優れた鋼板に関する技術が開示されている。しかしながら、Siが0.5%以上添加されており、Siスケール模様の回避が難しいため、美麗性が求められる高意匠ホイールディスクに用いられる各種鋼板への適用は難しい。
特許文献11、12には、この課題に対して、Siの添加量を0.3%以下に抑制することで赤スケールの発生を抑え、さらに、Moを添加し析出物を微細化することで、高強度でありながら優れた伸びフランジ性を有する高張力熱延鋼板の技術が開示されている。しかしながら、上述した特許文献11、12に開示された技術を適用した鋼板は、Si添加量が0.3%以下程度であるものの、赤スケールの発生を十分抑制することは難しく、また、高価な合金元素であるMoを0.07%以上添加することを必須としているため製造コストが高いという問題点がある。
特許文献13には、Alを添加し低サイクル疲労特性を向上させる技術が開示されている。しかしながら、応力集中下における疲労特性である切欠き疲労特性については何ら技術的な開示が無い。
特許文献14にはSiの含有量の上限を規定し、かつ析出物密度と硬質相分率を制御することで、赤スケールの抑制と切欠き疲労特性を両立させる技術が開示されている。しかしながら、切欠きの無い材料(平滑材)の疲労特性については何ら技術的な開示が無い。
特許文献15、特許文献16には、切り欠きの無い材料の疲労特性を向上させるには組織を微細化させることが有効であることから、フェライトの平均粒径を2μm以下とした、強度−延性バランス及び疲労限度比(疲労強度/TS)の良好な熱延鋼板が記載されている。
特許文献17には、疲労き裂は表面近傍から発生するため、表面近傍の組織を微細化することが記載されている。
特許文献18には、マルテンサイト組織の細粒化による疲労特性の向上が記載されている。しかし、細粒化は切り欠きの無い材料の疲労特性を向上させ、延性も損なわないものの、強度の上昇量が固溶強化・析出強化などの強化機構と比較して小さいため、鋼板の高強度化が進む中で細粒化のみで疲労特性を担保するには限界があった。
固溶強化や析出強化は一般に大きな強度上昇が得られ、高強度鋼板に適用されている。
非特許文献1では、固溶強化・析出強化・細粒強化が引張強さと疲労特性に与える影響を調査し、引張強さの上昇量に対する疲労強度の上昇量は、固溶強化>析出強化>細粒強化の順であると報告されている。
非特許文献2では、鋼中のCuの存在状態を固溶から析出に変化させると、疲労特性が低下すると報告されている。
析出強化は固溶強化よりも添加量あたりの引張強さが大きく、強度を容易に上昇させられるものの、先述のように固溶強化と比較して疲労特性上昇量が少ないという報告がある。このため、疲労特性が重要になる部品には固溶強化した鋼板が優先して使用されてきた。
切り欠き疲労特性の向上については、複合組織化によるき裂伝播速度の低減が効果的であることが報告されている。
特許文献19では、微細なフェライトを主相とした組織中に硬質なベイナイトまたはマルテンサイトを分散させることで、切り欠きの無い材料の疲労特性と切り欠き疲労特性を両立させている。しかし、プレス成形性を向上させるための手法が記載されておらず、ベイナイトやマルテンサイトの硬度や形状に格別の注意を払っていないため、良好なプレス成形性を備えていないと考えられる。
特許文献20および特許文献21では、複合組織中のマルテンサイトのアスペクト比を上げることで、き裂伝播速度を低減できることが報告されている。しかし、いずれも厚板に適用される技術であり、プレス成形を行う際に必要となる延性および穴広げ性等の加工性を備えていない。そのため、特許文献20および特許文献21に記載された鋼板を自動車用鋼板として用いることは困難である。
このように、析出強化鋼ではき裂の無い材料の疲労特性が課題であり、切り欠き疲労特性、切り欠きの無い平滑材の疲労特性とプレス成形性の両立に関しては析出強化鋼に限らず、有効な解決手段は提案されていない。
特開2003−193190号公報 特開2003−089848号公報 特開2007−063668号公報 特開2004−143518号公報 特開2004−204326号公報 特開2007−302918号公報 特開2003−321737号公報 特開2003−321738号公報 特開2003−321739号公報 特開2011−184788号公報 特開2002−322540号公報 特開2002−322541号公報 特開2010−150581号公報 国際公開第2014/051005号 特開平11−92859号公報 特開平11−152544号公報 特開2004−211199号公報 特開2010−70789号公報 特開平04−337026号公報 特開2005−320619号公報 特開平07−90478号公報
阿部隆ら:鉄と鋼,第70年(1984)第10号第145頁 T.Yokoiら:Journal of Materials science,第36年(2001)第5757頁 水井正也ら:CAMP ISIJ,第5年(1992)第1867頁
本発明は上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供することである。特に、切欠きの無い材料の疲労特性とプレス成形性の両立を課題とする。
なお、ここで定義する延性とはプレス成形性の際に必要な均一伸びのことである。均一伸びが小さいとプレス成形時にネッキングによる板厚減少が起こり易く、プレス割れの原因となる。また、均一伸びとは、JIS Z 2241:2011の最大試験力時塑性伸び(%)のことであり、(u―El)(uniform Elongation)と記す場合がある。
そして、この均一伸び(u―El)は、プレス成形性を確保するため、引張強さ(TS)≧540MPaで、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことが必要である。また、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法による穴広げ率(λ)は、足回り部品をプレスした際に伸びフランジ性が不足して割れが生じることがないようにするため、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことが必要である。
また、ここで(TS)はJIS Z 2241:2011に基づいて測定される引張強さを表す。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、高強度熱延鋼板の成分及び製造条件を最適化し、鋼板の組織を制御することによって、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板の製造に成功した。その要旨は以下のとおりである。
(1)
化学組成が、質量%で、
C :0.030〜0.200%、
Mn:0.10〜3.00%、
P :0.100%以下、
S :0.0300%以下、
Al:0.100〜2.000%、
N :0.0100%以下(0は含まない)、
O :0.0100%以下、
Ti:0.010〜0.380%、
残部がFeおよび不可避的不純物であって、(a)式で表わされるTiefが0.01〜0.30%であり、
隣接する結晶方位情報の方位差15°以上を粒界とした結晶粒であり、前記結晶粒の円相当径(直径)が0.3μm以上の結晶粒であって、前記結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒を面積率で50%以上含み、さらに
マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計が面積分率で2%以上10%以下であり、
(a)式で表わされるTiefの40%以上の質量%のTiが、Ti炭化物として存在し、当該Ti炭化物の円相当粒径が7nm以上20nm以下のものの質量が、Ti炭化物の円相当粒径が1nm以上100nm以下であるものの質量の50%以上であり、
(e)式を満足することを特徴とする、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
Tief=[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]・・・(a)
(TS)×(λ)≧36000MPa%・・・(e)
但し、(a)式中の[Ti][N][S]はそれぞれTi、N、Sの質量%を示し
(e)式中の(TS)は引張強さを、(λ)は穴広げ率を示す。
(2)
さらに質量%で、
Si:0.500%以下、
Nb:0.010〜0.100%、
V :0.010〜0.300%、
Cu:0.01〜1.20%、
Ni:0.01〜0.60%、
Cr:0.01〜2.00%
Mo:0.01〜1.00%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、(1)に記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
(3)
さらに質量%で、
Mg:0.0005〜0.0100%、
Ca:0.0005〜0.0100%、
REM:0.0005〜0.1000%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
(4)
さらに質量%で、
B:0.0002〜0.0020%、
を含有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
(5)
(1)〜(4)のいずれか1つに記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法であって、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の成分組成を有するスラブを、式(b)で規定されるT1以上の温度に加熱し、加熱したスラブを熱間圧延するに際し、
鋼板の中心温度が1000℃から式(d)により求めるAr3温度になるまでの時間(t1)を9.0秒以内とし、
熱間圧延のうち複数段の連続圧延からなる仕上圧延において圧下率が10%以上である仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段を、式(c)で規定される温度T2に対して(T2−20)℃以上(T2+100)℃以下の圧延温度で行い、その後得られた熱延鋼板を、
平均冷却速度20℃/秒以上で730℃以上830℃以下の温度まで冷却し、その後
730℃以上830℃以下の温度域で3秒以上空冷し、その後平均冷却速度40℃/秒以上で冷却し、その後300℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
T1(℃)=7000/{2.75−log([Ti]×[C])}−273・・・(b)
T2(℃)=870+10×([C]+[N])×[Mn]+350×[Nb]+250×[Ti]+40×[B]+10×[Cr]+100×[Mo]+100×[V]・・・(c)
Ar3(℃)=868−396×[C]−68.1×[Mn]+24.6×[Si]−36.1×[Ni]−24.8×[Cr]−20.7×[Cu]+250×[Al]・・・(d)
ただし、式(d)で計算されるAr3温度が900℃を超える場合には、Ar3=900℃とし、式中の[X]は、鋼中に含有する成分元素Xの質量%を表す。
なお、式(a)(b)(c)(d)中の角カッコ([ ])は、カッコ内の元素の鋼板中の質量%を示す(以下、本明細書において同じ。)。
本発明によれば、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板を提供することができる。この鋼板を使用すれば、自動車用材料の足回り部品に適用する材料のプレス成形性と疲労寿命を延ばすことが可能となり、自動車車体の軽量化が促進されると考えられ、産業上の貢献が顕著である。
繰り返し応力ひずみ曲線および繰り返し降伏応力を説明する図である。 切欠きのない低サイクル疲労試験片の例を示す図である。 切欠きのある疲労試験片の例を示す図である。
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
[鋼板の化学成分]
まず、本発明の熱延鋼板の化学成分の限定理由を説明する。なお、含有量の%は質量%である。
(C:0.030%〜0.200%)
Cは本発明において重要な元素の一つである。Cはマルテンサイトを生成させオーステナイトを安定化させることに加え、Ti炭化物を形成するため組織強化および析出強化による熱延鋼板の強度向上に大きく寄与する。0.030%未満では強度540МPaを確保できない。また、硬質相分率が増大すると切り欠き疲労特性が向上する傾向があるため、0.050%以上の添加が望ましく、0.060%であれば更に望ましい。
一方、0.200%超添加すると硬質第二相である低温変態生成物の面積率が増加して穴広げ性が低下する。添加量が少なくなるほど穴広げ性は向上する傾向にあるので、望ましくは0.180%以下が望ましく、0.150%以下であれば更に望ましい。
従って、Cの含有量は0.030%〜0.200%とする。
(Si:0〜0.500%)
Siは脱酸元素であると同時にフェライトの生成に関わり、その含有量の増加に伴いフェライト域温度を高温側に拡大させて、フェライトとオーステナイトの二相域温度域を拡大する元素である。本発明の複合組織鋼を得るためには本来はSiを含有することが望ましい。しかしながら、本発明においてはAlを0.100%以上添加することによりフェライト域温度を高温側に拡大させているため、Siの添加は必須ではない。
また、Siはタイガーストライプ状のSiスケール模様を鋼板表面に顕著に発生させ、著しく表面性状を劣化させる。そして、精整ラインでのスケール除去工程(酸洗等)の生産性を極端に低下させる場合がある。Siを0.500%超含有すると、著しく表面性状が劣化し、酸洗工程の生産性が極端に悪化する。また、如何なるスケール除去方法を実施しても、化成処理性が劣化し、塗装後耐食性が低下する。従って、Siの含有量は0.500%以下とする。
一方、Siを0.070%超含有すると、Siスケール模様が鋼板表面に散見され始める。従って、望ましくはSi含有量を0.070%以下にするとよく、0.050%以下にすると更によい。
(Mn:0.10〜3.00%以下)
Mnは、固溶強化に加え、焼入れ性を高め鋼板組織中にマルテンサイトまたはオーステナイトを生成させるために添加する。Mn含有量が3.00%超となるように添加すると、鋼板の板厚方向の中心部にМnの偏析帯が生じ、この偏析帯が割れの起点になるため穴広げ率が低下する。一方では、Mn含有量が0.10%未満では、冷却中に穴広げ率低下の原因となるパーライトの抑制効果を発揮しにくい。従って、Mnの含有量は0.10%〜3.00%とする。
また、焼き入れ性を十分確保しパーライトの抑制効果を確実にする観点からMnの含有量を0.30%以上にすることが望ましく、0.50%以上であると更に望ましい。一方、中心偏析の増大による延性の低下を抑制する観点からMnの含有量が2.50%以下にすることが望ましく、2.00%以下であれば更に望ましい。
(P:0.100%以下)
Pは、溶銑に含まれている不純物であり、粒界に偏析し、含有量の増加に伴い低温靭性を低下させる元素である。このため、P含有量は、低いほど望ましく、0.100%超含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼすので、0.100%以下とする。特に、溶接性を考慮すると、P含有量は、0.030%以下であることが望ましい。
(S:0.0300%以下)
Sは、溶銑に含まれている不純物であり、含有量が多すぎると、熱間圧延時の割れを引き起こすばかりでなく、穴広げ性を劣化させるMnSなどの介在物を生成させる元素である。このためSの含有量は、極力低減させるべきであるが、0.0300%以下ならば許容できる範囲であるので、0.0300%以下とする。ただし、ある程度の穴広げ性を必要とする場合のS含有量は、好ましくは0.0100%以下、より好ましくは0.0050%以下である。
(Al:0.100〜2.000%)
Alは、溶鋼の脱酸剤として有効な元素である。また、Alは強力なフェライト生成元素であり、Ar3温度を上昇させる効果があるため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒を面積率で50%以上とするために必須の元素である。これらの効果を得るため、Al含有量の下限を0.100%とする。好ましいAl含有量の下限は0.130%であり、より好ましいAl含有量の下限は0.150%である。
一方、Al含有量が2.000%を超えると圧延中に割れが発生することがある。そのため、Al含有量の上限を2.000%とする。また、Al含有量が1.000%を超えると溶接性や靭性などが劣化し始めるので、好ましいAl含有量の上限は、1.000%であり、より好ましいAl含有量の上限は、0.500%である。
(N :0.0100%以下(0は含まない))
Nは、TiNとして存在することで、スラブ加熱時の結晶粒径の微細化を通じて、低温靭性向上に寄与することから、添加してもよい。ただし、鋼中の窒化物は穴広げ率を低下させるため、0.0100%以下にする必要がある。望ましくは0.0050%以下である。
一方、0.0005%と以下とすることは経済的に望ましくないので、0.0005%以上とすることが望ましい。
(O :0.0100%以下)
Oは、酸化物を形成し、成形性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。特に、Oが0.0100%を超えると、この傾向が顕著となることから0.0100%以下にする必要がある。
一方、0.0010%未満とすることは経済的に好ましくないので、0.0010%以上とすることが望ましい。
(Ti:0.010〜0.380%)
Tiは、優れた疲労強度と析出強化による高強度を両立させるため、添加する。Tiが0.010%未満では析出強化の効果を得られないため、0.010%以上添加することが必要である。0.380%超添加すると上記効果は飽和して経済性が低下する。従って、Tiの含有量は0.010%〜0.380%とする。
(Tief:0.010〜0.300%)
Tief=[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]・・・(a)
Ti窒化物やTi硫化物はTi炭化物より高温で生成する。このため、鋼中のNやSが多いとTi炭化物を十分に生成させることができない。よって、Ti炭化物の生成に係る指標として(a)式で表わされるTiefという指標を用いた。Tiefが0.010%未満であるとTi炭化物の析出量が少ないため、Tiの炭化物による疲労強度と高強度の両立ができなくなる。望ましくはTiefは0.025%以上である。また、Tiefが0.300%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。さらに、Tiefが0.150%超では鋳造時にタンディッシュノズルが詰まりやすくなる恐れがあるため、0.150%以下とすることが望ましい。
以上が本発明の熱延鋼板の基本的な化学成分であるが、さらに下記のような成分を含有することができる。
(Nb:0〜0.100%)
Nbは、この炭窒化物、あるいは、固溶Nbが熱間圧延時の粒成長を遅延することで、熱延板の粒径を微細化でき、低温靭性を向上させるので添加しても良い。Nb含有量が0.100%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Nb含有量が0.010%未満では上記効果を十分に得ることができない。したがって、必要に応じてNbを含有させる場合、Nb含有量は0.010%〜0.100%にすることが望ましい。
(V :0〜0.300%)
Vは、析出強化もしくは固溶強化により熱延鋼板の強度を向上させる効果がある元素であり、添加してもよい。V含有量が0.300%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Vの含有量が0.010%未満では上記効果を十分に得ることができない。従って、必要に応じてVを含有させる場合、V含有量は0.010%〜0.300%にすることが望ましい。
(Cu:0〜2.00%)
Cuは、析出強化もしくは固溶強化により熱延鋼板の強度を向上させる効果がある元素であり、添加してもよい。Cu含有量が2.00%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Cuの含有量が0.01%未満では上記効果を十分に得ることができない。Cuの含有量が1.20%超では鋼板の表面にスケール起因の傷が発生することがある。従って、必要に応じてCuを含有させる場合、Cu含有量は0.01%〜1.20%にすることが望ましい。
(Ni:0.01%〜2.00%)
Niは、析出強化もしくは固溶強化により熱延鋼板の強度を向上させる効果がある元素であり、添加してもよい。Ni含有量が2.00%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Niの含有量が0.01%未満では上記効果を十分に得ることができない。Niの含有量が0.60%を超えると延性が劣化し始める。従って、必要に応じてNiを含有させる場合、Ni含有量は0.01%〜0.60%にすることが望ましい。
(Cr:0〜2.00%)
Crは、析出強化もしくは固溶強化により熱延鋼板の強度を向上させる効果がある元素であり、添加してもよい。Cr含有量が2.00%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Crの含有量が0.01%未満では上記効果を十分に得ることができない。従って、必要に応じてCrを含有させる場合、Cr含有量は0.01%〜2.00%にすることが望ましい。
(Mo:0〜1.00%)
Moは、析出強化もしくは固溶強化により熱延鋼板の強度を向上させる効果がある元素であり、添加してもよい。Mo含有量が1.00%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Moの含有量が0.01%未満では上記効果を十分に得ることができない。従って、必要に応じてMoを含有させる場合、Mo含有量は0.01%〜1.00%にすることが望ましい。
(Mg:0〜0.0100%)
Mgは、破壊の起点となり、加工性を劣化させる原因となる非金属介在物の形態を制御し、加工性を向上させる元素であることから、添加してもよい。Mgの含有量が0.0100%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Mgの含有量は、0.0005%以上の添加で効果が顕著になる。従って、必要に応じてMgを含有させる場合、Mg含有量は0.0005%〜0.0100%にすることが望ましい。
(Ca:0〜0.0100%)
Caは、破壊の起点となり、加工性を劣化させる原因となる非金属介在物の形態を制御し、加工性を向上させる元素であることから、添加してもよい。Caの含有量が0.0100%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、Caの含有量は、0.0005%以上の添加で効果が顕著になる。従って、必要に応じてCaを含有させる場合、Ca含有量は0.0005%〜0.0100%にすることが望ましい。
(REM:0〜0.1000%)
REM(希土類元素)は、破壊の起点となり、加工性を劣化させる原因となる非金属介在物の形態を制御し、加工性を向上させる元素であることから、添加してもよい。REMの含有量が0.1000%を超えて添加しても上記効果は飽和して経済性が低下する。また、REMの含有量は、0.0005%以上の添加で効果が顕著になる。従って、必要に応じてREMを含有させる場合、REM含有量は0.0005%〜0.1000%にすることが望ましい。
(B :0〜0.0100%)
Bは粒界に偏析し、粒界強度を高めることで低温靭性を向上させる。このことから、添加しても良い。Bの添加量が0.0100%超の場合は、その効果が飽和するので経済性に劣る。また、この効果は、鋼板へのB添加量が0.0002%以上とすることで顕著となる。また、Bは強力な焼き入れ元素であり、0.0020%超を添加した場合、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°であるような結晶粒の面積率を減じてしまうおそれがある。従って、必要に応じてBを含有させる場合、B含有量は0.0002%〜0.0020%にすることが望ましい。
なお、その他の元素について、Sn、Zr、Co、Zn、Wを合計で1%以下含有しても本発明の効果は損なわれないことを確認している。これらの元素のうちSnは、熱間圧延時に疵が発生する恐れがあるので0.05%以下にすることが望ましい。
[鋼板のミクロ組織]
鋼板のミクロ組織について説明する。
鋼板のミクロ組織を、結晶方位解析に多く用いられるEBSD法(電子ビーム後方散乱回折パターン解析法)を用いて、1μm以下の測定間隔でEBSD解析する。EBSD解析で得られた1μm以下の測定間隔の測定点の方位について、隣接する測定点同士の方位差が15°以上である場合を粒界とし、この粒界によって囲まれる領域を結晶粒と定義する。
そして、この結晶粒の内側にある全ての測定点の方位について、隣接する測定点同士の方位差を求め、これらの方位差の平均値を、結晶粒内の方位差の平均とする。
本発明の鋼板は、この結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒が、全ての結晶粒に対して面積率で50%以上含むことを特徴とする。このような結晶粒は延性が高く、さらにTi炭化物により析出強化されている。そのため、このような結晶粒を一定の割合以上確保することで、引張強さ(TS)を540MPa以上に維持しつつ、延性を向上させることができる。
結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の割合は、例えば以下の方法で測定することができる。
板幅の1/4W(幅)または3/4W(幅)のいずれかの位置において、鋼板の幅方向を圧延方向からみた断面(幅方向断面)が観察面となるように試料を採取し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置で、鋼板の幅方向200μm×厚さ方向100μmの矩形領域を0.2μmの測定間隔でEBSD解析する。
ここでEBSD解析は、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(例えば、JEOL製JSM−7001F)とEBSD検出器(例えば、TSL製HIKARI検出器)で構成された装置を用い、200〜300点/秒の解析速度で実施する。得られた結晶方位情報に対して、隣接する結晶方位情報の方位差15°以上を粒界とした結晶粒のうち、この結晶粒の円相当径(直径)で0.3μm以上の結晶粒を抽出し、結晶粒内の平均方位差を計算する。そして、結晶粒内の平均方位差が0〜0.5°である結晶粒の面積割合を求める。なお結晶粒の定義や結晶粒内の平均方位差の算出は、例えばEBSD解析装置に付属のソフトウェア「OIM AnalysisTM」を用いて求めることができる。
結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒が面積率で50%未満である場合には、延性が悪化し(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たさなくなる。結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が高いほど延性は向上するため、望ましくは面積率で60%以上、更に望ましくは面積率で80%以上にするとよい。ただし面積率が98%超ではマルテンサイトや焼き戻しマルテンサイトや残留オーステナイト組織の硬質相分率が低下し、切り欠き疲労特性が低下するため、その上限は98%にすることが望ましい。
本実施形態における結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒と、光学顕微鏡の観察結果から定義されるフェライトは直接関係するものではない。言い換えれば、例えば、フェライト面積率が50%以上の熱延鋼板があったとしても、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の割合が50%以上であるとは限らない。従って、フェライト面積率を制御しただけでは、本実施形態に係る熱延鋼板に相当する特性を得ることはできない。
[マルテンサイト+焼き戻しマルテンサイト+残留オーステナイト:2%〜10%]
本発明の鋼板は、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織が、面積分率で2%以上10%以下であることを特徴とする。マルテンサイトまたは焼き戻しマルテンサイトまたは残留オーステナイトの硬質相は、軟質相中の疲労き裂伝播の障害となり、疲労き裂伝播速度を低減する効果があるため、切り欠き疲労特性の向上に寄与する。このことから、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの硬質相の合計は、面積分率で2%以上とする。硬質相の分率が2%未満であると、切り欠き疲労特性に優れる高強度鋼板の目安である(c−FL)/(TS)≧0.25を満たさなくなるため、硬質相分率は2%以上が望ましい。さらに望ましくは5%以上である。ただし、(c−FL)は切り欠き疲労試験の疲労限、(TS)は引張強さを示す。なお、切り欠き疲労試験の疲労限(c−FL)の求め方は、後述する。
一方で、これらの組織の面積分率が10%を超えるとプレス成形性の一つである穴広げ率(λ)が低下するため、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織は、面積分率で10%以下とする必要がある。
本発明の鋼板組織を構成するマルテンサイト、焼き戻しマルテンサイトの面積分率は、FE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)を用いて測定する。残留オーステナイトの面積分率は、EBSD法(電子ビーム後方散乱回折パターン解析法)を用いて測定する。詳細には、本発明の鋼板組織を構成するマルテンサイト、焼戻しマルテンサイトの面積分率は、鋼板の一方の端から板幅Wとして1/4Wまたは3/4Wのいずれかの位置において、幅方向断面が観察面となるように試料を採取し(以下、この採取した資料を「組織測定用試料」という。)、観察面を研磨し、ナイタールエッチングし、板厚の1/4厚、3/8厚、および1/2厚の範囲をFE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)で観察して求めた。FE−SEMで観察した際、ラス状(薄くて長い板状)の組織であり、かつ炭化物が析出していないものをマルテンサイトとした。ラス状の組織であり、炭化物が、マルチバリアントで析出(セメンタイトが色々な方向を向いて析出)しているものを焼き戻しマルテンサイトとした。
なお、炭化物が、シングルバリアントで析出(セメンタイトが一方向に揃って析出)しているものはベイナイトと判断した。FE−SEMを用いて120μm×100μmの領域を1000倍の倍率で、板厚の1/4厚、3/8厚、および1/2厚の各範囲について、それぞれ10視野測定した。各視野毎に、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイトの面積分率を求め、それらの平均値をもって、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイトの代表的な面積分率とした。
残留オーステナイトの面積分率は、組織測定用試料を電解研磨で加工層を取り除いた後にEBSD法(電子ビーム後方散乱回折パターン解析法)を用いて測定した。FCC金属に特徴的な後方散乱が得られた結晶粒を残留オーステナイトと定義した。EBSD法を用いて、板厚の1/4厚、3/8厚、および1/2厚の各範囲について、それぞれ100μm×100μm以上の領域を観察した。各範囲毎に、残留オーステナイトの面積分率を求め、それらの平均値をもって、残留オーステナイトの代表的な面積分率とした。
[Ti炭化物]
次に、組織中のTi炭化物の状態と量について説明する。従来から、Ti炭化物による析出強化は、Si等による固溶強化より疲労特性に劣ることが報告されてきた。しかし、発明者らの鋭意検討の結果、鋼中のTi、N、Sから計算されるTief((a)式によって求められれる。)の40%(0.4倍)以上の質量%のTiが、Ti炭化物として析出し、この析出したTi炭化物のうち、Ti炭化物の円相当粒径(本明細書において単に粒径というときは円相当粒径をいう。)が7nmから20nmであるものが、質量分率で50%以上である場合には、固溶強化と同等以上の疲労特性が得られることを見出した。
非特許文献3で述べられているように、繰り返し降伏応力(c−YP)が高い複合組織鋼は低サイクル疲労特性、高サイクル疲労特性が共に良好である。繰り返し降伏応力(c−YP)とは、繰り返し変形を受けた後に、材料が持つ変形への抵抗力のことであり、繰り返し変形しても鋼板の強化機能が小さくならない固溶強化鋼や、析出強化のうち析出物の粒径が大きい析出物を活用したものでは、大きくなる。引張試験により測定される降伏応力(YP)に対する繰り返し降伏応力(c−YP)の割合が大きい材料は、低サイクル疲労特性と高サイクル疲労特性が共に良好であることが知られており、特に(c−YP)/(YP)≧0.90を満たす鋼板は降伏応力(YP)が低い割に疲労特性が良好で、プレス成形時の生産性と疲労特性のバランスに優れる。
Ti炭化物の粒径が小さく、粒径7nmから20nmのTi炭化物の面積分率が50%未満の場合には、析出強化により(YP)は大きく上昇するものの、(c−YP)の上昇量は小さく、(c−YP)/(YP)<0.90となる。これは繰り返し変形による転位運動の結果、粒径の小さいTi炭化物がせん断破壊し、Ti炭化物による転位の運動抑制効果が低下するためである。なお、繰り返し降伏応力(c−YP)の求め方は、後述する。
一方で、粒径7nmから20nmのTi炭化物が十分に存在している場合には、転位はTi炭化物の周囲を迂回して運動すると考えられる。迂回されたTi炭化物の周囲にはオロワンループと呼ばれる環状の転位が残るため、転位の運動によりオロワンループが増殖し、転位密度が増大して転位強化が起こり、降伏応力は繰り返し変形前よりも上昇して、結果として(c−YP)/(YP)≧0.90となる。
また、Ti炭化物の粒径が大きすぎて、粒径7nmから20nmのTi炭化物の重量分率が、全Ti炭化物の重量の50%未満の場合には、Ti炭化物による転位運動の抑制効果が小さくなり、これらの疲労特性向上効果は小さくなる。
同様に、鋼中のTi、N、Sから計算されるTiefの40%(0.4倍)未満の質量%に相当するTiがTi炭化物として析出した場合にも、Ti炭化物による転位運動が抑制され、疲労特性向上効果が小さくなる。そのため、上記の(c−YP)/(YP)≧0.90を満たすことができない。鋼中のTi、N、Sから計算されるTiefの40%(0.4倍)以上の質量%に相当するTiが、Ti炭化物として析出する必要がある。疲労特性向上効果を確保する観点から、Ti炭化物として析出するTiは、望ましくはTiefの45%(0.45倍)以上であるとよい。
Ti炭化物析出量の計測は鋼板を電気分解し、溶け残った残渣中のTiの重量を化学分析等により同定することで可能である。具体的には、残渣中のTi重量から、析出したTiの総重量が得られる。また、鋼中に含まれる窒素の重量から、Ti窒化物(TiN)として析出したTiの重量が得られる。析出したTiの総重量からTiNとして析出したTiの重量を差し引くことで、Ti炭化物中のTiの重量を求めることができる。これによりTi炭化物に含まれるTiの質量%を求めることができる。
また、Ti炭化物を同定し粒径を測定する手段は特に指定しないが、例えば3D−AP(三次元アトムプローブ)を用いることで、鋼板中のTiとCの存在位置を測定することでTi炭化物を同定し、粒径が小さいTi炭化物についても高精度で粒径を測定することができる。具体的には試料の10μm×10μmの広さの視野を少なくとも20視野以上観察し、Ti炭化物の粒径に応じて倍率を拡大しながら、粒径1nm〜100nmの範囲のTi炭化物の粒径の分布を求め、その中に占める粒径7nm〜20nmの割合を、重量比率で求めればよい。なお、粒径5nm以上のTi炭化物であれば、Fe−TEMを用いて電子回折図形を取得し、母相であるFeとの方位関係や格子間隔を測定することでTi炭化物を同定及び測定が可能である。
繰り返し降伏応力(c−YP)は、低サイクル疲労試験をひずみ振幅が異なる条件で実行することで測定できる。本検討では、ひずみ振幅0.2%、0.3%、0.5%、0.8%、1.0%の水準で低サイクル疲労試験を実行し、疲労破断した時の疲労試験回数の半分の疲労試験回数を行った時点における各ひずみ振幅の最大応力をつなぎ合わせ、繰り返し応力ひずみ曲線を作成した。この繰り返し応力ひずみ曲線に対し、図1に示すようにひずみ0.2%の点にヤング率の傾きを持つ直線を挿入し、繰り返し応力ひずみ曲線との交点を繰り返し降伏応力(c−YP)と定義した。
以上のような組織と組成を有する本発明の高強度熱延鋼板は、表面に溶融亜鉛めっき処理による溶融亜鉛めっき層や、さらには、めっき後合金化処理をして合金化亜鉛めっき層を備えたものとすることで、耐食性を向上することができる。また、めっき層は、純亜鉛に限るものでなく、Si、Mg、Al、Fe、Mn、Ca、Zrなどの元素を添加し、更なる耐食性の向上を図ってもよい。このようなめっき層を備えることにより、本発明の優れた打抜き疲労特性及び加工性を損なうものではない。また、有機皮膜形成、フィルムラミネート、有機塩類/無機塩類処理、ノンクロ処理等による表面処理層の何れを有していても本発明の効果が得られる。
[鋼板の製造方法]
熱間圧延に先行する製造方法は特に限定するものではない。すなわち、高炉や電炉等による溶製に引き続き各種の2次製錬を行って上述した成分組成となるように調整し、次いで、通常の連続鋳造、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造すればよい。その際、本発明の成分範囲に制御できるのであれば、原料にはスクラップを使用しても構わない。
鋳造スラブは、熱間圧延を開始するに当たり所定の温度に加熱される。連続鋳造の場合には一度低温まで冷却したのち、再度加熱してから熱間圧延しても良いし、特に冷却することなく連続鋳造に引き続いて加熱して熱間圧延しても良い。
熱間圧延のスラブ加熱温度は、式(b)で表わされるT1℃以上とする必要がある。通常のスラブ鋳造を行った場合、スラブ温度はAr3温度以下まで低下するため、Ti炭化物が組織中に析出する。Ti炭化物の粒径を制御するためにはまず、スラブ内に析出したTi炭化物を溶体化させる必要がある。スラブ加熱温度がT1℃未満ではスラブ中に析出したTi炭化物が十分に溶体化せず、Ti炭化物の粒径制御ができないため、加熱炉の温度はT1℃以上とする。
また、スラブ加熱温度の上限は特に定めない。しかし、加熱温度を過度に高温にすることは、スラブ表面が酸化してスケールになり経済上好ましくない。このことから、スラブ加熱温度の上限は1300℃とすることが望ましい。
T1(℃)=7000/{2.75−log([Ti]×[C])}−273・・・(b)
スラブ加熱後は、加熱炉より抽出したスラブに対して熱間圧延の粗圧延工程とその後の仕上圧延工程により、熱延鋼板を得る。この熱間圧延の間で鋼板の中心温度が1000℃に下がってから、式(d)で表わされるAr3温度(変態点温度)になるまでの時間(t1)を9.0秒以内とする必要がある。
Ar3(℃)=868−396×[C]−68.1×[Mn]+24.6×[Si]−36.1×[Ni]−24.8×[Cr]−20.7×[Cu]+250×[Al]・・・(d)
ただし、式(d)で計算されるAr3温度が900℃を超える場合には、Ar3=900℃とし、鋼板温度が1000℃に下がってから900℃になるまでの時間をt1とする。ここで述べる鋼板の中心温度は、鋼板表面の温度と冷却履歴から熱解析により求めることができる。
本発明の効果を得るには、析出したTi炭化物のうち質量分率で50%以上が円相当粒径7nmから20nmであることが必要である。オーステナイト域で析出するTi炭化物は20nm以上であり、疲労特性向上には寄与しないため、オーステナイト域でのTi炭化物の析出を抑制する必要がある。オーステナイト域でのTi炭化物の析出は鋼板の中心温度が1000℃以下で顕著であるため、鋼板の中心温度がAr3温度以上1000℃以下に保持する時間を短くすることが有効である。本発明者らの検討によれば、この時間が9.0秒よりも長いと粗大なTi炭化物が析出し、粒径7nmから20nmのTi炭化物の面積分率が減少して所望の面積分率50%が得られなくなる。鋼板の中心温度がAr3温度から1000℃になる可能性があるのは、粗圧延後段、仕上圧延、冷却装置の前段部分であり、この工程の温度履歴を制御し、この温度域での保持を9.0秒以内にする必要がある。
仕上圧延は、通常、多段(例えば6段または7段)の連続圧延で行われる。そして、この多段の連続圧延で行われる仕上圧延は、前段側(上流側)ほど後段側(下流側)に比べて圧下率が高く、後段側(下流側)は圧下率を低くして圧延することがある。本発明においては、この多段の連続圧延で行われる仕上圧延において、圧下率が10%以上である仕上圧延の段のうち、最も後段側(下流側)の仕上圧延の段を、式(c)で規定される温度T2を用いて、(T2−20)℃以上(T2+100)℃以下の圧延温度で行うとよい。望ましくは(T2−20)℃以上(T2+30)℃以下にするとよい。
T2(℃)=870+10×([C]+[N])×[Mn]+350×[Nb]+250×[Ti]+40×[B]+10×[Cr]+100×[Mo]+100×[V]・・・(c)
すなわち、必ずしも最も後段側(下流側)の仕上圧延の段の圧延温度を管理するのではなく、圧下率が10%以上である仕上圧延の段のうち最も後段側(下流側)の仕上圧延の段の圧延温度を管理するのである。
なお、圧下率は、各段ごとに以下の式で求められる。
圧下率=(仕上圧延機の入側の板厚−仕上圧延機の出側の板厚)/(仕上圧延機の入側の板厚)×100%
圧下率が10%以上である仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段の圧延温度が(T2―20)℃未満である場合には、オーステナイト再結晶が抑制された状態で圧延を行うことで、オーステナイトのアスペクト比が増大する。その形状がマルテンサイトや焼き戻しマルテンサイトや残留オーステナイトなどの硬質相にも受け継がれるため、特に板厚中央部の硬質相のアスペクト比が増大し、穴広げ率が低下する。
圧下率が10%以上の仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段の圧延温度が(T2+100)℃超の場合には、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、延性が低下する。これはオーステナイトが再結晶後に粗大化し、変態温度が低下したことが原因と推測される。また、圧下率が10%以上の仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段を、式(c)で規定される温度T2に対して、(T2−20)℃以上(T2+100)℃以下の圧延温度で行うのは、圧下率が10%未満では結晶粒の微細化効果がなく、圧下率は10%以上が必要であるためである。
圧下率が40%以上の圧延は、圧延機に大きな負担がかかるため、圧下率は40%未満にすることが望ましい。
圧下率が10%以上の仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段の後に、得られた鋼板を730℃以上830℃以下の温度まで冷却する(1次冷却)。この1次冷却では、平均冷却速度20℃/s以上で冷却する必要がある。1次冷却の平均冷却速度が20℃/s未満では、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、延性が低下する。
これは、圧延後にオーステナイトが粒成長によって粗大化するため、フェライト変態の核生成サイトであるオーステナイト粒界面積率が減少し、変態温度が低下するためと考えられる。
1次冷却の平均冷却速度が大きいと変態温度が上昇し、延性が向上するため上限は特に指定しない。しかし、平均冷却速度が200℃/sを超えると冷却停止温度の制御が難しいため、平均冷却速度は200℃/s以下にすることが望ましい。
1次冷却に続く中間空冷では、730℃以上830℃以下の温度域で3秒以上の空冷を行う。これは結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率を50%以上とするために必須であり、望ましくは750℃以上830℃以下の温度域で5秒以上、更に望ましくは780℃以上830℃以下の温度域で5秒以上とするとよい。
この中間空冷温度の高温化により、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が増大することから、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒は、従来の光学顕微鏡の観察で定義されてきたフェライトのうち、より高温で変態したものである可能性がある。中間空冷時間の上限は特に規定しないが、15秒以上では結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率を増大させる効果が飽和する上、生産性が低下するため、中間空冷時間は15秒未満が望ましい。
中間空冷温度が830℃超では、(a)式で表わされるTiefの40%未満に相当する質量のTiが、組織中にTi炭化物として析出していて、疲労特性が劣化する。また、中間空冷温度が730℃未満では、結晶粒内の平均方位差が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、延性が低下する。
中間空冷に続く2次冷却では平均冷却速度40℃/s以上で冷却し、鋼板温度が300℃以下で巻き取ることが必要である。2次冷却の平均冷却速度が40℃/s未満では、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織が面積分率が2%未満となり、切り欠き疲労特性が劣化する。
2次冷却の平均冷却速度が大きいほど硬質なマルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、残留オーステナイトが得られ、切り欠き疲労特性に優位になる。このため平均冷却速度の上限は指定しないが、500℃/秒以上の冷却を行うには大規模な設備投資が必要であるため、500℃/秒未満が望ましい。
巻き取り工程では巻き取り温度を300℃以下にする必要がある。巻き取り温度が300℃超で巻き取った場合、組織中のベイナイト分率が増大し、硬質相の分率を確保することが難しく、切り欠き疲労特性の劣化が生じる。切り欠き疲労特性を重視する場合、望ましい巻取り温度は150℃以下である。これは切り欠き疲労特性が硬質相の硬度が高いほど向上するためである。
なお、鋼板形状の矯正や可動転位導入により延性の向上を図ることを目的として、全工程終了後においては、圧下率0.1%以上2%以下のスキンパス圧延を施すことが望ましい。また、全工程終了後は、得られた熱延鋼板の表面に付着しているスケールの除去を目的として、必要に応じて得られた熱延鋼板に対して酸洗してもよい。更に、酸洗した後には、得られた熱延鋼板に対してインライン又はオフラインで圧下率10%以下のスキンパス又は冷間圧延を施しても構わない。
上記熱間圧延工程の他に、付随する連続鋳造、酸洗等の一部を抜いて製造を行ったとしても本発明の効果である優れた延性及び疲労特性を確保可能である。 また、一旦、熱延鋼板を製造した後、延性の向上を目的に、オンラインあるいはオフラインで、100〜600℃の温度範囲で熱処理を行ったとしても、本発明の効果である優れた圧延方向の疲労特性および加工性は確保可能である。
本発明の作用効果を確認するための試験結果について説明する。
表1に試験に供した鋼の成分を示す。
表2−1、表2−2(本明細書において、これらを合わせて表2とよぶ。)に試験に供した試験片の鋼種類とその製造条件を示す。
表3−1、表3−2(本明細書において、これらを合わせて表3とよぶ。)に各試験片の評価結果を示す。
機械的性質のうち、引張強度特性(降伏応力、引張強さ、均一伸び)は、板幅をWとした時に、板端から1/4Wまたは3/4Wのいずれかの位置において、幅方向を長手方向として採取したJIS Z 2241:2011の5号試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して評価した。
降伏応力は、0.2%耐力を用いてもよく、均一伸びは、最大試験力時塑性伸び(%)のことである。
穴広げ率は、穴広げ試験は引張試験片採取位置と同様の位置から試験片を採取し、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。
また、本発明における鋼板は、(TS)≧540MPaで、(TS)×(u―El)≧8000MPa%で、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たす鋼板であることを確認した。ただし(TS)は引張強さ、(u―El)は均一伸び、(λ)は穴広げ率である。
疲労特性を評価するための試験片は、引張試験片採取位置と同様の位置から幅方向が長辺になるように図2、図3に示す形状の疲労試験片を採取し疲労試験に供した。図2記載の疲労試験片は切り欠きの無い材料の疲労特性の指標である、繰り返し降伏応力を得るための試験片であり、図3記載の疲労試験片は切り欠き材の疲労強度を得るために作製された切り欠き試験片である。疲労試験片には最表層より0.05mm程度の深さまで研削した。
図2に示す試験片を用いてひずみ速度0.4%/s、ひずみ振幅0.2%、0.3%、0.5%、1.0%で両振りのひずみ制御を行い低サイクル疲労試験を実行した。疲労破断した時の疲労試験回数の半分の疲労試験回数を行った時点における各ひずみ振幅の最大応力をつなぎ合わせ、繰り返し応力ひずみ曲線を作成した。この繰り返し応力ひずみ曲線に対し、図1に示すようにひずみ0.2%の点にヤング率の傾きを持つ直線を挿入し、応力ひずみ曲線との交点を繰り返し降伏応力(c−YP)と定義した。
図3に示す試験片を用いて応力比R=0.1、周波数5Hzで応力制御軸疲労試験を行い、切り欠き疲労特性を評価した。1000万回後に破断しない応力を切り欠き疲労限(c−FL)と定義した。
表面特性は、酸洗前の「表面欠陥」と「粗度」で評価した。この評点が基準以下であると酸洗後でもスケール欠陥起因の模様や表面の凹凸で、表面品位が劣位と需要家より評価される場合がある。ここで「表面欠陥」はSiスケール、ウロコ、紡錘等のスケール欠陥の有無を目視にて確認した結果を示し、スケール欠陥がある場合を「×」と示し、スケール欠陥が無い場合を「○」と示した。なお、これら欠陥が部分的もしくは面積率で5%以下であるものを「軽微」として「△」で示した。「粗度」はRzで評価し、JIS B 0601:2001記載の測定方法により得られた値を示している。なお、Rzが20μm以下ならば、表面品位は問題ないレベルである。
耐食性は「化成処理性」と「塗装後耐食性」で評価した。まず、製造した鋼板を酸洗した後に2.5g/mのリン酸亜鉛皮膜を付着させるリン酸化成処理を施した。この段階で「化成処理性」として、スケ(化成皮膜が付着しない部分)の有無とP比(X線回折装置を用いて測定したフォスフォフィライト(100)面のX線回折強度Pと、ホパイト(020)面のX線回折強度Hとの比:P比=P/(P+H))の測定を実施した。
リン酸化成処理はリン酸とZnイオンを主成分とした薬液を使用する処理であり、鋼板から溶出するFeイオンとの間で、フォスフォフィライト:FeZn(PO・4HOと呼ばれる結晶を生成する化学反応である。リン酸化成処理の技術的なポイントは、
(1)Feイオンを溶出させて反応を促進することと、
(2)フォスフォフィライト結晶を鋼板表面に緻密に形成することにある。
特に(1)については、鋼板表面にSiスケールの形成に起因する酸化物が残存していると、Feの溶出が妨げられて、スケが現れたり、Feが溶出しないことで、
ホパイト:Zn(PO・4HOとよばれる鉄表面には本来形成しないような異常な化成処理皮膜が形成して、塗装後の性能を劣化させることがある。したがって、リン酸によって鋼板表面のFeが溶出してFeイオンが十分供給されるよう表面を正常にすることが重要になってくる。
このスケについては走査型電子顕微鏡による観察にて確認でき、1000倍の倍率で20視野程度観察し、全面均一付着していてスケが確認できない場合をスケ無しとして「○」とした。また、スケが確認できた視野が5%以下ならば軽微として「△」とした。5%超はスケ有りとして「×」と評価した。
一方、P比は化成処理を行って得られた皮膜中のホパイトとフォスフォフィライトの比率を表すもので、P比が高い程フォスフォフィライトが多く含まれ、フォスフォフィライト結晶が鋼板表面に緻密に形成されていることを意味している。一般的にはP比≧0.80であることが、耐食性能や塗装性能を満たすために求められており、また、融雪塩散布地域などの厳しい腐食環境下においては、P比≧0.85であることが求められる。よって、このP比<0.80であると化成処理性が劣位であるとした。
次に「塗装後耐食性」であるが、化成処理後に25μm厚の電着塗装を行い170℃×20分の塗装焼き付け処理を行った後、先端の尖ったナイフで電着塗膜を地鉄に達するまで長さ130mmの切りこみを入れ、JIS Z 2371に示される塩水噴霧条件にて、35℃の温度での5%塩水噴霧を700時間継続実施した後に、切り込み部の上に、幅24mmのテープ(ニチバン 405A−24 JIS Z 1522)を切り込み部に平行に130mm長さ貼り、これを剥離させた場合の最大塗膜剥離幅を測定した。この最大塗膜剥離幅が4.0mm超であると塗装後耐食性が劣位であるとした。
表3に示すように、本発明例に係る熱延鋼板は、優れた延性および疲労特性を有していることが確認された。
一方、鋼番2、20は加熱温度が式(b)で規定されるT1℃以下であったため、Ti炭化物が容体化せず、全Ti炭化物の質量に対する粒径7〜20nmのTi炭化物の質量が50%未満となり、(c−YP)/(YP)≧0.90を満たすことができなかった。
鋼番3、21は圧下率が10%以上の仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段の圧延温度が式(c)で規定される温度T2に対して、(T2−20)℃未満であったため、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。これはオーステナイト再結晶が抑制された状態で圧延を行ったことで、オーステナイトのアスペクト比が増大し、その形状がマルテンサイトや焼き戻しマルテンサイトや残留オーステナイトなどの硬質相にも受け継がれて、板厚中央部の硬質相のアスペクト比が増大したためと考えられる。
鋼番6、24は圧下率が10%以上の仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段の圧延温度が式(c)で規定される温度T2に対して、(T2+100)℃以上であったため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番7、25は1000℃〜Ar3温度になるまでの時間が9.0秒以上であったため、全Ti炭化物の質量に対する粒径7〜20nmのTi炭化物の質量が50%未満となり、(c−YP)/(YP)≧0.90を満たすことができなかった。
鋼番8、26は1次冷却で、平均冷却速度20℃/s未満であったため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番10、28は中間空冷温度が730℃未満であったため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番13、31は中間空冷開始温度が830℃以上であったため、(a)式で表わされるTiefの40%未満の重量のTiが、組織中にTi炭化物として析出しており、(c−YP)/(YP)≧0.90を満たすことができなかった。
鋼番14、32は中間空冷時間が3秒未満であったため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番16、34は2次冷却の平均冷却速度が40℃/s未満であったため、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織(硬質相)が面積分率で2%未満となり、(c−FL)/(TS)≧0.25を満たすことができなかった。
鋼番17、35は巻き取り温度が300℃超であったため、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織(硬質相)が面積分率で2%未満となり、(c−FL)/(TS)≧0.25を満たすことができなかった。
鋼番37はCの添加量が0.030%未満であったため、マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織(硬質相)が面積分率で2%未満となり、強度540МPaを確保できなかった。
鋼番40はCの添加量が0.200%超であったためマルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計の組織(硬質相)が面積分率で10%以上となり、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番41はSiの添加量が0.500%超であったため、化成処理性と塗装後耐食性が低下し、P比≧0.80および最大剥離幅が4.0mm以下を満たすことができなかった。
鋼番46はMnの添加量が3.00%超であったため、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番47はMnの添加量が0.10%未満であったため冷却中にパーライトが生じ、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番48はPの添加量が0.100%超であったため加工性が低下し、(TS)×(u―El)≧8000MPa%および(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番49はSの添加量が0.0300%超であったため、穴広げ率が低下し、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番50はAlの添加量が2.000%超であったため、圧延中に割れが発生した。
鋼番55はAlの添加量が0.100%未満であったため、結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒の面積率が50%未満となり、(TS)×(u―El)≧8000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番56はNの添加量が0.0100%超であったため、穴広げ率が低下し、(TS)×(λ)≧36000MPa%を満たすことができなかった。
鋼番57はTiefが0.300%超であったため、鋳造時にタンディッシュノズルが詰まった。
鋼番59はTiefが0.010%未満であったため、(a)式で表わされるTiefの40%未満の重量のTiが、組織中にTi炭化物として析出しており、(c−YP)/(YP)≧0.90を満たすことができなかった。
Figure 0006528522
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本発明による熱延鋼板は、延性、疲労特性、および耐食性に優れており、特に切り欠きのない材料での疲労特性とプレス成形性に優れいている。そのため、本発明に係る熱延鋼板は、意匠性などを要求する機械製品に利用することができる。特に自動車用のホイールなどに適用することができる。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.030〜0.200%、
    Mn:0.10〜3.00%、
    P :0.100%以下、
    S :0.0300%以下、
    Al:0.100〜2.000%、
    N :0.0100%以下(0は含まない)、
    O :0.0100%以下、
    Ti:0.010〜0.380%、
    残部がFeおよび不可避的不純物であって、(a)式で表わされるTiefが0.01〜0.30%であり、
    隣接する結晶方位情報の方位差15°以上を粒界とした結晶粒であり、前記結晶粒の円相当径(直径)が0.3μm以上の結晶粒であって、前記結晶粒内の方位差の平均が0〜0.5°である結晶粒を面積率で50%以上含み、さらに
    マルテンサイトと焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの合計が面積分率で2%以上10%以下であり、さらに
    (a)式で表わされるTiefの40%以上の質量%のTiがTi炭化物として存在し、当該Ti炭化物の円相当粒径が7nm以上20nm以下であるものの質量が、Ti炭化物の円相当粒径が1nm以上100nm以下であるものの質量の50%以上であり、
    (e)式を満足することを特徴とする、延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
    Tief=[Ti]−48/14×[N]−48/32×[S]・・・(a)
    (TS)×(λ)≧36000MPa%・・・(e)
    但し、(a)式中の[Ti][N][S]はそれぞれTi、N、Sの質量%を示し
    (e)式中の(TS)は引張強さを、(λ)は穴広げ率を示す。
  2. さらに質量%で、
    Si:0.500%以下、
    Nb:0.010〜0.100%、
    V :0.010〜0.300%、
    Cu:0.01〜1.20%、
    Ni:0.01〜0.60%、
    Cr:0.01〜2.00%
    Mo:0.01〜1.00%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. さらに質量%で、
    Mg:0.0005〜0.0100%、
    Ca:0.0005〜0.0100%、
    REM:0.0005〜0.1000%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. さらに質量%で、
    B:0.0002〜0.0020%、
    を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分組成を有するスラブを、式(b)で規定されるT1以上の温度に加熱し、加熱したスラブを熱間圧延するに際し、
    鋼板の中心温度が1000℃から式(d)により求めるAr3温度になるまでの時間t1を9.0秒以内とし、
    熱間圧延のうち複数段の連続圧延からなる仕上圧延において圧下率が10%以上である仕上圧延の段のうち、最も後段側の仕上圧延の段を、式(c)で規定される温度T2に対して(T2−20)℃以上(T2+100)℃以下の圧延温度で行い、その後得られた熱延鋼板を、
    平均冷却速度20℃/秒以上で730℃以上830℃以下の温度まで冷却し、
    その後730℃以上830℃以下の温度域で3秒以上空冷し、
    その後平均冷却速度40℃/秒以上で冷却し、
    その後300℃以下の温度で巻き取ることを特徴とする延性と疲労特性と耐食性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

    T1(℃)=7000/{2.75−log([Ti]×[C])}−273・・・(b)
    T2(℃)=870+10×([C]+[N])×[Mn]+350×[Nb]+250×[Ti]+40×[B]+10×[Cr]+100×[Mo]+100×[V]・・・(c)
    Ar3(℃)=868−396×[C]−68.1×[Mn]+24.6×[Si]−36.1×[Ni]−24.8×[Cr]−20.7×[Cu]+250×[Al]・・・(d)

    ただし、式(d)で計算されるAr3温度が900℃を超える場合には、Ar3=900℃とする。
    式中の[X]は、鋼中に含有する成分元素Xの質量%を表す。
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