JP6459611B2 - 伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車の燃費向上を目的として自動車を構成する各種部品の軽量化が進められている。軽量化手段は部品各々の要求性能により違い、例えば骨格部品では鋼板の高強度化による薄肉化、パネル部品では鋼板のAl合金等の軽金属への置換等が行われている。しかし、鋼と比較した場合、Al合金等の軽金属は高価であるため主に高級車に適用されているのが現状である。
一方、自動車需要は先進国から新興国にシフトしており、今後は軽量化と低価格化の両立が求められることが予想され、部位に関わらずどの部品においても鋼板を用いた高強度化と薄肉化による軽量化の達成が必要となる。
さらに、これら自動車の骨格部品のうち特にキャビンを構成する部材には搭乗者を保護するため車体が衝突しても変形が許されない。そのため引張強度980MPaグレード以上の鋼板が用いられるのが一般的になりつつある。さらにこれら部材は曲げ、ねじり剛性等も同時に求められることから複雑な形状を有するものが多く、低コストであるプレスでの成形が前提の場合は、十分な強度を担保した上で、プレス成形性、特に延性とバーリング加工性、伸びフランジ性を高次元で両立することが求められる。
高強度と高延性を両立した鋼材として、フェライトと、マルテンサイトを主体とする硬質第2相とからなる複合組織を有する複相組織鋼(DP鋼:Dual Phase鋼)が知られている。しかし、DP鋼は、軟質相のフェライトと硬質相のマルテンサイトとの硬度差が大きく、その境界部に、各相の硬度差に起因したミクロボイドが発生しやすい。そのため、局部伸びが悪く、バーリング加工や伸びフランジ加工での割れが懸念され、特に980MPa級グレード以上では、これら部品への適用は難しいとされていた。
DP鋼のような硬質相と軟質相から成る複合組織鋼のバーリング加工性や伸びフランジ加工性に関わる穴拡げ性を改善するために、各相の硬度差に起因したミクロボイドの発生を抑制する技術として、マルテンサイトの体積率を10%未満とし、残部フェライトをNbおよびTiの析出強化により強化することで、780MPa級の強度において伸びと穴拡げ性を高い次元で両立する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、熱延鋼板のもので、本発明の対象としている冷延鋼板に関しては何ら開示されていない。また、引張強度も高々840MPa程度であり、その組織構成が硬質相であるマルテンサイトの体積率が10%未満では、本発明が対象とする引張強度980MPa以上のグレードには到達できない。
一方、特許文献2には、引張強度980MPa以上のグレードを含み、高価な合金を過剰に添加することなく、析出強化能が優れるTiで軟質相であるフェライトを析出強化するために、冷延後、焼鈍工程の加熱中にTi炭化物を析出させることで、硬質相であるマルテンサイト等と軟質相であるフェライトの硬度差を小さくしてミクロボイドが発生することを抑制し、強度−延性バランス、更には伸びフランジ性に優れた冷延鋼板の提供を目的とした、硬質組織による強化と析出強化とを利用した析出強化型複相冷延鋼板の製造方法が開示されている。
しかしながら、当該技術で活用できるTiの量は高々0.02%程度であり、最も効率的に再結晶フェライト中に微細に析出させたとしてもその強化量の絶対値が小さく、特に引張強度980MPa以上のグレードでは、硬質相と軟質相の硬度差を小さくするには不十分であり、ミクロボイドの発生を十分に抑制できないためにバーリング加工性や伸びフランジ加工性に関わる穴拡げ性を改善出来ていない。また、Tiの析出強化を高めるためには多量のTiを添加するが、その際には製造中に多量のTiCが析出し、硬質相であるマルテンサイト等の形成に必要なCが消費されてしまい、その面積分率や硬度、さらには鋼板の強度の低下を招いてしまう可能性がある。
また、特許文献3には、疲労特性に優れた加工用熱延鋼板およびその製造方法に関する技術が開示されている。当該技術は疲労き裂の発生箇所である軟質なフェライト相において固溶しているCu、もしくはCu単独で構成される粒子サイズを2nm以下とすることで繰返し荷重下での交差すべりを抑制し、繰返し荷重による表面のすべりステップの形態を粗で深い状態から密で浅い状態に変化させ、そこでの応力集中が緩和して疲労き裂の発生抵抗を向上させるというものである。
しかしながら、当該技術は熱延鋼板のもので本発明の対象としている冷延鋼板に関しては何ら開示されていない。また、バーリング加工性や伸びフランジ加工性に関わる穴拡げ性を改善するために、複合組織鋼の軟質相を析出強化する技術については何ら開示がなく、むしろ疲労特性向上のためにフェライト相におけるCu単独で構成される粒子の平均サイズが2nm以下と規定しており、フェライト相の析出強化による軟質相と硬質相の硬度差低減による穴拡げ性の改善は期待できない。
さらに、特許文献4には、プレス成形性と部品強度の両立を目的として、プレス加工前にはミクロ組織中に含まれる残留オーステナイトにより良好な延性が得られ、プレス加工後に熱処理を施すことで、残留オーステナイトに過飽和に固溶していたCuが析出することで部品強度を高める技術が開示されている。
しかしながら、当該技術は高々590MPa級グレードを対象としており、本発明の目的とする980MPa級グレード以上の強度に到達していないばかりか、プレス加工後に熱処理を施さなくてはならず、生産性の低下や製造コストの上昇の面でも本発明と大きく異なる。
特許文献5には、CuとSiを含有して特定の製造条件により、このSi−Cuのペアリングを活用し時効時間の変化に対するCu析出量の変化を緩和させることで、コイルの長手方向の強度バラツキの小さい熱延鋼板の技術が開示されている。
しかしながら、当該技術は高々590MPa級グレードを対象としており、本発明の目的とする980MPa級グレード以上の強度に到達していないばかりか、本発明の目的とするところの冷延鋼板を製造するプロセスでの実現性については何ら言及されていない。
特開2011−184788号公報 特開2010−285657号公報 特開2000−309848号公報 特開2003−13177号公報 特開2005−76053号公報
本発明は、980MPa以上の引張強度を有し、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板およびその製造方法の提供を目的とするものである。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために、析出強化型複合組織冷延鋼板の製造時に硬質相であるマルテンサイト等の生成に影響を与えない、すなわち、添加した場合に鋼中で単独で析出できる元素に注目した。鋼中に単独で析出できる元素としては、Au、Ag、Cuが知られているがAuおよびAgは非常に高価な貴金属であり、鉄鋼材料の強化元素としてはふさわしくない。そこで、Cuを選択して検討を進めた。もちろん、Cuでの効果はAuおよびAgでも得られる。
Cuを含有する特定鋼成分かつ特定の熱間圧延条件および冷間圧延、それに続く連続焼鈍設備による熱処理にて製造した冷延鋼板のミクロ組織が、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径で2.0nm超、10nm以下である場合に980MPa以上の引張強度を有し、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板が得られることを知見した。本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、その発明の要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C :0.050〜0.200%、
Si:0.050〜2.000%、
Mn:1.00〜2.50%、
P :≦0.020%、
S :≦0.0100%、
Al:0.005〜0.500%、
N :≦0.0060%、
Cu:0.80〜2.00%、
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、そのミクロ組織が、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下であることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(2)上記(1)に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
Mo:0.005〜0.200%、
Cr:0.005〜0.200%、
のうちいずれか一種または二種を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(3)上記(1)または(2)に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
Nb:0.001〜0.005%、
Ti:0.001〜0.005%、
V :0.001〜0.005%、
のうちいずれか一種または二種以上を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(4)上記(1)〜(3)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
Mg:0.0005〜0.0050%、
Ca:0.0005〜0.0050%、
REM:0.0005〜0.1000%、
のうちいずれか一種または二種以上を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(5)上記(1)〜(4)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
B:0.0002〜0.0050%、
を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(6)上記(1)〜(5)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記フェライトにおいてCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下の前記粒子の密度が、1×10 16 〜5×10 18 個/cm であり、
さらに質量%で、
Ni/Cu=0.5〜1.0の割合でNiを添加することを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(7)上記(1)〜(6)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
Zr、Sn、Co、Zn、Wのうちいずれか一種または二種以上を合計で0.05%以下含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(8)上記(1)〜(7)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記硬質組織と前記フェライトの平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(9)上記(1)〜(5)、(7)〜(8)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記フェライトにおいてCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下の前記粒子の密度が、1×1016〜5×1018個/cmであることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(10)上記(1)〜(9)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、鋼板の表面に亜鉛めっきが施されていることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(11)上記(1)〜(10)の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、鋼板の表面に合金化亜鉛めっきが施されていることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
(12)上記(1)〜(9)の何れかの伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法であって、上記(1)〜(7)の何れかに記載の化学成分を有するスラブを1100℃以上に加熱した後、熱間圧延に際して1050℃以上の温度域で少なくとも圧下率20%以上で3〜9パスで行い、合計圧下率が60%以上90%以下である粗圧延をし、その後、Ar3変態点温度以上の温度域で合計圧下率が87%以上93%以下であり、少なくとも圧下率20%以上で5〜7パスで行う仕上げ圧延をし、3秒以内に30℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、(Ar3+Ar1)/2±30℃の温度域で1〜10秒間滞留し、その後、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、350℃以下の温度域で冷却を停止し巻き取って熱延原板とし、酸洗後、圧下率の合計が5%超40%未満の冷間圧延を施し、続く連続熱処理において650℃以上の温度域での昇温速度が5℃/s以下となるように(Ac1+20)℃超〜(Ac3−20)℃の温度域まで加熱し、5〜300秒保持した後、12℃/s以下の平均冷却速度で720〜650℃の温度域にまで一次冷却を施し、4℃/s〜300℃/sの平均冷却速度で600℃から400℃超の温度域まで二次冷却を施し、5〜400秒保持した後、20℃/s以上の平均冷却速度で250℃以下まで三次冷却を行うことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
(13)上記(12)に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法において、三次冷却前の鋼板を亜鉛めっき浴中に浸漬させて鋼板の表面に亜鉛めっきすることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
(14)上記(13)に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法において、鋼板の表面に亜鉛めっきした後、450〜600℃までの温度範囲で合金化処理することを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、980MPa以上の引張強度を有し、同時に伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板を得ることができ、産業上の貢献が極めて顕著である。
以下本発明を詳細に説明する。
発明者らは、工業的規模で生産される板厚が0.26mm以下の冷延鋼板の製造工程を念頭に、0.08%C−1.6%Si−2%Mn−0.01%P−0.002%S−0.035%Al−1〜2%Cu−0.004%Nの鋼成分を有するスラブ片を用いて、諸々の熱間圧延条件によりミクロ組織、Cuの析出状態の異なる熱延鋼板を製造し、さらにその後、それら熱延鋼板を用いて35%の圧下率にて冷延鋼板を製造した。さらにこの冷延鋼板に様々な条件で連続焼鈍設備での通板を模擬した熱処理を行った製品板からサンプルを採取し、評価試験に供した。
まず、サンプルの機械的性質について整理した。具体的には、板厚が一般に冷延鋼板として用いられる2.6mm以下で引張強度が980MPa以上、破断伸びが13.0%以上、穴広げ値が50%以上の全ての特性を満足したグループとそれ以外のグループに分別した。それぞれのグループから複数のサンプルを選別して、ミクロ組織観察、硬度測定、析出物観察に供した。
なお、引張強度は、板幅方向1/4位置から圧延方向に垂直な方向に採取したJIS Z 2241:2011の5号試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して評価した。破断伸びは引張強度とともに測定した。穴広げ値は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。
ミクロ組織観察は、光学顕微鏡を用いて板厚の1/4内側からサンプルを採取して観察された板厚3/8、または5/8位置における金属組織の観察を行った。試料の調整として、圧延方向の板厚断面を観察面として研磨し、ナイタール試薬、レペラー試薬にてエッチングした。ナイタール試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真から画像解析によりフェライトの面積率等を求めた。また、レペラー試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真から画像解析により硬質相の面積率等を求めた。
その結果、980MPa以上の引張強度を得るためには、硬質組織である残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの合計面積分率が50%超90%未満である必要があることが判明した。
さらに、980MPa以上の引張強度が得られたサンプルで延性とミクロ組織の関係を詳細に調査したところ、破断伸びが13.0%以上得られていたサンプルは、少なくとも面積分率で10%のフェライトが含まれていることが判明した。
次に、980MPa以上の引張強度が得られたサンプルで穴広げ値とナノ硬度の関係を詳細に調査したところ、穴広げ値が50%以上得られていたサンプルでは、上記の硬質組織とフェライトの平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であることが判明した。
なお、ナノ硬度HnはHysitron社製 TriboScope/TriboIndenterを用い測定した。測定条件は1mNの荷重にて100点以上の低温変態生成物の硬度を測定し、その算術平均と標準偏差を算出した。
硬質組織とフェライトの平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であるためには、軟質であるフェライトが何らかの強化機構により強化されていることは明白である。そこで発明者らはその強化機構がCuによる析出強化であると推定して、これらサンプルを三次元アトムプローブ測定に供した。
その結果、硬質組織とフェライトの平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であり、穴広げ値が50%以上得られていたサンプルでは、例外なくフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超の粒子の密度が、1×1016〜5×1018個/cmであることが判明した。また、その粒子径の上限は10nm以下であった。
また、このフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の密度はCuの含有量により異なり、Cu含有量が0.80%では、1×1016個/cm、Cu含有量が1.00%では、1×1017個/cm、1.50%では1×1018個/cm、2.00%では5×1018個/cmであった。これは、一般的にピーク時効前後のフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の密度はCuの含有量と共に増加するためである。
さらに、観察されたCu単独で構成される粒子の結晶構造の大半は、母相である鉄と同様で整合に析出しているbcc構造、半整合である9R構造、さらには3R構造で、完全非整合であるfcc構造の析出粒子は極少量であった。これは、一般的に鉄中のフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の粒径はbcc構造、9R構造、3R構造、fcc構造の順で粗大化し、密度が低下する。従って、粗大化するほど、母相との整合性が失われるほどその析出強化能は低下するためと推定される。
なお、三次元アトムプローブ測定は、サンプルを切断および電解研磨法により、必要に応じて電解研磨法と併せて集束イオンビーム加工法を活用し、作製した針状の試料を用いた。三次元アトムプローブ測定では、積算されたデータが再構築され、実空間での実際の原子の分布像が得られる。Cu析出物の形成位置を確認し、Cu析出物の立体分布像の体積とCu析出物の数から、Cu析出物の個数密度を求めた。Cu析出物の個数密度(Cu粒子密度ともいう)は、Cu析出物の立体分布像の体積を分母とし、Cu析出物の数を分子として求める。
また、Cu析出物のサイズは、観察されたCu析出物を構成しているCu原子の数とCuの格子定数から、析出物を球状と仮定し算出した直径である。任意に30個以上のCu析出物の直径を測定し、その平均値を求めた。
また、三次元アトムプローブ測定において、個々の原子の位置をサブナノメーターレベルで特定できる分解能であるという測定機器の特徴を生かしつつ、Cu原子同士が三次元座標位置で近接して集積しているときにCu析出物と推定し、このCu析出物にCu以外の他の元素が含まれていないことを確認した場合に、Cuが単独で析出しているCu析出物と判断した。このようにして、Cuが単独で析出しているCu析出物(Cu単独で構成される粒子ともいう)の平均粒子径を求めることができる。
このように発明者らは、ミクロ組織が、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下であると、例えば、車両用車体構造等のキャビン周りの骨格部品であるBピラーリインフォースのような複雑な断面形状を持った部品でも、プレス加工による割れが発生しない条件があることを見出して本発明をなした。
まず、本発明の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の化学成分について詳細に説明する。なお、成分についての%は質量%を意味する。
(C:0.050〜0.200%)
Cは、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト等の硬質相の硬度や面積分率に影響する非常に重要な元素である。980MPa級以上のグレードを達成するのに十分な硬質相の硬度と面積分率を得るためには、0.050%以上含有させる必要がある。一方、0.200%超含有させても、熱間圧延工程の冷却または保持や連続焼鈍設備での連続熱処理工程での冷却または保持中に、粗大な鉄系炭化物が析出したミクロ組織が形成され、後のプレス加工時に、これら粗大な鉄系炭化物が破壊の起点となり割れを生じる恐れがある。従って、Cの含有量は0.050%以上0.200%以下とする。また、スポット溶接の十字引張強さ(CTS:Cross−tension strength)の観点からは0.180%以下が望ましい。
(Si:0.050〜2.000%)
Siは、固溶強化元素として強度上昇に有効であるため、その含有量が多いほど引張強度と伸びのバランスが改善する。また、SiはAc1変態点温度を上昇させる効果があるため、冷延後の連続熱処理工程において高温での焼鈍が可能となり、再結晶の促進による延性の確保が容易となるので必要に応じて添加する。しかしながら、熱延工程後の酸洗でのスケール除去においてスケールが容易に剥離せず生産性が極端に低下させる場合があるので、その上限を2.000%とする。一方、Siはウロコ、紡錘スケールといったスケール系欠陥の発生を抑制する効果があり、冷延、熱処理あるいはめっき後の模様系欠陥の低減に有効であるのでその下限を0.050%とする。従って、Siの含有量は0.050%以上2.000%以下とする。また、1.800%超添加すると製品板である冷延鋼板の化成処理性が劣化し、塗装後耐食性が低下する恐れがあるので、1.800%以下が望ましい。
(Mn:1.00〜2.50%)
Mnは、固溶強化および焼入れ性向上に有効な元素であり、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト等の硬質相の形成にも影響する。980MPa級以上のグレードを得るためには1.00%以上含有させる必要がある。一方、2.50%を超えると、連続鋳造工程での凝固時に中心偏析が生じ易くなり、中心偏析の硬度上昇により延性が低下し、プレス成形性が劣化する。従って、Mnの含有量は1.00%以上2.50%以下とする。また、スポット溶接の十字引張強さ(CTS)の観点からは2.3%以下が望ましい。
(P:≦0.020%)
Pは、不可避的に含有され、固溶強化元素として作用し、鋼板の強度を上昇させる。しかし、0.020%超含有させると鋼板の加工性や溶接性が低下するので、0.020%以下とした。
(S:≦0.0100%)
Sは、含有量が多すぎると、MnSなどの介在物が生成し、これにより伸びフランジ性が低下し、さらに熱間圧延時に割れを引き起こす。このためS含有量は、極力、低減することが望ましい。特に、熱間圧延時に割れの発生を防止し、かつ良好な加工性を得るためには、S含有量を0.0100%以下に制限する。さらにSは、不純物元素であり、溶接性、鋳造時及び熱延時の製造性に悪影響を及ぼすことから、0.0050%以下とすることが望ましい。Sの下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利であることからこの値を下限値とすることが望ましい。
(Al:0.005〜0.500%)
Alは、脱酸元素であり、0.005%以上添加することで効率的に溶鋼中の溶存酸素を減らすことができる。また、Siと同様に、Ac1変態点温度を著しく高める元素であり、高温での焼鈍が可能になり、再結晶の促進による延性の確保が容易となるので必要に応じて添加する。しかし、過度のAl添加はAr3変態点を著しく高め、含有量が0.500%を超えると、熱間圧延工程での仕上げ圧延中にγ+αの二相域圧延となり、熱間圧延での通板性が著しく不安定となり熱間圧延が困難となるので、0.500%以下に制限する。また、Al含有量が0.4%を超えると鋳造時にタンディッシュノズルが詰まりやすくなるため、0.4%以下が望ましい。さらに0.3%超添加すると化成処理性や亜鉛めっき性を劣化させる要因となるため、0.3%以下が望ましい。また、Alは0.1%超添加するとアルミナ等の非金属介在物を増大させ局部延性を劣化させる恐れがあるので0.1%以下が望ましい。
(N:≦0.0060%)
Nは、鋼の精錬時に不可避的に混入する不純物元素である。0.0060%超添加すると時効劣化が激しくなるので0.0060%以下とする。さらに、製造後二週間以上室温で放置した後、加工に供することを前提とする部材に対しては、0.0050%以下とすることが望ましい。また、夏季の高温環境下での放置、又は赤道を越えるような地域への船舶等による輸出を伴う環境下における使用を考慮すると、0.0040%未満であることが望ましい。
(Cu:0.80〜2.00%)、(Ni/Cu=0.5〜1.0)
Cuは、本発明において最も重要な元素の一つである。連続鋳造工程から熱間圧延工程までに、その析出を抑制することで後の冷間圧延後の連続熱処理工程において、フェライトの回復・再結晶を阻害させないようにするとともに、Ti、Nb等の炭化物系析出物と違い硬質相であるマルテンサイト等の生成に影響を与えず、軟質なフェライト相に単独で析出し強化できるようにする。特に引張強度980MPa以上のグレードにおいては、鋼板のエッジ部分にバーリング加工や伸びフランジ加工時のように局所的に大きなひずみが付与された際に、硬質相と軟質相の境界でミクロボイドが発生する臨界条件を向上させることが重要である。鋼中の他元素との化合物ではなく単独で軟質相に析出するCuは、硬質相の相分率等の変動に影響されず、またフェライトの回復・再結晶を阻害せずに安定的に軟質相であるフェライトを均質に強化出来るので、硬質相と軟質相の境界でのミクロボイドの発生を抑制し、臨界条件を向上させるには非常に有効である。
しかしながら、Cuの含有量が0.80%未満では、如何様に製造工程を工夫しても、その効果が得られない。一方、2.00%超添加しても、その効果は飽和するばかりか、熱間圧延の際に赤熱脆化してヘゲ疵を発生させる恐れがある。従って、Cuの含有量は0.80%以上2.00%以下とする。この赤熱脆化は、融点が1083℃のCuが熱間圧延工程において表層でのスケールオフが進行するにつれ表層の地鉄/スケール界面に濃化し、金属Cuが結晶粒界に浸潤・溶融することによって起こる。Cuによる表面赤熱脆性を工業的に防止するには、Niを添加することが唯一の手段として古くから知られている。これは、Niが鉄中へのCuの溶解度を著しく増加させるとともに融点の低いCuに固溶して、融点を高める効果があるためと理解されている。従って、赤熱脆性を防止するには、Ni/Cu=0.5〜1.0の割合でNiを添加することが有効であり、本発明でもこの比率で添加することを許容するが、Niは希少かつ高価な合金元素であり、可能な限り添加しないのが望ましい。また、Cuはオーステナイトフォーマーであり、多量に添加するとγ→α変態点温度が低下し、冷延後の熱処理工程で、フェライトの再結晶が不十分なまま、α→γ逆変態が生じ、延性が低下する恐れがあるので1.2%以下が望ましい。
(Mo:0.005〜0.200%、Cr:0.005〜0.200%のうちいずれか一種または二種)
Mo、Crは、Mnと同様に、焼入れ性向上に有効な元素の一つであり、Mo、Crのうちいずれか一種または二種を含有させることができる。従って、Mo、Cr含有量が増加すると、鋼板の引張強度が高くなる。Mo、Cr含有量が多い場合、MoC、Cr23等の合金炭化物が析出し、これが結晶粒界に優先的に析出した場合には、プレス成形時に割れの起点となり、プレス成形性が劣化する恐れがある。そのため、Mo、Cr含有量の上限をそれぞれ0.200%とする。またMo、Crの含有量が、0.005%未満では、上記効果が十分に得られないため、それぞれ0.005%を下限とする。
(Nb:0.001〜0.005%、Ti:0.001〜0.005%、V:0.001〜0.005%のうちいずれか一種または二種以上)
Nb、Ti、Vは、鋼中で炭窒化物を形成する元素である。熱間圧延の際にオーステナイト域で析出させると制御圧延効果を発揮してオーステナイト粒が細粒化、かつ等軸化し、熱延原板のミクロ組織が整粒で均一な複合組織となる効果が得られる。一方、連続熱処理工程においてはフェライトの回復・再結晶を阻害するだけでなく炭化物の析出に際してCを消費することで、硬質相であるマルテンサイト等の生成を阻害する。従って、必要に応じて、何れの元素も0.001%以上0.005%以下の範囲で添加してもよい。
(Mg:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.1000%のうちいずれか一種または二種以上)
Mg、CaおよびREM(希土類元素)は、破壊の起点となり、加工性を劣化させる原因となる非金属介在物の形態を制御し、加工性を向上させる元素である。Ca、REMおよびMgの含有量は、それぞれ0.0005%未満添加しても上記効果を発揮しない。また、Mgの含有量を0.0050%超、Caの含有量を0.0050%超、REMの含有量を0.1000%超添加しても上記効果が飽和して経済性が低下する。従ってMg含有量は0.0005%以上0.0050%以下、Ca含有量は0.0005%以上0.0050%以下、REM含有量は、0.0005%以上0.1000%以下の量を添加することが望ましい。なお本発明において、REMとはLa及びランタノイド系列の元素を指すものであり、ミッシュメタルにて添加されることが多く、LaやCe等の系列の元素を複合で含有する。金属LaやCeを添加してもよい。
(B:0.0002〜0.0050%)
Bは、焼き入れ性を高め硬質相の組織分率を増加させる効果があるので必要に応じて添加する。ただし、0.0002%未満ではその効果が得られず、0.0050%を超えて添加してもその効果が飽和する。このため、Bの含有量は、0.0002%以上0.0050%以下としている。一方、Bは、連続鋳造後の冷却工程でスラブ割れが懸念される元素であり、この観点からはその含有量は0.0015%以下が望ましい。
なお、これらを主成分とする鋼板には、Zr、Sn、Co、Zn、Wを合計で0.05%以下の含有を許容する。しかしながらSnは、熱間圧延時に赤熱脆化により疵が発生する恐れがあるので0.02%以下が望ましい。
また、これらの元素の残部はFe及び不可避不純物である。
以下、本発明のミクロ組織について詳細に説明する。
本発明の析出強化型複合組織冷延鋼板のミクロ組織は以下のように限定されている。ここで、ミクロ組織とは、鋼板表面から板厚の1/4内側からサンプルを採取して観察された板厚3/8または5/8位置のミクロ組織を言う。また、ここで言う面積分率とは鋼板より採取したサンプルの圧延方向に平行な板厚断面で観察し、測定した面積分率と定義する。
本発明の析出強化型複合組織冷延鋼板のミクロ組織は、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満の軟質相であるフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下であることを特徴としている。
本発明の析出強化型複合組織冷延鋼板のミクロ組織の主相は残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織である。引張強度が980MPa級グレード以上を得るためには、これら硬質組織の合計面積分率が50%超90%未満である必要がある。
一方、第二相であるフェライトの面積分率は10%以上50%未満である。これは、10%未満では、破断伸びが劣化するためである。具体的には引張強度が980MPa級グレードで、破断伸びで13.0%以上を得るためには、少なくとも面積分率で10%のフェライトが必要である。
また、主相である硬質組織の面積分率は50%超90%未満であり、これら主相である硬質組織と、第二相であるフェライト以外のミクロ組織として1%未満のパーライトは許容できる。ただし、硬質組織は圧延方向に展伸した形状では、塑性変形時に硬質組織とフェライトの界面で発生したボイドが連結し延性破壊を助長しやすくなり、穴広げ値や伸びを劣化させるので、等軸な形状である必要がある。
さらに、このフェライトはCu単独で構成される粒子で析出強化されており、その粒子の平均粒子径は2.0nm超、10nm以下である必要がある。これは、軟質相であるフェライトがCu単独で構成される粒子で析出強化され、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質相とこの軟質相であるフェライトの硬度差が大きいと、バーリング加工性や伸びフランジ加工性に関わる穴拡げ性が劣化するためである。
具体的には引張強度が980MPa級グレードで50%以上の穴広げ値を得るためには、この硬質相と軟質相の平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であることが必要である。また、そのためには、軟質相であるフェライトでCuの析出強化が発現する必要があり、その平均粒子径は2.0nm超、10nm以下かつ、2.0nm超のフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の密度が1×1016〜5×1018個/cmである必要がある。ただし、一般的にピーク時効前後のフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の密度はCuの含有量と共に増加するので、このフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の密度の上限は、Cu含有量が0.80%では、1×1016個/cm、Cuが1.00%では1×1017個/cm、Cuが1.50%では1×1018個/cm、Cuが2.00%では5×1018個/cmである。
また、本発明におけるフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の結晶構造の大半は、母相である鉄と同様で整合に析出しているbcc構造、半整合である9R構造、さらには3R構造で、完全非整合であるfcc構造の析出粒子は極少量である。一般的に鉄中のフェライトにおいてCu単独で構成される粒子の粒径はbcc構造、9R構造、3R構造、fcc構造の順で粗大化し、密度が低下する。従って、粗大化するほど、母相との整合性が失われるほどその析出強化能は低下する。
以下、本発明の製造方法について説明する。
本発明において、熱間圧延工程に先行して行う、上述した成分を有する鋼片の製造方法は特に限定するものではない。すなわち、上述した成分を有する鋼片の製造方法としては、高炉、転炉や電炉等による溶製工程に引き続き、各種の2次精練工程で目的の成分含有量になるように成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造、又はインゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造工程を行うようにしてもよい。なお、原料にはスクラップを使用しても構わない。また、連続鋳造によってスラブを得た場合には、高温鋳片のまま熱間圧延機に直送してもよいし、室温まで冷却後に加熱炉にて再加熱した後に熱間圧延してもよい。
上述した製造方法により得られたスラブは、熱間圧延の粗圧延工程前のスラブ加熱工程において、1100℃以上で加熱炉内にて加熱する。1100℃未満であると続く粗圧延の際に圧延温度が低温となり、熱間での変形抵抗が大きくなり、目的とするミクロ組織を作り込むための各パスでの圧下率(板厚減少率、圧延率ともいう)、圧下パス数、粗圧延での合計圧下率を達成することが出来ない。従って、スラブ加熱工程における加熱温度は1100℃以上とする。なお、スラブ加熱温度の上限は特に定めないが、1250℃以上の温度ではスケールオフによる歩留まり低下が著しくなるばかりでなく、このスケールオフにより融点が1083℃のCuが表層の地鉄とスケール界面に濃化し、結晶粒界に浸潤・溶融することで後の熱間圧延中に赤熱脆化によるヘゲ疵を発生させる恐れがある。従って、スラブ加熱温度は1250℃未満が望ましい。
また、スラブ加熱工程における加熱時間については特に定めないが、スラブの厚み方向に十分に均等に加熱する場合は1100℃以上で30分以上保持することが望ましい。一方、スケールオフによる歩留まり低下の抑制や、このスケールオフによるCuの赤熱脆化に起因するヘゲ疵の発生を抑制する観点から90分以下が望ましい。ただし、鋳造後の鋳片を高温のまま直送して圧延する場合はこの限りではない。
スラブ加熱工程の後は、粗圧延、仕上げ圧延、冷却工程および巻取り工程より構成される熱間圧延工程で望ましい熱延原板を作り込む。本発明では、この熱間圧延工程で、後の連続熱処理工程でCuを最適な析出状態にし、ミクロ組織を作り込むための準備として特定の条件での操業が必要とされる。すなわち、Cuについてはこの熱延原板の状態で固溶もしくはクラスタ状態としておき、その後の冷間圧延に続く連続熱処理工程では、フェライトの回復と再結晶を阻害させないようにするとともに軟質なフェライト相に単独で析出し、均質に強化できるようにする。そのためには、この熱間圧延での冷却および巻取り工程ではγ→α変態後にα域でのCuの析出を抑制することが重要である。さらに、目的とする複合組織を冷間圧延に続く連続熱処理工程で作り込むためには熱延原板の状態で、面積分率で10%以上50%未満の軟質相であるフェライトと硬質相である硬質組織とである複合組織であることが必要である。
以下に熱間圧延工程について詳細に述べる。
まず、加熱炉より抽出したスラブに対して特に待つことなく粗圧延工程を開始し粗バーを得る。この粗圧延工程では粗圧延終了温度が1050℃以上として、少なくとも圧下率20%以上の粗圧延を3〜9パス行うことが必要である。粗圧延終了温度が1050℃未満では、粗圧延での熱間変形抵抗が増して、粗圧延の操業に障害をきたす恐れがある。粗圧延の圧延開始温度の上限は特に定めないが、1150℃超では、粗圧延中に生成する二次スケールが成長しすぎて、後に実施するデスケーリングや仕上げ圧延でスケールを除去することが困難となる恐れがある。また、この二次スケールの成長により融点が1083℃のCuが表層の地鉄とスケール界面に濃化し、結晶粒界に浸潤・溶融することで後の熱間圧延中に赤熱脆化によるヘゲ疵を発生させる恐れがある。従って、粗圧延の圧延開始温度は1150℃以下が望ましい。
さらに、当該温度域での粗圧延において圧下率が20%以上の圧延を行わないと、オーステナイトの加工、それに続く再結晶を活用した結晶粒の細粒化および凝固組織に起因する偏析の解消が期待出来ず、後の冷間圧延に続く連続熱処理工程で、目的とする複合組織を作り込むことが困難となる。また、鋳造後の鋳片を高温のまま直送して圧延した場合は、鋳造組織が残留し、後の冷間圧延に続く連続熱処理工程で、目的とする複合組織を作り込むことが困難となる恐れがある。
粗圧延での圧下率20%以上の圧延パス数は、3〜9パスであるとオーステナイトでの加工と再結晶が繰り返され、仕上げ圧延前の平均オーステナイト粒が100μm以下に細粒化され、熱延原板のミクロ組織が整粒で均一な複合組織となる。その結果、後の冷間圧延に続く連続熱処理工程で、目的とする複合組織が得られる。ただし、粗圧延の粗圧延開始から終了までの合計圧下率が60%未満であると細粒化効果が十分に得られず、90%超であってもその効果が飽和するだけなく、パス数が増加し生産性を阻害し、温度低下を招く恐れがある。従って、粗圧延の粗圧延開始から終了までの合計圧下率は60%以上90%以下とする。
粗圧延の終了後に仕上げ圧延を行う。粗圧延終了後から仕上げ圧延の開始までの時間は150秒以内が望ましい。150秒超であると、粗バーにおいてオーステナイトの粒成長が進行し仕上げ圧延前の平均オーステナイト粒が100μm超と粗大化し、熱延原板のミクロ組織が整粒で均一な複合組織が得られなくなる恐れがある。一方、粗圧延終了後から仕上げ圧延の開始までの時間の下限値は、30秒未満であると特別な冷却装置を用いない限り仕上げ圧延開始温度が高温となり、赤熱脆化起因のヘゲ傷が発生する恐れがあるため、30秒以上が望ましい。
仕上げ圧延終了温度はAr3変態点温度以上とする。仕上げ圧延終了温度がAr3変態点温度未満であると加工フェライトにより、成形性が劣化するばかりでなく、二相域圧延により集合組織の異方性が増加し、イヤリング等の成形不具合を生ずる恐れがある。一方、仕上げ圧延終了温度の上限は特に定めないが、後の冷却工程で目的とする熱延原板のミクロ組織を作り込むためにはAr3変態点温度+50℃以下が望ましい。
また、仕上げ圧延の合計圧下率は87%以上93%以下とする。仕上げ圧延は複数パスの連続圧延が可能なタンデム圧延機で実施されれば、その圧延において圧下を複数パスで行うことで、圧延による未再結晶と次のパスまでのパス間時間での再結晶を複数回繰り返すことによりオーステナイト粒が細粒化、かつ等軸化し、熱延原板のミクロ組織が整粒で均一な複合組織となる。その結果、後の冷間圧延に続く連続熱処理工程で、目的とする複合組織が得られる。
ただし、その合計圧下率が87%未満であると、オーステナイト粒を十分に細粒化、かつ等軸化できず、熱延原板のミクロ組織における硬質相が列状に連結的に配列した分散状態となり、成形性が劣化する。一方、93%超では、その効果が飽和するだけでなく圧延機の過度な荷重負荷が掛かり、操業上望ましくないので、仕上げ圧延の合計圧下率は87%以上93%以下とした。
さらに各パスでの各々での圧下率は20%以上である。各々での圧下率が20%未満であるとオーステナイト粒を十分に細粒化、かつ等軸化できず、熱延原板のミクロ組織における硬質相が列状に連結的に配列した分散状態となり、成形性が劣化する。さらにこのような圧延は5〜7パスで行われることで、圧延による未再結晶と次のパスまでのパス間時間での再結晶を複数回繰り返すことによりオーステナイト粒が細粒化、かつ等軸化する。
また、仕上げ圧延の最終段とその前段での合計圧下率が30%以上であることが望ましい。これは、さらにオーステナイト粒を細粒化し、変態後の熱延原板のミクロ組織を細粒化することで、後の冷間圧延に続く連続熱処理工程で得られる製品板でも細粒なミクロ組織がある程度保たれ、高強度化による低温靭性の劣化が抑制できる。
なお、本発明において圧延速度については特に限定しないが、仕上げ最終スタンド側での圧延速度が400mpm未満であると各仕上げ圧延パス間の時間が長くなるため、オーステナイト粒が成長粗大化し、靭性が劣化する恐れがある。そのため圧延速度は400mpm以上が望ましい。さらに650mpmであると硬質相が列状に連結的に配列した分散状態から等軸化でき成形性の劣化を抑止できるので、650mpmがさらに望ましい。また、上限については特に限定しなくとも本発明の効果を奏するが、設備制約上1800mpm以下が現実的である。
なお、Ar1変態点温度(冷却する際の、オーステナイトがフェライト又はフェライト、セメンタイトへの変態を完了する温度)、Ar3変態点温度(冷却する際の、オーステナイトのフェライト変態が始まる温度)、Ac1変態点温度(加熱する際の、オーステナイトが生成し始める温度)、Ac3変態点温度(加熱する際の、オーステナイトへの変態が完了する温度)は、例えば以下の計算式(1)〜(4)により鋼成分との関係で簡易的に示される。
Ar1変態点温度(℃)=730−102×(%C)+29×(%Si)−40×(%Mn)−18×(%Ni)−28×(%Cu)−20×(%Cr)−18×(%Mo)・・・・・(1)
Ar3変態点温度(℃)=900−326×(%C)+40×(%Si)−40×(%Mn)−36×(%Ni)−21×(%Cu)−25×(%Cr)−30×(%Mo)・・・・・(2)
Ac1変態点温度(℃)=751−16×(%C)+11×(%Si)−28×(%Mn)−5.5×(%Cu)−16×(%Ni)+13×(%Cr)+3.4×(%Mo)・・・・・(3)
Ac3変態点温度(℃)=910−203√(%C)+45×(%Si)−30×(%Mn)−20×(%Cu)−15×(%Ni)+11×(%Cr)+32×(%Mo)+104×(%V)+400×(%Ti)+200×(%Al)・・・・・(4)
ここで、(%C)、(%Si)、(%Mn)、(%Ni)、(%Cu)、(%Cr)、(%Mo)、(%V)、(%Ti)、(%Al)は、それぞれの元素の含有量(質量%)である。
また、各パスの圧下率は、圧延前後の板厚の差を圧延前の板厚で除して求める。例えば、nパス目の圧下率Rnは、Rn=[{(n−1)パス後の板厚−nパス後の板厚}/(n−1)パス後の板厚]×100(%)である。
複数パスの合計圧下率とは、複数パスで圧延する場合の合計圧下率で、例えば、nパス目からmパス目までの合計圧下率Rsは、Rs=[{nパス目圧延前の板厚−mパス目圧延後の板厚}/nパス目圧延前の板厚]×100(%)と定義される。
なお、本発明では粗圧延機で実施される圧延を粗圧延、仕上げ圧延機で実施される圧延を仕上げ圧延とする。
仕上げ圧延終了後は熱延原板のミクロ組織を作り込むためにランナウトテーブルの制御により最適化された冷却を行う。まず、仕上げ圧延終了後に冷却を開始するまでの時間は3秒以内である。この冷却開始までの時間が3秒超であると変態前のオーステナイトが粒成長して、熱延原板のミクロ組織における硬質相が列状に連結的に配列した分散状態となり、製品板での成形性の劣化につながる。この冷却開始までの時間の下限値については本発明においては特に限定する必要はないが、0.4秒未満であると圧延による層状の加工組織が残留したまま冷却されるばかりでなく、列状に連結的に配列した硬質相が得られ、製品板での成形性の劣化につながる。
圧延終了後に実施する冷却の平均冷却速度は、30℃/sec以上が必要である。この冷却速度が30℃/sec未満であると冷却中にパーライトが生成し、熱延原板で目的とするミクロ組織が得られない。なお、冷却工程における平均冷却速度の上限は、特に限定しなくとも本発明の効果を得ることができるが、150℃/s超の冷却速度では冷却終了温度を制御することが極めて難しく、ミクロ組織の作り込みが困難となるので150℃/s以下とすることが望ましい。
次に、この冷却の停止温度は(Ar3+Ar1)/2±30℃の温度域である。この温度が(Ar3+Ar1)/2+30℃超であると、フェライト変態が進行せず、熱延原板で目的とする複合組織が得られない。一方、(Ar3+Ar1)/2−30℃未満であるとフェライト変態が過度に進行し、やはり熱延原板で目的とする複合組織が得られない。
さらに、この温度域での冷却を行わない空冷による滞留時間は1〜10秒間滞留であるが、この時間が1秒未満であるとフェライト変態が進行せず、熱延原板で目的とする複合組織が得られない。一方、10秒超では、パーライトが生成し、熱延原板で目的とするミクロ組織が得られない。
滞留時間後は、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、350℃以下の温度域で冷却を停止し巻き取って熱延原板とする。この平均冷却速度が20℃/s未満では、冷却中に粗大な炭化物を含んだ硬質相が生成し、後の連続熱処理工程で目的とする複合組織が得られなくなる。一方、平均冷却速度の上限は特に定めないが、冷却設備の能力上300℃/sec以下が妥当な冷却速度である。
この冷却後の冷却停止する温度域は350℃以下とする。この冷却停止の温度域が350℃超であると熱延原板のミクロ組織に粗大な炭化物を含んだ硬質相が混入し、後の連続熱処理工程で目的とする複合組織が得られなくなる。さらに、熱延原板の状態でCuが析出し、後の連続熱処理工程でCuの最適な析出状態を得られない。一方、冷却停止温度域の下限値は特に定めないが、その後の巻き取り時にコイルが長時間水濡れの状態にあると後の酸洗、冷延、連続熱処理後でも錆による外観不良による歩留まり落ちの増加が懸念されるため、50℃以上が望ましい。
冷却停止後に鋼板をコイルとして巻取る工程では、特に温度制御は必要ないが、冷却停止後の巻取り温度が200℃以上であると巻き取り後に熱延原板の硬質相に炭化物が析出し、後の冷延、連続熱処理工程において溶けにくくなり、焼き入れ性が低下することで製品板の強度低下が懸念される。従って、巻取り温度は200℃未満が望ましい。
なお、熱間圧延においては粗圧延後にシートバーを接合し、連続的に仕上げ圧延をしても良い。その際に粗バーを一旦コイル状に巻き、必要に応じて保温機能を有するカバーに格納し、再度巻き戻してから接合を行っても良い。
得られた熱延原板は、酸洗後、冷延され、続く連続熱処理工程でミクロ組織を作り込み製品板となる。酸洗については特に限定する必要はない。また、酸洗前、または/および酸洗後に必要に応じて圧下率5%以下のスキンパスを施しても構わない。
その後の冷間圧延はその合計圧下率が5%超40%未満である。冷間圧延率(冷延率)が5%以下であると再結晶の駆動力が小さいため、後の連続熱処理工程でフェライトの再結晶が十分に進まず延性が大きく劣化する。また、後の連続熱処理工程の二次冷却と三次冷却の間の保持にてCuの析出状態を最適化するために、その前の連続熱処理工程の加熱工程でCuのクラスタを生成させる際にその生成サイトとなる転位の密度が小さく、後の連続熱処理での短時間の熱処理でCuを最適な状態で析出させることが出来ず、強度の低下や穴広げ値の低下を招く。従って、冷間圧延率(冷延率)の下限を5%超とする。一方、40%以上であると熱延原板の段階で作り込んだ硬質相が割れて列状に連結的に配列した分散状態となり、後の連続熱処理工程で延伸した硬質相となり、延性および破壊挙動の異方性が顕著になり成形性が劣化する。
冷間圧延終了後、熱処理を行うが、この工程はコイル長手方向の材質均質性の観点から連続焼鈍設備で行う。連続焼鈍設備で行う連続熱処理工程は本発明においてミクロ組織を作り込む上で最も重要な工程である。本発明の最も重要な要件である「残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を主相とし、体積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライトにおけるCuの存在状態がCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下」にさせるためには、この連続熱処理工程の加熱段階で、熱延原板でフェライト組織であったミクロ組織中にCuのクラスタを生成させた後に、そのミクロ組織を十分に再結晶させる。その後に、γ(オーステナイト)相と例えばα(フェライト)相の二相で鋼板が構成される二相域温度で、熱延原板で硬質相であったCの濃化相からオーステナイトを析出させ、その後の冷却で、主相が残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率が50%超90%未満で、第二相が体積分率で10%以上50%未満のCuを最適に析出させたフェライトからなる複合組織を作り込む。
まず、連続熱処理工程の加熱段階の昇温中の初期で、フェライトに冷間圧延で導入された転位を生成サイトしてCuのクラスタを生成させ、その後に冷間圧延で導入された転位を含むフェライトの再結晶を完了させる必要がある。
650℃未満の温度域での平均昇温速度は特に定めないが、5℃/s以下であると転位の回復がCuのクラスタ生成より早くCuのクラスタの生成が不十分となり、強度の低下や穴広げ値の低下を招く恐れがある。従って、昇温中の初期である650℃未満の温度域の昇温速度は5℃/s超であることが望ましい。10℃/s以上であれば、そのような恐れもなく、かつ生産性を損なうことはないので、さらに、望ましくは10℃/s以上である。
次に、650℃以上の温度域での平均昇温速度が5℃/s超であると、冷間圧延で導入された転位を含むフェライトの再結晶が十分に終了しない状態で、γ(オーステナイト)相と例えばα(フェライト)相の二相で鋼板が構成される温度域である二相域温度に突入し、熱延原板で残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの硬質相中のCが濃化している相が、オーステナイトへ逆変態することになり、フェライトの再結晶が遅延して、延性が低下する。従って、650℃以上の温度域での平均昇温速度は5℃/s以下と限定する。
加熱到達温度が(Ac1+20)℃以下ではオーステナイトへの逆変態が十分に進まず、その後の冷却工程で主相が残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を得ることができず、十分な強度が得られない。一方、(Ac3−20)℃超では、フェライトの面積分率が10%未満となり目的とするミクロ組織を得られないばかりか、その後に如何様な温度履歴を与えてもCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下を含むフェライトが得られない。従って、加熱到達温度は(Ac1+20)℃超、(Ac3−20)℃以下である。また、この温度域での保持時間は5〜300秒であるが、5秒未満ではオーステナイトへの逆変態が十分に進まず、その後の冷却工程で主相が残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を得ることができず、十分な強度が得られない。一方、300秒超では、結晶粒が粗大化して局部変形能が劣化してしまう。
その後、すなわち、加熱到達温度に達し、保持時間を確保した後は、12℃/s以下の冷却速度で720〜650℃の温度域にまで一次冷却を施す。この一次冷却では、加熱工程での二相域温度域での保持で得られたフェライト相を目的の面積分率に整えるために重要である。この際の冷却速度が12℃/s超であると冷却中に拡散変態であるフェライト変態が十分に進行せず、フェライトの面積分率が減少するとともに硬質組織へのCの濃化が不十分となり、延性が低下する。冷却速度の下限値は特に限定しないが、2℃/s未満であるとやはりパーライトが生成してしまう可能性があるので、2℃/s以上が望ましい。また、一次冷却の停止温度が720℃超であると、硬質組織へのCの濃化が不十分となり強度が低下する。一方、650℃未満ではやはりパーライトが生成してしまう。
さらに、一次冷却後は、4℃/s〜300℃/sの冷却速度で600℃から400℃超の温度域まで二次冷却を行う。4℃/s未満の冷却速度であるとやはりパーライトが生成してしまう。一方、300℃/s超では均一に冷却することが難しくなるため、しわ、波等が発生し通板性を悪化させるとともに板形状が劣化し商品価値が毀損する。また、この二次冷却の停止温度が600℃超であるCuを最適な状態で析出させることが出来ず、400℃以下であるとやはり、Cuを最適な状態で析出させることが出来ない。
次に、二次冷却後の600℃から400℃超の温度域の過時効帯(OA帯:Over Aging帯)での保持時間が5秒未満であると、Cuの析出が不十分となり、強度の低下や穴広げ値の低下を招く。一方、400秒超であるとCuの析出が過度に進行し、やはり強度の低下や穴広げ値の低下を招く。従って、二次冷却後に600℃から400℃超の温度域で5〜400秒保持する。なお、連続焼鈍設備における過時効帯(OA帯)は温度制御されているため、温度の変動はほとんどない。
二次冷却後の三次冷却の平均冷却速度は、20℃/s未満では主相が残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織が過度に焼き戻され強度が低下する。一方、三次冷却の平均冷却速度の上限は特に定めないが300℃/s超では均一に冷却することが難しくなるため、しわ、波等が発生し通板性を悪化させるとともに板形状が劣化し商品価値が毀損する。従って、三次冷却の平均冷却速度は20℃/s以上とし、平均冷却速度の上限は300℃/s以下が望ましい。
三次冷却の冷却停止温度が250℃超であるとやはり相が残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織が過度に焼き戻され強度が低下する。一方、三次冷却の停止温度の下限は特に定めないが、コイルが長時間水濡れの状態にあると錆による外観不良による歩留まり落ちの増加が懸念されるため、50℃以上である。従って、三次冷却の冷却停止温度は、50℃以上、250℃以下である。
亜鉛めっきを施す際には、二次冷却後の600℃から400℃超の温度域での5〜400秒保持が終了後に亜鉛めっき槽に浸漬する。この場合、亜鉛めっき処理後の冷却速度は特に規定しないが、上記三次冷却の条件に従うことが望ましい。めっき浴に浸漬させる際の温度は400〜500℃が望ましい。さらに、必要に応じて行う合金化処理は450〜600℃までの温度範囲で行う。合金化処理温度を450℃未満とした場合、十分に合金化せず、600℃超であると、合金化が進行してしまい、耐食性が劣化する。合金化温度に保持する時間は、合金化のため1秒以上が望ましく、20秒超であると、合金化が進行してしまい、耐食性が劣化するので20秒以下が望ましい。また、合金化処理後の冷却速度は特に規定しないが、上記三次冷却の条件に従うことが望ましい。なお、合金化処理を行う場合は、この温度域での過度のマルテンサイト焼き戻しを抑制するために、必要に応じてMo等の元素を添加する。なお、この合金化処理を施すことにより、耐食性の向上に加えて、スポット溶接等の各種溶接に対する溶接抵抗性が向上する。
その後、形状矯正等の目的で0.1〜5%の調質圧延を行ってもよい。ただし、0.1%未満であると形状矯正の効果が得られず、5%超では均一伸びが著しく劣化するので、調質圧延の範囲は0.1〜5%とする。
以下実施例の発明例及び比較例に基づいて、本発明の効果を説明する。
表1に示す化学成分を有するA〜Z、a〜cの鋳片を転炉、二次精錬工程にて溶製して、連続鋳造後に直送もしくは再加熱し、熱間圧延工程として粗圧延に続く仕上げ圧延で2.5〜3.6mmの板厚に圧下し、ランナウトテーブルで冷却後に巻き取り、熱延原板とし、さらに、酸洗、精整後に冷間圧延および熱処理し、冷間圧延で1.6〜2.6mmの板厚に圧下し、それに続く連続熱処理にて冷延鋼板もしくはめっき鋼板を製造した。なお、製品厚は1.6〜2.6mmである。より詳細には、表2〜5に示す熱間圧延の製造条件に従って熱延原板を製造し、表6、7に示す冷間圧延および熱処理工程の製造条件に従って表8、9に示す特性を有する冷延鋼板もしくはめっき鋼板を製造した。なお、表中の化学成分(組成)についての表示は、全て質量%である。また、表1における成分の残部は、Fe及び不可避的不純物をいい、更に表2〜表9における下線は、本発明の範囲外であることを示している。なお、表3は表2の続き、表5は表4の続きである。
Figure 0006459611

表2〜5および表6、表7で、「成分」とは表1に示した各記号に対応した成分を有する鋼を、「Ar3」、「Ar1」、「Ac3」および「Ac1」とはそれぞれ数式(1)〜(4)にて算出される変態点温度を示す。
熱間圧延工程の製造条件において加熱工程で、「加熱温度」とはスラブ再加熱における最高到達温度(℃)を、「保持時間」とはスラブの温度が1100℃以上になったときの保持時間(分)を示す。粗圧延工程で、「圧延開始温度」とは粗圧延開始温度(℃)を、「総パス数」とは粗圧延の圧延パスの回数の合計を、「圧下率20%以上のパス数」とは、粗圧延の圧延パスのうち各々のパスでの圧下率が20%以上のパスの回数の合計を、「合計圧下率」とは粗圧延開始から終了までの粗圧延での合計圧下率(%)を、「圧延終了温度」とは、粗圧延最終パスの圧延スタンド出側直後の温度(℃)を示す。
仕上げ圧延工程で、「粗圧延終了から仕上げ圧延開始までの時間」とは粗圧延工程終了から仕上げ圧延工程開始までの時間(秒)を、「仕上げ圧延直前の平均オーステナイト粒径」とは、仕上げ圧延の最初のスタンドに粗バーが噛み込む直前のオーステナイト粒の平均粒径(μm)を指す。
このオーステナイト粒径を確認するためには、仕上げ圧延に入る前の粗バーをクロップシャー等にて切断し得られるクロップ片を可能な限り急冷して室温程度まで冷却し、その圧延方向と平行な断面をエッチングしてオーステナイト粒界を浮き立たせて光学顕微鏡にて測定することで得られる。この際、板厚1/4位置にて50倍以上の倍率にて20視野以上を、画像解析やポイントカウント法等にて測定する。
さらに、「総パス数」とは仕上げ圧延の圧延パス数の合計値を、「圧下率20%以上のパス数」とは、仕上げ圧延の圧延パス数のうち各々のパスでの圧下率が20%以上のパス数の合計を、「合計圧下率」とは、仕上げ圧延開始から終了までの仕上げ圧延での圧下率(%)を、「最終段とその前段の合計圧下率」とは、通常複数パスの連続圧延を行う仕上げ圧延において最終パスと最終パスの前段の2パス分の合計圧下率(%)を、「圧延終了温度」とは、仕上げ圧延最終パスの圧延スタンド出側直後の温度(℃)を、「圧延速度」とは、仕上げ圧延最終圧下パスを終了後の当該圧延スタンドでの出側通板速度(mpm)を示す。なお、圧下率については、板厚から算出する実績値であっても圧延スタンドのセットアップ値であっても構わない。また温度については放射温度計もしくは接触温度計にて当該工程位置で測定することが望ましいが、温度モデル等による推定値でも構わない。
ランナウトテーブルにて実施する冷却は、Cuの析出制御および組織制御の観点から三段に区分される。まず、「冷却開始までの時間」とは、仕上げ圧延最終パスの圧延スタンドを出てからランナウトテーブルによる一段目の冷却が開始されるまでの時間(秒)を、「冷却速度I」とは、この一段目の水冷による平均冷却速度(℃/秒)を、「保持開始温度」とは、この一段目の冷却での水冷を停止した温度(℃)、すなわち、水を掛けない空冷保持(二段目の空冷)の保持開始温度(℃)を、「保持時間」とは、空冷保持の時間(秒)を、「保持終了温度」とは、空冷保持を停止した温度(℃)、すなわち、空冷保持後に再び水冷する三段目の水冷の水冷開始温度(℃)を、「冷却速度II」とは、この三段目の冷却での水冷による平均冷却速度(℃/秒)を、「冷却停止温度」とは、この三段目の冷却での水冷を停止した温度(℃)を、「巻取り温度」とは、水冷を停止し、巻き取り機により鋼板をコイル状に巻き取る直前の温度(℃)を示す。
表2〜5の熱延原板での「ミクロ組織」は、得られた鋼板の板幅の1/4Wもしくは3/4W位置から試料を採取し、光学顕微鏡を用いて板厚1/4厚におけるミクロ組織の観察を行った。試料の調整として、圧延方向の板厚断面を観察面として研磨し、ナイタール試薬、レペラー試薬にてエッチングした。ナイタール試薬およびレペラー試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真から「ミクロ組織」を分類した。表2〜5中で、Fはフェライト、Mはマルテンサイト、Pはパーライト、Bはベイナイト、展伸Mは展伸した形状のマルテンサイト、列状Mは列状に連なったマルテンサイト、加工Fは圧延による加工ひずみが残留したパーライト、を表す。そして、例えば、F+Bとは、フェライトとマルテンサイトから成る複合組織であることを表す。さらに、「フェライト面積率」は光学顕微鏡観察と同一の試料を用いて、株式会社 TSLソリューションズ製の、EBSD−OIMTM(Electron Back Scatter Diffraction pattern−Orientation Image Microscopy)に装備されているKernel Average Misorientation(KAM)法にて求めた。
具体的には、試料をコロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨し、倍率400倍、160μm×256μmエリア、測定ステップ0.5μmの測定条件でEBSD測定を実施し、そのピクセルの結晶方位データを上記のKAM法にて算出した。KAM法は測定データのうちのある正六角形のピクセルの隣り合う6個(第一近似)もしくはさらにその外側12個(第二近似)、さらにはさらにその外側の18個(第三近似)のピクセル間の方位差の平均し、その値をその中心のピクセルの値とする計算を各ピクセルに行う。
粒界を越えないようにこの計算を実施することで粒内の方位変化を表現するマップを作成できる。すなわち、このマップは粒内の局所的な方位変化に基づくひずみの分布を表している。なお、本発明において解析条件はEBSP−OIMTMにおいて隣接するピクセル間の方位差を計算する条件は第三近似として、この方位差が5°以下となるものを表示させる。ここでフェライトとは、上記の方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面積分率と定義した。
これは、高温で変態したポリゴナルな初析フェライトは拡散変態で生成するので、転位密度が小さく、粒内の歪みが少ないため、結晶方位の粒内差が小さく、これまで発明者らが実施してきた様々な調査結果より、光学顕微鏡観察で得られるポリゴナルなフェライト面積分率と、KAM法にて測定した方位差第三近似1°で得られるエリアの面積分率がほぼよい一致であるためである。
次に冷間圧延・熱処理工程の製造条件において、「冷間圧延率」とは、熱間圧延工程で圧延された板厚(バーゲージ)から製品厚までの圧延率を、「650℃未満での昇温速度」とは、連続熱処理における加熱工程での650℃未満での昇温速度を、「650℃以上での昇温速度」とは、連続熱処理における加熱工程での650℃以上での昇温速度を、「加熱温度」とは、冷延ままの鋼板を通板する際の最高到達温度を、「加熱保持時間」とは、加熱到達温度である(Ac1+20)℃超、(Ac3−20)℃以下での保持時間を示す。
熱処理工程の加熱後の冷却条件はミクロ組織を作り込む際に非常に重要でその温度と時間は高度に管理されている。ここで「一次冷却速度」とは、加熱後の一次冷却での平均冷却速度を、「一次冷却停止温度」とは、加熱後の一次冷却の停止温度を、「二次冷却速度」とは、一次冷却後の二次冷却での平均冷却速度を、「二次冷却停止温度」とは、二次冷却の停止温度を、「保持時間」とは、二次冷却停止後の保持における保持時間を、「三次冷却速度」とは、保持後の三次冷却での平均冷却速度を、「三次冷却停止温度」とは、三次冷却の停止温度を示す。
また、鋼板に亜鉛めっきを施す場合は、上記熱処理工程の保持後に、亜鉛めっき槽に浸漬する。さらに、合金化を施す場合は、その後に合金化熱処理を行う。ここで、「亜鉛めっき槽浸漬」は、鋼板表面に溶融化亜鉛めっきを施すための工程を通板させるかを「有/無」で表記している。溶融化亜鉛めっきを施す場合はその「亜鉛めっき槽温度」を記載した。また、合金化溶融亜鉛めっきとする場合には、その「合金化温度」と「合金化処理時間」を記載した。最後に、「スキンパス圧延率」は熱処理後に行うスキンパス圧延の圧延率を示している。
表8、9には表2〜5および表6、7に記載の製造方法で得られた鋼板のミクロ組織、機械的性質および耐食性を示す。まず、製品板として得られた鋼板の板幅の1/4Wもしくは3/4W位置から試料を採取し、光学顕微鏡を用いて板厚1/4厚におけるミクロ組織の観察を行った。試料の調整として、圧延方向の板厚断面を観察面として研磨し、ナイタール試薬、レペラー試薬にてエッチングした。ナイタール試薬およびレペラー試薬にてエッチングした倍率500倍の光学顕微鏡写真を用いて、鋼板のミクロ組織を、フェライト、展伸した形状のフェライト、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイト、列状に連なったマルテンサイト、パーライト、冷延ままで再結晶していない冷間圧延方向に沿った伸長粒が残留したフェライトを含有するフェライト、に分類し、表8、9中の「ミクロ組織」に記載した。
Fはフェライト、展伸Fは展伸した形状のフェライト、γRは残留オーステナイト、Mはマルテンサイト、tMは焼き戻しマルテンサイト、Bはベイナイト、列状Mは列状に連なったマルテンサイト、Pはパーライト、未再結晶Fは冷延ままで再結晶していない冷間圧延方向に沿った伸長粒が残留したフェライトを含有するフェライト、を表す。
さらに、「フェライト面積率」は熱延原板と同様に上記の光学顕微鏡観察と同一の試料を用いて、EBSD−OIMTM(Electron Back Scatter Diffraction pattern−Orientation Image Microscopy)に装備されているKernel Average Misorientation(KAM)法にて求めた。
また、「硬質相面積率」は、「ミクロ組織」観察で分類したパーライトの面積率をポイントカウント法にて測定し、KAM法にて測定した「フェライト面積率」とともに全体の分率からこれらを除した値とした。
「硬質相とフェライトの平均硬度差」は、Hysitron社製 TriboScope/TriboIndenterを用い測定したナノ硬度Hnで定義し、フェライトと硬質相の硬度を各々20点以上測定し、その算術平均と標準偏差を算出した値とした。また、「Cu粒子径」と「Cu粒子密度」は、前述した三次元アトムプローブ法により測定、算出した。
次に機械的性質のうち引張特性(YP、TS、El)は、板幅方向1/4位置から圧延方向に垂直な方向に採取したJIS Z 2241:2011の5号試験片を用いて、JIS Z 2241:2011に準拠して評価した。破断伸びは引張強度とともに測定した。穴広げ値は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に準拠して評価した。
溶融亜鉛めっき工程を通板したものは、めっきの健全性を評価するためにめっき耐食試験後のめっき密着性を評価した。まず、JIS Z 2371で規定された塩水噴霧試験(Salt Spray Test:以下SST)を使用して評価した。試験片は、150×70mmに切り出し、裏面と端面を樹脂テープでシールした後、腐食試験に供した。次に、耐食性としてめっき密着性を評価するために試験後に0T曲げ試験を行った加工部のめっき密着性を評価した。0T曲げ試験は、めっき鋼板を180度折り曲げた後、曲げ戻した。めっき密着性試験は、0T曲げ試験で折り曲げためっき鋼板の加工部内側にセロハンテープ(ニチバン 405A−24 JIS Z 1522)を強く圧着させ、その後、テープを垂直に急速に引き剥がして行った。テープ剥離試験後、テープに付着しためっきの有無でめっき密着性すなわち「耐食性試験結果」を評価した。テープに付着しためっきが有る場合が×で不良、無い場合が○で良である。
Figure 0006459611
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次に結果について説明する。
本発明に沿うものは、鋼番1、2、3、5、6、7、13、14、16、20、21、30、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80の34鋼である。これらの鋼板は、所定の量の鋼成分を含有し、そのミクロ組織が、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下であることを特徴とした980MPa級以上のグレードの鋼板で破断伸び≧13%、穴広げ値λ≧50%の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板が得られている。
上記以外の鋼は、以下の理由によって本発明の範囲外である。
すなわち、鋼番4は、加熱温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定の熱間圧延が行えなかった。表2、3では、粗半成と記述している。
鋼番8は、粗圧延の20%以上パス数が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、硬質組織が展伸状となり所定のミクロ組織が得られず、伸び、穴広げ値が低い。
鋼番9は、粗圧延の20%以上パス数が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、硬質組織が展伸状となり所定のミクロ組織が得られず、伸び、穴広げ値が低い。
鋼番10は、粗圧延の合計圧下率が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、硬質組織が展伸状となり所定のミクロ組織が得られず、伸び、穴広げ値が低い。
鋼番11は、粗圧延の合計圧下率が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定の熱間圧延が行えなかった。表2、3では、粗半成と記述している。
鋼番12は、粗圧延終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定の熱間圧延が行えなかった。表2、3では、粗半成と記述している。
鋼番15は、仕上げ圧延の合計圧下率と圧下率20%以上のパス数が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、硬質組織が列状となり所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番17は、仕上げ圧延終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のCu析出状態が得られず、引張強度および穴広げ値が低い。
鋼番18は、仕上げ圧延終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず伸びが低い。
鋼番19は仕上げ圧延後の冷却開始までの時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、硬質組織が列状となり所定のミクロ組織が得られず、穴広げ値が低い。
鋼番22は仕上げ圧延後の冷却速度Iが本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度が低い。
鋼番23は仕上げ圧延後の冷却での保持開始温度と保持終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度が低い。
鋼番24は仕上げ圧延後の冷却での保持開始温度と保持終了温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず穴広げ値が低い。
鋼番25は保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず伸びおよび穴広げ値が低い。
鋼番26は保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず引張強度が低い。
鋼番27は保持後の冷却速度IIが本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度および穴広げ値が低い。
鋼番28は保持後の冷却停止温度および巻取り温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度および穴広げ値が低い。
鋼番29は冷間圧延率が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず伸びおよび穴広げ値が低い。
鋼番31は連続熱処理工程における650℃以上での温度域の昇温速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず伸びおよび穴広げ値が低い。
鋼番32は連続熱処理工程における加熱温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず穴広げ値が低い。
鋼番33は連続熱処理工程における加熱温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番34は連続熱処理工程における加熱保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番35は連続熱処理工程における加熱保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、結晶粒が粗大化し、穴広げ率が低い。
鋼番36は連続熱処理工程における一次冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ率が低い。
鋼番37は連続熱処理工程における一次冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ率が低い。
鋼番38は連続熱処理工程における一次冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず、穴広げ率が低い。
鋼番39は連続熱処理工程における二次冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、形状不良となり機械試験が実施できなかった。
鋼番40は連続熱処理工程における二次冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のCu粒子の存在状態が得られず、穴広げ率が低い。
鋼番41は連続熱処理工程における二次冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のCu粒子の存在状態が得られず、穴広げ率が低い。
鋼番42は連続熱処理工程における保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のCu粒子の存在状態が得られず、引張強度および穴広げ率が低い。
鋼番43は連続熱処理工程における保持時間が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、所定のCu粒子の存在状態が得られず、引張強度および穴広げ率が低い。
鋼番51は連続熱処理工程における三次冷却速度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、ミクロ組織中のマルテンサイトが過度に焼き戻しされ、引張強度が低い。
鋼番52は連続熱処理工程における三次冷却停止温度が本発明鋼の製造方法の範囲外であるので、ミクロ組織中のマルテンサイトが過度に焼き戻しされ、引張強度が低い。
鋼番56はCuの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、熱間圧延で発生したヘゲ、エッジ割れのため冷間圧延で破断して後工程に進めず製品が得られなかった。
鋼番57はCuの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、十分なフェライトでの析出強化が得られず、引張強度と穴広げ値が低い。
鋼番58はCの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、所定のミクロ組織が得られず伸びと穴広げ値が低い。
鋼番59はCの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、十分な硬質組織が得られず、引張強度が低い。
鋼番60はSiの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、スケール残存により製品が得られなかった。
鋼番61はSiの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、表面欠陥の多発により製品が得られなかった。
鋼番62はMnの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、伸びおよび穴広げ値が低い。
鋼番63はMnの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、引張強度が低い。
鋼番64はPの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、伸びと穴広げ値が低い。
鋼番65はSの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、穴広げ値が低い。
鋼番66はAlの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、仕上げ圧延中に通板が不安定となり圧延を中断した。
鋼番67はAlの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、溶存酸素が残留し、製品での中心偏析の状態が悪く、伸びおよび穴広げ値が低い。
鋼番68はNの含有量が本発明鋼の範囲外であるので、常温時効により延性が劣化し、伸びおよび穴広げ値が低い。
本発明で製造した鋼帯は、980MPa以上の引張強度を有し、同時に伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板を提供し、自動車の骨格部品を始め、衝突吸収エネルギー、剛性および疲労強度等の性能が求められる内板部材、構造部材、足廻り部材等の用途に用いることができ、産業上の貢献が極めて顕著である。

Claims (14)

  1. 質量%で、
    C :0.050〜0.200%、
    Si:0.050〜2.000%、
    Mn:1.00〜2.50%、
    P :≦0.020%、
    S :≦0.0100%、
    Al:0.005〜0.500%、
    N :≦0.0060%、
    Cu:0.80〜2.00%、
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼であって、そのミクロ組織が、残留オーステナイト、マルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、ベイナイトの一つ以上からなる硬質組織を面積分率で50%超90%未満とし、面積分率で10%以上50%未満のフェライトを第二相とする複合組織であり、フェライト中のCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下であることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  2. 請求項1に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
    Mo:0.005〜0.200%、
    Cr:0.005〜0.200%、
    のうちいずれか一種または二種を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
    Nb:0.001〜0.005%、
    Ti:0.001〜0.005%、
    V :0.001〜0.005%、
    のうちいずれか一種または二種以上を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  4. 請求項1〜請求項3の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
    Mg:0.0005〜0.0050%、
    Ca:0.0005〜0.0050%、
    REM:0.0005〜0.1000%、
    のうちいずれか一種または二種以上を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  5. 請求項1〜請求項4の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
    B:0.0002〜0.0050%、
    を含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  6. 請求項1〜請求項5の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記フェライトにおいてCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下の前記粒子の密度が、1×10 16 〜5×10 18 個/cm であり、
    さらに質量%で、
    Ni/Cu=0.5〜1.0の割合でNiを添加することを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  7. 請求項1〜請求項6の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、さらに質量%で、
    Zr、Sn、Co、Zn、Wのうちいずれか一種または二種以上を合計で0.05%以下含むことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  8. 請求項1〜請求項7の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記硬質組織と前記フェライトの平均硬度差がナノ硬度で0.8GPa以下であることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  9. 請求項1〜請求項5、請求項7〜請求項8の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、前記フェライトにおいてCu単独で構成される粒子の平均粒子径が2.0nm超、10nm以下の前記粒子の密度が、1×1016〜5×1018個/cmであることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  10. 請求項1〜請求項9の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、鋼板の表面に亜鉛めっきが施されていることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  11. 請求項1〜請求項10の何れかに記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板で、鋼板の表面に合金化亜鉛めっきが施されていることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板。
  12. 請求項1〜請求項9の何れかの伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法であって、請求項1〜請求項7の何れかに記載の化学成分を有するスラブを1100℃以上に加熱した後、熱間圧延に際して1050℃以上の温度域で少なくとも圧下率20%以上で3〜9パスで行い、合計圧下率が60%以上90%以下である粗圧延をし、その後、Ar3変態点温度以上の温度域で合計圧下率が87%以上93%以下であり、少なくとも圧下率20%以上で5〜7パスで行う仕上げ圧延をし、3秒以内に30℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、(Ar3+Ar1)/2±30℃の温度域で1〜10秒間滞留し、その後、20℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、350℃以下の温度域で冷却を停止し巻き取って熱延原板とし、酸洗後、圧下率の合計が5%超40%未満の冷間圧延を施し、続く連続熱処理において650℃以上の温度域での昇温速度が5℃/s以下となるように(Ac1+20)℃超〜(Ac3−20)℃の温度域まで加熱し、5〜300秒保持した後、12℃/s以下の平均冷却速度で720〜650℃の温度域にまで一次冷却を施し、4℃/s〜300℃/sの平均冷却速度で600℃から400℃超の温度域まで二次冷却を施し、5〜400秒保持した後、20℃/s以上の平均冷却速度で250℃以下まで三次冷却を行うことを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
  13. 請求項12に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法において、三次冷却前の鋼板を亜鉛めっき浴中に浸積させて鋼板の表面に亜鉛めっきすることを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
  14. 請求項13に記載の伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法において、鋼板の表面に亜鉛めっきした後、450〜600℃までの温度範囲で合金化処理することを特徴とする、伸びフランジ性に優れる析出強化型複合組織冷延鋼板の製造方法。
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